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農山漁村再生可能エネルギー 導入可能性等調査

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農山漁村再生可能エネルギー 導入可能性等調査
平成 23 年度 農林水産省補助事業(農山漁村 6 次産業化対策事業)
農山漁村再生可能エネルギー
導入可能性等調査
― 概要版 ―
平成25年3月
実施地区
実施主体
北海道
株式会社ドーコン
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
はじめに
北海道は日射量や風況に恵まれた地域で、農山漁村には、森林資源や水資源、
土地資源などが豊富に存在しています。
例えば、森林蓄積量は全国の 16%、周囲を海で囲まれた地理的条件から漁獲
高は全国一で漁港数も 282 箇所あります。耕作放棄地面積は福島県、茨城県、
千葉県に次いで全国 4 位となっています。
このように、農山漁村で創出される再生可能エネルギーの賦存量は大きく、
これらを活用して所得と雇用を拡大し、農山漁村の活性化につなげていくこと
が期待されるところです。
本調査は、現時点で入手可能な公表資料等のデータを用いて、全国一律の調
査手法によって、農山漁村における資源を活用した再生可能エネルギーの導入
可能性を整理したものです。
そのため、個別の地域・地点における再生可能エネルギー導入における設備
設置の可否を示すものではありません。具体的な地域・地点における発電事業
の立地可能性の検討に際しては、資源の利用可否等に係る現況調査及び系統を
有する事業者との交渉において、系統が近接していることや系統容量を確認す
ることが必要となります。また、資源の利用可否については、土地利用など地
権者との交渉や行政機関等への確認とともに、行政による土地利用計画等との
整合性の確認も必要です。
本調査結果をご活用の際は、これらの点につきまして、あらかじめご留意く
ださい。
-1-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
1
再生可能エネルギーとは
再生可能エネルギーとは、一度利用しても比較的短期間に再生
が可能であり、エネルギー源として永続的に利用することができ
るものです。資源が枯渇せず繰り返し使え、地球温暖化の原因と
なる二酸化炭素をほとんど排出しない優れたエネルギーです。
供給サイドのエネルギー
革新的なエネルギー高度利用技術
石油
再生可能エネルギーの普及、エネル
石油代替エネルギー
石炭
天然ガス
ギー効率の飛躍的向上、エネルギー
源の多様化に資する新規技術であ
原子力
って、その普及を図ることが必要な
再生可能エネルギー
大規模水力発電
もの
大規模地熱発電
海洋エネルギー
天然ガスコージェネレーション
発電
熱利用
太陽光発電
太陽熱利用
風力発電
バイオマス熱利用
バイオマス発電
温度差熱利用
中小水力発電
雪氷熱利用
燃料電池
クリーンエネルギー自動車
など
地熱発電
バイオマス燃料製造
※赤色:本調査の対象とするエネルギー
この調査は、北海道の農山漁村の資源を活用した再生可能エネルギーを供給する取り組みを推
進するために、その導入可能性を示すことを目的としています。
農山漁村での再生可能エネルギー導入や、それによる地域の振興に向けて重要になると考えら
れる資源として、林地・民有林の木材を活用した木質バイオマス発電、農業水利施設を活用した
小水力発電および太陽光発電、耕作放棄地における太陽光発電および風力発電、漁港・漁場施設
における太陽光発電を対象としています。
-2-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
2
北海道の可能性
北海道は再生可能エネルギー資源が豊富に存在します。
林地・民有林の木材を活用した木質バイオマス発電、農業水
利施設を活用した小水力発電および太陽光発電、耕作放棄地に
おける太陽光発電および風力発電、漁港・漁場施設における太
陽光発電の導入可能ポテンシャルの試算結果を示します。
Ⅰ
「林地・民有林」
発電容量
利用可能資源量
年間発電量
700 kW
70 箇所
687 MWh/年
発電容量
利用可能資源量
年間発電量
4,110,840 kW
8,222 ha
4,255,138 MWh/年
発電容量
利用可能資源量
年間発電量
8,221,680 kW
8,222 ha
18,941,764 MWh/年
発電容量
利用可能資源量
年間発電量
49,224 kW
590,686 m2
49,115 MWh/年
太陽光
32,210 kW
70 箇所
93,100 MWh/年
力
Ⅳ
「漁港・漁場」
発電容量
利用可能資源量
年間発電量
太陽光 風
Ⅲ
「耕作放棄地」
小水力 太陽光
Ⅱ
「農業水利施設」
木質バイオマス発電所有望立地
「北見市」「足寄町」「芦別市」
-3-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
Ⅰ林地・民有林
(1)木質バイオマス発電
木質バイオマス発電所有望立地
「北見市」「足寄町」「芦別市」
■
調査の方法
この調査では、木質バイオマス発電所の立地が有望な市町村を特定することを目的として、
7 つの評価軸を用いて、対象市町村の立地有望性を評価しました。
バイオマス発電では、①燃料の安定調達 ②設備投資の回収 が最大の課題となります。
①に関しては、燃料の調達性にかかる QCD(Quality, Cost, Delivery) のうち Quality(品
質)は優先度の低い課題とみなし、Cost(調達費)、Delivery(適時適量調達)を評価する枠
