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カナダ Sunnybrook Hospital(`04)

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カナダ Sunnybrook Hospital(`04)
■■平成16年
医学部自主研修レポート■■
京都大学医学部医学科4回生
1009
柚木一馬
受け入れ教室:京大病院 心臓血管外科学教室
■■自主研修レポート■■
京都大学医学部医学科4回生
1009
柚木一馬
私は平成16年度医学部自主研修期間、京大病院心臓血管外科学教室に受け入れていただ
き、4∼5月の研究室参加、そして7月中旬、京都三菱病院にての1週間の病院実習を経て、
8∼9月にかけての1ヶ月間、トロント郊外の Sunnybrook 病院で病院実習を行ないました。
以下、海外研修を中心に私の自主研修の概要についてレポートします。
1・国内病院実習について
7月12日(月)∼16日(金)の1週間、京都三菱病院・心臓血管外科にて病院実習を
行ないました。実習は心臓血管外科手術を中心に、病棟回診や講義への参加という形で行な
いましたが、実習日程中は心臓血管外科のみならず、循環器内科でのカテーテル検査や消化
器外科、産婦人科の手術なども見学させて頂き、非常に充実したものとなりました。
すでに循環器病態学・心臓血管外科学の講義は終了した後だったので、心臓血管系につい
てある程度の知識はあるかとは思っていたのですが、実際の臨床の場で先生方からいろいろ
な質問をされると自分の知識がかなりあやふやなものであることがわかり、本で読みかじり
の知識と実際の臨床で必要とされる知識の差について痛感されました。臨床実習を行なう上
で、Year Note レベルの知識を付けておくとよいとのアドバイスを頂きましたので、これか
ら病院実習を行なう上では必ずこれを実践しようと思います。
なお、実習においては先生方の邪魔にならない限り、わからないことは質問しまくること
が大切だと思いました。特に手術中は何をやっているかわからない状況がかなり多く、学生
が持っている本で調べてみてもなかなかよくわからないものです。京都三菱病院の先生方、
スタッフの皆様は本当に親切で、こちらの他愛無い質問に対しても丁寧に答えていただき、
大変勉強になりました。5日間受け入れていただき、さらに最終日には食事まで奢っていた
だいた京都三菱病院の先生方、及びスタッフの皆様に心から感謝しています。
2.海外病院実習について
京都三菱病院での1週間の病院実習の後、8月23日(月)∼9月10日(金)の3週間、
カナダ・トロント郊外の Sunnybrook 病院にて3週間の病院実習を行ないました。実習は主
に冠状動脈バイパス術の見学が中心でしたが、Toronto General Hospital の研究室見学やトロ
ント大学医学部の講義見学なども行なう事ができました。
①
病院実習スケジュールなど
午前8時に病院のH-Wing、4階の控え室に集合、オペ着に着替えた後、手術部へ向か
い、その日の症例の冠動脈造影を見ながら症例についての解説を受け、午前中の手術を見
学。手術はグラフト採取から人工心肺導入、バイパス形成後、ドレーンを入れて人工心肺
から離脱するまでを見学するのが普通でした。午前中のオペを見学し終えたら病院内の食
堂(=フードコート)で昼飯を取り、しばらく休憩した後、午後の手術を見学し、切りの
いいところで実習終了というのが通常スケジュールでした。なお、水曜、金曜にはカンフ
ァレンスがあり、午前7時集合のスケジュールとなっていました。
次に手術中の見学ポジションですが、邪魔になりそうなときには壁際、人工心肺導入後
は患者さんの頭の上に当たるポジションで上から覗き込むように見学するのが通常でした。
実習中においては、受け入れていただいた先生も、Sunnybrook 病院のスタッフの方も、こ
ちらの質問にはいつも親切に丁寧に答えていただき、本当に勉強になりました。実習最初
の頃は質問も大したことないものばかりだったのですが、実習終盤ともなれば質問内容も
それなりにレベルアップし、確実に実習で知識を増やすことができたと思います。
なお、日本の病院とこの病院の違いとしてまず衝撃を受けたのが、その圧倒的な症例数
でした。この病院では1日3∼4手術、週5日のオペが行なわれており、私も3週間見学
し、合計でおよそ50例以上の手術を見学したことになりますが、これは日本の病院実習
では考えられないことでした。さらに、海外では PCI かバイパスかの判断の根拠が全て
Evidence に基づいており、日本よりもバイパス術の適応がかなり大きいということも知り
ました。ただこれは、心臓手術を単に治療の一選択肢と考えるこちらの患者さんと、やは
り心臓手術と聞くと一大事だと考える日本の患者さんの間での意識の差というのもあるの
だと思います。各国の文化の違いによる患者さんの意識の差というのもその国の医療に影
響を及ぼしているということを実感しました。またこちらでは、オペ室に普通にスニーカ
ーで入ることができたり、手術帽がカラフルだったり、手洗いがだいぶ簡単であることに
もなかなか驚かされました。Evidence を重視し、無駄なことはやらないという一貫した姿
