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第15号(PDF file, 4.1Mbytes)
2014 名古屋大学物質科学国際研究センターニュース 15 RCMS NEWS Nagoya University Research Center for Materials Science Reports and Communications of RCMS Activities 〒464-8602 名古屋市千種区不老町 Phone: 052-789-5907 / Fax: 052-789-5900 平成 26 年 4 月 第 15 号 CONTENTS 平成25 年度 統合物質創製化学推進事業… ……………………………… 2 第15・16回日独共同セミナー… ………………………………………… 4 グリーン自然科学国際教育研究プログラム… …………………………… 6 第10回平田記念レクチャー・ ITbM-IGER-RCMS国際有機合成名古屋シンポジウム…………………… 7 外国人客員教授紹介………………………………………………………… 8 新任研究紹介(平成 25 年度着任教員) …………………………………… 10 RCMSセミナー 一覧… …………………………………………………… 12 ミュンスター大学大学院生紹介… ………………………………………… 19 化学測定機器室レポート… ………………………………………………… 20 ケミストリーギャラリー… ………………………………………………… 21 受賞…………………………………………………………………………… 22 今年の出来事………………………………………………………………… 23 スタッフリスト… …………………………………………………………… 24 ※このニュースは、物質科学国際研究センターの ホームページ(http://www.rcms.nagoya-u.ac.jp/)上でもPDF形式で公開しています。 RCMS NEWS 統合物質創製化学推進事業(四大学間連携事業) 平成25 年度事業報告 文部科学省特別経費にて実施されている、統合物質創製化学推進事業―先導的合成の新学術基盤構築と次世代中 核研究者の育成―(北海道大学触媒化学研究センター・名古屋大学物質科学国際研究センター・京都大学化学研究所 附属元素科学国際研究センター・九州大学先導物質化学研究所)において、平成 25 年度も下記の様なシンポジウムや フォーラムが開催されました。 【第 4回若手研究会】 (平成25 年6月28日-29日、名古屋) 座長・清水准教授(北大) 集合写真 招待講演・佐藤研究員(豊田中研) 【第 4回統合物質シンポジウム】 (平成25 年10月31日-11月1日、北海道) 開会の辞 上田教授(北大) 特別講演 金井求教授(東大) 研究報告 菱川教授(名大) 2 特別講演 細野秀雄教授(東工大) ポスターセッション 【第3回統合物質国際シンポジウム】 (平成26 年1月10日-11日、九州) 高原教授(先導研所長) 特別講演 Prof. Matyjaszewski 特別講演 Prof. Kertesz ポスターセッション 特別講演 Dr. Chan 質疑応答 【統合物質フォーラムの開催】 第7回フォーラム ******************************************************** 平成26 年度事業予定 第 4回統合物質国際シンポジウム(7月10-11日・京都大学) 第5回統合物質シンポジウム(12月19日-20日・名古屋大学) 第5回若手研究会(開催時期 未定・北海道大学) 3 RCMS NEWS 第15回・第16回 ミュンスター大学・名古屋大学共同セミナー 平成 25 年度ミュンスター大学・名古屋大学の日独共同セミナーが、下記の日程で開催されました。日本学術振興会 「日独共同大学院プログラム」の後継プログラムとして、同じく日本学術振興会の「頭脳循環を加速する若手研究者戦 略的海外派遣プログラム」にて、博士課程後期の学生やポスドクの派遣が活発に行われる中、日独双方の研究者が 各々に展開する共同研究の進捗状況を確かめる絶好の機会として、この日独共同セミナーは開催されています。 【第15回日独共同セミナー】 平成 25 年 5月20日(月)- 21日(火)名古屋大学にて ドイツ側参加者:教員4 名、学生7 名(全員口頭発表) 日本側参加者:教員5名、学生 4 名(口頭発表) 、ポスター発表 30 件 学生発表 熱の入ったポスター発表 等身大の野依特別教授パネルと記念撮影するドイツ人参加者達 4 【第16回日独共同セミナー】 平成 25年11月11日(月)− 12日(火)ミュンスター大学にて 日本側参加者:教員8 名、研究員1名、学生 4 名(全員口頭発表) ドイツ側参加者:教員3名、研究員2 名、学生6名(口頭発表) 、ポスター発表19 件 口頭発表 ディスカッション ミュンスターでの再会(派遣・受入研究室メンバー) 【日独双方の学生によるミニピアノコンサート開催】 今回の日独共同セミナーでも、名古屋大学の学生によるミニピアノコンサートを開催しました。ポスター会場である 野依記念物質科学研究館 2階ケミストリーラウンジにあるグランドピアノを使用して、学生が持ち前のピアノの腕を披 露しました。 5 RCMS NEWS グリーン自然科学国際教育研究プログラム 平成23 年度文部科学省「博士課程教育リーディングプログラム」に採択され、①最先端基礎自然科学研究の実践と、 ②それを可能にする十分なコースワーク履修と、③大学院リテラシー教育(英語研修や海外留学、スキルセミナーなど) を3 本の柱とし、 「全体を見渡す科学力と社会性」 、 「基礎研究から応用成果を引き出す展開力」 、 「地球規模で活動する 国際性」を涵養し、次世代の環境分野を担う「シーズを産業に育てる企業研究者」 、 「新発想を学術領域に育てるアカ デミア研究者」 、 「国際社会で活躍する環境科学コーディネーター・メンター」の育成を目指しています。 これまでの様々な取り組みに関する詳細はホームページでご覧いただけます。URL: http://iger.bio.nagoya-u.ac.jp/ iger_activity_j.php 取り組みのいくつかをご紹介します。 年次報告会:平成 26 年1月8日に年次報告会を行いました。海外留学、女性トップリーダー育成企画、インターンシ ップ研修、国際教育企画、ノースカロライナ研修に参加した学生がその成果について報告しました。その後、選ばれた 12 名の学生による研究成果発表及び、約180 名の学生のポスター発表が行われました。 ノースカロライナ研修:平成26 年3月3日~14日にアメリカ・ノースカロライナ州における短期リーダーシップ研修に 12 名の学生が参加しました。リーダーシップ、起業、大学の研究成果の産業界への技術移転等の各種講義に加え、 North Carolina State University、Duke University、University of North Carolina at Chapel Hillの研究室を訪問し、 プレゼンや議論を通じて研究者と交流しました。さらに、GlaxoSmithKline、Syngenta、Eisai、BASF、Biogen Idec、 Scynexis、NiRvana Science 等の企業を訪問し、プレゼンのほかアメリカでのビジネス環境について学ぶ機会を得まし た。 ノースカロライナ研修 年次報告会 平成 25 年10月には、本プログラムの国際アドバイザリ ーボードの下村脩特別招聘教授とプログラムコーディネ ーターの阿波賀邦夫教授が会談し、大学院生、若手研究 者に対するご助言と、本プログラムに対するご指導をい ただきました。 下村博士と阿波賀教授 6 第10回平田記念レクチャー・ ITbM-IGER-RCMS国際有機合成名古屋シンポジウム 平成 26 年 2月18日(火)に、名古屋大学野依記念学術交流館にて「第10回平田記念レクチャー」および「ITbMIGER-RCMS国際有機合成名古屋シンポジウム」が行われました。 伊丹健一郎教授(ITbM・拠点長)の開会のあいさつの後、第1回平田記念レクチャー受賞者であるDu Bois 教授が 講演されました。10 年前、Du Bois 教授がお話しされたサキシトキシンの化学研究が、時を経てイオンチャネル・鎮痛 剤の生物学的研究へと大きく展開されていたことに、会場の雰囲気がグッと引き締まりました。