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2007年4月 - 一般社団法人半導体産業人協会

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2007年4月 - 一般社団法人半導体産業人協会
Encore
ア
ン
コ
ー
ル
半 導 体 シ ニ ア 協 会
ニ ュ ー ズ レ タ ー
発行元 SSIS半導体シニア協会
2007年4月
No.
巻 頭 言
半導体産業研究所
森野 明彦
多様化の進展と合理的な対応
トランジスタの誕生
から今年で60年を迎え
半導体産業研究所
森野 明彦
の集積が必要であり、設計技術、システム技
術の重要性が飛躍的に増大してくる。
た。この間、半導体技
一方、半導体技術においても多様化が顕著
術の進歩、特に集積度
である。長い実績を持つシリコン酸化膜の限
の目覚しい増大によっ
界が徐々に顕在化し、それに代わってトラン
て、さまざまなエレク
ジスタに対するHigh-k材料、配線に対する
トロニクス機器、サー
Low-k材料やカーボンナノチューブ等の材料、
ビスが生み出され、そ
さらにMEMS等の新デバイス、有機半導体を
の高機能化、低コスト
はじめとした新材料の研究開発が進められて
化、小型化等は言うに
いる。
及ばず、高信頼性化、省エネルギー化等の面
このようにいろいろな分野で多様化が進展
で大きな貢献が成されてきたことは良く知ら
する状況の中で、半導体として高い付加価値
れるところである。
を持つ製品、サービスを創出していくにはそ
また、“いつでも、どこでも、誰とでも、
の進め方に工夫が必要であろう。すなわち、
話ができる”と言う通信サービスの基本的な
設計技術を中心にシステム、デバイスをはじ
ニーズが、携帯電話の実用化によって充足さ
め関連する広範囲の分野の専門家が一体とな
れると共に、携帯型パソコンの出現によって、
り、それぞれの発想や知恵を生かし、互いに
場所と時間を問わずにコンピュータ機能が利
触発し合いながら共同して新しいものを作り
用できるようになった。コンシューマ分野で
上げていくという進め方が従来にも増して重
もさまざまな新機能・サービスの実用化が見
要になってくると考える。この場合、専門家
られる。
の各々が持っているその人固有の価値観や方
今後はこのような機能・サービスがより高
度で広範囲に、個人にフレンドリーな形で実
法論が共同作業のマイナス要因にならない進
め方も必要である。
現されるユビキタス社会や、個人にとって安
多様化の進展が、実は自然な姿であり、同
全・安心で快適な社会の構築が進められると
時に価値創造の源泉であるとの認識に立っ
考えられるが、そこでは半導体に対して益々
て、これに対して合理的な対応を積み重ねる
多様なニーズが寄せられることになろう。
ことを通して、新しい価値が創造されていく
このようなニーズの充足に当たっては、大
ようにしたい。またこのような面で日本がそ
規模な競争力あるシステム機能のチップ上へ
の強さを発揮していくべきであると考える。
前 SELETE 社長
1
総会での会長挨拶、ご来賓挨拶
2007年度総会の開催にあたって
1月30日 年次総会開催 学士会館にて
会長挨拶
川西 剛 会長
皆様方、関連の方々のご支援の賜物と厚く御礼申し
本日はお忙しい中、半導体シニア協会年次総会に
上げます。最近では国会でも取り上げられている優
ご参会いただきまして有難う御座います。半導体シ
勝劣敗や格差の話もありますがこれらは見方では
ニア協会もいろいろなことを経験しながら設立10年
イノベーションや革新には付きものの現象でもあり
目を迎えておりますが、私自身も皆様のおかげで半
ます。そうはいっても半導体業界が競争だけや、ぎ
導体の仕事に半世紀の永い間携わってこられたこと
すぎすした関係だけでいいものではないと思いま
は大変光栄でありまた感謝するところです。今日は
す。私たちシニアの役割の一つは厳しい半導体業界
半導体ベンチャーの雄飯塚哲哉様のご挨拶とトラン
の中で潤いや希望や暖かさといったものを少しでも
ジスタ発明から60年を迎えた還暦の半導体を記念し
お返しすることではないかという気持をもっており
て菊池 誠先生の特別講演も伺えることになっており
ます。
次なる10年も我々シニア協会は是非シニアの為す
ます。
べきこと、シニアでなければ出来ないことを続けて
SSISは10年目にはいり、個人会員が約290名、賛
助会員が51社になっていています。ひとえに会員の
いけばいいと考えています。
ご来賓挨拶
二番目は理系離れ現象、三番目が起業の少数化です。
特に三番目の状況は深刻で開業がしにくく、廃業率
飯塚 哲哉(日本半導体ベンチャー協会(JASVA)会長)
半導体シニア協会10年の節目の総会にお招きいた
の高い状況が続くと日本の製造業はどんどん弱って
だき有難う御座います。大先輩各位の前でご挨拶を
いきます。事実我が国の大企業は大企業と呼べない
させていただく機会を得ましたことに御礼を申し上
状態になりつつあります。
いま日本に問われているのは創業率・開業率の低
げます。本日は JASVAのメンバーの方もご出席され
い現状を打開する策を講じること。強いベンチャー、
ておりこの会の人脈の深さに感心しております。
小企業が育たないと大企業も衰退してゆきます。車
今年が半導体還暦の年に当たるというお話ですが、
私自身が還暦の猪年です。干支の亥年は炸裂する年
の両輪が廻らないと日本産業全体を弱体化してしま
だというジンクスがあるそうで、是非業界もそうな
うのです。
って欲しいと願っております。安部政権に変わりイ
半導体シニア協会は大きな人材のハンドリング・
ノベーションとオープンによる美しい国づくりを掲
パワーを持っておられます。今一度大きな荷物を背
げています。固定資産税の改正、エンジェル税制の
負って頂き半導体業界の方向付けへのご示唆を頂け
導入等制度面の改革がなされオープン化の施策は
ればありがたいと思います。われわれ JASVAも皆様
徐々に進みつつありますが、イノベーションの方は
のご協力を得ながら一石を投じていきたいと念じつ
大問題です。その最大の障壁は少子化です。少子化
つご挨拶といたします。
には三種類があり、一つは人口プロファイルの悪化、
年次総会特集号
・巻頭言
森野 明彦
・総会での会長挨拶
川西 剛 会長
ご来賓挨拶
飯塚 哲哉
・特別講演「半導体研究 思い出の人びと―キーパースンが残した教訓―」
菊池 誠
・総会報告(2006年度活動報告・2007年度活動計画)
・半導体事始「電子交換機用半導体の開発」
向井 久和 会員
・SSIS九州 研修会開催 報告
荒巻 和之 会員
・News最先端「生涯現役社会の条件 清家 篤」講演を聴講して
松下 晋司
・賛助会員紹介シリーズ「㈱テクノロジー・アライアンス・インベストメント」 吉澤 正充
2
1頁
2頁
2頁
3頁
7頁
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15頁
17頁
19頁
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
半導体研究 思い出の人びと
―キーパースンが残した教訓―
菊池 誠(東海大学名誉客員教授)
マレーヒルの上のベル研究所で、トランジスタが
料に使用。ゲルマニウムの代用としては、鳩山さんが
発明されたのは1947年12月23日。それから60年が経
調達してきた多結晶の、それはひどいポーラスなごそ
過しているのだが、その黎明期から、私が久しく付
ごそのシリコンを使って、タングステンの針を用いた
き合ってきた優れた欧米の研究者たちの人間像、本
り、いろいろ工夫しながら実験を開始した。
私が大学を出た年にトランジスタの発表があった
当の能力について、感動したいくつかの記憶をエピ
ことから、私は半導体技術の発展とともに生きる幸
ソードとしてご紹介したい。
運に恵まれたわけで、若いとき「おまえは何に一番
強烈に感動を受けたか」と聞かれれば即座にこの経
験を話した。技術のカルチャーショックだった。つ
まり全く新しい時代に入ろうとしていることを痛感
する現象を毎日経験したわけだ。例えば、今日、物
質の純度は「9」の字を九つか十並べた純度まで上
げるのは半導体では当たり前のことである。しかし、
日本のわれわれはそういう素養を全く持っていなか
った。日本だけではなく、アメリカでも、この領域
ショックレーの家で見つけたトランジスタの
最初の実験に使われた装置のレプリカ
を切り開いた人以外はそういうカルチャーのバック
を持っていなかった。つまり半導体が学問と技術に
トランジスタ誕生のカルチャーショック
レボリューションを起こしたということが、骨身に
滲みる経験を積んでいるのである。
1947年当時の状況の理解を促すために、最初に私
自身の経験について触れてみよう。
「スピリチュアルファーザー」
マービン・ケリー
トランジスタの話が日本に入ってきたころ、私た
ちの研究室は、商工省の電気試験所であった。その
後、商工省が通産省になり、電子総合研究所になり、
最初はマービン・ケリーについて話をしたい。マ
今は産業技術総合研究所となっている。当時の私の
ービン・ケリーのことをアメリカでも「スピリチュ
ボスは、鳩山道夫さんで鳩山一郎さんの甥にあたる。
アルファーザー」という名前で呼んでいる。トラン
トランジスタについて知ったのは、鳩山さんの口を
ジスタのスピリチュアルファーザー。つまりケリー
通じてである。
は自分で研究したのではないが、ケリーがいなけれ
ある朝「おい、君、こんな話を信用できるかい。ア
ばトランジスタはできなかった。よくも悪くも強烈
メリカで結晶に針を2本立てて、一方の針から電気信
な個性の持ち主であったといえるだろう。
号を入れたら向こうの針に増幅されて出てくるって
ケリーは、1935年ごろにベル研究所で電子管研究
さ。こんなことを、君、信用する?」と鳩山さんは私
部長をやっていた。当時、彼は「わが研究所はアメ
に言い「いや、そんなのは絶対にうそだ」と私は答え
リカ社会のために何をなすべきか」と自問自答し
た。しかし10分もたたないうちに鳩山さんのところに
「それはアメリカ全土を覆うクオリティーの高い電
行き「さっきあんなことを言ったけれど、本当を言う
話ネットワークである」と即答している。当時はま
と僕は実験をやってみたいんです」と伝えたことから、
だ電話ネットワークの程度が非常に低かった。
実験をしてみようということになった。今のように絶
ケリーはアメリカ全土に2人の人がどこにいようと
縁材料のいいものはないため、ベークライトを絶縁材
もまるで面と向かっているような会話が交わせるシ
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
3
ステムをアメリカ全土に作らなければならない。こ
ケリーが、MITにショックレーをスカウトに行っ
れは明白であると主張していた。また、その実現の
たのは1935年。ショックレーの担当教授はジョン・
ためには「真空管ではだめだ」と電子管研究部長の
クラーク・スレイターで、化学物理の大家だった。
身でありながら明言している。ケリーは、自分の扱
兄弟子にはフレデリック・サイツがいるが、サイツ
っている電子管部を踏みつぶしてしまわなければ、
はアメリカ物理学会の会長を長く務めた物理学の大
アメリカの将来はないと答えを出していたわけであ
