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析 分 勢 情 東 中

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析 分 勢 情 東 中
6%増の1
3
4
で,内訳は石油収入が前年同期比2
7.
中東 情勢分析
億ドル,非石油収入が前年同期比約1
0%増の1
3
億ドルであった。2
0
0
4年会計年度の予算では歳
入を3
3億2,
0
0
0万 KD(1
1
2億5,
0
0
0万ドル)と見
込んでいたので,6ヵ月間の歳入は既にそれを
3
0.
5%上回ったことになる。他方,
2
0
0
4年会計年
度の予算では歳出は6
3億 KD(2
1
3億ドル)と予
想しており,財政収支は約3
3億 KD(約1
0
0億ド
経済情勢
ル)の赤字に終わると見ていた。しかし,2
0
0
4
年会計年度の当初6ヵ月間の歳出は1
9億5,
0
0
0
万 KD(約6
6億ドル)と予算上の年間歳出額の三
分の一以下に収まっている。
同国のアル・シャル・エコノミック・コンサ
ルタントは2
0
0
4年1
1月5日,2
0
0
4年4月1日か
1990年代初頭以来の建設ブーム
に沸く2004年の湾岸経済
ら1
0月3
1日までの2
0
0
4年度の当初7ヵ月の石油
収入が1
3
6億7,
0
0
0万ドルと,本年度の当初の石
油収入の見込み9
2億8,
0
0
0万ドルを既に4
7%上
!国際開発センター
回ったとの推計結果を明らかにしている。加え
て,仮に現在の高水準の油価が続くとすれば,
エネルギー・環境室長
畑
中
美
2
0
0
4年度の石油収入が2
9
2億5,
0
0
0万ドルにもな
樹
るとの推計結果も明らかにしている。クウェイ
予想を大きく上回る石油収入
トの当初予算では原油価格を1バレル1
5ドルと
湾岸地域は1
9
9
0年代初頭以来の経済ブームに
していたが,7ヵ月間の実際のクウェイト原油
沸いており,
2
0
0
4年の GCC6ヵ国の石油収入は
の価格は3
4.
4
0ドルに達している。さらに,同国
2,
5
0
0億ドル超に達する見込みである。サウディ
のリーディング・バンクであるナショナル・バ
アラビアの場合,国内のエコノミスト達は2
0
0
4
ンク・オブ・クウェイトが2
0
0
4年1
0月1
9日に発
年の財政余剰の規模について3
0
0億ドル弱から
表した推計によれば,同国の2
0
0
3年会計年度
3
5
0億ドルに達すると推計している。因みに,サ
(2
0
0
3年4月1日∼2
0
0
4年3月3
1日)の歳出(実
ウディ・アメリカン銀行は2
0
0
4年7月時点では
績見込み)は5
5億2,
0
0
0万 KD(1
8
7億ドル)と前
同年のサウディアラビアの石油輸出価格が1バ
年度の4
9億3,
0
0
0万 KD(1
6
7億ドル)を約1
2%上
レル当たり平均3
1.
5
0ドルと仮定して,財政黒字
回り,過去1
2年で最高を記録している。他方,
は2
8
8億ドルと推計していた。
歳入も6
9億4,
0
0
0万 KD(2
3
5億ドル)と過去3
0年
で最高額であった。因みに,歳入の内訳は石油
クウェイトについても同国財政省が2
0
0
4年9
月末に明らかにしたところでは,2
0
0
4年会計年
収入2
0
8億ドル,非石油収入2
7億ドルであった。
度(2
0
0
4年4月1日∼2
0
0
5年3月3
1日)
の当初6
こうした結果,2
0
0
3年会計年度の財政黒字は前
ヵ月間の歳入は4
3億4,
0
0
0万クウェイト・ディ
年の4
4億ドルを約9%上回る4
8億ドルに達した
ナール(KD,約1
4
7億ドル)に達している。同歳
模様である。歳出では,公務員及び軍人の給与
入は前年同期の1
1
9億ドルを2
3.
5%上回るもの
が前年度比8.