上村大輔教授は、キノ コ由来の脂肪蓄積阻害活性をもつ環状ペプチドをリード化合物とした創薬の可能性について講演されました。岸義人教 授には、抗がん剤「エリブリン」の誕生のきっかけとなった海洋天然物ハリコンドリンBの全合成を例に、合成化学の 力量、大切さをお話しいただきました。ラボで考え実践していることが社会を支えているのだと実感した瞬間でありま した。 最後に、平田記念レクチャー受賞者であるMartin D. Burke 教授が登壇しました。上村教授からメダルを受けとった 後、ノーベル賞反応として知られるクロスカップリング反応(鈴木−宮浦カップリング反応)に革新的なブレークスル ーをもたらした成果と、これまでにケミストの特権として与えられていた化合物を作るちからをnon-chemist へ、という お話には、参加した生物学者も興味を持って聞き入りました。また従来のクスリの概念とは全く異なり、分子を移植し て治療するという「Molecule Prosthetics」の概念、成果についてお話しされました。 平田記念レクチャーは、2004 年に10回の国際シンポジウムとして始まりました。第6回受賞者のJeffrey W. Bodeは、 ITbMの主任研究者として本学で研究室を運営しています。また、Du Bois 教授、Jin-Quang Yu 教授、Mohammad Movassaghi 教授(それぞれ第1回、7回、8回受賞者)らが所属するCenter for Selective C-H functionalizationと ITbMは活発な交流をしております。このように平田メモリアルレクチャーは、名古屋大学の世界的な認知度の向上や ネットワークの構築に大きく貢献して参りました。 シンポジウムの最後に、山口茂弘教授(ITbM・副拠点長)が、これまでの平田メモリアルレクチャーの精神を継続し、 次年度からITbMが主催する「Hirata Award」として、継続していくことが発表されました。 会場は定員(180 名)を遥かに上回る350 名の参加者で埋め尽くされ、講演者の熱のこもった講演に、質疑応答も絶 え間なく、最後の平田記念レクチャーを締めくくるにふさわしい会となりました。 授賞式の様子: 上村大輔教授とMartin D. Burke 教授 集合写真: 前列左より 山口茂弘、上村大輔、山田静之、野依良治、Martin D. Burke、岸義人、Justin Du Bois、伊丹健一郎 後列左より 大井貴史、北村雅人、鈴木正昭、福山透、丹羽治樹、 松本剛、吉村崇、西川俊夫、Stephan Irle (敬称略) 7 RCMS NEWS 外国人客員教授紹介 Prof. E. Peter Kündig アーンスト ピーター クンディグ ジュネーブ大学名誉教授 Applied Biosciencesの評議委員長をつとめるなど社会的 貢献活動にも尽力されている。 滞在中、研究室の会議にご参加いただき、研究推進へ のたくさんの貴重なご助言をいただいた。物質理学専攻 (化学系)のカリキュラムである横断的大学院講義の外国 人講師として6回にわたり大学院生に対して教鞭をとると ともに、RCMS セミナーにおいて「New chiral NHC ligand for the catalytic asymmetric arylation of amides and the enantioselective C(sp3)-H activation」というタイ トルのもとご自身の最新の研究成果をご講演いただいた。 その他、若手や学生を含む多くの研究者と熱く議論して 滞在期間:平成25 年9月30日~平成25 年12月21日 いただいた。研究に携わる者・それを志す者にとって大 変有意義な三ヶ月を過ごさせていただいた。 研究テーマ「環境調和型高性能分子触媒に関する研究」 スイス・ジュネーブ大学名誉教授のE. Peter Kündig 先 生が平成 25 年10 月より来名され、おそよ三ヶ月間に渡り ご指導いただいた。先生は遷移金属錯体化学の大家であ り、錯体合成法の開発をはじめ、その触媒的物質変換へ の応用まで幅広く研究を展開されてきた。ジュネーブ大 学を退職された現在も触媒的C-H 活性型反応を開発する など精力的に研究活動に取り組まれている。その傍ら、 スイス化学会会長、ETH Department of Chemistry and ******************************************************** I visited Nagoya University first in 1985 on invitation by Ryoji Noyori and Hisashi Yamamoto. Over the years I came to Nagoya several times again and have witnessed the consolidation of this school as one of the foremost places of research in chemistry in Japan and the world. My 3-month (Oct-Dec. 2013) stay at the Nagoya Research Center for Materials Science was terrific. It was rich in interaction with RCMS colleagues, those in the Graduate Schools of Science and of Pharmaceutical Sciences, as well as with chemistry colleagues in the Graduate School of Engineering. Several of the discussions ended in agreements to collaborate. I enjoyed giving research lectures and teaching to graduate students. One of my favorite also was the Saturday morning group seminars of my host, Masato Kitamura. My schedule saw exponential growth as a result of lecture invitations from a large number of Universities in the Nagoya and Kansai region. In addition to a profound enrichment of my knowledge of frontier areas of catalysis and synthesis, I acquired a considerable expertise in Japanese cuisine and in Sake and intensified and extended friendships. Discussions on science, publishing and exchanges of reminiscences with Ryoji Noyori were another appreciated component of my stay. A great apartment on top of the Noyori conference hall, superb hospitality, all contributed to a scientifically and personally very rich stay in Nagoya. It will be remembered fondly forever. Special thanks go to Masato Kitamura for being an outstanding host and friend, and to Yuriko Nakamura and Yuko Kihara, whose great help was very much appreciated. E. Peter Kündig 8 Prof. Peter Skabara ピーター スキャバラ ストラスクライド大学教授 滞在期間:平成26 年1月21日~平成26 年3月1日 研究テーマ 「有機エレクトロニクスのための新π共役分子の開発」 英国 Strathclyde 大学のPeter Skabara 教授が、 「有機 エレクトロニクスのための新π共役分子の開発」という 研 究 課 題のもと、平 成 26 年 1 月 21日から 3 月1日まで 約1ヶ月間滞在された。