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Page 1 Page 2 自 )欠 第ー章 序論
修士論文 多翼ファンの性能改善に関する研究 教科領域教育専攻 生活・健康系コース M91855F 黒田泰弘 目 次 第1章 序論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 1 第2章 改善事項と改善の方策に関する検討 ・・・・・・・… 8 2.1 比速度による検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 8 2.2 運動量理論による検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 13 2。3 検討のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 16 第3章 実験装置および実験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・… 17 3.1 実験装置 ・・・・・・・・・・… 。・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 17 3.2 測定装置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 19 3.3 実験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 20 3.4 羽根車の諸元・形状および 羽根の形状を決定する諸要素 ・・…・・・・・… 22 3.4.1 羽根車の諸元・形状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 22 3.4.2 羽根の形状を決定する諸要素 ・・・・・・・・・・… 26 3.5 実験結果の整理方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 29 3.5.1 計算方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 29 3.5.2 無次元表示 ・・・・・・・・・… ’●●’・’●●’’”●’’” 30 3.5.3 性能の比較方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 31 第4章 実験結果および考察 4.1.2考察 33 e一一一e一一一t一一“t一一e一一一一e一一一一一ee一 33 一一一e−e一一一一一一一一一一一一eeee−ee一{e−e一 33 4.1 羽根車幅の影響 4.1. 1 実験結果 e一一一一ee一一一 ,一 t一一一一一一一一一“e“ 一一一一一一t一 一一一一“一一ee 一・一一一et−ee−ee一一一一e一 35 4.2 中間翼の影響 一一一e−e−ee一一一一一一ee一一一一一一一一一“e一一一 39 4.2.1 実験結果 一一ee一一一一一一一e−e一一一・一e−ee−ee一一一一e− 39 4..2.2 考察 ete一一ee−e一一ee一一e一一e一一一e一一e一一一一一一一一一 4.3 出口角の(β2)影響一一一一eee−et−e一一一一一一ee−ee一一e 4.3.1 実験結果 4.3,2考察 −e−ee一一一tee一一一一一一e{一ee一一一一一一e“一 一一一e−eeee一一一一一一一e一一一tee一一一一e一一ete一一 4.4.2考察 第5章 結論 43 43 45 ee一一一一一一e一一e一一一一一eeeee一一e一一ee 47 e一,ee一一e一一一一一ee−e一一ee−ee−e一一e一一一 47 一e一一一一eee一一一e−e一一一eee一一一一一e一一eeee一一 49 4.4 羽根長さの影響 4.4. 1 実験結果 41 一e一一一一e−e−e一一一一一一一一eee一一e− 狽???鼈黷?│te一一 謝辞 一eeeee一一ee−ee一一一t一一一e一一ee−ee−ee−e一一一eee一一eeee一 文献 一ee“ee一一一一一一e−e−t−e−ee一一一一一一・ 鼈鼈鼈鼈黷?煤│ee一一一e−ee一 51 56 57 第璋序論 「一室一換気」という認識の広まりとともに,換気・送風機器は 住宅だけでなく,オフィスビルや商業ビル,ショッピングセンター 等のあらゆる所に設置されている。ピルや住宅の高気密化・高断熱 化を目指す現在の住宅工法は同時に自然換気の不足による結露やダ ニ・カビの発生という弊害をもたらし,強制換気の重要性は産業界 から一般家庭に至るまで多方面で認められるようになった。 住宅建築業団体協議会は,建設予定者が住宅の基本性能(安全性, 居住性,耐久性)の中でどのような項目を重視するのかについて調査 している。この調査は住宅宅地審議会が平成2年6月「新たな住生 活の目標」を建設大臣に答申する際の資料になったものである。調 査結果によれば,最も回答が多かったのは居住性について,特に, 換気や気密・断熱性についてであった。すなわち,快適な居住空間 を創造するためには,換気に優れていることが重要な要素のひとつ であることが再確認されたD。 換気・送風機器は新鮮な空気を供給し汚れた空気を排出する換気 機能のほか,脱臭,除塵,除湿,室温調節等の機能を持ち,従来は‘ 壁面等に簡単に取り付けることのできるプロペラ型換気扇が主流で 一1一 あった。ところが,エアコンなどの熱交換気ユニットが普及し,空 調のある快適な暮らしが標準になりつつある今日,人々は室内の暖 かさや涼しさを損ねたり,騒音問題が生じるような換気では満足せ ず,人や建物にやさしい高品質な換気を求めるようになった。換気 に対する新たな要求に応えるため,マンションなどの集合住宅やビ ル,店舗,公共施設等においてはプロペラ型換気扇に変わりダクト を介して換気をおこなうダクト用送風機の需要が拡大しつつある2)。 ダクト用送風機は一般に気密性の高い空間に利用される場合が多 く,送風機本体を天井内に設置し,排気ダクトは天井空間を利用し て配管するために,取り付け工事にはかなりの経費と労力を要する。 特に,社会のアメニティ志向の高まりや住宅水準の向上にともない, 居住空間を可能な限り広くとる傾向が進み天井裏の空間が狭くなっ ていることから,ダクトの配管工事,なかでもはりの貫通工事が以 前に比べて困難になってきている。 通常は住宅やビルのはりには建築時にφ0.1mとφ0.15mの貫通口が 設けられている。