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上島町過疎地域自立促進計画

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上島町過疎地域自立促進計画
上島町過疎地域自立促進計画
(平成 28 年度~平成 32 年度)
愛媛県
上島町
1
基本的な事項 ………………………………………………………………………
1
(1)町の概要
(2)人口及び産業の推移と動向
(3)行財政の状況
(4)地域の自立促進の基本方針
(5)計画期間
2
産業の振興 ………………………………………………………………………
11
(1)産業振興の方針
(2)農林水産業の振興
(3)地場産業の振興
(4)企業の誘致対策、起業の促進、商業の振興
3
交通通信体系の整備、情報化及び地域間交流の促進 ………………………
16
(1)交通通信体系の整備の方針
(2)県道及び市町村道の整備
(3)農道、林道及び漁港関連道の整備
(4)電気通信施設の整備
(5)地域間交流の促進
4
生活環境の整備 …………………………………………………………………
20
(1)生活環境の整備の方針
5
高齢者等の保健及び福祉の向上及び増進 ……………………………………
25
(1)高齢者等の保健及び福祉の向上及び増進の方針
(2)高齢者等の保健及び福祉の向上及び増進の対策
6
医療の確保 ………………………………………………………………………
27
(1)医療の確保の方針
(2)無医地区対策
7
教育の振興 ………………………………………………………………………
29
(1)教育の振興の方針
(2)図書館その他の社会教育施設等の整備
8
地域文化の振興等 ………………………………………………………………
31
(1)地域文化の振興等の方針
(2)地域文化の振興等に係る施設の整備等
9
集落の整備 ………………………………………………………………………
32
(1)集落整備の方針
10
その他地域の自立支援に関し必要な事項
…………………………………
33
1.基本的な事項
(1) 町の概況
ア.町の自然的、歴史的、社会的、経済的諸条件の概要
上島町は、平成の大合併により平成16年10月1日、弓削町・生名村・岩城村・
魚島村の4町村が合併、誕生した。
愛媛県の北東部、広島県境に位置し瀬戸内海のほぼ中央に浮かぶ上島諸島(有人
島:弓削島、佐島、生名島、岩城島、赤穂根島,無人島:豊島、百貫島、坪木島、
能小島、鶴島、平内島、亀島、甑島、大島、小島、津波島)及び魚島群島(有人島:
魚島、高井神島,無人島:江ノ島、三島嶼)から構成されている。
面積は、30.38km2、気候は瀬戸内海特有の温暖な多照寡雨で、平均気温は
15~16℃、年間降雨量1,000mm 前後で、冬期にもほとんど積雪は無い。
周囲は、瀬戸内海国立公園区域に囲まれ、風光明媚な瀬戸の景勝拠点地である。
様々な歴史的背景を持つ4町村が合併し誕生した上島町であるが、江戸期は、今
治藩・松山藩に属し、また民間航路の要衝でもあった当地域では、諸大名の参勤交
代の要路で、港を中心として商業や廻船業で大いに賑わっていたと伝えられている。
上島地域では、農業・漁業が主産業であったが、近隣の造船関連産業の発達によ
り、就業・経済圏において、その中心地であった広島県因島市(現尾道市)への依
存度が高まった。しかしながら、オイルショックとそれに続く造船海運不況により、
離職者が相次ぎ、住民の島外流出に拍車がかかり、本町経済に深刻な打撃を与えた
ことから過疎化が始まり、少子化も相まって今日に至っている。
魚島地区は、地理的条件から、造船関連産業とのかかわりはほとんどなく、古く
から漁業を主産業として発展してきている。
交通機関は、広域航路の今治~岩城~佐島~弓削~生名~因島を結ぶ快速船、生
名~三原を結ぶ高速船が就航している。地域間航路としては、魚島~高井神~豊島
~弓削~因島、生名~因島を結ぶ公営渡船をはじめとして、広島県尾道市との間に
民間航路が就航している。
本町の産業構造は、第二次・第三次産業の占める割合が高く都市型の産業構造を
示している。特に岩城地区の造船関連企業は、近隣から多くの就業者を迎え入れな
がら活発な企業活動を展開している。
イ.町における過疎の状況
昭和35年の国勢調査人口は、14,761人であったが平成22年には7,6
48人で実に48.2%もの減少を示している。
-1-
昭和60年から平成7年を比較すると2,733人(22.6%)の減少である
ことから大幅な人口流出があったことがわかる。
これは、本町の経済基盤を維持してきた造船業の不況による合理化のため、若年
労働者やその家族を中心として、本町から県内外に流出したことが大きな要因と考
えられる。
平成7年から平成12年で775人減(8.3%)、平成12年から平成17年
で507人減(5.9%)平成17年から平成22年で450人減(5.6%)と
減少率は若干緩やかになっているが、人口減少は続いている。
その対策として上島町過疎地域自立促進計画及び平成18年度に策定した上島
町元気アップ計画により、産業や生活の基盤である交通網の整備促進、防災施設や
ごみ処理施設、下水道などの生活環境の整備、CATV などの情報通信体系の整備な
ど町民生活の基本的な施設整備を中心に、地域活性化を図るための諸施策が推進さ
れてきた。
しかしながら、人口減少に歯止めがかかっておらず、平成22年の国勢調査では
高齢者(65歳以上)の割合が全体の37.7%を占めているのに対して、0~1
4歳7.9%、15~64歳54.4%と、深刻な少子高齢化が進んでいる。
上島町元気アップ計画において「住んでよし、来てよし、元気島」をキャッチフレ
ーズに、本計画により、ハード、ソフト両面からまちづくりの推進を図っていかね
ばならない。
ウ.産業構造の変化、地域の経済的な立地特性等に配慮した町の社会経済的発展の方
向の概要
本町の産業構造の変化は、産業就業別人口比率によると、昭和55年の国勢調査
では第一次産業17.4%、第二次産業42.4%、第三次産業40.2%で、平
成22年には、第一次産業9.4%、第二次産業39.9%、第三次産業50.7%
となっている。なかでも、第一次産業の後継者不足、オレンジの自由化による価格
破壊等による農業の衰退が顕著である。
本町は、広島県尾道市と県境を隔てているものの至近距離にあり、経済的な影響
を強く受けてきた。特に第二次産業である造船業は、因島市の造船所とともに発展
を遂げてきたが、昭和60年代の2度にわたる造船不況による合理化のため、大き
な打撃を受け、就業者の都市部への流出を招いた。
近年、造船業界の好況の時期はあったものの、景気は後退傾向にあり、本町を取
り巻く社会経済環境の大きな変化は期待できず、新たな産業形態創出などの転換を
迫られている。
また、魚島地区については、その地理的特性から、今後も、漁業振興を進めてい
くことが必要である。
(2) 人口及び産業の推移と動向
人口の推移を見ると、昭和55年には12,669人であった本町の人口は、
-2-
平成22年には7,648人と急激に減少している。
また平成22年の国勢調査では高齢者(65歳以上)の割合が全体の37.7%
を占めているのに対して、0~14歳7.9%、15~64歳54.4%と、深
刻な少子高齢化が進んでいる。
産業別人口は、昭和55年(国調)就業人口5,407人に対し、産業就業比率
は、第一次産業17.4%、第二次産業42.4%、第三次産業40.2%であ
ったが、5年周期の調査では毎回減少を続け、平成22年には就業人口3,25
1人(39.9%)と大幅に減少している。
産業就業比率の状況は、第一次産業は9.4%、第二次産業は39.9%、第
三次産業は50.7%となっている。
このように、第一次産業、特に柑橘経営の不振で農業就業者の減少は著しく、
高齢化による労働力の質的低下と後継者不足及び鳥獣被害が問題となっている。
また、第2次・第3次産業は、尾道市因島の造船関連業の発展とともにその比率
を高め、特に昭和45年以降、急速に都市型産業構造に移行した。
しかし、外部依存型の経済体質の上に、造船海運業界の不況も相まって、その
結果、若年労働力の流出を招き、就業者数は、昭和45年をピークに大きく減少
し、地域活力の低下が懸念されている。こうした中で近年農業では「青いレモン」
をキャッチフレーズに、柑橘類を加工したジャムやケーキ等の農産物加工品が、
町の農業の顔となってきている。また、造船業は世界的な不況を脱し、町の産業
の中心となっている。
今後、産業経済の動向を把握することは難しいが、町では各分野の研究開発、
人材育成に努め地場産業の振興を図るとともに、地域の素晴らしい自然などを活
かした観光開発等に重点をおいた新しい産業を興すことにより、就業人口及び交
流人口の増加を図る必要がある。
-3-
表1-1(1) 人口の推移(国勢調査)
区
昭和 35 年
分
昭和 40 年
