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他人に生命の保険契約と保険会社の 義務及び責任(ー)
他人に生命の保険契約と保険会社の 義務及び責任(I) − アメリカの判例の検討を中心に − 福田 弥夫 (八戸大学専任講師) 1 はじめに 2 アメリカにおける他人の生命の保険と被保険利益 (1) イギリスにおける被保険利益 (2) アメリカ法制におけるコモン・ロー時代の披㈱険利益 (3) 制定法による被保険利益 (4) 判例の集積による被保険利益 (5) 被保険利益を有しなければならない者 3 利益主義における被保険者の同意 (1) コモン・ローにおける被保険者の同意 (2) 制定法による被保険者の同意 (3) 同意の方式 (4) 同意の時期および相手方 (5) 同意要求の例外 (6) 同意の撤回 (7) 被保険利益と同意の関係 4 生命保険全社の調査義務と不法行為責任 5 日本法に示唆するもの ー65− 本号 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 1 はじめに 他人の生命の保険契約につき、同意主義を採用する商法674条1項 は、「他人ノ死亡二因りテ保険金額ノ支払ヲ為スへキコトヲ走ムル保険 契約ニハ其者ノ同意アルコトヲ要ス但被保険者力保険金額ヲ受取ルへ キ者ナルトキハ此限二在ラス」と定めている。この同意主義は、比較 法的にはドイツ、フランスなどの大陸法系の国々において採用されて いるものであるが、これに対し、アメリカ、イギリスなどの英米法系 諸国においては、被保険者と保険契約者(または保険金受取人)との 1) 間に被保険利益(InsurableInterest)の存在を要求する利益主義が採 用されている。また、これら二つの立法主義に加えて、被保険者と一 定の親族関係に立つ者に限り、保険契約の締結を認めるとする、いわ 2) ゆる親族主義もある。 この他人の生命の保険契約が、かような法的規制を受ける理由は、 3) この保険が内包する危険性を未然に防止しようとする点にある。 生命保険契約は、被保険者の生死を条件として、保険者が保険金受 取人に対し一定の保険金額を支払うものであるが、被保険者が一定の 年齢まで生存したことを条件とする生存保険はともかくとして、死亡 を条件とする死亡保険(生死混合のいわゆる養老保険を含む)では、 被保険者の死亡により保険金受取人が保険金を取得するが、その際、 現実の払い込み保険料と保険金額との間に大きな格差があるのが通常 である。そのために、寡少の負担で大きな不法の利益を待ようとして、 4) この被保険者の死亡を故意に惹起せしめようとする危険性(いわゆる 「モラルリスク」)をこの保険制度は内包している。このほかにも、被 保険者となんら身分的、経済的、社会的関係のない者が、その者の生 5) 死を対象として、賭博にも似た行為を行う危険性(措博保険の危険性) −66− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) や、被保険者の了知しないところでほしいままにその者の生命を取引 6) の対象とするような危険性(人格権侵害の危険性)もある。 このような危険性を防止するために、諸々の法的規制が施策されて いるが、我が国の採用する同意主義は、他国の利益主義、親族主義と 比べるとき、多くの長所を有していると評価されている。例えば、西 島教授は、「生命保険の利用方法の拡大に弾力的に対処し、かつ挙証困 難な人間相互の利害の機械的判定を避けるために、同意主義は巧妙で 7) 妥当な立法例と評価できる」と指摘する。 たしかに、同意主義を採用する我が国の生命保険法は、拡大し続け てきた生命保険の利用方法に対し、「同意」の解釈を柔軟なものとする 8) ことによって巧みに対処してきたといえよう。しかしながら、この利 点とは裏腹に、同意をめぐる解釈がなしくずし的に形骸化される結果 となったこともまた事実である。ここにいうなしくずL的解釈は、もっ ぱら個別保険と団体保険とを統一的に説明しようとするところに目的 をおいている。しかし、それが同意の要求される本質を見失い、同意 の形骸化を生ずる結果をもたらしたのではないかが懸念される。 わたくLは、かって「他人の生命の保険契約一同意主義の問題点と 9〉 その課題−」なる小稿において、他人の生命の保険について検討を加 える機会を得た。そこでは、わたくLは、同意に対する厳格解釈の必 要性、とくに個別保険と団体保険における解釈の分離を強調した。本 稿では、先の論稿に続き、同意をめぐる問題領域のなかで、保険者の 義務及び責任について検討を加える。従来の同意をめぐっての論議は、 被保険者、保険契約者を中心としてなされてきた。このため保険者を めぐる諸問題が検討の対象とされることは少なかったといってよい。 とりわけ、被保険者の同意を、各種危険性防止の拠り所としながらも、 その同意の真正確認について、保険者がいかなる義務及び責任を負担 −67− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) するのか、この点は全く省みられていなかった。 利益主義を採用するアメリカにおいては、被保険利益についての論 議が中心的になされ、その論議の輪は、被保険者、保険契約者のみな 10) らず、保険者をもまきこんでいる。とりわけ、保険者の義務として、 被保険者と保険契約者(または保険金受取人)との間に被保険利益が 存在するか否かを調査すべきかが問題となっている。そして判例によ 11) れば、その点は保険者の義務とされている。 さらに、この調査義務肯定論を前提として、被保険利益の存在しな いケースに対し、過失によって保険者が生命保険契約を締結し、爾後、 保険契約者が被保険者を殺害したり、あるいは傷害を加えたりした場 合に、保険者の責任いかんが問題となっている。判例は、このような 12) 場合に保険会社は不法行為責任を負うものとしている。 以下に、本稿では、これらのアメリカ法制における各種事例に検討 を加え、利益主義の下で、なぜ保険者に対し被保険利益の存在の調査 義務を課しているのか、さらにその義務を前提として、不法行為責任 の成立すら認めている理由はどこにあるのかを探って行きたいと考え る。 我が国と全く異なる利益主義を採用しているアメリカ法の検討は、 日本法との直接的な比較・検討を桂椎にする。しかしながら、全く異 質の法的規制を発展させてきたアメリカの状況を検討することによっ て、我が国のこの点に関する問題意識に少なからぬ示唆を与えるもの と考える。 以下、アメリカ法制における被保険利益の制度および被保険者の同 意を概観した上で、保険会社の調査義務あるいは不法行為責任の争わ れたケースを個別的に検討することとする。 ー68− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 注 1)「InsurableInterest」は、保険に付することのできる利益を意味するが、ここで は、一般的に用いられている「被保険利益」という訳を使用することとする。 2) 大森忠夫・保険法267頁、石田満・商法IV(保険法)279頁、西島梅治・保険法(第 2版)354頁等。なお、純粋な親族主義を採用した立法例は、我が国の明治32年商法 を除いて見当たらないという。三宅一夫「他人の死亡の保険契約」(大森=三宅『生命 保険契約法の諸問題J所収)310頁。 3) 大森・前掲書注2)261頁、石田・前掲書注2)278頁、西島・前掲書注2) 354頁。 4) この点については、続発する保険金殺人事件がこの危険性を如実に示している。 月足一清・生命保険犯罪 は、保険金殺人事件等の事例を分析、解説しており、貴重 な資料である。また、石田満はかく座談会>「生命保険と犯罪」ジュリスト752号16 頁以下においても、保険金殺人をめぐる有益な討論がなされている。 5) この点についての沿革は、三宅・前掲論文注2)266頁以下。アメリカ法制のもと では、道徳危険及びこの危険性の防止に関心が注がれてきた。 6) 三宅・前掲論文注2)294貢。 7) 西島・前掲書注2)355頁。 8) 同意をめぐる問題点については、江頭憲次郎「他人の生命の保険契約」ジュリス ト764号61頁以下に詳細な検討がなされている。 9) 拙稿「他人の生命の保険契約一同意主義の問題点とその課題一」日本大学法学紀 要第27号24頁以下。 10)この問題を論ずる最近の論文として、Kingree.L的InsurerゝLiabiliかjbr Neg− lkenl Undenuriling.53INS.C。UNSELJ655(1985)[hereinafter Kingree].Annota− tion,ぬ〟柁rlわr/J最前抄カγ別働廓〟の1喝庵閉「料紺柑=ゾ互存函南乱 37A.L.R4th973.などがあり、R.JERRY,II.UN。ERSTANDINGI..S。RANCE LAW(1987) lhereinafterJERRY]202頁以下にも詳しい。 11)この点が直接に争われた最初のケpスとして、Liberty National LifeIns, Co.,V.Weldon.267Ala.171,100So.2d696,61A.L.R.2d1346(1957).が あり、保険証券発行に際しての保険会社の被保険利益の存在調査義務が肯定された。 12) 保険会社の不法行為責任か肯定されたケースとして、前掲注11)Liberty National LifeIns.Co..V.Weldonのほかにも、Ramey v.Carolina Lifelns. C0.,244S.C.16,135S.E.2d362,9A.L.R.3dl164(1964).がある。このケー スは、被保険者の同意の碓認について保険会社の責任を認め、不法行為責任を肯定し ー69− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) たものである。また、LifeIns.Co.ofGeorgia v.Lopez.443So.2d947(Fla. 1983)は、保険会社が不法行為責任を負う場合のありうることを示したが、差戻番に おいては、保険会社に過失がなかったとして、保険会社の責任は否定された。この判 決の確定判決は公表されていないが、事件を担当した弁護士に対して手紙で照会した ところ、上記のような回答を得た。 2 アメリカにおける他人の生命の保険と被保険利益 13) (1) イギリスにおける被保険利益 アメリカ法制においては、他人の生命の保険契約の締結にあたり、 14) 被保険者と保険契約者(または保険金受取人)との間に、被保険利益 が存在することが必要であり、この被保険利益の存在を欠く生命保険 契約は賭博保険であり、公序に反し無効であるとするのが一般原則で 15) ある。そして、この被保険利益は、契約締結の時点において存在すれ ば足り、被保険者の死亡時(保険事故発生時)にも存在する必要はな 16) い。このようなアメリカ法制の態度は、その母法とも言うべきイギリ ス法の影響を受けて形成されてきたものであり、ここでイギリス法に ついて若干の検討を加えることにしよう。 コモン・ローのもと、保険契約者と被保険者との間に何等の関係が 存在していなくとも、そのような生命保険契約は有効であり、強行可 17) 能なものとされていたという。