3%増の9
7億ドルと歳出の5
2%を
4
1
中東協力センターニュース(投資関連情報)
2
0
0
4・1
2/2
0
0
5・1
占めた。また資本支出の中核を成すプロジェク
を増加している。例えばサウディアラビアの場
ト,維持補修及び土地購入は,前年度比2
3%増
合,アブドゥラ皇太子は2
0
0
4年9月2日,サウ
の1
9億3,
0
0
0万ドルに達している。
ディ通信とのインタビューの中で,巨額の黒字
このほか,対岸のイランに関しても,エネル
はまず国内債務の返済に充当されるものの,同
ギー委員会のファルシド・シンボール委員が
時にサウディ国内全土の国民の福祉向上のため
2
0
0
4年1
1月7日,原油価格の上昇が続けば同国
の開発支出にも振り向けられることを明らかに
の石油収入が3
5
0億ドルに達するとの見通しを
している。まず,アブドゥラ皇太子は「予想さ
明らかにしている。本会計年度の当初予算上の
れる財政余剰の多くは公的債務の返済に充当さ
石油収入は1
6
5億ドルと見積もられているので,
れるべきである。何故ならば,こうした債務の
最大時にはその2倍強を記録することになる。
返済を怠ればサウディアラビアの名声と経済力
また同委員は,本年度の黒字分の一部はアフガ
に傷がつくばかりでなく,将来の世代に負担を
ニスタン及びイラクへの援助に充当される見込
残すことにもなるからである」
「それゆえ我々は
みであることも明らかにしている。
財政余剰の多くをこうした債務の返済に廻すこ
ととした」と説明し,国民に理解を求めている。
久し振りに増加した開発(資本)支出
因みに,イブラヒム・アル・アッサーフ財政相
スタンダード・チャータード銀行の最新の四
は先般声明を発表し,2
0
0
3年末のサウディアラ
半期経済報告書は GCC 諸国6ヵ国合計の2
0
0
4
ビアの国内債務残高が6,
6
0
0億サウディ・リア
年の財政黒字が合計 GDP の約1
5%に相当する
ル(1,
7
6
0億ドル)に達したことを明らかにして
6
0
0億ドルを記録するほか,各国の GDP 成長率
いた。
もオマーンを例外として高くなると予測してい
その上で同皇太子は「財政余剰のうちの4
1
0億
る。因みに,同行の予測によれば,GCC 諸国の
SR(1
0
9億ドル)は国民の福祉の向上のために使
中で2
0
0
4年に最も高い成長率を記録するのはカ
われる」
「サウディ政府は将来世代のことを考え
タールの約1
0%で,以下,サウディアラビア,
ている一方,現世代の福祉や繁栄も無視しては
クウェイトのそれぞれ約8%,UAE 約7%等と
いないので,
(4
1
0億 SR のうちの)3
0
0億 SR(8
3
なっている。
億ドル弱)は国民の日常生活を改善するために,
油価が4
5ドルを維持すれば,建設ブームはま
今後5年をかけて社会・経済部門に廻される」
だまだ続くと見られていることもあり,湾岸の
「これら資金は,具体的には5部門を最優先する
企業経営者の多くは,今後も3年間は年率6%
ので,水利・汚水処理網,一般道路・高速道路,
程度の実質経済成長を記録するとの楽観的な見
学校,医療施設,
技術・職業教育に充当される」
方に傾いている。 因みに, GCC 諸国の収入は,
と述べ,財政赤字の継続からないがしろにされ
油価が1ドル上昇すればそれだけで5
0億ドル増
てきた社会・経済インフラの整備・拡大に改め
えると言われている。
て注力する姿勢を鮮明化している。
2
0
0
4年の石油収入の多くは,インフラ建設や
さらにアブドゥラ皇太子は,次のように語り,
開発事業に充当されており,GCC の同年の建設
サウディ全国民に漸次マイホームを提供する計
支出が2,
0
0
0億ドル超に達したとの推計もある
画であることも明らかにしている。
「サウディ全
ほどである。実際,各国政府も積極的な財政政
国民に段階的且つ組織的な方法で適切な住宅を
策を採っており,十分な流動性を背景に,1
9
9
0
提供していくために,不動産開発基金の資本金
年代にはややないがしろにされてきた資本支出
を9
0億 SR(約2
4億ドル)積みますことを決定し
4
2
中東協力センターニュース(投資関連情報)
2
0
0
4・1
2/2
0
0
5・1
た」
「(2
0
0
2年のリヤド市の)貧民街への訪問で,
年には少なくとも総額2
6億ドルに上る8件の民
愛すべき多くのサウディ国民が不適切な家屋に
営化事業も予定されている。実は GCC 諸国で
住んでいるのを目にした。自分はその光景をま
はこの3年の間に IPO での資金調達が急増し
だ鮮明に記憶している。サウディアラビアのそ
ている。IPO による調達額は2
0
0
3年には1
0億ド
の他地域でも同様の地区のあることは知ってい
ル以下に過ぎなかったが,2
0
0
4年には3
1億ドル
る」と述べ,貧困地域の解消に向けて住宅供給
5年には9
0億ドルに達す
へと急増し,さらに2
0
0
を増やす方針であることを説明している。
ると見込まれている。
その背景にあるのは,高油価による石油収入
加えて,若年層の失業問題に関する質問に対
して,
「我々は,
低所得者向け融資を拡充すべく,
の急増が GCC 各国にもたらした高水準の流動
サウディ信用銀行の資本金を1
0億 SR から3
0億
性である。上述したように各国企業の業績が総
SR に増額させる決定を行った。また同行はサウ
じて好調であることや海外投資への心理的な抵
ディ人の若者が小規模事業を始めるための資金
抗感が強まっていることも,GCC 株式市場の活
も提供する」と答えて,政府の新計画及び新政
況の要因となっている。後者については,9.
