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ウ 各国の食料事情(PDF:649KB)
第1部 ウ 各国の食料事情 (先進国の多くでは豊富な食料供給) 世界各国において、1 人 1 日当たりの供給熱量は上昇傾向にあります(図 1 − 14)。し かし、食料購買力に違いがあるため、1 人 1 日当たりの供給熱量は、米国をはじめ先進国 で高い一方、バングラデシュ、エチオピア、コンゴ等の後発開発途上国 1 では著しく低い など、各国で大きな差があります。 世界保健機関(WHO)によれば、現在、世界全体で 20 歳以上の 15 億人が太りすぎ 2、 5 億人が肥満とされ、平成 27(2015)年までに 23 億人が太りすぎ、7 億人が肥満になる と予測されています 3。 また、5 歳以下の子どもでも、 現在、 世界全体で 4,300 万人程度 が太りすぎと推計されています。これらの者は、近年の食生活の変化により、一部途上国 や元々肥満人口が比較的少なかった欧州等でも増加傾向となっています。 図1−14 1 人 1 日当たりの供給熱量の推移 OECD加盟国のうち、米国 3,748 3,600 3,434 3,200 OECD加盟国 2,800 2,751 BRICs 2,524 2,400 開発途上国 2,162 2,000 開発途上国のうち、後発開発途上国 0 昭和 36 年 (1961) 45 (1970) 55 (1980) 平成 2 (1990) 12 (2000) 19 (2007) 資料:FAO「FAOSTAT」を基に農林水産省で作成 注:1)OECD 加盟国は平成 23(2011)年 3 月現在の 34 か国 2)開発途上国は、OECD 開発援助委員会(DAC)リスト(平成 21(2009)年 8 月承認)に基づく(OECD、 BRICs に含まれる国は除く) 。 3)BRICs のうち、ロシアについては平成 3(1991)年まではソ連の値 1 国連が定める国の分類で、開発途上国のなかでも特に開発が遅れている国のことです。LDC(LeastDeveloped Countries)と略されています。 2 WHO の基準では、BMI が 30 以上を肥満(obesity) 、25 以上 30 未満を太りすぎ(overweight)と判定します。 BMI については[用語の解説]を参照 3 WHO による平成 20(2008)年の予測 81 第1章 kcal/日 4,000 第1節 食料自給率の向上と食料安全保障の確立に向けた取組 (開発途上国を中心に栄養不足人口は依然高水準) 他方、世界全体の栄養不足人口 1 は、平成 22(2010)年、10 億人を下回ったものの依 然として高水準となっています(図 1 − 15)。このままの状態が継続すれば、平成 12(2000) 年の国連ミレニアム・サミットでまとめられた「平成 27(2015)年までに飢餓に苦しむ 人口の割合を平成 2(1990)年比で半減させる」という目標の達成は厳しい状況にあります。 栄養不足人口を国・地域別(平成 17(2005) 〜平成 19(2007) 年平均) にみると、 インドで 2 億 4 千万人と最も多く、 次いで中国で我が国人口と同程度の 1 億 3 千万人と なっており、 両国を含めたアジア・太平洋地域で 5 億 8 千万人と世界全体の 6 割を占め ています。また、サブサハラ・アフリカ地域 2 では 2 億 4 千万人となっていますが、この 地域では総人口に占める栄養不足人口の割合は 3 割強を占める状況にあります。 なお、APEC3 域内の国・地域でみると、平成 2(1990)年から平成 18(2006)年まで の間に栄養不足人口を 24%減少させたものの、いまだに世界全体の栄養不足人口の 4 分 の 1 を占めており、さらなる対策が必要とされています。 図1−15 世界の栄養不足人口の推移(地域別) (世界の栄養不足人口の推移 (地域別)) 億人 先進国 12 10.2 9.3 10 8.4 8 7.9 1.6 1.9 0.5 6 0.5 8.5 2.7 2.0 0.5 5.0 2 0.5 0.5 4 5.9 2.4 6.4 5.5 サブサハラ・アフリカ ラテンアメリカ・カリブ 中近東・北アフリカ 5.8 4.2 アジア・太平洋 0 平成2∼4年 7∼9 17∼19 21 (1990∼92) (1995∼97) (2005∼07) (2009) 22 (2010) 27 (2015) (目標) (栄養不足人口上位10か国(平成17∼19(2005∼07)年)) (単位:億人) 順位 国名 栄養不足人口 順位 国名 栄養不足人口 1 インド 2.377 6 エチオピア 0.316 2 中国 1.304 7 インドネシア 0.299 3 パキスタン 0.434 8 タンザニア 0.137 4 コンゴ 0.419 9 フィリピン 0.132 5 バングラデシュ 0.417 10 ブラジル 0.121 資料:FAO「Food Insecurity in the World 2010」 、FAO プレスリリースを基に農林水産省で作成 1 FAO において「食物から摂取する熱量が、軽労働に従事した際の一定の体格の維持を前提として、国や民族ごとに 算出される基準値よりも低い状態にある人々の数」と定義されています。 2 サブサハラ・アフリカ地域は、アフリカ大陸のうちサハラ砂漠以南の地域・国の総称 3 APEC は、Asia-PacificEconomicCooperation(アジア太平洋経済協力)の略 82