家だ。サイツはショックレーの能力に感動するが、
る。それでは、真空管に代わるものをだれかに作ら
著作の中では時々閉口させられるショックレーを問
せなければいけない。彼は物理学に対して非常に強
題児として扱っている。そういう関係のところに、
い、英語で「ビリーブ・イン」という言葉があるが、
ケリーはスレイターに相談を持ちかけ、ショックレ
学問に対して信頼感を持っている。次にやるべきこ
ーを口説いてベル研究所に引っ張ったわけである。
とは「それは俺にはできない。俺はマネジャーであ
私がショックレーに会い、最初にびっくりしたの
る。しからば優れた人を捕まえてこなければいけな
は、普通の挨拶をしないことだった。ショックレー
い」と、ショックレーのスカウトへと進んでいく。
は行くと必ず「飯を一緒に食うから、電話しろ」と
ケリーのノートには「固体物理学がそこで重要な
言う。カリフォルニアに行くと、約束なのでまずシ
役割を果たす。その研究が鍵である」とはっきり書
ョックレーに電話をする。すると決まって「おまえ
かれてあり「真空管はやがてなくなって、装置は小
の脳は今日、正常に動いているか」と聞く。私が
型になるだろう」とも明示されている。ケリーはケ
「ちゃんと動いている」と言うと、「じゃ、一緒に飯
ンタッキー大学にいた時にミリカンの油滴実験を手
を食って議論しよう」というのが、ショックレーの
伝っている。この経験がケリー自身に物理学に対し
挨拶のパターンであった。
強い肩入れをさせた。ケリーは何度も「物理学をも
また、彼が変わっているという面白い事例がある。
っと興味を持って追究しなければだめだ」と繰り返
例えば彼は泳ぐのが好きで、泳いで耳に水が入ると、
した。ショックレーを連れてきた時も、ジョン・バ
普通はスポイトで水を吸い取ろうとする。ところが彼
ーディーンが来た時もそのことを言っている。若い
はスポイトに入っている液体を逆に入れる。その液体
時に感動を持つことがいかに大きなことかを考えさ
はアルコール。耳に水が入ったら、耳にアルコールを
せられる事例だ。
入れ、アルコールの蒸発する力と一緒に水を蒸発させ
ようというわけだ。そういうことをずっと続けて平気
トランジスタの生みの親の1人、ブラッテンも、
デビッソン・ガーマーの実験、電子が波動であると
で、それが当たり前。彼が「変わっている」と言われ
いう基本実験を手伝っている。若いときの震えるよ
るのは、彼がてらっているのではなく、自分がいいと
うな経験、本当に骨身に滲みる感動を学問に対して
思うことをただ実行しているだけなのである。
彼はきつい男であり、しばしば人を試そうとする。
持つということは、言葉で教えることのできない推
彼はいつも自分が研究した色々な文献を私に送って
進力を与えることになり得るのだ。
くる。会って席に着いた途端に「ところで、この間
ケリーは、自身の思想をはっきり書き残している。
これはバーディーンも引用していたことがある。
「物
家から送ったのは読んだ?」。僕が「読んだ」と答
質について本当によくわかるには、その中の電子の振
えると、「では時間を3分あげるから、この間送った
る舞いを正確につかまなければいけない。結晶の中の
分の内容を要約して、それについての意見をテープ
電子のからくりを間違いなく我々に解らせてくれるの
に3分に入れろ」と。そういうことがしょっちゅう
はクワンタムメカニクス(量子力学)である」
。これ
あった。かのロバート・ノイスもショックレーにメ
をお題目ではなくて貫いてきたのがケリーなのだ。
ンタルテストを随分やられていたようである。
そういうショックレーであるが、私は彼からスキ
ショックレーとの議論
ムしようとしたこともある。1963年に来日時に、
そして、ケリーがスカウトしたのがショックレー
NHKテレビで彼と対談番組があった。私はディレク
である。私はショックレーとは1960年から彼が亡く
ターに「終わりの5分を自由に使いたい」と申し出
なるまで交流があった。ショックレーは晩年、彼の
て、受理されていた。
私が何をやりたかったかというと、ショックレー
信ずるもののために名声を落としたが、頑固さの根
を公衆の面前でいきなり惑わしてみたかったのであ
底に彼の基本的な性格があるとも言える。
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半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
る。このとき彼は「トランジスタを生むまでの苦労、
れから頭の回転がすごく速い。それは、議論すると
人間がクリエーティブな仕事をするということがい
速射砲のように喋ることでわかる。その時、時計を
かに難しいか。それはものを考えるということをよ
見ると、まだ1分あった。すると彼が攻めてきた。
く考えておかないと解明できない」という話をした。 「じゃ、君に一つ聞きたいけど、日本語というシス
そして最後の5分に入って、私は用意していた2つの
テムの上に、欧米でできて欧米で育った科学技術が
質問をした。一つは「アメリカってもっとスマート
うまく乗っかると思うか」と。これは僕の胸の中に
な国かと思ったら、随分つまらないこともやってい
ずっと続いている問いかけだ。私もこれは大問題だ
ると私は感じた。チップをあげるというカスタムは
と思っている。現在のことをいえば、インドが今立
僕たちにとっては誠に不愉快である。何であんなつ
ち上がろうとしている。この間もMITの教授と議論
まらないカスタムをアメリカという近代国家がいつ
したが、インド人がどうしてソフトウエアにこんな
までもやるんだろう」と。これはやや効いたらしく
に強いのか。彼は「言語の問題である」という意見
てショックレーが「うーん」という顔をしていた。
であった。そのように、ショックレーという男はま
そのとき彼が言った言葉は今でもそのまま覚えてい
れに見る鬼才だったのである。
る。
「それはカスタムである」
「ワンス・イット・イズ・
ショックレーとトランジスタ
セット、イット・イズ・ベリー・マッチ・セット」と
いう表現であった。
もう一つショックレーのことを話す。ショックレ
もう一つ「あなた方の国は『イエス』と『ノー』
ーは多くの仕事をしているが、一つは何といっても
で合理的な国だと思っていた。ところが科学論文に
ジャンクショントランジスタである。
メトリックシステムがあるかと思うと、僕たち半導
ポイント・コンタクト・トランジスタが見つかっ
体の資料の厚さを『ミル』で書いてある。『ミル』
た途端、1948年6月の公開までの6カ月間外に一切言
はインチシステムです。メトリックシステムとイン
うなとベル研究所では扉を全部閉めた。公式発表ま
チシステムがごっちゃになっているということは、
でに特許書類を全部済ませたわけだ。特許の担当が
私たち科学者にとってアメリカをあまり尊敬できな
一緒になり、ショックレー、バーディーン、ブラッ
い一つの要因である」。刺激するためにわざわざそ
テンを含めてトランジスタの特許の整理をしようと
う言った。すると、彼はすぐ返り討ちをした。「ち
した。当然その時に見つかったポイント・コンクタ
ょっと聞くけど、俺の研究所から出た論文で一つで
クト・トランジスタはだれも見た人がいないので、
もそういうのがあるか」。実にないのである。「ショ
用意すべき文書がたくさんできるわけだ。
ックレートランジスタ」から出た有名な科学者も沢
しかし、その時、ショックレーは蚊帳の外に置か
山いるが、その人たちの論文は「ミル」は全然使っ
れた。彼が寄与をした重要な一つのポイントとして、
ていない。私がうっかりしていた。
フィールドエフェクトトランジスタを頭に描いてい
1本取って1本取られた形になったのだが、彼は論
た。彼は有名な薄膜の実験をやっている。薄膜に縦
理で切り崩そうとする限りは動じない男である。そ
方向に電場を掛けて、膜に沿っての電流が変化する
と思ったら、電流が全然変化しなかった。それをい
じるうちにトランジスタ現象を見つける道筋に入っ
てしまった。偶然が作用したわけである。ところが
フィールドエフェクトトランジスタを、特許部は相
手にしてくれなかった。ショックレーが問い合わせ
ると、すでに誰かの特許に抵触するとのこと。そこ
で、ショックレーは蚊帳の外になってしまった。
また、私はある時、レストランで「ジャンクショ
ントランジスタのあのセオリーをあなたはいとも
易々と作ったように見える。どうしてああいう洞察
力があなたには出てくるんだ」と、彼と議論をして
いると、奥さんが「そうじゃないのよ」と言い出し
た。エミリー夫人が言うには、現象が発見された
NHKテレビスタジオでの対談
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
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1947年12月から翌年1月のほぼ1カ月、夜中に目を覚
ジスタの現象が見つかった次の年の2月初めに、ベ
ますと寝室のベッドにショックレーがいなかったと
ル研究所の中で小さい研究グループの会合があっ
いうのだ。別の部屋で電気がついている。彼は何か
て、ショックレーはその時までにその実験をやって、
一生懸命書いていた。
十分増幅するということは実験的にまだ証明されて
いないけれど、彼のセオリーは正しいということを
それが後に「ベル・システム・テクニカル・ジャー
確認したのである。
ナル」にフルペーパーで出た。ジャンクショントラン
ジスタのセオリーである。完璧なセオリーができてい
彼は「あのセオリーは大したもんだと言うけれど
る。彼の洞察力には驚かされる。バンド構造からPN
も、ちゃんと勉強すれば、おまえだって、あのころ
接合から全部あって、
「針を立てることはトランジス
の優れた高校生だってできた」という言い方をした。
タにとって本質的なことではない。本当のトランジス
全く新しい概念は特にないと。
タは結晶の中にできる。それをやるには、真ん中のレ
しかし、PN接合であるとかインジェクションであ
ーヤと外側の二つのレーヤが、電気伝導の性質が違わ
るとかバリアーであるとか、そういう概念はそこで全
なければいけない。真ん中のレーヤは約40ミクロンの
部整理している。こうしてショックレーがジャンクシ
厚さでなければいけない」
、これが彼の処方箋だ。
ョントランジスタのセオリーを出し、それが実証され
て、いよいよトランジスタの歴史に展開していく。こ
この処方箋は当時のプロセス技術が足りないから
うして作られたのが60年の始まりだったわけだ。
すぐには実現できなかった。GEのロバート・ホール
たちのグループが一番先にやったと思うが、初めて
ショックレーとバーディーンは仲が良くはなかっ
本当に結晶だけの、つまり針を立てないジャンクシ
たようだ。日本では、みんな一緒にやろうというと、
ョントランジスタを実験で証明したのは、それから
仲よしクラブにしようとするが、ベル研究所のあの
1年半ちょっとたってからである。
よき時代というのは、本当に真剣勝負のようで、協
できてみたらショックレーが言ったとおりなので
力するところはきちんと協力しながら、腹の中で相
ある。「たなごころを指す」という言葉があるが、
手全部をいいやつだと思っているわけではないと、
本当に驚かされる。あの寄与はものすごく大きい。
そういう状況だった。
一例をいうと、まだノーベル賞が出る前、バーデ
ショックレーはそれを評価してもらったことに満足