1
1
策ではサウディ人の若年層の雇用をいっそう支
事件以降, GCC のみならずアラブの投資家が,
援する内容となっている旨,明らかにしている。
自分たちの在米資産がある日突然凍結される事
態を懸念していることが大きく影響している。
活況を呈する株式市場
在外資産規模は低めの推計でも1
6
5兆円
2
0
0
4年1
0月末の GCC 諸国の株式市場の時価
総額は4,
5
0
0億ドルと9月末の4,
2
0
7億ドルから
中東諸国の在外個人資産がどれほどに膨らん
さらに増加している。産業別に見てもほぼ全産
でいるのかを示す正確なデータはない。しかし,
業が業績を向上させている。特に,金融(銀行,
国際イスラム金融フォーラム(在イスタンブー
保険,投資)
,電気通信,IT,建設・同関連(鉄
ル)は,サウディアラビアやアラブ首長国連邦,
鋼,セメント,アルミニウム,空調,家具等)
,
クウェイトといった湾岸産油国の富裕者の在外
石油化学,肥料,製薬,ファーストフード,耐
資産だけで低めに見積もっても1兆5,
0
0
0億ド
久消費財,運輸,ホテル,広範に亘る専門サー
ル(約1
6
5兆円)は下らないと推計している。ト
ビスの各業種が好調である。因みに,湾岸では
ルコやイスラエルも含めた中東諸国の国民総生
若年層の急拡大によって,ファーストフードか
産の合計が約1兆ドル(約11
0兆円)といわれて
ら電化製品,乗用車までの各種の消費需要が急
いるので,その1.
5倍の在外資産が少なくともあ
増しているほか,教育,保健,通信,IT,保険,
るということになる。但し,実際に中東の個人
運輸,娯楽,観光といったサービス需要も著し
が保有する資産は,この推計よりもかなり大き
く増えている。
いという見方が一般的である。
GCC 諸国では株式市場が活況を呈するなか,
アブドゥル・ラフマン・アル・ジュレイシ・
直接金融の役割が見直されている。2
0
0
5年初に
サウディ商工会議所連盟会頭も,ビジネス専門
はクウェイト・ファイナンス・ハウスが株式の
誌のアル・イクティサーディアで「サウディ人
一部の売却を予定しているほか,サウディアラ
の海外投資額は8,
0
0
0億ドルから1兆ドルに達
ビアのアル・ビラード銀行,さらにはカター
しており,その大半は米欧に向かっている」と
ル・ガス,バハレーン電気通信社,アラメック
語っている。またリヤド商工会議所会頭も兼ね
ス等も株式売却を検討中である。このほか,
2
0
0
5
る会頭は「仮にサウディ政府が外国人に不動産
4
3
中東協力センターニュース(投資関連情報)
2
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4・1
2/2
0
0
5・1
及び株式の所有を認めていたならば,外国人に
への移転が今回は余り見られない。要は中東に
よる対サウディ投資額は今の1
0倍になっていた
とってのオイル・ブームの時代であった1
9
7
0年
であろう」と述べ,政府に外国人の投資に対す
代に起きたような,中東諸国から西側諸国,そ
る制限を緩和するよう要請している。さらに同
れも特に米国への巨額の資金の流出は今回の原
会頭は「自由貿易地帯の設立の構想は,開発地
油価格の急騰局面では発生していないというこ
域を創設するという考えよりはるかに良い」と
とである。理由の第一は,ドル安と米国の低金
語り,サウディ総合投資院が提唱しているサウ
利が続いたことで対米投資がそれほど魅力的で
ディアラビアの4箇所の空港,港での自由貿易
ないことである。第二は,9.
