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1 0JBIC 円借款事業 中間レビュー報告書 評価者:宮崎慶司

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1 0JBIC 円借款事業 中間レビュー報告書 評価者:宮崎慶司
0JBIC 円借款事業 中間レビュー報告書
評価者:宮崎慶司(OPMAC)
中間レビュー現地調査時期:2006 年 5 月
案件名: モロッコ王国「アガディール上水道整備事業」
[借款概要]
承諾額/契約同意額/実行額 : 6,412 百万円/6,622 百万円/4,688 百万円(2006 年 5 月現在)
借款契約調印
: 2001 年 2 月締結(L/A 締結後 5 年目)
貸付実行期限
: 2008 年 6 月
実施機関
: 国営水道公社(ONEP)
[事業目的]
モロッコ南西部のアガディールにおいて、給水施設を整備することにより、住民に対する安全な水供給を図り、もって住民の民生向上に寄与する。
コンサルタント:日本上下水道設計・TEAM MAROC S.A.(日・モロッコ)
コントラクター:OMCE・SOGEA MAROC S.A.・SOGETRAMA(モロッコ・モロッコ・モロッコ)、SEHI・SOGEA MAROC S.A.・SOGEA SATOM S.A.(モロッコ・モロッコ・モロッコ)等
[結果概要]
項目
[妥当性]
(1) 国家政策レベル
事前評価結果
(1) 国家開発 5 ヵ年計画(2000~2004 年)では、増加する水需要に対応するた
め、水セクター開発が主要政策のひとつとされ、都市部及び地方における給水
率の向上が図られていた。
中間レビュー時に想定される事後評価内容
(1) モロッコでは国家開発 5 ヶ年計画(2000~2004 年)の終了後、5 年間の長期開発計画の新
たな策定は行わず、当面、各年の財政法にて暫定的な開発方針を示すこととなっている。
2005 年財政法では国民の基本的なサービスへのアクセス向上、地方部の開発による地域間
格差の是正などが挙げられている。また 2005 年 5 月、国王モハメッド 6 世により発表された「人
間開発国家イニシアティブ(INDH)」でも、水を含む基礎的社会サービスへのアクセスの改善
が謳われている。
(2) 施策レベル
(2) 上水道セクター整備計画マスタープラン(1999 年モロッコ政府承認)、及び
2000 年に国営水道公社(ONEP)がモロッコ政府との間で締結した投資プログ
ラム(2000~2004 年)の都市上水道整備計画では、アガディールにおける給水
施設の整備に最も高い優先順位を置いていた。
(2) 国営水道公社(ONEP)の現行投資プログラム(2006~2009 年)でも、引き続き既存の上水
道インフラの整備による飲料水へのアクセスの向上が挙げられている。
(3) 計画レベル
(3) アガディールはモロッコ南西部の中心都市であり、同国を代表する観光都
市及び漁業基地として重要な位置づけであった。近年、アガディールの水需
要は急速に伸びており、2004 年には水需要が既存の上水供給能力と一致す
ることが予想され、同市の水供給能力の拡張が喫緊の課題となっていた。本事
業はアガディール都市部を中心とする給水地域(大アガディール圏内 2 県 8 コ
ミューン)を対象に、新規給水施設の整備により、将来の水需要の増加への対
応を図るものであり、優先度は高かった。
(3) アガディール市の都市開発マスタープランでは、アガディール近郊に大規模開発を計画
しており、同市の水需要は将来的に増加することが見込まれている。アガディールへの給水サ
ービスを行っている大アガディール圏マルチサービス営団(RAMSA)では、本事業完成後に
おいても 2015 年頃には水需要が給水能力を上回ると想定しており、モロッコ政府では、新たな
水源確保のため 2002 年に完成済みのムーレイ・アブドラ・ダムに加えて、新規ダム開発(タム
リ・ダムの建設事業)を行い、700l/s の給水能力の拡張を計画している。従って、本事業の必要
性は引き続き認められる。
1
[有効性]
(1) 運用効果指標
定量的効果
実績値(2001~2006 年)
(1) 運用効果指標
定量的効果
目標値(1999 年時)
2000
2005
2010
2015
2020
2001
2002
2003
2004
2005
2006
事業区域内人口(千人)
643
758
894
1,021
1,165
事業区域内人口(千人)
637
658
679
700
721
給水人口(千人)
444
546
688
837
1,025
給水人口(千人)
456
512
556
600
644
669
最大給水量(m3/日)
87,610
106,099
132,106
157,334
185,760
最大給水量(m3/日)
86,950
88,682
94,853
100,213
106,627
104,480
平均給水量(m3/日)
73,008
88,387