ィーンは「辞める」と言い出している。当時バーデ
だったようである。
ノーベル賞が 3人に出たことを彼は快く思ってい
ィーンがケリーに書いた手紙を見ると「ショックレ
なかったようだ。本当のトランジスタを作り出した
ーが私の助力を必要とするなら、私は喜んで手助け
のは彼のセオリーだからである。ポイント・コンタ
したいが、ショックレーに話すと『おまえは要らな
クト・トランジスタは触媒の役割を果たしたのだ。
い』と言っている。だから大学にでも帰ろうと思う」
私が驚いたのは、この話をしている時、ショック
という内容だった。ショックレーにはその時点でセ
レーが居住まいを正し「俺があの仕事をやったのは
ミコンダクター・フィジックスの全貌が、ディテー
なぜだか解るかい」と私に聞いてきたことだ。私に
ルは見えないけれど、どこをどう攻めるかというス
はその質問の意味がよく解らなかった。ああいう仕
トラテジーが頭の中にびしっとできていたらしい。
事をやろうとする意味は解るけれど、なぜあんなに
それを乱されたくないから、彼は「手助けは要らな
夢中になってやったかまでは解らない。私が首をひ
い」となるのである。
私が、ノーベル賞をもらったハーバート・クローマ
ねっていると、一言「フラストレーション」と答えた。
彼に言わせれば、ケリーに声をかけられてから人
ーと雑談していた時の事だ。クローマーがヘテロジャ
生の意義をそこに感じて夢中になって走り出し、ず
ンクションという話をするので、
「おまえはあれの草
っとやってきたおかげでトランジスタが生まれまし
分けの男だな」と言ったとき、クローマーは「違う。
た。「スピリチュアルファーザーではないけれど、
世間ではそういうことを言うけど、草分けははショッ
俺がいたからあそこまで来たんじゃないか。最後に
クレーとポガンスキーだ」と言っていた。アメリカの
なって別のルートで仕事が進んで、ブラッテンとバ
科学者はだれが最初というのをきちんと言う。そこに
ーディーンばかりに光が当たるのはどういうことな
もショックレーの名前がちゃんと入るのである。
色々な話がありましたが、半導体の半分隠れたよ
んだ」と心の中が穏やかではなかったのだろう。
うな歴史の一部をエピソードを交えてお話しました。
そのあとでシャイブの有名な実験がある。トラン
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半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
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1月30日 年次総会開催
神田錦町:学士会館にて
総 会 報 告
2006年度活動報告・2007年度活動計画
Ⅰ.2006年度活動報告
(6)九州支部活動
3月:シリコンシーベルト福岡パネル参加
2006年度の活動について総括報告が梅田運営委員
長から、各委員会が各担当委員長から、会計報告が
4月:工場見学会 12月:冬季研修会
(7)会誌“Encore”の発行:5回(1、4、7、8、10月)
事務局長から行われた。
(8)広報活動:PHリンクの拡大(JASVAほか)研修
【活動の総括】
ご来賓の挨拶で日本ベンチャー協会会長の飯塚様
会等を専用イベントサイトへ掲載開始
から半導体シニア協会の有能な人材を業界の振興の
(9)研修活動:特別講演2回、研修講演5回
ために役立ててほしいと、たいへん有難いお話を頂
(10)人材交流プロジェクト:6回開催
戴し且つおおきな課題を戴きました。今後の運営に
12月:アンケート実施
当たり努力して行きたいと思います。
2.運営委員会
皆様方多くのご協力でSSISも着実に発展し、2006年
2006年度は1月の総会の役員選・改任で新たに3名
度も年間の活動方針に基づき堅実な活動を図ってき
の方が運営委員としてご承認いただきました。運営
ました。会員数は広報・人材情報活動を柱とし十分
委員会に積極的にご参加いただき活性化が図られて
とはいえませんが着実に増加しております。予定し
おります。通年で12回の委員会を開催いたしました。
た行事に関してはほぼ計画通り実施することが出来
3.会員の状況
ました。昨年度の活動の中で特筆すべきは、2年目
九州地区の活動の拡充、人材・広報活動、会員の
に入った九州での活動で3月にシリコンシーベルト
ネットワーク等を活用し増員努力を続けております。
福岡にSSISとしてはじめてパネル展示で参加し、活
いろいろなご事情で退会の方も御座いますが、通
動状況をPRしました。また、4月にはカリフォルニ
年では若干の増加で、現状は表1の通りです。
ア大学に本部を置くCITRIS研究所の第1回アジアシ
表1 会員の状況
ンポジュウムを協賛し、研修活動のグローバルな展
06年1月27日現在
開を図っております。一昨年は実施を見送った文化
活動の海外IT・半導体関連企業訪問も10月にシンガ
ポール地区4社を視察させていただきました。
07年1月24日現在
個人会員
272名
285名
賛助会員
47社(団体)
51社(団体)
入会
退会
28名
15名
4社
―
予算面では対前年予算比101%と堅実に編成し、
Ⅱ.2006年度会計報告
実算面でも個人会員からのご寄付等で収入が予算を
達成することができ、収支面でも黒字を出すことが
事務局長から表2[2006年度会計報告の要約]と
できました。
表3[2006年度(第9期)収支報告]に基づき会計報
【活動の要約】
告がなされ、併せて5月連休中に起きた新宿の協会
事務所での現金盗難被害の顛末報告とお詫びが述べ
1.主な運営活動
(1)年次総会:1月31日
られた。つづいて監事より付帯意見2件を含む監査
(2)諮問委員会:1月31日、9月8日
結果が報告され、2006年度会計報告が承認された。
(3)賛助会員連絡会:9月8日
〈監査時付帯意見〉
(4)文化活動:4月26∼27日=工場見学[九州と共催]
1.研修会等での予実の乖離に関し、予算執行の現
実に合わせた柔軟性を持たせるために、中間監
10月16∼21日=海外工場見学
(シンガポール地区4社訪問)
査を実施することを強く推奨する。
(5)関西シンポジュウム・セミナー
2.5月連休中の現金盗難に関しては出来うる限りの
予防策がとられていると認められる。
6月13日、11月28日
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
7
表2 2006年度会計報告の要約
表3 2006年度(第9期)収支報告
予算
実績
達成率
収入の部
15,700,000円
16,985,757円
108%
支出の部
15,700,000円
15,336,398円
98%
収支差額
0円
1,649,359円
雑損
[収入の部]
1 会費収入
個人会費
賛助会費
2 研修会収入
東京
大阪
九州
総会収入
3 寄付金他
4 雑収入
5 収入合計
[支出の部]
1 集会費
賛助会連絡会費
年次総会費
研修会費(東京)
(大阪)
(九州)
2 ニュース発行費
3 文化活動費
4 ライフプラン発刊準備
5 ホームページ維持費
6 運営委員会費
委員会会議費
委員会交通費
7 活動振興費
8 人材交流プロジェクト
9 通信費
10 新規活動計画
11 活動費 計
12 事務局員費
13 交通費
14 事務所維持費
家賃
水道光熱費
電話・FAX・通信費
その他経費
15 消耗品費他
16 雑費
17 管理費 計
18 支出合計
[収支差額]
19 収 支
20 雑損
21 収支再計
[シニアファンド]
期首
期中収入
期中支出
期末
444,990円
収支再計
1,204,369円
差額処分
当期末未処分利益へ計上
時期繰越金
2,373,013円
〈資産の概要〉
2005年(期末)
2006年(期末)
シニアファンド
12,084,657円
14,087,449円
総資産
14,883,858円
16,186,915円
Ⅲ.2007年度役員選任の件
表4の各役員が承認された。
Ⅳ.2007年度活動計画
1.活動の基本
今年は半導体60年、半導体シニア協会10年目の節
目の年です。創立以来皆様方のご支援で発展を続け
てこられたことに厚く御礼申し上げます。現在の会
員数は個人会員が285名、賛助会員51社です。一時
は凋落の傾向があり危機感もつのりましたが、歯止
めがかかり漸増に向かっております。しかし、協会
を取り巻く環境の変化、行事内容に求められる質の
変化が徐々に起きております。
これらのことを踏まえ創立10周年を迎えるに当た
り新たに二つの委員会を設けます。第一はSSIS次の
10年に向けての体制、組織、運営等を検討答申する
コミッティ
『SSIS-2007ステアリングコミッティ
(仮称)』、
第二は『SSIS・10周年記念行事準備委員会』で 2月の
運営委員会以降正式にスタートいたします。
分科会活動もマンネリ化に陥らないよう努力し
半導体シニア協会のプレゼンスの向上に努めて参り
ます。
2.予算について
昨年に引続き堅実な予算を組みました。特に収入
面でも会員の大幅増は難しく、昨年実績に照らし現
[総資産]
実性のある値としました。経費の節減については今
2006年12月31日 単位:円
予算(A)
実算(B) (B)
(A)
/
率
94%
11,705,000
12,400,000
96%
2,495,000
2,600,000
94%
9,210,000
9,800,000
127%
3,552,000
2,800,000
97%
1,255,000
1,300,000
200%
1,800,000
900,000
34%
34,000
100,000
93%
463,000
500,000
333%
1,666,500
500,000
−
62,257
0
108%
16,985,757
15,700,000
3,800,000
600,000
800,000
1,100,000
1,000,000
300,000
2,800,000
50,000
50,000
450,000
1,200,000
300,000
900,000
500,000
500,000
300,000
300,000
9,950,000
3,240,000
280,000
1,710,000
1,450,000
0
260,000
0
460,000
60,000
5,750,000
15,700,000
5,001,772
754,921
852,904
1,092,364
2,170,148
131,435
2,596,503
66,606
86,100
428,400
1,108,881
199,013
909,868
288,171
168,209
222,825
0
9,967,467
3,186,636
242,700
1,485,003
1,402,345
0
82,658
0
379,310
75,282
5,368,931
15,336,398
0
1,649,359
444,990
1,204,369
0
12,084,657
12,084,657
12,084,744
2,002,828
123
14,087,449
14,883,858
(期首)
16,186,915
(期末)
132%
126%
107%
99%
217%
44%
93%
133%
172%
95%
92%
66%
101%
58%
34%
74%
100%
98%
87%
87%
97%
32%
82%
