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エレコム株式会社

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エレコム株式会社
魅力発信レポート
あづコム
下方俊右 大内崇彰 大橋里紗 中村圭吾
日田篤志 山口潤 山田健太
甲南大学マネジメント創造学部
目次
1、 エレコム株式会社
―① 企業説明
―② 事業内容
―②´商品の分布図(例)
-③ 業界分析
―④ クレド
―⑤ 財務分析
2、 魅力ポイント
―① 「人」のエレコム
―② 「戦略」のエレコム
3、 未来のエレコム
参考資料
1
1、エレコム株式会社
エレコム株式会社(以下、エレコムとする)は、昭和 61 年創業の活力あふれる新しい企業である。以
下では、エレコムの企業概要、事業内容、商品等について、順に説明したい1。
1―① 企業概要
エレコムは、葉田順治社長が率いる従業員およそ400名のベンチャー企業である。本社は、大阪
にあり、国内だけではなく海外にも手広く進出している。
図表1
エレコム株式会社の概要
正式名称
株式会社エレコム
代表者
取締役社長 葉田 順治
設立
昭和 61 年(1986 年)5 月
資本金
7 億 700 万円(平成 23 年 3 月 31 日現在)
本社
大阪市中央区伏見町 4 丁目 1-1
従業員数
株式市場
【単体】395 名(平成 23 年 3 月 31 日現在)
【連結】567 名(平成 23 年 3 月 31 日現在)
JASDAQ 上場(コード:6750)
出所:エレコム株式会社 HP
1
本レポート作成に当たっては、エレコム株式会社の葉田順治社長、小崎正裕様のご厚意により、お忙
しい中にもかかわらず、2011 年 10 月 11 日、10 月 25 日、1 月 6 日の 3 回にわたっての企業訪問の他、
電話、メールによる問い合わせ等、ご協力いただいた。ここに記し、感謝申し上げる。
2
図表2
エレコムのグループ会社
連結子会社(国内)
■ ロジテック株式会社
■ ロジテック INA ソリューションズ株式
■ ハギワラソリュージョンズ株式会社
連結子会社(海外)
■ ednetGmbH
branch office ベルギー、オーストリア
販売子会社
ednet AG (スイス)
ednet Nederland B.V.(オランダ)
調達子会社
ELECOM HK Limited (香港)
■ ELECOM KOREA CO.,LTD
(韓国)
■ 宜麗客(上海)貿易有限公司 (中国)
関連会社
■ Elecom Singapore Pte.Ltd.
出所:エレコム株式会社 HP
1―②
事業内容
エレコムの事業内容は、ヒト(man)と機器(machine)をつなぐマンマシン・インターフェイス
ソリューションを提供し、お客様を幸せにすること、である。
下記のイメージ図のように、エレコムが様々な機器と顧客を快適に繋ぐ存在として位置している
ことが分かる。
図表3
エレコムの商品群イメージ
パソコン
ノートPC
タブレットPC
デジタルオーディオプレイヤー
スマートフォン
TV
電子書籍
出所:エレコム株式会社 HP より作成
3
【具体的な商品群】
エレコムの商品は、おおよそ4つの部門に分類される(図表4参照)。エレコムが取り扱っている商品
数は 7,000 点を超える。このことから、いかにエレコムが尐ない商品群の中で幅広く商品を展開してい
るか、お客様のニーズに細やかに応えようとしているかが分かる。そして、図表 4 の写真は全てエレコ
ムの商品である。カラフルな商品も数多くあることから老若男女問わず色々な年齢層・オフィスだけで
はなく、ホームでもエレコムの商品を利用できるようになっている。
図表4 エレコムの商品群4分類
出所:エレコム株式会社 HP より作成
1―②´商品の分布図(例)
エレコムの商品3シリーズを選択し商品の分布イメージを作ってみた(図表 5)
。すると同じところに
カテゴライズされる商品がなかった。色々な所に商品の特徴を分散させることで、お客様のニーズに細
かく対応することが可能になっている。そして、以下は各シリーズの商品がどこに力を入れられており、
どういう商品なのかを説明している。
4
図表5
