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平成 16 年度
革新的農業技術習得研修
「高度先進技術習得研修 」
耕作放棄地を利用した小規模移動放牧技術
平成 16 年9月8日∼ 10 日
独立行政法人
農業 ・生物系特定産業技術研究機構
畜産草地研究所 山地畜産研究部
平 成 16 年度高度先進技術習得研修テキスト
耕作放棄地を利用した小規模移動放牧技術
目
次
1 .水田 ・里山・ 耕作放棄地放牧 の意義と 普及促進 の課題
畜産草地研究所
飼料資源研究官
落合一彦・・・1
2 .中山間地地における放牧利用技術の事 例
畜産草地研究所
山地畜産研究部
小山信明・・・ 11
山地畜産研究部
手島茂樹・・・ 25
山地畜産研究部
進藤和政・・・ 35
3 .小規模移動放牧における放牧管理
畜産草地研究所
4 .小規模移動放牧の生 産 性
畜産草地研究所
5 .現地実証試験圃場(須 坂)の 状況
JA 須 高
山岸賢一・・・・・・・・・・・・・・・ 45
参 考 資 料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49
水田・里山・耕作放棄地放牧の意義と普及促進の課題
畜産草地研究所
飼料資源研究官
落合一彦
1.水田・里山・耕作放棄地放牧の意義
日本の土地利用は奥山は牛馬の放牧利用、里山・里地は雑木林の薪炭利用、飼料用ある
いは田畑の刈り敷き用としての草の刈り取り利用、そして水の利用が可能な場所は水田利
用という形態であった。奥山の放牧利用は共同利用牧野、そして公共牧場へと変遷してき
た(次ページの図参照)。
1960 年代頃まで行われてきた里山や里地の採草利用は、化学肥料の普及及びトラクタ
ーの普及による役牛の減少により行われなくなった。里山・里地は住宅地に開発されたり、
人の手が入らない雑木林になるなど生態的な荒廃が進んでいる。これら荒廃した低・未利
用の里山・里地の放牧利用可能面積は少なめに見積もっても 100 万 ha 以上あると見られ
る。
府県に広く賦存するこれら低利用・未利用の雑木山や耕作放棄地あるいは休耕田などを
放牧利用することで荒廃が進みつつあるこれらの土地の景観は改善され、生物多様性も向
上する。
最近肉用牛による水田を含めた里山・里地放牧が広がりつつあるが、この動きは単なる
一過性のものではなく、日本における土地利用の新たな動き、方向性と位置づけたい。
機械力ではなくて牛力を利用して荒廃した里山・里地を管理し、しかも十分な家畜生産
を生み出してくれる技術開発がなされればこの動きはさらに加速される。
(1)食料(飼料)自給率の向上
使われていない草資源や土地を使うことで飼料自給率が向上する。肉用繁殖牛(2歳以
上)の頭数は 66 万頭であり、現在の肉用繁殖農家の飼料自給率が 67% であるから、購入
飼料の TDN 量は 66 万× 3.2kg /日× 365 日× 0.33 =約 25.4 万tである。輸入飼料の全
TDN 量は 1,500 万tだから、繁殖牛を全て自給飼料で飼ったとしてもが全体の 2%弱であ
る。放牧期間は1年の半分程度だから、飼料自給率向上への寄与率はさほど大きくはない。
しかし、確実に自前の餌で牛を飼える技術ではある。
(2)肉牛飼養農家にとっての省力化、経費節減
図1は中国地方で放牧を導入したときの肉用牛経営の収益性の改善を示す。放牧日数が
増えるほど農作業が軽減され、所得が増えることが示されている(千田、2003)。
栃木県那須地域で放牧を導入した農家の反応で一番多いのは牛飼いが楽になったという
ことである。もう牛飼いをやめようかと考えたお年寄りが、放牧を導入してみて、これな
らまだまだ牛飼いが続けられると元気になった例も多い。
-1-
-2-
図4−3には水田との複合経営農家
における1日の作業時間が放牧の導入
家畜に関わる農作業(時間)
1000
畜産所得(千円)
1000
800
800
り、季節による作業時間の平準化がで
600
600
き た こ と が 示 さ れ て い る (千 田 、
400
2003)。
200
図2は島根県大田市で、放牧を導入
した肉牛農家の感想をまとめたもので
ある(千田、2003)。①牛舎作業の軽
60
70
51
72
41
23
農作業
73
03
によって夏期間の肉牛管理時間 が減
400
200
畜産所得
0
0
0
90
150
繁殖牛1頭当たり年間放牧日数
210
図1 放牧による肉用牛経営の収益性の改善
−小規模経営(繁殖牛4頭)
・粗飼料自給−
注:斜数値は1日当たり労働報酬額
減、②粗飼料調整作業の軽減、③景観
の改善、④草刈り作業の軽減、⑤濃厚
飼料の節減、⑥イノシシ被害の軽減、
⑦繁殖性の向上、⑧地元民や子供達が
見に来るようになったことなどがあげ
られている。とくに、良い意味で地元
民に関心を持たれたり、小学校や幼稚
園などの子供達が来てくれることは牛
を飼っているお年寄りにとってはよい
励みとなる。
(3)景観の向上
写真1、写真2のように牛を放牧す
ることによって景観が良くなる。
また、近くの人が子供を連れてよく
牛を見に来る光景も見られるようにな
る(写真3)。
これまで畜産は臭い、糞尿、ハエな
ど周辺の住民に負のイメージしか与え
(畜産経営面)
牛舎作業の軽減
粗飼料調達の軽減
濃厚飼料の節減
繁殖性の向上
疾病減少
飼養頭数の増加
(農地管理面)
草刈り作業の軽減
イノシシ被害の減少
果物が良くできた
(生活社会面)
景観の改善
地元からの関心
園児・
児童の来場
多大な効果
効果あり
0
てこなかったが、牛がいることによっ
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
回答割合(%)
図2 放牧 を行って良かったこと
注:
大田地区の肉用牛飼養農家の調査結果による。
2002年2月∼5月実施。回答農家47戸。
て荒地が美しい草地になり、風景も和
やかになることがわかってもらえる
と、周辺住民の畜産に対する意識も変わっていくことが期待される。
(4)獣害の減少
とくに西日本ではイノシシの害がひどく、山間地ではそれが原因で耕作をやめたり、人
間が里に追いやられることもあるという。表1は滋賀県木之本町で耕作放棄されていた水
田に試験場の牛を1シーズン放牧した後、住民にアンケート調査をした結果である。
まず第1に獣害(イノシシ)が少なくなったことがあげられている。第2に「地域の憩
いの場ができた、活性化した」とあるが、地元の人が頻繁に牛を見に行くことで、イノシ
シも出にくくなると思われる(写真3,4)。「畜産公害・悪臭問題が心配」というマイ
-3-
ナスの答えが少し( 11%)見られるが、好意的な反応が圧倒的に多い。
表1
耕作放棄地への牛の放牧に対する住民アンケート結果(滋賀県木之本町):
獣害が少なくなって良かった
41 %
地域の憩いの場ができた、活性化した
34 %
景観が良くなった
15 %
畜産公害悪臭問題が心配
11 %
写真1
写真3
水田に牛がいる風景
写真2
草地化された棚田跡
近くの住民が牛を見に来る
写真4
放牧による獣害回避(滋賀県木之本町)
2.各地における取り組み状況
(1)山口型放牧
水田・里山・耕作放棄地放牧の取り組みが早くから行われてきたのは山口県である。山
口県では独自の技術開発を行い、「山口型放牧マニュアル」をまとめている。ミカン園あ
とや山間地や市街地近くの放棄水田あとなど、耕作放棄地の放牧利用が多い。県の畜産試
験場が放牧によく慣れた貸し出し牛( レンタカウ)を準備して、希望者に貸し出す制度や、
県や市町村レベルで簡単な電気牧柵セットを貸し出す制度があることが耕作放棄地放牧の
普及に大きな力となっている。平成 15 年で水田放牧が 34 ヶ所 49ha 、耕作放棄地などの
移動放牧が 67 ヶ所 49ha 普及している。また、平成 15 年末には会員数 100 名以上の山口
型放牧研究会が結成された。
-4-
(2)熊本県、大分県、長崎県など九州での取り組み
水田放牧は阿蘇地方で比較的早くから取り組まれ、秋に外輪山の草原放牧を終えて里に
戻ってきた牛を冬季間、転作田のイタリアンライグラスに放牧する試みがなされた。ミカ
ン園あと、里山の放牧も天草を中心に早くから取り組まれ、普及所と農家が一体となって
適草種の選定や草地造成法の検討を行ってきた。
大分県でも早くから、シイタケ原木のクヌギ林を利用した放牧や、裏山放牧が行われて
きた歴史がある。近年になって水田放牧の試みも始まり、山間地の休耕田やミカン園を地
域ごと囲い込んで放牧利用する「谷ごと放牧」の取り組みも行われている。
長崎県でも島嶼部を中心に牛を放牧する飼養形態は古くからあり、電気牧柵の普及と休
耕田・ミカン廃園の増加により、傾斜地の段々畑の放牧利用が行われている。
(3)中国農試が大きな役割を果たした島根県の取り組み
中国農業試験場(現近畿中国四国農業研究センター)では、1994 年頃より中山間地の
放牧利用技術の開発に積極的に取り組んできた。所在地の大田市の農家や大田市、島根県
と協力しながら現地試験を重ね、その中で多くの技術を開発してきた。水田ののり面を保
護する牧柵の張り方、シバや暖地型牧草の導入法と生産力の評価、電気牧柵の利用法、牛
の放牧馴致法、6ヶ月間親子放牧した子牛の粕類を使った肥育法、放牧導入による経済的
労力的メリットの実例調査など、現地の農家における実証を行いながら実用的な技術を開
発した。農家や太田市と共同してこれらの現地試験を行う過程で、農家や地元住民の放牧
に対する理解が深まり、放牧を導入する農家の数が増えるなどの成果があがっている。
(4)桑畠跡放牧が広まりつつある福島県安達郡
福島県はかって養蚕が盛んで、20 年ほど前までは桑園面積が 16,000ha ほどあった。し
かし円高と中国産生糸の輸入増加で、急速に養蚕は減少し放置された桑園が急増した。6
年ほど前から福島県畜産試験場が、和牛飼養農家で桑園跡を利用した放牧の実証試験を開
始した。実証試験を行った農家は飼養労力に余裕ができ、牛を増頭するなど効果が明らか
になった。これがきっかけで普及所も積極的に普及に取り組むようになり、数戸の農家が
遊休桑園の放牧利用に取り組んでいる。
(5)栃木県の水田・里山放牧
栃木県北部地域(那須地域)では農家1戸あたりの耕地面積(水田)が比較的大きく、
飼養する肉牛の頭数も 10 頭前後と多い。従って転作面積も多く、水田で飼料作を作る基
盤があった。 10 年ほど前から地域の先進的な肉牛一貫経営農家が試験場(草地試験場)
のアドバイスで転作水田や裏山・里山に繁殖牛の放牧を始め、徐々に地域に放牧が受け入
れられるようになる。3年前に試験場と普及センターの主催で放牧農家の見学会を行った
ところそれをきっかけに転作田で放牧を始めたいという農家が出てきて、普及所が中心と
なって「那須放牧研究会」が設立され、30 戸余りの肉牛農家、酪農家が参加した。ここ
2年で、 10 戸以上の農家が転作田を利用した放牧を始めている。
-5-
(6)その他の地域でも続々と始められる
四国の高知県では早くからシバを利用した放牧がある程度普及していたし、最近になっ
て徳島県、愛媛県で急傾斜のたばこ畑跡やミカン園跡の放牧利用が始まっている。
京都府や滋賀県などでもレンタルの牛を使った耕作放棄地放牧が始められており、耕作
放棄地の解消や獣害の減少で地域住民の評判が良いとのことである。
長野県でも県と畜産草地研究所山地畜産部が共同で耕作放棄地放牧の実証試験に取り組
んでいて、耕作放棄地放牧がさらに拡大する見込みという。
新潟県、富山県等の北陸地方、神奈川県、埼玉県、群馬県、茨城県などの関東地方、そ
して、宮城県や岩手県、山形県でも休耕田・耕作放棄地放牧の事例が報道されている。
3.水田・里山放牧のさらなる普及のために
このように水田・里山・耕作放棄地放牧は全国的に広まりを見せ、地域や農家の評判も
良い。さらに事例が増え、面積が増えるためには何が必要かを考えてみる。
(1)技術的課題
①低コストで脱柵しにくい牧柵の開発・改善
西日本の耕作放棄地放牧では電気柵は簡単な鉄棒またはプラスチックの棒にポリワイヤ
ーを組み合わせた例が多い。このシステムは設置と撤去が簡単なことがメリットであるが、
物理的な強度はゼロに近く、何らかの原因で牛がパニックに陥った場合など簡単に破られ
る。まわりが山で、脱柵してもあまり問題にならない場所ならこれでも良いかも知れない
が、すぐ隣に稲の植わった水田や野菜畑がある場合はこれより数段脱柵防止機能の高い牧
柵システムが必要になる。物理的に強度を上げるとどうしてもコストがかさみ、設置や撤
去が面倒になるのでその兼ね合いをうまくとった牧柵の開発が必要とされる。
②その土地条件に合った使いやすくて牧養力の高い草種の選定・開発
耕作放棄地に生えた野草を牛が食べてきれいになったのはいいけれど、牛が食べる草が
継続的に生産されないということでは放牧の価値が半減する。その土地の気候条件、土壌
条件、そして管理条件に合った生産力の高い草種の選定が大切である。
積雪の少ない温暖な地域では周年放牧、冬季放牧ができると肉牛農家にとっては大きな
メリットとなる。
③放牧地における繁殖管理・子牛管理
現在は妊娠確認した牛を放牧する形態がほとんどだが、子牛も放牧できると省力化のメ
リットは大きい。子牛の発育を確保しながら放牧をどう行うか、離乳をいつの時点で行う
のが良いか、子牛の馴致や親の人工授精をどう省力的に行うかなど課題は多い。
④女性や老人でも安心して放牧牛の管理(牛の移動・転牧・捕獲)ができる道具立て、
ノウハウ
肉用繁殖牛を飼養する人の大半は女性と老人である。女性や老人でも安心して放牧牛の
管理(牛の移動・転牧・捕獲)ができる道具立て、ノウハウを作る必要がある。牛の運搬
車や捕獲のための連動スタンチョンがあるが、使いやすさやコストの面でまだまだ改良が
必要である。
⑤環境を汚さない放牧方法、飼養密度を明らかにする。
-6-
放牧すると飼養管理が楽だからつい狭い牧区に沢山の牛を入れたり、草がなくなっても
補給飼料を与えていつまでも放牧地に置いておくことがみられる。すると泥濘化がひどく
なり、景観が悪くなり、牛もストレスが多くなる。系外の水の窒素汚染も懸念される。こ
の地域では何頭以上牛を放牧すると地下水汚染の可能性があるとか、泥濘化がひどくなる
とかなどの指針を作る必要がある。
⑥低コストな泥濘化対策
日本は雨が多く泥濘化しやすい。また、水田跡は排水の悪い条件の場所が多い。放牧密
度も含め、低コストな泥濘化対策が求められる。
⑦放牧がまわりの生態系に及ぼす影響の解明
水田跡に作った飼料作物が稲の害虫の発生源になっているという指摘がある。水田の真
ん中に放牧することでまわりの水稲にどんな影響を与えるのか、虫や地下水、あるいは鳥
等についての調査例を重ね、放牧が地域の生態系にどんな影響を与えるのかを明らかにし
て、安心して放牧を広められるようにしたい。
(2)行政的な方策、地域的な取り組み
①きっかけ、先導者
これまで先進的に普及してきた例を見ると、試験場なり普及所なり市町村なりがある程
度の資材補助、濃密な技術的アドバイスを行いながら先導的な農家に放牧を取り入れても
らい、その農家が核となって他の農家にも広まるというパターンが基本のようだ。
市町村独自で簡易牧柵セットを貸し出すとか、試験場の放牧に馴れた牛を貸し出す(レ
ンタカウ)などのやり方も大変有効であった。
②畜産農家以外の地域住民とのつながり
農家以外の住民が参加して里山や耕作放棄地の管理、牛の管理をする例も見られるので
地域運動として市町村やNGOが音頭をとって集団作りを行うことも有効と思われる。
これまで畜産農家以外の地域住民は畜産というと“ 臭い、汚い”というイメージを持ち、
畜産が近くに来るのを嫌うのが通常であった。ゆったりとした美しい放牧がそのイメージ
を変え、地域に牛飼いがとけ込むようになると新しい“牛のいる文化”の創造が期待でき
るのではないか。
③行政からの補助金
水田・里山・耕作放棄地放牧を始めるために必要なお金はこれまでの施設型畜産に比べ
ると微々たるものである。電気牧柵や牛の移動車に対する補助があると大きな効果を生み
出す。
④放牧アドバイザー制度
放牧は経験のない人にとっては大変不安がある技術であり、牛の馴致・管理や草地の管
理などを含めるとかなり複雑な技術である。先進農家が自分の経験、技術をあとから始め
る人に伝える、アドバイスを行うことで、初めて放牧する人は失敗が少なく、安心して始
められる。
-7-
放牧を安心して始めるための準備(栃木版)
1.脱柵が心配
○馴致が最も大事。馴致すれば脱柵の可能性はごく少なくできる。
これまで導入した例では馴致をせずに牛を出して失敗。
○電気牧柵は電圧がかかっていれば通常脱柵しない。
漏電しにくい牧柵→絶縁木を使う(コストやや高い)
足場パイプを塩ビパイプで覆う(安い。1柱5∼600円)
きちんと電圧を測る!
