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緩和ケア - 市立函館病院
第12回市民公開がん講座 「緩和ケア」 市立函館病院 緩和ケアチーム 緩和ケア認定看護師 小野 裕子 伊東 京子 本日の目的・目標 1.緩和ケアの可能性を知り、がん患者様とその 御家族にがんと向き合う意欲を持っていただく 2.何もしない・あきらめるなどという緩和ケアの 誤解を解き、言葉のマイナスイメージ改善する 3.鎮痛薬に対する思い込みを正しい知識へ変換 する 4.当院緩和ケアチームの役割を知っていただく 5.家族もケアの対象であることを知っていただく 構成 ・日本のがんの動向 ・緩和ケアとは ・全人的苦痛(total pain)とは ・認定看護師とは ・がん性疼痛について ・痛みの種類と特徴、薬剤の選択 ・痛み以外の苦痛症状について ・療養の場について 日本人の死因 第1位 第2位 第3位 悪性新生物 心疾患 脳血管疾患 (厚生省人口動態統計95) 2人に1人ががんになる時代 がん疾患は身近な問題として存在している がん対策基本法 第16条(2006.6) 国及び地方公共団体は、がん患者の状況に 応じて疼痛等の緩和を目的とする医療が早期 から適切に行われるようにすること、居宅にお いてがん患者に対しがん医療を提供するため の連携協力体制を確保すること、医療従事者 に対するがん患者の療養生活の質の維持向 上に関する研修の機会を確保することその他 のがん患者の療養生活の質の維持向上のた めに必要な施策を講ずるものとする よく使われる言葉の意味 ①アセスメント・・評価という意味で使われることが多 い。看護においては、対象(患者)の健康に関わる 情報を集めて分析・整理し、看護診断を判別するた めの過程。 ②ケア・・看護や介護。心遣い、配慮。 ③サポート・・支援すること。 ④ニーズ・・必要。要求。需要。 例「市民のニーズに答える」 緩和ケアとは 緩和ケアとは、目指した治療が有効でなくなっ た患者に対する積極的な全人的ケアである。 痛みやその他の症状コントロール、精神的、 社会的、そして霊的問題の解決が最も重要な 課題となる。緩和ケアの目標は、患者とその 家族にとってできる限り可能な最高のQOLを 実現することである。末期だけでなく、もっと 早い病期の患者に対しても治療と同時に適用 すべき点がある。 世界保健機構(WHO) 自宅での時間を 大切にしたい お金のことが心配 痛みを楽にしたい QOLの向上 生活・生命の質を高めること 誰に何を相談したら よいのか分からない 夜はゆっくり 眠りたい 緩和ケアのあり方 <いままでの考え方> がん病変の治療 診断時 痛みの治療 と緩和ケア 死亡 <これからの考え方> がん病変の治療 痛みの治療と緩和ケア 診断時 遺族 へのケア 死亡 世界保健機構(WHO)2007 看取るケア 前向きに生きる手助けを行うケア 痛みのコントロールと同時に,痛み以外の 諸症状のコントロール・心理面のケアを行う。 緩和ケアは宗教をおしつけられる? そんなことはありません。 緩和ケアでは、患者さん本人を 徹底して尊重するというのが基本 姿勢です。宗教的基盤の有無に かかわらず、個人の信仰は尊重 されます。 がんの治療と苦痛の緩和 苦痛が強くなっている際、その苦痛を取り 除くことが優先である。苦痛が緩和されて から、がんの治療の可能性を考えること が大切であり、がんの治療によって体力 が衰えたり、体調が悪くなっているのであ れば、治療をいったん停止する選択肢も ある。緩和ケアで苦痛を取り除くだけでも 病気と向き合うことができる。 全人的苦痛とは・・・ がん患者の苦痛には身体的なものだけで はなく、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリ チュアルペインといったさまざまな苦痛があ ります。身体的苦痛にのみ焦点を合わせる のではなく、「疾患をもち苦悩を抱えた人間」 としてtotalに捉えた患者さんの苦痛のことを 全人的苦痛といいます。 <身体的苦痛> 痛み 他の身体症状 日常生活動作の支障 <社会的苦痛> 仕事上の問題 経済上の問題 家庭内の問題 人間関係 遺産相続 全人的苦痛 (total pain) <精神的苦痛> 不安 いらだち 孤独感 おそれ うつ状態 怒り <霊的苦痛> 人生の意味への問い 罪の意識 死の恐怖 神の存在への追求 患者は全人的に苦悩しつつある人間として存在し ており、総合的な全人的アプローチが要求される。 認定看護師とは 看護ケアの広がりと質の向上を図るために、 日本看護協会が定めた特定の看護分野に おける熟練した看護技術と知識のある看護 師をいう。 緩和ケア認定看護師に期待される能力 患者の全人的な理解 苦痛の軽減 喪失と悲嘆のプロセスの理解 患者と家族のQOLの考慮 適切な倫理的判断 チームメンバーへの指導・相談 施設内・地域におけるチーム医療の効果的促進 がん性疼痛の特徴 1)痛みの程度は疾患によって異なるが、診断当初 から3割、進行がんにおいては6~7割、終末期 においては8割近くに何らかの痛みがある。その うち痛みの原因ががん自体であるのは7割前後 である。 2)痛みを訴えるがん患者のうち20%の患者の痛み は1ヵ所で、80%の患者では痛みは2ヵ所かそれ 以上。そのうち30%の患者では痛みは4ヵ所また はそれ以上である。 痛いと伝えてもわかって もらえない・・・ 痛みは本人にしかわからず主観的なもの。 機械や検査では測定不可能。 <解決策> 主観的な痛みを、より客観的に表現することで他 者にも理解しやすくなる。 痛みの場所、性質(重たい、鈍い、ズキズキ、刺す ような、ビリビリ、しめつけられるなど)、強さ(数値 での表現もひとつの手段)、痛みを悪化させる要 因について整理し伝えてみる。 患者さん自身の痛みの訴えが、痛 みコントロールを良好にするうえで 何より重要。 痛みは我慢せず、積極的に 表現するようにしましょう。 痛みの種類と特徴 分類 侵害受容性疼痛 体性痛 内臓痛 障害部位 皮膚,骨,筋肉, 内臓,消化管 胸・腹膜 痛みを起こ 機械的刺激 臓器被膜の す刺激 伸展,管腔の (切る,刺す) 拡張・牽引 特徴 持続性の鈍痛 漠然とした鈍 場所が明らか 痛,腹部正中 体動時増強あり 関連痛あり 神経障害性 疼痛 神経,脊髄 通常痛みを起 こさない刺激 (触るなど) 痺れを伴う痛 み,電撃痛 知覚・運動障 害あり 疼痛の種類による薬剤の選択 体性痛 内臓痛 通常の鎮痛薬 NSAIDsが有効 (非ステロイド性抗炎症薬) 通常の鎮痛薬 オピオイドが有効 神経障害性疼痛 オピオイドの増量 鎮痛補助薬の併用 (例:抗うつ薬、抗痙攣薬、抗不整脈薬、NMDA 受容体拮抗薬、コルチコステロイド) NSAIDs 非ステロイド性消炎鎮痛薬 役割:①骨転移巣で腫瘍細胞が産生するプロ スタグランジンE2を抑え、プロスタグラ ンジンの発痛増強を抑制する。 ②肉腫やリンパ腫脹による筋や筋肉の機械 的圧迫、がん性リンパ管炎による皮下組織 の機械的進展、胸腔内・腹腔内の急速なが ん細胞の増殖に伴う胸膜・腹膜の機械的進 展などにも効果あり。 代表的なNSAIDs(1) ハイペンR・・・1日2回の投与。 消炎・鎮痛・解熱作用 のバランスがよい。 モービックR・・・1日1回の投与。 消炎・鎮痛・解熱作用 が強力。 ロキソニンR・・・1日3回投与が 必要。血中濃度の立 ち上がりが速やかで 座薬なみに速い。 代表的なNSAIDs(2) ボルタレンR・・・カプセルや錠剤、 座薬あり。座薬の効 果は強力(史上最 強と呼べるNSAIDs) ナイキサンR・・・1日2回の投与。 NSAIDsの中では比 較的副作用は少ない。 腫瘍熱に有効。 ロピオンR・・・NSAIDsのうち唯一の 注射剤。 オピオイドとは? よく聞くことがある『モルヒネ』がそのひとつ。 脳や脊髄に存在するオピオイド受容体に 作用して、痛みの伝達を遮断する。 *国内のがんの痛みをとる際に使われている 医療用麻薬はおもに、モルヒネ・フェンタニル オキシコドンの3種類。(コデインなどもあり) *モルヒネはアヘンからつくられ、除痛の目的で 医療に取り入れられた最初のオピオイド。 オピオイドに対する誤解 ①麻薬中毒になる。廃人になる。 痛みがある人が使用する場合は、体内で 分泌する物質の働きによって、中毒・廃人 にはならない。 ②寿命が短くなる。最後の手段。 痛み止めとして麻薬を使用する目的は、 病気と向かい合うための土俵を整えること であり、適正使用によって寿命が縮まるこ とはない。 「医療用麻薬は命を短くすることなく、 死の間際だけに使われる痛み止め でもない。鎮痛に使われる限り依存 が生じることもない。これまでの誤解 を取り去る必要がある。」 日本の主要医療施設の麻酔専門医でつくる「JPAP」より オピオイドの副作用 便秘や吐き気など様々な症状がありますが、出現 の時期と対応策を知っていれば、ほぼ克服できます。 症状 便秘 悪心・嘔吐 眠気 口渇感 発汗 排尿障害 錯乱・幻覚 呼吸抑制 出現頻度 ほぼ100% 18~66% 22~31% 約50% 約30% 1~3% 1~3% まれ 出現時期 耐性発現目安 全時期 なし 1~2週間 開始・増量期 3~5日 開始・増量期 - 不明 - 不明 - 不明 開始・増量期 不明 過量投与時 なし 分類 オプソR(液) MSコンチンR(錠) カディアンR(CP) アンペックR(坐剤) モルヒネ製剤 デュロテップR(貼付剤) フェンタニル製剤 オキシコンチンR(錠) オキシコドン製剤 硫酸モルヒネ徐放錠(MSコンチンR ) ①1日2回の投与で鎮痛効果 を維持できる。 ②錠剤を粉砕すると徐放構造 が失われ、短時間に吸収さ れ、血中濃度が急上昇し、 危険である。 塩酸モルヒネ坐剤 R (アンペック ) ①速効性のモルヒネ坐剤である と同時に8時間毎の定期投与 で鎮痛効果の維持が可能な 製剤である。 ②人工肛門の患者において経 口投与が困難で坐剤を使用する か迷った時は、人工肛門がデリ ケートであることや排泄のコント ロールが難しいことから定期投 与は適切ではない。 フェンタニルパッチ (デュロテップR ) ①初回貼付時にフェンタニルが 血中に出現するまでに2時間以 上が必要で4~8時間後から血 中濃度の上昇が始まる。 ②パッチ開始後の痛みには、速 効性のモルヒネ製剤のレス キューを使用する。注射剤では フェンタニル注が第一選択。 オキシコドン徐放錠 (オキシコンチンR ) ①オキシコンチンは1日2回の 投与で鎮痛効果を維持できる。 ②腎機能障害や腎不全患者に 対しても投与可能である。 ③経口投与後2~3時間で最高 血中濃度に到達する。 なぜ数種類のオピオイドがあるのか 痛みを効果的に取り除くための オピオイドローテーションが行える オピオイドローテーションとは 長く同じ薬を投与していると、効果反応が鈍くなること がある。新たなオピオイドに交換すると、痛みによく 効くようになることがある。 また、交換することで副作用が軽くなったり、気になら ない程度まで改善されることがある。このように、オピ オイドの種類を交換することをいう。 オピオイドローテーションの例 モルヒネ製剤のMSコンチンを開始後、下剤を コントロールするが、副作用のひとつである 『便秘』がなかなか改善されない。 ↓ フェンタニル製剤のデュロテップパッチに変更 することで、症状が改善される。 痛み治療の目標 第1目標 睡眠の確保 -痛みが睡眠を妨げない- 第2目標 安静時の鎮痛 -安静にしていれば痛みを感じないー 第3目標 体動時の鎮痛 -歩いたり、体を動かしても痛くないー 痛み以外の苦痛症状 倦怠感 呼吸困難感 便秘・下痢 食欲不振 吐き気 消化管閉塞 ホスピスに入院すると医療費は? 各種健康保険が適用されますので ホスピスだからといって高額の医療 費がかかる心配はありません。自己 負担額は一般病院に入院したときと 同じで、高額医療還付の対象にもな ります。 