同教授は、有機太陽電池や有機 電界発光素子、有機トランジスタの素材となる新しい共 役系有機化合物の合成と物性開拓の分野で大変著名な 研究者で、英国王立化学協会の材料系雑誌「Journal of Materials Chemistry C」のDeputy Editor-in-Chiefも務め られています。滞在中は、分子機能化学研究室や機能有 機化学研究室においてディスカッションをされたり、多く のアドバイスをいただいたりしました。とりわけ、ご自身 が合成されたテトラチアフルバレン部位を有するポリチオ フェンの電極材料としての応用に興味を示され、早速試 料を持ち込まれるとともに、分子機能化学研究室との共 同研究を開始しつつあります。また、阿波賀センター長を コーディネーターとする日本学術振興会 研究拠点形成事 業(A. 先端拠点形成型)の協力メンバーとして参加いた だくことも今回の滞在中に決まりました。 共同研究の推進と並行して、RCMS-IGERセミナーでも 「The role of non-covalent interactions in band-gap tuning, conformation and self-assembly」 (2月4日)とい うタイトルでご講演いただき、結晶中の分子の配列につい て割りばしを用いて説明されるなど、そのユーモアあふれ る講演は大変好評でした。 Skabara 教授は明るく気さくな人柄に加え、非常に日本 の文化や食事を気に入っておられるようで、本当に日本 びいきという印象を受けました。滞在期間の後半には奥 様も来日され、週末には近場の観光もされていたようで す。上記の研究拠点形成事業のシンポジウムを機会に、 早速この10 月にも名古屋に立ち寄られるようで、お互い の学生の交換も含め、今後の共同研究の進展を楽しみに され、短い滞在ではありましたが、平成 26 年 3月1日に帰 国されました。 ******************************************************** In late summer 2013 an unexpected opportunity presented itself to me with the prospect of 1-3 months as a visiting professor at the University of Nagoya in Japan. This was an extremely exciting opportunity, but some concerns went through my mind: family commitments (I have 4 daughters); would my research group function well in my absence with correspondence limited to e-mails and conference calls; will the time spent abroad have at least equal value and output as the same time spent at my home institution in Glasgow. On the other hand, the position would present a unique opportunity to build links with an internationally leading Materials Chemistry group in one of the top Universities in Japan. At the same time, being based in Nagoya would provide an excellent base to reach further out into the country and make contact with other groups to disseminate my group’s research activities and develop collaborative projects. My final decision was a compromise:-a 6-week term of appointment to begin in January 2014. Having visited Japan before, once for a conference in Osaka and a few years later a two-day meeting in Nagoya, I was no stranger to the culture and cuisine that is so strikingly different to the Western world. However, these previous trips were only for a few days (the return to ‘fish and chips’ was never far away in time), and I was conscious that a 6-week experience would be an entirely different prospect. I arrived in Nagoya International airport on Tuesday late afternoon, feeling tired and jetlagged after having spent several hours at Narita airport (Tokyo) waiting for the connecting flight. A familiar and welcoming face, that of Prof Shigehiro Yamaguchi (previous host in Nagoya), was there to greet me and I was subsequently escorted by train and taxi to the University campus where my apartment was located. Despite my tiredness, I could not fail to notice the stunning blue display of the University clock tower - a legacy from the successful patents that were developed by Isamu Akasaki on GaN LEDs in the late 1980s. Prior to my arrival, I had not thought so deeply about accommodation and what was in store for me for the next 6 weeks - all that mattered was that I had a roof over my head and a warm bed, close to the University. So, it was a somewhat unexpected but very pleasant surprise to be presented with a beautiful spacious and modern apartment, equipped with all mod cons. This included remote controlled air conditioning and full electronic control of the bath system. In the morning I would open the blinds of my apartment to have full view