実数
実数
(単位:人,%)
昭和 45 年
増減率
実数
昭和 50 年
増減率
実数
昭和 55 年
増減率
実数
増減率
人
人
%
人
%
人
%
人
%
14,761
13,996
△5.18
13,572
△3.03
13,645
0.54
12,669
△7.15
0~14 歳
5,191
4,181
△19.46
3,403
△18.61
3,118
△8.37
2.716
△12.89
15~64 歳
8,404
8,571
1.99
8,823
2.94
9,052
2.60
8.268
△8.66
3,160
3,166
0.19
3,332
5.24
3,274
△1.74
2,350
△28.22
1,166
1,244
6.69
1,346
8.20
1,475
9.58
1,682
14.03
%
%
総
数
うち
15~29 歳(a)
65 歳以上(b)
(a)/総数
若年者比率
21.41
22.62
%
%
(b)/総数
高齢者比率
区
7.90
8.89
昭和 60 年
分
実
数
%
―
24.55
実
数
23.99
%
―
10.81
平成 7 年
増減率
実 数
%
―
18.55
―
%
―
9.92
平成 2 年
増減率
%
―
―
13.28
平成 12 年
増減率
実 数
―
平成 17 年
増減率
実 数
増減率
人
%
人
%
人
%
人
%
人
%
12,113
△4.39
10,442
△13.80
9,380
△10.17
8,605
△8.26
8,098
△5.89
0~14 歳
2,368
△12.81
1,663
△29.77
1,171
△29.59
878
△25.02
694
△20.96
15~64 歳
7,892
△4.55
6,670
△15.48
5,813
△12.85
5,079
△12.63
4,629
△8.86
2,010
△14.47
1,455
△27.61
1,190
△18.21
1,075
△9.66
1,040
△3.26
1,853
10.17
2,109
13.82
2,396
13.61
2,648
10.52
2,775
4.80
総
数
うち
15~29 歳(a)
65 歳以上(b)
(a)/総数
若年者比率
%
16.59
(b)/総数
高齢者比率
区
%
―
13.93
%
15.30
%
―
20.20
数
%
7,648
△5.56
0~14 歳
602
△13.26
15~64 歳
4,164
△10.05
985
△5.29
2,882
3.86
うち
25.54
15~29 歳(a)
65 歳以上(b)
(a)/総数
若年者比率
(b)/総数
高齢者比率
%
12.88
―
%
37.68
%
―
%
―
増減率
人
数
12.69
平成 22 年
分
実
総
%
―
―
-4-
12.49
%
―
%
―
30.77
12.84
―
%
―
34.28
―
表1-1(2) 人口の推移(住民基本台帳)
平成 12 年 3 月 31 日
区
平成 17 年 3 月 31 日
分
実数
総
構成比
人
8,894
数
実数
構成比
人
8,218
―
増減率
―
実数
構成比
%
△7.6
人
7,502
増減率
%
△8.7
―
男
4,249
%
47.8
3,949
%
48.1
%
△7.1
3,609
%
48.1
%
△8.6
女
4,645
%
52.2
4,269
%
51.9
%
△8.1
3,893
%
51.9
%
△8.8
平成 26 年 3 月 31 日
区
平成 27 年 3 月 31 日
分
実数
構成比
総
数
(外国人住民除く)
人
7,081
男
(外国人住民除く)
人
3,413
女
(外国人住民除く)
参
考
平成 22 年 3 月 31 日
増減率
実数
構成比
増減率
%
△5.6
人
6,993
%
46.5
%
△5.4
人
3,400
%
48.6
%
△0.4
人
3,668
%
50.0
%
△5.8
人
3,593
%
51.4
%
△2.0
男(外国人住民)
人
238
%
3.2
―
人
264
%
3.6
%
11.0
女(外国人住民)
人
20
%
0.3
―
人
18
%
0.3
%
△10.0
-5-
%
△1.2
表1-1(3) 産業別人口の動向(国勢調査)
昭和 35 年
区分
実数
昭和 40 年
実数
昭和 45 年
増減率
実数
増減率
%
35.6
―
%
25.0
―
%
18.8
―
17.4
第二次産業
産業人口比率
%
28.3
%
35.5
―
%
41.6
―
%
45.3
―
42.4
第三次産業
産業人口比率
%
28.3
%
28.9
―
%
33.4
―
%
35.9
―
40.2
実数
総
数
人
5,002
第一次産業
産業人口比率
17.9
第二次産業
産業人口比率
40.2
第三次産業
産業人口比率
41.9
%
%
%
平成 7 年
増減率
実数
増減率
実数
%
△7.5
人
4,280
%
△14.4
人
4,065
―
15.9
―
14.7
―
38.4
―
38.6
―
45.8
―
46.7
%
%
%
%
%
%
増減率
平成 12 年
%
%
%
増減率
%
△7.8
―
―
―
平成 17 年
実数
増減率
実数
増減率
%
△5.0
人
3,537
%
△13.0
人
3,501
―
%
12.9
―
%
12.1
―
―
%
36.2
―
%
37.3
―
―
%
50.9
―
%
50.6
―
%
△1.0
平成 22 年
区分
実数
総
平成 2 年
%
△4.9
人
5,407
%
43.4
昭和 60 年
人
5,867
実数
第一次産業
産業人口比率
区分
%
3.2
増減率
人
5,975
数
人
6,168
実数
昭和 55 年
人
6,092
総
%
△1.9
昭和 50 年
数
人
3,251
第一次産業
産業人口比率
9.4
第二次産業
産業人口比率
39.9
第三次産業
産業人口比率
50.7
%
%
%
増減率
%
△7.1
―
―
―
(3)行財政の状況
ア.行財政の状況
平成の大合併といわれ全国で合併協議が進む中、本町においても、平成 16 年
10 月 1 日、構成町村それぞれの歴史と文化を礎として、「上島町」の第一歩を踏
み出し11年経過したところである。
ただし、合併したからといって小規模自治体にとって今まで以上に財政力が強
化されることは望めず、上島架橋整備は進んではいるものの、その全面完成には
かなりの年月がかかり、離島どうしの合併という地理的な制約は、スケールメリ
ットを生かした施設整備や類似施設の統合といった、通常の合併なら可能なメリ
ットが生かせず、効率的なまちづくりを進める上で大きな障害になっている。
-6-
このような状況下、限られた財源を合理的、効率的、重点的な配分に徹し、三
位一体改革を中心とした国の地方財政計画を踏まえつつ中長期財政計画の策定
をし、次の4点に取り組んでいる。
① 町税等の増収、受益と負担の均衡、国県補助金の効果的運用、適正な町債
の発行等による財源の確保。
② 事務事業の評価及び見直しを行い、また定員、給与においても適正な管理
を行う等、経常的経費、義務的経費にいたるまで可能な限りの節減を数値
目標をもって取り組む。
③ 公債費負担の適正化においては、歳入の確保や経費の節減は勿論のことな
がら、減債基金の計画的、継続的な積立を行い、起債借り入れにおいても
有利な起債の選択を行い、極力抑制に努める等将来的な負担に配慮した財
政運営とする。
④ 平成 28 年度に策定予定の第 2 次上島町総合計画及び公共施設等総合管理計
画の指針に沿った長期展望に立った財政運営の展開を図るため、経常的経
費の徹底した節減に努め、財源の重点的効率的配分に留意し、節度ある行
財政の推進を図ることとする。
-7-
表1-2(1) 市町村財政の状況
(単位:千円)
平 成 12 年 度
平 成 17 年 度
平 成 22 年 度
平 成 25 年 度
歳入総額 A
8,090,144
7,270,926
9,826,884
7,062,042
一般財源
5,169,875
4,910,511
4,433,520
4,425,791
国庫支出金
1,008,005
934,594
1,926,852
508,221
都道府県支出金
532,103
456,264
807,942
391,604
地方債
491,700
862,500
1,509,500
874,700
10,000
4,600
74,000
97,700
888,461
107,057
1,149,070
861,726
歳出総額 B
7,466,131
6,793,113
9,243,618
6,589,270
義務的経費
2,927,098
2,588,463
2,290,732
2,458,276
投資的経費
2,214,478
2,192,674
4,491,309
1,768,569
2,214,006
1,996,151
