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着物を活用した商品「FUGURO」の製作・販売や更なるブランド力づくり

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着物を活用した商品「FUGURO」の製作・販売や更なるブランド力づくり
◎着物を活用した商品「FUGURO」の製作・販売や更なるブランド力づくり
を通じて女性製作者たちの育成と自立を支援
No.02
"女性を担い手としたふるさとの未来創り
~地域ブランド構築とビジネス化コーディネート事業~"(H25)
実施主体
一般社団法人
WATALIS
実施市町村
宮城県
亘理郡亘理町
◎事業の背景
事業所数が被災により減少し、被災前の就労を維持することが困難な状況ある。また、建設業、建
設業や警備員など、震災(復興)に関連した業種に求人が偏る傾向があり、求職者の希望との間にギャ
ップが生じ、求人・求職のミスマッチの状況が続いている。
平成 24 年度に当法人の前身団体 WATALIS として、地域復興てしごとプロジェクトや、②みんな de
手しごとプロジェクト事業を実施し、多くの地元の女性たち(①手仕事製作者約 30 名、②ワークシ
ョップ参加者延べ 1,259 名)と対話を繰り返す中で、「ライフスタイルに応じた就労の機会を獲得し
たい」
「自らの持つ技術を活かして適正な収入を得たい」
「自宅で仕事をしたい」というニーズが多数
あるものの、これらに対応できる在宅就労の機会を提供し、適正な賃金を支払うことができる事業は
少ないのが現状であった。また、被災地域である亘理町では、地元での就労の機会は震災前に比べて
減少していることは明らかであり、特に子育てや介護による時間的制約の大きい世代の女性にその傾
向が顕著にみられることが分かってきた。こうしたことから、女性がそれぞれの技術力を活かし、就
労可能時間に応じた働き方を選択できる『みやぎらしい女性の就労モデル』を創り、地元での雇用を
創出する持続可能なソーシャルビジネスモデルの構築に係る「地元の担い手となる人材の育成」「地
域資源を活用した特産品開発」が短期的な課題であると考えられる。
◎事業の概要
地域の担い手である手仕事の製作者を主体とした女性のワーキンググループを組織し、未活用地域
素材(地域に眠る着物)を活用した地域ブランド構築とビジネス化に向けて、「学びの機会」「地域ブ
ランド」「ネットワーク」を創る3つの取組を実施する。地域の産業育成・産業支援に必要な能力・経
験・資源を有する協力先(生活協同組合連合会グリーンコープ連合、株式会社丸井グループ、株式会
社センスオブライフ)と連携し、関係者をコ―ディネートしながら、亘理町を拠点に活動する中間支
援団体である一般社団法人 WATALIS と担い手が協働して事業を実施する。
当該活動は、亘理町を拠点として活動する中間支援団体一般社団法人 WATALIS が、
「ふるさとの未
来創りワーキンググループ」に体系的かつ継続的に研修の機会を提供し、地域の女性達が自らの手で
特産品開発を通して被災地域の経済の活性化や先に述べた地域課題の解決に取り組むことを支援す
るものである。具体的な支援内容は下記の通りである。
取組1.学びの機会創りワーキング【担い手の人材育成】
取組2.地域ブランド創りワーキング【特産品開発】
取組3.ネットワーク創りワーキング【販売ネットワークの構築】
専門家からノウハウを学び、指導助言を受けながら、潜在的な地域資源を活用した手仕事による特
産品を開発、製作、販売する。地域ブランド商品(特産品)を生み出し、販売に至るまでの活動に主体
的に取組むことで、担い手の能力向上が図られるとともに、担い手としての責任感や主体性を高める。
加えて、
一般社団法人 WATALIS の中間支援団体としてのスキルの向上や新たなノウハウの習得を図る。
ステークホルダー
①一般社団法人 WATALIS
②女性の製作者(ふるさとの未来創
りワーキンググループ)
③生活協同組合連合会 グリーンコ
ープ連合
④株式会社 丸井グループ
⑤株式会社 センスオブライフ
役割
事業全体の企画・運営、協力先との調整・連携
支援対象であり、FUGURO をはじめとする商品の製作、販売を
担いながら新たなブランド構築や商品開発に取り組む
マーケティング、地域ブランド、商品開発、ネットワーク構
築等に関する研修会の講師
マーケティング、地域ブランド、商品開発、ネットワーク構
築等に関する研修会の講師
マーケティング、地域ブランド、商品開発、ネットワーク構