下草を刈る(慣れれば牛が食ってくれる。最下段の線を少し高く)
○物理的にも強い柵が望ましいが・・・・、設置労力、コストと反比例
線:高張力線 2.6mm(20 円/m、最強 700kg )>高張力線 1.6mm(10 円/m、300kg)
>ポリワイヤ(13 ∼ 20 円/m、弱い)
杭(柱):太い丸太( 3,500 円)>細い丸太( 2,000 円)>絶縁木太(2,450 円)>絶縁木細
(1,500 円)=足場パイプ+塩ビパイプ鞘( 500 円)>グラファイポール(750 円)
>ピッグテイルポール(400 円)
伊藤さんの牧柵は高張力線 1.6mm(300kg )3段+細い丸太+絶縁木細
材料費 250 円/m、8万円/ ha(電牧機、ソーラーパネルなどを除く)
立木も利用したから安くて済んだ!
足場パイプ+塩ビパイプ鞘方式だったらもっと安くできる!!
○子牛は親よりもはるかに脱柵しやすい→3段張りは必須
2.どうやって捕まえるか?
○追い込み柵方式→手間やコストがかかる。種付け牛用草地に作るのは可。
○連動スタンチョンまたは足場パイプ+飼槽で毎日(週2∼3回でいい?)少しの餌を
やって捕まえる。→今のところベスト!
○慣れれば家畜運搬車に追い込みやすくなる(馴致)。
3.どのくらいの面積で、何頭くらい飼えるの?
○いい草地で、25 a に1頭、4月中旬∼11月上旬、200日くらい
あまり良くない草地で50 a に1頭
草の不足する時は餌を補給してもよい→泥濘化しないように注意!!
4.移動方法は?
○ 2 ∼ 300m 位ならポリワイヤーを張って誘導路を作って追う(電牧に慣れた牛)。
○1 km 位なら人がひいていくのも可。
-8-
○それ以上になると運搬車が必要。作ってもらって 6 ∼ 70 万くらいか。
共同購入・利用を。
5.草種は?
傾斜地:シバ、センチピード、ケンタッキーブルーグラス
緩傾斜または平地:オーチャードグラス、トールフェスク、ペレニアルライグラス
乳牛用にはペレニアルライグラスがおすすめ。
○追播で簡単に草地化可
寒地型草種の方が牧養力はある。シバやセンチピードはできてしまえば管理が楽
6.スプリングフラッシュ対策
半分に仕切って、半分は1番、2番草収穫、その後に全区放牧できれば最良(伊藤さん
はすでにやっている。)
7.施肥は秋中心に。
放牧では7∼8割が糞で戻されるので通常の施肥の1/3でよい(特にカリは十分)。
石灰、よう隣、リンカルを撒くとよい草地(密度があって牛がよく食う)になる。
8.ぬかるみ対策
出入り口はどうしてもぬかる→ぬかる前に火山灰など入れる。
水飲み槽のまわりもぬかり易い→砂利や火山灰を敷く。しばらくしたら水槽を移動。
9.暑熱対策
黒毛和種は暑さには強い。日陰はあった方がよい。特に初めての牛のためには。
9.近隣対策
○脱柵しないことを説明。もしものことも考えておいた方がいいかも・・・・。
○電牧のわかりやすい表示板を設置
電牧をよく説明。危険はないがさわるとショックがある。子供、お年寄りによく説明。
○臭いやハエ
1 ha 4∼5頭の牛を放牧するならほとんど臭いはしないしハエは少ない。
アブ、サシバエは来るかも。サシバエには防虫剤入りのイヤータッグが有効。
○景観
きれいな草地に牛がいる風景は景観をよくする。わざわざ人が見に来るかも。
10.繁殖管理・子牛管理
今のところ妊娠牛の放牧が主体
親子放牧は、手間がかからず子牛の下痢も少ない。
しかし発育が不揃い。発情発見や捕獲が大変→親子分離放牧、分離ゲート
-9-
中山間地域における放牧利用技術と事例
畜産草地研究所 山地畜産研究部 小山信明
中 山 間 地 域 は 、 山 や 傾 斜 地 が 多 い 農 業 条 件 の 不 利 な地 域で 、耕作放棄地 の増 加 と 荒
廃 が 大 き な 問 題 と な っ て い る 。 ち な み に中 国 中 山 間 地 域 で は 、 耕 作 放 棄 地の 面 積 は
14,600ha 、耕作放棄率 9.2 %に 達し て お り 、耕作放棄地の 保全管理 の 上 か ら も畜 産に 活
用することが期待されている。
そ こ で 、 耕 作 放 棄 地 の 放 牧 利 用 を 目 的 に 、放 牧 利 用 技 術、 牧 養 力の 向上 の た め の 草
地造成法 、及 び草 地か ら水 田へ の復 元 技 術の 開発 を テ ー マ に 中 国 四 国 地 域 で 行 な わ れ
た研究を紹介したい。
Ⅰ .耕 作 放 棄 地の 発 生 と放 牧 利 用
1.発 生 する要 因 と放 牧
1)発生する要因
山 口 県 が 行 な っ た ア ン ケ ー ト 調査 (複 数 回 答) では 、 耕 作 放 棄 地が 発生 する 要因 と
して 高 齢 化( 73% )、次 い で米の 生 産 調 整( 67% )と の 回 答が 多く 、離 農、 重 労 働、 土
地条件の不利等は 25%以下であった。
2)耕作放棄地の発生はなぜ問題か
農 地 ・ 農 村 に は 国 土 保 全 、 水 源 涵 養、 自然環境 の保 全、 良 好な 景観 、文 化の 継承 、
地域社会 の維持活性化 、食 料 安 全 保 障な ど多 面 的 機 能 が あ る が 、 農 地 の 耕 作 放 棄 に よ
ってこれらの大部分の機能が失われる。
ま た 、 耕 作 放 棄 地 は 深 刻 な 獣 害を 引き 起こ すイ ノ シ シ 等 の 野 生 獣の 隠れ 家や 移動 の
場と な っ て お り、 獣害 は中山間地域 における 農業 の 持 続 の 面 か ら 大 き な 問 題 と な っ て
いる。
(中国・四国の野生鳥獣被害金額H13 年度 31 億 4620 万円)
3)肉用牛飼養と耕作放棄の関係
中 国 地 域の 肉 用 牛 飼 養 農 家と 非 飼 養 農 家に お け る耕 作 放 棄 地 の 面 積 割 合 を 比 較 す る
と、肉用牛飼養農家( 放 棄 率 2.7-3.0% )は非飼養農家 (同 4.9%)に 比べ て耕 作 放 棄 地 率
が低い。
飼 養 頭 数 規 模 が 大 き く ( 100 頭規模以上) 繁 殖 牛の い な い経 営 の 耕 作 放 棄 地 率( 同
11.5% )は高 く 、繁殖牛 の い る経 営( 同 1.9-3.7%) では 低 い 。ま た 、飼 料 作の 作付 け 農 家
(同 2.28 %) は、 非 作 付け 農家 (同 4.47% )に 比べ て約 半 分 の放 棄 地 率で あ っ た( 安
武、近中四農研)。
4)繁殖牛の放牧
中 国 中 山 間 地 域 で は 黒 毛 和 種 の子 牛 生 産、 農地保全 と 獣害対策 をかねて 耕 作 放 棄 地
に簡易電気牧柵を 設置 して 放牧地として 利用 し 始 めた 。
( 図 1 ,図 2 )繁 殖 牛は お と な
しく管理が容易で、高齢者や婦人でも容易に放牧できる。
11
累計放牧面積(
ha)
300
里山
250
耕作放棄地
200
転作田等農地
入会牧野
放牧実施農家数
放牧実施農家数(
戸)
60
入会牧野
40
150
100
20
50
里山+耕作放棄地
0
0
∼1977
図1 簡易電気牧柵を利用した放牧地
78∼82
83∼87 88∼92
期 間(
年)
93∼97
98∼02
島根県大田市の放牧の推移
図2
2.だれがどこで放 牧 を行 なうの か
だれが:畜 産 農 家、耕 種 農 家( 耕作放棄地や 農地 の 保 全 管 理)、果 樹 農 家( 下 草 管 理)、
集落(集落の農地や環境保全)
、非農家(地域の環境を守る)
放牧地:①広い放牧地:共同牧野(野草地が主体、牧草地)
、樹園地、公共牧場
②狭い放牧地:耕作放棄地、棚田と畑、雑木林
放牧牛:繁殖牛、育成牛、親子
Ⅱ 耕作放棄 地の 放 牧 利 用 技 術
1.耕 作 放 棄 地 の 放 牧 利 用の 考 えかた
放牧を始めて1∼2年の頃、数年後に分けて考える必要がある。
①始めて1∼2年の頃
野草の生産量が多いので牧養力は比較的高い。
棚田や段畑では法面崩壊を起こさないような放牧を行なう。
②数年後
野草 の生 産 量 が 減 少 し 、 牧養力 は低 下 す る 。子 牛 生 産を 主 眼 に 置 く の か、 農
地の荒廃防止に主眼を置くのかで、放牧地の管理が異なる。
子牛生産 に主 眼を 置く 場合 は、 牧 養 力 の 維 持・ 向上 のための 牧 草 地の 造 成 を
行 な う 。 ま た 、 牧 草 地 や 野 草 地 の 牧 養 力の 維持 ( 移 動 放 牧 等 に よ る 草 勢 の 維 持
と裸地化防止)や雑草防除(深刻な事態になる事もある)に注意を払う。
農地 の保 全 管 理( 荒廃防止 )に 主 眼 を 置 く 場合 は、 家畜 の生産性 よ り 荒 廃 防
止に努める。野草の生産力にあわせ、草高を低くおさえるような放牧を行う。
前歴 が畑 や乾 田の 場合 は、 牧 草 地の 造 成 が 可能 で、 高い 牧 養 力を 維 持 で き る
の で 子 牛 の 生 産 に 主 眼 を 置 い た 利 用 が で き る。 し か し 、 湿 田 の 場 合 は 泥 濘 化 、
不食草が繁茂する場合も多いので農地の保全・荒廃防止を主眼におく。
2.放 牧 牛と草 の 管 理
1)放牧牛
経 産 妊 娠 牛 は 、 授 精 や 子 牛 へ の哺 乳の 管理 が不必要 で 、 野 草か ら必 要な 栄養 が と れ
る の で放 牧に 適し て い る。 特に 、4 歳 以 上に な る と お と な し く な り 、 扱 い 安 く な る 。
12
放牧期間 は、 子牛 の離 乳( 分 娩 後3 ケ月 )か ら分 娩2 ヶ 月 前 ま で の 6 ヶ 月 が 放 牧 に 適
した期間と考えられる。
2)放牧馴致
各県資料及び草地管理指標より作成した。
①外気への馴致
放牧 する 1 月 前:で き る だ け昼 間 は 外に 出し て 外 気に な ら し、粗 飼 料 主 体の 飼 料 給
2週間前
1 週間前
与にかえる。
:パドックや庭先で昼夜放牧にならす。
:飼 料は 粗飼料 のみ 給 与 し、 身近 に放 牧できる 場 所 があれば 放牧 の
みにする。
②飼料に対する馴致
放 牧 経 験 牛も 放牧 1 ヶ 月 前 か ら 濃厚飼料 を少 なくして 粗飼料 を多 給す る 。 生 草 を
給与して生草にならすことも大切である。
③放牧馴致を始める時期
舎飼牛を放牧馴致させる時期は、気温と草の生育から3∼5月が望ましい。
④電気牧柵への馴致
放 牧 開 始 前に 、 牛 の 鼻 を 電 牧 線 ( 電 気を 流し た状 態 )に 2, 3回 程 度 触 さ せ 、 近
寄 ら な く な る ま で 実 施 す る 。 鼻を 当て る間 隔は 5分程度 で 牛が 落ち 着い て か ら実 施
すると良い。または、運動場に電気牧柵を設置して、自然に電牧に馴れさせる。
⑤放牧看視
初め の一週間 く ら い は 強 い ス ト レ ス がかかるので 十 分に 看視 する 。 そ の 後 は 、 定
期的に牛を看視する。
⑥放牧未経験牛
放牧未経験牛 は 、 草 の 食 べ 方 が 上 手 で な い の で、 放牧経験牛 と一 緒 に 放 牧 し て 草
の食べ方を覚えさせる。
放牧未経験牛 を 放 牧 場 へ 搬 送 す る と き、 原則 と し て放 牧 経 験 牛と 一 緒 に ト ラ ッ ク
に載せて、同時に放牧場内へ入れるとトラブルがなくてよい(農家の経験)
。
3)野草
食べ る草
:ススキ 、シ バ、イネ 科 草 、サ サ 類 、そ の 他 の多 くの 野 草 、果 樹 の 葉( ウ
メ 、カ キ、ビワ 、イ チ ジ ク、クリ 、ミカン 等)、果 実(ミカン、カ キ)、
な お、 カ キ や夏 ミカンは 食 道 に詰 まる事 もあるので 注 意 が必 要で あ る 。
毒のある 植物 :ツツジ 類、 キ ョ ウ チ ク ト ウ、 ヨウシュヤマゴボウ、 ワ ル ナ ス ビ 、 ワ ラ
ビ 、アセビ 、シキミ、ユ ズ リ ハ、 オオオナモミ。毒 草 も 刈 り 取っ て給 与
すると採食するので注意が必要。
4)衛生対策
定期的に血液や寄生虫の検査を行い、異常を見つけたら早めに獣医師に相談する。
ダニによる小型ピロプラズマ病:症状は、発熱、貧血、黄疸、血色素尿など。
殺 ダニ 剤 を適 時 、滴 下することにより 予防 す る 。
肝てつ症:肝てつによる寄生虫病。反芻動物に多く、食欲減退、栄養不良、泌乳
能力の減退がおこる。水田放牧では注意が必要である。
13
3.電 気 牧 柵 と飲 水 施 設
1)電気牧柵
耕作放棄地は土壌が軟弱な場所が多く、鉄柱
に有刺鉄線を張った牧柵は牛に押されると倒れ、
脱柵の原因となる。電気牧柵は設置も簡単で脱
柵防止効果が高いので、耕作放棄地には電気牧
柵が適している(図3)。