組みとしています。
②に関しては、系統連系にかかる初期費用のみを評価する枠組みとしています。
以上の考え方に基づいて、木材の調達から利用するまでの一連の流れにおいて評価軸を展
開したものが以下に示す「木質バイオマス発電所立地評価のフレームワーク」です。
ただし、評価結果の用途は、事業者にとっての外部環境分析に限定されるため、事業者の
内部環境分析(ヒト・モノ・カネの経営資源を有効活用できるか)の視点は含まれていない
点に留意が必要です。
立木
(国内森林)
【評価軸 D-4】
森林蓄積
①
林地残材
立木
(海外森林)
②
切捨間伐材
国産丸太
⑤
⑥
建材
国産材製材廃材
【評価軸 C-2】
林地からの
集材コスト
④
タケ
外材丸太
⑧
新・増築廃材
③
果樹剪定枝
【評価軸 C-1】
燃料製造工場から
の集材コスト
外材製材廃材
建築物
⑦
建築廃材
⑨
公園剪定枝
チップ・
ペレット
【A】
製紙・パルプ
【B】
パーティクルボード・
【C】
燃料
電力
繊維板
【評価軸 C-3】
系統連系コスト
【評価軸 D-1】
有効可能利用量
【評価軸 D-2】
燃料争奪の有無
図
【評価軸 D-3】
建設需要地
との距離
木質バイオマス発電所立地評価のフレームワーク
-4-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
北見市
芦別市
足寄町
木質バイオマス発電
有望立地
道内各市町村について、得られたデータから木質バイオマス発電所の有望立地と考えられ
る市町村を特定した結果を示します。
有望立地としては、7 つの項目による評価結果で、ポジティブな要素が多く、かつ出力ポ
テンシャルが高いことを条件とし、さらにネガティブな要素を考慮しました。
本調査において、ポジティブな要素が 4 項目ある市町村は「旭川市」、
「北見市」、
「芦別市」、
「美瑛町」、
「足寄町」、
「浦幌町」となり、出力ポテンシャルの順では「北見市」
、「足寄町」、
「芦別市」、
「旭川市」、
「美瑛町」、
「浦幌町」となりました。
このうち、旭川市内には道内最大級の木質バイオマスボイラがあります。このため、燃料
調達の競合の可能性があり、木質バイオマス発電所の有望立地とは言えないと考えられます。
また、美瑛町も旭川市に隣接しており、上川地域で考えるとチップ競合の可能性がある施
設が存在することから、同様に有望立地とは言えないと考えられます。
「浦幌町」については他の市町村と比べると出力ポテンシャルが低く、この中では評価が
低いと考えられます。
以上より、本調査の結果では「北見市」、
「足寄町」
、
「芦別市」の 3 市町を有望立地と考え、
そのうち、出力ポテンシャルが最も高い「北見市」を第 1 候補として考えます。
-5-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
モデルケース
調査結果をもとに、木質バイオマス発電のモデルケースを設定し、経済性の検討を行いま
した。なお、検討に当たっては、
「バイオマスエネルギー導入ガイドブック(第 3 版)」
(独立
行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)を参照しています。
木質バイオマス発電の導入事例としては、製材工場において自社工場から発生する木質バ
イオマスを燃料として発電及び熱利用する場合が見られます。
例:北海道津別町 津別単板協同組合(発電出力 4700kW)
岩手県住田町 三陸木材高次加工協同組合(発電出力 350kW)
このような導入事例を参考に、自社で発生する製材廃材を燃料とする木質バイオマス発電
を取り上げます。この場合の発電規模は、隣接地込みの製材廃材のポテンシャルを参考とし
て 1000kW に設定しました。
発電方式
直接燃焼発電
対象
自社で発生する木くず(製材廃材等)
規模
発電定格出力:1000kW
運転条件
内容
結果
年間稼動日数:329 日(稼働率 90%) 稼動時間:24 時間
・原料である木質バイオマスを直接燃焼させることで蒸気を発生させ、蒸気タ
ービンにより発電する。
・実用化事例の多い直接燃焼発電方式を想定する。
・高圧配電線との連系可能な(2000kW 未満)範囲内とする。
・建設費 11.8 億円(補助率 50%)
・収入 3.25 億円/年 ・支出 2.28 億円/年
・ペイバック年数 7 年
単位:百万円
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
事業年度
a.建設費
b.建設費低減額
c.実質建設費
a.収入
①売電収入
②熱販売収入
③肥料等販売収入
④処理収入
b.支出
①ユーティリティ費
②メンテナンス費
③人件費
④減価償却費
⑤原料調達費
⑥灰処理費
⑦支払い金利
⑧租税公課
⑨一般管理費
c.税引前利益
d.法人税等
e.税引後利益
f.減価償却費
g.年間キャッシュフロー
a.キャッシュフローの累
計額
b.回収率(%)
1
1,180.0
590.0
590.0
325.0
99.0
128.0
0.0
98.0
228.4
67.9
23.6
70.0
35.4
0.0
4.9
11.8
7.8
7.0
96.6
39.5
57.1
35.4
92.5
2
3
4
5
6
7
325.0
99.0
128.0
0.0
98.0
226.7
67.9
23.6
70.0
35.4
0.0
4.9
10.6
7.3
7.0
98.3
40.2
58.1
35.4
93.5
325.0
99.0
128.0
0.0
98.0
225.0
67.9
23.6
70.0
35.4
0.0
4.9
