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単結晶X線解析による構造決定の実際(低分子編)PDF版
単結晶X線解析による構造決定の実際(低分子編) 化学領域でもっともコンピュータの恩恵を受けたのは,X線解析と言っても過言ではない.十数年前頃か ら,X線解析の専門家ではない化学者でもコンピュータ任せで構造解析ができるようになった.ハードウエ アの発達と同時にソフトウエアの改良に負うところが多い.ほとんどの処理が,GUI環境(Graphical User Interface,画面を見ながらマウス操作)で実行できるようになった.ところが,論文を纏める段階になる と,原理が理解できていないため出力結果の解釈に戸惑い,専門家に教えを請うことになる. 今回の講義では,ブラックボックスの中身,すなわちコンピュータの中でどのようなデータ処理が行われ ているかを概略的に知ることを目的とする. 構 造 因 子 ( stru ctu re facto r) 結晶構造とX線反射波の関係は,下記の式で表される.左辺はhkl反射の構造因子,ρ(xyz)は単位胞内の xyz点の電子密度,Vは単位胞の体積である. 1 1 1 2π i (hx+ky+lz) V dxdydz F(hkl) =∫∫∫ ρ (xyz) e 0 ρ (xyz) = 1 V 0 0 Σ Σ Σ F(hkl) e-2π i (hx+ky+lz) h k l 実験によって得られる情報は,|F(hkl)|2だけである.反射波を観測する段階で,位相が失われてしまうの で,観測された強度データのみを使用してフーリエ合成によって分子像を復元することはできない. 「結晶構造解析は位相を求めること」と言っても過言ではない. 顕微鏡にたとえると(分子は電子顕微鏡では見えない) 単結合の距離は約1.54Åである.この結合距離をCRT上に1cmに表示するためには,108倍拡大すること になる.光学あるいは電子顕微鏡方式で拡大すれば見れるというものではない. X線解析を光学顕微鏡にたとえれば,対物レンズにあたるものが回折計であり,接眼レンズはコンピュー タということになる. 対物レンズ 接眼レンズ スペクトル法の限界 syn or anti ? IR O NOE 回折計 コンピュータ UV COOCH3 回 折 で 得 ら れ る 情 報 ( d iffractio n ) H H H3 C 回折装置によって得られるデータは結晶格子の情報とそれに よって回折した反射強度であり,分子構造が直接見えるわけで H 3COOC はない. H 1)格子定数 a, b, c, α, β, γ → V, 比重(計算値) cmr H M/Z= 0.60226Vρ pmr endo or exo ? 2)h k l I(強度)→ Fobs(各種補正処理後のデータ) 1 pmr H J? H H pmr MS ok 解析で得られる情報 2) 何らかの方法で位相情報が得られればフーリエ合成により各原 子の電子密度が得られる. 三次元の電子密度 原子の三次元座標(立体構造)Atomic coordinate 原子間距離,結合距離 distance and angle 二面対角 dihedral angle 最適平面 best plane 熱振動 thermal vibration 分子間距離(種々の相互作用)intermolecular distance 混成状態 hybridization 電荷の移動 charge transfer 絶対配置 absolute configuration スペクトル法では得にくい構造情報 1) 3) 1.663Å 1)異常に長い単結合を有するかご型化合物(再結晶中 に,蛍光灯の光で2+2付加反応を起こす),加熱で脱 CO反応.無色結晶1個を取り出し解析. 2)β-CyD2:2包接体の例(JACS SIをダウンロード). 1:1×2の形をとっている. 3)Edge to face相互作用を有するクラスレート化合 物.ホストのベンゼン環とゲストのベンゼンがσーπ相 互作用をしている. 4)金属錯体などもX線解析で実証することが常識に なっている. シクロヘプタトリエン鉄錯体と1,2,4,5tetrazineの環化付加体 Feは残存ジエンに2.1Åの距離 で配位している.COはFeと一直線をなして配位してい る. 2 4) CO2Me HN N MeO2C H Fe(CO)3 予備的な情報 1)スペクトル情報(平面構造,部分構造,構成原子種,分子量) 2)比重(実測値) KI水溶液 あるいは ClCl 4-hexane ガラス板 隙間 結晶 密閉容器 蒸気 結晶 単結晶作成(研究室独自のノウハウ) 自然揮発法 溶媒混合法(密閉蒸気混合) 実体顕微鏡による検査 偏光顕微鏡による検査 双晶の有無 整形 円柱,球 エタノール 空気抜き網 ベンゼン 肉厚ゴムリング 接着剤 内側壁 サンドペーパー 注射針 air 精密測定のためには、上記のような装置を利用する。 金魚用空気ポンプで、注射針を通して空気を送ると結晶は浮遊し、内壁に貼った微細サンドペーパーに接触 し、研摩され球形になる。 結晶取付け ゴニオメータヘッドにマウント可能なビスにグラスファイバを固定する.先端にエポキシ系接着剤を用い て結晶を取り付ける.マニキュアで保護する.結晶水を持つものは封管する. 3 格子,繰り返し構造,格子定数 z c y α β γ b a 単位格子 z 2 1 y X 右手則 面指数 ( 2,2,1) と( 4,4,2) 境界面と稜 単位格子 逆格子 nλ= 2dsinθ → nλ/2*1/d 1/d =sin sin θ 1/dとsinθは比例関係にあるので,数学的には逆格子で考えた方が都合がよい. 4 X 対称操作 symmetry operation n回軸 (n-fold axis) 360度/n回転で同じもの 対象面 (plane of symmetry) 鏡面 (mirror plane) 対称中心的 (centrosymmetric) 反転 (inversion) 反転中心 (inversion center) 対称中心 (center of symmetry) 回反軸(rotary inversion axis) 回転軸+反転中心 2回軸と反射の組み 合わせによって生じ た対称の中心 4回回反軸 m O 4回軸 鏡面 * O * O * O * * * * * O * * * * O O * * * * * * 三斜晶系の O 対称中心 空間群 ( space group ) 32の点群とブラベ格子を組み合わせると230の空間 群(space group)が存在する. らせん軸 ( scre w axis) 回転軸とその軸に平行な並進の組合せ 映進面 ( p lane o f g lid ing reflectio n) 鏡面とその面に平行な並進の組合せ 消滅則 ( extinction ru le ) 並進の要素を持つ空間群においては,系統的な反射 の消滅によって判断する. コンピュータが空間群の候補を出力するが,最終的 には人間が判断. 同価位置 ( Equivalent Positions) 特殊位置 In te rn a tio n a l T a b le s すべての空間群について同価位置等をまとめた結晶解析のバイブル的資料.空間群は,非対称単位の分子 数や反射データの消滅則をもとに,コンピュータが予想してくれるが,最終的には人間が判断する. 5 例 P21/c 1/2+y b) 6 らせん軸はb軸に平行 /cからb軸に垂直でc方向に滑る映進面 a) 9 y 0 a 9 等価な座標位置 単位格子の次の各点に原子が存在する 右下図参照 c) 6 9 d) -y x, y, z -x,1/2+y, -1/2-z -x, -y, -z x,1/2-y, 1/2+z 6 -1/2-y 9 c 1/4 消滅する反射 hkl h0l 0k0 No condition l=2n k=2n 1/2- - 9 + コンピュータで解析する場合,これらの等価位置は 空間群を指定するだけで,呼び出される. - + b + 9 9 a 9 1/2+ 1/2- P21/a, P21/nは同類の空間群である. - - 9 + 9 1/2+ ラセミ体のはずなのに空間群は光学活性を予測した場合 合成化合物であり,明らかにラセミ体であるはずなのに,空間群が光学活性に属し,解析結果もそのこと を支持する結果が得られることがある.我々の研究室で遭遇した化合物の一例を示す.解析が終了し,旋光 度を計ってみても光学活性は認められない. 一見矛盾することだが,結晶選別の段階で人間が光学分割したことによるものである.対掌体が別々に単 結晶を形成し,混合物として存在する.結晶解析は,唯一の結晶を用い複数の結晶を必要としないためこの ような現象が起こることがある. Me Me Me O ArNCO O H N O N N N N Cl DL DL DL DL DL DL H O O Cl D L L D D L D 復習 19世紀半ば,PasteurとGernetzにより,不斉結晶の存在が明らかにされ,ラセミ体 [ ラセミ混合 物:(+ )結晶と(-)結晶の1:1混合物] の光学分割法(優先晶出法)が見い出された. 6 ブラッグの法則 (Bragg law) 2*格子間距離*sin(角度)=n*波長 平行なX線波1,2のたどる道のりの差(行路差)が波長の整数倍のときに,強め合う. 干渉の条件 nλ=2dsinθ θ d 太線=2dsinθ 構造因子 F(hkl)は単位格子にあるj個の原子によって,反射hklの方向へ散乱されたj個の波を合成したもの である. フ ー リ エ 合 成 ( Fo u rie r synthesis) 波の合成において成分波の位相が既知で在れば合成可能.三次元でも同様である. phase 0 π synthesis analysis 7 回 折 実 験 ( D iffra ctio n ) X線 Mo 0.71069Å filterでモノクロにする Cuも用いられる 絶対位置決定等 50-150KV ほとんどが熱になる 強水冷が必要 四軸回折計 ( fo u r-circle d iffracto meter) 係数装置は固定されているので,三次元全空間に放射される任意の反射をカウンタに導くために.4軸計が 必要. X-ray counter エポキシ系接着剤 で固定 回転写真 x ポラロイド写真,上下左右対称像 x, y, カメラ半径からθを算出可能 第一象限から15-20点位の反射を選択 粗い格子定数算出→精密化 オリエンテーションマトリックスを算出 4軸角の設定が分かり,任意の反射を見つけることが可能(こ れらの作業も自動化されている). フイルム露光と原理的に類似した「2 器 2 次 元検 出 器」の場合, 一度に多数の反射強度を測定することができる. y 強 度 デ ー タ の 収 集 ( D ata co lle ctio n ) 1970代から自動化が進み,10年前に完全自動化された(ロ ボット).最近では,「あなたはただ結晶をのせるだけ」, lunch time solutionなどのコマーシャルが登場している. 8 R N 1 1 1 1 2 1 2 1 1 1 h 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 k 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 l 0 1 2 3 4 5 6 -6 -5 -4 F(obs) 119.47 153.10 88.18 86.58 .00 17.64 .00 104.49 19.96 60.89 sig-F .21 .28 .37 .45 .00 .72 .00 .62 1.00 .52 A 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 R 1 1 1 1 1 3 1 1 1 1 peak 83186 80570 16751 11236 390 1827 261 8313 674 4787 bg1 123 209 219 134 116 264 82 65 77 100 bg2 186 256 139 126 97 231 62 85 70 93 time 1.53 1.54 1.54 1.54 1.54 1.55 1.55 1.56 1.56 1.56 psi .00 .00 .00 .00 .00 .00 .00 .00 .00 .00 2theta 4.94 8.38 13.66 19.36 25.24 31.25 37.38 34.97 28.93 23.03 omega 2.47 4.19 6.83 9.68 12.62 15.63 18.69 17.49 14.47 11.52 chi phi 72.79-178.97 48.35 -90.47 34.85 -82.96 28.93 -80.49 25.69 -79.27 23.67 -78.54 22.29 -78.05 -7.60 111.25 -6.05 112.63 -3.72 114.70 sp pkt 16 536 16 540 16 545 16 551 16 556 16 1686 16 570 16 566 16 560 16 555 bgt 133 133 133 133 133 399 133 133 133 133 三斜晶系(triclinic) 一つの軸の指数が 0→∞,二つの軸の指数が ー∞→∞ 一つの指数が0の場合,一つが 0→∞,残りの一つが ー∞→∞ 単斜晶系(monoclinic) kと,hかlの一方が 0→∞,残りのhもしくはlが ー∞→∞ h0lでは三斜晶系の場合と同様 hk0と0klでは両指数が0→∞ 二つのの指数が0の場合,残りの指数が 0→∞ 斜方晶系(Orthorhombic) 全指数が 0→∞ データの補正 Lp 補正 ( Lo rentz Co rrectio n) 構造因子の絶対値(構造振幅)と観測強度との間には,|F Fhkl|=SQRT(KIIhkl/Lp)の関係が成立する.装置 には依存しない. Lはローレンツ因子,pは2θに依存する偏光因子 吸収補正 ( Ab sorption Correction) 外形に依存するので,精密な計算は困難.吸収の効果を少なくするため,外形を球形や円柱に近い形に整 形する.透過力の強いMoを用いる. 崩壊 ( D ecay Correction) 資料の分解をチェックするため,3個程度の標準反射を50∼100個測定ごとに反復測定する.崩壊して いたら補正する.最終的に10% リニアに強度が減少したら,強度減少とは逆のファクターを掛けて補正す る. l 1 1000 2000 3000 4000 5000 有効反射 ( O b served reflectio n) 弱い反射の取扱い方には注意が必要である.高角の反射は強度は弱いが,位相決定に重要な役割をする反 射が多い.したがって,規格化構造因子を計算する際は,測定した全反射を用いる.