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世界の金融機関の注目はトランプがもたらす新たな

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世界の金融機関の注目はトランプがもたらす新たな
リサーチ TODAY
2016 年 12 月 15 日
世界の金融機関の注目はトランプがもたらす新たな世界
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
今月初めの筆者の米国出張の主な目的は、IIF(The Institute of International Finance) 内にあるグルー
プの1つ、The Market Monitoring Group (MMG)がニューヨークで開催した定例会合への出席であった。
IIFは1983年にラ米問題を中心とするグローバルな債務危機に対処するためにできたグローバルな有力民
間金融機関による組織である。そのなかのグループであるMMGは2009年3月に組織され、その当初の目
的は2008年のリーマン・ショックという100年に一度とされる深刻な金融危機のあと、金融市場がもたらすシ
ステミックリスクを世界各国の金融市場の参加者でモニターすることであった。今回も半日をかけて世界各
地から集まった約20名の金融関係者による議論が行われた。
2017年を展望すると、世界の金融状況を考える上での課題は、世界的に政治環境が不確実で、「3L:低
失業率、低インフレ、低金利」に代表される低血圧経済のなかで、処方箋たるべきマクロ経済学を見つける
ことにある。下記の図表は今日の問題を整理したもので、この難病たる状況に対処できる変換への期待が
トランプノミクスや財政政策にある。
■図表:世界の成長率とインフレ率
(%)
実質成長率
7
インフレ率
トランプノミクス
6
各国財政拡張
5
資源安一服
4
?
3
2
欧州政治リスク
1
中国構造調整
0
保護主義強化
-1
2003
04
05
06
07
08
09
10
11
12
(注) インフレ率は CPI、2016 年はみずほ総合研究所による見込み。
(資料)IMF よりみずほ総合研究所作成
1
13
14
15
16
17
(年)
リサーチTODAY
2016 年 12 月 15 日
今回のMMGにおけるグローバルな環境についての論点は、下記の図表の5分野、①米国の大統領選、
②世界の政治情勢、③世界の金融政策・財政政策の環境、④金融規制の環境、⑤債券金利上昇に伴うリ
スク、クレジット市場の環境であった。このように、このところのMMGでの論点は、世界的レベルの「有事」で
はなく、今後、市場の中で生じうる危機の芽はどこにあるかを探すことに移っている。なかでも、国際的な政
治環境への関心が高まっているのが特徴だ。
■図表:MMGにおける市場要因に関する問題意識
分野
米国の大統領選
世界の政治情勢
世界の金融政策・財政政策の環境
金融規制の環境
債券金利上昇に伴うリスク、
クレジット市場の環境
具体的論点
米国の大統領選の結果の世界に対する影響
イタリア国民投票、BREXIT の行方、欧州の政治状況等
米国の利上げがもたらす市場問題、世界的な金融政策
と財政政策のポリシーミックスの展望
国際的な金融規制の影響
ハイイールド市場の状況と新興国を中心とした債務問題
(資料)IIF よりみずほ総合研究所作成
筆者は今回のMMGで、トランプ氏が取りうる政策は36年前のレーガノミクスに類似するとし、金融財政政
策のポリシーミックスからドル高と米国金利の上昇が生じやすいとした。さらに、その副作用として1980年代
には、米国国内では「双子の赤字」とされた不均衡と、世界的レベルではラ米を中心とした債務累積問題
が生じたことから、今回も今後の動向には留意が必要とした。今回のMMGの参加者の一人にジャック・ド・
ラロジエール氏がいた。彼はMMGの議長を長年務め、1978年から1987年までIMFの専務理事として債務
累積問題に実際に対処した中心人物であった。彼は、筆者の見方に強く賛同し、今日の環境を踏まえ、
1980年代の状況をよく研究する必要があると指摘していたのは印象的であった。下記の図表は1980年代
のドルの推移を示すが、急激なドルと金利上昇がラ米を中心とした新興債務国の負担を大きくしたことを念
頭に置く必要がある。
■図表:ドルの実質実効レート
(1981年1月=100)
150
プラザ合意(85年9月)
140
130
120
ルーブル合意(87年2月)
ブラックマンデー(87年10月)
110
100
90
80
1975
クリスマス合意(87年12月)
ボルカ―議長による
インフレ退治の金融引き締め(79年10月)
80
85
(注)FOMC 参加者の見通しは 2016 年 9 月時点の各年末値に関する予想中央値。
(資料)FRB よりみずほ総合研究所作成
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