125%
93%
98%
うち2,000,000円は
前期繰越益より
年度も十分努力を続けて参ります。その結果 収入、
支出ともに15,200k¥(対前年度予算97%)の予算を編
成いたしました(表5)。
8
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
表4 2007年度 役員・委員
【会長】
川西 剛
TEKコンサルティング 代表
【副会長】
吉田 庄一郎 (株)ニコン 相談役
【諮問委員】(50音順)
牛尾 真太郎 沖電気工業(株)顧問
梅田 治彦
元:(株)小松製作所
大見 忠弘
東北大学 教授
大山 昌伸
元:(株)東芝
岡部 太郎
半導体理工学研究センター 客員
河崎 達夫
システムLSI技術学院 学院長
金原 和夫
(株)日立製作所 名誉顧問
小宮 啓義
元:(株)半導体先端テクノロジーズ
志村 幸雄
(株)工業調査会 代表取締役会長
【監事】
中村 信雄
和田 俊男
高橋 昌宏
棚橋 祐治
中原 紀
平林 庄司
牧野 力
牧本 次生
安福 眞民
元:ソニー(株)
石油資源開発(株)
代表執行役員
足利工業大学 客員研究員
三菱電機(株)顧問
新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長
テクノビジョンコンサルティング 代表
元:(株)富士通
(有)ナック コンサルティング 代表
ワダ・エルエスアイ・テクノロジーズ 代表
【運営委員】
委員長:梅田 治彦 元:(株)小松製作所
委員(50音順)
秋山 信之
元:コマツ電子金属(株)
荒木 洋一
(株)東芝半導体サービス&サポート
取締役
荒巻 和之
(有)セミコンブレーン 代表取締役
内海 忠
(株)加藤電器製作所 顧問
内田 雅人
(株)フェローテックシリコン 顧問
榎本 信能
(株)ハロラン・エレクトロニクス
代表取締役
遠藤 征士
元:日本電気(株)
岡田 隆
元:アネルバ(株)
小川 洋史
(株)フジキン 代表取締役
加藤 俊夫
サクセス インターナショナル(株)
代表取締役
鎌田 晨平
(株)クリーン・イー 代表取締役
河崎 達夫
システムLSI技術学院 学院長
木内 一秀
NTTエレクトロニクス(株) 顧問
坂本 典之
(株)ワイデーケー 代表取締役会長
島亨
(株)フューチャービジョン 代表取締役
鈴木 司郎
ジーケーエス事務所 代表
Richard Dyck ティーシーエスジャパン(株)
代表取締役
高橋 令幸
(株)SEN 相談役
高畑 幸一郎 (株)バンガードシステムズ 事務所長
田中 俊行
マイクロンジャパン(株)
インストラクター
谷 奈穂子
(株)セミコンダクタポータル
代表取締役専務
中原 紀
足利工業大学 客員研究員
中山 蕃
エー・ティー・イー・サービス(株)
監査役
野澤 滋為
日本DSPグループ(株)代表取締役
原田 宙幸
三菱商事(株)顧問
堀内 豊太郎 元:日本テキサス・インスツルメンツ(株)
麻殖生 健治 立命館大学 教授
松本 光由
(株)つくばセミテクノロジー 代表取締役
溝上 裕夫
ケイエルエー・テンコール(株)
シニアアドバイザー
三宅 隆一郎 (株)サンエス 顧問
村川 順之
リアライズAT(株)代表取締役
森山 武克
(株)フェローテック 顧問
山根 正煕
伯東(株)顧問
吉見 武夫
(株)オムニ研究所 代表取締役
【事務局長】 片野 弘之 元:(株)日立製作所
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
9
ワット訪問を実施。
3.主な活動計画
(1)年次総会:1回(1月30日)
07年度は春の工場見学会を4月にSSIS九州と共催
(2)諮問委員会:2回(1月30日、9月)
で計画。訪問先:SUMUCO TECHXIV㈱とソニーセ
(3)賛助会員説明会:1回(9月)
ミコンダクター九州㈱を予定。また、秋の海外半導
(4)特別講演会:2回(1月30日、9月)
体工場視察も昨年同様に計画中。
(5)運営委員会:11回(毎月第二木曜日 8月は休会)
(6)10周年記念行事準備委員会 および2007ステアリ
4.広報委員会
ングコミッティ:各5回
広報ではSSISプレゼンスの高揚、SSIS諸活動のIT
【委員会活動】
1.研修委員会
表5 2007年度(第10期)予算
昨年度は5回の研修会を実施。タイムリーなテーマ
の選定と内容の濃い講演と相まって参加者も大幅に
伸張。総会と賛助会員説明会ではそれぞれ㈱ルネサ
ステクノロジ・伊藤社長と半導体産業研究所・前口
所長に[我が国半導体産業の国際競争力]を主題に
特別講演をお願いし、大変好評をいただいた。
今年はトランジスタ発明60周年に当たるので総会
に菊池誠先生をお招きして特別講演を企画。3月は
2007年に始まる団塊世代問題で生涯現役社会論、4月
は半導体立国論を予定しており、昨年末に実施した
アンケート結果も参考に、半導体エレクトロニクス
業界における格調高い研修セミナーとしての地位確
立を目指していく。
2.編集委員会
06年度は機関誌「Encore」を5回(No.44∼No.48)
発行。満9年を経て累計で1,000頁を超えた。主な事
項としては「半導体事始」を新たなコラムとしてス
タートした。また、10年目を迎えるに当たりアンケ
ートを実施。その結果を編集に反映させていく。ま
た、懸案だったEncore誌の電子化が初号から全巻完
了し、ホームページ上での閲覧が可能となった。
07年度は「半導体事始」シリーズの充実に加え、
新たに「賛助会員紹介」シリーズをスタートし賛助
会員各位と協会との連携・意思疎通の向上を図る場
としてゆく。
3.文化活動委員会
06年度は春季工場見学会を4月にSSIS九州と共済
で実施。訪問先:日産自動車㈱九州工場(4/26、参
加31名)、広島エルピーダメモリ㈱(4/27、参加38名)。
一昨年は事情により中止した秋季海外工場視察は
10月にシンガポール地区半導体関連企業 4社(チャー
タード・セミコンダクター、SMCマニュファクチャ
単位:円
[収入の部]
2007年予算(a) 2006年実算(b) (a)
(b)
/
率
101%
11,705,000
11,800,000
1 会費収入
108%
2,495,000
2,700,000
個人会費
99%
9,210,000
9,100,000
賛助会費
82%
3,552,000
2,900,000
2 研修会収入
108%
463,000
500,000
総会
94%
265,000
250,000
賛助会員連絡会
106%
990,000
1,050,000
東京
56%
1,800,000
1,000,000
大阪
294%
34,000
100,000
九州
30%
1,666,500
500,000
3 寄付金他
−
62,257
0
4 雑収入
89%
16,985,757
15,200,000
5 収入合計
[支出の部]
80%
5,001,772
1 集会費
4,000,000
100%
852,904
総会
850,000
93%
754,921
賛助会連絡会費
700,000
96%
1,092,364
研修会費(東京)
1,050,000
55%
2,170,148
(大阪)
1,200,000
152%
131,435
(九州)
200,000
108%
2,596,503
2 ニュース発行費
2,800,000
75%
66,606
3 文化活動費
50,000
0%
86,100
4 ライフプラン発刊準備
0
117%
428,400
5 ホームページ維持費
500,000
99%
1,108,881
6 運営委員会費
1,100,000
100%
199,013
委員会会議費
200,000
99%
909,868
委員会交通費
900,000
139%
288,171
7 活動振興費
400,000
238%
168,209
8 人材交流プロジェクト
400,000
135%
222,825
9 通信費
300,000
−
10 新規活動計画
96%
9,967,467
11 活動費 計
9,550,000
102%
3,186,636
3,240,000
12 事務局員費
103%
242,700
250,000
13 交通費
115%
1,485,003
1,710,000
14 事務所維持費
103%
1,402,345
1,450,000
家賃(含水道光熱費)
254%
82,658
210,000
電話・FAX・通信費
−
0
50,000
その他経費
105%
379,310
400,000
15 消耗品費他
66%
75,282
50,000
16 雑費
105%
5,368,931
5,650,000
17 管理費 計
99%
15,336,398
15,200,000
18 支出合計
[収支差額]
19 収 支
0
1,649,359
20 雑損
444,990
21 収支再計
0
1,204,369
リング シンガポール ほか)と世界遺産アンコール
10
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
支援、会員への情報伝達支援をミッションの柱に据
て特別シンポジュウムをスタート。翌02年に秋季特
えスピーディー・タイムリーなサービスを心がけて
別セミナーを加え年2回の定例行事として定着。昨
いる。
年6月の特別シンポジュウムは参加136名、11月の秋季
特別セミナーは参加109名といずれも大盛況で、6年
06年度の主な活動成果としては関連団体HPリンク
集へのSSIS・HPリンクの追加(JEITA、DAFS、工業
の実績を積み上げてきた。本年も既に6月19日(火)
調査会、鹿児島県 ほか)。イベント関連サイトへの
の第7回SSIS特別シンポジュウム(SEMIと共催)が決
SSIS催事の掲載開始(ELIS Net)。セミコンダクター
定している。内容は座談会、基調講演、パネル討論
FPDワールド誌リレーエッセイ掲載(2006-4月号で
の三部構成で基調講演は昨年に引続きドイツ証券・
終了:連続24回・会員24名による執筆)。
武者陵司氏にお願いした。秋季特別セミナーも昨年
同様11月下旬に予定している。
07年度の重点支援活動として人材情報、研修会情
報、ライフプラン出版情報の提供。機関誌Encoreの
全巻公開掲載。HP英文版の検討等。
7.九州地区活動
昨年度は初めての試みとして地方自治体の主催す
る行事・シリコンシーベルト福岡にパネル展示で
5.人材情報活動
昨年来の広報活動の成果が徐々に浸透し、産業界
SSIS九州の活動状況を展示し、SSISプレゼンス向上
の人材不足と相まって求人情報は増加(登録11件 内
に貢献した。春季工場見学会を文化活動委員会と共
9件webに掲載)。一方個人会員の求職登録が少ない
催で行い40名近い参加を得て成功裏に終了。12月に
のが課題(登録5件 内4件web掲載)。11月に全会員
冬季研修会で講演「化合物半導体による太陽光発電」
を実施。
(個人)にアンケートを実施。求人・求職に対する意
本年度は4月の春季工場見学会が文化活動委員会
識を分析し、今後の活動に反映させていく。
07年度は人材登録基盤の拡充を最重点課題とし、
と共催で決定(訪問先:文化活動委員会に記載)。
団塊世代の個人会員への加入勧誘のために賛助会企
10月に秋季工場見学会・講演会を予定。12月には冬
業訪問、ホームページ・機関誌を活用した入会、人
