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-英米法における離婚手当の性質

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-英米法における離婚手当の性質
英米法における離婚手当の性質
一 妻を扶養すぺき夫の義務
二 妻の有責、夫の無資力
三 支払期聞
一 妻を扶養すべき夫の義務
石
芳
枝
英米法における離婚手当の性質 四〇五
妻へ、両人が別居や離婚をしている場合の、彼女の生活費︵δP9一口台①b9口OΦ︶のために支払う、部分的であると総括
は法建上、一般に、夫が裁判所の命令により、妻を扶養すべきコモン・#1上または制定法上の義務にしたがつて、
要するに、 ﹁養う︵ロo信注ωげ︶とか、 支える︵ω偉ωけ融⇔︶とかいう意味のラテン語鑑①厭①から来ている鋤目日o口団
を企図する制定法ならびに判例によつて、変形される傾向をたどりつつあることは、申すまでもない。
ちいた意味における90嵩日ob団と、だいたい同義に使用される。他面また牧師達の宣言は、宗教法からの急進的背反
日鉱緊9智ooという表現はむしろ少ない2。そしてそれらの用語は、 かつてイギリスの宗教裁判所で、牧師達がも
扶養料についても同様であるー。 アメリカ諸州の制定法に見られる用語は、そのほとんど三分の二が9に日o口畷で、
離婚手当すなわち離婚後の扶養料を、 イギリス法では、 菖9。ぎ8β9昌oΦと呼ぶようである。結婚無効の判決後の
M山
記 念 論 文 集 四〇六.
的であるとを問わず、一切の供与︵鋤にo宅碧80︶を意味する﹂という、ζ醇注目9昌く°国o毒ぴ鋤犀Φ厭︵イリノイ一、九三
四︶ ︵釦句09ωqbサ鮮ωい。︶における定義は、イギリスおよびアメリカの裁判所を通じて、今日もかなり支配的だとせ
ねばならぬ。このような供与は、 ﹁コモン・ローにおいては通常、宗教裁判所判事が自由裁量で、事件のすべての事
情を考慮して設定した。⋮⋮それが離婚した妻へ与えられることを基礎づける原則は、夫は適当な扶助︵ω口bbo暮︶
を妻に供すべきだ、ということである﹂とも、イリノイ最高裁判所は述べている3。 つまり離婚手当を、夫は妻を扶
養すべきである、というコモン・ロー原則の、離婚後における拡張と解するのである、。
そして﹁妻勝訴の離婚判決にもとずき、無責の妻へ審与される離婚手当は、夫に対する単純な債務の強制ではなく
て、彼の結婚上の扶養義務の強制である﹂とされる5。あるいはむしろ、義務不履行のかどで課せられる罰金と考え
るべぎだ、とされた6。離婚手当の審与が、夫を、彼の結婚上の不当行為の理由で罰する手段として、依然もちいら゜
れることは、 罎o暮σqo8①藁く°寓o口茜o巳Φ厭団︵フロリダ一九五一︶ ︵α卜。ωo﹄価爵伊国鋤゜︶などからあきらかであ
る。離婚手当の根本的性質を、裁判所はまだよく理解していない、という非難のもとも、この辺にあるらしい。また
それは、債務者収監を禁じる憲法規定がいうところの﹁債務﹂には含まれず、債務者法︵一︶Φげ8同の︾9レ。。Φり︶ ︵。。b。
即G。。。≦9°ρON︶の適用を受けるし7、その執行は、強制執行令状や差押手続のほか、裁判所侮辱を理由とする逮
捕にょることができる、 とされる8。いずれにせよ離婚手当にっいては、扶養義務全般に共通の特殊性に留意し、そ
の特殊な不濃行に適切な執行ないし処理を、重要課題とせねばならぬ。しかし執行方法から逆に推論して、その本質
を、逮捕や収監もおこなわれうるから罰金であるとか、債務者法の適用があるからいわゆるα⑦瓢であるとか9、即
断することは危険である。
ところで本来、妻を扶養すべき夫の義務は、結婚生活における地位から生じるものである。したがつて離婚手当に
対する妻の権利は、妻の人的権利である。それは、財産権ではない。それは、貯えられるためではなく、妻の扶養の
ためであるから、彼女はこの彼女の権利を、譲渡することも、放棄することもできないーo。以上は、ほぼ通説と見て
よいであろう。彼女がこの権利を事前に享有することもゆるされず、将来における権利を譲渡することも不可能であ
る11。 イギリスの一九五〇年度結婚事件法︵ζ鉾ユ日o巳巴09⊆ω⑦ω︾9︶ ︵にOoo。9ρb。㎝︶一九条三項は、 裁判
所が相当と考えるような、妻の生活費のための月額または週額を、妻へ支払うことを、裁判所は夫に指示できる旨を
規定するが、この月額または週額には、譲渡性はない皿。ただし同条二項が、夫の財産から妻のために確保する一時
金または年金については、譲渡可能と解されている13。 ︸
離婚でなく、結婚無効の場合にも、離婚手当に準じた扶養料を認むべきであるかどうか14。勺Φ邑#︿°勺o乱詳︵テ
ネシ一九五一︶ ︵卜∂艀O ω゜毛゜ Nα ㎝卜σ昌︶は結婚無効事件であつて、被告は、法律的には妻でなかつた。とはいえ原審
