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天竜浜名湖鉄道における社会的価値・便益分析結果報告書

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天竜浜名湖鉄道における社会的価値・便益分析結果報告書
天竜浜名湖鉄道における社会的価値・便益分析結果報告書
平成25年2月
静
岡
県
目
1.
2.
調査の概要 .............................................................................................................................. 1
1.1
調査概要 .................................................................... 1
1.2
検討結果概要 ................................................................ 3
生活交通面における社会的価値・便益の調査 ......................................................................... 6
2.1
3.
適用する便益算定手法の検討 .................................................. 6
2.1.1
考え方の整理 ............................................................ 6
2.1.2
算出の流れ .............................................................. 7
2.2
算出結果 .................................................................... 8
2.3
算出の条件設定 .............................................................. 9
観光面における社会的価値・便益の調査 .............................................................................. 16
3.1
適用する便益算定手法の検討 ................................................. 16
3.1.1
考え方の整理 ........................................................... 16
3.1.2
類似事例の整理 ......................................................... 16
3.1.3
トラベルコスト法の採用と留意点 ......................................... 20
3.1.4
アンケート調査の実施 ................................................... 24
3.1.5
推計の流れ ............................................................. 25
3.2
4.
次
推計結果 ................................................................... 28
3.2.1
現在の観光目的利用者が享受する便益 ..................................... 28
3.2.2
潜在的観光目的利用者が享受する便益 ..................................... 29
アンケート調査の実施........................................................................................................... 31
4.1
利用者ヒアリング調査の実施 ................................................. 31
4.1.1
調査概要 ............................................................... 31
4.1.2
調査票 ................................................................. 32
4.1.3
回答者の特性 ........................................................... 34
4.2
潜在的利用意向調査の実施 ................................................... 41
4.2.1
調査概要 ............................................................... 41
4.2.2
調査画面 ............................................................... 42
4.2.3
回答者の特性(プレ調査) ............................................... 48
4.2.4
回答者の特性(本調査) ................................................. 51
5.
作業部会の開催運営事務 ....................................................................................................... 58
6.
まとめと今後の課題 .............................................................................................................. 59
1. 調査の概要
1.1
調査概要
(1) 調査期間
(自)平成 24 年 7 月 6 日
(至)平成 24 年 11 月 30 日
(2) 調査目的
天竜浜名湖鉄道は、沿線地域の暮らしを支える重要な交通手段としての機能に加え、県内
外から中東遠・北遠を訪れる観光客のための貴重なアクセス手段としての機能を有するほか、
同鉄道の 36 施設が有形文化財として国の登録を受ける等、鉄道自体が観光の目玉となってい
る。しかし、同鉄道は少子高齢化やモータリゼーションの進展等、社会環境の変化による利
用客の減少など厳しい経営環境におかれている。
こうしたことから、本県では、沿線市町、有識者の参画をいただき「天竜浜名湖鉄道の経
営分析と将来展望」プロジェクトチームを開催し、安全運行に必要な設備投資等を検証した
経営分析を行うとともに、鉄道が持つ社会的価値を分析し、存廃を含めた鉄道事業の継続性
について検討を行っている。当業務では、同鉄道が生活交通及び観光の両面をはじめ、県西
部地域に地域経済効果を生みだしていることを鑑み、これらの効果を調査するとともに、同
プロジェクトチームの傘下に位置づけた作業部会を運営し、調査結果等を検証することで、
同プロジェクトチームにおける検討資料とすることを目的とする。
(3) 調査実施フロー
県西部地域を運行する天竜浜名湖鉄道における「生活交通」及び「観光」の両面における
社会的価値・便益を調査する。調査にあたっては、「天竜浜名湖鉄道の経営分析と将来展望」
プロジェクトチーム傘下に位置づけた作業部会を運営し、調査結果等の検証を行う。
本調査の業務実施フローを下図に示す。
1
図 1 業務実施フロー
2
1.2
検討結果概要
天竜浜名湖鉄道における社会的価値・便益の評価の枠組みと検討結果を以下に示す。
天浜線の存在により、社会的価値・便益は少なくとも年間で26億円以上となる。
間接効果等を含めれば、更なる大きな経済効果が地域にもたらされている。
表 1 地域経済効果の体系的整理と評価結果概要
項目
直接効果
間接効果
(社会全
体)
天浜線がもたらしている効果
利用者
生活交通面の効果
(移動時間短縮による
社会的便益)
6.4 億円/年
・移動時間短縮、交通費用減少
・定時性確保
・他の交通機関への乗換え利便性確保
・観光目的の利用者(潜在的利用者含む)にとっての
観光資源としての価値
住民
生活
・生活利便性の確保
・交通空白地域の解消
・高齢者等の外出機会の増加
・地域住民の安心感の醸成
地域
経済
・地域経済への貢献
観光
・観光資源としての魅力
・文化・歴史的、観光的な価値
地域
社会
・地域のイメージアップ
・地域の意識の高まり
環境
・地球温暖化への負荷の軽減
安全
・道路交通事故の抑制
・道路混雑の緩和
観光面の効果
(観光資源としての
社会的便益)
19.9 億円/年
※「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル 2012(案)、国土交通省鉄道局」などを参考に作成。
z 天竜浜名湖鉄道(以下、天浜線)が存在しないと仮定した場合、その影響は多方面に及ぶ。
z 特に、天浜線で大きな影響が想定される項目として、沿線住民が日常の移動手段として利用
している「生活交通面での効果」、天浜線自体や沿線の観光スポットなどで得られる「観光
面での効果」の2点が挙げられる。この2点については、既に定量化・貨幣換算化を行う手
法が学術的及び実務的に確立され、適用実績も豊富であることから、今回は2点の影響に絞
り込み、天浜線の存在による社会的価値・便益として把握する。
z 天浜線が存在しないと仮定した場合の影響を下図のように想定し、社会的価値・便益の評価
を行う。
3
⇒既往調査から推計
調査方法と
対象母集団
⇒利用者ヒアリング調査
天浜線生活交通目的
利用者数(H23)
天浜線観光目的
利用者数(H23)
118万人
34万人
⇒潜在的利用意向調査
対象エリア(1都3県)の人口3383万人
のうち天浜線利用意向がある人
(潜在的観光利用者数 419万人)
現在の利用者
天浜線利用者
の利用目的
生活交通目的
観光目的
・利用者
・住民生活
・地域経済
・観光
・地域社会
・環境
・安全
観光目的
通勤・通学(定期)
天浜線が
存在しないと
仮定した場合
代替バス
=
26.3 億円/年+α
潜在的利用者
(来訪とりやめ)
+
6.4 億円/年
+
19.9 億円/年
図 2 天浜線における社会的価値・便益の評価の枠組み
4
+α
社会的価値・便益の評価方法を以下に示す。
生活交通面の効果(移動時間の短縮効果)
z 天浜線が存在しないと仮定した場合、従来の利用者が代替バスや自家用車での移動に転換す
ることを想定し、
「現在、天浜線を利用した場合」と「代替バスや自家用車を利用した場合」
の時間変化を「移動時間短縮効果」として把握する。
z 既存データ(駅間利用者状況データ、定期利用者の割合等)から、天浜線が存在しないと仮
定した場合に転換する移動手段(代替バス、自家用車等)を想定し、移動時間の変化を把握
する。
z 貨幣換算にあたっては、学術的に移動時間に対する時間価値等が考慮され、客観的な手法と
して広く用いられている国土交通省「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル 2012(案)」
及び同省「費用便益分析マニュアル、平成 20 年 11 月、国土交通省道路局都市・地域整備局」
に従う。
観光面の効果(観光資源としての存在効果)
z 観光目的での天浜線利用者の中には、天浜線が存在しない場合に来訪をやめる人が一定数い
ることを想定。これらの人々が天浜線に対して有している価値を、天浜線の「観光資源とし
ての存在効果」と仮定する。
z 観光施設等の価値を貨幣換算する際、学術的に用いられる「トラベルコスト法(※)」の考え
方を適用し、
「天浜線が存在しないと仮定した場合の来訪意向」や「天浜線に来るまでの費
用」を来訪者や潜在的利用者へのアンケート調査により把握する。
z 本年8月に3日間、観光を目的として来訪した乗客 548 人を対象とした現地ヒアリング調査
を実施。さらに 10 月以降、県内・首都圏・中京圏居住者 600 人を「潜在的な観光客」とし
て、潜在的利用意向調査を実施。
※トラベルコスト法…観光施設等の来訪者が、施設までの移動費用をかけてまでも施設を訪問・利用する価
値があると認めていることを前提。施設までの移動費用を調査して、その費用を施設の価値として評価す
る方法。
その他の効果
z 学術的な分析手法が十分に確立されていない等により、今回は定性的な効果として取り扱う。
:利用者、住民生活、地域経済、観光、地域社会、環境、安全
5
2. 生活交通面における社会的価値・便益の調査
2.1
適用する便益算定手法の検討
2.1.1
考え方の整理
以下に、生活交通面における社会的価値・便益の、本調査における考え方を整理する。
z
調査の基本方針
¾
(生活交通面)
天浜線が存在しないと仮定した場合、これらの利用者は、代替バスや自家用車での
移動に転換することとなり、現在より移動に時間がかかるようになると考えられる。
¾
このような、天浜線の「移動時間短縮効果」を定量的に把握する。
¾
現在の天浜線利用者が、天浜線が(全区間)存在しないと仮定した場合に転換する
代替交通手段を設定する。