その理由は、賭博一般が法的に認めら れた強行可能なものであり、従って、生命保険の形態をとった賭博も また有効であるというにあった(有効とする以外の選択肢を有してい 18) なかった)。そのような法の態度は、賭博保険の増加を当然にもたら し、現実に殺人事件の誘因を与えるという好ましくない結果となった のである。このような状況が、1774年の生命保険法(Life Assurance ー70− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 19) Act1774)の立法へとつながった。1774年法は、次のような内容であ 20) る。 (1) 何等の利益(被保険利益)を有しないものは、生命等に保険 を付してはならず、これに反して締結された保険契約は全て無 効とされる。 (2) 生命保険の証券には、必ず被保険利益を有する人等の名前が 表示されていなければならない。 (3) 保険契約者は、自己の有する利益の金額または価額よりも大 きな金額を保険者から回収または受け取ってはならない。 このように、1774年法は、生命保険契約に被保険利益の概念を導入 して、賭博保険を禁止するに至ったが、同時に、詳細な規定でなかっ たために、被保険利益に関しいくつかの疑問を提示する結果となった 21) のである。それは、 1 被保険利益は、いつ存在することが要求されているのか。 2 被保険利益とは、どのような内容のものを指すのか。 である。 このような疑問点は、判例の集積によって解決されて行く。まず、 被保険利益が必要とされる時期についてである。 この点についての1774年法の規定は唆味である。すなわち、第1条 は、保険契約の締結時に被保険利益が存在すればよいとも読めるが、 第3条は、保険事故発生時にも被保険利益が存在することを要求して いるとも読めるからである。この点についての判例の態度は一転する。 22) すなわち、1807年のゴッドサル対ポルデロ事件では、問題となった保 険契約が債務者の生命に債権者が保険を付したものであったことから、 その契約は損害填補契約であるとして、保険事故発生時にも被保険利 益の存在が必要であると判示された。しかしながらこの判決は、1854 ー71− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 23〉 年のダルビ一対インディア・ロンドン生命保険全社事件によって覆さ れる。この事件は、生命保険の再保険の事例であったが、裁判所は、 保険契約締結時に被保険利益が存在すれば足りると判示したのである。 この判決は、事件が純粋な生命保険契約ではなかったことから、その 24) 適用範囲に疑問を抱くものもあり、また、保険事故発生時にも被保険 利益の存在の証明を要求し、かつ受取ることのできる金額は、現実の 25) 損害額に制限すべきだという主張もあるが、現在に至るまで、被保険 利益の必要とされる時期についての重要な先例とされている。 それでは、被保険利益の内容についてはどうであったろうか。一体 どのようなものが被保険利益を構築するかについて、1774年法は何ら の定義もしていない。しかしながら、第3条は、保険契約者の有する 利益の金額または価額よりも大きな金額を保険者から受け取ってはな らない、と規定していることから、金銭的利益に限られると解され、 これが一般的な態度であったということができる。しかし、このように 金銭的利益に限定することは妥当性を欠き、また、1774年法の目的が 賭博保険の禁止にあったことから、自己の生命に保険を付する場合と、 配偶者の生命に保険を付する場合には、厳格な金銭的利益の存在を要 求しないようになってきた。 ここで、判例の集積によって明らかにされている、イギリス法の被 保険利益概念を要約してみることとしよう。まず、何人も、自己の生 Z6) 命に関し被保険利益を有している。夫は妻の、妻は夫の生命に関し被 27) 保険利益を有している。この二つの関係に関しては、金銭的利益の存 28) 在を要求せず、また保険金額の制限もされていない。しかしながら、 これ以外の親族・姻族関係には、厳格に金銭的利益の存在が要求され ている。保険契約者は、被保険者の死亡によって被るであろう経済的 な法的権利を示さなければならず、保険金額もまたその金額に制限さ ー72− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) れるという原則が展開されている。 それでは、子が親の生命に開し被保険利益を有しているか否かにつ いてみてみよう。 未成年の子は、その両親が法的に扶養の義務を負っている場合には、 両親の生命に関して被保険利益を有する。その理由は、両親の死によっ て扶養を受ける権利を喪失するからであるとされる。しかし、成年に 達した子は、両親の死から生じる法的義務の存在を証明しない限り、 被保険利益を有しないとされる。この点については、ハース対パール 29) 生命保険会社事件がある。成年に達した息子が、同居し、家事を行なっ ている母の生命に保険を付した事例であり、その保険の目的は、母の 葬儀代金のためと明確に宣言されていたという。母の死後、保険会社 が被保険利益の欠故を理由に保険金の支払いを拒絶したために訴訟と なった。裁判所は、子は、母の死に際して葬儀を行なう法的義務など 有しておらず、母は、子のために家事を行なう義務など有しない。従っ て子の母の生命に関する被保険利益は存在しないとして、保険会社の 主張を認めた。 それでは、親が子の生命に保険を付する場合はどうであろうか。こ の点については、両親は、子の生命に関し、葬儀費用を支出するとい う以外には、被保険利益を有しないとされている。ハルフォード対カ 30) イマー事件は、子の死に際して、両親には、葬儀費用以外のものを支 出する法的義務は存在しないと判示した。さらに、たとえ両親が成年 に達した子から援助を受けていたとしても、成年に達した子が親を援 助するという法的義務は存在しておらず、被保険利益は存在しないと している。このような判例を検討するならば、子から援助を受けてい ない両親は、当然に被保険利益を有していないという結論が導かれる。 このように、イギリス法の被保険利益に関する態度は、非常に厳しい ー73− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) ということができる。徹底して、法的義務に裏付けられた経済的利益 のみが被保険利益を構築するものとしているのである。 31) (2) アメリカ法制におけるコモン・ロー時代の被保険利益 今まで検討してきたイギリス法の態度は、アメリカ法に大きな影響 を与えたことは確かである。しかしながら、アメリカ法制がイギリス 法を継受するにあたり、より規制の緩やかなものとする一般的な傾 32) 向が、被保険利益概念の構築にあたっても見られている。 ここで、アメリカ法制における被保険利益の概念について検討を加 えてみることにしよう。アメリカ法制は、イギリスにおいて生成・発展 してきた被保険利益概念をどのように受け継いだのであろうか。 ここでその手掛かりとなるのは、1876年のコネチカット生命保険相 33) 互会社対シェーファー事件である。 事実の概要は次のようである。1868年7月、フランシスカ・シェー ファーと、その夫ジョージ・シェーファーは、コネチカット生命保険 相互全社との間で、両者の死を保険事故とし、保険金は、生存してい た方に支払われるという連生保険契約を締結した。1870年1月、両者 は杜婚し、扶養料は妻フランシスカに対し与えられた。この扶養料以 外に、両者の離婚に関しては何等の付帯条項は存在していない。両者 ともその後に違う相手と再婚した。1871年2月ジョージ・シュー ファーは死亡した。そこでフランシスカは、保険金の支払を求めたが、 保険会社が支払を拒絶したので保険金支払請求の訴えを提起した。 第一番は、原告の請求を認めたので、被告保険会社が上訴したのが 本件である。上訴理由は複数であるが、重要な争点は、離婚によって 被保険利益は消滅してしまうのか、被保険利益の存在は、保険事故発 生時にも必要とされるのかである。判旨はまず、生命保険契約におけ ー74− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 34) る被保険利益について次のように述べた。 「まず第一に、被保険利益とは何であるかを確かにしておくことが 適当であろう。賭博保険−それは、保険契約者が、保険を付した目的 物に対して、その喪失または破壊による利益以外の何らの利益を有し ないもの−は、公序に反し無効である。これは、1688年の革命以前の 35) イギリスの法であった。しかしこの時期の後、判決の方向は賭博保険 を認め助長していた。ついに立法者は異義をはさみ、そのような保険 36) を、海上保険のリスクに関しては、制定法19 Geo.II.C.37.によ 37) り、そして、続いて生命保険に関しては、制定法14 Geo.III.C.48に よって禁止した。我が臥こおいては、いくつかの州において同じ効果 を生じる制定法が通過しているが、それのなされていない州において は、ほとんどの場合、イギリスの制定法の適用が考慮されるか、ある いは、旧いコモン・ローに従っている。∼略∼海上保険や火災保険の 場合、(どのような利益が必要であるかについては)その困難さは、さ ほど大きくはない。というのも、そのような保険は、厳しく損害填補 と考えられているからである。しかし生命保険では、(利益は)めった に金銭的利益によっては測定されない。それでもやはり、何らかの被 保険者の生命についての利益が存在していなければならない。人は、 全く見知らぬ人の生命に保険を付すことはできないのみならず、彼に 対して、何らかの現実の利益が、その人の生命の継続によって作り出 されない関係にある人の生命に保険を付することもまたできないので ある。人は自己の生命に関し、そして、妻及び子の生命に、女性は夫 の生命に、そして債権者は債務者の生命に被保険利益を有していると いうことは、当を得て決定されている。もっとも、その人の生命の継 続に関する、如何なる金銭上の利益についての合理的な期待は、被保 険利益を作り出すと言うことは、一般的に言われるであろう。」。さら ー75− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) に判旨は、被保険利益の存在が必要とされる時期について、「しかしな がら我々は、誠実に契約が獲得され、そしてその当初に有効であった ものは、契約それ自体にそのような必要性を認める条項のない限り、 被保険利益の消滅によって無効とされないということをためらわな い」と述べ、また、イギリスのダルビ一対インディア・ロンドン生命 38) 保険会社事件を引用し、被保険利益は契約の当初に存在していれば足 り、保険事故発生時にまで存在することは要しないとして、上訴を棄 却したのである。この判決は、被保険利益の存在を必要とする時期に ついての先例として、以後引用されている。また、アメリカ法制にお ける被保険利益の生成・展開について、旧いコモン・ローか、イギリ スの1774年生命保険法が適用されるとしている点で注目されるもの である。