築等に関する研修会の講師
(1)中間支援の特徴(取組の中で見られた工夫や取組が上手く進んだポイント等)
●…中間支援における特徴的な工夫
●…中間支援における失敗と対応
実施前(~平成24年度)
●地域に眠る着物の活用に可能性を感じ、地域の文化と融合させた「FUGURO」を商品
化
引地氏(WATALIS 代表理事)は、町の資料館職員時代、地元の歴史や文化を記録していく町史の編
纂に携わり、民俗学の学識経験者と調査を行う中で、「ふぐろ」という文化に出会った。「ふぐろ」と
は、農家の人が、家族の衣類を仕立てた残りの反物で仕立てた袋のことで、かつてはその袋にお土産
やお礼として米などを入れて渡していたということであった。
調査活動を通じて知り合った地元高齢者から、以前は家族の衣類を全て反物から仕立ていたという
話も聞き、そのような文化を地域で伝えていく必要があると感じていた中で、亘理町の歴史をよりた
くさんの方に広めていくための方法を探していた。
その後、東日本大震災を経て、全壊判定となった商店を取り壊すにあたり、資料保存を目的に調査
に出向き、呉服屋などを調べる中で、多くの着物地が見つかった。そこで、これを材料にかつての文
化であった「ふぐろ」を製作し、販売していくことで着物や地域の文化を伝えていくことを思いつい
た。そうして、
「FUGURO」の作成に至ったのである。
その後、いくつかのイベントを通じて販売していく中で、少しずつ知名度が高まっていった。
●妥協せず商品の質の高さを追求したことがプロの高評価と協力を獲得
「FUGURO」のデザインについては3~4人のスタッフで何度も試作品を重ねて作り上げたものであ
る。高品質を維持するために、表地(着物柄)と裏地(色)の組み合わせ、細部のデザインや仕上げ
に至るまで細かく作業が決められており、高度な技術を必要とする部分は熟練度の高い製作者が行う。
また、仕上げられた製品は、高い製作スキルをもつスタッフによる厳しい検品も行っている。この高
品質を生み出し維持する体制が、プロのバイヤー(株式会社センスオブライフ)からも高い評価を得
て、百貨店等での販路確保につながっている。
実施中(平成25年度)
●女性製作者メンバーの思いを大切にした議論の積み上げが製作者自身の自覚や責任感
を醸成
商品開発やブランド化を検討する研修会では、製作者である女性メンバーの考えや意見を大切にし、
それらを積み上げていくことで、
「WATALIS」や「FUGURO」に込められた製作者の思いや感謝の気持ち
が共有された。そのプロセスが、女性製作者の自覚や責任感の醸成につながり、具体的なアウトプッ
トとして、デザインやロゴの制作ができた。ロゴデザインについては、地元仙台のプロのデザイナー
を起用している。また、製作者一人一人が「WATALIS」や「FUGURO」に込められた思いや願い、感謝の
気持ち等を改めて理解・共有したことで、ブランドづくりにおいて何を大切にすべきかが明確になり、
ストーリー性の高いブランドづくりにつながった。
●女性製作者メンバーの主体性を重視しつつ、仕事への責任感を醸成する支援
「FUGURO」製作活動への参加、継続の意思決定はメンバー本人の意思に任せている。また、製作に
あたっては、作業を始めたばかりのメンバーが技術的にうまく製作できない場合には、どのようにす
れば上手くできるかを自ら考えてもらえるように促し、克服してもらうようにしている。そして、質
の高い商品を作り続けることの大切さを伝えるために、検品をクリアしない場合は何度もやり直して
もらうことにしている。
このように、本人の意思を尊重しつつ、仕事の厳しさを体験してもらいながら仕事への責任感を芽
生えさせる支援を行っている。
●女性製作者メンバーのモチベーションの維持・向上
「製作者メンバーのモチベーションを保つには、仲間がいて、会って活動することが重要」だと語
る引地氏。職場では、日々の交流を楽しみながらも、メンバー間の呼び方、話し方などには留意し、
職場に馴れ合いは持ち込まないことをルールとしている。
また、納期への対応等に対して頑張ってくれたメンバーには賞与を出したり、定例会でメンバーへ
報告することも行っている。そして、これまでは引地氏・橋元氏の 2 人でイベント等での販売を行っ
てきたが、メンバーにも積極的に売場に出てもらい、販売を体験してもらうようにした。商品が実際
に売れていること、お客さんの反応を肌で感じることがメンバー自身の成功体験となり、自信につな
がっている。
その他にも、これまで理事が中心となって行ってきた事務的な仕事を内勤のパートタイムのメンバ
