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ビンズン下水道施設計画調査(PDF形式:258KB)

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ビンズン下水道施設計画調査(PDF形式:258KB)
平成15年度
地球環境・プラント活性化事業等調査
「ベトナム国
ビンズン省南部地区下水道整備
計画に係る F/S 調査」
報告書要約
平成 16 年3月
株式会社エヌジェーエス・コンサルタンツ
1. 調査の目的
ベトナム国ビンズン省の南部(南ビンズン地域と称す)は多くの工業団地の開発と人口
増加が相俟って、急速な経済成長を遂げており、このことが水需要量の増大及び人の生活
と工業活動に由来する排水量の増大を招いている。しかしながら、南ビンズン地域の生活
排水と工場排水は、未処理または不十分な処理の状態のまま公共用水域に排出されており、
本地域とホーチミン市の重要な水道水源であるサイゴン川やドンナイ川の水質汚濁を引
き起こしている。
こうした状況に対処するため、ベトナム国建設省は日本の資金援助を受けるべく、2003
年7月に「ビンズン省南部都市域衛生改善事業フィージビリテイー調査」をローカルコン
サルタントに策定させた。しかし本スタデイーの調査内容では、日本のファンドの適用条
件を満たすことができないため、F/S 調査のレビューが必要とされていた。
本調査は、既存の F/S レポートを参考に、最新の社会経済条件及び環境条件を踏まえ、南
ビンズン地域の下水道整備計画に関する F/S 調査の見直しを行ったものである。
2. 計画諸元
マスタープランと F/S の目標年次はそれぞれ 2020 年と 2010 年とした。
ビンズン省の 2002
年統計年鑑によれば、この地域の 2002 年における人口は 521,061 人であり、1999 年から
2002 年の間における年平均人口増加率は 5.6%であった。対象地域の人口は、2010 年にお
いて 721,500 人、2020 年で 977,000 人になると予測された。そのうち市街地内の人口は、
2010 年で 508,900 人、2020 年で 786,400 人と予測され、これらの人口による商業・サー
ビス活動も含めた下水量は 2020 年において、127,070m3/日に達し、一方の工場団地から
排出される工場排水量は 107,700m3/日になるものと予測された。
3. 公共用水域の水質と下水処理の必要性
(1) 公共用水域の水質と適用すべき水質環境基準
下水の処理処分の目的は、下水を放流する水域が受容できる水質に処理してそこに戻す
ことであり、下水処理水は放流水域に指定されている用途すなわち、飲料用、水生生物の
保護、その他等、に適した水質を保たなければならない。
サイゴン川は Thu Dau Mot、Lai Thieu、An Than 及び An Phu 市街地の生活排水と Vietnam
– Singapore、 Viet – Huong、Dong An 及び Song Than Ⅰ&Ⅱ工場団地から発生する工場
排水の最終的な放流水域である。サイゴン川の現在の BOD 濃度は Thu Dau Mot において
4.5 mg/l、An Phu(Thu Dau Mot の約 12km 下流)において 5.8 mg/l であり、河川水は Thu
Dau Mot 付近において、本地域とホーチミン市の水道水源として利用されている。
一方のドンナイ川は Uyen Hung と Di An 市街地の生活排水及び An Pu と Binh Duong 工
場群から発生する工場排水の最終的な放流水域である。河川水質は比較的良好な状態を保
っており、河川は全区間にわたり本地域とホーチミン市及び Bien Hoa 市の水道水源とし
て 利用されている。
これらの状況を考慮の上、河川の水質環境基準を以下のように適用するものとした。
サイゴン川
・Thu Dau Mot より上流:水道水源としての基準を適用
・Thu Dau Mot より下流:水生生物の保護としての基準を適用
ドンナイ川
・全域:水道水源としての基準を適用
(2) 下水処理の必要性
表1に示すように、サイゴン川とドンナイ川の将来における水質シミュレーションを行
った結果、M/P 段階においては、河川環境を保全するため下水処理が不可欠である。
また、2010 年時点では、サイゴン川流域の都市部の下水道整備が緊急を要し、下水処理
は二次処理プロセス(すなわち処理水の BOD 濃度 20mg/l 以下)を採用することが妥当で
ある。
表1 サイゴン川とドンナイ川の水質予測結果
(BOD: mg/l)
河川
水質基
準点
F/S(2010)
適用すべき
水質環境基
2002
下水処理 下水処理 下水処理 下水処理
なし
準
M/P(2020)
あり
なし
あり
サ イ ゴ P-S-1
4
4.5
5.1
3.9
5.4
3.9
ン
P-S-2
10
5.8
7.2
5.0
8.0
5.3
P-D-1
4
3.3
3.3
3.3
3.3
3.3
P-D-2
4
3.4
3.5
3.4
3.9
3.5
P-D-3
4
3.9
4.1
3.5
4.7
3.7
ド ン ナ
イ
4. 提案する下水道システム
2020 年における面積 9,552ha、人口 786,400 人規模の市街化想定区域(3工場団地含む)
を対象に、効率的な下水道整備という観点から、下水処理場の最適な配置計画について検
討した。その結果、下水道計画区域を6つの処理区すなわち、1)Uyen Hung 処理区、2)Thu
Dau Mot 処理区、3)Thai Hoa 処理区、4)Lai Thieu 処理区、5)Di An 処理区、6)Tan Uyen IP
処理区に分割して整備することとした。各処理区はそれぞれ、下水管網、下水幹線、ポン
プ場と1箇所の下水処理場を有することになる。
下水処理方式は、他の代替案と経済性、維持管理性、処理水質、必要用地面積等を比較
の上、二次処理のひとつであるオキシデーションデイッチ法を採用した。この処理方式は
BOD 20mg/l 以下の処理水質(BOD 除去率 90%以上)が得られ、サイゴン川、ドンナイ川及
びその他の都市河川の水質改善に大きく寄与することができる。
下水処理場から引き抜かれた汚泥は、Uyen Hung 以外は機械的に脱水され、脱水汚泥は
現在計画中の廃棄物処分場にて処分される。しかし、将来においては緑農地を対象に肥料
として再利用することが望ましい。
5. 優先プロジェクトの選定
サイゴン川は本地域とホーチミン市の水道水源になっており、水質が危険な状態に晒さ
れていることから、サイゴン川流域の市街地を対象に下水道整備することがサイゴン川の
水質保全上最も急を要する。更に、B/C の評価結果では、当該区域は効率性という面にお
いても有利であった。その結果、2010 年を目標とする優先プロジェクトは以下のとおり選
定した。