しかし、この判決は、金銭的利益は被保険利益を構築すると 明示するものの、他にどのようなものが被保険利益を構築するかにつ いては詳しく論じておらず、後の判例によってこの点が明らかにされ て行く。 アメリカにおいて、生命保険契約における被保険利益概念の説明に 39) しばしば引用されるのは、ワーノック対デービス事件におけるフィー ルド判事の定義であろう。この判決は、生命保険契約における披保険 利益について、これまでのコモン・ローおよび判例をまとめ、被保険 利益が何によって構築されるかについて述べたものである。 「ここでいう利益の期待とは、かならずLも金銭に見積もることが できる必要はない。というのは、両親は自分の子供の生命に被保険利 益を持っているし、子供は逆に自分の親の生命に被保険利益を持って いる。また夫は自分の妻の生命に、また妻は逆に自分の夫の生命にそ れぞれ被保険利益を持っているからである。このような自然にでてく る情愛は、被保険者の生命を守るうえで他のいかなる思いやりよりも −76− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 強力なもの−より効果的に働くもの−とみなされている。しかしなが らあらゆる場合において、被保険者が生存し続けることによって恩典 とか利益を得ようとするには、当事者相互の金銭上の関係あるいは血 縁または婚姻関係といった関係に基づく適正な根拠がなければならな い」。 この定義は、被保険利益というものは、必ずしも金銭的なもの(Pecu・ niaryInterest)にかぎらず、血縁関係、婚姻関係による情愛等も被保 険利益たりうるとしている。これは、生命保険契約の本質が損害填補 契約でない点から導き出されるが、イギリス法の態度が、金銭的利益 (しかも、法的義務ないしは権利に基づくものであること)から大き く踏み出すことをかたくなに拒んでいるのに対して、対照的な概念の 定義となっている。また、このような定義をすることにより、被保険 利益概念の曖昧さをもたらす結果ともなっている。保険の対象が人の 生命であって、一律に数量で評価することが不可能なものとなり、質 の問題をも考慮する必要が出てくる。利益主義が批判される所以でも ある。 英米法系諸国の採用する利益主義は、これまで同意主義を採用する 立場から次のような批判を受けてきた。例えば大森博士は、「英米法上 は、基本的には被保険者の生死につき金銭上の利害関係を有するもの に限りこれらについて保険契約をなしうる、と解されている。しかし、 この種の被保険利益の存在は、色々の場合に擬制され、またその存在 は契約成立時においてのみ要求され、契約存続のための要件ではない と解されるなど、実際上、被保険利益を必要とする法則のもつ意味は 40) 極めて弔いものとなっている」と指摘する。また、西島教授も、「この 主義においても、配偶者相互間など特定の場合に利益の存在が推定さ れるだけでなく、利益の存在は契約成立時において要求されるだけで、 ー77− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 41) 契約存続の要件とはされていないので、徹底したものではない」と述 べる。 このような批判にもかかわらず、アメリカ法制では、一貫して利益 主義が採用されており、コモン・ローを基礎として、制定法による被 保険利益の定義が設けられている。次にこれを検討することにしよう。 (3) 制定法による被保険利益 それでは、被保険利益に対する制定法の態度はどうであろうか。こ こでは、その代表的なものとしてニュー・ヨーク保険法とキャリフォー ニア保険法を見てみることにしよう。 42) ニュー・ヨーク保険法は、その3205条(a)(1)において、 「本条において被保険利益(insurableinterest)とは、つぎのものを いっ。 (a)血縁または法律上の近親者の場合においては、愛情・愛着から生 じる実質的な利害関係。 (b)他人の場合においては、被保険者の生命、健康および身体上の安 全性を持続させることに法的および実質的な経済上の利害をもっ こと。被保険者の死亡、就業不能もしくは負傷によってのみ生じ たり、価値の高まるような利害関係とは区別される。」 と規定している。 43) 次にキャリフォーニア保険法は、その10110条で、 「すべての人は、[次の人の]生命および健康に関し、被保険利益を 有する。 (a)彼自身 (b)彼が、その養育または援助の全部または一部を依存している人 (C)彼にたいし金銭による支払い、または財産、または役務の提供 −78− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) に関し法律上の債務を負っており、その人の死または病気がそ れらの実現を遅らせまたは妨げられるであろう人 (d)いかなる財産または既得権が、その人の生命いかんで決する 人。」 と規定する。 これらニュー・ヨーク州およびキャリフォーニア州の両規定を見て みると、ニュー・ヨーク州に関しては、破保険利益の概念を、近親者 のそれに限り、愛情・愛着など金銭評価の困難なものにまで拡張してい 44) ることがわかる。しかしながら、近親者以外については、ニュー・ヨー ク、キャリフォーニア両州ともそれを制限し、実質的利害関係(金銭 的評価になじむもの)に限定している。 このような規定によると、アメリカ法制における他人の生命の保険 の利用範囲は、同意主義を採用する我が国のそれとは全く同一平面で 考えることはできないにしても、日本においては、被保険者の同意の 有無だけで決せられるものであることから見ると、日本におけるそれ と比べてかえって狭いものといえるのである。 (4) 判例の集積による被保険利益の概念 それでは、この被保険利益の概念を明確にするために、判例に現わ 45) れたところから摘出してみよう。 (1) 本人 すべての人は自己の生命につき無限大の被保険利益 46) を有しているとするのが一般的な判例の考え方であるが、実 務上は財産状況等を調査して、保険の掛けすぎを防止してい 47) るという。キャリフォーニア保険法10110条(a)は、自己の 生命について披保険利益を有することを明言している。 ー79− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) (2) 夫婦間相互 夫は妻の、妻は夫の生命に関し被保険利益を 有する。この場合、被保険利益を構築するものが愛情・愛着 であるのか、それとも金銭的なものであるかということが問 題となる。一般的には愛情・愛着によるものと考えられてい るが、判例のなかには、金銭的利益の存在がなければならな 48) いとするものがある反面、夫は妻の生命につき当然に金銭的 49) 利益を有するという結論をとる判例も存在している。この夫 婦関係は、かならずLも法律上の婚姻である必要はないとさ 50) れている。 この夫婦関係では、離婚の効果を検討しておく必要がある。 一般的には、自己の配偶者の生命に関する被保険利益は、離 51) 婚によって消滅するものと考えられている。しかし、離婚判 決の内容によって、夫が何らかの扶養義務を負っている場合、 その扶養義務の継続する期間は、他に彼の債務を担保する財 52) 産の無い限り、被保険利益を有するとされる。もちろん、被 保険利益は、契約締結時に存在すれば足りるのであるから、 保険契約締結後に離婚をしたとしても、離婚した妻は保険金 を受け取ることができる。しかし、離婚によって保険金受取 53) 人の地位を否定する州もある。 婚約関係においては、その婚約契約が有効であり、それに 関する法の規定が反対でない限り、婚約した女性は相手方の 54) 男性の生命に関し被保険利益を有するという判例がある。 (3) 親と子 親は子の、子は親の生命に関し被保険利益を有す る。この関係についても、夫婦相互間と同じ様な議論がある。 すなわち、親と子という血縁関係だけから被保険利益の存在 を認めるのか、それともこれだけでは不十分であって、金銭 ー糾)− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 的利益の存在が必要とされるのかである。この関係について 55) も、先の夫婦の場合と同様に判例は一致していない。もっと も、数多くの州における最近の判例の傾向では、両親は子の 生命に関し、道徳及び自然の愛情に基づく被保険利益が存在 56) しているとされている。しかしながら、他のいくつかの州に おいては、両親は子の生命に関し、金銭的利益を有していな 57) ければ、被保険利益の存在は否定的である。このことは、逆 に子が両親の生命に関し被保険利益を有するか否かという点 58) についても同列である。この親と子との関係については、真 実の親と子である必要があり、継父母と継子との間では、金 銭的利益の存在が無い限り被保険利益の存在は認められない 59) のが通例である。 (4) 祖父母と孫 祖父母と孫の関係においては、一般的な傾向 60) は見出し難い。血縁関係だけで被保険利益を認める判例があ る一方、それだけでは足りず、金銭的利益を要求する判例も 61〉 ある。 (5) 兄弟、姉妹 兄弟、姉妹間では、金銭的利益の存在を要求 することなく、被保険利益の存在を認めるのが一般的な傾向 62) 63) であるが、この場合でも金銭的利益の存在を要求する判例も ある。 64) (6) 叔父・叔母と甥・姪 判例は分かれている。一般的な傾向 65) は金銭的利益の存在を要求しているようである。 そして、これ以外の血縁関係については、判例はおおむね一致して 血縁関係それのみによっては被保険利益の存在は認めておらず、金銭 的利益の存在が認められなければならないとしている。姻族関係につ いても同様であり、金銭的な利益の存在がなければ被保険利益の存在 −81− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 66) は認められていない。したがって、血縁関係にない者については論を 待たない。 このように、アメリカ法制における被保険利益は、州によって異な り、また、同じ州であっても相反する判例が存在するなど、統一的定 義(どの範囲の肉親であれば、その血縁関係に基づく感情・愛情が被 保険利益を構築するかについて)の不存在が問題となっている。この ことは、州を越えて保険取引を行なう生命保険会社にとって、ある州 では被保険利益を認められた血縁関係が、ある州では被保険利益を認 められないなど、保険契約の引受けにあたって大きな障害をもたらす こととなる。また消費者にとっても、被保険利益を有していると信じ て契約した生命保険契約が、被保険利益の欠落を理由として無効とさ れたりし、思いがけない結果をもたらすことにもなる。そのようなこ とから、被保険利益の統一的定義(被保険利益に関する統一法)の必 67) 要性が主張されている。 (5) 被保険利益を有しなければならない者 この被保険利益の議論に関しては、いままで、どのような内容が被 保険利益を構築するかという議論に関心が注がれてきたが、誰が被保 険利益を有しなければならないのかという問題が残されている。 他人の生命の保険においては、4名の異なった人間がその契約のな かに表われうる。それは、保険者、保険契約者、被保険者そして保険 金受取人である。問題は、保険契約者と保険金受取人のいずれが(あ るいは両者ともが)被保険利益を有することが必要かということであ る。