裁判所は被告に対し、彼女の扶養料は認められる可能性があると、好意的態度を示した。彼女は原告と二十年間一緒
に暮していたが、彼も実は、彼女の夫ではなかつたわけである。彼女はほかに、生存している夫を持つていて、その
夫から離婚していなかつた。テネシ最高裁判所は、このような場合の扶養料請求は禁反言︵Φω8旨2︶であるとし、
ならぬ、と力説した。両σqαqδ・・けoけく°国αeσΩδω8昌︵オハヨー一九五二︶ ︵昌①Oぼoωr恥b。b。’HO。。Z.国゜b。αG。Oα︶の
彼女のための扶養料を認めることを拒絶した。そして女性は、扶養料の権利を得る前に、まず彼の妻の地位を得ねば
コ
裁判長は、結婚無効判決後も扶養は必要であることに重点をおいて、問題の解決を図る。前に述べたイギリス一’九五
〇年度結婚事件法の一九条によれば、離婚判決のみならず結婚無効判決があつた場合も、扶養料を認められうること
は明白である。同条は、一九〇七年度結婚事件法︵¶団U伍ミ゜刈婚O°HbQ︶一条にさかのぼりうるが拓、すでに国゜<°囚゜
︵イギリス一九一〇︶︵℃°日蔭O⋮b。﹃UおoωeαOQ。︾α蔭①O︶では、精神病の理由による結婚無効訴訟において、被告は
英米法における離婚手当の性質 四〇七
記念論文集 四〇八
扶養料を得ている。結婚を完成する︵oo昌ωβ旨ヨ舞Φ︶ことを妻が故意に拒んだとの理由で、’夫から結婚無効訴訟が
提起され、被告は敗訴したが、やはり同じく判決後の扶養料をゆるされた事件には、∪9δ嘱く゜U9ロo鴇︵イギリス
一九四七︶ ︵目b昌HW°幻゜ OQら¶︶がある16。
、 1 扶養料すなわち﹁巴冨oロ賓は、裁判所の命令による金銭支払の形をとり、しばしば年額で定められるが、週払いまたは月
払いでもよい﹂。 訴訟継続中の扶養料すなわち﹁鋤嵩ヨo口団灼Φロ自ぼσqo︸巳けは、 離婚や結婚無効や裁判別居や配偶権回復
︵器ω馨亘鉱80︷08冒σq9■一艮σQ耳の︶の請求にもとずいて、命じられうる﹂。 判決後の扶養料すなわち﹁唱霞目9。昌o暮9。嵩ヨo昌
は、裁判別居判決にもとずいて、 または妻の申請にかかる同居判決にもとずいて、 命じられうる﹂。 そして﹁日9貯8昌きo①
は、離婚判決または結婚無効判決にもとずいて命じられるところの、 週払いまたは月払いに対して与えられる名称である﹂。
1口9⊃一ωび二蔓.ω冒潜甫ωoh団ロぴq冨昌9。。a&°︿oい這︵同8α︶やさ。OP ﹁便宜的に、 裁判別居判決後のものをO霞日9。ロ¢口e
9寓日o口団、離婚判決またぱ結婚無効判決後のものを日蝕口8昌9け8、配偶権回復判決後のものを℃①註o&09。一b9。矯日Φ暑ω、と呼
ぶのが普通である﹂。1菊鋤矯α①PU署o昌09①魯⑦α゜︵H⑩α゜。︶や鰹O°
2 巴ざ窯9°ロOPωロや噂O塊r触OOO︿①擁ざ冨団日①ロfωロ日O剛日O口¢団などとも用いられる。1<①Bδびbヨ①蝕8昌国帥日一ξ
ピ四毛ρ︿巳゜﹄。︵困8bっ︶ウb。①α゜
3 ωけ籠日9口く°ω巨一巳鋤POOロ一゜おρωOb厳゜幻①b°b。H°
﹁メヤリランドの制定法︵しu§。ぴqぴざ︾昌昌・O・HObっ♪諺邑け゜H♀ωΦo°鼠︶は、離婚手当に関する一切の訴訟原因の審理および
裁決を、エクイティ裁判所は、イギリスの法律にょり宗教裁判所がやつたような十全のやりかたでやるべきである、と規定す
ることによつて、多くの困難な問題を設定する。それは、完全であるかもしれないが、進歩的立法ではまずないであろう﹂。
i<霞巳①ひま己゜弓゜b◎8°
4 ﹁扶養料は厳格な意味では、妻を扶養すべき夫の義務の強制である。それゆえ非制定法︵自ロミ梧詳梓Φロ一帥貞︶のもとでは、扶
養料と結婚とは分離されえない。したがつて扶養料は、制定法の授権なしには、離婚訴訟において判決されえない。⋮⋮アメ
リカ各州は、離婚訴訟において、妻の扶養のための財産提供を裁判所に授権するある種の制定法を持つている﹂。ー<o誓δ炉
皆苓ウb。㎝㊤゜離婚手当は、竃馨ほ日o凱巴Op¢の①ωb9ωにもとずく、制定法上の財産提供である。1切邑o団く°切毘o団︵イ
ギリス一八八四︶ ︵HgQρ.国甲゜同︾°ooα㎝糟O.諺゜︶
5 男o日ロぎo︿・Oげ9ロロoΦ団︵ニュー・ヨーク一八九二︶ ︵這Oズ9嘱゜α①曾bっ㊤署゜国゜QQ卜。O”日癖目゜労゜︾°刈Hb。︶
■
6 じσ§δ吐O冨同く°じd9同O貯畷︵イリノイ︶ ︵HQQ直HFQ◎刈ρα⑦累゜勾幽OGQ9窃Hピ゜開邑︾°QQαH︶
7 ﹁離婚手当の審与は、夫の法的債務を創造しないで、債務者法にもとずいてのみ強行されるところの、支払義務のみを創造
する﹂。ーピぽ8ロ︿°ドぎ8昌︵イギリス一八八五︶ ︵H㎝ρ゜切﹂96邸もQりu O°︾°︶
8︾儀”巨ω<°︾山9日ω︵ニュー・ジャージー一九=二︶︵o。O宕゜旨国ρ・H誤℃◎oG。︾・目OO℃H㊤b⊃︶
9 α①びけ︵金銭債務︶とは、手つとり早くいえば、借金の弁済のようなものであるが、離婚手当は、夫が以前に妻から借りた