精密化には,自然界の カウント数の2.0-3.0倍以上のカウント数を持った反射を有効反射 (Fobserved) とする方法が採用されてい る. 9 位相決定前のX線基礎データ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 中略 座標データ(AP)と計算構造因子Fc?の部分が欠落 cpcot64 I -1 L 16.197 90.350 L1 0.012 0.08 SG AN AC 2 S 1 X,Y,Z, A O1 O2 C3 C4 C5 中略 C64 C65 C66 C67 C68 1 1 20.990 1 134.32 0.004 0.07 0.021 9.505 P1C 58 91.720 0.05 3 3 1 O 10 P H 48 1 1 2 2 2 0.9165 0.6183 0.6356 0.6621 0.9812 cpcot64 0.1004 -0.0138 -0.1720 -0.2197 0.2493 0.7164 0.1890 -0.1205 0.0366 0.8363 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 2 2 2 2 2 0.5166 0.6228 1.0773 1.1184 0.6230 -0.4485 0.1610 0.3849 0.4167 0.2491 -0.6171 0.6615 1.2775 1.1750 0.9899 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 P1- R 1 cpcot64 (3I5,F10.2,1X,F5.2) 0 0 1 256.73 Fc 0 0 2 259.48 Fc 0 0 3 138.70 Fc 0 0 4 15.56 Fc 0 0 5 92.86 Fc 0 0 6 17.23 Fc 0 0 8 12.85 Fc 0 1 -7 13.51 Fc 0 1 -6 32.27 Fc 0 1 -5 16.74 Fc 0 1 -4 14.33 Fc 0 1 -3 56.45 Fc 0 1 -2 100.14 Fc 0 1 -1 119.49 Fc 0 1 1 188.00 Fc 0 1 2 75.46 Fc 0 1 3 50.44 Fc 0 1 4 27.34 Fc 0 1 5 36.80 Fc 0 1 6 53.77 Fc 0 2 -8 14.32 Fc 0 2 -7 22.09 Fc 0 2 -5 39.66 Fc 0 2 -4 13.64 Fc 0 2 -3 69.85 Fc 0 2 -2 106.78 Fc 0 2 -1 241.14 Fc 0 2 0 375.04 Fc 0 2 1 253.84 Fc 0 2 2 80.98 Fc 0 2 3 24.76 Fc 0 2 4 18.17 Fc 0 2 5 44.89 Fc 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 1000 ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? 10 2 6 29.40 Fc 3 -8 13.55 Fc 3 -7 30.04 Fc 3 -6 21.05 Fc 3 -5 28.99 Fc 3 -4 36.94 Fc 3 -3 40.89 Fc 3 -2 180.38 Fc 3 0 62.82 Fc 3 1 295.59 Fc 3 2 123.58 Fc 3 3 15.41 Fc 3 4 53.07 Fc 3 5 34.8 Fc 3 6 28.76 Fc 3 7 16.08 Fc 4 -8 13.09 Fc 4 -7 18.66 Fc 4 -6 31.63 Fc 4 -2 67.97 Fc 4 -1 274.83 Fc 4 0 11.94 Fc 4 1 232.27 Fc 4 2 115.42 Fc 4 4 20.60 Fc (トータル3988反射) -12 -12 -12 -12 -12 -12 -12 -12 -12 -11 -11 -11 -11 -11 -11 -11 -11 -11 -11 -10 -10 -10 -10 -10 -10 -10 -10 -10 -10 -9 -9 -9 -9 -2 -1 0 1 4 5 7 8 9 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 9 -3 -2 -1 1 2 4 5 6 7 9 -3 -2 -1 0 1028 769 2142 2960 8533 3535 2530 741 764 2442 3456 1015 1080 1615 7288 1425 3720 3515 2392 782 765 762 4172 7690 2951 3890 2181 2750 1071 769 1067 3962 1882 Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc Fc ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? 位相問題 ( p h ase p ro b le m ) X線解析の初期段階においてファイルに記録されている構造情報は,全反射の反射強度 (I) から計算したFo だけである.正常に解析が進むとFcと位相 phaseが追記される.最終段階では FoとFcの絶対値は全反射に ついてほぼ一致する. h k l Fo Fc phase ? ? ? ? ? ? ? ? ? ? 1 0 0 15.26 1 -1 0 27.72 0 2 0 2.83 0 1 -1 13.70 0 0 1 15.86 以下,数千個の反射データが続く 位相決定法 1)重原子法 2)直接法 3)同形置換法 重原子法 ( H eavy ato m metho d ) 重原子を含む結晶の構造因子は重原子からの寄与 FM と軽原子からの寄与 FLで表される. F(hkl)= FM + FL 一般的な有機化合物の場合, 重原子の寄与が大きい.このことを利用して重原子の位相情報をもとに初期 構造を求める方法である. 低分子量の有機化合物の場合,臭素やヨードを導入した誘導体を作る.具体的な例を紹介しよう.下記の 化合物の塩素誘導体では電子密度が低くピークの識別ができなかった.臭素誘導体で構造決定できた. Cl N H N N N O O + 室温で安定な 配座異性体が 存在する O Cl Br Br Br diastereomeric atropisomer 導入すべき重原子を決定する目安は次式を満足すればよい. Σ Z2heavy Σ 1 Z2light 分母 重原子以外の非水素原子についての原子番号2の合計値 分子 重原子についての合計値 上記化合物(C27H25N2OBr)の例では,1225 /1156である. 重原子の寄与が大きすぎると最終的な結果において,結合距離の精度が悪くなる. 11 パ タ ー ソ ン 関 数 ( Patte rso n fu n ctio n ) Fo2を係数とするフーリエ合成を行う. 結晶に於ける原子の等 等 価 位 置 から,重原子間のベクトルが予想できる. もっとも簡単なP(-)1は,結晶の非対称単位に,原点対称的に分子が2個存在する.その位置は,x,y,z と-x,-y,-zである.したがって,そのベクトル(u,v,w)はパターソン関数計算において2x,2y,2zに現れ るはずである.P(-)1では,重原子の位置は簡単に求めることができるので,対称点に原点を置いてフー リエ合成をやれば,重原子以外の部分構造が現れる. P(-)1 triclinic x, -x, y, -y, P21/c monoclinic x, y, z -x, -y, -z -x, 1/2+y, 1/2-z x, 1/2-y, 1/2+z z -z heavy atom u,v,w = 2x, 2y, 2z -2x, 1/2, 1/2-2z 2x, -1/2, 2z-1/2 実際の解析例 上記のインドール系化合物は,空間群はPbca(斜方晶系,対称中心があり,非対称単位に8個の分子が存 在する.P212 12 1 に対称中心を付加したもの)であり,パターソン関数ではハーカー面にBrのベクトルが ピークとして現れる. パターソン合成プログラムを用いて,Brの位置を求め,その座標を入力するとBrだけの分子構造とみな した構造因子が全反射について計算される.この場合,対称中心があるので,各反射に位相として0あるい はπがセットされる. そのBrの位相情報だけで計算されたFoを使ってフーリエ合成すると,Br以外の分子 の部分構造が現れる. かなりの部分が間違った値をもつため,フーリエ合成しても全構造が一度に現れる ことはほとんどなく,Fo-Fcも一致しない.実際には存在しない余計なピークが沢山現れる. h k 0 1 0 1 0 1 etc l 1 2 3 Fo 315.1 67.2 12.8 phase ? ? ? Fc 290.5 52.3 18.2 この化合物の場合,ピーク間距離を測り,ベンゼン環らしき部分構造を探し出した.Brの座標にベンゼンの 座標を加えてさらにフーリエ合成すると残りの座標が出現した. すべての原子座標が求められるまで,フーリエ合成ーピークサーチを繰り返した.次に得られた粗モデルを 最小二乗法で構造精密化する.最終的にはFoとFcがほとんど一致する.信頼度因子,Rファクターとは,不 一致の割合を%で表したものである. 話 昔 話 電子密度は三次元空間内で数値で表現されている.即ち三次元の配列変数である.一昔前は,結晶 を50枚程度にスライスしてプリンタに出力して等高線を書き,用紙を重ねて原子位置を求めたものである (一種の投影図). 12 1 1 1 1 2 1 1 0 0 1/2 1 2 2 3 5 2 2 1 1 2 7 8 9 8 2 1 2 1 3 2 7 8 12 9 15 10 11 7 3 2 2 1 1 2 5 8 8 4 2 1 1 1 2 3 2 2 1 1 0 1 1 2 1 1 1 0 直接法 ( D ire ct m th o d ) 強度分布と位相との間にはある種の相関が存在することに着目. 記号加算法と多重解法がある. 構造因子Fは,Bragg角が大きくなると急激に小さくなるので,そのまま直接法のデータに使用できない. 原子の電子雲を原子核の位置にすべて集めた点原子近似の規 子 規 格 化 構 造 因 子Eを使う. Wilson統計の温度因子,スケール因子を用いてEに変換する. E算出の際は,弱い反射(精密化には利用 しない反射)も入れて計算する. Eデータの分布状態から結晶構造の対称性を判断する. h 4 8 10 3 3 14 etc k l 0 0 0 -8 4-12 1 1 1 0 0 -6 E 4.119 3.777 2.790 2.756 2.658 2.575 σF Fo ← ← ← ← ← ← 4 8 10 3 3 14 0 0 0 -8 4-12 1 1 1 0 0 -6 381.33 187.29 48.52 186.32 183.22 83.61 0.40 0.67 1.04 0.41 0.39 0.86 225995 22074 913 53040 56761 3135 96 43 24 59 71 30 88 291 35 64 79 78 実際の解析で使用される規格化構造因子Eの数 構造決定にはEの値が1.5以上の数百個で十分(原子数×5反射程度). 対称性を有する構造(ラセミ体)の場合,位相は0かπである. 空間群が対称性を持つ場合,Eの数が300個なら, 2 の 3 0 0 乗 の 構 造 モ デ ル ( フ ー リ エ 合 成 図 ) の 中 に 正 解 が あ る .理論的には可能だが、膨大な演算時 間が必要. 直接法で用いられる重要な式 N 規格化構造因子 E2hkl = | Fhkl |2 / εΣ fi 2 i 位相関係 確率 S(Fhkl) ~ S(Fh'k'l')·S(Fh-h',k-k',l-l') P=1/2+1/2 tanh { σ3/σ23/2 |Ehkl Eh' k' l' Eh-h', k-k', l-l'| } 位相関係式と関係が成立する確率を見積もる.「多分位相はπであるだろう」のような曖昧さが確率として 考慮される. 13 次に,収束表(次頁を参照)を作る.2個のEから第3のEが作り出されるような関係を見つけて記録され る.この操作を続けていくと,数百個のEはいくつかのグループに分けられる. 次に,各グループに位相初期値を与えてフーリエ合成する. 対称性を有する構造(ラセミ体)の場合,位相は0かπである. A B C D E 0 0 0 0 0 or or or or or π を与える.Aグループは関連付け可能.以下同じ. π π π π 2の5乗の32個の解が存在する. 実例 KNOWN PHASES 90%の確率で位相既知と見なしうる反射 CODE 10 H 6 K 0 L PHI 100*WT 2 180 90 CODE H K L PHI 100*WT CODE H K L PHI 100*WT L PHI MK ORIGIN FIXING REFLEXIONS 原点を決めるための反射 CODE 4 H 3 K 1 L PHI MK 1 360 13 CODE 5 H 3 K 1 L PHI MK 0 360 13 CODE H K OTHER REFLEXIONS IN STARTING SET 任意の反射 CODE H K L MK 1 4 0 0 13 16 1 1 3 13 CODE H K L MK 2 8 0 -8 13 31 11 1 -8 13 CODE H K L MK 3 10 4 -12 13 CODE H K L MK 13 4 2 -3 13 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ MULTAN PART 3 VERSION NOVEMBER 1977 TANGENT FORMULA PHASE DETERMINATION isobenzothiophene 0FOURIER OUTPUT REQUESTED 0NUMBER OF PHASE SETS ALREADY DEVELOPED IS 0 FIGURES OF MERIT UNDETERMINED STARTING SET ABS PSIZERO RESID PHASES 1 2 1 0.9917 2.506 45.73 1 360 360 2 1.4001 2.389 33.08 0 180 360 3 0.9951 2.094 46.69 0 360 180 4 0.8695 2.204 46.01 0 180 180 5 0.9499 2.398 42.95 1 360 360 6 1.0853 2.058 41.38 0 180 360 7 1.1450 1.635 40.63 0 360 180 8 0.8992 1.858 47.77 0 180 180 9 1.0219 2.645 44.50 0 360 360 10 1.4000 2.395 33.08 0 180 360 11 0.9812 2.318 46.73 0 360 180 12 0.8437 2.010 46.98 1 180 180 以下省略 SET 3 360 360 360 360 180 180 180 180 360 360 360 360 PHASES GENERATED BY 4 5 10 13 16 360 360 180 360 360 360 360 180 360 360 360 360 180 360 360 360 360 180 360 360 360 360 180 360 360 360 360 180 360 360 360 360 180 360 360 360 360 180 360 360 360 360 180 180 360 360 360 180 180 360 360 360 180 180 360 360 360 180 180 360 本例では位相が多分90%の確率でπである反射1個が見いだせた. FIGURES OF MERITの値は構造が見いだせた否かの目安になる指数である. 