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平成15年度秋 テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験分析と講評

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平成15年度秋 テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験分析と講評
H15 秋NW 講評
表1 応募者数等の推移
平成15年度秋 テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験分析と講評
■試験全体について
平成 15 年度のテクニカルエンジニア(ネットワーク)試験(以下,ネットワーク試験という)の応募者
は,約5万4千人でした。一方,受験率は 14 年度よりも若干上回り,過去最高の 58.3%となりました。
年 度
応募者数
平成 13 年度
60,978 (-14.0)
34,867 (57.2)
2,749 (7.9)
平成 14 年度
58,778 (-3.6)
33,552 (57.1)
2,496 (7.4)
平成 15 年度
54,060 (-8.0)
31,534 (58.3)
−
(
受験者数
合格者数
)内は,順に前年度対比増減率,受験率,合格率
最近における IP 電話の普及,ネットワークセキュリティなどのネットワーク技術に関する重要性は高
まる一方であり,ネットワーク技術者に対する社会の期待は大きいものがあります。こうした社会的要
■午前問題について
請に応えるネットワーク技術者としての公的な資格試験が,テクニカルエンジニア(ネットワーク)で
午前問題 50 問の出題内訳は,IT 共通知識体系のうち,「コンピュータシステム」が 10 問,「システ
す。この資格についてはぜひ取得したいという技術者が,相変わらず多いということでしょう。
ムの開発と運用」が9問,「ネットワーク技術」が 27 問,「セキュリティと標準化」が4問でした。
次に,出題傾向と難易度です。午前問題の出題範囲は,「コンピュータシステム」,「システムの開
コンピュータシステム分野の 10 問の内訳は,「ハードウェア」が1問,「基本ソフトウェア」が2問,「シ
発と運用」,「ネットワーク技術」,「セキュリティと標準化」の4分野です。出題の重点分野は「ネットワ
ステムの構成と方式」が6問,「システム応用」が1問です。
ーク技術」と「コンピュータシステム」ですが,14 年度に引き続き,「コンピュータシステム」からの出題
システムの開発と運用の分野では,14 年度の出題内容とは,大きく異なりました。例えば,ソフトウ
数が 10 問,「システムの開発と運用」から9問という配分でした。コンピュータシステム分野が出題の
ェアの開発手法やテスト手法の問題が出題された半面,オブジェクト指向などに関連する問題は出
重点分野であることの意味が薄れてきています。また,ネットワーク技術分野では,14 年度に比較し
題されませんでした。出題範囲がかなり広いので,出題される問題も毎年大きく異なるというように考
てもさらに過去問からの流用が増え,基本的な技術知識を確認しようとする傾向が大きくなっていま
えたほうがよいでしょう。
す。このため,午前問題の難易度については,出題の大部分は基本的な問題や過去問からの流用
ネットワーク技術分野の 27 問を専門分野別に分類すると,LAN 系技術が 18 問,WAN 系技術が6
が増加したことなどから,やや易化したといえます。
問,計算問題が3問という割合でした。LAN 系技術については,TCP/IP プロトコル関連の出題が最
午後Ⅰ問題は,LAN 系技術を中心とした出題には変わりありませんでした。しかし,サーバの移設
も多く 11 問,続いて LAN スイッチ関連の問題が3問ありました。一方,WAN 系については,HDLC
をテーマとしたり,Web システムの構築に関連する知識が要求されたりして,従来のネットワーク技術
やフレームリレーに関する問題は出題されず,従来技術を問う問題は少なくなっています。新しいと
を中心とした出題から少し運用やシステム関連の出題が多くなりました。新しい技術内容としては,
ころでは,H.323 のゲートキーパに関する問題が出題されていました。計算問題の3問は,いずれも
広域イーサや VoIP,IMAP4 などが挙げられます。14 年度はほとんど出題されなかった計算問題が
過去問からの出題でした。
かなり設定されていたことなどが特徴といえます。なお,難易度を全体的に評価すると,例年並とい
セキュリティと標準化の分野からは,公開かぎ暗号化方式,ディジタル署名,セキュリティの標準化
えます。
の問題が出題されていましたが,いずれも標準レベルの問題です。
午後Ⅱ問題は,14 年度と同様にネットワークの専門知識に関し,さらに深く突っ込んだ出題内容
でした。問1は IP パケットの流れがどのように行われるかが正しく把握できなければ,難しく感じられ
■午後Ⅰ問題について
ますが,TCP/IP に関する技術力をみる問題としては良問といえるでしょう。問2は,ネットワークセキ
午後Ⅰ問題を解答するにあたっては,広域イーサ,VoIP,LAN スイッチ,ADSL,IMAP4,SSL,
ュリティに特化した問題であり,ワンタイムパスワードの認証方式,無線 LAN のセキュリティ上の問題,