of my office in the Materials Science building. The Noyori international accommodation facilities and location were a perfect start to my stay in Nagoya. My time in Nagoya and elsewhere in Japan was filled with many activities and discussions, so the 6-week period went by swiftly – too swiftly. I felt I had made some excellent new contacts and cemented ongoing collaborations. On my last night on campus, we held a farewell reception so that I could thank my hosts and all the people I had interacted with in Nagoya. This was a touching and special moment for me. I have now spent research sabbaticals in several locations around the world, but never have my shoes been filled with so much lead as they were the next morning when I finally left Japan on this particular trip. A core-to-core workshop is scheduled for October in Hokkaido and I cannot wait to return to this beautiful country and link once again with the highly talented research colleagues I have befriended. Peter Skabara 9 RCMS NEWS 新任研究紹介 固体触媒表面の分子レベル構築と ダイナミックな触媒作用の理解に向けて オルガネラを形作るリン脂質の合成、 輸送メカニズム 様々な触媒プロセスが固体 触媒を用いて実現されている 生命活動に必須のエネルギ ーを生産するミトコンドリア 今日においても、固体触媒材 料における触媒活性構造の詳 細を理解し、自在に反応を制 は非常に動的なオルガネラで ある。ミトコンドリアは細胞 内で常に融合分裂を繰り返 御し得る触媒表面を構築する ことは難しい。その一つのア プローチとして、私たちは、 し、栄養条件などに応答して その体積を劇的に変化させ、 環境に応じた機能発現を実現 金属配位構造の規定された金 属錯体を用いて、固体表面の水酸基と反応させることで、 触媒活性点である金属種まわりの配位構造が規定された 固定化金属錯体・金属ナノクラスターを固体表面上に構 している(図 1) 。ミトコンド リアの融合分裂反応を仲介する因子の機能不全が、ヒト の神経変性疾患や心筋症の原因となることから、ミトコン ドリアの融合分裂機構はこれまで精力的に研究されてき 築することに取り組んでいる。更に、固定化金属錯体の 表面反応場を化学的に修飾し、その機能化を行っている。 また、依然としてブラックボックスである固体触媒作用 の理解に向けて、ダイナミックな触媒構造の変化を追跡 できるin situ 時間分解 XAFS 法や、不均質な固体触媒表 面におけるミクロ・ナノスケールでの局所構造を明らかに できる3 次元 XAFS 分光法の開発を行い、様々な固体触 媒反応系へと展開することで、固体触媒における構造不 均一性や触媒反応過程における触媒活性種のダイナミッ クな構造変化の解明も目指している。自在な触媒反応場 の構築に向けて、合成・先端計測の両面から固体触媒表 面の創製と理解に取り組みたい。 た。しかしミトコンドリア量の調節をミトコンドリアの融 合分裂機構のみで説明するのは難しく、ミトコンドリア膜 の主成分であるリン脂質に主眼をおいた研究、特にオル ガネラ間のリン脂質輸送についての研究が必須である。 しかしこれまで、リン脂質輸送機構についてはほとんど研 究されていないのが現状である。筆者らは、この未開拓 の分野であるオルガネラ間リン脂質輸送機構に焦点を当 て、新規リン脂質輸送タンパク質の同定や、試験管内リ ン脂質輸送反応実験系の開発を行っている。またリン脂 質維持とミトコンドリア形態維持の関連について研究して いる。 共同研究者:邨次智、石黒志、宇留賀朋哉、横山利彦 (唯 美津木) 図1 環境に応じたミトコンドリアの形態変化 参考文献 [1]Tamura, Y. et al. (2012) J. Biol. Chem. 287, 15205-15218. [2]Tamura, Y. et al. (2012) J. Biol. Chem. 287, 43961-43971. [3]Tamura, Y. et al. (2013) Cell Metab. 17, 709-718. 10 (田村 康) サイズ選択的な金属内包フラーレンの 分離 新たな不活性結合の直接変換反応の 開発を目指して 金属内包フラーレンは、球 状の炭素骨格内に様々な金属 原子を内包した分子であり、 特異な電気的あるいは磁気的 性質を示す [1]。様々な分野へ の応用が期待されながらも、 分離・精製の困難さから金属 内包フラーレンの応用はごく 一部に限られている。本稿で はシクロ パラフェニレン (CPP)と呼ばれるベンゼンを環状につなげた化合物と金 属内包フラーレンとのサイズ選択的な包接、そしてそれを 利用した分離について紹介する [2]。 物質科学において、有機分 子は身の回りの医農薬や機能 性分子にも幅広く用いられて いる最も重要な物質である。 分子はその構造によって性質 を大きくかえるため、目的と する分子を効率的に合成する ことが極めて重要となる。そ のため分子骨格を精密に構築 する方法論として有機反応化 学はこれまで大きく発展して きた。近年ではポストクロスカップリング反応として、炭 素 - 水素結合などの不活性結合の直接変換反応が報告さ れており、これまで合成困難であった化合物群を簡便に、 一挙に合成することが可能になってきた。私は2月まで京 都大学白眉センターにて大須賀篤弘教授、依光英樹准教 授のご指導のもと、不活性結合の直接変換反応について 研究を行った。本稿ではその最近の成果と今後の抱負に ついて紹介する。 CPPはその環内部に十分な空間が存在し、またフラー レンとの相互作用に有効であると考えられるπ共役骨格 をもつ [3]。この性質を利用することで、11個のベンゼン環 からなるCPPがランタノイド原子を閉じ込めたフラーレン C82 を包接できることを明らかにした。Gd@C82、Lu2@C82、 Tm@C82 といった金属内包フラーレンと複合化し、いずれ も非常に高い会合定数を示す。また、アーク放電によっ て合成したフラーレン混合物からGd@C82 の高純度化にも 成功した。今後、様々な金属内包フラーレンの精製だけ でなく、未知の金属内包フラーレンの単離への応用が期 待できる。 参考文献 [1]H. Shinohara, Rep. Prog. Phys. 2000, 63, 843. [2]Y. Nakanishi, H. Omachi, S. Matsuura, Y. Miyata, R. Kitaura, Y, Segawa, K, Itami, H. Shinohara, Angew. Chem., Int. Ed. 2014, 53. 3102. [3]H. Omachi, Y. Segawa, K. Itami, Acc. Chem. Res. 2012, 45. 1378. ベンゾフランは天然物や機能性分子に広く見られる有 用な骨格であり、選択的な合成法の開発が求められてき た。拡張型プンメラー環化を用いることで、フェノールを 直接的にベンゾフランへと導く反応を開発した。また得ら れたベンゾフランの不活性なC–S 結合の新たな変換反応 を確立し、多置換ベンゾフランの自在合成を達成した。