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ドラッグ・ラグ ~日本の新薬承認事情

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ドラッグ・ラグ ~日本の新薬承認事情
関西大学政治学研究部
後期勉強会α班第 2 回
ドラッグ・ラグ
―日本の新薬承認事情―
平成 20 年 11 月 17 日
藤村
薫
Ⅰ.はじめに
誰もが毎日健康に暮らしたいと願っており、医療の問題に関心を持つことは当然である。
今日、日本では医師不足や妊婦のたらい回し、医療費といった医療問題が頻繁に報道され
ており、国民は医療に不安を募らせている。今回はその中から、ドラッグ・ラグについて
取り上げ、日本の現状を見ていきたいと思う。
Ⅱ.ドラッグ・ラグとは
海外で承認された薬が日本で認可されるまでの時間差
・ 欧米で開発・販売された新薬が日本で使用が認められ、発売されるためには、国内
での治験実施と審査が必要
しかし、治験の実施には長い月日がかかるために、欧米との新薬の発売に時間差
が起こる
→その新薬の承認の時間差や海外で新薬が発売されているのに日本国内では発売
されていない状態
・ 治験とは
¾
薬事法第 2 条第 16 項の定義
医薬品・医療機器等の製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けるために
申請時に添付すべき資料のうち、臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的
とする試験の実施
→現在では新薬承認のために行われる臨床試験のことをさす
・ 同じ病気でも、日本の患者は欧米の患者より治療が遅れる可能性
・ 患者は治療法の選択肢を狭められる
1
・ 主な国の新薬承認までの平均時間(2004 年売り上げ上位 88 製品)
¾
アメリカ、イギリス
約 1.4 年
¾
タイ、シンガポール
約3年
¾
日本
約 3.9 年
・単なる製薬業界の問題ではなく、深刻な医療問題
Ⅲ.ドラッグ・ラグの原因
ⅰ.ブリッジングスタディ(橋渡し試験)
・薬は民族によって効果が違う可能性がある
・外国の治験データを基に日本人の治験データを作成
有効性、安全性及び用法・用量に関する臨床データ又は薬力学的データ
→今まで民族によって効果が異なり、問題となったことはない。
→治験の後追い実施にすぎない。
ⅱ.治験
・海外の治験で日本人の実施が少ない
・日本の治験コストは海外に比べて高く、要する時間も長い
・承認審査委員の不足
・承認審査基準が曖昧
・日本の深刻な医師不足により、医師たちは治験まで手が回らない
→アジアでの共同治験から日本が外される
→結果、欧米と 2.5 年の時間差が発生
iii.保険制度
・治療法に厳格な枠を設けていて、1 つ 1 つの病気に対して投与して良い薬、行って
良い手術、施して良い療法を定めている
→海外で新薬が創出されてもすぐに国内の審査を始めなかった
→新薬研究に膨大な費用がかかる
Ⅳ.改善策
ⅰ.厚生労働省の動き
2006 年「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」発足
・構成員
医学、薬学等の有識者のほか、患者団体、医薬品業界の関係者等
2
・ 目的
有効で安全な医薬品を迅速に提供するため、承認審査のあり方や実施体制、
安全対策等に係る事項等について幅広く検討する
2007 年「革新的医薬品・医療機器創出のための 5 か年戦略」作成
・ 目標
国民へ世界最高水準の医薬品提供
¾
平成 23 年度末までに 2.5 年短縮
¾
審査委員の倍増
¾
国際共同治験参加推進
¾
関係する人材育成の強化
ⅱ.世界共同治験
・ 世界で同時に研究を進めること
・ 世界同時に新薬の開発、承認が可能
・ 一斉に様々な人種のデータがとれる
・ データ量が多くなるため副作用も発見しやすい
Ⅴ.おわりに
薬は誰にでも同じように効くものではなく、同じ病気に対してでもある患者には有効だ
が、別の患者には効果がないということが起こりうる。また、同じ患者の場合でも薬が効
くとき、効かないときがあり、その取り扱いは非常に難しいものである。それ故に、新薬
承認を慎重に行い、時間がかかるのかもしれない。しかし、諸外国と比べ、あまりにも時
間がかかりすぎているように思われる。もちろん、むやみに承認までの時間短縮を行い、
薬の安全性が低下してしまっては問題であるが、今回見てきたように、まだ時間短縮の余
地がありそうだ。厚生労働省は平成 23 年度までに 2.5 年の短縮を目標としているが、一日
も早くドラッグ・ラグの問題が解決されることを願っている。
3
参考文献
安生紗枝子、佐藤光利、渡辺宰男「新薬創製への招待」共立出版
金久保好男「医療薬学
新薬論」廣川書店
2003 年
1995 年
北村正樹、中原英臣「医者がくれない世界の良薬」講談社ブルーバックス
社団法人日本薬学会編「医療イノベーションとくすり」丸善プラネット
結城康博「医療の値段―診療報酬と政治―」岩波新書
2007 年
参考 Web
厚生労働省
治験ナビ
http://www.mhlw.go.jp/
http://www.chikennavi.net/
日本医薬産業政策研究所
日本薬学会
http://www.jpma.or.jp/opir/index.html
http://www.pharm.or.jp/
薬事日報ウェブサイト
http://www.yakuji.co.jp/
4
2003 年
2008 年
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