4,490,773
1,767,729
2,324,555
2,011,976
2,461,577
2,362,425
10,000
682,899
1,002,415
1,239,121
624,013
477,813
583,266
472,772
65,786
377,292
146,686
118,042
558,227
100,521
436,580
354,730
0.142
0.175
0.240
0.199
公債費負担比率
25.5
20.9
14.0
19.8
実質公債費比率
―
16.3
10.2
10.1
起債制限比率
11.9
11.7
5.0
7.3
経常収支比率
77.4
89.3
80.7
86.5
将来負担比率
―
―
58.9
26.4
地方債現在高
8,989,867
8,988,043
11,196,757
11,301,266
区
分
うち過疎債
その他
うち普通建設事業
その他
過疎対策事業費
歳入歳出差引額
C(AーB)
翌年度へ繰越すべき財
源
D
実質収支 C-D
財政力指数
-8-
表1-2(2)
主要公共施設等の整備状況
区
市
分
町
村
昭和 45
昭和 55
平成 2
平成 12
平成 20
平成 25
年度末
年度末
年度末
年度末
年度末
年度末
道
改
良
率
(%)
5.3
17.7
28.1
31.6
34.2
35.4
舗
装
率
(%)
26.6
83.3
93.4
94.4
94.7
94.7
耕地 1ha 当り農道延長
(m)
24.9
34.3
53.8
57.3
60.2
58.4
林野 1ha 当り林道延長
(m)
4.9
8.4
7.6
8.5
5.8
4.8
率
(%)
31.5
44.6
77.5
85.7
95.7
94.0
率
(%)
―
13.9
28.4
56.1
86.6
94.1
0.4
1.6
1.9
2.2
0.0
0.9
水
水
道
洗
普
及
化
人口千人当り病院、
診療所の病床数(床)
(4)地域の自立促進の基本方針
本町の根本的な課題は、離島であることからくる日常生活の非利便性が人口減少
を加速させ、これに伴い、地域活力の低下が生じていることにある。
国や県の平均を上回るペースで過疎化、少子・高齢化がすすむとともに、農林水
産業の後継者不足や商業の低迷が続くなか、地域内を連結する公共交通網や救急医
療、上下水道など住民生活を支える基盤の一層の充実が求められている。
一方で、瀬戸内海の豊かな自然、歴史・文化や多様な観光・スポーツレクリエー
ション資源に恵まれるとともに、高品質で多様な農水産物の産地であることや、造
船をはじめとする活発な工業活動、独立行政法人弓削商船高等専門学校の立地など、
他地域にはない大きな特性を有している。
こうした状況を踏まえ、課題を克服し、特性を活かすことにより、本町の自立を
促進し離島性からの脱却を図るため、以下の基本理念を推進し、『元気島・上島町
上島町は人が元気。上島町は、自然が元気。上島町は、業わいが元気。』を目指す。
○上島町まちづくりの基本理念
島の活力の源泉は元気にあります、町民が、環境、健康、産業、知恵(教育)、
交流、自治等、多方面にわたるまちづくりの分野で、いきいきと活躍する「人」に
なることをめざす。
子どもからお年寄りまで、上島町の暮らしの源泉である「元気」を高め、「住ん
でよかった」と信頼を寄せることができる元気印の島・上島町となることを基本理
念とし、政策として、次の6本柱を立て実施する。
① 島人は健康人
保健・医療、高齢者・障害者福祉の充実、子育て支援事業・食育の推進を図り、
健やかな身体と心を保つことに努め、快適で健康な暮らしを営む。
② 島人は産業人
-9-
農林漁業・商工業の推進を図り、地域に根ざした多様な産業を発展させ、安定
した働く場を確保する。
③ 島人は交流人
海上交通網の整備、道路網・架橋の推進、情報通信基盤の整備、移住の促進、
ツーリズムの振興を図り、町内外の交流活動を活発に展開し、多彩な交流ビジネ
スを振興する。
④ 島人は環境人
景観の保全と創造、安全な地域社会・資源循環社会の構築、上下水道施設の適
切な維持管理や改築・更新、公営住宅の整備を図り、恵まれた自然環境を大切に
守り、美しい風景と町並みを創り出し、後の世代に遺す。
⑤ 島人は知恵人
学校教育の充実、青少年の健全育成、生涯学習の充実、地域文化・地域スポー
ツの振興を図り、思いやりのある、賢い人を目指すとともに、郷土に愛着と誇り
を持つ子供たちを育てる。
⑥ 島人は自治人
地域自治活動の充実、男女共同参画の推進、行財政改革を図り、自らの町は
自らの力で収めるという気概を持ちつつ、互いに助け合い、温かい地域社会を
築く。
(5)計画期間
本計画は、平成28年4月1日から平成33年3月31日までの5ヵ年間とする。
- 10 -
2.産業の振興
(1)産業振興の方針
本町の産業は、弓削、生名、岩城地区においては、地理的条件、近隣の造船関連
産業の経緯から、造船業が主産業となっている。また魚島地区では地理的条件から、
造船関連産業とのかかわりはほとんどなく、古くから漁業を主産業として発展して
きている。農業については温暖な気候と傾斜地を生かした柑橘栽培が中心である。
これらの現状を踏まえながら、基盤整備のみならず、情報提供や人材確保、
市場流通等の施策にも積極的に取り組み、産業振興及び地域経済活性化のため
の条件整備を進めていく必要がある。
このため、農林水産業においては、計画的な基盤の整備と維持・保全、就業
者の育成・支援、担い手の確保・育成に取り組む。
造船業など地場産業の振興については、事業所用地の確保、拡張、海上交通
の改善等、地場産業に関する多方面の支援策を実施する。
(2)農林水産業の振興
農林漁業は造船業と並んで本町の基幹産業である。農林漁業は自然を相手にし
た産業であり、就業の場を提供するだけでなく環境を守り育てる重要な役割が期
待されている。
また、生涯現役ともいえるほど高齢期になっても従事できる部分が多く、住民
の生きがいにつながる要素が大きい。
したがって、元気な島をめざす本町において、産業全体の中で第一次産業とい
われる農林漁業が、地域の経済や環境にとって「第一次的な重要性」を持つこと
を再確認し、さまざまな施策を講じてその振興を図る。
ア 農業の振興として、農業就業者の確保・育成・支援、荒廃農地の有効利用、
計画的な基盤整備、農業の高度化、観光農園の振興を図る。
イ 林業の振興として、環境保全型林業の振興、保安林の機能維持、森林教育の
推進を図る。
ウ 漁業の振興として、漁場の整備、流通システムの改善、水産加工業の振興、
漁港の整備、担い手の確保を図る。
(3)地場産業の振興
本町の主な地場産業は造船業である。当地における造船業の歴史は古く、近世
の舟運時代に遡る。近代的な造船業に脱皮したのちも、世界規模の海運市場の動
向によってその衰弱が激しく、近年まで不振にあえぐ時期が長く続いてきた。
近年、中国経済等の急成長で受注が増え良好な操業状態の時期はあったものの、
景気変動の影響を大きく受ける産業のため、その将来は必ずしも楽観できない。
また、施設の老朽化・狭隘化・技術者の確保・育成、離島という地理的制約に
よるアクセス条件の不備等、多くの課題を抱えている。
そこで、世界経済の不況の中でも生き残れる体制整備のため、各種のサポート
- 11 -
振興策を推進する。
ア
造船業の振興として、「造船振興計画」に基づき、埋め立て等による工場用
地の確保と規模拡大による省力化を図るため、造船業の振興に関する多方面の
支援策を実施し、新規労働者等の雇用機会を創出・拡大してきたが、今後はそ
れに加え、情報基盤の改革、流通改善等へのサポートも推進する。
(4)企業の誘致対策、起業の促進、商業の振興
本町は離島であるため、船便による輸送に時間的制約とコストがかかる等、企
業誘致の立地に適しているとはいえないが、ブロードバンド化を図るなど地域の
IT化を推進し、企業の誘致に努める。
また、港湾施設は本州・四国間の陸・海交通の連結点として重要な役割を果た
しており、港湾施設の改修・維持補修を講じることで生活航路・物流拠点として
の機能保持と島内主要産業・観光振興に資する必要がある。
小規模ビジネスの振興として、IT化を活用した既存商業の振興、新規ビジネ
スの企業支援を実施する。
また、地域住民の各種活動のコミュニティービジネス化や新規ビジネスの起業
を積極的に支援し、地域に新しい企業体の創出を図るとともに、多様な就業の場
を増やす。
(1)現況と問題点
ア.農
業
離島からなる本町は、平坦地に乏しく、農地の多くが急傾斜地の段々畑で小規
模な経営形態であったことから第2種兼業農家が多く、そのほとんどが温州みかん
栽培であった。
昭和40年代後期から生産過剰による価格低迷、オレンジ自由化のため経営不振
に陥り、耕作条件の悪い樹園地は荒廃化し、就業者の高齢化がすすみ、真の専業農
家は減少の一途にある。
県今治支局地域農業室しまなみ農業指導班岩城駐在所(旧県果樹試験場岩城分