1 私が 3月に着任した有機化学研究室では新反応や新触 媒の開発し、食料問題やエネルギー問題を解決する「ト ランスフォーマティブ分子」の創生に向けて、研究室一 丸となって取り組んでいる。2 私もその一員として、これ までの反応開発の経験を活かして、新たな不活性結合の 直接変換反応を確立することで、研究に尽力していきた いと考えている。 参考文献 1. K. Murakami, H. Yorimitsu, A. Osuka, Submitted. 2.Recent reviews from our group: (a) J. Yamaguchi, K. Muto, K. Itami, Eur. J. Org. Chem. 2013, 1, 19; (b) J. (大町 遼) Yamaguchi, A. D. Yamaguchi, K. Itami, Angew. Chem., Int. Ed. 2012, 51, 8960; (c) H. Omachi, Y. Segawa, K. Itami, Acc. Chem. Res. 2012, 45, 1378. (村上 慧) 11 RCMS NEWS RCMSセミナー 平成 25 年 4 月 9 日 Prof. Dr. Marcus Elstner (Institute of Physical Chemistry, Karlsruhe Institute of Technology (KIT), Germany) “Multi-Scale Methods for the Investigation of Biological Structures and Processes” 平成 25 年 4 月 22 日 Prof. Matthew J. Gaunt (University of Cambridge, United Kingdom) “Novel chemical reactivity using high oxidation state transition metal catalysis” 平成 25 年 4 月 24 日 Prof. Dr. Marek Wojcik (Professor of Chemical Sciences, Laboratory of Molecular Spectroscopy, Faculty of Chemistry, Jagiellonian University, Krakow, Poland) “Spectroscopy of hydrogen bond – theoretical modeling of spectra and proton tunneling” 平成 25 年 5 月 13 日 Prof. Olivier Baudoin (University of Lyon 1 and CPE Lyon) “Palladium(0)-catalyzed intramolecular C(sp3)-H bond functionalization” 平成 25 年 5 月 28 日 Prof. Wolfgang Weigand (Friedrich-Schiller-Universität Jena) “From Prebiotic to Bio-Inspired Hydrogen Production” 平成 25 年 6 月 5 日 Prof. Guosheng Liu (Shanghai Institute of Organic Chemistry, China) “Transition Metal-Catalyzed Direct Fluorination of Organic Compounds” 平成 25 年 6 月 6 日 Dr. Jiahao Chen (Department of Chemistry, MIT, Cambridge, MA, U.S.A.) “Disorder and excitonic structure in organic semiconductors” 平成 25 年 6 月 14 日 Dr. Toshio Miyamachi (Institute for Solid State Physics, the University of Tokyo) “A spin crossover-based multifunctional molecular memory” 12 平成 25 年 6 月 19 日 Prof. Dr. Robert K. Szilagyi (Department of Chemistry & Biochemistry, Montana State University, Bozeman, MT U.S.A.) “Spectroscopic Calibration of Electronic Structure Theory: Basis Sets, Exchange and Correlation Functionals, Ground and Excited States” 平成 25 年 7 月 3 日 Prof. Alexander S. Fedorov (L. Kirensky Institute of Physics, Russian Academy of Science & Siberian Federal University, Krasnoyarsk, Russia) “Kinetic stability vs thermodynamics of nanostructures - investigation of relative stability of fullerenes and SWCNTs” 平成 25 年 7 月 4 日 Prof. Stephen F. Lincoln (University of Adelaide, Australia) “Cyclodextrin Supramolecular Chemistry” 平成 25 年 7 月 19 日 Prof. Dr. Yasutaka Kitagawa (Department of Chemistry, Graduate School of Science, Osaka University) “Application of a spin-projected broken-symmetry (BS) DFT to polynuclear metal complexes ~ Electronic structure, molecular structure and physical properties~” 平成 24 年 7 月 24 日 Dr. Alister J. Page (Discipline of Chemistry, The University of Newcastle, Callaghan) “Simulating Ionic Liquid Nanostructure with Quantum Chemistry” 平成 25 年 7 月 31 日 Prof. Christophe COPERET (ETH Zurich, Switzerland) “Controlled Functionalization of Surface Towards Single-site Catalysts” 平成 25 年 7 月 31 日 Dr. Pierre H. Dixneuf (Professor, University of Rennes 1) “Cross-coupling reactions from C-H bonds with Ruthenium(II)-carboxylate catalysts” 平成 25 年 8 月 2 日 Dr. Gong Chen (Assistant Professor, Pennsylvania State University) “New Palladium-Catalyzed C-H Functionalization Strategies for Organic Synthesis” 平成 25 年 8 月 29 日 Prof. Josep M. Poblet (Departament de Química Física i Inorgànica Universitat Rovira i Virgili. Tarragona, Spain) “Electronic Structure of Polyoxometalates : From the Nucleation of Small Polyoxotungstates to the