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01146 Voice 60 English - International Cooperative and Mutual

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01146 Voice 60 English - International Cooperative and Mutual
Voice
インタビュー:モニク・ルルー氏(デジャルダン・グループ)
2012国際協同組合年の成果
資本の問題を考える
ICMIF会長の提案するミューチュアルの資本調達方法とは
相互扶助の概念を広めるマーケティング
世界各地の優れた実践例
堅調なDEVR
国際協同組合保険連合情報誌 issue 76/2013年6月
目次
Voice
issue 76/may 2013
編集および製作
編集責任者:リズ・グリーン
副編集責任者:アリソン・グラント
デザイン:
ギ ャレス・ケンドリック
イァン・ウォーガン
寄稿
アンドリュー・ビービ、ジョン・バームフォース、シ
ョーン・ターバック、ベン・テルファー、アリソン・
グラント
01
巻頭言
022012国際協同組合年の成果
04開花のときを迎えたパラグアイのタジュ保険
06ミューチュアルを広める共同マーティング事業
08
おじいちゃんのパン屋さんにお客さん来ないのはなぜ?
10分かりやすさの追求
11
農村地域での会員団体活動事故防止キャンペーン
12
資本の問題を考える
14
堅調なDEVK
18ICMIFがセクターの評判を監査
翻訳
フランス語
ハイヤット・ディファラ、アリソン・グラント
スペイン語
リーガル・アンド・テクニカル・トランスレーショ
ンズ・リミティッド、アリソン・グラント
日本語
リーガル・アンド・テクニカル・トランスレーショ
ンズ・リミティッド、塚本直広
寄稿
ICMIFでは会員団体ならびに協賛会員の皆さまからの寄
稿をお待ちいたしています。寄稿あるいは寄稿に関する
お問い合わせについては次の担当者までごん連絡くださ
い。副編集者アリソン・グラント;[email protected]
20
市場全体を上回る伸びを示すミューチュアルのセクター
22
組織を率いる女性たち
23
子どものニュースキャスター ICMIFテレビスタジオにて
24
劇的な違いをもたらす一週間の経験
26世界銀行専務理事コメント
タカフルの根本理念は協同と相互扶助にあり
28ICMIF新職員のご紹介
寄稿される記事は時事の問題として以下が要件として求
められます。会員団体間の連帯事業に関わるものであ
ること、協同組合/相互扶助の組織の優れた実践例、規
制、組織合併・統合、業界の傾向あるいは課題について
の報告やコメント、業界の会議やイベントの開催告知に
関わるものであること。
非会員団体からの寄稿については、協同組合/相互扶助
に焦点を当てたものであるかを条件に受け付けます。
記事の編集権限についてはICMIFが全て有するものとし
ます。
購読の受付
+44 161 929 5163 [email protected]
6
2
copyright © 2013 icmif. all rights reserved. reproduction without
permission is prohibited. the views and opinions expressed in voice are
the author’s own and are not meant to reflect the official position
of icmif, its entire membership, or their respective employers (unless
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only and provided with no warranty. while voice provides web links, icmif
exercises no authority over third-party sites, each of which maintains
its own independent policies and procedures. voice is published by the
international cooperative and mutual insurance federation (icmif),
denzell house, dunham road, bowdon, cheshire, wa14 4qe, uk.
cover background image © tomas petruskevicius | dreamstime.com
www.icmif.org/voice
14
11
指導力…
革新性…
影響力.
ショーン・ターバック
ICMIF事務局長
2013年11月にはICMIFの総会が開催され
組織の基幹職員が正しい判断を下すため
ジにプロフィールを掲載)を国際関係担当
ます。わたしたちは、11月にケープタウン
の手段を身に付けているかどうかは、きわ
の職員に迎えました。また、監督機関、政
で開催される総会を成功させるために、全
めて重要な問題です。優れた革新性を有す
府およびメディアに対して、ミューチュア
力を注いで準備を進めています。総会ス
る保険会社の中には行動経済学の手法を重
ルの重要性と関連性をより有意義な形で伝
ローガンは、ICMIFと会員団体が重点的に
視しているところがあり、職員の仕事の質
えていく際の資料として活用できるよう、
取り組むべき分野を示す言葉を吟味して
の向上に努めています。ICMIFマネージメ
作成する調査レポートの種類を増やす予定
選んだ、「指導力・革新性・影響力」で
ントコース(24ページを参照)の運営・実
です。2013年は、ガバナンス、ならびにミ
す。ここで、その意味を一つずつ考えたい
施に携わるデイブ・クラウザー氏とジム・
ューチュアルの長寿性をテーマにしたレポ
と思います。
オロックリン氏は、この分野の第一人者で
ートを作成します。さらに、「ミューチュ
指導力
ICMIF総会は、世界各地の協同組合保険
す。マネージメントコースは行動経済学の
アル・マーケットシェア・レポート」と「
スキルを学ぶ研修コースとして、ダイナミ
グローバル500」の報告書を補完する財務
ックで革新的な形で次世代のリーダーを育
内容の分析に力を入れるほか、革新的な新
てる場を提供しています。
企画として、同レポートのデータをもとに
と相互扶助の保険組織の指導者が集まって
主要課題を議論し、互いに見識を高める
した国・地域別レポートの作成にも着手し
わたしたちは2013年1月に革新的な「グ
ました(21ページ参照)。
特別な国際的なイベントです。2013年1月、 ローバル・リピュテーション」のプロジ
イギリスの経済紙フィナンシャル・タイム
ェクトを開始しました。このプロジェクト
国連の定めた2012国際協同組合年からわ
ズ紙は「人材を重視するビジネスリーダ
は、世界中からデジタルコンテンツのデー
たしたちが得た教訓は、自らのメッセージ
ー」と題する特集記事を掲載し、人材は企
タを集め、それをもとに主要な利害関係者
を世界中のメディアに伝えることがいかに
業トップの主要課題の一つであり、ビジネ
が協同組合/相互扶助の保険組織について
重要であるかということでした。こうした
スリーダーには、管理職レベルだけでなく
どう考えているか調査し、優れた実践例が
取り組みを推進することにより、わたした
組織全体の人材を開発し、維持し、活性化
どのようなものであるのかを特定するもの
ちの事業モデルと、それが本来的に有する
し、管理する責任があると論じました。
です。結果は、会員団体にお知らせするほ
多様性とにより、組合員と事業の双方に便
か、5月に行われる第一回コミュニケーシ
益を提供できていることに対する利害関係
総会では、人材開発をテーマに議論し、
ョン・リーダーズフォーラム(18ページ参
者の理解を促進することになるのです。今
優れた実践例を紹介します。もし人材開
照)でも議題として扱う予定です。
発が組織の最重要課題であれば、ぜひ次
世代を担う職員からの参加もご検討くださ
年は、ビジネス・業界関係のメディアだけ
でなくインターネットも活用して、セクタ
影響力
ーの認知度を上げるよう取り組みます。
い。ICMIFネットワークの効果を実感いた
だけるものと思います。
革新性
ICMIF会員団体のあいだでは、保険監督
このように2013年もわくわくする一年、
に関する懸念が強まっています。とくに、
チャレンジの一年となりそうです。去年、
監督機関の「一つの基準をすべてに適用
わたしは半数以上の会員団体の方々とお会
する」という方法論と、銀行規制をその
いすることができました。総会が開催され
ビジネス成功の中心的役割を果たすのが
まま保険に適用するべきだとする意見が
る2013年は、もっと多くの方々にお会いで
革新性です。総会では、革新性をテーマに
大きな問題となっています(2013年3月の
きるものと楽しみにしています。指導力、
専門家が講演を行い、他の会員団体や関
ブログ「時はまさに監督規制強化」をご参
革新性、影響力の各分野でICMIFとその会
係者と認識や経験を共有し、他社との比
照ください)。このような状況を考慮しつ
員団体がリードしている姿を11月の総会で
較で自社の革新性を評価する絶好の機会と
つ、ICMIFでは国際的なロビー活動の強化
示しましょう。
なります。
を目的に、キャサリン・ホック氏(28ペー
issue 76/2013年6月 1
モニク・ルルー
インタビュー
2012国際協同組合年の成果
デジャルダン・グループ(カナダ)のモニク・ルルー会長
兼社長兼CEOは、2012国際協同組合年関連行事で主導
的役割を果たしました。Voiceではルルー氏に2012国
際協同組合年の成果を総括していただきました。
2
-2012年は国際協同組合年として、多くの
われ、外部に委託した研究調査は有益な情
領域や、カナダ国内の未進出地域にも進出
イベントが開催され、協同組合/相互扶助
報源となり、2,800名の出席者には積極的
し、事業拡大を図っています。さらに、技
の組織に注目が集まった素晴らしい年とな
に議論へご参加いただきました。その結
術開発と職員研修に集中的に取り組んで
りました。2012国際協同組合年は、セクタ
果、協同組合/相互扶助セクターの成長と
組織全体の生産性を向上する方法を探っ
ーの成長と成功に長期的なインパクトを与
強化を図るアイデアが多数生まれました。
ています。
サミットでの大成功を受けて、デジャル
-デジャルダンでは社長とCEOの任期は最
本当に驚くほど素晴らしい一年となりま
ダンはICAと協力し、2014年10月にケベッ
高2期8年間と規定されています。ルルー氏
した。リーマンショックと長引く不況のな
クシティーで第2回協同組合国際サミット
は経済危機が一番厳しかった2008年に就任
かで、多くの消費者が現在の経済システム
を開催することになりました。次回サミッ
され、難しい時期のかじ取りに成功されま
を疑問視し、協同組合セクターの強みと回
トも、世界各地の協同組合と相互扶助組織
した。2期目に入った今、今後の抱負を聞
復力を認めるようになったときに焦点が当
の意思決定者が集まり、事業上の課題を話
かせてください。
てられたという点で、タイミング的にもよ
し合う場にしたいと思います。リーダーの
かったと思います。全体として見ると、バ
皆様にはサミットに参加し、組織の業績強
就任後、なすべき仕事が山のようにあ
ランスの取れた市場経済においてセクター
化に役立つ新しいアイデアを多く得ていた
り、4~5年があっという間に過ぎたという
が重要な役割を果たしていることを、一般
だきたいと思います。
気がします。今後の抱負ですが、競争が激
えたと思いますか。 消費者や政府に認識してもらうことができ
化し、より多くが求められるであろう将来
たという点で、大きな利益を得ることがで
-業績という言葉が出ましたが、デジャル
に対応できるデジャルダンにしたいという
きたと思います。また、協同組合の事業モ
ダン・グループは、長引く経済不況・不確
のが、第一の目標です。そのため、組合員
デルを改良し、協同組合同士が強力な関係