一般に ABSは大きく,RESIDが小さいものを選ぶ. 14 PROGRAMME 31 360 360 360 360 360 360 360 360 360 360 360 360 解析に困難を極めた例 解析に困難を極めた例(1024個の位相モデルから正解を得た) A=6.197 B=20.990 C=9.505 ALPHA=134.32 BETA=91.72 GAMMA=90.35 THE STRUCTURE IS CENTROSYMMETRIC 1 GENERAL EQUIVALENT P(-)1 収束表の最後尾部分 366 203 247 227 211 71 172 144 81 64 7 14 100 59 24 1 348 103 46 82 52 31 1 2 1 -3 8-15 3 -4 6-14 7-12 1 -3 3-10 4 -8 2 2 2 5 4 7 3 -4 2 -9 2 -4 4-15 2-11 1 5 0 5 5 -6 4 -6 3 -6 0 0 6 -2 6 7 -2 8 9 -3 -1 -4 -4 -1 0 1 1 -3 1 4 8 -2 4.26 4.68 4.19 4.42 3.86 2.51 3.22 4.97 3.17 6.54 3.97 4.34 6.72 6.16 6.07 3.98 4.87 4.99 2.93 4.59 2.72 2.76 45 46 10 -46 2 227 71 -81 -10 71 159 2 -10 159 2 -43 2 -45 -7 14 13 -27 10 13 9 -41 1 -41 -31 9 9-103 -4 25 4 -52 -82 4 25 -41 25 -31 41 27 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1.99 2.77 2.28 1.89 2.55 3.08 2.29 3.42 3.74 4.06 4.55 4.89 3.21 4.19 4.08 4.56 2.78 3.36 3.50 2.91 3.29 3.33 25 -211 64-103 45 71 45 159 2 172 0 0 0 0 0 1.61 1.92 2.05 1.80 2.48 41 -86 -10 81 0 0 2.13 2.70 27 0 3.63 24 27 24 -46 -348 1 0 0 0 3.02 3.12 3.14 41 -46 27 46 0 0 2.04 2.77 27 0 2.83 10 52 -45 247 43 43 159 -25 211 172 0 0 0 0 1.59 1.80 1.68 1.78 103 59 0 2.23 31-103 0 1.85 43 -203 0 1.53 -144 211 0 1.41 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ cpcot * * * * * * CONVERGENCE RESULTS * * * * * * THE NUMBER OF ORIGIN DEFINING REFLEXIONS IS THE SEMINVARIANT VECTOR IS THE SEMINVARIANT MODULUS IS ( H ( 2 K 2 3 L 2 ) ) ORIGIN FIXING REFLEXIONS CODE 4 H K 5 -1 L PHI MK 5 360 13 CODE 10 H 1 K 2 L PHI MK 1 360 13 CODE 27 H 1 K 0 L PHI MK -4 360 13 OTHER REFLEXIONS IN STARTING SET CODE 2 41 92 MULTAN H K L 5 -11 8 2 -6 2 4 -1 -3 PART 3 MK 13 13 13 CODE 9 43 159 H K L 5 -10 -2 2 -1 0 2 -1 -1 MK 13 13 13 CODE 13 45 H K L MK 3 5 -5 13 1 -3 -1 13 TANGENT FORMULA PHASE DETERMINATION VERSION CODE 25 86 H K 7 -12 1 -3 NOVEMBER L MK 6 13 4 13 1977 正 解 は 1 0 2 4 候 補 の 中 , 4 4 6 番 目 の セ ッ ト で あ った. 0FOURIER OUTPUT REQUESTED 0NUMBER OF PHASE SETS ALREADY DEVELOPED IS SET 446 0 FIGURES OF MERIT UNDETERMINED STARTING SET PHASES GENERATED BY PROGRAMME ABS PSIZERO RESID PHASES 2 4 9 10 13 25 27 41 43 45 86 92 159 1.1302 0.934 20.97 0 180 360 360 360 180 180 360 180 180 360 180 180 360 15 ラインプリンタ出力 投影図 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ cpcot SET NO . 446 PLO T O F PEAKS O N LEAST SQ UARES PLANE + + 27 67 90 + + 62 33 + + + 20 59 85 + 31 + + 50 79 + 83 + 43 + + + 102 16 5 + + + + + + + + + SCALE = 2.50 CMS/A 68 + + 34 35 81 76 23 80 58 19 10 16 FRAGMENT 1 FO RTRAN -G K Sで SU N 4 /2 W S上 に 作 図 ピーク数 102個 MULTANで部分構造を得,その位相モデル(部分構造)を使ってフーリエ合成した結果,全分子構造が現れ た.非対称単位に2個の分子が充填した例である.本来,点対称操作によって関連づけられるべきものが, 配向の乱れで2分子が対になりパッキングされたものと考えられる. 17 多重解法と呼ばれる.MULTAN MULTAN がもっとも有名である. 4000 refln organic compounds (max 100 atoms) 200-300 refln multiple structure solution A 60 C 50 B 30 D 120 E 40 A 60 C 50 B 30 D 120 E 40 天然物のように光学活性体は位相は任意の値をとるので,解析しにくいが,45度間隔の値を使用して位相 計算を行う. **************************** * Flow diagram of MULTAN78 * **************************** ******** standard data file (15)---><-- N O R M A L ---<---input file or card reader (5) (binary) ******** i NORMAL requires one binary i scratch file (8) i transfer file (9) v (formatted) i i i MULTAN requires one binary ******** scratch file (11) M U L T A N ---<---input file or card reader (5) ******** i i i binary phases file (10) v i i i EXFFT requires one binary ******* scratch file (8) E X F F T ----<---input file or card reader (5) ******* i i i fourier map file (13) v (binary) i i i ******** S E A R C H ---<---input file or card reader (5) ******** 18 i i peak coordinate file (14) v (formatted) i The complete system of programmes is made up of the following: NORMAL computes normalised structure amplitudes from F(obs) values using > either a K-curve, a Wilson plot or a Debye curve. Outputs intensity statistics as a check on the scaling and an aid to space group determination. Prepares a reflexion input file for MULTAN or can be used to prepare files for Karle recycling or for weighted fourier calculations. K-curve, Wilson plot, a Debye curveを用いてF(obs)から規格化構造因子 (E) の計算する.強度の分布状 態, 空間群決定の資料(対称性の有無)になる.平均温度因子に依存する. MULTAN consists of three logical sections: a) SIGMA2 finds sets of three reflexions whose indices are related as h, h' and h-h'. h, h', h-h'関係の反射を求める. b) CONVERGE finds the starting reflexions for the tangent formula by application of the SIGMA1 formula and by assigning phase values to reflexions which define the origin and enantiomorph. A small number of other reflexions may be chosen which give a 'good start' to the tangent formula. As the values of these phases are initially unknown, a number of different phase values are assigned by 'magic integers', thus producing a multiple starting point and hence the name of the programme. 収束表を作る. SIGMA1式を用いてTangent 式のための原点になる反射を求める.位相値の決定. c) FASTAN determines phases for all reflexions from each starting set produced by CONVERGE using the tangent formula. Figures of merit for each set of phases are also computed. FASTANは用いた全反射の位相を決定する.任意の反射数に応じた多重解となる.セット毎の「もっともらし さ」の判定になる指標が出力される. EXFFT computes an E-map from a set of normalised structure factors. This programme uses the Cooley-Tukey fourier transform algorithm and is adapted from a crystallographic programme written by L. F. Ten Eyck. フーリエ合成を行い,電子密度図 E-mapを計算する. SEARCH finds the coordinates of the highest peaks in the E-map and, for a molecular structure, looks for groups of peaks which could form a molecule or a molecular fragment consisting of at least five atoms. Computes bond lengths and angles for each molecular fragment and outputs on the lineprinter a properly scaled view of the peaks plotted on the least squares plane. Other orthogonal projections can be output if required. Each fragment is interpreted in terms of bonded atoms by applying simple stereochemical constraints and alternative interpretations are output if found. The interpreted fragments are compared with those input by the user and corresponding atoms are identified. This part of the programme is a rewritten version of the original by Michel Koch (Acta Cryst., 1974, B30, 67). 電子密度図 E-mapから原子位置を算出する. 19 同形置換法(生体高分子X線解析実習を参照) 蛋白質や包接体の構造解析に利用される.