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課題図書ダイジェスト - 東京経済政策研究会(TSEP)

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課題図書ダイジェスト - 東京経済政策研究会(TSEP)
第45回 経済政策勉強会
「緊急解説 マイナス金利」
2016年6月18日
目次
Ⅰ
「円高圧力を消せ」 - 導入の内幕
Ⅱ
経済刺激どこまで - 仕組みと効果
Ⅲ
予想外の円高・株安 - 日銀の誤算とは
Ⅳ
Ⅴ
「劇薬」に7つの副作用の懸念 - 「経済の血液」の流れが滞る?
資産運用どう変える - コスト重視とリスク回避
1
Ⅰ. 「円高圧力を消せ」 - 導入の内幕
量的緩和・質的緩和とは
量的緩和とは、資金供給量の拡大で緩和
効果を出そうと試みる政策
質的緩和とは、国債と比べてリスクが高い
資産(ETF等)を買い入れること
日銀のETF購入により株価上昇圧力が加わる
銀行から国債購入
国債相場上昇
名目長期金利低下
大量の資金供給
株価の下値不安を緩和する効果
人々の心理に影響
経済を刺激
経済を刺激
※組み入れた株式の発行体が経営破綻等すれば価値低下の
可能性があるため、大量購入できない
予想物価上昇率の
引き上げ
日本銀行 貸借対照表
2016年3月期
国債
349,196
当座預金
(単位 : 10億円)
275,439
実質長期金利の
引き下げ
※ 量的緩和で購入する資産が国債の理由
・ 高い信用度(通貨の信用を担保)
・ 国債の発行規模(残高800兆円)
金銭の信託(*)
その他
9,230
発行銀行券
47,222
その他
2
95,595
* : ETF(7,568)、REIT(294)
純資産
31,064
3,550
Ⅰ. 「円高圧力を消せ」 - 導入の内幕
日銀の緩和政策の歴史(98年~06年)
■ 金利の推移
2.900%
長期国債金利(10年)
2.300%
1.700%
1.100%
無担保コール
0.500%
-0.100%
97/1
98/1
99/1
【レベル1】
・ 政策金利を0.25%~0%付近に引き下げ
・ 時間軸政策(長期金利の引き下げ)
ゼロ金利政策の解除
00/1
01/1
02/1
03/1
04/1
05/1
06/1
07/1
99/1
00/1
01/1
02/1
03/1
04/1
05/1
06/1
07/1
99/1
00/1
01/1
02/1
03/1
04/1
05/1
06/1
07/1
■ 消費者物価指数の上昇率推移(前年同月比)
日銀版コア物価指数
0.50%
コア物価指数
-0.50%
97/1
98/1
-1.50%
■ 日経平均株価の推移(単位 : 円)
22,000
17,000
12,000
7,000
97/1
98/1
■ 日銀当座預金平均残高の推移(単位 : 兆円)
40
30
【レベル2】
量的緩和政策
(国債購入による資金供給増加)
量的緩和の解除
20
10
0
97/1
98/1
99/1
00/1
01/1
02/1
3
03/1
04/1
05/1
06/1
07/1
Ⅰ. 「円高圧力を消せ」 - 導入の内幕
株安+円高
↓
物価上昇のピークアウト
日銀の緩和政策の歴史(07年~)
■ 金利の推移
2.100%
1.000%
-0.100%
【レベル5 】
マイナス金利政策
長期国債金利(10年)
無担保コール
07/1
08/1
09/1
10/1
11/1
12/1
13/1
14/1
15/1
16/1
10/1
11/1
12/1
13/1
14/1
15/1
16/1
補完措置
・ より長期の国債を購入対象に
・ 賃上げ・設備投資に積極的な
14/1
15/1
企業への投資
16/1
■ 消費者物価指数の上昇率推移(前年同月比)
3.00%
コア物価指数
0.00%
-3.00%
07/1
08/1
日銀版コア物価指数
09/1
■ 日経平均株価の推移(単位 : 円)
22,000
17,000
リーマンショック