Properties of Large Anions” 13 RCMS NEWS 平成 25 年 9 月 3 日 Dr. Jan M. Knaup (Bremen Center of Computational Materials Science (BCCMS), Universität Bremen, Germany) “Advanced Modeling of Functional Nanoionics in Oxides” 平成 25 年 9 月 4 日 Dr. Andrew E. H. Wheatley (University Senior Lecturer, Department of Chemistry, The University of Cambridge) “New ideas in directed metallation –Teaching old dogs new tricks” 平成 25 年 9 月 9 日 Prof. Eckart Rühl (Physikalische Chemie, Freie Universität Berlin, Germany) “Photoexcitation, Photoionization, and Relaxation of Clusters and Nanoparticles” 平成 25 年 9 月 11 日 Dr. Jamal Musaev (Cherry L. Emerson Center for Scientific Computation, Emory University, Atlanta, Georgia, U.S.A.) “Knowledge-based Catalyst Design: Transition Metal Catalyzed Water Oxidation and Stereoselective C-H Bond Functionalization” 平成 25 年 9 月 24 日 Dr. Vadim A. Soloshonok (Ikerbasque Research Professor, University of Basque Country, San Sebastian, Spain) “Self-Disproportionation of Enantiomers: Theory and Practical Applications for Unconventional Preparation of Enantiomerically Pure Compounds” 平成 25 年 9 月 25 日 Dr. Eric Francotte (Executive Director, NOVARTIS) “Enantioselective Chromatography: An Essential Tool for Chiral Drug Discovery and Development” 平成 25 年 9 月 30 日 Prof. Dr. Gerhard Hilt (Fachbereich Chemie Philipps-Universität Marburg, Germany) “Modern Aspects in Cobalt-Catalysed Carbon-Carbon Bond Formation Reactions” 14 平成 25 年 10 月 2 日 Dr. Matthew A. Addicoat (School of Engineering and Science, Jacobs University, Bremen, Germany) “A computational toolkit for mass-screening metal-organic frameworks” 平成 25 年 10 月 2 日 Prof. Dr. Bernhard Wünsch (Westfälische Wilhelms-Universität Münster) “Synthesis and Pharmacological Evaluation of Novel Sigma Receptor Ligands” 平成 25 年 10 月 8 日 Prof. E. Peter Kündig (Professor, University of Geneva) “New chiral NHC ligands for the catalytic asymmetric arylation of amides and the enantioselective C(sp3)-H activation” 平成 25 年 10 月 15 日 Dr. Alex Domingo (University of Strasbourg) “Approaching multifunctionallity through computational simulations of magnetic and photo-sensiblemolecular materials” 平成 25 年 10 月 16 日 Prof. Martin Albrecht (School of Chemistry & Chemical Biology, University College Dublin, Ireland) “Variation on a theme: less classical N-heterocyclic carbenes and their (catalytic) impact” 平成 25 年 10 月 21 日 Prof. Mark J. MacLachlan (University of British Columbia, Canada) “Supramolecular Origami: Transforming Paper into Twisted Structures” 15 RCMS NEWS 平成 25 年 10 月 22 日 Prof. Jiun-Tai Chen (National Chiao Tung University, Taiwan) “Wetting and Instability Studies of Polymer Nanomaterials in Porous Anodic Aluminum Oxide Templates” 平成 25 年 10 月 22 日 Prof. Yen-Ju Cheng (National Chiao Tung University, Taiwan) “Molecular engineering of new organic materials for solar cell applications” 平成 25 年 10 月 24 日 Prof. Bruce C. GATES (University of California, Davis) “Molecular Catalysts on Surfaces: Synthesis, Characterization, and Design” 平成 25 年 10 月 28 日 Asst. Prof. Dr. Pornpan Pungpo (Department of Chemistry, Faculty of Science, Ubonratchathani University, Ubonratchathani, THAILAND) “Computer aided drug design of anti-tubercular agents and anti-cancer agents” 平成 25 年 11 月 11 日 Professor Sung Ho Kang (Department of Chemistry, Korea Advanced Institute of Science and Technology (KAIST), Korea) “Total Synthesis of Arenaric Acid” 平成 25 年 11 月 27 日 Prof. Toshihiko YOKOYAMA (Institute for Molecular Science) “Novel Spectroscopic Methodology for Materials Science” 16 平成 25 年 12 月 9 日 浜地 格 先生 (京都大学大学院工学研究科 合成 / 生物化学専攻・教授) “天然タンパク質を標的とした生細胞有機化学の展開” 平成 25 年 12 月 16 日 Prof. Suzanne