季研修会を実施する予定。
材登録の呼びかけ、海外ネットワークとの連携を強
Ⅴ.2007度予算
化してゆく。
表5に示す予算が提案され承認された。
6.関西地区委員会
01年不況時にSEMIの協賛を得てSFJの一行事とし
棚橋 祐治、田辺 功、中原 紀、中村 信雄、野澤 滋為、
1
平林 庄司、福c 稔浩、福田 弘、藤井 昭弘、藤江 明
雄、星野 清、堀田 慎吉、堀内 重治、堀江 洋之、松
永 正久、三宅 隆一郎、向井 久和、吉田 庄一郎、和
田 俊男
ご寄付芳名(No.49所載報告以降2007年2月28日まで)
ご協力有難うございます。前回ご報告以降ご寄付
催物のお知らせ
をお寄せいただきましたのは以下の方々です。厚く
5月度研修会
御礼申し上げます(お名前は50音順、敬称略)。
1.日時:5月10日(木)17:00∼18:30
荒巻 和之、井口 正澄、石野 喜英、石破 利久、内
2.会場:全林野会館(東京・茗荷谷)
田 雅人、梅花 清志、漆原 健彦、大塚 英雄、岡田 隆、
岡見 宏道、越智 六郎、片野 弘之、加藤 重道、金子
3.講演:「ISSCC-2007からの報告」
第7回SSIS特別シンポジュウム
和夫、河崎 達夫、川西 剛、川端 章夫、川本 勝、木
1.日時:6月19日(火)9:45∼17:45
内 一秀、金原 和夫、栗林 茂樹、小久保 彰子、近藤
2.会場:グランキューブ大阪(大阪国際会議場)
明彦、坂本 雄三郎、崎谷 文雄、佐藤 晋三、高岡 元
3.プログラム:座談会/基調講演/パネル討論
章、b橋 令幸、高橋 昌宏、田中 俊行、田中 喜男、
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
11
詳細はURL:http://www.ssis.gr.jpをご覧下さい。
半 導 体
ことはじめ
電子交換機用半導体の開発
向井久和 会員(元NTT LSI研究所 所長)
1.時代の背景と電子交換機実用化
件を検討して認定試験方法の確立に結び付けている。
1960 年代は半導体にとって新しい時代の幕開けで
集積回路ケースの信頼性検討も徹底的に行い、当初
あったが、それは同時にコンピュータおよび通信シ
は DIP ケースを金属の密封形式とした。こうした諸
ステムにとっても変革の始まりであった。1964 年に
施策により 200FIT の信頼度を確認し、DEX 装置へ
IBM が集積回路を用いた第三世代コンピュータを発
の導入を決定している。なお、装置の現場導入後の
表し、通信ではベル研究所がトランジスタを用いた
稼動実績では 20FIT 以上の高信頼度のデータが得ら
電子式交換機 No.1 ESS を開発していた。電電公社電
れた。
気通信研究所(以下通研の略称を使用する)におい
作研究を行っていたが、新しい時代到来の予測から、
3.低エネルギー化の追求──制御飽和型
論理回路の創出
集積回路を用いた全電子自動交換機の実用化を推進
1965 年当時は、先行する米国の論理集積回路も多
することが 1966 年に正式に決まった。実用試作機
種多様で評価も定まらない状況であったので、更な
DEX-2(後の D10 自動交換機)である。DEX-2 は電磁
る進化も求めて電子交換機用の標準論理集積回路を
交換から電子交換に切り替わる交換方式としての変
開発するスタートを切った。試作製造を日本電気㈱
革への挑戦であったが、ハードウエアの要となる集
にお願いし、通研は回路形式と設計の検討を行った。
積回路に関しても、国内メーカも製造を開始したば
電子交換機の使用環境条件を考慮して雑音余裕度
ても、トランジスタを用いた電子交換機 DEX-1 の試
かりの揺籃期で大型装置での使用実績データはなく、
の大きい飽和型論理回路(TTLあるいはDTL)形式を
実用化に向けて本格的に注力する必要があった。
採ることとし、低エネルギー化を目標とした。当時
DEX-2 の構想の構築と平行して、1965 年から集積
は計算機シミュレーション技術が存在しなかったの
回路の開発の共同研究を日本電気㈱との間でスター
で、回路アイディアの検証や設計は、半田ごてを使
トしていた。筆者は回路設計を担当し電子交換機の
って単体部品で回路を組む所謂ブレッドボード実験
必要とする高性能と低消費電力、即ち低エネルギー
の手法で行った。
化を狙いとした。なお、電子交換機用部品では信頼
性が必須条件であり、初めに別グループが行った高
信頼度化の経緯に触れる。
2.集積回路技術の信頼性確立
信頼性が重視される電子交換機用部品では、20 年
の寿命の保証が要求された。本質的には高信頼度と
いわれるSi半導体ではあるが生まれてまだ日が浅く、
製造過程等での劣化要因は徹底的に排除する必要が
あり、通研では、メーカ製品と試作サンプルを使っ
て大量寿命試験や加速寿命試験などを実行した。パ
ープルプレーグによる配線の劣化、ホイスカー発生
による配線短絡等の現象の発見や、リード線のボン
ディング故障・表面劣化等の要因分析結果に基づく
改善措置を行うと共に、劣化要因を摘出する試験条
図1 制御飽和形DTLの回路例
12
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
アイディア検証の試作を繰り返す中で、出力イン
のを防ぐ技術としてトランジスタのコレクタをショ
バータ・トランジスタをオン時に浅い飽和に制御す
ットキーバリア・ダイオードでクランプする技術が
る着想を得、飽和を制御するフィードバック回路と
電総研(現産総研)の半導体研究室で研究されてお
負荷回路を急速に充放電するプッシュ・プル型出力
り、1968 年の ISSCC で筆者の CSL と電総研の垂井康
回路構成とを組み合わせた制御飽和型論理回路
夫室長のショットキークランプのトランジスタが偶
(CSL : Controlled Saturation Logic)の DTL(図 1)を
然並んで発表されることとなった。
1966秋に創出した。
4.低エネルギー化の追求による
高速バイポーラLSIの実現
制御飽和型を飽和型と比較すると、図 2 に実験例
を示すように遅延時間が短く、またそのばらつきも
小さく、かつ、スイッチング時の過渡的スパイク電流
1968 年に次のステップとして高性能 LSI の研究を
が大幅に低減する。この過渡電流低減は、消費電流
開始した。課題は高速論回路 ECL の消費電力低減で
低減と共に電源ノイズの発生を減らす効果がある 。
あった。LSI 内では雑音余裕度は小さくてよいこと
1)
CSL は電子交換機用標準論理回路に決定され、
を活用し、電源電圧を徹底的に減ずる検討の中で、
1968 年から電子交換機製造の 4 社との共同研究で 12
NTL(Non-Threshold-Logicと名づけた)のアイディアに
品種のファミリと標準仕様規格が定められた。
到達した(図 3 の(a))。同年中に 30 ゲート足らずの
TEG チップ(図4)による動作確認をしたあと、1969 年
なお、時を同じくしてトランジスタが飽和に入る
100 ゲート規模のマスタースライスLSIを日電、日立
で試作し、市販 ECL 集積回路に比較して 1 桁以上
の低エネルギー化を実証した。翌年から富士通を含
む3 社でミニコンレベルのLSI装置試作による動作確
認も行った。なお、1970 年 6 月 10 日電電公社から発
表があった翌日に一般紙各社の朝刊一面を賑わした
ものである。NTL は外国の記者から非論理的論理回
路と皮肉られたが、正確には分布閾値型回路と呼ぶ
べきであろう。
NTL では、各ゲートが 1 より少し大きい電圧利得
を有することで、入力雑音電圧を減衰させ、段数を
重ねることで 2 値の信号レベルに収斂させる 2)。回路
動作電源電圧1.1 V、信号振幅 400 mV、最も素子数の
少ない回路形式であり、その後のLSI用に低エネルギ
ー化された小信号振幅の ECL(図 3 の(b))に比較し
図2 飽和形と制御飽和形の特性比較例
図 3 LSI用高速・低電力論理回路の各種
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
13
図 4 NTT の動作確認用チップのパターン写真
ても消費電力約 1/2(内蔵電源電圧安定化回路込み
なく、これを使う装置設計者に如何に広く浸透させ
で)、遅延時間 1/2(負荷容量がある場合でも)の能力
るかが重要との判断で、この LSI では NTL ではなく、
を持つ。また、試作 LSI には、電源電圧安定化回路
ECL 形式を選択したものである。
(外部電源電圧変動、素子特性のウエハ間製造ばらつ
6.電子交換機メモリの半導体化──DRAM
技術の実用化
き、および温度変動への対応)内蔵や、ゲートアレ
ーLSI構成などの新技術を含ませた。
なお、前述の LSI 試作は、試作していただいたメ
1 k ビットDRAM が1970 年インテルからp チャネル
ーカでもバイポーラ LSI は始めての経験であり、2 層
MOS で発表され、1964 年当時フェアチャイルドにい
配線技術を立ち上げながらの試作であった。
た Gordon E. Moore(後に Robert N. Noyce と共にイン
テルを起こす)が提唱したムーアの法則に乗ったロー
5.電子交換機中央高速処理系装置用LSIの
開発── ECL LSIの低エネルギ化
ドマップが示された。以来 DRAM の開発競争が盛ん
になっている。次の4 k ビットDRAM ではテキサスイ
ンスツルメント社がn チャネル化を図りトラブルが多
DEX-3(D10中央高速処理系装置)用論理LSIの開
く苦労しているという情報が伝わっていた。
発を 1973 に開始した。電子交換機共同研究各社の技
術整備状況を踏まえ、装置要求性能 2 ns/ゲートを満
1973 ∼ 1975 年通研では電子交換機の主記憶装置を
たすため、当時国際標準であった ECL10K シリーズ
磁気ドラムから半導体メモリに切り替えるべく、メ
とコンパチブルな LSI で、且つ、実装条件を考慮し
ーカ 4社と共通仕様の 4 k ビット DRAM の共同研究を
た低電力化を実現することを目標とした。通研が回
開始した。高品質 n チャネル DRAM で米国勢を出し
路および LSI 構成を設計し、各社に試作をお願いし
抜こうとの想いもあり、通研は各社試作品の信頼度
て、新しい ECL LSI 回路構成を得た(図 3 の(c))。
を評価し、品質向上を図った。各社の努力により目
LSI 内部は、通常の ECL の半分である 400 mV の信号
標を達成している。これは 1975 年から始めた NTT の
振幅で且つ信号電位をグランド電位から約 200 mV ず
超 LSI 共同研究(当初目標 64KDRAM)の下地を作
らす回路構成で、電流スイッチのリファレンス電位
ったことにもなる。
を信号振幅800 mV の電流スイッチの場合と合わせる
ようにしたことが特徴で、LSI内部で3 mW/ゲートを
参考資料
得、また、外部の ECL 回路との接続の容易さを実現
1)H. Mukai, “Controlled Saturation as an Approach to
した 。
High-Speed Logic” ISSCC1968. P.162
3)
前述の CSL の場合、電子交換機にしか使われず、
2)向井“分布しきい値形論理回路”、信学論、
Vol.54-C No.6, p.466(1971).
