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6. 農林業編(PDF形式 1.4MB)

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6. 農林業編(PDF形式 1.4MB)
Ⅵ 農
林
業
編
農林業編
1 変
49
遷
本市の農業は、昭和30年代までは、畑作に養蚕、畜産等が結びついた複合経営であったが、その後、
畜産、養蚕を中心として経営の近代化と規模拡大が図られ、単一経営に移行していった。
また、津久井地域でも、中山間地域ではあるものの、食糧の確保のために自家消費野菜を中心に農
業が営まれていった。
昭和30年代後半からの工場進出や都市化の進行は、生産環境に影響をもたらすとともに、事業所等
への就労機会の増加などにより、農家や農地が減少していった。昭和40年代には、まちづくりに一定
の秩序を保つために都市計画の線引きが行われ、秩序あるまちづくりが実施されることによって急激
に減少していた農地の保全が図られた。さらに、農業振興地域を指定するなど都市農業の振興に向け
土地利用が明確化されてきた。
近年は、人口や産業の流入は、落ち着きを見せているものの、農業従事者の高齢化や農業就業人口
の減少による耕作放棄地の増加や津久井地域における鳥獣被害の問題が生じている。
2 概
要
新鮮で安全な食材として、地場農産物を求める消費者のニーズや、農業へのふれあい志向の高まり、
緑地・防災空間としての機能など、都市における農業・農地の役割は年々重要なものになっている。
農業を取り巻く社会的・経済的な環境の変化の中、大消費地に立地するという優位性を生かし、市
内農協・農業委員会と連携した農地の有効活用や、地産地消や食育の推進、農業後継者・認定農業者
の育成、農地の整備、市民が農業にふれあえる施策の充実など、特色ある都市農業の振興を図る必要
がある。
こうした状況の中、本市の現状や課題を踏まえ、都市部と中山間地域の特性を生かした農業振興施
策を展開するため、持続可能な都市農業の創造と魅力ある新たな農業の振興に向けた方向性を定め、
新しい時代を見据えた都市農業のあるべき姿を示す「さがみはら都市農業振興ビジョン2025」を平成
28年3月に策定した。
項
目
数
値
農
業
経
営
体
数
653経営体
経
営
耕
地
面
積
456ha
う
ち
販
売
農
家
農
家
数
563経営体
経
営
耕
地
面
積
405ha
農
業
就
業
人
口
884人 一 戸 当 た り の 耕 地 面 積( 田 )
0.34ha
一 戸 当 た り の 耕 地 面 積( 畑 )
0.57ha
(出典:2015年農林業センサス)
 農業経営体数・経営耕地面積の状況
2015年農林業センサスによると、農業経営体数は653経営体で、このうち、販売農家は563経営体
となっている。また、販売農家の経営耕地面積の割合は、全体の約9割を占めている。
50
農林業編
 農畜産物のブランド化の促進
市内農畜産物のブランド化と地産地消の推進を図るため、「さがみはら農産物ブランド協議会」
が中心となり、「さがみはらのめぐみ」を愛称に定め、市内農畜産物の普及啓発を図る事業を実施
している。
 農産物直売所の運営支援
市民に新鮮で安全・安心な地場農産物を提供するため、農業協同組合が開設した農産物直売所の
運営支援に取り組んでいる。
農産物直売所概要
開
設
主
体
JA相模原市
JA津久井郡
施
設
名
ベジたべーな
あぐりんず つくい
開
設
日
平成25年12月5日
平成25年10月10日
所
在
地
中央区青葉3-1-1
緑区中野625-1
施設延床面積
1,266㎡
593㎡
農産物売場面積
198㎡
180㎡
附 帯 施 設 等
農業用資材置場・加工室・保冷
庫・農産物集荷調整室(バック
ヤード)・事務室・倉庫・加工研
修室・食育研修室・トイレ等
農業用資材置場・保冷庫・農産物
集荷調整室(バックヤード)・事
務室・トイレ等
 有害鳥獣駆除対策
特に津久井地域の中山間地域の農地では、イノシシ、サル、シカなどによる鳥獣被害が発生して