場)においては、長年適産物の研究や普及促進活動を行っており、行政においても
施設栽培によるレモンやライムや新品種の柑橘への転換を重点的に行いブランド
化が図られている。
また、近年では都会からの I ターンによる農業従事者もあり、耕作放棄地解消の
一助となっているが、高齢化の波は農家へ重くのしかかり、農家個々の先端的な投
資は困難な状況にある。
イ.漁
業
本町は、周囲を海域に囲まれ、沿岸一帯には、天然磯・好漁場が多く点在してい
たことから、以前は、水産動物・魚介類を対象とした定置網、刺し網、一本釣り、
底びき網など、獲る漁業が中心であった。
- 12 -
しかしながら、乱獲、漁場の荒廃等により漁獲量が減少したことから魚礁・築磯
による漁場造成や資源保護を進めると同時に、弓削地区ではのり養殖、生名・岩城
地区では、エビ・ヒラメ・マダイ等の養殖、魚島地区ではマダイ・ヒラメ等の中間
育成など、つくり育てる漁業への移行が進んでいるが、生産量、品質が天候に大き
く左右されるなど不安定な経営状態が続いている。
ウ.その他の産業
第二次産業
本町の弓削、生名地区は、広島県尾道市への就業者が多く、外部依存型の経済体
質となっている。
岩城地区には、農村工業導入促進法等により誘致された造船企業等4社の造船関
連企業があり、町内産業の重要な基盤となっているが、町全体としては、零細な経
営規模の企業が多い。
建設業は、公共事業に頼らざるを得ない状況にあり、近年の公共事業の縮減傾向
により、建設業就業者は減少傾向にある。
第三次産業
本町では、サービス業、卸小売業など第三次産業の就業者がかなりの就業率を占
めているが、町内のみを商圏とする傾向にあり、今後は町外に向けた商圏を確立し
てゆく必要がある。
観光業についても、平成25年度に上島町観光協会を設立したが、観光自体が未
だ産業として確立していないこともあり、一部宿泊施設を除き、いずれも小規模で
あるが、今後はゆめしま海道を起点とするサイクリングと、海の駅を拠点とするヨ
ット体験等の観光ニーズに応じたハード・ソフトの事業の必要性が増している。
(2)その対策
ア.農 林 業
農業経営対策推進事業、農地流動化対策関係事業、ワーキングホリデイ、お試し
定住事業、農林漁業インターン事業等による各種施策を展開し、新たな担い手確保、
農地の有効利用、作物別集団化、技術体系の確立・高品質化に努め、レモン・ライ
ムや新品種等への積極的な転換を重点的に推進するとともに、施設栽培による周年
供給体制を推進し、産地化・ブランド化に努め後継者の確保・育成を図る。
農道などの農業生産基盤、集落排水処理施設等の生活環境施設及びかんがい排水
事業を総合的に展開し、生産性の向上と経営の合理化・近代化の推進等を図る。
地域農産物の付加価値を高めるため6次産業化を目指し、製品加工化、販売体制
の確立を進め、日本有数の柑橘を活用した観光農園への挑戦、新たな産業おこしの
推進を図る。
計画的な植林・保育事業の推進と林道整備、維持管理に努める。また林業のみな
らず自然環境や生活環境保全対策における森林保全管理及び自然観察道としての
役割も果たすことにより多面的な利用を推進する。
- 13 -
イ.漁
業
安定した資源管理型漁業による経営基盤の確立を目指すため、生産基盤整備や漁
場管理システムを中心に生産革新を図る。また、資源管理型漁業の定着促進のため、
漁場環境保全、流通機能向上、活力ある漁村の形成、安定した漁業経営確立に向け
て新技術の導入などを進める。
水産基盤整備事業等の推進により、漁場の開発確保に努め、併せて種苗放流を実
施し資源培養管理型漁業の形成を図る。また、のり養殖では、適正規模による計画
的生産を推進するとともに、効率的な生産流通体制の確立を図る。
養殖漁業では、ブランド化による差異化、適正規模による計画的生産を推進する
ことにより、所得の向上及び雇用の促進を図る。
漁業の生産基盤である漁港施設の総合的な整備により、水産業の振興並びに地域
経済の発展を図る。
ウ.その他の産業
既存企業のより一層の発展及び安定経営に資するため、流通の改善のための交通
体系改革に努力し、人材確保、新分野開拓に積極的な取組みを実施する。
公共事業を軸に展開する建設業は、積極的で斬新な長期計画に基づく重点的な供
給により安定化を図る。また、技術者の養成等、技術の向上を図る。
伝統産業と地場産業の複合的な振興を図るため、ブランド化の推進、技術力の向
上、情報ネットワークによる販売、生産情報の入手、インターネットの活用等を推
進するとともに異業種交流の促進により地場産業振興の確立を図る。
社会ニーズに即した観光・レクリエーション施設の整備、地域の特色を生かした
イベントを実施することにより、地域資源を活用した新たな産業おこしに寄与し、
更に他地域との交流の場の拡大を目指す。
(3)事業計画
自立促進施策区分
1産業の振興
事業名(施設名)
(1) 基盤整備
事
業
内
容
事業主体
地域ため池総合整備事業
県
農 業
農業農村整備事業
町
林
森林整備事業
町
水産基盤整備事業
町
業
水産業
魚礁
水産基盤整備事業
町
増殖礁
(2)漁港施設
水産物供給基盤機能保全事業
町
弓削・岩城・魚島
港整備交付金事業
(3) 経 営 近 代 化 施
- 14 -
町
備考
設
水産業
(7)商
水産振興施設整備事業補助
町
港湾改修・整備事業
町
観光施設整備事業
町
定住促進推進事業
町
業
共同利用施設
(8)観光又は
レクリエーション
(9) 過 疎 地 域 自 立
促進特別事業
内容:農漁業体験事業、新築住宅の整備
補助、定住奨励金等補助
必要性・効果:高齢化等による新たな担い
手、後継者不足解消、移住者の確保
産業振興イベント開催事業
町
内容:産業まつり
必要性・効果:地域資源を活用した産業お
こし、他地域との交流拡大
遊休農地再生利用対策事業
町
内容:遊休農地再生利用者への補助
必要性・効果:耕作放棄地の活用
やる気ある農業活性化応援プロジェク
町
ト事業
内容:農業者への補助(施設整備等)
必要性・効果:地域の農業の活性化、生産
量の増加
鳥獣被害防止対策事業
町
内容:有害鳥獣の駆除、防止対策補助
必要性・効果:農作物被害減少による農家
生産意欲の向上
生活環境保全林維持管理事業
町
内容:保全林維持管理
必要性・効果:保全林の保護、災害防止
森林病害虫防除事業
町
内容:松くい虫防除
必要性・効果:松林の保護・環境保全
観光推進事業
内容:観光パンフレット・PR グッズ作成・観光
情報発信システム整備等広報事業、桜まつり等
イベント開催、サイクリング・クルージング
関係事業、観光施設整備・運営事業等、観
光協会補助
必要性・効果:観光客誘致による地域の活
- 15 -
町
性化・産業の振興
過疎地域等自立活性化推進事業
町
内容:空家を活用した人材・企業の誘致
必要性・効果:人材・企業誘致による過疎
化の抑制、地域の活性化
商工業育成事業
町
内容:商工会補助、特産品販路拡大事業等
必要性・効果:地域の商工業活性化
魚島観光センター運営事業
町
内容:魚島観光センター運営費
必要性・効果:観光客誘致による魚島地区
の活性化
3.交通通信体系の整備、情報化及び地域間交流の促進
(1)交通通信体系の整備の方針
上島町民にとって海上交通は重要なライフラインである。離島という厳しい立地
条件を少しでも緩和するために、費用負担、利便性、そして利用者の動向等を比較・
勘案し、海上交通とは切り離せない関係にあるバス交通を含め、長期的な方向を見
通す中で当面の最適な対応策を推進する。
架橋事業は、町民の悲願ともいえる重要課題である。今後の架橋については、費
用対効果の分析はもとより、地域住民の生活実態や意向を把握し、将来の合併等視
野に入れながら的確な選択を行い地域の発展に資する。
(2)都道府県道及び市町村道の整備
上島架橋の進捗と平行して、町内の交通状況や住民の意見を集約しながら、町内
の県道の2車線化を積極的に働きかける。
町道は基幹道路である県道を補完する産業・生活道路として積極的な整備を促進
するとともに、老朽化の進む道路ストックの修繕を進め、維持管理する。
(3)農道、林道及び漁港関連道の整備
農道、林道及び漁港関連道についても積極的な整備を促進する。
(4)電気通信施設の整備
情報通信基盤は離島においては特に交通網等とともに生活のライフラインにな
っている。そのため情報通信網の整備を積極的に進めるとともに、それを最大限に
活用して電子自治体としての機能を高める。
(5)地域間交流の促進
- 16 -
離島である本町にとって、地域間交流の促進は、今後、ますます重要となってく
ることから、本町の歴史・文化・自然を生かした地域間交流を積極的に進め、新た
な『交流の場』の形成・拡大に繋げていく。
(1)現況と問題点
ア.海上交通
離島という地理的条件により、弓削島~佐島間と平成22年度完成の生名橋に
よる佐島~生名島間を除き、町内、町外ともに交通は、すべて船舶に頼らざるを
得ない状況にある。
