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奥原, 弘人 Citation 北陸の植物 = The Journal of Geobotany, 16(1)

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奥原, 弘人 Citation 北陸の植物 = The Journal of Geobotany, 16(1)
Title
菅平のクロビイタヤ
Author(s)
奥原, 弘人
Citation
北陸の植物 = The Journal of Geobotany, 16(1): 26-27
Issue Date
1968-01-15
Type
Journal Article
Text version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/2297/44700
Right
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http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/
北陸 の
第16巻第 1号
植 物
昭和43年1月
奥原弘人 事 菅平のクロビイタヤ
H. OKUHARA : On Acer miyabei MAXIM. which is found
at Sugadaira, Nagano Prefect.
一昨年私は木曽谷においてシパタカエデを発見し本誌にそれを報告するζと が で き た
が,ζの記事をまとめるに当っては一通り文献その他たよって産地を調べた上のことであ
った。ととろが去る6月横内斎氏から菅平産という乙とで 1枚の同じようなものをいただ
いた。それは花も実もないので種を決定することはできなかったが,とにかく菅平にもと
の類のあるととを知った。考えてみれば菅平は長野県の北東部にあって群馬,長野両県を
中心とするシパタカエデの分布の中央辺に当るので,乙の地lと乙れがあっても不思議はな
いはずである。ただ一つ気になったのは木曽の 、ンパタカエデ!C比べると葉が多毛である乙
’
とであって葉1と毛が多いならば突にも毛がありはしないかということを思った。 その後,
「菅平その自然と人文」という本が出版されていることを聞き,それを借覧したところ東
京教育大学の印東弘玄教授のまとめた植物目録が載っていて,かなりの数のカエデ類があ
る中にシパタカエデとクロピイタヤが記されていた。
’
乙れは是非現地を見たいものと7月7日それを決行した。信越線上田駅前からパスで神
川lζ沿って菅平に向い只今ダム工事中の谷聞を抜けるとやがて台地となり前方に畑が広が
ってζるが,その辺, つ まり菅平高原の入口の左手にある高木林が横内氏から知らされた
所で,小川に沿って続く高木林の中に例の大きな実を つ けたのが直ぐに見つかった。実を
注意して見ると大ていののは毛のあるクロピイタヤであったが中に 1 本だけ無毛のシパタ
カエデも見つ かった。私が急いで数えたところでは実のついた直径15cm内外の大きさの
’
’
ものが10本くらいあり若木もかなり見られた。今まで文献ではクロビイタヤは岩手,秋田
両県と北海道が産地となっているので,これは驚きであったが,シパタカエデはクロピイ
タヤの変種で,その違いは実に毛があるかないかという乙とだけであるから,との両種が
同じ所にあっても不思議はないとも思われるが,このようなことは他にはないようで珍し
いことと思う。
私の予想と違ったのは薬と実の毛の関係で葉に毛が多ければ実に毛があるとか, 実lと毛
のないのは葉の毛が少いとかいうことはなてて,菅平では実に毛のあるのもないのも葉の
毛は同じ程度lC多かった。前l乙記したように木曽のシパタカエデはこれより透かに毛が少
い。附近にはハナヒョウタンボク, ヱ ゾサンザシ,カラフトイバラ等も見られツキヌキソ
普長野県東筑摩郡本郷村大中
- 26ー
January
1968
The Journal of Geobotany
Vol. XVI. No. 1
ウもとの高原lζ自生しているので菅平の植物も面白いと思ったが, とにかく長野県の一角
にもクロビイタヤがあるということを確めることができた。
、
その後,先lζカエテ 類を研究された緒方健氏から,「クロビイタヤの化石は宮城県などで
も見つかっているので, かつては中部以北に広くあったのが次第に滅亡して,ようやく所々
に残存しているのでしょうか。 北海道でも岩手でもその生育地は低湿地の一般には樹木の
生長にとって条件のよくない所で,残存植物というのは,しばしば乙ういう所に生き長らえ
ているようですが, ζ れはどういうζとなのでしょ うか。なお葉がこのように毛深いのは
’
北海道でも見 られるようです」との書検をとただいたが菅平の産地もやはり低湿地である。
終りに乙の記事をまとめるに当ってお世話になった前記の諸氏IC謝意を表する。
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