9.4
6.8
7.0
100.0
40.9
59.1
35.4
94.5
325.0
99.0
128.0
0.0
98.0
223.4
67.9
23.6
70.0
35.4
0.0
4.9
8.3
6.3
7.0
101.6
41.5
60.1
35.4
95.5
325.0
99.0
128.0
0.0
98.0
221.7
67.9
23.6
70.0
35.4
0.0
4.9
7.1
5.8
7.0
103.3
42.2
61.1
35.4
96.5
325.0
99.0
128.0
0.0
98.0
220.0
67.9
23.6
70.0
35.4
0.0
4.9
5.9
5.3
7.0
105.0
42.9
62.1
35.4
97.5
325.0
99.0
128.0
0.0
98.0
218.3
67.9
23.6
70.0
35.4
0.0
4.9
4.7
4.8
7.0
106.7
43.6
63.1
35.4
98.5
92.5
186.0
280.5
376.0
472.5
570.0
668.5
16%
32%
48%
64%
80%
97%
113%
-6-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
Ⅱ農業水利施設
(1)中小水力発電
発電容量
32,210 kW
利用可能資源量
■
70 箇所
年間発電量
93,100 MWh/年
年間 CO2 削減量
45,150 t/年
調査の方法
この調査では、試算対象の考え方、有効落差や発電容量等の算出方法は、原則、「平成 20
年度未利用落差発電包蔵水力調査報告書(財団法人 新エネルギー財団、以降、「平成 20 年度
包蔵水力調査」という)」に準じるものとし、本調査での導入可能地点リストは、最新の既往
文献、公表資料、関係機関への聞き取りによって、平成 20 年度包蔵水力調査で得られた対
象地点リストを更新する形で作成することとしています。
リストを更新する上での各種条件を以下に整理します。
項目
定義
内容
農業用水利用発電:農業用水専用ダムで、農業用水を利用する発電方式
農業用水路利用発電:農業用施設のうち、落差工、急流工及びパイプライン等の水
路系の遊休落差(余剰水圧)を利用する発電方式(年間通水期間 185 日以下、有
効落差 1.5m 未満のものは除外)
抽出条件
ダム年鑑に記載のある農業用ダム及び農業関連ダムで、ダムの目的に発電が含まれ
ておらず、かつかんがい量が記載されているダム 建設中のダムは除外
参照文献
「平成 20 年度包蔵水力調査」、ダム年鑑 2010
(「平成 20 年度包蔵水力調査」においてはダム年鑑 1999 及び 2008)
なお、試算した発電容量に農業用水路は含まれていません。これは「平成 20 年度包蔵水力
調査」において、「農業用水路利用発電」については、年間通水期間 185 日以上、有効落差
1.5m 以上を対象の条件としているためです。この条件に従うと、北海道の農業用水路施設は、
かんがい期が短い場合が多く、年間通水日数は 185 日に満たないため、未開発包蔵水力は 0
地点という結果となります。
ただし、近年、既存の水路への設置を想定した低落差対応型の水車なども開発・導入がされ
ており、普通河川や水路などへの導入意向を持っている団体もあります。個別検討によって
可能性地点を抽出することが出来れば、今後の水車発電機の開発状況によっては通水日数が
短く、出力が小さいと想定される水路での導入も期待されます。
-7-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
対象をクリックすると、
下記の情報が分かります。
Google earth を
インストール後、
リンク先のファイル
をクリックして表示
してください。
www.docon.jp/
①発電容量推計値
②年間発電量推計値
(設備稼働率別)
頻度
累積%
100%
30
25
80%
20
頻度
60%
40%
10
8
6
3
5
6
3
1
1
1
0
2
2
4
3
0
0
10
0
20
0
30
0
40
0
50
0
60
0
70
0
80
0
90
0
1,0
00
1,1
00
1,2
00
1,3
00
1,4
00
1,5
1,5 00
00
~
発電容量と年間発電量を試算
したところ、
全 70 箇所中 64% が
500kW 以下という結果となりま
した。
試算出力[kW]
図
-8-
発電容量と年間発電量の分布
20%
0%
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
(2)太陽光発電
発電容量
利用可能資源量
■
700 kW
70 箇所
年間発電量
687 MWh/年
年間 CO2 削減量
333 t/年
調査の方法
この調査では、敷地内・管理施設への設置を想定し、1 箇所あたり 10kW の太陽光パネル
を設置(120m2 の面積)することを想定しています。
農業水利施設には管理棟が設置されていることが多いのですが、建築面積としては大きな
ものでは無く、100m2∼200m2 程度と考えられます。
また、施設全体の敷地は比較的広い場合が多いのですが、堤体や道路などがほとんどを占
めており、太陽光発電の設置に適した、まとまった広さの敷地の確保は困難と考えられます。
従って、農業水利施設については各施設 10kW の設置を想定し、年間発電量については、
地域の日射条件に合わせて推計するものとしました。
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の日射量データベースより、方位角 0°
