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JNC TN1400 2005-018
安全研究成果の概要
(平成16年度−核燃料サイクル分野)
2005年8月
核燃料サイクル開発機構
本資料の全部または一部を複写・複製・転載する場合は、下記にお問い合わせください。
〒319-1184 茨城県那珂郡東海村村松4番地49
核燃料サイクル開発機構
技術展開部
技術協力課
Inquiries about copyright and reproduction should be addressed to :
Technical Cooperation Section, Technology Management Division,
Japan Nuclear Cycle Development Institute
4-49 Muramatsu, Naka-gun, Ibaraki 319-1184, Japan
© 核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)2003
JNC TN1400 2005-018
2005年8月
安全研究成果の概要
(平成16年度−核燃料サイクル機構分野)
編
要
集
安全推進本部安全計画課
旨
核燃料サイクル開発機構は、平成16年度の安全研究を、平成12年10月に策定
(平成14年5月改定、平成16年7月一部補正)した安全研究基本計画(平成13年
度∼平成17年度)に基づき実施した。
本報告書は、核燃料サイクル分野(核燃料施設、耐震、環境放射能及び廃棄物処分分
野の全課題、並びに確率論的安全評価分野のうち核燃料サイクル関連の課題)について、
平成16年度の研究成果を安全研究基本計画(平成13年度∼平成17年度)の全体概
要と併せて整理したものである。
i
JNC TN1400 2005-018
rh
目
次
.............
v
.........................
xi
3.安全研究成果調査票(平成16年度)リスト(核燃料サイクル分野) .....
xxi
1.安全研究基本計画(平成13年度∼平成17年度)の概要
2.核燃料サイクル分野の安全研究の目的と課題
4.安全研究成果調査票(平成16年度)(核燃料サイクル分野) ........... xxvii
iii
JNC TN1400 2005-018
1.安全研究基本計画(平成13年度∼平成17年度)の概要
v
JNC TN1400 2005-018
核燃料サイクル開発機構における安全研究
核燃料サイクル開発機構における安全研究
核燃料サイクル開発機構(以下、
「サイクル機構」という)
における安全研究は、原子力安全委員会の「安全研究年次計画」
と整合を図りながらサイクル機構の自主研究を加えた5ヵ年
の「安全研究基本計画」に従って実施しています。
原子力安全委員会
「安全研究年次計画」
・原子力施設等
・環境放射能
・放射性廃棄物
「安全研究基本計画」
他機関が実施する研究
・日本原子力研究所
・放射線医学総合研究所
・工業技術院計量研究所
・船舶技術研究所
・大学
等
サイクル機構
の自主研究
vii
安全研究基本計画
JNC TN1400 2005-018
安全研究の基本方針
サイクル機構では、以下の目的及び留意事項に基づいて安
全研究を実施しています。
目
的
1.施設の安全性の向上による原子力に対する国民の信頼性
の増進
2.安全技術の高度化及び体系化による民間への円滑な技術
移転及び技術協力
3.設計裕度及び評価基準等の適切化による原子力の信頼性、
経済性の向上
4.成果の統合化による指針・基準類の整備等、原子力安全
規制への貢献
実施における留意事項
1.研究計画の明確化と成果の積極的な公表
2.ニーズを踏まえた安全研究の効率的実施
3.総合的なレビューによる成果の質の向上
4.研究成果の効果的な反映
5.前基本計画からのシフトの着実な推進
6.重点研究分野の効率的な推進
viii
安全研究基本計画
JNC TN1400 2005-018
安全研究推進体制
研究計画、研究成果についてはサイクル機構内の下記の体制
で横断的検討、評価を行い、目的を的確に把握し、効率的に推
進していきます。
中央安全委員会・安全研究専門部会
安全研究成果発表会
・敦賀
FBR分科会
・東海
・大洗
核燃料施設分科会
・東京
確率論分科会
環境分科会
廃棄物分科会
ふげん分科会
研究成果は、関連の分科会で評価・検討するとともに、
「成果
発表会」を開催して、サイクル機構外の専門家の意見も得て、
質の向上を図ることとしています。
ix
安全研究基本計画
JNC TN1400 2005-018
安全研究計画(平成 13 年度∼平成 17 年度)
原子力安全委員会の「安全研究年次計画」の研究分野と対応さ
せて「安全研究基本計画」の研究分野を分類しています。
(原子力安全委員会)
(サイクル機構)
(原子力安全研究専門部会)
(安全研究専門部会)
「安全研究年次計画」
「安全研究基本計画」
(平成 13 年度∼平成 17 年度)
(平成 13 年度∼平成 17 年度)
(原子力施設等安全研究分科会)
原子力施設等
全件数/サイクル機構
水炉
高速増殖炉
核燃料施設
放射性物質
の輸送
耐震等
確率論的
安全評価等
(合計 85)
19/ −
16/14
22/10
高速増殖炉
23
核燃料施設
27
耐震
1
確率論的
安全評価
8
環境放射能
7
廃棄物処分
16
3/ −
12/1
8/3
(環境放射能安全研究分科会)
環境放射能
97/6
(放射性廃棄物安全研究分科会)
放射性廃棄物
29/15
(注)数字は研究課題の件数を示す
x
「ふげん」
の
廃止措置等
3
安全研究基本計画
JNC TN1400 2005-018
2.核燃料サイクル分野の安全研究の目的と課題
xi
JNC TN1400 2005-018
核燃料施設に関する安全研究
核燃料サイクル開発機構におけ
研究の目標
☆サイクル機構所有施設の設計・運転により蓄積した知見・データ
の活用及び技術開発により安全に関する技術の高度化を図る。
☆技術の高度化の結果をサイクル機構所有施設の運転・管理等に反
映し、施設の安全・安定運転技術の高度化を図る。
☆次世代施設の安全設計・評価技術の高度化を図る。
☆安全設計・運転・管理等に関する知見・データを提供し、核燃料
サイクルの民間事業化を支援する。
研究対象
下図に示すように核燃料サイクルのうちウラン濃縮、燃料加工、再
処理、廃棄物処理・貯蔵を研究対象としています。
環境放射能
[研究対象]
廃棄物
廃棄物
ウラン濃縮・燃料加工
再処理
ウラン
プルトニウム
燃
料
使用済燃料
発電所
廃棄物処理・貯蔵
廃棄物処分
廃棄物
燃料加工
燃料
廃棄物
廃棄物
図1
研究対象
xiii
核燃料施設に関する安全研究
JNC TN1400 2005-018
核燃料施設に関する安全研究課題
(H13 年度∼H17 年度)
臨界安全性
遮へい安全性
●MOX 加工施設等の臨界管理
●未臨界度モニタの開発
●核燃料施設における中性子線量
評価
閉じ込め安全性
運転管理・保守及び放射線管理
●プロセス内化学物質に係る異常
●臨界監視技術の高度化
事象評価
●走行式放射線モニタの高度化
●異常事象時における換気系の安
●現場放射線管理の高度化
全性
●α線放出核種の放射線管理技術
●負圧監視・管理のシステム開発
の向上
●グローブボックス等解体技術の
●放射線管理用機器の性能向上
開発
●前処工程機器設備保全履歴デー
●核燃料施設への静的安全機器の
適用性
タベースの構築
●蒸発缶内部検査技術の確立
●遠隔保守機器寿命・故障管理シ
ステムの検討
●ライニング型貯槽における漏え
放射性廃棄物の管理
●再処理施設低レベル廃棄物処理
い検知システムの信頼性向上
技術
●鋼材からの水素ガス放出による
●ヨウ素除去技術
ライニング型遮へい扉への影響
検討
●再処理施設における C-14 の放出
挙動
●スラッジ除去技術の開発
●気相へ移行するヨウ素の挙動
●クリプトンの固定化技術開発
耐震
●核燃料施設免震構造に関する高度化
●不均一系核燃料物質の工程間移
確率論的安全評価
動における安全性向上
●核燃料施設の信頼性評価手法
●廃液処理工程における機器保全
●MOX 加工施設の確率論的安全評価の
に係る調査検討
●廃シリカゲル処理技術開発
適用
●再処理施設の地震に関する確率論的
安全評価の適用
●東海再処理施設の確率論的安全評価
の実施
●核燃料施設の地震 PSA に関する研究
xiv
核燃料施設に関する安全研究
JNC TN1400 2005-018
環境放射能に関する安全研究
核燃料サイクル開発機構におけ
研究の目標
● 核燃料サイクル施設の安全性の実証とともに、さらなる安全性
の向上を目指す。
● 核燃料サイクル施設の民間事業化を支援する。
ラドン等の
原子力施設
自然放射能
土
海、湖、川
壌
ラドン・トロン及
びその壊変生成
物の分布と挙動
大 気
放射性物質の分
布と移行
植
物
動
物
環境放射線測定、
放射性物質の分
析・測定等のモニタリ
ング技術開発
人
外部被ばく
内部被ばく
放射性物質の移行経路と研究開発項目
xv
環境放射能に関する安全研究
JNC TN1400 2005-018
環境放射能に関する安全研究課題
(H13 年度∼H17 年度)
ラドン・トロン及びその壊変生成物の分布と挙動に関する研究
●環境中のラドン・トロン及びその壊変生成物の測定、挙動
評価
放射性物質の分布と移行に関する研究
●海洋における放射性核種の挙動と拡散予測モデル
●地球規模の海洋環境における放射性物質移行モデル
環境放射線測定、放射性物質の分析・測定等のモニタリング
技術開発に関する研究
●環境試料の迅速分析及び測定技術の高度化
●緊急時における個人被ばくモニタリング手法
●緊急時遠隔空中モニタリング手法
●極低濃度長半減期放射性物質の定量法
xvi
環境放射能に関する安全研究
JNC TN1400 2005-018
廃棄物処分に関する安全研究
核燃料サイクル開発機構におけ
[研究対象]
廃棄物
廃棄物
浅地中処分
ウラン濃縮
低レベル
・燃料加工
廃棄物
燃
料
使用済
燃料
発電所
ウラン
プルトニウム
再処理
廃棄物処理
・貯蔵
廃棄物
燃料加工
高レベル
燃料
廃棄物
TRU
廃棄物
を含む
廃棄物
余裕深度
処分
地層処分
地層処分
廃棄物
研究対象
地層処分安全評価の特徴
● 極めて長い時間枠を考慮しなければならない。
● 天然の地層という不均質で大きな空間領域を有する
システム要素を含む。
間接的実証:シナリオに基づくモデル予測に
よってシステムの安全性を示す。
xvii
廃棄物処分に関する安全研究
処分事業
平成 12 年度
最終処分に関する法律等
研究開発
第2次取りまとめ
実施主体設立
安全規制
国の評価
安全規制の基本的考え方
現在
概要調査地区選定
安全審査基本指針
【平成 10 年代前半目途】
xviii
平成 20 年度
精密調査地区選定
平成 30 年度
【平成 20 年代前半目途】
廃棄物処分に関する安全研究
最終処分施設建設地選定
平成 40 年度
第2次取りまとめ
以降の研究開発
安全審査指針
処分場の技術基準
【平成 30 年代後半目途】
処分場設計・事業許可申請
処分場建設
処分場操業
【平成 40 年代後半目途】
安全審査
JNC TN1400 2005-018
処分事業と安全規制の今後の展開
JNC TN1400 2005-018
廃棄物処分に関する安全研究課題
(H13 年度∼H17 年度)
安全規制の基本的事項
地質環境評価手法
●安全評価の基本的考え方等に関
する調査
●環境変動に伴う地質環境の安定
性評価
●結晶質岩に関する地質環境評価
手法
●堆積岩に関する地質環境評価手
法
地層処分の安全評価手法
●地質環境におけるナチュラルア
ナログ
●安全評価シナリオ
●安全評価モデルの体系化・高度
化
●安全評価におけるシナリオ、モ
処分場の設計要件
デルの不確実性
●地下水水質形成モデルの検証及
●人工バリア及び岩盤の長期挙動
び高度化
●人工バリア等の性能保証に係る
●深部地下環境下における核種移
工学技術
行データの取得及びデータベー
スの整備
●人工バリアのナチュラルアナロ
グ
TRU核種を含む放射性廃棄物の
クリアランスレベル
安全評価手法
●ウラン濃縮施設における金属廃
●TRU核種を含む放射性廃棄物
棄物除染後の放射性物質濃度検
認技術の研究
処分の安全評価の信頼性向上に
向けたデータ及び評価手法の整
備
●ヨウ素の高度保持廃棄体・人工
バリア材
xix
廃棄物処分に関する安全研究
JNC TN1400 2005-018
3.安全研究成果調査票(平成16年度)リスト
(核燃料サイクル分野)
xxi
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)リスト
(核燃料サイクル分野)
〔核燃料施設:報告分 21 件〕○印は原子力安全委員会の安全研究年次計画課題
◎印は上記のうち重点研究課題
(1)臨界安全性に関する研究
◎1- 1
MOX加工施設等の臨界管理に関する研究 ..........................
1
◎1- 2
未臨界度モニタの開発 ...........................................
9
(2)遮へい安全性に関する研究
◎2- 1
核燃料施設における中性子線量評価に関する研究 ...................
33
(3)閉じ込め安全性に関する研究
◎3- 1
プロセス内化学物質に係る異常事象評価研究 .......................
55
◎3- 2
異常事象時における換気系の安全性に関する研究 ...................
69
○3- 3
負圧監視・管理のシステム開発に関する研究 .......................
93
○3- 4
グローブボックス等解体技術の開発 ............................... 113
(4)運転管理・保守及び放射線管理に関する研究
◎4- 1
臨界監視技術の高度化に関する研究 ............................... 119
4- 3
現場放射線管理の高度化 ......................................... 131
4- 4
α線放出核種の放射線管理技術の向上に関する研究 ................. 137
4- 5
放射線管理用機器の性能向上に関する検討 ......................... 143
4- 6
前処理工程機器設備保全履歴データベースの構築 ................... 155
4- 7
蒸発缶内部検査技術の確立 ....................................... 159
4- 8
遠隔保守機器寿命・故障管理システムの検討 ....................... 165
(5)放射性廃棄物の管理に関する研究
5- 2
ヨウ素除去技術に関する研究 ..................................... 169
5- 3
再処理施設における C-14 の放出挙動に関する調査研究 .............. 173
5- 4
スラッジ除去技術の開発 ......................................... 177
5- 5
気相へ移行するヨウ素の挙動 ..................................... 183
xxiii
JNC TN1400 2005-018
5- 6
クリプトンの固定化技術開発 ..................................... 189
5- 7
不均一系核燃料物質の工程間移動における安全性向上に関する研究 ... 195
5- 9
廃シリカゲル処理技術開発 ....................................... 203
〔耐震:全1件〕○印は原子力安全委員会の安全研究年次計画課題
◎印は上記のうち重点研究課題
○7- 1
核燃料施設免震構造に関する高度化研究 ........................... 207
〔確率論的安全評価:全4件〕○印は原子力安全委員会の安全研究年次計画課題
◎印は上記のうち重点研究課題
(2)核燃料サイクル施設に関する研究
◎2- 1
核燃料施設の信頼性評価手法に関する研究 ......................... 219
◎2- 2
MOX加工施設の確率論的安全評価の適用研究 ..................... 227
2- 4
東海再処理施設の確率論的安全評価の実施 ......................... 245
2- 5
核燃料施設の地震PSAに関する研究 ............................. 251
〔環境放射能:全7件〕○印は原子力安全委員会の安全研究年次計画課題
◎印は上記のうち重点研究課題
(2)ラドン・トロン及びその壊変生成物の分布と挙動に関する研究
○2- 1
環境中のラドン・トロン及びその壊変生成物の測定、挙動評価などに
関する研究 ..................................................... 255
(3)放射性物質の分布と移行に関する研究
○3- 1
海洋における放射性核種の挙動と拡散予測モデルに関する研究 ....... 261
○3- 2
地球規模の海洋環境における放射性物質移行モデルに関する研究 ..... 265
(6)環境放射線測定、放射性物質の分布・測定等のモニタリング技術開発に関する研究
◎6- 1
環境試料の迅速分析及び測定技術の高度化に関する研究 ............. 269
◎6- 2
緊急時における個人被ばくモニタリング手法に関する研究 ........... 275
6- 3
緊急時遠隔空中モニタリング手法に関する研究 ..................... 283
◎6- 4
極低濃度長半減期放射性核種の定量法に関する研究 ................. 289
xxiv
JNC TN1400 2005-018
〔廃棄物処分:全 16 件〕○印は原子力安全委員会の安全研究年次計画課題
◎印は上記のうち重点研究課題
(1)安全規制の基本的事項に関する研究
◎1- 1
安全評価の基本的考え方等に関する調査研究 ....................... 293
(2)地質環境評価手法に関する研究
◎2- 1
環境変動に伴う地質環境の安定性評価に関する研究 ................. 301
◎2- 2
結晶質岩に関する地質環境評価手法に関する研究 ................... 313
◎2- 3
堆積岩に関する地質環境評価手法に関する研究 ..................... 335
◎2- 4
地質環境におけるナチュラルアナログ研究 ......................... 359
(3)地層処分の安全評価手法に関する研究
◎3- 1
安全評価シナリオに関する研究 ................................... 365
◎3- 2
安全評価モデルの体系化・高度化に関する研究 ..................... 371
◎3- 3
安全評価におけるシナリオ、モデルの不確実性に関する研究 ......... 383
◎3- 4
地下水水質形成モデルの検証及び高度化に関する研究 ............... 391
◎3- 5
深部地下環境下における核種移行データの取得及び
データベースの整備 ............................................. 399
(4)処分場の設計要件に関する研究
◎4- 1
人工バリア及び岩盤の長期挙動に関する研究 ....................... 411
◎4- 2
人工バリア等の性能保証に係る工学技術研究 ....................... 429
◎4- 3
人工バリアのナチュラルアナログ研究 ............................. 437
(5)TRU核種を含む放射性廃棄物の安全評価手法に関する研究
◎5- 1
TRU核種を含む放射性廃棄物処分の安全評価の信頼性向上に向けた
データ及び評価手法の整備 ....................................... 445
◎5- 2
ヨウ素の高度保持廃棄体・人工バリア材に関する研究 ............... 453
(6)クリアランスレベル
6- 1
ウラン濃縮施設における金属廃棄物除染後の放射性物質濃度検認技術
の研究 ......................................................... 459
xxv
JNC TN1400 2005-018
4.安全研究成果調査票(平成16年度)
(核燃料サイクル分野)
xxvii
JNC TN1400 2005-018
核燃料施設分野
(1)臨界安全性に関する研究
(2)遮へい安全性に関する研究
(3)閉じ込め安全性に関する研究
(4)運転管理・保守及び放射線管理に関する研究
(5)放射性廃棄物の管理に関する研究
(分野名をクリックするとリストが表示されます。)
(リスト内の各研究課題名をクリックすると内容が表示されます。)
JNC TN1400 2005-018
耐震分野
(7)新構造システムに関する研究
(分野名をクリックするとリストが表示されます。)
(リスト内の各研究課題名をクリックすると内容が表示されます。)
JNC TN1400 2005-018
確率論的安全評価分野
(2)核燃料サイクル施設に関する研究
(分野名をクリックするとリストが表示されます。)
(リスト内の各研究課題名をクリックすると内容が表示されます。)
JNC TN1400 2005-018
環境放射能分野
(2)ラドン・トロン及びその壊変生成物の分布と挙動に関する研究
(3)放射性物質の分布と移行に関する研究
(6)環境放射線測定、放射性物質の分布・測定等のモニタリング技
術開発に関する研究
(分野名をクリックするとリストが表示されます。)
(リスト内の各研究課題名をクリックすると内容が表示されます。)
JNC TN1400 2005-018
廃棄物処分分野
(1)安全規制の基本的事項に関する研究
(2)地質環境評価手法に関する研究
(3)地層処分の安全評価手法に関する研究
(4)処分場の設計要件に関する研究
(5)TRU核種を含む放射性廃棄物の安全評価手法に関する研究
(6)クリアランスレベル
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
◎1−1(施設3−1−3)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する研究
【研究課題名(Title)】
MOX加工施設等の臨界管理に関する研究
(Study for Criticality Safety of MOX Fuel Fabrication Facilities)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]百瀬 琢麿(ももせ たくまろ)
[所属]東海事業所 放射線安全部 線量計測課
[連絡先]〒319 1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33
電話: 029 282 1111, FAX: 029-282-9619
(Name) Takumaro Momose
(Title of Function) Radiation Dosimetry and Instrumentation Section, Radiation Protection Division, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33 Muramatsu, Tokai-Mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194, Japan
TEL: +81-29-282-1111, FAX: +81-29-282-9619
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]清水 義雄(しみず よしお)
[所属]東海事業所 放射線安全部 線量計測課
(Name) Yoshio Shimizu
(Title of Function) Radiation Dosimetry and Instrumentation Section, Radiation Protection Division, Tokai
Works
【研究期間】
平成8年度 ∼
平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
なし
【研究概要】
[研究の経緯]
これまでの年次計画において、
「MOX 取扱施設臨界安全ガイドブック」を公開し、現在進められてい
る民間 MOX 燃料加工施設の設計等に利用されている。ガイドブックには豊富な MOX 均質系及び PuO2 均
質系のデータが掲載されているが、非均質系のデータが整備されていないこと、また、実際の運転条件
における安全裕度について確認することは、臨界事故の防止及び臨界事故時の対応の観点からも重要で
あることから、本研究を継続して実施する必要があった。
[研究目的]
MOX加工施設の実用化へ向けて、臨界安全解析コード、核データ等の拡充・整備及び臨界安
全データの整備を実施し、施設の臨界安全設計における信頼性の向上及び施設運転における臨界
安全性の向上並びに臨界安全評価に係る安全審査の判断資料の整備に資する。
−1−
JNC TN1400 2005-018
[研究内容]
イ.臨界安全解析手法の高度化整備
臨界安全解析コード、核データ等の拡充・整備を行い、MOX加工施設等への適用性検討の
ための検証計算を実施する。
ロ.臨界安全データの整備
MOX加工施設を対象とした臨界安全データの整備として、MOX非均質系データの整備を実
施する。
また、核種の同位体組成、反射条件等の設定における臨界安全データの安全裕度の評価・検討及び裕
度を考慮したデータ整備を行う。以上のデータの整備により、1996年に公開したMOX取扱施設臨
界安全ガイドブックの充実を図る。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
イ. 臨界安全解析手法の高度化整備としては、解析コード等の導入・整備、検証・比較計算を実
施する。
ロ. 臨界安全データの整備については、MOX非均質系データの整備及び臨界安全データの安全裕度
評価の検討を実施する。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ.臨界安全解析手法の高度化整備
MOX 燃料製造施設への臨界安全解析コードの適用性を確認するため、計算コード(SCALE4、MCNP4)
及び核データライブラリ(ENDF/B)を用いた MOX 均質系、MOX 非均質系 PuO2 均質系の臨界ベンチマー
ク計算を実施した。OECD/NEA において、国際臨界実験ベンチマークハンドブック(International Handbook
of Evaluated Criticality Safety Benchmark Experiments, 以下、
「ICSBEP ハンドブック」)として、各
国で実施された臨界実験に対する再検証及び文書化が進められている。ICSBEP ハンドブックに掲載されて
いる実験と MOX 取扱施設臨界安全ガイドブック(以下、
「ガイドブック」)で評価した実験とを比較し、ガ
イドブックで評価していない実験について追加した。
MOX 均質系については、 ガイドブックで評価した実験と重複している。
MOX 非均質系については、 昨年度 8 ベンチマーク実験(計 48 ケース)を追加したが、ICSBEP ハンドブッ
クでは同条件の実験を 1 ケースとして取扱っているため、TCA 実験(JAERI-1254)については、同日・同配列
の実験に対する実験を 1 ケースとし、88 ケースから 79 ケースに変更した。MOX 非均質系について、
CSAS2X-27GroupENDF/B-IV、CSAS2X-238GroupENDF/B-V、MCNP4C2-ENDF/B-VI の組み合わせによる誤差評価
。誤差評価の際には、MOX 取扱施設への適用
推定臨界増倍率及び推定臨界下限増倍率を算出した(表 1)
を考慮し、減速材として水を使用している 170 ケースを選択した。推定臨界下限増倍率については、どの
組み合わせについても、0.98 を上回っており、かつ、推定臨界下限増倍率を下回るベンチマーク計算結果
はないことから、臨界安全ハンドブック(1988 年科学技術庁編)の考え方に基づくと、これらの推定臨界下
限増倍率は 0.98 と設定される。
PuO2 均質系については、ICSBEP ハンドブックにおいて、29 ケースの実験に対して、CSAS25-27 群
ENDF/B-IV の組み合わせの評価結果が掲載されている。ガイドブック作成時には、燃料コンパクトを模擬
し、それを積み重ねた詳細モデル 16 ケースの評価を実施していたが、ICSBEP ハンドブックでは、ガイド
ブックで評価した 16 ケースを含む 29 ケースが「燃料コンパクトの被覆等を補正した1直方体モデル」で
評価されている。CSAS25-27 群 ENDF/B-IV を用いて、ガイドブックで評価した 16 ケースについては詳細
モデルで、その他 13 ケースについては、燃料コンパクトに関する詳細なデータがないため、ICSBEP ハン
ドブックの入力を基に再計算し、誤差評価を行った。その結果、推定臨界増倍率は 1.0228、推定臨界下限
増倍率は 0.9995 と評価された。推定臨界下限増倍率については、0.98 を上回っており、かつ、推定臨界下
限増倍率を下回るベンチマーク計算結果はないことから、MOX 非均質系と同様に推定臨界下限増倍率は
0.98 と設定される。
PuO2 均質系 16 ケースについて、詳細モデル(ガイドブック)と補正された 1 直方体モデル(ICSBEP ハンド
ブック)を比較した。詳細モデルのほうが、実効増倍率の平均で 0.012Δk 低く評価し、1.00 に対するバイ
アスが小さくなる。なお、MOX 均質系については、全て燃料コンパクトを模擬し、それを積み重ねた詳細
モデルで評価している。
−2−
JNC TN1400 2005-018
なお、各系のベンチマーク実験に対して、最新の計算コード及びライブラリの適用、ICSBEP ハンドブッ
クの確認・追加、計算機の性能向上に伴うヒストリー数の見直しを随時実施している。
ロ.臨界安全データの整備
安全裕度の検討として、MOX 不均一性の効果に対する検討を実施した。
評価は、(1) 均一系に対する評価、(2)最も単純な不均一系であり、濃度と大きさの設定の容易な 2 層系
に対する評価を実施した。(1) 均一系については、MOX 均質系のベンチマーク計算により得られている推
定臨界下限増倍率に相当する半径を求め、それに対応する MOX 質量及び水分量を算出した。形状は球形
状とし、Pu 組成は、239Pu: 240Pu: 241Pu = 80: 10: 10、Pu fissile 富化度: 23%、ウラン組成は天然ウランとした。
反射体は、30cm 水反射、MOX 密度については、水分含有率 5%に対するボイドなしに対する値 (約 7g/cm3)
とした。なお、MOX 粉末-水系の最適減速密度は、0.03 g-Pu/cm3 (0.133 g-MOX/cm3)である。(2) 2 層系につ
いては、図 1 に示すように、内側に水分と粉末がボイドなしで混合した領域を設定し、体系中の水分が部
分的に使用され、残りの水分が外側領域に均一に分布しているモデルである。内側で使用される水分は、
0.1, 0.25, 0.5, 0.75, 1.0(全量使用)とした。また、内側の MOX 密度については、0∼6.658g/cm3 まで考慮し、
外側の密度は 7g/cm3 に固定し、どの領域においても、7g/cm3 を超えないように設定した。
評価には、SCALE5のCSAS25モジュール (BONAMI-S, NITAWL-II, KENO V.a)及び44 group ENDF/B-Vを
使用した。全ヒストリー数は、3,000,000(実効増倍率に対する誤差は、0.0005程度)とした。
図 2 に 2 層系に対する内側領域の MOX 密度と実効増倍率の関係を示す。内側に水分が全量存在する場
合に変化が大きく、0.311g-MOX/cm3 で最大となった。図 3 に内側領域の水分割合と実効増倍率の関係を示
す。0.222 0.444g-MOX/cm3 では、水分割合の増加とともに実効増倍率が増加する傾向が見られた。最も実
効増倍率を高く評価する内側領域の密度は、0.311g-MOX/cm3 であり、 MOX 粉末-水系の最適減速密度は、
0.133 g-MOX/cm3 よりも高くなる。
2 層系に対する評価においては、均質系に対して 1.26%Δk、実効増倍率を高く評価する。1.26%Δk は, 質
量に換算すると 7%程度に相当する(図 4)。
また、 MOX 均質系の不均一効果に対する検討を SCALE5 の新機能である最適条件計算モジュール
SMORES(SCALE Material Optimization and REplacement Sequence)を用いた評価を実施し、 適用検討を行っ
た。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ.臨界安全解析手法の高度化整備
臨界ベンチマーク計算については、国際臨界ベンチマーク実験ハンドブックに示されるケースを追加
及び最新の計算コードによる評価を実施し、計算コード及び核データライブラリに対する誤差評価を実
施し、推定臨界増倍率及び推定臨界下限増倍率を得た。
ロ.臨界安全データの整備
臨界安全データの整備については、安全裕度の検討として不均一性の効果を検討を実施したが、非均
質系のデータ整備については調査・検討を実施している段階である。
(今後の予定)
臨界ベンチマーク計算については、新たな実験データの追加や最新の計算コード及び核データライブラ
リの適用を実施していく。また、MOX 非均質データの整備及び安全裕度の検討を進める。
【成果の利用実績及び活用見通し】
イ.臨界安全解析手法の高度化整備
MOX 燃料製造施設への臨界安全解析コードの適用性を確認するための臨界ベンチマーク計算結果に
ついては、MCNP 及び SCALE を施設設計に適用する際に利用できる。本ベンチマーク計算結果は、プルト
ニウム燃料第三開発室の加工事業申請の際に、SCALE4 コードシステムの検証という位置付けで反映され
ている。
ロ.臨界安全データの整備
臨界安全データの整備については、安全裕度の検討として不均一性の効果を検討を実施したが、非均
質系のデータ整備については調査・検討を実施している段階である。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
(1) 清水他, " MOX 不均一効果に対する検討," 日本原子力学会 2005 年春の年会 (2005)
−3−
JNC TN1400 2005-018
(発表予定)
ベンチマーク計算結果については、報告書を作成する予定である。
【最近の国内外の研究動向(平成16年度)
】
[民間の研究の現状と動向]
六ヶ所村に建設予定の民間 MOX 燃料加工施設の設計等が進められている(1)。
プルトニウム燃料第三開発室の加工事業申請が進められている。
(参考文献)
(1) 原子力安全委員会ホームページ(原子力安全基準専門部会、 MOX 加工施設指針検討分科会会議資
料)
[海外の研究の現状と動向]
・OECD/NEA において、これまで行われた臨界実験の再検証及び各種計算コードによるベンチマーク計
算が進められている。(1)
・米国においては、解体核の MOX 燃料製造施設の許認可が進められている(2)(3)。
・国際標準化機構(ISO)における TC 85/SC 5/WG 8(臨界安全に関連した計算・取扱いの規格化)にお
いて、Nuclear Criticality Control and Safety of Plutonium – Uranium Oxide Fuel Mixtures outside of Reactors
を整備中であり、各国において臨界データが評価されている。 (4)
・断面積の取り扱い等が大幅に改良された SCALE の最新バージョンである version 5 及び MCNP の最新
版である version 5 が公開された(5)(6)(7)(8)。
・ MOX 低減速系の臨界ベンチマーク実験が計画されている(9)。
・ KEOPS(Experimental determination of K-effective on various PuO2 Systems)が計画されている(10)。
(参考文献)
(1) OECD/NEA Nuclear Science Committee, "International Handbook of Evaluated Criticality Safety
Benchmark Experiments," NEA/NSC/DOC(95)03 (Sep. 2004 Edition)
(2) NRC (U.S. Nuclear Regulatory Commission), 2000. Standard Review Plan for the Review of an Application
for a Mixed Oxide (MOX) Fuel Fabrication Facility, NUREG-1718, U.S. Nuclear Regulatory Commission,
Washington, DC.
(3) http://www.nrc.gov/materials/fuel-cycle-fac/mox/licensing.html
(4) Jean-Marc Bordy, “A Comparison of the Critical Values, Relatives to homogeneous UO2-PuO2 media
representing mixed Uranium – Plutonium oxide fuels, achieved with APOLLO-2 SN, MORET 4,
TRIPOLI-4 and SCALE 4.4,” SEC/T/01.202 (2001)
(5) "SCALE: A Modular Code System for Performing Standardized Computer Analyses for Licensing
Evaluation," NUREG/CR 0200, Rev. 7 (ORNL/NUREG/CSD 2/R7), Vols. I, II, and III (June 2004)
(6) X-5 Monte Carlo Team, “MCNP - A General Monte Carlo N-Particle Transport Code, Version 5, Volume I:
Overview and Theory”, LA-UR-03-1987 (2003)
(7) X-5 Monte Carlo Team, “MCNP - A General Monte Carlo N-Particle Transport Code, Version 5, Volume II:
Userユs Guide”, LA-CP-03-0245 (2003)
(8) X-5 Monte Carlo Team, “MCNP - A General Monte Carlo N-Particle Transport Code, Version 5, Volume III:
Developer’s Guide”, LA-CP-03-0284(2003)
(9) V. Rouyer, et al., “IRSN Projects for Critical Experiments “Low Moderated MOX Fuel Project” and Others,”
Proceeding of the seventh International Conference on Nuclear Criticality Safety, JAERI-Conf
2003-019 (2003)
−4−
JNC TN1400 2005-018
(10) B. Lance, et al., “KEOPS and Other VENUS Experiments Dedicated to the Criticality Safety of a MOX
Fuel Fabrication Facility,” International Symposium NUCEF2005 (2005)
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
■ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:)
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
【自由評価欄】
−5−
)
JNC TN1400 2005-018
表 1 MOX 非均質系に関する誤差評価結果(推定臨界増倍率・推定臨界下限増倍率)
コード
推定臨界増倍率
ライブラリ
CSAS2X
1.00497
27 群 ENDF/B-IV
CSAS2X
1.00045
238 群 ENDF/B-V
MCNP4C
0.99570
ENDF/B-VI
推定臨界
下限増倍率
標準偏差
モンテカルロエラー
の平均値
実効増倍率
の最小値
ケース数
0.99019
0.00659
0.00103
0.99193
170
0.98778
0.00565
0.00105
0.98888
170
0.98698
0.00389
0.00096
0.98746
170
(1) 内側領域の密度を設定 (0.0∼6.658 g-MOX/cm3)
(2) 内側領域に含まれる水分重量割合を設定
(3) 水分重量に対応したボイドなし時の半径を算出 (内側領域に存在する MOX量)
(4) 内側領域に存在する MOX量を除いた残りの MOX量が , 7g-MOX/cm3で外側領域
に存在する場合の半径を算出
内側領域
低密度:ボイドなし
0.0∼6.658 g-MOX/cm3
外側領域
7 g-MOX/cm3
(固定値)
内側領域
: 外側領域
水分重量割合 水分重量割合
0.10 : 0.90
0.25 : 0.75
0.50 : 0.50
0.75 : 0.25
1.00 : 0.00
30cm水反射
* 水分は、内側・外側領域それぞれで、均一に分布
* MOX質量:約106kg, 水質量:約5.58kgを保存
図1 2層モデルの設定方法
−6−
JNC TN1400 2005-018
1.00
内側領域の水分量
内側領域の水分量
内側領域の水分量
内側領域の水分量
内側領域の水分量
0.97791±0.00046
0.99
0.98
0.1
0.25
0.5
0.75
1.0 (全量内側)
実効増倍率
0.97
0.96
0.95
0.94
均一状態
0.96528±0.00054
0.93
0.92
0.91
0.90
0
1
2
3
4
内側領域のMOX密度 [g/cm 3 ]
5
6
7
図 2 内側領域の MOX 密度と実効増倍率
均一状態
0.96528±0.00054
0.98
0.97791±0.00046
0.97
内側領域
MOX密度
[g-MOX/cm 3]
0.000
0.044
0.089
0.133
0.222
0.311
0.444
0.666
1.332
3.107
5.770
6.658
均一時
実効増倍率
0.96
0.95
0.94
0.93
0.92
0.91
0.90
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
内側領域の水分重量割合
図3
内側領域の水分重量割合と実効増倍率
−7−
0.9
1.0
JNC TN1400 2005-018
1.05
実効増倍率(±3σ)
1.00
実効増倍率
0.9779
0.9653
0.9527
0.95
Δk=1.26%
Δk=1.26%
6.6%
99
7.5%
106
114
0.90
0.85
60
70
80
90
100
110
120
130
MOX質量 [kg-MOX]
図4
MOX 質量と実効増倍率(均一系)
−8−
140
150
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
◎1−2(施設3−1−4)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する研究
【研究課題名(Title)】
未臨界度モニタの開発
(Development of Sub-Criticality Monitoring Method)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]稲野 昌利(いなの まさとし)
[所属]東海事業所 再処理センター 技術部 技術開発課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33、電話:029-282-1111 FAX:029-282-7839
(Name) Masatoshi Inano
(Title of Function) Technology Development Section, Technology Co-ordination Division, Tokai
Reprocessing Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194
Japan, Tel: +81-29-282-1111 FAX: +81-29-282-7839
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]白井 更知(しらい のぶとし)
[所属]東海事業所 再処理センター 技術部 技術開発課
(Name) Nobutoshi Shirai
(Title of Function) Technology Development Section, Technology Co-ordination Division, Tokai
Reprocessing Center, Tokai Works
【研究期間】
平成 13 年度 ∼
平成 17 年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
再処理施設
【研究概要】
[研究の経緯]
未臨界度測定技術については原子炉体系においては確立されており、この技術を核燃料サイクル
施設の臨界安全に適用するための研究がなされてきた。核燃料サイクル施設の未臨界度の直接測定
が可能になれば、従来間接的に把握していた施設の臨界安全性の度合いが定量的に把握できる。こ
れにより、施設の臨界安全管理技術が向上し、臨界安全設計の合理化が図れる。
再処理施設においては、JCO 臨界事故を踏まえ、臨界事故の発生が想定される箇所に、事故を収
束させるための中性子吸収材を供給するための設備を追加設置している。臨界事故の対応は臨界警
報装置もしくはその他の放射線モニタにより事故の発生を検知した後に行うことにしており、事故
発生以前の臨界安全上の異常を検知して事故の発生を未然に防止するようにはなっていないが、未
臨界度モニタシステムを用いることによりこれが可能になる。
−9−
JNC TN1400 2005-018
[研究目的]
未臨界度測定技術の再処理施設への適用性評価を行い、実用化を目指した未臨界度モニタを開発
することによって、再処理施設、核燃料加工施設等の臨界安全管理技術の向上及び臨界安全に係る
設計の合理化に資する。
[研究内容]
イ.未臨界度測定技術の適用性評価
モンテカルロ法による未臨界度測定のシミュレーション計算手法を未臨界度測定技術の実体系
への適用性評価に利用できるように整備する。
重水臨界実験装置を用いて平成 12 年度までに得られた未臨界度測定技術の開発成果及びシミュ
レーション計算を利用し、未臨界度測定技術の再処理施設への適用性を評価する。
ロ.未臨界度モニタの開発
イ.で検討された未臨界度測定技術を用いた未臨界度モニタシステムを整備し、再処理施設等の
実体系での実証試験を実施する。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
イ.未臨界度測定技術の適用性評価
未臨界度測定技術の実体系への適用性評価
ロ.未臨界度モニタの開発
未臨界度モニタシステムの整備
予備試験
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
平成 15 年度に実施した適用性評価の結果は、測定対象機器のうち最も適用可能性の高い機器であって
も適用は困難であるとの結論であったが、これは平成 15 年度までに整備した未臨界度モニタシステムが
中性子検出系を持たないことから、機器側に中性子検出器が設置されているものを測定対象としたため
である。このことから平成 16 年度は、未臨界度モニタシステムに中性子検出系を持たせることとし、測
定対象機器として中性子検出器を持たない機器に対象を広げ、より高い中性子増倍率の機器を対象とし
た適用性評価を実施した。
イ.未臨界度測定技術の適用性評価
東海再処理施設で中性子実効増倍率が高い機器は、濃度の高い Pu 溶液を取扱う機器であると考えら
れることから、再処理工程のうち最も Pu 濃度の高い Pu 濃縮から Pu 製品貯槽までのうち、貯槽の形
状から実効増倍率の高いと考えられる機器に絞り、実際に未臨界度測定を行う条件と同等となる平常
的条件により、MCNP-4B を使用した臨界解析を行った。臨界計算条件を図 1∼13 に示す。また燃料は
全て同一条件でありこれを表 1, 2 に示す。この評価結果を表 3 に示す。この臨界評価の結果から未
臨界度測定可能であると考えられる機器を対象に未臨界度測定シミュレーション計算を実施した。未
臨界度測定解析手法としてはファインマン-α法を用いる。機器中の線源から発生した中性子が、検
出器で検出されるまでを MCNP-CR によってシミュレートし中性子時系列データを求め、このデータか
ら Y 値算出用プログラムによって Y 値を求める(Y 値とは中性子計数の分散と平均の比から求めた値)
。
これを Y 値とα値(中性子減衰定数)の関係式にフィッティングしα値を求めた。適用性の可否はこ
のα値が十分な精度で求めることが出来るかどうかということである。この結果を図 14、図 15 に示
す。得られたα値の相対標準偏差は Pu 製品貯蔵セル(R041), グローブボックス(266X62B)でともに
0.25 であり、この精度で未臨界度の測定が可能であるとの結果を得た。ただし Pu 製品貯蔵セルでは
MCNP-CR の制限から単位計測時間を 115[sec]として計算を行ったが、実際の測定では 10[min]程度の
予定であり、相対標準偏差は 0.1∼0.15 程度であると考えられる。参考として各体系における、単位
計測時間に対する相対標準偏差の理論値を図 16 に示す。
ロ.未臨界度モニタの開発
1. 中性子検出系の追加
未臨界度解析による結果の精度に影響する要因としては ①実効増倍率 ②計測時間 ③計数率
が挙げられるが、体系及び中性子検出系によって計数率が決まることから、解析結果の精度を確保
することのできる中性子検出系に要求される性能について評価を行った。この評価には、実効増倍
率、計測時間、計数率の 3 つの要因から未臨界度解析精度を算出し、最低限必要とされる計数率(図
17, 18 から 100[cps]以上)を求めたうえで、中性子検出器の設置予定場所における中性子輸送計算
−10−
JNC TN1400 2005-018
により、熱中性子フラックス(図 19, 20)を求めることで、要求される性能を求めた。また、γ線の
影響についても評価を行った。これらの評価結果に従い、中性子検出系の仕様を決定し、検出系を
導入した。
2. 未臨界度モニタシステムの改良
未臨界度モニタのデータ収集系として使用してきた NT2400M は入力信号をサンプリングし解析系
にデータを送るため、中性子の有無にかかわらず、設定したサンプリングレートでデータを転送す
る。このためデータの転送負荷は高く、転送が間に合わずに起きるデータ落ちを防ぐためバッファ
を持つ。NT2400M では想定される最大計数率で中性子が入射した場合に、バッファフルとなる 20 分
程度でデータ落ちが発生し、連続測定は制限される。一方、データ収集系として NT2400M の他に時
系列直接測定装置がある。これは中性子の入射した時刻を解析系に送ることが出来るため転送の負
荷は低いが、分解時間が長く、計数率が高い場合に適さないことや、解析系の接続に ISA-bus を使
用するため、このバスをもつ限られた解析系でしか使用することが出来ない。以上のことから①中
性子の入射した時刻を解析系に送ることができること②分解時間が十分短いこと③多くの機器で
使用でき、高速なバスを持つことの観点から、データ収集系の改良として、ハードウェアの導入と
データ収集系(パルス間隔測定器)の制御プログラムを作成した。データ収集系に要求される性能及
び機能を表 4 に示す。また、データ収集系の制御と、解析処理を並行して行うことの出来る計算機
(未臨界度解析装置)を導入した。改良された未臨界度モニタシステムの概要及び外観を図 21,
22 に示す。
既設の施設においては、測定機器の設置に際し制限が多いことから、未臨界度測定装置は出来る
だけ容積の小さいものが望ましい。このため未臨界度モニタシステムの小型化を図ることを考慮し
て機器を選択した結果、容積比で 0.05 となった。
3. 予備試験
現場で測定される中性子信号に対し未臨界度モニタのデータ収集系(パルス間隔測定器)及び解
析系が正常に動作することを確認することを目的とし、測定予定場所において MCNP-CR によりシミ
ュレートされた中性子時系列データを用いて模擬信号を発生させ、未臨界度モニタのデータ収集系
へ入力し解析を行った。データ収集系において測定された中性子時系列データは、MCNP-CR による
中性子時系列データと比較し、0.1[μsec]以内で一致することを確認した。また、解析系では収集
された中性子時系列データを正常に解析できることを確認した。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ.未臨界度測定技術の適用性評価
未臨界度測定技術の東海再処理施設への適用性評価について、解析手法をファインマン-α法とし、
評価対象を Pu 製品貯槽(267V13∼V16)が設置されている Pu 製品貯蔵セル(R041)、計量槽(267V102)が
設置されているグローブボックス(266X62B)とした場合に、図 14, 15 に示されたとおり両機器ともに
相対標準偏差 0.25 の精度で測定可能という結果が得られた。
ロ.未臨界度モニタの開発
前年度までに整備した未臨界度モニタシステムに中性子検出系を持たせるため、中性子検出系の仕
様を検討し、中性子検出系の導入を実施した。また、未臨界度モニタシステムのデータ収集系及び解
析系について、要求されるシステム性能を検討し、未臨界度モニタシステムの改良を実施した。改良
したシステムを用いて、予備試験を実施した。
(今後の予定)
イ.未臨界度測定技術の適用性評価
実証試験を実施した場合において、実証試験の結果と適用性評価のシミュレーション計算の結果を
比較・検討する。
ロ.未臨界度モニタの開発
シミュレーション計算により適用の可能性があると判断された機器について、実際に現場での測定
が可能か検討し、可能であれば実証試験を実施する。
現在のデータ収集系及び解析系のプログラムは、それぞれ独立した 4 つのプログラムであり、順次
プログラムを手動により実行し処理を行っているが、データ収集系と解析系を並列に処理し、解析系
では統計処理による Y 値算出、α値算出、未臨界度算出の処理を連続して行い、随時未臨界度を表示
することを目的とした、制御・解析プログラムを作成する。
−11−
JNC TN1400 2005-018
【成果の利用実績及び活用見通し】
イ.未臨界度測定技術の適用性評価
計算機シミュレーションにより未臨界度モニタシステムの設計・評価が行え、臨界安全設計の合理
化に活用できる。
ロ.未臨界度モニタの開発
未臨界度モニタシステムを用いて実体系の未臨界度測定を行えることから、施設の臨界安全上の安
全裕度に係る知見が直接得られる。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
なし
(発表予定)
2006 年日本原子力学会春の年会
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
未調査
(参考文献)
[海外の研究の現状と動向]
未調査
(参考文献)
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
■ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
■ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
−12−
)
JNC TN1400 2005-018
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
【自由評価欄】
−13−
JNC TN1400 2005-018
図 1:プルトニウム製品貯槽(267V10∼12)計算モデル図
−14−
JNC TN1400 2005-018
−15−
図 2:プルトニウム製品貯蔵セル(R023)平面図
JNC TN1400 2005-018
図 3:プルトニウム製品貯蔵セル(R023) A-A 断面図
−16−
図 4:プルトニウム製品貯蔵セル(R023) B-B 断面図
JNC TN1400 2005-018
図 5:プルトニウム製品貯槽(267V13∼16)計算モデル図
−17−
JNC TN1400 2005-018
図 6:プルトニウム製品貯蔵セル(R041)平面図
−18−
JNC TN1400 2005-018
図 7:プルトニウム製品貯蔵セル(R041) A-A
断面図
図 8:プルトニウム製品貯蔵セル(R041) B-B
−19−
断面図
JNC TN1400 2005-018
図 9:グローブボックス(266X62B)計算モデル図
−20−
JNC TN1400 2005-018
図 10:プルトニウム受槽(266V23)計算モデル図
−21−
JNC TN1400 2005-018
図 11:プルトニウム濃縮セル(R025A)セル 平面図
−22−
JNC TN1400 2005-018
図 12:プルトニウム濃縮セル(R025A)セル 立面図
−23−
JNC TN1400 2005-018
−24−
図 13:プルトニウム濃縮セル(R025A)セル A-A 断面図
JNC TN1400 2005-018
3.0x10-2
2.5x10
Y値曲線
フィッティング曲線
(α= 4082(±1039))
-2
Y値
2.0x10-2
1.5x10
-2
1.0x10
-2
5.0x10
-3
0.0
0.0
-4
5.0x10
1.0x10
-3
1.5x10
-3
2.0x10
-3
-3
2.5x10
3.0x10
-3
-3
3.5x10
ゲート幅(sec)
図 14:Pu 製品貯蔵セル(R041)
1.5x10-2
Y値曲線
フィッティング曲線
α= 1085(±269)
Y値
1.0x10-2
5.0x10-3
0.0
0.0
2.0x10-3
4.0x10-3
6.0x10-3
8.0x10-3
ゲート幅(sec)
図 15:グローブボックス(266X62B)
−25−
1.0x10-2
1.2x10-2
JNC TN1400 2005-018
2
1.9
1.8
1.7
1.6
1.5
1.4
1.3
−26−
relative error
1.2
1.1
R041セル
グローブボックス
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
5
10
15
計測時間(分)
20
25
図 16:単位計測時間に対する未臨界度解析精度の理論値
30
JNC TN1400 2005-018
0.168 1
0.166
相対標準偏差
0.164
0.162
0.160
εy
εy(C→∞)
0.158
0.156
5
10
0.154
0.152
0.150 1
1.0E+00
5
10
1.0E+01
50 100
5001000
5000
50 100
5001000
5000
1.0E+02
計数率[cps]
1.0E+03
1.0E+04
図 17:Pu 製品貯蔵セル(R041)における計数率に対する Y 値の相対標準偏差
0.380 1
0.379
相対標準偏差
0.378
0.377
εy
εy(C→∞)
0.376
0.375
5
10
0.374
50 100
5001000
5000
50 100
5001000
5000
0.373
1
0.372
1.0E+00
5
10
1.0E+01
1.0E+02
計数率[cps]
1.0E+03
1.0E+04
図 18:グローブボックス(266X62B)における計数率に対する Y 値の相対標準偏差
−27−
JNC TN1400 2005-018
図 19:Pu 製品貯蔵セル(R041)のコンクリート壁外側側面における中性子線スペクトル
熱中性子フラックスは 18.4[n/cm2/sec]となる。
中性子検出器の断面積を S[cm2], 熱中性子の検出効率は通常ほぼ 1.0 であるが低く見積もり 0.7 とする
と、この中性子検出器で得られる計数率は 18.4×0.7S[cps]である。
未臨界度解析で要求される計数率は 100[cps]以上であるため、 100 < 18.4×0.7S ⇒ 7.8[cm2] < S の
検出器であれば要求が満たされる。
−28−
JNC TN1400 2005-018
図 20:計量槽(267V102)の設置されたグローブボックス(266X62B)側面における中性子線スペクトル
熱中性子フ ラックス は 14.8[n/cm2/sec]となり、要求され る計数率を満たすには 検出器断面積 が
9.68[cm2]以上、検出効率 0.7 以上が要求される。
−29−
JNC TN1400 2005-018
図 21:未臨界度モニタシステム概要図
図 22:未臨界度モニタシステム外観図
−30−
JNC TN1400 2005-018
表 1:Pu の組成
核種
組成比(wt%)
Pu-238
Pu-239
Pu-240
Pu-241
Pu-242
0.99
63.87
21.2
11.13
2.81
表 2:硝酸プルトニウム水溶液の仕様
プルトニウム濃度
遊離硝酸濃度
密度
温度
酸化状態
200 gPu/L
5 mol/L
1.43 g/cm3