蛋白質の結晶を重い金属などが入った溶液に漬けると蛋白質の 表面に金属原子がくっつき,回折強度はその重原子だけのために変わるので,金属原子をつけてない結晶と の回折強度差から重原子の位置が判るというものである. 多波長異常分散法 (生体高分子X線解析実習を参照) 蛋白質を構成するアミノ酸の1つであるメチオニンの変わりにセレノメチオニンで置換した蛋白質を合成 する。これにより,最初から重原子が入った蛋白質の結晶を得ることができる.次に,セレン原子の回折能 が異なる波長を複数選んででデータを収集することにより,唯一の結晶の回折データで位相を決定すること が可能となった.この方法は多波長異常分散法(Multiwavelength Anomalous Diffraction (MAD)法)と呼ば れ,現在多くの蛋白質が解析されている.さまざまな波長のX線を得るためには,放射光施設が不可欠であ る.日本には高エネルギー加速器研究機構(KEK)のPhoton Factory(つくば)と、SPring-8(播磨)の2 つの大きな放射光設備があり,蛋白質構造解析用のビームラインがある. その他の位相決定法 ベクトル法などがある. 最小二乗法による構造精密 ( re fin e m e n t) 最小二乗法による構造精密化 直接法により決定した原子座標は限られた小数の反射データをもとに決められたため,実際の位置とはか なりずれている.この位置を修正するために数千個の反射データを使って構造を精密化する. コンピュー タの性能に応じて,対角近似あるいはフルマトリックスの最小二乗法による精密化を行う. 一個の原子の三次元的位置を決めるためには, 等方性温度因子の場合は x, y, z, Biso(4個のパラメータ) 球 球形近似 異方性温度因子の場合は x, y, z, B11, B22, B33, B12, B23, B13(9個 のパラメータ) 楕 楕円形近似 である. 水素原子は一般に等方性で精密化する.非水素原子 は最終的には 等方性温度因子を用いる. 位相決定(直接法,重原子法) ↓ 粗位相モデル(非水素原子) ↓ 等方性温度因子で精密化(収束するまで繰り返す) ↓ 非等方性温度因子で精密化(収束するまで繰り返す) ↓ 差フーリエ合成(水素原子の位置を探す),水素原子が見つからない場合は,もっとも安定な配座位置(計 算位置)に置く.次の段階で温度因子が拡散する場合は位置を修正する. ↓ 水素は等方性温度因子,他は非等方性温度因子で精密化(収束するまで繰り返す) ↓ 最終結果(差フーリエ合成を行い,結晶水などの余分の原子が存在しないことを確認する) 20 精密化が正常に進むと,全反射においてFoとFcの差が小さくなる. 最終段階において,sin θ やFoの値を複数の範囲に分け,各レンジに含まれる反射データの∆ F平均値が計算 される.sin θ の特定の領域や大きな反射領域に大きな差が系統的に見られる場合は,それなりのチェック が必要である. 0.0 9.5 19.0 38.1 76.2 FOBS 9.5 - 19.0 - 38.1 - 76.2 - 304.7 REF 2051 1043 631 217 46 (FO) 5.033 13.653 26.114 50.811 101.672 (W*DF**2) 2.48911 3.44180 5.18229 13.65846 250.45825 0.000 0.266 0.377 0.462 0.533 SINL - 0.266 - 0.377 - 0.462 - 0.533 - 0.596 REF 684 1103 930 708 563 (FO) 31.947 14.886 11.290 7.600 4.602 (W*DF**2) 11.71270 12.40401 2.60498 1.64602 2.07609 各反射には測定の際,σFが見積もられているので,最小二乗計算においてweightを掛ける方法が採用さ れている. 精密化の判定は残余因子あるいは信頼度因子とよばれる値を使用する. 信頼度因子が低ければよいというものではないので,最終段階では充分な注意が必要である. 残余因子 resisual index 信頼度因子 reliability index R= Σ |∆F| Σ |Fo| = Σ |Fo-Fc| Σ |Fo| Rrandom・centric= 0.83 Rrandom・acentric= 0.59 21 原子種の決定 ジオキサンのような分子の場合,直接法で6個のピークが見いだせたとしても,どれが酸素か判らない.そ のような場合は,試行錯誤で決めるしか方法はない.あるピークを酸素と指定すると,その電子密度は酸素 原子の散乱因子表を参照して計算されるので,正解なら信頼度因子が下がるはずである.下がらなければ別 のピークを酸素とみなして精密化を試みる. O C? or O? O 水素位置の決定 水素原子は電子密度が低いため,非水素原子と同時にフーリエ図上に見いだすことは困難である.非水素原 子のみで,十分に精密化した後,Fo-Fcの差フーリエ合成(D合成)を行う. メチル基の水素原子は回転している可能性があるため,電子密度が分散し見つけることができない場合が多 い.そのような場合は立体化学的にもっとも安定な配座位置に水素を置き,精密化する.実際の解析では計 算位置に置くように指令すれば非水素原子から1.1Å程度の距離に,結合原子の混成状態に応じて水素原子 を置いてくれる.水素は一般に等方性温度因子で精密化する.温度因子が拡散するようであれば,置いた位 置が適当ではないことを意味している.場合によっては,二面体角において60度毎に6個の水素を置くと うまくいくことがある.このような場合は,原子の多重度を0.5個にする必要がある.分子構造の基本骨格 決定が目的の場合は,水素位置を厳密に決定する必要がないので,水素原子の温度因子は結合している非水 素原子の温度因子+1.0位に設定する方法が採用されている. H H H H C C H H H H H H C H 水素結合の有無については,相互作用している非水素原子間距離をもとに判断する.アミンとアルコールの 水素結合などの場合は,> N-H····O<, N····H-O-の可能性があるので,残基を含めた周辺構造の立体化学を考 慮しながら決定する. 結合標準値 有機化合物の標準的な結合距離については,CCDCデータをもとに統計処理した結果が公表されている. 例 F. H. Allen等,J. Chem. Soc., PERKIN Trans II, 1987, S1-S19. 22 プログラムの流れから見た単結晶X線解析(UN ICS3) UNICSは日本結晶学会が中心になり構築した解析システムである.UNICS3は理研の櫻井氏等により纏めら れ,全国の大学の汎用計算機上で利用された.リガク電気製の四軸回折計を利用することを前提とした反射 データ処理プログラム(ソースコードはFORTRAN77) も作られている.最近まで,九州大学情報基盤セン ターや熊大総情センターで利用されていたが,計算機システムが替わったため,共用ライブラリから外され ている.現在,熊大薬学部の大学院サーバ上に移植し,利用可能にしている.利用形態は,汎用計算機の ジョブ制御方式とは異なる形式を採用した.リダイレクトなどのUNIXの基本的知識があれば利用できる. 単結晶作成 → 比重測定 → 球形または円柱状に整形 → 結晶取付 → センタリング PKS ↓ VMIN ↓ AID ↓ PRF ↓ DLUNAT ↓ VAUR ↓ DCLT 回折反射の自動ピークサーチ 最小ベクトル法による単位格子組立 自動指数付け ピーク角度の精密化 格子変換結晶系決定 結晶基本データ取付方位 反射データの自動収集 全自動解析について 最近はAUTOでデータ収集を行うことが多くなった.便利だが無駄も多いようである.NMRで構造が確定 できないので,X線解析をやる程度なら,反射数はそれほど多く用いる必要はない.そのような目的で行っ た解析データの場合,アメリカ化学会の雑誌では,原則として追補資料に納められる. 一般に,最終段階のパラメータ数×5程度で充分である.非水素原子数が30なら,30×9(x,y, z,anisotropic temperature factorの計9個)×5=1350であるから,不観測反射(Funobserved)を考え て2000反射程度でよい. 結晶学会誌などに投稿する場合は,投稿規定にそった測定が必要である. 23 直接法による位相決定,構造精密化 A S80 規格化構造因子計算 Fobs → E ↓ M ULT80 多重解直接法による位相決定 ↓ EMAP80 フーリエ合成 ↓ FPS80 ピークサーチ ↓ PART80 部分構造から全構造まで (フーリエ合成の繰り返し) ↓ BDL S80 最小二乗法による精密化 ↓ SF R80 フーリエ合成 ↓ FPS80 ピークサーチ ↓ HY CO80 水素位置計算 ↓ DA80 距離,結合角(分子内,分子間) ↓ M V80 分子の剛体振動 ↓ BP80 最適平面 ORTEP図 ↓ FOUT80 結果出力(ORTEP作図,論文形式出力) 1)部分構造しか得られない場合は,フーリエ合成,ピークサーチをくり返すリサイクル法で全原子を見い 出す. 2)コンピュータメモリーの制約がなくなった昨今は,対角近似BDLSの代わりに,フルマトリックス最小 二乗法を使うことが多くなった. 3)最終的にはX-Yプロッタ用に書かれたORTEPプログラムを用いて出力する.パソコン版がフリーウエア として入手できる. 24 資料 25 電子密度のコンピュータ内表現(Fourier合成計算結果) 結晶を100*100*50のメッシュに分割し,各点の電子密度をファイル出力する.その数値情報をもとに, 電子密度の最大値をサーチして出力する.下図に,50枚にスライスした7枚目の断面図を紹介した.現在 の解析では,意識して出力しない限り,お目にかかることはない.このような数値群から水素原子を見つけ だすことはできない.Fo-Fcの差フーリエ合成を行い,非水素原子の電子密度を消去する手法が採用されて いる. cpcot sfr test Y= X SFR80 7/ 50 Z= XMIN= 0/ 50 1 2 3 4 ZMIN= 0/ 50 5 6 7 9 10 11 12 17 18 19 20 21 0 -20 -21 -17 -11 -7 -3 0 6 12 17 25 46 20 30 37 25 1 -18 -16 -11 -6 -2 1 4 29 58 79 111 121 100 60 28 C52 97 132 142 116 67 24 5 10 19 16 0 -16 -21 -1 2 -18 -11 -6 -3 -3 -4 -5 -6 -4 2 18 45 78 105 110 88 49 -7 -8 -1 1 -4 -12 -17 -1 3 -19 -12 -8 -8 -12 -16 -18 -18 -16 -10 0 16 35 47 49 38 19 4 -17 -13 -12 -16 -24 -29 -30 -26 -20 -17 -13 -9 -4 -1 -1 -1 -2 -3 -6 -11 -16 -18 -18 -19 -21 -2 -8 -9 -12 -20 -28 -33 -31 -23 -16 -15 -18 -21 -23 -22 -19 -16 -10 -3 -1 -4 -12 -19 -23 -24 -23 -2 -7 -3 -3 5 0 0 8 8 14 13 14 15 16 23 24 2 0 -20 -27 -2 1 -11 -15 -14 -11 -11 -14 -18 -2 6 3 7 12 7 -2 -11 -16 -16 -13 -10 -10 -13 -18 -21 -19 -15 -12 -13 -15 -15 -11 8 14 6 -5 -12 -14 -11 -10 -12 -15 -18 -21 -23 -23 -20 -17 -17 -18 -19 -18 -15 -14 -15 -17 -16 -11 - 9 10 -1 -14 -18 -14 -11 -12 -17 -21 -21 -22 -24 -26 -26 -21 -17 -15 -16 -18 -18 -17 -15 -14 -11 10 11 0 -7 -16 -23 -26 -23 -16 -11 -12 -17 -22 -22 -19 -16 -14 -12 12 22 2 -11 -21 -20 -11 -7 -11 -20 -24 -21 -17 -16 -19 -19 -15 -5 -16 -22 -15 -2 2 -4 -16 -22 -17 -9 -13 -16 -16 -14 -12 -8 -4 - 0 1 0 -1 -1 -2 -5 -9 -11 -12 -12 -11 -8 -4 - 26 18 7 0 -3 -5 -5 -7 -8 -10 -10 -9 -6 - 0 11 29 42 40 26 9 0 -3 -3 -2 -4 -5 -7 -9 -10 -10 -1 2 10 22 37 49 50 38 22 9 4 3 2 0 -2 -3 -4 -7 -12 -15 -1 0 16 38 55 58 44 25 12 9 12 11 5 -1 -3 0 0 -5 -13 -19 -2 9 16 34 48 44 25 6 0 4 9 6 -2 -6 -3 1 1 -5 -15 -21 -2 11 1 -9 -12 -10 -10 -13 -16 -11 -3 1 0 -9 -17 -20 -1 8 -17 -22 -18 -15 -16 -19 -24 -28 -28 -21 -10 -3 -4 4 -8 -15 -8 13 -16 -16 -15 -9 0 6 14 -13 -14 -15 -15 -11 -5 15 -3 -9 -12 -12 -11 -9 0 10 15 12 -7 23 4 10 9 -1 -7 - -9 9 -12 -17 -17 -8 16 -8 -10 -16 -21 -21 -17 -1 -6 12 7 -8 -17 -24 -25 -21 -1 1 17 17 18 18 13 36 76 102 92 52 8 21 48 64 56 31 12 9 13 19 12 11 33 71 96 89 52 10 -16 -24 -19 -12 -9 -15 -17 -16 -1 -8 -8 -10 -12 -9 -4 -1 -5 -14 -21 -20 -15 -11 -1 2 13 33 46 44 32 23 22 21 17 13 15 26 47 32 11 -9 -25 -28 -20 -11 21 -4 -6 -7 -8 -9 -5 12 46 78 87 70 47 45 73 112 130 114 70 21 -13 -28 -26 -16 -7 -6 - 22 -9 -10 -11 -14 -17 -9 20 69 113 125 100 68 86 23 -13 -23 -18 -11 -7 -7 - 74 20 -9 -15 -11 -10 -11 -10 - 42 13 -3 -8 -10 -12 -14 -13 - 3 -2 -8 -12 -15 -14 -12 - 26 -7 14 66 137 194 203 161 90 28 -3 -8 -4 0 0 2 6 9 8 O8 -3 16 63 126 178 189 153 89 30 -5 -16 -16 -18 -26 -33 -33 -26 -14 27 -3 20 3 50 9 28 42 52 65 85 105 106 85 61 65 103 155 177 149 O29 61 94 138 156 130 4 43 94 134 144 124 91 64 47 36 29 33 23 -12 -6 24 -12 25 42 9 36 71 102 116 111 93 68 43 28 -10 -4 4 13 23 40 67 97 114 104 29 -20 -15 -12 -14 -12 19 50 72 83 72 -6 1 -11 -20 -26 -29 -27 -21 -13 -5 -10 -14 -13 -10 -7 - -9 -9 -10 -1 - -8 -4 -7 -3 -2 0 1 2 73 36 10 0 -2 5 45 95 132 135 106 C46 -24 -18 -11 -6 -1 13 41 78 108 115 96 62 28 13 11 9 2 -5 -8 -4 1 4 4 3 3 30 62 29 11 5 5 2 -3 -6 -3 2 5 4 0 0 31 -19 -14 -3 53 36 16 0 -8 -9 -9 -10 -10 -7 -3 0 -2 -5 -4 32 -11 -7 5 9 21 30 38 47 56 59 4 0 33 -5 -5 -4 -1 1 -7 -17 -21 -19 -13 -7 -6 -11 -17 -23 -23 -20 -17 -17 -19 -20 -16 -12 -1 34 -6 -5 -9 -13 -15 -14 -13 -13 -16 -18 -18 -13 -8 -4 35 0 11 22 27 23 14 3 5 7 5 -5 -11 -14 -13 -7 -1 -11 -6 -7 -13 -17 -18 -14 -9 -6 -4 -5 -7 -7 -14 -19 -20 -20 -17 -14 -11 -11 -11 -11 -6 -12 -18 -19 -16 -13 -15 -21 -23 -18 -11 - -8 -8 -10 -12 -14 -13 26 -9 - -8 -6 -9 -16 -20 -17 -11 - 単結晶X線解析結果の整理 X線解析結果をどのように利用するかは,研究者によって異なるのは当然である.単なる骨格解明から分子 認識や結合長解明等のための精密解析などきわめて幅の広い目的のため解析が行われている.アメリカ化学 会誌などでは,X線解析結果を示さないと理解しにくいような場合を除き,本文にORTEP図が掲載されるこ とは少なくなった.追補資料 (supporting information) としてwebでダウンロードできるようになってい る. しかし,NMR法による構造解析結果の確証に使用するからといっていい加減なものであることは許されな い.ここでは,分子設計学研究室で行っている分子間相互作用解明のための研究に必要とする解析結果の解 釈とデータ整理に焦点をしぼり,必要事項を説明する. 以下は,R因子が十分に下がり,最終的な差フーリエ合成で結晶水や取り込み溶媒などに由来する原子の 存在がないことを確認したことを前提にしている. 分子内構造情報 1)分子内の距離,角度を調べる. 当研究室の場合,シクロペンタジエノン付加体では高歪のカルボニルが存在するので,> C=Oの角度を チェックすること.大きな立体反発による歪みが存在する場合,異常長が存在することがあるので,結合距 離をチェックすること. これまでに,かご型化合物において,通常のC-C単結合が1.54Åであるのに対して,1.64Åに伸長してい る事実を発見している.また,pyrazolone系のON-NOにおいても同様な異常長を見いだしている. O O Ph Me O O O Ph N O O O Me N O 2)二面対角については,H-C-C-Hの場合,NMRにおけるカップリング定数との関連を調べること. O Ph H R H H 3)一般に受け入れられている距離,角度の標準値から大きくずれている場合,その原因について調べる. 分子間の力による変形も考えられるので,分子間相互作用のチェックも同時に行う. 4)X-Hなどの水素原子距離は,中性子回折なら正確であるが,X線解析では不確実であるので,X-H-O= Cなどの水素結合距離をもとめる場合,X--Oの距離を必ず記載すること(0.970(15)のように記載す る). 5)水素は解析の最終段階で化学的知識に基づいて位置決めすることが多いため,その配向などには人為的 27 である可能性があるので,十分に注意すること.最小二乗法で向きが変わった場合は,変化した方を考慮す る.その際.温度因子が大きく拡散していないことをチェックすること. 分子間構造情報 1)結晶充填(パッキング)図を書き,分子間相互作用をチェックする.分子間距離をリストに打ち出すと 同時に,パッキング座標を出力し,Chem3Dなどの分子描画プログラムで十分にチェックすること.その 際,最低限度の繰り返し構造では見落としがあるので,X,y,z軸にそって3並進構造程度を含む分子を描 き,入念に構造チェックを行うこと. 複数の分子を同一画面に表示すると,重なって見にくくなるので,1分子を選び,色を変えるなどの工夫 をする. Chem3Dでは分子の部分構造を選び,[ アップル+F] を実行すると,それに連結した一分子の構造が選択で きる.選択後,colorizeで表現色を変える.Windowsマシンでも同様の処理ができる. 2)ワンデルワールス(VDW)半径を考慮しながら,相互作用する原子のVDW半径の合計値(約3.6Å)以 内に存在する原子をすべて調べ上げる.C-H--H-Cの場合,C--C間の距離で判断する. 3)芳香環の平面性の計算 ORTEP図でみると,芳香環は一見平面に見えるが,実際はかなり歪んでいる場合が多い.当研究室の phencyclone環化付加体におけるphenanthrene環はその好例である. 以下,6員環を例に説明する. 1∼6原子が厳密な意味で,同一平面上に存在しない場合,これらの原子群の構成する環平面は最小二乗 平面(最適平面,best plane)によって表現する.すなわち,原子1∼6から「仮想的平面 plane」に垂線を 下ろし,その距離の二乗の和が最小になるような平面を求めるわけである. 一般的な計算結果 計算結果として,最適平面方程式,最適平面からの各構成原子のズレが出力される.平面を構成する全部 の原子が一つの平面に存在する場合はズレは0である.それとは別に面を指定した原子以外の分子構成原子 から最適平面までの距離が出力される.面を複数指定した場合は面のなす角が出力される. 6 2 1 plane 4 5 1 r6 3 r5 r4 r1 6 2 4 3 5 r2 Σ rn2 minimum EQUATION OF THE PLANE: Q1*XA + Q2*YB + Q3*ZC = D (XA, YB, ZC IN A ALONG A, B, C) Q(1) Q(2) Q(3) D -0.07102 -0.95592 -0.28492 0.64232 DISTANCE TO THE PLANE FROM THE ATOMS FORMING THE PLANE N ATOM D(A) SIGD(A) SXYZ(A) 1 C1 0.00625 6 C6 0.04347 7 C7 -0.04959 8 C8 0.00464 9 C9 0.04655 14 C14 -0.05131 28 r3 Phencyclo ne環化付加体において求める平面計算例 A平面の原子群について最小二乗平面を求める B平面の原子群について最小二乗平面を求める C平面の原子群について最小二乗平面を求める 次に A-B-C平面を規定する原子群について最小二乗平面を求める. B A b a A C B C c d A,B.Cについてそれぞれの面のなす角を算出する. A,B平面のなす角は二面体角a-b-c-dで見当がつくが,正確ではない. 平面Aと平面Bの最小二乗平面間の角度を算出する. クラスレートの場合の平面計算例 下記の相互作用を調べるには,最小二乗平面を求めて,その面との距離,角度などを調べる edge to face π - π σ- π これらは分子内,分子間でも認められる相互作用である.必ず,NMRとの関連をチェックする. H H H H π-π σ-π egde to face 29 ただ距離や角度を測ればよいと言うわけではない.当然のことながら.類似の構造(文献参照)と比較する 必要がある.また,どの程度の誤差が含まれるのかデータに付記する. C -H --X 弱 結 合 に つ い て O-H--O= Cなどの典型的水素結合は7kcal/mol程度の結合エネルギーを持っているのに対し,C-H--O= C では1kcal/mol程度である.したがって,水素結合の範疇に入れるべきではないという研究者もいるが,最 近の研究では弱い水素結合である根拠が出そろったようである.分子内および分子間構造で,かならず チェックすること. D iso rd e rに つ い て 包接結晶構造の場合,比較的に分子間結合力が弱いため,disorderが存在する場合がある.1分子のゲス トが2種類の配座でホストに取り込まれた時などである.そのような場合は,2種類の分子(部分)座標を 用いて,原子の多重度を考慮して解析する必要がある.常に0.5, 0.5であるとは限らないので,数種類の組 合せ(0.4:0.6, 0.6:0.4等)を使って精密化してRファクターを比較すること. 分子の一部が別の配座をとり,それが純正のものと混じる形で結晶化することもある. O RTEP図について 最終構造は,結晶構造専用に開発されたORTEPプログラムを用いて作図する.単分子,結晶パッキング の双方において,非常に細かな設定が可能である.もともとX-Yプロッタ用に書かれたプログラムであるの で,円の周囲を太線で書きたいときは,少しずらして再トレースするなどの工夫が必要である.結合を塗り つぶすのは,多数の線を描くことにより実現している.最近版では,プロッタ出力イメージをCRTやPSプリ ンタに出力できるようになった.パソコン版がフリーウエア (ORTEP3)として入手できる. 化合物によっては,温度因子をそのまま表示させると大きな楕円や球になり結合が見にくいので,一般に 50%probabilityで描く.30%で表示したい場合は,下記の文章を付記する.Displacement ellipsoids are drawn at the 30% probability level. 分子末端に付いているMeOCO-のメチル基などの場合である. 有効数字について コンピュータ出力結果に惑わされないように注意すること.基礎データが良ければ解析結果も良好であ る.データにもよるが,1.2345(15)なら1.235(2)でよい.水素の結合距離表示は一桁少なくてもよ い. 計算構造との関連 分子力場法や分子軌道法で求めた構造と比較する必要があるので,実測値の幅の目安になる標準偏差値は 絶対に必要である. 分子計算による構造は気体状態における単分子構造情報であり,結晶構造は複数の隣接分子との間で最 大限の相互作用により安定化した構造であることに留意する.結晶構造の非水素原子座標をもとに水素原子 位置を分子計算によって求めることも可能である. 空間群の再チェック 最近の直接法プログラムは類似の空間群であれば,対称性の低い空間群の方で強引に解いてしまうことが ある.例えば,P1とP(-)1,P212121とPbcaなどである.このような場合は,構造解析の途中段階で, 本来対称操作で関連ずけられるべき座標を丁寧にチェックすると誤りが分かる. Pbca (ラセミ体,8分子)をP212121(光学活性体,4分子)で解いた場合は (x1,y1,z1)と(x2,y2,z2)の関係は x1+ x2= 0.5 y1+ y2= 0.5 z1+ z2= 0.5 である. 30 特殊な位置にある原子 分子の中心(重心)に対称点がある場合などは,分子が分割されるので並進操作等で1分子を復元する. 実際の解析で得られる分子構造は下図のと おりである. ホストに包接されたジオキサンは対称中心 に位置し,ジオキサンは3原子×2に分割 される.一見,エタノールに見える. 空間群の同価位置に基づき,対称操作ある いは並進により座標をつくり,作図する. BASIC程度のプログラミングができれば簡単 に座標作成が可能. Packing coordinates generation: Chipmunk Basic Drawing: Chem3D プログラム例 10 rem BASIC PROGRAM FOR X-RAY 20 dim a$ (500),x$ (500),y$ (500),z$ (500) 30 sp1$ = " ," 40 sp2$ = " " 50 open "Macintosh HD:Desktop Folder:dioxane_car" for input as #1 60 open "Macintosh HD:Desktop Folder:dioxane_car.out" for output as #2 70 line input #1,dummy$ 80 print #2,dummy$ 90 rem 100 line input #1,q$ 110 if eof(1) then 220 120 k = k+ 1 31 130 n = len(q$ ) 140 n1 = instr(q$ ,sp1$ ,1) 150 n2 = instr(q$ ,sp1$ ,n1+ 1) 160 n3 = instr(q$ ,sp1$ ,n2+ 1) 170 a$ (k) = mid$ (q$ ,1,n1-1) 180 x$ (k) = mid$ (q$ ,n1+ 1,n2-n1-1) 190 y$ (k) = mid$ (q$ ,n2+ 1,n3-n2-1) 200 z$ (k) = mid$ (q$ ,n3+ 1,n-n3) 210 goto 100 220 rem D image -> L image 230 for i = k+ 1 to k*2 240 a$ (i) = a$ (i-k) 250 x$ ( i) = str$ ( -1*val( x$ ( i-k) ) + 1) 260 y$ ( i) = str$ ( -1*val( y$ ( i-k) ) + 1) 270 z$ ( i) = str$ ( -1*val( z$ ( i-k) ) + 1) 280 next i 281 for i = k*2+ 1 to k*4 282 a$ (i) = a$ (i-k*2) 283 x$ ( i) = str$ ( val( x$ ( i-k*2) ) + 0) 284 y$ (i) = str$ (val(y$ (i-k*2))+ 1) 285 z$ (i) = str$ (val(z$ (i-k*2))+ 0) 286 next i 290 for i = 1 to k*4 300 print #2,a$ (i)+ " ," + x$ (i)+ " ," + y$ (i)+ " ," + z$ (i) 310 next i 320 rem 330 close #1 : close #2 340 stop 350 end 作図もBASICで可能である. 