子牛(日齢 111∼153 日)を放牧する場合は、
電牧線を 1 段目は地上から 60cm、2段目は子
牛がくぐり抜けられない高さ 90cm 又は 120cm
に張 る( 山口) 。
図3
簡易電気牧柵(電牧器 、
樹脂製支柱とポ リ ワ イ ヤ )
①費用と設置時間
電気牧柵設置費用(50 a) は、 ソーラパネル 付 き 電 牧 器 7.7 万円 、樹 脂 製 支 柱 や
ポリワイヤーなどで 11.3 万円、合計約 19 万円(岡山)。
1 ヘ ク タ ー ル の 放牧地 に電 気 牧 柵 を 設 置 する 経 費は 、電 牧 器 (5.3 万 円) 、支 柱
( グ ラ ス フ ァ イ バ ー 製 ) 及 び ワイヤー 等 で 8 . 6 万 円、 合 計 で 1 4 万 円 。 有 刺 鉄 線 の
牧柵は 19 万円(近中四農研)。
電気牧柵 を 4 人で 100m 設 置す る の に必 要な 作業時間 は 1.1 時 間、 20a 設置時の 資
材 費は 、電 気 牧 器 3.7 万 円、 支 柱 とポ リ ワ イ ヤ ーで 8.1 万円 、合 計 11.8 万円 で、 時
間、費用とも有刺鉄線牧柵の場合の約 1/2 で設置できる(京都)。
②電気牧柵の利用
電気牧柵 を 使 った 農家 への ア ン ケ ー ト調 査 に よ れ ば 、 労 働 時 間が 短 縮 し た と 回 答
し た人 の 割 合は 、飼 料 給 与 作 業 で 40%、 除糞作業 で 78%、 採草作業 で 100% であっ
た(高知)
。
③イノシシの防除効果
電気牧柵はイノシシの防除効果が高い(農家の話)。
2)飲水器(飲水の確保)
①飲水量
耕 作 放 棄 地に お け る放 牧 牛 1 日 1 頭 当たりの 飲 水 量は 、 平均気温 に あ わ せ て 変 化
し最大量は8月の 45 リットルであった(山口)
。
②集水装置付簡易給水システム
飲 用 水が 近く に な い放 牧 地 で は 農 業 用ビニールシ − ト を 用い た簡 易 給 水シ ス テ ム
( 集水面積 100m2 )が 有効 で あ る。20 日 間に 50mm 以 上の 降水量が あ れ ば、雨水 を 1000
リ ッ ト ル の 営 農 タ ン ク に 貯 蔵 す る と、 飲水 を補 給す る こ と な く 成 牛 2頭 の連 続 放 牧
が可能であった(岡山)
。
③止水弁付飲水器
飲 水 が 流 れ 出 る タ イ プ の 飲 水 器 は 、 流 れ 出 た 水 が 泥 濘 化 を 引 き 起 こ す の で( 図
4)、水が流れ出ない止水弁付飲水器を使う(図5)。
14
図4 飲水が流れ出る飲水器
(泥濘化している)
図5 止水弁付き飲水器
3)法面の崩壊防止
放牧利用に 伴 っ て法 面が 崩れている棚 田を 見 かける 。法 面を 崩さないためには 、電 気
牧柵を張る場所、放牧頭数とともに飲水器にも注意を払う(図6)(近中四農研)。
①牧柵を張ってはいけない場所がある
法面 の上 縁に 牧 柵 を 設 置すると 、牛 は 牧柵 から 首を 出 し て 外 の 野 草を 採食 すると
き に蹄 で法 面 を 崩す 。ま た、法面 の 縦方向 に牧 柵を 設置 すると、牧柵 に 沿 って 降り る
ときに法面を崩す。
対 策:
牧 柵は 法面 の上 縁か ら1 m程 度 離 して牛が 歩け る平 らな 場所 を 確 保し て
設置する。また、縦方向に牧柵を張らない。
②放牧頭数を多くしない
放牧頭数が多いと、法面を歩行する回数が多くなるので、法面が崩れる。
対策: 放牧頭数を減らす。
③飲用水がオーバーフローする飲水器は使わない
飲水器か ら流 れ出 た 水 は、田面 の泥 濘 化 を引 き起 こす 。このため、田面 の 可食草量
が 不足 する 。そこで 、牛 は法 面の 野 草 を頻 繁に 採食 するために歩 行 回 数が 増え る。こ
の結果、法面は蹄によって崩される。
対策: 飲用水が流れ出ない止水弁付き飲水器に換える(図5)
。
④法面へのシバやセンチピードグラスの導入
放 牧 牛に 崩 さ れ 裸地化 した 法 面 を 修 復 するためには 、牛 糞を 用 い て ノ シ バ 苗を 法
面 に 貼 り 付 ける ( 張 り シ バ法 )。ま た 、崩 壊 防 止 効 果の 高 い ノシバ やセ ン チ ピ ー ド
グラスのポット苗を移植する(近中四農研)。
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牧柵を張ってはいけない場所がある
法面の上縁に牧柵
放牧頭数を多くしない
法面の縦方向に牧柵 放牧頭数が多い
*移動・撤去
*頭数減
飲水器にも注意を払う
飲水器から流れ出た水、湧水
*止水弁付き飲水器
牧柵から首を出して野草を採食する 牧柵にそって歩く
法面を歩行する回数が多い 田の部分に水が入り、滞水する
採食時法面を蹄で崩す
蹄で法面を崩す
*排水溝
法面を降りる
蹄で法面を崩す
泥ねい化
田の部分の可食草量不足
法面の野草を多量に採食する
採食のとき法面を蹄で崩す
* 張りシバによるシバの導入
法面の崩壊
図 6 放牧牛が法面を崩す要因と対策(*は対策)
4)泥濘化防止
①飲 水 器 に注 意: 飲 水 器 から 溢 れ た 水 は 棚 田 を 泥 濘 化す る の で 、 水 の溢 れ な い止 水
弁付飲水器を用いる。
②建築用資材 の利 用: 牛舎 の出入口 、パ ド ッ ク、 給 餌 場 周 辺 の 泥 濘 化 防 止 は 、 建 築 用
資 材 の エ キ ス パ ン ド メ タ ル と土 木 用 の 不 織 布 に よ っ て可 能 で あ
る。 乳用育成牛を 34 日間延べ 736 頭放牧したが 、 蹄 に よ る掘 り
返し も な く、表面 の 排 水は 良好 であった 。資材費 は 3,700 円/ ㎡
で自家労力による施行も可能である(京都)。
5)流出水の水質
放 牧 場 か ら の流 出 水 の 水 質( pH,BDO,COD,全 リン 、全 窒 素 )は 排水基準 に 照 ら し 合
わ せ て み た が 問 題 は な か っ た。 ただ 、大 腸 菌 数 は 流 出 水 で 多 く な る傾 向に あ り 、過 放
牧を避け、糞尿が一部に偏らないように放牧する(京都)。
排水基準 :pH5.8-8.6 、BOD160mg/l、COD160mg/l 、燐 含 有 量 16mg/l、 窒 素 含 有 量
120mg/l、大腸菌群数日平均 3,000 個/cm3
16
4.野 草 の 乾 物 生 産 量 の 経 年 変 化
放 牧 利 用 に 伴 っ て 野 草の 乾 物 生 産 量は 経 年 的に 低 下 し 、裸 地も 発生 す る の で 、 牧 養
力は経年的に低下する事を念頭において利用計画をたてる必要がある。
1)乾物生産量
①耕作放棄地 の 乾物生産量 は、多 い 放 牧 地で 970kg/10a、少な い 放牧地 では 、206kg/10a
と そ の 差 は 極 め て 大き い ( 表 1) 。 野 草の 生 産 量の 多 い 放牧地 では 多く の牛 が放 牧
できる(近中四農研)
。
表 1 大田市内 における放牧地の野草生産量と 放牧頭数
放牧地
前歴
主要草種
野草生産量
放牧頭数
(kgDM/10a/年 )
(頭・日 /ha/年 )
A 放牧地
畑
ススキ・イ ネ科野草
206
243
B 放牧地
里山
ネザサ主体 シ バ含
231
190
B 放牧地
田
シバ 型草地
314
190
C 放牧地
田
一年生野草・マ メ科
857
651
D 放牧地
畑
一年生野草・マ メ科
970
685
②ススキ が優 占 し た耕作放棄地(前 歴 水 田 )に お け る野 草の 生 産 量は 2300kgFW/10a で 、
延 べ 200 頭・日 /ha の放 牧が で き た( 計 算 上 は 460 頭・ 日)(表 2)。利 用 率 は 43 %
程 度 と 低 い が 、 こ れ は 踏 圧 の 影響 や硬 い茎 を食 べ 残 す た め と考 えられた 。放牧地 の
面 積は 、 最 低2 頭1 組 で 放 牧 するので、 移 牧の 手間 を 考 え れ ば 10a (2 頭で 10 日 )
以上、できれば 30a(2頭で1ヶ月)が望ましい(山口)。
表2 耕作放棄地における現地実証の結果(山口県内)
植生
水田(ススキ)
草丈(cm)
151
水田(クズ+ススキ)
148
水 田+ ミ カ ン( クズ+セイタカアワダチソウ ) 133
梅園(クズ主体)
57
生重
2.3 t/10a
放牧頭数
200 頭・日/ha
3.2
2.0
1.4
180
200
180
結果:耕作放棄地の牧養力は 180∼200 頭・日/ha であった。
③野 草の 利用率は 放牧 の仕 方で 変 わ る。 短草状態で周 年 放 牧 すると 9 0 %以 上の 利用率
となり(A 放 牧 地 )、茎 が硬 くなったス ス キで は 40 %くらいとなる(表 2 の水 田( ス
スキ))。
17
2)乾物生産量の経年変化
①耕 作 放 棄 畑 の 乾物生産量 は 、 利 用 2 年 目 の 332kgDM/10a が 、 4 ∼ 5年 目に は 平 均
206kgDM/10a にまで低下した(表3)(近中四農研)。
表3
草
種
放牧地の野草生産量の経年変化(kgDM/10a)
利用2年目
ススキ
3年目
4年目
5年目
193
156
41
28
イネ科野草
80
176
112
157
その他
60
85
21
57
332
416
174
241
合計野草生産量
注: 1)イネ科野草 は ススキを除くイネ科の野草
2)放牧地は 2.9ha(耕作放棄地 1.1ha、林地 1.8ha) 耕作放棄地で調査
3)放牧頭数(頭・日/ha)は2年目 234、3年目 300、4・5 年目 243
3∼5年 目は周年放牧 で、3 年目の晩秋以降適宜補助飼料を給与
②ススキ 主 体 の 耕作放棄地 における ヘクタール 当た り 牧養力 は、 初 年 目に 比 べ 2 年 目
は 低下 し た(表 4 )
( 山口 )
。 原因 と し て、2 年 目に 野草 の 生産量 が大 幅 に 減 少 し た こ
とが考えられた(表5)
。
表4 各放牧地の牧養力(頭・日/ha)
黒毛和種
無角和種
区分
1年目
971
641
耕作放棄地
野草地
2年目
472
558
1年目
667
2年目
378
表5 放牧開始時の草丈(cm)と生重収量(kg/10a)
黒毛和種
区分
無角和種
1年目
草丈
2年目
生重
草丈
1年目
生重
耕作放棄地
161.0
6,233
80.0
1,010
野草地
98.7
1,297
48.2
530
草丈
171.0
2年目
生重
草丈
生重
7,283
114.3
1,063
耕作放棄地:ススキ・セイタカアワダチソウ主体。野草地:ススキ・ササ主体
3)裸地化
①山 の中 腹の 耕 作 放 棄 畑( 2ha )に 、繁殖牛 4∼ 6 頭 を 春 ∼秋 に か け て 放 牧 し た 。 放
牧 3 年 目に 裸地 が目 立 つ 場所 が出 て き た( 裸地率 5 8% )の で 、 セ ン チ ピ ー ド グ ラ ス
を 不耕起播種( 播種量3 kg/10a ) した 。播 種 2 年 目の センチピードグラスの 被度 は
64.5%であった。
(近中四農研)
。
②既 存シ バ草 地 は 、高密度 な放 牧 ( 11.8 頭 /ha/ 日) で も 裸地 が少 な く 比 較 的 安 定し て
いた(高知)
。
18
4)飼料価値
ス ス キ や イ ネ科 草 の 飼 料 価 値 は、育 成 牛や分 娩 前 後 の繁殖牛 が 必要 と す る 飼 料 価 値
より低い(表6)。
表6
草種
TDN
ススキ
50
シバ
イネ科
粗蛋白質
野草の養分含有率(DM%)
カルシウム
リン
マグネシウム
カリウム
6.8
0.20
0.14
0.14
1.42
48
10.0
0.28
0.19
0.14
1.37
51
8.0
0.27
0.18
0.17
1.45
その他
10.6
0.87
0.23
注: 1)養分含有率は 5∼10 月の平均
2)イネ科はススキとシバ以外のイネ科の野草
0.24
2.00
5.草 地 造 成
耕 作 放 棄 地 の 牧 養 力 は 経 年 的 に 低 下 す る の で、 牧 養 力 を向 上させるためには 牧草 の
導入 が必 要である 。近 年の 温 暖 化に 伴い 、寒 地 型 牧 草 の 維 持 年 限 が 短 く な っ た 所 も 多
い。 そ こ で、 夏 高 温、 冬 温 暖な 地域 を対 象に 暖地型牧草の 導 入 を 図 る 。 ま た 、 シ バ 草
地の 造成 、シ バ型草地 への イタリアンライグラス の 追 播 、 及 び 寒 地 型 牧 草 を 利 用 し て
