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平成27年度 若者の社会参画 実践事例集(pdf形式:約10MB)

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平成27年度 若者の社会参画 実践事例集(pdf形式:約10MB)
若者の社会参画 実践事例集 公民館で輝く中高生の出番づくり
社会教育に関する調査研究
若者の社会参画 実践事例集
公民館で輝く
中高生の出番づくり
~事前参画とキーパーソン~
岡山市立岡輝公民館
岡山市立藤田公民館
笠岡市
陶山公民館
28
年3月
〒700-0016 岡山市北区伊島町三丁目1番1号
TEL:086-251-9751(振興課)
http://www.pal.pref.okayama.jp/
https://www.facebook.com/okasyogaise
岡山県生涯学習センター 平成
発行 岡山県生涯学習センター
岡山市立光南台公民館
岡山市立岡南公民館
岡山県生涯学習センター
平成28年3月
はじめに
開始から5年が経過したおかやま子ども応援事業では、「地域が子ども(学校)を元気
にし、元気な子ども(学校)が地域を活性化する!」を目指す姿とし、子どもと地域の双
方向の取組を推進しています。 平成26・27年度の県社会教育委員の会議は、「地域の中で輝く中高生の出番づくり」
について研究しました(提言:「地域の中で輝く中高生の出番づくり~地域への愛着心・
自己肯定感の向上をめざして~」)。岡山県生涯学習センターではこの県社会教育委員の会
議と連携して、社会教育に関する調査研究を進めました。
県社会教育委員の会議が、公民館・学校・市町村における中高生の企画・運営への関わ
り方、大人・異年齢者とのつながり、事業の成果等について分析しているのに対して、当
センターでは、社会教育・生涯学習の中核的拠点である公民館での中高生の活動にしぼり、
特に中高生の当日の参加だけでなく事前参画の様子とキーパーソンの思い・工夫の二点に
焦点化して調査研究を行いました。その結果、県内の公民館において、中高生の様々な素
晴らしい参画の様子を見ることができました。
そこで、県内の公民館における好事例をまとめ、広く情報発信し、社会総掛かりで中高
生の出番づくりを推進する気運を高めることをねらいとした本事例集を作成しました。編
集に当たっては、5事例の紹介とともに、実践の際のポイントがより詳細にわかるように、
優れた実践をされている方の座談会を開催し、それについてもまとめました。
本事例集がきっかけとなり、中高生の参画に関する豊かな環境づくりの推進につながれ
ば幸いです。
終わりになりましたが、公民館や学校職員・中高生の皆様をはじめ、ボランティアや市
町村教育委員会・NPO法人の皆様、本事例集の作成に当たってご協力いただきました関
係者の皆様に厚くお礼申し上げます。 岡山大学大学院教育学研究科 熊谷愼之輔准教授には本調査研究の検討委員として貴重
なご指導をいただきました。心から感謝申し上げます。
平成28年3月
岡山県生涯学習センター 所長 岡 本 啓
目次
1 なぜ、中高生の出番づくりか ���������������������� 1
岡山大学大学院教育学研究科 准教授 熊谷 愼之輔 氏
2 実践事例
①岡山市立岡輝公民館 ……………………………………………………………………… 3
②岡山市立藤田公民館 ……………………………………………………………………… 9 ③岡山市立岡南公民館 ……………………………………………………………………… 15
④岡山市立光南台公民館 …………………………………………………………………… 21
⑤笠岡市・陶山公民館 ……………………………………………………………………… 27
3 座談会 ……………………………………………………………………………………… 33 岡山市立中央公民館 主任(社会教育主事)重森 しおり 氏
岡山市立藤田中学校 指導教諭 小野田 誠 氏
笠岡市・陶山公民館 主事 西江 律子 氏
ファシリテーター:岡山大学大学院教育学研究科
准教授 熊谷 愼之輔 氏
1
なぜ、中高生の出番づくりか
本県では、国の補助事業を活用し、地域住民の参画による学校教育支援、放課後等支援、家庭
教育支援の活動を効果的に組み合わせた「おかやま子ども応援事業」を実施し、地域ぐるみで子
どもを健やかに育む事業に取り組んでいる。この事業は開始から5年が経過し、事業の中核をなす
学校支援地域本部の設置数と設置率が増加していることから、地域から子どもへのかかわりの機
会が増え、県下での教育支援体制が整いつつある(図1)。しかし、図にみられるように、設置率
については小学校(54.6%)より中学校(43.8%)の方が低くなっており、中学校での取り組み
が課題となっていることがわかるだろう。だからといって、
小学校で行ってきたような
「学校支援」
の取り組みを、そのまま中学校にあてはめて拡充させていくのは難しいと思われる。中学生以上
の中高生には、彼らの発達段階や特性にあった取り組みを検討していく必要があるからである。
100.0%
250
218
200
80.0%
161
150
48.7%
116
100
50
0
(校)
90.0%
199
74
39.2%
28.0%
17.7%
18.0%
31
平成23年度
54.6%
21.5%
37
29.1%
34.9%
59
50
43.8%
70
70.0%
60.0%
小学校設置数
50.0%
中学校設置数
40.0%
小学校設置率
30.0%
中学校設置率
20.0%
10.0%
0.0%
平成24年度
平成25年度
平成26年度
平成27年度
図1 学校支援地域本部の設置数と設置率の推移
その意味では、地域社会において中高生の社会参画を促す取り組みが有効と考えられる。
これは彼らを“支援”の対象としてではなく、これからの地域をともに支える“パートナー”と
して捉え、彼らの出番づくりを地域で意図的・計画的・積極的に推し進めていく取り組みに他な
らない。さらに、彼らの取り組みを地域の大人たちでしっかりと承認することで、彼らの自己肯
定感や自己有用感の向上につながっていくことも期待できよう。
1
これは、これまで重点を置いてきた「地域(大人)から学校(子ども)へのベクトル」とは反
対の「学校(子ども)から地域(大人)へのベクトル」の取り組みと位置づけることもでき、双
方向の取り組みを今後推進することで「おかやま子ども応援事業」が標榜するところの、「地域が
子ども(学校)を元気にし、元気な子ども(学校)が地域を活性化する!」ことが実現できるの
だろう。
ただし、学校だけでこうした中高生の社会参画をすすめていくことは困難に違いない。その取
り組みからいっても、やはり公民館が大きな役割を果たすことが求められる。だが、岡山県教育
委員会生涯学習課の調べによると、中高生の出番づくりに取り組んでいる県下の公民館は36館(全
体の約13%)と決して盛んなものとはいえない。この原因には、公民館事業の対象者(学習者)
は大人であるという固定観念がどうしても根強く、子ども、とりわけ中高生が対象者(学習者)
として想定されにくいことが考えられるだろう。しかし、地方創生が叫ばれる今、これまでみて
きたように、中高生を“パートナー”と捉え、彼らとともに新たな地域コミュニティを創り出し
ていくことは、公民館の存在意義を高め、その活性化にもつながる重要なことだろう。そのため
には、現在、県下で実施している先駆的な取り組みを調査し、研究することが必要になってくる。
その際、
「事前参画」と「キーパーソン」を研究の着眼点・視点として設定することにした。中
高生の出番といっても、当日だけの手伝いでは彼らのやらされ感も高まるだろう。彼らを“パー
トナー”とするのなら、事前の企画段階から彼らとかかわっていく方が効果的なはずである。し
かも、公民館は“学びを通した”地域づくりをすすめる教育機関であるため、「事前参画」という
大切な学びのプロセスを見落としてはならない。なお、このように、本研究では中高生も積極的
そして主体的に取り組みにかかわっていくことを重視しているため、
「参加」ではなく、
あくまで「参
画」という用語を用いている。
もう一点の「キーパーソン」も欠かせない視点である。先駆的な取り組みを通覧すると、多く
の場合そこには「キーパーソン」となる人物が存在し、活動成功の鍵を握っていることがうかが
われた。とすれば、
「キーパーソン」の動きを注視し、彼・彼女らの思いや役割を把捉することが、
公民館における中高生の社会参画を今後推進していくのに役立つと考えられる。
そこで、これらの「事前参画」と「キーパーソン」を研究の着眼点・視点として、県下の公民
館における取り組みの中から、先駆的で魅力的な5事例を取り上げ、調査研究をすすめていくこと
にしたい。
(熊谷 愼之輔)
2
2 実践事例 ①
キーワード:国際経済科高校生・学区居住外国人・公民館
岡山市立
岡輝公民館
事業名:まるごとワールド in 岡輝
主催者:岡山市立岡輝公民館
事業のポイント
岡山南高等学校国際経済科の高校生が学区居住外国人とともに公民館で交流会を企画運営する。
この事業は平成26年度から今年度で2年目である。参画する高校1年生にとっては、当然ながら初めての取
組となる。
この事業の最大の特徴は、公民館と地域にある高校の国際経済科が連携していることにある。国際経済科1ク
ラス全員が参加し、とても活気がある。
岡輝公民館では多文化共生のまちづくりを推進している。岡輝学区には4%を超える在住外国人が居住してい
るが、まだ地域住民とのつながりが薄いという課題を抱えていた。また、若い世代の地域での活躍を広く学区住
民に知ってもらうことも念願としてあったのである。自分たちの世代だけでなく、世代を超えて若者にも参画し
てもらいたいという担当者の思いも強くある。
当日の参加対象は岡輝学区住民一般希望者であり、内容は実行委員会で決定する。
高校生にとっても在住外国人にとっても住民にとっても異文化交流ができる。学校の中ではなく、普通に接す
るという空気感の中でお互いの文化にふれ、コミュニケーションをとりながら交流することができる。話し合い
や踊りやブラジル式揚げぎょうざを作りながらの普通の生活の中でのコミュニケーション。楽しいことの中で学
びは身につく。このことはものすごく大きいと感じている。
事業開始のきっかけ
この事例は公民館から学校に提案した事例である。
岡輝公民館から岡山南高等学校に話をもちかけて始まった。岡輝公
民館長は岡山南高等学校の外部評価評議員になっているため、公民館
館長と校長が会合で顔を合わせることが多く、様々な連携が取りやす
い環境にある。この取組を始める前にすでにいろいろな連携をしていることからもこの事業を進める環境は整っ
ており、
それを上手に活用したということが言える。
スムーズな協働のためにも大きな参考としたい仕組みである。
参画の対象・人数
事前①:岡山県立岡山南高等学校国際経済科1年実行委員5名+教員2名
一般地域ボランティア2名、在住外国人3名(親子)、岡輝公民館職員(鳥越館長・藤山さん・今井さん)
事前②:岡山県立岡山南高等学校国際経済科1年21名+教員2名、一般地域ボランティア2名、外国の方2名、
岡輝公民館職員(鳥越館長・藤山さん・今井さん)
当 日:岡山県立岡山南高等学校国際経済科1年41人中32名参加+教員2名、一般地域ボランティア2名、外
国の方2団体・20名程度
参画の形態 連携図
部活・地域貢献活動
岡山県立
岡山南高等学校
国際経済科
一般地域
ボランティア
岡輝
公民館
3
D.
C.
R.
の会
ほか岡輝学区
在住外国人
清輝学区町内会
岡南学区町内会
総社ブラジリアン
コミュニティ・
I..F .
