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環115 民間航空機によるグローバル観測ネットワークを活用した
1-i 課題名 地球一括計上 民間航空機によるグローバル観測ネットワークを活用した温室効果ガスの長期変動 観測 担当研究機関 国立研究開発法人国立環境研究所 国土交通省気象庁気象研究所 研究期間 平 成 23-27年 度 合計予算額 (当 初 予 算 額 ベース) 168,531千 円 ( う ち 27年 度 34,154千 円 ) 研究体制 (1)観測機器の運用と観測・分析(国立研究開発法人国立環境研究所) (2)データの品質管理とデータベース化(国土交通省気象庁気象研究所) 研究概要 1.序(研究背景等) 現在の地球温暖化予測には、気候変化による炭素循環のフィードバック機構に大きな不確実性が 残 さ れ て お り 、次 期 IPCC 報 告 書 の 重 要 な 課 題 の 一 つ と な っ て い る 。こ の た め 、地 球 規 模 の 大 気 中 温 室効果ガスの分布や変動を長期にわたって観測・監視することによって、気候変化に応答する全球 の炭素循環変動メカニズムを十分に理解することが求められている。しかし、世界には依然として 観測の空白域が残されており、特に上空の長期的な観測データが決定的に不足している。 平 成 18 年 度 か ら 22 年 度 ま で 地 球 環 境 保 全 試 験 研 究 費 で 実 施 さ れ た 「 民 間 航 空 機 を 活 用 し た ア ジ ア 太 平 洋 域 上 空 に お け る 温 室 効 果 気 体 の 観 測 」課 題 で は 、日 本 航 空 (JAL)が 運 航 す る 国 際 線 大 型 旅 客 機に温室効果ガスの観測装置を搭載し、従来のチャーター航空機による観測では不可能であった膨 大 な デ ー タ の 収 集 手 法 を 確 立 し た ( CONTRAIL プ ロ ジ ェ ク ト ) 1 )2 ) 。 し か し な が ら 、 こ れ ま で の 限 ら れた観測では、温室効果ガスの空間分布を明らかにしてきたものの、データの収集間隔が時間的に 不 均 一 で 不 十 分 で あ り 、年 々 の 変 動 を 統 計 的 に 有 意 に 解 析 で き る だ け の 十 分 な 空 間 的 ・時 間 的 に 密 な デ ー タ を 得 る に は 至 っ て い な い た め に 、CONTRAIL プ ロ ジ ェ ク ト の 継 続 に よ る 長 期 的 な デ ー タ の 取 得 が必要となっている。 2.研究目的 本 研 究 で は 、 世 界 で 唯 一 の 民 間 航 空 機 に よ る 温 室 効 果 ガ ス の 定 期 観 測 プ ロ ジ ェ ク ト ( CONTRAILプ ロ ジ ェ ク ト ) を 発 展 的 に 継 続 し て 長 期 に デ ー タ を 蓄 積 し 、 エ ル ニ ー ニ ョ ・ 南 方 振 動 ( ENSO) 現 象 等 の 気 候 変 化 に 応 答 す る 数 年 ス ケ ー ル の 大 規 模 な CO 2 変 動 の 実 態 を 解 明 す る こ と を 目 的 と す る 。実 施 期 間 中 5 年 間 の デ ー タ 蓄 積 を 行 う こ と に よ っ て 従 来 観 測 と 合 わ せ た 1 0 年 規 模 の CO 2 デ ー タ を 構 築 し 、 2 年 ~ 3 年 周 期 の ENSOサ イ ク ル に 伴 う CO 2 濃 度 の 変 動 を 把 握 す る 。ま た 、よ り 精 度 の 高 い 温 室 効 果 ガ ス監視情報を社会に発信していくことも目的とする。 本 研 究 で は 2 つ の 装 置 を 用 い た 観 測 を 行 う 。 1 つ は CO 2 濃 度 連 続 測 定 装 置 ( CME) に よ っ て 航 空 機 の 飛 行 中 に 連 続 し て CO 2 濃 度 を 測 定 す る も の で あ り 、 も う 1 つ は フ ラ ス コ サ ン プ リ ン グ 装 置 ( ASE) に よ っ て 航 空 機 の 飛 行 中 に 大 気 試 料 を 採 取 し 、地 上 の 実 験 室 に お い て CO 2 を 始 め と す る 温 室 効 果 気 体 の 濃 度 や CO 2 の 安 定 同 位 体 比 の 観 測 を 行 う も の で あ る 。 本 年 度 の 研 究 で は 改 良 型 CMEの CO 2 濃 度 観 測 精 度 に つ い て 検 討 し た 。