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ルイス酸・塩基

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ルイス酸・塩基
HSAB理論
[HSABprinciple]
酸・塩基の理論 [theory of acid and base]
中心金属イオンと配位子を,それぞれルイス酸および塩基と考え,金属イオンを分類する。
各種金属イオンがつくる錯体の安定度定数の大きさの順序に注目すると,金属イオンは,配位
子原子が周期表の各族の最初の原子の配位子と安定な錯体をつくるクラス(a)の金属イオンと,
配位子原子が各族の2番目以降の原子の配位子と安定な錯体をつくるクラス(b)の金属イオンに
分類される。
それぞれのクラスの金属イオンと配位子原子の親和力の大きさの順はつぎのようになる。
クラス(a)の金属イオン:N≫P>As>Sb,O≫S>Se>Te,F>Cl>Br>I
クラス(b)の金属イオン:N≪P>As>Sb,O≪S~Se~Te,F<Cl<Br<I
ピアソン(Pearson,R.G.)は金属イオンに限らず,クラス(a)のような性質をもつ酸を硬い酸(hard
acid),クラス(b)のそれを軟らかい酸(soft acid)と命名し,硬い酸と安定な錯体をつくる塩基を硬
い塩基(hard base),軟らかい酸と安定な錯体をつくる塩基を軟らかい塩基(soft base)と命名し
た(1963)。
このような酸,塩基の分類,命名の経緯から明らかなように,硬い酸は硬い塩基と,軟らかい酸
は軟らかい塩基と強く結合する。
この経験則をhard and soft acids and basesの頭文字をとってHSAB理論という。
錯体の安定性だけでなく,無機化合物や有機化合物の反応性,触媒反応の機構などの解釈に
広く適用されている。
硬い酸と塩基はいずれも分極しにくく,π結合をつくりにくいものが多い。それに対し軟らかい酸
と塩基は分極しやすく,π結合をつくりやすいものが多い。
古くから酸味その他の共通な特性を示す一群の物質を酸,酸の作用を中和するものを塩基と
よんでいた。
酸・塩基の理解は化学の発展に伴い以下のように発展した。
(1 )
アレニウス酸・塩基(Arrhenius acid-base)
1884年アレニウスは,水溶液中で水素イオンH+を出す物質が酸であり,水溶液中で水酸
化物イオンOH-を出す物質が塩基であるとした。
これによれば,水溶液中で酸HA,塩基BOHに対して
HA
Ê
H+ + A-
,
BOH
Ê
B+ + OH-
という電離平衡が存在し,各平衡の電離度が大きいほどそれぞれ酸または塩基として強い
ことになる。
(2 )
ブレーンステッド酸・塩基(Brensted acid-base)
1923年に,ブレーンステッドとローリー(Lowry,T.M)が独立に新しい理論を提出した。
酸とはH+を相手に与えるような分子またはイオン,塩基は逆に相手からH+を受けるよう
な分子またはイオンと定義される。すなわち酸は陽子供与体,塩基は陽子受容体となる。
酸HAは水溶液で水(塩基としてはたらく)にH+を与え,オキソニウムイオンH3O+を生ずる。
HA +H2O
Ê
H3O+ + A-
代表的なHSAN
硬い酸
中間の酸
軟らかい酸
この反応中,右側から左側への反応に着目すれば,H3O+がA-にH+を与え,前者が酸,
後者が塩基となる。酸HAからH+を除いたA-をHAの共役塩基,H2OにH+を付加したH3O+
をH2Oの共役酸とよぶ。
たとえば, HCl + NH3 Ê NH4+ + Cl- において
Cl-はHClの共役塩基,NH4+はNH3 の共役酸となる。
(3)
硬い塩基
中間の塩基
軟らかい塩基
ルイス酸・塩基(Lewis acid-base)
1923年に,ルイスが電子の授受に基づく酸・塩基の理論を提出した。
それによれば,電子対を与えて相手と化学結合を形成するものが塩基で,電子対を受ける
相手が酸である。
すなわち酸,塩基はそれぞれ電子対受容体,電子対供与体として定義される。
また酸と塩基の反応は電子対授受とそれに伴う結合の再編成として説明される。
(2)で定義される陽子授受系はすべてルイス酸・塩基に含まれる。またH+を含まない系,とく
に配位結合をつくる系も,ルイスの理論では,酸・塩基として定義される。
適用範囲は(1)→(3)の順に広くなる。
アールランド(Ahrland スウェーデン
1958 )は、
金属錯体の安定度定数をもとにして金属イオンを次のように分類した。
硬い酸……(軽い)アルカリ金属イオン,アルカリ土類金属イオンなど
H+
Li +
Cl 7+
Br 7+
サイズ小 ・
Na +
K+
N 3+
価数大
Be 2+
Al 3+
Mg 2+
中間の酸
Cu 2+
Zn 2+
Sb 3+
SO 2
Co 2+
Ni 2+
Pb 2+
Sn 2+
NO +
Sr 2+
Cr 6+
中間の塩基
Br -
・
Fe 2+
N2
SO 3-
NO 2
N 3-
C6H5NH 2
C6H5N
正電荷が中心に寄っている
軟らかい酸……(重い)遷移金属イオンなど
Cu +
Ag +
Au +
Hg +
Hg 2+
I+
Br +
Br 2
I2
Pt 2+
サイズ大 ・
価数小
・
HSAB (hard and soft acids and bases)
Pb 2+
Ag+ …… ………… …… 軟らかい酸
正電荷が全体に広がっている
この組み合わせは不安定である。
Cl-
硬い酸も軟らかい酸も、空の軌道を有するルイス酸として働く。
…… ………… ……硬い塩基
硬い酸
この組み合わせも不安定である。
軟らかい塩基
硬い塩基…… サイズ小 ・
分極しにくい
H2O
NH 3
OH -
SO 4
NO 3
PO 4
2-
-
軟らかい塩基……
CO
C2H4
R-
I-
R- NH 2
3+
F
サイズ大 ・
CN
-
CH 3 COO -
Cl -
軟らかい酸(塩基)は分極しやすく、π結合をつくりやすい。
分極しやすい
RS
硬い酸(塩基)は分極しにくく、π結合をつくりにくい。
-
-
SCN
-
硬い酸
C6H6
安定な化学種をつくる。
硬い塩基
H-
軟らかい酸
硬い塩基も軟らかい塩基も、非共有電子対を有するルイス塩基として働く。
安定な化学種をつくる。
軟らかい塩基
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