OKPC
(岡山・倉敷
フィリピーノ
サークル)
キーパーソンの紹介
岡山市立岡輝公民館
主任(社会教育主事)
藤山 宙子さん
所属・年数・事業との関わり
岡山市立岡輝公民館に勤務して1年目である。鳥越
館長も1年目であり、この事業には今年度初めて関わ
ることになる。
若者の参画事業への思いと工夫
こうした取組では、公民館が単独で企画して交流会
をもつということになりがちだが、岡輝公民館ではそ
こに若者の参画を導入した。
公民館職員の藤山さんは、別の公民館で中学生と大学生の参画の事業を経験している。中学生には防災などの
イベントで話し合いから参加してもらった。中学生の発達段階を考えて、かなり説明をしたり場合によって補助
にまわってもらったり、AEDの学習も一緒に行った。大学生には、ほとんどこちらから手出しはしない。大学
生が、手作りの楽器製作・曲選定・プログラム作成・当日の司会など企画運営のすべてを行い、地域の文化祭で
演奏を披露した。演習やファシリテーターの養成にもつながった。この事業では、その経験を生かして高校生に
接していった。
藤山さんは公民館職員を巻き込んでこの事業に取り組んでいる。ねらいと段取りについてはじっくり共通理解
する場と時間を必ず設定した。全館で取り組もうとする雰囲気を作っていて、元気がみなぎっている。藤山さん
をはじめ公民館職員が活躍しているので、決して広くない岡輝公民館が、広く感じる。
若者とともに事業をする際に、藤山さんが心がけていることが一つある。それは高校生が自ら進んで活動する
環境をつくることである。どうすれば高校生が活躍できるかを一番に考えている。当たり前のことではあるが、
「させる」
という意識は絶対にもたない。命令口調はもちろんそういう意識は絶対にもたないということである。
高校生がいないときに公民館職員同士で話す際にも「○○は高校生にさせればよい。」という言葉は絶対にあり
えないという。高校生を事業の補助的な立場としてではなく、主人公としてとらえる姿勢がそこにある。
参画場面ごとの働きかけのポイント
○企画段階
高校生が司会をしたり意見をしっかり出したりできるように、まず最初は藤山さんがワークショップを行って
意見を引き出したり、司会の仕方を見せたりしている。
○実施段階
高校生が生き生きと動けるように、公民館職員が一致団結して取り組めるような雰囲気づくりをする。高校生
の活動の様子を取り上げ、ほめたり相談にのったりすることで気運を盛り上げていく。
4
参画Ⅰ 企画・話し合いの段階
岡輝公民館 7月4日 10:00~12:40
まるごとワールド in 岡輝 第2回実行委員会
参加:岡山南高1年国際経済科実行委員5名・教員2名、
一般地域ボランティア2名、
在住外国人3名
(親子)
、
公民館職員(鳥越館長・藤山さん・今井さん)
□高校生がしたこと
○ゲームの内容と運営の係の決定
本日の事前の話し合いは、ゲームの内容と運営の係を決めることが
中心である。実行委員会の高校生代表1名と藤山さんが司会を行う。
自己紹介のにぎやかな雰囲気でスタートした。話し合いは全員で意見
を出す。今日は高校からは実行委員としてクラス41人の班の中のそ
れぞれの代表の5人が参加している。
自己紹介では、「さりい」
「てんてん」
「めいめい」など一人ずつ自
分が呼んでほしいニックネームを言うことからスタートする。ニック
ネームを言う度にみんなの笑顔がこぼれる。
そこに集まっている人は初めて顔を合わせるわけだが、高校生たち
は積極的に話し合いを進めていく。
例えば、魚つりゲームでは、高校生が自ら手を挙げ、意見を述べる。
「質問です。魚釣りは何匹までって決まっているんですか?」高校生
たちは、うなずきながら一生懸命聞いている。
「時間は?」
「30秒が
いいです。
」
「何人にする?」
「最高5人まで。」
「集計はむずかしいよ。」
「裏に点数を書くようにする。」
「時間は実際にやってみて決めよう。」
また、ピンたおしについて高校生が自ら提案した。
「提案なんです
けど、全部同じものだけだとおもしろくないので、ペットボトルの大
きさを変えたり、水を入れてそれにも点数を変えるようにしたらい
い。
」
「色水にしたらいいね。」「見えないように点数を底に書くといい
かも。
」
「色水の点数は係の私たちだけ知っていてもいい・・・。」「それいいね。そうしましょう!」「ボールの
数はそれにしよう!」「すごい!」などと次々に決まっていった。
在住外国人・公民館・ボランティア・高校生4者でどんどん発想が広がっていく。
当日はいろいろな料理もつくる。焼きそばをつくるのは高校生。藤山さんの「かき氷機は借りられたよ!」の
声に、高校生、笑顔で大拍手!「必要なのは小さめのスプーンで、シロップ・氷・・・。」
また、外国のお国紹介では「衣装着たい人はコーナーで試着ができるようにしたい。」と意見。アイデアがど
んどん出てくる。
話し合いの結果、お店は魚釣り・ストラックアウト・輪投げ・ピン倒し・宝探し・パチンコに決定した。担当
は、受付・景品・入場カード・ゲーム・料理があり、それぞれ役割分担を行った。
明日の準備への意気込みを藤山さんに聞かれると、高校生たちは「いっぱい仲間を連れてきたいです。よろし
くお願いします。
」「国際経済科のみんなはテンションあげあげで元気いっぱいの子ばかりなので、楽しくやりた
いです。
」
「いろいろ案とか出してもっと貢献できるようにしたいです。」「みんなでわいわい準備できたらよいと
思います。
」と次々に答えた。
□キーパーソンがしたこと ○司会の仕方
この段階では高校生が後に司会も行えるように、手本を見せる意味で司会をする。初めて顔を合わすので、い
きなり高校生が司会をするのは当然ながら無理である。そこで、初めは藤山さん、徐々に実行委員会の高校生も
司会をするスタイルをとっている。まず、ざっくばらんな雰囲気にするために自分が呼んでほしいニックネーム
を含めて自己紹介に入っていった。高校生が自分たちで工夫できそうなところは、しっかり任せるなどして、あ
5
る程度責任をもって達成感がもてるようにしていった。
○事前準備会2回の設定
内容を決めること、詳細な内容を決めて準備することの2回の事
前参画の機会を設定する。この参画Ⅰ企画・話し合いの段階では、
当日の具体的な場面を想定した活発な話し合いになるよう発言を促
していく。
○藤山さんの動き
担当者の意気込みは自然と周囲に伝わってくるものである。それ
が周囲を動かす。藤山さんの動きにはこの言葉がぴったりとくる。
高校生も藤山さんの勢いに意見を引き出されていく感じだ。
藤山さんは快活でにぎやかな雰囲気で話し合いを進める。初めは
5名の高校生や一般地域ボランティアたちに一つ一つ聞いていきな
がら意見を交換する。在住外国人、ボランティア、高校生の誰が答
えてもいいので、高校生も意見を述べていく。様子を見ながら藤山
さんやボランティアや在住外国人は重要なポイントで高校生に意見
を求める。高校生の活躍を誰もが期待している感じがよく伝わって
くる。お店や料理などの準備は任せられるところは高校生に任せ
る。あっという間に時間が進んでいく。
また、藤山さんは地域ボランティアに自由に話してもらうための雰
囲気づくりを日頃から行っている。地域ボランティアの方々も活発に
意見を言う。岡輝公民館職員は藤山さん、鳥越館長、今井さんが始め
から終わりまで参加する。話し合いの場面では公民館職員としては担
当のみが参加して進めると比較的気軽に話せていいという場合もよく
みられるが、岡輝公民館のこの話し合いでは公民館職員が団結して進
めていくという覚悟の表れであると感じた。藤山さんはボランティア・
在住外国人・高校生・公民館4者が協力する環境をうまくつくっている。
参画Ⅱ 詳細な話し合い・準備の段階
岡輝公民館 7月11日 10:00~12:40
まるごとワールド in 岡輝 第3回実行委員会
参加:岡山南高21名+先生2名+在住外国人2名+住民
2名+公民館職員(鳥越館長・藤山さん・今井さん)
□高校生がしたこと この段階では、次のことを行う。
○お店の詳細の決定
○実行委員だけでなく、同じ学科の高校生も参加して準備
○高校生・在住外国人・地域ボランティア・公民館職員の4者がみ
んなでワイワイ楽しく準備
出展ゲームの詳細の話し合い。役割分担の話を進めるのは、藤山
さんとリーダーの女子1人。時々、外国人のタンさん。藤山さん自身が楽しく活動している。
道具づくり等の作業開始。高校生たちは藤山さんや住民の方、外国の方と交流しながら活発に活動している。
既に事前に自分たちで班分けをしてきていた。自分たちで考えて行動できている。準備はすべて手作りだ。色彩
鮮やかでかわいらしい入場カードもできあがっている。ストラックアウトでは「これくらいだったら窓がちゃん
と抜けるかな。
」などとどのお店でも来てくれる子どもの姿を思い浮かべながら準備している。
準備作業をしながら階段をかけ上がりつつ2人の高校生が「めっちゃ楽しい・・・。」と言い合っているのが
印象的だ。準備が一段落したら、担当で試しゲームをして調整を重ねる。とても楽しそうに活発に活動している。
6
□キーパーソンがしたこと ○詳細な話し合いの後は、各準備を見回りながら様子を確認し、準備を盛り上げ
○在住外国人・地域ボラとの交流の促し
藤山さんに「楽しそうですね~。」と声をかけると、
「楽しいですよ~。小学校の先生だったんですか。」
「はい。」
「それでは、社会教育と学校教育とのちがいを一つお教えしましょう。学校教育は来なくちゃいけない。来たく
なくても来ている子どももいるかもしれない。社会教育はそうじゃない。来たい人が来るのが社会教育です。そ
こからのスタートなので、楽しくてしょうがない。」と話す藤山さんの姿は自信に満ちていた。
参画Ⅲ 実施の段階
岡輝公民館 7月26日 9:00~17:00
まるごとワールド in 岡輝 当日
  9:00準備開始
11:00~13:30 ランチタイム・ゲーム
13:30~14:30 ビンゴ大会・リトミック
14:30~15:30 お国紹介(衣装・ダンス)
参加:岡山南高32名・先生2名・一般ボランティア5名・
一般38名・公民館職員
□高校生がしたこと ○意欲的に活動する当日準備
①お店
②料理 パスティウ(ブラジル式揚げぎょうざ)
トルタデフランゴ(春巻きバナナ)
焼きそば・かき氷
③ビンゴ大会・リトミック(リズムにあわせて楽しく遊ぼう)
④お国紹介(衣装・ダンス)ダンス・ダンス・ダンス
⑤交流
いよいよ当日実践の日である。
事前に企画していたことが実現する日である。参加者にも喜んで
もらうことができたし、事前の話し合いで決まったことをしっかり
と生かすことができた。
当日、受付係を中心として、浴衣を着てきた生徒たちがいた。
だれからの指示でもなく、事前の話し合いから考えて、自分たちで
話し合って準備をしたことである。外国の衣装も出てくるので、自
分たちから浴衣を着ようということである。場に合わせた、臨機応
変で前向きな対応が見事である。
他に岡山大学留学生との交流会が岡山南高校であるが、校外での交
流はこの事業のみであり、高校生にとっても貴重な機会となっている。
□キーパーソンがしたこと 高校生のお店・料理・ビンゴ大会・お国紹介などがうまくいくよ
うに全体をコーディネートする。
公民館職員が一致団結するよう雰囲気をつくる。鳥越館長さんも
ダンスに参加して、大いに盛り上げられていた。
高校生が活躍できるようにがんばっている様子をほめたり困って
いたりしたら相談に乗ったりする。藤山さんの用意した高校生によ
る事前参画が実に見事に生かされた事業である。
感想・アンケート
アンケートを読むと当初の気持ちと実践後の気持ちを一連のもの
としてつなげて書いている記述が多く、企画から参加することは事前参画の意義を理解するという気持ちの変容
ももたらすことがわかった。また、経験を生かして参画への気持ちを新たにする生徒もいた。
7
高校生:「今日楽しくできてよかったです。私は輪なげの担当で小さい子たちが楽しそうにやっている
のを見て、準備がんばってよかったなと思いました。」「最初はとても不安や心配をすることばかり
だったけど、スタッフさんがやさしく話しかけてくださったりしたおかげでとても接しやすい雰囲
気を作ってくださって本当にうれしかったです。」「次の1年生がまたこの『まるごとワールド』に
参加するときは、今度はアドバイスする方として力になりたいと思います。」
一般ボランティアの柏原さん:「高校生とのかかわり。岡輝公民館いいですね。高校生たちは柔軟で素
直だし、吸収してくれる。そう感じていました。勉強になります。純粋だから、高校生の取り組む
姿を見ていると、自分の心を見直すきっかけになる。一生懸命。シャイだけど、一生懸命している
ことがわかる。」と微笑みながら話してくださいました。
参加者のお母さん:
「高校生のおねえちゃんがたくさんいると子どもは喜んでいます。小さい子でも楽
しめるような場となっているのが、いいです。」
参加者のお父さん:
「高校生に場を盛り上げてもらっています。助けてもらえます。」
担任の先生:
「学校の中では体験できないお祭りイベントを企画から運営まで参加させていただきまし
た。各自が自分の仕事を責任をもってやっていくことと、参加してくれた地域の人や自分が楽しむ
ことで達成感を味わいました。実行委員会での会議のスピード感や決断の速さなど学校内で体験で
きないことを体験し、参考になったと思います。
」
まとめ
この事例は、岡山南高等学校国際経済科の高校生が学区居住
外国人とともに公民館で交流会を企画運営することに事業のポ
イントがあった。
高校生は、1クラスがまるごと参画し、事前の2回にわたる
話し合いで提案したり、準備を活発に進めたりするとともに、
キーパーソンの藤山さんは、高校生による活発な話し合いがで
きるようにしたり公民館内が一致団結するような雰囲気をつ
くったりするなどの環境づくりを行うことによって、高校生・
在住外国人・住民をつなぐ異文化交流を図ることができた。
※岡輝公民館では、他に、岡山南高等学校生活創造科の高校生が公民館で小学生を対象に夏休み料理教室を企画
運営している。
8
1 実践事例 ②
キーワード:中学生・親子ふれあい理科教室・公民館
岡山市立
藤田公民館
事業名:ESD わくわく親子ふれあい理科教室
「夏の野外観察会」
「星の観察会」
主催者:岡山市立藤田公民館
事業のポイント
地域の人と関わりをもちたいという意識がある中学生が親子を対象に公民館の理科教室で企画運営に携わる。
この事業は平成27年度で9年目である。
この事業の最大の特徴は、地域の人と関わりをもちたいという意識がある地元中学生が中学校の教員とともに
地域にある公民館で夏休みに理科教室に参画する点にある。
会場が公民館であるということがポイントだ。学校ではなく地域づくりの最前線拠点である公民館で行うこと
に大きな意義がある。社会に開かれたアクティブラーニングがますます求められている現在では好事例の典型と
して広めたい実践である。また、このような実践がきっかけとなり、中学生や参加者の親子が公民館に足を運ぶ
ことが期待できる。
「ESDわくわく親子ふれあい理科教室」と題して、年6回シリーズで行っている。
※アクティブラーニング:教員が講義形式で一方的に教えるのではなく、学生や子どもたちが能動的に学習する
こと
事業開始のきっかけ
この事例は学校から公民館に提案して始まった事例である。
当時、藤田中学校2年目の小野田誠先生から、公民館に話をもっていった。
小野田先生は既に倉敷市立中学校の勤務していた時に倉敷市の公民館での16年の実績があった。その当時、
藤田公民館では自然観察をテーマにした講座や親子を対象にしたことはなかった。中学校としては地域で中学生
に活躍をさせたいという願いがあり、地元公民館へ提案を行った。
参画の対象・人数
事前①:岡山市立藤田中学校1年1名2年3名3年3名・小野田先生・ボランティア森本さん
当日①:岡山市立藤田中学校1年1名2年2名3年1名・小野田先生・ボランティア森本さん
当日②:岡山市立藤田中学校1年1名2年5名3年7名・小野田先生他教員2名・ボランティア森本さん・高校