当研究室資料のBASIC入門などを参照のこと. 投稿論文用データ整理(CIFファイル) ケンブリッジX線データセンター (CCDC)に登録可能なCIFファイルを出力する. 論文に記載した構造データと矛盾しないようにする. Cambridge Crystallographic Data Centre http://www.ccdc.cam.ac.uk/ data_General _audit_creation_date 'Fri Nov 29 20:30:57 2002'_audit_creation_method 'by teXsan' _audit_update_record ? #---------------------------------------------------------------------# PROCESSING SUMMARY (IUCr Office Use Only) _journal_date_recd_electronic ? _journal_date_from_coeditor ? _journal_date_accepted ? _journal_coeditor_code ? #---------------------------------------------------------------------# SUBMISSION DETAILS _publ_contact_author_name ' ENTER NAME' _publ_contact_author_address ; ENTER ADDRESS ; _publ_contact_author_email ' ENTER EMAIL ADDRESS ' _publ_contact_author_fax ' ENTER FAX NUMBER ' _publ_contact_author_phone ' ENTER PHONE NUMBER ' _publ_contact_letter ; ENTER TEXT OF LETTER ; _publ_requested_journal ' ENTER JOURNAL NAME HERE' _publ_requested_category ' CHOOSE FI FM FO CI CM CO or AD' _publ_requested_coeditor_name ? #---------------------------------------------------------------------# TITLE AND AUTHOR LIST _publ_section_title ; ENTER SECTION TITLE ; _publ_section_title_footnote ; ENTER FOOTNOTE TO TITLE OF PAPER ; loop_ _publ_author_name_publ_author_footnote _publ_author_address ' FIRST AUTHORS NAME ' ; FIRST AUTHORS FOOTNOTES ; ; FIRST AUTHORS ADDRESS ; 32 _publ_section_synopsis ; ENTER SYNOPSIS ; #---------------------------------------------------------------------# TEXT ; _reflns_number_total 6927 _reflns_number_gt 2750 _reflns_threshold_expression F^2^>3.0¥s(F^2^) _refine_ls_structure_factor_coef F _refine_ls_R_factor_gt 0.0000 _refine_ls_wR_factor_ref 0.0732 _refine_ls_hydrogen_treatment ? _refine_ls_number_reflns 2750 _refine_ls_number_parameters 471 _refine_ls_goodness_of_fit_ref 1.608 _refine_ls_weighting_scheme calc _refine_ls_weighting_details 'w = 1/[¥s^2^(Fo) + 0.00032|Fo|^2^]' _refine_ls_shift/su_max 0.0432 _refine_diff_density_max 0.32 _refine_diff_density_min -0.32 _refine_ls_extinction_method none _refine_ls_extinction_coef ? _refine_ls_abs_structure_details ? _refine_ls_abs_structure_Flack ? loop_ _atom_type_symbol _atom_type_description _atom_type_scat_dispersion_real _atom_type_scat_dispersion_imag _atom_type_scat_source 'C' 'C' 0.003 0.002 ;International Tables for Crystallography (1992, Vol. C, Tables 4.2.6.8 and 6.1.1.1) ; 'H' 'H' 0.000 0.000 ;International Tables for Crystallography (1992, Vol. C, Table 6.1.1.2) ; 'O' 'O' 0.011 0.006 ;International Tables for Crystallography (1992, Vol. C, Tables 4.2.6.8 and 6.1.1.1) ; #-----------------------------------------------------------------------------# ATOMIC COORDINATES AND DISPLACEMENT PARAMETERS loop_ _atom_site_label _atom_site_type_symbol _atom_site_fract_x _atom_site_fract_y _atom_site_fract_z _atom_site_U_iso_or_equiv _atom_site_adp_type _atom_site_occupancy _atom_site_calc_flag _atom_site_refinement_flags _atom_site_disorder_assembly _atom_site_disorder_group O1 O 0.3586(3) 0.1308(2) -0.2210(3) 0.045(1) Uani 1.00 d . . . O2 O 0.1876(4) 0.4692(4) 0.2317(5) 0.098(2) Uani 1.00 d . . . O3 O 0.0361(3) 0.4194(3) 0.1168(4) 0.072(1) Uani 1.00 d . . . O4 O 0.0637(4) 0.4780(4) 0.6296(6) 0.108(2) Uani 1.00 d . . . O5 O 0.5672(8) 0.4752(6) 0.3862(8) 0.155(3) Uani 1.00 d . . . C1 C 0.2212(3) 0.2372(3) -0.0322(4) 0.029(1) Uani 1.00 d . . . C2 C 0.2122(4) 0.3505(3) -0.0011(5) 0.033(1) Uani 1.00 d . . . C3 C 0.3458(4) 0.3481(3) 0.0195(5) 0.034(1) Uani 1.00 d . . . C4 C 0.4238(4) 0.2330(3) 0.0174(4) 0.029(1) Uani 1.00 d . . . C5 C 0.3925(4) 0.2052(3) 0.1406(4) 0.030(1) Uani 1.00 d . . . C6 C 0.2750(4) 0.2075(3) 0.1119(4) 0.030(1) Uani 1.00 d . . . C7 C 0.3406(4) 0.1874(3) -0.1051(5) 0.030(1) Uani 1.00 d . . . C8 C 0.4675(4) 0.1777(3) 0.2705(5) 0.034(1) Uani 1.00 d . . . C9 C 0.5903(4) 0.1690(4) 0.3034(6) 0.053(2) Uani 1.00 d . . . C10 C 0.6565(5) 0.1435(5) 0.4281(6) 0.071(2) Uani 1.00 d . . . C11 C 0.6043(5) 0.1253(5) 0.5256(6) 0.063(2) Uani 1.00 d . . . C12 C 0.4862(5) 0.1315(4) 0.4960(5) 0.050(2) Uani 1.00 d . . . C13 C 0.4142(4) 0.1574(3) 0.3687(5) 0.037(1) Uani 1.00 d . . . C14 C 0.2165(4) 0.1911(3) 0.2113(4) 0.031(1) Uani 1.00 d . . . C15 C 0.0935(4) 0.1995(4) 0.1886(5) 0.038(1) Uani 1.00 d . . . C16 C 0.0437(4) 0.1779(4) 0.2839(5) 0.044(2) Uani 1.00 d . . . C17 C 0.1148(5) 0.1470(4) 0.4061(5) 0.047(2) Uani 1.00 d . . . C18 C 0.2331(4) 0.1409(4) 0.4338(5) 0.041(2) Uani 1.00 d . . . C19 C 0.2883(4) 0.1619(3) 0.3389(4) 0.033(1) Uani 1.00 d . . . C20 C 0.1210(4) 0.2012(3) -0.1267(4) 0.034(1) Uani 1.00 d . . . C21 C 0.0113(4) 0.2642(4) -0.1814(5) 0.045(2) Uani 1.00 d . . . C22 C -0.0735(5) 0.2231(6) -0.2714(6) 0.059(2) Uani 1.00 d . . . C23 C -0.0528(5) 0.1220(5) -0.3087(6) 0.062(2) Uani 1.00 d . . . C24 C 0.0551(5) 0.0585(5) -0.2572(6) 0.055(2) Uani 1.00 d . . . C25 C 0.1407(4) 0.0982(4) -0.1681(5) 0.042(2) Uani 1.00 d . . . C26 C 0.5544(4) 0.2019(3) -0.0043(4) 0.031(1) Uani 1.00 d . . . C27 C 0.6160(4) 0.1032(4) -0.0747(5) 0.038(1) Uani 1.00 d . . . C28 C 0.7388(5) 0.0735(4) -0.0830(5) 0.046(2) Uani 1.00 d . . . C29 C 0.8007(5) 0.1402(4) -0.0247(6) 0.049(2) Uani 1.00 d . . . C30 C 0.7412(5) 0.2388(4) 0.0439(6) 0.053(2) Uani 1.00 d . . . C31 C 0.6192(4) 0.2684(4) 0.0544(6) 0.044(2) Uani 1.00 d . . . C32 C 0.1445(4) 0.4195(4) 0.1263(6) 0.044(2) Uani 1.00 d . . . C33 C 0.3660(5) 0.3841(4) -0.1027(7) 0.053(2) Uani 1.00 d . . . C34 C 0.3115(6) 0.4975(4) -0.0796(8) 0.079(2) Uani 1.00 d . . . C35 C 0.004(1) 0.4182(6) 0.5364(7) 0.138(4) Uani 1.00 d . . . C36 C 0.0940(7) 0.5365(6) 0.5661(9) 0.097(3) Uani 1.00 d . . . C37 C 0.490(1) 0.5741(9) 0.443(1) 0.187(6) Uani 1.00 d . . . C38 C 0.6083(9) 0.4277(8) 0.494(2) 0.137(4) Uani 1.00 d . . . H1 H 0.626(4) 0.185(3) 0.243(5) 0.04(1) Uiso 1.00 calc . . H2 H 0.736(4) 0.138(4) 0.448(5) 0.06(1) Uiso 1.00 calc . . H3 H 0.647(4) 0.107(4) 0.611(6) 0.07(1) Uiso 1.00 calc . . H4 H 0.454(4) 0.113(3) 0.553(4) 0.04(1) Uiso 1.00 calc . . H5 H 0.050(4) 0.222(3) 0.109(5) 0.05(1) Uiso 1.00 calc . . H6 H -0.0434 0.1816 0.2548 0.0654 Uiso 1.00 calc . . H7 H 0.078(4) 0.130(3) 0.472(5) 0.05(1) Uiso 1.00 calc . . H8 H 0.285(4) 0.123(3) 0.524(5) 0.04(1) Uiso 1.00 calc . . H9 H 0.002(4) 0.335(3) -0.150(5) 0.05(1) Uiso 1.00 calc . . H10 H -0.141(5) 0.268(4) -0.298(6) 0.08(2) Uiso 1.00 calc . . H11 H -0.111(4) 0.091(4) -0.364(5) 0.07(1) Uiso 