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(その 3)実測と数値流体解析
ドライミスト散布によるヒートアイランド抑制システムの開発 (その 3)実測と数値流体解析による検討 児玉奈緒子*1 奥宮正哉*4 進藤義一*7 同 奥山博康*2 同 原田昌幸*5 4500 3500 3000 1500 100 Ground 2500 2500 2500 2500 2500 2500 2500 2500 2500 1500 1000 1500 1000 2 1 3 4 5000 5 6 5000 1.はじめに 微小粒径のウォーターミストを屋外空間に直接散布 することで、その蒸散時に熱を奪うことができる。こ の効果によって、夏季における屋外の暑不快な環境の改善を低エネル ギーで実現し、またヒートアイランド現象の緩和が図ることができる と考えられる。これを屋根を持つような半屋外空間などの局所的な空 間に適用した場合での効果を、実際にミスト発生装置を製作し検証す ることを試みた。 既報 1)2)3)4)5)では、屋外開放空間でのミスト散布の効果について報告し ている。既報 6)7)では、半屋外空間でのミスト散布の効果を検証し分析 を行った。 本報(その 3)では、半屋外空間でのミスト散布効果の数値流体解析と 実測との比較検討を行った。(その 4)では、この時の心理的・生理的影 響について検討した。 2.実験概要 実験に用いたフィールドは、東京海上日進運動場(愛知県日進市) で、面積約3000 m2の広さをもつ。この敷地に、5m 間隔で3 本×4 本、 計12 本のミスト発生装置を備え屋根を北側1 面にのみ壁を持つテント (12m×20m)を 2 組設けた(図 1)。さらに、屋外炎天下領域を用意した。 ミスト散布位置は測定点 1∼3,7,9,11,14∼19 の高さ 3.5m の位置であ る。散布条件は、散布密度 10ml/min・m2、散布高さ 3.5 m とした。 なお、散布密度10 ml/min・m2は、1つのテントあたり散布水量3 l/ minとなる。 屋外気象とミストの効果を把握するため、物理量の測定を行った。 表 1 は、測定項目、測定位置や測定機器などを整理したものである。 測定間隔は、いずれも 2 秒間隔である。ただし、アスマン通風乾湿度 計、グローブ温度計の測定は10 分ごとの目視により計測した。実験期 間は2004年7月下旬から8月中旬にかけての約1ヶ月間である。 同 同 同 2500 ドライミスト ヒートアイランド 蒸散 潜熱 気温降下 数値流体解析 正会員 ○林啓紀*1 同 辻本誠*3 同 一瀬茂弘*6 7 8 9 2 10 11 12 14 15 16 17 18 19 図1 テントA,B測定点およびミスト散布点 90 3 80 2.5 70 60 2 50 1.5 40 表1 測定項目 湿 度 風 速 炎天下測定点(1.5m) 日 射 テントA,B各9(0.1m) プレハブ小屋屋根上1m(地上4.5m) 測定機器 CC熱電対(TG−0.32φ) 30 1 20 0.5 10 相対湿度 (%) 風速 平均値 (m/s) 図2 各実験日の12時における気象条件 823 全実験日 819 820 821 822 812 816 818 808 809 810 811 802 805 806 807 729 731 801 0 724 725 0 温度 (℃) 3.5 アスマン通風乾湿度計(SIBATA) グローブ温度計(SIBATA) 3 温度差 平均値 (℃) 温度差 最大値 (℃) 風速 平均値 (m/s) 2.5 2 セラミック湿度センサ気象用温湿 度検出器(NTK)*湿度と同時に温 度も測定 3 次元超音波風速計(R.M. Young Company) 2 次元超音波風速計(R.M. Young Company) ネオ日射計(英弘精機) Development of Heat Island Control System with Water Mist Sprayer Pat.3 Field easurement and computational fluid dynamics calculation 1.5 1 0.5 0 724 725 729 731 801 802 805 806 807 808 809 810 811 812 816 818 819 820 821 822 823 全実験日 温 度 測定場所 テントA,B各 1∼19(1.5m) 2,4,7∼11,15,18(地表,0.1m,1.5m,3m4.5m) クラブハウス内(中央高さ 1.5m、被験者安静 位置横高さ1.5m、天井面) テントA,B各9 炎天下測定点 テントA,B各9 炎天下測定点 テントB7∼11(1.5m) テントA9(1.5m) 炎天下測定点(1.5m) テントA,B各9(1.5m) 13 図3 各実験日のミスト内外温度差 HAYASHI Akinori et al 3.