家で過ごす時間を大切にしたい 訪問診療・訪問看護・介護援助を活用できます ☆訪問看護で行えること☆ ・容態観察 ・清潔援助 ・浣腸、摘便などの排便処置 ・褥創、ストーマなどの処置 ・留置カテーテルの管理 ・経管栄養の管理、指導 ・点滴、注射などの実施、管理、指導 ・人工呼吸器、在宅酸素などの管理、指導 療養の場の選択 ・生活の最優先 ・症状コントロール ・往診医 ・訪問看護 ・訪問介護 自宅 ・福祉サービス 病院 ・症状コントロール ・入院、在宅支援 ホスピス ・症状コントロール ・放射線治療 ・抗がん剤治療 ・神経ブロック ・転院、在宅支援 構成 ・当院緩和ケアチームの活動 ・症例紹介 ・家族ケア ・がん患者の心の移り変わり ・せん妄とは ・予期悲嘆とは ・患者の希望を保つための関わり方 当院緩和ケアチームの活動 ・緩和ケア認定看護師による回診(毎日) ・ICの同席 ・在宅・転院支援 ・緩和ケアチームカンファレンス・回診(週1回) ・緩和ケア会議(月1回)、症例検討(月1回) ・病棟へのコンサルテーション活動 ・勉強会の開催 ・医療相談、外来化学療法室との関わり ・緩和マッサージ ・がん相談支援センターでの活動 すべての職種が兼務 継続的に患者様と御家族 に関わることを目的として 2名の緩和ケア認定看護師が専従となる (平成19年9月より) 毎日の回診が可能 必要時には医師も連日回診している 依頼内容 60件 13件 10件 2件 精神面 身体面 緩和マッサージ 在宅支援 転院支援 その他 38件 40件 2006年~2007年 チームへの依頼症例数の変化 (人) 80 70 60 50 40 依頼症例数 30 20 10 0 2006年 2007年 緩和マッサージ 緩和マッサージの評判 痛みが和らいだ 良く眠れるようになった マッサージ技師の人柄に癒される 気持ちが良い 医療相談との連携 情報交換 緩和ケア認定看護師 MSW 情報提供 情報提供 患者様・御家族 在宅支援 病棟 転院支援 訪問看護ステーション 転院先 カンファレンス風景 医師 看護師 消化器科 呼吸器科 理学療法士 精神科 外科 麻酔科 救命科 臨床心理士 ソーシャルワーカー 薬剤師 外来化学療法室との連携 緩和ケア認定看護師 (事前に受診日の確認) 回診 外来通院患者様 御家族 情報交換 外来化学療法室スタッフ 主治医との情報交換 早い段階からの関わり 入院時・再入院時のスムーズな関わり ベッド上やここで治療を 受けられている患者様 には、緩和ケア認定看 護師が傍でお話を伺い ます。 体調が優れない時や お話したくない時には 遠慮なくお伝え下さい。 ガン相談支援センター 正面玄関から入り、すぐを 左に曲がったところに位置 しています。 医事課の手前にあります。 仮想症例 A氏 ・病名 ・病歴 ・家族構成 ・予後 60歳代男性 大腸癌術後、多発肺転移、脳転移 X年発症で5年が経過している。 妻と2人暮らし 家族には予後は1~2ヶ月であり、急変も あり得ると伝えている。 ・告知の程度 上記と同じ病名を告知しているが予後に ついては本人へ伝えていない。 A氏が治療に対してどう思っているのか? 医師 ギアチェンジのタイミングは・・・ A氏の思い もう治療はしたくない 緩和ケアチーム 橋渡しの役割 チームが一丸となり患者の意思を尊重した ケアの提供が可能となった Best Supportive Care WHOの提唱 緩和ケアの対象は患者ひとりではなく家族も含まれる。 医療側は家族が質問するように促し、患者のケアに積 極的な役割を果たすよう期待する。 家族についてアセスメントし、介入の焦点を 明確にした上でサポートすることが大切。 家族ケア ・家族とは ・家族ケアにおける時代背景 ・緩和ケアの定義 ・終末期患者の家族のニーズ 家族とは 個人と社会との間にあって、内部では家族成員の発 達と生活を互いに支え合い、外部からはその時代に 特有な文化的背景を反映する集団生活の影響を受け ているという、人間社会の凝縮された集団である。す なわち、家族は個人にとっても社会にとっても、つまり その時代に応じた特有な体内的、対外的機能を果た してきた社会にとって欠くことのできない存在。 家族ケアにおける時代背景 高度医療の発達により、重症疾患に直面した家族危 機に対しての援助が必要となってきた。また、同時に 慢性疾患の中でも特にがんや難病の患者などターミ ナル(終末期)患者を持つ家族の援助が重要な課題と なってきている。そのような中、人口の高齢化とともに 在宅ケアと家族による介護問題がクローズアップされ それに対する家族への看護が最大の課題である。 緩和ケアの定義 緩和ケアとは、目指した治療が有効でなくなった 患者に対する積極的な全人的ケアである。