1
1事件以降,米国
地帯の創設を求めている。加えて,同会頭は,
でのアラブ・中東・イスラム諸国の出身者を見
人口の都心部集中の流れを逆転させ,都市部以
る目が厳しくなったが,同時に米国のアフガン
外への投資を促進するために,都市の郊外に設
戦争,イラク戦争に対する姿勢もあってこれら
立された民間企業を税金面で優遇するよう訴え
諸国で嫌米感情がいっそう高まり,対西側,特
ている。
に対米投資を敬遠する機運が強まったことであ
なお,アル・ホカイル・グループのアブドゥ
る。その意味では,先進国だが西側ではない日
ル・モフセン・ホカイル会長も最近出した声明
本の円や株式は,そろそろ中東,湾岸諸国の個
の中で,「2,
5
0
0社超のサウディ企業が,過去3
人投資家にとって格好の投資対象ということに
年の間に自国ではなくドバイを投資事業を行う
なるのかもしれない。
場所として選定している」と述べ,サウディ国
内に残る官僚主義,複雑な規則類,意思決定の
湾岸の不動産ブームはバブル化しているのか?
遅さが巨額の資金流出の原因と指摘し改善を求
建設ブームについて言えば,湾岸では,今後
めている。
5年から1
0年続くとの見方が支配的である。
GCC 各国では石油に依存しない経済部門の一
対米投資の重みが低下する湾岸富裕者の海外投資
つとして観光産業が注目されているが,2
0
0
6年
今回の原油価格の急騰局面では,1
9
7
0年代に
から2
0
0
8年にかけて観光部門で多くの象徴的プ
見られたような,結果的に米ドルを支えること
ロジェクトが立ち上がることになる。ところで
になった中東,それも湾岸産油国による巨額の
GCC 諸国は観光インフラの整備も含めて過去
資金の米国向けの流出は生じていない。勿論,
3年で2,
0
0
0億ドル相当のインフラ事業を実施
こうした資産の外部流出が全く起きていないと
したが,必要資金の大半についてはやはり湾岸
いうわけではなく米ドルやユーロにも確実に廻
域内で調達されている。
ってはおり,特にユーロで運用される資産比率
なかでも好調なのがドバイの不動産事業であ
は相対的に高まっているのが今回の大きな特徴
る。しかし,ドバイの不動産ブームが既にバブ
のようだ。同時に,各国での株式市場が発達し
ル化しており,何れ不動産価格は急落するので
ていると共に,BOT 方式等で推進される基礎イ
はとの懸念の声も上がりはじめている。だがド
ンフラ事業が増加していることから,国内投資
バイの不動産 開 発 事 業 を 積 極 的 に 推 進 す る
の比率が重みを増しているのも今回の原油価格
Nakheel 社のワヒード・アッターラ専務はこの
上昇時の新たな特色として指摘できる。
ような見方を否定している。同専務は,第二次
このように,これまでの中東諸国では一般的
市場(流通市場)を含めてドバイで不動産ブー
であった,蓄積された資産の西側諸国等の海外
ムが発生した理由を自由な不動産法に求めてい
4
4
中東協力センターニュース(投資関連情報)
2
0
0
4・1
2/2
0
0
5・1
る。即ち,ドバイの不動産法が居住者及び国際
限られているので,当然のように,外国人投資
的投資家に自由な所有への扉を開いたことがポ
家はドバイの各種事業に関心を示しドバイの不
イントであったとの見方である。さらに同専務
動産の大半は完売となるのである」とワヒード
は,
「勿論,投機目的での不動産購入の可能性は
専務は述べ,さらなる事業の展開に意欲を燃や
否定できないものの,現在ではその比率は全体
している。
の1
5%程度まで低下している。残る8
5%が自己
巨大観光事業の統括会社を設立したドバイ
の居住を目的とした長期投資である」と述べ,
投機を目的としたドバイでの不動産の購入につ
ドバイのムハンマド・ビン・ラシッド・ア
いては下火になりつつあると分析している。ま
ル・マクトゥーム皇太子兼 UAE 国防相は2
0
0
4
たドバイの不動産開発の規模については,現在
年1
0月9日,政令を発出し,ドバイの巨大観光
進行中の事業の総額が3
0
0億ドルに達している
事業を統括するドバイ・ホールディング(Dubai
ほか,将来に対する自信を示すように,2
0
0
4年
Holding)を設立することを明らかにした。同社
から2
0
1
0年までに予定されている不動産投資額
のムハンマド・アル・ガルガーウィー(Moham-
が5
0
0億ドルであることを強調している。
mad Al‐Gergawi)CEO は「設立の目的は既存の
加えて同専務は,ドバイの不動産市場が洗練
事業を成功裏に導くこと及び将来の開発事業を
されたものとなりつつあるので,今後は世界の
確かなものとすること」と説明している。因み
エリート層を対象者とする考えを披露している。
に,現在ドバイが進めようとしている将来の事