(=真南向き)における最適傾斜角の月平均斜面日射量を用いて、月間発電量を算出しまし
た。年間発電量は、月間発電量の合計として算出しています。
発電容量(kW)=10kW/箇所
パネル必要面積(㎡)=発電容量(kW)× 7.2(㎡/kW)※1
月間発電量(kWh)=パネル必要面積(㎡)×月平均斜面日射量(kWh/㎡・日)
×日数(日)×0.14※2×総合設計係数※3
※1
1kW あたりのパネル必要面積(出典:太陽光発電システム共通基盤技術研究開発
太陽光発電システムの
ライフサイク評価に関する調査研究(H21 年 3 月みずほ情報総研)
)
※2
標準状態変換効率(出典:太陽光発電システム共通基盤技術研究開発
太陽光発電システムのライフサイ
ク評価に関する調査研究(H21 年 3 月みずほ情報総研)
)
※3
総合設計係数=機器損失係数×温度補正係数
機器損失係数=0.76(年変動、経時変化、アレイ負荷、アレイ回路、インバータの負荷による損失補正)
温度補正係数==1-0.5×(モジュール温度-25)/100、モジュール温度=月平均気温+18.4℃
(出典:JIS C8907「太陽光発電システムの発電電力量推計方法」)
-9-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
対象をクリックすると、
下記の情報が分かります。
①発電容量推計値
②年間発電量推計値
Google earth を
インストール後、
リンク先のファイル
をクリックして表示
してください。
www.docon.jp/
設置する太陽光発電の設備容量は一律 10kW としています。
年間発電量を見ると日照条件のよい道東や道央などで比較的良い値となっています。
また、年間の設備利用率は 10∼14%程度の結果となっています。
-10-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
モデルケース
中小水力発電
モデルは発電出力区分別に以下の 3 ケースとしました。ここでは平成 24 年度現在の再生
可能エネルギー固定価格買取制度の活用を前提とし、買取価格の区分ごとにモデルを設定し
ます。
流量及び落差は、出力に相関の高い流量を設定し、それに合致するような落差を設定して
います。なお、ここでは発電期間での流量は一定としています。
ケースⅠ:分布の最も多い 100kW 以下の中から、分布の多い 20kW
ケースⅡ:200kW∼1000kW で最も多い 200kW
ケースⅢ:1000kW 以上の中から分布の多い 1300kW
項目
使用水量
有効落差
出力
効率
買取価格
イニシャルコスト
ランニングコスト
収益(年間稼働率 33%※)
単位
m3/s
m
kW
円/kWh
千円
千円/年
千円/年
ケースⅠ
0.29
9.7
20
0.72
35.7
135,900
1,660
450
ケースⅡ
0.95
28.6
200
0.75
30.45
224,000
2,440
14,220
ケースⅢ
4.97
33.4
1,300
0.8
25.2
770,500
9,710
80,400
※4 カ月を想定
項目
イニシャルコスト
区分
水車・発電機
計上した項目
水車本体、基礎、発電機
電気設備
制御盤、
送電線(長さは想定値)
土木建築
その他
ランニングコスト
未計上の項目
電力会社への接続、検討
依頼の費用、電力会社負
担金、工事期間の主任技
術者費ほか
バイパス管及び弁、分岐
発電用建屋の設置、管分
時の管及び弁の関連土木
岐、バルブ類の設置
工事費、仮設費ほか
解体工事、施設調査設計
一般管理費
費用ほか
人件費、維持費、諸費、
一般管理費
ケースⅠでは、本推計では概算イニシャルコストは約 135,940 千円となりました。発電期
間が 1∼2 ヶ月の場合、維持管理費が売電料を上回り、収益が出ない結果となりました。年
間収益は発電期間が 4 ヶ月の場合で約 450 千円/年、6 ヶ月の場合で約 1,390 千円/年となっ
ています。
ケースⅡでは、本推計では概算イニシャルコストは約 224,000 千円となりました。年間収
益は発電期間が 4 ヶ月の場合で約 14,220 千円/年、6 ヶ月の場合で約 22,500 千円/年となっ
ています。
ケースⅢでは、本推計では概算イニシャルコストは約 770,500 千円となりました。年間収
益は発電期間が 4 ヶ月の場合で約 80,400 千円/年、6 ヶ月の場合で約 125,000 千円/年とな
り、どのケースにおいても発電期間の長さが収益に大きく影響する結果となりました。
流量や落差に合わせ適正な規模の施設を導入し、効率を極力落とさずに年間発電量を確保
することが重要です。
注 1)出力及び年間発電量の算出方法は、
「平成 20 年度包蔵水力調査」に従っています。
注 2)本ケーススタディは出力・流量・落差・周辺状況を仮に設定したものです。実際の導入検討施設の各種
状況(落差・期間内の流況変化・系統連系の可否・運転方法・機器の性能・設備更新の有無・調達価格)
などで大きく変動するもので、個別に検討を実施することが重要です。
-11-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
Ⅲ耕作放棄地
(1)太陽光発電
発電容量
利用可能資源量
■
4,110,840 kW
8,222 ha
年間発電量
4,255,138 MWh/年
年間 CO2 削減量
2,063,742 t/年
調査の方法
この調査では、2010 年農林業センサス「耕作放棄地面積規模別面積」を活用し、農業集落
ごとに耕作放棄地面積を整理しています。
1 箇所あたり 1,000kW の太陽光パネル設置を想定し、約 2.0ha 以上の面積がまとまって賦
