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広島女学院アイリスセンターのプール昇温設備における ヒートポンプ
―― 実 施 例 ―― 広島女学院アイリスセンターのプール昇温設備における ヒートポンプシステム ㈱フジタ 広島支店 細 井 哲 男 ■キーワード/熱源設備・ヒートポンプ・学校 2.建物概要 1.はじめに 広島女学院アイリスセンターは,プール・クラブ棟と して平成9年7月に竣工した。 建物名称 広島女学院アイリスセンター 建 築 主 学校法人 広島女学院 地上3階建で,1階にクラブ室,2階に多目的ホー 所 在 地 広島市中区上幟町 12 −1,12 −2,12 −3, ル・美術室・工作室を設け,3階にプール関連の施設 (シャワー室・更衣室・ろ過機械室) 配置となっている。 12−4 建物用途 プール・クラブ棟 3階のプールは電動開閉式のトップライトを設け,屋 外プールに近い開放的な施設となっている。 構造規模 SRC造 地上3階 建築面積 931.07㎡ プールの昇温熱源としては,メンテナンス性,安全性 延床面積 2,769.37㎡ の確保により,クリーンなエネルギーである電気を採用 設計監理 中電技術コンサルタント㈱ し,屋上に空気熱源ヒートポンプチラーを設置し,安価 総合施工 ㈱フジタ広島支店 な夜間電力利用の「蓄熱調整契約制度」を活用した夜間 空調施工 広島ガス開発㈱ 加熱システムとし,省エネルギーをはかっている。 衛生施工 ㈱大方工業所 以下に加熱システムの概要を示す。 電気施工 ㈱中電工 工 期 平成8年10月∼9年6月 写真−1 建物外観 ヒートポンプとその応用 1998.17.No.46 ― 42 ― ―― 実 施 例 ―― 6,000 3.プール加温,ろ過設備概要 トップライト 3−1 主要機器 空気熱源ヒートポンプチラー(加温専用) 屋内プ−ル 25mプ−ル 3F 18,550 配管 スペ−ス 配管 スペ−ス 2台 加熱能力 58kW(49,900kcal/h) 温水温度 出口45℃ 入口40℃ 温水量 167r/min 温水一次ポンプ 2台 170r/min×0.4kW ヒートポンプチラー内組込 練習室 多目的ホ−ル 廊下 温水二次ポンプ 2F 1台 340r/min×1.5kW 水−水熱交換器 SUS製プレート式 ピアノ練習室 廊下 中学運動部 1F 図−1 断面図 1台 交換熱量 116kW(99,800kcal/h) 温水 45℃∼40℃ 333r/min 冷水 29℃∼28℃ 1,670r/min ろ過装置 エア駆動自動逆洗式砂ろ過 ろ過能力 1台 100k/h オゾン浄化装置 オゾン発生方式 電解法 1台 オゾン浄化方式 オゾン水ろ過器直前注入方式 オゾン発生能力 循環ポンプ 24g/h 1,670r/min×15kW 1台 1台 オーバーブロータンク FRP製 9.5k 図−2にろ過と加温システム図を,図−3にフローシ ートを示す。 空気熱源ヒートポンプチラーは,プール加温専用とし, 原則として夜間 (22時∼8時) 運転のみとする。 写真−2 屋上ヒートポンプチラー 排気ファン(EF-7) 屋上空調機置場 空気熱源ヒ−トポンプチラ−(HR-1) 熱交換器(HEW-1) (HP-1) 温水ヒ−タ (WHG-1) (SF-4) 給気ファン (HP-1) 温水ポンプ (HP-2) 給水ポンプユニット (PU-1) 監視室 プ−ル室内 遠方操作盤 機 械 室 動力盤・制御盤 ろ過装置 (WF-1) オゾン浄化装置 (OZ-1) 殺菌剤注入装置 (CF-1) シャワ−室 プ−ル オ−バ−フロ− タンク (OF-1) 給水 M 自動弁 ろ過ポンプ (P-1) 逆洗排水 図−2 ろ過と加温システム図 ― 43 ― ヒートポンプとその応用 1998. 17. No.46 ―― 実 施 例 ―― 25m×6コ−スプ−ル 390K 150A VP 電動ボ−ル弁 SCS/PTFE MV-1 M FQ 100A プ−ル排水 LS LS 1 2 最大遊泳時水位 150A OT-1 オ−バ−フロ−タンク 20K 無遊泳時水位 100A HIVP 補給水 40A 殺菌剤注入装置 CF-1 オゾンマスタ− OM-24 F1 排水素 (屋外へ) 水道水 排オゾン分解器 13A オゾン溶解槽 MV-2 M 冷却水 オゾン浄化装置 OZ-1 AV-1 A 100A HIVP F1 1 A P1 A A P1 A 給湯復 HP-1,HP-2 温水ポンプ 加温装置 給湯往 熱交換器 HEW-1 21K/h 空気熱源HPチラ−(給湯専用) HR-1×2台 70K/h P1 ヘア キャッチャ− HC-1 T1 T1 V-1 AV-2 A エア駆動 バタフライ弁 SCS/PTFE 膨張タンク 電動三方弁 FCD/SCS/PTFE 25A HIVP 冷却水 13A F1 2 循環ポンプ P-1 T1 TE 100A HIVP A ろ過装置 WF-1 逆洗排水 図−3 フローシート ℃ 30 3−2 加温運転システム 昇温は原則として夜間電力利用の空気熱源ヒートポン プチラーによって夜間に行う。 