生1名大学生2名・専門学校生他2名(藤田中卒業生)・岡山大学稲田教授・岡山大学学生3名
参画の形態 連携図
自由意思
岡山大学
稲田先生
+
教育学部3年
藤田公民館
高校生
専門学校生
藤田中卒業生
藤田中学校
9
キーパーソンの紹介
岡山市立藤田中学校
指導教諭 小野田 誠先生
所属・年数・事業との関わり
岡山市立藤田中学校職員として10年目である。藤田公民
館での事業は9年目。小野田先生個人としては、実に通算
25年目である。以前勤務していた倉敷市立中学校がある地
域の公民館で親子を対象にした理科教室を実践していた。
若者の参画事業への思いと工夫
こうした取組では大人の先生が来て講師を務め、その講師が企画運営すべてをしがちである。しかし、藤田公
民館では、先生だけでなく、中学生の参画を導入している。中学生の参画が、親子の活動や地域に貢献したり中
学生にとって仲間の輪が広がっていくようにと願っているからである。
小野田先生がこの事業で学校教育との違いとして認識していることがある。学校教育では中学生にとって理科
の学習としてどこか成績が気になるところがある。しかし、この公民館での事業では成績を気にする必要がない。
学校のような先生と生徒という関係ではなく、一人の大人と、地域の人と関わりをもちたいという意識がある子
どもとして接することができるということである。
小野田先生がこの事業で最も重視していることがある。
それはボランティアを含めた参加者が自分の思っていることを人に伝える、人が言っていることを聞くという
ことである。その材料として提供しているのが「理科」ということである。「理科」という場を活用して自分の
感想や考えを言うこと自体がこの事業の目的なのである。だから、事業名は理科教室だけでなく「親子ふれあい」
理科教室なのである。
それぞれの生徒が完璧になんでもやらなければいけないということではなく、一人一人できることを楽しんで
やってほしいというスタンスをとっている。一人一人の発言を大事にしており、「○○なところがいいよね。」と
具体的に子どもたちに伝えている。
中学生は部活で土日が使えないことが多い。中学生は地域で活動するチャンスがあるようでない。小学生のと
きはわりとあるのだが、中高生になるととたんになくなる。この事業を始めて中高生になっても学校外にも視野
が広がっている。中学生たちは、事前に研修したことを観察会で親子に教えることで、自分たちが役立っている
という肯定的感覚を持ってくれている。それがまた、学校内にももたらされ、よい循環になっていると感じてい
る。将来的には小野田先生が手を引かれても公民館と中学生でこの事業ができるようにと体制を整えているとこ
ろである。
この観察会で活躍する2台の望遠鏡と12冊の図鑑は財団法人福武教育文化振興財団の教育研究助成を活用し
て、小野田先生と公民館で相談して購入したものである。親子が楽しく使用するこれらの望遠鏡たちは小野田先
生と藤田公民館の連携の象徴でもある。
参画場面ごとの働きかけのポイント
○企画段階
中学生が当日活躍できるように、観察する生物の基礎知
識について知ることを目的とする。実際に観察したりセミ
博士クイズの練習をしたりする場を設定する。
○実施段階
観察の進行をしながら、中学生が活躍できるように、ほ
めたりアドバイスしたりする。
10
参画Ⅰ 企画・話し合いの段階
藤田公民館 8月1日 10:00~12:00
「夏の野外観察会」 事前研修会
参加:藤田中中学生7名・小野田先生・
森本さん・公民館(館長・猪原さん)
□中学生がしたこと 本日は観察会の事前研修を行う。主にすることは次のとおりである。
○望遠鏡のセット練習
○生き物についての基礎知識の習得
○観察会実地研修(公民館周辺)
○セミ博士クイズの練習
毎回必ず最低2回は発言する機会がある。今回の自己紹介は、学校名
と名前と自分の夢について話す。3年A男「藤田中学校3年のAです。
ぼくの夢は高校で陸上100m自己新を出すことです。」2年Bさん「1
年生のときから参加しています。歯科技工士になりたいです。」
中学生の参加は自由参加で、地域の人と関わりをもちたいという意識
がある生徒たちである。継続してきている子や以前参加していたお兄ちゃ
んから
「この会いいよ。
」
と聞いたことがきっかけで参加してくる子もいる。
本日は観察会に関する基礎的なことを学習する。まず、望遠鏡のセッ
トをする練習をする。小野田先生と公民館で相談して購入した「Nicon
フィールドスコープEDⅢ」だ。観察にはもってこいである。当日の場
所へ実際に行ってみて、望遠鏡を使ってみる。望遠鏡でカワウという黒
い鳥をのぞいたり、セミをつかまえたり、ヘクソカズラ等当日観察する
昆虫・植物を観察・体験する。
公民館の室内に帰って、セミ博士クイズの練習。だれがどのセミを担
当するのかを決める。1年Cくんはクマゼミ、2年Bさんはウチワヤン
マとコシアキトンボ、2年Dくんはアブラゼミの担当になった。博士ク
イズ練習もでき、当日うまくいきそうだ。
□キーパーソンがしたこと ○当日の動きを想定した具体的な事前研修
○一人一人あいさつや感想などを一言言う場面を必ず設定
○理科の興味をそそる内容と楽しい雰囲気づくり
○公民館職員・猪原さんとの連携
司会は小野田先生。いきなり陽気に開始され「小野田先生ワールド」が展開されていく。メリハリがあり、活気があ
り、
元気、
おもしろい感じ。全員が小野田先生の話に集中している。それだけ引きつけるものが先生にはあるのである。
先生は、場や出会いを大切にし、その場にいる人全員にあいさつや感想などを一言言う場面を必ずつくってい
る。その場にいる人と感情や思いを共有することは何より大切だと考えているからである。
セミ等の情報が入ったテキストを順に一人ずつ読んでもらうことで学習する。パソコンでセミの鳴き声再生。
「クマゼミの『シャア、シャア』という鳴き声を聞いた。」のところで、
「シャアシャア」といってもガンダムじゃ
ないですよ?!(全員笑)などと楽しい雰囲気を演出しながら進める。
当日観察する昆虫・植物について基礎的な内容について本番に備えて勉強する。中学生にとって知的な理解につ
いても満足できる様子だ。
「セミの寿命はだいたい一週間というけど?」
「ところが・・・実際調べてみると、大阪
でですが、
1か月以上生きているセミもゴロゴロいる。
」
自分たちで調べないと本当のところはわからないのである。
実際に当日観察する場所で研修する。ヘクソカズラという植物のいやなにおいを人の鼻先にもっていかせない
等実地で参加者がついやってしまいそうなことを事前に注意しておく。生理的にいやな人にはさせない。大事に
してほしいことを伝える。望遠鏡のセッティングを練習させる。当日のスムーズな運営、的確な観察には必須だ。
11
小野田先生所有の望遠鏡5台、藤田公民館で購入したものが2台である。
参画Ⅱ 実施の段階「夏の野外観察会」
藤田公民館 8月8日 10:00~12:00
「夏の野外観察会」 当日
参加:藤田中中学生4名・小野田先生・森本さん・
公民館職員2名
□中学生がしたこと ○事前研修会を生かせた本番
事前研修を生かして実践していった。中学生たちは参加の親子に一人
一人対応していった。
全員が自己紹介と一言を話す。3年で受験勉強があるのに進んで参加
している生徒もいる。子どもにセミ取りを教えたいお父さんも。中学2
年生女子「虫がさわれなかったけど、この観察会の中で虫がさわれるよ
うにしたいです。今日は全力でサポートします。」参加者・お父さん「虫
が好きだけどさわれない息子に、この観察会で虫にさわっている子を見
て、自分の子もさわれるようになってほしいと思って参加しました。」
室内でセミなどの説明。事前の練習を生かして上手にできた。外に出
て観察会本番である。これも事前研修を生かして望遠鏡のセットがス
ムーズにできた。中学生たちは参加者が見やすいように望遠鏡のセット
をする。観察もセミ博士クイズも事前に練習したとおりうまくいった。
事前研修でやったように望遠鏡をスムーズにセットし、喜ぶ親子に笑顔
の中学生男子。事前研修でとった経験を生かし、ウスバキトンボを見せ
る男子。4種類のセミの抜け殻を見つけた参加者にセミの種類を教える
女子。まさに事前研修が生きた場面である。
参加者の感想。お母さん「30年ぶりにセミを追いかけました。こんな
に速かったかな?楽しかったです。
」
「羽、めっちゃきれい。
」と観察しな
がら6回も連呼する親子連れのお母さんも。親子連れのお母さん「普段、
虫などについて漠然と話しています。今日は具体的に話ができました。
家でも今日したような話ができたらいいなと思いました。
」6年男子「3
年から参加しています。
」男の子「いっぱいつかまえてうれしかったで
す。
」ボランティア中学2年生女子「4つのセミの抜け殻、見分けること
ができました。自分でも成長したと思った。セミが来るとまだビクッと
してしまうので、来年は堂々と捕まえられるようにしたいと思います。
」
ボランティア中3男子「ぼくは中3だけど、高校生になってもボランティ
アに参加したいです。
」親子連れのお母さん「大学生のとき20数年前か
ら参加しています。
(中学2年生の女の子が)昨年より説明が上手になっ
たので、中学生が成長できていますね。
」と帰り際にわざわざその子に言ってあげていた。冒頭でふれた虫にさわ
れない男の子、終わりに「少しさわれた・・。
」と発表してくれた。そのお父さんもとてもうれしそうだった。
□キーパーソンがしたこと
○親子ふれあいの場づくり
いつものとおり楽しい雰囲気を演出していった。
観察会の進行をするとともに楽しい親子のふれあいができるように、中学生の事前研修が生きるように支援し
ていった。
12
参画Ⅲ 企画・実施の段階「星の観察会」
参加:藤田中中学生13名・高校生1名・大学生2名・専門学校
生他2名・岡山大学稲田教授・大学生3名・10家族・小
野田先生・森本さん・公民館職員2名
藤田公民館 8月22日
18:30~20:30
「星の観察会」 当日
□中学生がしたこと ○事前研修の成果が確実に反映
今回は、早めに来て準備をする。 星空博士クイズの練習をする。小野田先生によって今日も楽しい雰囲気
である。
拍手をしたりして一気に活気のある雰囲気になった。小学校のときから
来ている人も中学校のときから来ている人もいる。継続していてすごい‼ 大きな望遠鏡のセット練習。岡山大学稲田教授。
参加者が集まり、今回も全員一言意気込みを言う。参加者もリピーター
の方もいる。藤田中3年男子「だれよりも早くピントを合わせるのでよろ
しくお願いします」「だれよりも楽しめるようにがんばりますので、よろ
しくお願いします」参加保護者「参加6年目です。望遠鏡で星を見るのは
はじめてですが、よろしくお願いします。」
室内で概要を学習した上で、外に出て観察会本番である。 中学生たちは参加者が見やすいように望遠鏡のセットをする。観察は事前
に練習したとおりうまくいった。
月の左横に土星!岡山大学の自動追尾システム望遠鏡もセットされた。あ
る家族は岡大の望遠鏡を覗きながら「見えた!土星のマルと輪っかと。すご
い!かわいい。
「
」わっかきれい。
けっこう、
はっきり見える。
「
」ちょーすげえ。
」
この日はたまたま無人補給機「こうのとり」と「国際宇宙ステーション
(ISS)
」が夜空に観測できる日であった。はじめにこうのとりが見えた!
すごい!次にISSも見えた! ISSに向かって、みんなで「油井さ~ん」と
呼びながら手をふる。ISSが消えた瞬間、なんと小野田先生が「見えたらいいですね。」と言っていた流れ星も見
えた。
「流れ星!」口々に叫びながらみんなで拍手。「感動~」という声が印象的だった・・。
室内に帰っての星空博士クイズも練習したとおり、楽しいものにすることができた。
□キーパーソンがしたこと ○いつもどおりの楽しい雰囲気づくり
○参画の循環
小野田先生・森本さん・藤田中学校理科教諭小野先生が参加。事前にこうのとり、ISSの軌道を調べて当日に
備えていた。
藤田公民館は道路沿いにあり、交通量が多いので、館長さんは道路角に立って終始車に注意を払い、安全に万
全を期しておられた。館長さんの思いが伝わってくる。 岡山大学の稲田教授との連絡調整や同日の直前研修会の運営を行った。
この日中学校の卒業生他18人の学生が参加した。参画の体験を生かして再び参画するという循環が行われて
いる。終了後、ていねいにわざわざお礼に来られた夫婦もいた。
感想・アンケート
○夏の野外観察会
参加者母:
「下の男の子は毎日セミとりをして何が採れているのか分からないままを楽しむだけでした
が、セミの種類(見分けるポイント)を教えていただき、今度ますます!?セミとりにはりきってい
13
きそうです。」
参加5年男の子:
「今日は、セミがいっぱいとれました。とくにアブラゼミがいっぱいとれました。ニ
イニイゼミのぬけがらがとれてほんとうにちっちゃかったです。」
参加者1年男の子:
「せみさわれたよ」
参加者父:「子どもも初セミタッチができて、よい経験になりました。次はキャッチまでできるとうれ
しいです。」
ボランティア中学生男子:「暑い中でも、小学生やちっちゃい子たちがセミや野鳥、植物に興味を持っ
て観察していて、うれしかったし、こちらも楽しむことができました。終盤、暑さでヘトヘト」
○星の観察会
参加者父:「人工衛星を実際に見ることができ、感動しました。サプライズで流れ星まで・・。子ども
のころ夜空を見上げて流れ星を見た感覚を思い出しました。」
参加者母:
「子どもたちが喜んだり驚いたりしている姿を見るとこの観察会に参加してホントによかっ
たと思ってます。私も子どものころ、こんな会があればなあと思いました。」
参加者5年男の子:
「今日は5回流れ星を見ました。それで、星に興味をもちました。また、夜ひまだっ
たら、空を見たいと思います。」
参加者1年女の子:
「月のぼこぼこが見えて楽しかったです。」
参加者父:
「中学生から大学生まで多くのボランティアで支えられている会の運営もすばらしいと思いま
した。岡山の教育界は悪いニュースが多いですが、
こういう活動を続けることが大事だと思います。
」
ボランティア大学生女子:
「子どもたちといっしょにはしゃぐのがとっても楽しかったです。逆に私に
元気をたくさんもらったようでした。若いパワーをたくさんもらえました。」
大学生のときにボランティアとしてこの事業に参加したことのある方が今度はお子さんを連れてこの事業に参
加者として参加している(断続的に20数年間参加)。
まとめ
この事例は、地域の人と関わりをもちたいという意識がある中学生が親子を
対象に公民館の理科教室で企画運営に携わることに事業のポイントがあった。
中学生は、望遠鏡のセットや観察する生き物についての実地研修・セミ博士
クイズの練習といった事前参画をするとともに、キーパーソンの小野田先生は
中学生が当日活躍できるように、実際に観察したり練習する場を設けたり、活動の様子をほめる等の支援をする
ことによって、親子が喜び、ふれあう観察会にすることができた。
藤田公民館の担当は勤務3年目で社会教育主事の猪原さん。猪原さんは小野田先生と協働することを重要視
し、この事業を担当として真正面から受け止めて運営していた。
事前研修会の終わりには「真夏の暑い中ごくろうさん」という思いを込めておかしとしそジュースを用意。中
学生たちはおかしとしそジュースを配ったり、配膳片付け等気配りをして進んでできている。立派だ。ここにく
る子はすばらしい。このしそジュースは藤田公民館への地域の方からのいただきものだそうである。藤田公民館
が地域の方に愛されていることがよくわかる。中高生が活躍できるように、楽しい雰囲気で観察を進めたり練習
や当日の動きをほめたりしながら楽しく取り組める環境をつくっていた。
14
1 実践事例 ③
キーワード:中学生・公民館・1日過ごす
岡山市立
岡南公民館
事業名:公民館で過ごそう
主催者:岡山市立岡南公民館
事業のポイント
中学生が小学生を対象に公民館で1日過ごすための企画運営をする。