存する可能性のある農業集落を抽出しました。市町村のデータは、各農業集落における面積
(非公開データを除く)の合計として算出しています。
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の日射量データベースより、方位角 0°
(=真南向き)における最適傾斜角における月平均斜面日射量を用いて、月間発電量の算出
を行い、1 年間の合計を年間発電量としました。
また、積雪による影響を考慮するため、降雪量として、最大積雪深データを市町村別に整
理しています。
収集データ
日射量データ(年間最適傾斜角における日
射量の年平均値、月平均傾斜角日射量)
月平均気温データ(月平均気温)
降雪量データ(最大積雪深)
送電網データ
出典元
(独)新エネルギー・産業
技術総合開発機構
気象庁
気象庁
国土地理院
出典資料
日射量データベース
アメダスデータ
アメダスデータ
国土地理院地図
発電容量(kW)=耕作放棄地面積(ha)× 500(kW/ha)
パネル必要面積(㎡)=発電容量(kW)× 7.2(㎡/kW)※1
月間発電量(kWh)=パネル必要面積(㎡)×月平均斜面日射量(kWh/㎡・日)
×日数(日)×0.14※2×総合設計係数※3
※1
1kW あたりのパネル必要面積(出典:太陽光発電システム共通基盤技術研究開発
太陽光発電システムのライフ
サイク評価に関する調査研究(H21 年 3 月みずほ情報総研))
※2
標準状態変換効率(出典:太陽光発電システム共通基盤技術研究開発
太陽光発電システムのライフサイク評価
に関する調査研究(H21 年 3 月みずほ情報総研))
※3
総合設計係数=機器損失係数×温度補正係数
機器損失係数=0.76(年変動、経時変化、アレイ負荷、アレイ回路、インバータの負荷による損失補正)
温度補正係数==1-0.5×(モジュール温度-25)/100、モジュール温度=月平均気温+18.4℃
(出典:JIS C8907「太陽光発電システムの発電電力量推計方法」)
-12-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
Google earth を
インストール後、
リンク先のファイル
をクリックして表示
してください。
www.docon.jp/
約 2.0ha 以上の面積がまとまって賦存する可能性のある農業集落を抽出した合計は、
8,222ha となっています。
これらの農業集落に対して、2ha あたり 1,000 kW の太陽光発電設備設置を導入したと仮
定すると、発電容量の合計は 4,110,840 kW、年間発電量は 4,255,137,709 kWh/年と試算さ
れます。
気候条件
全道的に見て、日射量は道東方面の地域が恵まれており、積雪も道東方面の地域のほうが
比較的少ない傾向にあります。
-13-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
(2)風力発電
発電容量
8,221,680 kW
利用可能資源量
年間発電量
18,941,764 MWh/年
年間 CO2 削減量
■
8,222 ha
9,186,756 t/年
調査の方法
この調査では、2010 年農林業センサス「耕作放棄地面積規模別面積」を活用し、農業集落
ごとに耕作放棄地面積を整理しています。
1 箇所あたり 2,000kW の風力発電設備設置を想定(約 2.0ha 以上の面積)し、約 2.0ha 以
上の面積がまとまって賦存する可能性のある農業集落を抽出しました。市町村のデータは、
各農業集落における面積(非公開データを除く)の合計として算出しています。
風力発電導入可能性を評価するため、再生可能エネルギー導入ポテンシャルマップ(環境
省)を活用しました。風況マップと約 2.0ha 以上の面積がまとまって賦存する可能性のある
農業集落のマップを Google Earth 上で重ね合わせ、全道・振興局単位で図示し、導入に有利
な市町村を把握することができます。
また、風車を立てる際の広い土地の確保の指標の一つとして、人口密度データを市町村別
に整理しました。
収集データ
風況データ
人口密度データ
出典元
環境省
各市町村ホームページ
出典資料
再生可能エネルギー導入ポテンシャルマップ
-
風力発電導入可能性の評価にあたって、再生可能エネルギー導入ポテンシャルマップ(環
境省)の風況マップと約 2.0ha 以上の面積がまとまって賦存する可能性のある農業集落のマ
ップを Google Earth 上で重ね合わせた地図データを用いて、以下の条件より北海道市町村に
おける風力発電導入可能性を評価しました。
条件①
条件②
環境省「再生可能エネルギー導入ポテンシャルマップ」の風況マップと 2ha
以上の耕作放棄地マップを重ね合わせ、目視によって、4 段階評価を行った。
◎:ポテンシャルが非常に高い
○:ポテンシャルが高い
△:ポテンシャルがある
×:ポテンシャルが低い
送電線(6 万 V 以下)が市町村内にある。
-14-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
Google earth を
インストール後、
リンク先のファイル
をクリックして表示
してください。
www.docon.jp/
白い網掛けがかか
っていない、赤・黄・
緑色が見えるとこ
ろは導入可能性が
高い場所です。
白網掛け:耕作放棄地 2ha 以下
約 2.0ha 以上の面積がまとまって賦存する可能性のある農業集落を抽出した合計は、
8,222ha となっています。
これらの農業集落に対して、1ha あたり 1,000 kW の風力発電設備設置を導入したと仮定
