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感染性胃腸炎について [PDFファイル/766KB]

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感染性胃腸炎について [PDFファイル/766KB]
2016/10/27
ロタウイルス感染症
岡山県環境保健センター・岡山県立図書館連携講座
感染性胃腸炎について
岡山医療センター
感染対策室・小児科
金谷誠久
便は病初は白色であるが、白黄色→白緑色水様→顆粒便
の経過で回復することが多い。
潜伏期は、1~3日
ロタウイルスの特徴
•ロタウイルスはレオウイルス科に属するRNAウイルスで、
ロタウイルス感染症の経過
A~G群に分類さ
れ、ヒトからはA~C群が検出される
•感染力はとても強い(手から口へ)
•ロタウイルス胃腸炎は15歳までの小児期に多い疾患であり、比較的成人は
罹患しにくい。
•主に生後3-24ヵ月の乳幼児がかかり、5歳までにほぼ100%が感染する。発
症月齢のピークは生後7~15ヵ月。生後3ヵ月までは母体からの移行抗体に
よって感染しても症状が出ないか、症状があっても軽く済む
•主な症状は嘔吐と下痢で、通常予後は良いが、ノロウイルスに比べると重症
度が高い 。問題となる合併症:腎不全,脳炎・脳症
•潜伏期は1~3日
まず、病初期に嘔吐と発熱がみられ、続いて下痢が始まりま
す。
嘔吐は突然起こります。通常、嘔吐は発症1~2日目にみら
れ、3日目以降少なくなります。経過中の総嘔吐回数は乳幼
児では5~6回を超えることも多くあります。
下痢は水様性から泥状です。患児の半数近くにみられる白
色~黄白色便は特徴的ですが、同様の色調はノロウイルス
感染症についてもみられます(見た目で区別はできません)。
腸重積の合併などがなければ、通常血便はみられません。
•対応は、接触感染予防策
発熱の持続は2日を超えることは少なく、多くが半日~1日で
す。最高体温は40.2℃に達することもあり、39.1℃以上が
14%に、38.0℃以上が65%にみられます。
腸重積を図解してみました
ロタウイルス感染症の特徴
ロタウイルスは乳幼児の急性重症胃腸炎の主な
原因病原体。本邦では6歳未満の小児のうち年間
約80万人(100人あたり11人)が、ロタウイルス
胃腸炎で外来受診をしていると推計されている。
今のところ対症療法が唯一の治療法で、タミフル
のような抗ウイルス薬はない。発症すると激しい嘔
吐と下痢を繰り返すため、水分補給が十分にでき
ずに脱水症状に陥ってしまい、入院での治療が必
要となることがある。
ロタウイルスは神経系の合併症である脳症を引き
起こすことがあるので注意が必要。
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2016/10/27
こんな時は受診が必要です
1)6~12時間以上嘔吐が続いたり、吐いた物が緑色。
2)明らかな血便・黒色便が出た時
3)間欠的な激しい腹痛や啼泣がある時
4)意識障害(顔色が悪いままウトウトする・刺激をしてもすぐに
寝てしまう・抱きつく力もない・けいれん等の症状)がある時
5)皮膚・口・舌の乾燥,眼の落ちくぼみ,皮膚(特に
手足)が冷めたく青白い時
嘔吐下痢のけいれんは発症後2~3日目に多く、嘔吐は
おさまったけど下痢が続いてる時に起こることが多い
「糖質控えめ、塩分多め」の
「経口補水液」
乳幼児の水分補給のポイント
「根気よく」・「こまめに」・「少しずつ」
「糖質控えめ、塩分多めの経口補水液」がお勧め
嘔吐が続いている3~6時間程度は脱水は軽度です。
脱水が強くなるのは下痢が始まってからですので、
最初は飲料にこだわらず“飲めるもの”でかまいませ
ん。
まず、小さじ1杯(約5ml)~2杯くらいから始めます。1
回10~20mlの少量で、10~30分毎に「根気よく、こま
めに、少しずつ、」与えます。2~3回飲んで吐かない
ようであれば、少しずつ増量します。
「糖質控えめ、塩分多め」の
「経口補水液」
OS-1(病者用食品)・ソリタ顆粒(医薬品)が代表です
市販されているイオン飲料(いわゆるスポーツ飲料も含
む)は糖質が多く塩分が少なめな製品が多く、経口補水
液とてしては不十分です
OS-1の成分
Na 50mEq/L(115mg/dl),K 20mEq/L(78mg/dl),Cl
50mEq/L(177mg/dl),糖質(ブドウ糖)2.5%(2.5g/dl)
自宅で簡単にできるレシピ
湯冷まし1リットル+砂糖40g(上白糖大さじ4と1/2杯)+
食塩3g(小さじ1/2杯)
「熱性けいれん」って?