この事業「夏休みフリー塾」という大きな枠組みは平成27年度で15年目の事業となる。小学生対象に夏休み
フリー塾と題して夏休み中に10日余り様々な活動を実施している。ここでは「公民館で過ごそう!」のプログ
ラムについて記述する。「公民館で過ごそう!」はその中の1プログラムで、「公民館で過ごそう!」自体は3年
目である。
この事業の最大の特徴は地元の中学生が小学生を対象に公民館で1日過ごすための企画運営のすべてを行うこ
とにある。
長い夏休みを使って子どもたちに、友達や地域の人たちとのふれあいや体験活動を提供するもので、アットホー
ムな中で中学生の意見や気持ちが最大限に発揮されている。
小学校1~6年生の異年齢の子どもたちを対象に中学生の子どもたちが企画運営する中で、参画する中学生も
とても楽しみながら活動している。岡南公民館は中学生と小学1年~6年の異年齢の子どもたちが一堂に会して
楽しく活動し、子どもたちが地域で活躍できる「地域の子どもに愛される公民館」というフレーズがぴったりで
ある。
ボランティア参加の中学生には、ボランティア証明書を発行する。
地域の力で子どもを育てるという趣旨を大切にしており、つながりづくりの場を設定している。各講座のふり
かえりの会とは別に、夏休み中に10日余り行っているフリー塾全体のふりかえりの会を行っている。このふり
かえりの会の形態は大人が参加するざっくばらんな茶話会で、フリー塾の講座同士の内容や子どもたちへの接し
方などの情報交換を行っている。中学校の教員も参加し、中学生が活躍する姿を情報提供できる場となっている。
事業開始のきっかけ
この事例はNPO法人から公民館に提案して始めた事例の1つである。
今から15年前、特定非営利活動法人岡山市子どもセンターから岡山市内の公民館へ子どもの居場所づくりを
目的として、提案された。この岡山市子どもセンターとの共催事業は岡山市内の各公民館では、もともとあった
公民館の講座と一体的に行うこともあればそれとは別に行うこともあり、館によって進め方は様々である。岡山
市では公民館単位の各地域に岡山市子どもセンターと公民館がともに事業を行っていくすばらしいシステムがで
きている。
参画の対象・人数
事前:岡山市立福南中学校2年5名、特定非営利活動法人岡山市子どもセンター徳田睦美さん
当日:岡山市立福南中学校2年5名・1年1名、特定非営利活動法人岡山市子どもセンター徳田睦美さん
参画の形態 連携図
自由意思
特定非営利活動法人
岡山市子どもセンター
(理事徳田睦美さん)
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岡南公民館
福南中学校
キーパーソンの紹介
岡山市立岡南公民館
主任(社会教育主事) 田中 靖子さん
特定非営利活動法人
岡山市子どもセンター理事 徳田 睦美さん
所属・年数・事業との関わり
田中さんは、岡山市立岡南公民館所属。岡南公民館職員としては4年
目である。この事業の担当としては今年度初めての取組となる。
徳田さんは、特定非営利活動法人岡山市子どもセンター所属。
この事業に関わってから15年目である。学区内居住。
若者の参画事業への思いと工夫
こうした取組では公民館の職員が単独で「公民館で過ごそう!」とい
う企画運営を進めがちである。しかし、岡南公民館では中学生の参画を導入している。
自由参画には人数が多く集まらないかもしれないという面もあるが、参加するために来た子どもは意欲満々で
参加するので、生き生きとした雰囲気の中で活動できるメリットがある。
田中さんは自分の意思でこの公民館に来てくれる中学生たちが提案してくるその思いをなるべく実現してあげ
ようという願いをもっている。中学生がやりやすいように支援することを大切にしており、あの子たちが「でき
たな。
」
「やってよかったな。
」と思ってもらえるように中学生の活動を支えようとしている。その感じた思いが
中学生たちの将来の何かに、地域のどこかにつながってほしいと願っている。
田中さんが中学生と接するに当たって、何より大切にしていることがある。それは、中学生のよい場面を見た
ら、必ずそのことを伝えるということである。中学生は小学生と一緒に活動したり促したりするのが本当にうま
い。
そこには大人がするときとは異なる何かがある。そのことを活動が終わった時やちょっとした休憩時間とか、
反省会で必ず具体的場面がわかるように伝えることにしている。中学生が安心して活動できている姿にはこの点
が大きく関わっている気がする。
徳田さんは、中学生が小学生に自分の弟や妹のような感じで接し、自分も役に立てるんだという思いをもって
もらえたらいいなと願っている。また、中学生に指示するのではなく、良いところを積極的に認めていきたいと
思っており、この事業では、中学生の考えをどうすれば実現できるかを一緒に考えて準備している。中学生が、
うまくいった経験だけでなく、「失敗してもだいじょうぶ、困ったときには助けを求めればよい。」という経験が
できる場、自分の考えを言うことのできる場、中学生自身も楽しめる場にしたいと考え、活動している。
二人は連携を重視し、フリー塾の夏の事業だけでなく、日頃から相談しやすい関係にある。子どもセンターと
公民館は考えやめざす方向性が同じなので、進めやすい。二人の間で「今年はここのところをこうしよう。」と
か「今年はここを見直そう。」というように進めている。
また、この事業については田中さんだけでなく、館内の別の公民館職員もともに活動し、できるだけ複数で事
業を進めるようにしている。事業の細かなところを把握していると事業担当でなくても次に担当になったときに
スムーズに対応できたり中学生への支援を厚くすることができたりするからである。
田中さんと徳田さんは、いつも全体をよくみている。中学生の動きを見て、中学生の意欲を載せるような感じ
で、必要なアドバイスを必要なタイミングでそっと提示している。中学生の気持ちや全体を把握していなければ
できないことである。
参画場面ごとの働きかけのポイント
○企画段階
中学生が自分たちの願いがかなうように、自分たちでしっかり意見を出して内容が決められるような雰囲気づ
くりにする。
○実施段階
中学生が自分たちが決めた内容で活躍できるように、全体を見守ったり準備を手伝ったりしながら支援する。
16
参画Ⅰ 企画・話し合いの段階
岡南公民館 8月2日 16:00~17:30
「公民館で過ごそう」 事前研修会 参加:福南中中学生5名、公民館職員2名、NPO法人
岡山市子どもセンター・徳田さん
□中学生がしたこと ○和気あいあいとしっかり相談、1日の過ごし方を決定
○料理メニュー・遊び・ゲームを決定
○練習
○手作りアイスクリームを作り、試食
夏の暑い日の夕方5人の中学生が公民館に集まってきた。
5人なかよしな感じ。中学生は昨年に引き続いての同じ5人
である。
現在2年生で、1年生での経験がよかったのだろう。
今年度も同じメンバーで参加してきたのである。この子たち
にとっては2回目の「公民館で過ごそう」の企画運営となる。
公民館で1日過ごす内容を考えて運営することはたいへん
だと実施開始へのハードルが上がりそうである。1日の内容
を考えるのはたいへんだと思うが、そうではない。この事例
を見ると中学生たちは喜んで参画していることがよく伝わっ
てくる。
今日は学習・昼食づくり・ゲームの内容を話し合ったりデ
ザートの試作を行うのが中心となる。まず日程の順序どおり
に自己紹介について話し合っていった。ごく自然な感じで、
進んでいった。子どもたちの様子を見ていると学校教育のときとはまた少し異なった独特の気楽さのようなもの
もあると感じる。
本番当日の日程は10:00~17:00。午前中はゲーム(自己紹介のゲーム等)・勉強(宿題)である。話し合
いのポイントはグループ分けと各内容である。
岡南公民館では実は夏休みフリー塾の中で「公民館に泊まろう」という事業を過去3・4回行っているとのこ
とである。おばけ屋敷をしたり近くの銭湯に行ったりしたこともあるとのこと。
この会の前にあらかじめ、事前に中学校で募集の説明会を行っている。そのときに田中さんから概略を説明し
ていて、遊びや料理について考えたり必要なら資料を事前の話し合いのときにもってくるように伝えていた。
「自己紹介はどうする?」
「自己紹介ゲーム。フルーツバスケットっぽい自己紹介は?名前と学年・すきなもの・
南輝、福島小の小学校名で30分。」「聖徳太子ゲームがおもしろそう・・。」「同時に言う人は増やしていく・・・。」
「正解は、紙で?」中学生「ホワイトボードがあれば・・・。」「1テーブル7人でする・・・。」
話し合いをするうちに流れで料理の話にもなっていく。あらかじめの説明会のときにした公民館からの料理に
ついてのオーダーは「スパゲッティのようなものではなく、ご飯を使う料理」ということだった。子どもたちは
いくつかのメニューや料理レシピ本をもって集まってきていた。この事業すべての企画は中学生が行った。田中
さんや徳田さんは中学生の提案してくるその思いをなるべく実現してあげようということを共有していて、子ど
もからの提案がどうしてもでないときのみ腹案をいくつか用意した上で話し合いの推移を見守っていた。
「昼ごはんはおにぎらずがいい?」「おんせんたまごは?」「(参加してくる小学生はそれぞれ)お米1合もって
くるから。
」
「スープ何にする?」わきあいあいと自分たちで相談して意見を言い合っている。「のり、ちぎる?」
「オクラいいな。
」「オクラいいよな。」「夏の野菜。」「ゆでて、切る。」「マヨネーズとあえる?」料理のレシピ本
を楽しく見ながら、「オクラと山いものスープにする?」「夏野菜のみそ汁。」「たたききゅうり。」「ねぎぶたそぼ
ろ丼おいしそう・・。」
ゲームや自己紹介など話は流れで様々に行ったり来たりする。
「ゲームなんだけど、中学生と遊ぼう パピコピ
ピコプピコペピコポピコは?」
「おもしろそうだけど、小学生にはむずかしいんじゃ・・。
」
「あいうえお作文、名
前作文は?」
「近藤さんの場合、こ、ん、ど、う→こんにちは、どうもです。意味ない・
・
・。
」笑い声がひんぱんに。
17
ときどき話の交通整理のきっかけを徳田さんが与える。
「プラバ
ンどうする?」田中さん「それおもしろそう。
」
「ひとり一個つくる。
」
徳田さん「それ、
やってみよう。
」
「担当はどうする?」
「うらかたが・
・
いいです。
」
「じゃあ○○さんはうらかた・
・
・。
」
「こむぎん?いいね。
」
(※こむぎんとは、小麦粉を風船に詰めたおもちゃのことです)
「こ
むぎんの説明は?だれがする?」
「夏休みの宿題が早く終わった子
用に問題を作ってきた方がいい?」
「早く終わった子には問題を出
してあげたらいい。
」
「小さい子のために塗り絵なんかも用意した方
がよくない?」中学生の小学生を思いやる気持ちが反映される・・。
おやつづくりをして、部屋の片付けをして、解散する。
学校とはまた異なった、
いい感じで夏休みの宿題ができそうである。
次々と小学生が喜んでくれそうなものを考えていく。子どもたち
の姿を想定して、実践した方が楽しいものになっていく。話し合い
自体の過程も楽しめているように感じた。
本番で作るのがむずかしいと想定されるアイスクリームの試作を
行う。材料は、氷・牛乳・卵黄・生クリーム・砂糖等、10分間程
度氷で冷やしながら振り続ける。小学生たちは喜んでつくるだろ
う。実際に食べてみると冷たくてとってもおいしかった。
1日公民館の過ごし方を考えるというのはすごいことである。し
かも今話し合っている中学生は数年前までは小学生で参加している
立場の子どもたちである。この2時間はただの2時間ではない。共
通理解を図ったり結束を高めるという意味もある。いい実践のため
のとても大切な時間なのだと感じた。意味ある時間である。
話し合いの結果、ゲームは自己紹介フルーツバスケット、聖徳太
子ゲーム、料理はねぎぶたそぼろ丼・オクラと山いものスープ・た
たききゅうり、宿題が終わった人は中学生があらかじめ作った手作
りの塗り絵をすること、遊びはプラ板とこむぎん、手作りアイスク
リームに決定した。
□キーパーソンがしたこと ○中学校でのボランティア募集説明会の設定
○事前準備会の設定
○中学生の意思を最大限尊重した雰囲気づくり
○徳田さんと田中さんとの連携
二人は事業を連携して進めている。
この段階では中学生が意見が言えるようなアットホームな雰囲気にする。
司会は徳田さんが進め、田中さんが見守っている。
アットホームな感じで、子どもたちは安心して意見を言うことができる。自然とそんな感じが生まれている。
そこで、安心して気軽に相談できる雰囲気も必要となってくる。「バックアップしてあげるから、安心して考え
ていることを自然にだせばいいよ。」という感じが出ている。
不安なく取り組める環境作りを進めている。5人とも積極的な子ばかりだが、中には説明などで前に出たくな
い子もいる。そんな場合は、無理させずその子が希望する担当にする。したいことやできることをするのが岡南
公民館の居心地のよさにつながっていると感じる。
特に当日難しいと想定される手作りアイスクリームの作り方を事前に作ってみるようにする。
試作をきちんと作ってみるとともに、暑い中ボランティアに来てくれてありがとうという気持ちも伝えたいと
いう意味も込めている。
18
参画Ⅱ 実施の段階
岡南公民館 8月10日 10:00~17:00
「公民館で過ごそう」 当日 参加:福南中中学生6名(2年女子5名・1年女子1
名)
、小学生25名(1年8名・2年2名・3年
7名・4年3名・5年4名・6年1名)(地元南
輝小・福島小)、NPO法人岡山市子どもセンター・
徳田さん、公民館職員2名 昨年もボラとして
参加している子もいる。ついこの間まで小学生
であった。小学生の時参加者として参加した中
学生たちである。楽しい経験があり、今日は中
学生として運営する側で参加している。循環す
るという点にも注目である。
□中学生がしたこと ○事前企画が生きた実践 ①ゲーム ②勉強 ③料理 ④デザート
いよいよ本番。自分たちが事前の話し合いで考えたことを実践する
日である。
中学生たちは子どもの扱いがうまい。小学生は中学生に親しみをも
ち、接している。
「自分もああいう中学生になりたいなあ。」と思うは
ずである。今日は事前の話し合いには参加できなかった中学校1年生
1名も参加する。自分が小学校のとき参加したことのある生徒であ
る。参加している小学生もみんなリラックスした感じ。にこにこして
みんな楽しそう。気楽な感じ。盛り上がる感じ。なにやっても楽しい
感じ。異年齢が集う。参加した子どもたちはとにかく楽しんでいる。
居心地がいいようである。
中学生は小学生によく気を配っている。自己紹介の拍手のきっかけ
をつくる。フルーツバスケットでおにになった子で1年生くらいでは
ずかしがっている子に、何を言ったらいいかコソッと相談して教えた
りいっしょに考えていっしょに言ってあげたりしている。
聖徳太子ゲーム。3人が同時に言葉を言い、3つの言葉を当てる。
次は4人が同時に。その次は6人が同時に。参加している小学生も中
学生たちもとても楽しんでいる。
料理もうまくできた。中学生1人で1グループの料理づくりを担当
する。グループに分かれ、みんなで楽しく作った。みんな「おいしかっ
た!」という感想だった。
中学生は早く宿題が終わった子のために塗り絵を家で手作りしてつくってきていた。当日は早く終わった子が
かなりいたので、事前の準備が大きく役立った。
プラ板の連携プレーがうまい。上手にできている。
「卵パックのでこぼこの面もきれいになるんじゃな。
」という
声も聞かれる。こむぎんもみんなで上手にできている。男の子はあちこちでたたかい遊びがおこる。友達とじゃれ
合う。おもしろくてしかたがない様子。中学生は「楽しいのはいいけど、投げるのはやめて。
」とか注意もするよう
になった。小学生たちも中学生のおねえちゃんという感じでとてもなついている。本当に楽しそうである。事前参
画がしっかり生きた実践になった。
アイスクリームの試食もきちんと作っていたので、