A. Blum (Department of Chemistry, University of California, Irvine, U.S.A.) “Microscopy for Synthetic Chemists and Dual-Metal Catalysis with Gold” 平成 26 年 1 月 21 日 Prof. Huailiang Xu (State Key Laboratory on Integrated Optoelelectronics, Jilin University, China) “Remote air lasing in femtosecond laser filaments” 平成 26 年 1 月 24 日 Prof. Amlan J. PAL (Indian Association for the Cultivation of Science) “From Molecular Electronics to Organic Molecular Spintronics” 平成 26 年 1 月 30 日 Prof. Vincent Artero (Laboratoire de Chimie et Biologie des Métaux (CEA/Université Grenoble 1/CNRS)) “Biomimetic, bio-inspired and biosynthetic catalysts for water splitting” 17 RCMS NEWS 平成 26 年 2 月 4 日 Prof. Klavs Hansen (University of Gothenburg, Department of Physics, SE-412 96 Göteborg, SWEDEN) “Radiative cooling of carbon clusters” 平成 26 年 2 月 4 日 Prof. Peter J Skabara (University of Strathclyde) “The role of non-covalent interactions in band-gap tuning, conformation and self-assembly” 平成 26 年 2 月 5 日 Prof. Hiroshi Nagase (International Institute for Integrative Sleep Medicine (IIIS), University of Tsukuba, Japan) “ベラプロスト、ナルフラフィンの開発とオレキシン作動薬の研究” 平成 26 年 2 月 26 日 Prof. Georg Süss-Fink (Université de Neuchâtel, Institut de chimie (ICH), Switzerland) “Water-Soluble Arene Ruthenium Complexes: Anticancer Properties and Beyond” 平成 26 年 3 月 6 日 Dr. Nawee Kungwan (Department of Chemistry, Chiang Mai University, Chiang Mai, Thailand) “Quantum Chemical Studies of organic sensitizers with modified donor units for efficient dye-sensitized solar cells” 平成 26 年 3 月 6 日 Prof. Zhi-Heng Loh (School of Physical and Mathematical Sciences, Nanyang Technological University, Singapore) “Ultrafast Electron and Nuclear Dynamics Induced by Strong-Field lonization: From Atomic Gases to Liquid Water” 平成 26 年 3 月 14 日 Dr. Matthew A. Addicoat (School of Engineering and Science, Jacobs University, Bremen, Germany) “Development of the systematic molecular fragmentation method based on DFTB” 18 ミュンスター大学大学院生紹介 Nils Schröder Raúl Adler David Königs Marina Szermerski Matthias Dahlkamp Steffen Eusterwiemann Dominik Bergmann Benjamin Vonhören 指 導 教 員:Prof. Frank Glorius 受 入 教 員:伊丹健一郎 教授 滞 在 期 間:平成25 年 4月〜9月 研究テーマ: Synthesis of New Plant-growth Molecules by C-H Activation 指 導 教 員: Prof. Martin Oestreich 受 入 教 員:巽 和行 教授 滞 在 期 間:平成25 年7月〜12月 研究テーマ: Synthesis of new cationic ruthenium complexes with a bare Ru-P bond for heterolytic Si-H bond activation 指 導 教 員: Prof. Ernst-Ulrich Würthwein 受 入 教 員:斉藤 進 准教授 滞 在 期 間:平成25 年10月~ 平成26 年3月 研究テーマ: Hydroalumination of Unsaturated Nitrogen Containing Compounds 指 導 教 員: Prof. Hans-Ulrich Humpf 受 入 教 員:伊丹健一郎 教授 滞 在 期 間:平成25 年10月〜 平成26 年3月 研究テーマ: Synthesis of aminoglycoside derivatives that induce inaccurate translation 指 導 教 員:Prof. Gerhard Erker 受 入 教 員:山口茂弘 教授 滞 在 期 間:平成25 年12月〜 平成26 年6月 研究テーマ: Exploration of Photo-promoted Bora-Nazarov reactions 指 導 教 員: Prof. Bernhard Wünsch 受 入 教 員:渡辺芳人 教授 滞 在 期 間:平成26 年1月〜7月 研究テーマ: P450 Catalysed Oxidation as a Key Step in the Synthesis of PET Tracers for Imaging 指 導 教 員:Prof. Armido Studer 受 入 教 員:阿波賀邦夫 教授 滞 在 期 間:平成26 年1月〜7月 研究テーマ: Selective synthesis of ring polymers mediated with nitroxide diradicals 指 導 教 員:Prof. Bart-Jan Ravoo 受 入 教 員:阿波賀邦夫 教授 滞 在 期 間:平成26 年1月〜7月 研究テーマ: Optoelectronic Devices build by the Layer-by-Layer-Approach Eva Koch 指 導 教 員:Prof. Armido Studer 受 入 教 員:伊丹健一郎 教授 滞 在 期 間:平成25 年11月〜 平成26 年5月 研究テーマ: D irect coupling of carbonyl compounds and phenol derivatives 19 RCMS NEWS 化学測定機器室レポート 化学測定機器室は、核磁気共鳴装置と質量分析装置を 柱として分子構造を解析するための機器分析装置が集め られた全学共同利用施設です。化学測定機器室では、こ れらの測定機器の維持管理、測定方法の講習、特殊測定 の相談、依頼測定を通して、教職員・研究者・学生など の利用者に対してサービスを提供しています。