40℃
Ⅳ価
表 3:各測定対象機器における実効増倍率
内容
プルトニウム製品貯蔵セル(R023)
プルトニウム製品貯蔵セル(R041)
グローブボックス(266X62B)
プルトニウム濃縮セル(R025A)
機器
267V10∼12
267V13∼16
266X62B
266V23、24
keff
0.5432
0.5568
0.3247
0.2566
標準偏差
0.0010
0.0010
0.0009
0.0008
表 4:データ収集系の要求される性能及び機能
・
・
・
・
・
TTL レベル(5V)のパルスを入力できること
PC との接続が CardBus であり、バスマスタ転送が出来ること
PC へデータを送る箇所に FIFO を持つこと
動作クロック 10MHz 以上
パルスが到着する度にクリア可能なカウンタを持つこと
−31−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成 16 年度)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する研究
【分類番号】
◎2−1(施設3−2−1)
【研究課題名(Title)】
核燃料施設における中性子線量評価に関する研究
(Study on Neutron Dosimetry in Nuclear Fuel Cycle Facilities)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名,所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and Phone)】
[氏名]百瀬 琢麿 (ももせ たくまろ)
小林 博英 (こばやし ひろひで)
[所属]東海事業所 放射線安全部 線量計測課
放射線管理第二課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33
電話:029-282-1111 FAX : 029-282-1873,029-282-9966
(Name)
Takumaro MOMOSE
Hirohide KOBAYASHI
(Title of function)
Radiation Dosimetry and Instrumentation Section,
Reprocessing Radiation Control Section,
Radiation Protection Division, Tokai Works
(Address, Phone and Fax)
4-33 Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194 Japan
Tel. +81-29-282-1111,Fax. +81-29-282-1873,+81-29-282-9966
(E-mail)
[email protected]
[email protected]
【担当研究者名及び所属(Name, Title of function)】
[氏名]辻村 憲雄(つじむら のりお),吉田 忠義(よしだ ただよし)
,
高田 千恵(たかだ ちえ),三上 智(みかみ さとし)
[所属]東海事業所 放射線安全部 線量計測課
放射線管理第二課
(Name) Norio TSUJIMURA, Tadayoshi YOSHIDA, Chie TAKADA and Satoshi MIKAMI
(Title of function)
Radiation Dosimetry and Instrumentation Section,
Reprocessing Radiation Control Section,
Radiation Protection Division
【研究期間】
平成3年度 ∼
平成17年度
【関連する共同研究,実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
核燃料サイクル開発機構 東海事業所 計測機器校正施設
【研究概要】
[研究の経緯]
−33−
JNC TN1400 2005-018
民間の MOX 燃料製造加工施設の建設あるいは MOX 燃料の軽水炉利用計画に従い,サイクル機構
が保有する中性子線量評価に係る一連の技術の移転が望まれている。国内唯一の MOX 燃料製造加工
施設において,これまで得られた知見を体系的に整理するとともに,現時点での技術上の課題を解
決・整理しておく必要がある。
[研究目的]
MOX 加工施設の実用化及び MOX 燃料の軽水炉利用に向けて,中性子被ばく線量測定・評価手法
の高度化及び実規模プラントにおける線量データ集の整備を実施し,中性子被ばく線量の低減化並び
に中性子線量評価に係る基準類の整備に資する。
[研究内容]
イ.臨界事故時の中性子線量評価手法に関する研究
体内中に生成されるナトリウム-24 放射能から中性子被ばく線量を算出する手法及び個人携帯
型放射化検出器の改良研究並びに大線量を簡便かつ迅速に評価できる TLD 内蔵積算型中性子線量
当量計の適用検討を行う。
ロ.中性子個人線量計及びサーベイメータ類の高度化研究
MOX 燃料加工施設などで使用される個人線量計及びサーベイメータ類の高度化研究(精度検証,
軽量化などの改良)を行い,その諸性能を評価・検証できる減速型中性子標準校正場及び臨界事故
を模擬した簡易モックアップ照射設備の開発・整備を行う。
ハ.MOX 燃料施設における中性子線量データ集の整備
MOX 燃料加工施設内外で測定したこれまでの中性子スペクトル情報,線量率情報などを体系的
に整理し,既存の線量計の有用性並びに遮へい計算に用いる計算コード類の適用性を検討する。
【当初の達成目標(平成 16 年度)
】
イ.臨界事故時に線量を迅速かつ簡便に評価できる個人携帯型放射化検出器のスペクトル依存性を評価
し,線量評価法を構築する。
ロ.減速中性子校正場を利用した種々の中性子個人線量計等の MOX 燃料施設における特性を明らかに
する。さらに,携帯性に優れる軽量形中性子線量当量率サーベイメータ,中性子のエネルギー及び方向
分布が不明な実作業環境下で中性子個人線量当量を測定できる測定器を新たに開発する。
ハ.中性子スペクトロメータを用いて MOX 燃料施設内の作業環境における中性子スペクトル情報を適
時拡充していく。
【研究実施内容及び成果(平成 16 年度)】
イ.臨界事故時の中性子線量評価手法に関する研究
臨界事故時における中性子被ばく線量の評価には放射化検出器が一般に使用され,中でも線量に最も
寄与する高エネルギー中性子の測定には,硫黄(32S(n,p)32P 反応)が使用される。しかしながら,硫黄
(一般に粉をペレット形に固めたもの)の場合,生成される核種が純β線放出核種の 32P(半減期
14.26 日)であるため,測定の前段階で加熱・溶融等の処理が必要であり,測定の迅速性の点で課題が
あった。そこで,より簡便かつ迅速に測定することを目的に,硫黄を含む硬質ゴムである「エボナイト」
を臨界事故時用線量計として活用することを検討した。エボナイトを薄い平板形に加工しておくことに
よって,前処理無しに,例えば端窓形 GM 計数管式表面汚染サーベイメータ等のような簡易な放射能測
定装置によるβ線の直接測定が可能になる。この方法の場合,エボナイト中に生成された 32P の放射能
の絶対値を求める必要はなく,ある固定した幾何学条件のもとでの測定器の計数(率)と線量との相対
関係が分かれば線量評価が可能になる。
検討の第1段階として,平成 15 年度までに,エボナイト線量計の形状,感度,などを調査し,さら
に原子炉を使用した照射試験を実施した。その結果,計数率から中性子線量に換算する係数を,252Cf
中性子線源を用いた照射によって決定する一点校正であっても,溶液系臨界事故の場合は,ファクター
2 程度の精度で中性子線量を評価できることが分かった。これは,高線量被ばく者に対して速やかな治
療を行う上で必要となる被ばく線量の目安データとしては十分な精度であるが,最終的な被ばく線量評
価においてはより精度の高いデータが必要である。そこで,エボナイト線量計の中性子スペクトル依存
性と,線量評価にあたってのその適切な補正方法について検討した。
−34−
JNC TN1400 2005-018
(1) 臨界事故時の中性子スペクトルは,臨界の体系(溶液系臨界又は金属系臨界)及び遮へい物の
状況によって多様に変化する。そこで,事故時に想定される中性子スペクトルに対するエボナイト中
の 32S(n,p)32P 反応率を,モンテカルロ輸送計算コード MCNP4C を用いて計算した。ここでは,想定
中性子スペクトルを次のように模擬した。
「金属系臨界」の線源スペクトルは,点線源と見なした 235U
の核分裂スペクトル,また,
「溶液系臨界」のそれは直径 20∼40cm の水球内で一様に 235U 核分裂が
生じた場合の漏洩スペクトルとし,加えて,遮へい体によるスペクトル変化も考慮するために,それ
ぞれの線源スペクトルに対し厚さ 5∼30cm の鉄,厚さ 10∼50cm の普通コンクリートそれぞれを設
置した場合,さらに鉄を線源側の第一層,コンクリートを鉄に続く第二層とする積層遮へいを設置し
た場合の漏洩スペクトルも準備した。これらの漏洩中性子を,直径 50mm,厚さ 3mm の円盤形エボ
ナイトに正面方向から入射させ,エボナイト中の単位フルエンス当たりの 32S(n,p)32P 生成量を計算し
た。図1に,単位中性子フルエンス当りの 32P 生成量と中性子フルエンス−中性子線量(組織カーマ)
換算係数の関係を示す。図には,前述した中性子スペクトルのほかに代表的な原子炉中性子場の中性
子スペクトルに対する結果も示した。なお,図のデータは,ともに単位中性子フルエンス当りに規格
化しているので,32P 放射能(厚さ 3mm(飽和厚)以上のエボナイトの場合は計数率に比例)と中性
子線量の関係を表わしている。遮へい体厚さなどをパラメータに分析した結果,反応率の変化は臨界
の体系にはあまり依存せず,むしろ,図の結果からも明らかなように遮へい物である鉄とコンクリー
トの厚さに依存することが分かった。依存の程度は,252Cf 核分裂中性子スペクトルに対して規格化し
た比較的単純な補正関数で表現することが可能であり,これを「スペクトル依存補正係数」として次
式によって中性子線量を評価する。
K = C × FCf × FS
ここで,K は,中性子線量,C は,放射能測定器等でエボナイトを計測した時の計数率,FCf は,252Cf
中性子線源を用いた基準照射によって得られる計数率から中性子線量への換算係数,FS は,スペクト
ル依存補正係数である。溶液系臨界に対する,遮へい物の厚さの関数で表したスペクトル依存補正係
数 Fs を図2及び表 1 に示す。
(2) 2002 年に CEA Valduc センターで実施された SILENE 臨界事故時相互比較試験の結果(平成 15 年
度安全研究調査票で報告)の再評価を実施した。本相互比較試験では,硝酸ウラニル溶液炉心タンク
(直径 36cm)からの漏洩中性子,炉心タンクを厚さ 10cm の鉛遮へいで覆った場合の漏洩中性子と
いう二種類の異なる中性子スペクトル条件で照射がなされた。このうち,鉛との非弾性散乱によって
核分裂中性子が 32S(n,p)32P 反応のしきいエネルギーを下回る領域にまで下がる後者の照射条件にお
いて, 252Cf の基準照射から決定した換算係数(すなわちスペクトル依存補正係数を 1 として取り扱
う)を用いて中性子線量を評価したところ,約半分の過小評価となった。そこで,この結果に対して,
(1)で述べたスペクトル依存補正係数を適用することによって,中性子スペクトルに対する依存性の是
正を試みた。この補正係数の算出にあたって,以下に示す二種類の方法を適用した。第一の方法では,
フランス放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)から入手した SILENE 炉の実測中性子スペクトル
(以下,「実測スペクトル」と記す)をそのまま線源スペクトルとして使用し,前述したモンテカル
ロ計算法によって補正係数を算出した。第二の方法では,SILENE 炉を直径 30cm の水球で近似し,
「模擬
さらにそれに SILENE 炉と同じ厚さ 10cm の鉛遮へいで覆った場合の漏洩スペクトル(以下,
スペクトル」と記す)を用いて同様に補正係数を算出した。
「実測スペクトル」と「模擬スペクトル」
の比較を図 3 に示す。両中性子スペクトルはよく似ている。
これらの計算によって求めたスペクトル依存補正係数を,SILENE 相互比較試験で得られたエボナ
イトの計数率に適用し,中性子線量を再評価した結果を表2に示す。「実測スペクトル」,「模擬スペ
クトル」ともに,スペクトル依存補正係数を適用して再評価した中性子線量は,主催者公表の基準値
に対して約±15%以内で一致する結果となった。これは,測定などによる精度の高い中性子スペクト
ル情報があれば,適切なスペクトル依存補正係数の算出が可能であること,また,測定又は臨界事故
発生場所の構造物等を厳密に模擬した体系での計算等による精度の高い中性子スペクトル情報がな
くとも,核分裂スペクトルの変化に影響する必要最小限の情報(金属系/溶液系,遮へい物の材質と厚
さ)があれば,十分に適切なスペクトル依存補正係数を導出可能であることを示すものである。また,
臨界事故が発生する可能性のある区域について,その場所の遮へい条件等を反映したスペクトル依存
補正係数を,例えば,表1に示したように前もって準備しておくことで,臨界事故時に迅速かつ高い
精度で中性子線量を評価することができる。
−35−
JNC TN1400 2005-018
ロ.中性子個人線量計及びサーベイメータ類の高度化研究
平成 15 年度までに,252Cf 及び 241Am-Be 中性子線源を用いた速中性子校正場における基準線量当量
率の精度向上,並びに速中性子校正場で中性子測定器(中性子線量当量(率)計)を校正する際の不確
かさ要因の分析とその補正方法について検討し,その検討結果を新規制定 JIS 原案(JIS Z4521 中性子
線量当量(率)計の校正方法)に反映した。しかしながら,一方で,中性子測定器は,一般に,理想的
なエネルギー特性をもっているものは少なく,例えばアルベド中性子線量計などの場合, 252Cf や
241Am-Be 等の RI 中性子線源から得られるレスポンスと実作業場所の中性子によるレスポンスとで大き
な相違が生じる。このため,そのような測定器に対して有効かつ実用的な校正方法の開発が望まれてい
た。そこで,これら中性子測定器の実作業場所における特性等を評価するため,実際の作業場所の中性
子スペクトルを模擬した減速中性子校正場(作業場模擬中性子場(Simulated Workplace Neutron Field)
と呼ぶ場合もある)の開発に着手した。既に,252Cf 中性子線源を,中空円筒形の鋼鉄及びメタクリル樹
脂(PMMA)からなる減速材でカバーした減速中性子校正場を開発し,平成 15 年度安全研究成果調査
票で報告しているが,今年度は,252Cf 中性子線源の位置を工夫することによって,中性子スペクトルの
バリエーションをより拡張した減速中性子校正場を開発・整備した。さらに,中性子エネルギー分布及
び方向分布に依存せず精度良く中性子個人線量当量(Hp(10),ICRU スラブファントムの深さ 10mm 位
置での線量当量であり,個人モニタリングのための実用量である)を測定する新しい中性子測定器を開
発,試作した。本測定器は,中性子のエネルギー分布と方向分布が不明な実作業環境の中性子場におい
て,基準となる中性子個人線量当量を測定することを目的としている。
また,平成 15 年度に試作した軽量形中性子線量当量率サーベイメータを改良し,その特性試験を実
施した。
(1) 減速中性子校正場を整備した計測機器校正施設は,1 階と地下1階からなる平屋建てで,照射室
の床面積は 163m2,1階床面から天井まで高さ 5.3m,地下 1 階から 1 階床面まで 2.0m である。室
内中央の床をグレーチング構造(6.0m×6.0m,吹き抜け構造)とし,さらに天井と外壁二面を軽量
コンクリート製にすることによって,室内の床,壁及び天井からの散乱線を極力低減させている。中
性子測定器の定期的な校正に使用する 252Cf 線源は,通常地下 4.0m の格納容器内に収納しており,使
用時に線源案内管に沿ってグレーチング上 1.26m の位置まで遠隔操作によって移送する。新たに整備
した減速中性子校正場は,前述した照射室の構造と既設中性子照射装置の構造を変更することなく最
大限に活用しつつ,252Cf 中性子線源と減速材を組み合わせることによって,MOX 燃料施設作業環境
における中性子スペクトルを模擬しており,MOX 燃料施設模擬減速中性子校正場(運用名称:ハイ
ブリッド減速中性子校正場)と名付けた。ハイブリッド減速中性子校正場は性質の異なる二種類の減
速中性子校正場からなる。照射室の構造と当該減速中性子校正場(以下,「減速場」と記す)におけ
る線源等の配置を図 4 に示す。
第一の減速場(以下,「1F 減速場」と記す)は,前年度に整備したものであり,1階グレーチング
上の線源案内管周辺に,PMMA 製及び鋼鉄製の中空円筒形減速材を配置する。この減速場は,室内
散乱線による寄与が小さく,シャドーシールド法等を用いることで,減速材側からの直接線のみによ
る中性子測定器の校正が可能である。
今年度は,中性子スペクトルのバリエーションをよりエネルギーの低い領域に拡張するため,グレ
ーチング下地下1階に第二の減速場(以下,
「B1 減速場」と記す)を整備した。本 B1 減速場は,1
F 減速場とはその設計コンセプトが異なり,室内の床,壁からの散乱線を活用する。減速材を使用し
て核分裂中性子スペクトルを変化させる場合,水素含有物(ポリエチレン,PMMA,コンクリート等)
の減速材の厚みを増すにつれて核分裂中性子の減速も進むが,反面,減速された中性子が水素によっ
て吸収(捕獲)されることになるため減速材の外に漏れ出る中性子フルエンス率(線量率)が大きく
減少し,中性子測定器を校正する校正場としての意味を失う結果となる。B1 減速場の設計コンセプ
トである「室内散乱線の有効活用」は,中性子フルエンス率(線量率)を大きく減じることなく,核
分裂中性子を効果的に減速させる工夫であると同時に,実際の作業環境(必ず散乱線による寄与が含
まれる)を模擬するという目的にも合致したものである。本 B1 減速場を整備するにあたって,ワイ
ヤ駆動電磁石を用いて地下の線源格納容器から線源を吊り上げ,地下1階床面から 1.26m の高さに保
持する線源巻上装置を新たに製作した。線源固定位置には,線源(案内管)を取り囲むようにブロッ
ク形の減速材を配置する。減速材には,PMMA を主に,被校正器の側の一部を鋼鉄と黒鉛(グラフ
ァイト)を置き換えて使用する。ここで,鉄は,非弾性散乱によって核分裂中性子を低エネルギー側
にシフトさせること,黒鉛は,弾性散乱を利用して高エネルギーの直接線を散乱させる(逸らす)こ
−36−
JNC TN1400 2005-018
とによって,PMMA による減速や室内散乱線などによる低エネルギー中性子との相対割合を変化さ
せることを目的としている。表3に各減速場の減速材の種類,図 5,図 6 にそれぞれ 1F 減速場,B1 減
速場の外観を示す。
両減速場の中性子スペクトル,周辺線量当量(H*(10))率並びに個人線量当量(Hp(10))率を,
MCNP-4C を用いて計算した。計算にあたって,252Cf 線源の周囲構造(線源カプセル,線源ホルダ,
照射筒,電磁石等)や減速材,室内形状等を可能な限り計算体系に組み込んだ。また,計算結果の妥
当性を検証するため,寸法の異なる8個のポリエチレン減速球と 3He 比例計数管からなるボナー球ス
ペクトロメータ(BMS)及び水素比例計数管式スペクトロメータ(ROSPEC)による測定も実施し
た。それぞれの減速場の中性子スペクトルの計算値と BMS による測定値を比較した結果を図 7 に示
す。また,計算値及び測定値から得られた中性子フルエンス率及び周辺線量当量率等を表 4 に示す。
中性子スペクトルの形状は,水素含有物によって中性子が減速された,いわゆる「核分裂+1/E 型ス
ペクトル」を形成しており,これは MOX 燃料施設内の作業場所で実測される中性子スペクトルに良
く似ている。また,計算値と測定値はよく一致しており,1F 減速場では中性子フルエンス及び H*(10)
で最大 4%,B1 減速場においても中性子フルエンスで最大 5%,H*(10)で最大 8%の相違であった。
1F 減速場に比べて B1 減速場での計算値と測定値の相違が僅かに大きな要因は,壁材であるコンク
リートに含まれる水分量の不確かさによるものと考えられる。
本減速場の整備によって,フルエンス平均エネルギー0.4∼2.0MeV の範囲の中性子スペクトル場で
中性子測定器の照射試験を行うことが可能となった。本減速場で生成可能な中性子スペクトルの平均
エネルギーの範囲と,MOX 燃料施設の代表的な作業場所で測定された中性子スペクトルの平均エネ
ルギーの範囲を比較した結果を図 8 に示す。本減速場は,MOX 燃料施設の代表的な作業場所で測定
される中性子スペクトルの範囲をほぼカバーしている。本減速場の整備によって,実際の作業場所に
近い条件での中性子測定器の特性評価と校正(スペクトル依存補正係数の決定),また,中性子測定
器のエネルギー応答関数の積分検証試験等を実施することが可能になった。
2) 上記減速場において,我々が日常よく使用している中性子測定器を照射し,特性を評価しておく
ことは,線量評価精度及び使用する校正定数等の妥当性等を確認する上で重要である。今年度は,二
種類の中性子個人線量計,サイクル機構(旧動燃)が開発し個人被ばく管理に使用しているアルベド
TLD 及び,受動型の中性子個人線量計としては現在最も広く使用されている固体飛跡検出器(CR39)
を試験対象として選定した。
線量計はそれぞれ,線源の中心から 0.75m の距離に設置した ISO 水ファントム(30cm×30cm×
15cm)に貼付し,散乱線を含めた状態で3∼4時間程度照射した。本実験で得られた両線量計の個人
線量当量レスポンスを図 9(252Cf に対するレスポンスを 1 に規格化)に示す。図から,アルベド線量
計である TLD は低エネルギー側で感度が高く,固体飛跡検出器は感度がエネルギーによらずほぼ一
定である,といった従来から知られている各線量計の特徴を反映する結果を確認できた。さらに,本
実験によって得られたスペクトル依存補正係数(図 9 に示した個人線量当量レスポンスの逆数に相当
する)は,MOX 燃料施設の実作業環境でフィールド照射実験等によって評価された係数とほぼ同等
の値であった。また,TLD 及び固体飛跡検出器のエネルギー特性の違いから,両者のレスポンス比に
より作業環境の中性子スペクトルを推定することが可能である。過去に実施した MOX 燃料施設の作
業者による線量計同時着用試験の結果と,今回の減速場での照射試験の結果を比較したものを図 10 に
示す。減速場(コード F100 /P100,減速材:鉄 100mm+PMMA100mm,フルエンス平均エネルギ
ー0.52MeV)での結果は,同時着用試験の結果をよく再現していることが分かる。これらの結果から,
減速場のスペクトル条件が,線量計の校正の観点において,実際の MOX 燃料施設をよく代表してい
ること,したがって,TLD 等中性子個人線量計のスペクトル依存補正係数の決定とその個人モニタリ
ング実務への適用が可能であることが示唆された。
(3) 前節において,MOX 燃料施設における中性子測定器の特性評価及びその環境に適切な校正定数
(スペクトル依存補正係数)の決定に,上記減速場が適用できる可能性が示唆されている。ただし,
上記減速場は,あくまでも 模擬 フィールドであり,実作業環境の条件を必ずしも厳密に反映した
ものではない。例えば,エネルギー分布が仮に同じであったとしても,方向分布の違いによって,本
減速場で得られた中性子測定器の特性と実作業環境における特性とで大きく異なる可能性がある。こ
れは,体表面に装着する個人線量計に対して,多方向から中性子が入射する場合に,特にそうした傾
向が現れることが予想される。この問題解決にあたって,図 11 に示す新型中性子測定器(中性子個
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人線量当量測定器)を国内メーカとの共同により開発した。本測定器は,エネルギー特性と方向特性
とが中性子個人線量当量(Hp(10))の特性に可能な限り合致するよう設計した特殊な形状の減速材と
吸収材の内部に熱中性子検出器(3He 比例計数管)を配置することによって,中性子のエネルギー分
布や方向分布が不明な場において基準となる中性子個人線量当量(Hp(10))を簡便に測定することを
目的としている。本測定器を実作業環境における中性子個人線量当量の基準測定器とし,中性子個人
線量計と比較することによって,実作業環境における中性子個人線量計の線量評価精度及び前述した
減速場で決定したスペクトル依存補正係数等の妥当性を検証することができる。
図 12 に開発した中性子線量当量測定器の基本構造(断面図)を示す。本測定器は,周辺線量当量
(H*(10))を測定する中性子線量当量率サーベイメータ(いわゆるレムカウンタ)を,ボロン入りポ
リエチレンからなる遮へい体の中に中心を偏心させた状態で埋設し,一部分だけを遮へい体から露出
させた構造を持つ。中心部の熱中性子検出器(Eurysis 製 10mm ×10mm 円筒形 3He 比例計数管)
の配置,各部の形状と厚さは,MCNP による計算によって決定した。背面側ボロン入りポリエチレン
の半径を 15cm に固定した状態で,中心部のポリエチレン球の位置と半径,中間ボロン吸収層の開口
率,前面側のポリエチレンの形状と半径及び側面部遮へいの長さ等をパラメトリックに変化させなが
ら,中心部ポリエチレン球の中心位置における 3He(n,p)反応率を計算し,エネルギー特性と方向特性
について最適と思われる構造を探した。その結果,図 12 に示すような構造を得た。MCNP で計算し
た,エネルギー特性(0°入射条件,252Cf に対する感度を 1 に規格化),252Cf,D2O 減速 252Cf 及び熱
中性子に対する方向特性を,それぞれ図 13,図 14 に示す。正面入射( =0°)時にはレムカウンタと
ほぼ同等のエネルギー特性,正面入射時以外には Hp(10)の角度依存係数 R( )に近い方向特性を実現
している。現在,本試作機の特性実験を減速場で実施しており,また,加速器を使用した単色中性子
場,熱中性子場等での特性試験を予定している。なお,今回開発した中性子線量当量測定器と同種の
測定器は現存しない。
(4) 現在使用されているレムカウンタは,その質量(約 7∼10kg)ゆえ移動可能型(transportable)
ではあるが片手で簡単に扱えるような携帯型(portable)とは言い難い。そこで,こうしたレムカウ
ンタによる放射線管理を支援する目的で,携帯性に優れる軽量(質量約 2∼3kg を目標)な中性子線
量当量率サーベイメータの開発を国内メーカと共同で進めている。本サーベイメータは,直径 10cm×
長さ 7.5cm と直径 3.8cm×長さ 3.5cm の高密度ポリエチレン円柱を二段重ねにし,それぞれの中心付
近に配置した 2 個のシンチレータの計数比から入射する中性子のエネルギーを推定し,そのエネルギ
ーに対応した換算係数(関数)を計数率に乗じることによって周辺線量当量率を算出する。
平成 15 年度に試作したサーベイメータ(一次試作機)は,熱中性子検出器に Li ガラスシンチレー
タを使用したもので,252Cf に対する感度は約 0.3 cps/( Sv/h)と十分であったものの,γ線との信号分
離が十分ではなかった。そこで,二次試作機では,熱中性子検出器に LiI(Eu)シンチレータを採用し,
この問題を改善した。使用した LiI(Eu)は,海外メーカに依頼して新たに製作したものであり,結晶
,6Li の濃縮度は 95%で
寸法が直径 10mm×長さ 10mm(ハウジングを含め直径 17mm×長さ 15mm)
ある。試作したサーベイメータの外観写真を図 15,その内部透視図を図 16 に示す。検出部(減速材
含む),高圧回路,増幅器,波高弁別回路及び計数器などを含め,質量は 1.4kg である。γ線(137Cs,
60Co)と中性子(252Cf)に対する LiI(Eu)のパルス波高スペクトルを図 17 に示す。γ線と中性子によ
るパルスの分離は良好であり,137Csγ線の場合,10mSv/h まで有意な感度はなかった。減速場で取
得した LiI(Eu)の周辺線量当量率レスポンスのエネルギー依存性を図 18 に示す。深部 LiI(Eu)の 252Cf
に対するレスポンスは 0.3cps/( Sv/h)であり,Li ガラスシンチレータを使用した一次試作機と同等で
あった。またエネルギー依存性は,表層部 LiI(Eu),深部 LiI(Eu)ともに MCNP による計算値とほぼ
一致する結果を得た。現在,線量率演算アルゴリズムの開発と実作業環境でのフィールド実験の準備
を進めている。
(5) 国際規格 ISO8529 及び日本工業規格原案 Z4521(平成 16 年度原案作成,当グループが原案の
一部を作成)に準拠した「基準校正」と,基準校正がなされた基準実用測定器との比較校正によって
実用測定器(被校正器)を校正する「実用校正」に分類・整理する中性子測定器の校正体系を立案し,
日本保健物理学会「中性子校正技術の標準化専門研究会(平成 15∼16 年度)」で提案した。この校正
の体系は,専門研究会報告書として公開され,中性子測定器の校正にかかるガイドラインとして今後
活用される見通しである。
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ハ.MOX 燃料施設における中性子線量データ集の整備
ボナー球スペクトロメータを用いて MOX 燃料の粉末調整工程で中性子スペクトルの測定を実施し,
以前に測定した結果(平成 13 年度∼平成 14 年度安全研究中間評価調査票で報告)とほとんど変化の
ないことを確認した。
【研究の達成状況(平成 16 年度)
】
イ.臨界事故時の中性子線量評価に関する研究
エボナイトを利用した臨界事故中性子線量計の特性について,感度,検出下限値,形状(厚さ)依存
性,エネルギー依存性及び妨害核種の影響等の評価を行い,原子炉を用いた国際相互比較試験からその
線量評価精度を検証した。これにあたって,エボナイト線量計の中性子スペクトル依存性について,臨
界事故の体系(溶液/金属系,遮へいの有無,遮へいの材質と厚さ)を考慮に入れた補正方法を確立した。
エボナイト線量計は,測定が簡便であること(特殊な測定装置を必要としない),十分な検出感度を有し
ていること,さらにコストパフォーマンス的な観点からみても臨界事故時用線量計として優れている。
以上をもって,エボナイトを利用した臨界事故時用線量計の実運用に向けた基盤データの整備を完了し
た。
ロ.中性子個人線量計及びサーベイメータ類の高度化研究
252Cf 標準中性子線源と減速材を用いた,
MOX 燃料施設の作業環境の中性子スペクトルを模擬した「ハ
イブリッド減速中性子校正場」を開発し,計算と測定によって中性子スペクトル,線量率等を精度良く
定量した。本減速中性子校正場は,MOX 燃料施設の代表工程における中性子スペクトルの特徴(高速,
中速及び熱中性子フルエンスの相対割合,平均エネルギー等)をほぼ網羅しており,同施設で使用する
中性子測定器の特性評価と校正に有効に活用できた。また,中性子個人線量当量測定器を新たに開発し
た。本測定器は,作業環境の中性子エネルギー分布や方向分布が不明な実作業環境において簡便に中性
子個人線量当量を測定することができるものである。これらの開発・整備によって,「作業環境を模擬し
た中性子校正場で中性子測定器を校正し,次に,実作業環境における中性子測定器の精度又は校正結果
の妥当性を,基準測定器(中性子個人線量当量測定器)との比較により検証する」という,
「中性子線量
評価にかかる体系」の確立に向けた準備が整った。なお,軽量形中性子線量当量率サーベイメータにつ
いては特許出願済み,中性子個人線量当量測定器については出願手続き中である。
ハ.MOX 燃料施設における中性子線量データ集の整備
MOX 燃料施設の代表工程における中性子スペクトルデータの拡充を図るとともに,代表工程以外に
おける中性子スペクトルを取得するための計画を立案した。
(今後の予定)
イ.臨界事故時の中性子線量評価に関する研究
エボナイトを全従事者に配備すべく,その仕様(形状,着用条件)に関する最終的な検討を行う。さ
らにエボナイトと TLD 等を組み合わせた線量評価手法を検討する。
ロ.中性子個人線量計及びサーベイメータ類の高度化研究
ハ.との共通(融合)課題として取り組む。内容はハ.に記載の通り。
ハ.MOX 燃料施設における中性子線量データ集の整備
ハイブリッド減速中性子校正場を用いて,様々な中性子測定器の特性試験を継続して実施するととも
に,新たに開発した中性子個人線量当量測定器の性能評価を行う。さらに,代表的な工程以外の作業区
域での中性子スペクトルデータの収集,新たに開発した中性子個人線量当量測定器を基準測定器とする,
実作業環境下における中性子測定器の特性実証試験を行い,前述した「中性子線量評価にかかる体系」
を完成させる。さらに,燃料輸送キャスクの中性子スペクトルを模擬した減速中性子校正場の開発にか
かる検討を行う。
なお,現在,上記と同種の研究が,EU の主要原子力研究機関において実施されている(EVIDOS プ
】に
ロジェクト)。当該プロジェクトの概要については,本調査票【国内外の研究動向(平成 16 年度)
詳しく記述しているが,同プロジェクトで展開されている研究内容は,調査対象施設が全ての原子力施
設か MOX 燃料施設に限定したものであるか,調査対象測定器が欧米製か国産かといった違いはあるが,
本安全研究成果調査票で報告した内容とその方法論において大きな違いはない。EVIDOS プロジェクト
と同種の研究が我が国でもサイクル機構が中心となって実施されていること,民間 MOX 燃料施設の建
設・運転開始にあたって,作業員の中性子線量評価精度に関して EU 等と同等の水準で検証する技術・
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能力を有していることを示すべく,来年 6 月の国際学会 NEUDOS10 で本安全研究にかかる最終成果を
報告する予定である。
【成果の利用実績及び活用見通し】
イ.臨界事故時の中性子線量評価に関する研究
エボナイト線量計を用いた中性子線量評価法については,サイクル機構内部等での運用を計画している。
また,文部科学省の委託事業として設立された「中性子積算線量測定法ワーキンググループ」
(平成 16 年
度,日本分析センター事務局)において,報告者のグループによる「エボナイト(硫黄)の中性子スペク
トル依存性」に関する研究成果が反映された。ワーキンググループ報告書は,原子力災害時の周辺地域に
おける環境中性子線量の評価マニュアルの策定に利用される予定である。
ロ.中性子個人線量計及びサーベイメータ類の高度化研究
ハイブリッド減速中性子校正場は,個人線量計及びサーベイメータ等の特性評価に使用されている。ま
た,軽量形中性子線量当量率サーベイメータ及び中性子個人線量当量測定器について工業所有権を出願中
。中性子測定器の校正を「基準校正」と「実用校正」
である(それぞれ特願 2004-70639,2005-183862)
に分類する校正の体系については,学会専門研究会報告書(中性子校正技術の標準化専門研究会報告書)
として公開され,広く活用される見通しである。
ハ.MOX 燃料施設における中性子線量データ集の整備
MOX 燃料施設の主要工程で取得した中性子スペクトルデータをまとめた結果を,ハイブリッド減速中性
子校正場の設計に反映した。
【研究成果の発表状況(平成 16 年度)
】
(1) 辻村憲雄,吉田忠義,山野俊也,松原昌平:軽量形中性子線量当量率サーベイメータの開発,日本保
健物理学会第 38 回研究発表会,(2004)
(2) 吉田忠義,辻村憲雄:鉄−PMMA ハイブリッド減速中性子校正場の開発,日本保健物理学会第 38 回
研究発表会,(2004)
(3) 吉田忠義,辻村憲雄,高田千恵,渋谷勝:異なる中性子校正場におけるレムカウンタの校正結果の比
較,日本保健物理学会第 38 回研究発表会,(2004)
(4) 辻村憲雄,三上智:SILENE 臨界事故時線量評価相互比較試験の結果と考察,日本保健物理学会第
38 回研究発表会,(2004)
(5) C.Takada, T.Yoshida, K.Saitoh and N.Tsujimura: Calibration of Neutron Measuring Devices
in Differently Sized Rooms with Different Structural Irradiation Apparatuses , 11th
International Congress of the International Radiation Protection Association (IRPA11),
(2004)
(6) T.Nunomiya, T.Ishikura, O.Ueda, N.Tsujimura, M.Sasaki and T.Nakamura : Energy Response for
High-energy Neutrons of Multi-functional Electronic Personal Dosemeter, 11th International
Congress of the International Radiation Protection Association (IRPA11), (2004)
(7) 吉田忠義,辻村憲雄:中性子標準線源の周辺構造によるフルエンスの非等方性,第 41 回理工学にお
ける同位元素・放射線研究会発表会(2004)
(8) 辻村憲雄,吉田忠義,三上智:エボナイトを利用した臨界事故時における中性子線量評価法,JNC
TN8410 2004-005, (2004)
(9) 辻村憲雄,吉田忠義,山野俊也,松原昌平:軽量形中性子線量当量率サーベイメータの開発,日本原
子力学会 2004 年秋の大会,(2004)
(10) N.Tsujimura and T.Yoshida: Characteristics of the Simulated Workplace Neutron Fields Using a
252Cf Source Surrounded with Cylindrical Moderators, Radiat.Prot.Dosim., Vol.110, No.1/2,
pp.117-121(2004)
(11) S.Mikami, T.Yoshida, C.Takada and N.Tsujimura: Neutron Dose Assessment Using an Ebonite in
Criticality Accident, NUCEF 2005 International Symposium (2005)
(12) 吉田忠義,辻村憲雄,三枝純,吉澤道夫:中性子線量計の校正方法,日本保健物理学会シンポジウム
(2005 年 2 月)
(13) 辻村憲雄,吉澤道夫:中性子線量計の校正の階層化,日本保健物理学会シンポジウム(2005 年 2 月)
(14) 吉田忠義,辻村憲雄:中性子個人線量計の校正における室内散乱線とジオメトリ効果の影響,保健物
理,40(1),37-42(2005)
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(15) 辻村憲雄,吉田忠義,山野俊也,松原昌平:軽量形中性子線量当量率サーベイメータの開発,サイク
(2005)
ル機構技報 No.26,
(16) 辻村憲雄,吉田忠義,高田千恵:MOX 燃料施設を模擬した中性子校正場の開発と特性評価(1) 概要,
日本原子力学会 2005 春の年会,(2005)
(17) 吉田忠義,辻村憲雄,高田千恵:MOX 燃料施設を模擬した中性子校正場の開発と特性評価(2) 中性子
スペクトルと基準線量率の評価,日本原子力学会 2005 春の年会,(2005)
(18) 高田千恵,辻村憲雄,吉田忠義:MOX 燃料施設を模擬した中性子校正場の開発と特性評価(3) 中性子
線量計の特性評価,日本原子力学会 2005 春の年会,(2005)
(19) N.Tsujimura, C.Takada, T.Yoshida and T.Momose: Operational Comparison of TLD Albedo
Dosemeters and Etched Tracks Detectors in PuO2-UO2 Mixed Oxide Fuel Fabrication Facilities,
European Workshop on Individual Monitoring of Ionizing Radiation (IM2005) (2005 年 4 月)
(発表予定)
(20) 辻村憲雄,吉田忠義,布宮智也,青山啓:中性子個人線量当量測定器の開発,日本保健物理学会第 39 回
研究発表会,(2005)
(21) 辻村憲雄,吉田忠義,山野俊也,松原昌平:軽量形中性子線量当量率サーベイメータの開発(Ⅱ),日
本保健物理学会第 39 回研究発表会,(2005)
(22) 吉田忠義,辻村憲雄,高田千恵:MOX 燃料施設を模擬した中性子校正場の開発,日本保健物理学会
第 39 回研究発表会,(2005)
(23) 高田千恵,吉田忠義,辻村憲雄:MOX 燃料施設を模擬した校正場における中性子線量計の特性評価,
日本保健物理学会第 39 回研究発表会,(2005)
(24) 三上智,高田千恵,吉田忠義,辻村憲雄:エボナイトを利用した臨界事故時の中性子線量評価,日本
保健物理学会第 39 回研究発表会,(2005)
(25) 辻村憲雄,吉田忠義,高田千恵:中性子線量当量(率)計の性能実証試験フィールドの開発,サイク
ル機構技報 No.27(2005)
(26) 辻村憲雄,吉田忠義,高田千恵:中性子線量計のスペクトル依存補正係数の決定方法,第 42 回アイ
ソトープ・放射線研究発表会(2005)
(27) 吉田忠義,辻村憲雄,吉次雄一:中性子校正場における散乱線の発生源,第 42 回アイソトープ・放
射線研究発表会(2005)
(28) 辻村憲雄,三上智,吉田忠義,高田千恵:エボナイトを用いた臨界事故時における中性子被ばく線量
の評価,保健物理(査読中)
(29) S.Mikami, T.Yoshida, C.Takada and N.Tsujimura: Neutron Dose Assessment Using an Ebonite in
Criticality Accident(JAERI Conf として年内予定)
(30) N.Tsujimura, C.Takada, T.Yoshida and T.Momose: Operational Comparison of TLD Albedo
Dosemeters and Solid State Nuclear Tracks Detectors in MOX Fuel Fabrication Facilities,
Radiat.Prot.Dosim.(査読中)
(注:リスト中の下線は査読付き論文である)
【最近の国内外の研究動向(平成 16 年度)
】
[民間の研究の現状と動向]
臨界事故時線量評価に関する研究については,体内に生成される 24Na 量に着目した線量評価に関す
る研究(原研保健物理部),原子炉(TRACY)を用いたエボナイトによる中性子線量評価法の実証試
験(原研燃料サイクル安全工学部)がなされている。なお,後者のエボナイトの TRACY 照射試験に
際して,当グループからエボナイトの入手,加工及び特性等に関する情報を提供している。中性子線量
評価に関する研究については,加速器を用いた単色中性子校正場を中心とする多目的試験フィールドの
開発整備を進めている(原研保健物理部)。
(参考文献)
(1) 村崎他,エボナイトを用いた TRACY 過渡臨界時の中性子線量測定,日本原子力学会 2005 年春
の年会要旨集(2005).
(2) J.Saegusa et al.,Evaluation of energy responses for neutron dose-equivalent meters made
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in Japan. Nucl.Instr.Meth., A516, 193-2002 (2004).
(3) 三枝他,さまざまな中性子スペクトルに対する中性子線量計の応答評価,Radioisotopes,51,
26-33 (2002).
(4) M.Yoshizawa et al. , Present stats of calibration facility of JAERI. Proceedings of
IRPA11 (2004).
(5) J.Saegusa et al., Conceptual design of spectrum changeable neutron calibration fields in
JAERI/FRS. Programme & Abstracts, 9th Symposium on Neutron Dosimetry, (2003).
(6) M.Yoshizawa et al., Neutron spectra and angular distributions of concrete-moderated
neutron fields in JAERI. Programme & Abstracts, 9th Symposium on Neutron Dosimetry,
(2003).
[海外の研究の現状と動向]
EU の主だった原子力研究機関からなる EURADOS(European Radiation Dosimetry Group)が展開
している EVIDOS(Evaluation of Individual Dosimetry in Neutron and Photon Mixed Fields)プロジ
ェクトが,本安全研究と同種の目的で進められている。EVIDOS プロジェクトは,EU を資金源とす
る,PTB(独)
,IRSN(仏)
,NRPB(英)等による「原子力施設の代表的作業場における線量計の性
能実証研究」であり,その目的は,
「経験則的ではない(PTB をその求心力とする)統一的コンセプト
に基づいた,度量衡的にも矛盾なく国家/国際計量標準に繋がる中性子線量測定ロジックの確立」にあ
る。2001 年 11 月から 2005 年 10 月の 4 年計画であり,その間に,原子炉施設(BWR(Krümmel)
,
PWR(Ringhals),研究炉(VENUS)),燃料加工施設(Mol),再処理施設(Sellafield),燃料輸送キャスク
を対象に,エンドユーザとの協力のもと実作業環境における線量計のフィールド実験が展開されている。
また,この研究の実施にあたって,作業場所の中性子のエネルギー分布と方向分布を測定し,両分布の
関数である個人線量当量 Hp(10;E, )を評価するための中性子方向スペクトロメータ(directional
spectrometer)の開発もあわせて行われている。試験対象機器は,市販の中性子線量当量率サーベイ
メータ(Studsvik/Alnor 2202D,Harwell N91,Berthold LB6411 等),主として中性子電子式個人線
量計(MGPI,Aloka,RADOS,Siemens 社製市販品,加えて PTB と IRSN で開発中の電子式線量計
(PTB DOS-2002,Saphydose-N))である。平成 16 年 4 月にウィーンで開催された国際学会 IM2005 で
報告された成果(の一部)によると,中性子線量当量率サーベイメータについては,基準線量率を1と
したとき 0.65∼1.4 の指示範囲,中性子個人線量計については,中性子線量当量率サーベイメータに比
べると,いずれの線量計も線量評価精度は悪く,一部の線量計は基準線量を 1 としたとき 0.8∼70 の
指示範囲として紹介されていた。来年 6 月にスウェーデンで開催される国際学会 NEUDOS10 で成果
を発表するとのことであった。
(参考文献)
(1) P.F.Chartier et al., Dosimetric Measurements in Simulated Practical Neutron Fields using
Several Dosemeter Systems. Radiation Protection Dosimetry, 62, 4, 197-202,(1995)
(2) M.Luszik-Bhadra et al., Measurement of Energy and Directional Distribution of Neutron
and Photon Fluences at Workplaces. Programme & Abstracts, 9th Symposium on Neutron
Dosimetry, (2003)
(3) B.Lievens, Evaluation of an electronic neutron dosemeter at the BELGONUCLEAIRE MOX
plant. Book of Abstracts, European workshop on individual monitoring of ionizing radiation
(IM2005) (2005).
(4) Q.Chau et al., Evaluation of dose equivalent and identification of energy range by the
electronic personal dosemeter for “Saphydose-N” at different workplaces of nuclear facilities,
Book of Abstracts, European workshop on individual monitoring of ionizing radiation
(IM2005) (2005).
(5) M.Luszik-Bhadra et al., Summary of personal neutron dosemeter results obtained within
the EVIDOS project. Book of Abstracts, European workshop on individual monitoring of
ionizing radiation (IM2005) (2005).
(6) H.Schuhmacher et al., Evaluation of individual dosimetry in mixed neutron and photon
radiation fields (EVIDOS). Book of Abstracts, European workshop on individual monitoring
of ionizing radiation (IM2005) (2005).
−42−
JNC TN1400 2005-018
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
■ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
■ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
【自由評価欄】
なし
−43−
JNC TN1400 2005-018
表1 エボナイトのスペクトル依存補正係数
(溶液系臨界,鉄を第一層,コンクリートを第二層とする積層遮へい条件)
2nd
1st
Steel
in
cm
0
0
5
10
15
20
25
30
1.09
1.64
2.67
4.62
8.44
15.8
31.6
5
1.19
-
10
1.23
1.74
2.63
4.21
7.12
12.6
23.3
Concrete in cm
15
20
1.25
1.26
1.62
2.19
3.08
4.56
7.16
11.7
30
1.25
1.52
1.86
2.37
3.17
4.47
6.88
40
1.26
1.46
1.68
2.03
2.52
3.40
4.84
50
1.27
1.42
1.61
1.83
2.20
2.81
4.15
(注:図2は本マトリクスを図示したものである)
表2 SILENE 臨界事故時線量評価相互比較試験における
エボナイトによる中性子線量評価結果と主催者発表による基準値の比較
遮へい
中性子線量基準値(組織カーマ)[Gy]
スペクトル
依存補正係数
スペクトル依存
補正せず
評価値 [Gy]
評価値/基準値
スペクトル
SILENE 実測ス
依存補正係数
ペクトルによる
評価値*[Gy]
補正
評価値/基準値
スペクトル
依存補正係数
模擬スペクトル
による補正
評価値*[Gy]
評価値/基準値
RUN1
無し
1.65±0.17
RUN2
鉛
0.79±0.08
RUN3
鉛
1.68±0.17
1.00
1.00
1.00
1.54±0.14*
0.93
0.40±0.04
0.51
0.78±0.07
0.46
1.22
2.14
2.14
1.88±0.17
1.14
0.85±0.08
1.09
1.66±0.15
0.99
1.09
1.81
1.81
1.68±0.15
1.02
0.72±0.07
0.91
1.41±0.13
0.84
* エボナイト計数率の統計誤差と 252Cf による基準照射の誤差
−44−
JNC TN1400 2005-018
表 3 ハイブリッド減速中性子校正場の減速材の種類
コード
減速材の種類と厚さ
AMBE
CF
P15
P35
P60
1F 減速場
P100
F40
F40/P60
B1-CF
B1-P100
B1-G100
B1 減速場
B1-F100
B1-G100/P100
B1-F100/P100
−
−
PMMA1) 15mm
PMMA 35mm
PMMA 60mm
PMMA 100mm
鉄(低炭素鋼 2) )40mm
鉄(低炭素鋼 2) )40mm 及び PMMA 60mm
なし
PMMA 100mm
黒鉛(グラファイト)100mm
ステンレス鋼 3) 100mm
黒鉛(グラファイト)100mm 及び PMMA 100mm
ステンレス鋼 3) 100mm 及び PMMA 100mm
速中性子
校正場
1) ポリメチルメタクリレート(メタクリル樹脂)
2) SS400
3) SUS304
表 4 ハイブリッド減速中性子校正場の線質及び線量パラメータ(距離 100cm)
熱中性子 1)
[%]
-
E 2)
[MeV]
2.1
EH 3)
[MeV]
2.3
h*(10) 4)
[pSv・cm2]
385
hp(10) 5)
[pSv・cm2]
400
CF
-
2.0
2.1
380
395
P15
0.6%
1.7
2.1
336
350
P35
7.3%
1.4
2.1
272
284
P60
18%
1.2
2.1
226
236
P100
30%
1.0
2.2
187
195
F40
-
1.5
1.7
361
375
F40/P60
21%
0.88
1.8
196
204
B1-CF
3.7%
1.6
2.0
325
332
B-P100
37%
0.70
2.0
144
155
B-G100
33%
0.80
1.9
167
184
B-F100
27%
0.64
1.5
171
181
B-G100/P100
40%
0.58
2.0
119
118
B-F100/P100
41%
0.43
1.6
107
99.9
コード
ISO 252Cf
1)
2)
3)
4)
5)
全フルエンスに占める熱中性子フルエンスの割合
フルエンス平均エネルギー
線量当量平均エネルギー
フルエンス−周辺線量当量換算係数(スペクトル平均値)
フルエンス−個人線量当量換算係数(スペクトル平均値)
−45−
備考
参考データ
室内散乱線
含まず
室内散乱線
含む
Fluence to tissue kerma conversion coefficients, pGy.cm
2
JNC TN1400 2005-018
100
252
Cf
(fission)
Increase in steel thickness
(Inelastic scattering with heavy element)
10
SILENE (Bare)
SILENE (Polyethylene)
SILENE (Lead)
SILENE (Steel)
HPRR (Bare)
HPRR (Lucite)
HPRR (Steel)
HPRR (Concrete)
HPRR
(Steel + Concrete)
1
Increase in concrete thickness
(Elastic scattering with
hydrogeneous material)
0.1
10-6
10-5
10-4
10-3
10-2
Number of 32S(n,p)32P reaction in ebonite
per unit neutron fluence
図1 50mmφ×3mm のエボナイトの場合についての単位フルエンス当りの
32S(n,p)32P 反応数と単位フルエンス当りの中性子組織カーマの関係
50
40
40
P activity to neutron tissue kerma
252
conversion factor ( Cf=1)
50
30
20
10
9
8
7
6
5
4
3
Steel 0cm
Steel 5cm
Steel 10cm
Steel 15cm
Steel 20cm
Steel 25cm
Steel 30cm
30
20
10
9
8
7
6
5
4
3
2
32
2
32
P activity to neutron tissue kerma
252
conversion factor ( Cf=1)
(図中○プロットは,金属系臨界/溶液系臨界の模擬スペクトルに対する値である。SILENE は CEA の溶液系
原子炉,HPRR は ORNL の U-Mo 合金炉心からなる原子炉であり,括弧内に示すオプション遮へいを取り付け
ることができる。
)
1
1
0
5
10
15
20
25
30
0
10
20
30
40
Steel thickness, cm
Concrete thickness, cm
図2 エボナイトのスペクトル依存補正係数(溶液系臨界)
左:鉄遮へい,右:鉄遮へい+コンクリート遮へい
−46−
50
Neutron fluence per unit lethargy, E (E)
JNC TN1400 2005-018
100
Simulated
Measured
10-1
10-2
10-3
SILENE Bare (Measured by IRSN)
SILENE Lead (Measured by IRSN)
235
U(n,fission) in 30cm water
235
U(n,fission) in 30cm water,
penetrating through 10cm lead
10-4
10-5
10-10
10-8
10-6
10-4
10-2
100
102
Neutron Energy [MeV]
図 3 SILENE 炉の実測スペクトルと模擬スペクトルの比較
13.0m
グレーチング
12.5m
5.4m
5.3m
1F 減速場
減速材
B1 減速場
1.26m
1.26m
2.0m
減速材
図 4 照射室の構造と減速材の設置位置
(地下1階と地上1階からなり,1F 床面は 6m×6m のグレーチングからなる吹き抜け構造である。
)
−47−
JNC TN1400 2005-018
図 5 ハイブリッド減速中性子校正場−1F 減速場
(左:F40,右:F40/P60 を設置した様子)
図 6 ハイブリッド減速中性子校正場−B1 減速場
(左:グレーチング上から地下1階を見下ろした様子,右:B1-F100/P100(鉄 100mm+PMMA 100mm)を
設置した様子)
−48−
JNC TN1400 2005-018
106
106
MCNP
BMS
105
105
F40/P60 x106
104
104
B1-F100/P100 x105
P100 x 105
3
10
10
3
10
2
B1-G100/P100 x10
10
4
B1-P100 x103
P35 x103
2
4 r x E (E)
P60 x104
2
101
101
B1-F100 x102
100
100
P15 x102
B1-G100 x10
10-1
10-1
B1-CF x1
F40 x10
10-2
CF x1
10-3
10-3
100
103
106
10-2
ISO-252Cf x1
10-3
10-3
100
Neutron Energy, eV
103
106
Neutron Energy, eV
図 7 ハイブリッド減速中性子校正場のレサジー当りの中性子スペクトル(距離 100cm)
左:1F 減速場(室内散乱線含まず),右:B1 減速場(室内散乱線含む)
(図は,MCNP による計算値とボナー球スペクトロメータ(BMS)による測定値の比較であり,ともに 252Cf
中性子線源の中性子放出率あたりに規格化している。ただし,スペクトルが重ならないよう縦軸に任意の係数を
乗じている)
MOX plant: Sintering furnace
MOX plant : Glove box
MOX plant : Fuel assembly
252
Cf + Moderator(B1) (1.0m)
252
Cf + Moderator(1F) (1.0m)
252
Cf (1.0m)
241
0.1
0.2
0.3 0.4 0.50.6 0.8
1
2
3
Am-Be (1.0m)
4
5 6
8
10
Neutron energy averaged over the spectrum [MeV]
図 8 ハイブリッド減速中性子校正場と MOX 燃料施設の作業場所のエネルギー領域の比較
−49−
JNC TN1400 2005-018
5.0
Albedo TLD
CR39
Hp(10) response
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
Fluence average neutron energy [MeV]
図 9 アルベド TLD と固体飛跡検出器(CR39)の個人線量当量レスポンス
Bare
252
Cf
2
Counted etch-pits of CR39 [#/3.363mm ]
60
F40/P60
P15
50
F100/P100
(B1)
40
30
20
1991
1992
1993
10
0
0.0
0.5
1.0
TLD readings [mSv
1.5
137
2.0
Cs eq.]
