...

第 12 節 グリコシド及び植物アルカイド(天然のもの及びこれと同一の

by user

on
Category: Documents
19

views

Report

Comments

Transcript

第 12 節 グリコシド及び植物アルカイド(天然のもの及びこれと同一の
第 12 節
グリコシド及び植物アルカイド(天然のもの及びこれと同一の構造を有する合成
のものに限る。)並びにこれらの塩、エーテル、エステルその他の誘導体
総説
この節において、「誘導体」とは、各項の出発化合物から得られ、かつ、基本化学構造を含
む母体化合物の重要な特性を有する化合物をいう。
29.38
グリコシド(天然のもの及びこれと同一の構造を有する合成のものに限る。)及び
その塩、エーテル、エステルその他の誘導体
2938.10−ルトシド(ルチン)及びその誘導体
2938.90−その他のもの
グリコシド(配糖体)は、天然には特に植物界に広く分布する。通常、酸、塩基又は酵素
の作用によって糖と糖以外の部分(アグリコン)に分解される。これらの部分は、糖のア
ノマーを形成する炭素原子によって互いにつながっている。したがって、29.40 項のバッシ
ニンとハマメリタンニンのようなものは、グリコシドとは認められない。
自然界に最も多く存在するグリコシドは、O−グリコシドで、糖の部分とアグリコンがア
セタール官能基によって結び付いている。しかしながら、自然界に存在するN−グリコシ
ド、S−グリコシド及びC−グリコシドにおいては、糖のアノマーを形成する炭素原子が、
窒素原子、硫黄原子又は炭素原子によってアグリコンに結合している(例えば、カシミロ
エジン(N−グリコシド)
、シニグリン(S−グリコシド)及びアロイン(C−グリコシド)
)。
アグリコンは、エステル基によって糖と結合することもある。
グリコシドは、一般に無色の固体物質で、植物組織の保持物質を形成し、刺激剤として作
用する。多くは治療に使用する。
(1) ルトシド(ルチン)
:多くの植物中に存在し、特にソバ科植物(Fagopyrum esculentum
Moench.、Polygonaceae)には乾燥状態で約 3%含まれている。
(2)
ジギタリスグリコシド:ジギタリス属の植物(例えば、D.lanata.D.purpurea)中に
存在する。一部のものは心臓興奮剤として重要である。ジギトキシンを含むある種のもの
は、無色の白色結晶性の粉末で猛毒である。ジゴニキシン及びジギトニン(ジギタリスの
サポニンの一種)は、化学試薬として使用される。
(3)
グリシルリジン及びグリシルリザード:甘草の根に含有される無色の結晶。アンモニ
ウムグリシルリザードは赤かっ色の塊で飲料の製造に使用する。グリシルリザードは、ま
た医薬にも使用する。
(4)
ストロファンチン:きょうちくとう属の多くの植物中に存在するグリコシド。極めて
有効な心臓興奮剤である。この種のものの中には、ウアバイン又はストロファンチンを含
み、無色の結晶で、極めて有毒である。
(5)
サポニン:植物界にかなり豊富な無定形のグリコシドで、くしゃみを起こさせる作用
を有する。水溶液は振動させると泡を生じる。医薬、清浄剤の製造及び発泡消火剤に使用
される。
(6) アロイン:種々のアロエ属の植物の葉中に存在する。
(7)
アミグダリン:ビターアーモンド及び各種の果実の核の中に含まれており、去たん剤
として使用する。
(8) アルブチン:しゃくなげ科植物の葉の中に存在し、利尿剤として使用する。
(9) シニグリン:黒からしの種子又は西洋わさびの根の中に存在し、医薬に使用する。
この項には、天然又は合成のグリコシドであるタンニン誘導体を含む。
この項には、また、グリコシドの天然混合物及びその誘導体の天然混合物(例えば、プル
プレアグリコシドA、プルプレアグリコシドB、ジギトキシン、ジトキシン、ジタロキシ
ン等を含有するジギタリスグリコシドの天然混合物)を含むが、これらのものを人為的に
混合したもの又は調製品を含まない。
この項には以下の物品も含まない。
(1) ヌクレオシド及びヌクレオチド(29.34)
(2) アルカロイド(例えば、トマチン)(29.39)
(3) 非天然グリコシド(29.37 項又は 29.39 項の製品を除く。)。この物品のグリコシド結合