110,074
131,069
154,829
平均給水量(m3/日)
72,458
73,901
79,044
83,511
88,656
87,067
平均水需要(m3/日)
72,927
88,281
109,914
130,915
154,635
平均水需要(m3/日)
74,448
75,815
81,023
85,018
91,492
89,759
有収率(%)
78
78
78
78
78
有収率(%)
80
79
80
81
79
80
水道普及率(%)
69
72
77
82
88
水道普及率(%)
72
78
82
86
89
90
164.6
162.0
159.9
156.6
151.0
159
144
142
139
138
130
1 人あたり平均給水量
(l/人/日)
注)審査時では、2002 年のムーレイ・アブドラ・ダムの完成に伴う新浄水場 I 期
(2004 年=本事業)による 700l/s の供給能力の追加、2020 年のタムリダムの完成
に伴う新浄水場 II 期(2018 年)による 700l/s の供給能力の追加を前提条件とし
ていた。
1 人あたり平均給水量
(l/人/日)
743
目標値(2007~2025 年)
2007
2008
2009
2010
2015
2020
2025
事業区域内人口(千人)
765
788
812
836
946
1,071
1,182
給水人口
(千人)
696
725
745
778
899
1,028
1,158
最大給水量(m3/日)
113,153
116,939
120,859
124,185
140,948
162,237
185,986
平均給水量(m3/日)
94,294
97,449
100,725
103,488
117,456
135,197
154,988
平均水需要(m3/日)
97,211
100,463
103,850
106,688
121,089
139,379
159,782
有収率(%)
80
80
80
80
80
80
80
水道普及率(%)
91
92
93
93
95
96
98
135
134
135
133
131
132
134
1 人あたり平均給水量
(l/人/日)
*事業完了前のため事業そのものの効果は未発現であるが、2005 年時点での比較をすると、
事業区域内人口は、当初計画値 75.8 万人(2000~2005 年で平均 3.4%の成長率)に対して実
績値は 72.1 万人(2001~2005 年で 3.2%の成長率)と約 3.7 万人下回ったものの、給水人口が
当初計画値 54.6 万人(2000~2005 年で平均 4.2%の成長率)に対して実績値は 64.4 万人
(2001~2005 年で平均 9.1%の成長率)と 9.8 万人上回ったため、水道普及率は当初計画値
72%に対して実績値 89%と 17%上回る結果となった。
また、平均給水量は、当初計画値 88,387m3/日に対して実績値は 88,656m3/日、平均水需要
は当初計画値 88,281m3/日に対して実績値は 91,492m3/日とほぼ計画通りとなっている。一
方、計画値と実績値の平均給水量がほぼ同じであるのに対して、実績値の給水人口及び水
道普及率が計画値を上回ったことから、1 人あたり平均給水量は、当初計画値 162.0l/日に対し
て実績値は 138 l/日と下回る結果となった。
定性的効果
水関連疾病の減少
2
(2) 有効性及びインパクトに影響を与える要素の分析
① 水源となるエット・ハウム・ダムの建設が終了していること(2002 年 3 月予定)。
本事業の水源となるムーレイ・アブドラ・ダム(Moulay Abdellah Dam:旧名エット・ハウム・ダ
ム)は当初予定通り 2002 年 3 月に完成した。同ダムの最大貯水能力は 108.9 百万 m3 であ
り、2006 年 6 月現在の貯水率は 85%であり良好である。
② 導水管施設ルートにおいて適切な環境配慮がなされていること
導水管敷設ルート沿いの希少樹木(アカテツ)の自生地、及び野鳥に対する建設工事期間
中の影響が懸念されていた。2006 年 6 月に行われた環境専門家による環境影響調査で
は、先の希少生物に対する影響を極力少なくするような配慮(送水管敷設レイアウトの変
更、最小限の不可避部分のみの植生の一部伐採)がなされているとのことである。現在まで
のところ、全体的には大きなマイナスの影響は認められない。
③ 用地取得について
私有地については 57 名の地権者と用地取得の契約・補償を既に終了。タガゾーにあるツー
リスト地区(開発業者である Sonaba 所有地)については、ONEP との契約により用地取得は
発生しなかった。国有地については ONEP から国に賃貸料を支払うこととなっている。
④ 取水施設より下流地域へのインパクトについて
取水施設の下流のタムリ川流域の河川敷ではバナナ、メイズなどを栽培する小規模農園が
あり、また下流域の村落では地下水を水道水源として利用している。本事業完成後は、上流