図 10 作業者による同時着用試験で得られたアルベド TLD と CR39 の指示値の関係(プロット)と
ハイブリッド減速中性子校正場で得られた関係(実線)の比較
−50−
JNC TN1400 2005-018
ボロンポリエチレン
吸収部(r=15cm)
ポリエチレン
減速部(r=11cm)
0°(正面)
3He
比例計数管
ボロン吸収層
図 11 中性子個人線量当量測定器の外観
図 12 中性子個人線量当量測定器の断面構造
Fluence Response (arb.unit)
101
MCNP
Hp(10, =0o)
100
10-1
10-2
10-3
10-8
10-6
10-4
10-2
100
102
Neutron energy, MeV
図 13 モンテカルロ計算による中性子個人線量当量測定器のエネルギー特性(正面入射)
実線は,中性子フルエンス−個人線量当量換算係数を表わす。
−51−
JNC TN1400 2005-018
1.2
Relative Response
252
Cf
Cf(D2O)
Thermal
R( ) of 252Cf
252
R( ) of Cf(D2O)
252
1.0
0.8
R( ) of thermal
0.6
0.4
0.2
0.0
0
30
60
90
120
150
180
Angle of Incidence
図 14 中性子個人線量当量測定器の方向特性
プロット:MCNP 計算値,実線:角度依存係数(ISO8529-3 から)
図 15 軽量形中性子線量当量率サーベイメータ
(二次試作機)の外観写真
−52−
図 16 軽量形中性子線量当量率サーベイメータ
(二次試作機)の透視図
JNC TN1400 2005-018
137
1000
Cs
252
60
100
Cf
Co
10
BG
1
0
200
400
600
800
1000
1200
Channel
図 17 γ線と中性子に対する LiI(Eu)シンチレータのパルス波高スペクトル
2.5
H*(10) response, cps/( Sv/h)
Counts/Channel
10000
Deep-LiI(Eu), Cal.
Shallow-LiI(Eu), Cal.
Deep-LiI(Eu), Exp.
Shallow-LiI(Eu), Exp.
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0.0
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
Fluence average neutron energy, MeV
図 18 深部 LiI(Eu),表層部 LiI(Eu)の周辺線量当率レスポンス
(モンテカルロ計算値と実験値の比較)
−53−
2.0
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
◎3−1(施設3−3−2)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する研究
【研究課題名(Title)】
プロセス内化学物質に係る異常事象評価研究
reprocessing processes)
(Study on abnormal chemical reactions in nuclear
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]稲野 昌利(いなの まさとし)
[所属]東海事業所 再処理センター 技術部 技術開発課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33、Tel: 029-282-1111、FAX: 029-287-7839
(Name) Masatoshi INANO
(Title of Function) Technology Development Section, Technology Co-ordination Division, Tokai
Reprocessing Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194, Japan
Tel:+81-29-282-1111, Fax:+81-29-287-7839
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]佐藤 嘉彦(さとう よしひこ)
[所属]東海事業所 再処理センター 技術部 技術開発課
(Name) Yoshihiko SATO
(Title of Function) Technology Development Section, Technology Co-ordination Division, Tokai
Reprocessing Center, Tokai Works
【研究期間】
平成8年度 ∼
平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]核燃料施設における化学物質の火災爆発危険性に関する基礎的研究(横浜
国立大学)
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
工学試験棟
【研究概要】
[研究の経緯]
再処理施設のプロセス等では、硝酸等の酸化剤、ヒドラジン等の還元剤、TBP 等の可燃物が存在し、
潜在的な異常反応の危険性があり、施設の閉じ込め機能を確保するためにもその反応の挙動を的確に
把握する必要がある。現在、TBP 等の有機溶剤と硝酸との反応については研究事例も多く、基礎デー
タも数多く取得されているが、その他のヒドラジン等の反応について詳細な分析を行っている例は少
なく、発熱挙動を把握するための基礎データを取得する必要がある。また、それら化学物質の反応挙
動を簡便に評価するための発熱挙動解析手法を確立、整備することは、化学物質の危険性を実データ
と計算データから多角的に検討し、安全なプロセス運転範囲を把握するためにも必要である。
現在の湿式再処理にて還元剤として使用されているヒドラジンからは、アジ化水素、アンモニアが
生成する可能性がある。ただし、以上のような生成物はプロセス内では微量であり、実工程における
−55−
JNC TN1400 2005-018
挙動を実験により検討することは困難である。よって、このような微量生成物の挙動を評価するため
の基礎データを取得するとともに、挙動を解析できる手法を検討、整備することは、施設の安全性を
向上させるために必要である。
[研究目的]
再処理施設のプロセス等で使用される化学物質や混合物(アスファルト硝酸塩混合物等)の熱安定
性に係る研究、それら化学物質・混合物の万一の異常時における挙動の評価手法の検討、並びにプロセ
ス内で生成する可能性のある不安定微量生成物の熱安定性やプロセス内挙動に係る研究を実施し、指
針・基準類整備のための基礎データの整備を行い、施設の安全性の向上・安全裕度の適切化に資する。
[研究内容]
イ.化学物質・混合物の熱安全性に係る研究
再処理施設のプロセス等で使用される化学物質(除染廃液等)や混合物(アスファルト硝酸塩混
合物等)の実工程における物性・性状等の調査、高感度熱量計等による化学物質・混合物(実試料・
模擬試料)の熱安定性に係る基礎データの確認、並びに万一の発熱挙動を予測するための解析手
法・モデル等の検討及び発熱挙動の評価を行い、化学物質・混合物の安定操作範囲を確認する。
ロ.化学物質・混合物の異常時における挙動に係る研究
再処理施設のプロセス等で使用される化学物質及びそれらの混合物(アスファルト硝酸塩混合物
等)の火災・爆発時の事象挙動並びに伝播挙動を評価するための手法の調査・検討を行う。
ハ.微量反応生成物の安全性に係る調査・検討
再処理施設のプロセス等で使用される可能性のある化学物質の混合により生成する可能性のあ
る不安定微量生成物の熱安定性及びプロセス内挙動に係る調査を行い、不安定微量生成物のプロセ
ス内での生成・消滅過程及びプロセスに与える影響を検討する。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
イ.化学物質・混合物の熱安全性に係る研究
反応性化学物質及び混合物の熱安定性に関する基礎データの取得
ロ.化学物質・混合物の異常時における挙動に係る研究
発熱挙動予測解析手法の調査・整備
ハ.微量反応生成物の安全性に係る調査・検討
ヒドラジン分解挙動に関するコールド条件における基礎データの取得、微量生成物挙動解析手法の
検討
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ.化学物質・混合物の熱安全性に係る研究
平成 15 年度に引き続き、硝酸系におけるヒドラジンの発熱挙動の把握及び貯蔵体の火災爆発危険性
に関する検討を行った。
示差走査熱量測定装置(DSC:Differential Scanning Calorimeter)を用い,去年度の硝酸-ヒドラジ
ン混合試験により,30∼80℃において反応機構が変化しないことを確認していることから,その間を
取って溶液温度 50℃で硝酸とヒドラジンを混合した(1∼5M の硝酸 9g に対してヒドラジン一水和物
1g)後の試料溶液についての熱的挙動を測定した。SUS303 密封セルに秤量した試料数 mg を昇温速度
10K/min にて加熱した際の熱的挙動を測定した。表 1 に示す測定結果より,発熱量として 0.3∼1.0kJ/g
が得られた。また、発熱開始温度は混合する硝酸濃度が高くなるほど低下することが明らかとなった。
図1に DSC で得られた発熱挙動を示す。本結果から,混合する硝酸濃度が 3M から 5M の間に明らかに
発熱挙動の違いが観測され,硝酸濃度が低い場合と高い場合とで反応機構が異なることが推測された。
次に,5M 硝酸/ヒドラジン混合溶液を実際の工程に近い条件として 130℃で等温保持した後の試料溶
液についての熱的挙動を測定した。SUS303 密封セルに秤量した試料数 mg を昇温速度 5K/min にて加熱
した際の熱的挙動を測定した。図 2 に DSC で得られた発熱挙動を示す。本結果から,図 1 で観測され
た測定結果と比較すると、鋭い発熱ピークが消滅していることに加え,発熱開始温度及び発熱量の低
下が観測された。このことから、硝酸/ヒドラジン混合溶液の保持温度によって混合溶液中の発熱物質
が変化していることが推測された。
さらに詳細に発熱挙動を把握するために、硝酸濃度を上げて、溶液温度 50℃で 8M 硝酸とヒドラジ
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JNC TN1400 2005-018
ンを混合した後の試料溶液についての熱的挙動を測定した。SUS303 密封セルに秤量した試料数 mg を
昇温速度 10K/min にて加熱した際の熱的挙動を測定した。図 3 に DSC で得られた発熱挙動を示す。本
結果から,硝酸/ヒドラジン混合溶液の反応は,大きく分けて 3 つの反応から成っていることが推測さ
れた。図 3 に示す①の発熱ピークは、比較的緩やかな反応であり,文献調査の結果以下の反応である
と推測された 1)。
N2H5+ + 0.8HNO3 → 0.19HN3 + 0.17NH4NO3 +0.7N2 + 0.2N2O + 1.8H2O
また、図 3 に示す②の発熱ピークは、急激な反応であり,文献調査の結果,以下に示すヒドラジン
とヒドラジニウムイオンとの反応 1),あるいは反応生成物である硝酸ヒドラジンの分解反応の可能性
が示唆されたが,詳細解析には更なる検討が必要である。
N2H4 + N2H5+ ⇔ N4H9+
N4H9+ → NH3 + N3H6+
+
N3H6 + N2H4 → NH3 + N4H7+
→ NH3 + H2 + N2 + N2H5+
+
N4H7 + N2H4 → N2H5+ + N2 + 2NH3
さらに、図 3 に示す③の発熱ピークは,文献調査の結果,反応機構が未解明であったため,DSC で
昇温速度を変えた測定を行った。DSC により得られた発熱挙動を図 4 に示す。各条件での試験結果か
ら熱分解速度式を導出し,Kissinger 法により図 3 に示す③の発熱ピークを示す反応のみかけの活性
化エネルギーを評価したところ,103kJ/mol を得た。DSC 測定の結果得られた発熱開始温度(160℃以
上)及び見かけの活性化エネルギーは,ヒドラジン単体の熱分解反応によるものとよく一致しており,
図 3 に示す③の発熱ピークは,ヒドラジン単体の熱分解反応によるものと推測された。
また、赤外分光分析を利用したプロセス内化学物質の同定とその変化の追跡により,反応過程にお
ける危険性情報を取得するための in-situ FT-IR 測定について検討を行い,熱分析との併用による詳
細反応解析を行うための装置改良を行った。
さらに、熱危険性スクリーニングユニット(TSU)を用いて,異常反応時の圧力計測の可能性につい
て検討を行い,圧力発生挙動ならびに,発生ガスの分析等により,反応機構に関する情報を取得する
ための試験装置の改良を行った。予備実験として有機過酸化物と硫酸の混合系について実験を行い,
滴下混合時の圧力変化測定を実施し,適用可能であることを明らかにした。
また、貯蔵体の火災爆発危険性の評価手法の構築に資するため、現在貯蔵されているアスファルト
固化体を模擬した試料を用いて、高感度カルベ式熱量計 C500 を用いて模擬試料の発熱挙動を平成 15 年
度に確認した結果から、反応速度論的解析により、反応速度に関する情報を得た。一般に気相や液相
での反応においては反応物の原子・分子レベルでの混合が容易であるため、反応は均一反応と考えら
れるが、貯蔵体等の固体における反応においては、反応は局所的であり、反応形態も無秩序核生成、
拡散律速、界面律速等の様々な形態を取ると予想された。そのため、反応過程が単一モデルでなく、
反応の途中で他の反応モデルに移行するような場合でも解析することが可能な Friedman 法によって、
反応速度論的解析を行った 2)。解析によって得られたそれぞれの反応率における活性化エネルギーを
図 5 に示す。図 5 より、模擬試料の反応は、大きく分けて反応初期における反応と反応中期以降にお
ける反応の 2 つの反応により成っていることが推測された。さらに、その反応形態について検討した
結果、反応初期の反応については、反応生成物の結晶核が無秩序に発生し成長する段階が律速となっ
ており、その後の反応ではその反応生成物の拡散する段階が律速となっていることが推測された。
ロ.化学物質・混合物の異常時における挙動に係る研究
これまでに整備した反応挙動等の経時変化を解析するプログラム TSS(Thermal Safety Software)の
最新バージョンを導入し、解析ツールの整備を継続して行った。
また、反応系の基礎データを基に,プロセスの平常時ならびに異常時のモデリングの検討を行うた
めに,プロセスシミュレーションソフトウエアとしてオメガシミュレーション社の Visual ModelerTM
を導入し,基礎データの入力により試計算を行い、本ソフトウェアのプロセスシミュレーションへの
適用性を確認した。
ハ.微量生成物の安全性に係る調査・検討
−57−
JNC TN1400 2005-018
再処理施設のプロセス等で使用される可能性のある化学物質の混合により生成する可能性のある不
安定微量生成物として、ヒドラジンの分解反応で生成する可能性のあるアンモニアについて、その工
程内挙動を予測するために必要な基礎的な物性データを収集した。
図 6 に示す試験装置を用いて、アンモニアの 30vol%TBP-n ドデカン/硝酸・NaOH 溶液、Na2CO3 溶液間
の分配及び気液平衡に関するデータを取得した。アンモニアの 30vol%TBP-n ドデカン/硝酸・NaOH 溶
液、Na2CO3 溶液間の分配試験条件及び試験結果をそれぞれ表 2、表 3、表 4 に示す。また、アンモニア
の 30vol%TBP-n ドデカン、硝酸、NaOH 溶液、Na2CO3 溶液での気液平衡試験条件及び試験結果をそれぞ
れ表 5、表 6、表 7 に示す。これらの結果から、アンモニアは 30vol%TBP-n ドデカンにはほとんど抽出
されず、水相に留まることが示された。ただし、本結果は、静置状態に近い状態(セトラ部に近い状
態)での測定結果であるため、今後、十分に有機相と水相が混合された状態(ミキサ部に近い状態)
での測定を実施する必要がある。また、酸性溶液中のアンモニアはほとんどが NH4+として安定して存
在し、気相に NH3 の形で放出されることがなかったのに対し、アルカリ溶液中のアンモニアは、一部が
NH3 として気相に放出され、その量はアルカリの濃度が高いほど多いことが明らかとなった。以上のこ
とから、分離第 2 サイクル工程及び Pu 精製工程にて生成する可能性のある微量のアンモニアは、水相
とともに移動し、後段の高レベル廃液蒸発缶もしくは Pu 溶液蒸発缶に移行することが推測された。ま
た、十分に有機相と水相が混合された状態で有機相に抽出される場合は、有機相とともに移動し、溶
媒洗浄工程においてアルカリと接触することにより気相に放出される可能性があることが示された。
また、NaOH 溶液、Na2CO3 溶液といったアルカリ相におけるアンモニアの反応の最終形態を得るため
に、図 7 に示す試験装置を用いて、アルカリ相にアンモニアを添加したときの化学物質濃度の分析を
行った。NaOH 溶液、Na2CO3 溶液における試験条件及び試験結果をそれぞれ表 8、表 9 に示す。これら
の結果から、アルカリ相においてアンモニアは特に反応はせず、アルカリ濃度が高いほど気相側に
NH3 として移行することが示された。
さらに、以上の微量生成物のプロセス内挙動を推定するために、化学工学的手法で解析するツール
であるプロセスシミュレータに関する調査を継続して実施し、抽出工程における解析実績のある日本
科学技術研修所の Object DPS を選定し、導入した。
(参考文献)
1) E. W. Schmidt, Hydrazine and Its Derivatives ; Wiley-Interscience. (2001)
2) 増田 他、 マイクロコンピュータによる固体の熱分解反応の速度論的解析 ;真空理工ジョ
ーノル、No.13、p.13 (1984)
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ.化学物質・混合物の熱安全性に係る研究
硝酸/ヒドラジン一水和物混合系における反応機構を熱分析による手法によって推定するとともに、
高感度カルベ式熱量計 C500 を用いて得られた模擬貯蔵体の発熱挙動より、反応速度論的解析を行い反
応機構を推定し、所期の成果が得られた。
ロ.化学物質・混合物の異常時における挙動に係る研究
これまでに整備した反応挙動等の経時変化を解析するプログラム TSS(Thermal Safety Software)の
最新バージョンを導入し、解析ツールの整備を継続して行うとともに、反応系の基礎データを基に,
プロセスの平常時ならびに異常時のモデリングの検討を行うために,プロセスシミュレーションソフ
トウエアとしてオメガシミュレーション社の Visual ModelerTM を導入し,基礎データの入力によりプ
ロセスシミュレーションの適用性を確認し、所期の成果が得られた。
ハ.微量生成物の安全性に係る調査・検討
ヒドラジン分解生成物のうち潜在的危険性の高いアンモニアについて工程内挙動及び反応性に関す
る基礎データをビーカー試験により取得するとともに、以上の微量生成物のプロセス内挙動を推定す
るために、化学工学的手法で解析するツールであるプロセスシミュレータに関する調査を継続して実
施し、抽出工程における解析実績のある日本科学技術研修所の Object DPS を選定し、導入し、所期の
成果が得られた。
(今後の予定)
イ.化学物質・混合物の熱安全性に係る研究
平成 17 年度は、継続してヒドラジンの硝酸系における反応挙動についての測定を in-situ FT-IR 等
−58−
JNC TN1400 2005-018
を用いてより詳細に行い、反応機構を確定するとともに、熱危険性スクリーニングユニット(TSU)を
用いて,プロセス安全上重要なファクターである異常反応時の圧力発生挙動を測定するとともに、発
生ガスの分析等により,反応機構に関する情報を取得する。また、C500 にて取得した模擬貯蔵体の発
熱データの反応解析結果を用いて、貯蔵体の熱的リスクを決定するため,異常反応時の断熱温度上昇
ならびに SADT(Self Accelerating Decomposition Temperature)の推定を試み,貯蔵体の熱的リス
ク管理に関する情報を導出する。
ロ.化学物質・混合物の異常時における挙動に係る研究
平成 17 年度は、継続して化学物質混合時の反応熱等の潜在的な放出エネルギーの大きさを推定する
プログラム及び反応挙動等の経時変化を解析するプログラムの整備及び適用性検討を行うとともに、
反応系の基礎データを適用し,
導入したプロセスシミュレーションソフトウエア Visual ModelerTM に,
プロセスの平常時ならびに異常時のモデリングの検討及び、安全のためのキーパラメータとして,温
度,圧力,流量等のプロセス情報をとりあげ,予測の精度について検討を行い,プロセス異常時のシ
ミュレーションに発展させる。さらにプロセスの熱的リスクを決定するため,異常反応時の断熱温度
上昇ならびに熱量計データから算出する TMR(Time to Maximum Rate)の推定を試み,当該プロセス
の熱的リスク管理に関する情報を導出する。
ハ.微量生成物の安全性に係る調査・検討
平成 17 年度は、ヒドラジン分解生成物のうちアンモニアに注目してプロセス内挙動を推定するため
の基礎データの取得を継続して実施するとともに、プロセス内挙動を推定するために、プロセス内の
挙動を化学工学的手法で解析するツールであるプロセスシミュレータ Object DPS を用いたプロセス内
挙動解析手法の検討を行う。
【成果の利用実績及び活用見通し】
湿式再処理施設の火災爆発危険性に係る基礎データを取得するとともに、火災爆発危険性予測手法及び
不安定微量生成物の工程内挙動解析手法を整備することにより、湿式再処理施設の火災爆発に係る安全裕
度の明確化、安全性向上に資することができる。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
(1) A.Miyake, A. Kimura, T. Ogawa and Y. Satoh, Thermal hazard analysis of hydrazine and nitric
acid mixtures, Proc. 13th Int l Congress on Thermal Analysis and Calorimetry, 278, Chia
Laguna (2004)
(2) 木村,三宅,小川,佐藤:硝酸/ヒドラジン混合溶液系の熱的危険性評価,第 37 回安全工学研究発
表会,59-60,東京(2004)
(3) 木村,三宅,小川,佐藤:硝酸/ヒドラジン混合溶液系の熱的危険性評価,日本原子力学会 2005 年
春の年会,III-910-911,平塚(2005)
(発表予定)
(1) A.Miyake, A. Kimura, T. Ogawa and Y. Satoh, Thermal hazard evaluation of hydrazine and nitric
acid mixtures, J. Therm. Anal. Cal.,80, 515-518 (2005)
(2) A.Kimura, A.Miyake, Y.Satoh and T.Ogawa, Influence of the nitric acid concentration on the
thermal hazard of hydrazine/nitric acid mixtures, ISEM-2005 (2005)
【最近の国内外の研究動向(平成16年度)
】
[民間の研究の現状と動向]
イ.化学物質・混合物の熱安全性に係る研究
日本原子力研究所において PUREX 法による再処理抽出工程で使用される TBP 及び n ドデカンと硝
酸との反応についての研究が実施されている 1)。また、産業技術総合研究所において TBP と発煙硝
酸の混合物の爆轟特性に関する研究が行われている 2)。並びに、日本原子力研究所においてプルト
ニウム還元剤として使用される硝酸ヒドロキシルアミンの硝酸との反応についての研究が行われ
ている 3)とともに、硝酸ヒドラジンに関する危険性評価が実施されている 4)。
ロ.化学物質・混合物の異常時における挙動に係る研究
日本原子力研究所において、蒸発缶における有機溶媒と硝酸の自己加速反応の解析コードの開発
−59−
JNC TN1400 2005-018
が進められている 5)。また、三菱原子力工業株式会社では、再処理施設の火災時におけるセル換気
系内の熱流動コードである FEVER 及び爆発時における熱流動コードである SWORD を開発している。
ハ.微量反応生成物の安全性に係る調査・検討
日本原子力研究所において、PUREX 法による再処理抽出工程での物質挙動を解析するための計算
コードである ESSCAR6)を開発している。ESSCAR については、微量成分としてアジ化水素の計算が
可能となっている。
(参考文献)
1) 宮田 他、 硝酸による再処理溶媒の急激熱分解の反応特性及び反応機構(受託研究) :
JAERI-Tech 2000-035 (2000)
2) ヤヤット 他、 リン酸トリ-n-ブチル/発煙硝酸(TBP/FNA)混合液の爆轟伝播中断に関する研
究 :日本原子力学会 2002 年秋の大会要旨集 B50 (2002)
3) 関野 他、 プルトニウム還元剤硝酸ヒドロキシルアミンの硝酸との異常化学反応の評価
(Ⅱ):日本原子力学会 2000 年春の年会要旨集 J23 (2000)
4) 木田 他、 硝酸溶液中硝酸ヒドラジンの安全性試験 :JAERI-Tech 2004-019 (2004)
5) 木田 他、 蒸発缶の異常化学反応の評価(I) :日本原子力学会 2002 年秋の大会要旨集
B49 (2002)
6) 日本原子力研究所、 再処理プロセス・化学ハンドブック :JAERI-Review 2001-038 (2001)
[海外の研究の現状と動向]
イ.化学物質・混合物の熱安全性に係る研究
米国において、PUREX 法による再処理抽出工程で使用される TBP と硝酸との反応についての研
究が行われている 1)
ロ.化学物質・混合物の異常時における挙動に係る研究
米国において、核燃料施設の火災・爆発時における換気系の安全性を解析するための計算コード
である FIRAC2)及び EVENT843)を開発している。また、フランスでは、火災時の安全解析を行うため
の計算コードである FLAME4)及び SIMEVNT5)を開発している。
ハ.微量反応生成物の安全性に係る調査・検討
米国では再処理施設におけるアジ化水素による爆発事故防止のための安全基準が設定されてい
る 6)。また、ドイツでは、KfK の WAK 再処理プラントにおけるアジ化水素酸のマスフロー試験が行
われている 7)。
(参考文献)
Initiation Temperature for Runaway Tri-n-butyl Phosphate/Nitric Acid
1) T.S.Rudisill,
Reaction : WSRC-TR-2000-00427 (2000)
2) B.D.Nichols et al., FIRAC User s Manual: A Computer Code to Simulate Fire Accidents
in Nuclear Facilities : NUREG/CR-4561 (1986)
EVENT84 User s Manual: A Computer Code for Analyzing Explosion
3) R.A.Martin et al.,
Included Gas-Dynamic Transients in Flow Network : LA-10312-M (1984)
4) R.Rzekiecki et al., Model for Single or Multiple Fires in a Ventilated System: Code
Development : Nucl. Eng. & Design, Vol.125, p.383 (1991)
5) J.C.Laborde et al., Means of Evaluating the Consequence of a Fire in Ventilation and
Filtration Networks: IAEA-SM-305/69, p.149 (1989) : Fire Protection and Fire Fighting
in Nuclear Installations, Inter. Atom. Energy Agency, Vienna, 27 Feb.-2, March 1989
6) E.K.Dukes et al., Formation of Hydrazoic Acid from Hydrazine in Nitric Acid Solutions :
USAEC-REPORT DP-728 (1962)
7) D.Ertel et al., The Behavior of Hydrazoic Acid in PUREX Process Solutions under Safety
Aspects : Safety of the Nuclear Fuel Cycle, Edited by K.Ebert et al., VHC
Verlagsgesellschaft, Germany
−60−
JNC TN1400 2005-018
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
)
【自由評価欄】
−61−
発熱速度 (W/g)
5W/g
JNC TN1400 2005-018
硝酸濃度
5M
4M
3M
2M
1M
0
100
200
温度 (℃)
300
400
発熱速度(W/g)
5 W/g
図 1 硝酸/ヒドラジン混合溶液(混合温度 50℃)の発熱挙動
試料量 2.92mg
0
100
200
温度(℃)
300
図 2 130℃にて等温保持後の 5M 硝酸/ヒドラジン混合溶液の発熱挙動
−62−
400
JNC TN1400 2005-018
発熱速度(W/g)
②
①
③
温度(℃)
図 3 8M 硝酸/ヒドラジン混合溶液(混合温度 50℃)の発熱挙動
1K/min
5K/min
10K/min
20K/min
0
100
200
図 4 8M 硝酸/ヒドラジン混合溶液(混合温度 50℃)の発熱挙動の昇温速度による変化
−63−
JNC TN1400 2005-018
180
160
活性化エネルギー(kJ/mol)
140
120
100
80
60
40
20
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1
反応率α(−)
図 5 模擬貯蔵体における反応の Friedman 法による活性化エネルギーの解析結果
アンモニア注入用マイクロピペット
シリンジ
大気開放
サンプリング用シリンジ
恒温槽
TBP-n ドデカン溶媒
硝酸系溶液もしくはアルカリ系溶液
図 6 アンモニアの分配及び気液平衡に関するデータの取得試験における試験装置の概要図
−64−
JNC TN1400 2005-018
③アルカリ性におけるアンモニアの反応データを求める。
アンモニア注入用マイクロピペット
シリンジ
大気開放
サンプリング用シリンジ
恒温槽
60℃
アルカリ系溶液
図 7 アンモニアのアルカリ相における反応に関するデータの取得試験における試験装置の概要図
表 1 硝酸/ヒドラジン混合溶液(混合温度 50℃)の DSC 測定結果
硝酸濃度(M)
発熱量(J/g)
発熱開始温度(℃)
5
1046
140
4
492
170
3
516
181
2
259
252
1
232
−
表 2 TBP-n ドデカン/硝酸系におけるアンモニアの分配試験の試験条件及び結果
測定条件 1
温度(℃)
30
測定条件 2
NH4+濃度(mmol/L)
測定相
測定化学種
結果
2
TBP-n ドデカン
1.5mol/L 硝酸
気相
NH4+
NH4+
NH3
0.474 mg/L
28.1 mg/L
<0.2 ppm
−65−
JNC TN1400 2005-018
表3
TBP-n ドデカン/アルカリ溶液(NaOH)系におけるアンモニアの分配試験の試験条件及び結果
測定条件 1
温度(℃)
測定条件 2
NH4 濃度(mmol/L)
測定相
測定化学種
結果
2
TBP-n ドデカン
1.5mol/L 硝酸
気相
NH4+
NH4+
NH3
0.032 mg/L
26.8 mg/L
<0.2 ppm
+
60
TBP-n ドデカン/アルカリ溶液(Na2CO3)系におけるアンモニアの分配試験の試験条件及び結果
表4
測定条件 1
温度(℃)
測定条件 2
NH4 濃度(mmol/L)
測定相
測定化学種
結果
2
TBP-n ドデカン
1.5mol/L 硝酸
気相
NH4+
NH4+
NH3
<0.001 mg/L
28.9 mg/L
<0.2 ppm
+
60
表5
測定条件 1
温度(℃)
TBP-n ドデカン/硝酸系におけるアンモニアの気液平衡試験の試験条件及び結果
測定条件 2
NH4+濃度
(mmol/L)
試験溶媒、溶液
TBP-n ドデカン
30
2
1.5 mol/L 硝酸
表6
測定相
測定化学種
結果
有機相
気相
水相
気相
NH4+
NH3
NH4+
NH3
<0.001 mg/L
<0.2 ppm
27.5 mg/L
<0.2 ppm
TBP-n ドデカン/アルカリ溶液(NaOH)系におけるアンモニアの気液平衡試験の試験条件及び結果
測定条件 1
温度(℃)
測定条件 2
NH4+濃度
(mmol/L)
試験溶媒、溶液
TBP-n ドデカン
60
2
1.3 mol/L NaOH
−66−
測定相
測定化学種
結果
有機相
気相
水相
気相
NH4+
NH3
NH4+
NH3
0.008 mg/L
<0.2 ppm
29.6 mg/L
39.1 ppm
JNC TN1400 2005-018
TBP-n ドデカン/アルカリ溶液(Na2CO3)系におけるアンモニアの気液平衡試験の
試験条件及び結果
測定条件 1
測定条件 2
試験溶媒、溶液
測定相
測定化学種
結果
NH4+濃度
温度(℃)
(mmol/L)
有機相
NH4+
<0.001 mg/L
TBP-n ドデカン
気相
NH3
<0.2 ppm
60
2
水相
NH4+
28.2 mg/L
25g/L Na2CO3
気相
NH3
25.5 ppm
表7
表 8 アルカリ溶液(NaOH)系におけるアンモニアの反応試験の試験条件及び結果
表8 反応条件と試験結果
試験溶液1 反応条件1 反応条件2 反応条件3
0 min
1.3M NaOH
1.3M NaOH
1.3M NaOH
60℃
60℃
60℃
NH4濃度
2mM
NH4濃度
20mM
NH4濃度
200mM
液相
液相
気相
NH4+(mg/L) CO32-(mg/L) NH3(ppm)
気相
CO2(ppm)
気相
N2O(ppm)
気相
H2(ppm)
気相
NOx(ppm)
585
<1
<2
-
32.3
261
<0.2
15 min
32
230
4.0
494
<1
<2
-
30 min
30.3
234
2.5
578
<1
<2
-
60 min
30.5
219
8.1
474
<1
<2
-
120 min
30.6
240
7.0
495
<1
<2
<0.2
0 min
290
228
231
440
<1
<2
-
15 min
330
229
443
410
<1
<2
-
30 min
334
202
433
444
<1
<2
-
60 min
331
204
601
494
<1
<2
-
120 min
332
194
594
570
<1
<2
<0.2
0 min
2370
200
4150
530
<1
<2
-
15 min
3620
197
8270
436
<1
<2
-
30 min
3580
188
8520
472
<1
<2
-
60 min
3650
179
8110
509
<1
<2
-
120 min
3540
210
10600
485
<1
<2
<0.2
表 9 アルカリ溶液(Na2CO3)系におけるアンモニアの反応試験の試験条件及び結果
表9 反応条件と試験結果
試験溶液1 反応条件1 反応条件2 反応条件3
(25g/L)
Na2CO3
(25g/L)
Na2CO3
(25g/L)
Na2CO3
60℃
60℃
60℃
NH4濃度
2mM
NH4濃度
20mM
NH4濃度
200mM
液相
液相
気相
NH4+(mg/L) CO32-(mg/L) NH3(ppm)
気相
N2O(ppm)
気相
H2(ppm)
気相
NOx(ppm)
458
<1
<2
-
0 min
32.1
14200
15 min
33.1
14000
7.6
467
<1
<2
-
30 min
32.6
13900
12.2
457
<1
<2
-
60 min
33.2
13900
16.3
485
<1
<2
-
120 min
31
14000
13
477
<1
<2
<0.2
0 min
352
14100
14.5
497
<1
<2
-
15 min
337
13900
273
481
<1
<2
-
30 min
337
14200
336
467
<1
<2
-
60 min
339
14100
370
428
<1
<2
-
120 min
331
14300
357
524
<1
<2
<0.2
0 min
3350
13800
2680
514
<1
<2
-
15 min
3370
13700
7140
437
<1
<2
-
30 min
3380
13800
8690
491
<1
<2
-
60 min
3350
13800
8980
543
<1
<2
-
120 min
3320
13700
11100
445
<1
<2
<0.2
−67−
<0.2
気相
CO2(ppm)
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成13年度∼平成16年度)
【分類番号】
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する研究
◎3−2(施設3−3−6)
【研究課題名(Title)】
異常事象時における換気系の安全性に関する研究
(Study on the Safety of Ventilation System in Emergency)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address, and so on)】
[所属]東海事業所 放射線安全部
[氏名]岡 努(おか つとむ)
[連絡先]〒319−1194 茨城県那珂郡東海村村松4-33 電話:029-282-1111, FAX:029-282-9619
(Name) Tsutomu Oka
(Title of Function) Radiation Protection Division, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33,Muramatsu,tokai-mura,nakagu-gun,ibaraki,319-1194 Japan
Tel: +81-29-282-1111, Fax: +81-29-282-9619
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[所属]東海事業所 放射線安全部
[氏名]蛭町 秀(ひるまち すぐる)
(Name) Suguru Hirumachi
(Title of Function) (Safety Study Group,) Radiation Protection Division, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度∼平成16年度(平成16年度で終了)
[次期計画への継続の有無]
□
次期計画へ継続(研究課題名:
■
本計画で終了
)
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)]なし
[実証試験名(実施機関)]なし
[委託研究名(実施機関)]なし
【使用主要施設】
安全工学実験室、居室等
−69−
JNC TN1400 2005-018
【研究概要】
[研究の経緯]
核燃料サイクル施設、特にMOX加工施設では、その工程の特徴としてグローブボックス(GB)内のプ
ルトニウム、ウラン等の核燃料物質を開放状態で取り扱うこととなり、当該GBでの火災あるいはGB周
辺(外部)での火災等の異常事象が発生したとしてもGBの包蔵性及び室、建物の閉じ込め機能を確実に担
保しなければならない。
既存施設においては、火災の発生防止対策、火災発生時の拡大防止のための消火設備、外部への放射性
物質(核燃料物質)の漏えい、飛散防止のための高性能フィルタ等の除去設備が設けられ多重の安全対策が
施されている。今後の新規施設も基本的に同様の対策が講じられているが、核物質の取扱量の増加、施設
建設・運転の経済性等の観点から、安全対策の最適化、合理化が要求されることから、GB及びその換気
系、GB設置室及びその換気系といった総合的な体系に係る試験の実施が必要である。
特に換気系においては、負圧を維持して室内、外部環境への放出放射能の増大を防ぐために運転を継続
する必要があるため、異常事象時の健全性や放射性核種(核燃料物質)の挙動、安全評価に必要なパラメー
タ類等の基礎的なデータ取得についての試験研究を実施する必要がある。
しかし、予算及び人員(体制)の不足、欧米の関連施設詳細情報の不足により、研究課題が計画どおり進
捗する見通しが得られないため、平成 15 年度に計画の見直しを行い、当初計画していた実工程を模擬し
た複数のグローブボックスを配置し、建家換気系も含めた連成系の換気試験設備の整備、これを用いた火
災時の換気系性能評価試験に関する取組みについては中止することとなった。
米国の MOX 加工施設(MFFF)等の公開情報のフォローを継続するとともに、一般化学プラント等での評
価も参考にして手法、汎用解析コードの調査、検討に重点をおくとともに、既存施設の換気系のトラブル
情報の収集、整理も併せて実施する。
[研究目的]
火災等の異常事象時における換気系の挙動や閉じ込め等の安全評価に係る研究を行い、施設の安全性向
上及び指針、基準類の整備に資する。
[研究内容]
イ.換気系安全性の高度化に関する研究
MOX 加工施設の換気系を対象に最新の設備や新技術の調査を行い、実工程を模擬したグローブボック
ス換気系試験設備を整備し、火災時の異常事象を想定した換気系性能の評価試験を実施する。この試験
結果を基に、グローブボックス換気系の異常時における挙動特性を把握する。
ロ.換気系評価コードの高度化整備
グローブボックス内火災時の異常時における換気系の挙動として、温度分布、圧力変動等を詳細に評
価するため、従来の評価コードに 3 次元熱流体モデルを基本とした評価モデルを付加する等の整備を行
う。
【当初の達成目標】
イ.換気系の高度化に関する研究
換気系及び新技術の調査、試験設備の整備及び試験計画の策定
換気系の技術動向、既存施設換気系の運転・保守実績調査、整理
ロ.換気系評価コードの高度化整備
コードの調査、適応性検討、改良設計
汎用コードの調査、適用性検討
−70−
JNC TN1400 2005-018
【研究実施内容及び成果(平成13年度∼平成16年度)】
イ.換気系安全性の高度化に関する調査
換気系及び新技術の調査では、機構内外で実施された換気系の安全性に関する試験結果や半導体製造
産業で使用されるクリーンルームの換気系、遺伝子工学研究等で使用されるグローブボックスの換気設
備等に関する調査・検討を行った。クリーンルームでは、室内の空気流線を乱流形から整流形にするこ
とでルーム内の空気清浄度を高めている。半導体製造業のクリーンルームでは核燃料施設と異なり,排
気の 浄化より も入気(給気 )の浄化 が重要であり ,半導体 ディバイスの 高集積化 に伴う微細 化
)多層化により製造プロセ
(ITRS2000Update によれば「2007 年には、0.07μm の設計ルールが実用化」
ス環境の清浄化の対象は、除塵用の ULPA(Ultra Low Penetration Air(0.1μm HEPA フィルタ.1983 年
IES(Institute of Environmental Science で命名、現在ではナノサイズの粒子の捕集できる超 ULPA,超超
ULPA が使用されている。))フィルタでは、除去困難な分子状、ガス状物質であるケミカル汚染物質にま
で広がってきており、Si ウェハーに吸着して酸化膜の絶縁耐圧を劣化させる揮発性有機物を積極的に除
去する手段として,有機物を物理吸着させて除去する活性炭ケミカルエアフィルタが一般的に用いられ
ている。核燃料施設や遺伝子工学研究等で使用されるグローブボックスは、空気流線としては、乱流形
であり、グローブボックス内部は、負圧に管理されている。
技術動向として、除去性能の鍵となるフィルタろ材の技術動向及びその性能確認としてのフィルタ試
験の試験粒子として用いられている DOP(Di-octyl phthalate :フタル酸-2-エチルへキシル)が肝細胞ガン
の発生の要因になり得る(National Cancer Institute [National Toxicology Program Technical Report No.NIH
81-1773](1980)、我が国に於いては「外因性内分泌撹乱物質問題への環境庁の対応方針について」環境庁
環境保健部環境安全課(1985 年 5 月)の中に内分泌撹乱作用を持つと疑われる約 70 の化学物質が示さ
)との報告から、DOP に代わ
れており、ダイオキシン類や DDT の他、DOP がリストアップされている。
る安全な試験粒子の検討がなされ、日本空気清浄協会(JACA:Japan Air Cleaning Association )に於いて
も「核燃料施設における高性能エアフィルタの現場試験法に関する指針(JACAA No23).(1990)の検討の
際に DOP 代替物質に関する調査が実施され、その後 1998 年 12 月に「DOP 代替粒子選定専門委員会」
が設置され検討が行われたので、これらについても調査を行った。
最新の MOX 施設については、米国における解体核平和利用計画に基づき、米国エネルギー省(ODE)
がサバンナリバーサイトに建設を計画している MOX 燃料加工施設(Mixed Oxide Fuel Fabrication
Facility:MFFF)の建設許可申請書(Construction Authorization Request:CAF)が公開されており、施設
の設計情報が公開されている。MFFF では、Regulatory Guide 3.12 に基づき閉じ込め機能として、槽類、
グローブボックス、燃料棒被覆管、プロセス室といった静的閉じ込め(Static Containment)と換気系に
よる動的閉じ込め(Dynamic Containment)の組み合わせにより放射性物質(核燃料物質)を閉じ込めてい
る。MFFF の乾式工程(MOX Processing :MP)の閉じ込めの概念を以下に示す。
(1)閉じ込めの考え方
放射性物質の閉じ込めは、一般に静的バリアと動的システムの組合せにより達成される。グローブ
ボックスやプロセスエンクロージャーが静的バリアであり、換気空調系(HVAC)が動的な閉じ込め機
能を果たす。静的システムと動的システムは統合されて放射能放出に対する多重防護層となる。MOX
燃料製造建屋では放射性物質による汚染の可能性に応じて閉じ込めレベルを表イ-1 に示すような 3 段
階に分類して適用している。この閉じ込めレベルにより、建屋は汚染リスクの小さい領域から順に図
イ-1 に示すように C1、C2、C3、C4 の4領域に分類される。
各領域の定義は以下のとおりである。
・放射性物質を包含するプロセス容器・設備〈燃料棒、3013 コンテナ(図イ-2)を含む〉
・C4 領域:汚染はプロセスに内在している(グローブボックス等)
・C3 領域:以下の2つの領域に細分される
−C3b:汚染リスクは中程度(グローブボックスが設置されている工程室)
−C3a:汚染リスクは低い(工程室へのエアロックで、C3b 排気フィルターを有する)
・プロセスセル:汚染頻度は非常に低い(プロセス容器が設置された工程室)
・C2 領域:汚染リスクは非常に低い(燃料棒や燃料集合体の置かれる工程室、C3 領域周辺廊下)
−71−
JNC TN1400 2005-018
・C1 領域:汚染は無いと想定される(外部への開放領域)
動的な閉じ込めにおいて汚染可能性の高い領域は隣接するより汚染可能性の低い領域に対して負
圧に保たれる設計になっている。たとえば、グローブボックスの設置されている領域では圧力勾配は
以下のようになり、漏洩した空気は高圧領域から低圧領域に向けて流れる。
C1→C2→C3a→C3b→C4
MFFFにおける閉じ込め機能を構成する主要機器を表イ-2−(1)∼(3)にまとめ、以下に各
設備の機能について説明する。
(2)MOX 燃料製造建屋の HVAC システム
(a)オフガス処理系
湿式(AP)工程の設備に対するものであり、ここでは省略する。
(b)超高減圧排気系(VHD)
・C4 閉じ込め領域(グローブボックス)と C3 閉じ込め領域(工程室)の間で負圧を維持する。
・グローブボックスの排気に含まれる汚染物質を排気筒から放出する前にフィルターで濾過する
・製造工程の環境を適切に維持する
(c)高減圧排気系(HDE)
・C3閉じ込め領域(工程室)と C2閉じ込め領域の間で負圧を維持する
・C2閉じ込め領域にある 3013 缶貯蔵区画の換気を行う
・C2閉じ込め領域にある VHD 排気系ファンと HDE 排気系ファンに対する非常用電源供給室の換気
を行う
・排気に含まれる汚染物質を排気筒から放出する前にフィルターで濾過する
・運転員の作業環境を適切に維持する
(d)プロセスセル排気系
湿式(AP)工程の設備に対するものであり、ここでは省略する。
(e)中減圧排気系(MDE)
・C2閉じ込め領域と C1閉じ込め領域(環境)の間で負圧を維持する
・排気に含まれる汚染物質を排気筒から放出する前にフィルターで濾過する
・運転員の作業環境を適切に維持する
・プロセスベントや換気系(VHD、HDE 等)の排気に対する排気筒への共通の放出経路となる
(f)空気供給系
・C4 閉じ込め領域(グローブボックス)
、C3 閉じ込め領域(工程室)
、プロセスセル及び C2閉じ
込め領域と外部の間で負圧を維持する
・3013 貯蔵室と非常用電気室に対して未調節の緊急冷却用空気を供給する
・運転員の作業環境を適切に維持する
・プロセス、製造、電気及び実験室設備に対する環境を適切に維持する
(g)非常用制御室空調系
・2つの非常用制御室における職員のための居住環境を維持する
・非常用電気室の冷却を行う
(h)トラック駐車区画換気系
トラックの運転により生じる熱と排気ガスの除去である。
(i)受払区画空調系
−72−
JNC TN1400 2005-018
運転員に対する適切な環境を維持することである。この区画は C1 領域であるため、通常の空調設
備が使用される。
(3)非常用ディーゼル発電機建屋の HVAC システム
・エンジンが運転中でない時のエンジンルームの換気
・エンジン運転中の燃焼用空気の供給
・非常用開閉器室の換気と冷却
(4)待機用ディーゼル発電機建屋の HVAC システム
・エンジンが運転中でない時のエンジンルームの換気
・エンジン運転中の燃焼用空気の供給
・非常用開閉器室の換気と冷却
(5)安全避難室の HVAC システム
MOX 燃料製造建屋で避難事象(火災などにより発生する安全上の事象)が発生した場合に、安全避難
室の居住環境を提供することである。火災時には外気を取り入れ、居住環境を確保するとともに扉の
閉鎖時に室内をわずかに加圧する。安全避難室は MOX 燃料製造建屋に接続した C1 領域である。
(6)薬品建屋の HVAC システム
湿式(AP)工程の設備に対するものであり、ここでは省略する。
(7)静的バリア
(a)グローブボックス
・グローブボックスは有害物質の閉じ込めを維持するための静的なバリアを形成する
・グローブボックスと内部のサポート系は設備の健全性とプロセス機器の形状を維持するための耐
震構造を形成する
(b)DOE 標準 3013 コンテナと輸送キャスク
DOE 標準 3013 コンテナは施設受入 Pu に対する 1 次及び 2 次の閉じ込め機能を提供する。3013 コン
テナ開缶操作中の放射性物質の拡散防止のため、全ての開缶操作はグローブボックス内で行われる。
コンテナは取扱操作で超える事のない高度 30 フィートからの落下基準を満たしている。輸送キャス
クは、10CFR71 の要件に適合するよう設計されている。
(c)廃棄物コンテナ
MOX 超ウラン廃棄物は DOT のタイプ A 仕様7A の要件に適合した廃棄物コンテナに梱包される。廃
棄物ドラム缶と廃棄物移動コンテナは 1 次及び 2 次の閉じ込め機能を提供する。廃棄物ドラム缶は加
圧防止のためフィルターが付属している。
(d)移動コンテナ
移動コンテナは C2 閉じ込めバウンダリ内の廃棄物及びサンプルの手動による運搬に使用される。
コンテナは ISA で特定された事象に適合するように設計されている。
(e)MOX 燃料輸送キャスク
MOX 燃料輸送キャスクには発送する燃料集合体が格納される。キャスクは 10CFR71 の要件に適合す
るよう設計されている。
(f)特殊プロセス設備
2基の焼結炉は鋼製溶接ジャケットに格納され、炉内への酸素浸入防止のためにわずかに加圧され
ている。焼結炉からのガスは冷却およびろ過された後、VHD 排気系により排出される。焼結炉の内圧、
酸素及び温度はモニターされている。炉への電源がトリップしても 1 次閉じ込め機能を維持するため
の安全系は不要である。
(g)容器
AP 工程の設備に対するものであり、ここでは省略する。
−73−
JNC TN1400 2005-018
(8)防火と閉じ込め
火災時の閉じ込めバリアは、火災により放出される放射性物質を格納する能力を有する複数の領域
で構成される。工程室に対する火災及び放射性物質閉じ込めバリアの例を図イ-3 に示す。火災区域は
耐火バリアで囲まれ、部屋への通路は個別の HVAC 排気ダクトを有する閉じ込めエアロックを経由する。
部屋の HVAC の吸気口及び排気口には高温で作動可能な防火ダンパが設置されている。排気系の機器は、
火災発生状況下で要求される機能を達成できるように、適切な温度に耐える設計になっている。最終
フィルター設備を防護するために、通気の希釈がおこなわれる。希釈割合は火災による温度、流量、
希釈空気の流量に依存する。
拡散性の放射性物質のない領域では、高温の検知あるいはガス防止系の作動により吸気口及び排気口
の防火ダンパが自動的に閉止する。
拡散性の放射性物質を有するがグローブボックスが設置されていない領域(廃棄物貯蔵等)では、火災
時に空気の供給を制限するために吸気口の防火ダンパが自動的に閉止する。排気口のダンパは、温度、
圧力などが設定値を越える場合には手動で閉止される。
グローブボックスが設置されている領域では、HVAC コンフィグレーションの変更により部屋とグロ
ーブボックスの圧力勾配が損なわれる可能性がある。直ちに消火できる軽微な火災の場合には、HVAC
コンフィグレーションの変更は想定されていない。大規模な火災の場合の主要な閉じ込め原則は、周
辺領域との差圧維持である。部屋の HVAC 吸気口防火ダンパの閉止を自動とするか手動とするかは、詳
細設計段階で決定する。グローブボックス排気口の防火ダンパは、温度、圧力などが設定値を越える
場合には手動で閉止される。
(9)最終フィルター設備
最終フィルター設備はスタックから大気放出する前の最終的な HEPA フィルターである。本設備は、
VHD 排気系、HD 排気系、プロセスセル排気系、MD 排気系及びオフガス処理系に組み込まれている。設
備はフィルターアッセンブリーハウジング、2段のスパークアレスタ(火の粉止め)、プレフィルター
及び2段の HEPA フィルターで構成されている。ハウジングはバグイン/バグアウトタイプのステンレ
ス鋼製で、フタル酸ジオクチルによるフィルター効率の定置試験のためのポートが設置されている。
ハウジングにはフィルター交換時に HVAC システムからの隔離が可能なようにダンパが設けられてい
る。
スパークアレスタの1段目はステンレス鋼製ワイヤのメッシュであり、2 段目はグラスファイバー
を織り合わせたステンレス鋼製ワイヤのメッシュで、1 ミクロン以上の粒子を除去できる設計となっ
ている。スパークアレスタアセンブリは設置場所の排気管/ダクトとおなじ温度に耐える設計となっ
ている。フレームは金属製で、アレスタは不燃材で構成されており、構造的な故障のない状態で設計
流量が通過できる。
プレフィルターは金属製フレームを持つグラスファイバーで構成されており、効率は 60%∼85%で、
400°F(204.5℃)の温度に耐える設計となっている。
HEPA フィルターはガラス製であり、金属製フレームとシリコン製ガスケットを有する。フィルター
の効率は最小で 99.97%であり、450°F(232℃)で連続運転可能で、故障がなければ 10 in WG(2488 Pa)
の差圧に耐える設計となっている。
最終フィルター設備、排気プレナム、排気ファン及び関連制御装置は、想定火災の直接的な影響を
受けないように可能な限り離れて設置されている。火災や煙によりフィルター設備の健全性が低下し
ないように、分離した火災区域に冗長トレインが設置されている。
HEPA フィルターは火災その他の運転条件から防護され、換気系からの漏洩割合を示す漏洩経路因子
(LPF)が 10-4 より良いことが最終設計に基づく解析で示されることになっている。
−74−
JNC TN1400 2005-018
ロ. 換気系評価コードの高度化整備
コードの調査、適応性検討、改良設計においては、これまでにグローブボックス内火災等の異常時に
おける換気系の挙動評価として、米国ロスアラモス国立研究所で開発された、FIRAC コードを用いた評
価を実施してきた。オリジナルのコードでは、物質の燃焼速度(燃焼時間)や火災初期の高温層温度を
過大評価するため、燃焼速度評価式、高温層温度及び低温層温度の評価式の改良を行いグローブボック
ス内火災評価を行えるよう整備した。また、ガス消火シミュレーション機能を追加してグローブボック
ス内火災の消火特性の評価を実施した。しかし、FIRAC コードは、一次元の評価コードであるため、簡
易的な解析となる。
グローブボックス内火災等の異常時における換気系の温度分布、圧力変動等の挙動を 3 次元で評価す
るために、国内で市販されておりパソコンでの解析が可能な汎用の計算流体力学(CFD)コードの調査
(表ロ-1 参照)を行い、解析機能、構造的機能等の比較により適応性の検討を実施した。グローブボッ
クスへは容量が大きいこと、連成系のため配管で接続されていること、配管、バルブ等の圧力損失が全
体の流れに影響することなどを考慮し、一般に行われている建屋の換気、ダクトなどの空調設備とほぼ
同様の装置構成であることから、解析適用事例が豊富で検証実績のある「STREAM」を選定した。
グローブボックス内火災時における適応評価では、これまでに実施したグローブボックス内火災試験
で用いた実験設備(表ロ-2,図ロ-1,2 参照)のモデル化(図ロ-3-(1),(2)参照)、グローブボック
ス定常運転時における、温度分布、流量分布、圧力分布等の確認を行い、グローブボックス内火災実験
時における換気系の応答評価を行った。評価試験ではこれまでに実施したグローブボックス内火災試験
データを基にグローブボックス内および換気系の温度分布、圧力分布等の比較、及び同試験結果を「FI
RAC」コードで評価した結果との比較を行った(表ロ-3,図ロ-3-(1),(2)参照)。
「STREAM」コードにおいては、大規模又は複雑な装置形状をシミュレーションする場合は、パソ
コン等の計算速度等を考慮し、なるべく評価モデル形状をシンプルにすることで評価精度の向上が図ら
れる。グローブボックス換気系を評価する場合等にも、グローブボックスやダクトなどの系統を分離し
て評価することでより現実的な解析を行うことができた。
【研究の達成状況(平成13年度∼平成16年度)】
イ.換気系の高度化に関する研究
一般産業における換気設備が重要な要因となるクリーンルーム等の換気技術の調査及び核燃料施設等
の換気方式の調査を行い各種の換気技術の確認ができた。
MOX施設における閉じ込め機能について、最新の施設である米国のサバンナリバーサイトに建設計
画中のMFFF(Mixed Oxide Fuel Fabrication Facility)の閉じ込め機能について調査,とりまとめ
を実施した。
ロ.換気系評価コードの高度化整備
グローブボックス内火災等の異常時における換気系の温度分布、圧力変動等の挙動を 3 次元で評価す
るために、汎用の計算流体力学コード(CFD)について、これまでに行った実験データを用いて適応
性評価を行い、「STREAM」コードのグローブボックス等への適応性の見通しを得た。
(今後の予定)
実験設備の整備、維持、試験の実施見通しがなく、一連の調査は終了。とりまとめが出来たため終了。
【成果の利用実績及び活用見通し】
・既存の MOX 施設の換気系保全時における GB 換気系負圧変動の評価。
・新規の MOX 施設の換気系の評価。
【研究成果の発表状況(平成13年度∼平成17年度)】
なし
−75−
JNC TN1400 2005-018
【国内外の研究動向(平成13年度∼平成17年度)】
[民間の研究の現状と動向]
我が国においては,日本原燃(株)による,青森県六ケ所の再処理工場サイトへのMOX加工施設の設
置計画が進められており,平成17年4月19日に日本原燃(株)は青森県と六ヶ所村との間で,MOX燃料
加工工場の立地協力基本協定を締結し,翌4月20日に,経済産業省に事業許可申請を提出,受理され,
国の安全審査が開始された。
(参考文献)
(1) 原子力安全委員会 HP(原子力安全基準専門部会 MOX 加工施設指針検討分科会会議資料)
(2) MOX 利用国際セミナー(東京千代田区、パレスホテル、2002 年 2 月 18 日∼19 日)
(3) 早川一也、他「新クリーンルームの運転・管理・清浄化ハンドブック」(株)NTS,1993
(4) 高橋和宏「原子力用エアフィルタの最近の技術動向」空気清浄第 33 巻、第 4 号(1995 年 10 月)
(5) 平田順太「半導体工場のケミカル汚染対策」空気清浄第 39 巻第 1 号(2001 年 5 月)
(6) 遺伝子工学研究関連 HP
(7) DOP 代替粒子選定専門委員会「DOP 代替粒子の指針(案)JACA No37-2001」
(8) 楚山智彦「ガラス繊維ろ材の技術動向」空気清浄第 36 巻第 3 号(1998 年 9 月)
(9) 一安 哲「ULPA フィルタ用 PTFE ろ材」空気清浄第 36 巻第 3 号(1998 年 9 月)
(10) (社団法人)自動車技術会, CFD ソフト・ハードの性能比較 ,JSAE Symposium No.14-01 ,2001
年 12 月 10,11 日,工学院大学(東京)
(11) (社団法人)空気調和・衛生工学会近畿支部, 環境工学における CFD 利用の現状 ,平成 10 年 3
月
(12) [特集]計算力学の最前線 土木学会誌,Vol.88,No.8,2003 年 8 月
(13) 日本原燃 HP
[海外の研究の現状と動向]
米国において核兵器余剰核燃料物質の適正管理のために,サバンナリバーに,MOX燃料加工施設
(MFFF: Mixed Oxide Fuel Fabrication Facility)の建設を計画中であり,これにかかわる規制当局
の規制改定(米国連邦規制10CFR
Part70)の改定及び施設設置者側の建設許可申請(CAR: Construction
Authorization Request)の改訂版(2002年10月31日)及び,規制当局(NRC)による安全解析書ドラ
フトの改訂版(2003年4月)が公開され,建設許可の審査が継続されていたが,2005年(平成17年3月
30日)NRCはこれを承認した。また,同じく3月には,上記安全解析書の最終版が公開され,施設の概