は、アノマーを形成する炭素原子のエーテル化によって形成されるアセタール官能基であ
る。(α−メチルグリコシド、トリベノサイド(INN))(29.40)
(4) 抗生物質(例えばトヨカマイシン)(29.41)
29.39
植物アルカロイド(天然のもの及びこれと同一の構造を有する合成のものに限る。)
及びその塩、エーテル、エステルその他の誘導体
−あへんアルカロイド及びその誘導体並びにこれらの塩
2939.11−−けしがら濃縮物並びにブプレノルフィン(INN)、コデイン、ジヒドロコデ
イン
(INN)、エチルモルヒネ、エトルフィン(INN)、ヘロイン、ヒドロコドン(INN)、
ヒドロモルホン(INN)、モルヒネ、ニコモルヒネ(INN)、オキシコドン(INN)、
オキシモルホン(INN)、フォルコジン(INN)、テバコン(INN)及びテバイン並
びにこれらの塩
2939.19−−その他のもの
−キナアルカロイド及びその誘導体並びにこれらの塩
2939.21−−キニーネ及びその塩
2939.29−−その他のもの
2939.30−カフェイン及びその塩
−エフェドリン類及びその塩
2939.41−−エフェドリン及びその塩
2939.42−−プソイドエフェドリン(INN)及びその塩
2939.43−−カチン(INN)及びその塩
2939.49−−その他のもの
−テオフィリン及びアミノフィリン(テオフィリン−エチレンジアミン)並びにこれらの
誘導体並びにこれらの塩
2939.51−−フェネチリン(INN)及びその塩
2939.59−−その他のもの
−ライ麦麦角のアルカロイド及びその誘導体並びにこれらの塩
2939.61−−エルゴメトリン(INN)及びその塩
2939.62−−エルゴタミン(INN)及びその塩
2939.63−−リゼルギン酸及びその塩
2939.69−−その他のもの
−その他のもの
2939.91−−コカイン、エクゴニン、レボメタンフェタミン、メタンフェタミン(INN)
及びメタンフェタミンラセメート並びにこれらの塩、エステル及びその他の誘導体
2939.99−−その他のもの
アルカロイドは、植物体中に産する複雑な有機塩基で、強い生理作用を有する。あるもの
は合成によっても得られる。強弱の差はあるがいずれも毒性を有している。
この項には、純粋なアルカロイドのほかにアルカロイドの天然混合物(例えば、ベラトリ
ン、あへんの総アルカロイドを含むが、アルカロイドを人為的に混合したもの又は調製品
を含まない。この項には、また、液汁(樹液)や植物抽出物(例えば、あへんの乾燥液汁)
は含まない(13.02)。
また、この項には、アルカロイドの水素添加誘導体、脱水素誘導体、酸素添加誘導体及び
脱酸素誘導体を含み、更に、一般に、その構造が天然アルカロイドから得られた構造と同
一であるアルカロイド誘導体を含む。
(A) あへんアルカロイド及びその誘導体並びにこれらの塩
(1) モルヒネ:あへん中に存在し、無色の結晶で強力な麻酔性があり、猛毒である。
(2) ジヒドロモルヒネ、デソモルヒネ(desomorphine(INN))
(ジヒドトデオキシモル
ヒネ)、ヒドロモルホン(hydromorphone(INN))
(ジヒドロモルヒノン)及びメトポン
(metopon(INN))(5−メチルジヒドロモルヒノン)
(3) ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)
:結晶性の白色粉末でコデイン及びモルヒネの代わり
に鎮静剤として使用する。
(4)
エチルモルヒネ:無臭の結晶性白色粉末で、睡眠剤として内服用に供し、また、局部
麻酔剤として使用する。
(5) コデイン(メチルモルヒネ、モルヒネのモノメチルエーテル)
:あへん中にモルヒネと
ともに存在する。結晶で、モルヒネの代わりに鎮静剤として使用する。
(6)
ジヒドロコデイン(dihydrocodeine(INN))、ヒドロコドン(hydrocodone(IN
N)
(ジヒドロコデイノン)、オキシコドン(oxycodone(INN))
(ジヒドロヒドロキシコ
デイノン)
(7) ナルセイン:あへんの副アルカロイドで結晶。催眠剤及び鎮痛剤として使用する。
(8)
ノスカピン(noscapin(INN))(ナルコチン):あへんの副アルカロイドで、結晶。