同専務は,既に欧州の投資家と上流社会の人々
業には,メディア,保健,観光,不動産,エネ
を対象としてブリュッセルとルクセンブルグで
ルギー,工業,調査,人的資源関連等の分野が
勧誘のための会合を開いたところ,大きな反響
含まれている。なお,ドバイ・ホールディング
を呼んだことを明らかにしている。同会合での
が当面統括する事業には,ドバイ・インターネ
反応を踏まえて,ドバイの事業をいっそう世界
ット・シティ,ドバイ・メディア・シティ,ド
水準のものとするために,コンセプトと設計の
バイ・ヘルスケア・シティ,ドバイ・ヒューマ
一部変更を行ったことも明らかにしている。
ニテアリアン・シティ,ドバイ知識ビレッジ,
最後に同専務は,自信のほどを示すように,
アラブ・ラジオ・ネットワーク,インターナシ
ドバイの不動産事業が過熱しない理由として以
ョナル・メディア・プロダクション・ゾーン,
下を挙げている。第一は,ドバイ政府が国内外
ドバイ e‐ホスティング,ドバイ・アウトソーシ
の投資家に対して投資と事業の機会を設けよう
ング・ゾーン,エンパワー(Empower)
,サマコ
として,中核となるフリーゾーンや多くの産業
ム(SamaCom)が含まれる。
を創出したことで,世界中から多くの投資家が
また1
0月9日,1
0日の二日間,ベイルートで
集まって来たことである。因みに現在ドバイに
開催された「アラブ世界旅行・観光交換会合
は,投資家のみならず,毎年,貿易や出張,旅
(AWTTE)2
0
0
4」に出席したドバイの Nakheel
行,観光等を目的とした人々が6
0
0万人も集まっ
社のワヒド・アッターラ取締役は,ドバイがア
ている。不動産需要は,こうした人々によって
ラブ世界ではエジプトに続く観光市場になった
もたらされたわけである。第二は,ドバイの不
ことを明らかにすると共に,ドバイの観光産業
動産価格が国際的に見ても妥当なものであり,
が多くの投資機会を提供しつつあることを強調
多くの国際都市よりも廉価なことである。
「この
している。因みに,Nakheel 社はドバイでパー
ように高級な不動産のある現代都市は世界でも
ム・ジュメイラ事業,パーム・ジュベル・アリ
4
5
中東協力センターニュース(投資関連情報)
2
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0
4・1
2/2
0
0
5・1
事業,ワールド・アット・イベント事業を推進
また events では,2
0
0
4年9月にモ ー タ ー バ イ
中の企業として知られている。ワヒド・アッ
ク・レースが開かれたばかりのほか,駱駝レー
ターラ取締役は「ドバイは中東で観光産業と不
ス,カタール・オープン,国際レガッタ等も企
動産事業とを結びつけた最初の国家である」
「不
画されている。さらに,
2
0
0
6年1
2月には,
4
5ヵ国
動産開発と事業・商業活動の展開やスポーツ興
から1万人の選手を集める第1
5回アジア大会の
行,国際的催事を結びつけながら同時に進めた
開催も決定している。
ことで,我々は国際的な水準の観光産業の振興
このほか民間の United Development Company
に成功した」と語り,ドバイが中東地域で最も
(UDC)が総額2
5億ドルの「湾岸の真珠(Pearl
望ましい観光目的地となったとの自信を示して
of the Gulf)事業」を推進している。同事業は
いた。
ドーハのウエスト・ベイ・ラグーン地域の沖合
0ヘクター
い3
5
0m に,総延長6
3km を使って4
0
観光ニッチ市場に照準を当てるカタール
ルの土地を造成のうえ人造島も設ける計画のも
産業構造の多角化を目指す GCC 諸国では,
ので,2
0
0
9年の完成時には3万人の居住が可能
ここに来て先発のドバイの成功に触発されるよ
となる見込みである。全事業は4つの段階に分
うに観光産業を自国経済の柱の一つとする国家
けられ合計1
0の開発地域に分類されているが,
が 増 え つ つ あ る。特 に,ア ラ ブ 首 長 国 連 邦
例えば,リビエラ・アラビアと名づけられた地
(UAE)に隣接するカタール,或いはオマーン,
区には,ホテル3棟,7
0
0船の船舶が係留できる
バハレーンは,それぞれ独自のコンセプトを基
マリーナ4箇所のほか,豪華なレストラン等が
にした観光産業の振興に着手している。各国の
6万平方 m の土地に建てられる予定である。各
野心的な観光事業が計画通りに進めば,2
0
1
0年
段階のインフラ建設予定期間は,フェーズ1が
頃の GCC 諸国は,単に歴史的・地理的に近い
2
0
0
5年7月∼2
0
0
6年1
2月,フェーズ2が2
0
0
6年
欧州諸国にとってのみならず,国際的に見ても
7月∼2
0
0
8年1
2月,フェーズ3が2
0
0