念設計情報及び今後の総合的な安全解析・評価の基礎となる設計基準事象等の事故解析情報が示され
ている。
(参考文献)
(1) Mixed Oxide Xchange(NRC Quarterly News letter)
(2) Duke Cogema Stone & Webster, L.L.C.,Docket No. 70-3098, Mixed Oxide Fuel Fabrication
Facility Construction Authorization Request , Revision 1,October 31, 2002 (CAR)
(3) National Nuclear Security Administration, Report to Congress: Disposition of Surplus
Defense Plutonium at Savannah River Site, February 15, 2002
(4) U.S. NRC, Draft Safety Evaluation Report on the Construction Authorization Request for
the Mixed Oxide Fuel Fabrication Facility at the Savannah River Site, South Carolina ,
Revision 1,April 2003 (DSER)
−76−
JNC TN1400 2005-018
【研究評価(自己評価)】
○ 成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他(
)
○ 成果の活用方策
[チェック欄]
□
指針・基準類への整備に反映できる。
□
安全性評価の判断材料として活用できる。
■
安全性の向上に反映できる。
□
原子力防災対策に活用できる。
□
その他(
)
○ 計画の進捗
[チェック欄]
■
計画どおり進捗した。
□
計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□
)
計画以上に進捗した。
【自由評価欄】
毎年、予算編成において削減指示があり、施設の維持費、設備更新費が優先され、当該研究予算及び実
施体制(試験担当者)が十分に整備できない状況にあり、継続は困難なため、平成 15 年度に以下のとお
り計画の見直しを実施。
[研究内容](平成 15 年度見直し)
イ.換気系安全性の高度化に関する研究
MOX 加工施設の換気系を対象に最新の設備や新技術の調査を行い、実工程を模擬したグローブボッ
クス換気系試験設備を整備し、火災時の異常事象を想定した換気系性能の評価試験を実施する。この
試験結果を基に、グローブボックス換気系の異常時における挙動特性を把握する。→
MOX 加工施設の換気系を対象に最新の設備や新技術の調査を行うと伴に、既存施設の換気系におけ
る運転・保守実績の調査、分析、整理を行う。
ロ.換気系評価コードの高度化整備
グローブボックス内火災時の異常時における換気系の挙動として、温度分布、圧力変動等を詳細に
評価するため、従来の評価コードに 3 次元熱流体モデルを基本とした評価モデルを付加する等の整備
を行う。→
グローブボックス内火災等グローブボックス内での異常時あるいは建家換気系側の排風機切り替え
時に置ける換気系の挙動として、温度分布、流量・圧力変動等を迅速に評価するため、汎用解析コー
ドの調査、導入、既存施設の換気系における運転・保守データを活用して改良整備を行う。
−77−
JNC TN1400 2005-018
さらに担当者が平成 16 年度 10 月 1 日付けで外部出向し、後任がいないため一連の調査は終了。取り
まとめのうえ、当該研究は平成 16 年をもって終了。
−78−
JNC TN1400 2005-018
換気の流れ
図イ-1 MFFF の閉じ込め機能の概念
−79−
JNC TN1400 2005-018
図イ-2
PuO2 輸送パッケージの構成
−80−
JNC TN1400 2005-018
図イ-3 火災と閉じ込め領域
−81−
JNC TN1400 2005-018
1m
HEPAフィルタ
グロ−ブポ−ト
排気ダクト
3.5m
給気フィルタ
給気フィルタ
3m
グロ−ブボックス
3m
排気フィルタ
負圧調整ダンパ
図ロ-1
現試験設備構成図
−82−
排気ファン
HEPAフィルタ
JNC TN1400 2005-018
−83−
試験データ測定位置と項目
図ロ-2
JNC TN1400 2005-018
−84−
図ロ-3-(1)
シミュレーションモデル図と設定条件
JNC TN1400 2005-018
−85−
ポート開放時の流量と圧力変化
図ロ-3-(2)
工程
PuO2 の
物理的状態
粉末受入貯蔵
1次閉じ込め
2次閉じ込め
3次閉じ込め
−86−
閉じ込め
バウンダリ
動的排気
システム
閉じ込め
バウンダリ
動的排気
システム
閉じ込め
バウンダリ
動的排気
システム
粉末
内部 3013 缶
無
外部 3013 缶
無
BMF1
中減圧
開缶
粉末
グローブボックス
超高減圧
工程室
高減圧
BMF
中減圧
溶解
粉末、液体
グローブボックス
超高減圧
工程室
高減圧
BMF
中減圧
精製、転換
液体
プロセス機器
オフガス処理設備
ドリップトレイ
無
プロセスセル室
プロセスセル
酸化、均質化、製缶
液体、粉末
グローブボックス
超高減圧
工程室
高減圧
BMF
中減圧
一次貯蔵
粉末
グローブボックス
超高減圧
工程室
高減圧
BMF
中減圧
予備混合、粉砕混合、最終混合、
均一化、ペレット成型
粉末、
ペレット
グローブボックス
超高減圧
工程室
高減圧
BMF
中減圧
焼結 2
ペレット
焼結炉
無
工程室
高減圧
BMF
中減圧
研削、整列、燃料棒加工
ペレット
グローブボックス
超高減圧
工程室
高減圧
BMF
中減圧
燃料棒検査
ペレット
燃料棒
無
無
無
BMF
中減圧
燃料棒貯蔵
ペレット
燃料棒
無
無
無
BMF
中減圧
燃料集合体組立、検査
ペレット
燃料棒
無
無
無
BMF
中減圧
燃料集合体貯蔵
ペレット
燃料棒
無
無
無
BMF
中減圧
スクラップ回収
ペレット
グローブボックス
超高減圧
工程室
高減圧
BMF
中減圧
実験室での Pu 取扱
粉末、ペレッ
ト、液体
グローブボックス
超高減圧
工程室
高減圧
BMF
中減圧
燃料集合体の輸送コンテナ積込
ペレット
燃料棒
BMF
中減圧
1:BMF:MOX 燃料製造建屋
2:焼結炉はわずかに加圧されている
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表イ-1 閉じ込め領域ごとの閉じ込め機能
区画
設備
機器
備考
MOX 燃料製造建屋
超高減圧排気系(VHD)
可変速式遠心ファン(直動モータ)
100%容量が 4 台
最終フィルター設備
100%容量が 2 台
フィルターアセンブリハウジング
スパーク・アレスタ(火の粉止め)
2段
プレフィルター
1段
HEPA フィルター
2段
中間 HEPA フィルター
1段のものが複数
ダクト(手動及び自動ダンパ)
−87−
高減圧排気系(HDE)
自動ダンプ弁
2トレインでの排気に使用
可変速式遠心ファン(直動モータ)
100%容量が 2 台
最終フィルター設備(VHD を参照)
100%容量が 2 台
中間 HEPA フィルター
1段のものが複数
ダクト(手動及び自動ダンパ)
中減圧排気系(MDE)
可変速式遠心ファン(直動モータ)
100%容量が 2 台
最終フィルター設備(VHD を参照)
複数
ダクト(手動及び自動ダンパ)
空気供給系
可変速式遠心ファン(直動モータ)
多段式電気加熱コイル
マルチバンク冷却コイルと多重の補助冷却コイル
プレフィルターバンク(大気塵埃フィルター)
100%容量が 2 台
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表イ-2-(1) 換気空調系の主要機器一覧(1/3)
区画
設備
機器
備考
HEPA フィルターバンク
冷水設備クーラ
ダクト(手動及び自動ダンパ)
非常用制御室空調系
空調設備
100%容量が 4 台
フィルター
内蔵式直接膨張式冷却コイルと冷却設備、コンデンサー
エアフィルタートレン
100%容量が 2 台
フィルター設備(有害ガス除去フィルター、HEPA フィルター)
−88−
ブースターファン
電気ヒータ(ダクト取り付け)
3台
排気ファン(非常用バッテリー室)
100%容量が 2 台
ダクト
トラック駐車区画換気系
受払区画空調系
非常用 DG 建屋
HVAC
給気ファン
50%容量が 2 台
排気ファン
50%容量が 2 台
空調設備(通常設備であり常用電源から給電)
1 台以上
排気ファン(通常設備であり常用電源から給電)
1 台以上
多段速度電動換気装置(エンジンルーム用)
1台
空調設備(開閉器室用)
50%容量が 2 台
内蔵式空冷、直接膨張式
電気ヒータ
1台
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表イ-2-(2) 換気空調系の主要機器一覧(2/3)
区画
設備
機器
備考
待機用 DG 建屋
HVAC
多段速度電動換気装置(エンジンルーム用)
1台
空調設備(開閉器室用)
50%容量が 2 台
内蔵式空冷、直接膨張式
電気ヒータ
安全避難室
HVAC
1台
可変速式遠心ファン(直動モータ)
フィルター(2 段の HEPA フィルター、有害ガス除去カートリッジ)
静的バリア
グローブボックス
ステンレス鋼製エンクロージャー
ステンレス鋼製スタンド
メタルベローズ
−89−
ウインド(ポリカーボネート製パネル、放射線防護用鉛ガラス)
グローブポート
ペネトレーション(フィルター、シール、隔離弁)
DOE 標準 3013 コンテナと輸送キャスク 3013 コンテナ
輸送キャスク
火災区域
廃棄物コンテナ
コンテナ
移動コンテナ
コンテナ
MOX 燃料輸送キャスク
コンテナ
防火ダンパ
防火ダンパ
排気口、吸気口
JNC TN1400 2005-018
表イ-2-(3) 換気空調系の主要機器一覧(3/3)
Cradle
CFX5
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
FLUENT7
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
SCRYU/Tetra
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
シーディーアダプコ
ジャパン
STAR-CD
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
ANSYS
解析機能
流体
解析
解析機能
圧縮性
非圧縮性
定常
否定常
層流/乱流
熱流動
−90−
拡散
反応
燃焼
結露
自由表面
凝固・融解
多相流
構造的機能
強制、対流、自然
輻射
沸騰伝熱
日射
気/液
気/固
気/液/固
非ニュートン流体
高粘性
音響モデル
メッシュ
充填層モデル
ファンモデル
STREAM
○
○
○
○
○
○
○
構造格子系
(直角・円筒座
標系)
充填物、触媒など
ファン
○
非構造格子
(4,5,6,面体要素)
○
非構造格子
(3面体要素)
フルーエンド・アジア
パシフィック
○
非構造格子
構造、非構造格子
(4,3 角、6,4 面体、プ
リズム、ピラミッド、
混合)
○
○
○解析可能
JNC TN1400 2005-018
表ロ-1 市販汎用性 CFD ソフトの機能比較
項目
項
目
諸
グローブボックス
寸法:高さ 3.5m×横 3.0m×奥行き 1.0m
排風機
風量:6m3/分 静圧:150mmH2O
元
グローブボックス内 9 点
温度
グローブボックス壁面 3点
室温 1 点
給気ダクト 2 点
排気ダクト 2 点
排気フィルタ 2 点
−91−
流量
測定項目
不圧バランスダンパ 2 点
グローブボックス排気ダクト 1 点
希釈ダクト 1 点
総排気ダクト 1 点
グローブボックス内 1点
排気ダクト 1点
圧力
フィルタ差圧 2 点
消火ガス放出圧力 1 点
酸素濃度
データ処理ソフト
Lab VIEW
グローブボックス内 3 点
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表ロ-2 試験設備諸元
開放条件
給気量
ポート吸気量
GB 排気量
負圧調整ダンパ
GB 総排気量
希釈ダクト
総排気量
GB 内圧力
(m3/h)
(m3/h)
(m3/h)
(m3/h)
(m3/h)
(m3/h)
(m3/h)
(mmAq)
開放前
45
53
241
288
133
426
-30
解放後
2
217
138
318
121
444
-0.05
開放前
53
0
53
241
294
133
426
-30
解放後
2
181
184
138
322
121
444
-0.05
開放前
51
0
51
243
294
132
427
-29
(開口比)
(25%)
(0%)
解放後
7
189
444
-0.14
(開口比)
(25%)
(100%)
解放後
7
306
444
-0.02
(開口比)
(25%)
(100%)
開放前
51
0
427
-29
(開口比)
(25%)
(0%)
解放後
6
191
444
-0.01
(開口比)
(25%)
(100%)
解放後
6
308
444
0.00
(開口比)
(25%)
(100%)
測定値平均
実証試験
測定値
ポート吸気量を考慮
−92−
シミュレーシ
ョン結果
ポート
開放前、後の比較
およびバルブ開口比
負圧調整
ダンパー全開
シミュレーシ
ョン結果
物品出入口
開放前、後の比較
およびバルブ開口比
負圧調整
ダンパー全開
(32%)
196
138
(22%)
333
(23%)
313
0
(22%)
313
(0%)
51
243
137
294
0
(0%)
132
(22%)
333
(23%)
313
130
(22%)
(32%)
196
110
110
(22%)
333
130
(22%)
JNC TN1400 2005-018
表ロ-3 定常時とポート解放後の各流量およびグローブボックス内圧力変動に対する実証試験とシミュレーション結果の比較
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成13∼16年度)
【分類番号】
○3−3(施設3−3−7)
【研究分野】
・核燃料施設の安全性に関する研究
【研究課題名(Title)】
負圧監視・管理のシステム開発に関する研究
(Study on ventilation system for under pressure surveillance and
administration )
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]伊波 慎一(いなみ しんいち)
[所属]東海事業所 再処理センター 施設管理部 施設保全第一課
[連絡先]〒319-1194
茨城県那珂郡東海村大字村松 4-33 電話:029-282-1111 FAX:029-282-1111
(Name) Shinichi Inami
(Title of function) Facility Maintenance Section,Facility Management Division, Tokai Reprocessing Center, Tokai Works
(Address, Tel, and Fax) 4-33,Muramatsu,Tokai-mura,Naka-gun,Ibarakiken,319-1194,Japan,
Tel:+81-029-282-1111 Fax:+81-029-282-4994
(E-mail) inami@tokai.jnc.go.jp
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]竹内 謙二(たけうち けんじ)
[所属]東海事業所 再処理センター 施設管理部 施設保全第一課
(Name) Kenji Takeuchi
(Title of function) Facility Maintenance Section,Facility Management Division, Tokai Reprocessing Center, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度 ∼ 平成16年度(平成 16 年で終了)
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
核燃料サイクル開発機構 東海事業所 再処理センター
【研究概要】
[研究の経緯]
核燃料施設の動的閉じ込め機能としての換気設備において,急激な圧力変動を伴う過渡的変化に対
して,施設(主にセル)の負圧の変化を調べることによって,換気設備のシステムに関わる基礎データ,
知見を取得し,静的閉じ込め機能に関わる検討を行い,安全裕度を向上した換気設備の設計概念を構築
する必要がある。
[研究目的]
核燃料施設の動的閉じ込め機能としての換気設備において,送排風機の異常により停止及び再起動等
の過渡的変化に対して,施設(主にセル)の負圧の変化を調べる等して,換気設備のシステムに関わる
基礎データを取得し,動的閉じ込め機能としての換気設備のシステムに関わる検討を行い,換気設備の
設計における安全裕度を向上した設計の基準となる情報を提供する。
−93−
JNC TN1400 2005-018
また,換気設備等に関して,安全評価に適用するための故障解析データを取得する。
[研究内容]
イ.負圧監視・管理システムの開発
核燃料施設の動的閉じ込め機能は,送排風機等からなる換気設備で行われているが,この送排風機
が異常等により停止,再起動等の過渡的変化を生じた際には,負圧がこれに伴って変動する。このと
きの負圧等の必要なデータを採取して,換気設備のシステム,特にダンパ制御,起動制御等とリンク
した機能について検討することにより,より閉じ込め安全性を向上させた換気設備のシステム概念を
構築する。
ロ.送排風機等の保全データの整理
東海再処理施設で蓄積された換気設備等に関する機器の故障データを解析し,確率論的安全評価
(PSA)に適用できるようにする。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
イ.取得した負圧データの解析を行い、過渡変化時の制御ダンパーの動作と風量バランスについての知見
を得る。
ロ.収集された故障解析データ及び保全データの整理を行う。
【研究実施内容及び成果(平成13年度∼平成16年度)】
イ.負圧監視・管理システムの開発
核燃料施設の動的閉じ込め機能としての換気設備において,送排風機の異常による停止及び再起動等の
過渡的変化に対して,施設(主にセル)の負圧の変化を調べる等して,換気設備のシステムに関わる基
礎データを取得し,動的閉じ込め機能としての換気設備のシステムに関わる検討を行い,換気設備の設
計における安全裕度を向上した設計の基準となる情報を提供する。
1.閉じ込め機能と換気設備
(1)閉じ込め機能
再処理施設における核燃料物質等の閉じ込めは、一般に建家などの構築物や塔槽類などのプロセス機
器による静的閉じ込め機能、並びに施設内の換気設備による動的閉じ込め機能からなる多重防護構造と
なっている。再処理施設は、核燃料物質等による汚染の可能性及び程度により区域設定(グリーン、ア
ンバー、レッド)を行い、汚染リスクの高い区域から順に施設中央部に配置されることで、物理的な多
重防護構造としている。また、動的閉じ込め機能については、汚染レベルの高い区域内の空気圧力をよ
り汚染レベルの低い区域に対して低く(負圧)を保つことにより、汚染を限定された区域に閉じ込める
設計となっている。
(2)換気設備(図−1参照)
換気設備は、動的閉じ込め機能として区域内の空気圧力を、汚染レベルの低い区域内に対して汚染レ
ベルの高い区域を負圧に保つことにより、汚染を限定された区域に閉じ込める役割を担っている。この
ため、換気設備では、送排風機の故障などにより、各区域の負圧が維持できなくなる場合を想定して、
各送排風機に予備機を設けている。また、換気設備内を流れる空気は核燃料物質等の汚染物質を同伴し
ており、汚染物質を施設外へ放出させないために、HEPA フィルタによるろ過を行い大気へ放出する。
万一、換気設備による閉じ込めが行われない場合であっても、換気設備を通じて汚染を拡大させること
がないように、逆止弁や入気フィルタ等が設置されている。
(3)負圧による閉じ込めと過渡変化
動的閉じ込め機能としての換気設備は、定常的な運転状態において施設内を負圧に保つことが出来る。
これは施設内の各区域及び部屋間の負圧バランスを手動弁により調整した上で、系統内に設置された自
動調節弁が大気との圧力差に従って弁開度を調整することで、施設内の負圧を維持している。再処理施
設では、負圧制御方法として制御弁による圧力制御を採用しており、給気制御、排気制御及び給排気制
御の 3 つの方式を採用している。
しかしながら、換気設備は定常的な送排風機の運転に支えられていることから、電源変化や送排風機
の故障などにより、送排風機の停止、再起動や予備機起動などの過渡的な状態が発生した場合、施設内
の負圧は大きく変動することとなる。
−94−
JNC TN1400 2005-018
2.換気設備の過渡変化時の負圧変動
再処理施設における負圧制御は、圧力制御弁による給気制御、排気制御及び給排気制御の 3 つの方式を
採用している。このため、これらの圧力制御方式別に施設内の負圧変動についてリアルタイム測定を実
施した。また、換気設備の過渡変化は定期自主検査で実施している送排風機の順序起動並びに予備機起
動試験にて模擬した。表−1 に各制御方式の代表として負圧測定を行った施設の送排風機の能力等を示す
と共に、表−2 に大気圧に対する各区域の圧力設定を示す。
(1)負圧の発生と制御(図−2参照)
強制的に給排気が行われている施設において大気圧:P、大気密度:ρ、施設内絶対圧力:P1、施設
内密度:ρ1、空気温度:T 一定とすると、流体の運動は、ベルヌーイの定理によって表されており、
流体の速度(v)、圧力(P)を用いて以下のように示される。
ΔP:圧力損失
(ρ1v12/2)+P1=(ρ2v22/2)+P2+(ρ3v32/2)+P3+ΔP
施設内絶対圧力:P1 は、送風機による静圧(P2)、排気による背圧を加えた経路圧損(ΔP2)の和及び
排風機による静圧(P3)と経路圧損(ΔP3)の和の総和により決定される。
負圧:P−P1=P−(P2+ΔP2+P3+ΔP3)
負圧制御は施設又は系統内の静圧を一定に保つための調節機構である。この調節機構は、給気流又は
排気流の静圧を検知して一定に調節する形式と外気−部屋間差圧を検知して制御する方式がある。
(差)圧力調整機構の場合、給気又は排気系統に大きな変化、即ち送排風機の予備機起動などが発生
すると、移動流体量、流体移動に伴う圧力損失及び当該系統に係る静圧が働かなくなるために、継続運
転されている系統からの影響が極端に大きくなる。この結果、施設内は基準圧力に対して正圧又は負圧
側に大きく傾くことになる。
(2)制御ダンパーの動作
圧力制御ダンパーは、送風機吐出(吸入)圧力を一定に保つようにダンパーの開閉を行い制御する。通常、
換気設備が停止した場合では、送風機吐出(吸入)圧力低下にともない制御ダンパーは開方向へと動作し、
順序起動時の送風機の起動により送風機吐出(吸入)圧力の上昇にともない、これに追従してダンパー
は閉方向へと動作する。
順序起動に関しては、送風機(排風機)の運転が開始された際、給気圧力(排気圧力)調節弁がダク
ト内圧低下(上昇)に伴いダンパーは全開(全閉)の状態である。ここに送風機(排風機)からの給気
(排気)が導入されるため、ダクト内圧上昇(負圧低下)速度と調節弁の圧力追従速度が適切でないこ
とから、施設内圧は急激に低下する。
通常、調節弁は定常運転時を第一目的として調整されるため、負圧変動に対して俊敏な追従にすると
施設内の負圧が安定しない場合がある。
(3)各制御方式別負圧測定
(3)-1 給気制御(図−3∼7参照)
給気制御方式による負圧制御では、定常運転状態における負圧バランスを考慮した応答特性として
いるため、起動時などの過渡変化へは対応できておらず、送風機起動後の差圧の低下は著しく、グリ
ーン及びアンバー区域の一部に差圧が大気圧近傍まで低下する不安定な状態となることがある。
給気制御方式の代表として負圧測定を行った当該施設では、送排風機の起動順序により、起動一巡
目(レッド系排風機 1 台、メカセル系排風機 1 台、アンバー系排風機 1 台及び送風機 1 台の順序起動)の排気
量と給気量を比較したところ、排気量(2080m3/min)に対して給気量(2600m3/min)が 520m3/min も
多く給気量過多の状況であった。
排風機の予備機起動に関しては、どの系統においても負圧は大きく低下して不安定な状態となるも
のの、大気圧となることはなかった。これは、施設体積が大きく、各系統毎の排風機の設置台数が比
較的良いためと考える。セル系統について負圧は低下するものの、アンバー区域との差圧で7mmAq 程度
の差圧が確保されることが確認された。
給気制御方式では、給気ダクト内と大気間差圧状況に従い、ダンパー開度を調節している。このた
め、再起動時や予備機起動時には施設内の圧力変動が大きく、これに従った調整が必要であるが、
(2)
で示したように制御ダンパーは測定圧力に従い開閉することから、急激に進行する全施設的な圧力変
動に追従し切れていないことがわかる。
以上のことから、当該換気設備の順序起動時における負圧低下を抑制するためには、
① 制御ダンパーの初期圧損、圧力変動への応答特性の再検討
② 2 巡目の排風機起動開始時間(20sec)の変更(短縮)
−95−
JNC TN1400 2005-018
③ 送風機の起動から定常運転に至るまでの静圧の立ち上がり速度の鈍化(インバータ制御又はバ
イパス制御)
などを行うことで給気風量を抑制することができるものと考える。但し、これらの解決の実施にあ
たっては、各区域の差圧状態が定常状態となるまでの遅延時間を考慮するなど十分な検討が必要であ
るものと考える。
(3)-2 排気制御(図−8∼10参照)
排気制御方式による負圧制御では、順序起動に関して、セル排気系が起動した以降、グリーン区域で
負圧の低下は見られたものの、負圧を失うことはなく定常運転状態へ復帰した。
代表とした施設の換気設備では、セル排気(1 台)
、建家排気(1 台)及び送風機(1 台)が定常的
に運転されるが、順序起動時の高負圧状態を回避するために、送風機側に自然入気用バイパスダンパ
ーを設置している。このダンパーは送風機起動後一定時間「開」状態となるため、入気の一部をリサ
イクルさせて送風機起動からバイパスダンパー閉までの排気風量は約1/2となり、全閉で約
30000m3/hの換気風量となる。バイパスダンパー全閉後、グリーン区域の負圧は 10Pa 程度まで低下す
るものの、建家及びセル系統何れも負圧を喪失することはなかった。
当該施設は、換気風量は約 30000m3/hであるが、建家系換気量約 24000m3/hに対してセル系換
気量は約 6000m3/hしかなく、換気風量のバランスは著しく悪くい。このため、建家系排風機の予
備機起動時には送風機を停止させて、給気過多とならないようにするなどの工夫により、送排風機の
予備機起動時の負圧を低下させるものの、圧力の回復は早く大きく乱れることはなかった。
今回調査対象とした換気設備は、負圧制御としての排気制御方式に加えて給気量を制限するための
リサイクル系統が併設されている。
排気制御方式では、順序起動時の排風機起動後、制御ダンパーは全開から全閉方向へと推移した後、
送風機起動後に開方向へと推移する。この結果、一旦発生した負圧は大きく低下することとなる。
こうした制御ダンパーの動きは、排気制御だけではなく給気制御及び給排気制御においても発生す
るものであるから、負圧制御ダンパーのみによる過渡変化への対応は困難であると言える。給気系統
にバイパスダンパーを設置して送風機による影響を緩和することは、負圧の低下を抑制する効果があ
ると言える。但し、現状のリサイクルダンパーは ON−OFF ダンパーであり、順序起動及び建家系排風機
予備機起動時などの際、給気量の変化が大きいため、制御ダンパーが追従していかない。このため、
当該ダンパーを ON−OFF させる間に圧力制御などを盛り込めば、制御ダンパーが追従できて負圧を維持
することができると考える。
(3)-3 給排気制御(図−11∼13参照)
給排気制御方式による負圧制御では、給気制御方式に加えて、排気側に調整弁を持たせて排気流の
流量調整及び圧力損失を与えることで施設内の負圧を維持している。
給排気制御方式の代表として負圧測定を行った施設では、各系統1台運転であること、各系統に制
御弁があること及び排気の一部をリサイクルして送風機へ送ることなどにより、順序起動中に負圧を
喪失することはなかった。
一方、予備機起動に関しては、セル系排気、循環系排気について急激に負圧は低下する。本換気系
は系統的に送風機1台、セル系排気1台及び建家系排気1台で施設の換気を行っていることに加えて、
排気風量を低減するためにグリーン及びアンバー区域からの排気を送風機へ送る循環系としている。
この結果、施設の排気風量は約 20000m3/hと小さいものの、こうした換気設備の設計では過渡変化
時の負圧変動は顕著で、運転機の停止は排気量(給気量)の大幅な低下となり、風量バランス(静圧
バランス)の大きな崩れとなる。
当該系統において過渡変化の負圧低下を抑制するためには、各系統の予備機起動時に
①送風機の一旦停止
②循環系排風機、送風機の静圧の立ち上がり速度の鈍化(インバータ制御又はバイパス制御)
などにより、排風機停止時の風量バランスの確保を図る必要がある。
(4)まとめ
制御ダンパーを用いた負圧制御では、定常的な換気設備の運転状態においては、給気制御、排気制御
及び給排気制御のどの方式でも、不安定な負圧状態となることはなかった。しかしながら、換気設備の
過渡変化に対しても、突出した点は確認できなかった。
今回の負圧制御方式別の負圧測定では、制御方式を主眼に測定を行うことで、過渡変化に対する安全
裕度の向上を制御方式の変更などによって行える可能性について確認した。本質的には制御方式の異な
−96−
JNC TN1400 2005-018
る同仕様の設備で比較検討するべきであるが、実規模施設では、各施設の設計により設備仕様が全て異
なるため、同一条件下の測定とはならなかったものの、どのような制御方式であっても送風量と排風量
のバランスが著しく異なる場合では、施設内の負圧は大きく低下(排風機の予備機起動)或いは上昇(送
風機の予備機起動)して、現状よりも安定した負圧を確保することは困難であることが確認された。
以上の点から、換気設備に関して予備機起動などの過渡変化であっても負圧の確保能力を向上させる
ためには、給排気量のバランスを確保することが必要と考えられ、以下のような検討・配慮が必要であ
る。
① 送風量と排気量の全体バランスのみでなく、各系統に設置する送排風機の台数や送排風機の負う
送風量のバランスについても配慮する。
② ①での配慮が合理的に行えない場合は、起動順序や予備機起動時の順序起動などの配慮を行う。
③ 送風量の制御としてインバータによる回転数制御により、風量バランスや負圧の制御を行う。
④ 制御弁によるリサイクル量制御により、風量バランス調整を行う。
しかしながら、このような風量バランスに関する設計は、これまでの熱除去などに必要な換気風量の
算出、換気ダクト系統設計、負圧測定箇所の選定及び使用する送排風機の能力(性能曲線等)などの換
気設備の設計と大きく異なるものではないが、送排風機と負圧制御が密接に関連したものとなるため、
各系統の風量バランス、送排風機の設置台数(性能を含む)及び負圧制御方法(制御ダンパー、リサイ
クルダンパー及びインバータ)などの設備構成から過渡変化時の負圧バランスに係るリサイクルダクト
の断面、ダンパーの制御設計又はインバータ出力の制御設計などを行う必要がある。また、止むを得ず
風量バランスが考慮できない場合であっても、リサイクル系統の設置やインバータ制御による風量調整
などにより対応することも可能である。
今後、こうした安全裕度を向上させた設備設計を考慮した換気設備を設置する場合、建設コストへの
影響が比較的小さい①及び④に関する検討・配慮が現実的ではあるが、総合的なコスト評価と共に行う
のであれば、インバータによる風量及び負圧制御も十分選択肢となるものと考える。
なお、クリーンルームの設計に関する調査を行ったところクリーンルームは部屋等を加圧した状態と
するための制御ではあるが、その制御方法は再処理施設で使用されているものと基本的に違いはなかっ
た。
ロ.送排風機等の保全データの整理
東海再処理施設における保全データは、その大部分がデータベース化されており、本データベースから
換気設備用送排風機の保全データを抽出した結果、1980 年から 2002 年までの 22 年間に送排風機に係る
保全件数は、131 件であった。この内、軸受に関する保全は 101 件であり、送排風機の羽車等のバランス
調整に関わるものは 8 件であった。
その他 22 件は予防保全を目的とした点検整備に関するものであった。
軸受の交換などの軸受に関する保全の内訳は、軸受の磨耗によるものが 70 件、損傷によるものが 4 件、
潤滑不良によるものが 29 件となっている。軸受の磨耗による軸受交換は、使用期間が 5 年程度のものも
含まれることから、磨耗の原因に潤滑不良の場合が多いものと推測される。
換気設備で使用している送排風機は 1 回/年以上の頻度で点検・整備が行われており、機器の運転時間
は 1 基当たり 8760[h]×(2/3)=5840[h]であるとすると、故障発生確率は①軸受の故障②羽根車等のバ
ランス不良について以下のように算出された。
① 軸受の故障発生確率:1.3E-02[/y](3.6E-05[/d])
② 羽根車等のバランス不良発生確率:8.3E-03[/y](2.3E-05[/d])
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ.これまでに取得した換気設備の過渡変化時の負圧データから、通常の制御ダンパーによる負圧制御で
は過渡変化への対応は難しく、安全裕度を向上させるためには、過渡変化時の換気風量のバランスを極
力崩さないための設計上の配慮が必要であることが確認され、当初の目的は達成できた。
ロ.東海再処理施設における換気設備の保全データを故障の種類別に分類した上で、軸受の故障発生確率
及び羽根車等のバランス不良発生確率について算出することができた。
(今後の予定)
実規模施設を用いた負圧変動に関する調査、測定は終了し、調査結果を取りまとめることで、安全裕
度の向上に係る方向性を示すことができ、所期の目的は達せられたとかんがえられることから、本研究
は終了するものとする。
また、送排風機等の保全データの整理に関しても、保全データの整理及び故障発生確率の算出が行え
たことから、終了するものとする。
−97−
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【成果の利用実績及び活用見通し】
施設建設や既存換気設備の更新時に活用することができる。
保全データについては、送排風機に関する確率論的安全評価への適用が期待できる。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
(発表予定)なし
【最近の国内外の研究動向(平成16年度)
】
[民間の研究の現状と動向]
(参考文献)なし
[海外の研究の現状と動向]
(参考文献)なし
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
)
【自由評価欄】
毎年、予算編成において削減指示があり、施設の維持費、設備更新費が優先されており、当該研究予算
を確保することができない状況にある。これまでに取得した実規模レベルの負圧変動から、動的閉じ込
め機能としての換気設備のシステムに関わる検討を行い,換気設備の設計における安全裕度を向上した
設計の基準となる情報として、実施困難な状況ではあったものの一定の方向性は提供できたものと考え
ているため、平成 16 年をもって終了する。
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安全研究成果調査票(平成16年度)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する研究
【分類番号】
○3−4(施設3−3−8)
【研究課題名(Title)】
グローブボックス等解体技術の開発(The development of the grove box dismantling technology)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]浅妻 新一郎(あさ づま し んいちろう )
[所属]東海事業所 プルト ニウ ム燃料セン タ ー 環境保全部 技術開発室
FAX:029-282-9484
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33 電話: 029-282-1111
(Name) Shinichiro ASAZUMA
(Title of Function) Waste Technology Engineering Section, Waste Management Division,
Plutonium Fuel Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194, Japan,
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]嘉代 甲子男(かしろ かしお)
松本 正喜(まつもと まさき)
[所属]東海事業所 プルト ニウ ム燃料セン タ ー 環境保全部 技術開発室
(Name) Kashio KASHIRO
(Title of Function) Waste Technology Engineering Section, Waste Management Division,
Plutonium Fuel Center, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度 ∼ 平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
プルトニウム燃料第三開発室
【研究概要】
[研究の経緯]
プ ルト ニウ ム 燃料施設で は建設後約 40 年を 経過し た 施設があ り 、ふげん燃料製造等のプ ロ
ジ ェ ク ト 終了に伴っ て 、今後グ ロ ーブ ボ ッ ク ス 及び内装設備のデコ ミ ッ シ ョ ン が予想さ れる 。
そ の際、グ ロ ーブ ボ ッ ク ス 等内装設備の切断について は、作業の安全性,迅速性及び発生
廃棄物低減の観点から 、プ ラ ズ マ切断,レ ーザ切断等の電気切断方式を 採用し た 遠隔解体手
法が考え ら れる 。
こ のよ う な 電気切断方式で は金属等を 高温で 溶かし て 切断す る た め、切断部や そ の表面に
付着し て いる 放射性物質は昇華し 、ヒ ュ ーム 状の微粒子と な っ て 周り の雰囲気中に移行す る
こ と が予想さ れる が、そ れら の挙動について は把握さ れて いな い。
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[研究目的]
グ ロ ーブ ボ ッ ク ス 等の切断について は、作業の安全性,迅速性及び発生廃棄物低減の観点か
ら 、プ ラ ズ マ切断,レ ーザ切断等の電気切断方式を 採用し た 遠隔解体手法が考え ら れる 。こ の
よ う な 電気切断方式で は、金属等を 高温で 溶かし て 切断す る た め、切断部の金属及びそ の表
面に付着し て いる 放射性物質は昇華し 、ヒ ュ ーム 状の微粒子と なっ て 移行す る 。本研究で は、
切断時に発生す る 微粒子の挙動を 把握す る と と も に、施設フ ィ ルタ の捕捉性能を 確認す る 。
[研究内容]
イ .基礎試験
基礎試験では、プルトニウム等を模擬する物質の選定を行い、プラズマ切断及びレーザ切
断試験によって発生する微粒子の挙動を把握するとともに、粒子径の確認を行う。
ロ .評価試験
基礎試験データ を 基にプ ルト ニウ ム を 用いて 、プ ラ ズ マ切断機によ る 切断試験を 実施す る 。
ま た 、基礎試験,評価試験デ ータ から 各切断機の粒子特性,粒子の移行評価及び施設フ ィ ル
タ の切断粒子に対す る 捕捉性能評価を 行う 。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
評価試験装置の製作を終了する。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
本年度は、平成15年度に実施した設備設計(添付の図−1)に基づき、試験装置の製作を行った。
製作した試験装置は、放射性粉塵が発生する雰囲気の試験場所において測定装置部をクリーンに保つ
ため1m3 のステンレス製気密ボックス内に、切断時に発生するヒュームをボックス内に取り込む配管、
3段直列の高性能フィルタ及び高性能フィルタ二次側の空気をサンプリングするロープレッシャインパ
クタを配置してある。添付の図−2に試験BOX内機器配置図を示す。
また本年度は、平成17年度に実施する試験概念について検討を行った。要点を以下に示す。
① 切断対象物は、ステンレス鋼又は炭素鋼とする。
② 切断物表面の汚染濃度は、当該作業時装備の使用管理値上限である 320Bq/cm2 を目安とする。
③ 評価項目は、ロープレッシャインパクタ内の粒子径及び放射性物質量とする。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
評価試験装置の設計、製作を終了し、所期の目標を達成した。
(今後の予定)
平成17年度は、気密ボックス内に放射性物質の有無を判別するための測定装置を設置した後、実
際にプルトニウム及びウランで汚染した金属をプラズマ切断した時のデータを採取し、試験結果に基
づきフィルタの捕捉性能について評価を行う。
【成果の利用実績及び活用見通し】
今後の核燃料取扱施設における デ コ ミ ッ シ ョ ニン グ 技術を 検討す る 上で 、安全性に係る 検証デー
タ と し て 利用で き る 。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
なし
(発表予定)
未定
【最近の国内外の研究動向(平成16年度)
】
[民間の研究の現状と動向]
なし
(参考文献)
なし
−114−
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[海外の研究の現状と動向]
なし
(参考文献)
なし
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
■ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
)
【自由評価欄】
−115−
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ロープレッシャインパクター
パワーマニニプレータ
−116−
プラズマトーチ
ろ紙重量
測定装置
放射能測定機器
試験片
ろ紙搬出孔
図−1
放射性微粒子補足プロセスフ ロー
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−117−
試験B O X 内機器配置図
図−2
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安全研究成果調査票(平成16年度)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する研究
【分類番号】
◎4−1(施設3−4−3)
【研究課題名 (Title)】
臨界監視技術の高度化に関する研究
(The Study of Advanced Criticality Accident Monitoring Technology)
【実施機関 (Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名,所属及び連絡先 (Name,Title of Function,Address and so on)】
[氏名]
百瀬琢麿(ももせ たくまろ)
小林博英(こばやし ひろひで)
[所属]
東海事業所
放射線安全部 線量計測課
放射線管理第二課
[連絡先] 〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松4-33
電話:029-282-1111,FAX:029-282-1873, 029-282-9966
(Name) Takumaro MOMOSE
Hirohide KOBAYASHI
(Title of Function)
Radiation Dosimetry and Instrumentation Section,
Reprocessing Radiation Control Section,
Radiation Protection Division
(Address, Tel. and Fax) 4-33 Muramatsu,Tokai-mura,Naka-gun,Ibaraki,319-1194,Japan
Tel:+81-29-282-1111,FAX:+81-29-282-9534, +81-29-282-9966
(E-mail) [email protected]
[email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name,Title of Function)】
[氏名]辻村憲雄(つじむら のりお),吉田忠義(よしだ ただよし),
三上 智(みかみ さとし),眞田 幸尚(さなだ ゆきひさ)
[所属]東海事業所 放射線安全部 線量計測課
放射線管理第二課
(Name) Norio TSUJIMURA, Tadayoshi YOSHIDA
Satoshi MIKAMI and Yukihisa SANADA
(Title of Function)
Radiation Dosimetry and Instrumentation Section,
Reprocessing Radiation Control Section
Radiation Protection Division
【研究期間】
平成13年度∼平成17年度
【関連する共同研究,実証試験等】
[共同研究名(実施機関)]なし
[実証試験名(実施機関)]なし
[委託研究名(実施機関)]なし
【使用主要施設】
核燃料サイクル開発機構
計測機器校正施設
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【研究概要】
[研究の経緯]
イ.臨界警報装置の高度化
臨界警報装置は,臨界事故が発生した場合,退避の対象となる区域にいる作業者を迅速に退避させるこ
とができるよう,臨界を速やかに検知し,警報を吹鳴させる装置であり,高い信頼性が要求される。現在,
施設に設置している臨界警報装置は,1970 年代後半に開発,設置(更新)したものであり,既に 20 年が
経過している。そこで,最新の放射線計測技術を駆使した,より信頼度の高い次世代臨界警報装置を開発
する。
ロ.臨界安全監視システムの開発
事故に起因する放射性物質の放出に関する情報は,施設周辺環境への影響を把握し,原子力災害対策
上も迅速かつ適切な措置を決定するために極めて重要である。臨界事故時には多種類の放射性希ガスが
放出されるが,JCO臨界事故の経験から,影響評価には核種毎の放出量のリアルタイムでの把握が重要
であることが認識された。このため,臨界事故時に放出される放射性希ガスの測定及び評価方法の開発
を行うこととした。
[研究目的]
臨界事故の未然防止,発生検知のための監視装置の高度化開発を行い,核燃料サイクル施設の臨界安全管
理技術の信頼性向上,施設の運転安全性の向上に資する。
[研究内容]
イ.臨界警報装置の高度化
既存の臨界警報装置に対し作動条件の把握,誤作動の防止措置等信頼性向上のための調査・試験を行い,
装置の高信頼性化を図る。また,臨界警報装置の高度化(検知対象,高信頼化システム等)のための調査・
検討を行い,次世代臨界警報装置開発のための知見を得る。
ロ.臨界安全監視システムの開発
臨界事故時の放出等に関する放射線情報をより迅速及び的確に把握するため,放射性希ガスの放出など
の放射線状況の評価・検討を行う。また,臨界事故時の最適な放出量の測定及び評価方法等の調査を行い,
臨界事故時の放出量測定装置の開発のための知見を得る。
【当初の達成目標(平成16年度)】
イ.臨界警報装置の高度化
一部の工程の臨界事故の検知に使用している中性子用臨界警報装置(核分裂検出器)に替わる,濃縮 235U
を使用しないγ線と中性子を測定する臨界警報装置用検出器を製作し,その特性試験を行う。
ロ.臨界安全監視システムの開発
臨界事故時に発生する放射性希ガスの測定・評価システム構築のための要素技術の一つとして高濃度の
放射性希ガスが計測可能な計測装置の調査及び検討を行い、高計数率測定システムを試作する。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ.臨界警報装置の高度化
東海事業所では,臨界事故の発生を検知し速やかに退避警報を発生させることを目的とした計 105 台の
臨界検出器を再処理施設及び核燃料物質使用施設に設置している。このうち 102 台は主としてγ線を検出
するプラスチックシンチレータ(東芝 RD120)であるが,残る 3 台は中性子を検出する減速材付き核分裂
検出器(東芝 RD624)であり,国際規制物資である濃縮 235U を検出器の一部として使用することによる管
理の煩雑さ,二種類の検出器系の同時運用に伴う保守性等に課題があった。そこで,核分裂検出器に替わる
検出器の候補の一つとして,γ線に加えて中性子の検出も可能な臨界検出器を新たに開発した。本開発にあ
たって,現在使用している 2 種類の臨界検出器(RD120 と RD624)について,計算と実験によりエネルギ
ー特性と方向特性を評価し(平成 15 年度安全研究成果調査票で報告),両検出器の特性にかかる技術シー
ズを結合させることによって,中性子とγ線の両者を区別無く検出し,かつ中性子とγ線による合計の組織
吸収線量に比例したレスポンスを有する新しい臨界警報装置用検出器を考案した。RD120 と RD624 それ
ぞれの特徴,さらに新たに開発した臨界検出器の原理を以下に説明する。
−120−
JNC TN1400 2005-018
まず,既設臨界検出器の特徴についてであるが,RD120 は,38mmφ×51mm 長の NE102 プラスチッ
クシンチレータ(以下「PS」と記す)を電流モードで動作させた検出器であり,主としてγ線を検出する
ことを目的に設計されている。しかしながら,中性子が入射した場合,PS 中に含まれる水素と熱中性子の
反応並びに臨界警報装置の筐体である圧延鋼板に含まれる鉄と熱中性子の反応によって捕獲γ線が発生す
る。臨界警報装置の外部から入射するγ線による信号と,装置の内部で発生する捕獲γ線による信号は,電
流モードの場合,原理的に分離不可能であるため,RD120 は,中性子に対しても僅かながら感度を有する。
一方,RD624 は,濃縮 235U コンバータを表面障壁型シリコン半導体の前面に取り付けた,いわゆる核分裂
検出器である。これを減速材で覆うことによって,速中性子を減速させ(熱中性子化させ),235U(n,fission)
反応で生じる核分裂片を半導体で検出する。RD624 は,必ずしも全ての中性子エネルギーに対して理想的
なエネルギー応答特性を有しているわけではないが,検出器を設置する区域の臨界事故発生時における中性
子スペクトルに対応したエネルギー特性を有するよう減速材が設計されている。新しく開発した臨界検出器
は,前述したように RD120 と RD624 の技術シーズを結合させたものである。RD120 が中性子に対しても
僅かに感度を有し,かつγ線起源による信号と中性子起源による信号が原理的に分離できない点に着目し,
γ線感度に比べて相対的に低い中性子感度を逆に増加させる工夫をした。具体的には,PS の周囲に Cd か
らなる熱中性子−捕獲γ線コンバータを配置し,さらにそれをポリエチレン減速材で覆う構造をとることに
よって,検出器の外部から入射するγ線だけでなく,Cd(n, )反応を利用して間接的な中性子検出も可能に
する。
Cd 及びポリエチレン減速材の配置を,モンテカルロ計算コード MCNP による計算によって評価した。
図 1 に示す計算体系で,137Csγ線と中性子を面平行ビームで入射させ,PS 中の二次電子によるエネルギー
沈着を F8 tally(Pulse height tally)で計算し,γ線と中性子に対する周辺吸収線量(D*(10))当たりの吸収
エネルギーを計算した。このとき,中性子の線源には,単色中性子,252Cf 自発核分裂スペクトルのほか,
既設 RD624 の設置箇所の条件を鑑み,直径 30cm の水球内で一様に 235U(n,fission)が発生したときの漏洩
中性子のスペクトル,さらに,そのスペクトルが厚さ 10∼20cm の鉄遮へい,厚さ 10∼30cm のコンクリ
ート遮へいを通過した場合の中性子スペクトルを用いた。表1に,本計算における線源スペクトルとして使
用した中性子スペクトル(以下,「模擬スペクトル」と記す)の特徴を表わすパラメータ(平均エネルギー
等)を示す。また,ポリエチレン減速材の半径を変化させた場合,Cd コンバータを多層に配置した場合に
ついても同様の計算を行い,γ線と中性子に対する感度のバランス(1:1が望ましい)と,臨界事故時の
想定中性子スペクトルに対する中性子感度の依存性(小さい方が良い)の二点に着目し,適切な Cd 及びポ
リエチレン減速材の配置と構造を調べた。その結果,ポリエチレン減速材の厚さを 50mm とし,厚さ 1mm
の Cd を PS と減速材の境界面と減速材表面から深さ 35mm の二層に配置することとした。図 2,図 3 に,
それぞれ上記計算モデルにおける,それぞれ単色中性子,模擬スペクトルに対する周辺吸収線量レスポンス
の計算結果を示す。図はともに 137Csγ線に対する周辺吸収線量レスポンスで規格化している。図 2 から分
るように,全ての中性子エネルギーに対して平坦なエネルギー特性を有しているわけではないが,臨界事故
時の想定中性子スペクトルに対しては,概ね 1(0.6∼1.4 の範囲)の感度を有している。
本計算結果をもとに試作した臨界検出器(中性子−γ線同時測定式臨界検出器)の外観写真を図 4 に示す。
(高さ 17.5cm×幅 30cm×奥行き 21.5cm)に比べてやや大形化し,寸法が高さ 20.5cm×幅 50cm
既設 RD120
×奥行き 21.5cm,質量は約 20kg である。本試作機のγ線に対する周辺吸収線量レスポンスを 137Cs,60Co
γ線校正場,中性子に対する周辺吸収線量レスポンスを 252Cf 減速中性子校正場で調べた。後者の減速場は,
252Cf 標準中性子線源を低炭素鋼とメタクリル樹脂からなる減速材で覆ったものであり,モンテカルロ計算
と中性子スペクトロメータによる測定によって精度良く中性子スペクトルが評価されている。ここで,中性
子による周辺吸収線量率は,減速中性子校正場の中性子スペクトルとドイツ物理技術研究所(PTB)による
換算係数から算出した。また,混在γ線による周辺吸収線量率は,電離箱式線量当量率サーベイメータを鉛
ブロックで覆った場合と覆わない場合の指示値の差から算出した。実験によって得られたγ線に対する周辺
吸収線量率レスポンスを 1 に規格化したときの中性子に対するレスポンスを表 2 に示す。実験値は,MCNP
による設計段階での予想レスポンスをほぼ再現しており,本検出器の設置区域(溶液系+鉄遮へい)の中性
子スペクトルに対してはγ線に対するレスポンスと同程度の中性子レスポンスが期待される。今後,実際の
原子炉を用いた照射実証試験を計画している。
−121−
JNC TN1400 2005-018
ロ.臨界安全監視システムの開発
臨界事故時に発生する放射性希ガスの放出量を核種毎にモニタリングする装置開発の一環として、臨界に
伴って生成する放射性希ガス核種の組成、生成量などの放射線状況を計算コード ORIGEN2.1 を用いて模擬
評価した結果から、臨界事故時に特有の放射線状況に対応するために測定装置が具備すべき主な性能、機能
として以下の項目を設定し、適用可能な要素技術の調査及び研究を行っている。
1)核種毎の評価を行うために核種分析機能を有すること
2)複数の希ガス核種に対しリアルタイムの放出量評価が可能であること
3)臨界発生直後などの高線量率が計測できること
平成15年度までに、試作測定装置の検出器の選定のために、近年その性能向上が図られ常温で使用可能
という利点をもつヨウ化水銀半導体検出器とエネルギー分解能に優れるゲルマニウム半導体検出器につい
て、検出効率、エネルギー分解能、エネルギー直線性、検出器からの信号パルス幅等基本性能の試験及び使
用済燃料の再処理に伴って放出される実際の排気を対象とした測定試験等を行い比較した。試験結果を総合
的に判断し、試作測定装置にはゲルマニウム半導体検出器を使用することとした。また、核種毎の放出量の
変化をリアルタイムで観測する技術開発の一環として、半導体検出器と市販の多重波高分析器(MCA)に
よる測定で観測される複数のガンマ線ピークの解析による核種同定機能にピーク計数率の経時変化をトレ
ンドグラフに描かせる機能とそれぞれのピーク計数率から放射能濃度に換算する機能を付加したデータ処
理プログラムを製作した。
従来の計測システムでは信号のパイルアップ等が生じるため臨界直後などの高線量率の放射線状況では
正しく計測できないことが想定される。例えば NaI(Tl)シンチレーション検出器、前置及び比例増幅器、
シングルチャンネル波高分析器等で構成される計測装置の場合、放射線を使った照射試験の結果、104 s-1 オ
ーダが計数率限界であることを確認している。これは、主に比例増幅器が持つ 100 マイクロ秒程度の不感時
間のためと考えられる。また、ゲルマニウム検出器(前置増幅器含む)と比例増幅器、アナログデジタル変
換器(ADC)及び MCA メモリが一体化した部分からなる新しい核種分析装置に対し、パルス発生器を使っ
て計測システム全体としての計数率限界を調べたところ、およそ 105 s-1 のパルス数で計数率が上昇しなくな
ることを確認した。一方、臨界に伴う高線量率の放射性希ガスをゲルマニウム検出器で測定したときに想定
される計数率の変化を、既設の排気モニタ構造をモデルとして式(1)により計算した。C.は計数率(m-1)、
A.は計算コード ORIGEN2.1 で計算した各核種のインベントリ(Bq)を、 はガンマ線放出率(s-1)
、 は全
エネルギーピーク効率、M は希ガスを含む空気流量(100m3.s-1)、S は希ガス捕集容器の容積(0.03m3)で
ある。
C=A× × ×M/S
(1)
計算結果を図 5 に示す。1020fission 規模の臨界の場合、発生から約 15 時間以内では最大で 105 s-1 オーダを超
える計数率になる可能性がある。
そこで、計数の数え落とし等の問題で、測定が困難になる可能性がある臨界事故発生直後など高線量率が
予想される状況における計測性能の向上について研究した。
従来のガンマ線スペクトル計測システムは104
105 s-1の計数率限界であるのでシステム全体として
10 100マイクロ秒程度の不感時間を有すると考えられる。そこで、不感時間を1マイクロ秒程度まで短
縮する目的で、従来のシステムの比例増幅器以降の計測系に替え,データの連続記録及び転送機能を含
む超高速データサンプリング(109個データ/秒)能力を有するパソコン組込型A/D変換カードを採用した
計測システムを本年度1年間かけて製作した。このシステムは従来の放射線管理用モニタや放射線防護
用機器には採用されていない考え方に基づき放射線によるパルスを計測、保管しデータ解析を行うもの
である。本手法により処理可能な信号は現状の104-105 s-1から106-107 s-1程度まで向上することが見込まれ
る。図6に従来の計測システムと今回製作した高線量率対応型新計測システムによる不感時間の比較を
示す。
【研究の達成状況(平成 16 年度)
】
イ.臨界警報装置の高度化
γ線と中性子を弁別せず両者による組織吸収線量を測定する新しい臨界警報検出器を試作した。本検出器は,
国際規制物資である濃縮 235U を使用する RD624 に替わる臨界検出器として開発したものであり,235U を使
−122−
JNC TN1400 2005-018
用していないだけでなく,中性子とγ線の両放射線を検出することが可能であること,既に 102 台設置され
ている RD120 臨界検出器と,減速材部を除く部品を共通化させていること,といった特徴を有しており,従
来の臨界検出器に比べて,適用範囲の広さ(汎用性)と保守性に優れている。
ロ.臨界安全監視システムの開発
超高速のデータサンプリング能力を有する放射線計測システムを試作した。
(今後の予定)
イ.臨界警報装置の高度化
新たに開発・試作した中性子−γ線同時測定式臨界検出器の製作の特性試験を原子炉等で行う。それにあた
って,原子炉照射場において,中性子とγ線による吸収線量率を精度良く分離測定する方法を検討する。また,
さらに減速材構造等を見直すことによって,適用範囲を限定しない(溶液系/金属系臨界又は遮へい条件に依
存しない)より汎用性に富む中性子−γ線同時測定式臨界検出器の概念設計を行う。
ロ.臨界安全監視システムの開発
臨界事故直後の放射線状況に相当する計数率レベルに対する本計測システムの高速信号処理に関する性能
試験を行う。
【成果の利用実績及び活用見通し】
イ.臨界警報装置の高度化
臨界警報装置の更新に活用する予定である。
ロ.臨界安全監視システムの開発
臨界事故時希ガス放出量測定装置等の高計数率データ処理装置として適用できる。
(1) 【研究成果の発表状況(平成 16 年度)
】
(1) 辻村憲雄,吉田忠義,石塚晃弘:二種類の臨界警報装置のエネルギー及び方向特性の評価 プラスチッ
クシンチレータと減速材付き核分裂検出器,第7回 NUCEF セミナー,(2004)
(2) N.Tsujimura, T.Yoshida and S.Mikami: Energy and Angular Responses of the Criticality Accident
Alarm System using Current-mode-operated Scintillation Detector, IRPA11, (2004)
(3) S.Mikami, Y.Sanada and J.Koarashi: Study on System for Rapid Evaluation of Radionuclides
Discharged in Criticality Accident, IRPA11, (2004)
(4) 辻村憲雄,吉田忠義:プラスチックシンチレータを使用した臨界警報装置のエネルギー・方向特性の評
価,JNC004-007(2004)
(5) Y.Sanada, S.Mikami, H.Kobayashi, T.Kurimata and S.Fukazawa : Study on Evaluation Method of
Radionuclides Discharged in Criticality Accident Using Stack Monitor, NUCEF2005 International
Symposium (2005)
(発表予定)
(6) 吉田忠義,辻村憲雄,石井雅人:中性子−γ線同時測定式臨界検出器の開発,日本原子力学会 2005 年
秋の大会(2005)
【最近の国内外の研究動向(平成 16 年度)】
[民間の研究の現状と動向]
イ.臨界警報装置の新規開発に関する研究は,国内ではほとんど報告されていない。ただし,炉計装分野,
多点式エリアモニタなどで,光ファイバー技術を利用した放射線検出器が幾つか報告されている。
ロ.日本原子力研究所等から核種分析に基づく希ガスモニタリングに関する報告がある。
(参考文献)
イ.