ま た 、ASEで 観 測 さ れ た 西 部 太 平 洋 域 上 空 に お け る CO 2 濃 度 の 長 期 変 動 に つ い て 解 析 を 行 っ た 。 さ ら に CONTRAIL観 測 デ ー タ を 使 っ た イ ン バ ー ジ ョ ン 解 析 に よ っ て 推 定 さ れ た フ ラ ッ ク ス か ら 、 大 気 輸 送 計 算 に よ っ て CO 2 濃 度 の 3 次 元 分 布 を 求 め た 。ま た 、独 立 し た 観 測 デ ー タ を 用 い て 大 気 輸 送 計 算の妥当性を確認した。 1-ii 3.研究の内容・成果 (1)観測機器の運用と観測・分析 2015年 に 大 型 の ボ ー イ ン グ 777-300ER型 機( 機 番 JA734J)に CMEを 搭 載 す る た め の 機 体 改 修 を 行 い 、 CONTRAILプ ロ ジ ェ ク ト と し て は 初 め て の 777-300ER型 機 に よ る CME観 測 が 始 め ら れ た 。 さ ら に 2016年 に は 2機 目 の 777-300ER型 機( 機 番 JA733J)に CMEを 搭 載 す る 改 修 が 実 施 さ れ た 。こ の 結 果 、ニ ュ ー ヨ ー ク (JFK)、シ カ ゴ (ORD)と い っ た 米 国 東 海 岸 お よ び 中 部 地 区 で の 初 め て の 年 を 通 し た CO 2 濃 度 の 鉛 直 分 布 観 測 が 可 能 に な っ た 。 ま た 、 米 国 西 海 岸 の ロ サ ン ゼ ル ス (LAX)、 サ ン フ ラ ン シ ス コ ( SFO) 、 ヨ ー ロ ッ パ の パ リ (CDG)、ロ ン ド ン (LHR)、イ ン ド ネ シ ア の ジ ャ カ ル タ (CGK)に お け る 観 測 も 再 開 し 、広 大 な 範 囲 で の 観 測 網 を 構 築 す る こ と が で き た 。2005年 11月 以 来 、12,500回 を 超 え る 飛 行 で CME観 測 を 実 施 し 、 得 ら れ た CO 2 濃 度 の 鉛 直 分 布 は 24,200本 を 超 え た 。 フ ラ ス コ サ ン プ リ ン グ は 2005年 12月 ~ 2015年 12月 ま で の 10年 間 で 合 計 164回 の 観 測 フ ラ イ ト が 実 施 さ れ た 。そ の 内 、ASEに よ る 観 測 が 157回 で 、残 り の 7回 の 観 測 は 手 動 に よ る サ ン プ リ ン グ 方 法( MSE) で 行 わ れ 、 上 部 対 流 圏 に お け る 緯 度 別 の CO 2 、 CH 4 、 CO、 N 2 O、 SF 6 、 H 2 の 濃 度 を 明 ら か に し た 。 図 1 . CME の 飛 行 ル ー ト と 鉛 直 分 布 観 測 回 数 (2)データの品質管理とデータベース化 図 2 a は 2005 年 か ら 2009 年 ま で シ ド ニ ー 線 で 実 施 さ れ た ボ ー イ ン グ 747-400 型 機 に お け る CME と ASE の CO 2 濃 度 差 、 図 2 b は 、ボ ー イ ン グ 777-200ER 型 機 に お け る 同 時 観 測 時 の 2011 年 か ら 2015 年 ま で の CO 2 濃 度 差 を 示 し て い る 。ほ と ん ど の フ ラ イ ト に お い て CME と ASE の 濃 度 差 は 0.4ppm 以 内 に 納 ま っ て お り 、CME に よ る CO 2 濃 度 が 高 い 観 測 精 度 を 持 っ て い る こ と が 確 認 さ れ た 。一 方 で 、2009 年 ま で の 747-400 に お け る 観 測 で は 、 ASE と CME の 濃 度 差 は 平 均 -0.02ppm、 標 準 偏 差 0.20ppm で あ る の に 対 し て 、 2011 年 以 降 の 777-200ER に お け る 観 測 で は 平 均 濃 度 差 が +0.18ppm 、 標 準 偏 差 が 0.25ppm と な っ て お り 、CME の 方 が 若 干 高 い 傾 向 に あ る 。ま た 、イ ン バ ー ジ ョ ン フ ラ ッ ク ス を 用 い た 大 気 輸 送 計 算 に よ り 、 観 測 デ ー タ と 整 合 的 な 3 次 元 の CO 2 濃 度 分 布 の 長 期 間 グ リ ッ ド デ ー タ を 作 成 できた。 