痛みや その他の症状コントロール、精神的、社会的、霊的 問題の解決が最も重要な課題となる。緩和ケアの 問題の解決が最も重要な課題となる。 目標は患者とその家族にとってできる限り可能な 最高のQOLを実現することである。このような目標 をもつので、緩和ケアは末期だけではなく、もっと 早い時期の患者に対しても治療と同時に適応すべ き点がある。 終末期患者の家族のニーズ 1)患者の状態を知りたい 2)患者のそばにいたい 3)患者の役に立ちたい 4)感情を表出したい 5)医療者から需要と支持と慰めを得たい 6)患者の安楽を保証してほしい 7)家族メンバーより慰めと支持を得たい 8)死期が近づいたことを知りたい 9)夫婦間で対話の時間をもちたい 10)自分自身を保ちたい 家族の疲労 患者の苦痛は家族の苦痛でもある 患者は家族に迷惑をかけているという感情を 抱き、家族は何もしてあげられないという無念 さを抱くことが多い。 よって、家族が身体・精神面において疲労してしまい 患者さんの傍に寄り添うことが辛くなる場合がある。 がん患者の心の移り変わり キューブラー・ロス「死の受容プロセス」 ①否認:自分が死ぬということは嘘ではないか と疑う。 ②怒り:なぜ自分が死ななければならないのか という怒りを周囲に向ける。 ③取引:何とか死なずに済むように取引しようと 試みる。何かにすがろうという心理状態。 がん患者の心の移り変わり ④抑うつ:何もできなくなる状態。 ⑤受容:最終的に自分が死に行くことを受け入 れる状態。 すべての患者さんの心理が①~⑤の順序をたどるわけ ではない。 大切なのは、人間一人ひとりにそれぞれの意味づけや 選択があるためその人らしさを尊重することである。 つじつまの合わない行動 せん妄・・一時的な意識の障害 せん妄の原因 =直接原因= ①中枢神経系の疾患(脳血管障害、脳腫瘍、脳炎など) ②その他の疲労消耗性疾患(感染症、がん、代謝内分 泌疾患など) ③薬物(抗パーキンソン薬、抗うつ薬などの向精神薬、 モルヒネなどの鎮痛製薬剤、消化性潰瘍、循環器 疾患、呼吸疾患への薬剤、ステロイド剤) つじつまの合わない行動 =誘発因子= ①不眠 ②感覚遮断 ③急激な環境の変化 ④心理的負担 =準備因子= 高齢化など脳の慢性的な脆弱化 御家族に注意していただきたいこと せん妄状態にある患者様 無理な説得 叱責 言動は否定しない 受容的な態度 適切な薬を使用 予期悲嘆とは 患者の死を予期して実際に死が訪れる前に死別したとき のことを想定して嘆き悲しむことをいう。あらかじめ悲嘆や 苦悩することによって、現実の死別に対する心の準備が行 われる。一般的に予期悲嘆を行うことによって死別の衝撃 に耐える力が強められ、それを少しでもうまく処理できるよ うに心の準備が行われるため、実際に死別に遭遇しても、 その衝撃や悲嘆は死別が突然または偶発的に起こった場 合よりも軽く済み、回復も早いと言われている。 予期悲嘆 この時期に悲しいと感じるのは当然である この反応は必要な過程である 気持ちが沈んでいるように見えるとき の対処方法は? 気持ちが沈んでいるときに励ますと、ますます落ち込んで しまうことがある。 十分頑張っているのに、成果が見られていないときの励 ましは、患者さんが自分自身をせめてしまうことがある。 まずは患者さんの気持ちを十分に聴いてください。 患者さんの話を否定せずに、思いを尊重し、支持する 姿勢をとってください。 涙を抑えきれない場合にはどうしたら いいの? 無理に涙を抑える必要はないが、患者さんの状態 によっては悲しみを素直に表現できる場所や時間 を確保することが大切である。 患者の希望を保つための関わり方 患者や家族の苦悩に寄り添う 患者 関係の確立 家族 病気の意味を知る 価値観を捉える 価値観を捉える 患者の希望を知る 家族の希望を確認する 医療者 患者の希望を保つための関わり方 患者の希望を支える 希望を保つことをサポートする。 達成可能な目標の設定・実現のサポートをする。 相談して下さい!! 家族間で解決できない問題も多く存在します 身近にいる医療者に声をかけて下さい 協力して解決方法を見つけていきましょう 御清聴ありがとうございました