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広島大学病院 輸血を受ける前に 知っておいていただきたいこと 輸血について説明します • • • • • わかりやすい言葉で病状の説明をします。 勧められる方法の利点と欠点の説明をします 勧められる方法の利点と欠点の説明をします。 代わりになる方法の利点と欠点の説明をします。 あなたは納得できるまで質問できます あなたは納得できるまで質問できます。 自主的な選択で同意あるいは拒絶できます。 輸血の利点と欠点 血液にはどんな成分がある? • 血液=血球+血漿(けっしょう) – 血球=赤血球+白血球+血小板 – 血漿=蛋白(たんぱく)質が多い黄色い液体 赤血球って何? 赤 球 何 酸素(さんそ)の運び屋さん • 袋の中は 袋の中はヘモグロビン グ ビン – ヘモグロビンは酸素と結合 • 正常人ではおよそ450万個/mm3 2 酸素 O – ヘモグロビン値は12g/dL以上 • 骨髄(こつずい)で作る – 寿命(じゅみょう)は100日 • 貧血=赤血球の不足のこと – 半分以下になると酸素を運ぶ力が低下 – 脳など全身の臓器(ぞうき)が酸素不足になる 白血球って何? 白 球 何 体を守るおまわりさん • 体を守るやくわり =免疫(めんえき) 免疫(めんえき) • 数はおよそ5000個/mm3 – 顆粒球は骨髄で作り細菌を食べる。 顆粒球は骨髄 作り細菌を食べる たいほ状 バクテリア – リンパ球はリンパ節で作る。 ウイルス • 抗体(こうたい)を作る。 がん細胞 • がん細胞や感染細胞を殺す。 • 白血球が減ると抵抗力低下する。 • 白血球の輸血はむずかしい。 – 顆粒球の輸血は副作用が多く特別な準備が必要。 – 他人のリンパ球が住み着くと体を攻撃する。 着 体 撃す 。 – 幹細胞(かんさいぼう)の輸血は特に移植(いしょく)という。 血小板って何? 小板 何 血管の修理屋さん • 役割はやぶれた血管にはりついて出血をとめること – はたらき過ぎると血栓(けっせん)症 • 骨髄で作り寿命は1週間 • 数はおよそ250,000/mm3 – 足りないと出血がとまらず危険 3以上が必要 • 手術前には50,000/ mm , / • 慢性(まんせい)でも5,000/mm3以上は欲しい • 抗がん剤治療では10,000/mm3以上が目標 • 血小板の抗体(こうたい)ができると輸血効果が落ちる。 血漿蛋白とはどんなもの? • 血漿中に7g/dLの濃度 アルブ ミ ン – 半分がアルブミン – 4分の1が免疫グロブリン – 10%が凝固(ぎょうこ)因子など • 肝臓やリンパ球などが作る • 寿命は半日~3週間と成分で色々 その他 免疫グロブリン 凝固因子 • 新鮮凍結(とうけつ)血漿 – 凝固因子が不足した時に使う – 栄養補給のためにはならない – 分画した成分製剤の方が安全で有効 輸血は足りないものを補う • 輸血は病気の原因をなおす治療ではありません。 輸 病 治 • 輸血は、血液の成分が不足して体に障害が出るのを防ぐために 補充する と す 補充することです。 • 足りない成分だけを選んで輸血することを成分輸血といいます。 • 成分輸血は血液を有効に利用するという意味もあります。 日本では1年に 日本では1 年に500 500万人が献血して 万人が献血して 120万人が輸血を受けています 120 万人が輸血を受けています • 有効なこと – 輸血が必要な状態を改善します。 – 多くの命が救われ健康をとりもどしています。 • 安全なこと – 血液は生きた臓器です。 – このため色々な副作用が発生します。 – できるだけ安全性をめざします。 • 適正なこと – 善意にもとづく限りある資源です。 – 厚生労働省の輸血療法の指針を守ります。 