いい実践にすることができた。
□キーパーソンがしたこと 二人は、事業がうまく進行するように全体の進行状況を見守り、中学生が最大限活躍できるような動きに徹す
る。田中さん、徳田さんの他に公民館職員1名が加わり、支援を厚くする体制をとった。自然な感じで居心地良
く活動している中学生や小学生をみていると、地域の愛される公民館というフレーズがぴったりである。
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感想・アンケート
参加者1年女の子:「きょうはとても楽しかったです。何が楽しかったかというと、こむぎんでした。
とても楽しかったです。」
参加者3年女の子:
「いろいろと楽しいことをやったり、お昼ごはんをいっしょに食べたり中学生といっ
しょに遊んだり最後には一緒にバニラアイスを食べてとても楽しかったです。中学生に『ありがと
う。
』と言いたいぐらいです。」
参加者6年女子:
「おねえさんたちとってもやさしかった。」
ボランティア中学生:「今日はたくさんの子たちとおしゃべりできて、とっても楽しかったです‼みん
なで遊んだりしたときも、とても笑顔の子が多くて、楽しかったです。また、来年も来たいなあと
か思ってます‼」
ボランティア中学生:
「ゲームや工作などでとても楽しそうにしてくれたことがうれしかったです。こ
むぎんを作るのを手伝った後にうれしそうにしてくれたのでよかったです。今年もあまりふだん関
わることのない小学生と一緒に過ごすことができたので、よい経験になったなと思いました。」
ボランティア中学生:
「プラ板ができた時とかすごく喜んでくれてうれしかった。去年のゲームよりも
今年のゲームは盛り上がった。」
ボランティア中学生:
「静かな子がこむぎんが楽しかったと話をしてくれた。
このことがうれしく感じた。
」
まとめ
この事例は、中学生が小学生を対
象に公民館で1日過ごすための企画
運営をすることがポイントである。
中学生は、料理メニューやゲーム
内容について話し合ったり手作りア
イスクリームを試作したりといった
事前参画をして当日に臨んだ。
キーパーソンの田中さんと徳田さんは、中学生の思いがかなうように、中学生がしっかり意見を出しやすいよ
うな雰囲気作りや当日の動きを支援し、
参加した小学生たちは、
中学生のリードで1日楽しく過ごすことができた。
この事業の後、これらの中学生たちは地域主催の「フェスティバル福南」など別のイベントにも参加するなど
持続的に活動が続いている。
20
1 実践事例 ④
キーワード:吹奏楽部中学生・合同演奏・公民館・DVD
岡山市立
光南台公民館
事業名:KND ウィンドアンサンブル
プルミエ岡山夏祭り
主催者:岡山市立光南台公民館
事業のポイント
KNDウインドアンサンブル(KND=KouNanDaiの略。以下KND)は、光南台中学校吹奏楽部と市民(光南
台中学校区内外の住民)とで構成された吹奏楽団である。「地域に貢献する」「子どもから大人までが育ちあう」
吹奏楽団を目指してともに活動している。
プルミエ岡山は、地元光南台中学校区にある老人福祉施設で、毎年夏祭りを行っている。
KNDがプルミエ岡山の夏祭りで演奏をするのは、今回で3回目である。
KNDの最大の特徴は、中学校の吹奏楽部と地域内外の住民(以下大人メンバー)が、1つの吹奏楽団として
一緒に活動することにある。中学校や高校の吹奏楽部が単独で地域の社会施設で演奏することはよく見られる
が、学校内の活動で終わってしまうことが多い中で、中学校と公民館が連携し、学校や地域を盛り上げるために
ともに活動する稀有な事例である。
KNDは、プルミエ岡山夏祭りの他にも、年間4~7回地域内外の行事で演奏している。
事業開始のきっかけ
この事業は、公民館から中学校へ提案して始まった。
きっかけは、平成23年1月、光南台公民館が毎月1回開催している「海辺のコンサート」に光南台中学校吹奏
楽部が出演したことである。
当時、部員は5名(その後4名にまで減少)しかいなかったため、地域の大人にも呼びかけて一緒に演奏する
ことができないか公民館から中学校へ提案があり、平成23年2月に発足した。
中学生、地域の方がともに吹奏楽を共通項にして、ここに一つの素晴らしい空間ができあがっている。
【参考:DVD:公民館発ふるさとムービー第6弾 ブラス響きあうKNDウィンドアンサンブル物語KND誕生秘
話と1年間の活動を追ったドラマ&ドキュメンタリー映画! 製作movie OKAYAMA 岡山市立光南台公
民館 2015 35分】
光南台公民館で貸し出し可能。岡山県生涯学習センターでも貸し出し可能。
参画の対象・人数
事前①:KNDウインドアンサンブル 大人メンバー7名・公民館職員1名
事前②:KNDウインドアンサンブル 岡山市立光南台中学校吹奏楽部17名・教員1名・大人メンバー7名・公
民館職員1名
当 日:KNDウインドアンサンブル 岡山市立光南台中学校吹奏楽部19名・教員1名・高校生(光南台中吹奏楽
部卒業生)4名・大人メンバー 11名、ゲストヴォーカル(光南台中学校区住民)1名・公民館職員1名
参画の形態 連携図
部活+自由意思
光南台中学校
吹奏楽部
光南台公民館
地域内外の住民 ( 大人メンバー )
KNDウインドアンサンブル
21
キーパーソンの紹介
岡山市立光南台公民館 事務嘱託 山本 史織さん
所属・年数・事業との関わり
岡山市立光南台公民館に勤務して6年目である。平
成22年度からこの事業を行っており、山本さんは経
緯を初めこの事業すべてのことを把握していることに
なる。 若者の参画事業への思いと工夫
山本さんには、二つの立場からの思いがあった。一つは光南台中学校吹奏楽部卒業生としての立場、もう一つ
は公民館職員としての立場である。
まず、吹奏楽部卒業生としての思い。山本さんが中学生だった頃は、吹奏楽部の部員数が多かった。「人数が
少なくなって、さみしいだろうな。何とか部活を盛り上げていきたいな」という先輩としての思いがあった。
事業を始める際には、一メンバーとして中学生の頃と同じフルートを吹くことにした。楽器を手に取るのは中
学生の頃以来であり、不安もあったが、新たにまた吹ける喜びが強かったそうである。
KNDの大人メンバーには、他にも光南台中学校吹奏楽部卒業生が6名所属しており、中学生もそのことを知っ
ている。世代をこえて、先輩と後輩が一緒に活動している。
中学生と一緒に活動するにあたって心がけていることは、中学生の自主性を損なわないようにすることであ
る。中学生は、自分たちで考えて行動したいという欲求が出てくる年頃である。中学生の思いも尊重することに
よって、初めのうちは遠慮がちだった中学生が、徐々に質問や提案をするようになるなどの成長を感じることが
できる。
もう一つの公民館職員としての思い。
公民館職員としては、KNDの活動を通して若い世代が地域社会に関わるようになったり、世代間交流が広がっ
たりする可能性もあると思い、取り組んできた。また、少子高齢化が進む地域の活性化につなげたいとの思いも
あった。
中学校吹奏楽部と地域住民の思いをつなぐ役割を果たしており、忙しさの中にも細かな心遣いが感じられる。 連絡調整は重要である。山本さんは、中学校の顧問の先生や大人メンバーとの連絡調整をする。 合奏練習の
日程調整などは、当初は山本さんが行っていたが、現在では顧問の先生と大人メンバーが直接連絡を取り行うよ
うにもなっている。
気をつけていただきたいことがある。それは、この事業は山本さんだからできることで、他の人にはまねでき
ないと思わないでいただきたいということだ。公民館職員、吹奏楽部顧問がそれぞれの置かれている立場での取
り組みを生かそうと思えば、充分に可能であると考える。
公民館職員と地域の方の吹奏楽を愛する思い、地域の中学生が活躍できるように最大限生かしていこうという
思い。思いがあれば、このような素晴らしい取組ができるのだと思った。 参画場面ごとの働きかけのポイント
○企画段階
中学校の吹奏楽部と、地域内外の住民をつなぐ。地域の中学校吹奏楽部をともに盛り上げようとする気運をつ
くる。
○実施段階
環境整備をする。
中学生と大人メンバー、パート内での意思疎通・共通理解が図れるように働きかける。
22
参画Ⅰ 企画・話し合いの段階
光南台公民館 7月19日 10:00~12:00 曲選定(KND定例会)
参加:大人メンバー7名
(現役の保護者:3名、卒業生を含むと4名)、
公民館職員1名
□大人メンバーがしたこと ○中学生が活躍できるような内容
○楽しく活発な意見交換
○演奏する曲を決定
地域の施設で吹奏楽部単独で演奏することは見られるが、地域の人と
一緒に練習して演奏会をすることは稀である。
KNDウインドアンサンブル大人メンバーは、公民館で月1回定例会
を行っている。今回の選曲では中学生と日程が合わず、定例会で行うこ
とになった。
会が始まると、メンバーがどんどん意見を言っていく。「前回の演奏
会の楽器の配置だけど、トロンボーンの席周辺は狭くてきつかった。」
「演奏前に、実際に座って構えて確認するようにしたら?中学生も大
人も一緒に確認して、位置を調整しては。」
前回の反省から、中学生と相談しながらレイアウトを決めていくこと
を話し合った。
次に、プルミエ岡山夏祭りで演奏する曲を選定する。
「老人福祉施設のプルミエでやるから、カラオケみたいに歌ってもら
える曲がいいな…。」「演歌がある方がいいよね。」「テンポのいい曲の方
がいい。テンポが遅い曲は、祭に合わないかも。アップテンポで分かり
やすいものがいい。」「運搬する時の積み込みは、だんだん慣れてきてい
るからいいよね。
」「中学生は、最後の花火を見て帰りたいだろうな。ス
ケジュールどうする?」
「中学校の部活では、今、何を練習してるのか
な?」
とても前向きで、気のいい方たち。明るいし、掛け合いもできるし、
アイデアを出し合って検討し、次々と活発に意見交換していく。
「公民館のカラオケクラブの人にゲストで歌ってもらう?」「タメの部
分で引きずられて、私たちが曲のテンポを乱しそう。」笑いに包まれて楽しい。わくわくした話し合いになって
いる。軽快に進んでいく。
「子ども向けの曲がないな。」「その選曲は、中学生に任せよう。」「今度、
『踊り明かそう』って曲をしたいな。」
「じゃあ、その曲をする時は、公民館の社交ダンスクラブの人達に踊ってもらう?」「いろいろなことに使える
なぁ、公民館!すごいがぁ!」
話は次から次へと展開されていくが、職員がメンバーの意見を引き出しながら、「先に曲を決めましょうか。」
などと要所要所で話を焦点化し進めていく。
ここに集まったメンバーは、活発な意見交換を通して中学生が活躍できるようなものにしたいという熱くもや
さしい思いでいっぱいである。
□キーパーソンがしたこと この段階で山本さんは中学校吹奏楽部と地域の人たちをつないでいる。まず、事前準備会で曲を決める場を設
定した。本来は日程の都合が合えば、中学生とともに曲選定を行う。KNDウィンドアンサンブルの定例会は光
南台公民館で行われていて、今回はその会の中でプルミエ岡山夏祭りの曲の選定を行ったのである。曲選定の後
は本番に向けて、合同練習2回を設定する。
23
参画Ⅱ 事前の合同練習
参加:光南台中中学生17名(1年4名・2年7名・3年6名)、
顧問坂上仁志先生、大人メンバー7名、公民館職員1名
光南台公民館 8月2日 9:30~12:00
合同練習(1回目)
□中学生がしたこと ○演奏会に向けての合同練習
○パートごとに交わす会話
○音を通した交流
この日は事前の合同練習2回のうちの1回目である。
9:30から楽器運搬。11:00から合奏開始。
中学校から楽器を力を合わせて運ぶ。車で数回に分けて、2階の第一
講座室と第二講座室のぶち抜きの部屋に運ぶ。運ぶだけでもたいへんそ
うだが、大人メンバーと一緒になって運んでいて、楽しそうである。楽器
を組み立てて、
各自音出しをする。一生懸命で音が響く響く。かっこいい! 音出しで大人メンバーの雰囲気を感じている様子。定例会でも感じた
ことだが、大人メンバーが気配りできてやさしくて人の気持ちがわかっ
てすがすがしくてクリアな感じがする。吹奏楽ってすごい!住民と中学
生がいっしょになって準備をして、一体となっていることに感動する。
この場所は学校とかじゃなくて公民館である。窓の外には夏の児島湾の
明るい日射し、緑の水田とトマト畑。絵に描いたような風景である。す
ごい!本当に一つの映画になりそうである。
吹奏楽の構成はピッコロ1・フルート2・クラリネット5・アルトサッ
クス2・バリトンサックス1・ホルン3・トランペット3・トロンボー
ン2・ユーフォニアム3・チューバ2・パーカッション(打楽器)5。
吹奏楽部の顧問である坂上先生の指導が入るたび「はい‼」「はい‼」
と全員の元気な声が公民館の部屋に響き渡る。
練習中うまく進めないときは指揮が止まる。指揮が止まるたび、演奏
がうまくいかなかった中学生の隣に座っている大人のトロンボーンの人
が・・うなずいて、その生徒をはげましている感じがする。そのことを
その中学生も感じ取っているようだ。そのことが見ている第三者にも
はっきりわかる。指揮が止まるたびに同じパートの人と言葉を交わす。
笑顔も交わされる。
言葉で話し合ってつくりあげていくというタイプの参画ではないが、この合同練習は、当日までにみんなで曲
をつくりあげていくという事前参画そのものである。参画は何も言葉だけとは限らないことがよくわかる。
□キーパーソンがしたこと 山本さんはメンバーの一人として一体的な雰囲気をつくっていく。
吹奏楽部の顧問と予定を調整したり、環境整備でいろいろと公民館の中を行き来したりしている。中学生と大
人メンバーの意思の疎通ができるような雰囲気をつくり、全体の共通理解を図る。
参画Ⅲ 実施の段階
参加:光南台中中学生19名・顧問坂上先生・高校生
(卒業生)4名・大人メンバー 11名・公民館職員1名
□中学生がしたこと 24
光南台公民館
特別養護老人ホームプルミエ岡山 8月29日 14:00~21:00
プルミエ岡山夏祭り 当日
□キーパーソンがしたこと ○当日練習
○合同練習を生かして学区の老人福祉施設で演奏を披露
『夏祭り』
『日本の情景・夏』
『服部良一ヒット曲メドレー』
『RPG』
(演
奏時間:15分間、全4曲)
本日はいよいよ本番当日実践の日である。14:00の定刻前 もうす
でにほとんど全員着席している。大人メンバーが入るとわざわざ後ろ向
いて「こんにちはー。
」って元気よく全員であいさつをする。おそろい
のTシャツ「KND」が鮮やかだ。ピリッとした雰囲気でいっぱいである。
私語は全くない。
音を合わせる。職員から連絡事項が伝えられると全員で「はい!」返事
がピリッと元気で気持ちいい。中学生と大人はちょっと会話してどちらも
笑顔に。いい感じだ。やる気がみなぎる感じ。やってやろうって感じ。清
新な気持ちがする。
青春って感じである。
地域の人も。
卒業生の姿も見える。
「アクセント強調していきましょう。
」
「はい!」一人の大人メンバー
の指揮で、合奏練習が始まった。心がみんなに届いている気がする。地
域の人・中学生とも「みんな音楽好きなんだな。」って思える。 「
『夏祭り』いってみましょう。」「はい!」言葉でのやりとりもある。
地域の人とのやりとりも笑いがおきて、笑顔。
『日本の情景・夏』フルートの出だし。素晴らしい。
「ピアノのところ
をもう少し落としましょうか。
」
「はい!」
「Aからいってください。
」
「は
い!」
「自信をもって正しいと思って吹いてください。
」
「はい!」
「サック
スソロ、中学生フルートソロからいきます。
」
「はい!」時々大人と子ど
もが少し会話する。協力していこうって感じで、少し笑い合う。
途中から顧問の坂上先生の素晴らしい指揮で最高潮に。先生、
笑顔で「ト
ランペット調子ええな。
」本番直前練習はとても楽しい雰囲気である。 公民館での練習を終えて、プルミエ岡山へ移動。さっそく施設内の一
角で音出しを始めると、金管や木管のきれいで楽しそうな音が老人福祉
施設の中に響き渡る。そこに入居されている方々が続々ともう集まって