1.00 calc . . H12 H 0.067(4) -0.010(4) -0.277(5) 0.06(2) Uiso 1.00 calc . . H13 H 0.218(4) 0.056(3) -0.128(5) 0.06(1) Uiso 1.00 calc . H14 H 0.575(4) 0.051(3) -0.113(4) 0.04(1) Uiso 1.00 calc . H15 H 0.775(4) 0.006(4) -0.134(5) 0.06(1) Uiso 1.00 calc . . H16 H 0.884(4) 0.121(3) -0.044(5) 0.05(1) Uiso 1.00 calc . . H17 H 0.785(4) 0.286(3) 0.076(4) 0.05(1) Uiso 1.00 calc . . H18 H 0.584(4) 0.334(3) 0.101(5) 0.05(1) Uiso 1.00 calc . . H19 H 0.1815 0.3706 -0.0851 0.0412 Uiso 1.00 calc . . _publ_section_abstract ; ENTER ABSTRACT ; _publ_section_comment ; ENTER TEXT ; _publ_section_acknowledgements ; ENTER ACKNOWLEDGEMENTS ; _publ_section_references ; ENTER OTHER REFERENCES Molecular Structure Corporation, Rigaku Corporation. (2000). teXsan. Single Crystal Structure Analysis Software. Version 1.11. MSC, 3200 Research Forest Drive, The Woodlands, TX 77381, USA. Rigaku, 3-9-12 Akishima, Tokyo, Japan. ; _publ_section_figure_captions ; ENTER FIGURE CAPTIONS; _publ_section_exptl_prep ; ENTER COMPOUND PREPARATION DETAILS ; _publ_section_exptl_refinement ; ENTER SPECIAL DETAILS OF THE REFINEMENT ; #---------------------------------------------------------------------data_Phencyclone_+_pentenoic_ac #---------------------------------------------------------------------# CHEMICAL DATA _chemical_formula_sum 'C38 H34 O5 ' _chemical_formula_moiety '?' _chemical_formula_weight 570.68 _chemical_melting_point ? #---------------------------------------------------------------------# CRYSTAL DATA _symmetry_cell_setting triclinic _symmetry_space_group_name_H-M 'P -1 ' _symmetry_Int_Tables_number 2 loop_ _symmetry_equiv_pos_as_xyz x,y,z -x,-y,-z _cell_length_a 12.031(5) _cell_length_b 14.718(7) _cell_length_c 9.702(3) _cell_angle_alpha 107.60(3) _cell_angle_beta 102.69(3) _cell_angle_gamma 68.07(3) _cell_volume 1507(1) _cell_formula_units_Z 2 _cell_measurement_reflns_used 25 _cell_measurement_theta_min 10.1 _cell_measurement_theta_max 11.6 _cell_measurement_temperature 293.2 #---------------------------------------------------------------------_exptl_crystal_description 'prismatic' _exptl_crystal_colour 'colorless' _exptl_crystal_size_max 0.300 _exptl_crystal_size_mid 0.200 _exptl_crystal_size_min 0.200 _exptl_crystal_size_rad ? _exptl_crystal_density_diffrn 1.257 _exptl_crystal_density_meas ? _exptl_crystal_density_method 'not measured' _exptl_absorpt_coefficient_mu 0.082 _exptl_absorpt_correction_type none #---------------------------------------------------------------------# EXPERIMENTAL DATA _diffrn_radiation_type 'Mo K¥a' _diffrn_radiation_wavelength 0.7107 _diffrn_measurement_device_type 'Rigaku AFC7R' _diffrn_measurement_method ¥w-2¥q _diffrn_reflns_number 7256 _diffrn_reflns_av_R_equivalents 0.023 _diffrn_reflns_theta_max 27.50 _diffrn_measured_fraction_theta_max 1.0012 _diffrn_reflns_theta_full 27.50 _diffrn_measured_fraction_theta_full 1.0012 _diffrn_reflns_limit_h_min 0 _diffrn_reflns_limit_h_max 15 _diffrn_reflns_limit_k_min -17 _diffrn_reflns_limit_k_max 19 _diffrn_reflns_limit_l_min -12 _diffrn_reflns_limit_l_max 12 _diffrn_standards_number 3 _diffrn_standards_interval_count 150 _diffrn_standards_decay_% 11.15 #---------------------------------------------------------------------# REFINEMENT DATA _refine_special_details ; Refinement using reflections with F^2^ > 3.0 sigma(F^2^). The weighted Rfactor (wR), goodness of fit (S) and R-factor (gt) are based on F, with F set to zero for negative F. The threshold expression of F^2^ > 3.0 sigma(F^2^) is used only for calculating R-factor (gt). 33 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 H31 H32 H33 H34 . H H H H H H H H H H H H H H H 0.0142 0.355(3) 0.341(4) 0.442(5) 0.3526 0.3332 0.2210 0.0588 -0.0297 0.0771 0.1302 0.5345 0.4634 0.6656 0.6573 0.4567 0.395(3) 0.345(3) 0.371(4) 0.5372 0.5105 0.5181 0.3597 0.3913 0.6089 0.5097 0.6144 0.6137 0.3573 0.4593 0.2022 0.117(4) -0.209(5) -0.106(5) 0.0191 -0.1617 -0.0854 0.4785 0.5924 0.6069 0.4857 0.5228 0.3685 0.4672 0.5803 0.1267 0.03(1) 0.05(1) 0.06(1) 0.13(2) 0.10(2) 0.13(2) 0.1267 0.1267 0.1267 0.1267 0.1267 0.1267 0.1267 0.1267 Uiso Uiso Uiso Uiso Uiso Uiso Uiso Uiso Uiso Uiso Uiso Uiso Uiso Uiso Uiso 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 calc calc calc calc calc calc calc calc calc calc calc calc calc calc calc . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . loop_ _atom_site_aniso_label _atom_site_aniso_U_11 _atom_site_aniso_U_22 _atom_site_aniso_U_33 _atom_site_aniso_U_12 _atom_site_aniso_U_13 _atom_site_aniso_U_23 O1 0.042(2) 0.064(2) 0.026(2) -0.017(2) 0.005(1) 0.005(2) O2 0.063(3) 0.125(4) 0.076(3) -0.044(3) 0.028(2) -0.048(3) O3 0.047(2) 0.092(3) 0.058(2) -0.018(2) 0.025(2) -0.018(2) O4 0.089(4) 0.132(5) 0.097(4) -0.024(3) 0.007(3) 0.037(4) O5 0.216(8) 0.122(6) 0.130(6) -0.037(6) 0.095(6) 0.008(5) C1 0.023(2) 0.037(3) 0.028(2) -0.008(2) 0.001(2) 0.013(2) C2 0.035(3) 0.029(3) 0.037(3) -0.007(2) 0.004(2) 0.013(2) C3 0.030(3) 0.031(3) 0.040(3) -0.007(2) 0.005(2) 0.012(2) C4 0.027(2) 0.032(3) 0.026(2) -0.004(2) 0.004(2) 0.010(2) C5 0.031(2) 0.029(3) 0.028(2) -0.010(2) 0.003(2) 0.006(2) C6 0.027(2) 0.030(3) 0.029(2) -0.005(2) 0.001(2) 0.006(2) C7 0.033(2) 0.035(3) 0.027(2) -0.010(2) 0.002(2) 0.017(2) C8 0.033(3) 0.033(3) 0.032(2) -0.008(2) 0.002(2) 0.007(2) C9 0.037(3) 0.084(4) 0.043(3) -0.020(3) -0.003(2) 0.028(3) C10 0.033(3) 0.123(6) 0.059(4) -0.024(4) -0.016(3) 0.045(4) C11 0.051(4) 0.097(5) 0.043(3) -0.021(3) -0.015(3) 0.040(3) C12 0.049(3) 0.072(4) 0.037(3) -0.020(3) 0.001(3) 0.026(3) C13 0.038(3) 0.041(3) 0.031(2) -0.011(2) 0.001(2) 0.011(2) C14 0.032(3) 0.030(3) 0.033(3) -0.010(2) 0.008(2) 0.007(2) C15 0.037(3) 0.039(3) 0.037(3) -0.009(2) 0.006(2) 0.014(2) C16 0.039(3) 0.050(3) 0.048(3) -0.015(2) 0.009(2) 0.018(3) C17 0.053(3) 0.056(4) 0.043(3) -0.019(3) 0.014(3) 0.020(3) C18 0.046(3) 0.049(3) 0.032(3) -0.016(3) 0.004(2) 0.014(2) C19 0.037(3) 0.030(3) 0.031(2) -0.009(2) 0.004(2) 0.008(2) C20 0.030(2) 0.046(3) 0.028(2) -0.014(2) 0.002(2) 0.012(2) C21 0.032(3) 0.057(4) 0.046(3) -0.007(3) 0.000(2) 0.024(3) C22 0.033(3) 0.091(5) 0.052(4) -0.018(3) -0.008(3) 0.028(3) C23 0.051(4) 0.097(5) 0.048(3) -0.048(4) -0.011(3) 0.017(3) C24 0.053(4) 0.066(4) 0.050(3) -0.032(3) -0.002(3) 0.013(3) C25 0.036(3) 0.055(3) 0.038(3) -0.017(3) -0.001(2) 0.015(3) C26 0.033(3) 0.036(3) 0.026(2) -0.010(2) 0.000(2) 0.013(2) C27 0.037(3) 0.035(3) 0.043(3) -0.012(2) 0.004(2) 0.010(2) C28 0.044(3) 0.038(3) 0.046(3) -0.005(3) 0.009(2) 0.005(3) C29 0.035(3) 0.057(4) 0.056(3) -0.008(3) 0.013(3) 0.021(3) C30 0.040(3) 0.047(4) 0.079(4) -0.021(3) 0.005(3) 0.018(3) C31 