牧養力を向上させる。
1)ノシバ草地の造成
① 撒 シ バ 法: 市販 の ノ シ バ マ ッ トを フ ォ ー レ ジ カ ッ タ ー で 4 ∼5 c m に 細 断 し、耕
起→シバ散布→鎮圧の後、放牧しながらシバ草地を造成した(近中四農研)。
② 糞中種子法: め ん羊 に市 販 の ノ シ バ種 子( 10g/ 頭/ 日 )を食 べさせ、 糞を 土 中 に
2cm 埋める。糞中種子の発芽率は 43∼51%、定着率は 23%であった(京都)。
③ ポ ッ ト 苗 の移 植 : 播 種 か ら 2 か 月 以 上 育 苗 さ せ た ノ シ バと セ ン チ ピ ー ド グ ラ ス
苗を 地面 に置 き 、踏み つ け る だ け で 83 ∼100 %の 定 着 率を 示 し た。移植時間と経 費
は、 穴を 掘る 従 来 型( 50cm 間 隔で 1 カ 所に 1ポ ッ ト を移 植) では 10a 当 たり 1 0
時間で 10,922 円、直置き移植法では 4 時間で 5,730 円であった(京都)。
④ ノ シ バ の 移植: 灌木 、ワ ラ ビ 優占 の放 牧 地 において 4 頭 ×115 日間連続放牧し て
裸地化させた牛道等に不耕起でノシバマットを植栽して草地化した(岡山)。
⑤ 矢掛育成牧場 では 1 ha の急傾斜放牧地 に 、 10cm 角シバマット を 50cm 間隔 で 植 栽
して3 a をシ バ草 地 へ の転 換を は か っ た。延 べ作 業 時 間 は 216 時 間で あ っ た( 岡
山)。
⑥ 11 月 に島根県海士町繁殖セ ン タ ー牧 野 内(傾 斜が 急 であり 土壌浸食が著 しい 牧 野 )
に移 植し た。 急傾斜地 では 移植 した ソ ッ ドの 剥 離 も 見ら れ、 急傾斜地 や土 壌 浸 食
が著しい場合にはシバは定着しにくい(島根)
。
2)牧草地の造成
(1)暖地型牧草
①センチピードグラスとバヒアグラスの不耕起造成
島 根 県 大 田 市 で は 、裸地率 が6 0 % 以 上 あ れ ば不 耕 起 播 種し た 後 に 連 続 放 牧し な
19
がら 草 地 造 成 が 可 能で 、ススキ が 優 占 す る放牧地 の 2∼ 4倍 の 乾物生産量 が得 ら
れた(図7,表7)(近中四農研)。
図7 裸地の多い場所に不耕起播種して、放牧しながら牧草地を造成する。
表7
草
暖地型牧草の生 産 量( 不耕起造成 3 年目 )
種
生産量
施肥量 (kg/10a/ 年)
(kgDM/10a)
(窒 素− リ ン酸 ― 加里 )
センチピードグラス
902
10-10-6.6
バヒアグラス
818
10-10-6.6
② バヒアグラス、センチピードグラス及びカーペットグラス草地の造成
島根県隠岐島 の海 士 町 に お い て バヒアグラス 、セ ン チ ピ ー ド グ ラ ス、 カ ー ペ ッ ト
グラスを 5月下旬 に 耕 起 ・ 不 耕 起× 無施肥× 単 播 ・混 播( 播種量 1 ∼2kg/10a) し
た。 耕起区で は1 年後 の 被 度 は 75 ∼84 % 、不耕起区で もセンチピードグラスは 60
∼94 %と 良好 な発 育 が 認め ら れ た 。 隠 岐 島の 荒廃放牧地 の改 善に は、 暖 地 型 牧 草
の導入が有効であることが明らかとなった(島根)。
③ バヒアグラス、センチピードグラスの飼料成分
両 草 種の 飼料成分 は、 施 肥 条 件 下 で はススキ やイ ネ科 野 草よ り高 か っ た( 表 8 )
(近中四農研)。
表8
草
種
暖地型牧草 の養分含有率 (DM%)
TDN
粗蛋白質
カルシウム
リン
マグネシウム
カリウム
51
12.5
0.26
0.24
0.24
2.45
バヒアグラス
50
10.9
0.27
0.31
注: 1)施肥量は窒素−燐酸―加里:10-10-6.6kg/10a/年
2)養分含有率は 6∼10 月の平均
0.27
2.11
センチピードグラス
20
④暖地型牧草地と耕作放棄地の組み合わせ利用
耕作放棄地と暖地型牧草地を組み合わせた場合の放牧可能頭数の試算を行った
(表 9)。ヘ ク タ ー ル当 た り 年間 170 頭 ・日 までの放 牧ならば 牧 草 地は 必要 ないが、年
間 450 頭・日程度放牧 するならば、5 0 アール の耕 作 放 棄 地と 5 0 アール の牧草地を 組 み
合わせて利用するとよい。
表9
耕作放棄地と 牧草地を 組合わ せ た場合 の放牧可能頭数の試 算
耕作放棄地( ha) 牧 草 地( ha)
組み合 わせる 牧草地(繁殖牛 、頭・日/年 )
バヒアグラス
センチピードグラス
1.0
0
170
170
0.8
0.2
287
289
0.5
0.5
463
468
乾物生産量( kg/10a):耕 作放 棄 地 206、バヒアグ ラ ス 918、センチピード
グラス 931
(2)寒地型牧草
①ペレニアルライグラス、トールフェスク及びリードカナリーグラスの利用
農 作 業の 忙し い時 期 に 放 牧 す る ( 2 ∼3 回) こ と を前 提 に、 比 較 的 排 水の 良 好 な
転 換 畑 と 水 田に ペレニアルライグラス 、ト ー ル フ ェ ス ク及 び リ ー ド カ ナ リ ー グ ラ ス
等 を 秋 に 混 播 し た 。 ペレニアルライグラス が 早春 の放 牧を 可能 にし 、リ ー ド カ ナ リ
ーグラスが 暑 熱 期の草 勢 を 維 持し て 604∼878 頭・日 /ha の 放牧 が で き た( 昼 間 延 3 4
∼44 日放牧、親牛に配合飼料1kg 給与)(京都)。
②シバ草地にイタリアンライグラスを追播
シバ 草地 に、 9 月中旬 までに極早生 イタリアンライグラス を 追 播( 2.0kg/10a) す
る と良 い 。 極 早 生イタリアンライグラスの 乾物生産量は 300 ㎏ /10a で、 そ の 他の 品
種は 220∼240kg/10aであった。
追播方法 は、 傾 斜 度、 地 形 等 に 応 じ てリ ノ ベ ー タ ー法 、 デ ス キ ン グ法 や マ ク ロ シ
ードペレット法を選択する。
山口県下 3か 所 ( 阿 武 町 、 長 門 市 、 油 谷 町) のノ シ バ草 地に イ タ リ ア ン ラ イ グ ラ
ス をマクロシードペレット法 に よ り播 種 し た。 11 月∼ 4 月 の乾 物 生 産 量 は 1,210 ∼
3,320kg/ha (表 10 ) で、 ヘ ク タ ー ル当た り の牧養力 は 221 ∼ 608 日・頭 /ha で あ っ た
(山口)。
表 10 イタリアンライグラスの乾物生産量及び牧養力
町
阿武町
乾物生産量
1210kg/ha
牧養力
221 日・頭/ha
長門市
油谷町
2057kg/ha
3320kg/ha
376 日・頭/ha
608 日・頭/ha
21
④ シバ草地の補完草地
ノシバ草 地の 利用期間 は4 ∼10 月 である。 放牧期間延長 のため、 その 前後 に 放 牧
す る補 完 草 地として 、寒 地 型 牧 草 地で はト− ルフェスク 草 地 が 、暖地型牧草地では 、
バヒアグラス草地が有望であった(山口)。
⑤ イタリアンライグラスの冬季放牧
イタリアンライグラス 草地 9.4 aを 3 牧 区 にわけ 、繁殖雌牛 を用 い て 8.2 日× 4
回 の 放 牧 を 行な っ た( 放 牧 頭 数 349 頭・ 日/ha)。 イ タ リ ア ン ラ イ グ ラ スの 現 存 量
が 100g 以下 な ら採食量 は 3.0∼ 4.6kg/頭 / 日、 190g以 上の 時 は 1.2∼1.5 kg/ 頭/ 日
であった(高知)。
3)雑草防除
① オ ニ ヤ ブ マ オ 、 ア キ グ ミ : 隠 岐 島は 長年 にわたり シ バ 型草地 を活 用し た放 牧が 行
なわれているが 松枯 れや 放牧頭数の減 少 の影 響に よ
り 雑灌木( オニヤブマオ、ア キ グ ミ) が繁 茂し 、 放 牧
場面積 の約 4割 が遊休化 あるいは極端に 低い 牧 養 力
になった。
オニヤブマオの 刈り 払 い 区 は全て 再生 し、 薬剤処理区
( 5 月 25 日 処 理 )で は トリクロピル液剤区 が最 も 有 効
であった。 アキグミで は 、 8 月に 刈 払 い後 の切 り 口 の
直 径1 cm 当 たり グリホサート 剤を 1ml 塗布 が有 効 で あ
り 、約 1ha の実 証 試 験 で も刈 り払 い 区 と比 較し 効 果 が
認められた(島根)。
②雑灌木:雑灌木の繁茂は島根県各地の新規造成放牧地においても問題化。
③ エ ゾ ノ ギ シ ギ シ : シ バ 草 地 に エゾノギシギシ が発 生し 、 防 除 が 重 要な 課題 と な っ
ている ( 島 根)。 耕 作 放 棄 地で も 数年 た つ と発 生 す る 。 除 草 剤
チテンスルフロンメチルの効果が高い。
④ ワ ル ナ ス ビ: 大 田 市 で も放牧地 や 採 草 地 に侵 入し た 。小規模移動放牧 で は ど う し
ても 休牧期間 が あ り、 ま た 、草 量 が 少 な く 強い 放 牧 圧が か け ら れ な
い放 牧 地 では 、 今 後 問 題と な る と考 え ら れ る。 ワ ル ナ ス ビの 除 草 剤
と し て は 、グ リ ホ サ ー ト、 ア シ ュ ラ ム 、 M D B A 、 D B Nが あ り 、
発生 が 少 ない 放 牧 地で は 、 グ リ ホ サ ー ト を 茎葉 に 塗 布し て 防 除 し た
(近中四農研)。
⑤チカラシバ:島根県大田市では、利用 3 年目の耕作放棄地に発生した。
⑥ ワ ラ ビ: ワ ラ ビが 発 生 し た シ バ 草地 で強 放 牧を 行 な っ た と こ ろワラビ 中 毒 が 発 生
した 。 ワ ラ ビ は年 に 2 回 の 刈り 取 り で 少 な く な る。 し か し 、 刈り 取 り を
止めると数年でワラビが多くなる。除草剤のアシュラムを散布する。
Ⅲ 水田 への復元
借 地 などによる 水 田 の 畜産的利用 を図 る た め に は、再び 水 田 に 戻す こ と も 考 え ね ば
ならないので、水田への復元技術が必要とされる。
22
1)牧草地を水田に復元
現 地 農 家 の 水 田 を 2 、 3 年 先 には 復田 することを前 提に 草 地 造 成に 適し た草 種を 調
査し た。 ペレニアルライグラス やリ ー ド カ ナ リ ー グ ラ ス を 播 種 し 、 電 気 牧 柵 や 簡 易 な
水槽等を 設置 し た 放 牧 地に ヘクタール当 たり 年 間 延べ 629 頭 の放 牧 を 行 っ た。 2年 間
の放牧後復田 し 、 水稲 を 作 付けした 結 果 、穂肥半量区 (NK 2kg )と 穂肥 N K 4 kg 区
の粗 玄 米 重に は差 が な く、 千 粒 重と 食 味 推 定 値は 穂肥半量区が 高 い こ と が わ か り、 放
牧後の水稲復田は特に問題は認められなかった(京都)
。
2)シバ草地を水田に復元
湛 水 時 に 耕 耘 す れ ば 湛 水 状 態 が維 持さ れ、 シバ は 全 く 再 生 し な い の で、 容易 に水 田
に復 元できる 。シ バ草 地を 水田 に復 元す る際 には 、稲 の 定 植 ま で に シ バ 残 渣 が 充 分 分
解するように 、よ り早 期か ら耕 耘す る。 なお 、シ バの 残 渣 が 分 解 す る 際 に 窒 素 が 利 用
さ れ る た め、 水稲 の施用窒素量 は慣行量 よりやや 多 め が 良 く 、 追 肥 で は な く 基 肥 と し
ての施用が望ましいことがわかった(高知)。
Ⅳ 放 牧 子 牛の 生 育
島根県 の 隠 岐 地 方で は 子 牛の 放 牧 が 行 わ れ て いる 。隠 岐 島 の 放 牧 子 牛を 用 い た 生 育に 関
する島根県畜産試験場の調査を紹介する(島根)。
1)放牧子牛の体高
放 牧 子 牛 の 体 高 は 、 17 週 齢( 119 日 齢) まで 島 根 畜 試 産の 子 牛( 以 下「 場 内 子 牛 」 )
と ほ ぼ同 様 に 推移 し て い た が 、17 週 齢 以 降 は放 牧 子 牛 の 発育 が 鈍 化 す る傾 向 に あ っ た
2)放牧子牛の体重
16 週 齢 時ま で は 放牧子牛 が 場 内 子 牛に 比 べ て体 重 が 大 き く 、初 期 発 育は 場 内 子 牛 に
比べ て 優 れていた 。し か し、20 週 齢、24 週 齢で 放 牧 子 牛 と場 内 子 牛 の 体 重 差は 小さ く