このため、今後、町内の連絡航路をはじめとして地域間・広域航路の増便、夜
間就航など航路の再編、充実が強く望まれている。
イ.陸上交通
島という特殊な地理的条件から各島の集落は、狭隘な平野部に密集し点在して
いる。このため、島内道路の整備は、生活面、防災面からも重要であるが、現状
としては、幅員が狭小で密集した集落内では、車の離合も困難な箇所が多数あり、
早急な整備が望まれる。
また、県道岩城弓削線の道路改良事業について、本土への連絡(離島性からの
脱却)へ向けた、佐島~生名島間を結ぶ生名橋が平成22年度に供用開始された
ことによる弓削~生名間の公共交通体系の維持・確保及び利便性の向上に努める。
さらに、合併によるスケールメリットを活かすためにも、生名島~岩城島間の架
橋の早期実現が期待される。
なお、整備済みの道路ストックについては、整備からかなりの年数が経過し、
老朽化が進んでいるストックもあることから、安全面・防災面からみても早期の
修繕が望まれる。
ウ.情報通信体系
平成21年度に情報通信基盤整備事業により、町内に光ファイバーケーブル網
を整備し、CATVによるテレビ放送や、インターネット網による告知放送シス
テムによる行政情報やコミュニティー情報等の放送サービスを提供している。
問題点としては、CATVによるテレビ放送において、電波が海面に反射し受
信が不安定になるフェージング現象等により、安定した映像確保が阻害される。
町では、映像の安定確保の為の受信点改修工事や、機器類の定期的な更新などに
取組むが、その財政的負担は大きい。
また、魚島地区については、光ファイバーケーブル網は整備されておらず、現
在は同軸ケーブルでCATVによるテレビ放送や防災無線による行政情報やコ
ミュニティー情報等の放送サービスを提供しているが、町民サービスの公平性の
意味からも光ファイバーケーブルを整備する。
- 17 -
平成21年度から平成22年度にかけて旧町村単位で整備していた防災行政
無線の一元化及びデジタル化を目的にMCA陸上移動通信システムを活用した
同報無線を整備したが、一部簡易無線による中継区域の情報伝達については、遅
延、音質劣化が発生し、災害情報等の緊急を要する情報伝達に支障をきたす可能
性があるため、早急の対応が必要である。
過疎高齢化が進む離島の町村同士が合併して成立した上島町にとって、地理
的・空間的制約を克服できる情報通信技術の整備活用は極めて重要である。今後
とも財政的支援を受けながら、町民全てが、情報化の恩恵を享受できるよう整備
を進める。
エ.地域間交流
旧4町村で、以前から多分野での異種交流がすすめられている中、合併により
同一町民になったことを機に、以前にもまして地域間・世代間・業種間交流を促
進し一体化を図る必要がある。
(2)その対策
ア.海上交通体系の整備
県道岩城弓削線道路改良事業によって、将来的には、弓削~岩城間が架橋によ
って、結ばれることを期待するものであり、早期完成を目指している。
架橋までの間や架橋の予定のない地域(魚島~高井神~豊島~弓削)の海上交
通について、現在の港湾及び漁港施設の拡充・航路の再編を図るとともに、効率
的なサービスの提供等のための旅客船を整備する。
イ.陸上交通体系の整備
効率的な交通ネットワークの形成を目指し、交通拠点とのアクセスに配慮した
県道・町道の新設・改良及び農道・林道網の整備を推進する。
離島性の解消、行政サービスの向上及び合併によるスケールメリットを活かす
ため、引き続き岩城橋工区(生名島~岩城島)の事業採択を要望していく。
また、交通確保対策として、さらなる利便性の向上に向けて充実を図る。
さらに、老朽化の進む道路ストックについては、随時修繕を推進する。
ウ.情報通信体系の整備
フェージング現象等の対策として、受信点の改修や冗長化工事を実施し、CA
TV映像の安定確保を図るとともに重要機器を更新整備する。
魚島地区の情報通信体系の整備を図るため、光ファイバーケーブル網の整備と
インターネット網による告知放送システムを導入する。
独自の専用周波数帯を持つデジタル防災行政無線に更新整備することで、災害
時等における安定した情報伝達を確保する。
情報通信網の整備を積極的に進めるとともに、それを最大限に活用して電子自
- 18 -
治体としての機能を高める。
また、町民生活の豊かさや生産活動の効率化に資するために、情報通信機器を
利用する町民能力の向上を図る。
エ.地域間交流
離島である本町にとって、地域間交流の促進は、今後、ますます重要となって
くることから、本町の歴史・文化・自然を生かした地域間交流を積極的にすすめ、
新たな『交流の場』の形成・拡大に繋げていく。
またイベントは住民同士及び来訪者との交流を促進する絶好の場である。既存
の駅伝や桜まつり等を手がかりに音楽祭、ヨットミーティング等多彩な交流イベ
ントを実施する。
(3)事業計画
自立促進施策区分
2
交 通 通 信 体 系の
整備
事業名(施設名)
(1)市町村道
道
事
内
容
佐島循環線(第 1 工区)
L=240m
路
業
L=320m
町
W=4.0(5.0)
稲浦幹線
町
W=4.0(5.0)
町道全域
舗装修繕
町
W=4.0(5.0)
佐島循環線(第 2 工区)
L=480m
事業主体
町
L=4,030m
1 級 2 級町道
道路構造物修繕
町
N=20 箇所
(6) 電 気 通 信 施
設等情報化の
ための施設
告知放送施設
IP告知システム更新事業
町
防災行政用無線
防災行政無線設備更新事業
町
テレビジョン
魚島地区光ファイバーケーブル架設整備
町
放送等難視聴
事業
施設
解消のための
施設
(7)自動車等
自動車
町有バス購入事業
(8)渡船施設
- 19 -
町
備考
渡
船
(11)過疎地域自
旅客船整備事業
町
町有バス運営事業
町
立促進特別事
内容:町有バス運営費
業
必要性・効果:公共交通整備による交通手段
の確保
離島航路運航事業
町
内容:離島航路の運営費
必要性・効果:公共交通整備による交通手段
の確保、地域の活性化
上島町 CATV 施設運営事業
町
内容:町 CATV 運営費
必要性・効果:行政・コミュニティー情報の充実、
行政サービスの向上
民間航路等業者支援事業
町
内容:民間航路事業者補助
必要性・効果:町民の交通手段の確保
情報通信システム維持管理事業
町
内容:行政無線等、緊急通報装置維持管理費
必要性・効果:行政・コミュニティー情報の充実、
行政サービスの向上、緊急時の体制強化
町民音楽祭等交流イベント事業
町・団体
内容:町民音楽祭、ヨットミーティング等イベント開催
必要性・効果:イベント開催による住民同士、
来町者との交流の促進
4.生活環境の整備
(1)生活環境の整備の方針
地域の文化・歴史・生活の上に築かれた上島町ならではの景観を形成するために、
住民と行政が力を合せて保全・創造活動を進める。
また、良好な景観の創造のため「景観まちづくり」の観点に立って、上下水、ゴ
ミ、住宅等の住環境整備を推進する。
住民が安心して生活できる安全な地域社会を築くことが求められる中、災害に強
く事故や犯罪が少ない社会をつくるために、少子高齢社会に適した施策を生み出し、
防災・防犯体制を強化する。
さらに、今後の人口減少等を見据えた公共施設の適正配置の実現や、廃止してい
る公共施設、空き家等について対策を講じることで生活環境の向上を図る。
(1)
現況と問題点
- 20 -
ア.上
水
道
慢性的水不足に悩まされてきた本町(魚島地区を除く)も、昭和60年 7 月、
広島県からの県境を越えた分水によって、待望の一部給水が開始され、平成元年
4月から全域給水された。また、魚島地区(魚島・高井神島)においては、平成
9年2月末に海水淡水化施設が完成し、地域の深刻な水不足は解消された。
しかし、離島であるが故に各島(魚島地区を除く)を結ぶ海底送水管等の施設
整備に多額の建設費を要し、極めて高額な給水料金となった。このため、高料金
対策を利用者の要望に応え、平成2年6月から約半額となる大幅な値下げを実施
した。
しかし、効率的な運営など料金体制の維持に努めてきたが、やむを得ず平成1
1年4月に約22.1%の水道料金の値上げを余儀なくされた。今後、人口減少
による料金収入の減少や耐震化による改築費用が必要になるが、可能な限り低廉
で安定した供給体制の確立を検討していく必要がある。
魚島地区では、海水の淡水化装置と本土からの購入水に頼らざるを得ない状況
にあることから、生活用水の安定供給に向けた検討・整備を進めていく必要があ
る。
イ.下水処理
本町では、各島々の生活環境向上、公共用水域の水質保全のため、公共下水道
等の整備を行い、平成20年度には全町で整備を終え、供用を開始している。
弓削島・生名島・岩城島の一部では特定環境保全公共下水道で、佐島・岩城島
の一部では農業集落排水、魚島地区ではコミュニティプラント、計画区域外の小
規模分散集落については、浄化槽市町村整備推進事業で整備が完了し、使用料等
の均一化もなされている。