このような議論はイギリスにおいては全く見られない。先に検討 した1774年法第1条が、明確に保険契約者についてこの被保険利益を 要求しているからである。しかしながら、アメリカ法制においてはこ −82− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) の点が不明確であり、州法の規定は一致していない。 ここでは、完全に相反する規定となっているニュー・ヨーク州と、 キャリフォーニア州の規定を見てみることにしよう。 68) ニュー・ヨーク保険法3205条A(1) 「当該契約による給付が、その被保険者、その遺産管理人、または 契約締結当時にその者について被保険利益を有したものにたいして 支払われるのでない場合には∼略∼他人の生命につき保険契約を付 しまたは付させてはなちない」 ニュー・ヨーク州法は、保険契約者ではなく、保険金受取人に対し て被保険利益の存在を要求している。 69) キャリフォーニア保険法280条 「もし保険契約者が被保険利益を有していないならば、その保険契 約は無効である」 キャリフォーニア州法は、保険契約者に対して被保険利益の存在を 70) 要求している。 この点に関する学説の態度は明らかではない。「一般原則として、他 人の生命に保険を付する者(保険契約者)は、被保険利益を有してい なければならない。しかしながら、もし保険金受取人がそのような利 益を有していたならば、保険契約者は被保険利益を有することを必要 71) とされないと判断されている」と述べるものや、端的に「被保険者の 生命に関し被保険利益を有しなければならないのは保険金受取人であ 72) る」と述べるものがある一方、「他人の生命に有効な保険を獲得するた めには、その人は他人の生命に被保険利益を有していなければならな 73) い」と述べるものがある。また、このような状況は、当然に判例の不 一致を生ぜしめている。 例えば、ミズーリ州の判例であるが、レーキン対ボスタル・ライフ・ −83− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 74) カジュアルティー保険会社事件は、保険契約者に対し披保険利益の存 在を要求しているが、反対にテキサス州のノース・リバー保険会社対 75) フイシャー事件では、保険金受取人に対して被保険利益の存在を要求 しているのである。 このような問題も、先の被保険利益と同じ様に、多くの障害を巻き 起こす要因となる。 13) イギリスにおける被保険利益について詳しく論じたものに、Merkin.(hmbling わ㌧加地肌用α−A s短め1〆〟わ上潮主A捌肌抑αノk「〃74,9AN。L。−AM.LREV. 331(1980)[hereinafter Merkin].がある。また、J.BIR。S,MoDERNINSURANCE LAW(2 d ed1988)[hereinafter BIR。S]24頁以下、MA。G]LLIVRAY &PARKIN。,。N ON INS。RAN。E LAW,(7thed,M.PARKINGTON1981)[hereinafter PARKIN。,。N]28頁以下も、 イギリスの生命保険における被保険利益について詳述している。なお、コモンウェル ス諸国においては、被保険利益についての改革が進み、ニュー・ジーランドは、1985 年の改正によって、生命保険契約は、被保険利益が欠落していたとしても、それだけで は無効とはならないと規定するにいたった。I。S。RAN。E LAW REF。RM AcT1985,SE。6. このニュー・ジーランドの法改正については、Tarr.わざ〟和乃Cg上α相月顔)〃招,11 NEW ZEALAND UNNEJtSITIES LAW REVlEW 362(1985),を参照されたい。なおオーストラ リアは、ニュー・ジーランドとは異なり、被保険利益を構築する関係を規定するとい う改正を行なった。INSURANCE C。NTRA。TS A。,1984.SE。19.,この改正については、 F,MARKS &A,BALLA.G。I。EB。。K,。INSURA。CE LAW LN Aus,RAL.A(2d ed.1987) 460頁以下を参照されたい。 14) どちらが披保険利益を有しなければならないかについて、制定法の規定や判例は 分かれている。この点については、本章(5)において検討する。 15)W.VAN。E.HAND。。。K,。N,HE LAW。FINSURANCE183(3d ed,B.Anderson1951) [hereinafter VAN。E].なお、ニュー・ジャージ州は、生命保険契約において被保険利 益を要求するコモン・ローは存在しないとして、その必要性を認めていなかったが、 1971年の法改正(N.J.Ins.Law§17B 24−1)によって、他の州と同様に被保険利 益の存在を要求するにいたった。ところで、ウィスコンシン州法は、保険契約者が被 保険者の生命に関して披保険利益を有していなかった場合、または被保険者の同意が なかった場合であっても、それのみによっては保険証券は無効とはならないが、保険 ー84− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 金は指定された保険金受取人以外の者に与えることができると規定する。Wzs.STAT. ANN.§631.07(4)(West1980&Supp.1987). 16) VANCE,SuPra note15at183,R.KEET。N,BASIC TEXT。FINSURANCE LAW lO8(1971)[hereinafter KEET。N].なお、テキサス州の判例であるが、保険事故発生時 にも被保険利益の存在が必要であるとするものがある。Moody v.Empire Life Ins.Co.ofAmerica,570S.W.2d450(Tex.1978). 17) BlRDS.S2ゆ和nOte13at24,MerkiTl,SWra note13at331.332.PAR.uNGT。N, SZゆm note13at8.VANCE,Slゆn note15at184. 18) B,.tDS.Sゆra note13at24. 19) この法は、同時に「Gambling Act」賭博禁止法としても知られている。また、こ の法は現行法である。 20) この条文の完全日本語訳は、森啓二、横尾登米雄、葛城照三、アイバミー・英国 保険法(損害保険事業研究所・昭45)付録1頁以下にある。 21) B.mS,Sz¢n note13at26,Merkin.sz¢TU nOte13at337.なおここで提示し た2つの疑問の他にも、披保険利益の欠落した保険契約の効果や、第2条の要求する、 披保険利益を有する人間の名前が保険証券上に表示されなければならないとする規定 をかい潜り、実際に保険を付したものの名前が保険証券上に表示されなかった場合の 効果についての疑問も提示されたが、ここでは検討を省略する。 22)Godsallv.Boldero(1807)9East.72.、103E.R.500.この判決は、後のHenson V.Blackwell(1845)4Hare,434,67E.R.718.の先例となった。しかしながら、こ の判決に対する批判は厳しく、この判決にもかかわらず、保険会社は保険事故発生時 に被保険利益が消滅していた場合でも保険金を支払っていたという。BIR。S,劫妙昭 note13at27.Merkin.swn note13at340.341.三宅・前掲論文注2)269頁 23) Dalby vIndia and LondonLifeAssurance Co.(1854)15C.B.365,139 E.R.465.なお、この判決は、アメリオ=こおける披保険利益の必要とされる時期にっ ての先例ともされている。Connecticut Mut.Life.1ns,Co.,V.Schaefer,i痴 note33. 24) BIRDS,S2ゆYa nOte13at27.Merkirl,SWYU nOte13at342−345, 25) Merkin,SuPra note13at352. 26) Wainwright v.Bland(1835)l Moo.&R.481. 27) Griffiths v.Fleming(1909)l K.B.805. 28) BはDS,∫1ゆ和nOte13at29. 29) Harse v.Pearl Life Assurance Co.(1904)l K.B.558. ー85− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 30) Halford v.Kymer(1830)10B.&C.724.109E.R.619, 31) アメリカにおける生命保険の披保険利益について論じたものに、Patterson.bl・ surable hteYeSlin Lifb,18C。L。M.L REV.381(1918)[hereinafter Patterson] や、Salzman.h2Surablelnferestin Lifb bwurunce,1965INS,L.J.517[herein・ after Salzman]がある。 32)田中英夫・英米法総論上195.196頁、Best.Jr..DdiningInsuYUbLeIntereslin Lives,12 T。R,&lNS.L.J.104,107.(1986)[hereinafter Best].なお、厳しく金 銭的利益の存在を要求するイギリス法の態度に対し、合理的なものとは思われないと する判例がある。Woods v,Woods’Adm’r,130Ky.162,113S.W.79.81(1908) 33) Connecticut Mutual Lifelns.Co.V.Schaefer.94U.S.457(1877) 34) 〟at460,461.なお、判旨の訳にあたっては、意訳を行ない、かつ、必要と思わ れる語を補ってある。 35) 判旨はこのように述べるが、他の論文やテキストには、このように説明するもの を見出だすことができなかった。 36)1746年海上保険法(Marinelnsuranee Act1746)のことである。 37)1774年生命保険法(Life Assurance Aet1774)のことである。 38) Dalby v.India and London Life Assurance Co..Sゆn note23. 39) Warnock v.Davis,104U.S.775,779(1881).なお、この判決の日本語訳は、 生命保険経営学会、ヒューブナ一,ブラック 生命保険(第9版)94頁によった。 40) 大森・前掲書注2)268頁注(2) 41) 西島・前掲書注2)354頁 42) ニュー・ヨーク保険法の日本語訳は、岩崎 稜 監訳 生命保険文化研究所訳 ニュー・ヨーク州保険法 による。条文番号は、1984年の改正によった。 43) キャリフォーニア保険法の条文は、Deering’s Annotated CaliforniaInsurance Code(Bancroft−Whitney Co.1976&Supp.1987)による。日本語訳は、私(福 田)の試訳であり、若干の意訳をしてあるので、原文を次に掲げることとする。 §10110.Insurableinterest Every person has aninsurableinterestin thelife and health of. (a)Himself (b)Any person on whom he depends wholly orin part for education or SuppOrt (C)Any person under alegal ob】igation to him for the payment of money Or reSPeeting property or services,Of which death orillness might −86− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) delay or prevent the performance. (d)Any person upon whoselife any estate orinterest vestedin him depends. 44) キャリフォーニア州は、金銭的利益に限定する数少ない州のうちの一つである。 Rudellv.Bd.of Admin.of Employees Retirement Sys.,8Cal.2d600,66 P.2d1203(1937).そのほかは、ノースダコタ州が、金銭的利益に限定しているよう である。Best.supn note32atlO6,107 45) 披保険利益の有無が争われた事件は多数あり、細かい例については、3G.C。U。H. CYCL。PEDIA。FINSURANCE LAW(2d ed.R.Anderson:rev.M.Rhodes1984 & Supp.1987)[hereinaEter C。UCH]218頁以下、2J.AppLEMAN,INSURANCE LAW AN。 PRAC,.。E(Rev,ed.Jean Appleman1966&supp.1987)[hereinafter A,PLEMAN] 103頁以下を参照されたい。 46) VANCE,Slゆm nOte15at188. 47) S.HuE。NER&K.BLA。K.Jr.LIFEINS。RANCE,160(10th ed,1982)[hereinafter Black]. 48) Charter Oak LifeIns.Co.,V.Brandt,47Mo.419(1871). 49) Currier v.Continetal LifeIns.C0,,57Vt.496(1885). 50) Common−in Law Marriageで足りるとされている。National Life&Acc Ins,Co.V,Thompsonl53S,W.2d322(Tex1941). 51) 3C。。。H,SZゆYa nOte45at219. 52) Trornp v.National Reserve LifeIns.C0.,143Kan,98,53 P,2d 831(1936). 53) ミシガン州は、離婚の際に特別な合意のない限り、離婚によって保険金受取人の 地位を失うと規定する。M.。H・C。M,・LAWS・ANN§552.101(West1982&Supp. 1987). 54) Davenport v.Servicemen’S Group Lifelns.C0..119Ga.App.685,168S. E.2d621(1969). 55) 3C。UCH.SuPYa nOte45at223. 56) この点の先例とされるのが、デービス事件である。Warnock v.Davis,SuPYtl note39. 57) Prudential Lifelns,Co.V.Hurln,21Ind,App,525,52N.E,722(1899) 58) 3C。。。H,SuPYU nOte45at226 59) Commonwealth LifeIns.Co,V.Wood’s 一g7− Adm’X,263Ky.361,92S,W2d 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 351(1936). 60) AetnaLifeIns.Co,V.France,94U,S.561(1877). 61)Burton v.Connecticut Mut.liLeIns.C0.,19Ind,207.21N.E.746(1889) 62) 3 C。。。H,SWYU nOte45at229. 63) Gulf LifeIns.Co.V.DaviS,52Ga.App.464,183S.E.640(1935). 64) Best.supra note32atlO9. 65) 3C。UCH.SuPra note45at232. 66) 〟.at236. 67) Best,SWru note32atll0−112. 68) 日本語訳は、前掲注39・岩崎監訳ニュー・ヨーク保険法による。 69) 本条文も私の試訳であるので、原文を次に掲げる。 CAL・INS・C。。E§280(Deering1976&Supp.1987) Necessity for lf theinsured has noinsurableirltereSt.the contractis void, 70) この点については、キャリフォーニア州においてC.L.U.(CharteredLifeInsur・ ance Underwriter)として活動しているグI)−ン氏へのインタビューの際にも確認し ている。 71) BLACk.SuPra note47at160 72)J.GRE,DER‘‘(et al,)”,LAW AND THE LIFEIJVS。RANCE C。N,RACT.169(5th ed, 1984). 73) KEET。N,S14)ra nOte16at121.3C。UCN.SZゆTU nOte45at203. 74) Lakin v.Postal Life &Cas,Ins.C0.,316S W.2dlO58(Mo1958). 75) North RiverIns Co.V.Fisher,674S.W.2d951(Tex1984). ーお− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 76) 3 披保険利益主義における被保険者の同意 (1) 判例に見る被保険者の同意 利益主義を採用するイギリスにおいては、被保険者の同意を他人の 77) 生命の保険契約に要求してはいない。1774年の生命保険契約法は、被 保険者の同意を要求してはいないし、それ以前のコモン・ロー上も、 また、判例のなかにも被保険者の同意が要求された形跡は見当たらな い。しかしながら、イギリス法を継受したとされるアメリカ法制にお いては、他人の生命の保険契約が、被保険者の了知または同意を得る ことなく獲得されたものであるときには、たとえ保険契約者が披保険 78) 利益を有していたとしても無効であるとするのが原則である。 この被保険者の同意がいつごろから、そしてどのような理由からア メリカにおいて要求されるようになったのかについては、走かではな い。しかし、その手掛かりとして、1893年、1897年及び1900年のケ ンタッキー州の判例がある。 同意に関するおそらく最初の判例と思われるのが、メトロポリタン 79) 生命保険会社対レインケの事件である。 事実は次のようである。原告の妻は、原告の同意を得ることなく、 夫の生命に保険を付した。そして、家事のためにと渡されていたお金 から保険料を支払った。そのことに気付いた夫が保険料の返還をもと めて保険会社を訴えた。裁判所は夫の請求を認め、保険会社に対して 保険料の返還を命じた。その理由は、生命保険契約は、一身専属的契 約(PersonalContract)であり、被保険者の了知または同意無しに締 結することはできない。そのような契約は強行不可能なものであり、 無効であるというのである。次にメトロポリタン生命保険会社対モノ 80) バン事件を見てみよう。事実はレインケ事件とほぼ同じである。裁判 ー89− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 所は次のように判示して、保険会社に対して保険料の返還を命じた。 「他人の生命に開し、被保険者の了知または同意無しに生命保険契約 を獲得することは確実に公序(Public Policy)に反する。妻は夫の生 命について被保険利益を有しているが、しかし、彼の了知または同意 無しには夫の生命に保険を付することはできない。夫もまた、妻の生 命に関し、その了知または同意無しには、妻の生命に保険を付するこ とはできない。もしそのようなことがほしいままにされるとするなら ば、それは、犯罪を多く生む温床となるであろう」。 81) メトロポリタン生命保険会社対スミス事件も、事実は前の二つの判 例と同じであるが、裁判所は、そのような保険契約は違法でかつ無効 なものであると判示している。 このようにケンタッキー州の判例は、公序を理由として、被保険者 の同意無しに獲得された生命保険契約は公序に反し無効かつ違法なも のとしている。しかし、この同意に関する公序原則がその源を何処に 求めているのかについては何ら触れていない。しかし、モノバン事件 が犯罪(保険金殺人)防止のためと述べている点が注目される。とこ ろで、既に検討したように、イギリス法が、他人の生命の保険契約に 関して被保険者の同意を全く要求していないことから、この被保険者 の同意の要求は、アメリカにおいて全く独自に生成・展開してきたルー ルということができるであろう。その意味において、これらケンタッ 82) キー州の判例は重要な意味を有するものと評価できる。もっとも、こ れら3つの判例はいずれも妻が夫の生命に保険を付した事例であるが、 ケンタッキー州においては、1936年に、既婚女性法(Married Women’sstatute)が制定され、既婚の女性に関しては、被保険者の同 意無しに夫及び子の生命に保険を付することが認められたので、上記 の判例は、妻と夫及び子という関係に関してはその意味を失っている 一郭− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 83) が、同意を要求する本質については意味を失っていないと考えられる。 (2) 制定法に見る被保険者の同意 それでは、この被保険者の同意に対する制定法の動きはどうであっ たろうか。ケンタッキー州や、マサチュウセッツ州の判決の後、20世 紀の中盤になってから、各州において制定法によって被保険者の同意 を要求し始めている。例えば、デラウェア州(1940)や、ネブラスカ 州(1936)、ペンシルヴェイニア州(1938)、ニュー・ヨーク州(1940) などにおける立法がそれである。これらの制定法は、書面による被保 84) 険者の同意を要求していた。 これらの判例や立法の動きを受けて、現在はニュー・ヨーク州、 ジョージア州など多くの州が、制定法により被保険者の同意を要求し 85) ている。ここで、いくつかの立法例を検討してみることにしよう。 86) ニュー・ヨーク保険法3205条(C) 「人保険契約は、本法に規定する団体生命保険、団体もしくは包括 傷害・健康保険契約または家族保険を除き、その契約の締結時に成 年であるかまたは契約締結の能力ある被保険者がその申込みをし、 または契約締結のために書面による同意を与えていないかぎり、締 結ないし発効させてはならない。