きた。一人のおばあさんがさっそく、「ええ音じゃなあ。」プルミエ職員
「まだ練習で。あとでやるから。」とても楽しみにしてくださっている
のがよくわかる。
高校生(卒業生)も4人来て一緒に演奏する。すごいことである。
本番は練習を生かして演奏することができた。15分間、4曲披露し、
たくさんの老人福祉施設の方々に喜んでもらえていた。 感想・アンケート
大人メンバー(クラリネット):
「中学生と一緒に練習できて楽しい。ありがたいことです。」 大人メンバー:
「よかったことは、子どもが小4の時から関わっているので、中学校の様子が知れたこと
です。
生徒理解につながっています。
小学校のときほど身近でない地域の中学校のことがわかります。
」
大人メンバー(サックス)
:
「一緒に演奏している中学生は、孫や娘の年くらいかな。KDN発足時にサッ
クス未経験で入りました。参加してから5年目。中学生から元気いっぱいもらっています。」
中3女子(部長):
「地域の方と接し方がはじめはわからなかったけど、わからないことをちょっと聞け
たりして演奏の自信になります。」
中学生部員女子たち:「地域の方にもいろいろと教えてもらっています。」「敬語が使えるようになりま
した。」「つながりができます。」
「演奏のアドバイスをしてくれてうれしいです。」
25
中学生部員男子:
「楽譜や楽器の配置を一緒にやってもらったり、わからないところを教えてもらった
りしています。」
顧問・坂上先生:
「地域の人と一緒に演奏することで、いい刺激になっています。子どもたちはぎこち
ないところもあったが、ちょっとしたおしゃべりで大人の人に励ましてもらったような感覚になっ
ています。近隣の中学校でこんな実践はあまりないと思います。」
保護者:
「いい経験をさせてもらっています。いい環境だなと思っています。ESDの開会で発表(2014
年ESD推進のための公民館-CLC国際会議・歓迎レセプション)もできたし、ただの部活だけでな
い経験をさせてもらっています。」
高校生(卒業生)の当日参加もあった。中学生の時の経験が、卒業してからも参加することにつながっている。
4曲の素晴らしい演奏に多くの老人福祉施設の方々から大きな拍手を受けていた。
まとめ
この事業のポイントは、中学校吹奏楽部と市民が1つの吹奏楽
団として活動していることにある。
今回の事例では、地元の行事での演奏に向けて、中学生と大人
メンバーがともに演奏曲を決めて練習をし、キーパーソンの山本
さんは事前の話し合いや練習を設定したり、パート内での意思疎
通が図れるように働きかけたりした。
世代をこえて企画段階から一緒に活動することによって、地元
老人福祉施設の夏祭りの演奏で多くの方々に喜んでいただくこと
ができた。
学校と公民館との協働は可能性が大きい。熟議のような共通理解の場が有効である。例えば、公民館と学校
が月に1回くらい、相談できる時間があるとよい。「今度の夏休み、公民館でこんなことしたいんだけど、理 科部と連携してできないかなあ。
」とちょっとした相談ができたら、可能性は広がっていくと考える。中高生 が部活動でやっていることを生かして、公民館で小学生・幼稚園児・親子等を対象にして講座を行う。例えば、
夏休み料理教室、吹奏楽を地域の音楽好きな人と行う、夏休み科学教室、夏休みお茶教室など。いろいろな部 活動だけでなく生徒会との連携も考えられる。社会教育は自由度が高いという特性を考えれば、可能性は大き く広がってくる。 中学校の吹奏楽部が、地域内外の大人と合同で演奏活動をしているのは、県内地域でもここだけかもしれない。
地域の人と一緒にやっていくことに意味がある。地域にも貢献している。母と娘で参加している方もいる。部活
動が学校内の活動で終わってしまうことが多い中、地域の人が学校の部活動と一緒に活動していくことはよいこ
とである。子どもと大人、学校と地域がつながっている。公民館と学校との協働は可能性が大きい。
26
1 実践事例 ⑤
キーワード:中学生・公民館・納涼祭
笠岡市・
陶山公民館
事業名:陶山地区ふれあいまちづくり納涼祭
主催者:笠岡市・陶山公民館
事業のポイント
笠岡市の陶山地区で毎年開催される納涼祭。舞台での出し物があり、屋台も出され、多くの地域の人が参加す
る。その企画運営を中学生が中心となり行う。
この事業は平成27年度で10年目の事業である。参画する中学3年生にとっては2年目、2年生にとっては初
めての取組となる。
この事業の最大の特徴は、地域の納涼祭で地元の中学生がお店を出したり司会などの役割を責任をもって果た
すところにある。自由参加だが、全員が参加する、地域にとっても中学生にとっても特別な一大イベントである。
7月下旬事前に公民館で説明会を実施。役割分担して準備する。8月初旬に納涼祭を実施。約700人を超える
人々が参加し、協賛団体が79団体もある、これほど大きなイベントに参画することは貴重な体験となるにちが
いない。
陶山公民館は、高齢化社会で活力ある地域を作るために子どもの力、存在が必要。子どもが地域離れをしてい
る中で、社会を大きく見つめる目を養うため子どもが集まれる場所が必要と考えている。学びを通した社会教育
を意識しており、地域の活動が活発になれば子どもたちによい影響があると考えている。子どもが活躍する場所
を大人が設定する。
「たくさんの人に喜んでもらったし、みんなで協力してやりとげることできた。すごい達成
感があっていい経験をさせてもらったと思います。」保護者のアンケートからも地域が子どもを元気にし、元気
な子どもが地域を活性化する」という陶山地区のめざす姿の双方向の取組が顕著に表れた事例である。
事業開始のきっかけ
この事例は学校から公民館に提案して始まった事例である。
平成17年度岡山県人権教育総合推進事業の指定を受けた金浦中学校区で「人と心のフェスティバル」を行っ
たのが土壌となっている。それまで中学校の先生と地域の方々とはあまり接点がなく、ボランティアの募集をし
ても納涼祭の中学生の参加はごくわずかであった。「人と心のフェスティバル」で小学生がボランティアの発表
をしている姿を見た中学校の先生が「公民館で中学生が活躍できることはないでしょうか」と公民館へ申し入れ
をしたのがきっかけである。
陶山公民館は、幼稚園や小学校に隣接している文教地区である。この好環境を生かして連携を密にしている。
参画の対象・人数
事前:笠岡市立金浦中学校2年13名3年12名+教員2名
高校生(金浦中学校卒業生)3名
地域一般住民
当日:笠岡市立金浦中学校2年13名
3年13名+教員4名
陶山公民館
金浦中学校
参画の形態 連携図
自由意思
27
各団体
79 団体
キーパーソンの紹介
笠岡市・陶山公民館
主事 西江 律子さん
所属・年数・事業との関わり
笠岡市・陶山公民館職員として18年目である。平
成18年度からこの事業は行っているので、西江さん
は経緯をはじめこの事業すべてのことを把握している
ことになる。 若者の参画事業への思いと工夫
西江さんは「小さい頃から地元で自分が役に立っているという場面があったらいいんじゃないかな。」と納涼
祭に限らず公民館で若者が活躍できるポジションを設定することを考えられている。そんな子が社会人になって
「あのとき、こうやってたな。」大人になって相談すると「わかった、わかった。」で通じる。循環がうまくいき
つつある実感をもっている。
そんな西江さんが、中学生と接するにあたって心がけていることが二つある。
それは、声かけだ。朝昼晩ちょっとした場面でも必ず声かけをする。行事でも翌日見かけると必ず「あそこで
ようがんばったな。
」と認める声かけである。中学生も快く近づいてきてくれる。西江さんは地域の方はもちろ
ん、中高生からも「りっちゃん」と呼ばれて親しまれている。
もう一つは聞くことだ。どんなことをしたいか中学生の意見を聞き出す。意見が出ないときは提案するが、そ
れは二次的なことである。まずは中学生の気持ちを聞くことを大切にしている。
こうしたイベントでは人が集まりにくく当日のみの参加になりがちだ。しかし、この取組では自由参加の形を
とっているが、
全員が参加する。驚くべきことである。一つの理由として、小学校段階からの取組が挙げられる。
陶山地区の子どもたちは小学生の頃からいろいろな事業に参画しており、それが基盤になり、のちのち効いてき
ている。さらに、大人が声をかけて認めてくれる。小学生は中学生を見て、憧れる。自分が中学生になったら今
後は小学生を喜ばせる番と意識する。
学校との連携も重視している。教頭や地域連携の担当教諭をはじめ、小中学校の先生も準備をしたり、出演し
たりする。片付けと反省会を翌日に設定している。反省会を行い、ほめることと指導することのバランスをとっ
ている。事業を進めると、反省をする時間の制約などがあったりして特に反省会をもたない場合もある。しかし、
陶山公民館ではしっかりと反省会の時間をとっていて、しかも、大人と子ども合同で行う。そこで、大人からしっ
かり声がかけられている。 700人を超える地域の一大イベントをコーディネートをするのは、陶山公民館職員の方々である。その数は館
長1名主事1名の2名である。この大イベントをこのスタッフで統括するのである。他の公民館でも大いに参考
にしていただきたい事例である。
参画場面ごとの働きかけのポイント
○企画段階
中学生がお店の内容や役割分担を決められるように
全体をコーディネートする。
○実施段階
イベント全体がうまくいくように全体をコーディ
ネートする。
28
参画Ⅰ 企画・話し合いの段階
陶山公民館 7月20日 14:00~16:00
事前研修会
参加:金浦中中学生(中2・13名、中3・12名)、
地域の方・保護者の方多数・先生2名、公民
館職員2名 □中学生がしたこと ○中学生全員参加の活気ある事前話し合い
本日は企画・話し合いを行う。
お店を決める・売店の仕入れ・レイアウト・収支決算は3年生、
運営係・司会・アシスタント・受付手伝い・アナウンス・広報用録
音を2年生が担当する。
二つのグループに分かれて話し合いを始める。中3のグループと
中2のグループである。
ほぼ全員が集まり、活気がある話し合いだ。
担当としては扱いやすい人数である。
1年生は意図的に参画してもらっていない。1年生の時には祭り
自体を楽しんでもらうことと、参画している2年生・3年生の活躍
に自然と目を向けてもらい、来年への意欲をもってもらうためであ
る。
話し合いの司会は中3グループが保護者の一人、中2のグループ
が保護者でない地域の方が行う。保護者の方が率先して話し合いを
進めることはめずらしい。
保護者の方は3番目のお子さんが在籍で、上二人のときに経験し
ていて慣れているとのこと。地域の方もご自分のお子さんのときに
経験している、陶山土曜チャレンジクラブの会長である。あらかじ
め決めていたことでなく、進んでされていることであり、そんな雰
囲気ができているところがすごい。中学生たちが話し合いに慣れて
きたところで、子どもも途中から司会に参加した。
ほぼ全員が姿をそろえることは驚きである。この高い参加率は、
小学校からのつながりがあるからである。陶山土曜チャレンジクラ
ブを体験してきていることで、小学生のときから公民館が子どもた
ちにとって身近な場となっている。公民館から言われたら「やるか
なあ」という感じができている。中学2・3年生になると、「まつ
りを作り上げていく立場」という気持ちをもっている。他地区の友
達にも声をかけ、一緒に参加している。
担当や分担を中学生が決める。PTAがバックアップしている。
「た
こやきを自分たちでキャベツをきざんでつくりたい。」などと積極
的である。お店はたこやきに決定した。
中学生のとき参画したことのある高校生が希望し、この日も映像
のメイキング撮影をしていた。
中学生が地域づくりの重要な位置を占め、地域の一員として活躍
している。
たこやきに関する会計は公民館は行わず、中学生が行う。収益が
なくても公民館からは補填しない。収益は全額金浦中学校生徒会活動費へ入る。伝達式(贈呈式)を行い、学年
だよりに掲載している。 話し合いが終わると開催前に陶山地区の広報車で宣伝するため、中2女子7名による広報車事前テープ録音が
行われた。みんな緊張しながらも上手に吹き込み、一発でOKであった。自分たちの声が陶山地区中に響き渡る
29
またとない貴重な体験であろう。
□キーパーソンがしたこと ○事前研修会の設定
西江さんは全体をコーディネートするが、参加者の自主性が発
揮されるような雰囲気をつくっている。保護者・地域の方が初め
司会を行い、中学生が話し合いに慣れてきた頃を見計らって、中
学生が司会をするようにする。西江さんは話し合いの様子を見守
り、大切なことを補ったり要所要所でアドバイスを行ったりして
いる。
金浦中学校地域連携担当の先生も公民館に来ている。収益は中
学校生徒会に入る。お金は公民館は一切タッチしない。
中学校から教頭先生、地域連携担当の先生が来てくださってい
る。中学生がより活動しやすくなるように、家庭用のたこやきは
ひとまわり小さい持ち帰り用で発泡製の容器を2つ重ねる、売値
200円、持って帰る人が持って帰りやすい船形容器に入れる、袋
に入れるなど具体的なヒントを出していた。
西江さんによると、子どもが参画するということは、同時に保
護者が関心をもち、公民館に様子を見がてら来てくれる、実際に
足を公民館に運んでくれて、一緒に行動するようになるというこ
とでもあるという。中学生、高校生を対象にしながらも関わる大
人たちや小学生にもつながっている。
子どもが参画することで地域全体が地域づくりに関心をもって
くれるという大きな構想がここにある。
参画Ⅱ 実施段階
陶山公民館 8月1日 (7:00~会場設営)
17:00~21:00 陶山地区ふれあいまちづくり納涼祭
参加:金浦中中学生2年13名3年13名・先生4名・
高校生(卒業生)3名・公民館職員2名、参加者
総数:708人 □中学生がしたこと
○事前の話し合いを生かした実践
中学生が担当するのは次のとおり。
役割がたくさんある中で、大活躍である。
プログラム
16:55~16:59
全体あいさつ(1名) 17:00~17:30
のど自慢うで自慢司会(2名)
17:30~17:50
全体説明・バザー紹介(2名)
17:55~18:20
ビンゴゲーム1名・
アシスタント賞品係(5~7名)
18:25~18:40
歌クラブ司会(1名)
18:45~18:50
実行委員長あいさつ司会(1名)
18:55~19:15
ぼっけー盆踊り司会(2名)
30
19:20~19:50
ローズエンジェル演奏司会(1名)
19:55~20:25
シンガーソングライターミニライブ
司会(1名)
20:30~20:35
ぼっけー花火司会(1名)
20:35~20:55
お楽しみ抽選会アシスタント
(ルーレット1名・ダーツ2名
・賞品1名・当選番号回収1名
・当選番号表示ボード係5名)
20:55~21:00
閉会あいさつ司会1名
受付手伝い2名 52会お店手伝い2名 中学生あいさつ代表1名
中3が担当するたこやきのお店は、行列ができる人気店になっ
た。真夏の夜のホットプレートでとても熱い。子も、応援の親も、
先生も、頭や首にタオルを巻いてがんばっていた。
事前に話し合ったとおり、たこやきを舟形のパックに入れる。
保護者の方もたこやきづくりのお手伝い。気持ちのこもった熱
い、あっつあつのたこやき。子どもたちもたこやきクルン!上手
にできた。親と子のつながりもしっかり見えた。家に帰ってから
も話に花が咲くことだろう。
中2の司会や各係とも責任をもってしっかり役割を果たした。
地域の人からはお褒めの言葉をいただいたり、「どこの孫か」と
コミュニケーションができたりする。お店に行列ができて、おい
しいと喜んでくれたことも自己肯定感につながるのではないだろ
うか。お客の立場にたって考える体験の一つにもなっている。
□キーパーソンがしたこと
イベント全体がうまくいくように全体をコーディネートする。
中学生に声かけをしたり積極的に参加したりしてイベントの進行