しかし,φ0.15mの穴にはφ0.1m以下のダクト,φ 0.1mの穴にはφ0.75m以下のダクトしか配管できず,現在は使用可能 なファンに制限がある。はりの設計が建築物の構造上ならびに強度 上極めて重要なポイントになるため,φ0.15m以上の貫通口を設置す る場合には,はり貫通に関する法的規制に基づく補強が必要になる3)。 一2一 また,断面積が100c㎡以上のダクトを取り付ける際には建築基準法に 基づく防火ダンパーの設置が義務づけられる4)。したがって,貫通 口を今以上に大きくすることには様々な法的規則や建築業者の自主 規則による制約のため限界がある。 このような状況のなかで,ダクト用送風機に接続されるダクトを 小径化する研究活動が企業等で活発化してきた。ダクトの小径化に より,ビルや住宅に設置されている貫通口も小さくできるため,は り貫通の設計および施工が極めて容易になり,ダクト用送風機の取 り付け工事の省力化および工事コストの低減も可能となる。反面, ダクトを小径にすれば同一流量における圧力損失はダクト径の5乗 に反比例して増大するため,抵抗に打ち勝つための高い静圧が必要 になる。したがって,高静圧を取り出すことのできる送風機の開発 が急務になってきた。 換気・送風機器に用いられる羽根車の形式は図1.1に示すように分 類される5)。まず,羽根車を回転させることにより圧力を高めるタ ーボ型と容積変化により圧力を高める容積型に分けられ,ターボ型 は圧力比または圧力によりファンとプロワに分類される。さらに, 羽根車内の流れの方向により遠心ファン,斜流ファン,軸流ファン, 横流ファンに分けられ,遠心式は羽根出口角,羽根枚数,および羽 根形状に応じて多翼ファン,ラジアルファン,後向きファン,翼型 一3一 ファンに分類される。 翻;総髪ン [ 容積型 プロア タ… フ・ン 図1,1 軸流ファン 横流ファン 羽根車の分類 一般に,ダクト用送風機の羽根車としては高静圧が確保できる多 翼ファンが多用されている。多翼ファンは通称シロッコファンと呼 ばれ,小形・安価であることから建築物や船舶の空調や換気等に広 く用いられ,その需要は年々高まっている。羽根車は半径方向に短 く軸方向に長い多数の羽根(通常36∼64枚)を有しており,羽根は断 面形状が円弧状で,図1.2に示すように回転方向に対して前向きに取 り付けられている。羽根の形状が前向き羽根であるために,外径と 回転数ならびに流量が同じ遠心式羽根車においては最も高い圧力が 得られ,同一流量,同一圧力の遠心ファンの中では最も小形になる。 しかし,羽根の構造上高速回転には適さないので,ファンの静圧は 1OOmmAq程度が限界であり,また,ケーシングおよび吐出口での損失 が大きく効率は45∼65%と低くなる6)。 一一 @4一 .....一d一一・一一b一.,〉, 回転:方向ノー一「》 回転方向 i , 一1一一 ラジアルファン 多翼プアン 回転方向( T 回転方向〆一一》 t 後向きファン 翼型ファン 図L2 遠心ファンの羽根車形状 さて,最近の換気・送風機器の技術動向は,21世紀に向けての展 望として『省エネルギー化』とr公害防止』を主な開発テーマにと りあげており,ファンの高静圧化,小型化,低コスト化,省力化お よび小流量域での効率向上に関する研究開発が進められている7)。 しかしながら,多翼ファンについては羽根車内の流体の流れが複雑 で,剥離,摩擦,衝突等の現象がともなうため,その理論的な解明 が困難であり,実験的に種々の要素の影響を調査するという方法に 一5一 頼らざるを得ないのが現状である。 本研究では住宅用レンジフード等の設計点である小流量域での高 静圧化を目的とした多翼ファンの性能改善を行った。前述のように, 住宅用レンジフード等に接続されるダクトを現行のφ0.15mからφ 0.1皿に小径化するニーズが強まっている。換気・送風機器の設計流 量を現行の420m3/hに保ち,ダクトを小径にすれば抵抗に打ち勝つた めの高い静圧が必要になる。羽根車の回転数を増し,ファンの周速 度を増大させれば高静圧が得られるが,それにともない騒音も高く なるため安易に回転数を上げることにより高静圧を達成することは 理想的でない。したがって,本研究では羽根車の外径,回転数,羽 根枚数等を同一にし,全圧に及ぼす羽根車幅,中間翼の有無,羽根 出口角および羽根長さの影響について調査し,その結果を基に低騒 音で高静圧を取り出すことのできる多翼ファンの開発を行った。 なお,本論文は以下に示す5つの章により構成される。 第1章では本研究の背景,研究テーマの設定理由,目的,意義, および内容の概要について述べた。 第2章では設定した目標を達成するために, 「比速度」および 「羽根車の運動量理論」を基に,現行の住宅用レンジフード等の羽 根車に用いられている多翼ファンの改善事項とその方策について述 べた。 一6一 第3章では実験装置および実験方法について述べた。 なお,本実験では現在市販されている住宅用レンジフードの羽根車 の形状を基に,羽根車幅,羽根車内径,羽根入口角,羽根出口角お よび中間翼内径を変えた11種類の羽根車を用いた。 第4章では本実験により得られた結果を基に,全圧に及ぼす羽根 車幅,中間翼内径,羽根出口角,および羽根長さの影響についての 考察を行った。 第5章では本研究で明らかになった結果をまとめ,多翼ファンの 小流量域における高静圧化への最適パラメータの設定の提案を行っ た。 一7一 第2章 改善事項と改善の方策に関する検討 2. 1 比速度による検討 新しい送風装置を設計するには,その仕様に最も適した羽根車を 選択することが重要である。一般に送風機の羽根車の形状を決定す る尺度として比速度(n,)を用いる。比速度は(2.1)式で与えられ, 幾何学的に相似な形状の羽根車に対して同じ値を示す8)。 Q1/2 H3/4 n.==n ・・ ・・ ・・ ・・ (2. 1) ただし,n。は比速度(m3/min, m, rpm), nは回転数rpm,Qは流量 m3/min,およびHはヘッドmである。 現在,住宅用レンジフードに使用されている多翼ファンの仕様は 設計流量(Q)=420m3/h=・7.00 m3/min=0.117 m3/s,ダクト径 (D)=0.15m,ファン静圧(P。)=13.2mmAq,回転数(n)=1000 rpmである。 ダクト内流速は, Q V=IE;itii’l174’2 4 =6・62 m/s ・・・・・…(2.2) となり,全圧(P,)mmAqおよびヘッド(H)mは動圧を(Pd)mmAq, 重力の加速度を9=9.8m/s2,1atm−20℃における水の密度9)をρ。. 