金の弁済ではない。
@処分禁止の根拠として、 ﹁離婚手当に対する権利は、制定法の支配を受け、妻はその一方的な声明や行動によつて、制定法
@0.頃母9く゜O.国9吐9︵ニユー・ジャージー一九四四︶ ︵置︾’卜σαH⑦⑩讐目﹃bっ導Z°9国旨゜帥︾眉り・︶
団・幻909︶、切O昌昌O言く’切O昌ロΦ詳︵イギリス一九五二︶︵H︾=国゜カ゜自C。︶
にもとずく彼女の権利を放棄することはできない﹂、と解する向きもある。i開oωω︿°国oのω ︵イギリス一九五〇︶°︵日b鵠
10
@幻口唄幽①Pま 鑑 ゜ b の ㎝ 謡 ︵ び ︶
11
@男帥團自Φ員管 憲 ゜ サ 宅 ① ︵ Φ ︶
12
英米法における離婚手当の性質 ・ 四〇九
期到来後の金額は、譲渡しうる﹂、と述べている。争われた離婚手当は、総額二千百ドル、それを月払いで三年間に支払う、
O①α①吐ぴo茜く°O信μω霞o日︵ミネソタ一九三五︶︵H㊤ω竃ぎ口゜島どb。αQ。2°芝゜㎝刈典鶏︾°い.菊゜﹄30刈︶は、 ﹁離婚手当の支払
よい、と規定する。
オハヨーの制定法︵勺掌o槻①噛 ︾昌昌’ ︵ΨO昌゜ ∩rH㊤bo①噛 ωΦO’HHOO①︶は、離婚手当の審与後、当事者はそれを売却または譲渡して
13
記念論文集 四一〇
という合意がG氏とG夫人との間に成立していたにもかかわらず、残額二百四十ドルの支払いがないまま、G夫人は支払期到
来後、彼女の請求権をC氏に譲渡した。そして今度はG夫人がC氏から、二百四十ドルを訴求された次第であるが、被告敗訴。
当該請求権は、離婚手当請求権であるから、実は譲渡しえなかつたものであつて、原告は訴訟原因を有しなかつた、という被
告の主張はとおらなかつた。
@ニュi・ヨークの民事手続法︵O等自勺冨o鉱oo︾o計ωけ9。εけΦωΦo凱o昌目置O︵帥︶︶は、結婚無効訴訟において﹁裁判所は、
@同条は、一九二五年の最高裁判所︵統合︶法ω巷聴Φ目①Oo霞けoh旨ロ岳o緯q掃o︵Ooロωo罵α讐δ口︶諺9︵Hα帥μ①Oo9辞o°
正義が要求するような、夫による妻の扶養のための命令を交付しうる﹂、と規定する。
14
@この事件において、夫が二十一年間も妻と一緒に暮すことを続けた、という事実は、扶養料額判定の基準である[当事者の
︵bりO 帥 H心り く 一 〇 け ゜ O ° Q Q 切 ︶ 三 二 条 が あ る 。
お︶一九〇条に代つたものであり、 その前身として、一九〇七年度結婚事件法一条のほか、 さらに一八五七年度結婚事件法
15
る﹂。やがて議会が離婚事件をあつかうようになつた一時期があるが2、﹁議会では若干の事件において、有責な妻の
たから、 ﹁彼女は依然として被告の妻であつたのだし、夫の資格で、彼は彼女を扶養するように拘束されたわけであ
は﹂、離婚といつてもそれは、 食卓と寝台からの離婚︵α一くO同OΦ 簿 bPO口ωO Oけ けげO邑O︶にすぎず、実質は別居であつ
て判決された場合、離婚手当は付与されなかつた。妻が原告であつた場合には、付与された。⋮⋮もつともそこで
ス一八六一︶ ︵bδω♂<鋤σ゜ 帥 ]り゜ らHO︶からは、つぎのことを知りうる。﹁宗教裁判所では、離婚が夫の訴にもとずい
宗教裁判所では離婚手当は、有責な妻にも、資力のある妻にも、ゆるされなかつたー。国ωげΦ辱タ閃δびo厭︵イギリ
二 妻の有責、夫の無資力
行動﹂として、重視せねばならぬ、と判示されている。
16
’
離婚後の生活費のために、財産提供︵O畦O︿hω O旨︶を認めておくことがよい、と考えられた。 このような財産提供を
認めることには、多くの強い反対があつた﹂ことはたしかである。議会におけるこれらの事件の﹁夫は、結婚を解消
して、結婚上のあらゆる義務からふたたび自由であることを選んだ﹂のであり、しかも結婚の鎖からの離婚︵象くo﹃8
鋤く言o巳o巨9甑巳oロ5を選ぶについて、﹁彼は有効な原因を持つているので、彼の方が有責者のために財産提供
をするように要求されるべきだとは、なりにくいのである﹂。のみならず議会では、 ﹁妻の依頼で通過した離婚私法
案︵象ぐo零oぼεは、 ごくわずかである。そして夫から離婚することを選んだ妻のための財産提供を、夫が強要
された私法案は、一つも見あたらない。⋮⋮おそらく立法府は、彼女は貧窮状態に放置されるという犠牲を払わねば
救済を求むべきでない、という意図であったにちがいないと思われる﹂。有責の妻を、夫は多く訴えるが、有責の夫
を、妻は多くは訴えない。訴えずに泣き寝入りする方が、訴えて飢えるよりはましだからであろう。
ム
この零のげ霞く°田ωげ窪の事案は、 ﹁妻が離婚を選んでいる。そして彼女は、訴えるだけの強い原因を持つてい
るとはいえ、彼女を、食卓と寝台から離婚した妻とまるで似た地位にある者、として考えることはできない。彼女
は、夫とともに住む必要からは解放され、しかも彼の妻のままでいることもできたであろう。しかし彼女の選択は、