12,000
7,000
07/1
08/1
09/1
■ 日銀当座預金平均残高の推移(単位 : 兆円)
400
【レベル3】
200
包括緩和政策
・ 国債、ETF、REIT購入
・ インフレ目標政策
0
07/1
08/1
■ 為替レートの推移(単位 : 円/USD)
130.00
120.00
110.00
100.00
90.00
80.00
70.00
10/1
07/1
08/1
11/1
12/1
【レベル4 】
量的・質的緩和政策
⇒大量・長期の国債購入
13/1
日銀保有REIT期末残高
日銀保有ETF期末残高
日銀保有国債期末残高
日銀当座預金平均残高
09/1
10/1
11/1
12/1
13/1
14/1
15/1
16/1
09/1
10/1
11/1
12/1
13/1
14/1
15/1
16/1
4
Ⅰ. 「円高圧力を消せ」 - 導入の内幕
日銀の緩和政策の歴史(マイナス金利導入前後)
■ 為替レートと日経平均の日次推移
19,000
市場改善の影響は
1週間も持たず
日経平均株価
18,000
為替レート
(円/USD)
16,000
116
114
15,000
112
1/4
1/6
1/8 1/10 1/12 1/14 1/16 1/18 1/20 1/22 1/24 1/26 1/28 1/30 2/1
2/3
2/5
2/7
2/9 2/11 2/13 2/15 2/17 2/19 2/21 2/23 2/25 2/27 2/29
■ 国債金利の日次推移
0.300%
10年
0.200%
0.100%
0.000%
-0.100%
-0.200%
120
118
17,000
14,000
122
1/4 1/6
1年
1/8 1/10 1/12 1/14 1/16 1/18 1/20 1/22 1/24 1/26 1/28 1/30 2/1
マイナス金利政策
-0.300%
5
2/3
2/5
2/7
2/9 2/11 2/13 2/15 2/17 2/19 2/21 2/23 2/25 2/27 2/29
110
Ⅰ. 「円高圧力を消せ」 - 導入の内幕
追加緩和の今後の方向性
•① マイナス金利の拡大
• 当初はマイナス0.1%だが、拡大余地あり
(スウェーデンではマイナス1.25%)
•② 量的緩和の拡大
• 長期国債の買入額の拡大
(現在年間80兆円の残高増加)
•③ 質的緩和の拡大
• ETF(現在年間3兆円購入)やREIT(同900億円)の増加
• 新タイプのETF(設備・人材投資に積極的な企業の株式組入)購入枠拡大の可能性
選択肢を広げて緩和の手詰まり感を払拭する
量 ・ 質 ・ (マイナス)金利
6
Ⅰ
「円高圧力を消せ」 - 導入の内幕
Ⅱ
経済刺激どこまで - 仕組みと効果
Ⅲ
予想外の円高・株安 - 日銀の誤算とは
Ⅳ
Ⅴ
「劇薬」に7つの副作用の懸念 - 「経済の血液」の流れが滞る?
資産運用どう変える - コスト重視とリスク回避
7
Ⅱ. 経済刺激どこまで - 仕組みと効果
イールドカーブ
日本銀行当座預金金利をマイナス化することでイールドカーブの起点を引き下げ、大規模
な長期国債買い入れとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていく(日銀発表)
1.600%
■ イールドカーブ
2013年4月
1.400%
1.200%
2014年10月
1.000%
0.800%
2015年12月
0.600%
0.400%
0.200%
0.000%
-0.200%
-0.400%
2016年4月
1年
2年
3年
4年
5年
6年
7年
8年
• 購入する国債の平均残存期間
– 2013年4月 :7年
– 2014年10月:7~10年
– 2015年12月:7~12年
⇒より長い金利に低下圧力
⇒イールドカーブの傾きが緩やかに(フラット化)
利息
= 利回り
国債価格
9年 10年 15年 20年
• イールドカーブの最初の部分を下げる
⇒長期金利には、期間に対するリスクプレミアム
(長期金利=短期金利+リスクの上乗せ)