図 2 . CME と ASE で 観 測 さ れ た シ ド ニ ー -成 田 間 の CO 2 濃 度 の 差 ( CME-ASE) の ヒ ス ト グ ラ ム 4.考察 (1)フラスコサンプリング観測 図 3 は 2006年 か ら 2015年 に か け て 観 測 さ れ た 北 緯 30-25度 と 南 緯 20-25度 の 高 度 10km付 近 に お け る 1-iii CO 2 、CH 4 、N 2 O、SF 6 の 各 濃 度 の 時 間 変 動 を プ ロ ッ ト し た も の で あ る 。長 期 ト レ ン ド か ら CO 2 の 増 加 速 度 を 計 算 し た 結 果 、 約 1.5~ 3ppm/年 の 範 囲 で 大 き な 年 々 変 動 が あ る こ と が 示 さ れ た 。 増 加 速 度 の 年 々 変動はエル・ニーニョ現象と良い対応関係にあることが認められた。また、増加速度は長期的に上 昇 傾 向 に あ り 、人 為 源 の CO 2 排 出 量 が 年 々 増 大 す る こ と に よ っ て 、大 気 に 蓄 積 さ れ る CO 2 量 が 増 加 す る 傾 向 に あ る と 考 え ら れ た 。CH 4 濃 度 は 北 緯 30度 か ら 北 緯 15度 ま で の 緯 度 帯 に お い て 、夏 季( 7月 ~ 9月 ) に 高 濃 度 の CH 4 が 頻 繁 に 上 空 で 観 測 さ れ る 現 象 が 見 出 さ れ た 。こ の 時 期 の CH 4 は 地 上 の バ ッ ク グ ラ ン ド 大 気 の 濃 度 を 上 回 る 高 濃 度 に 達 し て い る こ と が 分 か っ た 。採 取 さ れ た 上 空 大 気 サ ン プ ル の CH 4 同 位 体 を 測 定 し た 結 果 、 高 濃 度 CH 4 は 人 類 活 動 の 燃 焼 起 源 に よ る も の で は な く 、水 田 、 家 畜 、 湿 地 帯 等 の 微 生 物 生 成 に 由 来 し て い る こ と が 分 か っ た 。北 半 球 に お け る COの 季 節 変 動 は 、春 季( 5月 頃 )と 秋 季( 11 月 頃 ) に 濃 度 が 上 昇 す る 2 峰 性 の パ タ ー ン が 見 ら れ た 。 季 節 変 動 の 振 幅 は 北 緯 30度 か ら 赤 道 に 向 け て 徐 々 に 減 衰 す る 緯 度 変 化 が 認 め ら れ た 。観 測 期 間 の SF 6 の 濃 度 上 昇 速 度 は 、北 緯 30度 か ら 南 緯 30度 ま で の 12個 の 緯 度 帯 の 平 均 値 と し て 約 0.30ppt/年 と 算 定 さ れ た 。こ の 値 は 、米 国 海 洋 大 気 庁( NOAA) が 地 上 で 展 開 し て い る 観 測 網 で 得 た 全 球 平 均 増 加 速 度 ( 約 0.30ppt/年 ) に ほ ぼ 一 致 し て い た 。 正 確 な SF 6 の 長 期 ト レ ン ド が 上 空 の 航 空 機 観 測 で も 得 ら れ て い る と 言 え る 。上 空 の SF 6 の 増 加 速 度 を 緯 度 別 に比較すると、南半球に比べて北半球の方が若干大きい傾向が見られた。 図 3 .2006 年 か ら 2015 年 に か け て 観 測 さ れ た 北 緯 30-25 度 と 南 緯 20-25 度 の 高 度 10km 付 近 に お け る CO 2 、 CH 4 、 CO、 SF 6 の 各 濃 度 の 時 間 変 動 。 黒 丸 は 観 測 値 を 、 実 線 は フ ィ ッ テ ィ ン グ カ ー ブ を 表 す 。 ( 2 ) 上 部 対 流 圏 に お け る CO 2 濃 度 の 増 加 速 度 CONTRAILで の CME観 測 も 2005年 の 観 測 開 始 か ら 10年 が 経 過 し 、観 測 領 域 に よ っ て は 経 年 変 動 を 検 出 できる可能性が出てきた。比較的観測数が多い領域について気象データをもとに上部対流圏(高度 8kmか ら 対 流 圏 界 面 ま で )と 考 え ら れ る デ ー タ を 抽 出 し 解 析 を 行 っ た 。領 域 毎 に 平 均 し て 算 出 さ れ た CO 2 濃 度 の 月 平 均 値 を 求 め た の ち 年 増 加 速 度 を 求 め た 。観 測 開 始 の 2005年 か ら 2015年 ま で の 10年 間 の 上 部 対 流 圏 で の 平 均 的 な CO 2 濃 度 増 加 速 度 は 約 2ppm/年 で あ り 、 こ の 値 は 地 上 観 測 に よ る CO 2 濃 度 時 系 列 か ら 求 め ら れ る 平 均 増 加 速 度 と ほ ぼ 同 じ で あ っ た 。