ーに振り分け、組織として動いていくことをメンバーに学んでもらう機会をつくっていくことで、メ
ンバーのスキルアップにつなげている。
●製作者の熟練度に応じた作業と工賃の配分により、製作者の自立を促進
「FUGURO」製作の作業工程を技術的な難易度で細分化され、難易度に応じて工賃も設定されている。
初心者は簡単な作業から始めてもらい、技術力の高いメンバーには高度な技術を必要とする作業や
完成品の検品を担ってもらうなど、能力や適性に応じた作業配分によって、品質を維持するするとと
もに、製作者メンバーのレベルアップのプロセスを明確にしている。
いずれは製作者メンバーそれぞれが独立していくことも視野に入れており、製作者の取組姿勢の向
上や自立促進につながっている。
(2)取組の変遷
※表中青字下線部の内容は「(1)中間支援の特徴」で詳述
主な課題
実
施
前
(
~
平
成
24
年
度
)
実
施
中
(
平
成
25
年
度
)
○地元の女性達の働く場づく
り
・東日本大震災によって、女性
の働く場が激減する中、女性
の生き方を見直し、ライフス
タイルに合わせた仕事を求
めるニーズを感じていた。
○魅力を感じて買ってくれる
商品にすることが重要
・被災した地域の商品だからと
いって、同情で買ってもらう
ようなものではなく、きちん
と質の高さを評価してもら
った上で買ってもらえる商
品づくりを重視した。
○コアメンバーへの負担増
・これまで理事を中心に事務作
業等を行っていたが、事業規
模の拡大に伴い負荷が大き
くなっていた。
○女性製作者の自立促進
・将来的な自立も見据えて、女
性製作者には仕事の厳しさ
を経験してもらいながら主
体性を醸成することを考え
ていた。
対応・工夫
効果・成果
○地域に眠る着物を活用して商品化
○WATALIS の本格的な始動
・当時、町の職員として地域の調査を行ってい ・
「FUGURO」が商品化され、製作活動
た引地氏は、震災で全壊した呉服店で使われ
が本格化する中、引地氏は WATALIS
ないままになっている多くの着物地を見つ
の代表として活動に専念すること
け、地域の文化として残る「ふぐろ」を着物
を決め、任意団体 WATALIS を立ち上
でリメイクして、おしゃれな小物「FUGURO」
げた。(平成 25 年 4 月に一般社団法
として売り出すことを考えた。
人化)
・何度も試行を重ねて商品化にこぎ着けた。
○妥協しない試作の積み重ねと厳しい検品
○プロからも高い評価を得る
・
「FUGURO」のデザインの決定には何度も試作 ・高品質を生み出し続ける妥協しない
を積み重ねた上で決定した。
体制が出来上がっていることから、
・
「FUGURO」の作業は細部のデザインから仕上
プロのバイヤーからも高い評価を
げに至るまで細かく決められており、高い製
得て、様々な催事や百貨店等で販売
作技術をもつ製作者の厳しい検品も行って
の機会を得ている。
いる。
○女性製作者の思いや考えを重視した意見交 ○製作者の自覚や責任感の醸成、スト
換の積み上げ
ーリー性の高いブランドづくり
・商品開発やブランド化を検討する研修会で ・そのプロセスが、女性製作者の自覚
は、女性製作者メンバーの考えや意見を大切
や責任感の醸成につながり、具体的
にし、それらを積み上げていくことで、
なアウトプットとして、デザインや
「WATALIS」や「FUGURO」に込められた製作
ロゴの制作ができた。ロゴデザイン
者の思いや感謝の気持ちが共有された。
制作には、地元仙台のプロのデザイ
ナーを起用した。また、ブランドづ
くりにおいて何を大切にすべきか
が明確になり、ストーリー性の高い
ブランドづくりにつながった。
○メンバーの意思を重視する
○責任感の醸成
・製作活動への参加、継続の意思決定はメンバ ・仕事の厳しさを体験してもらうこと
ー本人の意思に任せている。また、製作上な
で、仕事への責任感を芽生えさせる
かなかできない壁にぶつかっても、どのよう
機会としている。
にすれば上手くできるかを自ら考えてもら
えるように促し、克服してもらうようにして
いる。
○仕事の幅を増やし、メンバーの頑張りを適切 ○モチベーションの向上
に評価
・メンバー自身の達成感や成功体験と
・納期への対応等で頑張ってくれたメンバーに
なり、自信にもつながって、取組意
は賞与を出したり、製作だけでなくイベント
識が高まった。
販売等も体験してもらい、商品が売れること
やお客さんの喜ぶ姿を肌で感じることにし
た。
○参加者の主体性を引き出す話し合いの工夫
○自立も視野に入れた成長に寄与
・
「FUGURO」製作の作業工程を技術的な難易度 ・いずれは製作者メンバーそれぞれが