ただしつぎに掲げる場合はこの限 りでない。 (1) 妻または夫は、その妻または夫に付ける保険契約を発効 させることができる。 (2) その最近の誕生日において15才未満の未成年者の生命に ついて被保険利益を有する者、またはその未成年者を扶養 している者は当該契約に通用される第3207条所定の限度 ー91− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 額を越えない範囲で、その未成年者の生命に付ける保険契 約を有効に締結することができる。」 ニュー・ヨーク州法の同意に関する規定は、他の州に影響を及ぼし、 87) 非常ににかよった立法が各州でなされている。そしてそのいずれもが、 契約締結時または契約発効前に、被保険者の書面による同意が要求さ れていることが注目される。このニュー・ヨーク州の規定と異なった 規定をしているのがウィスコンシン州である。 88) ウィスコンシン法631.07条(披保険利益と同意) 「(1)被保険利益 いかなる保険者も、保険の目的に関し被保険 利益を有しない人に対しその事実を知りながら保険証券を発 行してはならない。 (2) 3項の場合を除いて、いかなる保険者も、その人の生命も しくは健康が保険の対象とされている以外の人に対して、保 険の対象とされている人が、その保険証券の発行に対して書 面による同意を与えることなく保険証券の発行をしてはなら ない。同意は、保険の申込み書に対して、その契約の本質を 知りサインをすることによって、あるいは他の合理的な方法 によって表現されてもさしつかえない。 (3) 同意の不要な場合または他の者によって与えられてもさし つかえない場合 (a)同意は不要である 以下の場合、生命保険または高度障害保 険は、同意無しに購入が可能である。 1.扶養者は、法的能力を有しない被扶養者に保険を付するこ とができる。 2.債権者は、自己の支出において、債務者に関しその債権額 ー92− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) と合理的に関連した保険金額の、生命または高度障害保険を 付することができる。 3.同居の親族または扶養家族に生命保険または高度障害保険 を付することができる。 4.保険契約者が法的または道義的に支出を負うであろう損害 填補のために、高度障害保険を購入することができる。 5.保険庁長官は、合衆国大陸外において、公務のために従事 している人に、限定された期間の生命または健康保険の保険 証券の発行を認める公布を成すことができる。そのような場 合、保険契約者は、被保険者に血縁または婚姻によって親密 な関係になければならない。 (b)被保険者以外の者による同意 同意は、以下の場合、他の者 によって与えられることができる。 1.両親、後見人、もしくはセクション48.02(12)に規定され る法的保護者は、その扶養する子に付保する保険証券の発行 に同意をすることができる。 2.祖父母は、その孫に付保する生命または高度障害保険の保 険証券の発行に同意をすることができる。 3.第一審の裁判所(Court of GeneralJurisdiction)は、そ のような保険を正当化するような事実を示す一当事者からの 申込みがされたときは、同意を与えることができる。」 このように、ウィスコンシン州法の同意に関する規定は、原則とし て書面によることを要求し、かつ、保険証券発行の前に同意を要求す るという点では、ニュー・ヨーク州法の規定と同じであるが、書面以 外の合理的な方法による同意を認め、また、同意要求の例外を広く認 ー93− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) めている点で大きく異なっている。とりわけ、債権者に対し、被保険 者の同意無しに、自己の負担で債務者の生命に債権額と合理的な関連 を有する保険金額の保険を付することを認めていることは注目される。 これは、債権額と合理的な範囲であれば、賭博保険となる危険性は少 なく、モラルリスクも大きくないと考えられたためであろうが、たと え債権額と等しいものであっても、債権者は、債務者の早い死によっ 89) て利得するのが通常であるという批判や、他に債権を担保する方法を 90) 債権者と論じる道を残すべきであるという批判を併せ考えると、疑問 のある規定といわざるをえない。その他の点では、かなりきめの細か い規定をしており、考慮に価するものであろう。 (3) 同意の方式 さて、被保険者の同意が要求されている場合、その同意は書面によ ることが必要なのか、それとも口頭によるもので足りるのかというこ とが問題となる。この点については、制定法の多くが書面によること を要求しているが、そのような規定がない場合はどうか。また、制定 法で書面によることが要求されていたとしても、それ以外の同意は認 められる余地がないのかということである。残念ながら、制定法によ る同意の規定を欠いた場合の、同意の方式について争われた判例を見 出すことはできなかった。しかし、制定法が書面による同意を要求し ている場合に、書面によらない同意(電話による承諾)が、認められ るか否かが争われた事件がある。それは、ジョージア州法が通用になっ 91) たレン対ニュー・ヨーク生命保険会社事件である。事実の概要は次の ようである。 離婚した妻が、自己を保険契約者兼保険金受取人、別れた夫を被保 険者とする生命保険契約を保険会社との間で締結した。その申込み書 一朗− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) に被保険者はサインをせず、保険契約者がサインをしたということに 争いはない。保険契約者の主張によれば、彼女は別れた夫に電話をし、 その申込み書にサインをする権限を口頭によって得たというのである。 被保険者は死亡したが(被保険者は、保険契約者によって殺害された が、それは正当防衛によるものであったことが認められている)、保険 会社は被保険利益が存在しなかったこと、そして被保険者の同意がな かったこと等を理由に保険金の支払いを拒否した。そこで離婚した妻 が保険会社を相手に保険金支払請求の訴えを提起した。第一審は原告 敗訴、そこで原告が上訴したのが本件である。連邦高裁は、ジョージ ア州法は、被保険者の同意につき、公序原則が了知または同意を要求 しているのをさらに進め、書面によることを要求していると認め、被 保険者の同意につき、電話によって被保険者が与えた承諾(保険契約 の申込書にサインする権利を与えた)は、ジョージア法の要求してい る被保険者による書面による同意を構成せず、有効な保険契約は存在 していなかったと判示した。 (4) 同意の時期および相手方 次に、被保険者の同意が何時要求されるのか、そして同意の相手方 は誰であるのかについて検討することにしよう。同意の時期について は、ニュー・ヨーク保険法は、保険契約締結のときまたはその発効の 92) 前に被保険者の同意が存在しなければならないと規定している。これ にたいしてウィスコンシン州法は、保険証券発行の前に被保険者の同 93) 意が必要であるとする。このように両州の規定は、同意の必要とされ る時期について少なくとも保険契約が発効する前には(保険証券の発 行は、通常は保険会社の契約の引受けを意味する)必要であると明確 に定めている。 ー95− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) また、被保険利益と被保険者の同意は、賭博保険の防止と、道徳危 険の防止にその目的があり、被保険者を保護するために必要とされる のであるから、その存在が必要とされる時期については、パラレルに 94) 考えるのが妥当であり、それが一般的な態度であるといえる。 もっとも、判例のなかには、被保険者の同意の必要とされる時期に ついて、かならずLも同意は保険証券発行の前に与えられる必要はな く、発行の後に与えられても差し支えなく、保険契約は無効とはなら 95) ないとするものもある。 同意の相手方については、保険会社と考えるのが原則である。 ニュー・ヨーク保険法およびウィスコンシン法は、保険会社にたいし て同意の無い保険契約の締結または発効と保険証券の発行を禁止して おり、保険会社に対して被保険者の同意が与えられる必要があること を示している。もっともこの被保険者の同意については、アメリカに おける一般的な実務として、生命保険の申込み書には、被保険者のサ インが要求されており、このことからもアメリカにおいては、同意に 96) ついて被保険利益ほどの問題は生じないとされる。 (5) 同意要求の例外 このように、アメリカ法制においては、他人の生命の保険契約にお いては、被保険者の同意が必要とされているが、同意が要求されない 場合が存在する。 ニュー・ヨーク保険法のように、配偶者相互間や、未成年者の生命 97) に保険を付する場合を例外とするのが一般的であるが、ウィスコンシ ン州法は、独特な規定となっていることは既に検討した。 しかし判例のなかには、被保険者の同意が存在していなくとも、保 険契約は有効であるとしたものがある。ディクソン対ウエスタン・ユ 一%− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 98) ニオン保険会社事件がこれであり、事実の概要は次のようである。原 告ディクソンの子は、ベトナムにおいてサービスマンとして従事して いた。被告保険会社は、原告に対して生命保険契約の申込み書を送付 した。その申込み書は、海外において公務に従事している子をもつ両 親に対して、その子を被保険者とする生命保険契約を締結することを 勧誘するものであった。原告はその申込み書に必要事項を記入し、第 一回目の保険料を同封して保険会社に送付した。原告の子は、保険契 約の効力発生の日、ベトナムにおいて死亡した。原告は保険金の請求 をしたが、保険会社は支払いを拒絶したので、訴えを提起した。第一 審は原告勝訴。そこで被告保険会社が上訴したのが本件である。保険 会社は、保険契約が被保険者の同意無しに締結されたものであること から、当該保険契約は公序に反して無効であるというのである。サウ スキャロライナ最高裁は、たとえその保険契約が被保険者の了知と同 意無しに締結されたものであったとしても、本件においては、被保険 者が海外に居り、被保険者の生命は、その保険契約の存在のために、 両親の手による危険にさらされるものではなかったことから、無効と はならないとして、保険金の支払いを保険会社に命じたのである。 この判決を同意要求の例外として位置付けることが妥当かというこ とと、この判決の射程距離がどこまでかということは、一概には言え ないが、同意と公序原則について判断を下している点で注目される。 ただこの判決は、一種の救済判決と読むことも可能であり、これから この判決がどのように先例として位置付けられて行くかについて注目 したい。 (6) 同意の撤回 さて、被保険者は、一旦与えた同意を撤回することはできないのだ ー97− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) ろうか。