また、オン ライン化学情報検索サービスSciFinderの名古屋大学の 窓口としての役割も担っています。平成 25 年度は、 「機器 室利用状況」に示しましたように学内全体で 85の研究グ ループに利用登録して頂きました。一年間の利用登録者 の教職員、学生、研究者の皆さんの数は、787 人でした。 固体用NMRプローブ 新たに新設されましたトランスフォーマティブ生命分子研 究所の利用が加わり、利用者は年々右肩上がりに増えて いる状況です。 [測定室の様子と設置機器の紹介] 高分子材料、電池材料、土壌有機物などの不溶性の有 機・無機化合物の固体 NMRによる構造解析の需要が年々 高まってきています。このため化学測定機器室では、既 に設置されているECA700固体 NMRの予約待ちが続く状 態となっていました。この状況に対処するために、これま で液体専用のNMRとして公開してきましたECA600 液体 NMRに固体測定用のユニットを追加しました。これによ り、プローブを交換するだけで液体と固体の両方の測定 が可能となりました。本装置の公開で円滑な固体 NMRの 利用が期待されます。 [機器室利用状況] 平成 25 年度(24 年 4 月-25 年 2月)の年間利用状況に ついて以下紹介します。 測定機器別測定件数 液体 -固体NMR(JNM-ECA600, JEOL) 部局別利用登録状況 (計 85グループ、787 人) 20 ケミストリーギャラリー ケミストリーギャラリー(野依記念物質科学研究館 2階) には、平成 25 年度も大変多くの見学者が訪れ、年間の来 場者が1万人を超えました。 平成 26 年 2 月末現在で11,115 名(入退室自動カウンタ ー調べ)の方にご来場いただきましたが、特に名古屋大 学が一般開放された下記の期間中においては、大変多く のみなさまに足を運んでいただきました。 8月8日−9日 オープンキャンパス期間中来場者 845名 10月19日 ホームカミングデー 778 名 平成 24 年度に引き続き、平成 25 年度も物質科学国際研究センターが保有するマリー・キュリーポスターや、理科教 育及び一般科学の啓蒙活動に役立つ資料の貸出しが行われました。 愛媛県総合科学博物館 「マリー・キュリー業績ポスター展」 平成25 年10月5日(土) 〜11月10日(日) 大垣スイトピアセンターアートギャラリー 「ノーベル賞を受賞した日本の科学者 〜博士たちの部屋〜」 平成26 年2月8日(土) 〜3月9日(日) 21 RCMS NEWS 受 賞 【巽 和行 特任教授】 平成 25年度 日本学士院賞受賞 平成 25 年度の学士院賞授賞式が天皇・皇后両陛下の臨席のもと、平成 25 年 6月17日に東京上野の日本学士院会館 にて行われました。 授賞式 平成 25 年度 文部科学大臣表彰・科学技術 分野(平成 25 年 4月16日) 宮中にて記念撮影 【齊藤尚平 助教】 第2回名古屋大学石田賞 (平成 25年11月8日) 22 エヌエフ基金第2回研究開発奨励賞 (平成 25 年11月18日) 【瀬川泰知 助教】 第2回 新化学技術研究奨励賞 (平成 25年 5月) 新化学技術推進協会が産学官連携の推進を狙い、大 学・公的研究機関などの若手研究者(40 歳未満)を対象 に、萌芽的・挑戦的な研究を助成するもの。 【大町 遼 助教】 第30回井上研究奨励賞(平成 26 年 2月4日) ******************************************************** JSPS 研究拠点形成事業(先端拠点形成型)の採択決定! 山口茂弘教授(物質科学国際研究センター協力教員) 水準における中核的な研究交流拠点の構築とともに、次 がコーディネーターとして申請された日本学術振興会の 世代の中核を担う若手研究者の育成を目的として実施さ 研究拠点形成事業(先端拠点形成型)が採択されました。 れる事業です。研究交流課題名は「革新的触媒・機能分 子創製のための元素機能攻究」で、ドイツ・ミュンスター (平成26 年度より5 年間) 我が国において先端的かつ国際的に重要と認められる 研究課題について、我が国と世界各国の研究教育拠点機 大学、カナダ・クィーンズ大学と共同研究を推し進めてい きます。 関をつなぐ持続的な協力関係を確立することにより、世界 日本化学会の第94 春季年会(2014) 名古屋大学で開催される 物質科学国際研究センターの渡辺芳人教授(名古屋大 名古屋では1986 年の秋季年会以来の開催であり、国立 学理事・副学長)を実行委員長とする、日本化学会の第 大学での開催は2002 年の大阪大学以来となる等、今回は 94 春季年会が 2014 年 3 月27日から30日まで、名古屋大 8000 名を超える研究者達が名古屋大学に集結しました。 学東山キャンパスで開催されました。 23 RCMS NEWS スタッフリスト センター長 特別顧問 教 授 特別教授 阿波賀邦夫 野依 良治 (2487) (平成26 年3月1日現在) [email protected] 有機物質合成研究分野 教 授 山口 茂弘(トランスフォーマティブ生命分子研究所) (2291) [email protected] 助 教 齊藤 尚平 (5750) [email protected] 助 教 村上 慧 (4525) [email protected] 非常勤研究員 ゴレ,サングラム (2960) [email protected] 非常勤研究員 パパガリ,ヴェンカト レデイ(2960) [email protected] 無機物質合成研究分野 教 授 准 教 授 助 教 特任教授 唯 美津木 高木 秀夫 山田 泰之 巽 和行 (6200) (5473) (2471) (2474) [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] 物質機能研究分野 教 授 助 教 助 教 阿波賀邦夫 松田 晃孝 大町 遼 (2487) (2945) (3660) [email protected] [email protected] [email protected] 生命物質研究分野 教 授 准 教 授 渡辺 芳人 田村 康 (3049) (2950) [email protected] [email protected] 分子触媒研究分野 特別教授 助 教 助 教 野依 良治 中 寛史 田中 慎二 (2956) (5411) (2960) [email protected] [email protected] [email protected] 共同研究分野 客員教授 客員教授 客員教授 菅原 正(神奈川大学理学部化学科特任教授) クンディグ,アーンスト ピーター(ジュネーブ大学名誉教授) スキャバラ,ピーター ジョン(ストラスクライド大学教授) 化学測定機器室 室長・教授 助 教 技術職員 技術職員 山口 茂弘 韓 春光 前田 裕 尾山 公一 国際アドバイザリーボード (2291) (3072) (3069) (3069) [email protected] [email protected] [email protected] [email protected] グルンツェ,ミカエル(ハイデルベルグ大学名誉教授) ホフマン,ロールド(コーネル大学名誉教授、ノーベル化学賞受賞者) カガン,アンリ,ボリ(パリ南大学名誉教授) 辻 篤子(朝日新聞社論説委員) 協力教員 教 授 北村 雅人(創薬研究科) (2957) [email protected] 教 授 篠原 久典(理学研究科) (2482) [email protected] 教 授 遠藤斗志也(理学研究科) (2490) [email protected] 教 授 菱川 明栄(理学研究科) (2494) [email protected] 教 授 伊丹健一郎(トランスフォーマティブ生命分子研究所) (6098) [email protected] 准 教 授 斎藤 進 (高等研究院) (5945) [email protected] 特別招聘教授 飯島 澄男 (6460) [email protected] センター事務 事務補佐員 事務補佐員 研究支援推進員 事務支援組織 理学部・理学研究科技術部 理学部・理学研究科事務 24 木原 優子 古村佐妃子 丹菊 園恵 (5907) (5902) (5908) [email protected] [email protected] [email protected]