z
算定対象項目・範囲
¾
(生活交通面)
既往調査(駅間 OD データ等)を活用し、利用区間ごとの人数(駅ごとではない)
を把握する。さらに、定期利用データ・既往調査等から、生活交通目的の利用者数
を把握する。
¾
天浜線が存在しないと仮定した場合の代替交通手段としては、代替バス(新規)、
既往バス、自家用車が想定される。それぞれについて、天浜線の主要駅ごとに、ル
ート・移動時間・運賃等を設定する。
z
調査にあたっての留意点
¾
(生活交通面)
検討の精度とのバランスや、計算が過度に煩雑とならないよう配慮する観点からは、
検討対象区間を利用者数が多い区間に限定することが適当である(天浜線が存在し
ないと仮定した場合の代替交通手段は机上の想定とせざるを得ず、多くの想定を重
ねることは客観性確保の観点からは望ましくない)。
¾
移動時間の差によって評価することから、天浜線と比較して、代替交通手段の速度
や経路(距離)をどのように設定するかが、結果に大きく影響する。できるだけ現
実に則した値とする必要がある一方で、本調査は、実際に天浜線が存在しない場合
の予測をするものではなく、現在もたらしている効果を評価するという目的に照ら
した条件設定とすることが重要である。
z
算定方法
¾
(生活交通面)
移動時間短縮効果は、費用便益分析マニュアル(鉄道、道路)で一般的に用いられ
ている方法に準じる。つまり、with(天浜線あり)と without(天浜線なし)で総
移動時間の差を求め、これに時間価値を乗じる。
6
2.1.2
算出の流れ
移動時間短縮便益算出の流れを示す。
●現在の年間総時間価値(現在)
利用者数
駅間ODの
作成
平日 利用区間OD ⑥
休日 利用区間OD ⑥
×年間拡大(平日 122 日)
×観光レジャーを除く割合(82.7%)⑦
平日
休日
生活交通の年間拡大ODの作成
駅間距離・
所要時間の
算出
×観光レジャーを除く割合(67.2%)⑦
鉄道駅間の
距離
生活交通の年間拡大ODの作成
所要時間
速度
×移動時間
年間総移動
時間の算出
平日
×移動時間
年間総移動時間
休日
×時間価値 36.2 円/分①
時間価値の
の算出
平日
の算出
年間総時間価値
年間総移動時間
×時間価値 36.2 円/分①
休日
年間総時間価値
現在の年間総時間価値(A)
●天浜線が存在しないと仮定した場合の年間総時間価値
利用者数
駅間ODの
作成
平日 利用区間OD ⑥
休日 利用区間OD ⑥
×年間拡大(平日 243 日)
×年間拡大(平日 122 日)
×観光レジャーを除く割合(82.7%)⑦
×観光レジャーを除く割合(67.2%)⑦
平日
休日
生活交通の年間拡大ODの作成
駅間距離・
所要時間の
算出
生活交通の年間拡大ODの作成
鉄道駅間をバスまたは自動車が代替した場合の
(10%分はマイカーに転換、90%分はバスに転換)
OD 表×移動時間
年間総移動
時間の算出
平日
平日
②③④
OD 表×移動時間
年間総移動時間
休日
×時間価値 36.2 円/分 ①
時間価値の
の算出
距離、所要時間、速度の算出
年間総時間価値
年間総移動時間
×時間価値 36.2 円/分 ①
休日
年間総時間価値
存在しないと仮定した場合の年間総時間価値(B)
7
以上をまとめると、次のような計算式となる。
移動時間の短縮効果 =
存在しないと仮定した場合の年間総時間価値 −
∙
=
∙ ∙
∙
∙
∙
+
∙
∙ ∙
∙
−
=
∙
∙ ∙
∙
∙
+
+ ∙
ここで、
, :天浜線の駅
:平日の区間別利用者数(人/日)
:天浜線の区間別移動時間(分)
:自動車の区間別移動時間(分)
:平日の日数(日/年)
:平日の生活交通目的利用者比率
:天浜線利用者の自動車への転換率
:季節補正
=
2.2
∙∑
+
ℎ
∙∑
+
∙
∙
∙ ∙
∙
∙
ℎ
∙
ℎ
∙ ∙
ℎ
∙ ∙
+
ℎ
ℎ
∙
−
∙
∙
∙
ℎ
+
∙
∙ ∙
ℎ
∙
ℎ
ℎ
∙
∙ ∙
ℎ
∙
∙
∙
∙
∙
∙
ℎ
現在の年間総時間価値
+
∙
−
∙
ℎ
ω:時間価値(円/分)
ℎ :休日の区間別利用者数(人/日)
:バスの区間別移動時間(分)
:休日の日数(日/年)
ℎ
ℎ :休日の生活交通目的利用者比率
:天浜線利用者のバスへの転換率
:天浜線年間利用者数(人/年)
ℎ
算出結果
次ページの条件をもとに、生活交通面での効果(移動時間の短縮効果)を示す。
存在しないと仮定した場合の
年間総時間価値
(全区間鉄道なし)
合計(B)
-
現在の
年間総時間価値
合計(A)
(全区間鉄道あり)
6.4 億円/年
8
=
移動時間短縮便益
2.3
算出の条件設定
以下の条件設定に基づき、移動時間短縮効果の分析を行う。
項目
①時間価値
条件設定
国土交通省「鉄道プロジェクト評価マニュアル」より 36.2 円/分を用
いる。
バスと自動車の転換比率として、平成20年度に実施された調査「天浜
②バスと自家用車
鉄道地域公共交通総合連携計画策定調査報告書」参考p.参考-43(※1)
の転換比率
より、10%分はマイカーに転換、90%分はバスに転換とする。
③バスの速度
天浜線沿線道路を走行するバス(遠州鉄道運行の路線バスおよび各市
町自主運行バス)のダイヤの平均値を調べた結果(※2)、また各市町
村間での乗り換えを想定し(乗換回数は3回、1回あたり10分)、バス
の速度は18.9㎞/hとする。
④自動車の速度
H22道路交通センサスに基づく、天浜線沿線道路の混雑時平均旅行速度
の算出結果(※3)より、自動車の速度は30.5㎞/hとする。
天浜線沿線のバス路線と天浜線間のダイヤ接続事例や、他地域の鉄道
⑤バスと鉄道の乗
とバスの乗り継ぎ接続事例(※4)より、乗り継ぎに要する時間は 10
り継ぎ時間
分とする。
⑥利用者数
年間利用者数は 1,518 千人(平成 23 年度)とする。利用区間は、天竜
浜名湖鉄道㈱が実施した平日・土日のOD調査(平成 23 年度)の結果
(第 3 回「天竜浜名湖鉄道の経営分析と将来展望」プロジェクトチー
ム配布資料より)を使用し、年間利用者数に拡大する(季節変動を考
慮)。(※5-2)
⑦生活交通目的利
用者比率
上記⑥利用者数から、観光目的利用者数を除外して、生活交通目的利
用者数とする。平成 20 年度に実施された調査「天浜鉄道地域公共交通
総合連携計画策定調査報告書」参考 p.28 より、平日観光客比率 17.3%、
休日観光客比率 32.8%を用いる。
(平日 82.7%、休日 67.2%を乗ずる)
(※5)
個別の設定した値についての詳細な説明を次ページ以降に示す。
9
(1) バスと自家用車の転換比率(※1)
バスと自動車の転換比率として、平成 20 年度に実施された調査「天浜鉄道地域公共交通
総合連携計画策定調査報告書」参考 p.参考-43 より、10%分はマイカーに転換、90%分はバ
スに転換とする。
〇天浜線利用者の出発地から駅まで、駅から目的地の交通手段(問3)
図 3 天浜線利用者の交通手段の構成比(平日)
図 4 天浜線利用者の交通手段の構成比(休日)
[資料:天竜浜名湖鉄道地域公共交通総合連携計画策定調査
10
報告書
平成 20 年 9 月]
(2) バスの速度(※2)
バスの速度は、天浜線沿線道路を走行するバスの平均速度を算出し、これに天浜線の利用
実態を考慮して、バスの運行区間を4区間に分類、3箇所で乗り継ぎを行うと仮定(1箇所
あたり乗継時間 10 分)し、18.9km/h とする。
天浜線沿線道路を走行するバス(遠州鉄道運行の路線バスおよび各市町自主運行バス)の
平均速度は、下表より 21.8km/h となる。
天浜線が無いと仮定した場合のバスの総運行距離は、天浜線全線において鉄道に沿った道
路延長を計測した結果、72.4km となっている。また、天浜線の利用実態に応じて、バスの運
行区間を4区間に分類し、3箇所で乗り継ぎを行うと仮定(1箇所あたり乗継時間 10 分)。
以上の条件より、天浜線沿線道路を運行するバスの速度は以下の通り 18.9km/となる。
表 2 天浜線沿線を運行するバスの運行距離および所要時間
区間
現
行
の
運
行
区
間
に
お
け
る
バ
ス
速
度
バス運行者
バス路線名
掛川駅
~ 西掛川駅
掛川市自主運行
掛川市北循環バス
西掛川駅
~ 遠州森駅
※バスの運行が行われていない
遠州森駅
~ 円田駅
森町・磐田市・
袋井市自主運行
円田駅
~ 豊岡駅
※バスの運行が行われていない
豊岡駅
~ 天竜二俣駅 遠州鉄道
天竜二俣駅
~ 二俣本町駅 ※バスの運行が行われていない
二俣本町駅
~ 西鹿島駅
遠州鉄道
西鹿島駅
~ 金指駅
※バスの運行が行われていない
金指駅
~ 気賀駅
遠州鉄道
引佐線
気賀駅
~ 三ヶ日駅
遠州鉄道
気賀三ヶ日線
三ヶ日駅
~ 尾奈駅
浜松市自主運行
三ヶ日循環バス
尾奈駅
~ 新所原駅
※バスの運行が行われていない
磐田線
磐田天竜線
北遠本線、秋葉線、
笠井線
運行
距離
2.3km
2.1km
3.5km
2.1km
-
6分
8分
7分
-
15.3km/h
21.0km/h
26.3km/h
18.0km/h
-
9分
24.0km/h
11.7km
27分
26.0km/h
2.7km
11分
14.6km/h
28.0km
天浜線沿線の道路延長に上記速度を適用
72.4km
↓3箇所で乗り継ぎ(@10分)を行うと仮定
-
-
77分 2 1 .8 km/ h
199分
21.8km/h
30分
72.4km
11
9分
表定速度
3.6km
バス運行がある区間のみの計
代替バスの速度(想定)
所要
時間
229分 1 8 .9 km/ h
(3) 自動車の速度(※3)
H22 道路交通センサスに基づく、天浜線沿線道路の混雑時平均旅行速度の算出結果より、
自動車の速度は 30.5 ㎞/hとする。
天竜浜名湖鉄道沿線の道路交通状況
※上り、下りのうち、速度の遅い方
平成17年度
図
面
番
号
交基
通本
調区
査間
●番
●号
路
線
名
調区
査間
単番
位号
24時間自動車類交通量
上下合計
区
平均旅行速度(km/h)
昼間12時間
混雑時
平均旅行速度
(時間帯別交通量加重)
混
間
合
計
延
長
(km)
走
行
台
キ
ロ
雑
上
り
度
下
り
(台)
上
り
下
り
(km/h)
(km/h)
平均旅行
速度
(km/h)
昼間12時
間平均旅
行速度
平均旅行
速度
(km/h)
旅行時間
昼間12時
間平均旅
行速度
(km/h)
旅行時間
平均旅行
速度
(km/h)
昼間12時間
平均旅行速
度(km/h)
走行台時
走行台時
1
22603340010 太田中原線
6202
3.7
4941
18281.7
.71
36.7
37.3
38.2
39.7
36.7
38.2
0.10
0.10
498.1
2
22303010060 一般国道301号
1153
1.9
15632
29700.8
1.28
23.9
38.1
30.8
39.4
23.9
30.8
0.08
0.06
1,242.7
478.6
964.3
3
22303010070 一般国道301号
1154
3.9
13322
51955.8
1.14
32.8
41.0
36.6
40.5
32.8
36.6
0.12
0.11
1,584.0
1,419.6
4
22303010080 一般国道301号
1155
.1
8761
876.1
.84
13.0
38.6
14.0
39.2
13.0
14.0
0.01
0.01
67.4
62.6
5
22303010090 一般国道301号
1155
4.3
8514
36610.2
.69
33.5
31.2
33.4
33.2
31.2
33.2
0.14
0.13
1,173.4
1,102.7
6
22303010100 一般国道301号
1155
.3
8514
2554.2
.69
33.5
31.2
33.4
33.2
31.2
33.2
0.01
0.01
81.9
76.9
7
22303620030 一般国道362号
1159
3.5
13591
47568.5
1.18
32.7
31.6
33.2
32.6
31.6
32.6
0.11
0.11
1,505.3
1,459.2
8
22303620040 一般国道362号
1160
1.4
17387
24341.8
1.39
37.2
40.6
38.7
41.5
37.2
38.7
0.04
0.04
654.3
629.0
9
22303620050 一般国道362号
1160
7.0
17387
121709.0
1.39
37.2
40.6
38.7
41.5
37.2
38.7
0.19
0.18
3,271.7
3,144.9
10
22303620060 一般国道362号
1160
.4
17387
6954.8
1.39
37.2
40.6
38.7
41.5
37.2
38.7
0.01
0.01
187.0
179.7
11
22303620070 一般国道362号
1161
.5
8053
4026.5
.62
29.6
27.0
31.5
28.5
27.0
28.5
0.02
0.02
149.1
141.3
12
22303620080 一般国道362号
1161
1.9
8053
15300.7
.62
29.6
27.0
31.5
28.5
27.0
28.5
0.07
0.07
566.7
536.9
13
22302570170 一般国道257号
1149
.3
15982
4794.6
1.13
26.9
26.7
29.1
27.1
26.7
27.1
0.01
0.01
179.6
176.9
14
22302570180 一般国道257号
1149
.5
15982
7991.0
1.13
26.9
26.7
29.1