商品の分布イメージ
独創的デザイン(強)
Rinkak
MFSU2 シリーズ
EHP-DIN シリーズ
( )
弱
( )
面
白
い
強
(弱)
出所:エレコム株式会社へのヒヤリング・HP をもとに作成
①デザインにこだわる
-代表商品 rinkakケーブルを活かした独創的なデザインを持つ 3 ボタン光学式マウスである。ま
るでパソコンからくねくねと伸びたケーブルが、生きているかのように見え
PC 作業が面白くなるデザインになっている。
②細部にこだわる
-代表商品 EHP-DIN シリーズT シャツのようにファッション感覚で選べるカナルタイプのヘッドフォンである。iPod な
どのポータブルオーディオプレーヤーや服装に合わせたコーディネートを楽しむことが
でき、イヤホンもおしゃれの一部として楽しむことができる。
③もっとこだわる
-代表商品 MFSU2 シリーズPC 本体の USB ポートに差し込んでも、ほんのわずかに飛び出すだけの超小型サイズの
USB メモリである。装着したままでも気軽に持ち運ぶことができる。おしゃれなステーシ
ョナリー感覚で使用できる。
5
1-③
業界分析
エレコムの位置するマンマシン・インターフェイスの業界はかなり流動性がある。理由は、年々IT
の技術が著しく向上し、次に来る機器(マシン)を予想しにくい点にある。さらに、代替品の脅威と
しては、機器自体が操作しやすくなったり、機能が向上したりすることで(ex:タッチパネル)
、人と
機器を繋ぐ機会がなくなってしまう可能性もこの先あるかも知れない。しかしエレコムはこのような
事態にも対応するために、4つの部類の機器と人とをバランスよく一つに依存することなく結びつけ
ることで、一つの商品、一つの事業に依存せずに成長し続けることができる。また、IT の業界が拡大
することで、多くの大企業が、次々と参入してくる可能性もあるが、エレコムは、ブランド戦略では
なく、販売経路を営業力で開拓することで今まで生き残ってこられた企業であるために、ビックブラ
ンドの参入はそこまで影響はないといえる。
さらに、商品は競合他社と差別化が難しいものばかりではあるが、先ほども言ったような販売経路
において差別化がしっかりとできているので、これにも問題がない。
図表6
エレコムの業界分析
出所:Porter Michael E. (1985)Competitive Advantage, New York, The Free Press(土岐坤,中辻萬治,
小野寺武夫訳『競争優位の戦略』ダイヤモンド社, 1985 年)、及びエレコム株式会社に対するヒヤリング
より作成
6
1―④ クレド※1
【クレド】
エレコムグループは、成長し続ける。
新たな機会、新たな領域に挑み続けること、
その中で、社員一人ひとりが、誠実さ、謙虚さ、ひたむきな情熱を持ち、
互いに学び、努力し、挑戦し続けることが会社と個人の成長をうみだす。
エレコムグループの成長を通して、
より楽しく、より快適で、より創意工夫に富んだ商品を創りだし、
多くのお客様に、喜びを届けること、
社員一人ひとりが、自らの成長を感じ、視野の拡がりと心の豊かさを得ること、
そのためにエレコムグループは存在している。
出所:24 年度 RECRUITING INFORMATION 冊子より抜粋
社員一人ひとりが、自らの成長を感じ、視野の広がりと心の豊かさを得ることができる。
上記がエレコムのクレドである。このクレドを中心にエレコムの社員は活動している。そしてこの
クレドには、言葉一つひとつに魂が込められており、いわゆる“言霊”持っているような力強さがあ
る。採用活動においても、クレドへ理解・共感できる人材を採用している。このようにエレコムを成
長に導く背景にはクレドの存在がある。このクレドを日常の行動のレベルに展開していくため明文化
した 5 つの行動指針がある。
「正道を行く」
:常に自らの心に問い、原理原則に立ち返る。人として正しく生きる。
「志を共有する」
:エレコムグループの一員として企業目的を理解し共有する。
社員一人ひとりが力を合わせ、目標に挑む。
「成果を考える」
:より良い成果をあげるために、優先順位を考え、効率的に行動する。
「気配りをする」
:常に相手の状況を考えて、気配りをする。
「謙虚である」
:おごらぬ気持ちを持ち、謙虚に生きる。