今後においては、施設の長寿命化及び耐震化による施設の改築更新という再投
資が必要であるとともに、人口減少や有収水量の減少が見込まれるなど、下水道
事業会計を健全で安定したものにしていくためには、改定により自主財源である
使用料収入を確保する必要がある。
ウ.廃棄物処理
可燃ごみを適正に処理するためにごみ処理施設(焼却施設)を集約して整備す
ることは喫緊の課題であったが、平成 20 年 3 月、上島クリーンセンターが弓削
島に完成したことに伴い、弓削をはじめ、生名、岩城のごみは当施設で焼却でき
るようになった。しかし、ごみの量の減少は少なく、経年劣化等により当施設の
設備の改修が必要になってきている。
また魚島の可燃ごみについても、平成23年4月から週1回のチャーター船に
よる回収により、上島クリーンセンターで焼却を行っている。
最終処分場についても、近年の生活様式の変化、ごみの多様化等により、各島々
の処分場もいずれ満杯となり、将来に向けて、不燃物処理対策が懸念されている。
し尿及び浄化槽汚泥については、平成26年4月から汚水処理施設共同整備事
- 21 -
業により、弓削地区公共下水道で共同処理を実施している。
エ.消防施設
上島町消防本部は、平成16年10月の上島町誕生と同時に発足し約11年余
りが経過した。この間には、消防本部職員の増員配置、救急車搭載型の救急艇の
新造をはじめ、消防庁舎の建設、デジタル無線整備、新型救急艇の建造、高規格
救急車や救助工作車、消防ポンプ車の配備を行うなど消防・救急体制の整備充実
が図られた。これにより、町民の安心・安全の確保と迅速な救急搬送や火災への
対応が可能となった。
しかし、町の消防を取り巻く状況は、消防の広域化問題や消防・救急無線のデ
ジタル化にかかる維持経費の問題、そして防災面においてはゲリラ豪雨や南海ト
ラフの巨大地震対策など災害発生要因の多様化、大規模化などへの対応が課題と
なっている。
また、消防団にあっては昼間の団員の確保対策や青年層の減少に伴う団員の高
齢化問題を抱えているが、定数390名を堅持していく必要がある。
オ.公営住宅
公営住宅は、老朽化し改善の必要なものから更新を進め、平成23年度に建替
事業は完了した。改修については、平成24年度に長寿命化計画を策定し、計画
に基づき改修事業を実施している。
カ.斎場・墓苑
斎場については、各島で整備され、能力的には要請に十分応えられるものとな
ってきている。
墓苑については、小規模なものが散在しており、土地有効利用の観点からも将
来的には公共墓地の設置について検討する必要がある。
キ.そ の 他
本町は、海岸線に沿って開けた狭い平地に集落の多くが形成されており、その
背後には急傾斜地が迫っているという自然的条件となっている。このため、生活
環境施設の整備に限らずあらゆる公共事業の実施にも、その用地確保が大きな問
題となっている。
(2) その対策
ア.上 水 道
給水開始から26年を経過し、維持管理費の増大などのため、高料金対策によ
り約半額としていた水道料金も、平成11年4月に約22.1%の値上げをせざ
るを得なくなった。今後は、計画的な維持管理や施設の耐震化を進め、より一層
の効率的な運営により、現在の料金体制の維持を図り、安定した供給体制の確保
を図る。
- 22 -
給水区域外である魚島地区においては、魚島簡易水道事業と高井神簡易水道事
業の2簡易水道事業で経営を行っていたが、いずれも過疎地域に位置しており、
人口減少による経営の脆弱化に歯止めがかからない状況であり、各施設とも経年
による老朽化が進んでいるため、今後の経営に大きな不安を抱えていた。しかし
平成25年度に住民に対し安全で安定した水道水を供給し、良質なサービスを提
供するため、2簡易水道事業を1簡易水道事業に統合し、一元管理を図った。今
後は老朽化した施設を随時更新し、平成29年度から運用開始予定である。
イ.下水処理施設
下水道施設整備については平成20年度に全て完了している。
今後は、普及率の向上を図ると共に計画的な維持管理及び長寿命化及び耐震化
計画等による施設の改築・更新を随時実施する。
ウ.廃棄物処理施設
限りある資源を有効に利用するためにも、町民、事業者及び行政が一体となっ
てごみの排出抑制(ごみの減量化)を推進するとともに、上島クリーンセンター
の設備の改修を行う。
また、埋立残余容量が少なくなった最終処分場については、今後、長期的かつ
安定的に埋立処分が可能な次期処分場の整備を検討する。
エ.消防施設
救急体制の整備については、平成8年度、平成26年度建造の救急艇の更新整
備に続き、高規格救急車の増強配備や救急救命士の養成を行うことにより、迅速
な救急搬送体制の確立を図る。
防災面においては、南海トラフの巨大地震対策を含めたがけ崩れ対策や津波対
策などのハード事業や各種ソフト事業を実施し、災害に強い町づくりを進める。
また、消防団の消防施設にあっては、交付金等の活用により小型積載車を順次
計画的に更新整備し、消防の機動力のアップを図るとともに女性消防団員や青壮
年層の団員の確保対策を進め、消防力の強化と迅速化を図る。
オ.公営住宅
長寿命化計画に基づき改修をすすめ、入居者の住環境の改善を図るとともに、
住宅の維持管理に対する啓発を通して適正な管理運営に努める。
町全体の住宅需要を再検討し、適切な住宅環境を提供する。
カ.斎場・墓苑
弓削・生名・岩城・魚島の4地区にある斎場を、岩城橋の開通を目処に集約し
効率的な運営を行う。
葬儀場や宿泊施設を併設して、利便性の高く住民の利用しやすい施設を整備す
る。
- 23 -
墓苑については、需要調整や関係機関との協議を行い、公共墓地の設置につい
て検討を進める。
キ.その他
事業用地の確保については、限られた町土の有効利用はもとより、海の有効活
用をすすめる。
(3)事業計画
自立促進施策区分
3
生活環境の整備
事業名(施設名)
事
業
内
容
事業主体
(1)水道施設
簡易水道
簡易水道等施設整備事業
町
魚島・高井神浄水場施設改築・更
新
(2)下水処理施設
公共下水道
長寿命化・耐震化計画事業(計画及
町
び実施)
弓削及び生名浄化センターの施設
改築・更新
農村集落排水
施設
農業集落排水施設改築・更新
町
4処理区の施設改築・更新
その他
生活排水処理事業(計画及び実施)
町
魚島・高井神コミュニティ・プラ
ントの施設改築・更新
(3)廃棄物処理施設
ごみ処理施設
一般廃棄物最終処分場整備事業
町
廃棄物処理施設改修事業
町
(4)火葬場
火葬場整備事業
町
(5)消防施設
消防施設整備事業
町
救急関係施設整備事業
町
公営住宅整備事業
町
(6)公営住宅
弓削地区,生名地区,岩城地区,魚島
地区
(7)過疎地域自立促進
特別事業
離島における救急業務運営事業
町
内容:救急艇維持管理費
必要性・効果:迅速な救急搬送体制の
確立
簡易水道維持運営事業
- 24 -
町
備考
内容:海水淡水化施設維持管理費
必要性・効果:魚島地区の生活用水の
確保
5.高齢者等の保健及び福祉の向上及び増進
(1)高齢者等の保健及び福祉の向上及び増進の方針
本町における高齢者比率は、43.1%(平成27年4月住民課調)と愛媛県全
体の29.5%に比べて高い状況にあり、高齢者対策は緊急の課題となっている。
高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、高齢者同士が気軽に集まり、
交流できる場や機会を拡充するとともに、介護保険制度の充実、高齢者の住環境の
整備、特別養護老人ホームの充実に努める。
(2)高齢者等の保健及び福祉の向上及び増進の対策
高齢化の進行に伴って、医療費の急増が大きな社会的、経済的な問題になってい
る。健康づくりや予防医療に重点を置き、住民自身の自覚と自己責任によって、自
らの健康づくりに努めるような世論の喚起と環境づくりに取り組む。
また、介護保険制度適正な運営に努めるとともに、グループホームの整備、特別
養護老人ホーム「海光園」の機能の維持・強化を図る。
(1) 現況と問題点
ア.高齢者福祉
若年層の流出による人口構造の変化により、本町の高齢化率は、全国平均、愛
媛県平均と比較しても、かなり高い数値となっている。また、高齢者のいる世帯
については、高齢者のみの世帯、単身高齢者世帯の割合が年々増加しており、家
族機能・集落機能の維持さえ困難な状況となってきている。
今後も高齢化は進行していくことから、高齢者の保健及び福祉の向上及び増進
は、町にとって緊急かつ重要な課題となっている。
町としても、生涯を通じて健康で生きがいのある生活が送れるよう、各地区の
保健・福祉の拠点として、保健センター・高齢者生活福祉センター(デイサービ
ス)等を整備するとともに、同時に、地域包括支援センターを中心に保健・福祉
の連携体制を確保し総合的なサービスの提供体制を整えている。
さらに、海水温浴施設(潮湯)、各種スポーツ施設の利活用により、健康の回復・
維持・増進を図っている。
今後さらに高齢者が、健康で生きがいを持ち、住み慣れた地域で老後を生き生