27.1
26.7
27.1
0.02
0.02
299.3
294.9
15
22303620100 一般国道362号
1162
3.8
8005
30419.0
.67
43.7
49.5
44.7
49.2
43.7
44.7
0.09
0.09
696.1
680.5
16
22303620110 一般国道362号
1163
.4
5870
2348.0
.61
36.9
39.8
37.2
39.8
36.9
37.2
0.01
0.01
63.6
63.1
17
22303620120 一般国道362号
1163
.6
5870
3522.0
.61
36.9
39.8
37.2
39.8
36.9
37.2
0.02
0.02
95.4
94.7
18
22303620130 一般国道362号
1163
1.8
5870
10566.0
.61
36.9
39.8
37.2
39.8
36.9
37.2
0.05
0.05
286.3
284.0
19
22303620140 一般国道362号
1163
1.0
5870
5870.0
.61
36.9
39.8
37.2
39.8
36.9
37.2
0.03
0.03
159.1
157.8
20
22303620150 一般国道362号
1163
2.1
5870
12327.0
.63
36.9
39.8
37.2
39.8
36.9
37.2
0.06
0.06
334.1
331.4
21
22303620160 一般国道362号
1164
.2
10592
2118.4
.94
16.7
16.7
16.7
16.7
16.7
16.7
0.01
0.01
126.9
126.9
22
22303620170 一般国道362号
1164
1.0
10592
10592.0
.94
16.7
16.7
16.7
16.7
16.7
16.7
0.06
0.06
634.3
634.3
23
22303620180 一般国道362号
1164
1.4
10592
14828.8
.94
16.7
16.7
16.7
16.7
16.7
16.7
0.08
0.08
888.0
888.0
24
22303620190 一般国道362号
1164
.4
10592
4236.8
.94
16.7
16.7
16.7
16.7
16.7
16.7
0.02
0.02
253.7
253.7
25
22301520190 一般国道152号
1128
.5
15888
7944.0
1.15
28.2
27.9
30.0
30.1
27.9
30.0
0.02
0.02
284.7
264.8
476.6
26
22301520200 一般国道152号
1128
.9
15888
14299.2
1.05
28.2
27.9
30.0
30.1
27.9
30.0
0.03
0.03
512.5
27
22301520180 一般国道152号
1127
.2
19020
3804.0
.82
23.7
25.3
23.7
27.7
23.7
23.7
0.01
0.01
160.5
160.5
28
22301520170 一般国道152号
1127
1.4
19020
26628.0
.82
23.7
25.3
23.7
27.7
23.7
23.7
0.06
0.06
1,123.5
1,123.5
29
22400400230 掛川天竜線
74083
1.1
14887
16375.7
.98
21.9
20.0
25.5
26.3
20.0
25.5
0.06
0.04
818.8
642.2
30
22400400220 掛川天竜線
74083
.1
14887
1488.7
.98
21.9
20.0
25.5
26.3
20.0
25.5
0.01
0.00
74.4
58.4
31
22400400210 掛川天竜線
74083
1.1
7569
8325.9
.88
39.2
31.1
41.7
35.5
31.1
35.5
0.04
0.03
267.7
234.5
32
22400400200 掛川天竜線
74083
1.5
7569
11353.5
.88
45.0
33.9
45.0
36.6
33.9
36.6
0.04
0.04
334.9
310.2
33
22400400190 掛川天竜線
74083
.4
7569
3027.6
.88
33.3
40.0
33.1
43.1
33.3
33.1
0.01
0.01
90.9
91.5
34
22400400180 掛川天竜線
4082
2.2
7569
16651.8
.81
44.1
41.0
43.8
42.6
41.0
42.6
0.05
0.05
406.1
390.9
35
22400400170 掛川天竜線
4081
.6
11671
7002.6
1.16
50.3
36.0
51.4
39.7
36.0
39.7
0.02
0.02
194.5
176.4
36
22400400160 掛川天竜線
4081
.6
11671
7002.6
1.16
30.7
50.2
33.5
50.8
30.7
33.5
0.02
0.02
228.1
209.0
37
22400400150 掛川天竜線
4081
.5
11671
5835.5
1.16
46.3
40.7
45.9
38.5
40.7
38.5
0.01
0.01
143.4
151.6
38
22400400140 掛川天竜線
4081
.2
11671
2334.2
1.07
46.3
40.7
45.9
38.5
40.7
38.5
0.00
0.01
57.4
60.6
39
22400400130 掛川天竜線
4081
1.4
11671
16339.4
1.12
46.3
40.7
45.9
38.5
40.7
38.5
0.03
0.04
401.5
424.4
40
22400400120 掛川天竜線
4081
.5
11671
5835.5
1.12
34.2
33.7
33.9
35.5
33.7
33.9
0.01
0.01
173.2
172.1
41
22400400110 掛川天竜線
4080
.2
9313
1862.6
.79
33.3
36.8
29.9
35.0
33.3
29.9
0.01
0.01
55.9
62.3
42
22400400100 掛川天竜線
4080
1.4
9313
13038.2
.79
42.3
47.6
42.9
45.9
42.3
42.9
0.03
0.03
308.2
303.9
43
22400400090 掛川天竜線
4080
1.9
9313
17694.7
.79
25.6
30.2
29.0
32.9
25.6
29.0
0.07
0.07
691.2
610.2
44
22400400080 掛川天竜線
4079
1.9
10036
19068.4
.85
42.1
38.0
44.3
42.1
38.0
42.1
0.05
0.05
501.8
452.9
45
22400400070 掛川天竜線
4078
.1
11867
1186.7
1.53
42.1
38.0
44.1
41.6
38.0
41.6
0.00
0.00
31.2
28.5
46
22400400060 掛川天竜線
4078
.4
11867
4746.8
1.33
42.1
38.0
44.1
41.6
38.0
41.6
0.01
0.01
124.9
114.1
47
22400400050 掛川天竜線
4078
.7
11867
8306.9
1.33
43.0
47.8
42.4
49.2
43.0
42.4
0.02
0.02
193.2
195.9
48
22400400040 掛川天竜線
4078
1.8
11867
21360.6
1.33
41.7
40.9
42.3
42.9
40.9
42.3
0.04
0.04
522.3
505.0
49
22400400030 掛川天竜線
4077
2.9
15745
45660.5
1.11
42.8
39.4
45.3
42.4
39.4
42.4
0.07
0.07
1,158.9
1,076.9
50
22400400020 掛川天竜線
4077
2.3
15745
36213.5
1.11
23.2
33.5
24.1
35.0
23.2
24.1
0.10
0.10
1,560.9
1,502.6
51
22400400010 掛川天竜線
4077
.4
15745
6298.0
1.11
17.6
17.6
17.7
17.7
17.6
17.7
0.02
0.02
357.8
355.8
52
22300011590 一般国道1号
1022
.3
17041
5112.3
1.27
30.9
21.3
31.8
20.7
21.3
20.7
0.01
0.01
240.0
247.0
53
22300011580 一般国道1号
1022
.6
17041
10224.6
1.15
35.6
28.6
35.8
29.5
28.6
29.5
0.02
0.02
357.5
346.6
54
22300011570 一般国道1号
1022
1.1
17041
18745.1
1.23
23.9
31.0
25.2
31.6
23.9
25.2
0.05
0.04
784.3
743.9
55
22602540030 掛川停車場線
6131
.5
10660
5330.0
.90
24.2
17.9
25.2
19.2
17.9
19.2
0.03
0.03
297.8
277.6
56
22602540010 掛川停車場線
6131
.3
10054
3016.2
.76
24.2
24.2
24.2
24.2
24.2
24.2
0.01
0.01
124.6
124.6
2.33
2.21
27,580.8
26,076.8
天 竜 浜名 湖 鉄道 沿 線 の道 路 の平 均 速 度 30.5
32.3
計
72.4
841607.0
[資料:H22 道路交通センサス]
12
(4) バスと鉄道の乗り継ぎ時間(※4)
天浜線沿線のバス路線と天浜線間のダイヤ接続事例よりや、他地域の鉄道とバスの乗り継ぎ接
続事例より、乗り継ぎに要する時間は 10 分とする。
〇天浜線沿線のバス路線と天浜線間のダイヤ接続事例
天浜線のフィーダー路線として位置付けられる路線(天浜線の単独駅から郊外部を結ぶ路線)
の例として、下図に示す滝沢線の乗り継ぎ時間の状況を以下に整理する。接続がうまく図られて
いない時間帯が多いが、ダイヤ接続がとられているダイヤは 10 分程度の接続となっている。
バス→天浜線の乗り継ぎ
天浜線時刻表
都田駅前バス停時刻表
時
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
都田駅前着
乗り継ぎ
方向
新所原行
接続時間
二俣行
新所原行
二俣行
7:35
8:45
→
→
7:49
8:55
8:05
9:08
0:14
0:10
0:30
0:23
10:45
→
11:04
11:19
0:19
0:34
13:22
→
14:05
14:19
0:43
0:57
15:55
→
16:00
16:14
0:05
0:19
17:35
→
17:56
18:12
0:21
0:37
天浜線→バスの乗り継ぎ
天浜線時刻表
都田駅前バス停時刻表
時
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
6:45
7:55
乗り継ぎ
方向
←
←
10:02
都田駅前発
新所原行
接続時間
二俣行
新所原行
二俣行
6:37
7:49
7:29
0:08
0:06
0:26
←
8:55
9:32
1:07
0:30
12:32
←
12:04
12:18
0:28
0:14
15:05
16:45
←
←
15:00
16:00
14:19
16:14
0:05
0:45
0:46
0:31
13
(5) 天竜浜名湖鉄道の利用者数(※5-2)
〇年間利用者数
平成 23 年度の年間利用者数は 1,518 千人であり、内訳は定期外旅客 670 千人、定期旅客
848 千人となっている。
表 3 天竜浜名湖鉄道の年度別利用者数の推移
(第 3 回「天竜浜名湖鉄道の経営分析と将来展望」プロジェクトチーム配布資料より)
〇一日あたりの駅間OD【平日、休日の調査データ】
平成 23 年 6 月 9 日(木)
、6 月 26 日(日)の駅別乗降調査データは天竜浜名湖鉄道(株)
より平成 23 年度の情報提供を受け、分析を行った。
【提供データ】平成 23 年 6 月 9 日(木)−上・下線(平日分)
平成 23 年 6 月 26 日(日)−上・下線(休日分)
の全利用者乗降資料
14
(6) 生活交通目的利用者比率(※5)
観光客比率として、平成 20 年度に実施された調査「天浜鉄道地域公共交通総合連携計画
策定調査報告書」参考 p.28 より、平日観光客比率 17.3%、休日観光客比率 32.8%を除外
する。(それぞれ 82.7%、67.2%を乗ずる)
図 5 天浜線利用者の利用目的の構成比(平日・休日)
[資料:天竜浜名湖鉄道地域公共交通総合連携計画策定調査
報告書
平成 20 年 9 月]
【参考】一部区間が存在しないケースについて
一部区間が存在しないケースは、参考として算出方法の検討を行ったが、存在しない区間の
設定の仕方によっては設備などのコスト増加が大きく異なること、代替交通手段の設定に多く
の仮定を含むことなど、多くの課題があるため、今回は扱わないこととした。
15
3. 観光面における社会的価値・便益の調査
3.1
適用する便益算定手法の検討
3.1.1
考え方の整理