なり 28 週齢、 32 週齢では、場内子牛が放牧子牛より体 重が大きくなった。
放 牧 子 牛の 体 重 の バ ラ ツ キ は 週 齢 が 進む に つ れ て 、場 内 子 牛に 比 べ て 大 きくなった 。
3)放牧子牛の発育改善に必要な措置
放 牧 子 牛 の 5 ヵ 月 齢 以 降 の 発 育 を 確 保 す る た め に は配 合 飼 料 の 給 与 が 必 要 で あ
る。 その 際、 粗 飼 料を 十分 に採 食す る等 の放 牧 特 性 を維 持す る た め に は、 体重 の
1.5%までの給与が適正と考えられる(島根県)。
Ⅴ 放牧 の効 果
1)コスト、労働時間の短縮
放 牧を 実 施 している 肉 用 牛 繁 殖 農 家を対 象 に経 営 実 態 を 調査 した 結 果 、 30∼ 40 日 間
(延 べ親 牛 330 頭 、子 牛 223 頭) という短期間 の放 牧 で あ っ ても 牛舎管理作業 の省 力
化と自給飼料費の節減(8,400 円/頭)が図れる等の効果があった(京都)
。
4 頭規模の 和牛繁殖農家で 1 頭当 たり 154 日 の放 牧を 行 な っ た 。1 頭当 た り の家 畜
飼養作業時間 が 舎飼時 の 400 時 間か ら 229 時間 に短 縮 し 、1 頭当 た り の生 産コ ス ト も
24,000 円低減した(近中四農研)
。
23
小規模移動放牧における放牧管理
畜産草地研究所
山地畜産研究部
山地畜産研究チーム
手島茂樹
1.小規模移動放牧に必要な施設等
1)放牧施設
①牧柵
a.電気牧柵を用いる理由
遊休農地を対象にした放牧では、使用した牧区を再耕地化する可能性があるので、撤
去が容易であることが望ましく、また小さな牧区を多数設置する必要があるので、設置
が容易であることが望ましい。また当然、安価であることが望ましい。
b.電気牧柵線(電牧線)・支柱の種類
・電牧線には高張力線およびポリワイヤーがある
・ 高張力線の特徴:脱柵防止機能が高い、設置・撤去に労力がいる、高価、雪に強い
・ ポリワイヤーの特徴:脱柵防止機能が低い、設置・撤去が容易、安価、雪に弱い
・高張力線の支柱:有刺鉄線の支柱、L字鋼、インサルティンバー(絶縁木)等
・ポリワイヤーの支柱:グラスファイバーポール等
写真1
高張力線を用いた牧柵
写真2
( 支柱 L字鋼)
( 御代田町)
( 支柱 インサルティンバー)
(開田村)
- 25 -
高張力線を用いた牧柵
写真3
ポリワイヤーを用いた牧柵
写真4
( 支柱 グラファイポール)
(小海町)
ポリワイヤーを用いた牧柵
( 内柵、支柱 ピッグテールポール)
( 所内)
c.電気牧柵器本体
出力の異なる物が多数あるが、
牧区の大きさによって決める。ソ
ーラーパネル、バッテリーおよび
本体が1セットになって持ち運べ
る物だと、牛の移動と一緒に移動
することが出来るので、購入数を
少なくすることが出来る。
写真5
電気牧柵器(電牧器)
(ソーラーパネルとバッテリーがセット)
②飲水施設
a.近くに流水がある場合
・直接使う
・水を引く:高低差を用いる、ポンプを使う等
b.近くに水がない場合
・ 500 リッター以上のタンクを各牧区に設置し、軽トラ等で水を運ぶ(2から3頭で、
1週間に1または2回運搬)(写真6参照)
・ウォーターカップやボールタップを使った飲水器を用いる。
c.冬季放牧用給水タンク・飲水器
凍結の危険がある時期・場所では必要である。
- 26 -
写真6
軽トラとタンクを使用した給水(御代田町)
③鉱塩置き
雨に直接濡れないような工夫があると好ましい。
写真7
給水用タンクとフロート式水栓(ボールタップ)を
使用した水槽と鉱塩
④給餌施設
冬季において冠雪して草が採食出来ないときに用いる。
⑤運搬車
ロープで引いて移牧できないようなときに用いる。トラックを使用しても良いが、低床
式移牧車両(写真8参照)を用いると牛が乗りやすい。
- 27 -
⑥保定・捕獲施設
移牧時の捕獲や、繁殖管理および衛生管理を行う場合に必要。足場パイプで製作したも
のやキャトルヤード(移動式)、運搬車、連動スタンチョン等を用いる。
写真8
低床式移牧車両
写真9
足場パイプで製作した追い込み柵
⑦牧柵等施設のコスト
25 aの圃場(サイズ 50 m× 50 m:牧柵長 200 m)1牧区当たりの資材費概算
・電気牧柵器(持ち運びが容易なもの):5∼ 10 万
・飲水施設費
500 リッタータンク:2万円程度
ボールタップ、コンテナ、ホース:5千円程度
・フェンス費
4隅とゲート用にコーナーポスト (高張力線:足場パイプ、ポリワイヤー:支柱(太))を
6ヶ所設置し、3段張りで、5mおきに支柱を入れた場合。高張力線の支柱はインサルティ
ンバーシステムのパーマネントポストを使い、ポリワイヤーの支柱はグラスファイバーポー
ルを使う。(注:次ページの表の価格は税別)
- 28 -
高張力線
単価
ポリワイヤー
金額
単価
金額
1,240 円
7,440 円
880 円
5,280 円
260 円
7,800 円
270 円
4,860 円
1,300 円
44,200 円
270 円
9,180 円
支柱用ガイシ 102 個
36 円
3,672 円
50 円
5,100 円
電牧線 600 m
18 円
10,892 円
14 円
8,400 円
緊張具3個
780 円
2,340 円
ゲート3組
3,360 円
10,080 円
1,500 円
4,500 円
コーナーポスト6本
ポスト用ガイシ
高張力線:30 個
ポリワイヤー:18 個
支柱 34 本
86,384 円
合計
37,320 円
注)この価格は最も高い場合と最も安い場合を示したので、高張力線を使ってもこれより
安くなる場合もあるし、ポリワイヤーを使ってもこれより高くなる場合もある。
・その他
工具、テスター、鉱塩置き、捕獲施設等
2)草地および放牧に用いる家畜
放牧の主な目的によって異なる草種を用い使用する家畜も異なる。遊休農地を対象にし
た放牧には、①遊休農地増加問題の解決および、②肉用子牛生産の低コスト・省力化とい
った2つの目的がある。表1に目的別の利用草種および畜種をまとめた。
表1
遊休農林地・耕作放棄地の放牧利用事例・目的別類型化
粗放的
荒廃地の管理重視
目 的
特 徴
荒廃地の管理
使 用
草 種
低投入持続型の放牧
高位生産を狙った放牧
生産をあまり気にせ 土地生産性 は低くても、草地 土地生産性が高く草地・
ず、土地管理が目的 ・家畜管理の容易さが狙い
家畜管理に労力必要
事例・ 旧四国農試
研究
のヤギ試験
放 牧
家 畜
集約的
生産性重視
ヤ ギ
レンタ
カウ
旧中国農試の
棚田放牧
熊本・長崎・
福島の事例
牛
繁殖牛(空胎・老廃含む)主体
野草(雑草・灌木)
シバ・ヒエ
小規模移動放牧
繁殖牛主体( 一部育成有)
暖 地 型シ バ型 ペレニアルライグラス、
草種、イタリア オーチャードグラス等、
ンライグラス等 寒地型高生産性牧草
適して 野焼き時防火帯の草 九州の半島・島嶼部や、中国 耕作放棄地が点在してい
いる
刈り代行もある
中山間地のように、遊休農林地 る地域、まだ点在段階の
地域
を集積して用いられる地域
地域
(進藤作)
- 29 -
2.実際の小規模移動放牧の方法
1)牧区の設置
・再耕地化する場合には法面や畦の保護をするために、その周囲を牧柵で囲む必要がある。
・法面が間にある圃場を同一牧区とする場合には、法面に通路を造る。
・捕獲施設は飲水施設や鉱塩置きのそばに設置する。
・電牧線の張る段数に関しては、親牛だけなら2段、子牛も放牧するなら3段にすると良
い。
写真10
法面に造った通路を歩行する牛(御代田町)
2)造成
①造成前処理
耕作放棄されてからの期間が長い圃場は灌木化している場合が多いので、機械利用もし
くは強放牧によって、灌木を減らす必要がある。野焼きが出来る場合には燃やしても良い。
②造成
a.ロータリー等で耕起出来るのならば、通常の耕起造成をする。
b.耕起出来ない場合には、蹄耕法によって造成する。
3)草地管理・放牧管理
①草地の乾物生産量および家畜生産性から推定した草種毎の放牧頭数・必要面積
(山地畜産研究チームでの試験結果、次の研修参照)
寒地型牧草地における乾物生産量は 730 ∼ 855kg/10a であり、供試牛はその内9割以
上を利用することが出来た。一方、野草地では放牧前の乾物草量が 630 ∼ 1360kg/10a あ
ったにもかかわらず、供試牛の利用率は5割以下であった。
以上の結果より、繁殖牛1頭を6ヶ月間放牧するためには寒地型牧草地ならば 25 a、
野草地ならば 50 a∼2 ha 必要であると考えられた。また、寒地型牧草地において放牧
を行うと、子牛の増体が良く、舎飼いと同程度であった。
したがって、放牧に用いる頭数が少なく圃場が広い場合は牧草を導入せずに野草地で放
- 30 -
牧を行っても良いが、頭数が多く圃場が狭い場合は寒地型牧草地を造成する必要がある。
また、子牛を現地分娩させて親子放牧を行いたい場合は、寒地型牧草地を用いた方が良い
と考えられる。
②施肥管理
地域の基準に合わせた施肥を行う。
③牧柵に対する馴致
電気牧柵は心理柵であり物理柵としての能力が低いので、牧柵に対する馴致をする必要
がある。数十頭に1頭は慣れない牛がいるので、その牛は放牧しない方がよい。一回でも
脱柵すると、牛は電気牧柵を通過できるものと考えることになるので、脱柵後には注意が
必要である。
馴致方法としては、実際に放牧を始める前に運動場等で牧柵を設置し、
a.無理に触らせて馴致する
b.自然に触らせる
c.牛の興味を引くものを柵にぶら下げて触らせる
といった方法で行う。
④移牧
a.移牧スケジュール(次の研修参照)
寒地型牧草地の利用方法としては、草を伸ばし過ぎずかつ短くし過ぎないことが大切
である。30 aの牧区が2つ準備できた場合は、放牧開始から7月までは放牧牛3頭を、
8月から 10 月までは放牧牛2頭を放牧することが可能である。その際の移牧について
は、1∼2週間毎に移牧すると牧草を上手く利用することができ、それぞれの牧区の年
間利用回数は8回ほどになる。野草地の利用では、シバ以外の草は放牧後の再生育が望
めないので年1回利用となる。
b.移牧方法
・近くならば捕獲して、ロープで引くことで移牧を行う。
・道向かいの牧区ならば、スプリングゲートで通路を作り移牧する。
・離れた牧区ならば、トラックや移牧用車両を用いて移牧する。
⑤繁殖管理
・繁殖管理( 分娩から種付け、妊娠確認まで)を牛舎で行うなら、現地で行う必要がない。
・現地で分娩および種付けを行う場合は、分娩については特別な管理は必要ないが、発情
発見および種付けについては牛舎より労力が必要な場合がある。
・発情発見を行う際に、1つの牧区で2∼3頭を放牧していると、牛舎で群飼いしている
より乗り合いが起こらない場合が多いので、粘液を中心に観察することになる。
・現地で種付けを行いたい場合は、それぞれの牧区に保定枠を設置する必要がある。
- 31 -
写真11
足場パイプで製作した保定枠での種付け(御代田町)
⑥人に対する馴致
補助飼料を給与しなくても牛は飼えるが、牛の見回り時に餌を与えることで人に慣らし
ておくと移牧や繁殖管理等が楽になる。
⑦草地の組み合わせ利用による放牧延長・周年放牧技術(次の研修参照)
寒地型牧草地では夏季以降に生産量が少なくなる。そこで、放牧開始から7月末まで寒
地型牧草地で放牧し、その後、夏季補完草地として準備した野草地に移牧する。8月から 10
月までは野草地において放牧を行い、その間、寒地型牧草は冬季放牧用に備蓄する。11
月から 12 月まで再び寒地型牧草地へ移牧を行い、放牧利用する。以上の組み合わせ利用
により、寒地型牧草地だけを利用した放牧だと、夏季以降頭数を減らして6ヶ月間放牧出
来るのに対して、頭数を減らすことなしに2ヶ月間の放牧延長が可能となる。その際の1
頭(子牛付き)当たりの必要面積としては、寒地型牧草地が 25 aであり、野草地が 50
aであった。
さらに、冬季の積雪が少ないところでは、冬季補完草地としてイタリアンライグラス草
地を準備し、1月から4月までの4ヶ月間放牧することで、周年放牧も可能となる。冬季
放牧用の備蓄草量として 250kg/10a 程度確保すれば、繁殖牛1頭の1日当たり乾物採食
量を 10kg と仮定すると、周年放牧に必要なイタリアンライグラス草地の面積は 48 aで
あると推定された。
- 32 -
小規模移動放牧の生産性
畜産草地研究所
山地畜産研究部
山地畜産研究チーム
進藤和政
1.はじめに
全国の中山間地において遊休水田や耕作放棄地等の遊休農地の増大が問題となって
おり、その解決を目的として遊休農地に肉用牛を放牧する取り組みが全国的に広がっ
てきている。小規模移動放牧 とは遊休農地に肉用牛を放牧する技術の一つであり、特
徴としては以下の通りである。遊休農地出現初期 から中期にかけては、遊休農地はま