(1)前川立行, 光導波型シンチレータによる放射線多点計測 ,JAERI Conf-95-2, 24-27(1995)
(2)Y.Yamane et al., “Measurement of the thermal and fast neutron flux in a research reactor with a
Li and Th loaded optical fibre detector”, Nuclear Instruments & Method in Physics Research A432,
403-409(1999)
ロ.
−123−
JNC TN1400 2005-018
(1) M.Yoshida,et al: “A Calibration Technique for Radioactive Gas Monitor with a Built-in Ge
rmanium Detector”,IRPA-10,Proceedings, P-3a-151,CD-ROM
(2) 高田千恵,他: マルチチャンネル波高分析レートメータの開発”,日本原子力学会 2003年春の年会
要旨集
(3) Saito, H., et al,: “A new positron lifetime spectrometer using a fast digital oscilloscope and
BaF2 scintillators”. Nucl. Inst. Meth. Phys. Res. Sect. A487 612-617, 2002
(4) 南賢太郎, 他: ”緊急時用スタックガスモニタの開発”,日本原子力学会誌,29,652-663 (1987)
[海外の研究の現状と動向]
イ.既存の臨界警報装置の配置の見直し検討などの報告が幾つかあるが,新規開発に関する報告はない。
ロ.核種分析に基づく希ガスモニタリングに関連する報告があるが,臨界事故時を対象とした放出源情報を
迅速に得るためのモニタ等に関する報告は見あたらない。
(参考文献)
イ.なし
ロ.
(1) L. Erbeszkorn, et al: “Certified reference gas of 85Kr in a Marinelli beaker for calibrat
ions of gamma-ray spectrometers,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A
369 463-466(1996)
(2) H.L.Beck et al:” Spectral composition of the γray exposure rate due to noble gas relea
sed during a reactor accident”, Health Physics Vol.43,No.3(September),pp.335-343(1982)
(3) Nuclear Fuel Cycle Facility Accident Analysis Handbook; NUREG/CR-6410 (1998)
(4) D.S.McGregor, H.Hermon; “Room-temperature compound semiconductor radiation detectors”,
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A395 101-124(1997)
(5) Vernon Gerrish. “Polarization and gain in mercuric iodide gamma-ray spectrometer”, Nucle
ar Instruments and Methods in Physics Research A322 402-413(1992)
(6) G. J. Laughlin, R. L. Kathrem: “Post-accident radiation monitors”, Health Physics 48 105-1
09(1985)
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
■ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
−124−
)
JNC TN1400 2005-018
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
【自由評価欄】
−125−
JNC TN1400 2005-018
中性子,γ線
ポリエチレン減速材
(厚さ1∼10cm)
PMT
Cd 1mm
NE102プラスチック
シ ン チ レ ー タ
(31mmφ×51mm)
137
Cs gamma-equivalent response
per D*(10)
図1
MCNPによる計算体系
102
101
100
10-1
10-2
10-8
10-6
10-4
10-2
100
102
Neutron energy, MeV
図2 MCNPによる中性子エネルギー特性の計算結果
(中性子周辺吸収線量当たりのレスポンスの中性子エネルギー依存性)
−126−
JNC TN1400 2005-018
表1
臨界事故時の想定
模擬
スペクトル
E ,MeV
遮へい
2.12
1.18
0.82
0.51
0.78
0.51
0.37
0.40
0.23
0.17
0.18
0.083
0.054
なし
なし
鉄 10cm
鉄 20cm
コンクリート 10cm
コンクリート 20cm
コンクリート 30cm
鉄 10cm+コンクリート 10cm
鉄 10cm+コンクリート 20cm
鉄 10cm+コンクリート 30cm
鉄 20cm+コンクリート 10cm
鉄 20cm+コンクリート 20cm
鉄 20cm+コンクリート 30cm
d*(10)
pGy.cm2
34.7
20.6
19.5
15.9
15.1
10.8
8.53
10.7
6.97
5.54
7.16
4.56
3.71
2.0
252
Cf : 2.12MeV
W30 : 1.18MeV
W30-S10 : 0.82MeV
W30-S20 : 0.51MeV
W30-C10 : 0.78MeV
W30-C20 : 0.51MeV
W30-C30 : 0.37MeV
W30-S10-C10 : 0.40MeV
W30-S10-C20 : 0.23MeV
W30-S10-C30 : 0.17MeV
W30-S20-C10 : 0.18MeV
W30-S20-C20 : 0.083MeV
W30-S20-C30 : 0.054MeV
1.5
1.0
0.5
137
Cs gamma-equivalent response
per D*(10)
線源
コード
252Cf
W30
W30-S10
W30-S20
W30-C10
W30-C20
W30-C30
W30-S10-C10
W30-S10-C20
W30-S10-C30
W30-S20-C10
W30-S20-C20
W30-S20-C30
0.0
10-2
10-1
100
101
Neutron energy averaged over spectrum, MeV
図3
想定
模擬
中性子スペクトルに対するエネルギー依存性
−127−
JNC TN1400 2005-018
152mmφ×162mm(減速部)
図4 試作した中性子−γ線同時測定式臨界検出器
(検出器は,筐体フロントパネル背面に固定しており,写真は固定している側から見たもの)
表2
60Coγ線に対する感度を1に規格化した場合の中性子に対する感度
平均エネルギー
線源+遮へい(減速)体
252Cf
252Cf+鉄40mm
252Cf+鉄40mm+アクリル
60mm
SILENE炉+遮へいなし
SILENE炉+鉛遮へい
SILENE炉+鉄遮へい
SILENE炉+ポリエチレン
遮へい
E
MeV
2.0
1.5
0.77
中性子吸収線量当たりの感度
(60Coγ線感度を1)
実験
計算
1)
0.27±0.01
0.30±0.01 2)
0.34±0.01
0.36±0.01
0.46±0.02
0.52±0.01
0.70
0.50
0.34
0.59
−
−
−
−
1) 電位計指示値の変動係数,2) MCNP統計変動
−128−
0.58±0.01
0.66±0.01
0.84±0.02
0.60±0.01
備考
SILENE 炉 の 公 開
スペクトルデータ
から計算
JNC TN1400 2005-018
図5 臨界に伴って放出される希ガスをGe検出器で計測した際の計数率変化
(臨界は1020 fission規模、既設の排気モニタ構造をモデルとして計算したもの)
高計数率対応新システム
従来システム
構成機器
1パルス当たりの
不感時間[ s]
構成機器
Ge 検出器
Ge 検出器
前置増幅器
前置増幅器
比例増幅器
2~100*
1パルス当たりの
不感時間[ s]
高速データサン
プリング機能+
AD 変換器
1~80*
AD 変換モジュー
<1
ル
MCA メモリ
1~30*
*文献値による。参考文献;Gordon Gilmore et al./米沢仲四郎ら訳「実用 ガンマ線測定
ハンドブック」
図6 従来の計測システムと今回製作した高線量率対応型新計測システムによる不感時間の比較
−129−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
4−3(社内研究)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する研究
【研究課題名(Title)】
現場放射線管理技術の高度化(Advancement of Radiation Control in the Field)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名] 江森 修一 (えもり しゅういち)
[所属]大洗工学センター 安全管理部 放射線管理課
[連絡先]〒311-1393 茨城県東茨城郡大洗町成田町 4002
電話番号:029-267-4141
FAX:029-267-1674
(Name) Shu-ichi EMORI
(Title of function) Radiation Control Section, Health and Safety Division, O-arai, Engineering
Center
(Address, Phone and Fax) 4002, Narita-cho, O-arai-machi, Higashi-Ibaraki-gun, Ibaraki-ken,
311-1393, Japan, Phone:+81-29-267-4141, FAX:+81-29-267-1674
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名] 橋本 周 (はしもと まこと)
、高嶋 秀樹(たかしま ひでき)
[所属]大洗工学センター 安全管理部 放射線管理課
(Name) Makoto HASHIMOTO, Hideki TAKASHIMA
(Title of Function) Radiation Control Section, Health and Safety Division, O-arai, Engineering
Center
【研究期間】
平成13年度 ∼ 平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]
なし
[実証試験名(実施機関)
]
なし
[委託研究名(実施機関)
]
なし
【使用主要施設】
大洗工学センター 安全管理棟、放射線管理付属棟
【研究概要】
[研究の経緯]
放射線測定技術、被ばく影響の評価に関する思想と手法が進展を遂げているにも関わらず、その成果は
現場に十分に反映されていない。中性子の測定評価、線量分布の評価、β線測定など、現在の技術を適
用すればより高度で合理的な被ばく管理が期待できるが、適用が進んでいない技術は少なくない。これ
らの知見を効果的に取り入れることで、放射線管理をより高度に展開させ、放射性物質を取り扱う施設
の放射線安全性の向上と作業中のより適切な被ばく管理を図り、引いては周辺環境の放射線安全にも効
果をもたらすことが期待できる。安全管理に係るコストも今後重要な要素となってくると考えられ、現
状の管理レベルを維持しながら省力化を図るためにも、新しい技術の取り入れは不可欠である。また、
−131−
JNC TN1400 2005-018
放射線作業現場で活用されている放射線管理技術は、原子力施設における緊急事態の際にも大いに活用
可能であり、現場の放射線管理技術の高度展開は、原子力防災技術の向上にも結びつくものである。
[研究目的]
原子炉施設や核燃料物質取扱施設における放射線作業、特に中性子線、ベータ線、ガンマ線の混在場に
的確に適用できる放射線測定技術を開発し、それによる放射線作業管理の高度化をはかり、放射線作業
の安全性の向上に資する。
[研究内容]
イ.中性子線量測定技術の高度化
熱中性子と高速中性子の両方に対して感度を有する検出器を用い、中性子の線量情報とエネルギー情
報を同時に測定できる測定器を開発し、現場に適用する。中性子のエネルギー情報を得ることにより、
現状より精度の高い線量評価を行う。また、現状のレムカウンタ方式のもの(約 11kg)よりも小型で
軽量にし、より安全に現場での測定を行えるようにする。
ロ.γ線混在場におけるβ線測定技術の開発
トリプルコインシデンス手法を用いて、γ線バックグラウンドの高い場所でのβ線放出核種の検出を
行う装置を開発する。PIE 施設などの純β放出核種とγ線放出核種の混在場における汚染管理の高度化
を図る。
ハ.シンチレーションファイバによる線量監視システムの開発
シンチレーションファイバ技術、マルチチャンネル型レートメータなどの技術を利用し、広範囲にお
ける線量変動を、空間的、かつ時間的に連続監視するエリアモニタを開発する。広い放射線作業現場に
おける作業中の線量監視を効率的に行うことができるようにする。
ニ.ゲートモニタの高度利用手法の開発
ゲートモニタの応答を詳細に評価し、使用方法や感度評価手法の改良を検討する。スポット状汚染に
対する感度の向上、ゲートモニタ指示値と表面汚染密度との相関の向上を図る。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
ロ.γ線混在場におけるβ線測定技術の開発
β線測定装置の実機設計製作
ハ.シンチレーションファイバによる線量監視システムの開発
経年劣化特性の調査
ニ.ゲートモニタの高度利用手法の開発
ハード、ソフトの所要の改良
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ.中性子線量測定技術の高度化
前年に引き続き、線量率計の製作を目指したが、適当な設計・製作に関するメーカーとの調整ができ
なかった。これまでに取得したデータについては整理を進め、線量評価システムの向上を進めた。
ロ.γ線混在場におけるβ線測定技術の開発
当初想定したトリプルコインシデンス法によるβ線の選択的検出については、平成 14 年度に断念し、
現在、新手法の調査を行い、特にイメージングプレート法の適用性について試験の準備をした。
ハ.シンチレーションファイバによる線量監視システムの開発
Am-MOX 試料を用いて、現場における線源移動検出試験を行った。経年劣化特性については、要員・
予算が確保できなかったため、実施できなかった。
ニ.ゲートモニタの高度利用手法の開発
要員が確保できなかったため、実施できなかった。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ. 中性子線量測定技術の高度化
線量評価システムの精度の向上を図った。
ロ. γ線混在場におけるβ線測定技術の開発
当初想定した手法の実現性が困難であることが示され、方針の見直しを行っているため、所期の
成果は得られなかった。
ハ. シンチレーションファイバによる線量監視システムの開発
Am-MOX 試料を用いた、現場における線源移動検出試験の結果は良好で、所期の成果が得られた。
ニ. ゲートモニタの高度利用手法の開発
−132−
JNC TN1400 2005-018
要員不足のため、所期の成果は得られなかった。
(今後の予定)
イ. 中性子線量測定技術の高度化
平成 17 年度には、実用機としてのシステム化を進める。
ロ. γ線混在場におけるβ線測定技術の開発
平成 17 年度には、イメージングプレートを用いた測定について検討を進める。
ハ. シンチレーションファイバによる線量監視システムの開発
平成 16 年度で終了する。
ニ. ゲートモニタの高度利用手法の開発
要員不足によって実施できていない応答特性評価については、平成 17 年度下期以降の実施を目指
して調整を行う。
【成果の利用実績及び活用見通し】
イ. 中性子線量測定技術の高度化
実用化に結びついた場合には大幅に軽量化された高度な中性子線量率測定器として、広く、核燃
料物質取扱や放射性物質取扱の現場に活用できる。
ロ. γ線混在場におけるβ線測定技術の開発
使用済み燃料取扱施設などの、β線核種とγ線核種の混在場を有する多くの施設の汚染管理の高
度化、効率化のために広く活用できる。
ハ. シンチレーションファイバによる線量監視システムの開発
放射性物質の移動などによる線量率の位置的・時間的変動を伴う作業場所における線量率の効率
的な監視手法として、広く活用できる。
ニ. ゲートモニタの高度利用手法の開発
退出管理の信頼性の向上を図る。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
(本安全研究の成果に関する報告は平成16年度にはなかった)
(発表予定)
(1) 橋本周、他 公開資料 「熱/高速中性子同時検出器の開発」
(2) 高田千恵、他 公開資料 「マルチチャンネルレートメータを用いた線量分布測定」
【最近の国内外の研究動向(平成16年度)
】
[民間の研究の現状と動向]
イ. 中性子線量測定技術の高度化
性能の優れた中性子用電子式ポケット線量計が市販された。しかし、精度の点で不十分であり、軽
量できちんと線量が評価できるサーベイメータの要求は大きいと考える。
ロ.γ線混在場におけるβ線測定技術の開発
イメージングプレートはその特性からベータ線を選択的に測定できる可能性がある。現在、医療分
野での実用化が進み、環境放射線の測定にも応用が行われているが、施設放射線管理への応用も国内
外の研究機関で研究が進められている。感度は高いが定量手法の確立が共通の課題になっている。
ハ.シンチレーションファイバによる線量監視システムの開発
メーカ数社が、シンチレーションファイバによる線量監視システムを製品化して販売しているが、
必ずしも優れたものではない。これは主に監視中の連続データのオンライン処理が適切でないためと
考えられる。
(参考文献)
ロ.(1)大内浩子、山寺亮、大線量被ばく用線量計としてのイメージングプレートの応用開発、保健物
理、39(3)2004
(2)桝本和義、他、箔検出器と IP を用いた加速器室の中性子空間分布の測定、日本放射線安全管理学
会第 2 回学術大会講演予稿集(2003)
(3)桝本和義、他、再剥離性付箋用テープとイメージングプレート利用による加速器室内の表面汚染
分布の測定、日本放射線安全管理学会第 2 回学術大会講演予稿集(2003)
[海外の研究の現状と動向]
−133−
JNC TN1400 2005-018
本件について、海外において系統だった研究をする動きは見られず、また、主要論文誌において関
連する研究発表も、最近はない。
(参考文献)
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
今年度取り組むことができた課題については順調に成果をあげている。なお、「ロ.γ線混在場に
おけるβ線測定技術の開発」に関しては平成14年度に当初の手法を断念し、新たな手法の検討を行
っている。また、「ニ.ゲートモニタの高度利用手法の開発」に関しては、要員不足のため、年度計
画時点で予定から外れている。
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
)
[説明欄]
「イ.中性子線量測定技術の高度化」の成果は、大幅に軽量化された高度な中性子線量率測定器として、
多くの中性子取扱に際して、安全性の向上に活用できる。また、「ハ.シンチレーションファイバによる
線量監視システムの開発」の成果は、放射性物質の移動などによる線量率の位置的・時間的変動を伴う
作業における線量率の効率的な監視手法として、安全性の向上に反映できる。
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
)
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
今年度取り組むことができた課題については順調に成果をあげている。なお、「ロ.γ線混在場にお
けるβ線測定技術の開発」に関しては平成14年度に当初の手法を断念し、新たな手法の検討を行っ
ている。また、「ニ.ゲートモニタの高度利用手法の開発」に関しては、要員不足のため、年度計画
時点で予定から外れている。
【自由評価欄】
予算、要員の確保が十分にいかない現状の中で、年度当初に計画した内容には取り組むことができた。
なお、今年度については、大洗工学センター内の放射線施設におけるさまざまなプロジェクトが進展し、
それに対応するための放射線管理におけるさまざまな技術開発に取り組み、その点で安全研究にかけるウ
ェイトが減ったことも否めない。プロジェクトに伴う放射線管理技術開発の成果としては、照射燃料試験
施設におけるマイナーアクチニド(以下、MA という)含有燃料の製造に伴う MA 粉末の管理方策の検討、高
速実験炉「常陽」
の MK-Ⅲ性能試験及び FFDL 炉内試験に対応した希ガス測定技術の整備などが挙げられる。
これらの成果は、「MA 燃料取扱施設における放射線管理について」「事故時の希ガス放出量評価」として、
それぞれ日本原子力学会 2005 年春の年会(2005 年 3 月)や日本保健物理学会第 39 回研究発表会(2005 年
6 月)で発表する。
−134−
JNC TN1400 2005-018
PSF
c
a
b
:試料(Am-MOX 線源)
:試料の移動方向
写真
PSFによる線量測定状況
(AGFグローブボックス内でのAm-MOX試料の取扱作業時)
−135−
JNC TN1400 2005-018
a
※各測定データは、試料移動作業中の写真
に示す a,b,c の位置によるもの。
b
c
図
シンチレーションファイバ線量監視システムによ る
測定結果の例
−136−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
4−4(社内研究)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する研究
【研究課題名(Title)】
α線放出核種の放射線管理技術の向上に関する研究
(Research for improving the radiation control technique of alpha radio-nuclides)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名] 相馬 丞(そうま すすむ)
武石 稔(たけいし みのる)
田子 格(たご いたる)
[所属] 東海事業所 放射線安全部 放射線管理第一課
環境監視課
人形峠環境技術センター
安全管理課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33 TEL 029-282-1111(内 2740)
(Name)
Susumu SOMA
Minoru TAKEISHI
Itaru TAGO
(Title of Function)
Plutonium Radiation Control Section, Radiation Protection Division, Tokai Works
Environmental Safety Section, Radiation Protection Division, Tokai Works
Environment and Safety Section, Ningyo-toge Environmental Engineering Center
(Address, Phone and Fax)
4-33,Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki-ken, 319-1194
Tel +81-29-282-1111
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名] 井
賢二(いざき けんじ)
[所属] 東海事業所 放射線安全部 放射線管理第一課
(Name)
Kenji IZAKI
(Title of Function)
Plutonium Radiation Control Section, Radiation Protection Division, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度 ∼ 平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
] なし
[実証試験名(実施機関)
] なし
[委託研究名(実施機関)
] なし
【使用主要施設】
プルトニウム燃料第一開発室,プルトニウム燃料第三開発室
【研究概要】
[研究の経緯]
α線測定による汚染管理は,プルトニウム取扱施設における放射線管理の特徴のひとつである。
−137−
JNC TN1400 2005-018
α線測定では天然放射性核種の影響が大きく,特にα線用空気モニタを用いた空気中放射性物質濃
度の連続監視においては,
管理目標値とバックグラウンド値の間に 1 桁程度の余裕しかなく,また,
バックグラウンドは換気状態などにより変動することから,微小な汚染の早期検知が困難であり,
濃度管理が難しくなっている。
一方で廃棄物の汚染検査においては,α線の飛程が短いため,より測定対象物に接近したサーベ
イを行う必要がある。このためには,廃棄物の形状に応じた測定器が必要となる。しかし,現状の
サーベイメータでは検出面の形状に制約を受け,廃棄物によっては汚染検査ができないことから,
放射性廃棄物として区分処理されるケースがある。
以上のようなことから,α線用空気モニタのバックグラウンド低減及び放射性廃棄物の合理的な
管理手法の検討など,α線管理特有の問題の解決に取り組む必要があった。
[研究目的]
プルトニウム取扱施設における放射線管理では,プルトニウムの特性を考慮し,α線測定による
管理を行うとともに厳しい管理基準を設けている。本研究では,天然放射性核種とプルトニウムの
弁別測定技術及びα線測定技術などを向上させることにより,放射線測定の信頼性向上及び合理化
を図る。
[研究内容]
イ. 天然放射性核種とプルトニウムの弁別測定技術の評価
従来の半導体検出器を用いたエネルギー弁別手法に加え,ラドン子孫核種及びトロン子孫核種
のα線エネルギースペクトルに着目し,スペクトルの時間変化,捕集ろ紙の特性及び半導体検出
器のエネルギー特性等を考慮した天然放射性核種の弁別測定技術について検討するとともに,こ
れまでに開発された種々の弁別技術を含めて,プルトニウムの検出精度の観点から比較・評価す
る。
ロ. 施設内天然放射性核種の低減に関する調査・解析
天然放射性核種の濃度が高い工程室において,室内の空気流線及び換気状態を変化させること
により,室内空気の挙動と天然放射性核種濃度の関係を把握するとともに,天然放射性核種の低
減効果について解析し,その結果を基に,プルトニウム検出のさまたげとなる施設内の天然放射
性核種の低減に反映する。
ハ. 不定形物品の汚染検査技術の開発
電離効果が大きいことや飛程が短いといったα線の特徴を考慮しつつ,これまでに測定困難で
あった細部のα線測定を可能にする手法について検討するとともに,その結果を踏まえた測定装
置の開発等を行うことにより,放射性廃棄物の低減に反映する。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
イ.種々の核種分別技術について比較・評価を行うとともに,必要に応じて効果的な分別技術を放射線
管理技術として適用する。
ロ.天然放射性核種の挙動等を把握し,その低減策を検討・実施することにより効率的な放射線管理を
遂行できるようにする。
ハ.様々な形状の物品に対して汚染検査が実施可能な手法を検討することにより,放射性廃棄物の低減
に反映する。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ. 天然放射性核種とプルトニウムの弁別測定技術の評価
本年度は,α線用サーベイメータとして最も利用されている ZnS(Ag)シンチレーションサーベイ
メータ(以下,ZnS サーベイメータという)について,α線のエネルギー弁別機能の付加について
検討を行った。
従来,ZnS サーベイメータは,4MeV 以上のエネルギーを持ったα線を測定するように設計され
ており,エネルギー弁別を行うことを想定していなかった。しかし,NaI シンチレーション検出器
のように,シンチレーション検出器でもエネルギー弁別を行っているものもあり,ZnS シンチレー
ション検出器でもエネルギー弁別ができる可能性がある。そこで, ZnS の粒子径 と シートの
厚み が異なる複数の ZnS シンチレーションシートを製作し,α線の測定を行った。
その結果,エネルギー弁別において,ZnS の粒子径は 分解能 に関係しており,粒径が細かい
ほど得られるエネルギースペクトルの分解能がよくなることが分かった。また,シートの厚みはα
−138−
JNC TN1400 2005-018
線出力波形の 波高 に関係しており,測定対象のα線の飛程と同程度の厚みにすると,波高が最
も高いパルス信号を得られた(図1参照)。この結果から,適切な粒径と厚みを持ったシンチレー
ションシートを用いれば,ZnS サーベイメータでも Rn 子孫核種の影響を少なくすることが可能で
あることが分かった。
ロ. 施設内天然放射性核種の低減に関する調査・解析
前年度までに,空気モニタの指示値の変動傾向は施設の換気方式によって異なり,ワンス・スル
ー方式を採用している施設では外気の Rn 濃度と関係があり,循環方式を採用している施設では主
にエアロゾル濃度と関係していることが分かった。
本年度は,エアロゾル濃度と空気モニタ指示値の関係を確認するため,パーティクルカウンタを
用いたエアロゾル濃度の測定を行った。図 2 に代表的なエアロゾルとモニタ指示値の関係を示す。
図 2 において、α-5 はエアロゾルが大量に流入/発生する工程室に設置してあるα線用空気モニ
タを示し、α-20 はエアロゾルの流入/発生が少ない工程室に設置してあるα線用空気モニタを示
している。本図より、エアロゾルが急激に増加すると、モニタ指示値が上昇し始めることが分かる。
また、モニタ指示値とエアロゾル濃度ではピークとなる時間帯がずれているが、これは、モニタ指
示値はラドン子孫核種が蓄積したもの(積分系)を測定しており、エアロゾル濃度はその時刻のエ
アロゾル数(微分系)を測定しているためである。
以上の結果から、循環方式による換気が行われている施設では、エアロゾル数を低減させること
も、モニタ指示値のバックグラウンドを下げる手法のひとつとして考えられることが分かった。
ハ. 不定形物品の汚染検査技術の開発
従来のα線用サーベイメータでは検出部が大きく,器材の隙間や配管内部等の測定が困難であった。
この対策として、器材の隙間(狭隘部)や配管内部でも、簡便に測定できる光ファイバー型サーベイ
メータの設計・開発を行ってきたが、光ファイバー型サーベイメータはγ線感度が大きい上に衝撃に
弱い欠点があった。そこで、今年度はライトガイドを薄い平板状した狭隘部測定用サーベイメータを
製作した。図 3 に狭隘部測定用サーベイメータの外観を示す。
本サーベイメータについて,JIS 規格『放射性表面汚染サーベイメータ(JIS Z4329)
』に基づい
て性能試験を実施した。表1に性能試験結果示す。
この結果,γ感度については,光ファイバー型サーベイメータよりも抑えることができたが,まだ
JIS の規格は満たしていないことが確認された。今後,γ感度を低減させるための検討を行っていく。
【研究の達成状況(平成16 年度)
】
イ. 天然放射性核種とプルトニウムの弁別測定技術の評価
ZnS(Ag)シンチレーションサーベイメータによるα線のエネルギー弁別について実測を踏まえた
検討を行い,エネルギー弁別が可能であることが確認できた。
ロ. 施設内天然放射性核種の低減に関する調査・解析
換気方式が循環方式の施設についてエアロゾル濃度とモニタ指示値の変動の相関を調査し,エア
ロゾルの影響が無視できないことを確認した。
ハ. 不定形物品の汚染検査技術の開発
光ファイバー型サーベイメータの問題点であるγ感度を抑制するため,薄い平板状のライドガイ
ドを使用したサーベイメータを製作するとともに,JIS 規格との比較を行ったが,性能は向上したも
のの,JIS 規格を満たさなかった。
(今後の予定)
イ. 天然放射性核種とプルトニウムの弁別測定技術の評価
適切な ZnS シンチレーションシートを実測に基づき選定するとともに,既存の ZnS サーベイメー
タの改造を行い,現場機器への適用を図る。
ロ. 施設内天然放射性核種の低減に関する調査・解析
天然放射性核種の影響を低減する方法,及び,汚染を早期に検知する手法について検討・まとめ
を行う。
−139−
JNC TN1400 2005-018
ハ. 不定形物品の汚染検査技術の開発
これまでの試験結果をまとめる。
【成果の利用実績及び活用見通し】
本研究により得られた結果は,プルトニウム燃料施設の放射線管理に反映する。
【研究成果の発表状況(平成16 年度)
】
長谷川市朗ほか「ZnS(Ag)シン チレ ーショ ン 検出器によ る 波高弁別法適用の検討」日本放射線安全
管理学会第 3 回学術大会
中川貴博 ほか「循環換気施設内のラ ド ン 濃度と 放射性エアロゾル量変動傾向について」日本放射
線安全管理学会第 3 回学術大会
伊東 康久ほか「光フ ァ イ バー型サーベイ メ ータ の開発」日本放射線安全管理学会第 3 回学術大会
(発表予定)
なし
【最近の国内外の研究動向(平成16 年度)
】
[民間の研究の現状と動向]
なし
(参考文献)
なし
[海外の研究の現状と動向]
なし
(参考文献)
なし
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他(
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
)
)
【自由評価欄】
−140−
JNC TN1400 2005-018
200
180
○ Am-241 を測定したときのスペクトル
△ Rn 子孫核種を集塵したろ紙を測定したときのスペクトル
160
140
カウント
ZnS の粒径は分解能に関係する
120
シートの厚みは計測パルスの波高に関係する
100
80
60
40
20
0
0
50
100
150
200
250
チャネル数
図1 ZnS(Ag)シンチレーションサーベイメータによるエネルギー弁別
(ZnS 粒子の直径;5μm,シートの厚み;10mg/cm2)
1.6E+07
120
α-5の指示値
1.4E+07
α-20の指示値
100
α-5付近のエアロゾル濃度
-3
エアロゾル濃度(m )
1.2E+07
80
1.0E+07
8.0E+06
60
6.0E+06
40
4.0E+06
20
2.0E+06
23時00分
22時00分
21時00分
20時00分
19時00分
18時00分
17時00分
16時00分
15時00分
14時00分
13時00分
12時00分
11時00分
10時00分
9時00分
8時00分
7時00分
6時00分
5時00分
4時00分
3時00分
2時00分
0.0E+00
1時00分
0
0時00分
-1
モニタ指示値(min )
α-20付近のエアロゾル濃度
時 刻
図 2 代表的なエアロゾル濃度と空気モニタ指示値の相関
−141−
JNC TN1400 2005-018
図 3 狭隘部測定用サーベイメータの外観
表1 性能試験結果
項目
結果
判定
自然計数率
1.1 min-1
合格
機器効率
40.4 %
合格
検出器入射窓面の
機器効率の均一性
-13.2%∼+6.6%の範囲
合格
検出限界
0.005 Bq cm-2
合格
感光性
0.01 s-1
合格
判定基準
製造業者公称値(3 min-1)以下で あ る こ
と
241
Am 線源を使用し 、機器効率が製造業
者公称値(41%)の±25%である こ と
25mm ずつ分割し 、241Am 線源を用いて
機器効率を 測定し 、各エリ ア が平均値
の±50%である こ と
製造業者公称値(0.02Bq cm-1)以下で あ
るこ と
2000Lx の照度条件下で 0.01×入射窓面
積 (0.6 s-1)以下である こ と
指示値の変化:20344 %
γ線の影響
α線のみ照射時:9 min
γ線照射時:1840 min
※
中性子線の影響
-1
-1
不合格
α線を照射し た状態で、137Cs 線源にて
10mGy h-1 以上のγ線を照射し たと き 、
指示値の変化が±25%である こ と
241
Am-Be 線源
50 μ Sv h-1 照 射 時 :
8.4min-1
Am-Be 線源
50μSv h-1 照射時:
64.8min-1
252
252
Cf 線源 50μSv h-1 照
射時:7.9min-1
241
Cf 線源 50μSv h-1 照射時:
36.8min-1
※ 中性子線の影響は JIS に記載さ れていないため、判定基準が無い。そ のため、中性子線の影響
の欄に判定基準の欄に先に製作し た光フ ァ イ バー型サーベイ メ ータ の結果を 記載し た。
−142−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する研究
【分類番号】
4−5(社内研究)
【研究課題名 (Title)】
放射線管理用機器の性能向上に関する検討
(Study of improvement for radiation control equipments)
【実施機関 (Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名] 相馬 丞 (そうま すすむ)
百瀬 琢麿(ももせ たくまろ)
[所属] 東海事業所 放射線安全部 放射線管理第一課
東海事業所 放射線安全部 線量計測課
[連絡先]319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33,電話:029-282-1111, FAX:029-282-3314, 029-282-1873
(Name) Susumu SOMA
Takumaro MOMOSE
(Title of Function) Plutonium radiation control section, Radiation protection division,Tokai Works
Radiation Dosimetry and Instrumentation Section, Tokai Works
(Address, Tel. and Fax) 4-33, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194, Japan
TEL:+81-29-282-1111 Fax:+81-29-282-3314, +81-29-282-1873
(E-mail) [email protected]
[email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名] 井
賢二(いざき けんじ)
[所属] 東海事業所 放射線安全部 放射線管理第一課
(Name) Kenji IZAKI
(Title of Function) Plutonium radiation control section, Radiation protection division, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度∼平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
プルトニウム燃料製造施設
【研究概要】
[研究の経緯]
運転中に混入するノイズによって発生するモニタ等の誤動作については、原因の特定と解析、さらには十
分な対策がとられていなければならない。しかし、様々なノイズ対策を施しているにもかかわらずノイズに
よる誤警報が発生している。モニタの誤警報発生は、機器への信頼性が損なわれるばかりでなく、不要な退
避による不測の汚染拡大や退避の際のケガなど二次災害にも繋がるおそれがあり、避けなければならない。
放射線モニタの誤警報の原因の一つであるノイズには、再現性があり影響が認知されているノイズや偶発
−143−
JNC TN1400 2005-018
的に発生する発生源の不明なノイズ等様々なものがある。認知されているノイズ源については、効果的な対
策を講じることにより機器への影響をなくすことができる一方、偶発的ノイズについては、ノイズ発生のメ
カニズムを解明し、有効な防護対策を検討しなければならない。
以上のことから、モニタに影響を与えるノイズ源の調査、測定、解析を行うと共にそれらの結果に基づき、
ノイズ混入防止に対する効果的な対策を検討し、フィールド試験によりその効果を評価する。
[研究目的]
放射線管理用機器の誤警報発生原因について調査するとともに、誤警報の発生防止に関する手法を検討し、
放射線管理用機器の設計や施設設計、保守・保全に反映することにより、警報の信頼性を向上させることを
目的とする。
[研究内容]
イ.放射線管理用機器のノイズ影響調査
誤警報の主な要因である施設内のノイズについて、過去に発生した誤警報の履歴を調査し、それらを
基に発生原因、頻度、モニタへの影響度などをデータベース化する。
ロ.ノイズ低減に対する検討
調査結果に基づき、ノイズ混入防止に対する対策案を検討するとともに、フィールド試験を実施し、
その効果について評価する。
また、ノイズ影響のうち施設側からの影響にはどのようなものがあるかを調査し、施設設計、保守・
保全に反映するための対策を検討する。
【当初の達成目標(平成 16 年度)
イ.機器別誤警報発生履歴の調査及び整理を継続し、統計的な観点から誤警報の発生原因を検討する。
ロ.ノイズのメカニズムを解明することにより効果的な防止対策を構築し、防止処置の効果をフィールド試
験にて確認する。
【研究実施内容及び成果(平成 16 年度)】
イ.放射線管理用機器のノイズ影響調査
前年度までに実施した警報吹鳴事象の調査結果より,警報吹鳴要因の半分以上が原因不明となっている
(図1参照)。原因不明の警報吹鳴事象の中で代表的なものとして臨界警報装置のシングルフェール(検
出器3台で構成されている検出部のうち,1台の検出器で警報レベルを超えたことを示す信号)の発生が
ある。臨界警報装置は放射線管理設備の中でも特に重要な設備であることから,シングルフェールの発生
要因を明らかにする必要があるため,本年度,シングルフェール発生事象に関する詳細な調査・解析を行
った。
1)これまでのシングルフェールの発生事例の整理と推測
東海事業所内の施設で発生したシングルフェール発生事象を整理することにより,以下のことが分
かった。
① 警報報設定値が低い施設でシングルフェールが発生している。
② シングルフェールが発生する時間帯に偏りがなく,また,施設の運転が行われていないときに
でも発生している(表1参照)
。
③ シングルフェールの発生時間帯に他のモニタ(空気モニタ,エリアモニタ,排気モニタ)には
指示値の変動が確認されていない。
④ シングルフェールが発生している施設に限って見てみると,建屋の最上階に設置した検出器で
シングルフェールの発生率が高くなる傾向にある(表2参照)。
シングルフェールの発生要因となりうるものは,上記結果から判断して,施設の運転とは関係なく
発生しているもので,また,他のモニタには影響がなく臨界警報装置に限って影響する可能性があり,
さらに,建屋の外を起源としたものである可能性もある。この要件を満たすものを検討した結果,全
てを説明できるものに,宇宙線による影響が考えられた。宇宙線が要因であるとすれば,上記シング
ルフェールの発生事象の傾向(①∼④)は以下のように推定できる。
(①の説明)宇宙線はエネルギーが高くなるに連れて飛来数が少なくなるため,警報設定値が低い
施設のほうがシングルフェールを発生させる確率が高い。
(②の説明)宇宙線は特定の時間帯に偏って飛来するものではない。
−144−
JNC TN1400 2005-018
(③の説明)宇宙線は瞬間的に飛来するため,宇宙線を計数した場合の信号波形は波高の大きなパ
ルスが1つ検出されることになる。よって,電位計タイプ(臨界検出器)には大きな影
響をもたらすが,カウンタタイプ(空気モニタ,エリアモニタ,排気モニタ)には,1
カウントとして計数されるのみであるため,警報吹鳴には至らない。
(④の説明)宇宙線は上空から飛来するため,建屋自体の遮へいにより宇宙線が届きにくい建屋の
内部では宇宙線の影響が少なくなる。
2)解析装置を用いた連続観測結果と発生要因の推定
これらを踏まえ,宇宙線の可能性をさらに追求するため,臨界検出器6個(検出器①,検出器②,
検出器③,検出器④,検出器⑤,検出器 A 及び検出器 B)を図2のように配置し,検出器からの出
力電圧を連続的に監視した。ただし,検出器⑤についてはプラスチック・シンチレータを取り外して
おき,電気的なノイズの有無等を判断できるようにしておいた。
観測の結果,以下のことが分かった。
① 放射線を観測したような電圧上昇が頻繁に見られ,波形の立ち上がり部分は全て約 200μs であ
った(図3参照)。
② 観測される時間帯に偏りはない(図4参照)
。
③ 観測される検出器に偏りはない(図5参照)
。
④ 2 つ以上の検出器で同時に電圧上昇が確認されることもある(図6参照)
。
⑤ 電圧上昇幅が 0.1V を超える事例は、検出器①∼④で検出器 1 個あたり 120 以上検出されてい
るが、プラスチック・シンチレータを取り外した検出器では、1 回も観測されていない。
⑥ トリップレベルを上げると観測数は減り、その相関はべき乗に従って減少している(図 7 参照)
。
⑦ 検出器①から④について,検出器 A 及び検出器 B と同時観測する確率を求めたところ,検出器
A 及び検出器 B の真下に位置する検出器④が極端に高かった(表3-1,表3-2 参照)。
上記観測結果はいずれも宇宙線の可能性を示すものであるが,特に④∼⑦については,特徴的なも
のであり,以下のように推定できる。
(④の説明)宇宙線は大気中の原子核等と核相互作用することにより空気シャワー(中間子,電子,
γ線などの束)を発生させるため,空気シャワーを観測した場合には一度に複数の検出
器で電圧上昇が観測される場合がある。
(⑤の説明)宇宙線は,プラスチック・シンチレータに敏感に反応するため,プラスチック・シン
チレータを取り外せば,観測しにくくなる。
(⑥の説明)大気圏に突入する宇宙線(1 次宇宙線)の飛来数は,エネルギーが高くなるに連れて
べき乗にしたがって減少するため,地上に飛来する宇宙線(2次宇宙線)も同様な傾向
が見られる可能性がある。
(⑦の説明)宇宙線は上空から飛来するため,建屋自体の遮へいにより宇宙線が届きにくい建屋の
内部では宇宙線の影響が少なくなる。
以上のほか,宇宙線の観測装置には,臨界警報装置と同じ検出原理(プラスチック・シンチレータ
と光電子増倍管の組み合わせ)を利用した装置があること(空気シャワー観測装置やスパークチェン
バーなど)を考えても,シングルフェールの発生要因が宇宙線である可能性が高く,今後,さらなる
調査を進める必要があることが分かった。
ロ.ノイズ低減に対する検討
シングルフェールは警報設定値が低い施設で発生していることから,現在の臨界監視条件を再評価し,
警報設定値を変更する(上げる)ことが可能かどうかを検討している。また一方で仮に宇宙線がシングル
フェールの要因であったことを想定して,宇宙線を観測しない検出原理や,シングルフェール発生時に宇
宙線の観測の有無を判定する機能などに関する検討を開始した。
【研究の達成状況(平成 16 年度)
】
イ.放射線管理用機器のノイズ影響調査
原因不明の警報吹鳴事象の中で,重要度と頻度がともに高い 臨界警報装置のシングルフェール発生事
象 について,その要因に関する詳細な調査・解析した結果,宇宙線が要因となっている可能性が高いこ
とが分かった。
−145−
JNC TN1400 2005-018
ロ.ノイズ低減に対する検討
シングルフェールの発生を押さえるための対策として,警報設定値の変更などの検討を開始した。
(今後の予定)
イ.放射線管理用機器のノイズ影響調査
シングルフェールの発生要因としての宇宙線の可能性をさらに追求する。
ロ.ノイズ低減に対する検討
シングルフェール発生メカニズムの解析を行うとともに,シングルフェール発生率の低減に向けた検討
を行うとともに,宇宙線を観測したことを示す機能の付加等について検討を行う。
【成果の利用実績及び活用見通し】
本研究により得られた結果は、設計管理、施工管理及び保守保全管理に反映する。
【研究成果の発表状況(平成 16 年度)
なし
(発表予定)
なし
【最近の国内外の研究動向(平成 16 年度】
[民間の研究の現状と動向]
宇宙線に関する研究は,東大宇宙線研究所をはじめ国内外の研究所や大学で様々な研究が行われてい
るが,放射線管理用機器への宇宙線の影響に関する研究等は行われていない。
(参考文献)
小田稔著「宇宙線」
[海外の研究の現状と動向]
未調査
(参考文献)
なし
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他(
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
−146−
)
)
JNC TN1400 2005-018
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
【自由評価欄】
−147−
JNC TN1400 2005-018
落雷
溶接作業
クレーンホイスト
不明
地絡
電動工具使用
電源切替の影響
総発生件数
207件
落雷
2.9%
アース不良
火報吹鳴によるもの
ノイズ試験
地絡
0.5%
シーラ作業
設備機器又は電源系統
調査中
アース不良
0.5% シーラ作業
10.6%
溶接作業
12.1%
電動工具使用
1.0%
火報吹鳴によるもの
1.4%
設備機器又は電源系統
8.7%
クレーンホイスト
3.4%
不明
55.6%
調査中
2.4%
ノイズ試験
0.5%
電源切替の影響
0.5%
図 1 原因別ノイズ発生件数(1989∼2003 年)
表 1 原因不明のシングルフェールの発生時刻
時間帯
0:00∼1:00
1:00∼2:00
2:00∼3:00
3:00∼4:00
4:00∼5:00
5:00∼6:00
6:00∼7:00
7:00∼8:00
回数
0
3
1
1
4
1
1
1
時間帯
8:00∼9:00
9:00∼10:00
10:00∼11:00
11:00∼12:00
12:00∼13:00
13:00∼14:00
14:00∼15:00
15:00∼16:00
−148−
回数
1
3
1
3
1
1
2
1
時間帯
16:00∼17:00
17:00∼18:00
18:00∼19:00
19:00∼20:00
20:00∼21:00
21:00∼22:00
22:00∼23:00
23:00∼24:00
回数
0
2
1
0
1
1
4
4
JNC TN1400 2005-018
表 2 検出端設置場所ごとの原因不明シングルフェールの発生率
設置場所
最上階
外周付近
その他
発生率(回/検出器 1 個/16 年)
1.778
0.762
0.333
B
プラスチック・シンチレータ
を取り外した検出器
A
⑤
④
①
図2
③
②
解析装置内の臨界検出器の配置
−149−
JNC TN1400 2005-018
0.4
約200μs
電圧変動(V)
0.3
0.2
0.1
0.0
-0.1
-1
0
1
2
3
4
5
時間(ms)
図 3 解析装置によって観測された放射線を計測したような波形
21時
5.3%
22時
4.7%
23時
5.3%
0時
4.4%
1時
3.7%
2時
4.7%
3時
3.9%
20時
5.8%
4時
5.1%
19時
3.1%
5時
5.5%
18時
3.3%
17時
3.1%
6時
4.0%
16時
3.7%
7時
4.1%
15時
3.6%
14時
4.1%
13時
3.4%
12時
3.9%
11時
3.4%
10時
4.1%
図 4 波形が観測された時間帯
−150−
9時
4.0%
8時
3.6%
JNC TN1400 2005-018
検出器④
120回
(21.0%)
検出器③
122回
(21.4%)
検出器①
170回
(29.8%)
検出器②
159回
(27.8%)
図 5 検出器①∼④の波形観測回数
3つ同時
12回
(2.1%)
4つ同時
21回
(3.7%)
2つ同時
36回
(6.3%)
単独
498回
(87.8%)
図 6 検出器①から④の間の同時計数
−151−
検出頻度(個数/年/検出器/0.05V)
JNC TN1400 2005-018
10000.0
1000.0
100.0
10.0
1.0
0.1
0.1
1
電圧上昇幅(V)
図7 電圧上昇幅と検出頻度の相関
−152−
JNC TN1400 2005-018
表 3-1 検出器 A(B)と同時観測する確率 (検出器①∼④の間の同時計数事例を含む)
検出器
検出器 A と
同時観測する確率
検出器 B と
同時観測する確率
検出器①
37.3 % (25/67)
42.1 % (24/57)
検出器②
31.3 % (21/67)
38.6 % (22/57)
検出器③
38.8 % (26/67)
49.1 % (28/57)
検出器④
82.1 % (55/67)
71.9 %
(41/57)
表 3-2 検出器 A(B)と同時観測する確率 (検出器①∼④の間の同時計数事例を除く)
検出器
検出器 A と
検出器 B と
同時観測する確率
同時観測する確率
検出器①
8.1 %
(3/37)
検出器②
5.4 %
(2/37)
検出器③
10.8 % (4/37)
21.4 % (6/28)
検出器④
75.7 % (28/37)
60.7 % (17/28)
10.7 % (3/28)
7.1 %
(2/28)
表 3-1 及び表 3-2 より,検出器 A(B)は真下に設置されている検出器④と同時観測する確
率が際立って高い。また,検出器④は検出器 B より検出器 A のほうが(垂直方向の検出
器間の距離が小さいほうが)同時観測する確率が高い。このことから,宇宙線の飛来方向
を考慮すれば,臨界検出器が宇宙線を捕らえたときの波形となっている可能性が高いと考
えられる。
−153−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成13年度∼平成16年度)
【研究分野】
【分類番号】
核燃料施設の安全性に関する研究
4-6(社内研究)
【研究課題名(Title)】
前処理工程機器設備保全履歴データベースの構築(Construction database for maintenance of equipments
in mechanical treatment process)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address, and so on)】
[所属]東海事業所
[氏名]中島
再処理センター
節男(なかしま
[連絡先]〒319-1194
処理部
前処理課
せつお)
茨城県那珂郡東海村村松4-33、電話番号282-1111
(Name) Setsuo Nakashima
(Title of Function) Mechanical Treatment sect. Reprocessing Operation Div. tokai Reprocessing
Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33, Tokai-mura, Ibaraki-ken, 319-1194 JAPN Phone:+81-29-282-1111
FAX:+81-29-282-2321
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[所属]東海事業所
[氏名]角
再処理センター
洋貴(すみ
高江
処理部
前処理課
ひろたか)
秋義(たかえ
あきよし)
(Name) Hirotaka Sumi
Akiyoshi Takae
(Title of Function) Mechanical Treatment sect. Reprocessing Operation Div. tokai Reprocessing
Center, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度∼平成16年度
[次期計画への継続の有無]
□
次期計画へ継続(研究課題名:
■
本計画で終了
)
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)]なし
[実証試験名(実施機関)]なし
−155−
JNC TN1400 2005-018
[委託研究名(実施機関)]なし
【使用主要施設】
なし
【研究概要】
[研究の経緯]
東海再処理施設の前処理工程においては、使用済燃料の受入・貯蔵、せん断を行っており、これらの工
程にはせん断機装置をはじめとして使用済燃料を取扱う機器が多数設置されている。これらの機器はこれ
までに種々の保全を行っているが、その履歴を一括してまとめた資料がなく、資料が未整理のまま保管さ
れている。これらの資料をデータベース化し、今後の保全計画等に活用する。
[研究目的]
東海再処理施設の前処理工程においては、使用済燃料の受入・貯蔵、せん断を行っており、これらの工
程にはせん断機をはじめとして使用済燃料を取扱う機器が多数設置されている。安定運転を継続するため
には、これらの機器の適切な維持管理が必要であり、これらの機器に対して保全履歴をデータベース化し、保
全計画等に活用する。
[研究内容]
イ.