乳幼児期(生後6か月~6歳)にみられる
発熱時(38℃以上)に生じるけいれん発作
日本人の8%にみられる
7割の人で発作は1回だけ(9割以上は3回以内)
通常、就学前に治り、発達の問題は残さない
原因は、?
発熱時に、ダイアップ座薬®で予防することがある
軽症の胃腸炎に伴う無熱性けいれん
6か月~3歳の乳幼児で、脱水を伴わない程度の軽症の下痢で発熱
(38℃以上)がないにもかかわらず、けいれんを起こすことがあります。
嘔吐下痢が始まってから2~3日目に起こることが多いのが特徴。
けいれんの多くは短い(数分以内)全身性けいれんであり、すぐに意
識も戻り普段の状態となりますが、しばしば繰り返してけいれんをお
こします(群発といいます)。
この年齢は、いろいろな理由でけいれんをおこしやすい時でもあるの
で、脳炎や髄膜炎・低血糖などの代謝異常症・てんかん発作なども鑑
別する必要があります。
この病気は下痢症のときだけの一時的なけいれんですので、こどもさ
んの発達などに影響することはありません。また、繰り返すことも少な
いので、下痢症のたびに予防的に抗けいれん剤を服用する必要はあ
りません。
泣かせたり、痛み刺激でけいれんが起きやすいらしいです。
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ロタウイルスでおこりうる脳症
ロタウイルスによる脳症
ロタウイルス胃腸炎の症状は、突然の激しい嘔吐と
米のとぎ汁のような水様性の下痢を繰り返すのが
特徴的で、発熱を伴うこともあります。さらに、下痢
やおう吐のため脱水が進行したり、 けいれんや意
識障害がみられたりした場合、入院が必要になるこ
とも。ロタウイルスは脳炎・脳症の原因の第3位で、
脳炎・脳症になると後遺症が残ることもあります。
• ロタウイルス胃腸炎は、発熱・嘔吐・下痢などの胃腸炎症状で発
症し、その2~4日目に意識障害や痙攣が生じ、脳症が起きること
がある。検査では、脳波異常・MRIにおける異常・髄液細胞数増加
が認められる。
• ロタウイルス脳症の重症例では,ロタウイルス抗原は小腸のみで
検出される。感度の高いRT-PCRは小腸以外の種々の臓器でも陽
性を示すが、中枢神経系では陰性。ロタウイルス脳症では、ロタウ
イルスが中枢神経系に直接浸潤しているわけではないと考えられ
る
• 2009年9月~2010年8月,2010年9月~2011年8月にロタウイルス
脳症についての全国調査が実施された
年間44例のロタウイルスに関連した脳症があり、うち4例は死亡例
予後は、後遺症無し:59.0%,後遺症有り:24.6%,死亡:16.4%
後遺症有りの多くは、重い後遺症だった
日本でできるワクチンの種類
ワクチン( vaccine)はヒトなどの動物に接種して感染症の予防に用いる医薬品。
毒性を無くしたか、あるいは弱めた病原体から作られ、弱い病原体を注入することで体内に抗体を作り、
以後感染症にかかりにくくする。
弱いとはいえ病原体を接種するため、まれに体調が崩れることがある。
不活化ワクチン
生ワクチン
BCG
経口生ポリオワクチン
痘苗(現在は、主に軍用)
麻疹ワクチン
風疹ワクチン
麻疹・風疹混合ワクチン
流行性耳下腺炎(おたふく)ワクチン
水痘ワクチン
黄熱ワクチン
インフルエンザワクチン
狂犬病ワクチン
コレラワクチン
不活化ポリオワクチン
三種混合(DPT)ワクチン
(百日咳・ジフテリア・破傷風混合ワクチン)
二種混合(DT)ワクチン
(ジフテリア・破傷風混合ワクチン)
日本脳炎ワクチン
百日咳ワクチン
23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン
13価肺炎球菌ワクチン
A型肝炎ワクチン
B型肝炎ワクチン
ロタウイルスワクチン
子宮頸がんワクチン
ロタウイルスワクチンの比較:1
グラクソ・スミスクライン株式会社
生後6週~24週までで接種
2回接種、1回接種量1.5ml
4週間以上の間隔をおいて2回
接種(経口接種)
• 1回目の接種は生後14週6日まで
に行うことが推奨
•
•
•
•
MSD株式会社
生後6週~32週までで接種
3回接種、1回接種量2.0ml
4週間以上の間隔をおいて3回
接種(経口接種)
• 1回目の接種は生後14週6日ま
でに行うことが推奨
共通する特徴
乳幼児のロタウイルス感染による胃腸炎を予防するためのワクチン