一8一 =101.79kgf・s2/M4,latm−20℃における空気密度10)をρAiR=0.123 kgf・s2/m4とすると, V2 PAir ・ 1000) ==(一’ 15. 9 mmAq Pt=:Ps十Pd=Ps十 2g pAq ・・ ・・ (2. 3) PAq 1 H == PtAir= Pt× x一=13。2m ・・ pAi. ” 1000 @・・ ・・ ・・ (2. 4) となり,(2.1)式より比速度は n.=382.4 (m3/min, m, rpm) ・・・・・… となる。 161.6 382,4 80 70 驚60 1 ::;;iiiii::ii ::二;ii三iiiiiii iiiiii叢;.ii’層L挫・… =F1;;i≡iiiiiii.,,」,.,... 50 40 30 0 100 200 300 400 500 600 700 800 比速度n、(m3/min,m, rpm) 図2.1比速度と効率の関係 一9一 @ (2.5) 従来は図2.1の比速度と効率の関係から11),仕様に適するファン として,他の遠心ファンと比べて効率面での問題はあるものの,小 形で所要スペースが少なく,生産コストの低い一翼ファンを選択し ていた。 しかし,前述のように近年の住宅事情により天井裏の空間が狭く なったこと,また,配管を小径にすることにより開孔部の補強の必 要がなくなること等から,多翼ファンに接続されている配管をより 小径なものを用いる傾向が高まった。配管においては(2.6)式に示す 圧力損失12)が生じる。この圧力損失はダクト径の5乗に反比例する ため,損失はダクトの小径化にともない急激に増大する。 a v2 .P==A ・ 6m ’VP 号(拳)1ρ ....(2.の ただし,∠Pは圧力損失,λは管摩擦抵抗係数,2は直管部長さであ る。 例えば,財団法人・ベターリビングのBL規格に基づく一般的な 配管(図2.2)を例にとると,ダクトをφ0.1mにすれば圧力損失は排気 系において30.6mmAq,給気系(室内外圧差)において5.OmmAq,外風 圧(風速5m/s)において1,1mmAqとなり,36.7mmAqのファン静圧が必 一10一 要になる。 エルボ t × パイプフード 直管部7.5m レンジフード 図2.2 レンジフード配管条件 多翼ファンの仕様を 設計流量(Q)=420m3/hニ7.00 m3/min=0.117 m3/s,ダクト径 (D)ニ0.lm,ファン静圧(P。)=36.7mmAq,回転数(n)=1000rpm とすれば,ダクト内流速は(2.2)式より v=14.9 m/s となり,全圧は(2.3)式より P t= 50. 3 mrnAq となり,ヘッドは(2.4)式より 一11一 H=41.7 m となる。その時の比速度は(2.1)式より n .= 161. 6 (m3/min, m, rpm) となり,図2.1より明らかなように,多翼ファンの用途の範囲をはず れラジアルファンの値となる。したがって,ファンに接続される配 管を現行のφ0.15mからφ0.lmに小径化するためには,回転数を上げ るとともに,多翼ファンの羽根車の形状をラジアルファンに近づけ ること,すなわち,羽根車幅を小さくして羽根を長くすることが必 要になる。ところが,羽根枚数を変えずに羽根の長さのみを大きく すると羽根車内径は小さくなり,羽根入口での流路が狭くなること からチョークの生じる恐れがある。この問題を解消する方法のひと つに中間翼を採用することが考えられる。中間翼とは羽根入口付近 での流体の流れをよくするために主翼を短くした羽根のことである。 一12一 2.2 運動量理論による検討 図2.3に示すように羽根車入口部に添字1,出口部に添字2を付す。 β2脇 シ…1…≡1・輩 回転方向 j L;;;;一’ a2U2 v2cos a2 r2 jaltV. 1 Wlv” 一.一 β2=出ロ角 u1=入ロ周速度 3・U, x β1=入目角 1 u21出口周速度 V1:入ロ絶対速度 V2:出口絶対速度 W1=入口相対速度 W2:出口相対速度 r1:入口半径 r2:出ロ半径 α1:V1とUlのなす角 α2=V2とU2のなす角 / 1 v2.:子午線方向速度成分 図2.3 記号の説明 絶対速度をそれぞれVI,V2とすれば円周方向の速度成分は vlcosα!, v2cosα2となる。したがって,流量Qの空気が羽根車 内を流れるとき,羽根の入口および出口における回転方向の運動量 は ρQv!cosα1,ρQv2cosα2 となる。ゆえに,運動量のモ ーメントM1およびM2はそれぞれ Mi=pQriv icosai ・・ ・・ ・・ ・・ (2. 7) M2= pQr2v 2cosa2 ・・ ・・ ・・ ・・ (2. 8) 一13一 となる。 ここで,羽根車を回転させるのに必要なモーメントMは これらの2つのモーメント差であるから M=M2−Mi= pQ (r2v 2cosa2一 rivicosa i) ・・ ・・ ’・ (2. 9) となる。 いま,流体を非粘性流体と仮定し,羽根車の理論ヘッドをH,hと すれば流体の得たエネルギーはρgQH ,,であり,また,羽根車の 周速度をそれぞれU1, U2,羽根車の角速度をωとすれば, p gQHth=M to =p Q ( r 2v 2cosa 2一 r iv icosa i) tu (2. 10) となり, 回転周速度=半径×角速度 ・・・・・… (2.11) の関係から p gQHth == M tu :p Q (u 2v 2cosa 2一 u iv icosa i) ・・ (2. 12) となる。(2.12)式より理論ヘッドは, Hth = (u 2v 2cosa2−uiv icosa i) /g ・・ ・・ ・・ ・・ (2. 13) となる。 一般には予旋転がないので,α1=90。となり(2。13)式は Hth= u2v 2cosa 2/ g= u2 (u ?+ v 2.cotB 2) /g ・・ ・・ (2. 14) となる。 ここで,羽根車外径をD2,羽根車幅をb2とすれば, V2rn=Q/zD,b, ・・ ・・ ・・ ・・ (2. 15) 一14一 となり(2.14)式は Hth :u2 (u2+QcotB2/zD2b 2) /g ・・ ・・ ・・ ・・ (2. 16) となる。 羽根車の形状,回転数が一定とすれば,u2, D2, b2は一定とな り,β2<90。においてH,h−Q曲線は右上がりの直線になる。した がって,β2を小さくすれば同一流量において大きな理論ヘッド (H,h)が得られることになる。 