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抽出ビデオ立方
日心第70回大会(2006) 機器操作の苦手意識に関する尺度構成の試み 浅村 亮彦 (北海学園大学経営学部) Key words: 尺度構成,機器操作の苦手意識,操作手順の認識 目 的 近年,ヒューマン・エラーによる操作ミスを防ぎ,使いや すい操作体系の実現に関わる議論・検討がなされている.こ のような議論の1つの観点として,機器操作能力の個人差が 考えられる.すなわち,機器操作能力には個人差が存在して おり, どのような人にも使いやすい操作体系を実現するには, 操作の得意な人と苦手な人の認知特性を見極める必要がある ということである.その手段の1つとしては,機器操作の苦 手意識を測定できる尺度を構成し,それによって操作能力の 個人差を推定した上で,彼らの認知特性を比較することが考 えられる.しかしながら,このような機器操作の苦手意識に 関する尺度構成の試みはほとんどなされていない.そこで本 研究は,機器操作の苦手意識尺度を作成し,その妥当性をい くつかの課題成績との関連から検討することとした. 方 法 被験者 大学生 137 名(男性 72 名,女性 63 名,性別無記入 2 名) . 質問紙 事前に機械音痴,あるいは機器操作の失敗などに関係する と考えられる項目を収集し,48 項目を得た.これらの項目お よび「機械音痴と言われることがある」について,どの程度 当てはまるかを 5 段階で評定する形式であった. 課題 被験者は,質問紙への回答とともに 3 種類の課題を遂行し た.それらの課題は以下の通りであった.いずれの課題も練 習問題を遂行した後に本試行 5 問を遂行させた. 推理課題:3ないし4つの前提条件から,正しい結論を3 つの選択肢から選ぶ課題である. 表1 分析対象項目の因子分析結果 項 目( 因子負 荷量に囲みが ある も のが選定 され た項目) 機械の扱いや操作が得意である. 機械のちょっとしたトラブルに対処できる. パソコンを使いこなせない. 機械のしくみを理解するのが得意である. キーボードでの操作が得意である. 機械は苦手なので,避けてしまうことが多い. 必要最小限の操作しか覚えない. 機械いじりが好きである. 説明書に書かれている英語などの専門用語が覚えられない. 機械を操作している時,予想外の事態が起きたらパニック状態になる. テレビやビデオの配線ができない. 機械の操作がわからないときや初期設定は,詳しい人に頼る. 機械の操作が覚えられない. 目的の階とは違う階でエレベーターを降りることがある. 行き先の違う列車に乗ることがある. 電源の入れ方など,基本的操作で失敗することがある. ビデオやテレビのリモコンを使いこなせる. ビデオの予約録画ができない. よくわからないで使っているうちに機械を壊してしまうことがある. 銀行のATM(現金自動支払機)がうまく使えない. ゲーム機を使いこなせない. 1つの機種で操作を覚えたら,他の機種でも操作できる. 一度説明書を読めば機械を使いこなせる. 説明書を読んだり,操作を教えてもらっても理解できない. 説明書を読まないで直感的に操作して失敗する. 向上心が強い方である. 固有値 説明率(%) クロンバックのα係数(選定項目全体 0.798) 因 子1 0.758 0.707 0.686 0.643 0.604 0.604 0.597 0.580 0.545 0.508 0.470 0.450 0.410 0.127 -0.040 0.079 0.095 0.011 0.140 0.208 0.182 0.276 0.376 0.202 0.270 0.114 5.001 19.233 0.778 立方体課題:立方体の展開図を呈示し,1つの面を指示す る.それを組み立てた際に指示した面の反対面を回答す る課題である. 手順判別課題:特定の機器を使って特定の操作をする場合, その操作に関係のない操作を選択肢から選ぶ課題であ る. 手続き 被験者はまず質問紙に回答した.その後,推理課題,立方 体課題,そして手順判別課題の順に課題を遂行した. 結 果 機器操作の苦手意識尺度の構成 「機械音痴と言われることがある」の評定値と 48 の質問項 目評定値との相関係数を算出し,高い相関が認められた項目 のみを分析対象とした(26 項目) . 分析対象項目について因子分析(主因子法)を行なった. 初期解では 7 因子まで抽出されたが,因子の寄与率,変動, および解釈可能性を考慮し,因子数を 3 として再分析し,バ リマックス回転を行なったところ,表1の結果を得た.第 1 因子は「機器の苦手意識」 ,第 2 因子は「失敗しやすさ」 ,第 3 因子は「操作手順の認識」に関する因子と解釈された. これらの各因子から,負荷量の絶対値が 0.45 以上であり, 当該因子だけに負荷量が高い項目を選定することとし,最終 的に第 1 因子および第 2 因子からは 6 項目,第 3 因子からは 2 項目の全 14 項目を選定した(表 1 参照) . 機器操作の苦手意識尺度と各課題成績との相関 各課題成績と選定項目評定値との相関係数を,各因子およ び項目全体に分けて算出したところ, 手順判別課題について, 第 1 因子,第 2 因子,そして選定項目全体が有意な相関を示 した(表 2 参照) . 表2 選定項目(因子ごと)と課題成績との相関係数 因子2 0.079 0.107 0.381 0.032 0.117 0.156 0.055 -0.062 0.250 0.195 0.408 0.111 0.397 0.590 0.566 0.535 0.524 0.510 0.502 0.381 0.380 0.098 0.174 0.564 0.289 0.218 3.166 12.176 0.725 因子3 共通性 0.378 0.724 0.235 0.566 0.010 0.615 0.370 0.551 -0.093 0.387 0.374 0.529 0.228 0.411 0.331 0.450 0.096 0.369 0.227 0.348 0.281 0.466 0.087 0.222 0.502 0.578 0.002 0.365 0.092 0.330 0.272 0.367 0.219 0.332 -0.021 0.260 0.092 0.280 0.012 0.189 0.188 0.213 0.617 0.467 0.458 0.381 0.458 0.568 0.094 0.165 0.342 0.177 2.145 10.312 8.250 39.659 0.604 因子1 因子1 因子2 因子3 因子全体 因子2 0.238 ** 因子3 因子全体 論理 0.524 ** 0.855 ** -0.103 0.259 ** 0.671 ** -0.050 0.676 ** 0.055 -0.075 立方体 -0.114 -0.027 -0.114 -0.110 ** 手順 -0.264 ** -0.226 ** -0.141 -0.302 ** 1%水準で有意 考 察 本研究で構成した尺度との関連を検討した課題成績のうち, 推理課題と立方体課題は一般的問題解決時に関わる能力を反 映すると考えられ,それらの成績との関連が明確ではなかっ たことは,尺度の妥当性を損なうとは考えにくい. 一方,第 1 因子,第 2 因子,そして選定項目全体が,機器 操作能力に直接関わると考えられる手順判別課題との有意な 相関を示したことは,ある程度選定項目の予測妥当性を示唆 している.ただし,より直接に機器操作能力と関係するであ ろう課題成績との関連を幅広く検討し,尺度の妥当性を検討 することが必要と考えられる. (ASAMURA Akihiko)