おり、広域柵の設置や捕獲罠等による駆除など、県及び関係機関と連携し有害鳥獣駆除等の対策に
取り組んでいる。
 耕作放棄地対策
耕作放棄地の解消を図るため、「相模原市耕作放棄地対策協議会」を通じ、農地の再生利用に取
り組み、青年新規就農者や農業参入した法人の経営規模拡大を促進している。
 農林畜産物の放射性物質の検査
東京電力福島第一原子力発電所事故の発生を受け、食の安全・安心の確保と風評被害の防止を目
的に、神奈川県及び他市町村が実施する放射性物質検査の結果を踏まえながら、市内産の農林畜産
物等に含まれる放射性物質について、本市農業の実情を反映した検査を市独自に実施している。
3 耕地面積
経営耕地面積は、農業者の高齢化や後継者不足、中山間地域における有害鳥獣被害等により、年々
減少してきている。一方で、一戸当たりの耕地面積は、徐々に増えてきているが、これは離農した経
営体の農地が、規模の大きい経営体へと集積されたためと考えられる。
農林業編
51
 経営耕地面積の推移
(単位:農家数…戸 面積…ha)
区 分
経営耕地面積
内
訳
一戸当たりの
経営耕地面積
総面積
田のある
農家数
田
面積
畑のある
農家数
普通畑
面積
樹園地
のある
農家数
昭和55年
2,458
1,078
178
5,459
1,602
2,877
679
0.17
0.29
60
2,117
970
159
5,128
1,405
2,518
553
0.16
0.27
平成2年
1,720
760
137
3,825
1,179
1,769
404
0.18
0.30
7
1,300
634
115
3,014
908
1,353
277
0.18
0.31
12
825
333
77
1,204
610
547
137
0.23
0.51
17
644
275
70
926
490
347
84
0.25
0.53
22
551
231
67
753
416
246
68
0.29
0.55
27
405
161
55
538
310
153
39
0.34
0.57
年 次 ※平成12年以降は販売農家のみの数字(農家数は延べ)
樹園地
面積
田
普通畑
(出典:農林業センサス)
平成27年経営耕地面積内訳(販売農家)
( ) 内ha
畑
77%
(310)
田
14%
(55)
樹園地
9%
(39)
4 農業振興地域
自然的、社会経済的諸条件を考慮し、農業振興施策を重点的に実施すべき地域について、農地 の確保と農業の健全な発展を図るため、農業振興地域の整備に関する法律(昭和44.7.1法律第58号)
に基づき、県知事から農業振興地域の指定を受け、農業振興地域整備計画を定めている。
情勢の変化に対応した適切な計画とするため、農業振興地域整備計画に関する基礎調査等の結果に
より計画の変更を行っている。
 農業振興地域整備計画の変更状況
地
域
名
農振地域指定
年月日
整備計画策定
年月日
相
模
原
昭和48.12.4
昭和49.7.23
平成8.10.18
平成14.9.19
山
昭和48.3.31
昭和49.5.30
平成元.5.22
平成8.10.11
平成16.3.10
城
整備計画変更年月日
津
久
井
昭和48.1.16
昭和49.3.30
昭和59.11.13
平成6.6.17
平成12.7.14
相
模
湖
昭和48.8.14
昭和49.3.30
平成2.5.29
平成9.6.12
平成16.3.11
野
昭和48.8.14
昭和49.5.30
昭和56.11.16
平成7.5.24
平成13.9.10
藤
平成17.12.7
52
農林業編
 農業振興地域の状況
(平成28年3月31日現在)
区
分
田
農
地
畑
樹園地
計
左以外の
森林原野
その他
計
農 業 振 興 地 域 
208ha
1,143 ha
272ha
1,623ha
4,093ha
1,157ha
6,872ha
うち農用地区域 
119ha
510ha
111ha
740ha
29ha
9ha
779ha
 / 
57.2%
44.6%
40.8%
45.6%
0.7%
0.8%
11.3%
【内
※端数調整により合計と内訳は一致しない