状況に目を配っている。また、地域の方や出演者・来賓を細かな
心遣いで接待したりしている。自ら楽しもうとされている姿。生
き生きと輝かれている。「たこやき、おいしかったあ。」という声
が参加者のあちこちで聞こえた。PTA、青年団、消防団も協力。
納涼祭当日消防団による気持ちのよい自動車誘導をしてくださっ
た。
感想・アンケート
中学3年生:
「参加したのは毎年の行事でたくさんの人
たちががんばっていたので、手伝いたいなと思った
からです。」
中学2年生:
「1年生のとき、先輩たちが運営している
のを見て楽しそうだったから参加しました。」
一般:
「中高生が参加することにより、大人もがんばり、
相乗効果でよりよい結果が得られると思われるので、たいへんよいです。」
一般:「自分の育った地域の行事に積極的に参加することは、ただお客として集うより自分たちが運営
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すれば、よりたいへんさやおもしろさが味わえてとてもよいと思います。」
一般:「準備から参加してくださることがとてもありがたいと思います。若い力を頼めることがうれし
い。心が若返ります。」
一般:
「中学生になると『納涼祭で活動するんだ』と前向きな姿勢で取り組む子どもたちなので、公民
館の方々に感謝です。」
一般:
「中学生が地域の祭りの進行をすべてしているのを見て驚きました。よくがんばっていました。
それまでの準備や流れの指導をする方は自分たちで進行するよりも苦労が多いと思いますが、中学
生にとってはとてもよい体験になると思います。」
まとめ
この事例は、地域の納涼祭で地元の中学生がお店を出したり司会等の役割を責任をもって果たしたりすること
に事業のポイントがあった。
中学生は、事前にお店の内容や司会等の役割分担について話し合うという事前参画をするとともに、キーパー
ソンの西江さんは、中学生が話し合いやイベントがうまく進むように全体をコーディネートすることによって、
地域の一大イベントを盛り上げることができた。
学びを通した地域づくりを進めることができていて、結果としてどの子にも体験させることができていた。中
学生が参画するということは、保護者にもわが子や友だちの参画の様子に関心をもってもらうことに加えて、事
業そのものへの関心をもってもらったり、多くの団体・地域の人に中学生の参画の様子をみてもらえるというこ
とでもある。ここによい循環がみられる。大人と中学生といっしょに行う。アンケートからも当日の様子からも
「学区自体に活気がでてきた。」という指摘はこの事業がいかに価値が高いかということを物語っていた。
この事業の最大の特徴は地域全体を巻き込んでいる点にある。一致団結した地域づくりを行っている。
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3 座談会
「中高生の出番づくりを進めるにあたって公民館にできること」
岡山市立中央公民館
主任(社会教育主事) 重森 しおり 氏
岡山市立藤田中学校 指導教諭 小野田 誠 氏
笠岡市・陶山公民館 主事 西江 律子 氏
☆ファシリテーター 岡山大学大学院教育学研究科
准教授 熊谷 愼之輔 氏
□中高生の出番づくりにあたって
熊谷准教授:平成27年12月に文部科学省の中央教育審議会の答申で「新しい時代の教育や地方創生の実現に向
けた学校と地域の連携協働の在り方と推進方策」について答申が出されました。その答申の大きい方向性と
しては、支援から連携・協働へ、個別の活動から総合化・ネットワーク化という方向性が示されました。こ
れまで学校・家庭・地域の連携といえば、地域から学校へ、大人から子どもへというベクトルで学校支援を
しようという流れで取り組んで大きな成果を挙げています。ただ、中高生という発達段階を考えていくと、
このベクトルだけではなく、反対に学校から地域へ、子どもから大人へという取組も大切ではないかと思っ
ています。こうした双方向の取組が支援ではなく協働という方向に向かっていくのではないかと。その中高
生が地域で活動する場所としては公民館が考えられます。でも、公民館は大人のための学びの施設という考
えが根強く、子どもたち、特に中高生の子どもたちに対しての取組というのは、まだまだこれからだと思い
ます。そこで、今日お集まりいただいた方が公民館で中高生を対象とした出番づくりの取組を先駆的に取り
組んでおられるということでお集まりいただきました。まず、最初に自己紹介も含めまして、取組の概要や
思いを少し話していただければと思います。
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西江主事:陶山公民館に勤めだして18年。笠岡市の市の職員とは違い、非常勤嘱託職員という形で勤務してい
ます。うちの場合、子どもたちが小学生の頃から公民館となかよくしていて、中学生になっても公民館をと
ても身近に感じてくれています。そして、つながりができています。高校や大学・社会人になっても公民館
とあまり距離感をもっていないので、
「公民館がこんなことしてるんなら行ってみようかな」とか、そうい
う部分を今回たいへん高く評価していただいてありがたく思っています。陶山地区ふれあいまちづくり納涼
祭に関わっている中学生・高校生・社会人になったばかりの子も素地は小学生の時からの公民館との関わり
ではないかと思っています。そういう子どもと一緒に関われる事業をさせてもらっている陶山公民館にとて
も感謝しております。
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小野田指導教諭:藤田中学校の小野田と申します。私が公民館で活動を始めたのが平成3年、25年前になりま
す。最初は公民館グループという形で始めたんですけれども、なかなか活動の輪が広がらなくて、もっと幅
広くできないかということで、主催講座にしていただきました。それが延々と続いて、倉敷の公民館で22年、
藤田の公民館で9年。それから今年は休講にしているんですけれども岡大の近くの北公民館で4年活動させ
ていただいております。スタートは、私が新任で勤めていた倉敷の中学校が荒れて困った状態になったとき、
地域の方々と力を合わせて何とかしないといけないと思ったことがきっかけでした。自分に何ができるだろ
うかと考えたときに、公民館だと思いました。子どもだけ、あるいは、大人だけを対象にした講座がほとん
どだったので、親子一緒に活動することでつながりが幅広くなるんじゃないか、地域の教育力を活性化する
モデルのようなものができないだろうかというのが出発点でした。そういうところから始めて、現在に至っ
ています。
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重森主任:私は岡山市の中央公民館職員です。一行政職員で、中央公民館に勤務し、今年で8年になります。岡
山市は中学校区に一つ公民館があって、中央公民館と、それぞれの地域に地区公民館が36あるという形を
とっています。中央公民館で、こういうことに力を入れようとかという方針を出して、各地域でそれぞれの
やりやすいやり方を模索して実施する形で事業を進めています。いくつか事例を載せていただいているんで
すけど、学校の方から投げかけをしていただいて公民館でやりましょうという形もあるし、公民館から戸を
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たたいてやるっていう形もあります。子どもたちが中学生になって、自分が体験したことを生かした企画が
できるのではないかというところから、現場レベルで試行錯誤しながら中学生の参画に取り組んでいます。
市域も広いので、それぞれが今やれるやり方でやっているというのが、岡山の公民館の特徴かなって思って
います。
□ポイント①事前の参画が大切-スイッチがONになる-
熊谷准教授:今回の調査研究でポイントを置いたのは、やっぱり事前の参
画です。中高生の出番づくりといっても、当日だけ来てお手伝いする
というのでは、彼らもやらされ感が高まると思います。彼らを支援の
対象者ではなくて、地域づくりのパートナーと見るのならば、事前の
企画段階から関わっていくというのが大切ではないかと思います。しかも、公民館は、学びを通した地域づ
くりを進める教育機関ですから、学びという点が重要になってくると思います。そういう点で見ると、事前
参画っていうのは大切な学びのプロセスではないでしょうか。当日だけの関わりではなく、前もっての準備
や企画のところから中高生が関わることによって、中学生や高校生たちにどんなメリットや変化があるのか
をお聞かせください。
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小野田指導教諭:私が藤田公民館で実施している講座は野外観察会です。その野外観察会で生徒が先生役をする
のですが、地元の生徒といっても自分の地域の自然のことはなかなかわかっていないので、本番の1週間前
に事前観察会を行っています。まず自分たちが生き物を調べることから始めます。どんな生き物がいるかを
調査し、本番までに自分でインターネットや図鑑で調べ「これはですね・・・」とプレゼンテーション・ソ
フトを使って紹介していきます。こちらが教えこむのではなく、自分で考えたやり方で中学生が先生役をし
ます。普段我々教員が教材研究をやっているようなことを子どもたちが行うのです。親子の前に立つという
ことだけでちょっとはずかしいし、みんなが注目しているところで自分が調べたことを紹介するわけです。
原則として原稿は読まない、見ながらしゃべらないということにしています。原稿は持っていてもいいけれ
ど、どうしても頭の中がまっ白になったら、見る、下ろして、しゃべる。アナウンサーのように。できるこ
となら、何にも見ずに頭の中に入れておいて、全然とんちんかんなことでもいいから、とにかく一生懸命、
自分で何か伝えようとすると、それが、かっこいいんだよというような経験をさせてみるんです。子どもた
ちは、
「すごく緊張してたいへんだったけど、みんなが自分の方を向いてくれてよかった」と言っています。
そして、
事後のミーティングをして、感想を共有することで「またやってみようかな」という循環につながっ
ているのかなと思っています。
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西江主事:どこでもしている夏祭りです。8月の第一土曜日にするということが決まっています。ここに中学生
が関わるようになったのは平成18年からです。17・18年に金浦中学校区で人権の研究指定を受けたのがきっ
かけでした。
「公民館の活動の中で、中学生が活躍できる場はありませんか」と、研究会での小学生の活躍
を見て何かを感じてくださった中学校の先生からの申し出でした。当日だけのボランティアではいけないと
思い会議から参加してもらいました。公民館の会議は夜なんですが、保護者が連れてきてくれました。1年
生は2年生や3年生の姿を見て学ぶ。
「2年になったら運営のスタッフじゃけえ、司会もせにゃあいけん、
盛り上げ隊もせにゃあいけん、カメラもせにゃあいけん」と見ます。3年生は売店をしているので、売店を
している姿を見ます。そういう勉強する期間の1年生。参加した2年生の男の子が1年生の子に言ってた言
葉で今でもよく覚えているんですけれども「お祭りを楽しめるのは1年だけだぞ。俺ら2年3年になったら、
祭りを作り上げていく立場になるんじゃけえのお」と。それはうれしかったですね、私聞いて・・・。
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小野田指導教諭:かっこいいですね。
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西江主事:そうなんですよ。もうしびれました。その顔、今でも覚えているんですけれども。ああそう捉えてい
るんだあと思って。2年3年の参加しか思わなかったのが、結果的にはよかったのかなと。そういう言葉が
返ってきていること自体が大きな成果ではないかと思っています。
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重森主任:公民館で何か事業を始める時って、やりたいっていう人たちが何回も何回も話し合って、みんなで決
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公民館で何か事業を始める時って、やりたいっていう人たちが何回も
何回も話し合って、みんなで決めていくものです。こういうプロセス
は子どもたちでも同じだと思う。まずは、学校と違う活動をやりたいっ
ていう自分の中のスイッチが入った子どもたちがそもそも来るじゃな
いですか。さらに、子どもたちは、調べたりいろいろな人の意見を聞
いたりするプロセスの中でスイッチがグッってオンになるような変わ
る瞬間がある。何も与えなくてもその子たちが自分で考えて学んでい
くみたいな。やっぱりそこがないと。当日だけのかかわりで、
「よかっ
たよ、がんばったね」とか言われても、子どもでもわかりますよね、嘘っていうのが。心に染み入るものが
ないと思うから。振り返りをして、みんなでこうだったね、ああだったねっていうのがあって、次のスイッ
チが入るみたいな。1回スイッチが入ると、必ず引き続いていきます。そのプロセスってすごく時間かかる
ものです。大人だとなんとなく先が読めたりするから、その話はやめて次のこっちの話にした方が決まるよ
と思うけど、そこを我慢して待ちますよね。そこで待つのが教育だったり、公民館の活動だったり。単発の
イベントみたいになっちゃうと人はなかなか変わりません。公民館で中高生自身が考えてやってみるってい
うところが大きなポイントなのかなって思います。
□ポイント②キーパーソンとして
熊谷准教授:今、「スイッチ」という非常にいい例えをしてもらったんじゃないかと思います。研究のもう一つ
の視点がキーパーソンです。いろいろな取組において誰かカギとなる方がおられます。その人の動きをしっ
かり注意して見て、彼ら・彼女らの思いや役割を把握するということが、今後こういう取組をしていくため
の示唆を得るのではないかと思いました。という意味で、今回キーパーソンの皆さん方に集まっていただい
たわけです。先ほどの「待つ」ということは非常に大切なことだと思っています。子どもたちのスイッチを
入れたり、促したりしていくために皆さん方はどう考えておられるかお聞かせください。
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小野田指導教諭:ここにいる皆さんがそういう「待てる」「スイッチが入る」経験をたくさんしておられるから
よい成果が出ているんだろうなと思います。日本の中学校教員ぐらい忙しい仕事はない、とどこかの国の教
育者が言われていました。その中で「少し休めよ、自分」と思うんですけれど、今自分がやっておかないと
後から後悔するだろうなと思い、やっています。多分皆さんもそうなんでしょう。私もスイッチを自分に入
れて、子どもたちにどうやってスイッチを入れることができるか人に聞いたり本などを頼りにやっていま
す。その中で、子どもが「ああ、やってよかった」、陶山の子どものように「俺たちは次、作る方の側にな
るから」なんてことを言われると、
「またやらにゃあいけんなあ」っていう繰り返しですね。それがまた、
学校でもいろんなところに還元されています。一人でやっているんじゃなく、多くの人に支えられて。教員
もそうだし、地域の方もそうだし、うちの藤田公民館の主事の方がすごくサポートしてくださっています。
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熊谷准教授:自分自身のスイッチもある。なるほど、そう思いますね。中高生と大人っていう違いがありますか?