設備保全履歴の調査
機器を主要な構成要素(ブレードカート、ギャグ等)に分類し、現在までの保全履歴を調査する。
保全履歴は、保全内容、改良ポイント、保全期間等について調査し、データシートにまとめる。
ロ.
予備品保管状況の調査
予備品の台帳を作成し、保全履歴とリンク可能なデータを構築する。
ハ.
データベース化
調査・構築データを共有情報として活用可能な電子データの形に整備する。
ニ.
マンマシーンインターフェイスの整備
ナレッジマネージメントシステム等を参考にデータベースと操作員を結ぶインターフェース(GUI環境)を整備する。
ホ.
システムの検証
一定期間使用状況をモニタリングし、検証の上最終システムとして完成させる。
上記内容について4年計画で実施する。
【当初の達成目標】
イ.平成13年度∼平成15年度
せん断装置の保全履歴を調査し、これをデータシートにまとめる。
ロ.平成14年度∼平成15年度
予備品の台帳を作成し、保全履歴とリンク可能なデータに構築する。
ハ.平成16年度
調査・構築したデータを共有情報として活用可能な電子データに整備する。また、システムの検証を行
い、有効活用する。
−156−
JNC TN1400 2005-018
【研究実施内容及び成果(平成13年度∼平成16年度)】
せん断装置について、保守履歴を調査し、これをデータシートにまとめた。
年度毎の実施内容及び成果を以下に示す。
イ.平成13年度∼平成15年度
せん断装置を部品毎に分類し、現在までの保全履歴を調査した。また、保全履歴とリンク可能なデ
ータに構築した。
ロ.平成14年度∼15年度
予備品の保管状況を調査するとともに予備品の台帳を作成した。
ハ.平成16年度
調査・構築したデータを共有情報として、課内サーバに取込みか活用可能な電子データに整備した。
また、システムを検証後、現在運用を開始している。
【研究の達成状況(平成13年度∼平成16年度)】
保全履歴の調査については、30年前の資料及び記録類の確認から実施する必要があったため、多くの調
査期間が必要であったが、初期の目標を達成することができた。
予備品の保管状況の調査については、管理状況を再確認するとともに、これを台帳化することにより、
より適正な管理を行うことができるようになった。
現在これらをデータベース化し、課内サーバに取込んで閲覧可能な状態で運用しており、今後長期保全計画等
に活用する予定である。
【成果の利用実績及び活用見通し】
現在再処理施設においては、長期保全計画ワーキンググループを主体として、今後10年間の保全計画を立てて
必要な予算措置等を行うこととしている。本データベースは、保全計画にノミネートすべき機器等について、過去の
保全履歴をもとに洗出すとともに、予備品の補充計画に利用する予定である。
【研究成果の発表状況(平成13年度∼平成16年度)】
現在のところ予定なし
【最新の国内外の研究動向(平成13年度∼平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
なし
(参考文献)
なし
[海外の研究の現状と動向]
なし
(参考文献)
なし
−157−
JNC TN1400 2005-018
【研究評価(自己評価)】
○ 成果の達成レベル
[チェック欄]
□
予定以上の成果が得られた。
■
予定どおりの成果が得られた。
□
予定どおりの成果が得られなかった。
□
その他(
)
○ 成果の活用方策
[チェック欄]
□
指針・基準類への整備に反映できる。
□
安全性評価の判断材料として活用できる。
■
安全性の向上に反映できる。
□
原子力防災対策に活用できる。
□
その他(
)
○ 計画の進捗
[チェック欄]
■
計画どおり進捗した。
□
計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□
)
計画以上に進捗した。
【自由評価欄】
−158−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
4−7(社内研究)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する 研究
【研究課題名(Title)】
蒸発缶内部検査技術の確立
(Development of Inspection Technology of the inside of the Evaporator)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名] 上野 勤(う え の つと む)
[所属] 東海事業所 再処理セン タ ー 環境保全部 処理第二課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33 電話:029-282-1111 FAX:029-282-3318
(Name) Tsutomu UENO
(Title of Function) Waste Conditioning Section, Waste Management Division, Tokai Reprocessing
Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33 Muramatsu Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194, Japan
Tel:+81-29-282-1111, FAX:+81-29-282-3318
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]芳中 一行(よ し なか かずゆき )
[所属]東海事業所 再処理セン タ ー 環境保全部 処理第二課
(Name) Kazuyuki YOSHINAKA
(Title of Function) Waste Conditioning Section, Waste Management Division, Tokai Reprocessing
Center, Tokai Works
【研究期間】
平成14年度
∼ 平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
廃溶媒処理技術開発施設
【研究概要】
[研究の経緯]
廃溶媒処理技術開発施設では、再処理施設から発生する廃溶媒をドデカンとTBPに分離する処理
を行っている。それに伴って、リン酸を主成分とした廃液が発生する。
一方、廃溶媒処理技術開発施設では、運転開始から15年以上が経過しており、最も腐食環境が厳
しいと考えられる蒸発缶の内部について、リン酸廃液による腐食の有無を確認することにした。
こ れま でに CCD カメ ラ を用いた目視点検を 終了し ている 。
本件は、同蒸発缶内部の蛍光浸透探傷試験によ る 検査技術を確立する も のであり 、本研究において
は、遠隔操作によ る 、複雑な構造(カラ ン ド リ ア構造)を も つ蒸発缶内部への浸透剤の塗布技術、洗
浄剤によ る 洗浄技術等の課題を解決する 必要がある 。
−159−
JNC TN1400 2005-018
[研究目的]
廃溶媒処理技術開発施設(ST施設)では、廃溶媒中のドデカン、TBPを分離するためにリン酸を
取り扱っており、リン酸を主成分とした廃液が発生する。
リ ン 酸を 取り 扱う 設備のう ち、腐食の観点から 、も っ と も その環境が厳し いと 考え ら れる 蒸発缶に
ついて、その内部の健全性を 確認する ために、熱交換部の溶接箇所等の微細な欠陥ま で探索可能な蛍
光浸透探傷試験によ る 検査技術を 確立する 。
[研究内容]
そこで、低放射性濃縮廃液貯蔵施設(LWSF)、低放射性廃棄物処理技術開発施設(LWTF)の設置
計画を考慮して、当該研究を以下の通りの計画としている。
イ.試験装置改造
蒸発缶内部観察用治具を浸透探傷試験用に改造する 。
ロ.蒸発缶内部検査試験
実機を用いて 、蒸発缶内部の検査を実施し 、設計で意図し たレ ベルで溶接部等の健全性を評価でき
る (JIS Z 2343(1992)に基づいた蛍光浸透探傷試験を 実施でき る )こ と を 確認する 。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
ロ.蒸発缶内部検査試験
浸透探傷試験用に改造した蒸発缶内部観察用治具を用いて、模擬蒸発缶に蛍光浸透液を塗布し、実
機への適用に向けて蛍光探傷試験の試験条件を定める。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
ロ.蒸発缶内部検査試験
平成 15 年度に実施した蛍光探傷試験(蛍光液の代わりに水を使用)の条件に従い、模擬蒸発缶(実
機の観察面(熱交換部の溶接箇所の配置位置等)と検査装置の設置位置を実規模大で模擬:写真-1
参照)を使用して、蛍光液を用いた欠陥探傷のための一連の蛍光浸透探傷試験を実施した。これらの
一連の試験において、検査装置(蒸発缶内部検査用治具)の「操作性」、
「検査範囲」及び「蛍光探傷
試験条件:蛍光液の塗布、洗浄、乾燥条件等」について評価を行った。その結果、
「操作性」、
「検査
範囲」には問題のないことが確認できたが、
「蛍光探傷試験条件」において、蛍光液供給ラインに残
留している蛍光液が蛍光液を洗浄した観察面へ連続的に滴下することから、試験条件が成立しないと
いう課題が摘出された。このため、蛍光液滴下の原因の調査及び対策を実施した後に、蛍光浸透探傷
試験条件の成立を確認するための追加試験を行うこととした。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
追加試験が必要となったことから、平成 16 年度の計画より僅かに遅れているが、実機を用いての
検査は、当初の予定通り、平成 17 年度に実施できる見込みである。
(今後の予定)
模擬蒸発缶を使用して「蛍光探傷試験条件」の追加試験を行い、実機蒸発缶検査のための条件を
整備する。検査条件が整備された後に実機蒸発缶の検査を行い、初期の目的の達成状況について評
価する。
【成果の利用実績及び活用見通し】
機器の検査、保守、保全への活用
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
研究成果の発表実績はなし。
(発表予定)
未定
【最近の国内外の研究動向(平成16年度)
】
[民間の研究の現状と動向]
−160−
JNC TN1400 2005-018
なし
(参考文献)
[海外の研究の現状と動向]
なし
(参考文献)
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
)
【自由評価欄】
−161−
JNC TN1400 2005-018
蒸発缶内部
検査装置
蒸発缶
改造部分
改造後
改造前
浸透剤ノズル
CCDカメラ
エアーブローノズル
白色ライト
CCDカメラ
VTヘッド
洗浄剤ノズル
エアーブローノズル
UVライト
図-1 蒸発缶内部検査用治具の概要
−162−
PTヘッド
JNC TN1400 2005-018
A
検査装置
設置位置
蒸発缶内部
検査装置
模擬蒸発缶
B
観察面に熱
交換部の溶
接箇所の配
置位置を マ
ーキン グ
写真−1 模擬蒸発缶(A 模擬蒸発缶全景、B 模擬蒸発缶内部)
−163−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
4−8(社内研究)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する研究
【研究課題名(Title)】
遠隔保守機器寿命・故障管理システムの検討
(Assessment of the lifetime of the Remote Maintenance System and Associated Condition Monitoring
and Management)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]小坂 哲生(こざか てつお)
[所属]東海事業所 再処理センター 環境保全部 処理第三課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33 電話:029-282-1111 FAX:029-282-9364
(Name) Tetsuo KOZAKA
(Title of Function) Vitrification Technology Section,Waste Management Division,
Tokai Reprocessing Center,Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33,Muramatsu,Tokai-mura,Naka-gun,Ibaraki,319-1194 Japan
Tel:+81-29-282-1111,Fax:+81-29-282-9364
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]窪木 道克(くぼき みちかつ)
[所属]東海事業所 再処理センター 環境保全部 処理第三課
(Name) Michikatsu KUBOKI
(Title of Function) Vitrification Technology Section,Waste Management Division,
Tokai Reprocessing Center,Tokai Works
【研究期間】
平成 13 年度 ∼ 平成 17 年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
ガラス固化技術開発施設
【研究概要】
[研究の経緯]
ガラス固化技術開発施設(TVF)は遠隔操作保守方式を採用することから、両腕型マニプレータやクレ
ーン等の健全性が運転に影響を及ぼすことになる。従って、機器の寿命予測、計画的な予防保全が重要
であり、機器寿命、故障管理システムを構築してデータ取得、整理、評価を行い、計画的な保守・保全
の実施、合理化が望まれる。
[研究目的]
大型セル全遠隔保守システムを採用するガラス固化技術開発施設の安定運転の条件のひとつに、セル
内作業を担う遠隔保守機器の健全性維持が上げられる。これらは、異常・故障や動作不良が確認された
場合、事象を迅速かつ正確に判断し、適切な処置を速やかに施すことが要求される。一方、セル外の制
−165−
JNC TN1400 2005-018
御機器とケーブルで接続するセル内設置機器の場合、機器の機能性能を維持復旧するまでに、それ相応
の時間を費やしているのが現状である。これらの観点から、現在まで取得してきた運転、保守データを
整理するとともに、設計、故障等に関する情報のデータベース化を図り、機器としての寿命の判断、故
障の未然防止、並びに故障発生時の速やかな補修手法の提供が可能な予防保全を見据えた管理システム
の構築を行う。
[研究内容]
イ.寿命推定・故障時対応に向けた情報解析とデータ作成
両腕型マニプレータを事例とし、故障・動作不良に関するデータを整理・解析し、システム構
築に必要なデータベース化を図る。
ロ.寿命推定・故障時対応情報の活用インターフェイス設計製作
上記イ.項の活用が可能なインターフェイス(機能、操作画面等)を設計、製作する。また、ス
レーブアームや各駆動部の寿命・故障等を定量的に把握するため、各モータ電流値を既設の電流
監視装置からオンラインデータに取り込み、活用可能とする。
ハ.寿命推定・故障時対応情報の試運用
上記ロ.項までに構築したシステムの試運用を行い、問題、不具合点や改善、追加点等の洗い
出しを行う。
ニ.寿命推定・故障時対応情報の再解析と追加
上記ハ.項の試運用の結果を踏まえ、寿命推定・故障時対応に必要な情報及びデータの再解析
を実施し、システムの性能を向上させるための情報及びデータの改善と追加を図る。
ホ.情報の活用インターフェイス追加機能の設計製作
上記4項の結果を踏まえ、インターフェイス機能追加の改善を実施し、実運用に向けた機能の
向上図る。(平成 17 年 3 月完了予定)
ヘ.システム対象機器の拡大と機器情報の追加
平成 16 年度から、対象機器を両腕型マニプレータから他の機器に拡充し、平成 17 年度に全て
の対象機器を盛り込んで完了させる。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
ハ.寿命推定・故障時対応情報の試運用
取得したデータを基に、寿命の推定や故障時の迅速な対応を図るべく評価・解析を行い、今後
の遠隔保守機器の運用に反映する。
ニ.寿命推定・故障時対応情報の再解析と追加
上記ハ.項の試運用の結果を踏まえ、寿命推定・故障時対応に必要な情報及びデータの再解析
を実施し、システムの性能を向上させるための情報及びデータの改善と追加を図る。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
研究資源(予算)が確保できなかったため、実施できなかった。
【研究の達成状況(平成16年度)】今年度下期に契約発注を行い実施する予定。本件では「情報の活用イ
ンターフェイス追加機能の設計製作」に当初予定していた(H16 年度)の項目ハ、ニを盛り込んで実施する。
上記理由により所期の成果が得られなかった。
(今後の予定)
平成 16 年度に計画していた、
「寿命推定・故障時対応情報の試運用」、「寿命推定・故障時対応情報
の再解析と追加」については、次年度に予定している「情報の活用インターフェイス追加機能の設計
製作」と併せて実施する。
【成果の利用実績及び活用見通し】
なし
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】平成 16 年度に発表した実績はなし。
なし
(発表予定)
なし
−166−
JNC TN1400 2005-018
【最近の国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
なし
(参考文献)
なし
[海外の研究の現状と動向]
なし
(参考文献)
なし
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
■ その他(研究資源<予算>が確保できなかったため、実施できなかった)
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
□ 計画どおり進捗した。
■ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:研究資源<予算>が確保できなかったため、実施できなかった)
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
【自由評価欄】
平成 16 年度においては、本研究課題の実施に係る仕様書の内容検討・作成等を進めてきたが、セル内
設備の更新や補修といった TVF(Tokai Vitrification Facility、ガラス固化技術開発施設)の安全確保に対し重要度
の高い案件が発生してしまい、本件に係る研究資源(予算)の確保が困難となり計画修正せざるを得なく
なった。
−167−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する研究
【分類番号】
5−2(社内研究)
【研究課題名 (Title)】
ヨウ素除去技術に関する研究(Study on Development of Advanced Iodine Removal Process for
gaseous waste)
【実施機関 (Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先 (Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名] 伊波 慎一(いなみ しんいち)
[所属] 東海事業所 再処理センター 施設管理部 施設保全第一課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松4−33 電話:029-282-1111 FAX:029-282-4994
(Name) Shinich Inami
(Title of Function) Tokai Works Facility Maintenance Section Tokai Reprocessing Center
(Address, Tel. and Fax) 4-33 Muramatu Tokai-mura Naka-gun Ibarakiken319-1194 Japan
TEL:029-282-1111 FAX:029-282-4994
(E-mail)
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]舛井 明宏(ますい あきひろ)
[所属]東海事業所 再処理センター 施設管理部 施設保全第一課
(Name) Akihiro Masui
(Title of Function) Tokai Works Facility Maintenance Section Tokai Reprocessing Center
【研究期間】
平成13年度∼平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)]なし
[実証試験名(実施機関) ]なし
[委託研究名(実施機関)]なし
【使用主要施設】
再処理施設 分離精製工場
【研究概要】
[研究の経緯]
東海再処理施設では、主排気筒から放出される放射性ヨウ素の放出低減化対策として、換気系統に銀
ゼオライト(AgX)を用いたヨウ素除去を行っているが、オフガス中のNOxにより劣化し、ヨウ素
除去効率が低下する問題があった。そこで耐NOx性の性能向上及び吸着後の保持性能についての検討
が課題になってきた。
[研究目的]
東海再処理施設の換気系でヨウ素除去技術に求められている吸着材、銀ゼオライト(AgX)吸着材及び
その他の吸着材について性能を低下させる原因としてNOxの影響が示唆された。本研究では各吸着材のN
Oxによる影響評価を行い、銀利用率向上のための検討を行う。その結果から効率的な運転条件を提案する。
また、吸着後のヨウ素保持性能について試験評価を行い、保管廃棄方法の検討を行う。
−169−
JNC TN1400 2005-018
[研究内容]
イ.NOx影響評価試験
現在、実用化されている銀ゼオライト(AgX)を含む各種吸着材を選定し、各サンプルを用いて再
処理施設の実廃気を用いた性能評価試験又はコールドでの試験を行い、NOxによる影響を評価する。
この結果から銀利用率を向上させるための検討を行い、効率的な運転条件を提案する。
ロ.ヨウ素保持性能試験
上記でヨウ素を吸着したサンプル及び再処理施設で実使用され保管容器に保管されているAgX吸
着材の保持性能試験を行う。サンプル試験については、容器内の空気を採取してヨウ素を測定する。こ
の結果からヨウ素吸着材のヨウ素保持性能を評価する。
【当初の達成目標(平成16年度)】
イ.収集したデータより銀利用率の向上のための検討案を作成する。
ロ.各吸着材の保持性能の評価
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
試験に要する予算が確保できなかったことと、人事異動により、要員が確保できなかった。
【研究の達成状況(平成16年度)】
上記の理由より所期の成果が得られなかった。
(今後の予定)
平成17年度には、研究資源(予算・人員)を確保し、試験装置の整備を行い、保管容器を用いた保持
性能試験を行う。
【成果の利用実績及び活用見通し】
イ.吸着剤の銀利用率を向上させ高性能化することにより再処理施設からの放射性ヨウ素放出量低減
及び廃棄物についても低減することができる。
ロ.使用済み吸着剤のヨウ素の脱離量データを取得することにより、今後の使用済吸着剤の廃棄につ
いての安全性評価につながる。
【研究成果の発表状況(平成16年度)】
なし
(発表予定)
なし
【最近の国内外の研究動向】
[民間の研究の現状と動向]
ヨウ素吸着材の一種である硝酸銀添着シリカゲル(AgS)について、ヨウ素吸着性能の評価が行われ
ている。
(参考文献)
「Removal of Iodine from Simulated Reprocessing off-gas Streams by Silver Absorbent」
S.Mukohama(JNFL),Y.kondo and T.Fukasawa(Hitachi Ltd)RECORD94 1994
[海外の研究の現状と動向]
再処理施設で使用した使用済み硝酸銀シリカゲルから、I−129を分離し、安定なXe−130
に変換する研究が行われている。
(参考文献)
「Separation of Iodine from AC6120 Adsorber Material for Transmulation」
GLOBAL95 1995
−170−
JNC TN1400 2005-018
【研究評価(自己評価)】
○ 成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他(
)
[説明欄]
試験に要する予算が確保できなかったことと、人事異動により、要員が確保できなかった。
○ 成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
)
[説明欄]
各種吸着剤の特性評価等の知見により、原子力施設からの放射性ヨウ素の放出低減に反映で
きる。
○ 研究の進捗
[チェック欄]
□ 計画どおり進捗した。
■ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
)
[説明欄]
試験に要する予算が確保できなかったことと、人事異動により、要員が確保できなかった。
【自由評価欄】
なし
−171−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
5−3(社内研究)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する研究
【研究課題名(Title)】
再処理施設における C-14 の放出挙動に関する調査研究(Investigation for C-14 Airborne Discharge
from Nuclear Reprocessing Facility)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]稲野 昌利(いなの まさとし)
[所属]東海事業所 再処理センター 技術部 技術開発課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33、Tel: 029-282-1111、Fax: 029-287-7839
(Name) Masatoshi INANO
(Title of Function) Technology Development Section, Technology Co-ordination Division, Tokai
Reprocessing Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki-ken, 319-1194, Japan,
Tel: +81-29-282-1111, Fax: +81-29-287-7839
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]佐藤 嘉彦
[所属]東海事業所 再処理センター 技術部 技術開発課
(Name) Yoshihiko SATO
(Title of Function) Technology Development Section, Technology Co-ordination Division, Tokai
Reprocessing Center, Tokai Works
【研究期間】
平成8年度 ∼ 平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
東海再処理施設
【研究概要】
[研究の経緯]
C-14 は再処理施設から放出される主要な気体廃棄物の一つであり、平常時の線量評価においてそ
の寄与が大きい核種である。このため、東海再処理施設では、これまでに環境への放出挙動を把握す
るための測定装置や分析装置の開発を行うとともに、工程内挙動に関するデータの取得を行っていた
が、アスファルト固化処理施設における火災爆発事故等による主工程の運転を停止していたため、こ
の期間はデータ取得ができなかった。しかしながら、平成 12 年度に東海再処理施設が運転を開始し
たことから、C-14 の放出挙動に係るデータ取得を再開し、詳細な放出挙動を把握することとした。
[研究目的]
C-14 は再処理施設から放出される主要な気体廃棄物の一つであり、平常時の線量評価においてそ
の寄与が大きい核種である。このため C-14 の放出低減により再処理施設からの環境影響が低減され
−173−
JNC TN1400 2005-018
る。C-14 の放出低減にあたっては、C-14 の再処理工程内の挙動及び放出挙動を詳細に把握すること
により、その工程内除去などが効率的に行えることとなる。このため、再処理施設のオフガス処理工
程及び廃液処理工程に着目して、C-14 の挙動調査を行うとともに、コールド試験により C-14 の詳細
な放出挙動を把握し、C-14 の放出低減方策の策定のための知見を得る。
[研究内容]
イ.東海再処理施設における C-14 の挙動調査
東海再処理施設の運転に合わせて、せん断オフガス系、溶解オフガス系、槽類オフガス系及び主
排気筒において C-14 濃度のサンプリング・分析を実施し、せん断、溶解工程その他工程からの
C-14 の移行挙動及び放出寄与を把握する。また、廃液処理工程(ガラス固化処理技術開発施設を含
む)からの C-14 についてもサンプリング・分析を行い、C-14 の移行挙動及び放出寄与を把握する。
ロ.コールド試験による挙動調査
① 廃液処理工程における C-14 の移行挙動を確認するため、上記で調査対象とする廃液処理工
程を模擬して、炭酸ガスを用いたコールド試験を行い、廃液の混合状態と C-14 の移行挙動
について把握する。
② 高放射性廃液へ移行する C-14 の化学形態の推定とガラス固化工程における放出挙動につい
て把握する。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
コールド試験により、廃液処理工程における C-14 の移行挙動、高放射性廃液へ移行する C-14 の化学形
態及びガラス固化工程における放出挙動について把握する。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
研究資源(予算・要員)が確保できなかったため、実施できなかった。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
研究資源(予算・要員)が確保できなかったため、初期の成果が得られなかった。
(今後の予定)
研究資源(予算・要員)が確保できず、かつ再処理施設の定期的な評価に対する対応を優先させる
ため、平成 17 年度は研究を中断する予定である。
【成果の利用実績及び活用見通し】
本研究の成果は、今後の施設設計、安全評価のための基礎データ、JNFL での再処理運転に係る基礎デー
タとして活用できる。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
なし
(発表予定)
なし
【最近の国内外の研究動向(平成1 6 年度)】
[民間の研究の現状と動向]
未調査
(参考文献)
[海外の研究の現状と動向]
未調査
(参考文献)
−174−
JNC TN1400 2005-018
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
研究資源(予算・要員)が確保できなかったため、初期の成果が得られなかった。
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
)
○計画の進捗状況
[チェック欄]
□ 計画どおり進捗した。
■ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:研究資源(予算・要員)が確保できなかったため、本研究を計画どおり進捗できな
かった。)
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
【自由評価欄】
−175−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
5−4(社内研究)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する研究
【研究課題名(Title)】
スラッジ除去技術の開発
(Technology Development for Sludge Removal from Tanks in hot cells)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]林 晋一郎(はやし しんいちろう)
[所属]東海事業所 再処理センター 処理部 化学処理第一課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33、電話:029-282-1111 FAX:029-282-2321
(Name) Shinichiro HAYASHI
(Title of Function) Dissolution and Clarification Section,Reprocessing Operation Division,Tokai
Reprocessing Center,Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194 Japan
Tel:+81-29-282-1111 Fax:+81-29-282-2321
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]内田 直樹(うちだ なおき)
[所属]東海事業所 再処理センター 処理部 化学処理第一課
(Name) Naoki Uchida
(Title of Function) Dissolution and Clarification Section,Reprocessing Operation Division,Tokai
Reprocessing Center,Tokai Works
【研究期間】
平成 13 年度 ∼ 平成 17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
再処理施設分離精製工場、実規模開発試験室
【研究概要】
[研究の経緯]
使用済燃料溶解液には不溶解残渣等のスラッジが含まれるが、これらのスラッジの蓄積が進行し
た場合、貯槽の液位、密度測定用計装配管の閉塞、液抜き用ジェットポンプ等の作動不良など、再
処理施設の溶解及び清澄工程の安定運転に支障をきたす要因となる。このため、スラッジの除去を
定期的に行う必要があるが、対象となる貯槽、配管等は、高線量下のセル内に配置されており、しか
も狭隘な環境であることから、スラッジを除去するためには高度な遠隔技術が要求される。
[研究目的]
再処理施設の溶解及び清澄工程のプロセス液に含まれるスラッジは、配管の閉塞等の要因となる。
このため溶解工程を対象に内部点検、スラッジの洗浄及び除去するための装置を開発し、実機適用
−177−
JNC TN1400 2005-018
により性能を確認する。
[研究内容]
イ.溶解槽スラッジ回収装置
溶解槽内のバレル底部から真空ポンプによりスラッジを回収するための装置を開発する。また、
溶解槽のスラブ部、連通管部、目皿部のスラッジを水噴射により洗浄するための装置を開発する。
ロ.サイフォン配管洗浄装置
溶解槽内のサイフォン配管内のスラッジをバレル底部からの水噴射により洗浄するための装置
を開発する。
ハ.サイフォン配管スラッジ除去装置
溶解槽内のサイフォン配管内に進入し、配管内から移送先貯槽までのスラッジを除去するため
の装置を開発する。
ニ.超音波式スラブ内洗浄装置(移送配管スラッジ除去装置)
溶解槽内の移送配管の付近のスラッジの状況を確認するための点検装置及び凝集したスラッジ
を超音波により砕き除去するための装置を開発する。
ホ.貯槽内点検装置
溶解槽・溶解槽溶液受槽内のスラッジ状況を確認するため、配管を経由してカメラにより点検
する装置を開発する。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
イ.溶解槽スラッジ回収装置
適宜実機適用し、性能を確認する。
ロ.サイフォン配管洗浄装置
適宜実機適用し、性能を確認する。
ハ.サイフォン配管スラッジ除去装置
作業期間の調整を行った上で実機適用し、性能を確認する。
ニ.超音波式スラブ内洗浄装置(移送配管スラッジ除去装置)
H16 年度は製作予定なし。
ホ.貯槽内点検装置
作業期間の調整を行った上で実機適用し、性能を確認する。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ.溶解槽スラッジ回収装置
スラッジ回収装置を燃料処理停止期間(インターキャンペーン)に実機適用し、濃縮ウラン溶解槽か
ら砂状のスラッジを合計で約 2.3 回収し、これまでのインターキャンペーン中と同等の量のスラ
ッジが回収でき、所定の性能を確認した(図−1 参照)
。
スラブ部を高圧水噴射により洗浄する装置を開発し、実機適用を図り、洗浄効果を確認するとと
もに、今後の改良点等を整理した(図−2 参照)
。
溶解槽スラッジ回収装置により溶解槽から回収したスラッジの組成分析、放射能分析及び粒径分
析を実施したことから、今後は装置の耐放性、機構の開発に役立てる予定である。
ロ.サイフォン配管洗浄装置
作業期間が確保できなかったため、実機適用しなかった。
ハ.サイフォン配管スラッジ除去装置
作業期間が確保できなかったため、実機適用しなかった。
ニ.超音波式スラブ内洗浄装置(移送配管スラッジ除去装置)
実施なし。
ホ.貯槽内部点検装置
作業期間が確保できなかったため、実機適用しなかった。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ.溶解槽スラッジ回収装置
スラッジ回収装置は継続して実機適用を図っており、所期の成果が得られた。
−178−
JNC TN1400 2005-018
高圧水式スラブ内洗浄装置については、実機適用後、課題の整理を行い、改良点について具体化
し、平成 17 年度に製作する装置に反映した。
ロ∼ホ 特に進捗なし。
(今後の予定)
イ.溶解槽スラッジ回収装置
スラッジ回収装置の継続した実機適用、改良型高圧水式スラブ内洗浄装置の製作・モックアップ
試験を実施し、その後、実機適用予定。
ロ.サイフォン配管洗浄装置
適用範囲を拡大し、継続して洗浄作業を行う予定。
ハ.サイフォン配管スラッジ除去装置
なし
ニ.超音波式スラブ内洗浄装置(移送配管スラッジ除去装置)
なし
ホ.貯槽内部点検装置
貯槽内部点検装置については、実機適用時期を調整し、実機適用予定。
【成果の利用実績及び活用見通し】
なし
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
(発表予定)
なし
【最近の国内外の研究動向(平成1 6 年度)
】
[民間の研究の現状と動向]
未調査
(参考文献)
なし
[海外の研究の現状と動向]
未調査
(参考文献)
なし
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
−179−
JNC TN1400 2005-018
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
□ 計画どおり進捗した。
■ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:一部の装置については、実機適用時期を調整中であり、現在のところ具体的な実施
時期は未定である
)
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
【自由評価欄】
なし
−180−
JNC TN1400 2005-018
セル内貫通部
操作区域
セル内
ベンチュリーノズル
(3本)
真空計
遮へいプラグ
圧力計
圧空供給ホース
フィルタ 吸引ホース
圧空
真空
空気口
圧空供給部
真空発生部
空気圧縮機
装置本体
スラッジ回収部 スラッジ吸込み
中間ポット
ヘッド部(溶解槽スラブやバ
レルに挿入しスラッジを回
収)
図-1 スラッジ回収装置全体構成図
セル
操作区域
セル内バルブ
ユニット
④昇降ベース
高圧水供
給装置
空気圧縮機
セル外バルブ
ユニット
せん断系オフガス配管
スラブ部
バレル部
濃縮ウラン溶解槽
バレル部
図-2 溶解槽高圧水式洗浄装置全体構成図
−181−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【研究分野】
【分類番号】
核燃料施設の安全性に関する研究
5−5(社内研究)
【研究課題名 (Title)】
気相へ移行するヨウ素の挙動(Behavior of Gaseous Iodine in the Tokai Reprocessing Plant)
【実施機関 (Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先 (Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]林 晋一郎(はやし しんいちろう)
[所属]東海事業所 再処理センター 処理部 化学処理第一課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松4-33、電話番号029-282-1111
(Name) Shinichiro HAYASHI
(Title of Function) Dissolution and Clarification Section,Reprocessing Operation Division,Tokai Reprocessing
Center,Tokai Works
(Address, Phone. and Fax) 4-33,Muramatsu,Tokai-mura,Naka-gun,Ibaraki,319-1194 Japan
+81-29-282-1111
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]白水 秀知(しろうず ひでとも)
[所属]東海事業所 再処理センター 処理部 化学処理第一課
(Name) Hidetomo SHIROZU
(Title of Function) Dissolution and Clarification Section,Reprocessing Operation Division,Tokai Reprocessing
Center,Tokai Works
【研究期間】
平成15年度
∼
平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)] なし
[実証試験名(実施機関)]
なし
[委託研究名(実施機関)] なし
【使用主要施設】
再処理施設分離精製工場、廃棄物処理場等
【研究概要】
[研究の経緯]
再処理施設においては、昭和52年のホット運転開始以来、ヨウ素の工程内挙動について文献調査をは
じめ、各換気系統にサンプリング装置を設け、サンプリング・分析による調査を実施しており、調査
結果に基づき主要な移行ルートに順次ヨウ素フィルタを設けるなど、環境へのヨウ素の放出低減化に
取り組んできている。
[研究目的]
再処理工場では、ヨウ素は複雑な挙動をすることから、東海再処理施設ではこれまでに再処理工程内の
測定結果を基にヨウ素の挙動を明らかにし、これを基にして、気相における主要なルートにヨウ素除去フ
ィルタを設けている。現在、オフガス処理系の運転管理の観点から、気相へ移行するヨウ素の測定を継続
的に実施し、挙動を監視している。
本研究では、再処理工程における気相中のヨウ素サンプリング、測定結果をもとにしたバランスなどヨ
−183−
JNC TN1400 2005-018
ウ素の挙動について評価し、効率的なヨウ素除去に資する。
[研究内容]
イ.気相中のヨウ素測定結果のまとめ
継続的に実施している主排気筒及び気相系のヨウ素の測定、気相系に設置しているヨウ素除去フィル
タの除去効率などを燃料処理キャンペーン毎にまとめる。
ロ.挙動評価
測定結果から、工程との関係について評価し、ヨウ素の挙動・収支を明らかにする。
【当初の達成目標(平成16年度)】
イ.気相中のヨウ素測定結果のまとめ
04-1、04-2 キャンペーンの測定結果をまとめる。本結果から,工程との関係について評価し、ヨウ素の
挙動を明らかにする。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ.気相中のヨウ素測定結果のまとめ
04-1、04-2キャンペーン期間中、主排気筒からのヨウ素放出状況の監視を行うとともに、換気系に
設置したヨウ素サンプリング装置(23箇所 図-1参照)を用いたサンプリング・分析を行った。調査
結果から各換気系でのヨウ素のバランス、ヨウ素フィルタの除去効率などを評価し、ヨウ素の工程内
挙動についてキャンペーン毎に整理し、評価を行った(図-2、図-3参照)。処理燃料中に含まれるヨ
ウ素の大部分が溶解運転に伴い溶解オフガス処理工程に移行し、更にその約6割程度は酸吸収塔から酸
回収工程経由で槽類換気工程に移行することが従来より確認されているが,04-1、04-2キャンペーンにおい
ても従来と同様槽類換気工程(D1)からの放出割合が最も高いことを確認した。また、04-1及び04-2
キャンペーンを比較すると、分離精製工場、廃棄物処理場等、高放射性廃液貯蔵場からの放出割合、分離精
製工場の下段(ポイントG、Z1、Z2、Z3、Z4)からの放出割合はほぼ同じであることを確認した。
なお、一部バランスがとれていない箇所があるが、評価上、サンプリング装置、放出系統内における排
風量を一定としているためと考えられる。
【研究の達成状況(平成16年度)】
イ.気相中のヨウ素測定結果のまとめ
04-1、04-2 キャンペーン期間中のヨウ素測定結果のまとめを終了し、所期の成果が得られた。
【成果の利用実績及び活用見通し】
今後のキャンペーンについてもこれまでと同様、測定結果のまとめを行い、キャンペーン毎の測定結果
を整理し、再処理工程におけるヨウ素の挙動・収支を明らかにし、技術情報として報告書にまとめる。
【研究成果の発表状況(平成16年度)】
なし
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
未調査
(参考文献)
なし
[海外の研究の現状と動向]
現在調査中
(参考文献)
なし
−184−
JNC TN1400 2005-018
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
■ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
)
【自由評価欄】
−185−
JNC TN1400 2005-018
主排気筒
主排気筒
高放射性
廃液貯蔵場
廃棄物処理場等
分離精製工場
No3
No1
(MUG)
(MUA)
Z1
ア
ン
バ
Z2
機
械
処
理
セ
ル
換
気
系
区
域
換
気
系
Z4
槽
類
換
気
系
Z3
G
S9
N
R
E
S7
L
P
一
般
セ
ル
換
気
系
H1
H2
Z5
Kr施設
Z6
Z7
D2
C
A
B
D1
R005A
高
放
射
性
廃
液
貯
槽
換
気
系
セ
ル
換
気
系
グ A686 A258
リ A586 等
等
ン
区
域
換
気
系
除
染
保
守
セ
ル
R333
濃
縮
ウ
ラ
ン
機
械
処
理
セ
ル
R334
濃
縮
ウ
ラ
ン
溶
解
槽
装
荷
セ
ル
R131
ハ R R026 287 R020
ル 105D R001 R111 R220
モ
R002 等 等
ニ
R003
タ
等
リ
ン
グ
セ
ル
R1165
一
般
槽
類
換
気
系
ヨウ素測定ポイント
ヨウ素除去装置
HEPAフィルタ
ヨウ素モニタ
図−1 ヨウ素測定ポイント
−186−
高
放
射
性
廃
液
貯
槽
換
気
系
せ
ん
断
オ
フ
ガ
ス
処
理
系
溶
解
オ
フ
ガ
ス
処
理
系
廃
棄
物
処
理
場
セ
ル
換
気
系
廃
棄
物
処
理
場
セ
ル
換
気
系
R010
R017
等
廃
棄
物
処
理
場
槽
類
換
気
系
第
二
低
放
射
性
廃
液
蒸
発
処
理
施
設
槽
類
換
気
系
第
三
低
放
射
性
廃
液
蒸
発
処
理
施
設
槽
類
換
気
系
JNC TN1400 2005-018
主排気筒(100%)
高放射性廃液貯蔵場(1.5%)
分離精製工場(84.4%)
廃棄物処理場等(14.1%)
No3(1.5%)
I(14.1%)
No1(1.6%)
Z1
Z2(9.3%)
(12.7%)
Z3(21.2%)
A(微%)
G(41.3%)
S9(1.0%)
E(177.1%)
S7(12.8%) L(14.1%)
B(22.6%) C(4.0%)
N(0.2%)
R(0.1%)
P(1.3%)
D2(54.1%)
Z4(微)
D1(598.7%)
Z5(1.0%)
Z6(1.0%)
Z7(0.1%)
R105D(0.2%)
主排気筒への放射能移行量(3.28×107Bq)を100%として計算
:よう素除去装置
図-2 各系統からの放出量 (04-1camp)
主排気筒(100%)
高放射性廃液貯蔵場(2.0%)
分離精製工場(90.3%)
廃棄物処理場等(7.7%)
No3(2.0%)
I(7.7%)
No1(2.1%)
Z1
Z2(14.2%) Z3(27.3%)
(12.3%)
A(微%)
G(36.1%)
S9(0.7%)
N(0.8%)
R(微%)
E(156.0%)
S7(10%)
L(17.3%)
P(0.6%)
B(46.1%) C(2.8%)
D2(19.9%)
Z4(微)
D1(1086.4%)
Z5(微)
Z6(1.2%)
Z7(微)
R105D(0.3%)
主排気筒への放射能移行量(1.30×107Bq)を100%として計算
:よう素除去装置
図-3 各系統からの放出量 (04-2camp)
−187−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
5-6(社内研究)
【研究分野】
放射性廃棄物の管理に関する研究
【研究課題名(Title)】
クリプトンの固定化技術開発(Study on Krypton Immobilization technology and development)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先 (Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]林 晋一郎 (はやし しんいちろう)
[所属]東海事業所 再処理センター 処理部 化学処理第一課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松4-33 TEL.029-282-1111
(Name) Shinichiro HAYASHI
(Title of Function) Dissolution and Clarification Section, Processing Operation Division,
Tokai Reprocessing Center, Tokai Works
(Address, Tel. and Fax) 4-33, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194 Japan
TEL.029-282-1111 FAX:029-282-0031
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]木村 典道(きむら のりみち)
[所属]東海事業所 再処理センター 処理部 化学処理第一課
(Name) Norimichi Kimura
(Title of Function) Dissolution and Clarification Section, Reprocessing Operation Division,
Tokai Reprocessing Center, Tokai Works
【研究期間】
平成 13 年度 ∼
平成 17 年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
クリプトン回収技術開発施設
【研究概要】
[研究の経緯]
再処理施設から環境に放出される放射性物質の量を低減化する研究開発の一環として、再処理工程
から放出されるオフガス中の放射性物質であるクリプトンを除去回収する技術開発を行ってきた。回
収されるクリプトンについては安全性及び管理の簡易性の観点から、高圧ガス状態での貯蔵に替わる
技術として、イオン注入固定化法を用い金属中にクリプトンを閉じ込める固定化技術が必要である。
固定化技術の開発においては放射性クリプトンを用いた試験を行い、得られた固化体の長期貯蔵の
安定性を確認する必要がある。また、実用性の観点から、単基当たりの注入量及び注入速度を増加さ
せた拡張型容器(小型容器の 3∼4 倍程度)の開発を進めていく必要がある。
[研究目的]
回収されたクリプトンガスの貯蔵方法として、長期間安定貯蔵のためにクリプトンを金属中に固定
化するイオン注入固定化技術を開発する。
−189−
JNC TN1400 2005-018
[研究内容]
イ.回収クリプトンガス固定化試験
クリプトン回収技術開発施設においてオフガスから回収され、貯蔵シリンダに貯蔵されている
クリプトンガスを用いて、イオン注入法による固定化ホット試験及び固定化後の固化体評価試験
を実施し、固定化技術を評価する。
ロ.プロトタイプ容器の開発
小型容器の 3∼4 倍程度の固定化容量のある注入容器をコールド試験で開発し、ホット試験によ
り注入性能を確認する。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
イ.ホット試験(固化体評価試験)
クリプトン回収技術開発施設において固定化ホット試験で小型容器に固定化したクリプトンの
保持性能を評価するため、金属中に固定化したクリプトンの放出率を求める固化体評価試験を実
施する。
ロ.コールド試験(拡張型容器の開発)
拡張型容器の試作機を用いて、天然クリプトンガス(コールドガス)による特性試験および短
期間での連続注入試験を行い、注入性能を評価する。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ.ホット試験(固化体評価試験)
クリプトンの保持性能を評価するため3基の容器について固化体評価試験を実施した。そのう
ち 1 基は、加熱装置により最高 200℃まで加温保管できる。本年度は 150℃で 5000 時間加温を行
った容器(R11-A)、常温で 5000 時間保管した容器(R11-D)及び常温で 10000 時間保管した容器
(R11-E)の固化体からのクリプトン放出率を測定した。なお、放出率は容器内に注入した放射能
量に対する固化体から放出された放射能量の割合である。図-1 に固化体評価試験工程を示す。
表-1 に固化体評価試験結果を示す。この結果から常温よりも加温温度が高いほど放出率が高く
なることを確認し、また加温 150℃及び常温ともクリプトン放出率はオーダー的に小さく、クリ
プトンは固化体内に安定して保持されていることを確認した。
ロ.コールド試験(拡張型容器の開発)
拡張型容器の試作機(ターゲット寸法φ200mm×H540mm、図-2 参照)を用いて、ターゲット/
サブストレイト電極間距離 40mm の特性試験および連続注入試験(短期間)を実施した。
特性試験結果(表-2 参照)から注入速度 6∼21Ncc/min まで 3Ncc/min 刻みで各注入速度での設
定電圧が得られた。また、連続注入試験から注入速度 15Ncc/min までなら安定して連続注入でき
ることを確認したが、18Ncc/min 以上からは時間の経過とともに注入効率が低下する傾向が見ら
れた。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ.ホット試験(固化体評価試験)
加温 150℃で 5000 時間、常温で 5000 時間および 10000 時間経過後の固化体からのクリプトン
放出率を測定した。この結果、固化体に注入したクリプトンは固化体内に安定して保持されてい
ることを確認した。
ロ.コールド試験(拡張型容器の開発)
拡張型容器の試作機を用いて、ターゲット/サブストレイト電極間距離 40mm の特性試験および
連続注入試験(短期間)を実施した。この結果、注入速度 15Ncc/min までなら安定して連続注入
できることを確認した。
(今後の予定)
イ.ホット試験(固化体評価試験)
加温容器は 200℃に温度を上げ、5000 時間経過後の固化体からのクリプトン放出率を測定する。
また、常温保管の容器についても定期的にクリプトン放出率を測定する。
ロ.コールド試験(拡張型容器の開発)
さらにターゲット電極を拡張させた容器ついて注入試験を行い、拡張型容器の目標である注入
速度 20Ncc/min 以上で安定に連続注入ができる条件を検討する。
−190−
JNC TN1400 2005-018
【成果の利用実績及び活用見通し】
イオン注入固定化技術で得られた研究成果は、クリプトンの回収・固定化技術の一連の技術評価
に反映し、集大成を図る。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
(発表予定)
なし
【最近の国内外の研究動向(平成16年度)
】
[民間の研究の現状と動向]
国内で固定化の技術開発を行っているのはサイクル機構のみ。
(参考文献)
なし
[海外の研究の現状と動向]
イオン注入固定化法よるクリプトンの固定化技術開発は、英国(Harwell)1),米国(PNL) 2,3),ドイツ
(KfK)4)において実施されていた。各国とも 1980 年代で研究を終了している。
(参考文献)
(1)D.S.Whitmell, Immobilization of krypton in a metal matrix, Final report
No 402-83-8 WAS UK(H) 1988
(2)PNL-SA-10536.UC-70
(3)PNL-SA-13239:DE86 007724
(4)Kerntechnik 54 (1989) No.4
Research contract
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
−191−
)
JNC TN1400 2005-018
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
【自由評価欄】
−192−
JNC TN1400 2005-018
ガス測定装置(R101)
真空ポンプ(P1013)
サンプタンク(V1011)
回収系
N2
検出器(Q1012)
ベント系
【R11-A】 【R11-B】
【R11-C】
【R11-D】
【R11-E】
【拡張型容器(将来設置)
】
図-1 固化体試験評価工程
表-1 固化体評価試験結果
試験条件
試験結果
容器タイプ
温度条件
保持時間[h]
クリプトン放出率[%]
容器(R11-A)
150℃
5000
1.2×10-4
容器(R11-D)
常温
5000
1.2×10-8
容器(R11-E)
常温
10000
5.2×10-8
−193−
JNC TN1400 2005-018
セラミック絶縁端子
ターゲット電極
冷却水配管
排気管
上部アノード電極
冷却水配管
上部アノード電極
セラミック絶縁リング
サブストレイト電極
ターゲット電極
サブストレイト電極
冷却水配管
φ200mm
下部アノード電極
下部アノード電極
冷却水配管
セラミック絶縁リング
Kr ガス導入管
図―2 拡張型容器試作機の構造
表―2 特性試験結果(各注入速度での電圧設定値)
サブストレイト
電圧
ターゲット
電圧
-275V
-325V
-350V
-375V
-400V
-425V
-450V
-475V
-500V
-2000V
-2500V
-3000V
-3500V
6Ncc/min
―
6∼9Ncc/min
9Ncc/min
―
―
6∼12Ncc/min
―
6∼12Ncc/min
15Ncc/min
9∼15Ncc/min
―
18Ncc/min
9∼18Ncc/min
18∼21Ncc/min
9∼12Ncc/min
15∼21Ncc/min
12∼18Ncc/min
21Ncc/min
―
18∼21Ncc/min
−194−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
5−7(社内研究)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する研究
【研究課題名(Title)】
不均一系核燃料物質の工程間移動における安全性向上に関する研究
(Research of Safety Improvement for Transfer of Inhomogeneous Nuclear Materials among Processes)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]高橋 芳晴(たかはし よしはる)
[所属]東海事業所 再処理センター 処理部 転換技術課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33 電話:029-282-1111 FAX:029-282-9395
(Name) Yoshiharu TAKAHASHI
(Title of Function) Conversion Technology Section, Reprocessing, Operation Division,
Tokai Reprocessing Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194 Japan
Tel:+81-29-282-1111 Fax:+81-29-282-9395
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]田中 秀樹(たなか ひでき )
、高橋 直樹(たかはし なおき )
[所属]東海事業所 再処理セン タ ー 処理部 転換技術課
(Name) Hideki TANAKA, Naoki TAKAHASHI
(Title of Function) Conversion Technology Section, Reprocessing, Operation Division,
Tokai ReprocessingCenter, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度 ∼ 平成16年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
プルトニウム転換技術開発施設 A127 室(液移送室)
【研究概要】
[研究の経緯]
核燃料施設では、プルトニウムを含む核燃料物質の工程間(GB 間)移動は計量分析結果を用いて安
全側に評価、管理しており、臨界管理を核燃料物質の質量で行なっているグローブボックスでは、移
動するプルトニウム量の正確な把握ということが必要条件である。固体廃棄物、スクラップ粉末及び
スラッジ等、それ自体が不均一のため、直接破壊分析をすることができない形態の核燃料物質は、安
全側に尤度を持った推定値を用いて移動している。この推定値の不確かさの程度を、より正確な移動
−195−
JNC TN1400 2005-018
量を知ることができる非破壊分析装置を開発することにより、それらの核燃料物質移動量の迅速な把
握及び計測の不確かさを低減することができることに着眼し、作業員の被ばく低減並びに施設の安全
管理、計量管理の向上を早期に図るものである。
[研究目的]
本研究においては、非破壊分析装置を活用し、被測定対象物中に含有する核燃料物質量を高精度かつ
迅速に確定する技術を開発することで、質量管理グローブボックス間及び工程内の不確定な核物質移動
をなくし、より正確な核燃料物質の管理が実施できることにより、作業員の被ばく低減並びに施設の臨
界安全性の向上を図ることを研究の目的とする。
[研究内容]
核燃料物質に含まれるプルトニウム量を非破壊分析で測定するには、中性子同時計数法(自発核分
裂性の偶数核種の量を測定)とγ線スペクトロメトリ(同位体組成比を測定)の組み合わせが用いら
れている。しかしながら、固体廃棄物,スクラップ粉末及びスラッジ等、不均一であるために代表サ
ンプリングが困難、或いは被ばくや設備の点から均一化が困難である場合、含まれるプルトニウム量
を正確に測定するためには、容器に入れたまま全量を測定できるよう、中性子測定装置の大型化や感
度の平坦性の確保及び実効増倍率の補正が課題となる。また、不純物を多く含むため、α値を推定(従
来の Knownα法)ではなく実測(Multiplicity 法)することや、プルトニウム密度が低いため、マト
リックスの吸収に対する補正を行うことも課題になる。γ線測定装置については、強いγ線ピークを
持たない 242Pu について、推定によって他の核種に対する組成比を求めなければならないが、従来の MGA
コードでは推定精度が不十分であり、新たな推定方法が課題となる。そこで以下の内容を研究対象と
する。
イ.大型中性子測定装置について、均質かつ低不純物のクリーン MOX 粉末を用いて測定に必要なパラメ
ータを決定し、精度の高い校正式を決定する。また、感度の平坦性を確認し、実効増倍率の補正を行
い、Knownα法と Multiplicity 法の結果を比較する。
ロ. 実際の固体廃棄物を用い、Knownα法と Multiplicity 法で測定をおこない、α値の推定と実測の比
較をおこなう。スラッジ,スクラップ粉末については、更に、均一混合/試料採取/分析で得た分析
値と非破壊測定結果の比較をおこなう。文献調査や数値計算を参考にして、比較結果の検討を行い、
α値,実効増倍率,マトリックスの吸収について知見を得る。また、測定の不確かさの評価を行う。
ハ.γピークを持たない 242Pu に対し、他の核種に対する同位体組成比の推定法を考案する。ガンマ線測
定装置について、RI 標準線源を用いた校正を行い、クリーン MOX 粉末を用いて実測値と推定値の比
較をおこなう。文献調査を参考にして比較結果の検討を行い、242Pu の新たな推定方法を求める。
ニ.作業上及び管理上の問題点を改善し、運用方法や操作手順を確立して、現場に試行運用する。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
測定全体の不確かさとして、以下の値を当初の目標とする。
クリーン MOX
:
1 %
−196−
JNC TN1400 2005-018
スクラップ
:
5 %
スラッジ
:
5 %
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
グローブボックスから回収したMOXスクラップ粉末(1試料:実効Pu240量で約0.38kg,Pu量で約
0.78kg)をKnownα法及びMultiplicity法で測定した。測定したα値は 1.63 となり、Knownα法で使
用する計算α値(0.75)に対し2倍以上大きいものの、前回のMOXスクラップ粉末と同程度であっ
た。次に、計量管理として行った破壊分析(3回の分析結果の中央値を採用),Multiplicity法,Known
α法で求めた Pu 量を比較した結果、前回のMOXスクラップ粉末と同様、Multiplicity法の結果は
Knownα法よりも明らかに破壊分析結果に近かった。今年度は測定時間を2倍(30分)としたとこ
ろ、Multiplicity法のばらつきは 5% 程度(昨年度の1/√2)に低減した。また、昨年度も含めた計
3試料の平均では、Multiplicity 法と破壊分析の差は 1% 程度であった。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
平成 15 年度に引き続き、破壊分析により計量管理報告を行っている MOX スクラップ粉末について
中 性子測 定装 置によ る測 定を行 い、 昨年度 の知 見を再 確認 すると とも に、測 定時 間30 分で
Multiplicity 法のばらつきは 5% 程度となり、測定の不確かさの目標値を達成することができた。昨
年度も含めた3つの試料の平均では、Multiplicity 法と従来の破壊分析法とのバイアスは 1%程度で
あり、両測定法のバイアスは十分に小さいことを明らかにした。
(今後の予定)
工程運転及び保障措置上の十分な調整のもとに、破壊分析により計量管理を行っているスクラップ
粉末及びスラッジ粉末について本中性子測定装置による測定を継続し、破壊分析結果との比較検討を
行って、当初の研究内容及び目標を達成する計画である。
【成果の利用実績及び活用見通し】
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
平成 16 年度の発表はなかったが、今後、核物質管理学会等の場で成果を発表する計画である。
【最近の国内外の研究動向(平成16年度)
】
[民間の研究の現状と動向]
国内の民間企業では、六ヶ所再処理工場の低放射性固体廃棄物非破壊測定装置に Multiplicity 法
が導入される計画である。また、核物質管理センターやサイクル機構プルトニウム燃料センターでは
高αサンプル(スクラップ等)に対して積極的な研究開発を行っている。しかしながら、核燃料物質
の工程間移動に対する非破壊分析装置の使用について実施された例はない。
(参考文献)
舘野ほか、
「パッシブ中性子同時計数法による廃棄物コンテナ中 Pu の測定技術開発」
サイクル機構技報 No.10 2001.3
中村ほか、
「ウラン・プルトニウム混合脱硝区域の計量管理手法と NDA の適用」
−197−
JNC TN1400 2005-018
第 25 回核物質管理学会論文集 (2004) P203-211.