実性にどのように対処していますか。
やお客様とより密接な関係を築いて確固た
を構築するにはどうしたらよいか考える機
会にもなりました。
るものとしていきます。消費者のニーズや
デジャルダン・グループは経済危機にう
期待の変化を予測し応えていくために、財
まく対処してきました。例えばわたしたち
務体質と機敏性を強化していきます。
この成功と勢いをもとに、ICA(国際協
は、グローバル・フィナンシャル誌の調査
同組合同盟)のポーリーン・グリーン会長
による2012年最も安全な金融機関ランキン
また、組合員とお客様の利益となるよう
が「協同組合の10年」と表現する目標を
グで、世界で16位、北米で4位にランクさ
にサービスと成長、生産性を重要視してい
いかに達成するか、それが、今求められ
れています。しかし、長引く低金利と低成
きます。第二に、カナダ国内や世界各地の
ている課題です。わたしたちには意欲があ
長の中で、金融機関の業績はじわじわと影
協同組合や相互扶助組織との戦略的事業関
り、ICAやICMIFなどの組織を通じたリーダ
響を受けており、デジャルダン・グループ
係を強化していきたいと思います。第三
ーシップもあります。ですから、質問の答
も例外ではありません。
に、今後も、協同組合/相互扶助セクター
えはイエスです。協同組合の指導者が道筋
の促進と構築を支援していきたいと思いま
を示せば、国際協同組合年の取り組みは、
わたしたちは協同組合なので、株主側の
す。収入格差、雇用創造、持続可能な開
非常に前向きで長期的なインパクトを残す
圧力に直面することはありません。しかし
発、経済教育など、今日の世界が抱える課
ことになると思います。
ながら、財政目標を掲げており、ほかの会
題に取り組もうとするとき、強力な協同組
社と同じように収益成長率やコスト管理、
合セクターが重要な役割を果たすことがで
-デジャルダン・グループは国際協同組合
生産性、リスク管理などの主要指標の達成
きるからです。
年で非常に積極的な役割を果たし、とくに
に注視することが求められています。
2012年10月にケベックシティーで開催され
このように考えると、残された3年の任
た協同組合国際サミットではホスト団体を
協同組合にとっては、組合員と本当に強
務めました。サミットの成果、また国際協
い絆を結ぶことが重要です。デジャルダン
同組合年に関するグループの活動に満足し
にとっては主要優先事項であり、これが成
ていますか。
功を左右すると考えています。同時に、
期もあっという間に過ぎそうですね。
財務状況が堅実で安定していることも重
一言で言えば、答えはイエスです。デジ
要です。協同組合や相互扶助の組織が長
ャルダン・グループが国際協同組合年の一
期的な成長を遂げ成長するためには、さら
年を通じて支援した関連活動は、協同組合
に生産性と機敏性、革新性を高めることも
の認識を高めるのに役立ったと感じていま
必要です。
す。また協同組合国際サミットは、あらゆ
る点で期待を大きく上回る成果を上げるこ
デジャルダンの場合、商品とサービス
とができました。洞察力に富んだプレゼン
の内容と質を上げるための具体的な取り
テーションとパネルディスカッションが行
組みを始めています。また、新しい市場
issue 76/2013年6月 3
開花のときを迎えた
パラグアイのタジュ保険
ICMIFが運営する融資支援機関のオールネーションズ社は、パ
グンダ(アルゼンチン)が、同銀行の出資額を上回る12億5,000
ラグアイのタジュ保険に対する30万USドルの融資支援を決定しま
万グアラニー(30万USドル)の出資を行ったことです。
した。注目されるタジュ保険のサクセスストーリーをご紹介しま
す。
タジュ保険とラセグンダの密接なパートナーシップは、ラセグ
ンダが豊富な専門知識を有し、タジュ保険がシェアの大幅獲得を
パラグアイでは、早春にあたる9月に入ると、公園や広場、森
目指して参入した農業保険分野に注目しました。これに、パラグ
などあちこちでタジュの花が咲き出します。タジュは、40メート
アイの農業協同組合連合がパートナーとして加わり、2008年事業
ルの高さに達することもある南米特有の樹木で、とくにパラグア
計画作成に着手、過去の農業経済や天候データなどの研究調査を
イと深く結びついています。2012年には、パラグアイの国樹と正
行いました。最初の農業保険契約の設計・販売・運用が始まった
式に認定されました。春にパラグアイを訪れる者にとって、満開
のは、その1年後のことでした。
のタジュは忘れられない風景の一つです。
現在、タジュ保険の農業保険は、夏に栽培される大豆(9月に
1997年、パラグアイ初の協同組合保険会社を設立した時、タジ
種まき、翌1月に収穫)、冬に栽培される小麦(4月に種まき、11
ュという社名が付けられました。ピッタリのネーミングです。満
月に収穫)、春と夏に栽培されるトウモロコシを対象作物とし、
開の花を咲かせるタジュの木のように、事業も開花しているから
干ばつ、霜、雹や霰、強風、洪水、山火事、例外的な暑さと寒さ
です。この数年間の業績は好調で、2007年と2011年の保険料収入
による損害など各種農業災害を補償しています。加入しやすい農
を比較すると、70億グアラニー(170万USドル)から500億グアラ
業保険に対する国内需要があったのは明らかで、2011年には農業
ニー(1,200万USドル)へと大幅な伸びを示し、とくに2011年の
保険が保険料収入の3分の1を占めるまでに成長しました。なお、
保険料収入は前年比126%と大幅増を記録しました。
その他の事業構成は、近年伸びている自動車保険がおよそ3分の
1と大きく、そのほか生命保険が12%、事故保険が11%、火災保
この例外的ともいえる高い成長率は、新しく発売した農業保険
険が3%などとなっています。
商品の成功によるものです。タジュ保険は年間保険料収入成長率
の目標値を20~25%と設定していますが、2012年の目標も簡単に
タジュ保険の成長戦略に対して投資した海外出資者は、ラセ
達成し、その結果3.6%のシェアを獲得、国内保険会社の7位にラ
グンダだけではありません。ICMIFが運営するオールネーション
ンクされるようになりました。しかし、ゼネラル・マネージャー
ズ社がこのほど、企業査定の結果をもとに優先株30万USドルの引
のカルメン・バルボザ氏は、上位5位以内に入ることを目標にし
ています。「引き受けリスクと商品を多角化していきたいと思い
ます。マイクロインシュランス市場は未だほとんど開発されてお
らず、団体生命保険もまだ発展途上段階にあります。」
タジュ保険は、協同組合の協働をいかに成功につなげるかを示
す模範例です。1996年、パラグアイでは、保険事業の認可と監督
体制に関する新法律が制定され、保険事業と再保険事業を行うの
に法的認可が必要になりました。そこで、国内の14協同組合と信
用組合は、自分たちの協同組合保険会社を共同で設立することを
決めました。これがタジュ保険です。その後、出資協同組合が増
え、現在はおよそ30組合が出資しています。
タジュ保険は2010年になって、資本金をおよそ80億グアラニー
(200万USドル)から110億グアラニー(280万USドル)近くに引
き上げることを決め、優先株を発行しました。その結果、協同組
合系の相互貯蓄銀行が新しく大出資者として加わりました。タジ
ュの成長が信頼された証です。しかしここで特筆すべきは、国境
を越えた先駆的取り組みのパートナーである、ICMIF会員のラセ
4
満開のタジュの花
会議のスピーカーと主催者側代表。写真左から、セバスチアン・アランダ氏(パラグアイ、協同組合相互貯蓄銀行出納局長)、カルメン・バルボザ
氏(タジュ保険ゼネラル・マネージャー)、カルロス・ベニテス氏(同社長)、パブロ・モンヘロス氏(ラグン・アロ理事長)、ダニエル・スペソット
氏(ラセグンダ、ゼネラル・マネージャー)、ルイス・コト氏(中央アメリカ・カリブ海諸国保険協同組合連盟アシスタント・マネージャー)
き受けを決定したからです(オールネーションズ社については
タジュ保険にとって、その出資者である協同組合は資金源だけ
Voice75号と、同社のホームページを参照)。これは、オールネ
ではなく、顧客を獲得するルートとしての重要性も持っていま
ーションズ社に資金を提供している30以上のICMIF会員団体が、
す。例えば、マイクロインシュランス商品の販売促進に出資協同
タジュ保険の成長資金に直接貢献することを意味します。今回の
組合のネットワークを使っています。タジュ保険は、首都アス
支援も、ほかのオールネーションズ社の融資と同じく期間を5年
ンシオン市に本社を持ち、地方の5都市に代理店を構えています
間としています。
が、バルボザ氏が「出資者が募集チャネルです」と語るように、
保険の募集と顧客とのコミュニケーションを図るために協同組合
ICMIFのシニアバイス・プレジデントでオールネーションズ社
のネットワークも活用しています。
の担当者でもあるサビエ・パテル氏は、タジュ保険への融資は、
協同組合/相互扶助の保険組織を対象とした資金支援機関の必要
性を表すものだととらえています。「タジュ保険は堅実な事業計
画と優れた実績を示しており、ICMIFとしてもともに活動できる
ことを喜ばしく思います。この支援によりタジュ保険はその開発
事業に必要な資本の積み増しを実施できることとなります。今回
の資金支援も、発展途上国にあるICMIF会員団体にとってオール
ネーションズ社がいかに重要な役割を果たすことができるかを示
すものです。タジュ保険のようなプロジェクトをより多く支援す
るために、オールネーションズ社の資金力増強についての検討を
近いうちに始める予定です。」
タジュ保険は2012年、創立15周年を迎えました。そ
化を、協同と相互扶助の文化に変えることができるのは、社会
れを記念して10月5日、由緒あるパラグアイ中央銀行
的経済です。協同組合/相互扶助の保険組織は、組合員と地域
で社会的経済の国際会議を主催しました。
全体の生活を改善するうえで特別な役割を担っています。」
中央銀行の会議ホールには、主催者の予想を上回る250名以上
ラセグンダのスペソット氏は、会議に満足して帰国しました。
「タジ
が出席しました。壇上には、はるばるスペインのバスク地方から
ュ保険は、国際協同組合年を記念するにふさわしい、タジュ保険の真
出席した、ICMIF会員ラグン・アロのパブロ・モンヘロス理事長や、
骨頂ともいえる素晴らしいイベントを開催しました。参加者は、協同組
農業保険の開発パートナー、ラセグンダ(アルゼンチン)のゼネラ
合運動を、世のため人のためになる力と認識したことと思います。」
ル・マネージャー、ダニエル・スペソット氏の顔も見えました。
モンヘロス氏は、ラグン・アロと、所属するモンドラゴングループの
会議は、タジュ保険のカルロス・ベニテス社長による歓迎の
事業内容を発表しました。
「スピーカーと発表の質の高さ、そして、参
辞で幕を開けました。その中でベニテス社長は、パラグアイは競
加者がそれに対しハイレベルな応答をしたことが印象に残りました。
争原理と社会的経済の発展の両方を通じて経済強化を図る機
会議には、パラグアイ協同組合運動の有力者も多く参加しました。」
会を逃してはならないと訴えました。
「自由競争が支配的な文
issue 76/2013年6月 5
ミューチュアルを広める
共同マーケティング事業
アメリカの事例
NAMIC(全米相互保険会社協会)の各会員は、相
ることができます。プログラムには、広告宣伝用の
互会社であることをうたったコマーシャル、印刷媒
ひな型が用意されており、会員各社は、「なぜ相互
体、野外広告、ダイレクトメールなどに、共同事業
保険会社を選ぶのか、それは全員が力を合わせてい
の推進ツールを利用することができるようになりま
る会社だということを知っているからです」という
した。NAMICが、相互保険会社の認知度を高めるこ
共通のスローガンを入れることを条件に、 ひな型
とを目的とした革新的なマーケティングプログラム
をカスタマイズして自社独自の広告として使用する
「ミューチュアルブランド・プログラム」を開始し
ことができます。
たからです。
NAMICでは、プログラムのコアとなる共通メッセ
NAMICは2011年戦略計画の中で、会員各社を支援
ージを商標登録し、知的財産権を保護しています。
するためにミューチュアルのブランドの開発と促進
また、プログラムの参加はNAMIC会員に限定されて