0.036(3) 0.038(3) 0.056(3) -0.007(3) 0.013(2) 0.009(3) C32 0.042(3) 0.037(3) 0.053(3) -0.007(2) 0.012(3) 0.013(3) C33 0.039(3) 0.052(4) 0.082(4) -0.007(3) 0.012(3) 0.042(3) C34 0.078(5) 0.057(4) 0.118(6) -0.022(4) 0.008(4) 0.044(4) C35 0.33(1) 0.085(6) 0.039(4) -0.130(8) -0.018(6) 0.012(4) C36 0.117(6) 0.104(6) 0.087(6) -0.064(5) 0.057(5) -0.020(5) C37 0.26(2) 0.116(10) 0.19(1) -0.02(1) 0.11(1) 0.045(9) C38 0.108(8) 0.125(9) 0.15(1) -0.030(6) 0.033(8) 0.002(8) #---------------------------------------------------------------------_computing_data_collection 'MSC/AFC Diffractometer Control' _computing_cell_refinement 'MSC/AFC Diffractometer Control' _computing_data_reduction 'teXsan Ver. 1.11' _computing_structure_solution SAPI91 _computing_structure_refinement 'teXsan Ver. 1.10' _computing_publication_material 'teXsan Ver. 1.11' _computing_molecular_graphics ? #---------------------------------------------------------------------_geom_special_details ; ? ; loop_ _geom_bond_atom_site_label_1 _geom_bond_atom_site_label_2 _geom_bond_distance _geom_bond_site_symmetry_1 _geom_bond_site_symmetry_2 _geom_bond_publ_flag O1 C7 O2 C32 O3 C32 O4 C35 O4 C36 O5 C37 O5 C38 C1 C2 C1 C6 C1 C7 C1 C20 C2 C3 C2 C32 C3 C4 C3 C33 C4 C5 C4 C7 C4 C26 C5 C6 C5 C8 C6 C14 C8 C9 C8 C13 C9 C10 C10 C11 C11 C12 1.188(5) 1.204(5) 1.287(5) 1.349(8) 1.381(8) 1.42(1) 1.34(1) 1.568(6) 1.526(5) 1.565(6) 1.508(6) 1.564(6) 1.512(6) 1.597(6) 1.532(7) 1.532(5) 1.537(6) 1.508(6) 1.369(5) 1.450(6) 1.431(6) 1.406(6) 1.411(6) 1.367(7) 1.379(8) 1.359(7) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . C12 C13 1.410(6) . . yes C13 C19 1.458(6) . . yes C14 C15 1.411(6) . . yes C14 C19 1.427(5) . . yes C15 C16 1.370(6) . . yes C16 C17 1.391(6) . . yes C17 C18 1.363(7) . . yes C18 C19 1.407(6) . . yes C20 C21 1.399(6) . . yes C20 C25 1.386(6) . . yes C21 C22 1.385(7) . . yes C22 C23 1.359(8) . . yes C23 C24 1.378(8) . . yes C24 C25 1.379(7) . . yes C26 C27 1.395(6) . . yes C26 C31 1.388(6) . . yes C27 C28 1.389(6) . . yes C28 C29 1.365(7) . . yes C29 C30 1.383(7) . . yes C30 C31 1.385(7) . . yes C33 C34 1.513(8) . . yes C35 C36 1.45(1) . 2_566 yes C37 C38 1.45(1) . 2_666 yes #---------------------------------------------------------------------loop_ _geom_angle_atom_site_label_1 _geom_angle_atom_site_label_2 yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes yes 34 _geom_angle_atom_site_label_3 _geom_angle _geom_angle_site_symmetry_1 _geom_angle_site_symmetry_2 _geom_angle_site_symmetry_3 _geom_angle_publ_flag C35 O4 C36 114.4(6) . . . yes C37 O5 C38 107.8(8) . . . yes C2 C1 C6 105.3(3) . . . yes C2 C1 C7 98.4(3) . . . yes C2 C1 C20 120.3(3) . . . yes C6 C1 C7 96.6(3) . . . yes C6 C1 C20 120.2(3) . . . yes C7 C1 C20 111.5(3) . . . yes C1 C2 C3 104.9(3) . . . yes C1 C2 C32 114.3(4) . . . yes C3 C2 C32 113.1(4) . . . yes C2 C3 C4 103.9(3) . . . yes C2 C3 C33 109.9(4) . . . yes C4 C3 C33 113.4(4) . . . yes C3 C4 C5 108.4(3) . . . yes C3 C4 C7 95.8(3) . . . yes C3 C4 C26 115.5(3) . . . yes C5 C4 C7 96.4(3) . . . yes C5 C4 C26 119.1(3) . . . yes C7 C4 C26 117.8(3) . . . yes C4 C5 C6 109.5(3) . . . yes C4 C5 C8 129.8(4) . . . yes C6 C5 C8 120.8(4) . . . yes C1 C6 C5 108.4(4) . . . yes C1 C6 C14 128.6(4) . . . yes C5 C6 C14 122.9(4) . . . yes O1 C7 C1 129.1(4) . . . yes O1 C7 C4 131.9(4) . . . yes C1 C7 C4 99.0(3) . . . yes C5 C8 C9 123.9(4) . . . yes C5 C8 C13 117.9(4) . . . yes C9 C8 C13 118.2(4) . . . yes C8 C9 C10 121.3(5) . . . yes C9 C10 C11 120.7(5) . . . yes C10 C11 C12 119.4(5) . . . yes C11 C12 C13 122.0(5) . . . yes C8 C13 C12 118.3(4) . . . yes C8 C13 C19 121.0(4) . . . yes C12 C13 C19 120.7(4) . . . yes C6 C14 C15 123.9(4) . . . yes C6 C14 C19 117.7(4) . . . yes C15 C14 C19 118.4(4) . . . yes C14 C15 C16 121.4(4) . . . yes C15 C16 C17 120.0(4) . . . yes C16 C17 C18 120.1(4) . . . yes C17 C18 C19 121.9(5) . . . yes C13 C19 C14 119.6(4) . . . yes C13 C19 C18 122.3(4) . . . yes C14 C19 C18 118.1(4) . . . yes C1 C20 C21 124.5(4) . . . yes C1 C20 C25 117.9(4) . . . yes C21 C20 C25 117.5(4) . . . yes C20 C21 C22 120.0(5) . . . yes C21 C22 C23 121.4(6) . . . yes C22 C23 C24 119.5(5) . . . yes C23 C24 C25 119.8(6) . . . yes C20 C25 C24 121.8(5) . . . yes C4 C26 C27 120.8(4) . . . yes C4 C26 C31 121.0(4) . . . yes C27 C26 C31 118.0(4) . . . yes C26 C27 C28 120.0(4) . . . yes C27 C28 C29 121.0(5) . . . yes C28 C29 C30 120.0(5) . . . yes C29 C30 C31 119.3(5) . . . yes C26 C31 C30 121.7(5) . . . yes O2 C32 O3 121.2(5) . . . yes O2 C32 C2 123.8(4) . . . yes O3 C32 C2 114.9(4) . . . yes C3 C33 C34 111.8(5) . . . yes O4 C35 C36 117.1(6) . . 2_566 yes O4 C36 C35 112.7(6) . . 2_566 yes O5 C37 C38 111.9(9) . . 2_666 yes O5 C38 C37 111.8(10) . . 2_666 yes #---------------------------------------------------------------------loop__geom_torsion_atom_site_label_1 _geom_torsion_atom_site_label_2 _geom_torsion_atom_site_label_3 _geom_torsion_atom_site_label_4 _geom_torsion _geom_torsion_site_symmetry_1 _geom_torsion_site_symmetry_2 _geom_torsion_site_symmetry_3 _geom_torsion_site_symmetry_4 _geom_torsion_publ_flag O1 C7 C1 C2 -124.6(5) . . . . yes O1 C7 C1 C6 128.9(5) . . . . yes O1 C7 C1 C20 2.7(6) . . . . yes O1 C7 C4 C3 121.3(5) . . . . yes O1 C7 C4 C5 -129.3(5) . . . . yes O1 C7 C4 C26 -1.6(7) . . . . yes O2 C32 C2 C1 121.3(6) . . . . yes O2 C32 C2 C3 1.3(7) . . . . yes O3 C32 C2 C1 -56.6(5) . . . . yes O3 C32 C2 C3 -176.5(4) . . . . yes C1 C2 C3 C4 -6.7(4) . . . . yes C1 C2 C3 C33 115.0(4) . . . . yes C1 C6 C5 C4 -0.1(5) . . . . yes C1 C6 C5 C8 -179.2(4) . . . . yes C1 C6 C14 C15 0.6(7) . . . . yes C1 C6 C14 C19 179.0(4) . . . . yes C1 C7 C4 C3 -59.0(3) . . . . yes C1 C7 C4 C5 50.3(3) . . . . yes C1 C7 C4 C26 178.0(3) . . . . yes C1 C20 C21 C22 177.8(4) . . . . yes C1 C20 C25 C24 -178.4(4) . . . . yes C2 C1 C6 C5 -68.8(4) . . . . yes C2 C1 C6 C14 106.8(5) . . . . yes C2 C1 C7 C4 55.8(3) . . . . yes C2 C1 C20 C21 -6.0(6) . . . . yes C2 C1 C20 C25 170.9(4) . . . . yes C2 C3 C4 C5 -58.8(4) . . . . yes C2 C3 C4 C7 40.0(4) . . . . yes C2 C3 C4 C26 164.6(3) . . . . yes C2 C3 C33 C34 75.8(6) . . . . yes C3 C2 C1 C6 70.4(4) . . . . yes C3 C2 C1 C7 -28.8(4) . . . . yes C3 C2 C1 C20 -149.7(4) . . . . yes C3 C4 C5 C6 66.1(4) . . . . yes C3 C4 C5 C8 -114.9(5) . . . . yes C3 C4 C26 C27 -149.4(4) . . . . yes C3 C4 C26 C31 35.4(5) . . . . yes C4 C3 C2 C32 118.5(4) . . . . yes C4 C3 C33 C34 -168.3(4) . . . . yes C4 C5 C6 C14 -176.0(4) . . . . yes C4 C5 C8 C9 -2.1(7) . . . . yes C4 C5 C8 C13 178.7(4) . . . . yes C4 C7 C1 C6 -50.8(3) . . . . yes C4 C7 C1 C20 -176.9(3) . . . . 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