その後国際的にデファクトスタンダードとなったテ
3)向井、他“マスタスライス形 ECL LSI の研究”
キサスインスツルメント社の TTL74 シリーズに置き
通研実報、26, No.4, p.1175(1977).
換わった経験から、単に回路の技術的評価だけでは
14
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
◆ SSIS 九州イベント 報告 ◆
荒巻 和之 会員
(SSIS九州担当委員)
SSIS 九州 研修会開催 報告
研修会開催趣旨
①CIGS系太陽電池の構造
CIGS 太陽電池モジュール
<Thin−film CIGS Solar Cell Module>
2006 年度から新たな活動として、会員相互の研鑽
を目的に研修会を開催することにした。
パターン3
Pattern 3
第1回目は14名の参加があり12 月10 日∼ 11 日に阿
パターン2
Pattern 2
(50μm)
蘇の研修施設「アソシエート」で開催した。
ZnO
研修テーマ
ZnO
(1.2μm)
Zn(O, S, OH)x
バッファ buffer
・化合物半導体による太陽光発電:
Zn(O, S, OH)x
バッファ buffer
(↓0.03mm)
CIGS
光吸収層
Light absorber
CIGS
光吸収層
Light absorber
相徳講師(産総研・太陽光発電センター・客員研究員)
・半導体シニアのインターネットによる遠隔教育:
(50μm)
“発電無効領域”
“no generation zone”
(1.2μm)
Mo
(100μm)
Mo(0.8μm)
荒巻会員(九州担当運営委員)
Mo
青板ガラス基板
Glass Substrate パターン1
Pattern 1
(30μm)
化合物半導体による太陽光発電
CIGS太陽電池モジュール
1.太陽光発電の動向
太陽電池は地球温暖化防止の視点から、クリーン
CIGS系太陽電池参入企業と製造方法
〈変換効率13%以上を達成している大面積高効率化グループ〉
なエネルギーとして日本のみならず、ドイツや北米
<量産性の高い製膜技術の適用>
をはじめ海外でも市場が拡大しています。主要原材
NREL
(米国)
デバイス構造
料の 1 つである多結晶 Si の需要逼迫が懸念される中、
ZSW GmbH/
Wuerth Solar GmbH
(ドイツ)
<R&D=小面積
セル>
さらなる薄型化、高効率化、低コスト化などの課題
基板
青板ガラス
裏面電極
スパッタ法 Mo
パターン1
に向け、各種の特徴を備えた太陽電池の開発・実用
p型_光吸収層
材料が違う
製膜法が違う
ドーパントが違う
ZnO:Al
MOCVD法
ZnO:B
メカニカルスクライビング法
<なし>
反射防止膜
上部電極(グリッド)
2.CIGS系太陽電池の構造
CIGS 太陽電池参入企業と製造方法
Si系との製造工程の違い
〈コスト削減ポテンシャルが高い〉
・製造工程が少ない=結晶系 Si太陽電池の 1/2 以下
・汎用製造技術を適用できる
・製造工程= 9 工程(製膜=4、集積化= 3、洗浄= 1、仕上げ= 1)
〈特徴〉
・高い変換効率を有している
CIGS は Ga 添加によって禁制帯幅を 1.04 eV から
CIS系薄膜太陽電池の製造工程_結晶系Si太陽電池との違い
結晶系Si太陽電池
1.68 eVまで変化できるため、禁制帯幅の制御やエネ
◆多結晶シリコン
(SOG-Si)不足
が懸念される状況
ルギーバンドプロファイリングの最適化が可能にな
Cz法
◆新技術開発の推進
1)薄型化=ウェハー厚さを
200 µm以下へ
2)
ワーヤーソーを使用しない
ウェハー製造技術開発
る。太陽電池の理想的な禁制帯幅 1.4 eV をもつワイ
ドギャップ CIGS 太陽電池の効率化が進めば 25 %∼
選別
CIS系薄膜太陽電池
太陽電池用Si(SOG-Si)
原料
単結晶Si
インゴット
鋳造法
基板洗浄#1
金属裏面電極層製膜
多結晶Si
インゴット
パターン1形成
p形CIS系光吸収層製膜
準備_ ウェハー作製 仕分け (スライシング)
洗浄/表面テキスチャー形成
高抵抗バッファ層製膜
パターン2形成
Pの拡散 pn接合形成
プラズマエッチング 表面と裏面の絶縁確保
製膜と焼き付け 反射防止膜製膜
30 %の変換効率が可能と考えられる。
n形窓層(透明導電膜)
製膜
パターン3形成
スクリーンプリントと 表面グリッド電極形成
焼き付け
裏面グリッド電極形成
・光劣化がなく高い信頼性
太陽電池セル完成
コスト削減ポテンシャルが高い
◆ 製造工程が少ない=
結晶系Si太陽電池の1/2以下
◆ 汎用製造技術を適用できる
◆ 製造工程=9工程:
製膜工程=4
集積化工程=3
洗浄工程=1
仕上げ工程=1
仕上げ
サーキット完成
出力測定
ストリングス形成
市場では長期信頼性が必須条件であるが、SSI 社は
◆「結晶系Si太陽電池モジュール」製造工程
3工程に分類できる:
1)
ウェハー製造工程、
2)太陽電池セル製造工程=投資対象、
3)
モジュール製造工程
NREL のフィールド信頼性サイトで通算 10 年間の屋
パッケージング
(封止工程)
共通工程
出力測定
絶縁試験
モジュール完成
◆ パッケージング
=結晶系Si太陽電池モジュールの技術を適用
(信頼性確保と部材の低コスト化)
外暴露試験を実施し、CIGS モジュールの長期信頼性
を実証している。
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
溶液成長法
Zn(O,S,OH)x
メカニカルスクライビング法
スパッタ法
パターン3
外石油メ−カの量産工場が稼動に入っています。
ム−セレン化合物薄膜を使用
⇒ Cdフリー化の流れ顕著
<なし>
n型_窓層(TCO)
非シリコン系化合物で銅−インジウム−ガリウ
積層プリカーサー膜
CdS
パターン2
域で熊本に自動車メ−カの量産工場建設、宮崎に海
スパッタ法 Cu-Ga合金/ln
+セレン化/硫化法
(CIGSS)
(CIGSS/CIGS)
(一段法)
溶液成長法
高抵抗バッファ層
陽電池の最新動向の講演を頂いた。化合物は九州地
製膜法が違う
組成が違う
同時蒸着法
(三段階法)
非シリコン系薄膜材料が注目されている、化合物太
昭和シェル石油
レーザー
<なし>
Cu, In, Ga, Se
化が活発になっています。次世代太陽電池として、
Shell Solar
Industries
(米国)
CIS系薄膜と結晶系Siの製造工程
15
おり、生産が軌道に乗れば「大きな工場の建設を視
ほかには…
野に入れた準備を進める」
(村山康夫社長)考えだ。
・優れた耐放射線特性
―FujiSankei Business i. 2006/12/29
・NA効果による変換効率と歩留り向上
・安全性
半導体シニアのインターネットによる遠隔教育
・低コスト化を実現できる「つよい」太陽電池
半導体シニアの技術・経験・ノウハウなどをどう
CIGS 太陽電池は、ワット単価 100 円という製造コス
活かすか。
トを実現可能な薄膜太陽電池のエース的存在である。
平成 18 年度から始まる次期 NEDO 太陽電池開発プロ
事例として半導体講座の遠隔教育を紹介する。本
システムは 2006 年春から弊社が運営している。
グラム(2006 ∼ 2009)でも最重要課題と位置づけて
半導体製造の国家技能検定の合格を目指す講座で
られている。
ある。コースは新卒入門、スキルアップ、国家試験
九州の
「化合物半導体太陽電池工場」
に関するアナウンス
と 3 コースがある。
URL : http://www.semiconbrain.com/elearning/
Honda、太陽電池新工場建設について地元と調印 2006年8 月1日(広報資料発表より抜粋)
1.E ラーニング+専門講師
新工場で量産する次世代型太陽電池は、銅−イン
のサポート
ジウム−ガリウム−セレン(CIGS)化合物を素材に
E ラーニング学習を半導
用いた薄膜を形成することにより、従来の結晶シリ
体シニアの専門講師がサ
コン系太陽電池と比較して製造過程での消費エネル
ポートする。講師への質
ギーを約半分に抑えて CO2 排出量を低減した、製造
問は E-mail と無料 IP 電話
時から環境に優しい太陽電池である。また、薄膜系
で行い、グループ学習が
太陽電池としては最高レベル、一般的な結晶シリコ
可能となっている。
ン系との比較でもほぼ同等レベルの光電変換効率を
2.教材を多面的に使用
シニア技術者 サポートの課題
実現している。新工場では、このCIGS化合物型太陽
カラフルなイラストの「半導体の製造工程」テキス
電池を年間27.5 MW規模(一般家庭約8 千世帯分に相
トを使用し、WEB へも同じものがアップしてあり、
当)で量産する計画である。
講師への質問が容易となっている。
・工場がフル稼働する08年度以降、年間60 億∼ 80
3.講師と受講者の居住地域差の解決
億円程度の売り上げを想定している。
シニアの技術者は大都市圏に在住しているケース
― FujiSankei Business i. 2006/12/29
が多い。半導体メーカの本社・開発拠点に関係して
場 所:本田技研工業㈱ 熊本製作所敷地内
いる。一方、半導体工場は都市から離れた場所に立
建屋面積:約12,000 平方メートル
