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研究シーズ資料

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研究シーズ資料
 半永久胸管リンパカニュレーション法による食事脂質吸収および
リンパ液中の炎症性サイトカインプロファイルの評価
Kyushu University!
Laboratory of Nutrition Chemistry
九州大学大学院 農学研究院 栄養化学分野 助教 城内 文吾
HO
研究概要
摂取した脂質は腸管で消化・吸収され,リンパ系に輸送される。よって,リンパ液を経時的に採取することは脂溶性成分の吸収動態を評価する上で有効な手段である。生体
は麻酔下,拘束下や開腹下などの非生理的条件においては,消化・吸収を含む生体反応が通常と異なる挙動を示す。そのため,我々は無麻酔・無拘束下でラットに摂食させ,
リンパ液を経時的に採取できる半永久胸管リンパカニュレーション法を用いて脂質吸収動態を評価している。また腸管は栄養素の吸収だけでなく,免疫器官としても機能して
いる。腸管免疫制御機構の破綻は,炎症性腸疾患の発症だけでなく,リンパ系を介した全身への炎症性サイトカインの動員により他臓器において炎症を惹起することが想定
される。半永久胸管リンパカニュレーション法を用いて脂質吸収動態とリンパ液中の炎症性サイトカインプロファイルを解析した結果を紹介する。
水溶性食物繊維 グアーガムが食事脂質吸収・輸送に及ぼす影響 1)
最近の研究成果
OH H
OH
O
H
HO
水溶性食物繊維は循環器系疾患の予防に効果的であることが知られており,
それはコレステロール低下作用が寄与していると考えられている。
グアーガム摂取は,コレステロール,α-トコフェロール,ルテインなど多種多様
の脂溶性物質の吸収を阻害し,その吸収阻害作用点は不明であった。
半永久胸管リンパカニュレーション法 H
H
HO
O
H OH
H
H
H
H
H
O
OH
OH
O
H
OH
O
O
HO
O
H
H
H
H
n
The chemical structure of guar gum
無麻酔・無拘束でラットに摂食させ,リンパ液を経時的に採取することができるため,
生理的環境下に近い状態で脂質吸収動態の評価ができる
胸管リンパ管へのカニューレ挿入!
Cannulation
of the thoracic lymph duct
(皮下トンネルを通し、頭部で固定) 実験食の給餌
Feeding diet
リンパ液の経時的採取!
Collection of lymph fluid!
リンパ流量、リンパ液中の脂質濃度、!
Measurement of lipid levels
白血球数及びサイトカイン濃度の分析
拘束を伴わない為、ケージ内を
自由に動くことが出来る
【本法の利点】
・評価したい物質を混餌して
与えることができ,生理的である
(従来法では脂質エマルション投与:脂質吸収に影響を 与えうる炭水化物・タンパク質が含まれないため,それらの 胸管リンパ管
影響を評価できない.また、エマルションには通常摂取しな
い胆汁酸が含まれている.)
Asterisk shows significant difference at P < 0.05.
セルロース摂取と比較して,グアーガム摂取によりリンパ流量,コレステロール及びトリアシルグリセロール輸送量が有意に低下した。
in vitro試験により,グアーガムの抱水能,膨潤度及び相対粘度はセルロースと比較して有意に高値を示した(data not shown)。
以上より,グアーガムによるリンパ流量低下が脂溶性物質の非特異的吸収阻害の作用点であることを明らかとした。
コレステロール吸収阻害剤 エゼチミブが食事脂質吸収・輸送に及ぼす影響 2)
エゼチミブは小腸上部刷子縁膜上に存在するNiemman-Pick C1 Like 1 (NPC1L1) をターゲットとする
コレステロール吸収阻害剤である。
しかし、その作用については血液中や糞中のコレステロール量の測定結果の提示によるもので,リンパ
液中におけるコレステロール輸送,その他の脂質の輸送量に及ぼす影響については不明であった。
H OH
OH
HH
N
F
O
F
The chemical structure of ezetimibe
・無麻酔・無拘束であるため,評価したい物質のリンパ流量への影響を評価できる
(従来法では実験動物が拘束を伴う:SCAWの苦痛分類のカテゴリーDに該当する. 本法はカテゴリーCに該当.)
【本法の欠点】
・リンパ液採取時に試験食を食べないケースがある
(事前に摂食トレーニングを実施しているが,摂食しなかった個体はリタイアとなる.)
Asterisk shows significant difference at P < 0.05.
エゼチミブはリンパ流量及び遊離型コレステロールの輸送量に影響を与えず,エステル型コレステロール輸送量を有意に低下
させることを見出した。また,エゼチミブはトリアシルグリセロール及びα-トコフェロールの吸収に影響を与えないことを確認した
(data not shown)。
マルチプレックスアッセイシステム ( MAGPIX® ) :
磁気ビース抗体を用いたタンパク質多項目同時測定システム
% control
腸管は消化吸収と免疫の両者の機能を担うリンパ系が発達した臓器であり,腸管免疫系には主要
なものとして,①パイエル板,②粘膜固有層,③腸間膜リンパ節,④腸管上皮の吸収細胞がある。 腸管の単球・マクロファージ,リンパ球などは微小循環を介し腸管への移行を繰り返しており,それ
はサイトカインなどにより制御されている。
この制御機構の破綻は,炎症性腸疾患の発症だけでなく,リンパ系を介した全身への炎症性サイ
トカインのリクルートにより他臓器において炎症を惹起することが考えられる。
300
**
**
200
**
100
◆ 発表論文 ◆
1. Shirouchi B, Kawamura S, Matsuoka R, et al. Lipids, 46, 789-793, (2011).
2. Shirouchi B, Nakamura Y, Furukawa Y, et al. Cardiovasc Drugs Ther., 26, 427-431, (2012).
3. Shirouchi B, Nakamura Y, Furukawa Y, et al. Ann Nutr Metab., 63(suppl. 1), 1261, (2013)
**
80
** **
**
**
60
40
20
0
摂取する脂質の量や質に応答し,肝臓や血管などで炎症が惹起される報告があり,腸管の
免疫制御機構も脂質の量的・質的変化で破綻する可能性がある。現在,脂質輸送と炎症反応
との関係解析を進めている。
100
**
**
Control
Sample Y
120
**
400
腸管免疫と脂質吸収の概略図
**
% control
500
Lymphatic cytokine prolife
Control
Sample X
0
動脈硬化を促進するサイトカイン
動脈硬化を促進するサイトカイン
血管新生を誘導する
サイトカイン
Results are expressed relative to mean control values of 100%. Two asterisks show significant difference at P < 0.01.
≪問合せ先≫
九州大学大学院 農学研究院 栄養化学分野 助教 城内 文吾
Phone: 092-642-3005; Email: [email protected];
Home Page: http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/nutrchem/
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