赤ちゃん専用の内服するワクチン
最も注意すべき副反応は腸重積症
以下の赤ちゃんには接種でいません
1)腸重積になった事がある赤ちゃん
2)腸重積の発症を高める可能性のある未治療の先天性消化管障
害(メッケル憩室など)があると診断されている赤ちゃん
ロタウイルスワクチンの比較:2
ロタリックス
ロタテック
ロタリックス
•
•
•
•
ロタウイルスとノロウイルス
ロタテック
ロタウイルス
ノロウイルス
• ヒト由来のG1P[8]型ロタ
ウイルスを使用してワクチ
ンを作っています
• ウシ由来のG1,G2,G3,
G4およびP1A[8]型の5
つの血清型を含みます
感染経路
経口感染
経口感染(食中毒)
発症しやすい年齢
乳幼児(0~5歳)
年齢に関係なく誰にでも
症状(平均)持続時間
7日間
1~2日間
• G1P[8]型の交叉耐性に
より5種類のロタウイルス
に抵抗力が付きます
• ウシ由来とは、牛が罹るロ
タウイルスを使い、ワクチン
を作っているという意味
流行期
2~5月頃
11~3月頃
• 重症小児ロタウイルス胃腸
炎の98%は、上記5種類
のウイルスが原因で発症し
ます
• ヒトが罹るロタウイルスに対
して有効です
乳児にもっとも多くみられる胃腸炎はロタウイルス胃腸炎で、生後3か月過ぎから
みられます。ロ タウイルス胃腸炎は年齢に関係なく発症するノロウイルス胃腸炎
と違い、患者のほとんどが乳幼児のため、ノロウイルス胃腸炎よりも患者数も少
なく流行期も短いのですが、小児重症胃腸炎の原因として第1位を占めるほど重
症になりやすいのがロタウイルス胃腸炎の特徴です。また ノロウイルスは食中毒
の原因になることがありますが、ロタウイルスは食中毒を起こすウイルス にはなり
ません。
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ノロウイルス感染症の特徴
ノロウイルスの感染経路
• 乳幼児から高齢者までの幅広い年齢層で急性
胃腸炎を引き起こす
• 主に冬場に多発し、10月頃から流行がはじまり
12~1月にピークを迎えるが、年間を通して発生
• 乾燥にも強いうえ、液中でも長期間生存が可能
• 感染力が非常に強く、少量のウイルス(10~100
個)でも感染・発症する
• 経口感染・接触感染・飛沫感染など、感染ルート
が複数ある
• ノロウイルスに一度感染した患者でも、繰り返し
発症・感染する(免疫ができにくい)
大きく分けて、ウイルスの構造は2種類あります
1gあたりに含まれる、ノロウイルスの数
ふん便
約1億個/g (特に乳幼児では100億個以上)
症状がない不顕性感染者でも、
10~100万個/g以上排出されている場合があります
吐物
約100万個/g
消毒薬とウイルス
トイレのドアノブは…
エンベロープを有しないウイルス:消毒薬抵抗性は強い
ライノウイルス・ノロウイルス・アストロウイルス・A型
肝炎ウイルス・E型肝炎ウイルス・ポリオウイルス,エ
コーウイルス,コクサッキーウイルスなどのエンテロウ
イルス・ロタウイルス・アデノウイルス
エンベロープを有するウイルス:消毒薬抵抗性は弱い
インフルエンザウイルス・RSウイルス・パラインフルエ
ンザウイルス・コロナウイルス・単純ヘルペスウイル
ス・水痘/帯状疱疹ウイルス・麻疹ウイルス・風疹ウイ
ルスなど
11月下旬から12月上旬にホテル・旅館計49施設で調査を実施。
従業員が使用するトイレの出入口ドアノブ全面をふき取った結果、
計12施設からノロウイルスを検出
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2016/10/27
トイレの掃除
って、大切ですよ〜
ノンクリティカル表面でのウイルスの消毒法
エンベロープを
有しないウイルス
熱水:98℃15~20分
(多くの場合は、80℃で10分洗浄で可)
500~1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液
(特別な場合には5,000ppm)
場合によりアルコール
エンベロープを
有するウイルス
熱水(80℃10分)
アルコール
200~1,000ppm次亜塩素酸ナトリウム液
ノロウイルス感染予防
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