を決定しました。その結果生まれたのが、「目的
おり、ひな型そのものを変えて使用することは認め
の共有がミューチュアルの価値(Shared Purpose:
られていません。プログラムへの参加は強制的では
Mutual ValuesTM)」をキャッチフレーズとするこ
なく、参加する場合は、共同事業の推進ツールの使
のプログラムです。なお、このキャッチフレーズは
用料(年間使用料)が発生します。バーラー氏によ
商標登録されています。準備段階でNAMICは、消費
ると、現在、全米18州とカナダの相互会社がプログ
者や保険代理店がミューチュアルについてどの程度
理解しているか知るために市場調査を行いました。
その結果、理解度の低さが明らかになりました。
イギリスで同様のキャンペーンを行った際の責任
者を務めたICMIFのショーン・ターバック事務局長
は、NAMICのプログラムについて「主導的取り組み
を始めたことをうれしく思う。ほかの国々でも中央
組織がこのような戦略を取れば、世界レベルでミュ
ーチュアルのセクターの強化につながると思う」と
語り、期待をにじませました。
NAMICのブレント・バーラー広報担当バイス・プ
レジデントによると、市場調査から二つのメッセー
ジが浮かび上がってきたそうです。「一つ目は、株
式会社との違いや相互会社が提供する価値について
消費者や代理店がどの程度知っているか点におい
て、市場に空白地帯があるということ、二つ目は、
相互保険会社が異なる理由、つまりその特性は、と
くに消費者に本物の違いをもたらし、それゆえ大き
な意味を持つということです。」
NAMIC会員の相互保険会社は、相互保険会社とは
何か、株式会社とどのように違うのか、何を提供
し、なぜ優れているのかを消費者に伝えるために、
「ミューチュアルブランド・プログラム」を利用す
ゲッティイメージズ/NAMICの使用許諾権取得済
6
ラムに参加しており、参加への関心を寄せる会員も
いないこと、また、金融サービス業界では、フラタ
増えているとのことです。
ーナル組合の概念は独特でマーケットの想定内に収
まりきれないと考えられているが、いったん理解さ
一方、全米フラターナル組合連合も、フラター
れたら見通しは明るいと指摘しています。
ナル組合(生命保険と退職年金商品を扱う相互会
社)の認知度向上を目指したマーケティング用ビ
そのほか、フラターナル組合を一言で表現する(
デオを発表しました(http://fraternalalliance.
例「地域でのミッションを持つ非営利生命保険会
org/2012/09/alliance-announces-new-fraternal-
社」)、株式会社とは対照的に、組合員と地域に還
video)。ビデオ制作に先立って行った2011年市場
元する価値に基づいた組織であることを強調するな
調査によると、フラターナル組合員でない場合、フ
ど、いくつかの提言も含まれています。
ラターナル組合に関する認知度はゼロに等しく、組
合員でも、組合の組織構造や目標に関する知識はあ
まり持っていないことが判明しました。
調査は、フラターナル組合は消費者にアピールす
る大きな可能性を秘めているが、ほとんど知られて
NAMIC「ミューチュアルブランド・プログラム」の主要メッセージ
1.契約者は単なるお客様ではありません。
2.相互保険会社は、
「契約者第一義」で主事業上の判断をします
3.契約者は相互保険会社の社員として、会社の方針に対する発言権を有します。
4.迅速なサービスを個人レベルで提供します。
5.契約者独自のニーズに合わせた補償内容を提供することができます。
6.保険金請求時は、契約者の立場に立って処理します。
7.保険金は、迅速かつ公平に支払います。
8.
リスクを軽減するためのアドバイスを行います。
9.可能な場合は、契約者に配当金の支払い、あるいは保険料の割引をします。
issue 76/2013年6月 7
おじいちゃんのパン屋さんに
お客さんが来ないのはなぜ?
相互扶助のメッセージを伝える会員団体の取り組み
僕が住む村では、みんな、僕のおじいちゃんと2軒のパン屋さんの話を知っているんだ。2013年南アフ
リカ・ケープタウンで開催されるICMIF総会のホスト団体を務めるPPS(プロフェッショナル・プロビデン
ト・ソサエティ)の最新テレビコマーシャルは、このようなセリフで始まります。
このコマーシャルは、ICMIF会員の団体が独創性を活かして協同組合/相互扶助の価値を広めている様子
を示す好例です。舞台は、おそらく東欧のどこかで、時代はたぶん19世紀末、僕のおじいちゃんは、おい
しそうなパンを焼き、教科書に書かれているような模範的な営業方法でパンを売ろうとしますが、全然売
れません。村の人たちは、もう1軒あるライバルのパン屋さんでパンを買っています。そこで、おじいちゃ
んは、ライバルのパン屋さんのご主人に会って話を聞きます。すると、そのパン屋さんは村人が出資した
協同組合だということが分かります。成功の秘訣は共有することだ、とおじいちゃんは気付くのでした。
PPSは、ターゲットとしている大卒専門職に相互扶助の価値を伝えるために、大手広告代理店ハバス・ワ
ールドワイドのヨハネスブルグ法人(旧4Dユーロ RSCG)と協力して、このコマーシャルを制作しました。
PPSのグループマーケティング・ステークホルダーリレーションズ担当責任者、ガーハード・ジョバート
氏は、次のように語っています。「このテレビコマーシャルが業績向上につながっています。PPSのターゲ
ット市場では、わたしたちが価値に基づいた独自の組織であるという理解度が高まっており、知名度や関
心度も上向いています。ハバスは常に、PPSのマーケティング担当者が依頼する明確な戦略に基づいたユニ
ークな作品を提案してくれます。」
8
テレビコマーシャルは、以下のリ
ンクから見ることができます。
スウェーデンのフォルクサム社の最新コマーシャル「エバの飼い猫」は、国
内だけでなくユーチューブを通じて世界各地で話題になっています。この非常
PPS:
http://tinyurl.com/chqctmp
に独創的なコマーシャルは、「400万人がフォルクサムの保険に加入していま
す。エバもその一人、彼女は飼い猫にフォルクサムの保険をかけています」と
いうセリフで始まります。すると、猫が画面に登場します。仲間の猫と一緒に
スカイダイビングを楽しんでいる姿です。このスカイダイビングをする猫は、
国内で一躍有名なセレブ猫となり、ユーチューブではスウェーデン語バージョ
コーポレーターズ社
http://tinyurl.com/c3aygpc
http://tinyurl.com/cz5aqzm
http://tinyurl.com/bv2kfxw
ンだけで95万回以上も再生されています。
カナダのコーポレーターズ社は、テレビコマーシャルシリーズで協同組合の
フォルクサム社
http://tinyurl.com/ad6vc6v
価値を積極的に推進しています。そのうち「発言権編」では、「あなたは、自
分の保険会社で発言権がありますか」と問いかけた後、「名前にハイフンが
付いた保険会社なら、発言権を持てます(註 コーポレーターズは英語でThe
Co-operatorsとハイフンが付く)」とつなげています。このCMシリーズは、「
あなたにふさわしい保険会社はコーポレーターズです」というシンプルなメッ
セージで、協同組合の価値と素晴らしいサービスを強調しています。
issue 76/2013年6月 9
分かりやすさの追求
NTUCインカム社 約款を平易な言葉に改訂
シンガポールの協同組合保険NTUCインカム社が、徹底したプロ
タン・スー・チー氏(NTUCインカム社CEO、ICMIF理事)
精神と倫理性を併せ持つ保険事業者としての地位を確立するため
に取り組んでいるキャンペーン「オレンジ革命」に、もう一つ大
きな事業が加わりました。保険契約の約款をシンプルで分かり易
い言葉に書き直す事業です。
NTUCインカム社のCEOでICMIF理事も務めるタン・スー・チー氏
は、Voice73号のインタビューでオレンジ革命の戦略目的につい
て説明しましたが、「オレンジ・スピーク」と名付けられた今回
の事業にも、NTUCインカム社を徹底的に変えようとするタン・ス
ー・チー氏の姿勢が表れています。
保険は社会的目的を持っているので、保険会社は株主の利益を
最大限にするのではなく、顧客を助け顧客の利益になるべきだと
いうのが、オレンジ革命の根底にあるタン・スー・チー氏の考え
方です。保険会社を、適切でない商品を売ってでも営業成績を上
げようとする社員の集まり、約款の複雑な条項をたてに保険金を
ブランドキャンペーンを展開しています。キャンペーンでは、専
支払わないところ、とみなす消費者がいます。タン・スー・チー
門用語や複雑な表現と条項がお客様の不利益に働く状況を描き、
氏は、保険は良い商品なのに保険会社の評判が良くないのは、「
お客様の痛みを取り除き、シンプルで正直で違いのある保険を提
顧客第一主義でないことがままあるからだ」と指摘します。
供するというNTUCインカム社の姿勢を打ち出しています。
約款を平易な言葉で書き直す作業は、多くの時間と費用を必要
タン・スー・チー氏は、最近掲載されたシンガポール最大の英
とする大規模な事業です。しかし、タン・スー・チー氏は非常に
字紙「ストレーツ・タイムズ」とのインタビューで、「NTUCイン
大切な作業だとして、その理由を次のように語っています。「保
カム社の役員会は株主の利益を最大限にするように求めません。
険商品と約款は複雑で、難しい法律的専門用語に困惑することが
顧客の利益を最大限にし、経費を最小限に抑え、今後の事業に必
あります。わたしたちは約款をできるだけ明瞭で公平な内容とす
要な資本を確保するために必要な程度の剰余金を残すように求め
ることで、保険を分かり易いものとし、お客様が公正な保険契約
ます」と語り、このような取り組みができるのはNTUCインカム社
をすることができるようにしています。法律上の専門的な細かい
が協同組合だからだとの考えを示しました。
ことを理由に、保険金の支払いを拒否するようなことはしませ
ん。」
NTUCインカム社ではこの事業により、「プレーン・イングリッ
シュキャンペーン」(イギリスに本部を置く団体による文書に平
易な英語を用いることを目的とした世界的に展開する認証制度)
の認証を受けています。
プレーン・イングリッシュキャンペーンによると、NTUCインカ
ム社にはすでに50以上の「クリスタルマーク」と呼ばれる認証が
与えられており、これはアジア地域でトップとなっています。顧
客の95%以上には、すでにクリスタルマーク付きの契約約款が渡
されています。
NTUCインカム社では、オレンジ・スピークと並行して、透明性
を確保しつつ常に最前線にいたいという意思を強くアピールする
10
農村地域での会員団体活動
事故防止キャンペーン
学校の朝礼に参加したコーニッシュ・ミューチュアルの「ファーム
セーフ」キャンペーンキャラクター「メイジー・モーチュアル」
NFUミューチュアルが後援した農村の若年層ドライバーを対象とした運転講習会
大都市に住む人は、田園地帯は平和で静かなところと思うかも
イギリスでは、農村地域に強い基盤を持つNFUミューチュアル
しれません。しかし、そこで生計を立てる農業従事者や農家を顧
も、事故防止キャンペーンに取り組んでいます。保有契約数が80
客に持つ保険会社は、農村地域で起きる事故のリスクをいやとい
万件という農村地域トップの実績を誇るNFUミューチュアルは、
うほど知っています。
「Drive It Home(『理解してもらう』と『運転する』を掛け合
わせたキャッチフレーズ)」と名付けられた交通安全キャンペー
コーニッシュ・ミューチュアルは、イギリス最南西部に位置
ンを展開中です。2012年11月に始まるイギリス全国交通安全月間
するコーンウォール州の農家が集まって1903年に設立した相互
にあわせて実施されたこのキャンペーンでは、若年層ドライバー
扶助の保険組織で、現在、コーンウォールのほかに近隣のデボ
による田舎道での事故を減らすことを目的としており、イギリス
ン州、サマーセット州、ドーセット州に住む24,000人が組合員
国内最大の農村青年組織、全英農業青年クラブ連合(NFYFC、会
となっています。コーニッシュ・ミューチュアルは現在、「フ
員数24,000名)と共同で行っています。NFYFCの会員は、その多
ァームセーフ(農場の安全)」という安全キャンペーン(WWW.