結果と考察 (1)実測結果 図2、3 に各実験日の12 時における気象条件と、10 時30 分∼13 時 30 分におけるミストを散布したテント B と散布しなかったテント A との平均温度差と最大温度差を示す(ミストは10 時∼15 時まで散布)。 ここでテント A、B の温度とは、それぞれのテントの測定点 1∼3、7、 9、11、14∼19 の高さ1.5mにおける熱電対温度12 点の平均値を10 分 間移動平均した値である。湿度は、各テントの測定点 9 にお ける測定値を 10 分間移動平均した値である。風速につ いては炎天下測定点の値を 10 分間移動平均した値を用 いている。図2、3から温度差は1.0 ℃弱から2.0 ℃程度期待でき、 この効果は風速の小さな時に大きくなり、風速の大きな時には小さく なることが分かる。また、実験中ミストが体に付着するような場面は なかった。 (2)数値流体解析 加圧水が図 4 に示すノズルから噴出される際にノズル内表面に旋回 流の液膜ができる。この液膜が孔から噴出されると空気と衝突して分 断・分散され、微細な水ミストが生成される。用いた数値流体解析ソ フトFluentは、内部にこうしたPressure swirl atomizer modelを持ち、演 繹的に図 5に示すようにミストの粒径分布が算出することができる。 図5 の縦軸は計算対象領域としたテント内に浮遊し存在する全粒子 数を意味する。この分布は別途試験された結果と概ね一致し14μm に 山を持つ。一方、空間全体の計算モデルは 0.5m 立方のメッシュで 8640 個で、テントの屋根や垂れ幕以外で外気と通じるところは圧力境 界とした。理想的な無風状態を想定し、ミストだけの冷却効果を見る ために、全ての境界や初期温度は一様に 33℃とした。地点 9 の高さ 1.5m と3m での温・湿度推移の計算結果を図6 に示す。本条件では3 ∼4℃の温度低下が期待できる。相対湿度は 60%から 75%程度に上昇 する。図7には人体付着の検討のために1∼4mの高さの水平面を通過 液流 噴霧条件:孔内径0.16mm,噴霧広がり 角50°,内圧5MPa,水平方向噴出し,噴 霧口は一箇所当たり6個,噴霧量は1口 当たり0.7g/sec,水温40℃ 空気 ×10 6 θ 0 10 20 30 40 図5 粒径毎の粒子数 33.0 40.0 39.0 38.0 37.0 36.0 35.0 34.0 33.0 32.0 31.0 30.0 29.0 28.0 27.0 26.0 25.0 0 31.5 32.5 テントA テントB 図8 7月25日12時30分での温度分布 *1 *2 *3 *4 *5 *6 *7 名古屋大学大学院博士前期課程 清水建設技術研究所 工学博士 東京理科大学教授 工学博士 名古屋大学大学院教授 工学博士 名古屋大学大学院講師 工学博士 中部電力 トーキン 湿度(kg/kg) 0.022 高さ 3m の温度 高さ 1.5m の温度 0.021 高さ 1.5m の湿度 0.020 高さ 3m の湿度 20 40 60 80 ミスト無し温度 ミスト有り温度 ミスト無し湿度 ミスト有り湿度 40 39 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29 28 -4 8×10 4m 水平面 3m 水平面 4 2m 水平面 1m 水平面 2 8 16 24 32 40 48 粒子径 56 (um) 図7 各高さ水平面を通過するミスト質量流量 70 65 60 55 50 45 40 35 30 図9 7月25日の地点9における温度、湿度変動 *1 *2 *3 *4 *5 *6 *7 質量(kg/s) 6 0.019 0 100 時間(秒)0 図6 地点9の100秒間の温湿度推移 31.5 32. 