Thu Dau Mot, An Than, Than Giao 及び Lai Thieu, Binh Hoa, Vinh Phu を含む Thu Dau
Mot 処理区と Lai Thieu 処理区における下水道整備
また、この優先プロジェクトは各区域の整備の緊急度を考慮し、2フェーズに分けて整備す
ることとした。優先プロジェクトの概要を表2に示す。
表2
優先プロジェクトの概要
Thu Dau Mot 処理区
項
下水道整備
目
地域名
第1期
Thu Dau Mot1
区域
面積(ha)
Lai Thieu 処理区
第2期
第2期
Thu Dau Mot2, An
Lai Thieu, Binh
Tan, Thuan Giao
Hoa, Vinh Phu
合
計
1,231
2,787
783
3,801
計画処理人口(人)
83,700
220,500
55,100
275,600
下水管路延長(km)
137.2
154.8
87.8
379.8
2
1
-
マンホール型ポ
ポンプ場箇所数
ンプ除く
処 理 能 力 (m3/
下水処理場
13,392
34,070
7,160
41,230
日)
水処理方式
オキシデーションデイッチ法
オキシデーショ
ンデイッチ法
汚泥処理方式
放流先
用地面積(ha)
水質分析センター
濃縮→天日乾燥
濃縮→機械脱水
濃縮→機械脱水
→処分
→処分
→処分
サイゴン川
サイゴン川
10.6
3.0
水質遠隔監視装置、水質分析センター、水質分析機器一式
13.6
6. 事業費と事業実施計画
優先プロジェクトの事業費は 171.6 億円(1.454 億 US$)と見積もられ、これは第1期 80.6
億円、第2期 90.0 億円に分割される。プロジェクトは 2004 年に日本政府から円借款の合意を
得たあと、その実施は 2005 年から開始(測量・設計に着手)されると想定した。プロジェク
トの実施期間は 2014 年の後半までの 10 年間と想定される。
7. 組織管理
既存の実施機関の組織に基づいて新組織の形態について提案した。新組織は6つの部署で構
成されるものとした。すなわち、総務部(新設)、営業部(既設)、農業水利部(既設)、水道
技術部(既設)
、下水技術部(新設)及び水質分析部(新設)である。新しい下水管網、ポン
プ場、下水処理場等の施設を管理するための増員スタッフ数は 2010 年において 56 人と想定さ
れた。組織強化の方策として提言される事項は次のとおりである。
・スタッフの技術トレーニング・教育の継続的実施
・管理職、主任オペレーター、水質分析スタッフの育成・トレーニング
・新しい O/A を利用した書類作成作業の効率化
・下水道料金及びその徴収システムのレビュー
・下水道接続の促進強化方策の立案
・大口排水者に対する規制と罰則規定の立案
8. 財務分析
提案されたプロジェクトに対する財務分析の結果では、下水道料金を水道料金の半分のレベ
ルに設定し、資本的投資の 95.9%を中央政府及び省政府から補助されれば、7%の財務的内部収
益率(FIRR)を確保することが可能となる。
また、経済分析の結果によれば、プロジェクト実施に伴う漁獲高の増加、水系疾患の減少、
上水道水質の安全性の向上、土地の価値上昇等の便益が予想されるため、経済的内部収益率
(EIRR)は 10~12%という良好な数値が得られた。
9. 環境影響評価(EIA)
初期環境調査(IEE)の結果では、次の事項については詳細な評価の段階で、更なる検討が
必要となった。