モルヒネより作用が弱く、毒性はわずかである。
(9) コタルニン及びヒドロコタルニン:ナルコチンから得られる。
(10) パパベリン:あへんの副アルカロイドで、結晶。麻酔及び鎮静作用を有するが、モル
ヒネよりは作用が弱い。
(11) 塩酸エタベリン(ethaverine hydrochloride(INNM)
)(塩酸
キシベンジル)−6,7−ジエトキシイソキノリン)
(12) テバイン:あへんの副アルカロイドで無臭の結晶、有毒である。
1−(3,4−ジエト
(13) けしがら濃縮物:天然のアルカロイドの混合物で、けし(Papaver somniferum)か
ら抽出し、精製したもので、アルカロイドの含有量が全重量の 50%以上のもの
あへんアルカロイドの誘導体は、エポキシ架橋モルヒネ構造を有している限り、水素添加
されているかいないかを問わず、この項に属する。
(B) キナアルカロイド及びその誘導体並びにこれらの塩
(1) キニーネ:アカネ科のキナ属等の植物(特に、Cinchona of icinalis、Cinchona calisaya
及びCinchona succirubra)の樹皮に存在する。結晶性の白色粉末。キニーネ及びその塩は、
血液中に存在する原生動物の原形質を麻ひさせる作用を持つので、解熱剤、抗マラリア剤
として使用する。
(2)
キニジン:キナ属の植物の樹皮に含まれている。結晶で、硫酸キニーネの母液から抽
出される。
(3)
シンコニン:キナ属植物の樹皮に含まれるアルカロイドの中ではキニーネに次いで重
要なものである。結晶である。
(4) シンコニジン:キナ属植物の樹皮中に存在する。結晶である。
(5) タンニン酸キニーネ
(C) カフェイン及びその塩
カフェイン(caffeine):コーヒー豆、茶、コーラの実から抽出するか又は合成によって得
られる。絹状の結晶で医薬に使用する。
(D) エフェドリン類及びこれらの塩
(1) エフェドリン(Ephedrine):Ephedra vulgaris 中に含まれていて、また、合成によ
っても製造される。無色の結晶で医薬に使用する。
(2) メチルエフェドリン
(3) エタフェドリン(INN)
(4) ノルエフェドリン
(5) プソイドエフェドリン(Pseudoephedrine(INN))
(E) テオフィリン、アミノフィリン(テオフィリン−エチレンジアミン)及びこれらの誘
導体並びにこれらの塩
テオフィリン:茶に存在するが、また、合成によっても得られる。結晶でしばしば利尿剤、
また、アミノフィリン(テオフィリン−エチレンジアミン)としても使用する。
(F) ライ麦麦角のアルカロイド及びその誘導体並びにこれらの塩
(1)
エルゴメトリン(INN)(9,10−ジデヒドロ−N−[(S)−2−ヒドロキシ−1−メ
チルエチル]−6−メチルエルゴリン−88−カルボキサミド)(エルゴノビン):四面体及び
細い針状の結晶。子宮収縮剤及びリゼルギド(INN)製造の前駆物質として使用する(29
類末尾の前駆物質のリストを参照)
。重要な誘導体はマレイン酸エルゴメトリンでマレイン
酸エルゴノビンとも呼ばれる。
(2)
エルゴタミン(INN)(12'−ヒドロキシ−2'−メチル−5'α−(フェニルメチル)エ
ルゴタマン−3',6',18−トリオン)
:血管収縮剤及びリゼルギド(INN)製造の前駆物質と
して使用する(29 類末尾の前駆物質のリストを参照)。主な誘導体にこはく酸エルゴタミン、
酒石酸エルゴタミンを含む。
(3) リゼルギン酸(9,10−ジデヒドロ−6−メチルエルゴリン−8−カルボン酸)
:麦角アル
カロイドのアルカリ加水分解によって又は claviceps paspali から得られる。板状六方晶又
は鱗片状の結晶。催幻覚剤及びリゼルギド(INN)製造の前駆物質として使用する(29
類末尾の前駆物質のリストを参照)。
(4) 他の麦角アルカロイド:例えば、エルゴシン、エルゴクリスチン、エルゴクリプチン、
エルゴコルニン及びメチルエルゴメトリン
(G) ニコチン及びその塩
ニコチン:たばこの葉に存在するアルカロイドで、また、合成によっても得られる。無色
の液体で空気にさらすとかっ色に代わり、特有の刺激臭を有する。強塩基で、有毒結晶性