訳】
相模原
農業振興地域 
140ha
292ha
72ha
504ha
36ha
うち農用地区域 
95ha
192ha
31ha
318ha
-
3ha
321ha
 / 
67.9%
65.8%
43.1%
63.1%
-
1.7%
44.6%
農業振興地域 
24ha
100ha
28ha
152ha
297ha
160ha
609ha
うち農用地区域 
5ha
42ha
6ha
53ha
19ha
3ha
74ha
20.8%
42.0%
21.4%
34.9%
6.4%
1.9%
12.2%
農業振興地域 
28ha
392ha
55ha
474ha
1,012ha
516ha
2,003ha
うち農用地区域 
14ha
153ha
25ha
191ha
2ha
4ha
197ha
 / 
50.0%
39.0%
45.5%
40.3%
0.2%
0.8%
9.8%
農業振興地域 
5ha
92ha
16ha
113ha
540ha
67ha
719ha
うち農用地区域 
4ha
53ha
10ha
67ha
-
-
67ha
 / 
80.0%
57.6%
62.5%
59.3%
-
-
9.3%
農業振興地域 
12ha
266ha
101ha
379ha
2,208ha
234ha
2,822ha
うち農用地区域 
1ha
71ha
39ha
111ha
8ha
-
119ha
8.3%
26.7%
38.6%
29.3%
0.4%
-
4.2%
城
180ha 720ha
山
 / 
津久井
相模湖
藤
野
 / 
※端数調整により合計と内訳は一致しない 農林業編
 農業振興地域内における農用地区域設定状況
53
(平成28年3月31日現在)
農用地区域設定面積(単位:ha)
地
域
・ 地
区
名
記号
田
畑
樹園地
農業用
施設
用地
山林
・
原野
合計
諏訪森、下大島地区
A-1
11
4
-
-
-
15
上大島地区
A-2
-
21
4
-
-
25
上大島、上九沢地区
A-3
-
14
5
-
-
19
大沢中学南部地区(大沢南部基盤整備)
A-4
-
50
8
1
-
59
①
田名清水地区(田名西部基盤整備)
B-1
-
26
1
-
-
27
相
谷原、下当麻地区
B-2
-
6
-
-
-
6
模
望地、久所河原地区
B-3
8
3
-
-
-
11
原
新宿、塩田地区
B-4
-
20
4
1
-
25
番田南地区
C-1
-
24
5
-
-
29
虹吹、古山地区
C-2
-
16
4
-
-
20
新戸耕地地区
D-1
56
8
-
1
-
65
当麻耕地地区
E-1
20
-
-
-
-
20
95
192
31
3
0
321
A-1
4
12
3
-
14
33
川尻(字)大島界、山野、横山
B
-
13
1
1
2
17
小倉(字)大保戸、中沢原、香之田
C
-
10
1
1
3
15
葉山島(字)下河原、相生、中平、鬼久保
D
1
7
1
-
-
9
5
42
6
2
19
74
計
②
広田、川尻(字)小松、小野、龍籠、松風、穴川
城
山
計
③
津
久
井
又野(字)削原
A-1
-
3
1
-
-
4
三ヶ木(字)赤坂、野尻、船間
A-2
-
7
2
-
-
9
三ヶ木(字)原替戸、二本木、滝原、桜木、小吹
A-3
-
16
2
1
-
19
三ヶ木(字)道志新田
A-4
3
-
-
-
-
3
根小屋(字)西明日原、東明日原
B-1
-
5
1
-
1
7
根小屋(字)金原、富士塚、西金原、南金原、東金原
B-2
-
23
3
2
-
28
長竹(字)下河原、北尾、立山、韮尾、中樫他
B-3
2
36
3
1
-
42
青山(字)鍛冶屋久保、杉木平 B-4
-
5
1
-
-
6
長竹(字)久保、西、中、沼
B-4
-
7
2
-
-
9
青山(字)番場、青山開戸
B-5
-
4
-
-
-
4
青山(字)大岩下、鮑子平
B-6
-
9
-
-
-
9
鳥屋(字)山吹、上ノ原、林、上ノ山、中開戸
C-1
-
5
5
-
1
11
鳥屋(字)大沢入
C-3
-
1
-
-
-
1
青野原(字)中前戸、上前戸、下梶野
D-1
-
8
1
-
-
9