Web サーバの負荷分散などの技術を幅広く理解している必要があります。また,記述式の問題では,
SSL に関する詳細の技術知識が要求される問題でした。このため,受験者が持ち合わせている技術
解答作成にあたってのポイントが,それぞれ問題文に記述されていましたので,それらを十分に考
力が大きく反映されると思います。問1と問2を総合的に評価すると,問題間における難易度の差は
慮できたかどうかによって,正解できるかどうかの分かれ目になると思います。なお,問2については,
あまりなく,さらに 14 年度の難易度と比較しても,ほぼ同程度と考えられます。したがって,15 年度
移設サーバの IP アドレスを変更しない案と,する案の考え方がなかなか整理しにくいところがありま
の合格率も,例年並の7%台になるものと想定されます。
したので,この問題を選択した受験者は,かなり苦戦を強いられたのではないでしょうか。
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次に,各問ごとの特徴を簡単に述べておきます。
インターネット接続の信頼性を向上させるため,マルチホーミング接続をすることが多くなっていま
問1:音声データ統合網におけるネットワークの再構築
す。この問題は,マルチホーミングを行うときの技術的な問題や VPN 設定などに関するものです。マ
広域イーサを利用したネットワークになっていましたので,難しい印象があります。しかし,ネットワ
ルチホーミングを利用するときは,ISP から与えられた IP アドレスがどのように使用されるのか,インバ
ークの基本的な知識を問う設問が多かったので,見た目よりは難しくありません。ポイントは,音声パ
ウンドとアウトバウンドのトラフィックは IP アドレスに従って,どのように転送されていくのかなどという
ケットの優先制御や帯域制御を正確に理解しているかどうかです。また,空欄イに入れる字句も,知
観点から正しく考えていくことが重要です。また,問題文の記述内容の条件を正しく反映して考えら
らないと答えようがありませんので,この設問だけは難しかったといえます。
れるかということも必要です。なお,この問題では,穴埋め問題を除いた記述式の設問にどれだけ
問2:サーバの移設
正確に答えられるかよって合否が決まってくると考えられます。七つある設問のうち,四つ確実に正
テーマはサーバの移設ですが,問題の中心は IP アドレスの管理に関する問題です。サーバの IP
解すればよいと想定されます。
アドレスを変更しない案とする案,またC社センタのどこに移設するのか,スイッチングハブにおける
問2:リモートアクセス環境の構築
デフォルトゲートウェイの IP アドレスの変更は何を意味しているのかなど,かなり考えにくい要素があ
チャレンジレスポンス方式を利用したワンタイムパスワード,無線 LAN における WEP を使用したと
ります。しかも,設問1の設定変更内容の表が完成しないことには,それ以降の設問も正解できない
きの問題,SSL の仕組みに関する詳細な技術知識が必要とされる問題です。これらの技術知識がな
ようなところがあります。午後Ⅰのなかでは,最も点数が取りにくい問題であったかもしれません。
い場合には,的を射た解答を作成していくことは困難であると思います。その一方,問題文と設問の
問3:小規模ネットワークの構築
対応関係が明確になっており,問1のように問題文全体の記述内容を確認しながら解答する必要が
ADSL に関する設問は,基礎的な技術知識ですから,正解できるでしょう。また,ファイル転送量の
あまりなく,合否については,セキュリティに関する専門知識の有無に大きく左右されるものと思われ
計算問題も,条件がそれほど複雑ではありませんので,正解できると思います。残された三つの記
ます。
述式問題に何問正解できるかによって,差がつく問題です。IMAP4 の利用方法については,問題
■平成 16 年度の試験に向けて
文の「受信メールの添付ファイルを取り出さないこともできる」,設問3(2)は,「ブラウザで独自ドメイン
まず,午前問題についてです。午前問題は,「コンピュータシステム」と「ネットワーク技術」が,出
を指定した場合には,現在の Web サーバを示す URL が返されます」という記述をヒントに考えると,
解答できる問題です。問2とは反対に,最も点数を取りやすい問題だったといえるでしょう。
題の重点分野になっていましたが,15 年度の傾向を見ると,必ずしも出題範囲どおりともいえなくな
問4:Web を利用したシステム
っています。いずれにしても「コンピュータシステム」や「システムの開発と運用」分野からの出題は,
広い範囲からの出題となりますから,過去問などを中心としながら,日頃から幅広く学習しておくこと
Web サーバにおけるセション管理を中心とした問題のため,発信元 IP アドレスを識別情報として使
が必要になるでしょう。
用できないことや,SSL を使用したとき暗号化される範囲,セション管理の方法などについて理解し
一方,ネットワーク技術に関しては,午後問題に対応できるだけの技術力をじっくり養っていく必要
ていることが必要です。こうした知識があれば,難なく解答できるでしょう。ただ,計算問題は少し複
がありますので,午前問題だけを対象にした特段の対策は必要ないと考えます。ネットワークに関す
雑なところがありますから,条件を確認しながら計算することが必要です。
る専門分野も幅が広いので,まず TCP/IP プロトコルからしっかり学習し,午後問題レベルの技術を