のムーレイ・アブドラ・ダムよりタムリ川に放水された水を取水施設で取水し、アガディール
に送水されることになっている。本事業計画時には、事業完成後における下流域の村
落給水への特段の影響は考えにくいとする一方、計画時に実施したムーレイ・アブドラ・
ダムの環境影響評価では、下流域への影響については、詳細な影響調査を行うよう勧告し
ていた。このため、現在 ONEP では、農業省、水源管理を担当するスース・マサ流域管理公
社(Agence de Bassin Hydraulique de Souss Massa)等の関係機関とともに、事業完成後の
下流域の農業や住民に対する適切な水の確保と分配について対策を検討中である。ま
た ONEP では、2006 年 5~6 月にかけて本事業の環境社会影響に係わる調査を実施し、
その結果を基に、環境保護対策のためのチェックリストを作成し、事業完成までの期
間、定期的にモニタリングを実施する計画である。さらに 2006 年 12 月には、2 回目
の環境社会影響調査を行い、上記調査の実施結果の確認、及び事業完成後の環境モニ
タリング計画の策定などを行う予定である。
(3)持続性に影響を与える事項
実施機関の運営・維持管理能力について
本事業の運営・維持管理を担当する国営水道公社(ONEP)は、モロッコ国内の浄水・送水
施設、及び中小都市、地方村落への上水供給を行う独立採算性に基づく公社であり、国内
の飲料水の約 8 割を生産している。本事業と同様の上水施設の運営・維持管理について
は、同公社は既に経験を有しており、また財務状況も安定していることから、事業完成後の
運営・維持管理については、特段の問題は認められない。
3
参考情報
[効率性]
(1) アウトプット
(1) アウトプット
(a) 取水/導水施設の建設
- 取水施設
- 第 1 ポンプ場(取水ポンプ場)
- 沈砂池(サージタンク)
- 導水管(取水施設~サージタンク)
- 導水管(サージタンク~浄水場)
(b) 浄水場の建設
(c) 送水施設の整備
- 第 2 ポンプ場
- 送水管(浄水場~第 2 ポンプ場)
- 送水管(第 2 ポンプ場~貯水池)
(d) 送電線
(e) 取り付け道路
(d) コンサルティング・サービス
(2) 期間
1 カ所
施設能力:8,94 l/s(4 台)
1,000 m3(500m3 x 2)
3,651 m
5,508 m
施設能力:700 l/s
凝集沈澱急速ろ過方式
施設能力:700 l/s(4 台)
40,800 m
17,050 m
8.7 km
8.7 km
40 M/M
(1) アウトプット
(a) 取水/導水施設の建設
- 取水施設
- 第 1 ポンプ場(取水ポンプ場)
- 沈砂池(サージタンク)
- 導水管(取水施設~サージタンク)
- 導水管(サージタンク~浄水場)
(b) 浄水場の建設
同左
同左
同左
同左
同左
同左
(c) 送水施設の整備
- 第 2 ポンプ場
- 送水管(浄水場~第 2 ポンプ場)
- 送水管(第 2 ポンプ場~RAMSA 貯水池)
(d) 送電線
(e) 取り付け道路
(d) コンサルティング・サービス
同左
同左
同左
4.8 km
施設省予算により整備されることとなり対象外
50 M/M
(2) 2001 年 2 月~2004 年 4 月(40 ヶ月)
(2) 2001 年 2 月~2007 年 3 月(予定)(74 ヶ月)
注)期間は L/A 調印より事業完成まで
(遅延の理由)
・ 契約ロット構成の見直し、送水管(第 2 ポンプ場~RAMSA 貯水池)部分の再入札、入札
評価手続きの遅れ、等により工事の着工が当初予定より 1 年以上遅れて開始されたた
め。
・ また工事着工後も、土壌の質の問題に関係する主に取水施設や第 1 ポンプ場など
の設計の見直し、送水管敷設レイアウトの見直しなどにより、進捗が遅れた。
[教訓及び提言]
提言
取水施設より下流域の農業活動、村落給水などへの影響の可能性については、現在、ONEP では関係機関とともに、下流域の農業や住民に対する適切な水の確保と分
配について対策を検討中である。JBIC としても今後、適切な対策が取られるように確認を行う必要がある。
[事後評価時用設定指標]
N/A
[運用指標]
*RAMSA:大アガディール圏マルチサービス営団
1. アガディール給水圏(=RAMSA 給水地域)
・
給水人口(人)
・
一日最大給水量(m3/日)
・
一日平均給水量(m3/日)
・
一日平均需要量(m3/日)
・
有収率(%)又は無収率(%)
2. 浄水場
・
一日最大給水量(m3/日)
・
一日平均給水量(m3/日)
4
・
施設利用率(%)
3. 導水管・送水管(セクション毎)
・
平均送水量(L/S)
・
漏水率(%)
・
水質
[効果指標]
アガディール給水圏(=RAMSA 給水地域)
・
水道普及率(%)(人口ベース)
・
1人当たり給水量(l/人/日)
・
水関連疾病疾患率を始めとする保健指標
5
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