青野原(字)嵐、荒井、原尻、道合
D-2
-
15
1
-
-
16
青野原(字)宮地、宮ノ開都
D-3
-
5
2
-
-
7
青根(字)荒井道下、平丸
E-1
4
2
-
-
-
6
青根(字)東野
E-3
2
-
-
-
-
2
青根(字)上原、麦間戸、上青根
E-4
3
1
1
-
-
5
14
152
25
4
2
197
計
54
農林業編
農用地区域設定面積(単位:ha)
地
域
・ 地
区
名
記号
田
畑
樹園地
農業用
施設
用地
山林
・
原野
合計
A-1
-
4
2
-
-
6
若柳
(字)若原、柳原、久保、南ヶ谷戸、原
A-2
-
6
1
-
-
7
若柳
(字)小橋、小橋道上、下ヶ谷戸、上ノ山他 A-3
1
2
-
-
-
3
寸沢嵐
(字)高谷、寸嵐、反畑
A-4
-
5
-
-
-
5
寸沢嵐
(字)沼本、南沼本、釜ノ上
A-5
-
3
-
-
-
3
寸沢嵐(字)西原、立道、南沢、南畑
A-6
-
7
1
-
-
8
寸沢嵐
(字)道風、北坂、道志原、道志新田
A-7
3
7
1
-
-
11
寸沢嵐
(字)増原、西川、谷山、原口の一部
A-8
-
11
2
-
-
13
寸沢嵐
(字)関口、関山、原口の一部
A-9
-
4
2
-
-
6
寸沢嵐
(字)山口、若柳
(字)山口
A-10
-
1
-
-
-
1
寸沢嵐
(字)鼠坂北、鼠坂南、関川他
A-11
-
3
1
-
-
4
4
53
10
0
0
67
A-1
-
5
7
-
1
13
佐野川(字)下岩、上下岩、岩久保、芳ヶ澤、大芦他 A-2
-
9
10
-
1
20
沢井(字)日野、曽根、仁多栗、ケッサイコ、中通り他
B-1
-
20
6
-
1
27
沢井
(字)栃谷、平畑
B-2
-
1
1
-
-
2
⑤
名倉
(字)押尾、下原、上原、上地敷、中村原他 C-1
-
4
6
-
-
10
藤
名倉(字)竹之下、太郎地、上原、横畑、堂上原他 C-2
-
3
2
-
1
6
野
名倉
(字)下日向、上中日向、仲日向、上日向
C-3
-
3
1
-
1
5
牧野(字)正沢、下佐野沢、大山森、大割目、新和田沢他 D-1
-
8
1
-
1
10
牧野(字)小津久、間和瀬、奥牧野、峰、寺丸、牧野林他 D-2
1
9
3
-
1
14
牧野(字)大久和、小船、竹久保、川上、大川原、長又
D-3
-
2
1
-
-
3
牧野
(字)長又、尾崎、菅井、道下、道上他
D-4
-
7
1
-
1
9
1
71
39
0
8
119
119
510
111
9
29
778
④
若柳
(字)西原、中原、下原
相
模
湖
計
佐野川(字)稲畑、上和田、中和田、下和田、和田口他
計
合
計
農 林 業 編 55~56
農
業
振
興
地
域
⑤藤野地域
A-2
A-1
上野原市
B-2
④相模湖地域
B-1
JR中央線
中央自動車道
八王子市
相模湖駅
R20
②城山地域
藤野駅
C-1
A-1
R20
相模湖
R412
C-2
A-11
C-3
A-2
A-10
A-4
相原駅
R16
A-1
A-3
A-2
A-9
A-5
京王相模原線
津久井湖
A-2
A-1
A-7 A-4
D-1
城山湖
R413
A-3
A-8
A-6
D-2
橋本駅
B
A-2
D-3
B-5
相模原駅
C
A-3
A-1
B-6
矢部駅
B-2
B-4
D-1
D-4
南橋本駅
A-4
B-1
R412
D-2
道志村
R413
奥相模湖
D
B-3
C-1
JR相模線
古淵駅
B-1
E-1
E-3
町田市
淵野辺駅
D-3
R129
上溝駅
C-2
E-2
JR横浜線
R16
番田駅
C-3
B-4
E-5
C-2
町田駅
B-3
E-4
愛川町
C-1
宮ヶ瀬湖
B-2
E-2
原当麻駅
①相模原地域
相模大野駅
E-1
東林間駅
下溝駅
小田急
相模原駅
厚木市
③津久井地域
小田急線
清川村
D-1
相武台前駅
相武台下駅
座間市
山北町
大和市
農林業編
57
5 農畜産物
 米・麦・大豆
水稲の栽培は相模川沿いの区画整理を行った大島、田名、当麻、磯部、新戸地区や葉山島、道志
新田(三ヶ木、寸沢嵐)を中心に、品種としては、キヌヒカリ、さとじまん、コシヒカリが作付け