とまって存在せずに虫食い状に存在するので、それらをまとめて一つの牧区として放
牧利用することは 難しい。小規模移動放牧はこのような状況に対応するために、遊休
農地の元の区画通りに牧柵を設置し一つの牧区とし、それら小規模の牧区を牛を移動
させることで放牧利用する技術である。
前講義において小規模移動放牧の概略および実施方法について説明があったので 、
本講義においては 、当部でおこなわれた小規模移動放牧の試験結果である草生産量お
よび家畜生産性について説明する。さらにその試験結果から、実際に小規模移動放牧
を実施する際に、どのくらいの面積で、何頭、どのくらいの 期間、放牧飼養できるか
といった点について、どのように考えればよいか説明する。
2.遊休農地に造成した寒地型牧草地の植生推移および牧草生産量
小規模移動放牧 のメリットの一つとして、対象地が転作田や野菜畑の場合にはトラ
クター等の機械利用(耕起、施肥等)が可能なので、牧草の導入が容易である。牧草
を導入することができれば、単位面積あたりの放牧飼養頭数 を増やすことができ、さ
らに、放牧期間も長くすることができる。そこで、①水田ならびに野菜畑に寒地型牧
草を導入し、5年以上放牧利用した草地の植生構成を明らかにすることで、遊休農地
に寒地型牧草を導入して利用することが可能かどうか明らかにし、②放牧条件下のこ
の草地の牧草生産量を明らかにすることで、どのくらい牛が放牧飼養できるかの指針
を得る。
1)試験方法
・造成年から放牧を継続しておこなってきた草地を用いて、2001 年および 2002 年に
放牧試験を行った。
・供試草地(御代田町および小諸市)
水田跡区:遊休水田に、1995 年( 33a)と 1996 年(30a)に耕起造成した圃場を
用い、2牧区輪換方式で放牧利用した。
野菜跡区:畑地跡耕作放棄地、1997 年に耕起造成した 20aと 45aの圃場を用い、
2牧区輪換方式で放牧利用した。
両区とも、オーチャードグラスおよびペレニアルライグラスの混播草地とした。施
肥については 12:9:3kg/10a(N-P-K)を、年3回均等分施した。
35
・供試牛
体重約 500kg の黒毛和種繁殖牛を用いた。頭数については、それぞれの区において
放牧開始時から3頭を放牧し、草の生育が悪くなる夏以降には1頭減らした。供試牛
は5∼7月にかけて現地分娩し、その子牛は退牧時まで親子放牧を行った。
2)結果および考察
遊休農地にオーチャードグラスおよびペレニアルライグラスを造成し、放牧利用を
おこなってきた草地の植生は、造成後5年以上経過しても牧草の構成割合が8割以上
であり、非常に良い状態であった(図1)。これは、小規模の牧区を用い、草の状態を
見ながら移牧することで良い管理ができたからだと考えられた。
100%
80%
その他
WC
PR
OG
構 60%
成
割
40%
合
20%
入牧時
図1
2区
野
菜
跡
1区
野
菜
跡
水
田
跡
区
2区
1区
野
菜
跡
野
菜
跡
水
田
跡
区
0%
10 月 上 旬
草種別乾物重構成割合(%)の推移(2002
乾物重生産速度 の季節推移については、スプリングフラッシュ時に高く、夏以降は
低くなる、一般的な寒地型牧草のパターンを示した(図2)
。したがって 、草をきれい
に利用したい場合には、乾物生産に合わせて牛の頭数をコントロールする必要がある。
(gDM/㎡)
10
乾
物
重
増
加
速
度
8
6
4
2
0
5月 6月
7月
8月
水田跡区平均
図2
9月
10月
野菜跡平均
日乾物重増加速度の季節推移(2002 年)
36
両試験区の乾物生産量は 800kg/10a 程度であった(表1)
。500kg の黒毛和種繁殖
牛は1日あたり乾物十で約 10kg の草を食べると考えられるので、1ha の草地で年間
800 頭・日の繁殖牛を放牧飼養できると考えられた。
表1
両 試 験 区 に お け る 乾 物 生 産 量 ( kg/10a)( 2002 年 )
被食量
残草量
合計
水田跡1区
783.9
18.4
802.3
水田跡2区
737.8
28.3
766.1
野菜跡1区
746.1
14.2
760.3
野菜跡2区
685.2
14.9
700.1
3.遊休農地に造成した寒地型牧草地の家畜生産性
上記試験における、放牧牛の採食量および体重を明らかにすることで 、①親牛が単
位面積あたり何頭放牧飼養できるのか 、②親子放牧条件下の子牛の増体はどの程度な
のかを明らかにする。
1)試験方法
供試牛、供試草地および放牧法は上記試験の通りであり、2002 年度の放牧スケジュ
ールを図3に示した。
水田跡区
5/21∼6/11
現地分娩3頭
7/29
繁殖牛1頭とその子牛1頭退牧
野菜跡区
7/29
繁殖牛1頭とその子牛1頭退牧
5/13∼6/3
現地分娩3頭
5月
6月
水田1牧区:33a
7月
8月
水田2牧区:
30a
9月
野菜1牧区:
20a
10月
野菜2牧区:
45a
図3 放牧スケジュール( 2002 年)
注)両区とも、4/26に繁殖牛3頭ずつを放牧を開始し、放牧方法は2牧区輪換方式で1∼2週間毎に移牧した。水田跡区では
10/24まで、野菜・樹園地跡区では 10/17まで親子放牧をおこなった。
2)結果および考察
繁殖牛の体重は、両区、両年とも、スプリングフラッシュ の時期には増加し、分娩
時に 50kg 程度減少し、その後は維持する傾向にあった(図4)。
37
600
600
500
500
400
400
300
300
200
200
100
100
2002年
水田跡区
野菜跡区
0
0
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
図4 両区における繁殖牛の体重の推移
その際の繁殖牛の採食量は体重比で2%程度であり(野菜跡区)、十分な量であった
(図5)。
3.5
採食量(
体重比:
%)
体重(
kg)
700
2001年
700
2001年
2002年
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
5月
6月
7月
8月
9月
10月
図5 繁殖牛の採食量 の月別推移
繁殖牛の体重がほぼ維持できたことと、十分な採食量を確保できたことから、この
試験における延べ放牧頭数(表2)である 700 頭・日/ha が遊休農地に造成した寒地
型牧草地の牧養力であると言える。
表2
両 区に お け る繁 殖 牛 の延 べ放 牧 頭 数( 頭・ 日/ha)
水田跡区
野菜跡区
2001 年
679.4
669.2
2002 年
727.0
683.1
平均
703.2
676.2
子牛の日増体量については、雄が 0.94kg/day、雌が 0.75kg/day であり、非常に高
く舎飼いに匹敵する値であった(表3)。これは寒地型牧草の構成割合が高かったため
に栄養価の高い草を供給できたことと、放牧頭数が草地の草生産と合致していたため
に十分な可食草量を準備できたことが原因と考えられた。
38
表3
親 子 放 牧 中 の子 牛の 放牧日数 お よ び日 増 体 量(kg/day)
放牧日数
日増体量
頭数
平均
範囲
平均
範囲
雄
2頭
105 日
104∼106 日
0.94
0.91∼0.97
雌
8頭
118 日
69∼161 日
0.75
0.52∼0.83
4.寒地型牧草を導入していない遊休農地の草および家畜生産性
遊休農地を対象にした放牧において、家畜生産を大きな目的とせずに、牛を草刈り
機代わりに用いることで遊休農地を管理する場合がある。この場合には寒地型牧草 を
導入することなしに、そこにある草をそのまま放牧利用することになる 。そこで、寒
地型牧草を導入していない草地に放牧をおこない 、草量の推移および牛の体重推移を
見ることで、どのくらいの面積にどのくらいの頭数の牛をどのくらいの期間放牧すれ
ば、草が無くなり、牛も無事でいるか検討する。
1)試験方法
放牧試験を 2003 年におこなった。供試草地はススキ優占草地(開田村、32a)お
よびオオブタクサ 優占草地(須坂市、38a)とした。供試牛は両草地にそれぞれ黒毛
和種繁殖牛(妊娠牛)を2頭ずつとし、ススキ草地においては7月 31 日から9月 11
日までの 43 日間、オオブタクサ草地においては9月2日から 10 月2日までの 31 日
間にわたって放牧をおこなった。
2)結果および考察
両草地において、放牧開始時から1∼2週間に体重は減少したが、その後、回復・
維持した(図6,7)。これは餌の切り替えが原因と考えらるので、この草地に放牧す
る前に同様の植生の草地に放牧すれば、体重減少が少なくなると考えられる。
500
560
9901
9922
480
460
9823
9817
540
520
440
500
420
480
400
380
2003/7/30
2003/8/29
2003/9/28
460
2003/9/1
2003/10/1
図 7 オオブタクサ 草 地における放牧牛 の 体重推移
図6 ススキ草地における放牧牛の体重推移
放牧前において、ススキ草地では 600kg/10a、オオブタクサ草地では 1000kg/10a
あった草が放牧後には両草地とも 100kg/10a になり、見通しの良い状態になった。前
後 差 し 引き 草 量 から 推 定し た 、放 牧 牛の 1 日 1頭 あ た り の 採 食 量 は ス ス キ 草地 で
19.2kg/day、オオブタクサ草地で 54.8kg/day であった。体重の増加していない繁殖
39
牛(体重 500kg)の1日1頭あたりの採食量は 10kg/day 程度なので、放牧によって
減少した草の半分から5分の4は踏み倒しによるものと考えられた。
表4
坪 刈 り 試 験 結 果 ( kgDM/10a)
ススキ草地
オオブタクサ草地
放牧前
632.5(7月 31 日)
1002.5(9月2日)
放牧後
117.7(9月 12 日)
108.5(10 月3日)
前後差し引き
514.8
894.0
前後差し引きから推定 19.2kg/頭/日
54.8kg/頭/日
した採食量
以上の結果より、本試験の面積、頭数および放牧期間の設定で放牧が可能であり、
ススキ草地およびオオブタクサ草地における延べ放牧頭数である 286.7 頭・日/ha お
よび 163.2 頭・日/ha が牧養力と考えられた。このことにより、牧草地化していない
草地で1頭の牛を1ヶ月間放牧したい場合には 10∼20aの圃場が必要と考えられた。
5.季節生産性の平準化と放牧延長を目的とした組み合わせ放牧技術
遊休農地に寒地型牧草を導入していない時の草地の牧養力は 150∼300 頭・日/ha/
年であり、そこに寒地型牧草を導入することにより、牧養力を 700 頭・日/ha/年まで
増加することができる。したがって、家畜の生産を重視する場合には、寒地型牧草 を
導入する必要がある。
しかしながら、オーチャードグラス ・ペレニアルライグラス優占草地を放牧に用い
た場合には、牧草の生育が夏以降減少 するために 、放牧頭数を夏以降減らさなければ
ならないといった 欠点がある。また、6ヶ月程度の放牧期間では短いと考える農家も
いると考えられる。ここでは、上記の欠点を解決するために以下の試験をおこなった 。
①オーチャード・ペレニアルライグラス優占草地を基幹草地とし、牧草を導入してい
ない遊休農林地を夏季補完草地とする。②春から夏まで基幹草地で放牧し、基幹草地
の牧草生産が低下する夏季には夏季補完草地に放牧し、その間基幹草地 を秋季放牧用
に備蓄する。③11 月以降に放牧牛を夏季補完草地から基幹草地に移牧し、12 月末ま
たは1月頭まで放牧する。
1)試験方法
・2003 年に放牧試験をおこなった。基本的な放牧方法は上記の通りである。
・供試草地(御代田町および小諸市)
基幹草地:遊休水田に耕起造成した圃場、33aおよび 30aの2牧区を用い、2牧区
輪換放牧利用した。
夏季補完草地:ヨシ優占草地(21a)、混牧林地(80a)、オオブタクサ優占草地(28
a)、荒廃牧草地A(20a)、荒廃牧草地B(36a)を用い、輪換放牧
した(合計 185a)。
40
・供試牛:黒毛和種繁殖牛(4∼6歳)を3頭用いた。供試牛は5月から6月にかけ
て現地で分娩し、その後は親子放牧とした。
2)結果および考察
基幹草地の乾物生産量は年間で 862.6kg/10a であり、基幹草地を春から秋まで継続
して放牧利用した 2001 年および 2002 年の 800kg/10a より多かった(表5)。
表5
基 幹 草 地 の 乾 物 生 産 量 ( 1 牧 区 、 30a )( kgDM/10a)
5/7∼ 8/7(2牧区:51 日間放牧)
11/10∼12/8(2牧区:12/9∼ 1/5,28 日)
滞牧日数
被食量
滞牧日数
被食量
残草量