勢の表れなのかもしれません。実習中スタッフの方にカナダの医学教育についてお話をう
かがう機会もあったのですが、徹底的に臨床実習を重視する教育も、臨床希望の私にはな
かなか興味深いものでした。
②
英語について
やはり、この実習の最大の壁でもあり、そして最大の勉強でもあったのが英語でした。
レストランや店での注文などは慣れてくれば全く大丈夫だったのですが、リスニングはか
なり苦労しました。英語を母国語としていない人々の話す英語は割と聞き取りやすいので
すが、ネイティブスピーカーで早口の方や、声が低い方の話す英語は相当聞き取りにくく、
日本に帰ってきた現在でもリスニングの勉強の必要性を痛感しています。ただ、病院内に
おいては専門用語をちゃんと知っているかどうかでコミュニケーションに大きな差が出る
ので、専門用語(解剖学用語など)は勉強しておくとともに、その場で開ける電子辞書は
必須だと思います。ちなみに私はリーダーズ英和辞典入りの電子辞書を持って行きました
が、これでかなりの部分、対応は可能でした。
たどたどしい私の英語ではありましたが、病院の外でのホステルの宿泊客の方々や向こ
うで出会った人たちとの会話は私の実習の中でも最も大きな思い出の一つとなっています。
③
日常生活について
私は友人と共にダウンタウンのユースホステル、「Canadiana Backpackers Inn」に24日
間宿泊しました。病院へはホステルから地下鉄 St.Andrew 駅まで徒歩でおよそ10分、病
院最寄り駅である Lawrence 駅まで地下鉄で約20分、ここからバスで病院までおよそ1
0分の計40分と結構遠い場所に位置しているのですが、ダウンタウン中心部にあるため、
飲食や観光には不自由することはありませんでした。宿泊費ですが、事前に国際ユースホ
ステル会員証を取得していたため、1割引の1日 22.5 カナダドル(およそ 2000 円)
、宿
泊費だけで合計5万円強かかったことになります。セキュリティーもそれなりにしっかり
しており、盗難などに対する最低限の注意と共同生活のマナーを守れば大変に居心地のよ
いホステルでした。夜間外出に対する不安もあまり感じたことはなく、治安の面での心配
は最低限に押さえられたのが良かったと思います。なお、事前に国際学生証を取得してお
けば、学割など、いろいろな場面で重宝すると思われます。また、日本からノートパソコ
ンを持参したのは正解でした。毎日の記録や、写真の保存、ネットへの接続など、これな
しだったら実習は大変に不便であったと思います。
④
病院外実習・観光について
病院外実習としては
□9月1日:University of Toronto 医学部の講義に潜入
□9月2日:Toronto General Hospital の研究室を見学
を行ないました。トロント大医学部の講義については、ちょうど Sunnybrook 病院に
実習に来ていた U of T の医学生から講義日程を教えていただき、京大組4人で勝手
に講義室に乗り込むという半ば強引なイベントでしたが、その場で交渉したところ、
講義担当教授も快く受け入れていただき、しかも講義内容がちょうど循環器疾患だっ
たこともあって授業内容も十分理解もでき、カナダの医学部の講義を受講するという
またとない経験になりました。
TGH 見学については、Sunnybrook 病院で私たちを受け入れてくれたドクターから
紹介を頂き、細胞移植の実験やライゲーションの実験などを見学させて頂きました。
観光としては、
□8月27日(金)NYヤンキース戦観戦
□8月29日(日)ナイアガラの滝ツアー
この他にも週末を中心にトロントの市内観光に繰り出し、エスニックタウンを回った
り、名所旧跡を回ったりしましたが、こうした中でカナダでの生活に馴染み、日本との
様々な違いを実感しました。
3.まとめ
以上が私の自主研修の概要となります。数年前を振り返ってみれば、何かの進学ガイ
ドにあった「自主研修中に海外で臨床研修を行なう者も多い」とのフレーズが、私が京
都大学医学部を目指した理由のひとつでもありました。4回生になり、実際に自分がト
ロントでの病院実習を終えて、事前に思っていた以上に得たものが多かった実感があり
ます。それは心臓血管外科手術に関する知識であったり、先生方から聞くことができた
卒後の話であったり、英会話に関する感触であったり、異文化ショックであったりと様々
です。この実習で得た様々な「ショック」をただ単に思い出にするのではなく、これか
ら先、英語であれ、医学知識であれ、これらをプラスの方向へ成長させ、自分自身の能
力として発展させて行くことで、良い医者目指して頑張っていこうと思います。
なお今回の自主研修でお世話になった京大病院心臓血管外科の先生方、秘書さん方、
京都三菱病院の先生方、スタッフの方々、Sunnybrook 病院で私たちを受け入れていただ
いた先生方、病院スタッフの皆様方、さらに、私たち海外自主研修組全員に援助をして
くださった東先生、そして最後に、私たち学生を受け入れ、海外研修の機会を与えてく
ださった心臓血管外科、米田正始教授に心から感謝の念を申し上げます。ありがとうご
ざいました。
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