くが、公共交通機関が発達しておらず、狭くてカーブの多い田舎
CORNISHMUTUAL.CO.UK/FARMSAFE)を展開中で、作物フェアなど地
道が多い地域に住んでいます。
域の農業関係イベントや、農家や農業科の学生を対象とした安全
衛生ワークショップなどに赴き、安全確保を訴えています。キャ
キャンペーンでは、インターネットサイト(WWW.NFYFC.ORG.UK/
ンペーンの一環として、家畜の安全な取扱い、電気の安全、農業
DRIVEITHOME) やフェイスブック、ツイッターなども活用されて
用機械の安全な使用法、チェーンソーの扱い方など、危険性のあ
います。また、運転講習会を開いて、路面が泥や雪、氷などに覆
る要因に焦点を当てたビデオシリーズ8作品も制作しました。
われた状態で運転する危険を実感し、危険の回避方法を体験学習
してもらっています。講習を受けた若者数百名を「安全運転大
そのほか、児童生徒に農業や電気の安全、交通安全、家畜や動
使」に任命し、ほかの若者に対して若者同士の同じ目線で田舎道
物の危険性などを教えるための教師用資料も作成しました。ま
での安全運転について話してもらい、若年層ドライバーの安全意
た、安全ステッカーやポスターも作成し、すでに、2,000校以上
識を高めるのが最終的な目標です。
の小中学校に配布しました。学校向け「ファームセーフ」キャ
ンペーンの詳細な情報は、ホームページ(WWW.CORNISHMUTUAL.
NFUミューチュアルのジェレミー・ディストン保険引受けチー
CO.UK/FARMSAFEFORSCHOOLS)をご覧ください。
フマネージャーは、キャンペーンについて次のように語っていま
す。「農村地域に強い保険事業者として、NFUミューチュアルは
コーニッシュ・ミューチュアルのアラン・ゴッダード社長は、
農村地域に住む人々の悩みを理解し、彼らが最も影響を受ける問
高い評価を受けている「ファームセーフ」キャンペーンについ
題の解決をお手伝いするために積極的な姿勢で取り組んでいま
て、次のように語っています。「相互扶助の概念はわたしたちに
す。農村地域の交通安全という点で、大変有意義な取り組みだと
とって本当に重要です。相互扶助の価値と理念が事業を支え、お
思います。」
客様中心主義を支えています。『ファームセーフ』キャンペーン
も、この姿勢を反映しています。農業の危険性を教育し、深刻な
NFUミューチュアルではこのほかにも、馬運搬用トレーラーの
問題だということを契約者や広く農村地域に認識してもらう一助
安全性キャンペーンや農場安全キャンペーンなど各種の相互支援
になればと思います。」
プログラムを展開しています。前者は、優れた取り組みとして賞
を受賞しました。
issue 76/2013年6月 11
資本の問題を考える
ICMIFのジョン・バームフォース会長が
ミューチュアルの資本をテーマに
いかに資本要件を充足するかという
喫緊の課題について語ります
世界的金融危機と各国の金融問題、保険監督、成長可能性など
特にミューチュアルに重要なのが、予期し得ない損失への備えで
をめぐる環境が変化する中で、協同組合保険と相互保険会社で構
す。
成されるセクター(以下、ミューチュアル)は、「流動性」と「
資本ニーズと調達機会」の二つを評価していかなければなりませ
ユーロ危機によるユーロ圏の国債暴落は、資産価値の上下が資
ん。
本調達機会にどのような影響を与えるかを如実に示しました。
ICMIFの「ミューチュアル・マーケットシェア」レポート(20
モデル化やシナリオ分析を使って必要資本を評価することがで
ページ参照)が示すように、世界の保険市場では、ミューチュア
きます。この場合、分析結果には各組織のリスク理念が反映され
ルの業績が他の事業形態を上回るペースで伸びています。ICMIF
ることは承知しています。しかしICMIF会員団体の間で、モデル
会員団体を見ても、全体の2011年成長率が市場平均を上回るな
化やシナリオ分析の経験や方法、実践を共有して、より有効な方
ど、一貫して高い伸びを達成しています。その原因を、保険株式
法とすることができるのではないでしょうか。それが、セクター
会社の契約者ばなれや、契約者が組合員、ひいては所有者である
の持続可能性につながるのではないでしょうか。
という、ミューチュアルの構造がもたらす明確さ、透明性、民主
的権利に求めることもできるでしょう。
各組織では内部リスク管理と戦略策定を通じて、一部であれ、
資本の問題に取り組むことができるようになります。
保険事業をいかに成功させるか考えるとき、必然的に資本の問
題が浮かび上がってきます。ここでミューチュアルの場合、成熟
ミューチュアルは、ソルベンシーの確保、監督要件の順守、効
した市場でますます競争を強いられるようになっている現状が、
率性、機敏性の確保および将来の事業チャンスの最大化などの目
問題を複雑化しています。この市場では、規模の拡大のために有
的で追加資本を調達するなどの課題と、組合員に価値を作り出し
機的成長以外の成長戦略が必要とされ、ただでさえ限られた資本
続けるという使命の間でジレンマを抱えることがあります。
の調達源を株式会社と争わなくてはなりません。
組合員の出資や剰余金の積み立てといった伝統的な資本調達方
ミューチュアルがいかに資本調達をおこなうかという喫緊の課
法は、セクターの事業モデルに固有の長期的視点という特徴と整
題に取り組む必要性に対する認識が高まっているのは確かです。
合性を持っています。しかし、このような方法では、有機的成長
例えば、国際協同組合同盟が作成した詳細な計画書「協同組合の
以外の成長が求められている場合や、未曽有の自然災害の発生、
10年計画」では、戦略の一つとして特定されています。
監督要件の変化、経済危機などのインパクトに対応するために必
要なレベルの余剰資本を生み出すことができないかもしれませ
ミューチュアルにとっての資本というと、経営の重要課題とし
ん。
て多くの時間を割き、慎重に対応する必要があるので、とかく経
営幹部は規制上の資本要件をどう満たすかという課題だけに目を
規模の小さい事業者、とくに開発途上国のマイクロ・インシュ
向けがちですが、ほかの点についても考える必要があります。も
ランス市場で事業を行う中小保険会社にとっては、資本の調達
し、リスク調整ベースで、ある特定の種目に資本を投入すれば、
機会が、より大きな課題となってのしかかってきます。そこで
資本は業績向上を図るうえで効果的なツールになりえます。この
ICMIFの融資支援機関であるオールネーションズ社は、資金を調
場合のリスクには、「独立したリスクではなく、すでに保有する
達して、そこから新興市場の会員団体向けの融資支援を行うこと
リスクに追加するもの1」や「財務上の代替手段がある場合に全
ができるかどうか、検討を行っています。
社的観点から考察するもの2」などを挙げることができます。
上述したジレンマが生じる状況としては、資本調達のために発
このような広い視点を持つと、業績と投資の評価、信用格付け
行した株式などを非組合員が購入する場合がまず想定できます。
の維持、監督要件の順守、突発的な保険金支払いや資産運用ロス
組合員の所有権に影響が生じるからです。このジレンマを克服す
など不測の事態に備えた体質作り、事業の継続などの観点から、
るには、組合員と新株購入者の教育がカギとなります。
資本要件を評価するべきだということが分かります。この中でも
1 デロイトトウシュトーマツ「グローバルな視点‐資本に関するある重要な考え」3ページ
12
2 同上
Voice75号(6ページ)でお伝えしたように、
デロイトは委託研究のなかで、ミューチュアル
が活用できる資本調達法として、組合員/非組合
員を対象に募集する上位債や劣後債、市場で取
引可能な協同組合株式や投資証書、協同組合を
親会社とする新株式会社の設立などの方法を挙
げました。
また、再保険はリスクを管理し、資本構造を
支える効果的戦略としてミューチュアルに長年
利用されています。
ミューチュアルは組合員一人ひとりが集まっ
て生まれる強みを組合員に提供してきました。
そこで、ミューチュアルとして各組織が集ま
り、その強みを生かして、セクターのための実
行可能で流動性の高い資本市場を作り出せるか
どうか、考えてみたらどうでしょうか。ここで
わたしは、経営危機にある他の組織を支援する
基金のようなものを考えているのではありませ
ん。セクター内で資本を蓄積することができる
ような仕組みを考えています。商業ベースで資
本を蓄積し、必要な場合はセクター外の資金も
受け入れて、追加資本を必要としている組合や
組織に融資するものです。世界各地で行われて
いるリスクのプールのような仕組みです。
ICMIF理事会では、すでに資本アクセスの問題
を取り上げています。この問題についてより一
層検討するための財源と人材の確保もお願いす
ることになっています。資本の問題について、
簡単な解決策はありません。しかし、会員団体
が団結すればチャンスが生まれると信じていま
す。
issue 76/2013年6月 13
フリードリッヒ
ギーゼラー
ドイツ国内保険市場の競争が激化する中
ICMIF会員DEVK社は堅調な経営を続けています
同社CEOフリードリッヒ・ギーゼラー氏に伺いました
issue 76/2013年6月 15
ケルン中央駅のプラットフォームに降り立つと目に飛び込んで
ギーゼラー氏は、彼ら組合員を「もっとも重要なお客様でDEVKフ
くるものがあります。ガラスドームの天井にある、DEVKという4
ァミリーの一員」と位置付けています。しかしDEVKの顧客は、鉄
文字の特大ネオンサインです。このネオンサインは2009年に大掛
道職員や運輸業界に限られていません。1976年、鉄道運輸業界以
かりな工事を経て設置されました。中央駅を利用する何万人もの
外からも加入者を迎え入れるという歴史的な決断を下したからで
通勤客は毎日、ドイツでも有数の保険会社の名前を目にしている
す。この決断に基づいて生命保険子会社と損害保険子会社を設
ことになります。
立、現在は、グループ全体で約400万人の保険契約者に保険を提
供し、契約件数は1,300万件を超えています。その結果、ドイツ
単純に通勤客が多い鉄道駅という理由以外にも、ケルン中央駅
国内で、住宅保険4位、自動車保険5位、賠償責任保険6位にラン
がDEVKの広告を設置するのに適した場所である理由があります。
クされるまでに成長しました。
それは、DEVKが125年以上にわたり、鉄道職員と密接な関係を持
つ相互保険会社であることです。同社の設立は1886年で、ブレス
DEVKは、第二次大戦以降一時期をのぞいてケルンを本拠地とし
ラウ鉄道管理局の職員が埋葬費用の相互基金を設立したのが始ま