られている。
陸稲や麦については、
昭和50年代から急激に減少し、
現在ではわずかにしか見られない。
津久井在来大豆は、粒が大きく、甘みが強く、煮豆や味噌加工等に古くから郷土食の素材として
栽培され、県の優良品種にも選定された。しかし、昭和60年代に入り、栽培する人が減り、いつし
か「幻の大豆」と言われるようになった。津久井地域農業経営士会が 「幻の大豆」 の復活と地域ブ
ランドへの育成のため、昔から作り続けてきた農家から種を譲り受け、平成12年からは、種まきか
らみそ加工までを体験する「津久井在来大豆の栽培と味噌加工」を行った。その結果、栽培面積が
一気に増加し、津久井在来大豆の名声が上がると共に、種を市内の生産者へ供給し、面積の拡大が
図られた。また、県や市内農協、事業者と連携し、加工品の開発を行い、味噌、納豆、豆腐、煮豆
缶詰など幅広く加工品が生まれ、相模原市の特産品として、定着している。
 野 菜
野菜は、現在では露地野菜を中心に個人直売所や量販店での地場野菜コーナー等による販売が多
くなっている。
旧相模原市の区域を中心にひろがる火山灰土壌の特徴を活かしたヤマトイモ、サツマイモ、ダイ
コン、ゴボウ、ニンジン等の根菜類に加え、トマト、キュウリ、スイートコーン等の果菜類やホウ
レンソウ、キャベツ等の葉菜類と、多品目を生産する農家が多い。
施設野菜はトマト栽培が中心だったが、近年ではイチゴ栽培も始められている。
ヤマトイモは、贈答用として宅配販売が主流になっており、地場農産物のブランドとして定着し
ている。そのほか津久井在来大豆をエダマメとして出荷することにも取り組まれている。
平成25年にJA津久井郡の「あぐりんず つくい」、JA相模原市の「ベジたべーな」の2か所の
大型農産物直売所が相次いで開店し、にぎわいを見せており、生産者の出荷意欲が高まっている。
 果 樹
果樹は、なし、ぶどう、くり、うめ、りんご、ゆず、かき、ブルーベリーなどの果樹が栽培され
ているが、いずれも1戸当たりの栽培面積は少なく、産地化されていない。しかしながら、直売、
宅配、観光もぎとり、加工品など多様な形態により、地域の特産品として定着している。
なし、ぶどうの栽培は歴史が古く、昭和20年代に導入された。なしは当麻地区を中心に幸水、豊
水を栽培しており、栽培面積は減少しているものの直売で人気が高い。ぶどうについては、田名地
区でデラウエアが導入され、相模原市全域で栽培されている。現在では、巨峰、藤稔など様々な品
種が栽培され、直売で人気がある。
うめ、りんご、ゆずは、津久井地域の特産果樹として生産振興が行われた。うめでは、白加賀、
玉英、梅郷等の品種が栽培され、川尻地区にある本沢梅園では観光もぎとりが行われている他、一
部の農家で梅干しに加工して販売されている。りんごは、青根、青野原、内郷地区でふじ、陽光、
王林などが栽培され、栽培面積は減少しているものの、直売所やイベントで販売されている。ゆず
は、古くから自家消費用として栽培されていたが、平成12年から、藤野商工会が中心となり、加工
品の開発が進められた。現在ではポン酢、ジャム、シャーベット、サイダーなどが特産品として定
着した。また、最近では低樹高による栽培も導入されている。
ブルーベリーは平成9年頃から上溝、大沢地区で導入が進み、現在では市全域でハイブッシュ系
とラビットアイ系の品種が栽培され、観光もぎとりが主体となっている。また、一部の農家では、
58
農林業編
ジャム等の加工品も販売されている。
 植 木
植木生産は、昭和30年代半ばから盛んになった。養蚕や野菜からの転換者が多く、昭和43年に市
農協により花卉植木運営委員会として組織化され、昭和45年には育苗センター(昭和47年に緑化セ
ンターに名称変更)が開設された。昭和53年、販売促進のため展示場の整備等を行い、昭和54年か
らは生産者組織で設立した農事組合法人「相模原市緑化木生産組合」により、緑化センターが運営
されている。販売は、消費者向け直売が中心である。定期あるいはイベント等での植木市のほか、
緑化センターでの展示販売を行っている。
 鉢物・苗物等
昭和50年前後から、シクラメンを中心とした鉢物生産がはじまった。当初は市場中心の出荷形態