ピ−ク温度(設定温度) 29 28 加温開始時刻は通常 22 時,加温停止時刻は通常8時と し,プログラムタイマーによる自動運転とする。 27 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 時 通常加温時間帯 加温運転のための温水二次ポンプ (HP −2) は,プログ ラムタイマーによる自動運転内ではプール水温により自 動で発停する。 図−4 プール水温の変化例 プールの水温を,たとえば 31 ℃に設定しておくと,自 動的に加温がはじまり,設定温度を保った状態で翌朝8 時に加温が停止状態となる。プールの水温は昼間低下 (約1∼2℃) ,水温が 30 ℃∼ 29 ℃まで低下したところで 3−3 ろ過運転システム 3−3−1 ろ過 ろ過は原則として連続運転とする。休日などはプログ 夜22時になると再び加温がはじまる。 加温運転は,プログラムタイマーに入力しておけば, ラムタイマーに入力しておけば,自動的に停止すること 休日などに自動的に停止し,任意の時刻に再び起動させ もできる。 ることができる。 3−3−2 自動逆流 ろ過は原則として,1週間に1度の割合で自動逆洗を 夏季の始め,および終わり,比較的気温が低いとき, 気温が水温より低い場合,昼間,蒸発による水温低下が 行う。逆洗終了後は,プールの水位が約 25 ㎜低下し,新 大きく,2.5 ℃∼3℃に達し,上記の夜間のみでは上昇し しい補給水が自動的に給水される。このため,自動逆洗 ない恐れがでた場合は,プログラムタイマーの入力を変 を開始する時刻は通常,夜間になるように設定する。 更し,昼間の加温を行う。 3−3−3 オゾン浄化装置 オゾン浄化装置は,ろ過と連動して運転する。また, プール室温の監視,プール水温の設定,プログラムタ イマーの入力などは,監視室に設置された遠方監視盤に その運転時間は,経済性を考慮して昼間の時間帯に行う より行う。 ものとし,そのためのタイマーが設けられている。 図−4にプール水温の変化の一例 (夏季) を示す。 ヒートポンプとその応用 1998.17.No.46 ― 44 ― ―― 実 施 例 ―― 写真−3 3階プール 表−1 予想電力量試算表 6月 7月 8月 9月 10月 11月 ① 蓄熱設備導入前の総電力量 kWh 6,332 5,801 5,563 6,194 11,830 13,026 ② 昼間電力量(蓄熱設備の追いかけ運転) kWh 0 0 0 0 0 104 ③ 夜間電力量(蓄熱運転) kWh 16,211 15,150 14,693 15,940 29,464 31,434 ④ 総電力量 kWh 22,543 20,951 20,256 22,134 41,294 44,564 ⑤ 移行前夜間電力量 kWh 1,600 1,600 1,900 2,500 1,500 1,500 平成9年7月 3,990kWh 4.システムの特長 8月 4,050kWh 本システムの特長として,以下のことが挙げられる。 9月 5,430kWh (1)ろ過装置,加温システムの制御監視を一体として監視 10月 10,548kWh 11月 3,726kWh 室に監視盤を設置し,管理の省力化をはかるとともに, 学校という特色上,夏休みを考慮し,また,季節によ 操作性の向上をはかっている。 (2)熱源機器がシステム化され,全自動運転であるため, る外気の温度変化を考慮すると,ピークは9月から 10 月 になっているが,当初予想を下回り,より有効に省エネ 管理面の省力化がはかれる。 (3)熱源機器を電気式としたことにより,安全であり,か ルギーがはかられている。 つクリーンである。 (4)夜間電力利用の「蓄熱調整契約」を採用することによ 6.おわりに 以上,空気熱源ヒートポンプを使用し,蓄熱調整契約 り,ランニングコストの低減がはかれる。 を活用したプールの加熱システムの概要を紹介した。 5.運転実績 当システムは,平成9年7月の使用開始後,1シーズ この施設は現在のところ,夏季のみの使用としている。 当初,表−1による予想電力量を試算したが,平成9年 ンを経過したが,システムのトラブルもなく,効率よく 稼働している。 最後に,本工事にあたり,ご指導・ご協力をいただき 7月のオープンから 11 月初旬までの使用量は下記のよう になった。 ました施主・設計事務所をはじめ,施工各会社に対し厚 くお礼申し上げます。 ― 45 ― ヒートポンプとその応用 1998. 17. No.46