出所:24 年度 RECRUITING INFORMATION 冊子より抜粋
全て重要な行動指針ではあるが、特に「謙虚である」は、さまざまな立場のステークホルダーの方々
の言葉に対して謙虚に耳を傾け、もっと新しいモノ・コトに挑戦し、成長し続けていかねばならない
という想いを表現したものである。
さらに、上記にも書いたように社員一人ひとりが自己の成長を感じられることで、社員のモチベーシ
ョン・熱意などを継続して持ち続けることができるのだろう。例えば、入社 2 か月からでも店舗を任
せられるので、結果がストレートに伝わってくる。そして、棚管理をすることで色んな人から意見を
吸収することができる。この自己の成長を感じられる環境というのには、各々に責任を与え、働きが
いを与えなくてはならない。これは、ピーター・F・ドラッカーがいう人的資源管理の方法論と一致し
ており、成功要因の一つであると思う。
7
出所:ピーター・F・ドラッカー(著)上田惇生(監)佐藤等(編)(2011 年 2 月 3 日)実践するドラ
ッカー【チーム編】
『ダイヤモンド社』
※1:クレド(Credo)とは「信条」
「志」
「約束」を意味するラテン語で、企業活動の拠り所となる価値観
や行動規範を簡潔に表現した文言、あるいはそれを記したツールを指す。
1―⑤
財務分析
今まで、エレコムのことを説明してきたものの、この会社は本当に儲かっているのか疑問に思う人
がいるかも知れないので、先に財務分析を乗せることにする。稼げているということは、顧客から必
要とされており、ニーズにこたえられているということである。下記グラフを参照してもらうと分か
るが、エレコムは稼げている。つまり、顧客と必要とされおり、今乗りに乗っている企業と言えるの
ではないか。
図表7 企業基盤の推移
↑
(単位:百万円)
時代にあわせて「成長」
近年、スマートフォン市場は着実に伸びている。こ
れらにあわせたオリジナル商品を製造し、販売する
ことで企業規模の拡大を続けている。
(注:2011 年の
急激な負債増加は、東北大震災の影響をうけて 100
億円借り入れたためである。)
図表8 企業規模・創造価値の推移
↑
(単位:百万円)
図表9 ROE ↑
8
ROE
%
ROE すなわち経営効率を見ると 2011
30
25
20
15
10
5
0
年の数値が高く、経営効率の面から
みると非常によくなっている。
ROE
2008年
2009年
2010年
2011年
出所: 図表7~9は、第 23 期(平成 20 年 3 月期)年次報告書、第 24 期(平成 21 年 3 月期)年次報告
書、第 25 期(平成 22 年 3 月期)年次報告書、第 26 期(平成 23 年 3 月期)年次報告書より筆者作成
図表10
2012 年 3 月期
第 1 四半期(連結)品目別実績(前年同期比)
上グラフからは、近年のスマートフォン市場の拡大とともに、それに対応してサプライ商品増加している。
9
図表11
2012 年3月期
第1四半期(連結)貸借対照表
10
出所:図表 10、11 は、個人投資家向け説明会資料(平成 23 年 9 月 26 日開催/東京)より作成
2、魅力ポイント
稼げている企業ということは、何か魅力的な点があるからお客様がエレコムの商品を購入しているの
ではないかと思う。そこで、エレコムの魅力を考えたときに、大きく分けて2つある。1つ目は「人」。
2つ目は「戦略」である。
まず一つ目の「人」に関して書く。なぜ私たちが「人」にフォーカスしたのかというと、エレコムは、
パソコン市場の飽和の次に訪れたホームネットワーク機器やスマートフォン、タブレット PC 関連製品の
拡大を受けて、製品ラインナップのシフトを実現しており、2011 年 3 月期には売上高、営業利益ともに
過去最高水準を達成している。エレコムは特定の「機器(マシン)」の市場動向というよりも、今後伸
びるであろう「機器(マシン)」のトレンドを読んだ上で、それに沿った製品群を提供できているとい
うことである。このトレンドを読む力は葉田順治社長が備えており、ここに他社との競争優位があると
考えられる。そして、その方向性に具体性を持たせる社員の力もかなり高いのではないかと考えられる。
つまり、活動をする基盤として人の力が重要になってくるということである。このような社員を管理す