すると、発電容量の合計は 8,221,680kW、年間発電量は、18,941,764,118 kWh/年※と試算
されます。
※北海道における年間設備利用率は 26.3(平成 21 年度全道平均。出典:平成 21 年度北海道における風
力発電の現状と課題(北海道産業保安監督部))
その他条件
風力発電施設の設置時の課題としては、大規
模な施設の場合、自然環境の保全、野鳥類の衝
突や、低周波音による騒音の問題があげられま
す。
経済性を確保するために 1,000kW レベルの
大規模なシステムが導入されることが多いで
すが、市街地のように人口が集中し騒音が懸念
される場所では設置が困難となります。
-15-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
モデルケース
太陽光発電
調査結果をもとに、耕作放棄地での太陽光発電の導入可能性の高い地域として、網走市を
モデルに、発電設備導入・管理コスト及び雇用効果の算出を行いました。
日射等の条件が良く、2ha のまとまった耕作放棄地が利用可能であると想定し、1,000kW
の太陽光発電を導入するケースについて試算しました。
最適傾斜角(網走の最適傾斜角 38.7°)における月別の発電量を試算した結果、網走にお
ける出力 1,000kW の発電施設における年間発電量は 1,143,900kWh/年、年間の二酸化炭素
削減量は約 554.8t※となりました。
※2011 年度の北海道電力株式会社公表値における二酸化炭素排出係数は 0.485kg-CO2/kWh
(kWh/月)
140,000
120,973
112,809
111,956
106,548
104,706
99,315
96,721
120,000
100,000
80,000
92,830
74,406
88,060
68,379 67,197
60,000
40,000
20,000
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月 11月 12月
図 1,000kW 出力の発電施設における月別発電量(網走)
次に、発電設備導入・管理コスト及び雇用効果の算出を行いました。
イニシャル・ランニングコストとして、太陽光発電の事業費を下記のとおり設定しました。
設定項目
システム費用
土地造成費
土地賃借料
修繕費・諸費
一般管理費
人件費
イニシャル
ランニング
設定値
32,500 万円
150 万円
300 万円
522 万円
73 万円
300 万円
設定根拠
32.5 万円/kW
0.15 万円/kW
年間 150 円/m2
建設費の 1.6%/年
修繕費・諸費の 14%/年
300 万円/年
現在、再生可能エネルギーの固定価格制度が実施されているため、電力は 42 円/kWh(平成
24 年度価格)で全量を電力会社に売却するものとして、支出・収入を試算しました。
イニシャル
ランニング
支出
システム費用
土地造成費
耐用年数
減価償却費
土地賃借料
修繕費・諸費
一般管理費
人件費
小計
収入
合計
発電電力量
電力の買い取り
合計
事業性
ペイバック年数
①
②
③
④=(①+②)÷③
⑤
⑥=(①+②)×0.016
⑦=⑥×0.14
⑧
⑨=⑤+⑥+⑦+⑧
⑩=④+⑨
⑪
⑪
⑫=⑪-⑩
(①+②)÷(⑪-⑨)
-16-
32,500 万円
150 万円
20 年
1,633 万円/年
300 万円/年
522 万円/年
73 万円/年
300 万円/年
1,196 万円/年
2,828 万円/年
1,143,900kWh/年
4,804 万円/年
4,804 万円/年
1,976 万円/年
9年
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
Ⅳ漁港・漁場
(1)太陽光
発電容量
利用可能資源量
■
49,224 kW
590,686 m2
年間発電量
49,115 MWh/年
年間 CO2 削減量
23,821t/年
調査の方法
この調査では、北海道の漁港用地の用途別利用面積または用途別利用計画面積、漁港占用
用地面積内訳に基づいて、漁港別に用地面積データを収集・整理しました。
太陽光パネルを漁港用地内施設の屋根に設置することを想定し、10kW 相当の太陽光パネ
ルの専有面積を 120m2 と仮定して、占用用地面積のうち、120m2 以下の用地を除外しまし
た。
また、太陽光パネルを設置可能な用地面積を試算するため、漁港計画平面図および航空写
真を用いて、施設が設置されているもの及び設置されている可能性のあるものを抽出し、漁
港ごとに整理しました。
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の日射量データベースより、方位角 0°
(=真南向き)における最適傾斜角における月平均斜面日射量を用いて、月間発電量の算出
を行い、1 年間の合計を年間発電量としました。
収集データ
用途別利用面積
または用途別利用計画面積
漁港占用用地面積内訳
漁港占用用地利用状況
漁港の所在地
出典元
北海道水産林務部
出典資料
用地面積一覧
北海道水産林務部
北海道水産林務部
Google earth
市町村
北海道水産林務部
占用許可一覧
漁港計画平面図、航空写真
航空写真
航空写真
北海道漁港位置図
発電容量(kW)=耕作放棄地面積(ha)× 500(kW/ha)
パネル必要面積(㎡)=発電容量(kW)× 7.2(㎡/kW)※1
月間発電量(kWh)=パネル必要面積(㎡)×月平均斜面日射量(kWh/㎡・日)
×日数(日)×0.14※2×総合設計係数※3
※1
1kW あたりのパネル必要面積(出典:太陽光発電システム共通基盤技術研究開発