合計
42 日
498.0
29 日
288.1
76.5
862.6
繁殖牛の体重については 、正常な範囲で維持できた(図8)。子牛の日増体量につい
ては雄 0.83kg/day および雌 0.53kg/day であり、基幹草地を春から秋まで継続して放
牧利用した 2001 年および 2002 年の結果より低かった。この結果については、寒地型
牧草より遊休農地の草の栄養価が低かった影響が考えられた。
体重(kg)
800
700
600
ヨシ草地
基幹草地
オオブタクサ
ヨシ草地
草地
樹園地跡
基幹草地
混牧林地 所内草地 所内草地
9701
9716
9839
500
20
23
400
300
26
200
100
0
5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月
図8 試験期間中における供試牛の体重推移
表6に放牧実績を示した。基幹草地だけの放牧日数および延べ放牧頭数を、基幹草
地を春から秋まで継続して放牧利用した結果(2001・ 2002 年試験)である 180 日程
度および 700 頭・日/ha/年と比較すると、放牧日数については短く、延べ放牧頭数に
ついては同程度であった。基幹草地と夏季補完草地の組み合わせ放牧利用の結果と基
幹草地継続放牧利用を比較すると、組み合わせ放牧利用では放牧日数が 60 日長くな
り、延べ放牧頭数は低くなった。以上の結果より、繁殖牛1頭あたり寒地型牧草導入
した遊休農地 20aおよび無導入遊休農地 60aを組み合わせ放牧利用することで、1
頭あたり寒地型牧草地 20aを単独放牧利用に比べて、頭数コントロール をおこなわず
にすみ、さらに、2ヶ月間の放牧延長をおこなえることが明らかになった。
41
表6
草 地 面 積 、 放 牧 期 間 、 放 牧 日 数 お よ び 延 べ 放 牧 頭 数 ( 頭 ・ 日/ha/年)
草地面積
放牧期間
放牧日数
5/7∼8/7
93 日
11/10∼1/5
57 日
延べ放牧頭数
基幹草地
63a
補完草地
185a
8/8∼11/9
94 日
152.4
合計・平均
248a
5/7∼11/9
244 日
295.2
714.3
6.冬季放牧用イタリアンライグラス草地の生産性
組み合わせ放牧利用により、2ヶ月間の放牧延長が可能となったが、さらに、1月
から4月までの4ヶ月の放牧延長をおこない、周年放牧を可能とする技術を検討する。
ここでは、別に準備した遊休農地に、1年生冬作牧草のイタリアンライグラスを導入
し、12 月以降、どの程度の可食草量が確保できるか明らかにすることで、冬季の間の
4ヶ月間にわたって放牧をおこなうにあたっての、必要面積を検討する。
1)試験方法
・試験を 2001 年および 2002 年におこなった。
・供試草地:2001 年には9月6日に、2002 年には8月 20 日にIRを播種した。1
年目の播種量は8kg/10a、2年目は4kg/10a とした。両年とも元肥は窒
素で4kg/10a とした。
・調査方法:1年目は 12 月5日およびに2月 13 日に、2年目は 12 月5日に坪刈り
法により現存量を推定した。
2)結果および考察
2001 年度の 12 月および2月時点のイタリアンライグラス 備蓄草量は同程度であり、
約 250kgDM/10a であった。最も寒い1∼2月でも備蓄草量がほとんど 変わらなかっ
たことから、イタリアンライグラスは冬の間にはいつでも放牧に用いることができる
と考えられた(表7)。2002 年の 12 月時点の備蓄草量は 210kgDM/10a であり、2001
年に比べてアカザが多かったために備蓄草量は少なかったが 、アカザが少なかった所
では 250∼ 350kgDM/10a の備蓄草量があった。したがって 、8月下旬から9月上旬
にイタリアンライグラスを播種することで、冬季の間、250∼ 300kgDM/10a の備蓄草
量を準備することができる 。繁殖牛1日1頭あたり乾物で 10kg の草を採食すると仮
定すると、1頭あたり 40aの草地を準備することで、4ヶ月間放牧することができる
と考えられる。
表7
冬季備蓄用イタリアンライグラス(IR)草地の備蓄草量(kgDM/10a)
2001 年度
2002 年度
IR
その他
枯れ
IR
その他
枯れ
12 月
267.2
5.2
7.7
213.6
7.1
22.8
2月
251.4
3.7
8.5
42
7.まとめ
遊休農地を対象にした放牧において、目的や条件が異なれば、使用する草や家畜の
種類が変わってくると考えられる。主な目的が荒廃した遊休農地の管理(草刈り)で
あれば、当然、寒地型牧草の導入は必要なく、家畜も牛である必要もない。一方、小
さい面積しか用意できないのに多頭数の放牧飼養をおこないたいのであれば、寒地型
牧草を準備する必要がある。そこで、これまで紹介した試験結果を元に推定した、草
種の違いによる肉用繁殖牛1頭あたりの放牧必要面積、放牧期間、放牧可能日数およ
び延べ放牧頭数を、下記の表8にまとめた。
表8
草種の違いによる放牧条件
1頭あたり必要面積
放牧期間 放牧日数
牧養力
頭・日/ha/年
牧草無導入遊休農地
60∼120a
春∼秋
180 日
150∼300
寒地型牧草地
20∼ 30a:夏季に頭数 春∼秋
180 日
700
減らす必要あり
無導入遊休地と寒地
60a:無導入遊休地
夏∼秋
90 日
150
型牧草地の組み合わ
20a:寒地型牧草地
春∼夏
90 日
450
秋∼冬
60 日
300
せ利用
イタリアンライ
40a
冬
90 日
225
グラス
80a
冬
180 日
225
表8は東日本の寒地型牧草 を放牧に用いることのできる地域に対応したものであり、
西日本では、その地域に対応したデータを用いる必要がある。また、牧草を導入した
いが、施肥はおこなえない場合に対応できるシバのデータも無い。以上のことを留意
すれば、この表を用いることで、異なる目的・条件下における、草種や放牧頭数、必
要面積等を考えることができる。
43
現地実証試験圃場(
須坂)
の状況
(牛で農地をよみがえらそう!フォーラム 2004
資料より抜粋)
JA須高 山岸賢一
1 .豊丘地区耕作放棄地面積
総耕作面積12,620a(内耕作放棄3,580a、約 28%)
2.試験区の概要
(1)対象試験区
須坂市豊丘上町新田地籍
(2)試験区の面積
約50a
(3)試験区の耕作放棄期間
平成11年より4年間
(4)耕作放棄前の作物
飼料用とうもろこし、野菜(ねぎ・野沢菜等)
(5)耕作放棄に至る経過
耕作者の高齢化、猿害の多発
(6)試験区の植生
オオブタクサ・カナムグラ・ヨモギ・アカザ( 5:2:2:1)
(7)試験区の対象地権者
3名
(8)試験区の隣接地権者
3名
(9)試験区管理者
そのさと牧場会
( 10)試験実施期間
平成15年9月2日∼10月9日(38日間)
6名
3.試験実施の経過(平成15年)
5月16日
現地打ち合わせ(関係機関等)
6月6日∼7月4日
事業実施候補地の地権者巡回(3回)
7月16日
現地打ち合わせ
8月
試験区の牧柵設置ラインの伐開
5日
8月19日
牧柵設置
9月
2日
放牧開始
10月
9日
放牧収量
試験対象地区の選定
4.主な放牧管理業務(平成15年)
(1)牛,牧柵の状態確認
1日4回実施(毎日)
(2)給水作業
放牧開始時を含め6回実施
(3)捕食作業
(4)牧柵直近の下草刈
10月
1日から乾草給与終了日まで約150 kg 給与
9月2日,22日の2回
(1回あたり作業員2人,2時間/人)
- 45-
5.実証試験実施の内容・考察
(1)試験区(試験実施耕作放棄地)の選定について
当初,地区内3ヶ所約150aを候補地とし,対象地権者 12 名より試験実施の同意を得る。
対象地権者の反応は,「是非やってもらいたい」が多数で放牧試験に対して否定的な意見はな
かった。同意理由としては ,「ただ荒らしておくのならば,綺麗にしてもらいたい。」「猿の巣に
なっているんだから有効利用してほしい。」等の好意的な理由であった。
牛の放牧についても,地域住民から「脱柵しないなら良い。」と特に牛を放牧する事について
危惧する意見はなかった。しかし,地区内の保育園・小学校から電気牧柵の安全性について心配
する声があった。
試験区を現地に設定した理由については,畦が低く比較的平坦で牧柵の設置が容易,住宅密集
地から距離がある,等の理由によるものである。
(2)候補地選定後の試験実施の周知について
前段で保育園・小学校から出された懸念について,園・学校を通じて園児・児童に注意を徹底
するとともに,注意を喚起する看板の設置,近隣住民並びに保護者へ放牧試験実施に関する諸注
意事項を文書で配布するなど,試験実施と安全対策の周知を図った。また,試験区隣接の地権者
については,「脱柵さえしなければ。」と好意的であり,特に苦慮はしなかった。
(3)放牧前準備について
山地畜産研究部,県関係機関のご協力により牧柵ラインの伐開作業1日,牧柵張り1日の短期
間に作業ができた。しかし,インサルティンバー(絶縁木)方式の牧柵設定を個人で行うとなる
とかなりの労力が必要になると思われた。
(4)放牧管理について
今回の試験放牧が初めての試みであった為,1日4回,一回あたり 30 分程度の巡回を行った
が,牛が牧柵に馴致していることもあり,特に苦労した事はなかった。ただ,当初予想したより
も飲水量が少なく牛の健康状態を心配したが,牛の状態は良好であった。
また,放牧開始が9月と遅く,植生はオオフタクサが大半で草丈が長く繁茂したため,牛が何
処にいるのか,草を食べるのかなど放牧状況の確認は,草の茂みに分け入ることが必要だったが,
放牧中期から後期になると牛がかなり草を食べてのと,草の倒伏により観察がしやすくなった。
今回の試験区のような野草繁茂地は草丈が伸びる前の春からの放牧が望ましいと考えられる。
(5)放牧試験を終えて
オオブタクサ繁茂地が,目に見えて開けていく模様を観察できた。また,周辺地区の方々の評
価も高く,新たに牛を放牧してほしいとの要望もあがっている。本年(平成16年)は,放牧地
を4箇所選定してあるので,施設設置の目処がつけば複数牧区を移動させる本来の形の小規模移
動放牧に取り組んでいきたいと考えている。
- 46-
参考資料 (小山 )
Ⅰ.耕作放棄地の発生と放牧利用
1.発生する要因と放牧
3)肉用牛飼養と耕作放棄の関係
表1
肉用牛飼養農家と非飼養農家の耕作放棄地率(1995年)
農家数
中国全域
全農家
肉用牛飼養農家
繁殖牛飼養農家
非飼養販売農家
自給的農家
(戸)
所有耕地
面積
(a)
経営耕地
面積
(a)
350 ,954
13,800
12,273
238,173
98,981
23,332,214
1,577,706
1,382,649
18,995,977
2,758,531
23,566,180
1,855,633
1,613,281
19,804,654
1,905,893
耕作放棄
面積
(a)
耕作放
棄地率
(%)
1,521,558
48,759
38,798
978,665
494,134
6.1
3.0
2.7
4.9
15.2
注1)耕作放棄地率=耕作放棄面積/(耕作放棄面積+所有耕地面積)×100
4)繁殖牛の放牧
遊休農地の放牧面積(ha)
200
対遊休農地割合(%)
20
放牧面積
150
割合
15
100
10
50
5
0
鳥取
岡山
島根
広島
0
山口
大田市2002
大田市1997
図1 中国地域 の遊休農地の放牧利用面積と割合
注:1)遊休農地は、販売農家 の耕作放棄地及び不作付地 の合計 .
2 )農林業センサス、及び中四国農政局資料(2002 年)による.
Ⅱ.耕作放棄地の放牧利用技術
1.耕作放棄地の放牧利用の考え方
表1 放牧を実施しない、或いはできない理由
回答農家
計 (戸)
回答農家数
舎飼で継続可能、資材費が負担
近く
に放牧適地がない
牛の運動経験がなく放牧は無理
牛の脱柵が不安
牧柵や放牧の知識がない
50
27
19
12
7
7
規模別回答割合(%)
1∼2頭
3∼5頭
6頭以上
28
64.3
28.6
35.7
10.7
7.1
49
15
53.3
53.3
13.3
6.7
0.0
7
14.3
42.9
0.0
42.9
57.1
(放牧開始時の問題)
放牧馴致・
脱柵
水飲み場の確保
牧柵資材 の調達・
設置
(
放牧継続上の問題)
放牧地の草地化
不食草の掃除刈り
放牧地の泥濘化等
家畜の脱柵
牧柵の維持
冬季飼料 の確保
家畜の捕獲・
移動
家畜観察 の移動
繁殖率低下
疾病・
事故
おおいに苦労した(
している)
苦労した(
している)
0
10
20
30
40
50
60
70
回答割合(
%)
図3 里地放牧 の開始、及び継続上の問題点
注:
大田地方 の放牧実施農家アンケート調査結果(
47回答)
.
