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別紙資料 - アイ・アール債権回収

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別紙資料 - アイ・アール債権回収
Structured Finance
アセット・バックト/
コマーシャルモーゲージ・
スペシャルサービサー
日本
サービサーレポート
概要
格付
アセット・バックト
スペシャルサービサー
アイ・アール債権回収株式会社
ABSS2+(JPN)*
コマーシャルモーゲージ
スペシャルサービサー
CSS2(JPN)*
*日本のサービサーについての格付であること
を示す
アナリスト
東京
上野 光宏
03-3288-2605
[email protected]
榊原 みどり
03-3288-2670
[email protected]
フィッチ・レーティングス(フィッチ)は、アイ・アール債権回収株式会社(IR)の
アセット・バックト・スペシャルサービサー格付を「ABSS2+(JPN)」に引き上げ
るとともに、コマーシャルモーゲージ・スペシャルサービサー格付を「CSS2
(JPN)」に据え置いた。本格付は、IR の親会社アコム株式会社(アコム、「A-」/
安定的/「F1」)の一貫した支援体制、整備された IR の内部統制およびコンプライ
アンス体制等の強みに加えて、無担保小口債権の回収実績およびポートフォリオ内
容の改善などを反映している。
IR は、厳しい事業環境の中で、特に、資産規模適正化および財務の改善を行い、一
方で、収益力を強化するため、アコムからの安定した支援を受けながら業務および
ポートフォリオの集中的な見直しを行った。無担保小口債権の分野においては回収
手法を改善するなどにより、回収実績が向上した。また、担保付大口債権について
も集中的に回収を進め、ポートフォリオ内容が改善した。IR は、引き続きコンプラ
イアンス態勢の強化を進めている。
工藤 仁章
03-3288-2630
[email protected]
IR は 2001 年 6 月に法務省の許可を得て営業を開始した。2009 年 3 月末時点におけ
る取扱債権金額(現在残高、残元本ベース)は約 3 兆 6 千億円、件数で約 53 万件を
超えている。
関連レポート
サービサー格付は、フィッチのレポート「日本のサービサー格付基準(2009 年 9 月
4 日)」に基づき実施されている。このレポートはフィッチのウェブサイトで公開さ
れている(日本語:www.fitchratings.co.jp、英語: www.fitchratings.com)。
主に適用された格付基準レポート
・日本のサービサー格付基準(2009 年 9 月)
その他レポート
・ストラクチャード・ファイナンス・サービ
サーの包括格付基準(2009 年 9 月)
強み

親会社からの継続的サポート

整備された内部統制・コンプライアンス態勢

無担保小口債権の安定した回収実績およびポートフォリオ内容の改善
課題

厳しい金融環境下での利益体質の維持・強化

更なる回収効率の向上
課題を緩和する要因

バランスの取れたポートフォリオを目指して、小口無担保債権の回収手法の改善
およびインフラの整備、経費削減、受託業務の見直しなどを進めており、利益体
質への改善が進みつつある。

サービシング関連のシステム開発強化、回収担当部署の人員の増員および法的手
続を含む回収手法の改善・強化を行っている。
www.fitchratings.com / www.fitchratings.co.jp
28 April 2010
Structured Finance
会社概要
IR は、2000 年 6 月に設立され、国内消費者金融大手のアコムの資本参加を得た後、
2001 年 6 月に法務省の許可を得て営業を開始した。その後、アコムは、2008 年 2 月
に IR を 100%出資子会社とした。アコムは IR に対して多数の人材の供給、安定的な
資金供給、内部統制・コンプライアンス管理のサポートなど多面的な関係を築いて
おり、アコムの IR への支援体制は明確である。また、IR はアコムグループの一員と
してコンプライアンス、内部統制の強化を図るなど、アコムと IR は緊密な関係を築