きと安心して生活できる地域社会を目指していくとともに、地域社会の変貌に伴
い、高齢者に対する包括的で多様なサービスの提供を地域全体で支援し、地域包
括ケア体制の構築を行うことが重要になってきている。
- 25 -
イ.児童福祉
保育所は、旧自治体ごとに設置しているが幼稚園がなく、就学前の子どもが無
条件で通える場所がない。また女性の社会進出に伴う共働き家庭の増加と核家族
化が進行している。さらに、子育て世帯の財政面での負担も少子化への一因とな
っている。
(2) その対策
イ. 高齢者福祉
介護保険制度については、国民の老後における不安に応える社会システムとし
て定着してきており、将来の急速な高齢化の進展を見据え、要介護者予防システ
ムへの転換を図る必要がある。
介護サービスにおいても、サービス量の増大に伴い、質の高いサービスの提供
が求められており、ケアマネージメントの体系的な見直しを行い、利用者の立場
に立った介護システムの確立を図っていく。
また、本町においては、日常生活に起因する生活習慣病が原因で、要介護者と
なるケースが多いため、生活習慣病の予防に関する保健事業の取組みが保健及び
福祉の向上・推進に必要である。
そのため、30代、40代からの積極的な保健事業を展開することにより、疾
病の予防、健康に対する意識の向上を図り、健康で、元気に、老年期が過ごせる
健康長寿のまちづくりを目指すとともに、さらに高齢者の生きがい対策として、
老人クラブの社会活動の啓発や会員の加入促進を図っていく。
また、誰もが住みなれた町でより安心して暮らしていくために「地域見守りネ
ットワーク事業」等を実施し、隣近所、地域からお互いに見守り、支え合う連絡・
通報システムの構築を推進していく。
イ. 児童福祉
幼稚園希望の子どもが通えるように現在の保育所を認定こども園への移行を検
討する。
また女性の社会進出に伴う共働き家庭の増加と核家族化による対応として放課
後児童クラブの充実を図るとともに、保育料等の軽減を行い子育て世帯の負担軽
減を実施する。
(3)事業計画
自立促進施策区分
事業名(施設名)
4 高齢者の保健及び
(8)過疎地域自立促進
福祉の向上及び増進
特別事業
事
業
内
容
放課後児童クラブ事業
事業主体
町
内容:放課後児童クラブ運営費
必要性・効果:子育て環境の充実
母子保健事業
内容:集団健康診査、育児教室、健康
- 26 -
町
備考
講座
必要性・効果:子育て環境の充実
健康増進事業
町
内容:がん検診、基本診査、健康相談
必要性・効果:町民の健康増進、医療
費の削減
予防接種事業
町
内容:各種予防接種の助成
必要性・効果:町民の健康増進、医療
費の削減
保健活動事業
町
内容:食育推進・精神保健事業
必要性・効果:町民の健康意識の向上、
医療費の削減
子育て支援事業
町
内容:保育料の助成等
必要性・効果:子育て世帯の負担軽減、
少子化対策
6.医療の確保
(1)医療の確保の方針
町内における公営診療所の機能の維持と充実に努めるとともに、町外の医療機関に
円滑に通院できる施策を総合的に推進する。
また救急医療の重要性を認識し、上島町消防本部が担っている救急患者搬送機能等
の維持と拡充を図る。
(2)無医地区対策
本町は、平成21年度から生名島の診療所が医師の高齢を理由に廃業し、無医地区
となった。今後、町有バス等の交通手段を充実し無医地区対策を講じる。
また魚島・高井神地区においては、国民健康保険診療所の継続的な医師確保を目指
す。
(1)現状と問題点
本町には、個人の医科診療所が弓削島、岩城島に各1施設、歯科診療所が弓削
島2施設、生名島、岩城島に各1施設、国保診療所が魚島に1施設の計7施設あ
るが、佐島、豊島は無医島、高井神島は週1回の出張診療のみである。
入院については町内にその機能が無いため100%を、通院は施設・診療科な
どの問題から80%以上を、町外の診療機関へ依存せざるを得ない現状にある。
- 27 -
救急医療については、その患者のほとんどを町外へ救急艇で搬送しているが、
搬送に時間を要すること、重複時の対応、荒天時の搬送障害が問題となっており、
防災ヘリコプター、海上保安庁及び自衛隊等の要請を要する時の連絡体制、ヘリ
ポートの整備が課題となっている。
魚島・高井神地区の国民健康保険診療所の医師確保については、医師の退職か
ら次の医師の採用までの間に、診療開設日の減少が生じている。
(2)その対策
住民の疾病予防対策として、保健師による訪問指導や健康相談等の保健予防活
動やヘルスプロモーションの充実を図るとともに、活動拠点となる保健センター
機能の向上を図る。
医療体制については、個人健康データバンクを利用して保健、医療、福祉など
の関係機関が一体となった地域総合医療ネットワークの構築を図るとともに、将
来的には県境を越えたネットワークの形成、個人認証カードの有効な利活用等も
考慮する。
救急医療については、地理的条件から広島県の医療機関への依存率が高いため、
県境を越えた広域的な協力体制、連携強化を図る。また、重複時、荒天時の救急
艇での搬送が困難な場合に備え、防災ヘリポートの整備、関係機関への連絡体制
の強化に努める。
町内における公営診療所及び医療の機能の維持と充実に努めるとともに、町外
の医療機関に円滑に通院できる施策を総合的に推進する。
魚島・高井神地区の国民健康保険診療所の医師確保については、医師の退職か
ら次の医師の採用までの期間を短くし、無医期間を生じさせないよう広く全国に
医師を公募する。また無医期間が生じた場合は、町内外の医療機関等と協力し対
策を講じる。
(3)事業計画
自立促進施策区分
5
医療の確保
事業名(施設名)
事
業
内
容
事業主体
(1)診療施設
診
療 所
(3)過疎地域自立促進
国民健康保険診療施設整備事業
町
町営国保診療所運営事業
町
- 28 -
備考
特別事業
内容:町営診療所一般会計繰入金
必要性・効果:魚島、高井神地区の医
療の維持と充実
子供医療費助成事業
町
内容:中学卒業までの医療費助成
必要性・効果:子育て環境の充実、経
済的負担軽減
7.教育の振興
(1)教育の振興の方針
児童生徒数の確保、学力の向上、いじめの未然防止、地域をまきこんでの教育の推
進など、学校教育は大きな転換期を迎えている。
このような学校をとりまく状況変化が激しい中であるため、計画的な教育体制づ
くり、学校施設の整備、高校及び高専への対応等、長期的視点に立った学校教育の
望ましいあり方を追求していく。
(2)図書館その他の社会教育施設等の整備
愛媛県の生涯学習事業の活用を含めて、町民の多様なニーズに応えられるよう各公
民館の各種学級や講座内容の充実を図る。また弓削商船高等専門学校の地域共同研究
推進センターを活用し、住民や企業との共同研究を進めて、学校運営の活性化に協力
するとともに、同校が持つ教育機能や技術を活用し、地域の教育・文化の向上に役立
てる方策を推進する。
(1)現状と問題点
ア.学校教育
本町には小学校4校、中学校3校、高等学校1校、高等専門学校1校があり、
住民の教育に対する意識も高く、町立の小・中学校の校舎や運動場などの環境整
備を順次進めているなど比較的恵まれた教育環境にあるが、老朽化の著しい教育
施設、教職員の住宅環境の改善が必要である。
また、少子化や過疎化による生徒数の減少が学校運営の大きな問題となってい
る。
イ.社会教育
公民館活動における各種講座や生涯学習をはじめ、婦人会、老人クラブ、文化
協会等の任意団体が中心となって地域行事に貢献している。
施設については、公民館、集会所、開発総合センター、コミュニティセンター、
体育館、グランド、テニスコートなどがあり、社会教育の活動拠点となっている。
- 29 -
しかし、耐震補強や改修が必要な施設もあることや、各施設が分散しているた
め、利用面、管理面で問題を抱えている。
(3)その対策
ア.学校教育
上島架橋の整備に伴い、児童・生徒の積極的な島間交流を推進しつつ精神的な
一体感の醸成を高め、心豊かでたくましく上島町に愛着と誇りを持つ子どもの育
成を図るとともに、地元高等教育機関である高校・高専の積極的支援に努め、地
域、近隣市町の中学校・教育委員会及びPTA等とこれまで以上に連携強化を図
り、定員の確保に努める。
施設については、バリアフリー化の整備や学校施設の耐震補強は全て完了、今
後は、老朽化の著しい教職員住宅の建設、情報化社会へ対応するための IT 機器
の整備、教育内容の充実を図るための教育機器等の整備をする。
イ.社会教育
交流の促進と社会教育を担う人材の育成に努めるなど、社会教育活動の充実を
図る。
全国離島中学生野球大会への参加を実施する。
また、社会教育の活動拠点となる公民館、集会所、スポーツ関連施設等が分散
して設置されているため、利用面、管理面で問題を抱えている各施設の改修や総
合施設の整備を図る。
(3)事業計画
自立促進施策区分
6
教育の振興
事業名(施設名)
事
業
内
容
事業主体
(1)学校教育関連施設
教職員住宅
教員住宅整備事業