■午後Ⅱ問題について
徐々に身につけていくとよいでしょう。なお,レベルⅢの問題については,出題数が限定されるほか,
午後Ⅱ問題は「全社ネットワークの再構築」,「リモートアクセス環境の構築」というテーマでした。ま
ある特定の技術に関して,その細部にわたる内容が問われる可能性がありますので,あまり気にす
た,事例解析といわれるように,個々の設問で問われる技術内容が,かなり高度です。したがって,
る必要はありません。午前問題では,基本となるレベルⅡまでの問題を完全にできるようにしておく
午後Ⅱ問題を解くには,技術知識を十分にマスターして取り組むことが要求されます。特に,問1は
ことが必要です。ネットワーク試験においては,午前問題でいくら高得点をあげても,午後問題で一
問題文で定義されたマルチホーミング装置の仕様を理解して取り組む必要があります。一方,問2
定の水準に達しない限り合格できません。したがって,午前問題のレベルⅢの問題に対応するより
はいろいろなセキュリティ技術の詳細を理解していることが必要で,個々の技術内容を詳細に把握
は,次の午後問題に対応する力を養成していくことが最大のポイントになります。
していなければ,点数をとりにくい問題であったといえるでしょう。
次に,午後問題についてです。ここでは,午後Ⅰ,午後Ⅱに分けるのではなく,共通の課題として
問1:全社ネットワークの再構築
述べます。15 年度の試験でも,最近の技術動向をかなり反映した出題内容でした。16 年度以降もこ
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の傾向は続くと考えられます。しかし,新技術だけを追いかけても,ネットワーク全般に関する基礎
ントです。さらに,ネットワークに関する応用能力を養っていくという意味では,過去問を数多く解い
技術をまず固めておかないことには,応用が利きません。つまり,どのような問題が出題されても,そ
てネットワークに対する勘所をつかむことも必要です。あくまでも基本技術をしっかり確立させないこ
れに対応できるように,基本技術をしっかりとマスターしておくことが必要です。例えば,次のような
とには,なかなか自分の力として反映できず,午後問題の解答が作成できないという事態に陥って
分野については,十分に学習し,できるだけ弱点を残さないように学習することが必要です。
しまいます。したがって,まず前述の①から⑤までの基本技術を十分にマスターすることから始めて
① LAN 技術
ください。しかし,この基本技術の修得については,かなりの時間が必要になりますから,あらかじめ
・IP 通信の全体的な仕組み(IP アドレス,MAC アドレス,ドメイン名の関係,アドレス変換に関する
多くの学習時間を見込んでおくことが必要です。また,一度,理解しても繰り返し技術知識をインプ
さまざまな問題,IP ルーティングに関する詳細な技術知識)
ットしていかないと,すぐに忘れてしまいます。各自工夫をしながら継続的に学習していく姿勢を確
・LAN スイッチやルータ,ブリッジ,負荷分散装置などの LAN 機器の使い方や機能など
立してください。
・DNS サーバ,プロキシサーバ,メールサーバ,Web サーバなどの機能・役割など
このように,テクニカルエンジニア(ネットワーク)の資格を取得するためには,相当の努力が要求さ
・IP-VPN,広域イーサネット,PPPoE,ADSL などの LAN-WAN 接続技術
れます。この資格を保有することは,それだけ価値が高いということになりますから,学習計画をしっ
② セキュリティ関連技術
かり立てて,次回の試験では必ず合格するように努力していきましょう。
・暗号技術,認証技術,ファイアウォール,サービス妨害攻撃,ウイルス対策,スパムメール対策,
インターネット VPN と IP-VPN,セキュリティポリシの考え方など
③ ネットワーク設計と運用
・ネットワーク設計の基本的な考え方や移行計画,ネットワーク運用時の基本的な動作や考え方な
ど
④ 計算問題
・待ち行列,トラフィック計算,通信料金,データ転送時間,回線速度などの計算
⑤ WAN 技術
・ISDN,フレームリレー,ATM などの技術的な方式・特徴など
これらの基本技術を十分に理解したうえで,新技術の詳細などを理解していくようにするとよいでし
ょう。
さらに,午後問題は,出題内容が一つの技術に絞ったものよりも,複合的な観点から出題されます。
この傾向は,午後Ⅱ問題では特に顕著になりますから LAN,LAN-WAN を中心として,その設計・
構築のほか,ネットワークの移行や運用管理技術など,相互に関連した総合問題に対応できる技術
力を養っていくことが必要になります。しかし,試験対策という意味では,問題文に記述された範囲
内で考えることが原則ですから,問題で記述された内容を正しく理解できるだけの基本的な技術力
をまず確保することが必要です。これが基本技術をマスターすることの必要性にもなります。こうした
基本技術をベースにして設問で何が問われているかを明確にし,解答にあたっての条件などを的
確に抽出したうえで,そこから論理的に考えていくような能力を磨いていくとよいでしょう。
また,午後Ⅱ問題は数十字程度の記述式で解答する設問が多くなります。記述内容については,
考え方や根拠を明確に示すほか,キーワードをしっかりと押さえた解答を作成することが大きなポイ
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