以下に、観光面における社会的価値・便益の、本調査における考え方を整理する。
z
天浜線の現状
¾
(観光面)
天浜線沿線には、自然・名所旧跡・芸術・食・体験などさまざまな観光スポットが
点在し、さらに、天浜線全線にわたり 36 施設が国登録有形文化財に指定されるな
ど天浜線そのものの歴史・文化的な価値にも注目が集まっている。
z
調査の基本方針
¾
(観光面)
観光目的で天浜線を利用している人及び今後利用したいと思う人の中には、天浜線
が存在しない場合に来訪を取りやめる人が一定数いると予想される。これらの人々
が天浜線に対して有している価値は、天浜線の「観光資源としての存在効果」と考
えることができ、これをトラベルコスト法(※)の考え方を用いて定量化する。ト
ラベルコスト法は、費用便益分析マニュアル(鉄道)にも位置づけられている手法
で、特に自然環境・レクリエーション施設の評価において適用実績が豊富である。
※トラベルコスト法(旅行費用法、TCM)…経済効果の定量的評価方法の1つ。
施設利用者は、施設までの移動費用をかけてまでも施設を利用する価値があると認
めているという前提で、施設までの移動費用を調査して、その費用を施設の価値と
して評価する方法。
z
算定対象項目・範囲
¾
(観光面)
静岡県西部地域への旅行客は、県内(64%)・中部地方(20%)・関東地方(11%)
で9割以上を占めるという調査結果(※)があるが、天浜線の観光利用者がどこか
ら来ているかという調査はこれまで行われていないため、アンケート調査で把握す
る。
※平成21年度「静岡県における観光の流動実態と満足度調査報告書」(平成 22
年 3 月、静岡県産業部観光局観光政策室)
z
調査にあたっての留意点
¾
(観光面)
母集団は、設定方法によっては過大評価となるおそれがあるため、天浜線の認知度
等を考慮して慎重に設定する。
¾
トラベルコスト法の適用にあたっては、天浜線を交通手段ではなく観光資源と捉え
たものであり、誤解を生じないよう説明・解説を丁寧に行うものとする。
¾
一部区間が存在しないと仮定した場合については、回答者が現地で想定することが
困難である等の心理的な負担に配慮して今回は調査対象外とした。
16
z
算定方法
¾
(観光面)
観光資源としての存在効果は、トラベルコスト法の考え方を用い、天浜線に乗るま
での移動費用と、天浜線が存在しないと仮定した場合の訪問意向(訪問をとりやめ
る人・回数が減る人がどのくらいいるか)を、アンケート調査により把握する。潜
在的な利用者も把握するために web アンケート(調査会社によるモニターアンケ
ート)と沿線観光施設等来訪者へのアンケートを組み合わせて行う。
3.1.2
類似事例の整理
以下に、地方鉄道の経済効果の分析事例を整理した。仮想市場評価法(CVM)や階層分
析法(AHP)などの手法によりを評価した事例がみられるが、観光資源としての価値に特
化した事例は極めて少ない。一方、観光レクリエーション施設の経済効果の計測においては、
トラベルコスト法の多くの適用事例がある。
17
表 4 鉄道における経済効果の分析事例
(事例1)長野電鉄屋代線
目的
長野電鉄活性化協議会における平成 22 年度の取り組みとして、地域住民の利用
意識の向上及び屋代線存続意義の理解促進を図るために、実証実験と市民意向調査
を実施した。それらの結果から、長野電鉄活性化施策の見直し及び屋代線の運営ス
キームの方向性を決定し、長野電鉄屋代線総合連携計画を変更する事を目的とし
た。
評価方法,
現状のまま屋代線を運営した場合と、バス代替による運営の場合の 2 つについ
枠組み
て、それぞれ CVM により便益算出を行っている。
結果
屋代線を運営した場合では、社会的便益が今後 30 年間で 30.1 億円見込まれるの
に対して、かかる費用が 31.4 億円である事から、今後 30 年間における純便益はマ
イナス 1.3 億円となり、費用を上回る社会便益が得られない結果となった。
一方、バス代替の場合は、社会的便益が今後 30 年間で 21.7 億円程度と、鉄道に
比べると少ないものの、バス運営にかかる費用は鉄道に比べて少なく費用は 2.5
億円と算出された事から、純便益は 19.2 億円となり、費用を上回る社会的便益が
得られる結果となった。
図
図
出典
屋代線を運営した場合の費用便益分析結果
代替バスを運営した場合の費用便益分析結果
「長野電鉄屋代線の今後の方向性に関する資料」、平成 23 年 2 月、第 12 回長野電
鉄活性化協議会
18
(事例2)上田電鉄別所線
目的
「平成 14 年度地方鉄道問題基礎調査」において、今後地域で地方鉄道の存廃の
判断が難しい場合、社会的経済性を包含した「鉄道がバスに転換した場合の費用
対効果分析」を実施することも重要であると指摘されたことを踏まえ、地方鉄道
に係る費用対効果の計測方法を検討する事により、地方鉄道の維持・存続または
バス等への転換を判断するための評価手法の検討を行った。
評価方法,
「鉄道プロジェクトの費用対効果分析マニュアル 99」に示される定量的な評価
枠組み
方法に加え、存在効果等を考慮した評価手法を検討した。
地方鉄道の存在効果として「間接利用、オプション、代位、遺贈、地域イメー
ジ、地域連携」の 6 つのカテゴリーに分けて CVM 法を用いて評価を行った。
結果
今後 30 年間において、鉄道を存続した場合の便益は 109 億円、バスに代替した
場合の便益は 26 億円と算出され、鉄道を残した場合の方が、便益が 80 億円程度
大きいという結果になった。
出典
「地方鉄道の費用対効果」、平成 17 年 3 月、一般財団法人運輸政策研究機構(第 3
回鉄道整備等基礎調査報告シンポジウム)
www.jterc.or.jp/topics/josei_shinpo3.14/3_chiho_tetudo.pdf
(事例3)広島市・路面電車のLRT化検討
目的
広島市内では路面電車が代表的な都市交通システムとして役割を担っている
が、全国的な路面電車の見直しといった状況に呼応する形で、路面電車の LRT 化
が今後の広島市の施策の方向性として示された。広島市の発案により、国土施策
創発調査費を活用して検討委員会を設置し、路面電車の LRT 化に関して提案を取
りまとめるために調査を実施した。
評価方法,
現在の路面電車の利用状況、LRT ルートの選定における評価の確認、今後の路面
枠組み
電車を活用した施策の検討等への反映を目的として、利用者及び来街者に対する
アンケートを実施している。アンケートでは CVM 法を用いて、路面電車の快適性
向上や都市景観の向上に対する支払意思額も算出している。
結果
路面電車利用者では、路面電車の快適性向上や都市景観向上に対する支払意思
額の合計は LRT を導入検討した5つのルートにおいて、3 億円∼4 億円/年となっ
た。また、来街者では 0.5 億円/年となった。
LRT 化検討ルート別の便益分析結果
出典
「路面電車の LRT 化を中心とした公共交通体系の再構築の検討調査報告書」、平成
17年3月、国土交通省中国運輸局
19
(事例4)広島市新交通システム(アストラムライン)
目的
新交通システム開通という交通環境の大幅な変化が、広島市北西部の交通流動、
手段分担などの交通状況、沿線土地利用に与えた影響に関する調査を行った。
評価方法,
渋滞長の観測による交通渋滞解消効果、都心地区への通勤・通学時間の分析に
枠組み
よる時間短縮効果、沿線の人口変化、土地利用状況の変化などの開発効果、住民
意識調査による満足度の評価などを行っている。
結果
新交通システムの効果として、沿線人口の増加(S62 に対する H7 年の人口は広
島市全体で 104.4 に対して、アストラムライン沿線地区は 106.5)
建築着工面積の増加(S62 に対するH6 の建築着工面積は広島市全域 0.98 に対
してアストラムライン沿線地区は 2.48)
出典
「新交通システム(アストラムライン)整備インパクト」
,土木学会第51回年次
学術講演会、平成 8 年 9 月
(事例5)仙台市営地下鉄
目的
都市政策に重要な公共交通事業の必要性や意義・効果を多様な視点から可能な
限り定量的に把握して、プロジェクト(事業)立案・評価並びに政策形成や地域
合意形成に資する事を目的としている。
評価方法,
市内で建設中の東西線をモデルとして、CVM により東西線に対する市民の都市整
枠組み
備効果への期待度を紙幣価値により測定、AHP(階層化意思決定分析法)により市
民が期待するまちづくりの整備要素を分析している。
結果
東西線建設による地域経済波及効果を「建設投資に伴う効果」と「地下鉄運営
に伴う効果」の二つの地域効果について試算し、これらを合わせたものを東西線
建設による地域経済波及効果の総和としてとらえる事にした。
その結果、東西線の建設・運営により投資額の 2.7 倍に相当する約 7,300 億円
の生産が誘発され、建設部門に止まらず金融、対事務所サービス部門など幅広異
分野に効果がでる事が確認された。
出典
「都市公共交通事業がもたらす経済的・社会的効果の予測・評価に関する事例研
究」、平成 13 年 3 月、仙台都市総合研究機構
3.1.3
トラベルコスト法の採用と留意点
本章で対象としている観光資源としての社会的価値・便益のような、経済効果を計測する
ための手法が各種開発されている。経済効果の評価については、「国土技術政策総合研究所
プロジェクト研究報告『公共事業評価手法の高度化に関する研究』平成 17 年 3 月、国土交通
省国土技術政策総合研究所」等に詳しい。以下では当該文献を参考に、本調査においてトラ
ベルコスト法を採用する考え方について整理した。
まず、図 6 及び表 5 に、学術的にも実用的にもある程度確立されている手法を示す。さら
に、図 7 に示す手順に従い、本調査で適用可能な手法を検討すると、「原単位がある」、「近
似している他の事例がある」、「評価対象と相関する地価データがある」、「利用者の利用
価値を示すデータがある」、は該当せず、「アンケート調査が可能」、「1つの便益を計測」、
であるため、CVM、コンジョイント分析、トラベルコスト法のいずれかを選択すべきである
(図中、トラベルコスト法が抜けているが、図 6 より含めることとする)。ここで、客観性
及びデータ収集・分析の容易性を考慮して、トラベルコスト法を採用することとした。
表 6 にトラベルコスト法の特徴(メリット、デメリット)、表 7 に適用に際しての留意点
と本調査における対応を整理した。また、表 8 にトラベルコスト法による分析事例を整理し
た。
20
出典:国土技術政策総合研究所プロジェクト研究報告「公共事業評価手法の高度化に関する研究」
平成 17 年 3 月、国土交通省国土技術政策総合研究所
図 6 外部経済評価手法の体系
表 5 外部経済の定量的評価手法
名称
仮 想 市 場 法 ( CVM;
Contingent Valuation
Method)
コンジョイント分析
(Conjoint Analysis)
手法の概要
施設整備状況を回答者に説明した上で、その質の変化に対してどの程度の
額を支払う意思を持っているか(支払意思額)を直接的に質問し、結果を
もとに統計的に分析する方法。
想定が可能な代替案をプロファイルと呼ばれる形にまとめる。いくつかの
プロファイルの組み合わせから、最も良いと思われるプロファイルを回答
者に選んでもらう。その選択結果をもとに、統計的分析することで定量的
評価を行う。なお、支払意思額を推計する際には、プロファイルには回答
者は支払う必要のある金額に関する項目を必ず入れておく必要がある。
トラベルコスト法(TCM; 施設利用者は、施設までの移動費用をかけてまでも施設を利用する価値が
あると認めているという前提で、施設までの移動費用(料金、所要時間)
Travel Cost Method)
を調査して、その費用を施設整備の価値として評価する方法。
ヘドニック・アプローチ 施設整備の価値は、代替市場、例えば土地市場(地代あるいは地価)及び
労働市場(賃金)に反映されると仮定される。この仮定の下で、施設整備
(Hedonic Approach)
状況を含めた説明変数を用いてこれらの価格を表す価格関数を推定し、施
設があった場合となかった場合の価格の差を施設整備の価値として評価
する方法。
施設整備によって生じる便益を、それと同じだけの便益が得られる代替可
代替法
能な市場財で置き換えたとき、その市場財を購入するための増加額で評価
する方法。
便 益 移 転 ( 原 単 位 法 な 他の経済評価事例の中から、基本的な原単位や評価関数を当該事業に適用
ど)(Benefit transfer) する方法。
出典:国土技術政策総合研究所プロジェクト研究報告「公共事業評価手法の高度化に関する研究」
平成 17 年 3 月、国土交通省国土技術政策総合研究所
21
出典:国土技術政策総合研究所プロジェクト研究報告「公共事業評価手法の高度化に関する研究」
平成 17 年 3 月、国土交通省国土技術政策総合研究所
図 7 評価手法設定のフロー
表 6 トラベルコスト法の特徴
歴史
主な適用範囲
メリット
デメリット
特に自然の中で行うレクレーション活動の需要が急速に拡大した米国で、自然公園
整備に対する公共投資水準を決定する際の便益測定のために発達。わが国
でも、浜辺のレクレーション価値や、森林資源の価値、景観形成物の価値、歴史的
農村景観の価値、都市公園の価値等の非市場財の価値を推計する過程で活
用されている。
レクレーション機能施設、歴史遺産、博物館、美術館等
・必要な情報が旅行費用と訪問率のみで、入手しやすい。
・他の非市場財の分析手法と比べデータ入手・分析が容易。
・近隣の観光施設を含めた多目的旅行の場合には、観光施設毎に旅行費用
の配分が必要な場合がある