であったが、都市化の進行にともない直売比率が高まり、現在では直売中心の経営となっている。
また、植木や鉢物の一環として、草花や野菜の苗物の生産も行われている。これらは、ガーデニ
ング人気で需要が高く、消費者の需要動向に合わせた生産販売が積極的に展開されている。
 茶
川尻、小倉、葉山島地区及び佐野川地区を中心に茶栽培が行われ、串川地区に荒茶工場があり、
一番茶を主体に加工されている。加工された荒茶は、一元的に(株)神奈川県農協茶業センターに
出荷し、「足柄茶」のブランドで販売されている。一部の農家では、自主生産、自己販売も行われ
ている。
 養 蚕
平成10年に製糸業法及び蚕糸業法が廃止され養蚕農家を取り巻く環境は一段と厳しくなり、経営
転換が進んだ結果、平成22年には産業としての市内の養蚕は姿を消すこととなった。
 畜 産
畜産経営は、昭和40年代頃から始まった都市化の進展、その後の輸入畜産物の増加等による取引
価格の低迷、生産環境の悪化や周辺住環境との関係、さらには従事者の高齢化や後継者不足等によ
り、厳しい環境下に置かれてきた。
こうした中で、市では畜産物生産者で組織する相模原市畜産振興協会を通じて、種畜改良や子畜
の育成、家畜防疫、近代的な畜舎、堆肥化施設の整備等を支援し、総合的な生産環境の改善整備に
努めている。
一方、牛のBSE(牛海綿状脳症)対策としての耳標装着による識別管理や生産履歴確認のため
のトレーサビリティ、鳥インフルエンザ発生防止への対応など安全で安心できる畜産物の市民への
提供にも努めるとともに、今後はこだわりやブランド化などの特性を持った畜産物で地産地消に重
点を置き、農業全般に関わりのある集団としての事業展開を図る必要がある。
酪
農
酪農は、戦後しばらく数頭飼育の零細複合経営であったが、昭和38年の酪農近代化計画により、
急速に施設の近代化や規模拡大が図られることとなった。
以後、省力化及び環境面での施設整備も着々と進められたが近年の飼料価格の高騰や都市化の
一層の進行などにより経営環境は厳しさを増している。現在では、自動給餌施設の整備や糞尿処理
を円滑に行う“搾汁機の設置”“公共下水道への接続”など家畜排泄物の適正な処理・利用が進め
農林業編
59
られ、さらには、乳質・乳量の改善策として受精卵移植普及事業や北海道を中心とした預託育成事
業を実施するなど、生産性の向上が図られている。
継続的な経営努力にもかかわらず、酪農家の労働量は相対的に多い。ゆとりある経営を目指す
ためには、ロボット化された搾乳設備の導入や酪農ヘルパー事業を活用した労働時間の軽減は今後
の酪農経営の課題の一つとなっている。
養
豚
明治30年代に農家の副業として生まれた養豚は、昭和初期に高座豚として広く知られるところと
なり、本市は県下でも有数の養豚地域となった。
1戸1~2頭の経営状態で発展した市内の養豚であるが、昭和33年、全国に先駆けてデンマーク
豚舎を採用し、規模拡大の道を歩むことになる。
品種は、戦前、戦後にかけての中ヨークシャー種から時代の推移とともに変化した。現在はラン
ドレース種、大ヨークシャー種、デュロック種の3品種による交雑利用が主流であるが、一方で、
AI(人工授精)技術の導入による品種改良も試みられている。
生産面では、一層の規模拡大とともに、手作りハムといった加工品生産分野への進出や大手スー
パー等を供給先とした肉豚のブランド生産などが近年の特徴的な動向であり、環境面では、公共下
水道への接続が進められるとともに、堆肥化された豚糞は耕種農家への供給と併せて最近では家庭
菜園家の利用など、多くの人に利用されはじめている。
養
鶏
昭和30年当時、市内の飼養羽数は10万羽程度であったが、その後、麻溝台地区に横浜の大規模養
鶏農家が移入するとともに、それが市内の養鶏農家の規模拡大を促したこともあって、昭和43年に
は飼養羽数が162万羽にも達した。
この間、市内外を問わず経営の企業化が進んだが、そのことが全国的な供給過剰状況を生み出し、
卵価低迷による不安定な経営状況を招くこととなった。そのため、昭和41年に㈳相模原市畜産物価