一15一 2.3 検討のまとめ 「比速度による検討」および「運動量理論による検討」をまとめ ると以下のようになる。 ◎羽根車の回転数を上げるとともに形状をラジアルファンに近づけ ること,すなわち,羽根車幅を小さくして羽根を長くすること。 ただし,羽根枚数を変えずに羽根を長くすれば羽根入口付近で流 路が狭くなりチョークの生じる恐れがあるので中間翼の取り付けを 考える。 ◎出口角(β2)を小さくすること。 本研究では次に示す4項目について調査することとした。 実 験 項 目 ①羽根車幅(b2)の影響。 ②中間翼の影響。 ③出口角(β2)の影響。 ④羽根長さの影響。 一16一 第3章 実験装置および実験方法 3.1 実験装置 実験装置全体の写真を図3.1に全体図を図3.2に示す。 実験装置はJISB8330「送風機の試験及び検査方法」の規格に基づ いて製作した13)。この規格は圧力下身1.1未満の送風機を常温・常 圧の空気を用いて行うときの規格である◎ なお,実験装置に使用した電動機は200W−4Pの3相誘導電動機であ る。 図3.1 実験装置(写真) 一17一 2000 100 330 570 ピト一管測定(静圧測定位置) : り 雫 部 測定管蕗 一 []}一 ○ 流格子 ’静圧測定位置 88 モ_夕_ 多翼ファン 図3.2 実験装置の全体図 ダン ンパ 3,2 測定装置 本実験で用いた測定装置を表3.1,図3.3に示す。 表3.1 測定装置 機 器 名 製造会社名 光電式回転計 横河電機 電 圧 計 横河電機 圧 力 計 理化精機工業 製品名・型番等 タ コ メ ータ @3632 交流電圧計 @2013 ベッツ型マノメータ @200mmAq F−213 図3.3 全品および静圧測定装置(写真) 一19一 3.3 実験方法 片吸い込み型の多翼ファンにより吸い込まれた空気は,静圧測定 位置,整流格子およびピトー管による全圧測定部を通り,ダンパよ り排出される(図3.2)。静圧測定位置では各壁面に直径1mmの静圧孔 を開け,黒バル管によりベッツ型マノメータ(図3.3)に導き送風機の 静圧を測定した。ピトー一’asBによる二三測定部では直径6m皿の黄銅製の ピトー管(ピトー管修正係数=1.045)2本を用い,黒バル管によりベ ッツ型マノメータに導き全圧を測定した。全圧は図3.4に示すように 同一測定断面内で10カ所測定しその平均値を求めた。また,測定管 路内における動圧, 流速,流量を求める ためにピトー管によ る全圧測定部におけ ii・ii F顧り }i・i1 る静圧も測定した。 流量はダンパの開度 を操作することによ ii・ii {i・ii り調節した。なお, 155 図3.5に示す整流格 図3.4 ピトー管の測定点 ●は測定点 子は測定管路の長手方向を回転軸とする流れの旋回成分を取り除く ためのものでJIS規格に基づいて製作した。 一20一 100 蕎 155 図3.5 整流格子 一21一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 { 一 一 一 一 一 一 一 一 3.4 羽根車の諸元・形状および羽根の形状を決定する諸要素 3.4.1 羽根車の諸元・形状 本実験では羽根枚数を60枚(中間翼を取り付けた場合は主翼30枚, 中間翼30枚),羽根車の外径(D2)を220mmに設定し,羽根車幅(b2), 羽根車内径(D1),入口角(β1),出口角(β2)および中間翼内径 (D1。)を変えた11種類の羽根車を用い実験を行った。 表3.2に羽根車の諸元を,図3.6に羽根車No.1∼2,図3.7に羽根車 No.3∼11の羽根車の形状を,また図3.8∼3.9に羽根車の写真を示す。 表3.2 羽根車の諸元 羽根車No. b2 mm β1。 β2。 DImm D2 mm Dls mm 1 120 74。 16,5。 184 220 * 2 90 74。 16.5。 184 220 * 3 48 74。 16.5。 184 220 * 4 48 60。 10。0。 153 220 * 5 48 60。 10.OD 153 220 173 6 48 60。 15.0。 153 220 173 7 48 60。 12.5。 153 220 173 8 48 60。 7.5。 153 220 173 9 48 60。 10.0。 132 220 * 10 48 60。 10.0。 176 220 * 11 48 60。 10.0。 153 220 198 中間翼内径(D1。)欄における*印は中間翼を取り付けていない 羽根車を示し,60枚の羽根は全て主翼である。 一22一 中間翼 4β2 主翼 し /琳 ノ 一 一 一 一 一 『 一 忽 一 望 “ o o o 覧 L 一 一 一 一 一 『 一 b 図3.6 羽根車の形状(羽根車No.1∼2) 一23一 中間翼 B, 主翼 し 一 一 B, / ,IL 《ト ■ 一 o o “o .. ’ ’ミー1 一 一 b2 図3.7 羽根車の形状(羽根車No.3∼11) 一24一 掴簸“L 図3.8 羽根車の形状(羽根車No.1∼2) 写真 醐一・ 。,,。,, . 轍1 su幽幽滋・・ 廓麟・ 図3.9 羽根車の形状(羽根車No.3∼11) 写真 一25一 3.4.2 羽根の形状を決定する諸要素 多翼ファンの羽根は図3.10に示すような円弧状の前向き羽根である。 回転餌で B B, 2X r a e>)?o ’ t’: B, A 0 80 B, / D,= 2 Di=2 ri 量 o 図3.10 羽根の形状 一26一 円弧羽根は形状および製作が簡単で入口角と出口角を任意の値に 設定できる利点がある。円弧羽根の形状は羽根車内径,羽根車外径, 入口角,出口角が与えられればこれらの値から作図に必要なブレー ド曲率半径(r),羽根円弧角(θ),および取付角(α)は以下の計算 方法により求めることができる。 図3.10に示すように,羽根入口,出口をA,B,羽根車中心およ び羽根曲率中心をそれぞれ0,0’とする。 00’=Dとすれば△00’Aと△00’Bにおける余弦定理より C2: D一一: 黶F 堰Cii++ r, 2,一.一.:r, ,i r, C,:1(B1200 一B,) } ・・ ・・ (3. 1) となり,Rとブレード曲率半径(r)は(3.1)式より D =Vr22+r2−2r2rcosS2 ・・ 2一 v・ 2 r2L−r1 r = 2(r2c esB2一一 ricos (180e 一Bi) ) ・・ @・・ ・・ ・・ (3. 2) @・・ ・・ ・・ (3. 