いている。なお、アコムは 2008 年 12 月に株式会社三菱 UFJ フィナンシャル・グ
ループの連結対象子会社となった。
IR の経営陣に大きな変動はなく、親会社および関連業界における経験が豊富である。
また、サービシング部門の上級管理職はアコムからの出向者も多く、平均業界経験
年数が 20 年を超えており、安定している。
IR は、2008 年 4 月から、コンプライアンスの徹底、収益力の強化、資産規模の適正
化および財務の改善を方針として業務の見直しを進めてきた。特に、買取債権ポー
トフォリオにおける担保不動産の価格下落リスクを低減するため、新規買取を慎重
に進めたほか、既存の担保付債権の早期回収および担保評価の見直しにより、適切
な償却を行った。この結果、ポートフォリオ内容が改善し、2009 年 3 月末における
不動産担保付債権の残高は、対前期比 60%程度となった。償却を進めたことにより、
2009 年 3 月期決算は大幅な減益決算となったが、借入金の減少、自己資本比率の向
上増加など財務内容は改善している。なお、IR は、方針として間接引当処理に代え
て部分直接償却を行っている。
一方で、IR は、小口無担保債権については、親会社アコムよりの債権買取を増加さ
せた。後述する回収手法の改善にも注力した結果、IR のこの分野における回収実績
は向上している。IR は引き続き回収ノウハウを強化するとともに、更なる効率化を
目指して、システム対応も強化している。また、受託業務についても、採算性・効
率性を重視しながら、案件受託に取り組んでいる。
また、IR は、2009 年 9 月、回収力の強化・効率化の観点から大阪支店を廃し業務を
本社に統合した。関西地区の顧客対応およびサービシングは本社からカバーするこ
ととした。
累計ベースでの IR の取扱債権の状況は下表の通りである。なお、2009 年 3 月現在 IR
の取扱債権の残高は、小口無担保債権中心に、約 3 兆 6,288 億円(残元本ベース)、
件数では約 533,000 件に達している。IR は 550 を上回る全国の金融機関や金融事業
者などと取引関係を構築しており、サービサーとして安定した取引基盤を有してい
る。
取扱債権の状況 (設立時からの累計)
2008 年 3 月末迄
(残元本ベース、単位:百万円)
自社買取債権
受託債権
合計
2009 年 3 月末迄
件数
金額
件数
金額
428,051
360,570
788,621
3,913,017
1,212,422
5,125,439
508,570
380,817
889,387
4,278,068
1,218,962
5,497,030
出所:アイ・アール債権回収株式会社
IR は、2010 年 3 月期も、前期に引き続いて経営方針としてコンプライアンスおよび
内部統制の強化、採算性を重視した事業の見直し、収益力・回収力の強化を掲げて
いる。
アイ・アール債権回収株式会社
2010 年 4 月
2
Structured Finance
アイ・アール債権回収株式会社 組織図 (2009年10月1日)
株主総会
取締役会
監査役会
コンプライアンス委員会
監査役
代表取締役社長
営業部
法人サービシング第1部
法人サービシング第2部
リテールサービシング部
コンタクトセンター
福岡支店
業務管理部
審査部
経営管理部
総務部
法務・コンプライアンス部
監査部
出所:アイ・アール債権回収株式会社
フィッチは、IR が進めてきたリスク管理の強化および効率化の推進が一定の成果を
上げ、リスク資産の削減および回収力の強化が図られつつあることを認識しており、
引き続き、回収力および収益性の動向に注目していく。
財務状況
IR の 2009 年 3 月期の売上高は、前年比約 4%減少し 16,473 百万円となり、経常利益
は 95%減の 25 百万円となった。これは、主にポートフォリオの集中的な見直しに基
づいて資産の圧縮および厳格な債権償却を行い、財務内容の強化を進めたことによ
るものである。
2009 年 3 月末時点での IR の総資産は前年比 28%減少し 24,624 百万円となった。そ
のうち、買取債権残高は担保付債権の減少を反映して 20,997 百万円となり、前年比