塩を生成する。植物の殺菌、殺虫剤として使用する。
(H) その他の植物アルカロイド並びにその誘導体及び塩
(1) アレコリン:びんろうの堅果に存在するアルカロイド
(2)
アコニチン:最も猛毒なアルカロイドの一つとして知られている。とりかぶと属(A
c-onitus napellus)の乾燥した根から抽出される。強力な鎮静剤として使用する。
(3) フィソスチグミン(エセリン)
:カラバル豆中に存在する。無色の結晶で空気にさらす
と赤黄色に変る。医薬に使用する。
(4)
ピロカルピン:みかん科(Pilocarpus jaborandi)に含まれる主要なアルカロイド。
無色の塊で空気にさらすとかっ色に変わる。ピロカルピン及びその塩は医薬(発汗促進)、
眼科医用、増毛ローション製造用に使用する。
(5)
スパルテイン:えにしだに存在するアルカロイド。無色の液体。硫酸スパルテインは
強心剤として使用する。
(6) アトロピン:主としてDatura atramonium から得られるが、また、合成によっても
製造される。結晶。猛毒で瞳孔を拡大する。
(7) ホマトロピン:無色の結晶でアトロピンと同様の化学的作用及び物理的作用を有する。
(8) ヒオスシアミン:Atropa belladonna 中及びHyoscyamus 属の多数の植物中に存在す
る主要なアルカイド。無色の結晶で毒性が強い。その塩(例えば、硫酸塩及び臭化水素酸
塩)は医薬に使用する。
(9) スコポラミン(ヒオスシン)
:Datura 属の多くの植物中に存在している。無色の粘ち
ょうな液体又は無色の結晶。その塩(例えば、臭化水素酸塩及び硫酸塩)は結晶で医薬に
使用する。
(10) コルヒチン:Colchicum autumnale 植物中に存在する。ガム状の塊、黄色の粉末、
結晶又はフレーク状で、医薬に使用し、猛毒である。
(11)
ベラトリン:sabadilla の種子から採取したアルカロイドの天然混合物である。無定
形の白色粉末で、吸湿性がある。刺激性があり、くしゃみを起こさせる作用が強く、有毒
で、医薬に使用される。
(12) セバジン:結晶化したベラトリンに相当する。
(13) コカイン:数種のコカ特に、Erythroxylum coca の葉から抽出される結晶。また、
合成によっても得られる。商取引上の粗コカインは純粋でなく、80%から 94%のコカイン
を含有するが、そのような性状のものでもこの項に含まれる。コカインの水溶液はアルカ
リ性であり、種々の塩を形成する。強力な麻酔作用を有する。
(14) エメチン:Uragoga ipecacuanha の根に存在する。無定形の白色粉末で空気にさら
すと黄色に変わる。去たん剤及び吐剤として使用される。その塩はアメーバ赤痢治療に使
用する。
(15) ストリキニーネ:Strychnos 属の各種植物(nux vomica.St.Ignatius beans)から
抽出される。絹状の結晶で猛毒。結晶性塩を生威し、医薬に使用する。
(16) テオブロミン:ココアから抽出され、また、合成によっても得られる。結晶性白色粉
末で利尿剤、強心剤として医薬に使用する。
(17) ピペリン:Piper nigrum から抽出される結晶
(18) コニイン:conium(毒にんじん)中に存在するが、また、合成によっても得られる。
無色の油状液体で刺激臭を有し、猛毒である。医薬に使用する。
(19) クラリン:クラーレから抽出され、医薬に使用する。
(20) ポルフィリン(アルカロイド)
(21) トマチン
(22) タンニン酸アルカロイド(タンニン酸ケリドニン、タンニン酸コルヒチン、タンニン
酸ペリチエリン等)
(23) ヒドラスチン
(24) ヒドラスチニン
(25) ヒドロヒドラスチニン
(26) オキソヒドラスチニン
(27) トロピン(トロパン−3−オール)
(28) トロピノン
(29) セフェリン
(30) メタンフェタミン(Methamfetamine(INN))
(N−メチルアンフェタミン、デオ
キシエフェドリン、2−メチルアミノ−1−フェニルプロパン)
なお、この項の物質のうち、国際的文書において麻薬又は向精神剤薬物として取り扱われ
ているものは、29 類末尾の「麻薬及び向精神剤薬物の一覧表」に掲げられている。
Fly UP