7年7月∼
有数なリゾート観光地となっている可能性を秘
2
0
0
8年1
2月,フェーズ4が2
0
0
8年7月∼2
0
0
9年
めているといえそうだ。
1
2月である。フェーズ1の第一段階に当たる居
豊富な天然ガスの有効活用によって世界のガ
住用タワー7棟の完成は2
0
0
6年第4四半期又は
ス首都を目指すカタールも,観光産業の振興を
2
0
0
7年第1四半期の見込みである。
同事業で注目
目標の一つに掲げている。しかし,カタールが
されるのは,
カタールで初めて非 GCC 諸国の外
狙っているのは大規模大衆型観光ではなく,観
国人の不動産所有が認められている点である。
光部門のニッチ市場の開拓である。カタールは,
具体的には MICE 及びスポーツ・教育サービ
カタールが注力する教育改革と湾岸の教育ハブ化
ス,そしてレジャー・事業観光のハブとなるこ
カタールが民主化と並んで取り組んでいるの
とを目指している。MICE というのは,Meeting,
が教育改革及び湾岸地域における高等教育の中
incentives,conferences,events のそれぞれの頭文
心地化である。カタールが,教育改革が必要と
字をとったものである。特に,Meeting や confer-
判断したのは,従来の同国の教育内容がイスラ
ences(会議)については,ここ数年の間だけで
ム教徒の聖典コーランの暗記などに偏りすぎて
も首都ドーハでイスラム諸国会議機構(OIC)首
いると考えたためであった。具体的には,意思
脳会議,世界貿易機構(WTO)の定期協議やガ
決定を迫られる場面を迎えた省庁等のカタール
ス関連の各種会議を開いた実績を有している。
の若者が,自ら考えることに慣れていないため,
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幅広い視野に立った総合的な判断が必ずしもで
明治維新以降の日本の発展に大いに印象づけら
きない事態が出てきたためである。このためカ
れており,とりわけ勤勉な国民を生み出したと
タール政府は「自ら考える」ことを植え付ける
彼らが見る我が国の教育に強い関心を示してい
ための教育への転換に乗り出し今日を迎えてい
る。カタールのガス・石油資源に依存する我が
る。その過程では,米国のランド研究所に教育
国にとっても,教育分野では相当の協力が可能
改革プログラムを委託している。
と思われる。
同時にカタール政府は自国の生き残り策の一
つとして自国を湾岸における教育のハブとする
海岸線を活かした観光事業に乗り出すオマーン
構想にも着手している。これを推進しているの
オマーンでも既に幾つかの観光事業が着手さ
がカタール・ファンデーション(正式名称は,
れている。なかでも最も注目されているのが首
教育・科学・地域開発のためのカタール・ファ
都マスカット東岸のシーブ海岸線リゾート開発
ンデーション)である。カタール・ファンデー
事業,通称「ウェーブ(波)
」
(Wave)事業であ
ションは1
9
9
5年にハマド首長の肝いりで設立さ
る。ウェーブ事業はアル・アサビーヤとシーブ
れ,シェイハ・ミモザ首長夫人が会長として采
間の7.
3km の海岸線に,スパや海に面したホテ
配を振るい今日を迎えている。この間の1
9
9
7年
ル,ゴルフ場,マリーナ,海浜ビレッジを備え
に世界に通用する大学等が具備された「教育都
た豪華総合リゾート施設を建設しようとの開発
市」を創設するとの戦略案を練り上げ,着実に
案件で,総額3億1,
0
0
0万オマーン・リアル(約
実行に移している。
「教育都市」は勉学・調査・
8億ドル)が予定されている。同事業の推進者
技術開発の各分野で湾岸のセンターとなること
は Oman
Tourism
Development
Company
を目指している。
「教育都市」には,既に医学部
(OTDC)である。
総額3,
2
0
0万 OR(約8,
2
0
0万ド
に焦点を当てた Well Cornell Medical College,
化
ル)の第一段階では,
4
0万平方 m を造成し基礎
学工学・電機工学・機械工学・石油工学に特化
インフラやゴルフ場,マリーナ,ヨット・クラ
した Texas A & M University,ビジネス学部とコ
ブ を 建 設 す る。総 額1億8,
6
0
0万 OR(約4億
ンピ ュ ー タ 科 学 部 か ら 成 る Carnegie
7,
7
0
0万ドル)の次の段階では,ホテル,ビラ,
Mellon
University,グラフィック・デザイン,インテリ
居住用アパート,レストラン,店舗,レジャー・
ア・デザイン,ファッション・デザインを専門
センターの建設が予定されている。ウェーブ事
とする The Virginia Commonwealth University