そうすることではなかつた。なおまた彼女は、たとえそうすることを選んだとしても、有効な訴訟原因を持つている
のだから、被告は原告を妻の地位から奪つた者、と考えられうる。⋮⋮議会や宗教裁判所の実務からの助力をあてに
することができないので、私は、本件における合理的な線を判定する、という骨の折れる仕事を引き受けねばならぬ﹂、
と述べたのち判事は、以下のように結論している。 ﹁私は、妻は貧窮状態に放置されるべきではない、と思う。他方
また、結婚の鎖の解消を得ることにおいて、非常な金銭的利益を妻に与えることはよろしくない3。原告は、彼女自
身の資産を何も持つていない。夫はいくらかの資産と営業収益とを持つているが、どちらも多額ではなく、一定して
英米法における離婚手当の性質 四一一
記念論文集 もいない。このような事情のもとでは、生活費以上のものを審与すべぎではない、と私は思う﹂。
四一二
要するに、原告に廻つた無責な妻に対しても、被告に廻された有責な妻に対しても、離婚手当の﹁審与は、つねに
可能でなければならぬ。なぜなら、法律論はどうであろうとも、実際の事実は、無責な妻も有責な妻も、飢えたり、
州の負担となつたりしがちなことは、同じだからである﹂ど、アメリカの著老は指摘している4。無責な妻に離婚手
当が確保されることについては、今日、格別の論議はようやく姿を消した。しかし有責だとされる妻については、ま
だまだ一般の感情は複雑である。とりわけ妻の姦通には、偏見的なまでの俊厳さで臨むきらいがある。﹁アメリカの制
定法は、離婚された妻を、法律上は彼女の過誤であつたが、しかし事実上は彼女だけに帰せしめられたり、られなか
つたりすることのために、州の負担となるままに、または不道徳な生活に強いられるままに、放任するのである﹂5。
しかしながら﹁結婚上の不和が起る場合たいていは、過誤のすべてが一方にあるのではない、ということを経験と常
識はわれわれに告げる。どちらか一方におけるいわゆる過誤よりもむしろ、妻の需要と夫の支払能力とが、妻は離婚
手当を持つべきかどうか、持つべきならどれほどか、を決定するについての、主要な考慮事項であらねばならぬ﹂
と6、 アメリカの良識が告げるところは、問題の、みごとな解明というべきである7。現在イギリスにおいては、姦
通について有責だとされた妻が離婚手当を申請することを、妨げるものは何もない。ただし裁判所は、このような場
合も自由裁量権を有し、しばしば少額の離婚手当の付与をもつて、夫勝訴の離婚判決宣告の前提条件とする8。
ところで前述のとおり、離婚手当の要否は需要と支払能力との如何にかかることが、納得されるなら、夫の需要と
妻の支払能力とが、妻から夫への離婚手当、という形をとらしめる結果を導きうることも、否定できなくなる。そ
してこのことは、 夫妻の﹁平等権﹂を強調する立ち場からの支持を受ける。 コモン・ロ1のいわゆるカヴァチャi
︵oo<o含珪Φ︶の考え方では、夫妻は平等でなく、夫は妻の庇護者であり、したがつて夫は妻を扶養すべきである
が、妻が夫を扶養すべぎであるということは、どこからも出てこない。生活能力を失つた夫の救済は、妻ではなく社
会が負担すべきで、それはすでに結婚法の問題をはなれ、救貧法︵勺oo憎い斡≦︶に移されたのである9。 しかしなが
らイギリス議会が一九二五年に敢行した、財産法における大改革は、 一八八二年度妻財産法︵ζ9。旨むα毛o目Φ昌.ω
勺8b曾蔓︾oけ︶ ︵蔭α帥昏①∼N⋮o什゜o°¶㎝︶このかた立法の努力によつて、除去されつつあつた夫妻間の財産法上の不
平等にも、ついに終止符を打つた。このような法律的裏付けは、 ﹁平等権﹂論議を活発ならしめる。
アメリカはことに、 ﹁平等権﹂へ向う傾向を示し、夫への離婚手当を認める意図があきらかな制定法を持つ法域
も、相当の範囲におよんでいるーo。そして﹁離婚手当がまつたく望ましいものであるならば﹂、 夫とか妻とかの差別
なしに、およそ﹁貧窮状態の配偶老を扶養すべぎ義務を、州の上におくよりもむしろ、結婚という厳粛な盟約を結ぶ
ことによつて、苦楽を分かとうと受け合つた他方配偶者の上におく、どいうことを根拠にすれば、離婚手当は、もつ
とも異議なく正当化されるであろう﹂n。 しかしまた、つぎのようにいわれる。 ﹁離婚訴訟において、妻の財産から
夫へ支払われるように命じられることがあつても、それにもかかわらずこれを離婚手当と呼ぶことは、誤称である。
なぜなら離婚手当は、 コモン・ロー上の扶養義務の代用物であり、そして妻は、若干の法域で制定法による以外に
は、このような義務を夫に対して負わないからである。したがつて裁判所は、制定法の授権なしには、夫への離婚手
当というものを、付与しえない。そして右は、アメリカの通則である﹂の皿
1 ﹁アメリヵの二三州の制定法は、妻が有責である場合の法律効果に関しては触れていない。それで、教会の原則が適用され