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西江主事:すごく興味を持って取り組んでいた子は、高校生になっても当然納涼祭はするものだと思ってます。
部活動もあって忙しいけれど、当日は必ず行くので自分のやるところだけは空けといてくださいと言ってい
ます。納涼祭のここが私のポジションなんだと。すごいと思います。子どもは自分の思っていることをやっ
てみたいんです。そこをどうするかです。つぶしてしまうか、とりあえずやってみるか、だめだったらその
ときまた考えるか、というのが学校教育と社会教育の大きな大きな違いかなと思います。そのあたりが関わっ
ていてとてもおもしろいところです。
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熊谷准教授:逆にこれをしてはいけないっていうのはありますか。これから実際にやりたいという方に、注意し
ておかないといけないというアドバイスみたいなのがあったら。
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重森主任:私は信じられないとだめだと思うんです。できないって思ってたら絶対できないし、その人がその人
を信頼というか信用してないと分かり合えないし、一緒にやっていこうみたいになれないから。子どもでも
大人でも年齢に違いがあるだけで、その人を信じるっていうことは絶対にしないといけないなあっていうの
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はいつも思っています。人が変わるっていうことを信じることも。
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熊谷准教授:小野田先生は完全に社会教育のにおいがするんですけれど
も。先生のような方ってめずらしいんだと思うんですよ。
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小野田指導教諭:めずらしくないですよ。学校の先生って、最初はそんな
学校の枠にはまってやろうなんて思っていませんよね。俺はこんなこ
とをするんだとかあんなことをしたいんだと思って。けれど、現実が
いろいろとあって、だんだんある方向へ向かってまとまっていくっていうことが多いんじゃないかなって思
うんですよ。そこを刺激できたら。
□地域への波及効果
熊谷准教授:地域への波及効果というようなことについて聞いてみたいんですけど、どうでしょうか。
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西江主事:地域はずいぶん変わったと思います。高齢化で地域の元気がなくなりつつあっても、そこに中学や高
校生が入ってくることで元気をもらえるし、地域の人たちがその子を見る目も変わってきます。寡黙で一生
懸命準備をする子に「よう準備を黙々としようたなあ」と必ず声をかけてくださるし、逆にゲームのような
ものを持ってきたりした子には「何しようるんなあ」と。「やっぱりいけんことはいけんとちゃんと中学生
にも言おう」というのは大人だけの会議の中で言っています。地域の人も子どもが来ることによって、自分
も地域の大人としてのきちっとした責任感とか自覚とかというものも芽生えてきてると思います。もともと
あると思うけど、見て見ぬふりはしちゃいけんよと。地域の立場をきちっとわきまえているんじゃないかな
あと思います。
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小野田指導教諭:関われるように、やっぱりうまいこと仕掛けとか水面下でされているんでしょうね。
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西江主事:仕掛けは何もないです。ただ「いろいろお世話になるけど、頼むよ・・」と。
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小野田指導教諭:やっぱり西江さんの人柄ですかね。
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熊谷准教授:なるほどね。ただ、公民館は転勤がありますし、教員も転勤があります。西江さんのように一つの
ところにずっとというのは珍しいです。転勤はデメリットでもあるし、メリットでもあります。岡山市では
どうですか?
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重森主任:地域がどういう状況なのかとか、誰がキーパーソンなのかみたいな情報が引き継げるようにペーパー
にしています。岡山市は職員が一度に替わるっていうのはしていません。新しい職員が来たら、前からいる
職員が「新しく来た職員なのでよろしくお願いします」みたいな形で紹介し、公民館と地域や人の関係性が
とぎれないようにだけはしています。また、「この講座を担当しているからそれはあなたの仕事ね」ってい
うようになるべくならないように「何か困ったことがあったら私にも聞いてくれたらいいよ」みたいなチー
ムでやるようにしています。異動のメリットは、地域によってやり方も違うし、地域との関わり方とかやっ
ていることも実際違うので、職員としては替われば替わるほどいろんな経験値がたまっていきます。そうす
ると地域の人たちが「この課題を解決したいけど何かいい知恵出ない?」って言ったときに「あそこの地域
ではこんなことやってますよ」と情報を出してあげられる。自分の経験値の中で出せるから、もうちょっと
詳しく聞きたいと言ったら、いくらか説明できるし人も知っているので、
「じゃ、みんなで聞きに行きましょ
うよ」とすぐ繋ぐことができる。そういうところが異動する良さとしてあるかなあと思います。
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小野田指導教諭:私は中学生も育てたいけど、私の後輩の理科教員も社会教育の視点を持った教師として採用さ
れてほしいです。中学校教員の落ち着くところは、日々の授業の繰り返しと部活動の指導、山のような事務
作業をこなすことなどにどっぷり漬かってしまうのが普通なんです。学生のうちにそういう感覚、「おもろ
いなあ、こんなこと」って思ってもらえるかどうかがポイントなので・・・。
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熊谷准教授:今度は自分に振り返ってきました。そういう社会教育・生涯学習の理解をもった教員を育てるとい
うことが大切だと考えているところです。大学での経験もですが、中学生や高校生の時に取り組んだことが
ある子とない子との差っていうのは大きくなっているんじゃないかと思います。日頃からの取組が大切だ
なっていうことを感じたわけです。事業のメリットばかり話をしていましたけど、苦労するところは何かあ
りますか。
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西江主事:今の一番の悩みは子どもの数自体が減ってきているということ
です。私のモットーは、納涼祭にしても必ず去年と同じことはしない
こと。だから2年生の運営でも去年と必ずどこかを変える。人数が少
ないとやはり大変。陶山の子は、陶山学区以外の金浦や城見地区の友
達も連れて来てくれます。それで新しい発想が入ってくることもあり
ます。
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小野田指導教諭:部活の忙しい生徒が地域のボランティア活動に参加することは、部活動の妨げになるどころ
か、部を活性化し、プラスになると気づいた教員が増えてきました。部活動の生徒指導を部まかせにせず、
学校全体でするようになりました。地域の大切な行事の日には練習や練習試合を入れないとか。そのような
取組が中学校と地域とのつながりを強くしています。
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熊谷准教授:重森さんは岡山市全体をみていかなければいけない。岡山市っていうのは都会や田舎もあって非常
に難しい。それぞれの公民館について何か感じたり思ったりしていることってありますか?
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重森主任:いろんな活動は、地域で地域の人たちができるようになるっていうことがやっぱり大事だと思う。そ
の中に中学生もいるし、高校生もいるし、おじちゃんおばちゃんもいるしみたいになるっていうところにもっ
ていくというか、公民館の中だけで活動するんじゃなくってそれが地域で活動するとか地域の行事になると
かっていうところへ。それは地域性じゃなく、どこもそうやって自治の力で、そういうところをめざしてやっ
ていきましょうっていうことを再々言っています。
□小さい地区だからできる?大きい地区だからできる?
熊谷准教授:小さいとこだからそんな手厚いことができるんだと、必ず都市部の人や大規模の学校の人は言うん
です。
田舎や小規模校の方では、それは大きい学校だからそういう取組ができるんだと言う場合もあります。
そこだからできるんじゃないかというのって、自分ができないからそれを納得させるための理由付けとして
あるのではないかと思うんですけど、それについてはどう思われますか。
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小野田指導教諭:藤田は自然が豊かだからできるんだよと言われます。だけど、藤田は自然が豊かじゃあないで
す。藤田って100年前は干潟だったんですよね。それを人間が無理矢理あんなふうに変えて、見方によって
はものすごく不自然なんですよね。都会以上に不自然なんです。だから、田舎だからできるとかできないと
かが問題じゃなくて、今そこにおかれた環境の中で、街の中だったら人間がおるんじゃから人間を調べりゃ
あええがあとかね。できない理由をあれこれ考えるより、できることをひとつでもやってみる方が楽しいで
す。
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西江主事:やっぱり、そこに住んでいる人がどういう思いでいるか。小さいからできている、大きいからできて
いるというのは違うんじゃないかなあ。小さいところは小さいなりに、みんなが知恵を出し合って工夫し合っ
てるし、大きいところは大きいところで、大きいなりの知恵と工夫を出しているからこそ、それぞれの地域
の特色があります。みんな同じことは絶対ないし、あったらおかしいしね。それぞれの地域の特色を出せば
いいわけで、特色を生かした上で中学生が関われることを「こういうのもできるんじゃないん?」と言って
るんですよ。やっぱり人次第。だから、その人がどうやって今まで過ごしてきたかということが大切。小さ
いときから公民館に親しんでいたら、社会教育に目覚めてくれるんじゃないかな。
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重森主任:岡山市は公民館に対するいろいろなものが手厚いんですね。講師を呼んで払う謝礼金の額だったりと
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か、そもそもスタッフが多いし、常勤だし、その中にきちんと正規の職員がいるし、待遇の面でもそうだし、
そういうところをすぐ言われるんですよ。で、そこから話が全然進まなくて。だからこんな講座ができるん
だよとか言われるけど、課題は多いし、その中でスタッフがこれだけでは足りないといつも私たちは思って
いるわけなんですよね。他のところも、いろいろなくてそれがほしいんだったら、それを手に入れるように、
努力したらいいじゃないかと思ってます。お金がないって言って、じゃあお金があったらできるんっていう
話だし、岡山市だって元々こんなに職員が恵まれてたわけじゃないし、知恵を出し合い、工夫することをお
勧めしますみたいなのをやんわり言うかな。
□社会教育の醍醐味
熊谷准教授:最後に、皆さんキーパーソンとして取り組まれているわけですけれども「チーム」ということにつ
いて何かお考えはありますか。
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重森主任:中央公民館に来て8年ですけど、じゃあ8年前からこうだったかというと全然そんなことなくて。い
ろいろな人と関わったり、そのときにいた職員から学んだこともあるし、その人といろんな経験を共にする
中で自身が成長して今があると思っています。だから、一人でがんばるっていうんじゃなくて、そういう
ちょっとずつの重なった経験を重ねています。チームがいつもの同じ3人じゃなくって、それぞれがちょっ
とずつ重なってて、その経験がチームとして上乗せされていくっていうような体制が大切だと思います。そ
のときに仕組みがあっても動かす人がいなかったら結局枠でしかありません。必ずスイッチを押す人がその
中にいて、仕組みを動かしていくっていう体制がないと。チームじゃなくても仲間がいるっていうのもすご
く大事じゃないかなあと思ってます。
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西江主事:私がいつも心がけているのは、いろんな企画とか何か実行するときにはできるだけ地域の人に動いて
もらうことです。私はあまり動かないんです。相談があったら答えるけれども、できるだけこの部分はこの
人、この部分はこの人、地域の人に動いてもらいます。館によっては主事さんが一生懸命に動いてて、すご
くいいのができているんですけど、それだったら地域は育ってないでしょう。主事が一生懸命動くよりも、
主事は地域を元気にして地域の力をつけていかないといけない立場なんだから。地域の中の人をきちんと見
て、見つけて、その人にその役割を担ってもらうようなポジションにいなければならないんじゃないかと。
地域の人を育てるというのが公民館の大事な役割なんじゃないかなあと思っています。
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小野田指導教諭:私の志は「人材育成」といつも言うんです。それは、若い人を育てるとともに、自分自身ももっ
と人として成長したいと思っているからです。今日はじめて皆さんにお会いして、こんな方がおられるんだ
というのがわかっておもしろいです。自分はこういうところに呼ばれたときは、断らないんですよ。行って、
参加者とつながりを作り、また機会があったらよろしくお願いしますっていう感じです。つながって、また
その次のつながりを作って広がる輪がチームなんだと思います。
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熊谷准教授:今日は中高生の出番づくりを進めるにあたって公民館にできることっていうテーマでお話を伺いま
した。お話をお聞きして、みなさん自身が楽しんで取り組んでおられる、みなさん自身がスイッチを押して
醍醐味を味わっているという印象を持ちました。
でも、自分たちだけが楽しむのではなくて、一歩
引いたり、ちょっと俯瞰した立場でこれでいいの
かなっていうのも我々社会教育の取組をするとき
に大切なことなんじゃないのかなと思います。一
緒になって楽しむっていうことと少し俯瞰して全
体を考えていく、この二つのところっていうのは
非常に大切なポイントなんじゃないのかなって思
いながら話を聞かせてもらいました。今日はあり
がとうございました。
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MEMO
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