る人的資源管理もともに重要である。
そして二つ目のエレコムの戦略は、ブランド戦略ではなく、販売経路の模索によって、できる限りお
客様の手に取られやすい位置にエレコム商品を置くことである。図表12の赤枠に囲まれているところ
が重要である。ブランド戦略を行わない理由は、エレコムブランドに固定したイメージが付くと、品揃
えの自由さという面から制約が生じてしまうからである。さらに、商品ラインナップが多く、広告に費
やす費用対効果が低いと考えているために、広告をし、ブランド戦略にかかる費用を商品開発などの投
資に回して使うことにしている。エレコムの魅力は、まず「人」そして、第二に「戦略」であるのでは
と考え、次から具体的に書いていく。
11
図表12
エレコムの価値連鎖分析
出所:Porter Michael E. (1985)Competitive Advantage, New York, The Free Press(土岐坤,中辻萬治,
小野寺武夫訳『競争優位の戦略』ダイヤモンド社, 1985 年)、及びエレコム株式会社に対するヒヤリング
より作成
エレコムの販売経路は、社員の営業の力によって生み出されたものであるので、希尐性・模
倣コスト共に高いと考えられる。しかし、エレコムによるデザインの商品は模倣されている商
品も多く、模倣コストは低いと考えられる。
「
12
図表13
エレコムの VRIO 分析
バリューチェーン+VRIO
当社
V(価値) R(希少性)
強み
I(模倣コスト
が高い)
O(組織)
手に取りやすい販売経路
Yes
Yes
Yes
No
デザイン力
Yes
Yes
No
No
在庫管理力
Yes
No
No
No
創発戦略 : ブランド拡張
Yes
Yes
Yes
No
出所:Barney Jay B. (2002) Gaining and Sustaining Competitive Advantage, 2nd ed., Upper Saddle
River, N.J.: Prentice Hall(岡田正大訳『企業戦略論(上)』,ダイヤモンド社,2004 年) 及びエレコ
ム株式会社に対するヒヤリングより作成
13
2-① 「人」のエレコム
エレコムを「社長」
「中堅社員」
「新入社員」と大きく3つに分ける。まず始めに「社長」から紐解
いていく。
【社長】
成長し続けるために・・
1953 年 生 ま れ 、 三 重 県 出 身 。
1976 年 3 月 甲 南 大 学 経 営 学 部 卒 業 。
1986 年 5 月 エ レ コ ム を 設 立 。
代表取締役社長
葉田
順治
社長のヒストリー
エレコムがゲームソフト業界に参入しない理
由は、社長が量販店で買い物をしている際、
子供がゲームソフトを万引きしているのを
見、子供が万引きしてまで欲しいと思うもの
を売りたくなかったためである。
社長が方向性を指示し、部下がそれを
受けて自由に発想をする。しかし、自
優れた社会観
分の意見だけでなく、部下とフラット
な状態で意見交換することもある。
先見の明
リーダーシップ
まだスマートフォンがあまり普及していな
い頃から、社長はパソコンの時代は終わり、
次の時代が来ることを予想し、社員に対し
忠告をし続けていた。
「優れた社会観」「リーダーシップ」「先見の明」
こんな社長がエレコムを引っ張っています。
14
【中堅社員】
エレコム初となるグッドデザイン賞に選定された、エッグマウスの開発にあたる。
「プロジェクトメンバー全員がしっかりと事実を見据え、把握すること。そこから、仮説ではなく、事
実からのアプローチを実践すること。他社でのスタンダードなやり方、いわゆる一般的な定石が必ずし
も最良・最適とは限らない。エレコムにはエレコムに適したマーケティングというものがある。」
「国内には、すでに開拓したルートに流せるものであれば、どんな商品でも売ることのできる、優秀な営
業が豊富である。このことが、柔軟な商品企画を可能にし、商品ドメインの幅を広げている。そして、
それがまた、新たな販路開拓につながっている。つまり、営業と開発の緊密な関係が、現在の好循環を
生み出し、エレコムでの開発職の仕事内容を、より魅力的でバラエティーに富んだものにしている。」
エレコムでは、新入社員の時から責任ある仕事を任せてもらえる。そのことで、分からないことは周