るらしい。その他の一七州では、夫が有責の場合に︵九州︶、または無責当事者へ︵二州︶、または妻勝訴の場合に︵六州︶、
離婚手当が審与されるべきである、と規定することによつて、同じ結果に達している。テネシでは、夫勝訴の場合に妻へ離婚
手当を審与することを禁じ、メイソでは、勝訴した妻は、その原因が夫の性的無能力でない限り、離婚手当を与えられる﹂。ー
ー<Φ陛巳Φがま一9︾°bっ①①゜
英米法における離婚手当の性質 四=二
記念論文集 , 四一四
﹁五州は、もし妻が妻自身を扶養するのに十分な財産を持つているなら、夫分財産からの供与は差控えてよい、と規定する
が、右は、そのような場合に離婚手当を審与することはできない、という意味ではないようである。三州は、もし妻が財産を
持つていないなら、または妻自身を扶養するのに不十分なら、離婚手当を審与されるべきである、と規定する﹂。i<霞巳Φひ
ま置.冒゜b。雪゜
2 議会における最初の離婚事件は一六六九年。そしてこの方法による離婚手続は、一八五七年まで継続。1私の﹁アメリカ
離婚法略説﹂︵法律論叢二六巻四号六頁︶。
3 しかしまた、 ﹁夫は、彼自身の悪にょり、妻に離婚を強制することにおいて、利得すべぎでないことを、公平と良識は要求
する﹂。1国Φ昌昌母α︿°国Φβ昌賃α︵ニュー・ハンプシャイヤ一九二六︶︵。。H閉゜国゜αOPHbっ㊤︸潮α︶
4<母三①さ葦山゜やb。①目゜
5 ﹁アメリカの数州は、明示的または黙示的に、有責な妻にも離婚手当をゆるす規定を持つ。一州では、例外なしにゆるす
し、二州では、離婚原因が妻の姦通以外であつた場合にゆるす。その他の二州は、妻の姦通の場合だけは禁止する、と明示
する﹂Qー<o機巳霞Lぼ創゜や邸欝゜
6 ﹁離婚手当は、妻が彼女の扶養に十分な財産を持っ場合には、審与されるべきでない、という五州に見られる規定は、上記
の見解と一致する﹂。−<oB一①き㎞互9や爬①ド
7 妻が寄与した部分は、離婚に際して妻に返還されるべきであつて、別段それは離婚手当ではない、ということがあきらかに
されているのは、=op夢く°霞①9爵︵フロリダ一九三二︶︵HO。。腎冨.目ミザH。。。。①ρ﹃O俘Q。トっ︾・ダ即認¶︶である。妻の姦
通を離婚原因として、下級審で離婚をゆるされた夫が、同じく下級審で、妻に二千ドル支払う宣告を受け、不服で上訴したと
ころ、最高裁判所は上訴を棄却した。妻は、夫が支店を開くとぎ、大いに助力じ、人的奉仕に加えて、彼女自身の資本もか
なりの額を注ぎこんだことは、 立証ずみである。 ﹁離婚手当は姦通をした妻には付与されるべきでない、 という趣旨の法規
︵Oo巨や゜O①昌゜い簿署9ω①ρおo。刈い幻Φ︿°Ooμ.ωρωoo°ωμ㊤㎝︶は、結婚が解消されないで継続してい允年月の澗、妻ガ資金
と勤勉とで大いに寄与したと立証される、夫の仕事と財産におけるト妻の特風なエクィティー上の権利のために㌦裁料所が妻
へ一定額を確定して、その供与を認めることを、妨げるものではない。このような供与は、離婚手当ではない。そして夫への
通常の結婚上の義務の履行を超えて、妻が、 夫の財産の蓄積に対し、 資金と奉仕との寄与をしたことから、妻のために生じ
る、夫の財産におけるエクィティー上の権利の認定を支持するところの、特別な事実と事情によつて、保証されることを立証
されない限り、このような供与は、どういう場合にもけつして認められるべきでない﹂。
8 被告である妻は、もしも反訴における主張が容れられ、判決が両当事者のために付与されたなら、原告である夫より強い地
位に立つ。 彼女は、 夫より先きに離婚を請求しなかつたという単純な理由で、 損害を蒙るべきではない。1臼器ω欝言く謄
G邑Φωego言︵イギリス一九五〇︶︵Hb崔め・幻・①HQ。︶
9 救貧法は、一六〇一年法を最初として、それ以後も数次にわたつて改正法が出た。もつとも整備されたものは、一九三〇年
法であるが、その一四条は一項で、要扶養者の父、祖父、母、祖母、夫、子に救貧義務を認め、妻には四項で、夫に対する救貧
義務を認めている。これらのいずれもに十分な資力がなければ、国が救貧義務を負う。なお右の救貧法大系は、一九四八年の
国民扶助法︵H49e一〇昌9一 ︾のω一ωけ9昌O① い9毒︶によつて、とつて代わられた。イギリス社会保障立法の躍進ぶりはめざましい。
@ ﹁一五州が、夫への離婚手当を許容する制定法を有し、二五州は、裁判所に、妻の財産の一部を夫へ審与しえしめるにとど
@・﹁この立脚点から離婚手当が、許容され処理されるならば、もはや優位の財産権を持たないところの、そして離婚手当の審
まる﹂Qー<①﹃ 三 ① 居 ま ㌶ 曾 や b D ① b っ ゜
10
@ ﹁妻財産法およびその他の﹃平等権法﹄は、扶養義務も含め℃、配偶者相互の義務を平等化したように、配偶者の財産権を
得た場合、彼女は、裁判所によつて、彼のための離婚手当を命じられうる。
