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遮光処理をしたブルーベリー葉におけるキナ酸およびプロア
遮光処理をしたブルーベリー葉におけるキナ酸およびプロアントシアニジン含量の季節変動 國武久登 1・甲斐孝憲 2 ・布施拓市 1 ○ (1宮崎大農学部・2 なな葉コーポレーション株式会社) Seasonal variation of the qunic acid and the proantcyanidin contents of the shading-treated blueberry leaves. Kunitake, H., T. Kai and T. Fuse [目的]ラビットアイブルーベリーの葉は,さわやかな酸味を持つキナ酸や,C 型肝炎ウイルス複製抑制活性を持つプロ アントシアニジン(PAC)のようなポリフェノールを高含有し,機能性食品の原材料として期待されている.前回,我々 のグループは,ブルーベリー春葉におけるキナ酸や PAC 含量等への 1 か月間の遮光処理が及ぼす影響について報告した が(布施・國武,2013),長期間の遮光処理がブルーベリー葉に及ぼす影響については明らかになっていない.そこで, 長期間の遮光処理を実施し,ブルーベリー葉におけるキナ酸,PAC および総ポリフェノール含量の季節変動を調査した. [材料および方法]ブルーベリー春葉におけるPAC,総ポリフェノールおよびキナ酸含量に及ぼす遮光処理の影響を調査 するために,宮崎大学農学部附属農場栽植のラビットアイブルーベリー葉専用品種, ‘くにさと35号’ (Vaccinium virgatum Aiton)を供試した.遮光処理は,平成25年3月15日から10月16日にかけて7か月実施した.遮光処理は,3種類の処理区(弱 遮光,中遮光,強遮光)を設け,それぞれ遮光率が異なる寒冷紗[ダイオネット410(遮光率35~40%),ダイオネット1010 (遮光率65~70%),ダイオネット1220(遮光率90~95%)]を用いた.収穫した試料は,直ちに凍結させ,凍結乾燥させ た後,-20℃で保存した.キナ酸含量はHPLC,総PAC含量はDMACA法(Li,1996),総ポリフェノール含量はフォーリンチ オカルト法(Singleton and Rossi,1965)にて常法により測定した. [結果および考察]ブルーベリー葉のキナ酸含量は,6 月の強遮光処理区でやや多かったが,1 年を通じて大きな差異は なく,遮光処理はキナ酸含量に大きな影響を及ぼさないことが分かった(第 1 図 A).ブルーベリー葉の PAC 含量は,8 月までは強遮光処理区が最も低かった(第 1 図 B).10 月になると強遮光処理区で PAC 含量が増加し,中遮光処理区と 同程度になり,これらの処理区における PAC 含量は,無処理区の約 65%になった(第 1 図 B).ブルーベリー葉の総ポ リフェノール含量は,8 月までは強遮光処理区が最も低かった.10 月になると中遮光処理区の総ポリフェノール含量が減 少し,強遮光処理区と同程度となり,これらの処理区の総ポリフェノール含量は,無処理区の約 70%になった.このよ うに,強い遮光処理により,ブルーベリー葉の総 PAC 含量や総ポリフェノール含量は大きく減少することが分かった. 10 月の葉収穫量は,無処理区と比較して,弱遮光処理区で約 53%,中遮光処理区で約 16%,強遮光処理区で約 6%にな り,中遮光処理区及び強遮光処理区の収穫量は,前回報告した 4 月の収穫量よりもかなり少なくなった.以上の結果から, キナ酸含量が多く PAC 含量が少ない葉を効率的に生産するには,短期間の遮光処理で十分であることが明らかとなった. 今後は,これらの知見の活用し,新規用途開発を目的としたブルーベリー葉栽培を促進していく予定である.なお,本発 表の一部は,平成26年度春季園芸学会(筑波大学)において発表したものである. A B 14 180 キ ナ酸(㎎/gDW) 140 b a b,c b b a a a,b a cZ a a a a 100 80 60 40 a a a a a 10 a a 8 b b b b 6 b 4 c c 2 20 無処理区 弱遮光 中遮光 強遮光 12 P AC(㎎カテキン相当量/gDW) a 160 120 無処理区 弱遮光 中遮光 強遮光 a c d 0 4月 6月 8月 10月 0 4月 採取月 6月 8月 10月 採取月 第 1 図.遮光処理をしたブルーベリー葉の機能性成分の季節変動 A. キナ酸含量,B.PAC 含量,弱遮光: 35~40%遮光,中遮光:65~70%遮光,強遮光:90~95%遮光 z 異なる英文字間には 1%水準でチューキー法における有意差がある(n=3) . 第 21 回技術・研究発表交流会(2014)