3) となる。 羽根円弧角(θ)は△AO’Bにおける余弦定理より 2r2−AB2 e :−AO’B=cos−i 2r2 ” ” ” ” (3. 4i) となる。 一27一 ここで,AB2は△AOBにおける余弦定理より AB2 = r i2十 r 22−2cosz〈 AOB ・・ @・・ ・一 ・・ (3. 5) となる。ただし, ztZ AOB= z AOO’ 一 Z BOO ’ ri2+ 22一 r2 ZAOO’ = cos−i 2riQ ・・ @・・ (3. 6) r22+ C2一一 r2 z〈 BOO’ == cos一’ Zr2Q である。 取付角(α)は△AO’Bの内角の和が180。であるから 1 a=900 一 B ,一 S.Z AO ’B e’ 1 =goe 一B,一szt e となる。 一28一 @” (3. 7) 3。5 実験結果の整理方法 3.5. 1 計算方法 測定管路内における動圧,流速,および流量はピトー管による全 圧測定値,およびその測定位置における静圧測定値を基に以下の計 算方法により求めた。 動圧は全面と静圧との差であるから Pd=Pt一 Ps ” ” ” ” (3. 8) となる。 流速はベルヌーイの定理を用い v :iv(2g“zS.Sf一(ipdx 一iitilT ・・ ・・ ・・ ・・ (3・ g) より求めることができる。 なお,ρA。14),ρAi,15)は ρAq・=一5.64495×10−4×t2十2.04301×10−3×t十101.975。・(3.10) ・…一 P+ま鑑tX旛x÷ 一・・(3・11) の計算式により求める。 ただし,tは温度℃,P。tは大気圧mmHgである。 流量は単位時間に流れる気体の体積であるから, Q=A・v ・・ ・・ ・・ ・・ (3. 12) より計算できる。ただし,Aは測定管路の断面積m2である。 一29一 3.5.2 無次元表示 特性曲線は横軸に流量,縦軸に圧力(全圧または静圧)をとって 表わすのが一般的である。流量や圧力に有次回数を用いれば固有の 特性については理解しやすいが,回転数や外径の異なる羽根車の比 較には適さない。これに対し,無次元数を用いれば相似形状の羽根 車については一つの共通な曲線にまとまり,回転数や大きさの異な る羽根車の性能を比較検討する際に都合がよい。 したがって,本研究では次式に示す無次元数を用いて比較検討を 行った。 ①圧力係数 ψ=H/(u22/2g)16) ②流量係数 φ1=Q/(πD2b2u2)17) ・・・・・… (3.13) ・・・・・… (3.14) ¢2=Q/ (zD22u2/4) ’8’ ・・ ・… ・・ (3. ls) ただし,ψは圧力係数,φは流量係数,u2は羽根出口周速度である。 なお,流量係数には(3.14),(3.15)式で示されるように2種類の定 義がある。一般には,相似な形状の羽根車の比較にはφ1を用いるが, 羽根車幅のみ異なる羽根車を比較する場合には,流量が等しければ 羽根車幅に関係なく同一の流量係数となる(3.15)式のφ2を用いる方 が都合がよい。本実験においても羽根車幅の影響について調査する 際には,流量係数としてφ2を用いた。 一30一 3.5.3 性能の比較方法 前述のように,設計流量420m3/hをそのままに保ち,ダクトをφ 0.1mにするために必要な静圧は36.7mmAqである。静圧を36.7皿mAq取 り出すためには,現行の1000rp皿よりも回転数を上げなければ達成で きない。 回転数を上げるこζを条件に,羽根車の性能を比較する場合は単 に設計流量の420m3/hにおいて得られる全圧の値で比較するのではな く,流量が回転数の1乗に比例し圧力が2乗に比例することを考慮 すると,図3.11に示すように特性曲線と抵抗曲線との交点で検討す る必要がある。この交点は作動点と呼ばれ,管路抵抗と送風機圧力 がバランスする点である。 また,抵抗曲線は,管路抵抗が流量の2乗に比例するため, ψ==kφ2(k:係数) ・・・・・… (3.16) の二次関数で表わされる19)。係数kは全圧50.3mmAqにおける圧力係 数(ψ)の値を(2.4)式と(3..13)式より求め,次に,設計流量420皿3/hに おける流量係数(φ)の値を(3.14)式または(3.15)式より求め,それ ぞれの値を(3.16)式に代入して求める。 一31一 3.0 2 以/抵抗曲線ψ=kφ ノ ロ ノメ〉・特性曲線 s 2.s 瞳 ti 出2・o M 屑 ノ 1.5 ’ 。.o i一一・設計流量 作 動 点 O.2 O.4 流量係数φ 図3.11 性能の比較法 ・一 @32 一 O.6 O.8 第4章 実験結果および考察 実験結果の考察は全体的な傾向をつかむため大流量域,小流量域 および作動点の3領域について行った。 4.1 羽根車幅の影響 4.1.1 実験結果 本実験では「2.1比速度による検討」を基に,全圧に及ぼす羽根 車幅の影響を調査するため,羽根入口角,羽根出口角,および羽根 車内径を同一条件にし,羽根車幅を変えた3種類(120mm,90mm, 48mm)の羽根車について実験を行った。 表4.1に3種類の羽根車の諸元を,図4.1に実験結果を示す。 なお,流量係数にはφ2を用いた。また,羽根車幅に関する無次元数 として羽根車外径と羽根車幅の比(b2/D2)を用いた。したがって, b2/D2の大きい羽根車ほどその幅は大きい。 表4.1 羽根車の諸元(羽根車幅の影響) 羽根車No. b2mm b2/D2 β1。 β2。 Dlmm 1 120 0.55 74 16.5 184 2 90 0.41 74 16.5 184 3 48 0.22 74 16.5 184 一33一 3.0 1! ノー凹 ノ .!/旧 2.5 1 s 楽 迷2・o 出 1・ 15 1設諭量 1’ 羽根車No. b2/D2 / 抵弊 1 .0 1 ??1 O.55 一一鼈?2 O.41 一一一一 . 3 O.22 O.5 O.O O.1 O.2 O.3 O.4 O.5 O.6 O.7 O.8 O.9 1.0 流量係数φ2 図4.1 実験結果(羽根車幅の影響) 一34一 4.1.2 考察 現在,住宅用レンジフード等に用いる多翼ファンとして,図4.2 に示すような幅120mm(b2/D2=0.55)の羽根車が多く使用されて いる。羽根車は片持ち支持の形式でモータと結合され,剛性をもた せるためにボス部を凹の形にするのが一般的である。しかし,この ような形状の羽根車においては,流入した空気はボス部で渦を巻く か,または羽根に対して斜め方向に流入し,羽根車出口における軸 方向の圧力分布を不均一にする原因になると推測される。 