・近隣に競合する同質の観光施設が存在する場合、それらを考慮する必要
がある場合がある。
22
表 7 トラベルコスト法の留意点と今回の対応状況
留意点
複数目的地の
存在
代替施設の考
慮
留意点の内容
近隣の観光施設を含めた
多目的旅行の場合には、観
光施設毎に旅行費用の配
分が必要な場合がある
近隣に競合する同質の観
光施設が存在する場合、そ
れらを考慮する必要があ
る場合がある。
今回の対応
周遊券(18 切符)を利用した来訪者については立
寄施設数、静岡県外(豊橋市を除く)からの来訪者
については宿泊日数を考慮して、旅行費用を割り引
き、複数目的地の存在による過大評価を避ける処理
を施した。
現地ヒアリング調査では実際の利用者から確認し
ており、考慮不要。
モニター調査でも、今回は考慮不要。
当調査の回答者は「静岡県西部地域」への観光を希
望する方に限定されており、県西部地域で競合関係
にある同質の鉄道施設は天浜線以外に存在しない。
表 8 トラベルコスト法の分析事例
(事例6)清水七夕まつり
目的
「清水七夕まつり」を事例として、街の中心市街地の商店街がこれまで担って
きた「まちの顔」の衰退懸念を救う新たな方法、担い手・負担者は誰なのかなど
を推察する事を目的としている。
評価方法,枠
祭りの期間中に来訪者に対する対面調査を 2 日間行い、その調査結果をもとに
組み
トラベルコスト法による清水七夕祭りの評価、市民の関心や協力意欲の高さなど
を計測している。
結果
まつりの存続が困難になった場合には 71%の人が寄付をすると答え、市民の関
心や協力意欲は高いという結果がわかった。
トラベルコストの面からみると、回答者約 500 名の平均額は平均値で 251.8 円、
中央値で 177.8 円であり、これをもとに全来訪者について推計すると、平均値で
1 億 2,400 万円、中央値で 8,750 万円という結果になり、平成 17 年のまつりの予
算額 1,308 万円に比べてもまつりの存続が有益であるという結果になった。
出典
「清水七夕まつりへの市民意識と市民参加の可能性の考察」2008 年、丸谷浩明、
木下信、坪田建明(京都大学経済研究所)
http://www.kier.kyoto-u.ac.jp/DPJ/DP0807.pdf
(事例7)大阪市近代美術館
目的
大阪市が市内に開館を予定している近代美術館について、美術館が開館する事
による価値を算定する。
評価方法,枠
近代美術館への来館者のトラベルコスト(直接来館費用、来館時間機会費用、
組み
滞在時間機会費用)を便益として算定している。来館者の数や年齢構成は近隣に
ある複数の美術館の平均値等を用いている。
結果
開業後 50 年間では費用対便益が 1.12 倍という結果であった。具体的には直接
来館費用は 4.2 億円、来館時間機会費用は 5.9 億円、滞在時間機会費用は 9.2 億
円であり、経済波及効果による費用対効果も 2.39 倍という結果であり、近代美術
館について事業化を進めることによる費用対効果があるという結果となった。
出典
「近代美術館の整備効果の検討」平成 22 年度第 3 回大阪市行政評価委員会大規
模事業評価部会 資料 2-別途資料 16
http://www.city.osaka.lg.jp/shiseikaikakushitsu/page/0000112626.html
23
3.1.4
アンケート調査の実施
利用者ヒアリング調査、潜在的利用意向調査より社会的価値・便益を算出するまでの流れ
を示す。
天浜線利用者へのヒアリング調査では、天浜線まで観光目的で来訪している方を対象に、
現在の居住地、天浜線駅までの費用、移動時間、来訪頻度などを把握し、この結果をもとに、
居住地別の天浜線までの来訪費用、来訪頻度などを算出し、需要曲線を推定した上で観光利
用者による社会的価値・便益の算出を行う。
また、潜在的利用意向調査より、潜在的利用者の居住地別の来訪費用や来訪頻度などを把
握し、需要曲線を推定した上で、潜在的利用者による社会的価値・便益の算定を行う。
以上より、天浜線の観光面での社会的価値・便益全体の把握を行う。
利用者ヒアリング調査(4.1)
潜在的利用意向調査(4.2)
・観光利用者の居住地把握
・天浜線駅までの費用、移動時間の把握
・現在の来訪頻度および天浜線が
存在しないと仮定した場合の来訪意向
・天浜線駅までの費用、移動時間の把握
・天浜線沿線への来訪意向および天浜線
が存在しないと仮定した際の来訪意向
観光利用者にとっての社会的価
潜在的利用者にとっての社会的価
値・便益(3.2.1)
値・便益(3.2.2)
・居住地別の旅行費用、来訪頻度の把握
・需要曲線の推定
・観光利用者による社会的価値・便益の
算出
・居住地別の旅行費用、来訪頻度の把握
・需要曲線の推定
・潜在的利用者による社会的価値・便益
の算出
天浜線の観光面での社会的価値・便益
図 8 観光面での社会的価値・便益算出の流れ
24
3.1.5
推計の流れ
下図に、ゾーン・トラベルコスト法による分析の流れを示す。
25
※6
観光行動の顕在化率
旅行を希望する人のうち、実際に行動を起こす人の割合を考慮する。
下記調査結果より、48.5%÷(48.5%+8.9%)=84.5%とする。
出典:「地域資源活用・ネットワーク型の新たな観光サービスシステムの創造による潜在
的な国内旅行需要の喚起・顕在化を通じた地域活性化方策検討調査」、国交省・厚労省・農
水省共同調査(国土施策創発調査事業)、pp.26、平成 20 年 3 月
26
以上をまとめると、次のような計算式となる。
訪問回数の差(個人、観測値)
=
訪問回数の差(ゾーン平均、観測値)
=
旅行費用(ゾーン平均、観測値)
=
ℎ
−
ℎ
∑
∑
※潜在的利用者ではゾーン代表値
1次需要曲線
※対数関数の場合(関数形はあてはまりの良い方を採用、決定係数
(
)
=
1 ∙
+
2
で判断)
2
で判断)
1
2次需要曲線
( )
=
1
)+
( ∙
∙
1
=
1
∙
+
1
社会的便益
=
1次需要曲線
=
( )
1
∙
+
1
※べき関数の場合(関数形はあてはまりの良い方を採用、決定係数
=
2
∙( ∙
)
(
)
∙
2
2次需要曲線
( )
=
2
2
=
2
∙
2
社会的便益
=
ここで、
( )
=
2
∙
ℎ :天浜線が存在する場合の訪問回数(ゾーン
ℎ
2
に居住する回答者 の観測値)
:天浜線が存在しない場合の訪問回数(ゾーン に居住する回答者 の観測値)
:天浜線有無による訪問回数の差(ゾーン に居住する回答者 の観測値)
:天浜線有無による利用者あたり訪問回数の差(ゾーン の平均値)
:天浜線有無による利用者あたり訪問回数の差(ゾーン の推計値)
:天浜線有無による総訪問回数の差
:ゾーン に居住する回答者 の旅行費用(観測値)
:ゾーン の旅行費用(平均値、※潜在的利用者では代表値)
:一次需要曲線における旅行費用
:二次需要曲線における旅行費用
:観光資源としての存在効果(社会的便益)
:ゾーン別利用者数
:地域区分(ゾーン)
:総利用者数
:回答者
27
1,
2, 1,
2 :パラメータ
3.2
推計結果
3.2.1
現在の観光目的利用者が享受する便益
現在の観光目的利用者が享受する便益の算定を以下のように行った。
まず、居住地域別に、利用者あたりの訪問回数の差および旅行費用を算出する。利用者あ
たりの訪問回数の差は、天浜線来訪者の現在の来訪頻度と天浜線が存在しないと仮定した場
合の来訪意向の差をとり、居住地で平均値を算出している。また、費用については居住地ご
との平均値を算出している。
以上より、図 9 に示す1次需要曲線の推定を行う。1次需要曲線の推定結果では、モデル
の適合度を示す決定係数:R2 が 0.9 を超えているため、適用可能であるといえる。さらに1
次需要曲線での利用者あたりの訪問回数の差を天浜線での年間来訪者数あたりの総訪問回数
の差に変換し、図 10 に示す2次需要曲線を算出し、社会的価値・便益を算出する。
算出の結果、観光利用者による社会的価値・便益は 4.6 億円/年となっている。
12,000
10,000
y = -1993ln(x) + 13142
R² = 0.9632
(
旅 8,000
行
費
用 6,000
旅行費用
(円/回)
445
702
1,686
5,522
10,770
9,003
9,656
7,340
8,619
)
円
/ 4,000
回
2,000
静岡県 西北遠地域
静岡県 中東遠地域
静岡県 中部地域
静岡県 東部地域
東京都
神奈川県
その他関東地方
愛知県
その他中部、関西地方以西
利用者あたりの
訪問回数の差
(回/千人)
616
583
197
57
8
6
4
18
9
0
0
100
200
300
400
500
600
700
利用者あたりの訪問回数の差(回/千人)
図 9 1次需要曲線の推定結果
14,000
12,000
10,000
旅
行 8,000
費
用 6,000
円
/ 4,000
回
2,000
(
この部分の面積を算出
→現在の観光目的利用者
が享受する便益
4.6億円/年
)
0
0
50,000
100,000
150,000
200,000
250,000
総訪問回数の差(回/年)
図 10 2次需要曲線の推定結果
28
300,000
350,000
400,000
3.2.2
潜在的観光目的利用者が享受する便益
続いて、潜在的観光利用者が享受する便益の算定を以下のように行った。
まず、天浜線観光目的の潜在的利用者数の算出を行った。天浜線へ来訪する地域について
は、観光利用者へのヒアリング調査で特に来訪割合の高かった、東京都、神奈川県、静岡県、
愛知県の1都3県を対象としている。また、訪問者の年代についても、観光利用者へのヒア
リング調査より 20 代から 60 代までの来訪者の割合が高いことから、対象地域の人口に対し、
20 代から 60 代の割合を考慮している。
また、潜在的利用意向調査より、「県西部に観光で訪れたい、かつ天浜線を利用してみた
い割合」、「すぐにもしくは 1 年以内に利用したい割合」、「観光行動の顕在化率」などを
考慮した結果、天浜線観光目的の潜在的利用者数は、表 9 の通り、年間約 419 万人となって
いる。
表 9 天浜線観光目的の潜在的利用者数の算出
静岡県
対象地域の人口
神奈川県
愛知県
中部地域
東部地域
1,331,983人
1,188,781人
1,244,243人
13,159,388人
9,048,331人
64.3%
64.3%
64.5%
69.0%
67.9%
66.0%
855,877人
763,851人
802,193人
9,075,048人
6,139,900人
4,894,255人
70.7%
62.1%
63.2%
56.7%
59.9%
63.3%
55.0%
46.0%
37.0%
37.0%
31.0%
38.0%
17.74%
15.69%
20.34%
ⅰ 20-60代の割合
対象地域の20-60代の人口【母集団】
「静岡県西部に観光で来訪したい」かつ
ⅱ
「天浜線を利用してみたい」とする割合
「すぐにでも利用したい」もしくは
ⅲ
「1年以内には利用したい」とする割合
ⅳ 観光行動の顕在化率
7,410,719人
84.5%
母集団に対する割合
32.9%
天浜線観光目的の潜在的利用者数
東京都
西部地域
24.14%
19.75%
281,218人/年 184,373人/年 158,394人/年 1,610,056人/年 963,131人/年 995,310人/年
4,192,482人/年
天浜線観光目的の潜在的利用者数( 合計)
続いて、潜在的利用意向調査より、居住地別の利用者あたりの訪問回数の差、および旅行
費用を算出した。算出に際しては、居住地域別に表 10 の手順で算出を行っている。
表 10 訪問回数の差および旅行費用の算出の流れ
東京都
「すぐに」もしくは「1年以内に」と回答した方 a
神奈川県
46人
37人
9人
3人
6人
3人
4人
2人
0.098
0.149
0.111
0.074
0.82
2.58
2.70
2.41
2.00
16人
14人
1人
17人
21人
25人
28人
2人
27人
19人
16人
20人
1人
g-1
15,300
14,660
2,900
960
g-2
10,634
9,040
6,748
334
g-3
0
0
0
0
h=([f-1]*[g-1]
13,086
11,649
5,026
606
●旅行費用(円/回)
+[f-2]*[g-2]
+[f-3]*[g-3])/a
※男性、女性別の平均寿命は、人口問題研究所より参考。
※回答者が一生に一度、天浜線を訪問すると仮定し、平均寿命で割った数値を年間訪問回数としている。
※公共交通は運賃、自動車は高速代と燃料費(走行距離から燃費、燃料単価を用いて算出)
6,020
2,758
0
7,280
5,160
0
4,673
5,937
平均寿命
男性
女性
男性
女性
回答者の訪問回数差(回/千人)
●利用者あたりの訪問回数差(回/千人)
「すぐに利用したい」と回答した方で
・公共交通を利用
・自動車を利用
・その他
天浜線駅までの各手段の料金
・公共交通(円/回)
・自動車(円/回)
・その他(円/回)
31人
3人
2人
2人
0.061
0.025
e=d/a*1000
1.65
f-1
f-2
f-3
24人
11人
2人
静岡県
西部地域 中部地域 東部地域
55人
上記の回答者で
「訪問をやめる」と回答した方
37人
愛知県
b-1
b-2
c-1
c-2
d=[b-1]/[c-1]
+[b-2]/[c-2]
29
38人
5人
3人
79.0歳
86.2歳
以上の結果をもとに、図 11 のとおり1次需要曲線を推定した。モデルの適合度を示す決定