イギリス一九五〇年度結婚事件法一九条四項のもとでは、妻が夫の精神病を原因として離婚判決︵または結婚無効判決︶を
別である、という人々が放つ非難の多くは、消失するであろう﹂。ー<①唇凶①び一三α・やb。①b。・
与によつて、すでに救済を得ている婦入と、経済上の競争をしなければならないところの夫にとつて、離婚手当は不公平な差
11
英米法における離婚手当の性質 四一五
12
記念論文集 四一六
も平等化した、という説にもとずいて、夫へ離婚手当を審与す6ように、裁判所を説得する試みは、不成功だつた。このよう
な法律にもかかわらず、扶養義務は依然として夫だけにあるというのが、 いつも裁判所の答だつた。ただし制定法によつて
<①吐三①き箭嬢゜OO°GQOGQ讐も。O艀9
あきらかに妻にも義務が課せられている場合は、 この限りでない。その場合には、わずかな例だが、夫は成功したL。ー
三 支払期間
離婚手当の支払期間に関しては、前出田ωげΦ陛タ霊ωげ零の中で、離婚後に﹁もし原告が不道徳の責を負うにい
たつたなら、あるいは彼女が再婚すれば、彼女の扶養を前夫に要求することは、不合理であろう﹂と述べられてい
る。ところが再婚について、O弩矯く°O帥q︵コネティカット一九三〇︶︵H目卜。Oo昌戸謡①ゆH詔b準G。O卜。︶の裁判長
が、同じく消極論を、別な理由から採つているのは興味ふかい。すなわち、 ﹁離婚手当は、もし彼女の第二の夫によ
り彼女へ与えられる生活費が不十分であるならば、継続して差支えない、という原則を大多数の判例は支持する。⋮
⋮この原則は、第二の夫の実際の財政的基礎をたしかめ、これを、彼女の収入と第一の夫の財政的基礎とにらみ合わ
せたものに釣り合わせる、という困難な判定を裁判所におしつけるものであるが、裁判所は、このような判定をする
ことを、要求されるべきでない。われわれが採用するもつとよい原則は、非常に例外的な事情は別だが、彼女は彼女
の生活費を第二の夫から得ることを選び、それによつて、裁判所が離婚手当の審与という形で認めた、彼女の生活費
のための財産提供を、放棄したという推論を、再婚という彼女の任意行為から導き出す﹂。
普通には妻の再婚は、、離婚手当に対する彼女の権利を、自動的に終了させるものではない、とされているー。再婚
後は、より以上の支払をしなくてすむように、前夫は、訴える権利を認められるにすぎない2。O邑o℃ωo団く°O吐8ωΦ団
︵ニュー・ジャージー一九二九︶ ︵目O蔭Z°卜国ρ゜目。。メH瞳︾け一゜Ob。H︶における夫は、妻の再婚を理由に、一週二十ド
ルの離婚手当の終了を訴えたが、裁判所は、この再婚は、もはや離婚手当は必要でない、という推定を生じさせない
とした。妻が再婚後、離婚手当の支払終了を求める前夫の訴に対する抗弁として、後夫を結婚無効で訴え中である、
という主張をした事件、冨言9ぎぐ゜ζ貯色ぎ︵ニュー・メキシコ一九三七︶ ︵自乞﹂≦Φ図゜嵩9①①℃°︵b。畠︶卜。①O︶で
は、抗弁は拒否された。再婚の結果、彼女の資産が増加する可能性が発生すれば、それは、離婚手当額の決定に際し
て、考慮される要因になる。ω昌Φ匡昌σq︿°ω昌鮎嵩昌σq︵イギリス一九五二︶ ︵卜。︾置両゜幻゜H㊤O︶の妻は、離婚後まもな
く再婚し、そして未亡人となつたのだが、第二の夫から財産を十分のこされたため、第一の夫に対しては、名目的離
婚手当しかゆるされなかつた。 ニュー・ヨーク民事手続法︵Ω<に勺冨o鉱oo︾9︶一一五九条によると、妻が、離
婚の勝訴判決を得たのち再婚した場合は、その﹁通告および立証にもとずく夫の申請があれば、裁判所は命令でもつ
て﹂、離婚判決に関して出された離婚手当命令を﹁修正せねばならぬ﹂。また、﹁妻が他の男性と、結婚してはいない
が、いつも一緒に暮しており、彼の妻であると自称している﹂場合は、離婚手当命令を﹁修正することができる﹂。
裁判所は、姦通が立証された妻に離婚手当を審与する際、貞節条項︵良二昌PO9ω叶鋤O一9二ωΦ︶を挿入するのが通例であ
る。すなわち、離婚手当の支払継続は、彼女が独身で、そして貞節に生活している間︵α口旨PのO一帥Φ酔O鋤ωけ9 ︿一図Φ桶一け︶
亀
に限ることを、条件とするのである。彼女が貞節でないと、離婚手当は、取消の申請によつて廃棄されうる。無責な
妻の場合には、 ﹁貞節な間﹂という条件を附加することは、現在は一般におこなわれない。彼女は、貞節でなくなる
かもしれないという暗示によつてさえも、侮辱されるべきでないからである。それはともかく、この条件を附加すべ
きかどうかを決定するにあたつて、妻の行動は、結婚中のものと同様に結婚前のものも、魁酌されうる3。﹁独身の
間﹂という条件に関しては別段、劃一的なものはないが、しかし妻の再婚は、あらゆる場合に重大な掛酌を受けるこ
英米法における離婚手当の性質 四一七
記念論文集 四一八
とは4、前述のとおりである。