一 方 、観 測 開 始 か ら の CO 2 濃 度 増 加 速 度 は 緯 度 帯 や 年 に よ っ て 大 き な 違 い が 認 め ら れ た( 図 4 )。オ ー ス ト ラ リ ア 路 線 の 南 半 球 西 太 平 洋 域( 図 4 a-b) で は 2012年 か ら 2013年 に か け て と 2015年 に 比 較 的 最 大 3ppm/年 の 大 き な 増 加 速 度 が 認 め ら れ た 一 方 、 北 半 球 西 太 平 洋 域 の 北 緯 30度 ま で( 図 4 c-d)で は こ れ に 加 え 2006年 か ら 2007年 に か け て も 増 加 速 度 の 増 大 が 見 ら れ る 。 一 方 、 東 南 ア ジ ア 域 ( 図 4 e-f) 日 本 上 空 ( 図 4 g) で は 、 上 記 西 太 平 洋 域 と 同 じ く 2012-2013年 及 び 2015年 に 加 え 、 2009年 か ら 2010年 に か け て CO 2 濃 度 の 増 加 速 度 の 増 大 が 認 め ら れ て い る 。観 測 デ ー タ か ら は 、比 較 的 広 い 範 囲 で 共 通 し た CO 2 濃 度 増 加 の 変 動 が 観 測 さ れ て お り 、広 域 の CO 2 フ ラ ッ ク ス の 変 化 が 観 測 に 現 れ て い る と 考 え ら れ る 。一 方 、高 緯 度 の シ ベ リ ア 大 陸 上 空( 北 緯 50-70度 、 東 経 0-130度 ) で は 、 2009年 か ら 2010年 に か け て と 、 2012年 に 顕 著 な 増 加 速 度 の 増 大 が 見 ら れ 、 日 本 上 空 の 増 加 速 度 増 大 の 時 期 と の 対 応 が 認 め ら れ る ( 図 4 h)。 1-iv 図 4 . CME観 測 に よ る 上 部 対 流 圏 CO 2 濃 度 の 年 増 加 速 度 。 顕 著 な 増 加 速 度 の 増 大 が 見 ら れ た 期 間 を 灰 色 で 示 す 。a-dは 西 太 平 洋 域 上 空 日 本 -オ ー ス ト ラ リ ア 間 で 得 ら れ た 増 加 速 度 。e-gは 日 本 か ら 東 南 ア ジ ア に か け て の 上 空 で 得 ら れ た 増 加 速 度 。 hは 日 本 -欧 州 間 で 得 ら れ た 増 加 速 度 。 ( 3 ) CO 2 濃 度 3 次 元 グ リ ッ ド デ ー タ の 作 成 図 5 は 、 イ ン バ ー ジ ョ ン 解 析 で 得 ら れ る 解 析 誤 差 に つ い て 、 地 上 観 測 の み に よ る 解 析 か ら 、 CME 観 測 を 加 え た こ と に よ っ て 、 ど れ だ け 減 少 し た か を 減 少 率 で 示 し た も の で あ る 。 こ の 図 か ら 、 CME 観測を追加することによって、アジア地域で誤差が減少していることがわかる。特に、熱帯アジア 地 域 で は 64%、南 ア ジ ア 地 域 で も 31%の 誤 差 減 少 率 が 得 ら れ た 。こ れ ら 地 域 で の 誤 差 減 少 率 が 高 い 理 由の一つに、地上観測のネットワークが不十分であることが挙げられる。もう一つの誤差減少の要 因 と し て 、熱 帯 や ア ジ ア ・モ ン ス ー ン 地 域 で の 活 発 な 対 流 活 動 が 挙 げ ら れ る 。赤 道 付 近 で は 、熱 帯 収 束 域 の 季 節 的 移 動 は あ る も の の 、常 時 、対 流 活 動 が 活 発 で あ る 。ま た 、イ ン ド 大 陸 に お い て は 、8 9 月 の 雨 期 に お い て 対 流 活 動 が 活 発 に な る 。 こ の よ う な 対 流 活 動 に よ っ て 、 地 表 CO 2 フ ラ ッ ク ス の シグナルが効率よく上空へと伝播されるため、地上観測(しかも近傍には観測点がないため、遠方 に あ る 観 測 点 ) で は フ ラ ッ ク ス の 情 報 が 十 分 に 補 足 さ れ ず 、 上 空 の CME 観 測 が よ り 効 率 的 に 情 報 を 補足出来ていると考えられる。 図 5 . 地 上 観 測 に 加 え て CME 観 測 を 用 い た こ と に よ っ て 得 ら れ た 解 析 誤 差 の 減 少 率 。 