⇒起点が下がれば全期間の利回り低下
⇒イールドカーブ全体の低下
起点の引下げ
8
Ⅱ. 経済刺激どこまで - 仕組みと効果
マイナス金利の適用範囲
3段階の日銀当座預金金利
• 15年度の平均残高部分 : 0.1%
• 所要準備額(預金保護のために日銀へ預け入れを求められている額)等 : 0%
• 上記を上回る残高(10~30兆円) : マイナス0.1%
一部のみ
マイナス金利を一部にとどめる理由
• 金融機関の収益への配慮
– 金融仲介機能の低下による経済の健全な発展の阻害
– 株式市場への影響
• 一部でも短期金利を低下させられる可能性が高い
– 金融取引の価格は新しい取引の限界的な損益により決まる
9
Ⅱ. 経済刺激どこまで - 仕組みと効果
経済を刺激する2つの経路
市場環境を改善させる
金利の低下が実態経済の動きを直接刺激
国債利回りは様々な金利の基準
・ 利率=国債利回り+信用スプレッド
国
債
利
回
り
低
下
借
入
コ
ス
ト
低
下
借
入
し
易
い
環
境
金利の低下⇒円が売られる(円安)
・ 金利面で円の魅力が低下
投
資
の
増
加
輸出企業
業績向上
実
体
経
済
を
刺
激
金
利
低
下
株式保有者
の消費増大
円
安
海外からの
旅行者増加
国債の魅力
低下
•経済を刺激しない可能性
株価
上昇
国内消費
の増加
外債や株式
に資金移動
円安
株高
•経済を刺激しない可能性
• 高金利で投資したい企業が借入できない状況が前提
– 現在の日本企業は潤沢な手元資金を保有
– 15/12時点で金融機関の貸出態度判断指数改善
実
体
経
済
を
刺
激
• 勤め先企業の業績が低迷していれば、個人所得は
増加せずに消費拡大にはつながらない
• 円安でも輸出数量が増えにくい環境
– 円高時代に海外現地生産増加、国内生産力低下
– 人口減少で優秀な労働力減少
• 魅力的な投資機会を増やすこと
⇒規制緩和等による成長戦略を進めて日本経済の
実力(潜在成長力)を高める努力が不可欠
投資を大幅に増やすには?
• 日本経済の実力を高め、ビジネス機会を増加
個人消費を増やすには?
10
Ⅱ. 経済刺激どこまで - 仕組みと効果
利回りマイナスの国債が買われる理由
• 利息を払う資産を購入すれば投資家は損をする
– 利益は出ないはず
• 投資家は利益が出ると見込んでいる
– 日銀が巨額の長期国債を買い続けるには、金融機関に魅力的な価格で購入する必要
– 金融機関は日銀によるより高い価格で国債が購入される思惑
• 「マイナス金利政策」それ自体がリスク回避的ムードをあおった
(リスク回避的になると安全資産の国債が買われやすい)
– 銀行収益悪化懸念による銀行株の下落
■ 銀行の利益の源泉である長短金利差による利ザヤの縮小
■ 個人預金金利のマイナス金利適用が困難(逆ザヤ)
11
Ⅱ. 経済刺激どこまで - 仕組みと効果
欧州におけるマイナス金利の状況
16/3末時点における中央銀行預金金利
•
•
•
•
スウェーデン:
デンマーク :
ユーロ圏
:
スイス
:
-1.25%
-0.65%
-0.40%
-0.75%
• ドイツ:残存期間7年国債利回りがゼロ未満
• スイス:10年国債利回りもマイナス圏
金利への影響
• ユーロ圏
– 物価上昇率はゼロ前後⇒実体経済への影響は見られない
– 為替相場の下落(対円・対ドルともに)⇒通貨高対策としての意義はあった
• デンマーク
– 住宅価格の上昇(価格が4倍に跳ね上がった豪邸)⇒資金が不動産に移った
– マイナス金利の住宅ローン、ただし手数料がマイナス金利を超過⇒マイナス金利は手数料の割引でしかない
• スイス
– 預金金利にマイナス金利を適用した銀行はごく一部
– 元々口座維持手数料を徴収することは珍しくないため、実質的なマイナス金利はずっと前から始まっていた
実体経済への影響
13
Ⅰ
「円高圧力を消せ」 - 導入の内幕
Ⅱ
経済刺激どこまで - 仕組みと効果
Ⅲ
予想外の円高・株安 - 日銀の誤算とは
Ⅳ
Ⅴ
「劇薬」に7つの副作用の懸念 - 「経済の血液」の流れが滞る?