てきました。そのほか、国内19カ所に支店を設けています。お客
りです。その3年後にプロイセン邦有鉄道の職員が結成した火災
様との密接な関係作りにおいて地方支店の役割を重要視するギー
保険組織もDEVKのルーツになっています。DEVKは「ドイツ鉄道保
ゼラー氏は、DEVKが独立機関の顧客満足度調査で何度も賞を受け
険基金」の頭文字をとったものです。
ていることを誇らしげに語ります。例えば、MSRコンサルティン
グが保険業界を対象に毎年行っている調査では、全体的満足度の
DEVKには現在、これ以上ふさわしい人物はいないのではないか
項目で7年続けて「きわめて優れている」という評価を得ていま
と思われるCEOがいます。フリードリッヒ・ギーゼラー氏がその
す。
人です。ギーゼラー氏は鉄道一家の出身で、父親はドイツ国鉄の
管理職でした。ギーゼラー氏本人も大学で経営管理を学んだあと
保険の募集は主に二つの募集チャネルを用いています。およそ
ドイツ国鉄に入社、しかし2年後、24歳でDEVKに転職しました。
2,300の特約代理店とスパルダ銀行の支店網1,000店です。ギーゼ
ラー氏は、これ以外の募集チャネルの重要性は、当分の間低いま
DEVKは今日でも、ドイツ国鉄の「福利厚生パートナー」として
まで推移すると考えており、ネット販売についても「今のところ
鉄道と密接な関係を保っています。DEVKの事業を監督する理事会
主要ルートではない」としています。
には、ドイツ国鉄、労働組合、労働協議会(労働者代表が経営参
加するための機関)の各代表が理事として参加しています。ま
スパルダ銀行との結びつきは非常に重要です。DEVKとスパルダ
た、ドイツ国鉄のもう一つの福利厚生パートナーである、スパル
銀行はともに、同じ歴史的ルーツを持っていますが、長年にわた
ダ銀行(同じく鉄道にルーツを持つ協同組合銀行)とも密接な提
る密接な事業関係は1987年、パートナーシップ協定として正式に
携関係にあります。
認められました。両社は互いの商品を顧客に紹介し合っていま
す。2000年からはDEVKの職員200名がスパルダ銀行の支店に常駐
DEVKの定款によると、鉄道職員だけでなく運輸業界で働く人々
しています。マーケティング活動や広告宣伝活動でも協力し合っ
も組合員資格を有しています。現在、組合員数は80万名に達して
ているほか、DEVK,スパルダ銀行にもう一社加えた3社で、投資運
おり、選出された組合員代表からなる協議会を通じて、DEVKの経
用会社「モネガ」を設立、両社の資産もそこで運用しています。
営に直接参加しています。
ギーゼラー氏は1995年にDEVK役員に任命され、2007年、急死し
たウィルヘルム・ヒュルスマン前CEOの後を継ぎ、52歳で現職に
ドイツでは、協同組合と相互会社が強く、保険市場では合わせ
て45%のシェアを獲得しています。DEVKは相互会社であることに
誇りを持ち、それを前面に押し出しています。例えば最新の年次
報告書の冒頭には、「わたしたちは125年間続く相互保険会社で
す。そのメリットはだれの目にも明らかです」と書かれていま
す。国際的な相互会社の業界団体の活動にも積極的に関わってお
り、ICMIF加盟をはじめ、ヨーロッパの相互保険会社15社の団体
であるユーレサの正式会員にもなっています。ギーゼラー氏は、
この3年間ユーレサの委員長を務めています。
ギーゼラー氏は、「わたしたち相互会社は強い結びつきを持っ
DEVK本部(ドイツ、ケルン)
ています。相互会社の規模と重要性、とくに株主への配当金のた
めでなく組合員と顧客のためにサービスを提供するという役割
は、だんだん消費者の間で理解されるようになっています。しか
就きました。以来、競争が極めて厳しいドイツの保険業界の中
し、将来を確保するためには、相互会社の事業モデルが政治家
で、基盤強化と成長を達成してきました。直近のデータである
や一般大衆にもっと理解されるようにしなければなりません」
2011年の財務実績を見ると、国内保険業界が0.4%のマイナス成
と語っています。その一方で、相互会社の経験共有の重要性も
長となる中で、総保険料収入を2.6%伸ばし、過去3位の保険料収
指摘し、この点においてICMIFは重要な役割を果たしていると考
入を達成しました。とくに損害保険は、市場全体の成長率2.7%
えています。ユーレサの活動を通じてフランスの法的形態である
を上回る4.5%増を記録しました。
SGAM(保険相互グループ会社)の制定に熟知しており、ドイツで
も同様な形態の導入が可能かどうか思案中です。
ドイツの自動車保険市場は、顧客獲得のため採算を度外視した
保険料を提示する会社も登場するなど、し烈な価格競争が続いて
フリードリッヒ・ギーゼラー氏は58歳、ワールブルク市で育ち
います。DEVKは数年間にわたり、会計上のテクニカルな損失を出
ましたが、現在はケルン近郊のベルギッシュグラートバッハに夫
してきましたが、資産運用の利回り好転などにより2011年は黒字
人と暮らしています。
を計上することができました。市場は引き続きタイトな状況が続
いているものの、少なくとも黒字転換にこぎつけ、競争を乗り切
ることができました。顧客サービスについてギーゼラー氏は、「
お客様には優れたサービスを提供しています。とくに保険金請求
時のサービスは優れていると思います」と語っています。
DEVKはつい最近、2017年までの期間をカバーする新戦略計画を
承認しました。計画では、本業での成長率を3%と見込んでいま
す。最近手がけた革新的取り組みの一つに、商品の簡素化があ
り、ベーシック、プレミアム、デラックス、の3種類に簡素化し
た種目もあります。「営業部員だけでなく管理部門でも好評です
が、必要な保険を選ぼうとするときに、明瞭で分かりやすいとい
う点でお客様の助けにもなっています」とギーゼラーCEOは語っ
ています。おもしろいことに、自動車保険をオンラインで購入す
るお客様は、デラックスを選ぶ人が多いそうです。
DEVKは再保険事業も手掛けており、その業績がグループの収益
性に貢献しています。再保険事業はケルン本部と、子会社のエコ
ー・リーがあるチューリッヒの両方が拠点になっています。再保
険事業に参入したのは1990年代後半ですが、業績が好調だったこ
とから、4年前から国際的な再保険事業にも乗り出しました。エ
コー・リーはとくに順調な業績を上げていますが、ギーゼラー氏
によると、「主要事業者になろうとしているのではなく、長期
的な関係の信頼できるパートナーになる」ことを目指していま
す。2011年の再保険収入は前年比7%増の2億5,000万ユーロ(3億
3,000万USドル)となりました。
issue 76/2013年6月 17
ICMIFがセクターの
評判を監査
非常に興味深い分析結果が明らかにされ評判を呼んでいます。
は、ある意味、実力を十分に発揮していない」との考えを示しま
これはICMIFの「グローバル・リピュテーション」のプロジェク
した。
ト第一弾として発表したもので、その内容は保険業界全体と協同
組合/相互扶助の保険組織の評判を監査することにあります。
社名が取り上げられる割合の分析では、フォルクサム(スウェ
ーデン)、サンコール(アルゼンチン)、デジャルダン(カナ
ICMIFが企業評判コンサルタントのレピュテーション・コンサ
ダ)、ラグン・アロ(スペイン)、ラエキダード(ホンジュラ
ルタンシー社(RC社、イギリス)に委託して実施したこのプロジ
ス)、コーポレーターズ(カナダ)のICMIF会員団体の登場度が
ェクトでは、2012年11月までの12か月間に保険業界やICMIF会員
高いことが判明しました。そのうち、フォルクサムとサンコール
を取り上げたデジタルコンテンツを世界中から収集して分析しま
は、スイス再保険やチューリッヒ保険よりも上位に付けていま
した。収集したデータは世界16カ国語にも及び、デジタルメディ
す。最もよく取り上げられているのは、アクサとアリアンツで、
アに取り上げられた話題だけでなく、SNSやブログその他各種メ
それぞれ全データの20%と18%を占め、3位以下を大きく引き離
ディアのデータが含まれています。
しています。協同組合/相互扶助の保険組織は合わせて14%を占
めており、リー氏は「全体として強い発言力を持つ可能性があ
ICMIFのショーン・ターバック事務局長は、グローバル評判監
る」と結論付けています。(図1参照)
査を「ICMIFが手がけた中でも最も意欲的なプロジェクトの一
つ」と位置付け、その目的を次のように説明しています。「協同
しかし、この数字には地域差があることも指摘しており、ラテ
組合/相互扶助の組織が現在、どのような評判を得ているか理解
ンアメリカとアフリカでは、セクターが取り上げられる割合はシ
できれば、それを受け止めて、今後どのように評判を上げ、事業
ェアに比べて高く、ヨーロッパとアジアではそれと反対の傾向が
を成長させたらよいか理解し、株式会社に打ち勝つことができま
あります。
す。プロジェクトの結果は情報の宝庫となると思われます。わた
したちは、それにきちんと対応して、協同組合/相互扶助の組織
コミュニケーションの量と効果に関する分析では、メッセージ
の市場シェア獲得をめざすべきです。」
を効果的に伝えている点で、コーペラティブ・インシュランス(
イギリス)とTUW SKOK(ポーランド)が高く評価されました。
監査結果の第一弾は、2月にICMIFが開催したインターネット会
議で、RC社のスティーブ・リー氏から発表されました。発表では
RC社は収集したデータをもとに、協同組合/相互扶助の保険組
まず、「世界の保険市場におけるミューチュアルのシェアは26.7
織に関連するメッセージの認知度を検証しました。その結果、組
%だが、セクターを扱ったコンテンツやデータは保険業界全体の
合員に対する利益の分配が42%以上とよく知られていることが分
14.4%にすぎない」として、デジタルコンテンツ登場頻度が市場
かりました。長期的な視点に基づく運営や持続可能性も、それぞ
シェアに比例していないことを指摘しました。その理由として、
れほぼ25%、22%の認知度を得ました。その一方で、組合員エン
メディアは株式会社の業績を扱いがちなこと、また、株式会社は
ゲージメント、組合員による事業運営、株主がいないことは、ほ
多国籍企業が多く、同じニュースが数カ国で取り上げられがちな
とんど認知されていません(図2参照)。
ことなどが考えられるものの、「協同組合/相互扶助の保険組織
18
1. 世界中で用いられている保険ブランド
2. 協同組合/相互扶助セクターに関連するメッセージの認知度
25
利益の分配
20.13
20
長期的
18.1
持続可能性
14.4
15
非営利
組合員による所有
財務能力
10
10
8.31
