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足羽川
足羽川と足羽山シンポジウム 2012年2月19日,福井商工会議所 足羽川について 治水 vs 環境保全から 治水 & 環境保全 京都大学工学研究科 都市社会工学専攻 細田 尚 1.はじめに 治水 vs 環境 ? 足羽川の事例 ・2004年福井豪雨災害 ・進む激特別事業 ・危機に瀕する生物の保全-社会的(住民・河川管理者)認 識の変化に一筋の光明 足羽川 市街地を強く蛇行して流れている ことが特徴の一つ. なんだ,これは??? 足羽山のスプリング・エフェメラル 福井豪雨災害 上流部 急ピッチで進む治水事業 洪水流シミュレーション 計算格子 計算結果 蛇行部で逆流 が生じている 荒川地点 九十九橋 水位横断分布 危機に瀕する生物の保全 普通の生息環境の多様性 2.生物種,生態系,生物多様性を保全する根拠 は? 進化論の挑戦(佐倉 統,角川ソフィア文庫) 人はなぜ自然を保護しなければならないのか? なぜ多くの熱帯林が保護され,多くの種が行きられるようにしなければ いけないのか?という問題である. 実は,これについて説得的な回答を見出すことは結構難しい.アリの 一種が絶滅したっていいじゃないか,トキが絶滅したってぼくらの暮らし は何も困らないんだから,いいじゃないか. こういった意見の持ち主を説得して翻意させるだけの論拠はまだない. 経済的な理由を強調する人は,未知の資源が熱帯雨林には眠ってい るかもしれないーと主張する.ひょっとしたら,ガンやエイズの特効薬に なるような成分をもった物質が,まだ発見されずに熱帯雨林の植物の中 にあるかもしれない. しかしこれも,「かもしれない」という仮定の話であり,説得力が弱い. 審美的理由を根拠にする人もいる.自然はとにかく美しい.美しいもの はそれだけで価値がある.だから守らなければならない,という理屈であ る. そうかもしれないが,じゃあ美しくない生き物は保護しなくてもいいの か?という疑問を禁じえない. 実際に熱帯雨林に住んでいる人たちにとっては,木材の伐採は死活問 題だ,という意見もある. これはその通りで,….だが,いかんせんこれはトキやサルの絶滅がい けない理由にならない. このほか,生態学的価値とか地球生態系全体への影響などをうんぬん する向きもあるが,やはりちょっと身勝手な感じだったり,仮定に基づいた 話だったりで,説得力がよわい. 何よりも,普通の人々の感覚にアピールする力が,弱い. 自然環境保全に対する社会的合意水準 (環境と倫理,加藤尚武編) ・第一の段階:人間個体の生存のためだけでなく,個人の生命の質(快 楽)のためにも,種の破壊(自然生物の利用)が許される. ・第二の段階:人間個体生存のためなら種の破壊も許されたのだろうが, 生命の質(快楽)のための種の破壊は許されない. ・第三の段階:生命の質のためは言うにおよばず,人間個体の生存のた めであっても,種の破壊は許されない.しかし,人間の種の生存のためで あるならば,他の生物の種の破壊もやむをえない. 世界の世論は,原則として第一の基準は否定して第二の基準と第三の 基準の中間あたりを動いている. 「人間のために絶滅の危険にひんしている動植物の種を保護するこ とは人間の完全義務である」という原則を可能な限り遵守しつつ,それ を実施する際に,人間個体の生存と<あれか,これか>の関係になら ないように事前に配慮しなければならない. 合意形成の方法論 環境プラグマティズム: 価値は私たちの経験とともに生成してくるものでもあり,経 験が価値を発見するともいえる. 保全の正当性を生物多様性のさまざまな価値に求めつつ も,対立する意見や方向性を直視し,対立の生産的解消に 向けての議論の枠組みを模索する. 日常的,長期的な環境リスクコミュニケーションの 枠組み(順応的管理を含む)の再検討. 有効な議論のための基本的な素養や知識の必要性. →事例へ