で細分化され、難易度に応じて工賃も設定さ
独立していくことも視野に入れて
れている。
おり、製作者の取組姿勢の向上や自
・初心者は簡単な作業から始めてもらい、技術
立促進につながっている。
力の高いメンバーには高度な技術を必要と
する作業や完成品の検品を担ってもらうな
ど、能力や適性に応じた作業配分をし、製作
者メンバーのレベルアップのプロセスを明
確にしている。
(3)実施体制の変遷
生活協同組合連合会 グリーンコープ連合(生協)、株式会社マルイグループ、株式会社センスオブ
ライフとは、モデル事業実施前よりつながりがあり、「FUGURO」の質の高さが評価されたことから、生
協の宅配サービスのカタログに掲載したり、イベントや百貨店での販売の機会を提供されたりして、
「FUGURO」の知名度が少しずつ高まっていった。
平成 25 年度では、コアメンバーである理事3名でほとんどの業務をこなしていたことから、他の女
性製作者にある程度仕事を任せながら、人材育成を図っていくこと、そして、生協、株式会社マルイ
グループ、株式会社センスオブライフの協力を得ながら、WATALIS のブランドをメンバー間で再確認・
共有し、ブランド力を高めていくことに取り組んだ。ブランド力を高める新たな商品として、
「FUGURO」
のオーダーメイドシステムを考案。今後、実現に向けてさらに検討を進めることになっている。
段階
実施体制
生活協同組合連合会
実
施
前
(
~
平
成
24
年
度
)
グリーンコープ連合会
株式会社
丸井グループ
販路・売場の提供、
デザイン等に関する助
言 等
株式会社
センスオブライフ
WATALIS
製作指導
納品
女性の製作者
生活協同組合連合会
実
施
中
(
平
成
25
年
度
)
グリーンコープ連合会
株式会社
丸井グループ
株式会社
センスオブライフ
WATALISのブランドづくり
販路・売場の提供、
マーケティング、地域ブ
ランド、商品開発、ネッ
トワーク構築等に関す
る研修会講師、助言
WATALIS
製作指導
人財育成
納品、運営へ
の参画
女性の製作者
(4)成果と課題
(事業の成果)
◎新たな商品としてのオーダーメイドシステムの提案
自立的な中間支援活動を継続していくために必要な収益の確保に向けて、顧客から着物を預
かり、顧客の要望を聞きながらオーダーメイドで「FUGURO」を製作して顧客に返す高付加価値
サービスの事業化が決定し、新しい団体のロゴマークや販促ルーツ(チラシ)も制作し、具体
的な検討を進めている。
◎女性製作者の育成と自立を支援する体制の構築
これまでコアメンバーである理事(3名)で対応してきた事務作業やイベントでの販売、そ
の他の対外的な調整・対応といった仕事を、女性製作者メンバーにも積極的に振り分けていく
ことで、コアメンバーの負担軽減になるとともに、メンバーの自立に向けた成長にもつながっ
た。
(事業の課題)
◎自立的な活動のための収益の確保
平成 24 年度(平成 25 年1月末時点)は約 700 万円の売り上げであったのに対し、平成 25 年度(平
成 26 年1月末時点)は約 1,250 万円となり、550 万円の売上増となった。
しかし、自立的な事業継続のためには、年間 3,000 万円ほどの売上が必要であり、今後も収益向
上に向けた取組が大きな課題となっている。
(5)今後の展望
◎オーダーメイドシステムによる商品の高付加価値化
2 回目のセミナーで、依頼者の思い、それに対する作り手の思いが呼応するようにしたいと
いう意見が出た。メンバーに自信がついたから出た意見だと考えられる。そのようなやる気が
あるメンバーへ伸びしろの部分を広げていきたいと考えている。それは、技術レベルの高い人
に平等に工賃を支払うことができるシステムでもあると捉えている。
実施にあたっては、場所、連絡方法の確保、やりとりのフォーマットの検討など、課題は多
い。
預かった反物から複数の商品を作成したり、残った反物を一定期間保管するなど、WATALIS
ブランドとして提供していくサービスを顧客が望む立場となって考えることが必要である。
オーダーメイドを受けるにあたっては、作り手により商品の出来上がりに違いが生じたり、
複数の商品のレベル・質をどのようにコントロールしていくか、という点も課題である。
◎女性製作者の独立
WATALIS での経験を積んで、いずれはメンバーの中から独立する者が出てくることを願って、
引き続き支援を行っていく。
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