8.4
次世代
7.12
株式会社とちがい株主がいない
5
契約者が所有している
3.19
1.46 1.64
1.7
1.6
1.69 1.99
組合員エンゲージメント
0
s
Z
r
rE aig OUP IAL IVA GON
RE COR SAM
in OUP
T
cto LIAN
R
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K
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CH
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INS
in
l
CH
a
RI
ZU
d
ve
i
at
er
an
A
AX
組合員による運営管理
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
45.0%
mutu
coop
協同組合/相互扶助の保険組織に関する一般大衆の概念は世界
ニアバイス・プレジデント、リズ・グリーン氏は、「5月にマン
の各地域で異なっています。北米やアジアでは、事業に対する長
チェスターで開催されるコミュニケーション・リーダーズフォー
期的な取り組みが最も重要だととらえられており、ヨーロッパで
ラム第1回会合は、監査結果から浮かび上がるメッセージを確実
も程度は低いものの同じ傾向が見られます。しかしラテンアメリ
に把握し、協同組合/相互扶助の組織のアイデンティティをどの
カでは、組合員に対する利益の分配がもっとも重要だと考えられ
ように伝えるか話し合う場になる」と期待しています。フォーラ
ています。
ムには、すでに会員団体のコミュニケーション担当者40名が参加
しており、その多くが5月の会合への出席を予定しています。
持続可能性については、協同組合との関連性は非常に高いと認
識されていますが、相互扶助組織との関連性はそれほど高いとは
監査の主要報告書はICMIF会員に提供されますが、各会員団体
考えられていません。リー氏は、株式会社が持続可能性を株式会
はそれとは別に、自社の評判を扱った監査レポートの作成を注文
社独自の概念と位置付けようとしている動きを重要視しており、
することができます。各社別レポートは、企業の評判をセクター
「もし株式会社が自分たちの持続可能性をうたい始めるのなら、
や、地域、言語、商品別に比較対照して、長所と質を分析するも
協同組合/相互扶助の保険組織は、今よりもっと努力する必要が
のです。費用は会員割引料金の3,000英ポンドで、5月末からの提
ある」と助言しています。
供となります。ご希望の方、またご質問がある方は、リズ・グリ
ーン氏までお問い合わせください。
セクターにとって有望な結果も出ています。インターネット検
索の分析では、協同組合保険や相互扶助の保険組織が検索された
グローバル・リピュテーションプロジェクトは、会員団体の業
割合が全体の45%以上に上っています。これは、市場シェアを大
績と市場シェア強化を支援する活動として2012年9月にICMIF理事
きく上回る数字で、協同組合や相互扶助の組織に対する忠誠心が
会が15万USドルの予算で執行を決定したものです。ターバック事
大きい、消費者が株式会社から協同組合や相互扶助の組織に乗り
務局長は、「結果が出てからまだ日が浅いものの、データから非
換えようとしているなどの原因が考えられます。2013年2月の発
常に有意義な洞察を得ており、利用できる情報がたくさんある」
表時点で、データの分析進捗度は2割にとどまっていましたが、
と期待しています。
リー氏は、「協同組合/相互扶助の保険組織の評判を伸ばす重要
なチャンスは何かが、すでに見え始めている」との考えを示しま
した。
RC社は2013年3月末までに分析を終えて監査の主要報告書を作
成し、4月末にICMIFエグゼクティブ委員会に提出しました。今
後、監査結果をもとに掘り下げた話し合いを行い、5月に開催さ
れるICMIFコミュニケーション・リーダーズフォーラムで活動計
画を策定する予定です。一連の作業の結果は、順次ICMIF会員団
体限定で報告していきます。ICMIFのコミュニケーション担当シ
issue 76/2013年6月 19
市場全体を上回る成長を示す
ミューチュアルのセクター
ICMIFの最新調査結果から
協同組合保険と相互保険会社で構成されるミューチュアルのセ
保険会社の中にはミューチュアルがあります。わたしたちは、事
クターは、ICMIFの「ミューチュアル・マーケットシェア」レポ
業とお客様の利益を守るために長期的な視点で事業を行っていま
ートの作成が始まった2007年以来続いている傾向を維持し、2011
す。」
年も株式会社セクターからシェアを奪ったことが明らかになりま
した。
2011年、ミューチュアル全体の保険料収入は、1兆2,000億USド
ルとなりました。これは前年比7.5%増で、同期間における世界
2011年の業績をまとめたレポート最新版によると、セクターの
の保険料増収率6.1%を上回っています。
シェアは2010年の26.4%から1.3%増の26.7%となりました。
この傾向は世界各地域で見られます。「ミューチュアル・マ
レポート最新版では調査対象数も増えています。2010年版(調
ーケットシェア」レポートでは、世界を5地域(ヨーロッパ、北
査結果はVoice75号を参照)では世界75カ国の2,900団体を対象と
米、アジア・オセアニア、アフリカ、ラテンアメリカ)に分けて
しましたが、今回は77カ国の3,300を超える団体の保険料収入と
分析していますが、そのうち4地域で、ミューチュアルの2011年
資産データを入手しました。なお、最新版では、調査対象数の増
成長率が市場の伸び率を上回りました。2007年の数字と比べる
加にともない、前年比分析を正確に行うために前年までの結果に
と、いずれの地域でもシェアが拡大しており、例えば北米では
修正を加えています。
2007年の28.5%から2011年は32.7%に伸びています。
事業別に見ると、生命保険ではセクターのシェアが2010年の
国別のデータでも、多くの国で同様の傾向が見られます。世界
24.4%から25.1%に伸びました。2007年の20.8%と比べるとシェ
の保険大国上位5カ国中4カ国、また10カ国中8カ国でセクターは
アが大きく拡大したことが分かります。損害保険事業の2011年
前年よりシェアを伸ばしました。
シェアは前年比微減の28.9%となりましたが、2007年のシェア
(27.7%)よりも依然として高い数字を確保しています。
ICMIFのショーン・ターバック事務局長は、このような最新デ
ータは、ミューチュアルのセクターを選ぶ世界的傾向を再確認す
るものであり、その原因の一つとしてセクターに対する消費者の
大きな信頼があると考えています。「金融危機後、株式会社形態
の銀行や金融機関に対する幻滅感が高まっています。世界最古の
世界の保険市場における保険料収入成長率(2007年~2011年)
26.0%
22.2%
20%
10%
17.1%
11.2%
7.1%
5%
0%
保険市場全体
ミューチュアル
30%
1,500,000
1,200,000
26.7%
26.2% 26.4%
900,000
600,000
25.1%
23.6%
25%
300,000
保険市場全体
生命保険事業
損害保険事業
20
0
2007 2008 2009 2010 2011
20%
シェア
成長率(%)
25%
保険料収入(百万USドル)
29.4%
30%
15%
世界の保険市場におけるミューチュアルのシェア
各国の保険市場に焦点
を当てたレポート
初めての試みとしてICMIFが「ミューチュアル・マーケッ
「マーケット・インサイト」レポートは、ICMIFサイトの出
トシェア」のデータに基づいて、各国のミューチュアルに
版物ページからダウンロードすることができます。印刷版
焦点を当てたレポート「マーケット・インサイト」を作成
の冊子は、11月のICMIF総会で配布する予定です。
しています。
その第一弾として、イギリス、アメリカ、カナダ、ヨー
ロッパのマーケット・インサイトレポートが完成しまし
た。その他の国のレポートも現在作成中です。レポートは
図表やグラフィックを多用し、視覚に訴える内容としてい
ます。
ミューチュアルが34%のシェアを持つ世界最大の保険大
国アメリカのレポートを例にとると、生命保険、損害保険
別に上位25団体をリストアップして、それぞれ2009年から
2011年の保険料収入と2011年の前年比成長率を示すなど、
セクターの業績を詳しく分析しています。現在、合計で2兆
USドルを超える資産についても分析を加えています。
「マーケット・インサイト」レポートはICMIFの新しい取
り組みであり、必読レポートとなることはまちがいないで
しょう。データをこのような形で分析したのは初めてです
が、主要保険市場におけるミューチュアルの重要性を証明
する内容となっています。」(ターバック事務局長)
http://www.icmif.org/market-insight-reports
issue 76/2013年6月 21
組織を率いる女性たち
国際協同組合同盟のポーリーン・グリーン会長は、2013年3月8
同じように批判的な回答をしたCEOは、「男性対女性という考え
日の国際女性デーを記念したスピーチで、「より良い世界を築く
方は嫌いです。男性CEOの中にも、女性CEOと同じようなやり方を
こととは、一人ひとりが活躍し、潜在的可能性を達成することが
する人がいることも見てきました。ですから、男性と女性は基本
できるようにすることです。ただそれだけです」と語り、協同組
的に異なる取り組み方をするという言い方を避けています」と答
合運動に対して経済的・社会的・政治的女性解放に向けた行動を
えています。しかし、ただ単に固定的な概念を否定するのではな
求めました。
く、「女性は生まれつき、複数のことを並行して処理する能力に
優れていると思います。また、男性より包括的かもしれないと思
Voice74号でも取り上げましたが、ICMIFの調査によると、協同
います。男性の方が一つのことに集中して効果的に考えることが
組合/相互扶助の保険組織では経営の執行と監督機能の幹部に女
でき、女性は周囲のことも考える傾向があることは研究でも示さ
性を起用するケースが増えています。例えば最新版の「ICMIF会
れています。結論としては、女性は、包括的で思いやりがある傾
員団体のガバナンス調査」によると、ラテンアメリカの会員団体
向を自然に持っていると言えるのではないでしょうか」とまとめ
の半数は女性CEOが率いており、北米でも31%と、およそ3社に1