資産運用どう変える - コスト重視とリスク回避
14
Ⅲ. 予想外の円高・株安 - 日銀の誤算とは
円高招いた二つの誤算
■ 為替レートと日経平均の日次推移
19,000
マイナス金利
政策導入
122
日経平均株価
120
18,000
17,000
16,000
118
為替レート
(円/USD)
116
114
15,000
14,000
112
1/4
1/11
1/18
1/25
2/1
2/8
2/15
2/22
2/29
• リスク回避ムード&円高⇒株価下落
• 株価下落&リスク回避ムード⇒円高
2年
0.5%
0.0%
1/4
1/11
1/18
1/25
2/1
2/8
2/15
2/22
• 円高抑止できず⇒株安
• 超低金利通貨の円はリスク回避時に買われやすい
金利低下による銀行収益悪化⇒銀行株下落⇒円買い
(ドイツ銀行の経営悪化を日本の状況に結び付け)
5年
1.0%
• 3月の米利上げ見送りの可能性⇒米金利低下
• ドル高懸念⇒ドル高牽制
リスク回避
10年
1.5%
FRB要人の発言ポイント
110
■ 日米金利差(ドル金利-円金利)
2.5%
2.0%
• 15/10~12月米GDP成長の鈍化
(中国等経済の減速、米利上観測(ドル高)、原油安)
• 企業の景況感悪化
米経済減速
「円の対ドル相場が本格的に下落に転じる
のは、早くて16年暮れから17年の年明け」
(三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト)
2/29
15
Ⅲ. 予想外の円高・株安 - 日銀の誤算とは
マイナス金利の下限
「今後、必要な場合には、さらに金利を引き下げる」
(2016年1月29日 黒田日銀総裁)
• 「マイナス金利の先駆者である欧州を参考にすると、保守的に見てもマイナス0%台半ばまでの引き下げは問題な
さそうだ。さらにマイナス1%も未知の領域ではない」
(2016年2月8日 野村證券リポート)
• 「原則として(金利に)下限はない。いくらでもやろうと思ったらできる。」「マイナス1%まで行ってもおかしくない。」
(2016年2月4日 経済学者・日銀参与 河合正弘氏)
• 「・・・日銀もあと2~3回分の『追加利下げ』余地を作り出した・・・」
(2016年2月8日 東大教授 上田和男氏)
• 重要な基準は、マイナス金利幅拡大による金融引き締め効果がどの程度でるか
マイナス金利の下限を決めるファクター
マ
イ
拡ナ
大ス
金
利
長
期
金
利
低
下
銀
行
収
益
圧
迫
負預
担金
転者
嫁へ
タ
ン
増ス
加預
金
の
マ
ネ
滞ー
るの
流
れ
負
の
イ経
ン済
パに
ク
ト
• いずれにせよ、円高・株安が進めば、日銀は追加緩和も辞さずという姿勢
• 市場が安定するかは海外要因(中国経済の減速・原油安・米国経済の減速)に大きく左右される
16
Ⅲ. 予想外の円高・株安 - 日銀の誤算とは
不動産にマネー流入
■ REIT及び株価指数の推移
2,400
2,200
21,000
マイナス金利
政策導入
19,000
日経平均株価
17,000
15,000
2,000
1,800
13,000
REIT指数
11,000
1,600
9,000
1,400
1,200
• REIT価格上昇
– 利回りの高さに魅力(平均3%台)
• 不動産関連株式の下落幅の小ささ
– 借入金依存が高く、金利低下によるメリット享受
投資されたリスク資産
7,000
業種別日経平均株価-不動産
1/4
1/11
1/18
1/25
2/1
2/8
2/15
2/22
2/29
5,000
17
Ⅰ
「円高圧力を消せ」 - 導入の内幕
Ⅱ
経済刺激どこまで - 仕組みと効果
Ⅲ
予想外の円高・株安 - 日銀の誤算とは
Ⅳ
Ⅴ
「劇薬」に7つの副作用の懸念 - 「経済の血液」の流れが滞る?