離婚手当支払の義務は、 夫の死亡後為残存するかどうかが、 霜房o口く・国ぎヨ9。昼︵ニュー・ヨーク一九〇五︶
m ヴ唄。嘱. 躰O◎Q糟 ﹃釦 ワβ国。 b⇒GQO螂bo H;幻゜︾°︹7﹁°ω゜︺b。。。b。︶で争われた。この問題については、 ﹁残存しないという説の
pQ
らされ、そして離婚手当審与の基礎は通常、このような収入におかれ、蓄積された財産から生じるものにはおかれな
からもつばら引き出される、という階層の者は比較的少数である。大部分の者の収入は、その職業上の尽力からもた
ならないかは、理解しにくい﹂。 のみならず実際的矛盾がある。すなわち、アメリカでも﹁収入が、﹁蓄積された財産
ともできる。離婚した妻の権利が、離婚していなかつたなら享有したであろう権利よりも、どうして大きくなければ
の遺産の上に権利を有するが、しかし﹁夫は、しようと思えば、彼の財産のすべてを遺言で処分し、妻を排斥するこ
の遺産に対する請求権として夫の死後に残存する、ということはない﹂。 離婚していない妻は、夫が死亡すると、夫
なら、離婚手当を支払うべき義務は、夫の死亡と同時にやむことはあきらかである。扶養についての妻の権利は、夫
審与の基礎は、夫による扶養という結婚上の義務に存する、と認めた⋮⋮この離婚手当の性質に関する見解が正しい
ものとされてきた。この後者の見解を、当裁判所の最近の判決はすべて採用する﹂。 そして当裁判所が、 ﹁離婚手当
では、終局判決により審与された離婚手当は、本質的には、妻が結婚解消によつて失なう扶養の権利と、同じ性質の
として、そして当事者間にこれまで存在した組合的なものの資産の分配として、考えられてきた。同時にその他の州
夫の唯一の責任が、判決から生じるのである。それゆえ二三の州では離婚判決は、両当事者の財産権を設定する判決
存在することを、明確にするにすぎない。ところが離婚の場合には、結婚上の義務は終了し、あらためて妻に対する
手当は別居手当とは、その本領を異にする。別居の場合には判決は、妻を扶養すべき継続的義務が、夫の側になおも
方が優勢であるとはいえ5、多州の裁判所の判決の間に、大きな衝突があることは否定できない。⋮⋮もちろん離婚
(H
い。⋮⋮だから離婚手当が、夫の死後に彼の遺産の負担とされては、非常に法外な話だし、彼の財産上の他の請求権
者にとつても、 まつたく不当であろう﹂6。 つまりこれは、離婚手当請求の死後残存を、 徹底的に否定する説であ
る。
イギリスでは一九三四年に、 法律改正︵諸規定︶法︵い①毒幻①ho厭日︵竃溢o①に碧①o口の勺3丘忽o昌ω︶︾9︶ ︵b。膳
騨b。朝Oo9㎝ρ自︶が制定され、その一条により、あらゆる訴権︵09。信ωΦo出碧鉱o昌︶は原則として、死後も残存す
ることが、成文化された7。しかし、U首覧①︿°U昼豆①︵イギリス一九四二︶︵H︾目炉幻゜b。。。艀︶は、依然として離婚
手当につき、 死後残存を認めない。 閏oαωo昌判事の説くところを摘記すれば、夫妻﹁両人の一生間継続の離婚手当
を求める請求権は、被告である夫の死亡と同時に、それ以後の手続ができないということは、承認せられる8。しか
し離婚手当の申請は、一九三四年の法律改正︵諸規定︶法の規定により、被告である夫の死亡にかかわらず手続をし
てよいということが、申請者の利益のために主張された﹂。 ところで﹁妻の一生間を超えない期間中、妻のために確
保︵ω①o霞①︶される額の申請をする権利は﹂、 一九三四年の法律にいわゆる﹁o碧ωoohgo鉱o昌であるといえるかど
うか。ω琢8α司法事典では、 o碧のoo団90寓o昌とは、執行しうる請求権を惹起する事情の総体、と定義されてい
る。⋮⋮私見によれば、,本件申請者が有した唯↓のo碧のoohgo鉱oロは、彼女がそれを立証して離婚判決を得たと
ころの、結婚上の義務違背︵旨P9什﹃一bPO昌一鋤一 〇龍Φ口OΦ︶であつた﹂。 そして﹁その請求の基礎となつた結婚上の義務違
背は、執行しうる離婚手当請求権を惹起しない。一九二五年の最高裁判所︵統合︶法一九〇条は9、裁判所は、もし
裁判所が適当と思えば、裁判所が相当と見うるような金額を、妻に確保するように夫に命じうることを、規定する。
したがつて妻は、彼女の有利に自由裁量権を行使するように裁判所に求める権利を、有するにすぎない。 このこと
は、妻が、夫に対して執行し5る請求権をもつこととは、本質的に異なるものであると、私には思われる﹂。 上記否
英米法における離婚手当の性質 四一九
記 念論文集 四二〇
定説に反対して、ζoωΦ団く﹂≦oωΦ同碧αじ69時①厭︵イギリス一九五五︶ ︵b。b旨国゜幻゜。。O。。︶のω90げω判事は、﹁も
し命令がその中で、何がなされるべきであるか、そしていかにそれはなされるべきであるか、ということを断言して
いるならば、死亡の日にすべてがまだなされていなかつた場合でも、その命令は、執行しうる請求権を創造する。⋮