図 2.1 ススキが優占している放牧開始
前の耕放棄地の様子
図 2.2 放牧利用4年目(ススキが衰退し
裸地が目立つ)
3.電気牧柵と飲水施設
1)電気牧柵
図. 牛に押されて倒れかかった牧柵
図. 三段張の牧柵(子牛を放牧)
50
表 62 電気牧柵の設置 経費(概算、50a 程度)
(岡山県)
表 92
試験区
牧柵設置に関する調査(京都府)
作業時間/100m
資材費試算(20aで周囲210mの場合)
(2m間隔で設置、2段掛け)
項
有刺鉄線
2.5時間
支柱
1.1時間
233,520円
31円/m
電気牧柵支柱
電気牧柵器
ポリワイヤー
計
2,100円/本
有刺鉄線
電気牧柵
目
710円/本
117,850円
37,000円/器
15円/m
2)飲水器(飲用水の確保)
図 26
図 飲水器から溢れた水で泥濘化した
棚田放牧地
雨水を利用した簡易飲水器(岡山)
51
図6 飲料水量の推移(山口県)
3)法面の崩壊防止(張りシバ法)
図 牛によって崩された法面
図
図 ノシバ苗を牛糞で法面に張り付ける。
この 様な 急 斜 面で も剥が れ る こ と
無く、張り付けることができます。
(張りシバ法)
法面に貼り付けたノシバ苗
図
52
シバ草地化した法面
3)法面の崩壊防止(崩壊を引き起こす要因と対策)
図 2.43 放牧牛によって崩さ れ裸
図 2.44 法面の上縁に牧柵を設置
地化した法面
すると、外の野草 を採食す
るときに法面を崩す。
図 2.45 法面の縦方向に牧 柵を設置
図 2.46 牧柵は法面の上縁から 1
すると、牧柵に沿って降り
m程度離し、牛が歩け る
るとき法面を崩す。
平らな 場所 を確 保し て
設置する。
図 2.47 飲用水が流れ出るタイプ
図 2.48 泥濘化を防ぐ た め に は止
の 飲 水 器を 使 う と 泥 濘 化
水弁付き飲水器を使う 。
が起こる。
53
4)泥濘化防止
図
止水弁付き飲水器(コンテを使って自作)
作 業 手 順
① 砕石を厚さ10cm程度に均す。
② 亜鉛溶融メッキを施した建築用のエキスパン
ドメタルを敷き並べる。
③ その上に、ポリプロピレン繊維を圧縮成型し
た土木用の不織布を敷く。
④ 真砂土を10cm程度にかぶせ、鎮圧して終了。
図27
建築資材を利用した泥濘化防止の写真
54
5)流出水の水質
表 91
採水場所
水質分析結果(京都府)
放牧状況 採取年月日
pH
BOD
COD
全リン 全窒素 大腸菌群数
(mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (MPN/100mL)
流入水
流出水
放牧中
2000.7.13
2000.7.13
7 .49 2.84
7 .59 3.08
1.90
2.20
0.02
0.04
0.72
0.67
nd
nd
流入水
流出水
放牧後
2000.11.11
2000.11.11
7 .22 2.37
6 .80 1.79
3.24
5.64
0.03
0.16
1.78
1.64
nd
nd
流入水
流出水
放牧前
2001.4.4
2001.4.4
7 .16 2.63
6 .89 0.60
2.26
0.56
tr
0.01
1.82
1.10
nd
nd
流入水
流出水
放牧中
2001.6.20
2001.6.20
6 .86 1.62
6 .17 2.23
0.22
4.49
0.01
0.11
0.76
1.48
nd
nd
流入水
流出水
放牧後
2001.7.19,8/1 6.68 2.42 3.05
2001.7.19,8/1 6.71 4.47 17.17
0.03
0.31
0.67
3.87
105,000
231,000
流入水
流出水
休牧中
2002.8.21
2002.8.21
7 .44
7 .64
nd
nd
2.18
2.07
0.02
0.04
0.24
0.94
495
680
流入水
流出水
放牧後
2002.10.31
2002.10.31
6 .88
6 .35
nd
nd
1.57
0.97
0.01
0.02
0.29
0.62
500
2,500
*2001.8.1のサンプリングは大腸菌群数分析
*tr:Trace(痕跡)
*MPN:most probable number method(最確数法)
*nd:no data
BOD:生物化学的酸素要求量、
表
区分
糞無し
糞から 30cm以上
糞から 30cm
糞真下
糞現物
COD:化学的酸素要求量
放牧牛の糞・土壌の窒素成分(山口畜試)
地目
分析対象
野草地
放牧地
放牧地
放牧地
放牧地
土壌
土壌
土壌
土壌
糞
アンモニア
mg/100g
5.16
5.42
5.01
6.05
9.60
硝酸態窒素
mg/100g
0.03
0.06
0.00
0.08
0.68
注)調査地:野草地(ススキ、ササ主体)
、採取時期:H12年2月
放牧牛の糞のアンモニア態窒素は、9.60mg/100a であり、糞から 30cm 離れた場
所のアンモニア態窒素は 5.01mg/100g と無糞の野草地とほぼ同じ値であった。
硝酸態窒素も 1mg/100g 以下であった。
(参考:ホルスタイン種の育成牛を 1.5
∼2頭/ha 放牧すると、糞塊数は2∼4個/m2 /月である。
)
55
4.野草の乾物生産量の経年変化
1)乾物生産量
表 2.2 大田市内における放牧地の 土壌養分含有量( mg/100g)
放牧地
前歴
pH(水)
有 効 態リン 酸
置換性加里
A放 牧 地
畑
5.1
1
17
B放 牧 地
里山
5.3
6
43
C放 牧 地
田
5.4
53
49
D放 牧 地
畑
6.8
118
551
5.草地造成
1)ノシバ草地の造成
①撒きシバ法:
図1.シバ苗(1アール分)とカッター
図3.耕起後、シバ苗を播く(4月 21 日)
56
図2.シバ苗を裁断する
図4.シバ苗を鎮圧する
図5.定着したシバ苗
図6.3∼4年でシバ草地になる
② ポット苗 の移 植
(1)穴を掘る従来法
(2)直置き移植法
図 31
ノシバポット苗の直置き移植法(京都府)
2)牧草地の造成
② バヒアグラス 、 センチピードグラス及 びカーペットグラス 草地 の造 成
―島根県隠岐島 における 暖地型牧草地 の 造成 ―
図1 造成前の様子(隠岐)
図2 耕起造成法による暖地型牧草地の造成
57
表 75 暖地型牧草導入試験成績(島根県)
注)1 区 センチピード+耕起+播種 2kg 、2区 カーペット+耕起+播種2kg、3 区 バ
ヒア+耕起+播種2kg、4区 センチピード+不耕起+播種2kg、5区 センチピー
ド+バヒア+播種各 1kg、6区 カーペット+不耕起+播種2kg、7区 カーペット
+バヒア+不耕起+播種各1kg
(2)寒地型牧草
①ペレニアルライグラス 、トールフェスク 及び リードカナリーグラスの 利用
表 79 農作業の忙しい期間に放牧する(京都府)
放牧期間
99.5.5∼5.21
99.8.28∼9.14
放牧日数 放牧時間 成牛頭数
16
18
223
204
427
8
8
子牛放牧換算頭
数(実頭数)
2.4(8)
2.9(8)
子牛換算頭数
220kg以下 220kg以上
8
7
0
1
1999年 計
34
8
00.5.4∼5.17
14
147
8
1.5(5)
5
0
00.7.2∼7.7
6
70
8
0.9(3)
3
0
00.8.20∼9.9
21
252
9
1.4(3)
2
1
2000年 計
41
469
01.4.30∼5.25
26
282.5
9
2.7(9)
9
0
01.6.19∼6.24
6
51
9
2.7(9)
9
0
01.8.28∼9.8
12
119.5
9
3.7(9)
7
2
2001年 計
44
453
*昼間延べ放牧頭数は成牛1.0、子牛は体重に応じて0.3(220kg以下)、または0.8(220kg以上)
として算出した。
*夜間収牧中は配合飼料のみを親牛に1.0kg、子牛に生育ステージにより2.0∼4.0kg給与した。
58
昼間延べ放牧
頭数(頭/ha)
277
327
604
222
89
364
675
507
117
254
878
②シバ草地にイタリアンライグラスを追播
写真 39 ディスキング法(山口県)
播種後 40 日の状況
写真 40 マクロシートペレット法
写真 40 マクロシートペレット法(山口県)
45
40
35
30
草 25
丈 20
15
10
5
0
草 丈 (H1 3 )
140
乾 物 生 産 量 (H1 3 )
120
100 乾
物
80
生
60 産
40 量
20
0
10月 11月 12月 1月
図 43
2月
3月
4月
マクロシードペレットによるイタリアンの追播
草丈と乾物生産量(油谷町、山口県)
59
Ⅲ 水田への復元
2)シバ草地を水田に復元
表 95 シバ草地に対する湛水処理後のシバの生育状況(高知県)
区
分
無耕耘
冠水状態の有無
無
湛水時耕耘
湛水前耕耘+湛水時耕耘
備
考
あぜの溝部分のみ湛水。30日間注水してもシバ草地は
ほとんど冠水せず。灌水中止2日後にはあぜの湛水状
態解消。冠水していない部分のシバの生育は良好。
湛水処理後全面湛水状態維持。シバ再生なし
湛水処理後全面湛水状態維持。シバ再生なし
有
有
最高分けつ期
茎数
稈長
出穂期
穂長
成熟期
穂数
精玄
登熟 玄米千 ㎡当
米重
歩合 粒重
籾数
(本/㎡) (kg/10a) (%)
(g)
(千粒)
284
482
84.0 22.0
26.1
322
459
71.8 21.7
29.5
275
421
80.1 21.8
24.2
(本/㎡)
(cm) (cm)
基肥増肥区 323
83.3 19.1
中間追肥区 367
90.1 19.0
対照区
299
80.8 19.6
耕種概要
供試品種:黄金錦
栽植密度:18.5株/㎡(条間30cm、株間18cm)
区
制:1区50㎡、反復なし
苗の種類:中苗(葉齢約2.5葉)
移植方法:1株4本、手植え
耕 耘:4月25日
荒 代:4月26日
植 代:5月25日
移植日:5月29日
Ⅳ 放牧子牛の生育(島根県)
400
120
350
110
300
100
250
90
舎飼子牛
放牧子牛
80
体 重
体 高
130
kg
kg
200
150
70
舎飼子牛
放牧子牛
100
60
50
50
0
50
100
150
200
250
300
日 齢
図1 放牧子牛と舎飼子牛の体高分布
350
0
400
0
50
100
150
200
250
日 齢
300
図2 放牧子牛と舎飼子牛の体重分布
60
350
400
4
kg
1.5%区
2.0%区
粗飼料採食量
3.5
***
**
**
3
*
2.5
2
1.5
20
24
28
週 齢
32
36
* P<0.05, ** P<0.01, *** P<0.001
図5 濃厚飼料給与量の違いが粗飼料採食量に及ぼす影響
発育を確保しつつ放牧特性の一つである粗飼料の食い込みを維持するためには、濃厚飼
料の給与量は子牛の体重比 1.5%までが適当であった(図5)
Ⅴ 放牧の効果
―放 牧を 取り 入れ た肉用牛経営 ―
経 営の概要
表4.2事例牧場の営農概要と牧場の実態
A牧場
経営主の年齢・
就業状況62歳・農業専業
繁殖雌牛飼養頭数
5頭
その他の営農
稲作46a
B牧場
74歳・
農業専業
10頭
稲作4ha・肥育牛20頭(子)
繁殖牛15頭(孫)
放牧地以外の飼料基盤 飼料畑21a
飼料畑50a
稲わら107a
稲わら283a
野草採草約120a
野草採草約160a
放牧対象地
2か所
6か所
放牧面積(開始年)
飼料畑・
野草地66a 入会牧野A(H4年)
(H10年)
入会牧野B(H10年)
耕作放棄地40a
転作田30a(H8年)
(H11年)
耕作放棄地等1ha(H10年)
耕作放棄地44a
転作田20a(H12年)
(H13,14年)
耕作放棄地20a(H12年)
里地放牧面積合計
150a
170a
牛舎からの距離
200m以内
500m∼10km
放牧対象牛
妊娠牛
妊娠牛、育成牛
授乳中の親子の一部
1群編成
多群編成
放牧期間
4月2日∼11月12日 4月11日∼12月14日
放牧延べ頭数
618日頭(H12年)
1586日頭(H13年)
うち里地
618日頭
618日頭
1頭当たり放牧日数
154日(H12年)
158日(H13年)
里地牧養力
600日頭/ha
400日頭/ha
放牧中の飼料給与
なし
2日に1度
濃厚飼料給与
放牧牛の移動
数週間隔で移動
1か月間隔で移動
放牧管理作業
36時間(H12年)
242時間(H13年)
注:
1)
営農概況はH14年、放牧期間はA牧場H12年、B牧場H13年の実績.
2)A牧場の放牧管理作業は、牧柵の張り替え、不食草の掃除刈り、ノシバ
等の移植.B牧場の作業の内容は、家畜の観察・飼料補給198時間、
家畜の移動25時間、牧柵補修等18時間.
61
農作業時間 の減 少
表4.3 A牧場の家畜飼養に関わる作業時間
(単位:時間)
周年舎飼 放牧4年目
牛舎内作業
962
511
粗飼料生産・
収穫作業
637
371
牧草生産
232
156
野草収穫
343
174
稲わら収穫
62
41
放牧管理作業
0
36
家畜飼養作業合計
1599
918
5月∼10月
1079
484
1頭当たり
400
229
(
参考)
1頭当たり放牧日数(
日
0
154
稲作作業
356
343
5月∼10月
277
275
農作業全体
1955
1261
5月∼10月
1356
759
自給率 の向 上
表4.4 繁殖牛(親牛)
1頭当たりの飼料給与の実態と自給率
年 間 給 与 量
自給率 濃厚飼料
原 物 (kg) TDN(kg)
(
%)
購入費
稲わら
乾草
濃厚飼料 粗飼料 濃厚飼料
(
円)
A牧場
放牧時
舎飼(維持)
時
622
244
100
347
66
4,412
舎飼(産前産後)
560
220
255
313
172
11,998
年間 計
1182
464
355
660
238
85.0
16,410
同(放牧なし)
2044
803
494
1141
330
77.6
22,531
B牧場
放牧時
158
49
5,705
舎飼(維持)
時
198
90
86
116
57
4,025
舎飼(産前産後)
675
307
600
396
145
32,268
年間 計
873
397
844
513
521
69.1
41,999
同(放牧なし)
1533
694
973
898
663
57.5
49,825
注:1)自給率(粗飼料給与率)は、放牧期間の1日当たり飼料摂取量を舎飼(維持)
期間の1.2培とした
自給率(%)=(1-(年間濃厚飼料TDN給与量)/(年間飼料TDN給与・摂取総量)*100
62
経 費の節減
表4.7 事例牧場の家畜生産に関わる経費の実態 (単位:
円)
A 牧 場 (H12年)
B 牧 場 (H13年)
経費
増減
備考
経費
増減
備考
購入濃厚飼料費
親牛用*
16,608
-6,000 放牧時給与なし 42,468
-8,000 放牧時給与節減
子牛用
30,690
43,844
稲わら購入費*
9,981 -16,290 放牧時給与なし
0
無償調達のため変化なし
牧草種子・肥料代
7,034
-1,721
3,070
-1,132
ビタミン等補助栄養
8,810
3,293
種代・授精料
9,544
14,344
診療費*
1,875
-4,000 疾病減少
1,214
-4,500 疾病減少
妊娠鑑定費
1,500
600
予防接種・
医療品費
3,700
3,700 ダニ駆除年3回
4,574
4,574 ダニ等の駆虫薬毎月
子牛検
6,165
5,808
家畜共済保険料
16,637
10,000
削蹄費*
4,000
-6,000 削蹄回数減少
4,000
-6,000 削蹄回数減少
高熱・水道費
4,500
4,347
燃料・
消耗品費
7,240
-1,543 採草作業減少
4,614
-1,317 採草作業減少
修繕費
4,706
3,128
放牧利用料
0
1,489
1,489 入会地放牧料@2000円
事務費・
その他
2,500
3,803
親牛減価償却費
40,000
28,000
機械減価償却費
13,750
3,404
牧柵資材償却費*
7,500
7,500 2セット15万円
4,255
4,255 3セット、20万円
費 用 合 計
196,740 -24,354
186,256 -10,631
注:*は放牧により変化した費目.増資は放牧による増資.
63
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