太陽光発電システムのライフ
サイク評価に関する調査研究(H21 年 3 月みずほ情報総研))
※2
標準状態変換効率(出典:太陽光発電システム共通基盤技術研究開発
太陽光発電システムのライフサイク評価
に関する調査研究(H21 年 3 月みずほ情報総研))
※3
総合設計係数=機器損失係数×温度補正係数
機器損失係数=0.76(年変動、経時変化、アレイ負荷、アレイ回路、インバータの負荷による損失補正)
温度補正係数==1-0.5×(モジュール温度-25)/100、モジュール温度=月平均気温+21.5℃
(出典:JIS C8907「太陽光発電システムの発電電力量推計方法」)
-17-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
黄色:太陽光発電導入可能性
のある漁港・漁場
白色:その他の漁港・漁場
対象をクリックすると、
下記の情報が分かります。
①年間発電量推計値
②発電容量推計値
Google earth を
インストール後、
リンク先のファイル
をクリックして表示
してください。
www.docon.jp/
③設置可能施設の用地面積
全道の 282 の漁港・漁場のうち、太陽光発電導入可能性のある漁港・漁場は 194 と全体の
7 割程度となりました。
太陽光パネルを設置可能とされる施設の用地面積の合計は 590,686 ㎡となっていますこれ
らの用地面積に対して、
120m2 あたり 10kW の太陽光発電設備設置を導入したと仮定すると、
発電容量の合計は 49,224kW、年間発電量は 49,115,243 kW/年と試算されます。
-18-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
モデルケース
調査結果をもとに、漁港・漁場での太陽光発電の導入可能性の高い地域として、白糠町の
白糠漁港をモデルに、発電設備導入・管理コスト及び雇用効果の算出を行いました。
太陽光発電設備の設置が可能であると推定される施設について、30kW の太陽光発電を導
入するケースについて試算しました。
最適傾斜角(白糠の最適傾斜角 42.1°)における月別の発電量を試算した結果、白糠漁港
における出力 30kW の発電施設における年間発電量は 34,326kWh/年、年間の二酸化炭素削
減量は約 16.6t※となりました。
※2011 年度の北海道電力株式会社公表値における二酸化炭素排出係数は 0.485kg-CO2/kWh
(kWh/月)
4,000
3,500
3,000
3,722
3,250
3,138
2,972
3,109
2,786
2,710
2,539
2,545 2,454 2,508
2,500
2,593
2,000
1,500
1,000
500
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
図 30kW 出力の発電施設における月別発電量(白糠)
次に、発電設備導入・管理コスト及び雇用効果の算出を行いました。
イニシャル・ランニングコストとして、太陽光発電の事業費を下記のとおり設定しました。
イニシャル
ランニング
設定項目
システム費用
修繕費・諸費
設定値
466 万円
5 万円
設定根拠
46.6 万円/kW
建設費の 1%/年
発電電力は、漁港施設の使用電力に充て、余剰電力を電力会社に売却するケースを想定し、
漁港施設の使用電力を年間 10,000 kWh/年、電力使用単価は 1 kWh あたり 24.5 円と設定しま
した。現在、再生可能エネルギーの固定価格制度が実施されているので、電力は 42 円/kWh
(平成 24 年度価格)で電力会社に売却するものとして、支出・収入を試算しました。
その結果、事業性は年間 43 万円、ペイバック年数は 12 年と耐用年数を下回る試算となり
ました。
支出
イニシャル
システム費用
耐用年数
減価償却費
①
②
③=①÷②
1,398 万円
20 年
70 万円/年
ランニング
修繕費・諸費
④=①×0.01
14 万円/年
⑤=③+④
収入
合計
発電電力量
うち、施設の電力代替
うち、余剰電力
代替による電力削減費
電力の買い取り
合計
事業性
ペイバック年数
⑥
⑦
⑧=⑥+⑧
⑨=⑧-⑤
①÷(⑧-④)
-19-
84 万円/年
34,326kWh/年
10,000kWh/年
24,326kWh/年
25 万円/年
102 万円/年
127 万円/年
43 万円/年
12 年
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
3
今後に向けて
Ⅰ再生可能エネルギーの導入
再生可能エネルギーの導入にあたっては、下記のような流れが一般的となっています。
● 建設場所の検討・選定
● 建設用地交渉・確保※
● 基礎データの収集 ● 現況調査※ ● 条件設定
導 入 検 討
● エネルギー量試算 ● エネルギー需要先検討・設定
● 施設規模設定 ● システム検討
● 事業方針検討 ● 経済性検討・事業評価 ● 財源検討
● 関連法令調査・把握
実 施 検 討
● システム設計 ● 工事計画策定 ● 維持管理計画策定
● 固定価格買取制度設備認定※
● 許認可協議・手続き等※
● 系統連系協議※
● 環境影響評価※
● 補助・助成申請※
※は必要に応じて実施します
-20-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
Ⅱ農山漁村の資源活用
本調査では、北海道の農山漁村における再生可能エネルギーの導入可能性を示しました。
ここでは、今後、実際に導入を進めていくにあたって必要な検討事項を整理します。
効率的なエネルギー生産