格安定基金協会を設立し、鶏卵、食鶏、肉豚を対象にした価格補填事業を開始した。また同時期、
麻溝台地区を中心にニューカッスル病が大流行し、養鶏農家に大打撃を与えたため、以降、ワクチ
ンの導入助成を行い、今日に至っている。
現在、多くの農家が近隣消費者をターゲットに直売を行っているが、収穫後に農薬を使用してい
ない(安全な)飼料の給餌やビタミンE、鉄分等の含有量が豊富な卵の開発等により付加価値を高
めたり、卵の自動販売機を設置するなど様々な経営努力が続けられており、さらには、鶏糞コンポ
ストの導入など環境衛生面での施設改善も逐次進められている。
本市の飼養羽数は、ここ数年ゆるやかな減少傾向にあるものの、今もって鶏卵の生産量は高く、
県下第2位の座を保っている。
肉
牛
昭和20年代、市内では赤褐和種(朝鮮牛)が、主に水田づくりの労働力として利用され、老牛に
なると食用として出荷していたが、農業機械の普及に伴って、こうした形での肉牛生産は徐々にそ
の姿を消していった。
一時、肉牛生産は途絶えたが、昭和50年代に入ると、酪農従事者の労働力軽減や経営の多角化を
にらみ、黒褐和種(和牛)の生産が始められる。平成2年には、肉質や体型に優れた島根産の第7
糸桜系を中心に素牛(雌牛)の導入を開始し、平成6年には第1回の出荷が行われた。
近年従事者の高齢化等に伴い、農家戸数・飼養頭数ともに著しく減少している。
60
農林業編
家畜飼養の推移
年 次
項 目
乳
戸
牛
飼
20
21
22
23
24
25
26
27
数(戸)
29
26
26
25
25
23
21
21
数(頭)
1,072
1,005
976
951
923
767
688
668
1戸当たり平均頭数
(頭)
36
38
37
38
36
33
32
31
数(戸)
7
5
5
5
3
3
3
3
数(頭)
6,430
6,307
5,878
6,181
5,099
5,497
5,723
5,673
1戸当たり平均頭数
(頭)
918
1,261
1,175
1,236
1,699
1,832
1,907
1,891
15
14
13
13
12
12
11
10
数(羽) 308,731
297,348
304,594
289,451
280,026
287,630
278,550
260,805
20,582
21,239
23,430
22,265
23,335
23,969
25,322
26,080
数(戸)
5
4
4
2
2
2
1
1
数(頭)
95
59
51
58
51
60
16
22
1戸当たり平均頭数
(頭)
19
14
12
29
25
30
16
22
畜 産 農 家 戸 数(戸)
56
49
48
45
42
40
36
35
養
頭
戸
豚
飼
養
頭
採 卵 鶏
戸
飼
数(戸)
養
羽
1戸当たり平均羽数
(羽)
肉
戸
牛
飼
養
頭
※採卵鶏は1,000羽以上飼養農家を対象
6 林
(出典:市畜産振興協会)
業
津久井地域の森林は、相模川の水運を生かした流通機能と一大消費地である江戸・東京に近接して
いる立地性により古くから林業経営が盛んであり、江戸時代には、幕府はその重要性に着目してか、
おばやし
津久井地域に全国で唯一の行政呼称である「県」を使い、直轄林「御林」の設定・整備に努めた。こ
うしたことにより、早くから森林造成、保育施策の取組みがなされ、県内有数の人工林が形成されて
きた。
しかし、近年は、安価な外国産材の輸入による生産環境の悪化や、周辺の都市化の影響を受けた労
働力の流出、担い手の高齢化などにより林業経営・木材生産は極めて困難になっている。
一方で、豊かな山林は、地球環境の保全、水源かん養、災害の防止といった公益的機能が再評価さ
れつつあり、特に神奈川県民の水源としての貴重な役割を守るため、県による「水源の森林づくり事
業」が展開され、その積極的な保全施策が講じられている。
 森林地域
森林は、その所有形態から、国有林・民有林に大別されるが、民有林には個人所有の私有林のほ
か、県・市町村・財産区などのいわゆる公有林も含まれる。また、民有林には地域森林計画対象民
有林と対象外の民有林がある。これとは別に、森林の公益的な機能に基づく分類に保安林がある。