この点に関する制定法の規定は存在しないようである。ただ 旧い判例であるが、ニュー・ヨーク州に、この点を論じたものがある。 99) ペッカム対グラインドレイ事件がこれである。事実の概要は次のよ うである。ペッカムの妹は、兄を被保険者、自己を保険金受取人とす る保険契約を締結した。妹は、23年間にわたり保険契約を継続してい た。兄は、妹及び保険会社に対し、妹が自分にたいして敵意を抱くよ うになったことを理由として、生命保険の継続中止を衡平法上の請求 によって求めた。これにたいして妹が異議をとなえたので訴訟となっ た。裁判所は、この保険契約の有効性について、被保険利益の点から 若干の疑問を抱いたが、この保険契約が23年の長期にわたって継続さ れていた場合、衡平法裁判所はその不継続を命令するすべを有しない。 そして被保険者は、その保険契約に関して彼の同意を与えたことから、 そのような訴えを提起することを禁反言原則によって禁止される。と 判示した。また裁判所は、妹の敵意によって彼が危険になったという 主張は証拠がないと指摘したのである。 この判決は、争いとなった保険契約が長期間に亘って継続されてい たこと、そして彼の主張する妹の敵意が彼を危険におとしめる事実が なかったことを理由として同意の撤回を認めなかったが、もしこのよ うな敵意が実際に存在し、そして彼を危険に陥れるものであったこと が証明されていたならば、同意の撤回は認められたと考えることがで 100) きよう。すなわち、契約を継続させる合理的な理由があるか、相当性 があるかという点がこの判決のポイントであって、保険契約の存在が、 特に被保険者を危険に陥れるものであるならば、一度与えた同意で あっても、これを撤回することが可能だというニュアンスを残してい る点で注目されるのである。 このペッカム対グラインドレイ事件と同様に、被保険者の同意の撤 一組− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 回について問題となった最近の判例が2つある。 101) まず、トレント対パーカー事件を検討してみよう。事実の概要は次 のようである。トレントは、イースト・ローン・メモリアル・ノヾ−ク 会社の株主であり、重要な従業員であった。被告会社は、トレントが 勤務していた時、トレントを被保険者、全社を保険金受取人とする、 総額35万ドルのキーマン保険を購入した。トレントは、後に会社を退 社し、自己の所有する株式も売却した。トレントは、被告全社が被保 険利益を有しないことを理由として、保険契約の取り消しを求めた。 第一審は原告の請求を認めたので、被告が上訴したのが本件である。 上訴春は、次のように述べて原判決を破棄した。 被保険利益については、会社は、重要な従業員の生命を保険に付す ことが認められており、そのようなものの生命に関しては被保険利益 を有している。そして、一旦契約が有効に成立したならば、のちに被 保険利益が消滅したとしても、契約を無効にするものではない、と判 示した。さらに、証拠によれば、契約の継続に対し異義を唱えている のは原告だけであり、しかも全社がその保険契約を継続することに よって、原告に対する切迫した危険や損害は存在しないとして、上訴 審は、保険契約の取消を認めた原審判決を破棄したのである。 次に、ミイバン対トランスアメリカ・オクシデンタル生命保険会社 102) 事件を見てみよう。事実の概要は次のようである。ミーバンは、自己 を被保険者、保険金受取人を妻コンスタンスとする生命保険契約をオ クシデンタル保険会社との間で締結した。のちにミーバンは、この保 険契約を妻に贈与し、妻に全ての権利を移転し、後の保険料は妻が支 払っていた。なお保険契約の所有権は信託に置かれた。それから後、 妻は、ミーバンの殺害を試みて逮捕された。そこでミーバンは、保険 会社に対して保険契約の取り消しを求めたが、保険会社はこれを拒絶 −99− 他人の生命の保険契約と保険会社の茜務及び責任(I) したので、ミーバンは訴えを提起した。第一審は原告敗訴、そこで原 告が上訴したのが本件である。上訴審判決は、別れた妻が彼を殺害し ようとして逮捕されたことのみを理由として、原告の生命を狙うとい う共謀の存在の証明無くして、被保険者は保険契約の取り消しを請求 できないとし、また、保険契約が存在することによって、原告の生命 に対する切迫した危険の存在は認められないこと、また、別れた妻が 原告の殺害を一度試みたことから、彼女が再度試みるという推定は十 分な理由がないこと、とりわけ、仮に彼女がそれに成功したとしても、 彼女は保険金を受け取ることはできないことなどを理由として、ミー ハンの上訴を棄却したのである。 このような判例を検討するかぎり、被保険者の同意の撤回は、先の ペッカム対グラインドレイ事件と同様に、結論としては認められな かったものの、保険契約が存在することによって、被保険者の生命に 対する切迫した現実の危険が存在していることを証明することができ 103) れば、それは認められる可能性があるといえる。しかしながら、現実 的には、どのようにその切迫した現実の危険の存在を証明するかは非 常に難しい問題であろう。 (7) 被保険利益と同意の関係 最後に、被保険利益と被保険者の同意の関係について検討すること にしよう。アメリカ法制においては、他人の生命の保険契約について 保険契約者(または保険金受取人)と被保険者との間に被保険利益の 存在することが必要であり、これを欠く保険契約は無効であるとされ る。さらに、被保険者の同意をも必要とされ、この同意を欠く保険契 約もまた無効とされる。それでは、この被保険利益と同意はどのよう な関係に立つのであろうか。常にこの二つが存在することが必要なの ー1(沿− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) か、それともどちらか一方が存在すれば足りるのかである。 この点について直接に規定した制定法は見当たらない。しかしなが ら、この点が直接の争点となった判例や、一般論のなかでこの点につ いて論じたものがある。そしてこれらの判例は一致していない。 まず、被保険者の同意のみが存在し、被保険利益が欠落した保険契 104) 約は賭博保険であり、公序に反し無効である。この点について、判例 の態度に不一致はない。 次に披保険利益は存在するものの、被保険者の同意を欠く保険契約 である。判例は分かれている。 まず、被保険者の同意が欠けていたとしても、真実の保険金受取人 が被保険利益を有していれば、保険契約は無効とならないとする判例 105) がある。ノース・リバー保険会社対フイシャー事件がこれである。事 実の概要は、一日だけ庭師(フイシャー)を雇った者が、その庭師の 生命に一日だけの傷害保険を購入した。その申込みにさいして雇用者 は、庭師の妻の正確な名前や、家族の有無もよく分からないと電話で 保険会社の代理人に述べたところ、保険会社の代理人はそのような場 合、雇用者を保険金受取人にすると伝えた。これに対して雇用者は、 その保険をフイシャーの家族のために購入すると述べたという。被保 険者は、作業中に怪我をし、その怪我がもとで後に死亡した。その保 険契約には医療費支払条項と死亡保険金支払条項があったが、保険会 社は医療費は支払ったものの、死亡保険金の支払を拒絶した。保険会 社は、雇用者が被保険者の生命に被保険利益を有していなかったこと 等を理由として支払を拒絶した。そこでフイシャーの遺族が保険金の 支払を求めて訴えた。第一審は保険会社が敗訴。保険会社が上訴した のが本件である。上訴審判決は、この保険契約の存在について、フイ シャーは何ら知らず、またその保険証券の発行について同意を与えて ー101− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) いなかったことを認定したが、被保険者の同意の欠落は、真実の保険 金受取人が被保険利益を有しているならば、その披保険利益に何の影 響も与えないとして、保険契約を無効とするものではないと判示した。 この判決はテキサス州におけるものであるが、テキサスは、制定法 による同意の要求を欠いている、従って同意の根拠は公序に求めるこ とになるが、この判決をどう読むかは問題である。すなわち、公序に よる同意の要求は、被保険利益が有効に存在していたならば、たとえ 同意が欠落していても、保険契約は何等影響を被らない(同意は重要 ではない)と宣言したものと読むべきか、それとも、一種の救済判決 と読むべきかである。今後この判決がどのような形で引用されていく かに注目したい。 また、同意要求の例外のところで検討したディクソン対ウエスタ 106) ン・ユニオン保険会社事件も、理由付けは異なるものの、フイシャー事 件と同様に、同意が欠落していても保険契約は無効とはならないと判 示している。 次に、被保険利益が存在していても、重ねて被保険者の同意が必要 であるとする判決である。メトロポリタン生命保険会社対モノバン事 107) 件がこれである。事実の概要は、妻が夫の生命に夫の了知または同意 無しに保険を付したという事例であり、夫が払込まれた保険料の返還 を求めて訴えを提起した。判旨は、妻は夫の生命について被保険利益 を有しているが、しかし、彼の了知または同意無しには、夫の生命に 保険を付すことはできないと判示した。この判決も、公序によって被 保険者の同意が要求された事例であるが、被保険利益と同意は相互に 関連する地位に立つものと判断したものと解される。 108) これに対して、ラミー対キャロライナ生命保険会社事件は、被保険 者の同意がなければ、被保険利益を有しないと判断している点で大き ー102− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) く異なる。ラミーの妻がラミーの生命に彼の同意無しに保険を付した。 後に妻は、夫を殺害して保険金を取得しようと試みたが、夫は傷害を 被っただけであった。そこで夫が保険会社を相手に不法行為に基づく 損害賠償の訴えを提起したという事例である。裁判所は原告の請求を 認め、さらに一般論のなかで、妻は夫の生命に関し、被保険利益を常 に必ず有しているとは限らない、と判示している。この判決は、被保 険者の同意がなければ、被保険利益を遺骨は有しているとされる者で あっても、被保険利益を有しないと判示したと読める。そうすると、 この判決は、被保険利益と同意の関係において、被保険者の同意を重 視するものといえよう。しかしながら、この判決には、被保険利益の 109) 原則にたいして大きな損害を与えるものだという批判がある。 このように二枚保険利益と被保険者の同意の関係を巡っての判例は、 一致していない。しかしながら、ここで最後に提示しておきたいのは、 被保険利益と被保険者の同意は、機能する面が異なるのではないかと いうことである。すなわち、被保険利益は賭博保険の防止に大きな効 果があるが、被保険者の殺害を防ぐ有効な手段とはなりえない。一方、 披保疲者の同意は、賭博保険の防止にたいしては、被保険利益に比べ ると効果的ではないが、道徳危険に関してはより効果的なものといえ 110) る。このような点から、被保険利益よりも被保険者の同意が重要であ 111) るとする指摘もある。