業の中心地域には,
2
5
0船が繋留可能なマリーナ
School of Arts が教育都市に進出し授業を開始
やヨット・クラブ,レストラン,世界スーク,
している。要は,湾岸の若者がわざわざ米国に
店舗が設けられる。またマリーナ・タワー・ブ
行かなくとも全く同じ内容と水準の教育をドー
ティック・ホテルが世界中からの上級の観光客
ハで受けることができるようにすることで,教
を宿泊させる一方,マリーナ・コンドミニア
育分野での湾岸センターとなることを指向して
ム・タワー2棟とマリーナ・ビレッジ・アパート
いるということである。このほかカタール・フ
メント8
5
0戸も賃貸用に供される見込みである。
ァンデーションと米国のランド研究所が,2
0
0
3
このほかオマーンでは首都マスカット西方の
年9月には共同でランド・カタール政策研究所
海岸で,the Barr Al Jissah Resort and Spa 事業が
を立ち上げており,世界レベルの調査・研究・
Zubair Corporation によって進められている。総
分析を始めている。
額6,
5
0
0万 OR(約1億6,
7
0
0万ドル)の同事業
は,シャングリラ・ホテル&リゾート社の管
カタールは伝統と近代化の融合を成し遂げた
4
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理・運営で2
0
0
5年中に開業の予定で,ホテル3
ち,居住用)の場合には販売価格の1
0%を,ま
棟(合計6
7
0室)
,ヘルス・クラブ,
レジャー施設,
た更地での場合には同左2
0%を,観光省に支払
プール,プライベート・ビーチ等が具備されて
うことを義務づけている。なお,基本的な政令
いる。さらにオマーンでは,
シャッティ・アル・
を補足する規則類は2
0
0
4年末までに整備される
クルムで合計2
0
4家屋のシャイニング・シャッ
予定である。
ティ居住施設の建設が開始されているほか,マ
開発余地の大きいバハレーン不動産
スカットのグブラ交差点地区でもマスカット・
オアシス居住施設の建設も進められている。
「バハレーンの不動産市場はまだまだ開発の
余地が大きく,投資家は欧州やアジアの不動産
オマーンが外国人の不動産所有を許可へ
市場に比べて高い収益を期待できる」
(www.
オマーンでも,こうした新たな開発によって
gitm.ae/gulf_media/view_article_en_print.php?
誕生した不動産の外国人所有を認めるのではと
elaction=print&id=8
7
4
2
4)
。そう語るのは,ノル
の期待が高まっている。因みに,2
0
0
4年初に成
ウエーの不動産企業(Noreich International Con-
立した法律では,1
0
0%GCC 国籍の企業につい
sultants)のニール・ジルバ CEO である。
またジ
ては個々の案件別に審査を行ったうえでの所有
ルバ CEO は「今が投資の好機である。我が社の
が認められている。上述したウェーブ事業では
事業化可能性調査(FS)によれば,バハレーン
外国人による不動産の所有が認められている。
での投資は平均4
0%の投資収益率が期待でき,
こうしたなか,オマーンのモフシン・ハミス・
成功の可能性はどこよりも高い」
(同上)と太鼓
アル・バルーシ観光省次官は2
0
0
4年1
1月6日の
判を押す。続けて,
「不動産事業に身を置き,世
オマーン・タイムズ紙との独占インタビュー
界中を駆け巡ってきた専門家として言えば,バ
で,
「外国からの労働者及び外国人は,近々,指
ハレーンの不動産需要には底堅いものがある」
定された観光開発地域内での不動産の所有が認
「外国人投資家は,外国人にスポンサーシップを
められることになると共に,こうした外国の不
認め居住ビザも毎年更新できる投資対象先とし
動産所有者は居住者資格も獲得できるようにな
てのバハレーンの良さを認識しつつある」
(同
る」ことを明らかにした。さらに,
同次官は「あ
上)と述べ,ここに来てバハレーンの不動産が
る外国人が不動産を購入した場合,本人のみな
投資対象として見直されつつあることを強調し
らず妻女,子供も居住者資格を得ることができ
ている。
る」
「彼等には柔軟性に富む別途ビザが発給され
ジルバ CEO は,先に見たように湾岸の不動産
る」ことも説明している。
市場がバブル化しておりはじけるのではとの懸
外国人に不動産の所有を認めた政令は,既に
念が出て来ていることについて,次のような言
2
0
0
4年1
1月4日付けで住宅・水利・電力省から
い方で否定する。即ち,
「バブル崩壊の噂がある
発出されている。同政令は,個人(外国人労働
のは知っている。しかし,崩壊が起きるとすれ