ています。
社で女性がトップを務めています。
同じような分析を示した回答者は、「ほかの女性CEOとお会い
ICMIFでは今回、会員団体の女性CEOや理事長を対象にした緊急
した経験から、女性CEOは男性よりもっとオープンな姿勢を有
アンケート調査を実施しました。12名が回答を寄せてくださり、
し、第三者の助言を聞こうとするように思います。また、権威的
現在、その内容を匿名化して分析中です。結果はレポートにまと
でなく参加型の経営スタイルを取ろうとします。男性CEOの中に
めて2013年末までに発表の予定です。
は、これを女性の弱点と考える人もいますが、それはちがいま
す。役員会に女性がいる場合や経営トップが女性の場合、会議の
これまでの分析からは、興味深い結果が浮かび上がっていま
トーンが異なるという研究結果を目にしたことがあります。より
す。その一例として、「男性CEOと女性CEOは仕事のやり方が異な
オープンで、積極的に質問をしやすく、会議にエゴを持ち込まな
ると思いますか」という質問に対する回答をご紹介しましょう。
いという雰囲気です」と述べました。
女性CEOは、経営スタイルの男女差に関する既成概念を単純に持
ち出しません。ある回答者は「仕事のやり方という点では、CEO
「私が知っている女性リーダーは概して男性よりも協調的なスタ
はだれもが同じやり方で同じ仕事をしていると考えます」と述べ
イルを取っています」と答える回答者もいました。アンケートで
ています。
は、企業トップに必要なリーダーシップ資質とは何か、女性にと
ってガラスの天井はまだ存在すると思うか、協同組合/相互扶助
別の回答者は、女性は関係作りや人材育成的な方法に優れてい
の組織は、株式会社に比べて女性をトップに起用する本質的特徴
るという特徴がある一方で、男性は戦略的方法を開発し結果を出
を持っているかなどの質問も尋ねています。
そうとする意志が強い、という単純な考え方を批判的にとらえて
います。「このような既成概念には賛成できません。女性は男性
アンケート調査の結果はまとまり次第、Voiceで紹介するほ
と同じように良きリーダーになれることを証明してきました。女
か、ICMIFサイトにも掲載する予定です。
性であれ、男性であれ、リーダーとして必要な資質とスキルと経
験を有している人間がリーダーになるのです。」
22
子どものニュースキャスター
ICMIFテレビスタジオにて
2012年の秋にイギリスのマンチェスターで開催された協同組合
コメント
フェスティバル兼エキスポ「コーペラティブ・ユナイテッド」で
ICMIFでは、協同組合/相互扶助の保険組織に
は、ICMIFブースに設けられた特設スタジオで、会場を訪れた子
よる次世代支援というテーマを継続し、2013年
どもたちにニュースキャスターになって協同組合関連ニュースを
11月に南アフリカのケープタウンで開催される
読み上げてもらうという企画が評判を呼びました。
総会で、同国で恵まれない子どもたちに教育機
会を与える支援活動を行っているチャリティー
ICMIFでは、日常生活の中で協同組合が果たしている役割を楽
団体、MAD(Make A Difference)財団を支援し
しく知ってもらうことを目的とした、協同組合村の「協同組合の
ます。Voice次号では、MAD財団を取り上げ、支
暮らし」コーナーに、イギリスのコーペラティブ・グループと共
援方法などもあわせて説明する予定です。
同で「大切なお金のこと」と名付けたブースを設けました。
MAD財団
会場を訪れた子どもたちは、ブース内のスタジオで実際のキャ
www.madcharity.org
スターのようにプロンプターに表示されたニュースをカメラに向
かって読み上げたり、イギリスの金融相互扶助組織協会(AFM)
向けに特別に開発された、お金のことについて学ぶオンラインゲ
ーム「Fun to Save(楽しく貯めよう」や「Saving Squad(貯蓄
任務班)」で遊んだりしました。
ICMIF特設スタジオの企画に参加した子どもと
ICMIFコミュニケーション担当バイス・プレジデントの
ギャレス・ケンドリック氏
子どもだけでなく、著名な協同組合関係者もニュースキャスタ
ーの企画に参加しました。その一人、デジャルダン・グループの
モニク・ルルーCEO(2ページの記事参照)は、マリ共和国でデジ
ャルダンの開発機関が行っている活動に関するニュースを読み上
げました。
ニュースを読み上げた様子はビデオに収録され、http://www.
youtube.com/icmiftvで公開されています。
ICMIFの「大切なお金のこと」ブース
issue 76/2013年6月 23
劇的な違いをもたらす
一週間の経験
次世代リーダーの戦略的指導力の開発を
促すICMIFのマネージメントコース
ICMIFのマネージメントコースはたった5日間で
メントコースの感想を短い動画にまとめ、http://
す。しかし充実した5日間で得る洞察は、将来もず
tinyurl.com/bllxdpkで公開しています。
っと役に立ちます。過去のコース受講生は、コース
についてこのような感想を述べました。
コーポレーターズでは現在、社内研修コースに
ICMIFマネージメントコースの講師を2名招いていま
今年で13年目の開催となるマネージメントコー
すが、マクドナルド氏は、文化背景が(そして保険
スは、2013年5月12日~17日の日程で、イギリスの
の伝統も)異なる多くの国々から参加者が集まるこ
マンチェスターで開催されます。今回も世界各地
とがマネージメントコースならではの利点であり、
からICMIF会員団体の次世代幹部候補生が参加しま
コース参加者の国際性が真のメリットを作り出すと
す。参加する費用と時間に見合う以上の価値がある
考えています。ラセグンダ(アルゼンチン)のマリ
コースと判断し、自社の人材管理開発計画の一環
オ・テルヤ営業マーケティング役員も同じような指
として、毎年受講生を送り出す会員団体が増えて
摘をしています。「違う国や地域の人々と会って考
います。
え方を聞き、仕事の仕方を知ることは、自分の仕事
に応用できる知識を得るうえで有意義です。」
その一つ、ドイツのR&V保険は、毎年1~2名の
受講生を派遣しています。同社のアンドレアス・ベ
テルヤ氏は、「参加者の間に、互いに助け合い、
ックマン最高保険引受責任者は、「リーダーになる
知識や経験を共有したいという、本物の仲間意識と
可能性を持っていると判断した職員に受講させてい
調和の雰囲気を感じました」と語り、コースが進む
ます。すでに責任ある主要ポストに就いている職員
につれ受講者同志にチーム意識が生まれることも指
を派遣していますが、毎年、自分の仕事や自分が働
摘しています。HUKコーブルグ(ドイツ)のサラ・
く組織について視野を広げて帰ってきます。組織の
レスラー氏も、「参加者は違う国の違う会社から来
構造とやり方を発展させるうえで有益です」と語っ
ているのに、事業の運営方法を決定するうえで、相
ています。
互扶助の考えが参加者全員の強力な共通項となって
います」と語り、共通の絆を強調しています。
カナダ、コーポレーターズのスコット・マクドナ
ルド地域保険金支払い担当シニアマネージャーは、
Agileシミュレーションツールを使った演習で
以前コースに参加した経験を次のように述べていま
は、チームワークが重要になります。これは、大保
す。「受講後、職場に帰ってすぐ、学んだことを実
険会社を経営する際に必要なトップレベルの意思決
践に移すことができました。重要な学習内容はチー
定のシミュレーションを行う演習で、マネージメン
ムと共有し、戦略的プランニング演習で学んだスキ
トコースの枠組みに組み込まれています。2012年の
ルを使ってみました」。マクドナルド氏はマネージ
コースに参加したアルカ(デンマーク)のヨルゲ
ン・ペーダーセン氏は、AgileこそがICMIFマネージ
24
2012年のICMIFマネージメン
トコース参加者-(左から)
プライム・イスラミ(バング
ラデッシュ)のモハマド・シ
ビア・ホサイン内部監査・
管理・コンプライアンス部
長、HUKコーブルグ(ドイツ)
のダニエル・トマス自動車
保険事業部長、フォルクサム
(スウェーデン)のペール・
マーティンソン販売課長
メントコースと他コースとの違いを作ると考えてい
参加した1週間を「将来へのタイムトラベル」と形
ます。同氏もほかの参加者と同じように、参加者同
容し、その成果を次のようにまとめています。「職
士の団結を強く感じ、協同組合/相互扶助の保険組
場に戻ったとき、自分のスキルに対して以前よりも
織の国際的なネットワークをより強く認識するよ
っと自信を持ち、会社が何を必要としているか、よ
うになりました。同僚にもコース参加を勧めたそ
り深く理解できるようになりました。経営管理に関
うです。
する理解を深めてくれたのが、このマネージメント
コースです。」
今後仕事をしていくうえで必要な指導者としての
スキルを受講者につけてもらうことが、ICMIFマネ
マネージメントコースに関するお問い合わせは、
ージメントコースの目的です。シネテリスティキ(
担当者のマイク・アシャーストまでお願いします
ギリシャ)のネクタリア・ムペッサ氏は、コースに
([email protected])。
イギリスのICMIF会員、エクレシアスティカル
2012年のコースに参加した事業向け保険金支払
は、この数年間継続して職員をICMIFマネージメ
いチームリーダーのジェニー・ニール氏は、意思
ントコースに派遣しています。
決定における人間行動の理解を、コースの直接的
成果の一つとして挙げています。「個人一人ひと
2005年にコースに参加した後、社内各部署で経
りが感情や直観に基づいて意思決定を行うことが
験を積み、現在は特注・ニッチ保険商品担当役員
分かりました。人間の行動を認識し、適切な形で
を務めるポール・グラスパー氏は、コースに参加
影響力を行使する方法について、多くの知識を得
したおかげで戦略的リーダーシップへの関心を再
ただけでなく、意思決定を容易にする実践的な枠
確認することができたと当時を振り返りました。
組みも学ぶことができました」。コースが今後の
「コースは、意思決定、チーム作り、問題解決、
キャリア開発に与える影響については次のように
指導力、意見対立の解消など、不可欠なビジネス
考えています。「今後キャリアを通じてずっと、
スキルを獲得するような形で構成されています。
コースから持ち帰った多くのツール、とくに、プ
戦略的リーダーシップに関心のある人は、ぜひこ
ロジェクト管理と指導力に関する学びを参考にす
のコースに参加してほしいと思います。」
ることができると思います。世界各地のいろいろ
な会社から参加した受講生は、通常の業務では接