係数:R2 は 0.4144 と、前述の現在の観光目的利用者が享受する便益の場合と比べると低く
なっているが、類似調査での一般的は水準と比べれば十分に高い水準であり、妥当といえる。
ここで算出された1次需要曲線をもとに、居住地ごとの天浜線観光目的の潜在的利用者数
をかけ、2次需要曲線を推定し、社会的価値・便益を把握した。
算出結果は、15.3 億円/年となっている。
20,000
18,000
(
旅
行
費
用
)
円
/
回
「すぐにでも」または
「1年以内に」
と回答した方を対象
16,000
14,000
12,000
東京都
神奈川県
愛知県
静岡県西部
静岡県中部
静岡県東部
利用者あたりの
訪問回数の差(回/千人)
1.65
0.82
2.58
2.70
2.41
2.00
旅行費用
(円/回)
13,086
11,649
5,026
606
4,673
5,937
10,000
8,000
6,000
4,000
y = 13261x-1.585
R² = 0.4144
2,000
0
0.00
2.00
4.00
6.00
利用者あたりの訪問回数の差(回/千人)
8.00
10.00
図 11 1次需要曲線の推定結果
20,000
18,000
16,000
(
旅
行
費
用
)
円
/
回
この部分の面積を算出
→潜在的観光目的利用者
が享受する便益
14,000
12,000
10,000
15.3億円/年
8,000
6,000
4,000
2,000
0
1
10
100
1,000
<対数表示>総訪問回数の差(千回/年)
図 12 2次需要曲線の推定結果
30
10,000
4. アンケート調査の実施
4.1
利用者ヒアリング調査の実施
4.1.1
調査概要
(1) 調査の目的
天竜浜名湖鉄道の観光資源としての存在価値を把握するため、「天浜線が存在しないと仮
定した場合の来訪意向」や「天浜線に来るまでの費用」などを、来訪者へのヒアリング調査
により把握し、トラベルコスト法を用いて観光資源としての存在効果を定量化する。
(2) 調査の概要
調査日時
・平成 24 年 8 月 18 日(土)、19 日(日)、25 日(土)の計 3 日間、9 時∼
15 時半
調査場所
・掛川駅、天竜二俣駅、新所原駅の3箇所、各駅のホーム及び改札で実施
調査方法
・各駅に 1∼2 人の調査員を配置し、観光客に対し個別にヒアリングを実施。
※調査の際は、調査協力を得られた乗客等のみとしているため、天浜線を
利用した観光客全てからの回収はなされていない。
※回答者の重複を避けるため、各駅で調査協力の際にすでに他の駅で同様
の調査を受けていないことを個別に確認した。
回収数
・3日間計で 548 人となった。各駅での回収状況を下表に示す。
分析方法
・「トラベルコスト法」を用いて、社会的価値・便益を分析する。
表 11 調査実施日と回収票数
掛川駅
8 月 18 日(土)
8 月 19 日(日)
8 月 25 日(土)
合計
73
66
34
173
(31.6%)
天竜二俣駅
73
72
52
197
(35.9%)
新所原駅
合計
61
60
57
178
(32.5%)
207
198
143
548
(100%)
(3) 調査の様子
写真
調査の様子(新所原駅)
写真
調査の様子(天竜二俣駅)
(4) 調査項目
調査票は A4 で1枚程度としている。次ページに調査票を記載する。
調査項目としては、①天浜線の利用目的、②自宅から天浜線までの交通手段、③天浜線の
利用回数、④天浜線が仮になかった場合の観光目的来訪意向、となっている。
31
4.1.2
調査票
1枚目
32
2枚目
33
4.1.3
回答者の特性
(1) 居住地構成
z 調査での回収票数の中で、観光以外の目的(日常的な買い物や外出、帰省など)及び無効
票を除いた、有効回答数を居住地別に以下に示す。
z 観光目的で天浜線を利用した回答者数は 444 票、天浜線には乗車していないが、天竜二俣
駅にある転車台に見学に来た回答者数は 45 票となっている。
表 12 居住地別の有効回答数
分類 調査場所 ●静岡県内
・西北遠地域
・中東遠地域
・県内中部地域
・県内東部地域
●静岡県外(東京方面)
・東京都
・神奈川県
・その他(東京以北)
●静岡県外(名古屋方面)
・愛知県
・その他(愛知以西)
合計
観光目的で天浜線に乗車
掛川駅
天竜二俣駅
71
19
33
16
3
42
18
9
15
30
15
15
14 3
新所原駅
86
35
27
16
8
32
13
9
10
18
13
5
136
転車台見学のみ
合計
76
49
19
4
4
22
7
7
8 (*1)
67
57
10 (*3)
1 65
233
103
79
36
15
96
38
25
33
115
85
30
444
(天浜線には
乗車していない)
(*2)
(*4)
(*1)埼玉県11、千葉県13、茨城県3、山梨県3、新潟県2、群馬県1
(*2)埼玉県3
(*3)大阪府6、京都府5、奈良県4、福岡県4、岐阜県2、滋賀県2、兵庫県2、長野県2、三重県1、福井県1、富山県1
(*4)岐阜県9
表 13 沿線地域外から観光目的で来訪した回答者数
県外
県内中・東部
関東甲信地方
東京都 38 (3)
神奈川県 25 (4)
千葉県 13
埼玉県 11 (3)
北陸地方
東海地方
近畿地方
新潟県 2
愛知県 85 (2)
大阪府 6
京都府 5
福岡県 4
静岡市 23 (5)
藤枝市 9
富士市 6 (1)
富山県 1
岐阜県(9)
奈良県 4
滋賀県 2
九州地方
中部地域
東部地域
牧之原市 2 (4)
焼津市 1 (2)
沼津市 6
注)()付数字は転車台見学のみ、外数。
34
山梨県 3
長野県 2
群馬県 1
福井県 1
三重県 1
兵庫県 2
島田市 1
吉田町 1
三島市 2
計 93 (10)
計4
計 86 (11)
計 19
計4
計 37 (11)
計 14 (1)
24
11
1
9
3
10
3
4
3
11
2
9
45
(2) 性別構成
z データより
・天浜線利用者全体では男性の割合が高く、特に県外からの観光利用者は県内の観光利用
者と比較して、男性の傾向が高い。
z 現地ヒアリングより
・特に、県外からの観光利用者には男性の鉄道ファンの姿が目立った。
男性
女性
無回答
0%
20%
0%
20%
天浜線利用者合計(N=444)
80%
100%
40%
60%
35%
80%
4%
100%
中東遠地域(N=79)
4%
46%
50%
5%
39%
56%
県内中部地域(N=36)
11%
50%
39%
県内東部地域(N=15)
20%
80%
東京都(N=38)
神奈川県(N=25)
5%
37%
58%
26%
74%
0%
83%
40%
20%
3%
27%
70%
愛知県(N=85)
16%
20%
64%
その他(東京以北)(N=33)
転車台見学のみ(N=47)
60%
61%
西北遠地域(N=103)
その他(愛知以西)(N=30)
40%
40%
60%
36%
80%
17%
100%
19%
図 13 天浜線利用者の性別構成
(3) 回答者の年代
z データより
・全体を通じて 20 代∼60 代まで、幅広い年齢層が観光目的で天浜線を利用している。
・転車台見学のみを目的とした観光来訪者は、40 代までの比較的若い年齢層の利用が多い。
z 現地ヒアリングより
・現地では、特に親子連れの 20 代∼40 代の観光利用者の姿が多く見られた。
・50∼60 代では、沿線散策を目的とした方や、新所原駅から乗車し浜名湖周辺でのハイキ
ングを目的とした方の姿が多く見られた。
・転車台見学のみを目的として自家用車で天竜二俣駅まで訪れた方は、特に小さな子供連
れの親子の姿が多く見られ、「本来は電車に乗って来訪したかったが、子供が小さく電
車に長時間乗車することが難しいため、自家用車で来訪した」との回答が複数あった。
35
10代
20代
30代
40代
50代
0%
天浜線利用者合計(N=444)
6%
0%
中東遠地域(N=79)
13%
10%
神奈川県(N=25)
愛知県(N=85) 4%
0%
転車台見学のみ(N=45)
7%
9%
20%
20%
60%
20%
9%
12%
9% 2%
16%
19%
40%
16%
4%
21%
6%
18%
37%
8%
16%
12%
8%
7%
13%
7%
18%
14%
6%
13%
24%
5%
10%
14%
10%
8%
6%
12%
33%
21%
10%
6% 7%
90%
100%
31%
24%
11%
7%
16%
80%
24%
16%
8%
15%
60%
70%
17%
24%
15%
100%
22%
27%
12%
80%
20%
23%
11%
60%
11%
14%
13%
5%
18%
50%
40%
19%
6%
8%
その他(東京以北)(N=33) 3%
その他(愛知以西)(N=30)
20%
30%
20%
9%
9%
6%
無回答
40%
18%
県内東部地域(N=15)
東京都(N=38)
70代以上
20%
西北遠地域(N=103) 4%
県内中部地域(N=36)
60代
27%
80%
9%
7%
10%
100%
10%
20%
図 14 天浜線利用者の年代構成
(4) 観光利用目的の分類
z データより
・全体では、沿線観光を目的として天浜線を利用としたとの回答が多い。
・「天浜線への乗車」のみを目的としている方が 30%も見受けられた。
z 現地ヒアリングより
・沿線の観光地への来訪を主な目的とする方が多いが、同時にヒアリングの中では、「天
浜線への乗車自体も観光の 1 つとして楽しみに来訪した」との回答が相当数あった。
天浜線への乗車
沿線の観光地
両方
20%
40%
0%
天浜線利用者合計(N=444)
30%
0%
10%
西北遠地域(N=103)
中東遠地域(N=79)
東京都(N=38)
40%
41%
50%
60%
2%
100%
55%
29%
21%
52%
42%
35%
30%
60%
40%
76%
図 15 観光利用目的の分類
36
16%
32%
27%
9%
8%
60%
52%
43%
20%
5%
29%
27%
16%
その他(愛知以西)(N=30) 0%
28%
80%
90%
31%
42%
13%
愛知県(N=85)
100%
21%
30%
35%
19%
その他(東京以北)(N=33)
70%
80%
54%
神奈川県(N=25)
転車台見学のみ(N=45)
30%
60%
24%
県内中部地域(N=36)
県内東部地域(N=15)
20%
無回答
22%
80% 27%
100%
16%
(5) 天浜線駅までの交通手段
z データより
・県外からの来訪者は、公共交通機関での来訪が多く、静岡県内からの来訪者は、自家用
車で天浜線駅まで来訪している割合が比較的高い。
z 現地ヒアリングより
・自家用車で来訪した県内の観光利用者は、ヒアリングの中で天浜線を身近なドライブの
目的地として選んだという回答が多くあった。
・県外からの観光利用者は、公共交通機関での来訪が多く、天浜線駅までのJR等鉄道の
乗車を楽しみつつ、天浜線乗車自体を楽しむために来訪したとの回答をした鉄道ファン
の姿が多く見られた。
自家用車
公共交通
0%
その他
20%
天浜線利用者合計(N=444)
19%
10%
0%
20%
無回答
40%
30%
40%
60%
74%
60%
50%
西北遠地域(N=103)
25%
中東遠地域(N=79)
24%
県内中部地域(N=36)
25%
75%
県内東部地域(N=15)
27%
73%
東京都(N=38)
神奈川県(N=25)
愛知県(N=85)
80%
100%
7% 0%
100%
90%
10%
65%
22%
3%
84%
84%
16%
6%
73%
21%
1%
88%
11%
その他(愛知以西)(N=30) 0% 7%
70%
54%
13%
その他(東京以北)(N=33)
80%
20%
40%
転車台見学のみ(N=45)
93% 60%
89%
80%
100%
11%
図 16 天浜線までの交通手段
(6) 天浜線駅までの移動時間および費用
z データより
・静岡県西北遠・中東遠地域からの観光利用者は30∼60分程の移動時間で1000円
以下での費用をかけている方が多い。
・静岡県東部以東からの来訪者は天浜線駅まで120分以上の時間をかけて来訪している
方が半数以上となっている。
・愛知県からの来訪者では豊橋市からの新所原駅の利用が多いことから、短時間、低費用
の回答が多い。
z 現地ヒアリングより
・ヒアリングの中で、県外や静岡県東部・中部からの観光利用者から「天浜線には多くの
時間や費用をかけても来訪する価値がある」と回答をした観光利用者がいた。また、若
年層の鉄道ファンの中には、フリー切符(青春 18 切符や天浜線フリー切符)を利用して、
天浜線に乗車するまでの鉄道乗車や天浜線の乗車自体を楽しむ姿が見られた。
・新所原駅を利用する豊橋市居住の観光利用者の中には、「天浜線は近く、時間や費用を
37
かけずに観光できることから、身近な観光スポットとして、天浜線や沿線地域を楽しん
でいる」との回答もあった。
30分以内
60分以内
90分以内
120分以内
0%
20%
天浜線利用者合計(N=444)
0%
10%
120分以上
無回答
40%
32%
20%
60%
20%
40%
30%
13%
60%
50%
5%
70%
63%
西北遠地域(N=103)
14%
県内中部地域(N=36)
13%
東京都(N=38) 3% 5%
神奈川県(N=25)
8%
その他(東京以北)(N=33)
9%
8% 1%
2%2%
8%
1%
17%
67%
82%
16%
76%
3% 6%