⋮﹃正確に表わしうるものは正確である︵OΦ含口日①馨ρロoαo角ε目腎Φα巳りoけΦ馨︶﹄という法格言は、契約の解
釈に限定されない。それを私は、本件の情況にまさに適用しうるものと見る﹂と述べm、離婚手当請求権の死後残存
を肯定しているu。
1 ]≦団①房く°]≦矯o聴ω︵ユタ一九二三︶︵①トっqけ9げOP曽Q。勺90・日bっc◎・Q。O︾・ピ・幻・甚︶
コロラドの制定法は逆で、妻の再婚は夫を、より以上の離婚手当支払義務から、自動的に救済する、と規定する。五州は、
離婚手当は妻の一生聞継続しうる、とだけ規定し、一州は、不定期間継続しうる、と規定する。イリノイでは、善意で重婚し
た妻は、彼女が後婚離婚の勝訴判決を得れば、離婚手当を持ちうるが、ただし前婚の妻の権利と矛盾なしに、供与が可能な場
合に限られる。i<Φ讐一Φさま達゜や霧メ ・
2 客色ωo口く°宏Φδoわ︵モンタナ一九二〇︶︵トうQQ鱒︼≦o・自ρb。b⊃Hω・≦・ドOOQ。︶
3 菊oぼ昌ωo昌く°カoび首のo昌︵イギリス一九四三︶︵H諺嵩同゜幻゜b。蟄︶
4 国巳8昌く゜国三8昌︵イギリス一九一七︶︵b。。。目。い゜幻゜目。。¶︶では、独身条項は挿入されなかつた。しかし年額五千ポソドの
離婚手当は、再婚のため、年額三千五百ポンドに減額された。
5 ﹁結婚が解消されていなかつた場合における、正常な扶養義務期間は、当事者両人の生存期間だけだから、離婚手当もその
期間だけ継続しうる、というのが一般原則である﹂。ー<①民巳oびま宣゜やb。①S
6 そして義務履行のための担保権も、夫の死亡とともに消滅する。 ﹁本件では夫は、彼の義務の履行のための担保物を提供す
ることを指示されており、その指示から、訴訟上の抵当権が発生して゜いた。⋮⋮民事手続法一七七二条は、 ﹃判決または命令
が⋮⋮夫に、子の教育とか生活費とかのため、または妻の扶養のため、財産提供をするように要求する場合、裁判所もまた、
その自由裁量でもつて、右の目的のため要求される金額の定期的支払につき、裁判所が適当と考えるような方法ど期間におい
て、相当な担保を提供することを、夫に指示することができる﹄と規定するが、本条は、従前の判決により審与されたところ
よりも、より長い期間の離婚手当を、妻に許容するものでもなく、より大ぎな義務を、夫または夫の遣産に負わせるものでも
ない。裁判所が要求できるのは、すでに負わせられた義務の履行のための担保だけである。⋮⋮要求された担保は、特定財産
上の先取特権の形をとつたのではなく、単に保証人の人的責任にすぎなかつた。その場合、保証人の責任が、本人の責任以上
におよぶということは、主張できないであろう。⋮⋮当事者の合意によつて離婚手当が、制定法に規定されるところとは異な
つた形式で審与されることは、結構である。すなわち当事者は、離婚手当として全額が支払われるべきこと、または夫の死後
に夫の遺産を拘束するであろう供与が、妻に対しておこなわれるべきことを、合意してよろしい。この種の合意は、けつして
公序に反しないし、その履行はむろん、裁判所によつて強行されうるのである。⋮⋮本件はこのような特色をもたない﹂。本
件事案は、夫が、妻に年額三百ドルを離婚手当として、彼女が生きている限り、月極めで支払い、その支払のために特定不動
産を担保に供することが、すでに離婚判決で確定されていたにもかかわらず、夫の死後は、賦払傘の支払がないことを、原告
︵妻︶は主張。しかし上記の判決理由によつて、訴は却下された。
7 秋の﹁イギリス法における死後の不法行為訴権﹂︵我妻先生記念論文集五三頁︶。
8 本件原告は、すでに一九三八年一一月一四日に離婚の勝訴判決を得ており、一九三九年五月九日にば、夫妻両人の一生間継
続する離婚手当のために、中間命令︵言8ユ昌o巳①目︶があつた。そして一九四〇年一一月二七日に夫は死亡。
9本稿一の註一五参照。
@本件では、一九五二年一月二五日に離婚判決。同年一二月二三日に﹁夫は離婚判決の日から妻の一生間、妻のための財産確
英米法における離婚手当の性質 四二一
財産がω⑦o霞暮団にあてられるべきかに関し、連絡を開始したが、意見の一致を見ないうち、三月三一日に夫死亡。
保︵ω①O¢目一け団︶をなすべきこと。⋮⋮﹂という命令があった。一九五三年一月一四日から、夫妻各自の弁護士間で、夫のどの
10
記念論文集 四二ニ
@離婚裁判所は、それ自身の有効な命令を出す管韓権を有し、入的代表者に㌻必要な証書を作成することを指示しうる。ー
すると規定したが、三項では、妻への月額または週額の支払は、﹁両人の一生間﹂だけ継続することが明示されている。‘
前述のイギリス一九五〇年度結婚事件法一九条二項は、夫が妻のために確保する年金は、 ﹁彼女の一生を超えない期間﹂継続
国畷血①<・国団αO︵イギリス一九四八︶︵Hb=国゜男゜C。①トっ︶ド
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