コースに派遣する職員の選定は、保険金支払
触することのないような方々ですが、協同組合/
い・リスクサービス担当役員のデイビッド・ボー
相互扶助組織の価値を共有しています。このよう
ンヒル氏が行います。エクレシアスティカルで
な参加者とネットワークを築くことができたの
は、ICMIFマネージメントコースを経営幹部育成
も、将来きっと役立つと思います。」
計画の一環と位置付けており、今後、伸びる可能
性があると判断する職員に受講させています。「
受講生には、新しく学んだことを職場に持ち帰
り、事業に取り入れるだけでなく、職場の同僚と
も共有してほしいと思います。」
issue 76/2013年6月 25
世界銀行専務理事コメント
タカフルの根本理念は
協同と相互扶助にあり
世界銀行が新たな出版物を発表しました。その内
会議は、タカフルの開発と発展という観点から、
容は、急成長しているイスラム教に準拠する保険制
相互扶助の保険制度をイスラム教以外のキリスト教
度「タカフル」と、協同組合/相互扶助の保険組織
やユダヤ教の事例も含めて考察する機会となりまし
との関連性を強調したものとなっています。
た。また、イスラム教徒の多い新興国のマイクロイ
ンシュランス市場にタカフルの構造を活かす方法も
「タカフルと相互扶助の保険-従来の保険に代わる
検討しました。
リスク管理」と題する出版物は、2012年11月中旬
に、多くの出席者を集めトルコのイスタンブールで
「タカフルの積極的開発と実施に向けてチャレンジ
開催された会議で発表されました。出版物は、世界
するべき課題とその解決策の理解度と認知度を高
的に著名な専門家が執筆したレポートを集めたも
め、充分な議論を喚起すること」がレポートの目的
ので、ICMIFのシニアバイス・プレジデント、サビ
であるとして、世界銀行のセラプ・ゴヌラル金融セ
エ・パテル氏も寄稿しています。
クター上級スペシャリストは説明しています。ま
た、「世界各地で採用されている既存事業モデルの
イスタンブール会議で開会の挨拶に立った世界銀
利点を生かしながら、シャリア適格性とイスラム教
行のマームード・モヒエルディン専務理事は、タカ
社会の文化との整合性を持たせた、ハイブリッド型
フルが社会的連帯、協同、相互扶助の概念に基づい
のタカフル事業モデル」を開発するという狙いも持
ていることを、次のような言葉で表しました。「タ
っているとしています。
カフルは本質的に、19世紀のヨーロッパとアメリカ
大陸で形成された初期の協同組合運動と同じ精神を
サビエ・パテル氏もイスタンブール会議で講演
持つ、協同組合的制度です。タカフルも協同組合運
し、ミューチュアルとタカフルが協力する重要性
動も、自由意思による結びつき、社会的一体性の促
を強調しました。また、タカフル事業者の多くが
進、戦略的意思決定における説明責任の確保、地域
ICMIFに加盟していることや、タカフル専用サイト
社会の支援といった、同じ基本的価値を有してい
やタカフル・ニュースレターの定期的発行、一部会
ます。」
員団体に国内市場でタカフル推進を働きかけるな
ど、ICMIFの取り組みを紹介しました。
26
さらに、シャリア適格性を持つマイクロインシュ
ランスの開発について、ICMIF会員団体にとっての
重要性を次のように語りました。「低所得者層の
多くがイスラム教徒であることを考えると、貧困
の輪を断ち切るためにはマイクロタカフルの開発が
必要なことが分かります。私たちの運動は、タカフ
ルとの結びつきを持ち、マイクロインシュランスの
提供で長期間にわたる実証された経験を持っている
のでマイクロタカフル開発の先頭に立つことができ
ます。」
世界銀行のレポートは、http://www.icmif.org/
world-bank-bookからダウンロードすることができ
ます。
シェイカン保険再保険会社(スーダン)のサ
ラー・エル・ディン・ムサ氏が、ICMIFタカフ
ルネットワークの新座長に就任しました。
サラー・エル・ディン氏は、サイド・モヒー
ブ氏の後任としてICMIF理事にも就任します。こ
れでアフリカ出身理事が2名に増えました。
サラー・エル・ディン氏は、1980年代、保険業
界に入り、以降、スーダンだけでなくイエメン、
オマーン、カタールの保険会社で管理職を務めて
きました。現職に就任したのは2011年です。シ
ェイカンは、1983年に設立された保険会社で、
今では国内大手の一つに数えられています。
近年はICMIFのタカフル活動でも主要な役割を果た
しています。ICMIFのショーン・ターバック事務局長
は、「サラー・エル・ディン氏のリーダーシップのも
と、協同組合の理念に基づくタカフル開発活動に本
腰を入れて取り組み、ICMIFマイクロタカフル支援セ
ンターを通じて低所得者層のニーズに対応していく
ことができると信じている」と期待を示しました。
issue 76/2013年6月 27
ICMIF新職員のご紹介
キャサリン・ホック氏
キャサリン・ホック氏を、国際関係担当バイス・プレジデントとして再
びICMIFに迎えることが決まりました。 グローバルな場でICMIFの会員団
体を代表して発言し、働きかけることがホック氏の役目です。ホック氏
は、ICMIFのヨーロッパ地域協会であったACMEに勤務した後、ACMEがAMICE(
欧州相互会社/協同組合保険事業者協会)に統合した2008年からは、AMICEの
副事務局長を務めました。
ICMIFのショーン・ターバック事務局長は、「保険監督がますますグロ
ーバル化している今、タイムリーな人事です。ホック氏は、国際的な場で
ICMIF会員団体とセクターを代表してロビー活動をします。ICMIFの視点を的
確に把握し、必要な場で発信するためには、会員団体で法務や財務を担当す
る専門家の助言が必要です。協力してくださる方は、ぜひホック氏にご連絡
ください」と、ホック氏の就任に期待を寄せています。
ホック氏はベルギー人で、フランス語、スペイン語、英語、ドイツ語に堪
能です。国際関係担当者としての業務は、ブリュッセルをベースにして、
イギリスのICMIF事務局と密接に連絡を取りながら執り行う予定です。ま
た、ICMIF/アメリカ地域やアジアオセアニア協会(AOA)など、各地域協会
とも協力していきます。ICMIFへの復帰について、ホック氏は次のような抱
負を語っています。
「ICMIFに戻ることをうれしく思います。国際関係担当者として、ICMIFの国
際的な活動とグローバルな認知度を強化する取り組みに貢献していきたいと
思います。多くの会員団体とはすでに顔なじみですが、そのほかの会員団体
の皆様とも、2013年11月にケープタウンで開催される総会などでぜひお会い
したいと思います。わたしがヨーロッパやグローバルな場で経験を培ってき
たことをご存知の方も多いと思います。」
ホック氏は、ACMEに勤務する前は、ベルギー外務省や国連(ニューヨーク
やウイーン、アンゴラ)の仕事に従事していました。
「ICMIF会員団体に関連する国際的な課題が多数存在します。ICMIF会員団体
や、その他AMICEなどセクターの諸機関と密接に協力しながら、議論の場に
おける発言力を確保し、世界の保険市場に関連する意思決定機関に働きかけ
ていきたいと思います。国際機関の要望に素早く対応し、セクターの声を明
確に言語化して発言するためには、皆様のご協力が必要です。どうぞよろし
くお願いします。」
28
イアン・ウォーガン氏とリサ・ウィリアムズ氏
イアン・ウォーガン氏(写真左)は、2009年ロンドンのカンバウェル美術大
学グラフィックデザイン科を卒業して、2012年10月にマーケティング・コミュ
ニケーション担当アシスタントとしてICMIF事務局に入りました。
「国際的な機関で働くのは楽しいですね。いろいろな媒体を使い、しかも各国
語でコミュニケーションを取るという仕事は、大変ですがエキサイティングで
す。」(ウォーガン氏)
リサ・ウィリアムズ氏(写真右)は2013年4月にICMIFに入ったばかり
で、ICMIFシニアバイス・プレジデント兼最高財務責任者のサビエ・パテル
氏のアシスタントとして活動しています。まずは1年の契約スタッフとし
て、ICMIF開発・オールネーションズ社部門でマイクロインシュランスの研究
調査を担当します。
ウィリアムズ氏は、大学でスペイン語と経営学を専攻、現在は、大学院でス
ペイン語と英語の翻訳研究も行っています。スペイン語に堪能で、ラテンアメ
リカで勤務した経験もあります。今まで、広報やコミュニケーション、販売・
事業開発などの分野で働いてきました。
「ウィリアムズ氏は、開発・オールネーションズ社チームの貴重なスタッフと
して、この特殊な分野での知識向上に貢献してくれると思います。今後、仕事
の一環として会員団体の皆様に連絡を取ることがあると思いますので、よろ
しくお願いします。ウィリアムズ氏をICMIFの一員として歓迎したいと思いま
す。」(パテル氏)
issue 76/2013年6月 29
Proudly supporting:
指導力…革新性…
影響力.
南アフリカ・ケープタウン2013年11月6日(水)~8日(金)
http://www.icmif.org/capetown/ja
ICMIF総会への参加申し込みはお済ませになりましたか。協
同組合/相互扶助の保険組織の指導者を対象にした特別なイベ
ントであるICMIF総会は、参加者同士が交流し、他社トップが
発表する刺激的なプレゼンテーションから新戦略を学ぶ絶好
の機会です。会員団体が決めたテーマを扱う6つの分科会も開
催されます。興味のあるテーマを選んでご参加ください。
総会で扱うテーマの一例
価値ある組織づくりと
顧客への価値還元
世界経済の展望
主要課題への取り組み
相互扶助のセクター
将来に向けた支援策
成長戦略
協同組合/相互扶助の組織
ソーシャルプログラムも充実しています。世界で最も美
しい国の一つに数えられる南アフリカで開催されるICMIF
総会は、きっと忘れられない経験となるでしょう。
総会へご参加いただければ、ICMIF総会ならではの洞
察と、戦略的解決策、トップ同士の国際的な交流関係と
いう大きな成果を得ていただけるものと思います。今回
は、アフリカで開催される初の総会の成果を後世に伝えた
いとの思いから、南アフリカの恵まれない子どもたちに
教育の機会を与える活動を行っているチャリティー団体
MAD(Make A Difference)財団を支援することとしました。
皆様もぜひご協力くださいますようお願いいたします。
なお、MAD財団については、ホームページ(www.
madcharity.org)をご覧ください。
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