厚生労働省の輸血療法の指針を守ります 有効 安全 適正 輸血の副作用 輸 副作用 (1) 免疫=自分以外はイヤだと反応すること • • 顔かたちがちがうように血液にも多くの型の組み合わせがあります。 顔かたちがちがうように血液にも多くの型の組み合わせがあります すべての型をぴったり合わせることはできません。 • 輸血や妊娠の後や、時には自然に「自分とちがうものが入ったら、排除 輸血や妊娠の後や 時には自然に「自分とちがうものが入 たら 排除 する」と、抗体(こうたい)ができることがあります。 – 抗体がある人に輸血をしても効果がえられません。 – 輸血回数が多い人ほど副作用が出やすくなります。 – 白血球、血小板、血しょう蛋白の抗体は事前にはわかりません。 赤血球の輸血はABO式とRh式のDだけを合わせ、あとは他の赤血球抗 体がないか確かめて行います。 • • • • すぐ出る副作用としては、発熱が約5%、じんましんが2%、ぜんそくは 0.2%、ショック状態は1万回に1回程度などがあります。 2‐3日おくれて出る副作用に溶血(ようけつ)反応があります。 おくれ る副作 溶血 う 応があ ます 副作用がでたら症状をやわらげる治療を行います。 輸血の副作用 輸 副作用 (2)血液で感染する病気がある • 過去の歴史で梅毒 過去の歴史で梅毒、細菌、マラリア、肝炎、エイズウイルスなどが 細菌 マラリア 肝炎 エイズウイルスなどが 輸血で感染したことがあります。 • 日本赤十字社は献血時の問診をきびしくしました。 日本赤十字社は献血時の問診をきびしくしました – 海外渡航歴、性行動歴など • 最新の検査を行うことで安全性は非常に高まりました。 最新の検査を行うことで安全性は非常に高まりました – 現時点の日本赤十字社の検査は世界で最高水準です。 – しかし検査には限界があり、すり抜けるものがあります。 か 検査 は限界があり すり抜けるも があります 現在の日本では、B型肝炎ウイルスが1年間に15件程度、C 型肝炎ウイ 型肝炎ウイルスとエイズウイルスが数年に1件以下の確率で と イズウイ が数年に 件 確率 感染する可能性があると推定されています。 • 検査法がなかったり、未知の病原体もあります。 検査法がなか たり 未知の病原体もあります – 感染症の発生が100%なくなることは無理です。 輸血後肝炎の発生率の推移 (%) 売 売血 献血に移行 献血 HBs抗原検査 400mL献血 成分献血 400mL献血・成分献血 HCV抗体(第1世代) ( ) HCV抗体(第2世代) 500プールNAT 20プールNAT 年 輸血前後の感染症検査とは? • 肝炎ウイルスやエイズウイルスのように 肝炎ウイルスやエイズウイルスのように、感染症の中には感染し 感染症の中には感染し ていても症状がないことがあります。 • 輸血後の検査で陽性(=感染したことがある)であった場合、感染 輸血後の検査で陽性(=感染したことがある)であった場合 感染 は輸血が原因か、その前からなのかわかりません。 • このため「輸血前の検査または血液保存」を行い このため「輸血前の検査または血液保存」を行い、そして「輸血後 そして「輸血後 に検査」することが勧められています。 • 本院では入院中に輸血が行われたら 本院では入院中に輸血が行われたら、退院の時に「輸血後感染 退院の時に「輸血後感染 症検査のお知らせ」をお渡しします。 担当医に見せて輸血後の検査を受けてください。検査項目は肝炎 検査項目は肝炎 • 担当医に見せて輸血後の検査を受けてください ウイルスとエイズウイルスが勧められています。タイミングは輸血 後2~6ヶ月後ごろです。 輸血の副作用 輸 副作用 (3)輸血後急性肺障害(TRALI) • 英語の頭文字をとって、そのまま「トラリ」と呼んでいます。 英語の頭文字をと て そのまま「トラリ」と呼んでいます – 最近になって、ひとつの病的な状態と考えられるようになりました。 – 日本でも年に数十例ぐらい発生していると推測されています。 日本でも年に数十例ぐらい発生していると推測されています • 輸血中あるいは数時間以内に、熱が出て呼吸が苦しくなります。 – 輸血前から肺や心臓の病気があると判断がむずかしいです。 輸血前から肺や心臓の病気があると判断がむずかしいです – 酸素などの治療で4日以内に回復しますが、死亡率は5‐15%です。 • 原因は確定していません。 原因は確定していません – 輸血用血液のなかに白血球に対する抗体があり、たまたまピッタリ当 てはまった患者さんの白血球と反応して炎症が起こるという説 – 血液を保管している間に発生した物質が炎症を起こすという説 • 予防対策は世界中で模索中ですが確立していません。 輸血の副作用 (4)輸血後移植片対宿主病(GVHD) • 白血球の型が患者さんと非常に近い場合 白血球の型が患者さんと非常に近い場合、輸血で入った他人の 輸血で入 た他人の 白血球が住み着いて、増えてしまい、患者さんの体を攻撃する病 気です。 気です – 意図しなかった”白血球の輸血”の結果といえます。 – 特に 特に”生きのいい”輸血 生きのいい 輸血 、肉親からの輸血が危険です。 肉親からの輸血が危険です – 皮膚・粘膜(ねんまく)や骨髄などがやられ、死亡率が非常に 高いので恐れられています。 高いので恐れられています • 放射線をあてて白血球を殺す処理をした血液製剤を使用するよ うになったため 2000年以後は発生しなくなりました。 うになったため、2000年以後は発生しなくなりました。 血液の安全対策のまとめ 献血者 献血血液 身分証明書で献血者の本人確認をします 身分証明書で献血者の本人確認をします。 問診の強化しています。 コンピュータで過去の献血歴を調べます。 ンピ タで過去の献血歴を調 ます。 血球製剤 製剤 血しょう製剤 医療機関 危険があると自己申告された血液は使いません。 最初に流れ出た血液は検査に回し輸血に使いません 最初に流れ出た血液は検査に回し輸血に使いません。 血液の一部は凍結して11年間保管します。 最新の抗原・抗体検査法で調べます。 ウイルスの遺伝子を核酸増幅法で調べます。 遺 を核酸増幅 す 白血球をフィルターで除き、放射線を照射します。 採血後6ヶ月間は情報を得るために使いません。 製造中にウイルス除去 製造中にウイルス除去・不活化処理をします。 不活化処理をします。 輸血前血液の保管をし、輸血後検査を勧めます。 輸血の実施記録を20年保管します。 輸血の実施記録を20年保管します 自己血輸血とは? • 輸血は救命医療として不可欠な治療法です 輸血は救命医療として不可欠な治療法です。 • 現在の同種血(=他人の血液)輸血は非常に安全です。 • しかし輸血副作用・合併症はゼロではありません。 輸血 併症 ゼ あ – 免疫抗体ができること – 輸血後急性肺障害が発生することがあること – 未知のウイルス感染症の可能性があること – 除去できないものによる反応があること – 免疫能の抑制がおこること • 自分が供血者である自己血は、副作用が少ない、より安全な輸血 法です。 自己血輸血をお勧めする場合 ① ② ③ ④ ⑤ 手術の前の状態が良く、緊急手術を要しない場合 手術の前の状態が良く 緊急手術を要しない場合 手術中の出血量が予測でき、輸血が必要となる場合 稀な血液型の血液を必要とする場合 前に輸血副作用や免疫抗体がある場合 宗教的信条によって同種血を拒否される場合 自己血輸血の種類 貯血式=何日も前から採血して貯めておいて使う。 希釈式=手術直前に点滴しながら採血して後で使う。 回収式=手術中に出血した血液を回収して使う。 自己血輸血をお勧めしにくい場合 • 準備する時間的な余裕がない 準備する時間的な余裕がない。 • 大量の採血に耐えられる体力がない。 – 重い心臓や肺の病気がある。 – 採血で気分が悪くなり倒れる。 (医師との相談になります) • 血液の病気がある。 – 貧血だけなら、造血ホルモン剤の注射や鉄剤が有効で採血 できることがあります。 • 採血に適した血管がない。 – 採血に時間がかかりすぎると血液に変化がでやすい。 – せっかくとった血液が固まったり量が不足して使えない。 自己血輸血について 了解していただきたいこと • 輸血には同種血( 輸血には同種血(=他人の血液)と自己血があります。それぞれの 他人の血液)と自己血があります それぞれの 利点と欠点を理解して下さい。 • 必要な量を予想して貯めますが余ったら捨てます。 必要な量を予想して貯めますが余ったら捨てます • 予想を越える出血で自己血だけでは足りない場合は、やむをえず 同種血を追加することがあります。 同種血を追加することがあります • 血液の処理、保存上で不適切なこと(量不足、破損、汚染)が発生 したら安全のため捨てます。 したら安全のため捨てます • 採血の副作用が発生することがあります。 – 迷走神経反射 (気分不良、吐く、倒れるなど)がおこる。 (気分不良 吐く 倒れるなど)がおこる – 採血針で神経を傷つけ、麻痺や激痛がおこる。 – 止血が不十分な時、皮下に血液の固まりができる。 止血が不十分な時 皮下に血液の固まりができる 輸血に関する同意書 • 輸血療法は命を救う一方で、副作用が発生することがあります。 が が このため患者さんのご了解をいただく必要があります。 • 医師は輸血 医師は輸血で期待される有益な点が、欠点を上回っていると思 期待される有益な点が 欠点を上回 ると思 われる時、輸血を受けることをお勧めします。 • 医師は予想できることに対して準備をします 医師は予想できることに対して準備をします。それでも副作用が それでも副作用が 発生したら、すぐに説明し対処します。 • わからないことがあったら質問して下さい。 わからないことがあったら質問して下さい • 輸血に同意される場合、同意書に署名して下さい。 健康被害救済制度 • • • • 生物由来製品を 適正に使用したにもかかわらず 発生した感染等による健康被害 医療費などの諸給付を する制度 =輸血や血液製剤など 輸血や血液製剤など =輸血の指針を守った =不可抗力で発生 不可抗力 発生 =被害者を救済 • 「医薬品医療機器総合機構」に申請します。 – 感染症な 感染症などで入院治療が必要な健康被害が発生した場合、 入院治療 必要な健康被害 発 場合、 医療費の自己負担分が補償されます。後遺症があれば障害 年金などの支給もあります。 – 問い合わせ先は 0120‐149‐931です。 インターネットで輸血情報 インタ ネットで輸血情報 • 厚生労働省 血液事業の情報ページ 血液事業の情報ペ ジ – http://www.mhlw.go.jp/new‐info/kobetu/iyaku/kenketsugo/index.html • 日本赤十字社 血液事業 – http://www.jrc.or.jp/blood/index.html • 日本血液製剤協会 – http://www.ketsukyo.or.jp/blood/blo_02.html • 日本輸血・細胞治療学会 日本輸血 細胞治療学会 – http://www.yuketsu.gr.jp/ • 医薬品医療機器総合機構 健康被害救済制度 – http://www.pmda.go.jp/kenkouhigai/kansen.html • 広島大学病院輸血部 – http://home.hiroshima‐u.ac.jp/yuketsu/ 輸血を受ける前に 知っておいていただきたいこと Ver 4 0 Ver.4.0 広島大学病院輸血部 発行:2010年4月1日