町
岩城地区
スクールバス・ボー
スクールバス購入事業
町
給食センター改修事業
町
給食運搬車購入事業
町
IT機器整備事業
町
公民館建替事業
町
ト
給食施設
その他
(3)集会施設,体育施設
等
公 民
館
弓削・生名
公民館建築事業
岩城
- 30 -
町
備考
体育施設
体育館改修事業
町
弓削地区・生名地区・岩城地区・
(4)過疎地域自立促進
特別事業
いきなスポレク公園改修事業
町
スクールバス運営事業
町
内容:スクールバス運営費
必要性・効果:通学の交通手段確保
離島体験キャンプ事業
町
内容:子供ミニ島体験キャンプ事業
必要性・効果:地域間交流、自然学習
全国離島中学生野球大会事業
町
内容:全国離島中学生野球大会参加費
必要性・効果:地域間交流、スポーツ振
興
愛媛県民球団公式戦誘致事業
町
内容:県民球団公式戦誘致
必要性・効果:地域間交流、観光客誘
致、スポーツ振興
スポーツ施設活用事業
町
内容:スポレク公園等運営費
必要性・効果:地域間交流、観光客誘
致、スポーツ振興
弓削高等学校振興対策事業補助金事
町
業
内容:入学祝金、通学費補助、自
転車購入補助、町有施設利用費補助、
大会参加費補助
必要性:町唯一の県立高等学校の存続
8.地域文化の振興等
(1)地域文化の振興等の方針
地域の文化や歴史に対する理解を深めるとともに、活動を通して自己実現を果たす
ために、地域における町民の文化活動を支援する。
(2)地域文化の振興に係る施設の整備等
地域に残る貴重な文化財を調査し、その保護に努める。また文化財に関する研究会
活動等を支援するとともに、保護や伝承に関わる人材を育成する。
- 31 -
(1)現状と問題点
文化活動については、地域の自主的な活動が展開されているが、伝統文化につい
ては、過疎化・少子高齢化、合併により、その保存・伝承が危惧されている。
文化財は、国指定重要文化財の「定光寺観音堂」「祥雲寺観音堂」をはじめとし
て、県指定文化財、町指定文化財などが各所に残されているが、各島に点在してお
り、文化財として十分活用されていない。
文化施設としては、その拠点となる施設がほとんど整備されていない。今後、文
化活動の拠点となる中核施設の整備が課題となっている。
(2)その対策
各種文化団体及び指導者の育成に努めるとともに、伝統文化の保存・伝承のほか、
各種文化財の保存と活用を積極的に図り、自主的な地域文化創造活動の活性化を進
める。特に国宝「東寺百合文書」がユネスコ記憶遺産に登録されたこともあり、中
世荘園時代の文化財の調査、保存、活用を推進する。
(3)事業計画
自立促進施策区分
7
地 域 文 化 の 振興
事業名(施設名)
(1)地域文化振興施設
等
事
業
内
容
事業主体
史跡保存整備事業
町
文化財保存継承事業
町
備考
等
(2) 過 疎 地 域 自 立 促
進特別事業
内容:文化財の維持管理、PR
必要性・効果:文化財の継承、地域間
交流
9.集落の整備
(1)集落整備の方針
UI ターンの促進など地域の実情を考慮しながら集落の整備を促進するとともに、
集落相互間の有機的連絡を強化する。
また「地域おこし協力隊」、「集落支援員」など人材の確保・派遣に係る施策を実施
し、過疎地域の維持活性化を図る。
(1)現状と問題点
- 32 -
本町の集落は弓削島15、岩城島14、生名島29、佐島3、魚島3、高井神島
2の計6島、43集落から形成されているが、そのほとんどが沿岸のわずかな平坦
部に密集しているため、集落内道路は狭小で日常生活・防災面などから、その改良
の遅れが問題となっている。
また、集落の全てにおいて過疎・高齢化が著しく、集落機能の低下と生活様式の
変化に伴うゴミ処理等の生活環境整備が必要である。
特に高齢化率が70%を越える高井神地区においては、船便も一日数便しかなく、
地形も傾斜地が多いため、日常生活に支障をきたす状況であり早急な対応が必要で
ある。
集落の再編整備については、土地、家、集落への執着が強く、現段階では困難で
ある。
(2)その対策
UI ターンの促進など地域の実情を考慮しながら集落の整備を促進するとともに、
集落相互間の有機的連絡を強化する。
また地域おこし協力隊事業として、地域外の人材を積極的に活用し、その定住・
定着を図ることで、意欲ある都市住民のニーズに応えながら、地域力の維持・強化
を図る。
高齢化率70%の高井神地区については集落支援員を配置し、住民が安心して暮
らせる環境を整える。
集落の再編については、土地、家、集落への執着が強いため、住民の意向を尊重
しながら慎重に検討する。
(3)事業計画
自立促進施策区分
8
集落の整備
事業名(施設名)
(3)その他
事
業
内
容
事業主体
集落支援員設置事業
町
地域おこし協力隊事業
町
備考
10.その他地域の自立促進に関し必要な事項
(1) 現況と問題点
社会の高度化、多様化とともに、地域社会と日常生活や産業活動との融合が薄れ
かけてきており、当町の地域としての自立を考えるとき、これまでのような施設整
備に加え、今後は、『人づくり』をテーマとした、住民が自ら活発に活動できる環
境づくりを重視し、住民が主体となって行われるまちづくり活動が重要である。
また、今後の人口減少等により公共施設等の利用需要が変化していくことを踏ま
- 33 -
え、公共施設等の全体状況を把握し、長期的な視点によって、計画的に管理を行っ
ていくことが必要となってくる。
さらに、休廃止している公共施設等や廃屋、空き家等について、近隣への被害を
及ぼす危険性が高いものについても対策を講じる必要がある。
(2) その対策
地域の自立促進の原点は、何をおいても人材であり、地域おこしのキーマンとな
る人材育成のため、住民自ら企画・実施する研究及び研修を支援する。さらに NPO
の創設等への援助、地域づくりのコーディネーターとなるべき行政職員の意識改革
及び政策形成能力の開発により、21世紀にふさわしい明るいまちづくり、人づく
りを目指す。
また、民意の把握に努め、地域の実態・特性を活かした町としていくために、構
造改革特区域計画や地域再生計画等を積極的に活用するなど、地方分権にふさわし
い自立したまちづくりを進める。
公共施設等については、公共施設等総合管理計画を策定し、計画的に施設の更
新・統廃合・長寿命化等を行うことで、財政負担を軽減・平準化するとともに、公
共施設の最適な配置を実現する。
また、休廃止している公共施設や廃屋、空き家等について、老朽化による倒壊な
ど近隣への被害を及ぼす危険性が高いものの解体・撤去を実施することにより、景
観の保全及び住環境の向上を図る。
(3)事業計画
自立促進施策区分
9
事業名(施設名)
そ の 他 地 域 の自
事
業
内
容
公共施設等総合管理計画策定事業
立促進に関し必要な
内容:公共施設等総合管理計画の策定
事項
必要性・効果:公共施設の最適な配置
事業主体
備考
町
の実現
町
公共施設等解体・撤去事業
内容:休廃止した公共施設や廃屋、空
き家等の解体・撤去
必要性・効果:景観の保全及び住環境の
向上
事業計画(平成 28 年度~32 年度) 過疎地域自立促進特別事業分
自立促進施策区分
1
産業の振興
事業名(施設名)
事
(9) 過 疎 地 域 自 立
定住促進推進事業
- 34 -
業
内
容
事業主体
町
備考
促進特別事業
産業振興イベント開催事業
町
遊休農地再生利用対策事業
町
やる気ある農業活性化応援プロジェク
町
ト事業
鳥獣被害防止対策事業
町
生活環境保全林維持管理事業
町
森林病害虫防除事業
町
観光推進事業
町
過疎地域等自立活性化推進事業
町
商工業育成事業
町
魚島観光センター運営事業
町
(11)過疎地域自立
町有バス運営事業
町
促進特別事業
離島航路運航事業
町
上島町 CATV 施設運営事業
町
民間航路等業者支援事業
町
情報通信システム維持管理事業
町
町民音楽祭等交流イベント事業
町・団体
離島における救急業務運営事業
町
促進特別事業
簡易水道維持運営事業
町
4 高齢者の保健及び
(8) 過 疎 地 域 自 立
放課後児童クラブ事業
町
福祉の向上及び増進
促進特別事業
母子保健事業
町
健康増進事業
町
予防接種事業
町
保健活動事業
町
子育て支援事業
町
町営国保診療所運営事業
町
子供医療費助成事業
町
(4) 過 疎 地 域 自 立
スクールバス運営事業
町
促進特別事業
離島体験キャンプ事業
町
全国離島中学生野球大会事業
町
愛媛県民球団公式戦誘致事業
町
スポーツ施設活用事業
町
弓削高等学校振興対策事業補助金事業
町
文化財保存継承事業
町
2
交 通 通 信 体 系の
整備
3
5
生活環境の整備
医療の確保
(7) 過 疎 地 域 自 立
(3) 過 疎 地 域 自 立
促進特別事業
6
7
教育の振興
地域文化の振興
(2) 過 疎 地 域 自 立
促進特別事業
- 35 -
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