りとすぐに共有し、協力して解決し、常に自発的に活動することが重要になってくることを身にもって
体験することができ、またそのような風土、環境が整っている。こんなことから、上記のような社員が
創出されるのだと思う。
【新入社員】
過去3年間の採用実績を見てみると、体育会系が50%(87名中44名)入社している。このこと
から、エレコムの風土は、厳しい状況下でも力を発揮できる、もしくは、楽しむことができる、向上
心を持っている。このような人を積極的に採用している。また上記したが、新入社員でも常に実践か
ら学ぶことをしているために、早くから仕事を任され、泥臭い仕事をしている。そんなことから、入
社を決めた理由として1番多いのが、成長できると感じたからである。このことは、サッカーリーガ
エスパニョーラに所属する FC バルセロナのカンテラを思い起こす。これは、小さい時から育成するこ
とで、理念・戦略を体に染み込ますことができる。そのことで、2011 年度のクラブワールドカップで
も優勝している。これと同じことがエレコムでも行われているのではないだろうか。新入社員をエレ
コムというカラーにすることで、未来を担う社員を育成しづけることができ、いつまでも成長できる
企業であると思う。
15
2―②
「戦略」のエレコム
エレコムの戦略は、大きく分けて意図した戦略と意図していない戦略の2つに分けられる。意図し
た戦略には、販売経路の模索、徹底したデザイン力、そして在庫管理の徹底が挙げられる。意図して
いない戦略には、ブランド認知度の上昇を挙げる。
まず、意図した戦略の方から始めていく。意図した戦略は大きく分けて3つある。販売経路の模索
が1番のエレコムの生命線である。つまり、お客様は、これがエレコムの商品であるという認知がな
くても、エレコムの商品を手にすることになる。これを可能にするには、商品を置く場所を開拓して
いく他ない。ブランド認知度の上昇を狙う現存の企業とは真逆の戦略を取っているのである。例を挙
げると、PC 機器を必要としているお客様は多数いる。しかし、そのお客様全員が家電量販店でその機
器を購入したいかというと、そうとは限らない。もし女性がそのような商品が欲しいのであれば、お
しゃれな雑貨屋の方が手に取られやすいのではと考えた。よって、エレコムはこのような雑貨屋と手
を組むことによって販売経路を開拓した。このように、常にお客様がどこでどんな商品を買いたいか
ということを考える、市場分析・消費者動向を分析することで、この戦略が成り立っている。
そして、次に徹底したデザイン力は、デザインが大好きな社長のこだわりである。商品の差別化が
難しいものでもデザインの良いものを作ることで、手に取ってもらいやすくなる。そして、他社の模
倣は絶対にせずに、全てオリジナルの商品を作ることで、差別化も図っている。優れたデザインを追
求することで、数々のデザイン賞を獲得することができた。
最後に、在庫管理能力である。エレコムには在庫を管理するシステムがある。どの店舗でどんな商
品が売れているかなど、事細やかに把握することで、効率の良い経営を行うことができる。さらに、
海外の子会社に関しても同じようなシステムを導入しており、エレコムの血を注入している。
これら3つの意図した戦略を通してエレコムは今まで成長してきた。しかし、それだけではない。
意図した戦略をし続け、成長し続けたことで、意図していない戦略というものが出てきた。それは、
狙っていなかったはずのブランド戦略である。多くの分野に商品を展開することで、エレコムの商品
がお客様に手に取られる頻度が上がったことでブランドへの認知度が上がったようである。たとえば、
LED の照明を売ることで、今まで販売展開している種類の店舗以外にも販売展開することができたの
である。さらに、お客様に喜んでもらおうとデザインにこだわっていたのだが、多数のデザイン賞を
取ったことで、おしゃれなエレコムとしての知名度も上がってきた。つまり、ブランド戦略の広告費
を使わずに、エレコムの広告をすることができているのである。これが、第四の戦略である。
さらに、これらの4つの戦略を分析すると、投資と効率化を両方バランスよく行っていることが分
かった。なぜこのようなことができるのかというと、優れた市場を見る目があり、今エレコムはどのよ