32%の減少となった。また、これに伴い借入金残高も減少し、前年比約 92 億円減の
21,782 百万円となり、借入比率も前年比で低下した。IR の資金調達は、殆どを親会
社からの借入によっており、安定している。IR としては引き続き簿価が一定額を上
回る大口の不動産担保付債権の圧縮を進め、借入金および支払利息の削減により、
財務内容の更なる改善を進める方針である。
アイ・アール債権回収株式会社
2010 年 4 月
3
Structured Finance
従業員
IR の社員総数は、2009 年 10 月において 286 名で、その内訳は役員 13 名(うち非常
勤 4 名)、正社員および準社員 232 名、臨時社員その他が 41 名であり、前年とほぼ
同じ規模となっている。拠点別では東京 236 名、福岡 50 名となっている。
IR では、経営計画および人員計画に基づき、親会社アコムから専門性の高い人材を
出向などにより受入れている。2009 年には、アコムより 5 名のシステム要員および
コンプライアンスなどの専門知識を有する中堅社員の受け入れを行った。
IR の研修プログラムは、総務部が主管となり年次計画に基づいて継続的に実施され、
職場内実務研修(OJT)と相互補完的に社員の能力アップが図られている。全社員を
対象とする必須研修のほか、臨時社員・派遣社員を除く社員を対象とするテーマ別
研修、および主に管理職を対象とする階層別研修により構成されており、内容的に
は、コンプライアンスの基礎から、実務対応を主体とした法務研修まで幅広い。具
体的には、臨時・派遣社員を含む全社員を対象とするコンプライアンス研修および
個人情報保護研修のほか、サービシング各部の社員を対象に、きめ細かいカウンセ
リング能力を目的としたカウンセリング研修、管理職を対象に、評価者訓練研修お
よびチームリーダー研修等が実施され、研修プログラムは充実している。
IR の社員は関連業界の経験年数も長く、離職率は低く安定している。フィッチでは、
同社が引き続き充実した研修などにより、人材活性化を進め、さらに、社員の質を
高めていくことを期待している。
内部管理
IR は 2007 年 12 月にアコムグループ倫理綱領を自社においても採択し、アコムの
100%子会社としてさらにコンプライアンスの強化に努めている。
IR の取締役弁護士は、2009 年 10 月より、法務・コンプライアンス部の担当役員に就
任し、コンプライアンス推進活動、サービシング部門の適法性の確保、法務リスク
の減少に携わり、コンプライアンスの要として活躍している。具体的には、特定金
銭債権判定状況のチェックのほか、サービシング関連法務相談への従事、コンプラ
イアンス委員会、経営会議、取締役会への出席などにより、業務に対する関与度は
高い。特に、コンプライアンス委員会(月次で開催)では、委員長として、主にク
レームや事務事故の発生状況および再発防止策、特定金銭債権判定および回収・連
絡行為に関して通話や交渉記録のチェックを行うモニタリングの結果報告など、コ
ンプライアンスに関するさまざまな活動状況の周知を各部室長および取締役に対し
て実施し、コンプライアインス態勢の維持に努めている。また、IR では情報セキュ
リティ事故防止のため、2009 年 10 月にセキュリティ事故防止委員会を設置したが、
その委員長として、セキュリティ管理強化に向けた積極的な推進を行っている。
内部監査業務は監査部が担当しており、3 名体制で運営されている。定例監査が、監
査基本計画書に基づいて全部署について少なくとも年 1 回行われている。リスクア
プローチに基づいて行われるが、サービサー法に基づく項目はすべてカバーされて
いる。すべての監査結果は、指摘事項に対する是正の為の対応措置も含めて、「監
査結果報告書」として被監査部署、担当役員、社長、会長に報告される。加えて、
全部署を対象に個人情報保護にかかる監査を年に 1 回行っている。
そのほか、全部署は自主点検を年 2 回実施しており、結果はコンプライアンス委員
会に報告されるとともに、監査部の内部監査に反映される。また、法務・コンプラ
イアンス部は法務省検査の指摘事項に対して改善事項の定期的な確認、該当部への
指導を継続的に行っている。
IR の規程・手続・マニュアル類は、社内業務全般を概ね網羅している。また、その