地している。この物理的な距離をインターネットは
稼動予定: 2007年後半
解決してくれる。
昭和シェル石油は、2007 年
終わりに
1 月から宮崎県田野町で太
SSIS 九州は本年度 2 回の小規模研修会を行い、そ
陽電池の工場を稼働する。
の活動内容を会報に投稿する予定でした。7 月は開催
生産するのは CIS(シーア
せずに会員の紹介記事を投稿しました。
イエス)太陽電池。主な成
分である 3 元素の銅・イン
ジウム・セレンの英語表記
第1回目の研修会を12月に開催できました。現役・
若手会員が多いのが九州の特徴です。シニア会員や
太陽光の吸収率や屋根との一体
感に秀でた昭和シェル石油の太
陽電池
専門家などから勉強で
の頭文字から取った。
きる機会を多く作る事
厚さは主流を占める結晶シリコン系太陽電池の約
も会員サービスとして
100 分の 1 で、原料を大幅に節約できる。モジュール
重要と思われます。当
の色は黒系で、太陽光の吸収率や屋根との一体感に
日は相徳講師を囲んで
秀で、コスト競争力も強い。当初の年産規模は20 メガ
会員間の懇親を深め、
ワット。最大手、シャープの能力の約 30 分の 1 に過
有意義な阿蘇温泉の研
ぎないが、ドイツをはじめ海外への輸出も検討して
修会でした。
16
懇親会(講師を囲んで)
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
SSIS 2007年 3月度研修会
生涯現役社会の条件
清家 篤(慶應義塾大学 商学部 教授)
― 講演を聴講して
僕らは物を容器に収めようとした時、それが上手く
半導体産業新聞 松下晋司 ―
らば、定年退職制度は存在しないであろうし、この
入らないと、収納物をいじる。縦にしてみたり横に
ような仕組みの転換が求められることもない。
してみたり、あるいは折ったり曲げたり積み上げて
65歳以上の人を高齢者と定義するのである。1956
みたり。容器の材質が段ボールのように変形できる
年に国際連合が定義したらしい。当時、日本の全人
ものであるならば、容器の形状を変えることも解決
口の内、65歳以上の方は470万人ほどであったとい
法なのだが、どうもそこまで頭が回らないらしい。
う。なるほど、56年頃ならば、この判断は納得でき
いや、薄々気付いてはいるのだが、作業が難儀に
る。ところが今や日本は世界でも屈指の長寿国で、
なるので、解決法から除外する。そしてまた、無駄に
男性の平均寿命は78歳、女性は85歳である。65歳以
収納物をいじり始める。人間というものは、書き手
上の人は、実に3000万人に達する。さらに言えば、
も含めて、楽をすることしか考えないようである。
平均寿命を基準にした(65歳の)平均余命は、男性が
SSISが主催する3月度の研修会は、慶應義塾大
18年で女性が23年である。ちょうど、一人の人間が
学/商学部教授の清家篤氏が登場。「生涯現役社会
誕生からほぼ成人するまでの期間、高齢者として社
の条件」と題して講演を行った。
会生活を営むことになる。
配布資料の講演要旨を引用すると、日本は世界に
なんともはや、釈然としない、妙な話である。しか
類を見ない高齢化を経験しつつある。長寿化と少子
し、
これが現実、
世界の国連がそう定義したのだから。
化による構造的な変化を前提に、経済や社会の仕組
65歳を高齢者と呼ぶには無理があるが、国連の定義に
みを変えていかなければならない。
従うならば、日本は世界でも類を見ない高齢国である。
仕組みを変える方策の一つとして、働く意思と仕
2.経済発展が少子化社会を生んだ
事能力のある高齢者が、その能力を十分に発揮でき
高齢・少子化社会の到来は、真の経済発展に伴う
るような生涯現役社会の実現がある。定年退職制度
当然の結果であると清家氏は指摘する。
に代表される年齢や勤続などを基準としない、新た
かつての日本は貧しかった。サラリーマンよりも農
な雇用制度の擁立である。
業や自営業が主体で、子供は物心が付いた時にはすで
人間様を収納物に例えることははなはだ失礼なこ
に労働力であった。しかし、栄養は行き届かず、医療
とだが、我々が社会生活を営んでいく以上、現代社
体制も未成熟で、大人になるまで育たない子供も少
会・経済環境の仕組みという名の容器から逃れるこ
なくなかった。労働力として役立つまで育つ子供を持
とはできない。収納物が変化を重ね、もはや容器に
つために子供はたくさん産まなければならなかった。
収まらなくなってきたならば、重い腰を上げて容器
ところが、日本がサラリーマン社会となってくる
の形状を変える必要性が生まれてくる。
と、もう子供は必ず作らなければならないものでは
いたずらに収納物をいじる小手先の変革はもう通
なくなってくる。経済の発展に伴い、栄養や医療体
用しない。混乱を招くだけである。清家氏は言う、
制も満たされ始め、幼い頃に死んでしまう子供も激
今がそのチャンスだと。2007年問題こそが、雇用制
減したため、もうそんなにたくさん子供は産まなく
度の転換に着手する最大の契機だと。
てもよくなってきた。加えて、子供の価格が高騰し
高齢・少子化は経済発展の結果
てきたのである。子供の価格というのは二つの意味
があり、一つは養育費と教育費のアップである。こ
1.高齢者の定義とは
そもそも高齢者とは誰のことを言うのか。
れは生活に密着しており、実感される方も多いであ
労働意欲を喪失した人を高齢者と定義するのであ
ろう。もう一つは子供を育てることによる、女性の
生涯所得の喪失である。
れば、それはおかしい。労働意欲の喪失が高齢者な
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
17
の高度成長期に実社会に飛び込んだ。
日本をはじめ、韓国や台湾でもそうなのだが、伝
統的な家族社会が根付いている国では、経済の発展
あの時代、各企業は積極的に技術導入を図り、導
と、男女の役割分業という組み合わせが女性の喪失
入技術の実用化のために、企業内での教育も盛んに
所得をより大きなものにする。男性は仕事で、女性
行われた。そして教育は、個々の能力開発を加速度
は育児。大卒女性の生涯所得は約2億円を超える。
的に推し進めた。そして日本がオイルショックから
最初の10年くらい働いて家庭に入ると、そこまでで
いち早く抜け出し、世界のトップに立った70年代後
稼げるのはせいぜい 5000万円くらいだから女性は
半から80年代に彼らは企業の中堅として活躍した。
1億5000万円もの生涯所得を喪失してしまう。パー
その当時の日本経済の輝きは、団塊の世代の方々の
トで働き続けても、時給は6割程度で、ボーナスや
働きの結果でもある。それほど彼らは光り輝いてい
退職金も無いから、やはり生涯所得は激減する。養
た。定年を控えた今でも彼らは人材の宝庫であり、
育費や教育費という直接費用と重ね合わせると、子
高い就労意欲を維持しているのである。
供の価格は高騰している。
2.中小/地方企業は高齢者の活用に動く
大企業はその図体の大きさから動きはのろいが、
3.日本の逆ピラミッド構図は今世紀半ばにも
それでもまだ、日本はさらなる経済発展を求める。
小回りの効く中小企業や地方の有力企業は、すでに
高齢者の雇用に向けて積極的に動き始めている。
もはや長寿・少子化に歯止めを掛けることはできな
い。人口の水準は現在の1億2700万人が今世紀半ば
例えば、工場の床を改造してバリアフリーにする。若
に1億人を割ったあとは急減し今世紀末には現在の
い人を一から訓練するコストよりも、環境改善にコス
半分くらいになる。
トをかけて高齢熟練者の能力を活用できる方が安い、
しかし今世紀半ばまでは緩慢な減少であり、より
と判断した経営者。これは高齢者の高いスキルに注目
深刻なのは、人口構造の変化だ。ピラミッド型の人
し、即戦力を重視した考え方である。設備投資の減価
口構造は刻々とその形を変えており、今はいびつな
償却を早めたい別の経営者は、若年者に休日出勤さ
提灯形になっている。この提灯型はやがて逆ピラミ
せるのではなく、土曜と日曜限定で高齢者を採用し
ッド型に近くなっていく。こうした人口構造を元に
た。これで設備はフル稼働となり投資回収も進む。
ピラミッド型に戻すことはできず、これは非可逆的
能力武装とその適正価格
な構造変化と覚悟しなければならない。
日本はやがて逆ピラミッド型の人口構造の社会に
2007年問題を最大の契機に
なる。一方、企業競争はさらに厳しくなり、企業の
長期雇用はさらに難しくなる。ということは、他所
1.就労意欲もスキルも高い団塊の世代
逆ピラミッド型の人口構造となるのが日本にとって、
の会社でも役に立つ能力を持つことが重要になると
いうことだ。
避けられないものならば、それに合わせて雇用制度
を変えればよい、というのが清家氏の提案である。
その時になって右往左往しても遅い。団塊の世代
まず対象となるのが団塊の世代の方々。2007年問題
が育まれた社会(会社)背景と、あなたが育まれた
を問題として扱うのではなく、最大の契機として実
社会(会社)背景とでは、その景色はまったく別の
践に移すべきと示唆する。年金制度、雇用、そして
ものであったはず。あなたが高齢者雇用に臨んだ時、
ビジネス社会を総合的に見た時、「働く意思のある
おそらく企業が評価する目は、出身会社などの履歴
高齢者」の現役期間を延ばすのが最善の策である。
ではなく、実績重視の能力を査定することになろう。