73%
33%
9%
28%
その他(愛知以西)(N=30) 3% 3% 10% 3%
0%
20%
転車台見学のみ(N=45)
1%
100%
18%
39%
13%
8% 3%
愛知県(N=85)
30%
80%
90%
27%
22%
7%
県内東部地域(N=15)
100%
24%
54%
中東遠地域(N=79)
80%
13%
80%
60%
40%
18%
8%
24%
18%
80%
13%
100%
44%
図 17 天浜線までの移動時間(片道)
1000円以下
2000円以下
10000円以下
0%
20000円以下
20%
天浜線利用者合計(N=444)
0%
10%
37%
20%
70%
愛知県(N=85)
その他(愛知以西)(N=30) 3%
0%
6%
13%
9%
11%
17%
13%
5%
53%
8%
40%
32%
6%
3% 11%
90%
100%
42%
34%
8%
神奈川県(N=25)
13%
80%
60%
7%
20%
100%
10%
25%
17%
県内東部地域(N=15)
80%
22%
58%
県内中部地域(N=36)
転車台見学のみ(N=45)
26%
60%
50%
72%
中東遠地域(N=79)
その他(東京以北)(N=33)
無回答
60%
10%
40%
30%
西北遠地域(N=103)
東京都(N=38)
20000円以上
40%
9%
42%
18%
40%
20%
40%
23%
60%
64%
図 18 天浜線まで要した費用(往復)
38
24%
5% 7%
45%
8%
35%
20%
23%
80%
10%
100%
29%
2% 4%
(7) 天浜線への来訪回数
z データより
・静岡県内の居住者は来訪頻度の割合が比較的高い。
・静岡県外の居住者は、はじめての来訪の割合が大半を占める。その一方で、年 1 回以上
来訪している方も一定数みられる(東京都 19%、東京以北 12%、愛知県 20%)。
・調査期間中に転車台見学のみの観光利用者(今回は天浜線を乗車していない方)は、半
数が天浜線への来訪が初めである一方、半数は天浜線の観光利用のあるリピーターであ
った。
z 現地ヒアリングより
・静岡県内の居住者の来訪頻度が高い理由として、「天浜線は身近な観光地である」と回
答した方が多く見られた。
初めての来訪
1年に2-3回
5年に1回程度
1年に4回以上
0%
20%
天浜線利用者合計(N=444)
0%
10%
20%
2-4年に1回
無回答
54%
30%
1年に1回
40%
40%
40%
西北遠地域(N=103)
13%
80%
11%
90%
3%
17%
73%
0%
1%
14%
13%
11%
13%
13%
13%
6%
2% 7%
83%
40%
20%
47%
60%
9%
図 19 天浜線の来訪回数
39
3%
7%
3%3% 5%
4% 4%
67%
愛知県(N=85)
4%
100%
29%
92%
その他(東京以北)(N=33)
転車台見学のみ(N=45)
100%
20%
13%
61%
神奈川県(N=25)
その他(愛知以西)(N=30)
9%
70%
25%
53%
東京都(N=38)
80%
22%
14%
県内東部地域(N=15)
3% 6%
60%
13%
8% 1% 9%
36%
県内中部地域(N=36)
50%
2% 5%
30%
中東遠地域(N=79)
60%
9%
6%
7%
80%
24%
6%
9%
12% 1%4%
7%
10%
100%
2% 4% 4%
(8) 天浜線がなくなったと仮定した場合の来訪意向
z データより
・天浜線がなくなったと仮定した場合には「当地域には来なくなる」と回答した観光利用
者が 75%を占める。
・特に、県外の観光利用者は「天浜線沿線には来なくなる」と回答している方が多い。
z 現地ヒアリングより
・県外からの観光利用者は、「天浜線乗車を観光目的の1つとして来訪したので、天浜線
が存在しないのであれば、そもそも当地を訪れることはない」と回答する方が多くを占
めた。
・また、「来訪回数が減る」「変化しない」とした観光利用者は、ヒアリングの中で「沿
線地域に知人がいるから」等の理由を回答する方が見られた。
天浜線には来なくなる
来訪回数が減る
0%
来訪回数は変化しない
20%
40%
天浜線利用者合計(N=444)
0%
10%
20%
30%
西北遠地域(N=103)
60%
75%
40%
50%
80%
60%
神奈川県(N=25)
7%
13%
16%
21%
9%
2% 5% 2%
91%
40% 90%
20%
転車台見学のみ(N=45)
60%
73%
図 20 天浜線がなくなったと仮定した場合の来訪意向
40
3%
18%
4%
80%
70%
愛知県(N=85)
4%
14%
5%
74%
その他(東京以北)(N=33)
16%
19%
80%
東京都(N=38)
3%
100%
25%
11%
56%
県内東部地域(N=15)
15%
90%
9%
11%
59%
県内中部地域(N=36)
100%
7%
80%
70%
76%
中東遠地域(N=79)
その他(愛知以西)(N=30) 0%
無回答
7% 3%
100%
80%
7%
16%
4%
4.2
潜在的利用意向調査の実施
4.2.1
調査概要
(1) 調査の目的
天浜線には、実際に現地を訪問した方のほか、将来的に観光で静岡県西部地域を訪問し、
天浜線に乗車してみたいと考えている潜在的な観光客の存在があると考えられる。よって、
この潜在的観光客の実態と、その社会的価値・便益を分析し、その結果を一連の社会的価値・
便益に加える必要があるため、調査会社(楽天リサーチ(株))による、インターネットを用い
たモニターへのアンケート調査を実施した。
(2) 調査の概要
調査日時
回答者
調査プロセス
・平成 24 年 10 月 23 日(火)∼26 日(金)
・㈱楽天リサーチのモニター登録者のうち、静岡県・東京都・神奈川
県・愛知県にお住まいの約 1 万人にアンケートを配信し、回答依頼。
・「プレ調査」と「本調査」から構成
回収数
・「本調査」結果として 600 人の回答を回収
・地域別に静岡県東部 100 人、中部 100 人、西部 100 人、
東京都 100 人、神奈川県 100 人、愛知県 100 人を回収とする。
・8 月の現地観光客ヒアリング調査より、概ねの観光客の住所地域を特
定したため、上記の地域別の回収とした
分析方法
・調査結果を現地ヒアリング調査と同様に「トラベルコスト法」を用
いて、社会的価値・便益を分析する。
(3) 調査の流れ
z プレ調査
目的
・
「静岡県西部地域に観光で訪問する意向があり(県西部地域の回答者
を除く)」かつ「天浜線に観光目的で乗車してみたい」とする回答者
を特定すること。
結果
・該当者はそのまま「本調査」へ誘導。追加回答を依頼する
z 本調査
目的
・「どの程度、訪問してみたいか」「天浜線駅までの交通手段」等を調
査し、分析に必要とされるデータを収集すること
結果
・現地ヒアリング調査と同様に、トラベルコスト法で分析
(4) 回答者抽出の過程
段階
内容
対象者数
1
㈱楽天リサーチのモニター(上記地域)
2
「プレ調査」回答者
3,892 人
3
「本調査」回答候補者(「静岡県西部地域を観光してみた
い方」、かつ「天浜線を観光で利用してみたい方」)
2,423 人
4
「本調査」回答者
(調査上、6 地域で各 100 人に達するまで先着順)
41
10,000 人
600 人
4.2.2
調査画面
潜在的利用意向調査において、モニターに対して配信したアンケート調査画面を以下に示
す。
z 調査案内の画面(1ページ目)
※「同意し、アンケート開始」とした方より、回答を開始する
42
●プレ調査(社会的便益を算出するために該当する対象者の抽出)
○設問1:静岡県西部地域への観光での来訪経験(2ページ目)
43
○設問2:静岡県西部地域への観光での来訪意向(3ページ目)
○設問3:天竜浜名湖鉄道の観光での利用経験(4ページ目)
44
○設問4:天竜浜名湖鉄道の観光での利用意向(5ページ目)
45
○設問5:回答者の居住地(6ページ)
●本調査(抽出された対象者に対する、社会的便益算出のための設問)
○設問1:天竜浜名湖鉄道への観光での来訪意向(7ページ)
○設問2:自宅から天竜浜名湖鉄道の駅に着くまでの交通手段(8ページ)
※「3.その他」と回答する場合は、具体的な手段を記載する
46
○設問3:天浜線が存在しないと仮定した場合の来訪意向(9ページ)
○設問4:自由意見(10ページ)
※潜在的利用意向調査は以上で終了となる。
47
4.2.3
回答者の特性(プレ調査)
(1) 回答者の居住地、性別、年代
調査の回答依頼は、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県の 1 都 3 県の楽天リサーチ(株)の
登録モニター約 1 万人を対象に配信した。調査に対する回答者の居住地の割合は、調査対象
となっている各地域から均等に得られており、各地域から十分なサンプルを得た上で、本調
査で抽出されたサンプルを獲得しているといえる。
東京都
静岡県 西部地域
0%
プレ調査回答者
(N=3,892)
神奈川県
静岡県 中部地域
20%
19%
40%
18%
愛知県
静岡県 東部地域
60%
23%
80%
13%
14%
100%
14%
図 21 回答者の居住地(全サンプル対象)
男性
0%
女性
20%
プレ調査回答者
(N=3,892)
40%
60%
62%
80%
100%
38%
図 22 回答者の性別(全サンプル対象)
20代
30代
40代
0%
20%
40%
プレ調査回答者
(N=3,892)
6%
25%
50代
60%
37%
図 23 回答者の年代(全サンプル対象)
48
60代
80%
23%
100%
9%
(2) 静岡県西部への観光での来訪経験の有無
調査に回答した方 3,892 人のうち、約 6 割が静岡県西部への観光目的での来訪経験がある
と回答している。
来訪経験あり
0%
来訪経験なし
20%
プレ調査回答者
(N=3,892)
40%
60%
63%
80%
100%
37%
図 24 静岡県西部への観光での来訪経験の有無(全サンプル対象)
(3) 静岡県西部への観光での来訪意向
調査に回答した方のうち、約 8 割が「静岡県西部へ観光で訪れてみたい」と回答している。
なお、前項(2)において、既に静岡県西部への観光での来訪経験があると回答したモニタ
ーには、質問票の中で「再度来訪してみたいか」について、回答を依頼した。
訪れてみたいと思う
0%
プレ調査回答者
(N=3,892)
20%
訪れてみたいとは思わない
40%
80%
60%
80%
100%
20%
図 25 静岡県西部への観光での来訪意向(全サンプル対象)
49
(4) 天浜線の観光での利用経験の有無
調査に回答した方のうち、既に「天浜線を観光で利用したことのある方」の割合は約 1 割
であった。前項(2)において、約 6 割の観光客が静岡県西部地域を訪問しても、その一部
の方しか天浜線に乗車した経験がないことが明らかになった。
観光で利用あり
0%
プレ調査回答者
(N=3,892)
観光で利用なし
20%
40%
60%
12%
80%
100%
88%
図 26 天浜線への観光での来訪の有無(全サンプル対象)
(5) 天浜線への観光での来訪意向
調査に回答した方のうち、
「天浜線を観光で利用してみたい」とする方の割合は約 7 割とな
った。天浜線には、観光客を惹きつける魅力を有し、広報等によって多くの観光客を沿線地
域に呼ぶことができる可能性があるのではないかと考えられる。
利用してみたいと思う
0%
利用してみたいとは思わない
20%
プレ調査回答者
(N=3,892)
40%
60%
80%
66%
100%
34%
図 27 天浜線への観光での来訪意向(全サンプル対象)
(6) 「静岡県西部への観光での来訪意向」かつ「天浜線への観光での来訪意向」を持つ割合
調査に回答した方のうち、「静岡県西部へ観光目的で来訪したい」かつ「天浜線を観光で
利用してみたい」とする方の割合は、回答者全体では 2,423 名(約 62%)となっている。
「県西部へ観光目的で来訪したい」かつ「天浜線を利用したい」とする回答者
0%
プレ調査回答者全体(N=3,892)
静岡県 西部地域(N=512)
20%
40%
2,423人、62%
362人、71%
60%
それ以外の回答者
80%
1,469人、38%
150人、29%
静岡県 中部地域(N=533)
331人、62%
202人、38%
静岡県 東部地域(N=532)
336人、63%
196人、37%
東京都(N=726)
神奈川県(N=708)
愛知県(N=881)
412人、57%
424人、60%
558人、63%
314人、43%
284人、40%
323人、37%
図 28 静岡県西部および天浜線への観光での来訪意向(全サンプル対象)
50
100%
4.2.4
回答者の特性(本調査)
(1) 本調査の対象者について
本調査の回答者候補者は、プレ調査において「静岡県西部地域に観光意向がある」かつ「天
浜線を観光で利用してみたい意向がある」と回答したモニター2,423 人である。必要なサン
プル数として、各 6 地域(静岡県西部・中部・東部・東京都・神奈川県・愛知県)において
それぞれ 100 人が回答するまで、先着順で調査を継続した。
0
100
200
300
静岡県 西部地域
100
静岡県 中部地域
100
231
静岡県 東部地域
100
236
東京都
100
神奈川県
100
愛知県
100
400
500
362
262
計2,423名
331
336
412
312
424