[海外の研究の現状と動向]
(参考文献)
IAEA や EURATOM と共同して DOE
(米国エネルギー省)、COGEMMA、
BNFL、
また民間企業としては CANBERRA
社、ORTEC 社等が、高αサンプル(スクラップ等)
、固体廃棄物に対して積極的な研究開発を行ってい
る。
(参考文献)
N. Ensslin, et al., “Application Guide to Neutron Multiplicity Counting,” LA-13422-M (1988)
G. Bignan, et al., “Plutonium Isotopic Determination by Gamma Spectrometry:
Recommendations for the 242Pu Content Evaluation using a new Algorithm,” ESARDA
BULLETIN No.28, P1-6 (1998)
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
)
【自由評価欄】
−198−
JNC TN1400 2005-018
表1 クリーン MOX 試料による破壊分析値との比較
破壊分析 (DA)
Known α法
Multiplicity 法
−199−
実効Pu240量 [g]
計算α値
実効Pu240量 [g] DA との差 [%]
0.100
0.715
0.098
-2.000
0.770
0.100
0.000
0.500
0.715
0.501
0.200
0.755
0.500
0.000
1.499
0.715
1.506
0.467
0.748
1.505
0.400
4.993
0.715
5.020
0.541
0.761
4.970
-0.461
6.492
0.715
6.523
0.478
0.751
6.504
0.185
9.995
0.715
10.009
0.140
0.751
9.980
-0.150
99.950
0.715
99.240
-0.710
0.730
100.720
0.770
500.140
0.715
496.440
-0.740
0.748
496.670
-0.694
1316.220
0.715
1321.620
0.410
0.747
1325.170
0.680
校正式の傾き 85.33 cps/gPu240eff.
実測α値
実効Pu240量 [g] DA との差 [%]
σ= 0.86 %
σ= 0.49 %
標準MOX試料 Pu 42.30 %,U 43.97 %,水分 0.11 %,Am 1.26 %,O/M 比 2.14
増倍補正 Knownα法は計算値( 0= 0.2058)で、Multiplicity法は実測値で補正
測定時間 30 sec ×180 cycles
・増倍補正後の直線性は良好で、0.1 g240Pu から1.3 kg240Pu まで1次校正式でフィットした。
・α値の実測値は計算値より僅かに高いが、試料組成を考慮すると妥当と思われる。
・破壊分析値と測定値の差は Multiplicity法の場合σで 0.5%となり、良好な結果が得られた。
番号
測定値のσ [%]
Known α法
計算α値 Pu 量 [g]
Multiplicity 法
実測α値 実効増倍 Pu 量 [g]
Known α法と
Multiplicity 法の差 [%]
−200−
1
1.4
0.717
2.407
1.895
1.001
2.434
-1.1
2
1.8
0.717
1.171
2.393
0.999
1.205
-2.8
3
2.5
0.717
1.462
5.723
1.002
1.451
0.8
4
1.7
0.717
1.914
3.025
1.002
1.907
0.4
5
3.5
0.717
0.579
7.298
0.998
0.610
-5.1
6
2.6
0.717
9.644
10.505
1.020
6.325
52.5
7
3.4
0.717
0.659
7.401
0.999
0.685
-3.8
8
5.5
0.717
8.604
9.902
0.986
13.544
-36.5
9
1.6
0.717
2.357
2.912
1.002
2.363
-0.3
10
4.0
0.717
2.062
11.921
1.004
1.855
11.2
バッグアウト廃棄物をカートンに入れて測定した。測定時間は5分である。
太字は、Knownα法とMultiplicity法の差が、測定値の2σを超えた場合を示す。
・Multiplicity法で実測したα値は Knownαで計算したα値の2倍以上であった。
・Multiplicity法で実測したα値は 10 を超える場合があった。
・測定時間 5 分の場合、α値が 7 程度までならば、Knowα法とMultiplicity法の差は顕著とは
言えない(測定値の2σ以下 )が、それ以上では差が顕著となった。
JNC TN1400 2005-018
表2 低放射性固体廃棄物の測定
破壊分析による
番号
Pu 量 [g]
1
Known α法
破壊分析と
Multiplicity 法
計算α値
Pu 量 [g]
実測α値
実効増倍
Pu 量 [g]
0.740
1049
1.97
1.04
774
Multiplicity 法の差 [%]
−201−
2
1490
0.740
1041
1.52
1.05
783
4.5
3
784
0.746
1032
1.63
1.05
731
-6.8
合計
2274
2288
0.6
3122
番号1,2[平成15年度]
MOXスクラップ粉末(ロット番号 Z055)をポリ瓶に入れて測定した。測定時間は15分である。
Multiplicity法のばらつき(1σ)はそれぞれ、774±74(10%),783±56 (7%)である。
Known α法のばらつき(1σ)はそれぞれ、1049±6,1041±5 である。
番号3[平成16年度]
MOXスクラップ粉末(ロット番号 Z050)をポリ瓶に入れて測定した。測定時間は30分である。
Multiplicity法のばらつき(1σ)は、731±37(5%)である。
Known α法のばらつき(1σ)は、1032±3 である。
・Multiplicity 法で実測したα値は 1.6 と、昨年度の別の試料の実測値と同程度であった。
・昨年度同様、Knownα法と Multiplicity 法の差は顕著であった。
・測定時間を昨年度の2倍 (30分) としたところ、 Multiplicity法 の不確かさは 5% 程度となり、
当初の目標を達成した。また3つの試料の平均では Multiplicity 法と破壊分析法の結果の差
は 1%程度であり、両測定法のバイアスは十分に小さいことを明らかにした。
JNC TN1400 2005-018
表3 MOX スクラップ粉末の測定
Top Plug
封印機能
高密度ポリエチレン
−202−
サンプル室サイズ
φ400 × 500 (H)
表面に1mmの鉛板
による遮蔽あり
測定対象物
クリーンMOX・低放射性固体廃棄物・スクラップ・スラッジ・少量サンプル等
図1 高速カートン測定装置 (Fast Carton Assay System)
JNC TN1400 2005-018
中性子検出管
(2重リング構造
検出効率 40 %)
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
5 −9 (社内研究)
【研究分野】
核燃料施設の安全性に関する 研究
【研究課題名(Title)】
廃シリカゲル処理技術開発
(Development of Treatment Technique of Silica gel Waste)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]上野 勤(う え の つと む)
[所属]東海事業所 再処理セン タ ー 環境保全部 処理第二課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33 電話:029-282-1111 FAX:029-282-3318
(Name) Tsutomu UENO
(Title of Function) Waste Conditioning Section, Waste Management Division, Tokai Reprocessing
Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33 Muramatsu Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194, Japan
Tel:+81-29-282-1111, FAX:+81-29-282-3318
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]芳中 一行(よ し なか かずゆき )
[所属]東海事業所 再処理セン タ ー 環境保全部 処理第二課
(Name) Kazuyuki YOSHINAKA
(Title of Function) Waste Conditioning Section, Waste Management Division, Tokai Reprocessing
Center, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度 ∼ 平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
廃溶媒処理技術開発施設
【研究概要】
[研究の経緯]
廃シリカゲルを貯槽から抜き出すための設備を平成8年度に設置した。設置後、抜き出し試験を
開始したが、アスファルト固化処理施設の火災爆発事故により中断していた。
この抜き出し技術の効率向上と、抜き出し後の貯蔵の安全性確認のため、本研究を実施するこ
ととした。
[研究目的]
東海再処理工場の廃溶媒処理技術開発施設(ST施設)では、ドデカンを再使用する目的で、廃
溶媒から分離したドデカンを精製する工程の実証運転を実施している。この工程では、従来から
のシリカゲルに加え、ドデカン中に含まれる有機ヨウ素を効率的に除去するAgX及びMS13Xを使用
−203−
JNC TN1400 2005-018
しており、これまで順調に運転を行ってきた。
本研究は、ドデカン精製工程から発生し貯槽に貯蔵している廃シリカゲルについて、貯槽から
の抜き出し技術及び貯蔵の安全性等について研究を行うものである。
[研究内容]
イ.廃シリカゲル抜き出し技術の確立
現在、貯槽内には、ドデカンを満たした状態で廃シリカゲルを約13m3貯蔵している。この廃シ
リカゲルを貯槽から抜き出すため、既設の払出設備を用いて、スラリー状の廃シリカゲルを効
率良く抜き出す技術を確立する。
ロ.廃シリ カゲル貯蔵の安全性評価
廃シリカゲルを貯蔵するにあたり、容器への収納方法及び貯蔵環境条件に関する試験評価を実施
し、放射性有機ヨウ素等が気相へ移行することがなく安全に貯蔵できることを確認する。
ハ.廃シリ カゲルの固化技術フ ィ ージビリ ティ スタ ディ
ST 施設では、廃溶媒中の TBP についてはエポキシ樹脂によ る 固化を 行い、安定な固化体と し て
貯蔵し て いる 。こ のエポキシ固化の際に、廃シリ カゲルに類似し た性状の添加剤を 使用し て いる こ
と から 、TBP の固化処理の際、廃シリ カゲルを 同時に固化処理でき る 可能性が考え ら れる 。その可
能性について 、コールド 試験を実施し 確認する 。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
ロ.廃シリ カゲル貯蔵の安全性評価
貯蔵環境における放射性有機ヨ ウ 素等の移行を評価する ための試験方法を検討し、試験を 開始す
る。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
ロ.廃シリ カゲル貯蔵の安全性評価
平成 15 年度実施の容器の設計検討と並行して、抜き出した廃シリカゲルの貯蔵における安全性
(廃シリカゲルに吸着した放射性ヨウ素等の移行性)を評価するための試験計画の立案等を行った。
具体的には、現在まで抜き出した廃シリカゲル約 150kg は、
アルミ製の袋に 400∼800g に小分けし、
さらにビニール製の袋に 2 重梱包し、
パッキンシール構造のステンレス製の容器内で保管している。
これら廃シリカゲルの梱包材からステンレス容器内への放射性ヨウ素等の移行性(漏洩)及びステ
ンレス容器から外気への放射性ヨウ素等の漏洩を確認するための試験計画の立案及び試験の準備
を行った。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
試験計画の立案にあたり、廃シリカゲルに吸着した放射性ヨウ素等の推定に時間を要したことから、
平成 16 年度の計画よ り 僅かに遅れている が、平成 17 年度第2 四半期よ り 、上記漏洩試験を開始する 予
定である 。
(今後の予定)
試験計画に基づく漏洩試験を実施し、現状の保管環境下における放射性ヨウ素等の移行性について調
査する。その結果を基に梱包材、保管容器の評価を行い、初期の目的の達成状況について評価する。
【成果の利用実績及び活用見通し】
指針・基準等への反映の予定なし。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
研究成果の発表実績はなし。
(発表予定)
発表予定なし。
【最近の国内外の研究動向(平成16年度)
】
[民間の研究の現状と動向]
なし
−204−
JNC TN1400 2005-018
(参考文献)
[海外の研究の現状と動向]
なし
(参考文献)
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
□ 計画どおり進捗した。
■ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:計画立案のための廃シリカゲルへの吸着量推定に時間を要したため
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
【自由評価欄】
−205−
)
)
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
○7−1(耐震5−3−1)
【研究分野】
原子力施設の耐震等の安全性に関する研究
【研究課題名(Title)】
核燃料施設免震構造に関する高度化研究 (Improvement of Seismic Isolation Safety Design of
Nuclear Fuel Facilities)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]瓜生 満(うりゅう みつる)
[所属]本社 技術展開部
[連絡先]〒319-1184 茨城県那珂郡東海村村松4−49
℡ 029-282-1122
(Name) Uryu Mitsuru
(Title of Function) Technology Management Division, Head Office
(Address, Phone and Fax) 4-49, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1184, Japan
Tel. +81-29-282-1122
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]山
敏彦(やまざき としひこ)
[所属]東海事業所 建設工務管理部
(Name) Yamazaki Toshihiko
(Title of Function) Construction & Maintenance Division, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度 ∼ 平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
東海事業所 再処理施設ユーティリティー施設(再 UC)
【研究概要】
[研究の経緯]
サイクル機構では、核燃料施設へ免震構造を採用すべく、これまで確証試験や設計手法に関する研
究等を進め、その成果を再処理施設ユーティリティ施設(以下再 UC という)の設計、建設に反映し
てきた。しかしながら、原子炉施設の耐震設計分野の進歩には著しいものがあり、これを参考に免震
構造の設計手法にも新しい知見を取り入れることとした。また、免震システムが将来にわたり確実に
免震機能を発揮し、建物の健全性を維持させるため、供用期間中における免震システムの信頼性評価
の手法を整備・確立することとした。
[研究目的]
サイクル機構で旧年次計画(平成8年∼12年)において策定した、免震構造用の設計用入力地震
動は、防災方面での実績や信頼性のある複数の手法を用いて策定した。しかし、最近では耐震設計分
野において新しい知見に基づく地震動スペクトル(上下動含む)の提案等も始まりつつあり、免震構
−207−
JNC TN1400 2005-018
造を対象にした適合性評価、影響評価等を行い、得られた知見を免震構造設計用入力地震動の策定に
適宜反映させていく必要がある。また、免震システムが将来にわたり確実に免震機能を発揮し、建物
の健全性を維持させるため、供用期間中における免震システムの信頼性評価の手法を整備・確立する
必要がある。
[研究内容]
イ.免震構造設計用入力地震動策定手法の高度化
新しい知見に基づく上下動を含む地震動スペクトルを調査するとともに、サイクル機構で所掌する
免震建物を対象に地震観測及び地盤の地震動解析、建家の地震応答解析を行い、適合性評価、影響評
価等の総合的な検討を加える。上記研究で得られた知見を現行の免震構造設計用入力地震動策定手法
に適切に反映する。
ロ.供用期間中における免震システムの信頼性評価手法の高度化
免震構造では、免震システムが将来にわたり確実に安全機能を発揮させるために、施設の供用期間
中に適切な検査(ISI)を行っていく必要があり、検査範囲、検査程度、検査方法、判定基準及び
結果の措置を適切に定めるための調査及び手法の整備を行う。また、供用期間中を通じて地震観測を
行い、上記ISI手法と併用して得られるデータを用いて免震システムの信頼性評価手法の整備、確
立を図る。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
イ.免震構造設計用入力地震動策定手法の高度化
震源断層から構造物の建設地点に至るまでの地震動を解析的に検討し、既往の地震動スペクトルと
比較・検討を行う。
ロ.供用期間中における免震システムの信頼性評価手法の高度化
再処理ユーティリティ施設(再 UC)で得られたデータを整理し、核燃料施設における免震システ
ムの信頼性評価手法について検討する。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ.免震構造設計用入力地震動策定手法の高度化
①上下動に着目した2次元 FEM 解析による波動伝播特性の検討
[研究実施内容]
昨年度実施した、東海∼大洗地域における 2 次元 FEM 解析による波動伝播特性の解析的検討(水平
方向)に引き続き、同手法による解析的検討(上下方向)を行い、地点毎の地盤条件による上下方向
のやや長周期地震動の違いについて検討を行った。
検討対象とする地震観測記録は、昨年度同様、長周期成分を多く含んでいる「2003 年宮城県沖の地
」時の地震観測記録とした(表1参照)
。観測地点はサイクル機構で所掌する
震(2003 年 5 月 26 日)
免震構造物である東海再 UC(TKI)、大洗の情報センター(OAI)、ひたちなかの原子力緊急時支援・
研修センター(HTN)の観測サイト3地点と、公開データである K-net IBR007(HKN)、KiK-net
IBRH18(HKK)、港湾地域強震記録 常陸那珂−U(NMP)の3地点を合わせ、全 6 地点を対象とし
た(図1参照)
。ここでは、やや長周期地震動として主に周期 1 秒以上を検討対象として地点毎の地震
動特性の検討を行った。検討結果について以下に示す。
(ⅰ)地震観測記録より、上下動においても水平動と同様に HKK、HKN に比べて TKI、NMP、OAI の方が
地震動レベルが大きいことが分かった。また、TKI、NMP については、水平方向では 1∼5 秒の周期成
分で増幅するのに対し、上下方向では 1∼2 秒で増幅する事が分かった(図2及び図3参照)。
(ⅱ)図4、表2に示す2次元地盤モデルを用いて地震観測記録のシミュレーション解析を行った結
果、上記に示した地点毎の地震動特性の傾向を解析的に説明できた(図5、図6参照)。また、その2
次元地盤モデルを用いてリッカ−波(図7参照)によるシミュレーション解析を行い、地盤の不整形
性(凸状の地盤形状)により、SV 波、P 波ともに後続部に表面波が励起される事が分かった。特に TKI、
NMP 等の堆積層の厚い地点における表面波による上下動の増幅特性への影響は、SV 波の方が大きい
ことが分かった。(図8)
。
[成果]
−208−
JNC TN1400 2005-018
上記検討結果より、不整形地盤上の堆積層が厚いサイト等、表面波の影響を評価する必要がある場
合には、2次元モデルによる詳細な検討を行うことが推奨される。
②震源断層モデルによるやや長周期地震動の評価
[研究実施内容]
震源断層から発生し建設サイトに伝播するやや長周期地震動について、震源断層モデルを設定し、
薄層法を用いて解析的に評価し、地盤増幅特性の検討や既往の設計用スペクトルとの比較を行った。
検討対象とする地震は、対象地点における影響が大きい限界地震 S2 レベルの地震として、「地震地
体構造による地震」と「直下地震」の2地震とし、修正入倉レシピ※1)に従い、震源断層モデルを設
定した。検討に用いた各地点における各地層の層厚を表3に、検討対象とする地震のパラメータを表
4に、断層面の位置を図9、図10に示す。検討結果について以下に示す。
(ⅰ)
「地震地体構造による地震」では TKI の基盤における地震動の卓越周期は5秒以上の長周期領域
に現れ、地表では3∼4秒を中心とする周期帯で増幅していることが分かった(図11参照)。「直下
地震」
では TKI の基盤における地震動の卓越周期は 1 秒程度となっており、
「地震地体構造による地震」
に比べ短いことを確認した(図12参照)。
(ⅱ)
「地震地体構造による地震」、「直下地震」による地震動の応答スペクトルは耐専スペクトルの長
周期領域と概ね同等か、やや上回るレベルとなっており、告示波や免震構造設計用スペクトル(再 UC
で適用)を下回る結果となった(図13参照)。
[成果]
上記検討結果より、対象地点において影響が大きい想定地震の地震動特性を詳細な震源断層モデル
を用いて把握することができた。また、今回設定した震源断層モデルによる評価結果に対して、既往
の免震構造設計用スペクトルはほぼ包絡しており、その策定手法の妥当性が確認された。
今後、当該地点におけるやや長周期地震動をさらに精度良く評価するためには、震源断層モデルの
パラメータに揺らぎを考慮した詳細な検討や、3次元地盤構造を考慮したより詳細な検討等を行う必
要がある。
※1)修正入倉レシピ
入倉の提案による震源特性化手法,いわゆる『入倉レシピ』を修正したもの。アスペリティと背景領域の応力降下
量の設定方法や巨大地震の断層面積と地震モーメントの経験式などが更新された震源特性化手法である。地震調査研
究推進本部による強震動評価など最近の地震動予測において用いられている。
(参考文献)
・壇一男・佐藤俊明・入倉孝次郎,2002,アスペリティモデルに基づく強震動予測のための震源モデルの特性化
手法,第 11 回日本地震工学シンポジウム,555-560
・入倉孝次郎・三宅弘恵,2000,強震動予測のための断層震源の特性化の手続き,文部省科学研究費特定領域研
究(A)計画研究 A1「活断層の危険度評価と強震動予測」
,第 7 章付録,128-145
・入倉孝次郎・三宅弘恵,2002,予測のための震源のモデル化,月刊地球/号外,37,62-77
ロ.供用期間中における免震システムの信頼性評価手法の高度化
[研究実施内容]
免震建家である東海再 UC 建家では、地震観測システム(平成15年1月より運用)を設置し、地
震観測記録(加速度データ)及び静的観測記録(変位データ)の収集を行っている(図14、図15
参照)。ここでは、現在まで得られたデータを整理し免震システムの信頼性評価手法の検討を行った。
検討結果について以下に示す。
(ⅰ)静的変位データを整理した結果、積層ゴムの鉛直変位量(歪み量)は季節により変動しており
(図16参照)
、鉛直変位の変化量yと温度xの相関関係として、近似式y=0.09x−1.54 が得られた
(図17参照)。(※これらは図中に示す、他社のある免震建家(管理棟と呼ぶ)での観測データと同
様の傾向を示している。
)
ⅱ)現在まで得られた地震時の加速度データ 16 波(表5、図18参照)を用いて、再 UC 建家のシミ
ュレーション解析(解析モデル図19参照)を行った。観測データ及び解析結果(図20参照)より、
上下方向の建家応答加速度(1階)yと入力加速度(基礎版)xの相関関係はy=1.16xと直線で近
似でき、水平方向に比べて、上下方向の加速度応答値のばらつきは比較的小さいといえる。(なお、上
下方向の1階の加速度応答スペクトル(図21参照)については、比較的良好にシミュレートできる
地震動(2005 年 5 月 12 日の地震)とそうではない地震動があり、地震動特性に起因すると考えられ、
今後観測データを蓄積し、検討を行っていく。)
−209−
JNC TN1400 2005-018
[成果]
上記検討結果より、加速度応答より免震建家の信頼性評価を行う上では、水平方向よりも上下方向
の応答結果を用いる方が、バラツキが小さく有効と考えられる。今後、管理上の目標値(例えば、加
速度応答が近似式の±1.5σの範囲内)を定めれば、信頼性評価を行う上での一つの指標となりうると
考えられ、今後、さらなるデータの蓄積及び検討を継続する。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ.免震構造設計用入力地震動策定手法の高度化
「2003 年宮城県沖の地震」時に当該サイトで観測された地震記録(上下方向)の分析を行うととも
に、2 次元有限要素法を用いて解析的検討を行い、地点毎の地盤条件によるやや長周期地震動の違い
を調べた。また、震源断層モデルを設定し、薄層法を用いて解析的に評価し、地盤増幅特性の検討や
既往の設計用スペクトルとの比較を行い、免震設計用入力地震動策定時のやや長周期地震動の評価へ
反映する資料を得た。
ロ.供用期間中における免震システムの信頼性評価手法の高度化
免震建家である再 UC 建家の地震観測システムから得られた静的観測記録(変位データ)の整理及び
地震観測記録(加速度データ)のシミュレーション解析を行い、今後の免震システムの信頼性評価手
法の検討を行うための資料を得た。
(今後の予定)
イ.免震構造設計用入力地震動策定手法の高度化
平成17年度は、平成16年度までの研究成果を総合的に評価し、研究のまとめを行う。ここで得
られた成果は、並行して引き続き17年度下期以降に行う予定である、さらなる免震構造設計用入力
地震動策定手法の高度化検討に引継ぎ活用して行く。また、平成17年度下期以降に進展すると想定
される、発電用原子炉施設の耐震指針改訂に伴う新しい地震動評価手法や、強震動に関する最新の知
見の反映を踏まえて、今後の高度化検討を継続する。
ロ.供用期間中における免震システムの信頼性評価手法の高度化
平成17年度は、平成16年度までの研究成果を総合的に評価し、核燃料施設における免震システ
ムの長期にわたる信頼性評価手法(案)をまとめる。ここで得られた成果を踏まえ、平成17年度下
期以降に実施する予定である次期研究計画では、再 UC の長期データを用い、その適用性の検証を進
め、さらなる高度化検討を継続する。
【成果の利用実績及び活用見通し】
核燃料施設への免震構造採用に関する安全評価の検討に資する。また、設計技術基準に反映させる。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
(発表)
・瓜生満、他:茨城県沿岸部の地盤構造に起因するやや長周期地震動特性 その1∼その2、日本建築学
会大会学術講演梗概集、p.595∼598、2004 年
・瓜生満、他:免震構造物の維持管理手法の検討 その1∼その2、日本建築学会大会学術講演梗概集、
p.335∼338、2004 年
(発表予定)
・瓜生満、他:免震構造物の維持管理手法の検討 その3∼その4、日本建築学会大会学術講演梗概集、
2005 年
【最近の国内外の研究動向(平成16年度)
】
[民間の研究の現状と動向]
現在、免震設計は、一般建築の分野では一つの構造形式として定着しているが、我国では原子炉建家
等重要度の高い施設への適用実績はない。我国における発電用原子炉施設への免震設計の適用研究は、
電共研及び電中研の研究等において調査検討がなされている。電中研では旧経済産業省からの委託を受
け、「FBR 免震システム確証試験」を実施し、その成果を整理し、
「高速増殖炉免震設計技術指針(案)
」
−210−
JNC TN1400 2005-018
としてまとめられている。また、日本電気協会では協会内耐震設計分科会の免震検討会の検討結果をも
とに原子力発電所免震構造設計技術指針(JEAG4614)としてまとめられている。
(参考文献)
(1) 財団法人電力中央研究所 「高速増殖炉免震設計法に関する研究」総合報告:U34(1998)
(2) 社団法人日本電気協会 原子力専門部会「原子力発電所免震構造設計技術指針(JEAG4614)」
(2000)
[海外の研究の現状と動向]
未調査。
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
■ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
)
【自由評価欄】
−211−
JNC TN1400 2005-018
表1.検討対象地震の地震諸元
名称
表4.地盤物性
TKI
宮城県沖の地震
2003 年 5 月 26 日
18 時 24 分
7.0
北緯 38゜48.3'
東経 141゜40.9'
71km
日時*
気象庁 M*
震央*
震源深さ*
震央距離
東海
大洗
ひたちなか
280km
299km
287km
震源距離
東海
大洗
ひたちなか
288km
307km
295km
NMP
HTN
HKK
HKN
OAI
10km
T 方向、N282゜E
R 方向、N192゜E
図1.観測地点の位置
TKI
①
NMP
26km
HTN HKK HKN
②
③
⑤
④
GL-1.12km
⑥
⑦ GL-1.63km
表2.地盤物性
OAI
GL-1.51km
地層 No.
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
VS(km/s)
0.5
0.8
1.1
1.7
2.1
2.5
3.0
VP(km/s)
1.5
2.1
2.6
3.4
4.2
4.8
5.5
(t/m3)
1.8
1.9
2.0
2.2
2.4
2.5
2.6
Q
33
53
73
113
140
167
200
図4.2 次元地盤モデル(深さは倍のスケールで表示)
(コントロール波)
図2.観測による上下方向の速度波形(周期 1∼10 秒)
−212−
図5.シミュレーション解析による上下方向の速度波形
JNC TN1400 2005-018
1∼5 秒
1∼2 秒
NMP
pSv(cm/s)
pSv(cm/s)
TKI
OAI
HKN
HKK
HTN
s
s
(b)上下方向
(a)水平 R 方向
図3.各観測点の応答スペクトル(h=5%)
堆積層が厚い地点
堆積層が薄い地点
解析
pSv(cm/s)
pSv(cm/s)
解析
観測
観測
s
s
(a) NMP
(b) HKK
図6.上下方向の pSv の比較(h=5%)
F( )*fc
1.5
0.5
1
0.4
0.5
0.3
0
0.2
-0.5
0.1
0
-1
-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2
(t-tm)/tc
0
1
2
3
4
(b)フーリエスペクトル
(a) 時刻歴波形
図7.リッカー波の時刻歴波形とフーリエスペクトル
TKI
HTN
堆積層の厚い領域
後続波の励起。
影響大
OAI
s.
(a) SV 波入射時
s.
(b) P 波入射時
図8.リッカー波(2 秒)入射時の上下方向応答波形
−213−
f/fc
JNC TN1400 2005-018
表3.本検討に用いた各地点における各地層の層厚(上面位置の深さ)
S 波速度
No.
TKI(m)
HTN(m)
OAI(m)
VS(m/s)
305
87
170
500
地層-1
(GL0m)
(GL0m)
(GL0m)
179
54
132
800
地層-2
(GL-305m)
(GL-87m)
(GL-170m)
416
128
308
1100
地層-3
(GL-484m)
(GL-141m)
(GL-302m)
225
262
277
1700
地層-4
(GL-900m)
(GL-269m)
(GL-610m)
252
295
312
2100
地層-5
(GL-1125m)
(GL-531m)
(GL-887m)
253
294
311
2500
地層-6
(GL-1377m)
(GL-826m)
(GL-1199m)
1770
2280
1890
3000
地震基盤
(GL-1630m)
(GL-1120m)
(GL-1510m)
2100
2100
2100
−
3300
(GL-3400m)
(GL-3400m)
(GL-3400m)
21900
21900
21900
コンラッド面
3740
(GL-5500m)
(GL-5500m)
(GL-5500m)
29900
29900
29900
モホ面
4180
(GL-27400m) (GL-27400m) (GL-27400m)
∞
∞
∞
太平洋 P
4570
(GL-57300m) (GL-57300m) (GL-57300m)
表4.検討対象とする地震の基本パラメータ
地震地体
直下地震
構造
7.75
6.5
マグニチュード MJ
震央位置(緯度、経度)
36.5、
36.5、141.0
160.61
(断層面中心部)
35
7
震源深さ D(km)
200
240
走向角 (゜)N-E
10
60
傾斜角 (゜)
90
270
すべり角 (゜)
北
走向角
傾斜角δ
走向方向
すべり角
下盤
地表面
34.4km
10゜
深い
50km
25.6km
浅い
地表面
11km
60゜ 3km
破壊開始点
9km
免震 3 地点
東海
ひたちなか
上版の動き
110km
免震 3 地点
東海
大洗
ひたちなか
大洗
図9.地震地体構造による地震の破壊開始点とア
スペリティ位置
図10.直下地震の破壊開始点とアスペリティ位置
−214−
JNC TN1400 2005-018
図11.TKI 地点における地震地体構造による地震動の
図12.TKI 地点における直下地震による地震動の
擬似速度応答スペクトル(h=5%)
擬似速度応答スペクトル(h=5%)
NS
EW
免震構造設計用スペクトル
耐専スペクトル
告示波
震源を事前に特定できない地震
図13.地震動の擬似速度応答スペクトル(h=5%)と設計用スペクトルの比較
−215−
JNC TN1400 2005-018
D-1
D-4
D-8
D
C
C-6
B
B-3
A-1
1
A-4
2
Y(N)
3
4
5
6
水平変位(東西方向)
水平変位(南北方向)
X(E)
A
A-8
7
8
鉛直変位
温度計
図15.免震層小変位計設置位置
図14.地震計設置位置
1.5
8.E-03
初期値に対する積層ゴムの歪み量
6.E-03
再UC
高さの変化量(mm)
4.E-03
歪み
2.E-03
0.E+00
再UC(平均値)
-4.E-03
y = 0.09 x - 1.54
再UC(近似式)
-0.5
再UC
-2.E-03
0.5
管理棟(近似式)
管理棟
-1.5
管理棟(平均値)
-6.E-03
4月
-8.E-03
0
7月
10 月
1月
5月
100
200
300
400
積層ゴムの高さの変化量と気温の関係
-2.5
500
5
10
15
25
30
図17.積層ゴムの高さの変化量と気温の関係
図16.再 UC と管理棟の積層ゴムの歪み量
表5.地震の諸元
38
①
2003年1月9日
47
2
4.7
茨城県沖
基礎版鉛
直最大加
速度(gal)
11.4
②
2003年1月21日
47
2
5.1
茨城県沖
17.2
③
2003年2月14日
55
2
4.2
鹿島灘
4.5
④
2003年2月16日
63
2
5.2
福島県沖
4.7
⑤
2003年4月21日
53
2
4.4
茨城県沖
7.6
⑥
2003年5月12日
47
2
5.3
茨城県南部
3.7
⑦
2003年5月26日
72
3
7.1
宮城県沖
9.9
⑧
2003年8月4日
58
4
4.9
茨城県北部
21.6
⑨
2003年9月26日
42
2
8
釧路沖
2.3
⑩
2003年10月15日
74
2
5.1 千葉県北西部
2.3
⑪
2003年11月12日 398
2
6.5
東海道沖
6.3
⑫
2003年11月15日
48
3
5.8
茨城県沖
18.1
⑬
2004年1月23日
66
2
5.3
福島県沖
4.7
⑭
2004年3月11日
48
2
5.3
茨城県沖
9.8
深さ
震度 Mj
(km)
震源地
⑮
2004年4月4日
49
3
5.8
茨城県沖
22.2
⑯
2004年5月29日
38
2
5.9
福島県沖
1.8
震源分布図
Aグループ
5月29日
2月16日
1月23日
再UC建家
37
4月21日
緯度
発生日
20
気温(℃)
日数(日)
2月14日
8月4日
36
1月9日
1月21日
11月15日
3月11日
4月4日
Bグループ
5月12日
10月15日
Cグループ
35
139
140
141
経度
142
143
図18.再 UC 建家と震源地の位置
RF
階高 695cm
5F
階高 470cm
P(kN)
Kvc
=999114kN/cm
4F
階高 470cm
3F
階高 470cm
2F
階高 540cm
免震部
重量 31958kN
kv=1802342 kN/cm
重量 33468kN
kv=2919246 kN/cm
重量 26555kN
kv=2896692 kN/cm
重量 30389kN
kv=2898653 kN/cm
重量 25162kN
kv=2949644 kN/cm
重量 52854kN
δv(cm)
積層ゴム圧縮剛性 Kvc
図19.解析モデル(上下方向)
−216−
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
100
90
観測+解析
線形 (観測+解析)
観測+解析
80
70
60
応答加速度(gal)
応答加速度(gal)
JNC TN1400 2005-018
線形 (観測+解析)
50
40
30
20
10
0
0
50
100
150
0
20
入力加速度(基礎版)(gal)
40
60
入力加速度(基礎版)(gal)
(b)上下方向
(a)水平方向
図20.観測及び解析結果の推定曲線と分散
60
50
40
30
20
10
0.1
周期(sec)
1
(a)基礎版の観測波
30
20
10
0.1
周期(sec)
1
150
100
50
周期(sec)
1
2003.11.15 解析(1F)
150
100
50
0.1
周期(sec)
1
20
10
0
(a)基礎版の観測波
周期(sec)
1
10
2003.11.15 観測(RF)
2003.11.15 解析(RF)
100
50
0.01
0.1
周期(sec)
1
10
40
10
2003.5.12 観測(1F)
加速度応答スペクトル(gal)
加速度応答スペクトル(gal)
30
周期(sec)
0.1
150
10
40
1
10
(b)1 階の観測波と解析波
(c)R 階の観測波と解析波
⑫2003 年 11 月 15 日(B グループ)の地震による加速度応答スペクトル比較
2003.5.12 観測(BF)
0.1
20
0
0.01
10
40
0.01
30
200
2003.11.15 観測(1F)
0
0.1
40
0
0.01
10
200
加速度応答スペクトル(gal)
加速度応答スペクトル(gal)
40
2004.1.23 観測(RF)
2004.1.23 解析(RF)
50
(b)1 階の観測波と解析波
(c)R 階の観測波と解析波
⑬2004 年 1 月 23 日(A グループ)の地震による加速度応答スペクトル比較
2003.11.15 観測(BF)
(a)基礎版の観測波
加速度応答スペクトル(gal)
2004.1.23 解析(1F)
0
0.01
10
200
0
0.01
50
加速度応答スペクトル(gal)
0
0.01
60
2004.1.23 観測(1F)
加速度応答スペクトル(gal)
2004.1.23 観測(BF)
加速度応答スペクトル(gal)
加速度応答スペクトル(gal)
60
2003.5.12 解析(1F)
30
20
10
0
0.01
0.1
周期(sec)
1
10
2003.5.12 観測(RF)
2003.5.12 解析(RF)
30
20
10
0
0.01
0.1
周期(sec)
1
(b)1 階の観測波と解析波
(c)R 階の観測波と解析波
⑥2003 年 5 月 12 日(C グループ)の地震による加速度応答スペクトル比較
図21.加速度応答スペクトル
−217−
10
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【研究分野】
原子力施設等の確率論的安全評価等に関する研究
【分類番号】
◎2-1(施設 6-1-5)
【研究課題名 (Title)】
核燃料施設の信頼性評価手法に関する研究
(Development of Reliability Analysis Method for Nuclear Cycle Facilities)
【実施機関 (Organization)】
核燃料サイクル開発機構 (Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先 (Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]稲野 昌利(いなの まさとし)
[所属]東海事業所 再処理センター 技術部 技術開発課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松4-33、電話番号:029-282-1111
(Name) Masatoshi Inano
(Title of Function) Technology Development Section, Technology Co-ordination Division,
Tokai Reprocessing Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194, Japan
Tel: 029-282-1111
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]石田 倫彦(いしだ みちひこ)
[所属]東海事業所 再処理センター 技術部 技術開発課
(Name) Michihiko ISHIDA
(Title of Function) Technology Development Section, Technology Co-ordination Division,
Tokai Reprocessing Center, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度∼平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]システム分析手法開発研究(III)
(岡山大学)
【使用主要施設】
東海再処理センター
【研究概要】
[研究の経緯]
定量的安全目標の設定、リスク情報を参考とする規制の考え方の導入が検討される中で、確率論的安全
評価(以下、「PSA」という)の活用は今後一層促進される状況にある。
核燃料サイクル施設の PSA に関しては、評価のための基本となる手法については、HAZOP、FTA 等従来手
法の適用性が確認されているものの、これらを用いて実際の施設の評価を行うにあたっては、多大な労力
が必要となることが認識されている。このため、これらの手法を用いて評価を効率的かつ効果的に行うに
は、システム解析支援ツールの導入が不可欠であることから、再処理施設を対象とした解析システム開発
のための研究を行うものである。
−219−
JNC TN1400 2005-018
信頼性データについては、原子力施設に加えて一般産業施設等の設備の信頼性データについてはすでに
公開されたものが数多くあり、これらを用いた評価は可能となっているが、再処理施設の PSA の実施にお
いては、その評価精度の向上のためには、実プラントの運転実績に基づく信頼性データが不可欠であるこ
とから、東海再処理施設等実プラントにおける運転データに基づいた信頼性データの収集・整備を行うも
のである。
[研究目的]
核燃料施設の確率論的安全評価を合理的、効率的に実施するためのシステム開発、データベース整備を
行い、施設の運転安全性の向上、指針等の整備の際のデータ提供に資する。
[研究内容]
イ. システム分析手法の高度化
核燃料施設を対象としてハザード同定、システム解析を効率的に行える分析システムの整備を行い、
実プラントへの適用を通じて手法の高度化を図る。
ロ.信頼性データの収集・整備
国内外の文献データ並びに施設から収集・整備したデータ等を基に機器の故障率、人的過誤率等のデ
ータベースの拡充・整備を行う。
【当初の達成目標(平成16年度)】
イ.システム分析手法の高度化
システム解析支援ツールの構築と汎用化
ロ.信頼性データの収集・整備
信頼性データベースシステムの充実
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ. システム分析手法の高度化
HAZOP 解析システムは、HAZOP 手法に従い「ずれ」を想定しながら各種データベースを参照し、原因・影
響等を抽出するものであり、知識ベースと HAZOP 解析エンジンで構成される。HAZOP 解析エンジンは、知
識ベースの情報を基に機器、装置間で異常伝播を解析し、原因、影響、対策を解析結果として出力する。
一般的知識ベースは、様々なプラントに共通の知識を格納したものであり、
「構成要素、装置に関する知識
ベース」「化学物質、反応に関する知識ベース」「対策に関する知識ベース」の 3 種類の知識ベースで構成
される(図-1 参照)
。
昨年度までに、東海再処理施設の高放射性廃液濃縮工程を対象に、HAZOP 解析システムによる解析を実
施し、その実用性を検証してきた。本年度は、システムの拡張性をより高めるため、これまでとはタイプ
の異なる廃液貯蔵系についてシステムの適用性を検討した。
適用性検討を行うにあたり、プロセス機器・装置モデルの構築を容易にするため、従来の知識ベースに
改良を加えた。モデルの汎用性を向上させるため、知識ベースに格納する情報を図-2 のように基本形、装
置固有系に分類した。一般的知識ベースには装置モデルを様々なプロセスに利用可能とするため基本形を
格納し、固有知識ベースには、それぞれのプロセスにおける入出力などの条件を考慮した装置モデルを格
納する。これにより、ユーザーは一般的知識ベースの基本形を基に各装置の特徴を反映したモデルの構築
を効率的に行うことが可能となり、システムの汎用性が向上した。
改良後のシステムを用い、高放射性廃液貯槽を例にシステムの適用性検討を実施した。構築したプロセ
スモデルを図-3 に、同モデルを用いて解析した結果の一例を図-4 に示す。現状、高放射性廃液濃縮工程を
対象に構築された知識ベースを活用しているが、評価結果として基本的な事象は抽出されており、蒸発缶
とタイプの異なる高放射性廃液貯槽についてもシステムの汎用性を確認することができた。
−220−
JNC TN1400 2005-018
ロ. 信頼性データの収集・整備
前年度に引き続き、東海再処理施設の機器について保全履歴データを継続収集、運転データの調査・
収集を行い、東海再処理施設設備保全管理支援システム(TORMASS)への定常的な登録を実施した。
平成 17 年 3 月末における累計保全履歴登録件数は次の通りである。
・機械設備
162,379 件
・計装設備
81,057 件
・電気設備
14,669 件
平成 16 年度においては、昨年度に引き続き、これらの収集した機器・設備保全履歴から確率論的安全
評価に資する信頼性データを得るための解析支援システムの予備的検討を行った。
信頼性データ解析支援システムは、TORMASS に登録した保全履歴データと運転データを統合すること
により、確率論的安全評価に必要となる機器信頼性データを提供するためのシステムである。昨年度は、
TORMASS に登録してある保全履歴データから機器故障率を算出するための基本的な機能整備を実施した。
そこで本年度は、確率論的安全評価において、不確実さ解析を実施する際に必要な故障率の幅を算出
するため、以下の機能整備を実施した。
・ 故障件数が 0 件の場合の故障率の算出機能
・ χ2 推定法に基づく 5%信頼値、95%信頼値の算出機能
・ エラーファクターの算出機能
上記の各値の算出方法は、原子力安全研究協会「PSA 用故障率データに関する調査」(平成 9 年 3 月)
に拠った。また、東海再処理施設の運転データを参照した機器故障率を算出するため、キャンペーンデ
ータの登録機能も追加した。
整備したシステムを用い故障率の算出を実施した。一例を図-5 に示す。
【研究の達成状況(平成16年度)】
イ.システム分析手法開発
システムの分析手法開発については、高放射性廃液貯槽にシステムを適用し、HAZOP 解析支援システム
の汎用性を確認できた、したがって、所期の成果が得られた。
ロ.信頼性データの収集・整備
信頼性データの収集・整備に関しては、継続して保全履歴の登録を実施し、データベースの拡充に努
めたと共に、信頼性データ解析支援システムの機能強化を実施した。従って、所期の成果が得られた。
(今後の予定)
システム分析手法開発については、現在のシステムを核燃料施設の安全解析に活用するための機能拡
張を検討する。信頼性データの収集・整備については、保全情報データベースの継続的な拡充を実施す
るとともに、それらを活用した信頼性データ解析支援システムの構築を行う。
【研究成果の発表状況】
特になし
【成果の利用実績及び活用見通し】
イ.システム分析手法開発
現在のシステムの知識ベースをより充実させ、汎用性を高めることにより、再処理施設の安全評価等
に活用できる。
ロ.信頼性データの収集・整備
東海再処理施設の確率論的安全評価実施において、保全履歴情報に基づき機器故障率等の設定を行っ
た。現在開発中の信頼性データ解析支援システムを用いることで、保全情報に基づく信頼性データベー
スを簡便に得られることから、東海再処理施設の機器故障率データベース構築に貢献できる。
【国内外の研究動向】
[民間の研究の現状と動向]
(参考文献)
[海外の研究の現状と動向]
−221−
JNC TN1400 2005-018
(参考文献)
【研究評価(自己評価)】
○ 成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他(
[説明欄]
○ 今後の成果の達成見込み
[チェック欄]
■ 目標どおりの成果が得られる見込み。
□ 目標どおりの成果が得られない見込み。
(その理由:
□ その他(
[説明欄]
○ 研究の進捗
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
【自由評価欄】
−222−
)
)
JNC TN1400 2005-018
ユーザ
知識、情報、解析結果
GUI
③「 ず れ 」 の 情 報 を 入 力
⑥
知識ベースの
(解 析 時 )
解析結果の出力
追加、修正
HAZOP 解 析 エ ン ジ ン
知識ベース
①
一般的知識ベース
④
構 成 要 素 、装 置 に 関 す る 知 識 ベ ー ス
原因系、影響系の
化 学 物 質 、反 応 に 関 す る 知 識 ベ ー ス
探索エンジン
対策に関する知識ベース
⑤
参照
②
固有知識ベース
対 象 プ ラ ン トの 構 造
対策の探索エンジン
・配管の接続情報
・扱う物質名
図-1
など
HAZOP解析システムの構成
知識ベース
装置モデル(基本形)
装置モデル(固有)
・機器の故障,伝播情報
・通過物質
・対策
・配管の接続情報
一般的知識ベース
固有知識ベース
図-2 知識ベースに格納されている情報
−223−
JNC TN1400 2005-018
図-3 構築したプロセスモデル
工程
プロセ
ス
ずれ
高放射性廃液貯蔵工程
1 次冷却系
流量なし
原因
配管の閉塞
オリフィスの閉塞
誤操作による手動弁の閉
ポンプのキャビテーション
ポンプの送液機能停止
誤操作によるポンプ(V3161)の停止
影響
廃液貯槽における冷却機能喪失
廃液貯槽内の温度上昇
配管の破損
廃液貯槽における冷却機能喪失,低下
廃液貯槽内の温度上昇
中間熱交換器の出口部の閉塞
ポンプのキャビテーション
ポンプの故障
廃液貯槽における冷却機能喪失
廃液貯槽内の温度上昇
図-4 解析結果例
−224−
JNC TN1400 2005-018
図-5 故障率算出例
−225−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
【研究分野】
原子力施設等の確率論的安全評価等に関する研究
◎2−2(施設 6−1−6)
【研究課題名 (Title)】
MOX加工施設の確率論的安全評価の適用研究(Study on the Application of PSA to MOX Fuel Fabrication
Plant)
【実施機関 (Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名,所属及び連絡先 (Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名] 岡 努(おか つとむ)
[所属] 東海事業所 放射線安全部
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松4-33,電話番号:029-282-1133
(Name)
Tsutomu OKA
(Title of Function)
Radiation Protection Division, Tokai Works
(Address, Tel. and Fax)
4-33, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194 Japan
Tel.81-29-282-1133
Fax.81-29-282-9619
(E-mail)
[email protected]
【担当研究者名,所属及び連絡先(Name, Title of function, Address and Phone)】
同上
【研究期間】
平成13年度∼平成17年度(うち平成16年度分)
[前期基本計画からの継続の有無]
□ 前期基本計画からの継続(
■
)
本基本計画から新規
【関連する共同研究,実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名 (実施機関)]なし
【使用主要施設】
なし(調査研究)
【研究概要】
[研究の経緯]
核燃料施設の安全評価においては,その施設の数が軽水型発電炉等原子炉施設に比較して少なく,ま
た,施設の設計思想,運転管理・保守方法等に関する国情等の差異により,確率論的安全評価手法の標準
化,データの蓄積・標準化・共有化を図ることが困難であり決定論的な評価が主体である。
しかし,体系的かつ定量的な確率論的安全評価を実施することにより,安全対策の妥当性に関する相
対的かつ客観的な比較検討,合理的な判断,施設の検査及び運転・保守管理計画の最適化,合理化に資
することが期待され,MOX施設へのPSA手法の適用性について検討することは有意義。
[研究目的]
MOX 加工施設を対象とした PSA 適用検討として,事故シーケンスの摘出及びその発生確率の定量化,
−227−
JNC TN1400 2005-018
異常事象推移解析等を行い,民間 MOX 加工施設の安全審査の判断材料の提供に資する。
[研究内容]
イ.MOX加工施設PSA実績調査
国内外の MOX 加工施設について,施設の安全評価,PSA の適用実績について調査を行い,異常事
象・事故シナリオの検討を行う。
ロ.事象シーケンスの摘出・定量化
モデルプラントの設定及びシステムモデルの作成を行い,事故シーケンスの摘出及びその発生確
率の定量化を行う。
ハ.異常事象推移解析及び放射性物質の移行評価
異常事象等の推移を解析・評価するための手法の開発・整備を行い,これらを用いてモデルプラ
ントにおける放射性物質の移行評価等を行う。
二.主要なリスク因子の分析・整理
事象発生確率,放射性物質放出リスクの結果等を用いて,主要なリスク因子について分析・整理
する。
【当初の達成目標(平成16年度)】
ロ.事象シーケンスの摘出・定量化
故障データの整備,事故事象の発生確率の定量的評価
ハ.異常事象推移解析及び放射性物質の移行評価
解析,評価手法の開発継続,試解析
二.主要なリスク因子の分析・整理
事象発生確率,放射性物質放出量の低減化に有効な機器,設備等の検討(洗い出し)
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ. MOX加工施設PSA実績調査
当初計画では当該項目の実施予定はなかったが,米国における化学プラントの半定量的なリスク解析手