16.5’ 墾 74e / 2 31 『一 (一一4 震 息 K, R 。 Ψoo も Fも 『 × k.g 120 図4.2 現行の羽根車の形状 一35一 一 oN創も 羽根車幅の影響を調査する第一段階として,ボス部での渦等によ る損失を少なくし,羽根が与えるエネルギーを羽根車の軸方向で均 一にするという観点から,ボス部の幅に相当する羽根長さ(30m皿)をテ ■・・一一 vで覆い有効幅を90mm(b2/D2 =O.41)として実験を行った。 実験結果(図4.1)から,φ2=0.35以上の大流量域においては,b2 /D2=0.55の羽根車は緩やかな上昇カーブを示すのに対して, b2/ D2=0.41の羽根車ではほぼ一定値を示し,圧力係数に顕著な差異が 認められた。一方,小流量域のφ2=0.15∼0.35においては,2種類 の羽根車はほぼ同じ値を示し,φ2=0.15以下では,逆にb2/D2= 0.55よりb2/D2=0.41の方が大きくなっている。また,作動点にお いては,b2/D2=0.55の圧力係数はψ=1.84, b2/D2=0.41の圧 力係数はψ=1.86であることから,わずかであるが羽根車幅を小さ くすることの有効性が認められた。 つぎに第二段階として,羽根車幅をさらに小さくすれば小流量域 で高い全圧が得られるという予測から,図4.3に示すような幅48mm (b2/D2=0.22)の羽根車を試作し実験を行った。この羽根車の主 板は現行の羽根車に用いられているボスの凹部を取り除きフラット にしたものであり,剛性をもたせるために主板の厚みを0.2mm増した ものである。 一36一 6.59 74’ ’ / ’ 藝§ $ マ 伽/ ’ も 魚 唱L 急 、 \ 、 o \ 、 図4.3 幅48mmの羽根車の形状 実験結果(図4.1)から,b2/D2=0.22の羽根車はφ2=0.47以上の 大流量域においては,他の羽根車と比較して圧力係数は低く,急激 な減少傾向を示している。一方,小流量域のφ2=0.10以下において は,圧力係数は小さくなっているものの,φ2=0.10∼0.25では急激 な上昇を示し,φ2=0.25∼O.35においても緩やかな下降は認められ るものの他の羽根車と比較して大きい。 一37一 本実験の比較点である作動点の圧力係数を表4.2に示す。 表4.2 作動点における流量・圧力係数比較(羽根車幅の影響) 羽根車幅b2/D2 流量係数 φ2 圧力係数 ψ 0.22 0,150 2.00 0.41 0,146 1.86 0.55 0,142 1.84 表4.2より明らかなように,作動点における圧力係数は羽根車幅を b2/D2=0.22と小さくすることによりb2/D2・・O.55と比較して約 8.7%,b2/D2=0.41と比較して約7.5%大きくなる。 一般に,片吸い込み型の多翼ファンの羽根車幅はb2/D2≒0.50と して設計されており20),現在市販されているファンにおいても理論 上必要な羽根車幅より大きく取ってある21)。ところが,本実験で明 らかなように,小流量域においては羽根車幅を小さくする方が高い 全圧が得られていることから,理由もなく羽根車幅をb2/D2≒0.50 に設定するのではなく設計点に応じた羽根車幅の設計が必要である と考えられる。 一38一 4.2 中間翼の影響 4.2.1 実験結果 本実験では全圧に及ぼす中間翼の影響を調査するため,羽根車幅, 羽根入ロ角,出口角,および羽根車内径を同一条件にし,中間翼内 径を変えた3種類(153mm,173mm,198mm)の羽根車について実験を行 った。ただし,中間翼内径が153mmの羽根車はD1。とD1が同じ値に なり全ての羽根は主翼になる。 表4.3に3種類の羽根車の諸元を,図4.4に実験結果を示す。 なお,流量係数にはφ!を用いた。また,中間翼内径に関する無次元 数として中間翼内径と羽根車外径の比(DI。/D2)を用いた。したが って,D1。/D2の大きい羽根車ほど中間翼は短い。 表4.3 羽根車の諸元(中間翼の影響) 羽根車No. β2。 D1。/D2 b2/D2 D1皿m β1。 4 0.70 0.22 153 60 10.0 5 0.80 0.22 153 60 10.0 11 0.90 0.22 153 60 10.0 一39一 3.0 jijii C,,lli 羽根車No. Dls/[>2 C,一 一一 р堰D一一一 4 O.70 *モ蝿鼈鼈鼈鼈?11 5 O.80 O.90 2.5 一一 s i : 7jiii lii 迷2・o 出 / 1 1 .5 1設騨 i’ l 1.0 i’ l i :i 抵珂曲線 l i l i ’1 / 1 O.5 o.o o.1 o.2 o.3 o.4 o.s o.6 o.7 o.s o.g 1.o 流量係数φ1 図4.4 実験結果(中間翼の影響) 一40一 4.2.2 考察 実験結果(図4.4)から,φ1=0.30以上の大流量域においては,3 種類の羽根車の圧力係数はほぼ同じ値を示し,中間翼内径と圧力係 数との間に相関関係は認められなかった。一方,小流量域において は,圧力係数に若干の差異が生じ,中間翼を取り付けることの有効 性が認められた。 本実験の比較点である作動点の圧力係数を表4.4,および図4.5に 示す。 表4.4 作動点における流量・圧力係数比較(中間翼内径) 中間翼内径D1。/D2 流量係数 φ1 圧力係数 ψ 0.70 0,174 2.08 0.80 0,177 2.15 0.90 0,172 2.05 表4.4より明らかなように,作動点における圧力係数はD1。/D2= 0.80の中間翼を取り付けることにより,全てが主翼である羽根車 (D1。/D2=O.70)と比較して約3.4%大きくなる。一方, Dl。/D2=・ 0.90の中間翼を取り付けると圧力係数は逆に約1.5%小さくなる。 本実験により,中間翼を取り付ける際には適正な中間翼内径の設 定が重要になり,DtS/D2=0.80にすることで作動点を含む小流量 一41一 域においては中間翼を取り付けることの有効性が認められた。 3.0 $ 2.5 日 ・ = 出 2・o Dl s/ D2 m O.70 1 .5 e O.80 口 0.90 1 .0 O.5 O.6 O.7 O.8 O.9 Di s/D2 図4.5 作動点における圧力係数比較(中間翼の影響) 一42一 1.0 4.3 出口角(β2)の影響 4.3. 1 実験結果 「2.2 運動量理論による検討」の(2.16)式に示されるように,出 口角(β2)は圧力に対して大きな影響を及ぼし,羽根車の設計に際し て最も重要な因子として位置づけられている。 