324
458
本調査の対象者:
設問2で「1.」かつ設問4で「1.」と
回答した方で各地域早い順100名
600
本調査の対象外:
設問2で「1.」かつ設問4で「1.」と
回答した方で各地域早い順100名以外の方
図 29 本調査へ進んだ回答者の抽出条件
51
558
(2) 回答モニター600 名の属性
モニター回答者の傾向としては、男性の割合が高く、また 30 代から 50 代の回答者中心と
なっている。
男性
女性
0%
20%
40%
60%
80%
100%
本調査合計(N=600)
62%
38%
静岡県 西部地域(N=100)
63%
37%
静岡県 中部地域(N=100)
60%
40%
静岡県 東部地域(N=100)
61%
39%
53%
東京都(N=100)
神奈川県(N=100)
47%
71%
29%
63%
愛知県(N=100)
37%
図 30 回答者の性別構成(本調査対象者)
20代
30代
40代
0%
本調査合計(N=600)
静岡県 西部地域(N=100)
20%
5%
静岡県 中部地域(N=100) 2%
静岡県 東部地域(N=100)
東京都(N=100)
神奈川県(N=100)
40%
23%
7%
23%
5%
愛知県(N=100) 4%
80%
26%
37%
39%
22%
8%
60代
60%
35%
20%
5%
50代
26%
37%
25%
25%
23%
32%
23%
33%
図 31 回答者の年代構成(本調査対象者)
52
11%
8%
13%
26%
34%
100%
23%
26%
32%
10%
10%
14%
8%
(3) 静岡県西部への観光での来訪経験の有無
600 人の回答者全体のうち、約 7 割の方が「静岡県西部地域への観光での来訪経験あり」
と回答している。居住地別にみると、静岡県西部や中部は大半の方が「来訪経験あり」とし
ている。また、県外の中では特に愛知県の回答者の「来訪経験あり」とする割合は約 8 割と
非常に高い。
観光での来訪経験がある
0%
観光での来訪経験がない
20%
本調査合計(N=600)
40%
60%
80%
71%
100%
29%
静岡県 西部地域(N=100)
96%
4%
90%
静岡県 中部地域(N=100)
静岡県 東部地域(N=100)
10%
75%
東京都(N=100)
25%
39%
神奈川県(N=100)
61%
48%
52%
78%
愛知県(N=100)
22%
図 32 静岡県西部への来訪経験の有無(本調査対象者、N=600)
(4) 天浜線への観光での利用有無
600 人の回答者全体のうち、約 2 割の方が「観光目的での利用経験あり」としている。静
岡県の西部、中部の方は「利用経験あり」とする割合が高い。また、前項(3)と同様に、
愛知県において「利用経験あり」とする方の割合が県外の中では比較的高く、愛知県は天浜
線の誘客可能性が高いと考えられる。
観光での利用経験がある
0%
観光での利用経験がない
20%
本調査合計(N=600)
40%
60%
19%
静岡県 西部地域(N=100)
81%
39%
静岡県 中部地域(N=100)
61%
27%
73%
静岡県 東部地域(N=100)
8%
92%
東京都(N=100)
8%
92%
神奈川県(N=100)
愛知県(N=100)
80%
10%
90%
20%
80%
図 33 天浜線への観光での来訪の有無(本調査対象者、N=600)
53
100%
(5) 天浜線への観光目的での来訪意向
調査票に添付した、静岡県西部地域および天浜線の観光案内を見て、「天浜線を観光で利
用してみたいか」を調査したところ、600 人の回答者全体のうち、約半数の方が「3 年以内
に利用してみたい」と具体的な観光による利用意欲があることが明らかになった。特に、静
岡県西部・中部・そして県外の中では比較的東京都と愛知県の方でこの意向が強い。
すぐにでも利用してみたい 1年以内に利用してみたい 3年以内に利用してみたい いずれは利用してみたい
0%
本調査合計(N=600)
20%
13%
静岡県 中部地域(N=100)
東京都(N=100)
神奈川県(N=100)
愛知県(N=100)
28%
15%
8%
26%
23%
41%
8%
31%
8%
4%
29%
11%
80%
51%
33%
17%
6%
60%
8%
22%
静岡県 西部地域(N=100)
静岡県 東部地域(N=100)
40%
10%
9%
23%
46%
55%
53%
60%
11%
51%
図 34 観光での天浜線利用に関する意向(本調査対象者、N=600)
54
100%
(6) 誘客可能性が高いグループ
前項(5)において、とりわけ即時的に天浜線の観光客として誘客可能性が高いグループ
を特定にするため、「すぐにでも天浜線を利用してみたい」「1 年以内天浜線を利用してみ
たい」と回答した者を抽出し、分析を行った。
地域を問わず、全体を通じて男性の利用意向と 40∼60 歳代の利用意向が強いことが明ら
かになった。
男性
女性
0%
20%
40%
本調査合計(N=244)
60%
80%
68%
静岡県 西部地域(N=55)
32%
64%
静岡県 中部地域(N=46)
36%
59%
41%
静岡県 東部地域(N=37)
73%
東京都(N=37)
100%
27%
65%
35%
神奈川県(N=31)
90%
10%
63%
愛知県(N=38)
37%
図 35 「すぐにでも利用したい」「1年以内に利用したい」とする回答者の性別構成
20代
30代
40代
0%
20%
本調査合計(N=244)
7%
26%
静岡県 西部地域(N=55)
7%
25%
静岡県 中部地域(N=46) 4%
静岡県 東部地域(N=37)
神奈川県(N=31) 3%
愛知県(N=38)
5%
60代
60%
80%
34%
23%
36%
30%
22%
11%
東京都(N=37)
40%
28%
8%
50代
27%
24%
39%
29%
7%
13%
32%
30%
23%
11%
24%
30%
100%
8%
19%
14%
16%
39%
19%
18%
8%
図 36 「すぐにでも利用したい」「1年以内に利用したい」とする回答者の年代構成
55
(7) 自宅から天浜線駅までの交通手段
天浜線を利用する際の交通手段として、600 人の回答者全体では、約 4 割が自家用車での
来訪、約 5 割が公共交通での来訪を想定している。特に静岡県西部で、自家用車を用いずに
天浜線を利用する回答者が多い。一方、静岡県中部・東部・愛知県では、自動車での来訪の
割合が若干高くなっており、天浜線駅まで自家用車のドライブでの利用を想定していると考
えられる。また、東京都、神奈川県の方は天浜線利用まで、公共交通で来訪したいとする回
答の割合が高い。
自動車
公共交通
0%
その他
20%
40%
本調査合計(N=600)
43%
静岡県 西部地域(N=100)
42%
静岡県 中部地域(N=100)
不明
60%
80%
48%
4%
1% 6%
39%
12%
63%
25%
神奈川県(N=100)
8% 3%
47%
54%
東京都(N=100)
2% 8%
47%
49%
静岡県 東部地域(N=100)
100%
愛知県(N=100)
11%
53%
36%
9%
38%
53%
図 37 自宅から天浜線駅までの交通手段(本調査対象者、N=600)
(8) 天浜線がないと仮定した場合の来訪意向
天浜線を観光目的で利用したいと考えている方のうち約 15%が、天浜線が仮に存在してい
なかったら、
「静岡県西部地域へ観光目的で訪問することは無いと思う」と答えている。静岡
県中部地域や神奈川県でやや大きな割合となっている。
訪問することはない
0%
それでも訪問する
20%
40%
60%
本調査合計(N=600)
15%
85%
静岡県 西部地域(N=100)
14%
86%
静岡県 中部地域(N=100)
静岡県 東部地域(N=100)
東京都(N=100)
神奈川県(N=100)
愛知県(N=100)
18%
80%
82%
13%
87%
16%
84%
19%
81%
12%
88%
図 38 天浜線がないと仮定した場合の来訪意向(本調査対象者、N=600)
56
100%
【参考】経費の変化について
当初は、社会的価値・便益の過大評価を避ける観点から、マイナスの効果(一般に天浜線が
存在しない場合の方が、便益が大きい又は費用が小さいと想定される要素)として、「経費の
変化」についても考慮する必要があると考えた。しかしこれは、前述の「生活交通面における
社会的便益」及び「観光面における社会的便益」とは単純に差し引きできる性格の数値ではな
いこと、さらに、経費の変化にはさまざまなパターンが考えられ、無理に算定しようとすれば
多くの仮定を置かざるを得ないこと、などから、社会的価値・便益としては算定せず、別途(「天
竜浜名湖鉄道の経営分析と将来展望」プロジェクトチームにて)詳細に検討することとした。
57
5. 作業部会の開催運営事務
本業務を行うあたり、社会的価値・便益を検討するための資料を作成し作業部会を運営し
た。作業部会は「天竜浜名湖鉄道の経営分析と将来展望」プロジェクトチームの傘下に位置
づけ、5 回開催した。
表 14 プロジェクトチーム作業部会 委員及び事務局
区
分
学識経験者
事業者
所
属
役
東京経済大学経営学部
教授
天竜浜名湖鉄道株式会社
常務取締役
静岡県文化・観光部交流企画局
事務局
八千代エンジニヤリング㈱
職
氏
青木
林
名
亮
聖久
交通政策課
技術推進本部
総合事業本部
技術開発部
道路・交通部
表 15 作業部会 開催の経緯
回
日時
第1回
検討項目
・調査チーム設置
7 月 18 日(水)
・調査概要、方針
・生活交通面の社会的便益検討状況
第2回
8 月 9 日(木)
第3回
8 月 28 日(火)
・観光面における現地ヒアリング調
査方針
・生活交通面の社会的便益結果検討
・観光面の現地ヒアリング調査速報
・観光面の潜在的社会的便益の調査
方針
・観光面現地ヒアリング調査結果報
告
第4回
9 月 20 日(木)
・観光面の潜在的社会的便益の調査
項目確定
・観光面の現地ヒアリング調査に基
づく社会的便益の調査結果
第5回
11 月 7 日(水)
・観光面の潜在的社会的便益の調査
速報と社会的便益の結果検討
・
「天竜浜名湖鉄道経営分析と将来展
望」プロジェクトチームへの報告
資料の検討
58
結果
・委員就任委嘱
・調査全体説明と実施方針の確認
・生活交通面における社会的便益
の分析手法と調査過程の決定
・観光面における現地ヒアリング
調査項目・日時・場所の決定
・生活交通面における社会的便益
の分析結果の確認・確定
・観光面における現地ヒアリング
調査結果の速報報告
・観光面における潜在的社会便益
の調査方針の確認
・観光面における現地ヒアリング
調査結果の確定値報告、社会的
便益分析の方針確認
・観光面における潜在的社会的便
益の調査項目・実施方法の確定
・観光面における現地ヒアリング
調査結果による社会的便益の
結果報告と確定
・観光面における潜在的社会的便
益の調査結果報告、社会的便益
の分析過程の確認
・プロジェクトチーム報告資料の
検討・確認
6. まとめと今後の課題
本調査の結果、天竜浜名湖鉄道は、生活交通面において 6.4 億円/年、観光面においては、
現在の観光目的利用者に対して 4.6 億円/年、潜在的な観光目的利用者に対して 15.3 億円/年、
計 26.3 億円/年の社会的価値・便益をもたらしていることが明らかとなった。この結果は、
二重計上や過大評価を避けるため、かなり保守的に算定された結果である。さらに、その他
の定量化していない効果と合わせると多大な経済効果をもたらしていること、また、天浜線
に対する公的負担額 3.7 億円/年(平成 23 年度実績)と比較しても公的負担額を大きく上回
る社会的価値・便益を発現していることが明らかになった。
一方で、会計上の公的負担額の軽減や、鉄道インフラ・観光資源としてのさらなる活用が
望まれる。
なお、本調査では、天竜浜名湖鉄道の観光資源としての存在価値を把握するため、来訪者
ヒアリング調査や潜在的利用意向調査(WEB 調査)を実施したが、利用促進策の検討・実施
に繋がる傾向も把握できた。
来訪者へのヒアリング調査では、観光利用として幅広い年齢層の利用があること、鉄道自
体の魅力、地域沿線の魅力の両面を感じ来訪していること、また天浜線近隣地域や静岡県内
に限らず、東京・神奈川・愛知といった広い地域から実際に来訪している状況が示された。
潜在的利用意向調査(WEB 調査)では、回答者の 7 割が天浜線への観光の来訪意向を示して
おり、また東京・神奈川・愛知といった広い地域を含めた潜在的なニーズが示された。
これらの傾向を踏まえ、幅広い年齢層、エリアをターゲットとし、鉄道プラス沿線地域の
トータルの魅力発信といったプロモーション活動を行うなど、今回のアンケート結果を天浜
線の利用促進策の検討・実施に活用していくことが必要かつ有効と考えられる。
最後に、当調査にあたって、天浜線駅においてヒアリング調査にご協力いただいた観光客
の皆様、また、潜在的利用意向調査にご協力いただいた皆様に御礼を申し上げます。
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本調査について
当調査は、静岡県の委託により実施した。
(1)委託業務名
平成24年度天竜浜名湖鉄道地域経済効果調査業務委託
(2)委託者
静岡県
文化・観光部交流企画局交通政策課
(3)受託者
八千代エンジニヤリング株式会社
静岡事務所
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