うなことをしなくてはいけないのかを考えることができ、その結論に対して柔軟に対応することができ
るからである。そのことで、攻めることもでき、また効率を求めることもできるようになった。
16
3、未来のエレコム
未来のエレコムの命運は、販売経路にかかっている。理由は図表 14 の縦軸にあるような様々な視点か
らエレコムという会社を見たとき、販売経路が重要になってくるからである。そして、この販売経路を
発展・開拓していくためには、それを支える社員教育が重要になってくる。つまり、販売経路を開拓し
ていくには、ハイレベルなエレコムの社員が必要になってくる。これを作るためにも、教育が必要なの
である。
教育の例としては、実践学習を推し進めているエレコムではあるが、実践をフィードバックし、共有
することができる環境を整備することが大事になってくると思う。つまり、実践で行ったことを、理論
で見返すことでより、深く実践で身についたことを見返すことができ、さらにその情報を共有すること
で、より多角度からの意見を募ることができるのではないだろうか。
図表14 エレコムの今後の課題
戦略目標
重要成功要因
評価指標
ターゲット
アクションプ
ラン
財務の視点
顧客の視点
業務プロセス
競合に対する
ブランド認知度
販売経路の優
市場分析
の上昇
位性
効率化
高いデザイン力
ニーズの分析
顧客増加
社員の教養教育
の視点
海外展開
顧客満足度調
デザイン賞を
市場分析
査
行っている事
社会分析
業全分野でと
販売経路の模
る
索
販売経路の展
3 か月に 1 回確
教育
開数
認
努力
カリキュラム
勉強会の実施
年 30 回以上
参加呼びかけ
の充実
数
営業力向上
の視点
学習と成長
通期売上
1000 億円以上
売り上げ拡大
出所: Kaplan(1998)Innovation action research, Journal of Management Accounting Research, 10, 98
(4)Penrose, Edith. (1959) The Theory of the Growth of the Firm, Oxford University Press、及びエレコム株式
会社に対するヒヤリングより作成
17
参考資料
■エレコムの沿革
昭和 61 年 5 月
家電量販店を販路とするOA家具メーカーとして大阪市都島区に設立(資本金:300 万円)
パソコンデスクの本格販売を開始
昭和 62 年 3 月
OA アクセサリとしてフロッピーディスクケース等の販売を開始
昭和 63 年 10 月
入力装置マウスを発売
平成元年 9 月
入力装置テンキーボードを発売
平成 2 年 9 月
フロッピーディスクドライブの発売を開始しハードウェアに参入、
平成 4 年 9 月
米国に ELECOM COMPUTER PRODUCT INC.を設立
平成 5 年 12 月
通信販売事業を目的として、東京都豊島区に株式会社ホームダイレクト設立
平成 6 年 4 月
LANEED ブランドで LAN 事業に参入
平成 6 年 6 月
フロッグデザインのエスリンガー氏デザインによるルナリスシリーズを発売
平成 6 年 9 月
ルナリスシリーズなど 6 商品がグッドデザイン賞を受賞
平成 6 年 10 月
エレコム販売株式会社と合併、資本金を 5,140 万円に増資
平成 6 年 12 月
平成 8 年 1 月
平成 9 年 1 月
物流業務に特化することにより業務効率を高めることを目的として、
大阪府岸和田市にエレコム物流株式会社を設立
CD ケース"CDR-014"のアメリカ版が、アメリカ EIA 主催のイノベーション'96 の
コンピュータ・マルチメディア部門で表彰
CD ラック"CDR-017"のアメリカ版が、アメリカ EIA 主催のイノベーション'97 の
コンピュータ・マルチメディア部門で表彰
平成 13 年 5 月
物流拠点を統合し、東京青海に新物流センターを開設
平成 14 年 2 月
BCN アワードにおいてマウス部門と USB 部門の 2 部門を 2 年連続で受賞
平成 15 年 2 月
BCN アワードにおいてマウス部門と USB 部門の 2 部門で 3 年連続受賞。
さらに新設されたキーボード部門でも受賞し 3 冠達成
ELECOM UK LIMITED(英国)を設立