建設期間における交通渋滞の問題

下水処理場から発生する汚泥及び夾雑物の処分の問題

臭気、騒音

用地造成工事による近隣河川・水路へ及ぼす水質汚染
これらの問題は、日本へ円借款要請する前の段階で必要とされる EIA レポートの中で精査さ
れなければならない。
10. プロジェクト評価
プロジェクトの効果及びその評価は以下のように要約できる。

技術的観点において、実施機関の水道公社は水道給水事業には長年の経験があるが、
下水道事業は初めての経験となるため、この分野での技術の習得が必要である。とり
わけ、処理施設の維持管理に関するトレーニングプログラムの実施が強く提言される。

財務的には、資本費の相当部分の政府からの補助と下水道料金の値上げが事業の持続
性確保のため必要である。

本プロジェクトは、住民の保健衛生環境の向上と河川の水質環境の改善に寄与するの
みならず、都市環境改善による本地域への日本を初めとする海外投資の促進、漁獲高
の増加、土地の価値の上昇といった経済的便益をもたらす。

初期環境調査の結果では、施設建設時に環境に対して負の影響が懸念される項目もあ
り、これについては環境影響評価レポート作成時に精査する必要がある。しかし、本
プロジェクトは住民の生活・保健衛生環境の向上、河川環境の改善、サイゴン川の利
水の面で多大な便益をもたらす。
11. 結論と提言
結論として、本プロジェクトは地域の保健衛生状況の改善とサイゴン川の水質環境保全の観
点から、事業の必要性、妥当性、緊急性が認識され正当化できる。事業への投資内容とその規
模は妥当であり、満足し得るものと結論付けられる。
事業に対する提言は以下のように要約できる。
(調査結果に関連して)

下水道管路計画の精査が、より正確な事業費積算のため必要である。

ベトナム国の法令と JBIC の要求を満たす EIA レポートを日本への資金援助を要請す
る前に作成しておくこと。

排水の放流と河川環境を監視・規制するための包括的環境管理システムを構築するた
め、環境管理に関する調査が必要である。
(事業実施に関連して)

財務的観点からプロジェクトの実施可能性、持続性を確保するために適切な措置を講
ずること。

施設の運転管理に要する経費を賄え得る新しい下水道料金の設定。

下水道へ排水する大口排水者の効果的な監視・規制システムを構築すること。

日本人技術者による施設の運転管理トレーニングを通じ、下水道セクションのスタッ
フのスキルアップを図ること。

建設期間中の予想される環境への負の影響を相殺するため、環境緩和プランを事業実
施前に立案すること。
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