アイ・アール債権回収株式会社
2010 年 4 月
4
Structured Finance
内容は業務フローの記載もあり、詳細で分かりやすい。全従業員はオンラインで、
各種規程類にアクセスすることが出来る。新規制定、改廃については主管部署が必
要に応じて行うが、業務管理部が管理・指導を行う。変更が生じた場合は、通達が
出され、必要に応じて各部署が研修を実施する。2009 年中には、「情報システム管
理規程」を新規に制定するとともに、アコムグループの倫理綱領および行動基準に
おいて規定されていたコンプライアンス上重要な事項について、「反社会勢力との
取引防止規程」および「インサイダー取引防止規程」を制定し、社内規程として明
確化した。
外部監査としては、IR は前回格付レビュー以降、監査法人による定例の財務諸表監
査および親会社アコムによる監査を受けた。アコムによる監査は、親会社として IR
の内部統制の状況、内部監査の有効性およびコンプライアンス態勢の状況に焦点を
絞ったものである。監査結果は、IR の経営陣にも報告され、内部統制の強化、コン
プライアンスの徹底に活かされている。また、2009 年 6 月には、プライバシーマー
クの 2 回目の更新も行われた。なお、法務省による立入検査は 2007 年 8 月に実施さ
れて以降、本レビュー時点においては、実施されていない。
IR は全社を挙げてコンプライアンスおよびリスク管理の強化を推進している。2009
年には「リスク管理規程」に基づき、リスクの洗出しおよび重点取組リスクの選定
を行い「リスク管理計画」を策定した。法務・コンプライアンス部によるコンプライ
アンスの一括管理体制のほか、各種委員会の実施や規程類の整備により包括的なリ
スク管理体制も整いつつある。加えて、監査部による内部監査、業務管理部による
自主点検などによる業務指導もあり、IR の内部管理態勢の整備は進捗していると、
フィッチはみている。
システム
IR は引き続き債権管理システムとして購入・カスタマイズした Total Collection
System(TCS)を使用している。カスタマイズを進めてきた結果、受託通知書・譲受通
知書・請求書等 25 種類以上の文書作成や債権管理台帳・入金一覧表・イベント一覧
表など 10 種類以上の管理帳票・法務文書の自動作成が可能となっている。
2009 年 6 月にシステム担当部署である業務管理部業務管理チームの人員を一気に 6
名増員(うち 5 名は親会社アコムのシステム部門から出向)し 8 名とした。これは、
内部統制やシステム・セキュリティについての管理強化の要請に対応し、同時に効
率化・自動化を推進するため、システム開発体制を強化したものである。
IR は、2009 年 4 月以降、順次 TCS の改善やシステム・セキュリティの強化など、シ
ステム機能の改善に取り組んできた。今般、システム開発体制を強化し、開発中の
案件を早期に完了し、また 2010 年 3 月期の開発案件として新たにサービシング関連
システムの開発に集中的な取組みを開始している。いずれも、2010 年度上期までに
は開発終了の見込である。
TCS サーバーのディスク容量の管理は、外部システム業者との保守契約に基づき、年
4 回、確認され報告を受ける。一定の閾値を超えると増設を検討することとしている。
また、その他のサーバにおいても、必要に応じて監視が行われ、適切な管理がなさ
れている。
IR は、大規模災害、システム障害、情報漏洩などの事象の発生により、事業の中断
を余儀なくされた場合に備え、2007 年 11 月に「事業継続管理規程」および「事業継
続計画細則」を制定した。また、大規模災害対応を「大規模災害マニュアル」、シ
ステム障害対応を「コンティンジェンシープラン・マニュアル」として整備済みで
ある。IR では、防災訓練を毎年実施しているほか、社員向けの小冊子の配布および
緊急連絡通報先一覧の作成を行った。
アイ・アール債権回収株式会社
2010 年 4 月
5
Structured Finance
また、データのバックアップについては、日々フルバックアップを行いテープを本
社に保管するほか、福岡支店に設置したサーバにデータ伝送を行っている。システ
ムの復旧テストは「復旧手順書」に基づき毎年行っており、直近では、2009 年 1 月に