保安林は、水源かん養・土砂流出防備などにはじまり、保健・風致といったものも含む17種類の役
割が設定されており、国有林・地域森林計画対象民有林に重複して指定されることもある。
相模原市域の国有林と民有林を合わせた面積は、18,944haで、総面積の57.6%を占め、保安林
の指定面積は、13,359haで総面積の40.6%となっている。
農林業編
○森林地域
区
単位(ha)
分
相 模 原 市
国有林+民有林
18, 944
国
有
林
998
民
有
林
17, 947
地域森林計画
対象民有林
17, 746
保
安
61
林
13, 359
 出典:神奈川県森林・林業関係統計(平成26年10月現在)
 ※保安林については平成26年度末現在

 ※端数処理のため、合計が一致しないことがあります。




○保有山林面積規模別経営体数
100
500
計
1,000
1,000
ha
以上
10
20
30
50
100
500
10
16
1
3
3
-
-
50
~
50
~
7
30
~
3
20
~
6
10
~
3ha
未満
~
林業経営体数
保有
山林
無
5~
分
3~5
区
(出典:2015年農林業センサス)
○過去5年間に保有山林で林業作業を行った経営体の作業別経営体数
区
分
林業経営体
林業作業を
行った
実経営体数
植
72
林
間
下刈りなど
4
伐
主
実経営体数
切捨間伐
利用間伐
42
40
4
52
伐
2
(出典:2010年農林業センサス)
※林業経営体とは、権原に基づいて育林又は伐採できる山林の面積が3ha以上の林業又は委託を受けて行う
育林若しくは素材生産又は立木を購入して行う素材生産事業を行う者。
○特用林産物生産量(平成27年度)
区
分
生 産 量
乾しいたけ(t)
生しいたけ(t)
0.3
13.4
黒
炭(t)
3.8
竹
炭(t)
0
薪(層積)
木酢液(L)
竹酢液(L)
100
0
0
(神奈川県環境農政局緑政部森林再生課調べ)
○樹種別素材生産量(平成27年度)
樹種別
スギ
ヒノキ
マツ
その他
材積()
2343.8
2098.3
0
4.5
(神奈川県環境農政局緑政部森林再生課調べ)
 さがみはら森林ビジョン
本市では、市域の約6割を占める森林を健全な姿で次世代に引き継いでいくため、平成22年度に
「さがみはら森林ビジョン」を策定し、平成24年度にはその具体的な取組の方向性を示した「さが
みはら森林ビジョン実施計画」を策定し、津久井産材の利用拡大や「市民の森」の整備の検討など
の各種施策を推進している。
津久井産材の利用拡大については、これまで森林組合や関係事業者からなる協議会を中心に、市
内における木材の流通拠点としてストックヤードが整備され、良質な津久井産材の迅速かつ円滑な
62
農林業編
流通による市場拡大に向けた活用が図られている。また、公共建築物の木質化や民間事業者との共
同による研究開発にも取り組み、学習机の天板や木製ベンチなどの製品開発も行い、一部、民間商
業施設への導入が実現している。
一方、市内の民間事業者においては、高機能な木材加工設備の導入など、木材需要の拡大に向け
て積極的に取り組まれており、引き続き、関係事業者と連携しながら、津久井産材の流通及び市場
の拡大に取り組む。
○森林管理の状況(水源の森林づくり事業)
項
目
平成24年度
平成25年度
平成26年度
平成27年度
協力協約締結面積(ha)
70.
97
47.33
11.21
22.22
森 林 整 備 面 積(ha)
146.
46
121.79
119.74
80.30
管 理 道 整 備(m)
843
1,016
775
3,331
※森林整備面積は、間伐、枝打ち等の合計面積(神奈川県県央地域県政総合センター調べ)
○津久井産材素材生産量
項
目
素 材 生 産 量()
平成24年度
平成25年度
平成26年度
平成27年度
2,
557
2,565
2,647
4,447
(神奈川県「素材生産量調査」県森林生産課調べ)
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