1-v 図 6 に CONTRAILの 東 京 ーシ ド ニ ー 間 の 観 測 デ ー タ と NICAM-TMの 大 気 輸 送 計 算 で 得 ら れ た CO 2 濃 度 値 と の 比 較 を 示 す 。 な お こ こ で は 、 CMEよ り 欠 損 の 少 な い ASEの デ ー タ と の 比 較 を 示 し て い る 。 こ れ ら の 図 か ら 、NICAM-TMと イ ン バ ー ジ ョ ン フ ラ ッ ク ス に よ っ て 計 算 さ れ た CO 2 濃 度 は 、観 測 さ れ た 季 節 変 動 ・ 経 年 増 加 を よ く 再 現 し て い る こ と を 確 認 す る こ と が で き る 。 し か し 、 2012年 頃 か ら や や モ デ ル の計算値が観測値より上回っている傾向もみてとれる。これは、インバージョンフラックスが 2006-2008年 に か け て 最 適 化 さ れ た も の で 、全 て の 期 間 に お い て 炭 素 収 支 が 観 測 と 整 合 的 で は な い た め で あ る 。こ の 結 果 よ り 、2006-2015年 の 期 間 の 全 球 炭 素 収 支 に つ い て 、前 半 よ り も 後 半 に や や 吸 収 量が強くなった(または放出量が弱まった)ことが示唆される。 図 6 . 東 京 -シ ド ニ ー 間 の 上 空 約 11km に お け る 30°N、 赤 道 、 20°S で の NICAM-TM( 灰 線 ) と ASE 観 測 ( 黒 点 ) の CO 2 濃 度 時 系 列 5.波及効果 1) 本 研 究 の 観 測 結 果 と EUが 実 施 し て い る 航 空 機 観 測 プ ロ ジ ェ ク ト IAGOS-CARIBICの 観 測 結 果 を 相 互 に 利 用 す る こ と に よ っ て 、日 本 と 欧 州 の 共 同 研 究 が 始 ま っ た 。そ の 結 果 、モ デ ル を 使 っ た CO 2 フ ラ ッ ク ス の 推 定 3 ) 、太 平 洋 上 な ら び に 大 西 洋 上 に お け る 上 空 の メ タ ン 濃 度 分 布 4 ) な ど の 結 果 が 論 文 と し て まとめられている。 2) さ ら に 、 EUの IAGOS-COREで は 民 間 航 空 機 に よ る CO 2 濃 度 連 続 観 測 の 許 可 取 得 の 目 処 が 立 ち 、 間 も なく観測を開始することになっている。これを受けて本研究の観測値との相互比較研究を実施する ことが決定し、データ解析ツールの開発が始まった。 3) 本 研 究 の 観 測 結 果 を 検 証 に 利 用 す る こ と に よ り 5 ) 、GOSAT等 の 衛 星 に よ る 温 室 効 果 ガ ス 観 測 精 度 の 低減が進んでいる。 4) 本 研 究 の 観 測 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム と 観 測 手 法 を 応 用 し て 、 GRENE北 極 気 候 変 動 研 究 事 業 の 北 極 上 空 における大気サンプリングが始まり、上部対流圏から下部成層圏における複数の温室効果ガス成分 の 変 動 が 明 ら か に な っ て い る 6)。 6.引用文献 1) Machida, T. and Coauthors (2008), J. Atmos. Oceanic. Technol . 25 (10), 1744-1754, DOI: 10.1175/2008JTECHA1082.1. 2) Matsueda, H. and Coauthors (2008), Pap. Meteorol. Geophys. , 59, 1-17. 3) Niwa, Y. and Coauthors (2012), J. Geophys. Res . 117, D11303, doi:10.1029/2012JD017474. 4) Schuck, T. J. and Coauthors (2012), J. Geophys. Res. , 117, D19304, doi:10.1029/2012JD018199. 5) Inoue, M. and Coauthors (2013), Atmos. Chem. Phys ., 13, 9771-9788, doi:10.5194/acp-13-9771-2013. 6) Sawa, Y. and Coauthors (2015), Geophys. Res. Lett. , 42, doi:10.1002/2014GL062734.