また、そもそも被保険利益や被保険者の同意は、 保険会社ではなく、被保険者を守るための制度であるという点から見 ると、必ずしもノース・リバー保険会社対フイシャー事件やデイクソ ン対ウェスタン・ユニオン保険会社事件の判決を非難できない。従っ て、被保険利益と被保険者の同意は、どちらが優先するというのでは なく、互いに関連する位置に立つものであり、麻別として、その両者 が揃って存在することが必要であると考えるのが妥当であると思われ ー103− 他人の生命の保険契約と保疲全社の義務及び責任(I) る。 76)被保険者の同意について詳しく論じたものに、HarringDn.Co順融句/血御感 わあS枇αnce O鶴 五S上的αれdわのs Coれ納肌肋勘Ⅷ.Assoc.LIFEINS・Cou鵬EL 471(1941)[hereinafter Harrington]がある。 77) Merkin,SuPnnOte13at339.イギリスにおいては、被保険者の同意について 注E]する動きがある。たとえば、Merkinは、オーストラリアにおける法改正委員会の 報告書を紹介し、被保険者の同意は、如何なる保険契約においても、その有効性の先 行条件であるべきであるという主張は説得力かあるとし、その理由は、被保険者に対 して保険契約者との間で、その保険契約が望ましいか否かを話し合う機会を与えるこ とであり、また、そのような同意が殺人の危険を明らかに減ずるであろうし、一般的 には、人は、その生命に関する保険契約が存在することを知るべきであると述べる。 Merkin,SWru nOte13at339.また、BIRDSも、被保険者の同意は、披保険利益が消 滅した後の保険契約の契約継続に関して必要とされるべきであると述べる。BはDS, S坤堀nOte13at29. 78)VAN。E,SゆrdnOte15at207.なお、ウィスコンシン州法は、この一般原則と異 なる規定となっている 注15)参照. 79) Metropolitan LifeIns.Co v.Reinke.15Ky.L.Rptr.125(1893). 80) Metropolitan Life hs,Co.V.Monohan.102Ky.13.42S.W.924(1897). 81) Metropolitan LifeIns.Co v Smith,22Ky,LRptr.868.59S.W. 24(1900). 82) なお、これら一連の同意を巡る訴訟は、いずれも払い込まれた保険料の返還を求 めたものであり、同じような訴訟が多数提起されたという。これらを分析したものに、 Note,Co拇Sc柁1q/1ゐe Perso柁 勒ose上的is f柁S祝rcdαSαCoれdi五0邦qr 娩c 血脚御伽7‰縦勒56LR.A.585(1901).がある。 83) Harrington,S14,ra nOte76at483. 84) Jd.at486. 85) Best,Szゆra nOte32at105によれば、制定法によって被保険者の同意を要求し ているのは、29州とプェルトリコであるという。したがって、半数以上の州で被保険 者の同意が制定法によって要求されていることになる。 86) 日本語訳は、前掲注39岩崎監訳 ニュー・ヨーク保険法によった。 ー104− 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 87) ジョージア州や、ハワイ州などの規定は、非常にニュー・ヨークのそれに似てい る。 88) Wisconsin Statutes Annotated(West1980&Supp.1987)によった。この 条文も私(福田)の試訳であり、若干の意訳をしてあるので、原文を次に掲げること とする。 §631.07Insurableinterest and consent (1)lnsurableinterest.Noinsurer may knowinglyissue a policy to a person without aninsurableinterestin the subject oftheinsurance. (2) Consentinlife and disabilityinsurance.Except under sub.(3),nO insurer may knowlnglylSSue anindividuallife or disabilitylnSuranCe policy to a person other than the one whoselife or healthis at risk unless thelatter has glVen Written consent to theissuance of the pol・ icy.Consent may be expressed by knowingly signing the application for theinsurance with knowledge of the nature of the document,Orin any other reasonable way. (3) Cases where consentis unnecessary or may begivenby another. (a) Consent unnecessary.Alife or disabilityinsurance policy may be taken outwithout consentin writingln the followlng CaSeS l.A person may obtaininsurance on a dependent who does not have legalcapacity: 2.A creditor may at the expense of the creditor obtainlife or disabiI. ityinsurance on the debtorin an amount reasonably relafed to the amourlt Of the debt: 3.A person may obtain alife or disabilityinsurance policy on mem− bers of the person’s familyliving with or dependent on the per− SOn: 4.A person may obtain a disabilityinsurance policy on others that would merelyindemnify against expenses the policyhoJder WOuld belegally or morally obligated to pay:and 5.The commissioner may promulgate rules permittinglSSuanCe Of insurance for alimited term on thelife or health of a person serv・ lng OutSide the continental United Statesin the public service of the United States,prOVided the policyholderis closely related by ー105− 他人の生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) blood orby marrlage tO the f杷rSOn Whoselife orhealthisinsured. (b) Consent given by another.Consent may be given by anotherin the followlng CaSeS. 1.A parent,a guardian ofthe person.or a person havinglegalcus・ tody as defindin s.48.02(12)may consent to theissuance ofa po1− 1Cy On a dependent child. 2.A grandparent may consent to theissuance oflife or disability insurance on a grandchild. 3.A court ofgenaraljurisdiction may give consent onex parte appli・ Cation on the showing of any facts the court considers sufEicient to iustify Suchinsurance. 89) Merkin,SuPYtZ nOte13at333. 90)Id.,at339. 91) Wren v.N,Y.LifeIns,C0.,59F.RD484(N.D.Ga.1973), 92) N.Y.INS.LAW.§3205(C)(Mckinley1986&Supp.1987) 93) W一,.S,A,.A,川.§631.07(2)(West1980&Supp.1987). 94) Harrington.S2ゆn note76at488. 95) Mosley v.American Nat.Ins,C0.,167S.C.112,166S.E.94(1932).Dolan V.Metropolitan LifeIns C0..11La.App.276,123So.378(1929). 96) Best,SuPYa nOte32atlO5. 97) VANCE,SuJ)YU nOte15at207.Keeton,Sゆ昭nOte16at121. 98)Dixon v Western Union Assurance C0.,251S.C.511,164S.E.2d 214(1968). 99) Peckhamv・Grindlay,17Abb.N.Cas.(Abbott’sNewCases)18(N.Y. 1st Dept.1885), 100) Earrington,Sゆm nOte76at492. 101) Trent v,Parker,591S.W.2d769(Tenn.App1979). 102) Meehan v・Transamerica OccidentalLifeIns C0.,148Ill.App3d 477,499N,E.2d602(1986). 103)JERRY,SWra notelO at201. 104) 3C。UCH.5叫明日Ⅶte45at206. 105) North RiverIns.Co v.Fisher,SゆYa nOte75. 106) Dixon v Western Union AsuuranceCo.,SuPra note98. ー1(裕一 他人に生命の保険契約と保険会社の義務及び責任(I) 107) Metropolitan Lifelns.Co.V.Monohan.swYa nOte80. 108) Ramey v.CarolinaLifeIns.Co..supYa nOtel2. 109)JERRY,SuPYa nOtelO at204. 110)1d.203−205.Patterson,SWYa nOte31at396. 111) Salzman,SWYa nOte31at543. (以下次号) ー107−