資産運用どう変える - コスト重視とリスク回避
19
Ⅳ. 「劇薬」に7つの副作用の懸念 - 「経済の血液」の流れが滞る?
銀行の金融仲介機能が低下する恐れ
• 預金を集めても利ザヤを稼げる運用先がない(日銀はマイナス金利、貸出金利も低下)
⇒金融商品販売による手数料収入で稼いだ方がマシ
⇒余計な預金は他行に押し付け
預金を集めてそれを貸す銀行の仲介機能が低下
• 利ザヤ縮小を防ぐ手立て
– 預金金利をマイナスに、ただし難しい⇒口座手数料で実質マイナス金利に
■ タンス預金が増加する恐れ⇒銀行の仲介機能が低下
■ 現金の金利をマイナスに(印紙)⇒通貨の価値が目減りすることで円の信頼性を毀損するリスク
– 貸出金利が下がらない企業へ融資⇒金利が高い貸付先は高リスク
■ 回収不能による不良債権の増加⇒銀行経営の悪化による金融仲介機能の低下
• 利ザヤ確保が難しければ、銀行収益に悪影響(大手行△8%、地銀△15%)
– 銀行株の相場下落が株式市場の心理を悪化させる
– 企業の持合株式(銀行)の株価下落により一定の打撃
• 短期国債等で運用されるMRF(残高10兆円程度)の運用成績の悪化
– 15年度平均残高(11兆円程度)まではマイナス金利の対象外
• マイナス金利が低コストの金融サービス普及を促す可能性
– フィンテック等
20
Ⅳ. 「劇薬」に7つの副作用の懸念 - 「経済の血液」の流れが滞る?
保険・年金など資産運用への悪影響
「もはや国債での運用は困難だ」
「予定利率の引き下げや商品の売り止め(を検討する動き)が出始めている」
(生命保険協会会長 筒井義信氏)
• 予定利率の引き下げが保険料引き上げの要因に
保険料
【純保険料】
・ 予定利率
・ 予定死亡率
将来契約者に支
払うお金に充て
る保険料
【付加保険料】
・ 予定事業費率
保険会社運営に
必要な経費に充
てる保険料
運用成果が予定利率を
下回り逆ザヤに陥るリスク
「外国債券や社債などへの投資で運用資産の分散を図らなければならない」
(生命保険協会会長 筒井義信氏)
• リスク性資産への資金移動は「マイナス金利政策」の狙いの一つ
• 反面、保険加入者のお金が従来より大きなリスクにさらされる
• 最近では国債依存度を下げる方向にある
• とはいえ国債運用による金利収入は減り、よりリスクの高い資産での運用を増やさざるを得なくなる可能性あり
年金運用へも影響を及ぼす可能性
21
Ⅳ. 「劇薬」に7つの副作用の懸念 - 「経済の血液」の流れが滞る?
人々の心理を暗くしてしまう危険性
アンケート内容
50%
13%
61%
期待できる
期待できない
100%
マイナス金利政策で景気の回復が期待できるか
(朝日新聞社)
(産経新聞社・FNN)
17.3%
66.3%
期待できる
期待できない
マイナス金利政策で景気の好循環を期待できるか
23%
53%
評価する
評価しない
マイナス金利政策を評価しますか
(日本経済新聞社・テレビ東京)
• 金融緩和政策は人々の心理を刺激して、デフレマインドを払拭することが目的
• 一方、「通常はプラスの金利をマイナスに押し下げる政策」が、日本経済に異常なことが発生しているイメージ
• 今の日銀の金融緩和政策は、人々の期待への働きかけを重視
• 「最も重要な効果波及経路は実質金利の低下」(黒田日銀総裁)
フィッシャー方程式 : 名目金利 = 実質金利 + 期待インフレ率
例)
マイナス金利政策で
人々のデフレマインド
が強まる場合
1%で借入
-1%
2%の物価上昇を予想
0.5%
-1%
1.5%
1%
マイナス金利政策
-1%
変わらず
2%
デフレマインド
• マイナス金利政策が人々のデフレマインドを強めるかの明確な結論は見えていないが、人々の心理・経済にどのよ
うな作用を及ぼすのかを注視する必要あり
22
Ⅳ. 「劇薬」に7つの副作用の懸念 - 「経済の血液」の流れが滞る?