本実験では全圧に及ぼす出口角(β2)の影響を調査するため,羽 根車幅,入□角,羽根車内径,および中間翼内径等を同一条件にし, β2を現行の羽根車に用いられている16.5.より小さくした4種類 (7.5。,10.0。,12.5。,15.0。)について実験を行った。. 表4.5に4種類の羽根車の諸元を,図4.6に実験結果を示す。 なお,流量係数にはφ1を用いた。 表4.5 羽根車の諸元 (出口角の影響) 羽根車No. β2。 8 7.5。 0.22 60。 153 0.80 5 10.0。 0.22 60。 153 0.80 7 12.5。 0.22 60。 153 0.80 6 15.0。 0.22 60。 153 0.80 b2/D2 β1。 一43一 D1皿m D1。/D2 3.0 1 ・i iil.!xl’ 羽根車No. 一一一ロー 6 一一“一 7 2.5 s i : 肇2・o 一一費一一 5 一一◎一一 8 kt>. iii li 福 N i ’一”!!’1’ i.5 N , 設計流量 K,ix−h, i’ l i l i I 1 .0 I...‘ 1 O.5 O.O O.1 O.2 O.3 O.4 O.5 O.6 O.7 O.8 O.9 1.0 流量係数φi 図4.6 実験結果(出口角の影響) 一44一 B2 1s.oO 12.sO 1 o.oo 7.so 4.3.2 考察 実験結果(図4.6)から,φ1=0.30以上の大流量域においては,β2 と圧力係数との間に相関関係が認められβ2を大きくすれば圧力係数 は大きくなる。一方,小流量域においては,大流量域ほど顕著な傾 向は認められない。 本実験の比較点である作動点の圧力係数を表4.6および図4.7に示 す。 表4.6 作動点における流量・圧力係数比較(出口角) 出口角 (β2。) 流量係数φ1 圧力係数ψ 15.0 0,175 2.11 12.5 0,171 2.07 10.0 0,177 2.15 7.5 0,175 2.11 表4.6より明らかなように,作動点における圧力係数はβ2=10.0。 の羽根車が最も大きく,他の出口角と比較して約1.9∼3.9%の差が 生じている。また,野島ら22)や中里ら23)の研究にも同様の報告が なされていること等から出□角は約10。に設定するのが適正である と考えられる。 一45一 3.0 2.5 2.0 O 回 . 1コ B2 出 。 回 1 .5 1 O.oo ・ 12.so N 1 5.oo 1 .0 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 0 B, 図4.7 作動点における圧力係数比較(出口角の影響) 一46一 7.s 0 4.4 羽根長さの影響 4.4.1 実験結果 本実験では「2.1比速度による検討」を基に,全圧に及ぼす羽根 長さの影響を調査するため,羽根車幅,羽根入口角,および羽根出 口角を同一条件にし,羽根車内径を現行の羽根車に用いられている 184mmより小さくした3種類(132mm,153mm,176mm)について実験を 行った。 表4.7に3種類の羽根車の諸元を,図4.8に実験結果を示す。 なお,流量係数にはφ1を用いた。また,羽根長さに関する無次元数 として羽根車の内外径比(D1/D2)を用いた。したがって,D1/D2の 大きい羽根車ほど羽根は短い。 表4.7 羽根車の諸元(羽根長さの影響) 羽根車No. DI m皿 D1/D2 b2/D2 β1。 β2。 9 132 0.60 0.22 60 10 4 153 0.70 0.22 60 10 10 176 0.80 0.22 60 10 一47一 3.0 . 十 羽根車No. Dl/D2 9 O.60 一一一一 2.5 濤 lXxt, 攣…2.o KN. 出 1.5 1 .0 : : : : : 設計流量 : : 4 0.70 10 0.80 x ¥ x NX,th b 占 紳線i 1/ O.5 : O.O O.1 O.2 O.3 O.4 O.5 O.6 O.7 O.8 O.9 1.0 流量係数φi 図4.8 実験結果(羽根長さの影響) 一48一 4.4.2 考察 実験結果(図4.8)から,φ!=0.35以上の大流量域においては,羽 根:車の内外径比と圧力係数との間に相関関係が認められ内外径比を 大きくすれば圧力係数は大きくなる。一方,小流量域においては, 大流量域ほど顕著な傾向は認められない。 本実験の比較点である作動点の圧力係数を表4.8,および図4.9に 示す。・ 表4.8 作動点における流量・圧力係数比較(内外径比) 内外径比D1/D2 流量係数 φ1 0.60 0,172 2.04 0.70 0,174 2.08 0.80 0,171 2.03 圧力係数 ψ 表4.8より明らかなように,作動点における圧力係数はD1/D2= 0.70の羽根車が最も大きく,他の内外径比と比較して約2.0∼2.5% の差が生じている。 本実験により,作動点を含む小流量域においてはD1/D2=0.70の 羽根車が他の2種類の内外径比と比較して大きい圧力係数が得られ ていることから,D1/D2は0.7に設定するのが適正であると考えら れる。 一b @49 一 3.0 台 出 2.5 ・ 2.0 口 口 Dl/D2 1 .5 . 0.60 N 0.70 u 0.80 1 .0 O.5 O.6 O.7 O.8 O.9 Di /D2 図4.9 作動点における圧力係数比較(内外径比) 一50一 1.0 第5章結論 本研究では小流量域における多翼ファンの高静圧化を目的とした 性能改善を行った。 実験項目として「第2章改善事項と改善の方策に関する検討」を 基に,羽根車幅,中間翼内径,羽根出口角,および羽根長さの影響 について調査した。各羽根車の性能比較は抵抗曲線と特性曲線との 交点,すなわち,作動点における圧力係数の値で行った。実験によ り得られた結果は以下の通りである。 ①羽根車幅の影響 羽根車幅の影響を調査するために幅の異なる3種類(b2/D2= 0.55,0.41,0.22)の羽根車について実験を行った。 実験結果において,φ2=0.47以上の大流量域ではb2/D2の大き い羽根車の圧力係数は大きくなるが,逆に,φ2=0.10∼0.35の小流 量域ではb2/D2の大きい羽根車の圧力係数は小さくなる。一方,作 動点においてはb2/D2=0.22の圧力係数が最も大きく,他の2種類 の羽根車幅と比較して約7.5%∼8.7%の差が生じている。 