福岡支店にあるバックアップサーバーにおいて行われた。特に大きな課題は確認さ
れていない。
「コンプライアンス・内部統制の強化・確立」や「収益力・回収力の強化」などの経
営方針に沿って、IR は、早期にサービシング機能の強化を図るべくシステム開発を
進めている。フィッチは、IR のシステム対応の進捗とそれがもたらすサービシング
業務への影響につき見守っていく。
サービシング
2009 年 9 月の大阪支店統合に伴い、IR の本社サービシング部門の要員は増加した。
2009 年 10 月現在のサービシング部門の要員体制は下表の通りとなっている。
サービシング部門要員体制 (正、準社員計、2009 年 10 月 1 日現在)
中心取扱業務
法人サービシング第 1 部
担保付、無担保、住宅ローン、受託・買取
法人サービシング第 2 部
大口担保付、買取
リテールサービシング部
福岡支店(営業チーム除く)
業務管理部
合計
小口個人、受託・買取
小口個人、受託・買取
サービシング事務
正、準社員数(人)
41
10
66
34
21
172
出所:アイ・アール債権回収株式会社
債権管理
債権管理事務のうち、新規債権のセットアップ、譲渡通知の作成および資金管理(入
金)については業務管理部が担当している。
入出金管理事務の概要は、2008 年 11 月に行った格付レビュー(前回レビュー)時か
ら大きな変更はない。振込による入金情報は、専用のソフトウェアを使用して速や
かに入手し、システム上の入金情報と照合の上、TCS に登録される。IR は、一日あた
り、約 1,000 件の入金処理を行っているが、たとえば、2009 年 4 月からの 6 ヶ月間
を見ると、月間の平均総処理件数約 23,000 件のうち一時的な入金保留扱いの発生は
約 200 件(0.9%)にとどまっている。
内容不明で保留となった入金については、日次で TCS から報告書が自動的に出力さ
れ、それに基づいて業務管理部が入金内容を特定するための調査(銀行への照会)
を行うこととなっている。殆どは、短期間のうちに判明し処理が完了する。
債権受入時の特定金銭債権性の判定について、IR は判定における業務フローを留意
点とともに図示した「特定金銭債権チェックフロー」および「特定金銭債権種類判
定シート」に基づき、デューディリジェンス段階から個別の債権ごとに特定金銭債
権の該当号数のチェックを徹底するとともに、取締役弁護士が最終的に確認する取
扱いとしており、コンプライアンス遵守に努めている。
債権回収
IR は、2008 年にサービシング部門の再編を行った。具体的には、法人向け債権は法
人サービシング第 1 部が、個人向け債権はリテールサービシング部が担当すること
となり、また、特に大口担保付債権の回収の専門部署として法人サービシング第 2
部が設置された。
アイ・アール債権回収株式会社
2010 年 4 月
6
Structured Finance
特に個人向け小口債権の回収においては、債務者の特性や状況に応じた有効なアプ
ローチについての理解が進み、回収の効率アップに向けて回収手法の改善を模索す
るなどの工夫が行われている。これらの取組みが回収実績向上のひとつの要因と
なったものとフィッチは認識している。
一方、IR は最近の不動産市場の動向に鑑み、買取後一定期間が経過した担保付債権
について最低年 1 回の担保再評価を行うこととし、最新の評価に基づいて四半期ご
とに部分直接償却を行って、資産内容の健全性の維持を図っている。買取後 2 年を
経過した無担保債権については、原則的に償却を行うほか、2 次マーケットでのバル
クセールや、償却済債権にかかる回収交渉を行うなどにより、回収の極大化を図っ
ている。また、支払督促などの法的手続も回収を効果的に行う手段として有効活用
している。
フィッチでは、無担保債権・個人向け小口債権における IR のモニタリング体制を特
に評価しており、コンプライアンス遵守の観点のみならず、債権回収の質を高める
上でも有益であるとみている。債務者に対する回収・連絡行為が適正に行われてい
ることをチェックするために、通話内容の聞き取りおよび法定帳簿記録との照合を
法務・コンプライアンス部が 4 名体制でモニタリングを行っている。
ABSS
IR は、リテールサービシング部が個人向け