発事業(平成 16 年度)の一部として行なわれたものであり、能美防災・川 12 :1 12 9:5 :2 9 12 1:5 :2 9 12 3:5 :2 9 12 5:5 :2 9 12 7:5 :2 9 12 9:5 :3 9 12 1:5 :3 9 12 3:5 :3 9 12 5:5 :3 9 12 7:5 :3 9 12 9:5 :4 9 12 1:5 :4 9 12 3:5 :4 9 12 5:5 :4 9 12 7:5 :4 9 12 9:5 :51 9 :59 粒 3 子 2 数 1 0 34 33 32 31 30 29 um 28 0 50 60 70 80 90 100 <付記>なお、この研究は中部経済産業局地域新生コンソーシアム研究開 本製作所との共同研究である。 温度(℃) 図4 ノズル断面 5 4 <引用文献> 1) 辻本誠他、ドライミスト散布によるヒートアイランド抑制に関する研究(第1 報) 、空気調和・衛生工 学会中部支部学術研究発表会講演論文集2003年 2) 林啓紀他、ドライミスト散布によるヒートアイランド抑制システム開発(その1) 、日本建築学会大会 梗概集2004年 3) 児玉奈緒子他、ドライミスト散布によるヒートアイランド抑制システム開発(その2) 、日本建築学会 大会梗概集2004年 4) 林啓紀他、ドライミスト散布によるヒートアイランド抑制に関する研究(第2 報) 、空気調和・衛生工 学会学術講演論文集2004年 5) 児玉奈緒子他、ドライミスト散布によるヒートアイランド抑制に関する研究(第3 報) 、空気調和・衛 生工学会学術講演論文集2004年 6) 林啓紀他、ドライミスト散布によるヒートアイランド抑制に関する研究(第4 報) 、空気調和・衛生工 学会中部支部学術研究発表会講演論文集2005年 7) 児玉奈緒子他、ドライミスト散布によるヒートアイランド抑制に関する研究(第5 報) 、空気調和・衛 生工学会中部支部学術研究発表会講演論文集2005年 ミスト無し温度 ミスト有り温度 ミスト無し湿度 ミスト有り湿度 40 39 38 37 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 75 70 65 60 55 50 45 40 35 30 12 :3 12 9:3 :4 1 12 1:3 :4 1 12 3:3 :4 1 12 5:3 :4 1 12 7:3 :4 1 12 9:3 :5 1 12 1:3 :5 1 12 3:3 :5 1 12 5:3 :5 1 12 7:3 :5 1 13 9:3 :0 1 13 1:3 :0 1 13 3:3 :0 1 13 5:3 :0 1 13 7:3 :0 1 13 9:3 :1 1 1:3 1 d する質量流量を粒径毎にグラフ化した。20 数μm にピークがあり、 2m以下では殆ど蒸発しており、ミスト付着感の心配が少ないことが分 かる。 計算モデルとほぼ同条件の7 月25 日の13 時前後の温度、湿度変化 を図 9 に示す。温度差は1∼2℃、湿度差は 3∼8%ほどになっている。 この時のテントB 内での平均風速は0.25 m/s で、東側から西側へ一定 風速で空気が通過すると仮定して計算すると、空気の流入量は無風時 の 2∼3 倍になる。温度差、湿度差がこれに反比例して 1/2∼1/3 に なっている。図 8に12時30分における高さ1.5mでの温度分布を示す。 日射や北面の壁の影響で南面の方が若干暑くなっているが、地点 9 付 近では約1℃の気温低下が見られる。 また、図10 に示す8 月10 日の13 時前後でもほぼ同条件でテントB 内の平均風速は0.1 m/s でこの時の空気の流入量は1.2∼2 倍となる。 温度差は 3℃前後、湿度差は 10%前後であった。このことから、計算 モデルは無風時の気温低下効果をよく示していると予測できる。 4.まとめ 屋根に覆われたような半屋外空間では、ドライミスト散布の効果と して、無風の計算モデルでは 3∼4℃の気温低下効果が予測されたが、 実測の結果1℃弱から2℃の気温低下効果があった。この効果は風速の 小さな時に大きくなり、風速の大きな時には気温低下効果は小さくる。 実測、計算の結果の両方から、人体へのミスト付着の心配は少ない。 図10 8月7日の地点9における温度、湿度変動 Graduate Student,Nagoya University Institute of Technology Shimizu Corporation,Dr.Eng Professor,Tokyo University of Science,Dr.Eng Professor,Nagoya University,Dr.Eng Assistant Professor,Nagoya University,Dr.Eng Chubu Electric Power Co. Tokin Inc.