平成 15 年 7 月
ELECOM KOREA CO.,LTD(韓国)を設立
平成 16 年 1 月
BCN アワードにおいてマウス・USB 部門 4 年連続受賞、キーボード部門 2 年連続受賞、スピ
ーカ部門受賞の4冠達成
平成 16 年 4 月
宜麗客(上海)貿易有限公司(中国)を設立
平成 16 年 9 月
ELECOM Deutschland GmbH(ドイツ)を設立
平成 16 年 12 月
ELECOM ITALY s.r.l(イタリア)を設立
平成 17 年 1 月
BCN アワードにおいてマウス・USB・キーボード・スピーカ・ゲームコントローラ・テンキーボード
の 6 部門で受賞
第 1 回 Gfk Japan Certified においてマウス部門で受賞
平成 17 年 12 月
「PALVO」マウスがドイツ・ハノーバー工業デザイン会主催の iF デザインアワードを受賞
18
平成 18 年 1 月
BCN アワード 2006 においてマウス・USB・キーボード・スピーカ・ゲームコントローラ・テンキー
ボードの 6 部門で受賞
第 2 回 Gfk Japan Certified においてマウス・アンプ内蔵スピーカ・PC 用キーボード・USB ハブ
の 4 部門で受賞
平成 18 年 2 月
大阪本社において ISO14001(環境マネジメントシステム)認証を取得
平成 18 年 6 月
ELECOM ITALY s.r.l を清算
平成 18 年 7 月
大阪市西淀川区に西日本物流センターを開設
ELECOM EUROPE B.V.(オランダ)を設立
平成 18 年 11 月
ジャスダック証券取引所に上場
平成 19 年 1 月
BCN アワード 2007 においてマウス・USB・キーボード・スピーカ・ゲームコントローラ・テンキー
ボードの 6 部門で受賞
第 3 回 Gfk Japan Certified においてマウス・PC 用キーボード・USB ハブの 3 部門で受賞
平成 19 年 2 月
ednet AG(現 ednet GmbH)の株式 1,000,000 株を取得、子会社化
平成 20 年 1 月
平成 21 年1月
平成 21 年 3 月
平成 21 年 12 月
平成 22 年1月
平成 22 年4月
平成 22 年 10 月
BCN アワード 2008 においてマウス・USB・キーボード・スピーカ・ゲームコントローラ・テンキー
ボード・カードリーダ・携帯オーディオアクセサリの 8 部門で受賞
第 4 回 Gfk Japan Certified においてマウス・PC 用キーボード・アンプ内蔵スピーカの 3 部門で
受賞
BCN アワード 2009 においてマウス・USB・キーボード・スピーカ・ゲームコントローラ・テンキー
ボード・携帯オーディオアクセサリの7部門で受賞
第 5 回 Gfk Japan Certified においてマウス・PC 用キーボード・アンプ内蔵スピーカの 3 部門で
受賞
WEB カメラ、USB ハブの 2 シリーズが、iF デザインアワードを受賞
マウス「SCOPE NODE」、ヘッドフォン「XCALGO」、バッグ「ORIGAMI」「ZEROSHOCK Premium」
の4製品が、ドイツ・ハノーバー工業デザイン会主催の iF デザインアワードを受賞
BCN アワード 2010 においてマウス・USB・キーボード・スピーカ・ゲームコントローラ・テンキー
ボード・携帯オーディオアクセサリ・PCカメラの8部門で受賞
第6回 Gfk Japan Certified においてマウス・PC 用キーボード・アンプ内蔵スピーカの3部門で
受賞
ジャスダック証券取引所と大阪証券取引所の合併に伴い、大阪証券取引所JASDAQ市場に
上場
ロジテックINAソリューションズ株式会社を設立
平成 23 年1月
BCN アワード 2011 においてマウス・USB・キーボード・スピーカ・ゲームコントローラ・テンキー
ボード・携帯オーディオアクセサリ・PCカメラ・カードリーダの9部門で受賞
平成 23 年7月
ハギワラソリューションズ株式会社を設立
平成 23 年9月
エレコムサポート&サービス株式会社を設立
19
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