債務者分布( ABSS )
小口債権を、法人サービシング第 1 部が事
( 2009年 9月末)
業性の無担保債権をそれぞれ担当している。
住所不明
また、福岡支店においても個人向け小口債
九州・
4.5%
沖縄
権のサービシングを行っている。
北海道・
東北
9.2%
15.5%
四国
2.6%
リテールサービシング部(RS、66 名)は、
関東
個人向け債権のサービシングを担当してお
29.4%
中国
り、主に、住宅ローンを除く無担保債権お
4.7%
よび受託債権(クレジットカード債権な
近畿
北陸・
ど)を取り扱う。また、兼業承認を受けて
19.3%
中部
支払案内業務を行うコンタクトセンターも
14.8%
RS に属する。IR は 2007 年より、親会社ア
出所:アイ・アール債権回収株式会社
コムの個人無担保債権の買取を開始したが、
取扱量は増加し、件数ベースでは買取個人向け債権の過半に達している。債務者属
性や取引履歴などの債権データがほぼ完全で、効率性の高いサービシングを行うこ
とが可能であり、IR としても積極的に対応していることが主な理由である。また、
アコムよりの債権買取の増加に従って、RS はアコムの回収手法や債務者行動に関す
るデータなどを参考に、回収手法の一部手直しなどを進めており、回収率の向上に
つながっている。特に、文書通知と電話によるカウンセリングの組み合わせや、債
務者の状況に適合するカウンセリング話法の研修を行うなど独自の工夫を行ってお
り、フィッチは注目している。
債権購入時の価格決定は、一次査定を審査部、二次査定を個人向け小口債権はリ
テールサービシング部、法人向け無担保債権は法人サービシング第 1 部が行い、プ
ライシング会議で最終決定という手続を取っている。個人向け小口債権の場合は、
審査部において債権の属性に従ってグループ分けを行い、過去に買取った債権の回
収状況などのデータも参考にして検討した上で値付けを行っている。なお、親会社
アコムからの債権の買取においては、客観的な回収データに基づいた取引を行って
いる。
IR は、早くから特に個人向け小口債権のサービシングにおいて債務者カウンセリン
グの技法を取り入れ、マニュアル「カウンセリングハンドブック」を制定し活用し
アイ・アール債権回収株式会社
2010 年 4 月
7
Structured Finance
てきた。2008 年年初には、前年の改正貸金業法施行を受けて、コンプライアンス強
化の観点から、マニュアル「カウンセリング業務ハンドブック(貸金用)」を追加
制定し、貸金業者による貸付金にかかるサービシングの取扱基準などを充実させた。
「カウンセリングハンドブック」や、集金代行業務用のマニュアル「入金案内業務
ハンドブック」も、法務省の指導などを受けて随時改訂されており、こうした実務
マニュアル類の適切な維持・管理は、コンプライアンスの強化に加えて、均質化さ
れた適切なサービスの提供に有効に機能しているとフィッチは見ている。
回収実績 – 無担保債権 (設立時からの累計)
2008 年 3 月末迄
債務者弁済
保証人弁済
債権譲渡その他
合計
2009 年 3 月末迄
金額 (百万円)
構成比 (%)
金額 (百万円)
構成比 (%)
26,612
5,863
3,810
73.3
16.2
10.5
31,993
7,234
4,421
73.3
16.6
10.1
36,285
100.0
43,648
100.0
出所:アイ・アール債権回収株式会社
CSS
IR における不動産担保付債権の管理・回収
債務者分布( CSS )
業務は、法人サービシング第 1 部および法
( 2009年 9月末)
人サービシング第 2 部において行われてい
九州・ 住所不明
る。2009 年 10 月現在、法人サービシング
沖縄 10.7%
第 1 部の部員数は 41 名、法人サービシング
8.1%
四国
第 2 部の部員数は 10 名であり、いずれも前
1.8%
年比増加した。大阪支店の併合によるサー
中国
1.7%
ビシング対象資産の移管が主な要因である。
近畿
なお、法人サービシング第 1 部においては、
9.0%
不動産担保付債権の管理・回収業務に加え
北陸・
て、住宅ローンのサービシングを行ってい
中部
14.2%
る。
北海道・
東北