財政の規律を低下させるリスク
• 日本政府は巨額の財政赤字を抱える
• 利払い負担の軽減で、財政出動による景気刺激がやりやすくなる
• 一方、財政健全化の動機が働きにくくなる側面も
日本の政府債務はGDPの2倍以上
財政の健全化に向けた動きがさらに後退するのは望ましくない展開
■ 公債残高の累計
Note : 借入金・政府短期証券含まず
Source : 財務省HP http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/004.htm
24
Ⅳ. 「劇薬」に7つの副作用の懸念 - 「経済の血液」の流れが滞る?
緩和政策の出口が遠のく可能性 / 地価など資産バブル形成の懸念
• 物価上昇率2%の安定的な持続に必要な時点まで現政策を継続
⇒条件が満たされれば政策をやめるとは言っていない
• 巨額の国債購入等の緩和政策終了
⇒長期金利が跳ね上がる⇒様々なショックが経済を襲う(政府の財政状態悪化、金融機関の経営悪化等)
⇒2%の物価安定目標が達成されても現政策を続けざるを得ない可能性
⇒金融抑圧(政府の干渉により、金利をインフレ率を下回る水準に誘導すること)
緩和政策の出口が遠のく可能性
物価目標達成後のインフレリスク
「インフレが目標より上振れても日銀は大規模な国債購入を続けざるを得ない。その場合、
金利からインフレ率を差し引いた実質金利は大幅なマイナスが続かざるを得ないから、イン
フレには歯止めをかけられない。」
(日銀OB・京都大学教授 翁邦雄氏)
• マイナス金利政策導入決定後にREIT指数の上昇、株式市場と異なる不動産関連の株価の変動
地価など資産バブル形成の懸念
スウェーデンの事例
「金利低下で住宅バブルが起こりつつあるとみられている」
「マイナス金利は、物価を上げずに住宅価格を押し上げた可能性がある」
(みずほ総合研究所上席主任エコノミスト)
25
Ⅳ. 「劇薬」に7つの副作用の懸念 - 「経済の血液」の流れが滞る?
国際的な通貨安競争をあおるリスク
「既にマイナス金利を採用する他国中銀とのマイナス金利競争に陥ることを懸念する」
(日銀公表の「主な意見」)
• マイナス金利政策には。通貨高防止・通貨安促進の効果あり
⇒世界的な「通貨安競争」に発展する懸念がある
通貨安競争を一概に否定すべきでない
「一部の歴史の教科書では、大恐慌期に通貨切り下げ競争が起きて、世界恐慌が激化した
といわれているが、これは間違った歴史の解釈である。全世界が金融緩和すれば全世界
の景気が良くなるだけだ。よくなりすぎてバブルになりそうな国があれば、そんな国から引き
締めを始めればよい。」
(日銀審議委員 原田泰氏)
• 米国と中国で自国通貨高への政治的な不満が一段と広がるリスクは?
「FRBは中長期的な視点でのマイナス金利採用を排除していないが、それは近未来の政策
シグナルではない。」
(米金融情報コンサルタント会社)
• ただし、日銀の政策が米中の政策スタンスにどんな影響を及ぼすのかは注視すべきポイント
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Ⅰ
「円高圧力を消せ」 - 導入の内幕
Ⅱ
経済刺激どこまで - 仕組みと効果
Ⅲ
予想外の円高・株安 - 日銀の誤算とは
Ⅳ
Ⅴ
「劇薬」に7つの副作用の懸念 - 「経済の血液」の流れが滞る?
資産運用どう変える - コスト重視とリスク回避
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Ⅴ. 資産運用どう変える - コスト重視とリスク回避
概略
銀行預金に5つの注意点
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金利の水準に一段と敏感になること
金利の方向性に関する感度を磨くこと
手数料の重みが増す点に留意すること
流動性の確保を忘れないこと
様々なリスクに注意を払うこと
• マイナス金利は常に実現するとは限らない
• 金利は固定か変動か
• 負担軽減へローン借り換えの好機
住宅ローン減税とのセットで「マイナス金利」を実現
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