者,外国人及び外国法人)が居住用及び投資用
ばドバイであってバハレーンではない」
「バハ
として観光開発地域内の不動産を所有すること
レーンとドバイでは,地元民の外国人への接し
を認めている。但し,同政令は購入された不動
方や雰囲気,法制面等で大きな違いがある」
「バ
産が購入日から最長4年以内で開発されねばな
ハレーンは大いなる可能性を秘めており,幾つ
らないと規定している。さらに,同政令は購入
かの事業,例えばバハレーン・ファイナンシャ
者に不動産の転売を認めているが,
開発済み(即
ル・ハーバー(BFH)
,アムワジュ島,ドゥラ・
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アル・バハレーン,アル・アリーン野生公園,
ンカ,インド,モーリシャス,セイシェル,エ
ルル島,バハレーン世界貿易センター,アル・
ジプト,レバノン,トルコ,ギリシャ,フラン
モアイド・タワー,タラ島,アル・マスラ浮揚
ス,スイス,カナダ,ヨルダンの観光・旅行関
都市等が進行中である」
(同上)
。バハレーンの
係者から参加の確認を得たとしている。
ドバイへの対抗心は大きいようで,
「バハレーン
はまだドバイのようにはなっていない。しかし,
気にかかる GCC での開放型観光産業の行方
需要は伸びているので,上述した事業が立ち上
湾岸では,1
9
7
5年にオフショア・バンキン
がればもっと多くの外国人投資家が投資するよ
グ・ユニット(OBU)の制度をはじめたバハ
うになる」
(同上)と語り,今後の成長性はバハ
レーンが折からの石油ブームの中で,1
9
7
0年代
レーンの方が高いとの見方をしている。
末から8
0年代初頭にかけて湾岸の金融センター
さらに,バハレーンは小さな島国で狭隘なの
としての地位を確かなものとした。しかし,そ
で,不動産開発には十分な土地がないとの指摘
の後の油価下落に伴う1
9
8
0年代での湾岸不況の
には次のように反論している。
「そのような指摘
到来や技術進歩による地球的規模での2
4時間金
は,マナマやディプロマティック地区のみしか
融取引の可能化の中で,バハレーンの湾岸の金
見ていないから出て来るのである」
「ファハド国
融センターとしての役割はやや後退を余儀なく
王架橋からサルマン港までドライブをして見れ
されている。この間隙を縫うようにジュベー
ば分かるが,まだまだ土地は余っている」
「さら
ル・アリ・フリー・トレード・ゾーン(JAFTZ)
にバハレーン南部は第二空港には理想的な場所
を梃子として1
9
8
0年代末から9
0年代中頃にかけ
であり交通渋滞の解消に役立つので,もっと開
て伸びてきたのがドバイである。その後ドバイ
発されなければならない」
「南部にはバハレーン
は,単なる物流拠点としてだけではなく,
スポー
国際サーキット(BIC)場が完成しているし,
ホ
ツを含む各種催事・イベントの開催地,リゾー
テルや娯楽施設の開発も予定されている」と(同
ト観光地,さらにはインターネット・シティや
上)
。
メディア・シティ等のユニークな分野の地域ハ
バハレーンは2
0
0
5年5月9日から1
1日の日程
ブ,或いは中東の航空ハブといった構想を打ち
で,ガルフ国際コンベンション・展示センター
出して開発に専念し今日を迎えている。ドバイ
において,
「バハレーン国際旅行 Expo」の開催を
では,今後も保健都市や国際金融都市等の構想
予定している。同展示会の主催者である Unitag
が目白押しである。
グループのアブラハム・ジョン総支配人は「こ
ここでご紹介したドバイ,バハレーン,
カター
の催し物はバハレーン自体及び今後数年で実施
ル,オマーンといった湾岸の小産油国では,ポ
される各種事業を売り出す絶好の機会である」
スト石油を見据えた国づくりの一環としての観
「同時に,この展示会はバハレーンの関連産業に
光産業や展示・イベント事業等の開発が盛んで
勤務するバハレーン人の知識の向上を図る良い
ある。これら事業が立ち上がる2
0
0
5年から2
0
0
7
機会ともなる」
「また湾岸の人々にとっても,来
年,2
0
0
8年にかけて,湾岸小産油国の社会・政
年の夏の訪問先を決めるに際して選択を広げる
治がこうした極めて開放的な事業の中でどのよ
機会にもなる」(Bahrain Tribune,2
0
0
4.
1
1.
1
5)
うに展開していくのか。特に,中東・アラブ社
と述べ,参加を呼び掛けている。
会でのイスラム回帰現象の高まりの中で,これ
らの新規事業がどのように受け入れられること
さらに同総支配人は,豪州,ニュージーラン
になるのか注視していきたい。
ド,シンガポール,マレーシア,タイ,スリラ
4
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