それは職業人生の長期化により、個々の持つ能力の
あえて「働く意思のある高齢者」と記したが、こ
市場性と価値が重要視されることを意味する。
れは大変、重要なことである。就労意欲のない高齢
者が大多数を占めていれば、清家氏の提案も空論に
「ぜひ、能力武装を」と清家氏は言う。いつでも
終わる。幸いなことに、団塊の世代の方々は就労意
転職に踏み切れるだけの、市場性ある能力を身に付
欲満々で、統計的にも世界で飛び抜けてその比率が
けること。能力開発のための経費は、身銭を切るぐ
高く、実に70%にも達する。それだけではない。
らいの心構えで挑まなくてはならない。その能力こ
個々の持つスキルも高いことが、清家案実現の可能
そが、高齢化社会を生き抜く武器になるのだから。
性を裏打ちする支柱となっている。
今後の日本のビジネス社会において、例え高齢者で
あっても、個々の能力に対して企業側が適正価格で
団塊の世代の方々のスキルが高いのには理由があ
ペイするかどうか、それが最大の課題として残る。
る。就職時が60年代から70年初めにかけてで、日本
18
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
カーブアウトによる新技術の事業化
㈱テクノロジー・アライアンス・
インベストメント
代表取締役社長 吉澤 正充
当社テクノロジー・アライアンス・インベストメ
なく、複数企業のシナジー効果のある事業が切り出
ント(TAI)は、2004 年 10 月に、電子・ハイテク産業
され、グローバルトップ企業として成長していくケー
の競争力強化に資する日本初のカーブアウト専用フ
スが次々と出てくるのが望ましい。イノベーティブ
ァンド(イノベーション・カーブアウトファンド)
な技術をコアとしたグローバルトップを狙うアグレ
運営会社として、三菱商事と日本政策投資銀行によ
ッシブな事業再編、それが日本経済全体に大きな影
り創設されている。TAI は、カーブアウトという手法
響を与え、骨太の新産業創造を促進することになる。
による事業化にフォーカスし、必要なリスクマネー
ピーター・ F ・ドラッカーは、著書「ネクスト・
ソサエティ」の中で、こう述べている。
を供給し、且つ、事業化で求められる様々な機能を
「もはや、いかなる産業・企業にも独自の技術とい
提供している。
うものがありえなくなり、産業として必要な知識が、
カーブアウトとは、自社のリソースの補完や、多
様なコラボレーションが可能となるオープンイノベ
全く異質の技術から生まれる様になった。」「事業の
ーションを促進し、有望な技術の事業化を加速する
発展は、企業の内部からではなく、異質の組織間の
事業化手法である。
提携という、50 年前には考えられなかった事が当た
り前になっている。」
現在、TAI には、電子・ハイテク関連企業から
電子・ハイテク産業における技術・ノウハウは、
数々の事業化案件が持ち込まれているが、事業化に
おけるボトルネックとして、①一社の技術だけでは
以前は純ハードウェア的なものが中心であり、電機
製品化までたどり着けない、②一社で事業化を行っ
メーカー一社の内部で完結可能であったと言えよう。
ても十分な売上・利益が見込めない、③技術のアプ
しかし、今日では一製品における構成技術要素は格
リケーションが見出せない(自社の商流とは異なり、
段に増加し、特殊な機能を有する原材料からハード
市場ニーズが十分に汲み取れない)
、といった点が共
ウェアに搭載されるソフトウェア、外部との通信技
通するようである。
術など、一社ではとても対応できない領域にまで進
化してしまった。
ハーバード大学の C ・クリステンセン教授は、著
書「イノベーションのジレンマ」の中で、
「過去の成
TAIは、パートナーであるテクノロジー・アライア
功体験を断ち切り、新たなイノベーションや市場を
ンス・グループ社と共に、技術の評価、ビジネスモ
切り開くためには、既存企業から切り離された自立
デルの検討、事業戦略の立案・実行等初期段階から
的な小さな組織を作り、既存組織の価値判断を持ち
の支援や、事業インキュベーションの支援、拡大戦
込まないことが大切である」と指摘している。この
略策定に至るまで、バリューチェーン全体を俯瞰し
点から、カーブアウトは、企業の中にあるイノベー
つつ、単なるリスクマネーの提供に留まらず、細か
ションのジレンマを打ち破る方法の一つといえよう。
なソリューションの提供も行っている。
カーブアウトのメリットとしては、①革新的技術
電子・ハイテク産業の研究開発費は年間約四兆円
の事業化や変化する市場ニーズへの対応が容易であ
にものぼる。しかしながら、このうち四分の三が事
ること、②企業グループ外への積極的販売など自由
業化されず、大半が社内に眠っていると言われてい
な経営が確保されること、③サブコア部門の人材や
る。製造業、特に大手電機メーカーの停滞、低い利
知財を活用できること、④大企業の組織に縛られが
益率等がいわれて久しいが、大企業の社内に眠って
ちな技術者にやりがいとインセンティブを与えられ
いる研究開発のシーズを顕在化し、各社に分散して
ること、⑤複数企業の切り出し・アライアンスによ
いるリソースを集約し事業化できれば(事業再編と
りグローバルトップが狙えること、等がある。
いうほどの大規模なものではなくとも)、新技術・新
産業で需要を創造できると信じている。
理想的には、一企業だけのカーブアウトだけでは
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
19
たわ
2
ごと
み みず の 戯言
新入会員(2007.1∼2007.4.10)
個人会員
平田秀昭
永原康運
色紙啓樹
内山雅博
水上佳也
石毛敏雄
吉澤六郎
小峰 尚
倉橋健一
編集委員になって、初めて本50号を担当しました。
昭南ハイテックス㈱
㈱Bestソリューションズ
㈱真幸コーポレーション
賛助会員[SMC ㈱]より編入
㈱フォトニクス
ティアイコミュニケーションズ
プロモス・テクノロジー・ジャパン
㈱ポトマックアソシエイツ
㈱ヒューマンウェイブ
(入会順)
ENCOREの編集ノウハウを知る間も無く、ある事情
から急遽担当になったのですが、60歳を過ぎ、あら
ためて新入社員の気持ちが解ったような気がしてい
ます。と言いますのは、ENCOREの編集作業を進め
るための常識とか基本ルールみたいなものがあると
思いますが、小生にとっては手探り状態でした。そ
こは年の功で図々しくこなしてきました。しかし今
まさに新入社員にとっては苦労の真っ盛りだろうと
思う。親切に指導しているつもりでも先輩にとって
は常識、当たり前だと思っていることが伝わってい
新会員の一言
なくて新人にとっては未知の体験ってことが多いの
吉澤 六朗 会員(プロモス・テクノロジー・ジャパン)
ではないでしょうか。
そんな状態で担当した編集作業の中で、今回一番
皆様こんにちは。私自身の、人・情報のネットワ
ークを広げたいと思い、入会させていただきました。
苦労したのが菊池先生の講演紹介でした。
先生からの原稿は無く、講演録音からの原稿起し
よろしくお願い致します。
をして内容を掲載したのですが、話し言葉を文章に
小峰 尚 会員(㈱ポトマックアソシエイツ)
クライアントの依頼により、プロフェッショナル
仕上げることの難しさに加えて、技術的内容を正し
な人財をサーチするコンサルティング会社の小峰 尚
く伝え、先生の意図を表現するのは想像以上に大変
です。
でした。4月に発行するENCOREは総会報告が中心
内山 雅博 会員(元SMC㈱取締役)
で楽だと聞いて担当を引き受けたのですが、さにあ
らずでした。
賛助会員のSMC㈱を引退したのを機に個人会員に
入会しました。今迄同様行事等でお世話になります。
それでも、原稿チェック作業でENCORE掲載記事
一字一句全てを読んだのは初めてだったと思いま
よろしくお願い致します。
す。結構いいことが書いてありますよね。反省。
(編集担当 内海 忠)
会員訃報
森山 武克 様[個人会員:元㈱フェローテック顧問、
会員現況(4月10日現在)
元ローツェ㈱監査役]
昨年初冬より体調をくずされ、今春から療養に専
個人277名、賛助50団体
念しておられましたが2007年4月11日肺癌にて逝去
SSIS News Letter "ENCORE"
されました。享年71歳。当協会設立初期の段階から
運営委員として運営に深く関与され、広い人脈を活
かし協会の基盤拡充に貢献されました。特に2001年
から関西を会場にスタートしたSSIS特別シンポジュ
ウムと秋季特別セミナーは故人の大きな足跡です。
ことし6月19日の7回目の特別シンポジュウムを目前
にした突然のご訃報は残念の極みです。謹んでご冥
福をお祈りいたします。
20
No.50
発行日:2007年4月27日
発行者:SSIS 半導体シニア協会
会長 川西 剛
本号担当編集委員 内海 忠
〒160-0022 東京都新宿区新宿5-14-3
有恒ビル4F
TEL:03-5366-2488,FAX:03-5366-2487
URL
http://www.ssis.gr.jp
E-mail:[email protected]
半導体シニア協会ニューズレターNo.50(’
07年4月)
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