本実験により,羽根車幅を小さくすることは羽根車の材料費の軽 一51一 減,軽量化,および小型化を進めるだけでなく,小流量域での全圧 を高める意味においても有益であることが明らかになった。 ②中間翼の影響 中間翼の影響を調査するためにD1。/D2の変化を0.10とし,中間 翼内径の異なる3種類(D1。/D2=0.70,0.80,0.90)の羽根車につ いて実験を行った。 実験結果において,φ1=0.30以上の大流量域では3種類の羽根車 の圧力係数はほぼ同じ値を示し,中間翼内径と全圧との間に相関関 係は認められないが,小流量域では圧力係数に若干の差異が認めら れた。一方,作動点にお.いてはD1。/D2=0.80の圧力係数が最も大き く,中間翼を取り付けていない羽根車(D1。/D2=0.70)と比較して 約3.4%の差が生じている。しかし,さらに中間翼内径をD1。/D2= 0.90と大きくすると逆に圧力係数は低くなることから,中間翼を取 り付ける際には適正な中間翼内径の設定が重要な要因になると考え られる。 本実験により,中間翼内径をDl。/D2=0。80に設定することで, 作動点を含めた小流量域においては中間翼を取り付けることの有効 性が認められた。 一52一 ③出口角(β2)の影響 出口角の影響を調査するためにβ2の角度変化を2.5.とし,出口 角の異なる4種類(β2=7.5。,10.0。,12.5。,15.0。)の羽根車 について実験を行った。 実験結果において,φ1=0.30以上の大流量域では出口角を大きく すれば圧力係数は大きくなるが,小流量域では大流量域ほど顕著な 傾向は認められない。一方,作動点においては,β2=10.0。の圧力係 数が最も大きく,他の3種類の出口角と比較して約1.9∼3.9%の差 が生じている。 本実験により,作動点を含む小流量域においてはβ2=10.ooの羽 根車が他の出口角と比較して大きい圧力係数が得られていることか ら,β2は約10。に設定するのが適正であると考えられる。 ④羽根長さの影響 羽根長さの影響を調査するためにD1/D2の変化を0.10とし,羽根 車内径の異なる3種類(D1/D2=0.60,0.70,0.80)の羽根車につい て実験を行った。 実験結果において,φエ=0.35以上の大流量域では内外径比を大き くすれば圧力係数は大きくなるが,小流量域では大流量域ほど顕著 な傾向は認められない。一方,作動点においては,D1/D2=0.70の 一53一 羽根車の圧力係数が最も大きく,他の2種類の内外径比と比較して 約2.0∼2.5%の差が生じている。 本実験により,作動点を含む小流量域においてはD1/D2=0.70の 羽根車が他の内外径比と比較して大きい圧力係数が得られているこ とから,D1/D2は0.7に設定するのが適正であると考えられる。 ⑤最適パラメータの設定 以上まとめると表5.1,5.2および図5.1に示すようになる。 表5,1 羽根車の諸元(現行羽根車と改良羽根車の比較) 現行の羽根車 改良の羽根車 羽根車幅(b2/D2) 0.55 0.22 中間翼 (D1。/D2) 無 有(0.80) 出口角 (β2) 16.5。 10.0。 0.84 0.70 羽根長さ (D1/D2) 表5.2 作動点における流量・圧力係数比較(現行,改良羽根車) 現行の羽根車 改良の羽根車 流量係数 φ2 0,142 0,154 圧力係数 ψ 1.84 2.15 一54一 3.0 2.5 樫, !ロー一口 /口 /口 /ロ ロ $ n/ \口 2.0 。↓』/口 一→卜一 @現行の羽根車 1 1 .5 改良の羽根車 /i L←設計流量 / i・%t6 図5.1 O・2O.2sl O・4 ¢, O・6 o.s 1.o 性能比較(現行の羽根車と改良羽根車の比較) 作動点において得られる圧力係数は羽根車幅をb2/D2=0.22,出 口角をβ2=10.0。,羽根長さをD1/D2=0.70に設定し,さらに Dl。/D2=:O.80の中間翼を取り付けることにより,現在住宅用レン ジフード等に用いられている現行の羽根車と比較して約16.8%向上 する。 一55一 言射舌辛 本研究を行うにあたり,生活・健康系技術分野の小川武範教授な らびに久光脩文教授には終始懇切丁寧なるご指導,ご鞭燵を賜りま した。ここに深く感謝の意を表します。また,研究の折々に貴重な るご助言を賜りました技術分野の諸先生方に厚くお丸申し上げます。 さらに,兵庫教育大学大学院での2年間にわたる研究の機会を与 えて頂きました大阪府教育委員会,枚方市教育委員会,ならびに枚 方市立桜丘中学校の教職員各位に厚くお礼申し上げますとともに, 研究を進めるにあたりご協力頂きました本学技術分野院生の方々に 深く感謝いたします。 1992年12月21日 黒田 泰弘 一56一 文献 1)朝日新聞:1992年12月3日(朝刊):P.21. 2) National Technical Report:Vol.37−No6:1991:p.94. 3)建設大臣官房官庁営繕部監修:機械設備工事施工監理指針: 社団法人営繕協会:昭和56年(1981):p.369. 4)東京都建築行政協会編:建築基準法関係法令集:光和堂:p.198. 5)日本産業機械工業会送風機技術者連盟編:送風機ノ、ンドブック :日本工業出版:p.11. 6)日本機械学会編:機械工学便覧:1987:p.B5−140. 7)日本産業機械工業会風水力機械部会編:風水力機械産業の2000 年に向けての展望:1991:pp.44∼45. 8)日本機械学会編:機械工学便覧改訂第5版水力機械・空気機械 :1969: p. 10一 4. 9)日本機械学会編:機械工学便覧改訂第5版水力学および流体力 学:1969:p.8−1. 10)文献9)p.8−1. 11)文献8)p.10−5. 12)文献6)p.B8−18. 13)文献5)pp.135∼155. 14)真田雅志:ジャイロミル風車に関する研究:兵教大修士論文 (1984):p.15. 15)文献9)p.8−1. 一57一 16)小笠原光信著:機i械工学講座空気機械:共立出版:p.63. 17)文献16)p.63. 18)藤本武助著:流体の力学と流体機械:養賢堂:p.284. 19)文献6)p.B5−84. 20)福井伸二・他著:機械工学ポケットブック:オーム社:p.9−61. 21)原田幸夫著:流体機械:朝倉書店:p.130. 22)中里謹也・他:多翼通風機に関する実験的研究:SANYO TECHNICAL REVIEM VOL 3 NO.1:1971:p. 19. 23)野島信幸・他:空調機用送風機の性能に関する研究:三菱重工技報 Vo1.9 No.3:1972:p.43. 一/ 一58一