12.1%
関東
42.4%
出所:アイ・アール債権回収株式会社
住宅ローンを除く不動産担保付債権の回収
担当者一人当たりの担当債権数(常時管理先)は約 30 件で前回レビュー時とほぼ同
じレベルであった。
債権回収の手順は前回レビュー以降大きな変更はなく、まず回収計画が購入/受託後
1 ヶ月以内に回収担当者により作成され、半期ごとに見直しが行われる。回収担当者
はマニュアル「回収・戦略・例外ランク運用ハンドブック」に記載の債権評価基準
などに基づいて回収計画を立てる。同ハンドブックには債権の現況に応じて、回収
ステップごとに次に取るべき回収戦略が記載されており、そこには過去の実例が多
く反映されている。
法人サービシング第 1 部は、担保付債権および事業性無担保ローン債権担当 4 チー
ムおよび住宅ローン債権担当の計 5 チームを中心に計 41 名(2009 年 10 月 1 日現
在)が配属されている。一定の簿価を超える案件については、債権のセットアップ
完了後 1 ヶ月程度で具体的な回収計画を策定し、以後 3 ヶ月ごとに見直している。
また、回収額の極大化を図るため、セカンダリーマーケットへの債権売却を行う場
合があるほか、入金実績が少ないなど一定の要件に該当する債権については、償却
直前に再度の交渉を行うことにより、追加的な回収努力を行っている。
アイ・アール債権回収株式会社
2010 年 4 月
8
Structured Finance
担保物件の種類別内訳
担保物件の地域分布
( 件数、 2009年 9月末)
( 件数、 2009年 9月末)
その他
25.1%
一戸建
29.2%
中国
3.2%
雑種地
2.9%
店舗
3.5%
山林
9.0%
更地
5.1%
農地
5.2%
共同住宅
5.6%
宅地
6.6%
区分所有
7.8%
出所:アイ・アール債権回収株式会社
四国
3.2%
九州・沖縄
10.6%
近畿
10.6%
北陸・中部
18.3%
北海道・
東北
15.8%
関東
(東京を
除く)
30.4%
東京
7.8%
出所:アイ・アール債権回収株式会社
法人サービシング第 2 部(10 名)は、大口担保付債権に特化しており、担保処分や
分割弁済への切替などの手法により回収を進めている。加えて、再生協議会との協
議に基づく債権譲渡や、地元不動産業者のネットワークの活用による不動産物件の
処分/有効活用など、地方の案件の処理も積極的に推進した。また、同部の担当する
案件の進捗状況については、社長以下役員が参加して月次で見直し、状況確認を行
い、適切な処理促進を進めている。その結果、取扱債権件数についても半分以下と
なったことから、旧大阪支店の債権約 2,000 件の大半について同部に移管された。
不動産担保付債権を購入する場合のプライシング決定は、一次査定を審査部、二次
査定を法人サービシング第 1 部が行い、プライシング会議で最終決定される。入札
の競争力を維持する為、審査部では過去の入札・回収の実績データ分析のほか、大
型案件についてはキャッシュ・フロー分析を行ってプライシングに反映させている。
特に、大口の不動産担保付債権は圧縮が進捗し、ポートフォリオバランスも改善し
た。IR は、セカンダリーマーケットの活用や償却予定債権にかかる再交渉など、回
収の極大化に向けて手法の改善を進めており、更なる回収力の向上が図られるもの
と、フィッチではみている。
回収実績 – 担保付債権 (設立時からの累計)
2008 年 3 月末迄
競売
任意売却
債務者等による返済
合計
2009 年 3 月末迄
金額(百万円)
構成比 (%)
金額(百万円)
構成比 (%)
12,839
35,372
43,100
14.1
38.7
47.2
14,144
38,468
47,985
14.1
38.2
47.7
91,311
100.0
100,597
100.0
出所:アイ・アール債権回収株式会社
アイ・アール債権回収株式会社
2010 年 4 月
9
Structured Finance
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アイ・アール債権回収株式会社
2010 年 4 月
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