林地・民有林における森林バイオマスの利用に関しては、持続可能な資源の利用のあり方
の検討が必要です。資源の効率的な収集や、需給バランスの調整、計画的・循環的なバイオ
マス利用が求められます。
エネルギー生産の場としての農山漁村
農地におけるエネルギー利用のあり方の検討が必要です。農地の利用は、食糧生産が基本
であることを考えると、エネルギー生産の場として活用するよりも、できる限り農地として
維持することが優先されます。また、エネルギー生産の場として適した土地は、平坦で、か
つまとまって存在する土地であるため、農地として適した土地と競合する可能性が高いと考
えられます。エネルギー生産の場として利用する際の順位付けを検討する必要があります。
また、平坦かつまとまって存在する耕作放棄地での大規模発電を検討するだけでなく、自
家消費用の施設を各農家に設置する分散型とすることも、農村部における再生可能エネルギ
ーの導入方法として考えられます。
農山漁村における理解
さらに、これらの再生可能エネルギーの導入を農山漁村において進めていくためには、導
入に対する農林漁業者などの理解が不可欠です。そのためには、農山漁村におけるエネルギ
ー生産の場としての役割の認識を広めるとともに、再生可能エネルギーを活用した農林水産
業のブランド化のように、導入を促進する取組も必要です。また、農山漁村に豊富に存在す
る資源を活用し、農林漁業者などが参画してエネルギー生産に取り組むことで、地域経済効
果をもたらし、農山漁村の活性化につながるよう、取組の主体として地域が参画しやすい条
件を整えることが大切です。
再生可能エネルギー導入技術・環境
再生可能エネルギーの導入に向けて、現在のエネルギー生産に係る
課題に応じた技術の一層の向上や事業コストの削減が必要です。
また、再生可能エネルギーの導入に伴う、需要者側の理解が不可欠
です。電気を電力会社が買い取ることを義務付け、電気料金の一部と
して賦課金という形で需要者が負担する「再生可能エネルギーの固定
価格買取制度」をはじめ、社会全体で再生可能エネルギーを普及・拡
大させていくことへ理解が求められます。
再生可能エネルギーの導入拡大にあたっては、電力系統システムの
あり方について検討することも必要です。大規模な送電線建設や北本
連系(北海道・本州間連系設備)の増強などの対策を行ったり、蓄電
池や揚水発電、火力発電等の活用によって、需給バランスの調整や周
波数変動の抑制を図ったりすることが重要です。
-21-
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
送電網マップ
2,000kW 以下の場合は
密に存在する配電網に連系
可能であるため、系統連系
の際のコスト課題が少なく
なりますが、2,000kW 以上
の場合は送電網に連系する
必要があるため、送電線か
らの距離をできる限り最小
限にすることが必要です。
本調査では、送電網およ
び 変 電所 をマ ッ プ化 し、
google earth 上で閲覧がで
きます。
再生可能エネルギーの導
入を考える地点と送電網ま
でのおおまかな距離を評価
することが可能です。
情報提供
調査結果は、弊社ホームページで公開しています。
Google earth 上で閲覧可能なマップデータのほか、調査報告
書(詳細版)を掲載しています。
http://www.docon.jp/
また、本調査以外にも、再生可能エネルギーの導入可能性調
査が多数報告されています。目的に応じてご活用ください。
■その他の再生可能エネルギー導入可能量調査報告例
○再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査(環境省)
再生可能エネルギーの大規模な導入について検討を進めるために、太陽光発電、風力発電、中小水力発電、地熱発電
について、日本の賦存量及び導入ポテンシャルの推計・ポテンシャルマップを作成しています。
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/rep/
http://www.env.go.jp/earth/report/h23-03/
○再生可能エネルギー資源等の賦存量等の調査についての統一的ガイドライン(総務省)
各地域が主体的かつ継続的に再生可能エネルギー資源等を積極的に活用して地域活性化に取り組むためのポイントを
示すことを目的に、太陽光発電、太陽熱利用、風力発電、中小水力発電、地熱発電、下水熱利用、温泉熱利用、雪氷熱
利用、バイオマスについて、再生可能エネルギー資源等の賦存量・推定利用可能量の推計を行いマップ化しています。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000121161.pdf
○新エネルギー賦存量推計システム(北海道)
新エネルギーの導入を検討する市町村・団体の参考となるよう、太陽光発電、風力発電、中小水力発電、地熱発電、
バイオマスについて、市町村内の自然条件や資源量でどれくらいの発電や熱利用が可能かを算出する「賦存量推計ソフ
ト」と、道内各地域の賦存特性や新エネルギーの建設適地を把握するための「賦存量マップ」を作成しています。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kke/fuzonryou_soft.htm
-22-
平成 23 年度 農林水産省補助事業(農山漁村 6 次産業化対策事業)
農山漁村再生可能エネルギー導入可能性等調査
概要版
平成 25 年 3 月
株式会社ドーコン
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