法としてMOX施設の評価に参考になることから調査を実施し概要をまとめた。
1.簡易プロセスリスク評価手法「防護層解析:LOPA(Layer Of Protection Analysis)」概要
防護層解析(LOPA: layer of protection analysis)は、化学プロセスの半定量的リスク解析手法の一
つであり,核燃料施設と同様多重防護の機能評価,改善の検討に用いられる。
AIChE による、化学プラントの独立防護層(IPL: independent protection layer)の概念を図Ⅰ-1 に
示す。それぞれの防護層は、発災事象によって人、設備、環境に被害が及ぶのを防止する障壁となる。
しかし完璧な防護層はないので、各防護層は不作動確率(プロセスの異常時に作動要求があっても防護
層が機能しない確率)Pfd (Probability of failure on demand)値をもつ。防護層解析の目的は以下の
とおりである。
・ リスクを許容レベルまで低減するために必要な防護層の数を決定する
・ 安全計装機能(SIFs)に要求される安全度水準(safety integrity level(SIL))を決定する
安全度水準(SIL)
*
(2)高頻度作動要求/連続モード*2
(1)低頻度作動要求モード 1
作動要求時にその設計機能の
危険側故障率λs
遂行に失敗する平均確率 P
SIL
[l/Hr]
目標機能失敗尺度
SIL
目標機能失敗尺度
4
10 ≦P<10
-4
4
10-9≦λs<10-8
3
10-4≦P<10-3
3
10-8≦λs<10-7
-5
−228−
JNC TN1400 2005-018
2
10-3≦P<10-2
2
10-7≦λs<10-6
1
10-2≦P<10-1
1
10-6≦λs<10-5
*
1:低頻度作業要求モード:安全関連機能への作動要求が 1(1/年)より小さく、かつプルーフテ
スト頻度の 2 倍より小さい場合
*
2:高頻度作業要求/連続モード:安全関連機能への作動要求が 1(1/年)より大きい、またはプ
ルーフテスト頻度の 2 倍より大きい場合
防護層解析とインベントツリーの比較を図Ⅰ-2 に示す。矢印の巾は発生頻度を表し、防護層を通過
するにしたがって細くなる。防護層解析では、イベントツリーとは異なり最悪の事象進展のみを考え(太
線)、1つのシナリオ内では、単独の原因(起因事象)と単独の結果(最悪の発生事象)の組み合わせ
のみを考える。
2.防護層解析の手順
防護層解析は,以下に示す手順で行う。
手順1.発災事象を特定し、被害の大きさをランク付け
手順2.事故シナリオの特定
手順3.事故シナリオごとに起因事象をリストアップ
手順4.起因事象の発生頻度の推定
手順5.防護層のリストアップ
手順6.各防護層の Pfd 値の推定
手順7.シナリオごとに発災事象の発生頻度を計算
手順8.発生頻度(もしくはリスク)を許容基準と比較
手順9.許容基準を満足しない場合は、以下の何れかの対策を実施
防護層を追加する
安全計装機能(インターロック)の安全度水準を向上させる
プロセスを再設計する
FTA、QRA(定量的リスク解析)などの詳細な定量的解析を実施する
3.被害の大きさのランク付け
発災事象を特定し、被害の大きさをランク付けする。発災事象は、HAZOP(Hazard and Operability
Studies)のようなプロセスハザード解析や類似プロセスの事故事例解析によって特定できる。発災事象
には、工場内、周辺住民、地域社会での人的被害ばかりではなく、装置や環境への被害も含む。被害の
大きさは、通常、被災人数、被災面積の大きさ、操業停止期間、経済的損失などによってランク付けす
る。
評価法1:被害ランク(人的被害を評価しない)
:漏洩量やプラントの被害状況に応じてランク付け。
評価法2:定性的に人的被害を評価
評価法3:定性的に死亡を評価:定性的な被害想定と着火確率、人の生存確率、人の死亡確率を組み
合わせる。
評価法4:定量的に人的被害を評価:影響評価ソフトを用いて詳細な影響評価計算を実施する。
4.事故シナリオの特定
シナリオを構成する要因として、以下の項目がある。
・ 起因事象:一連の事象の原因となる初期事象
・ 発現の条件:それ自身は直接シナリオの要因とはならないが、シナリオの要因が発現するために必
−229−
JNC TN1400 2005-018
要な条件。
・ 中間事象、防護層
・ 発災事象:一連の事象が阻止されることなく連鎖,進展した場合の結果事象
表Ⅰ-1 に,HAZOP の情報と、防護層解析の各段階での必要な情報の関係を示す。
5.起因事象の発生頻度の推定
起因事象をリストアップし、その発生頻度(発生頻度の例を表Ⅰ-2 に示す)を推定する。
6.防護層のリストアップとそのPfd(不作動確率)の推定
防護層をリストアップし、各防護層の Pdf 値を推定する。防護層としては、以下が考えられる。
・ プロセス設計:スクリーニングの目的であれば、プロセス設計防護層の Pfd 値は 1×10-2 とおく。
この値は経験値であり、妥当な理由があれば大きくすべきである。Pfd 値は FTA によってより正確
に計算できるが、防護層解析においては安全側の概略値でかまわない。プロセス設計の Pfd 値を維
持するためには、運転中の欠陥検査が重要となる。
・ 通常運転の監視・制御(DCS):監視・制御系自体が起因事象となる場合は、監視・制御系を防護層
に加えてはいけない。しかし、監視・制御系が起因事象とは無関係な場合は、監視・制御系も防護
層となり得る。
・ 警報・運転員の処置:警報に対する運転員の処置も有効な防護層である。この警報は監視・制御系
やインターロックとは独立でなければならない。警報を明確に識別できるよう工夫し、警報発令時
の処置を明確にしておく必要がある。
・ インターロック・緊急遮断装置(プログラマブルロジック制御、リレーなど):インターロックは
監視・制御系と独立している必要がある。ISA(Instrument Society of America)が規定する設計、
検査、監査にしたがっていること。
・ 被害の軽減化:被害の軽減化としては、防液堤、圧力放散装置、消化設備、爆発制御装置、フレー
ムアレスター、操作禁止措置などがある。防護層は発災事象の発生を防止するのに対し、被害の軽
減化は、発災事象の被害の大きさを軽減できる。
防護層は全て安全対策であるが、安全対策は Pfd に影響するものもあるが,その有効性について影響
因子が非常に多いものがあり必ずしも防護層とはなりえない。
7.発災事象の発生頻度の評価
7.1 通常の方法
fi
c
J
fi
Pfdii
j 1
ここで、fiC:起因事象iによる被害Cの発生頻度
fi:起因事象iの発生頻度
Pfdij:起因事象iによる被害Cから防護するための、j 番目の防護層の Pfd
J : 防護層の数
7.2 必要な防護層数を計算する方法
防護層のランクは、Pfd=0.01 をランク 1 と置く(規格化)。
7.3 対数指標(正の整数)を計算する方法
起因事象の発生頻度、および防護層の Pfd の対数をとり、絶対値の整数で表現する(対数計算値の絶
対値の少数以下を四捨五入する)する方法で、扱える最大頻度は 1[/y]となる(このとき対数値は 0)。
−230−
JNC TN1400 2005-018
例えば、Pfd=4×10-2 であれば,log(4×10-2)=−1.4 → 1 となり,頻度が低いほど指標の値は大き
くなる。
8.許容基準との比較
8.1 数値基準と比較する方法
企業独自に、個人死亡の許容発生頻度、被害金額などの許容値を決定する方法であり、許容個人リス
クの例を表Ⅰ-3 に示す。
8.2 リスクマトリクス法
本法は防護層解析で最も広く使用されるが、基本的には企業が独自に決めるべきとしている。表Ⅰ-4
にリスクマトリクスの例を示す。
8.3 必要な防護層数の計算法
あらかじめ想定した被害ランクに応じて、必要な防護層数を決定した例を表Ⅰ-5 に示す。
ロ.事象シーケンスの摘出・定量化
ハ.異常事象推移解析及び放射性物質の移行評価
二.主要なリスク因子の分析・整理
上記3項目について,最新の MOX 加工施設として米国サバンナリバーサイトに建設計画中の MOX 施設
(MFFF)の安全評価例を示す。
1.評価の概要
MFFF の総合的安全解析(ISA:Integrated safety Analysis)は(1)設計基準の安全評価、
(2)ISA
の後期フェイズ、の二つの部分から構成されているが、現段階は予備設計のフェイズであるため、ここ
では(1)設計基準の安全評価における評価手法の概要について整理する。
2.ハザード解析の手法
ハザード解析の目的は、MFFF に関するハザードを特定し、評価することであり,ハザード解析は ISA
の指針に示された方法に従って実施している。
2.1 ハザードの特定
① 内部ハザードの特定
予備的ハザード解析(PHA:Preliminary Hazard Analysis)では、ハザードの特定にチェック
リスト解析(CL)を使用している。まず MFFF 施設を作業区画及びプロセス設備に細分化する。次
に、施設内位置や火災エリアごとに存在する放射性物質や有害化学物質等のハザードをリストア
ップする。この結果、表Ⅱ-1 に例を示すようなハザードと作業区画から構成されるハザード特定
表が得られる。
② 自然現象ハザードの特定
自然現象ハザード(NPH)のスクリーニングでは、発生頻度が 10-6/年より小さい事象は「起こ
りえない(incredible)」としてスクリーンアウトしている。また、決定論的手法により、サイト
に対して物理的に適用されないと評価された事象もスクリーンアウトしている。スクリーニング
の結果残った NPH は以下のとおりである。
・強風,・地震(液状化を含む),
・トルネード(トルネードミサイルを含む)
,・外部火災
・降雨、降雪、結氷,
・落雷,・異常気温
③ 外部人為ハザードの特定
外部人為ハザード(EMMH)は、近隣の公営、私営、国営の工業、化学、核及び軍事施設及び運
−231−
JNC TN1400 2005-018
送媒体の運転により引き起こされるハザードである。スクリーニングの結果得られた主要な EMMH
は以下のとおりである。
・放射性物質の放出
・有害化学物質の放出
・施設の主要な構造物・系統及び機器に直接損傷を与える爆発
・所外電源喪失に至る事象
・施設に伝播する火災(及び/あるいは煙)に至る事象
スクリーニング基準としては、次のものを適用している。
・ NUREG/CR-4836:Approaches to Uncertainty in Probabilistic Risk Assessment(January 1988)
・ Reg. Guide 1.91:Evaluations of Explosion Postulated To Occur on Transportation Routes
Nuclear power Plants(Rev.1 February 1978)
・ Reg. Guide 1.78:Assumptions for Evaluating the Habitality of a Nuclear power Plants Control
Room During a Postulation Hazardous Chemical Release(June 1974)
・ NUREG-800:Standard Review Plan for the Review of Safety Analysis Reports for Nuclear Power
Plants(June1987)
2.2 ハザードの評価
ハザード評価では、上記で特定したハザードを想定される原因と関連付けることにより事象シナリオ
を作成する。シナリオの作成においては、事象発生に至る一般的な事象や系統故障を想定する。初期段
階の評価では、工学的制御や管理的制御に対するクレジットは取らないものとし、各事象について次の
①∼⑥の項目を評価する。
① 事象タイプの分類
設備間で類似した事象の評価をまとめて行うために、各事象を次のような事象タイプに分類す
る。
・内部ハザード
放射性物質の閉じ込め機能喪失/拡散、火災、重量物落下、爆発、臨界、化学物質の放出
・自然現象
・外部人為事象
・放射線による直接的な被ばく
② 影響緩和を考慮しない場合の事象の記述
事象シナリオについて、ハザード源、影響を受ける設備の運転モード、固有のプロセス設備あ
るいは場所、原因、事象の主な影響等の情報を整理する。ここには、事象の防止や緩和に対する
設備やそのクレジットについての記述は含めない。
③ 想定される原因
特定されたハザードが想定される事象を引き起こすような単一の原因について整理し、所定の
場所において事象が発生する可能性を決定する。通常の原因には、設備の機械的あるいは電気的
故障、人的過誤、NPH あるいは EMMH などが含まれる。
④ 影響緩和を考慮しない場合の事象頻度の推定
安全評価段階では内部ハザードにより発生する事象の頻度は保守的にすべて「起こりにくくな
い(Not Unlikely)」とする。このため、内部事象は頻度ではスクリーンアウトされない。
⑤ 影響緩和を考慮しない場合の影響の推定
−232−
JNC TN1400 2005-018
公衆、サイト従業員、施設従業員及び環境に対する事象の影響を評価する。ここでは、放出物
質、放出割合、拡散因子などの評価に影響緩和を考慮しない保守的な推定を行う。影響度合のカ
テゴリーは NUREG-1718 に示されている 10CFR70.61 に基づく事故影響の苛酷度の分類に従って決
定される。影響評価手法については、「(4)放射性影響の評価手法」で説明する。
⑥ 影響緩和を考慮しない場合のリスク指数
発生頻度と影響度合の積としての事象のリスク指数を NUREG-1718 に示されている表に従って
割り当てる。
3.予備的な事故解析手法
予備的な事故解析の目的は、主要な構造物・系統及び機器(SSC)とその設計基準を特定することで
あり、解析は以下に示す手順に従って実施する。
①事象のスクリーニング
事象の影響が十分に小さく、さらなる評価を必要としないものをスクリーンアウトする。
②事象のグループ化
スクリーンアウトされなかった事象は、事象タイプ別に事象の防止・緩和に使用される対策の共通性
により事象グループに分類する。一つの事象タイプに属する事象をさらにグループ化することにより、
複数の事象に共通する安全対策の策定や主要な SSC の開発のための解析が簡略化できる。事象タイプ別
のグループ分類を表Ⅱ-2 に示す。
③安全対策の策定
事象のグループ化と並行して、グループごとの安全対策を策定する。安全対策は 10CFR70.61 の規制要
件を満たすための手段であり、事象の防止あるいは緩和機能として定義される。
④主要な構造物・系統及び機器(SSC)の選定
各事象グループに対する安全対策を実現するものとして、主要な SSC を特定する。主要な SSC は
10CFR70.61 の規制要件を満たすために最終設計に組み込むべき設計特徴あるいは管理的制御であり、規
制要件に適合するようにリスクレベルを低減するために用いられる。
⑤主要な SSC の設計基準
主要な SSC に対する設計基準は、安全機能及び 10CFR70.61 の規制要件を満たすために必要な設計に対
する限界値として選定された制御パラメータの固有の値及び値の範囲を特定するものである。
⑥主要な SSC のサポート系
安全対策で規定された主要な SSC が規制要件を満たすことを保証するうえで必要なサポート系を規定
する。
⑦影響緩和を考慮した境界事象の解析
・ 各事象グループについて、主要な SSC によって事象の影響が緩和された場合の影響評価を行い、規
制要件の性能基準を満足するために必要な緩和機能の有効性に対する要件を規定する。このために、
同一事象グループ内で最大の影響を及ぼす境界事象(bounding event)を選定し、これを代表事象
として影響緩和を考慮した影響評価を実施する。
4.放射線影響の評価手法
NUREG/CR-6410 のガイダンスに基づき、ハザード評価で特定した事象について、施設従業員、サイト従
業員、周辺公衆及び環境に対する放射線の影響の評価を行う。各評価対象の評価地点は次のとおりである。
・ 施設従業員:MFFF 内の潜在的な事故による放出点近傍の室内
・ サイト従業員:MFFF 建屋の排気筒から 100m離れた地点
−233−
JNC TN1400 2005-018
・ 周辺公衆: MFFF 建屋の排気筒から約 8km 離れた管理区域境界近傍
・ 環境:MFFF 建屋の排気筒から 52m離れた制限区域境界
放射性影響の定量的評価手法について、以下にまとめる。
4.1 影響緩和を考慮しない場合のサイト従業員及び周辺公衆に対する影響
① ソースターム
境界シナリオにより大気中に放出され、吸入されるハザード物質の量を表すソースタームは、
NUREG/CR-6410 に基づき次式で評価する。
[ST]=[MAR]×[DR]×[ARF]×[RF]×[LPF]
ここで、
ST:ソースターム
MAR:リスクに係わる物質
DR:損傷割合
ARF:大気放出割合
RF:吸入割合
LPF:漏洩経路因子
影響緩和を考慮しない場合には漏洩経路因子(LPF)は保守的に 1.0 と仮定する。
:大気放出割合(ARF)
及び吸入割合(RF)は物質の形態(粉末、溶液、燃料棒、フィルター等)、MFFF での物質のタイプ及
び放出メカニズムに基づき、NURG/CR-6410 と DOE-HDBK-3010 のデータから設定する。MFFF での物質に
ついて、ARF と RF の積が最大となるような ARF 及び RF の境界値を設定する。損傷割合(DR)は燃料
棒及びペレット以外のほとんどの物質では保守的に 1.0 を使用する。
各因子についてのとりまとめを表Ⅱ-3 に示す。
② 線量評価
全実効線量等量(TEDE)は吸入による被ばくのみを考慮し、浸漬や摂取等の経路については考慮し
ない。
サイト従業員及び周辺公衆に対する大気拡散因子χ/Q は MACCS2 及び ARCON96 を用いて計算される。
呼吸率(BR)は保守的に Reg.Guide1.25 の値である 20.8L/min(3.47×10-4m3/sec)を使用する。こ
れは、作業日の 8 時間当たりにつき 10m3 の吸入に相当する。吸入に対する線量変換係数は(DCF)は
Federal Guidance Report No.11 のデータを使用する。ハザード評価で特定された各事象について影
響緩和を考慮しない場合のサイト従業員及び周辺公衆に対する影響を評価した後、事象タイプごとに
グループ化して影響が最大となる境界事象を設定する。事象のグループ化において適用可能な防止・
緩和機能の比較を行い、グループの境界事象に対する安全対策を規定する。
4.2 施設従業員に対する影響
施設従業員に対する影響では、施設従業員は放出場所にいると仮定した保守的な定性的評価を
行う。予備的な解析ではプルトニウムとアメリシウムの大気放出を考慮し、主要な SSC を決定論
的に適用する。ウランの放出については、影響緩和を考慮しなくても影響は十分低いため主要な
SSC は適用されない。
4.3 環境影響
環境影響については、核種ごとの 24 時間平均の排出濃度[EC]X を評価する。
環境放出が性能基準を超える事象については、事象タイプごとにグループ化して境界事象を設
定する。事象のグループ化において適用可能な防止・緩和機能の比較を行い、グループの境界事
−234−
JNC TN1400 2005-018
象に対する安全対策を規定する。
4.4 影響緩和を考慮した場合の評価
影響緩和を考慮した場合の影響評価の方法は、影響緩和を考慮しない場合とほとんど同じであ
る。10CFR70.61 に適合するようにリスクを低減するために使用される緩和機能によりグループ化
を行い、グループを代表する境界事象に対して影響緩和を考慮した評価を行う。主要な SSC によ
る影響緩和を考慮するためには、漏洩経路因子(LPF)を適用する。LFP は閉じ込めによる沈着や
濾過等のメカニズムを通り抜けて移動するエアロゾル中の放射性核種の残存割合に関連している。
ひとつの事象には多くの漏洩経路が考えられるが、LPF はすべての経路における因子の積からな
る 1 つの数値で表すことが多い。影響緩和を考慮しない場合には LPF は 1.0 であり、多数の経路
での影響緩和を考慮した LPF を適用する場合とでは評価結果は大きく異なる。このようにして、
LPF により主要な SSC による事象の影響緩和に対するクレジットを表すことが出来る。たとえば、
換気系は事故後にも運転可能であり、放出に対するフィルタ機能を果たすので、最終の HEPA フィ
ルタを上流のフィルタと組み合わせると LPF は約 10-8 程度にまで下がる。ただし、安全評価では
保守的に 10-4 を使用している。LPF の値には NUREG/CR-6410 のデータが使用できる。
施設・サイト従業員、周辺公衆、環境に対する影響評価について、200 を超える個々のプロセ
ス単位での material-at-risk(MAR)が検討されているが、これを以下のように閉じ込め機能の喪
失、内部火災、重量物落下、臨界、爆発の5つの境界(代表)事象(Bounding Hazard Event)と
して影響評価している。
① 閉じ込め機能喪失
申請者はPu中間貯蔵ユニットでの火災を想定。NRCは,C2閉じ込め区域での3013内部缶破損を喪失
② 内部火災
申請者は上記と同様。NRCは廃棄物容器火災を想定
③ 重量物落下
申請者はジャー貯蔵・取扱。ユニットでのPu入りジャーの落下を想定。NRCは燃料集合体の落下を
想定
④ 臨界(設計により防止できる事象)
⑤ 爆発
申請者はプロセスセルでの爆発を想定。NRCは分析室での爆発に限定。
【研究の達成状況(平成16年度)】
イ.MOX 加工施設 PSA 実績調査
米国化学工学協会/化学プロセス安全センターが開発,構築した簡易な半定量的リスク解析手法の
手順についてとりまとめ,MOX 施設の多重防護の解析に適用できるものと判断される。
ロ.事象シーケンスの摘出・定量化
前年度に機器,設備故障データについて石油化学プラント機器の公開情報の調査を実施したが,
MOX 加工施設そのものに係るデータはなく,これを用いた事故事象の発生確率の定量的評価は実施
できなかった。
ハ.異常事象推移解析及び放射性物質の移行評価
施設情報の制約があり,モデルプラントを設定した試解析は実施できなかった。
二.主要なリスク因子の分析・整理
上記ロ及びハも含め,米国において建設計画中の最新の MOX 加工施設 MFFF の安全評価を参考に,事
−235−
JNC TN1400 2005-018
故シナリオ,スクリーニング,放射性物質の移行率,影響評価についてとりまとめ,MOX 施設の安全
解析に適用,参考となる手法,データを得た。
(今後の予定)
これまでの取り組みをとりまとめるとともに,2005年3月米国NRCよりMFFFの安全解析レビューの
最終版(NUREG-1821(Docket No.70-3098)「Final Safety Evaluation Report on the Construction
Authorization Request for the Mixed Oxide Fuel Fabrication Facility at the Savannah River Site,
(March 2005)
)が開示されたので,これによりこれまでの取り組みの確認を実施し,
South Carolina」
最終報告書に反映する。
【成果の利用実績及び活用見通し)】
MOX 燃料加工施設の安全解析・評価への参考,同施設の保守・保全,検査対応の合理化等に資する。
【研究成果の発表状況(平成16年度)】
なし
(発表予定)
なし
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
我が国においては,日本原燃(株)による,青森県六ケ所の再処理工場サイトへのMOX加工施設
の設置計画が進められており,平成17年4月19日に日本原燃(株)は青森県と六ヶ所村との間で,
MOX燃料加工工場の立地協力基本協定を締結し,翌4月20日に,経済産業省に事業許可申請を提出,
受理され,国の安全審査が開始された。
(参考文献)
(1) 原子力安全委員会 HP(原子力安全基準専門部会 MOX 加工施設指針検討分科会会議資料)
(2) 日本原燃 HP
(3) 菊池 武史「発生頻度(リスク)の簡易評価法「LOPA」」
,第 21 回(2004 年)
「リスクに関する技術
講習会(2),安全工学協会,2004 年 10 月 8 日
[海外の研究の現状と動向]
米国において核兵器余剰核燃料物質の適正管理のために,サバンナリバーに,MOX燃料加工施設
(MFFF: Mixed Oxide Fuel Fabrication Facility)の建設を計画中であり,これにかかわる規制当
局 の 規 制 改 定 ( 米 国 連 邦 規 制 10CFR
Part70 ) の 改 定 及 び 施 設 設 置 者 側 の 建 設 許 可 申 請 ( CAR:
Construction Authorization Request)の改訂版(2002年10月31日)及び,規制当局(NRC)による
安全解析書ドラフトの改訂版(2003年4月)が公開され,建設許可の審査が継続されていたが,2005
年(平成17年3月30日)NRCはこれを承認した。また,同じく3月には,上記安全解析書の最終版が公
開され,施設の概念設計情報及び今後の総合的な安全解析・評価の基礎となる設計基準事象等の事故
解析情報が示されている。
(参考文献)
(1) Mixed Oxide Xchange(NRC Quarterly News letter)
(2) Duke Cogema Stone & Webster, L.L.C.,Docket No. 70-3098, Mixed Oxide Fuel Fabrication
Facility Construction Authorization Request , Revision 1,October 31, 2002 (CAR)
(3) National Nuclear Security Administration, Report to Congress: Disposition of Surplus
Defense
Plutonium at Savannah River Site, February 15, 2002
(4) U.S. NRC, Draft Safety Evaluation Report on the Construction Authorization Request for
the Mixed Oxide Fuel Fabrication Facility at the Savannah River Site, South Carolina ,
Revision 1,April 2003 (DSER)
(5) M.D.Zentner,A Comparison of Reactor and Nonreactor Risk Assessment Approaches,DE93-006562
−236−
JNC TN1400 2005-018
(6) AIChE/CCPS,
Layer of Protection Analysis: Simplified Process Risk Assessmennt ,2001
【研究評価(自己評価)】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○今後の成果の達成見込み
[チェック欄]
□ 目標どおりの成果が得られる見込み。
■ 目標どおりの成果が得られない見込み。
(その理由:施設情報及び機器故障率等の信頼性データについて,公開情報が少なく,詳細な
検討を継続することが困難。)
□ その他(
)
[説明欄]
○研究の進捗状況
[チェック欄]
□ 計画どおり進捗した。
■ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:施設情報及び機器故障率等の信頼性データについて,公開情報が少なく,詳細な
検討を継続することが困難。)
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
【自由評価欄】
施設情報及び機器故障率等の信頼性データについて,公開情報が少なく,モデルプラントの設定,こ
れを対象にした事故シナリオの検討,事故発生確率等の定量的な評価の実施は未だ困難であるが,化学
プラントの安全解析手法及び機器故障データ,建設が許可された米国の MOX 施設(MFFF)の安全評価例
等,参考になる情報も得られ,特に MFFF は運転許可に向けてさらに詳細な評価が実施されることから,
引き続きこれを調査し,PSA 解析手法の適用性について検討を継続する。
−237−
JNC TN1400 2005-018
表Ⅰ-1 HAZOPの情報と防護層解析の関係
HAZOP の情報
防護層解析で使用する情報
ずれ
シナリオ
原因
起因事象
起因事象の発生頻度[/y]
結果
発災事象(1つ)
被害のランクまたは被害金額
防護層
Pfd
安全対策
防護層解析で使用するデータ
HAZOP で指定された以外の防護
Pfd
層
発現の条件
発現の条件の確率
許容値を満足するためのリスク削
許容基準
減対策
改善勧告
全てのシナリオのリスクを集計
表Ⅰ-2 起因事象の発生頻度
文献値
[/y]
防護層解析採用値
[/y]
圧力容器の残存欠陥による損傷
10-7∼10-5
1×10-6
配管の残存欠陥による全開(100m 当り)
10-6∼10-5
1×10-5
配管断面積の 10%から漏洩(100m 当り)
10-4∼10-3
1×10-3
大気圧貯槽の損傷
10-5∼10-3
1×10-3
ガスケット・パッキンからの漏洩
10-6∼10-2
1×10-2
蒸気タービン・ディーゼルエンジン・過速度によるケーシング破損
10-4∼10-3
1×10-4
部外者の介入(パワーショベル・自動車の衝突など)
10-4∼10-2
1×10-2
10-4∼10-3/リフト
1×10-4/リフト
落雷
10-4∼10-3
1×10-3
安全弁の誤作動
10-4∼10-2
1×10-2
10-2∼1
1×10-1
10-2∼10-1
1×10-1
10-2∼1
1×10-1
10-2∼1
IEC 61511:8.76×10-2
1×10-1
10-1∼1
1×10-1
小規模装置外火災(複数原因の合計)
10-2∼10-1
1×10-1
大規模装置外火災(複数原因の合計)
10-3∼10-2
1×10-2
操作禁止措置の無視(複数原因の合計)
10-4∼10-3/機会
1×10-3/機会
運転者のエラー(日常操作・十分な訓練・ストレスや疲
労なし)
10-3∼10-1/機会
1×10-2/機会
起因事象
クレーン吊り上げ物の落下
冷却水の停止
ポンプシールの故障
揚液・出荷用ホースの破損
コンピュータ制御ループの故障
計器用空気減圧弁の故障
−238−
JNC TN1400 2005-018
表Ⅰ-3 許容個人リスク(例)
1.米国の産業
労働者
一般大衆
10-3
10-5×10-3
10-4
10-5×10-4
10-5
10-5
2.米国の統計
労働者
一般大衆
交通事故
10-4
10-4
5×10-7
4×10-6
産業災害
1.9×10-5
NA
全ての事故(労働者・一般)
―バックグラウンド事故―
3.5×10-4
3.5×10-4
労働者
一般大衆
高リスク産業(鉱山・重工)
一般産業(化学・製造業・鉄道・
運送)
低リスク産業(設計・サービス)
航空機事故
3.主要国
英国/H&SE(既存)
許容最大
無視し得る
-3
-6
10
10
許容最大
無視し得る
-4
10-6
10
オランダ/VROM(既存)
NA
NA
10-5
NA
オランダ/VROM(新設)
NA
NA
10-6
NA
-5
NA
香港政府(新設)
NA
NA
10
米国カルフォルニア州サンタバーバラ(新設)
NA
NA
10-5
10-7
Shell 社(陸上設備・海上設備)
10-3
10-6
NA
NA
-3
-6
NA
NA
NA
10-4
NA
NA
-5
BP 社(陸上設備・海上設備)
ICI 社(陸上設備)
Rohm and Haas 社
4.防護層解析採用値*1
全てのシナリオ
10
10
3.3×10-5
-5
2.5×10
10-7
10
労働者
一般大衆
許容最大
無視し得る
許容最大
無視し得る
10-3
10-5
10-3
10-5
個別のシナリオ(最も一般的な値)
10-4
10-6
10-4
10-5
NA:データなし、もしくは適用外
*
1:複数死亡、100K US$を超える被害については定量的影響評価を実施すること
H&SE:英国健康安全局
VROM:オランダ住宅・国土計画・環境省
−239−
JNC TN1400 2005-018
表Ⅰ-4 リスクマトリクス(例)
被害ランク(表 1)
発生頻度[ly]
1
2
3
4
5
0.1< ≦1
C
C
B
A
A
10-2< ≦0.1
C
C
C
B
A
10-3< ≦10-2
D
C
C
B
B
10-4< ≦10-3
D
D
C
C
B
10-5< ≦10-4
D
D
D
C
C
10-6< ≦10-5
D
D
D
D
C
10-7< ≦10-6
D
D
D
D
D
A:企業として認識し、直ちに対策実施
B:企業として認識し、機会をみて対策実施
C:必要に応じ安全対策を調査。リスクは受容レベルだが、安価かつ容易な対策がないか検討必要
D:さらなる対策不要(企業にとって受容できるレベル)
表Ⅰ-5 必要防護層数(例)
起因事象の発生頻度
必要な防護層数*2
修正値[/y]*1
被害ランク 4(1 名死亡) 被害ランク 5(複数死亡)
≧0.01
1×10-3≦ <0.01
-4
1×10 ≦ <1×10
-3
1×10-6≦ <1×10-4
<1×10
*
*
-6
2
2.5
1.5
2
1
1.5
0.5
1
0
0.5
1:着火確率、人の存在確率、人の死亡確率を考慮した修正値
2:防護層数=1 が Pfd=0.01 に相当(0.5 は Pdf=0.1、1.5 は Pfd=1×10-3、2 は Pfd=1×10-4)
−240−
AP
MOX処理
受入
粉末調整
ペレット
製造
補助設備とユーティリティ
燃料棒加
工
燃料集合
体組立
廃棄物処
理
その他
閉じ込め設備
外部のサポー HVAC(動的 グローブボックス
ト施設
閉じ込め) (静的閉じ込め)
ハザード物質
−241−
腐食性薬品
有毒化学薬品
その他の酸化剤
アルカリ剤
硝酸
ヒドロキシルアミン硝酸塩
ヒドラジン
その他のハザード物質
電離放射線源
X
X
X
X
X
X
X
X
核分裂性物質
放射性物質
X線撮影装置
放射線源
その他の電離放射線源
爆発物
X
X
爆発性のガス
爆発性薬品
配合禁忌薬品(爆発性)
放射性物質/水素(放射線分解)
その他の爆発物
有炎燃焼物/可燃物
X
X
X
X
可燃性ガス
可燃性液体
プロパン
水素/アルゴン
メタン/アルゴン
酸素
溶剤
その他の可燃物
自燃性物質
有炎燃焼物/可燃物
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
JNC TN1400 2005-018
表Ⅱ-1 ハザード特定表(例)
AP
JNC TN1400 2005-018
表Ⅱ-2 事象タイプ別のグループ分類
閉じ込め機能喪失のグループ分類
事象の概要
過大温度
焼結炉等の高温のプロセス装置によるグローブボックスの過大温度によ
り、容器あるいはシールが溶融し一次閉じ込め機能が損傷する。
気送管のサンプルラインや実験室のグローブボックス等の一次閉
じ込めバリアの腐食。
グローブボックス閉じ込めバウンンダリの小破損
C2エリアでの燃料棒取扱中の破損
グローブボックス外でのコンテナ取扱中の破損
腐食
グローブボックスの小破損
燃料棒取扱操作
グローブボックス外のコンテナの取扱
操作による破断
グローブボックスの圧力過大/過小
気送管の加圧破損を含めた、施設内の全てのC4閉じ込め機能の破損
放射性物質の崩壊熱による温度過大
貯蔵エリアでの崩壊熱に対する冷却喪失による過大温度
グローブボックスの動的排気装置故障
C4閉じ込め機能の完全な喪失による、グローブボックスの負圧の喪失
焼結炉閉じ込めバウンダリ損傷
火災のグループ分類
グローブボックス外のC3エリア内の焼結炉からの漏洩
事象の概要
MOX加工工程C3グローブボックスエリア
C1/C2エリア-3013キャニスター
C1/C2エリア-燃料棒
C1/C2エリア-3013輸送キャスク
C1/C2エリア-MOX燃料輸送キャスク
C1/C2エリア-輸送コンテナ
C1/C2エリア-廃棄物コンテナ
C1/C2エリア-最終C4HEPAフィルタ
MOX燃料製造建屋外部
施設全域に係る系統
施設
重量物落下のグループ分類
MP区画内の火災エリアでの火災
3013キャニスターを含む火災
燃料棒あるいは燃料集合体を含む火災
3013輸送キャスクを含む火災
MOX燃料輸送キャスクを含む火災
C3エリア外部での輸送コンテナを含む火災
廃棄物コンテナを含む火災
最終C4HEPAフィルタを含む領域での火災
MOX燃料製造建屋外部で発生した火災
火災エリアを横断する系統を含む火災
1つ以上の火災エリアを含む火災
事象の概要
C3グローブボックスエリア
C1/C2エリア-3013キャニスター
C1/C2エリア-3013輸送キャスク
C1/C2エリア-燃料棒
C1/C2エリア-MOX燃料輸送キャスク
C1/C2エリア-廃棄物コンテナ
C1/C2エリア-輸送コンテナ
C1/C2エリア-最終C4HEPAフィルタ
C4閉じ込め機能
C3b/グローブボックスエリア内での重量物落下事象
C2エリア内での3013キャニスターを含む重量物落下事象
3013輸送キャスクを含む重量物落下事象
C2エリア内での燃料棒を含む重量物落下事象
MOX燃料輸送キャスクを含む重量物落下事象
C2エリア内での廃棄物コンテナを含む重量物落下事象
C2エリア内での輸送コンテナを含む重量物落下事象
最終C4HEPAフィルタを含む重量物落下事象
グローブボックス内での漏洩又は飛散
MOX燃料製造建屋外部
施設全域に係る系統
爆発のグループ分類
MP建屋外部で発生した重量物落下事象
MFFF内部及び外部の構造物に影響と損傷を与える重量物落下事象
事象の概要
水素爆発
焼結炉での水素爆発
蒸気爆発
焼結炉への水分流入による蒸気爆発
放射線分解による水素爆発
廃棄物区画での放射線分解により蓄積した水素の爆発
圧力容器の加圧による爆発
プロセス設備あるいはサポート設備での圧力容器/ガス容器の爆発
実験室での爆発
実験室での可燃物、爆発物、反応性薬品等の爆発
外部での爆発
サポート施設あるいは外部施設及び外部の輸送事故による爆発
−242−
JNC TN1400 2005-018
表Ⅱ-3
各因子の値
① DR については以下を除いて DR=1 としている
例外1:ペレットの加圧ガス流による破損:DR=0.01
ロッドの加圧による破損:DR=0.001
ロッドの落下による破損:DR=0.02
② ARF、RF 環境(大気)への漏洩割合
(元の表には溶液(solution)も含まれているが、ここでは省略した)
漏洩形態
爆発
爆発的な
火災
衝撃波
加圧
沸騰
ARF
1.0
5.0×10-3
RF
0.2
ARF
漏洩率
落下
エントレイメレト
6.0×10-3
2.0×10-3
4.0×10-5
0.3
0.1
0.3
1.0
0.01
5.0×10-3
5.0×10-4
1.0
RF
1.0
0.3
0.5
1.1×10-5
ARF
0.01
3.0×10-5
0.0
3.0×10-5
RF
1.0
1.0
1.0
1.0
フィルタ
ARF
2.0×10-6
0.01
1.0×10-4
1.0×10-2
(未梱包)
RF
粉末
ペレット
NA
ロッド
NA
NA
1.0
1.0
1.0
1.0
③ LPF について申請者は、HEPA1 段当たり LPF=0.01(1%のリーク率)
通常 2 段直列に設置されていることから上記の積として LPF=1×10-4 で評価。
これは NUREG/CR-6410「Nuclear Fuel Cycle Facility Accident Analysis Handbook」
(NRC,March1998)の Section F.2.1.3 に示されているプレフィルタ、スプリンクラ、デミス
タによって保護されたフィルタに対する 2×10-6 に対して充分に保守的な値である。
−243−
JNC TN1400 2005-018
図Ⅰ-1 化学プラントの独立防護層の概念
発 生 頻 度
IPL1
防護層 1
IPL2
防護層 2
IPL3
防護層 3
発生事象
起因事象
被害の大きさ
起因事象の発生頻
度
fI×Pfd1×Pfd2
I
f ×Pfd1
f [/y] 故障
成功
I
故障
故障
成功
成功
基準を超える事象(最
悪ケース)の発生頻度
fI×Pfd1×Pfd2×Pfd3
望ましくない事象(許容)
望ましくない事象(許容)
安全
図Ⅰ-2 防護層解析とイベントツリーの比較
−244−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【研究分野】
原子力施設等の確率論的安全評価に関する研究
【分類番号】
2−4(社内研究)
【研究課題名 (Title)】
東海再処理施設の確率論的安全評価の実施
( Probabilistic Safety Assessment on Tokai Reprocessing Plant )
【実施機関 (Organization)】
核燃料サイクル開発機構 (Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先 (Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]稲野 昌利(いなの まさとし)
[所属]東海事業所 再処理センター 技術部 技術開発課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33、電話番号:029-282-1111
(Name) Masatoshi Inano
(Title of function) Technology Development Section, Technology Co-ordination Division,
Tokai Reprocessing Center, Tokai Works
(Address and Phone) 4-33, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194 Japan
;+81-29-282-1111
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]石田 倫彦(いしだ みちひこ)
[所属]東海事業所 再処理センター 技術部 技術開発課
(Name) Michihiko ISHIDA
(Title of Function) Technology Development Section, Technology Co-ordination Division,
Tokai Reprocessing Center, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度∼平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)] なし
[実証試験名(実施機関)]
なし
[委託研究名(実施機関)] なし
【使用主要施設】
東海再処理センター
【研究概要】
[研究の経緯]
確率論的安全評価(以下「PSA」)を通して得られる各種リスク情報は、施設の安全性を客観的に評価
するだけでなく、合理的な運転管理や設備管理、さらには設備改造等に伴う施設の安全性向上にかかる
定量的な評価等への活用が期待される。
核燃料施設を対象とした PSA については、自主的な取り組みとして発電炉の評価手法や故障率データ
を活用した評価が行われているが、核燃料施設の特徴を踏まえた評価手法や故障率データの整備、さら
には評価結果の判断基準となる指針の整備等の課題も残されている。
このような状況を踏まえて、本評価においては東海再処理施設で過去に実施した設備改造等に伴う安
全性向上を PSA 手法を用いて定量的に把握し、その結果を設備改造等に伴う施設の安全性向上の定量的
−245−
JNC TN1400 2005-018
な評価等に活用する際の知見を得ることを目的に評価を実施した。
[研究目的]
本評価においては、東海再処理施設で過去に実施した設備改造等に伴う安全性向上を PSA 手法を用い
て定量的に把握し、その結果を設備改造等に伴う施設の安全性向上の定量的な評価等に活用する際の知
見を得ることを目的とした。
[研究内容]
イ. 設備改造等実施前後における事故発生頻度の評価
過去の安全評価結果を参考に、評価対象事故を選定し、それらの事故発生頻度と事故時の周辺公衆
の被ばく量から施設の健全性が維持されていることを示す。
ロ. 事故発生頻度に大きな影響を与える起因事象及び事故発生防止策の重要度評価
イ.の評価結果から、事故発生頻度に大きく寄与する機器等の同定を行う。
ハ. 設備改造等による施設の安全性向上に関する定量的な把握
イ及びロの評価結果を用い、設備改造等実施前後における事故発生頻度を比較し、改善効果を定量
的に把握する。
【当初の達成目標】
イ.設備改造等実施前後における事故発生頻度評価
評価対象の一例として、過去の安全評価結果を踏まえて設備改造等を実施した事故シナリオを選定し、
設備改造実施前後における発生頻度を算出する。
ロ.事故発生頻度に大きな影響を与える起因事象及び事故発生防止策の重要度評価
イの評価結果を用い、発電炉の PSA で一般的に用いられる Fussell-Vesely 指標及び Risk Achievement
Worth の両指標を用い、事故発生頻度に大きく寄与する機器等の同定を行う。
ハ.設備改造等による施設の安全性向上に関する定量的な把握
イ及びロの評価結果を用い、設備改造等実施前後における事故発生頻度を比較し、改善効果の定量的な
把握を行うとともに、リスク情報活用に関する知見を得る。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ.設備改造等実施前後における事故発生頻度評価
過去の安全評価結果を踏まえて設備改造等を行った事故シナリオのうち、焙焼還元炉における水素爆
発事故を評価対象事故に選定し、フォールトツリー手法を用いて設備改造実施前後における事故発生頻
度の算出を行った。本評価に係る焙焼還元工程の概要図を図-1 に示す。定量化には、東海再処理施設
の保全情報に基づき算出した機器故障率及び発電炉の PSA 用機器故障率データを用いた。ヒューマンエ
ラーの定量化においては THERP 手法を用いた。
この結果、設備改造実施前後における事故発生頻度は以下のようになった。
・ 設備改造実施前:4.9E-7(/y)
・ 設備改造実施後:5.3E-9(/y)
ロ.事故発生頻度に大きな影響を与える起因事象及び事故発生防止策の重要度評価
イ.の定量化結果を用い、起因事象及び事故発生防止策の重要度評価を実施した。設備改造実施前
後における事故発生防止策の重要度評価結果を図-2 に示す。FV 重要度については、水素濃度計の故
障が相対的に高い値を示しており、RAW 重要度については、既設の H2P+と追加設置した H2RA+O+が同様
の値となった。この結果より、追加設置した H2RA+O+が事故発生防止上同等に寄与していることが明
らかとなった。
ハ.設備改造等による施設の安全性向上に関する定量的な把握
① 事故発生頻度の比較による改善効果の確認
−246−
JNC TN1400 2005-018
設備改善実施前後の焙焼還元炉における水素爆発の発生頻度を比較した結果、焙焼還元炉における
水素爆発の発生頻度は従来の約 1/100 に低減されることがわかった。
② リスク情報活用に向けての考察
設備改造実施前後の事故発生頻度を比較することにより、発生頻度に対する改善効果を定量的に把
握することができた。また重要度評価結果の比較から、追加設置した計装設備の事故発生防止上の寄
与度を明らかにすることができた。
これらの結果は、過去に実施した設備改造等の改善効果の定量的な把握のみならず、例えば現状の
設備に対して設備改造する場合に、FV 重要度に着目した効果的な改善項目の提案や、事前に改善効
果を定量的に把握する際にできることを示すものであり、リスク情報の活用に資するものである。
【研究の達成状況(平成16年度)】
焙焼還元炉の水素爆発事故を対象に、設備改造実施前後における事故発生頻度を比較し、設備改造に伴
う改善効果を定量的に把握するとともに、重要度評価により事故発生防止上の特徴を把握することができ
た。以上のことから、所期の目標は達成できた。
(今後の予定)
焙焼還元炉の水素爆発事故とは特徴の異なる事故シナリオを対象に検討を行う。
【研究成果の発表状況】
M.Ishida, I.Nojiri, “PSA Application on the Tokai Reprocessing Plant”, PSAM7, June 14-18, 2004, Berlin, Germany
【成果の利用実績及び活用見通し】
東海再処理施設の定期的な評価にあわせた施設の特性に応じた確率論的安全評価にこれらの評価結果
が活用できる。
【国内外の研究動向】
[民間の研究の現状と動向]
(参考文献)
[海外の研究の現状と動向]
(参考文献)
【研究評価(自己評価)】
○ 成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他(
[説明欄]
○ 今後の成果の達成見込み
[チェック欄]
■ 目標どおりの成果が得られる見込み。
□ 目標どおりの成果が得られない見込み。
(その理由:
□ その他(
[説明欄]
−247−
)
)
JNC TN1400 2005-018
○ 研究の進捗
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
【自由評価欄】
−248−
JNC TN1400 2005-018
H2P+
窒素ガス
[凡例]
FIS
32.1
E
水素濃度計
:電磁弁
W142
FICS
41.1
P
E
W104
W101
NHガス
中間槽
P
水素ガス
:圧空作動弁
P
E
W103
W141
ガスミキサ
W102
水素濃度計
H2RA+O+
焙焼還元炉
破裂板
ガスケット
図-1
本評価にかかる焙焼還元工程概要図
1E+03
改善後
改善前
RAW重要度
警報回路の故障
(H2P+)
変換器の故障
(H2P+)
水素濃度計の故障
(H2P+)
1E+02
警報回路の故障
(H2RA+O+)
変換器の故障
(H2RA+O+)
水素濃度計の故障
(H2RA+O+)
圧空作動弁(W102)の故障
(H2RA+O+)
1E+01
1E-02
図-2
1E-01
FV重要度
事故発生防止策の重要度評価結果
−249−
1E+00
破裂板
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【研究分野】
原子力施設等の確率論的安全評価に関する研究
【分類番号】
2−5(社内研究)
(日本原子力研究所との融合研究)
【研究課題名 (Title)】
核燃料施設の地震 PSA に関する研究
( Study on Seismic PSA for Nuclear Fuel Facilities )
【実施機関 (Organization)】
核燃料サイクル開発機構 (Japan Nuclear Cycle Development Institute)
日本原子力研究所(Japan Atomic Energy Research Institute)
【研究者名、所属及び連絡先 (Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]稲野 昌利(いなの まさとし)
[所属]東海事業所 再処理センター 技術部 技術開発課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33、電話番号:029-282-1111
(Name) Masatoshi Inano
(Title of function) Technology Development Section, Tokai Reprocessing Center, Tokai Works
(Address and Phone) 4-33, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194 Japan
;Tel:+81-29-282-1111
[所属]日本原子力研究所 東海研究所 原子炉安全工学部 安全評価研究室
[氏名]村松 健(むらまつ けん)
[連絡先]〒319-1195 茨城県那珂郡東海村白方白根2-4、電話:029-282-5815、Fax:029-282-6147
(Name)Ken Muramatsu
(Title of Function)Safety Analysis Laboratory, Department of Reactor Safety Research
(Address, Tel and Fax)2-4, Shirakatashirane, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1195 Japan
;Tel: +81-29-282-5815, Fax: +81-29-282-6147
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]小坂 一郎(こさか いちろう)
[所属]東海事業所 再処理センター 技術部 技術開発課
(Name) Ichiro KOSAKA
(Title of Function) Technology Development Section, Tokai Reprocessing Center, Tokai Works
[氏名]山
敏彦(やまざき としひこ)
[所属]東海事業所 建設工務管理部 プロジェクトグループ
(Name) Toshihiko YAMAZAKI
(Title of Function) Project Group, Construction and maintenance Division, Tokai Works
[氏名]石田 倫彦(いしだ みちひこ)
[所属]東海事業所 再処理センター 技術部 技術開発課
(Name) Michihiko ISHIDA
(Title of Function) Technology Development Section, Tokai Reprocessing Center, Tokai Works
[氏名]岡本 成利(おかもと なりとし)
[所属]プルトニウム燃料センター 製造加工部 設計評価グループ
(Name) Naritoshi OKAMOTO
(Title of Function) Fuel Design and Evaluation Group, Plutonium Fuel Fabrication Division, Plutonium
Fuel Center, Tokai Works
−251−
JNC TN1400 2005-018
【研究期間】
平成16年度∼平成18年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)] なし
[実証試験名(実施機関)]
なし
[委託研究名(実施機関)] なし
【使用主要施設】
東海再処理センター
【研究概要】
[研究の経緯]
原研及びサイクル機構に共通の研究課題である核燃料施設の安全研究のうち地震 PSA について、これ
までの発電炉の地震 PSA に関する知見、再処理施設における PSA の実績等を活用し、種々の形態の核
燃料物質が分散して存在すること等の軽水炉とは異なる核燃料施設の特性を考慮した評価手法を検討す
るとともに、東海再処理施設等の実プラントを評価対象モデルとして適用検討を行い、核燃料施設の地
震時のリスク特性を把握する。これにより、個々の核燃料施設に特化した地震 PSA 手法開発の技術的基
盤を確立するとともに、得られた成果を、核燃料施設の安全設計・安全評価に資する。
[研究目的]
これまでの発電炉の地震 PSA に関する知見、再処理施設における PSA の実績等を活用し、種々の形態
の核燃料物質が分散して存在すること等の軽水炉とは異なる核燃料施設の特性を考慮した評価手法を検
討するとともに、東海再処理施設等の実プラントを評価対象モデルとして適用検討を行い、核燃料施設
の地震時のリスク特性を把握する。これにより、個々の核燃料施設に特化した地震 PSA 手法開発の技術
的基盤を確立するとともに、得られた成果を、核燃料施設の安全設計・安全評価に資する。
[研究内容]
イ.核燃料施設地震 PSA 評価手法の検討
原研で開発した解析コードを含む原子炉施設用地震 PSA 評価手法について、サイクル機構で実施し
ている再処理施設 PSA の実績を基に、核燃料施設の地震 PSA への適用性について検討を行い改良する。
ロ.核燃料施設地震 PSA の実施
再処理施設の地震時のリスク特性を把握するための予備検討として、東海再処理施設における高放
射性廃液貯蔵工程等主要な工程に着目して地震時システムモデルの作成及び地震 PSA を行う。
ハ.核燃料施設地震時リスク特性の把握
核燃料施設の地震時リスク特性について、分析手法の検討、これを用いた特性の把握及び発電炉と
の比較を行う。
【当初の達成目標】
ロ.核燃料施設地震 PSA の実施
地震 PSA 実施に関する予備的検討として以下の項目を実施する。
・ 高放射性廃液貯蔵工程を対象とした地震時事故シナリオの検討
・ 高放射性廃液貯蔵場建屋応答解析
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
ロ.核燃料施設地震 PSA の実施
① 高放射性廃液貯蔵工程を対象とした地震時事故シナリオの検討
核燃料施設の地震 PSA を実施するにあたり、地震時の事故シナリオを検討する必要がある。本研
究においては、マスターロジックダイアグラム(MLD)手法を用い、地震時の環境への放射性物質
の過度の放出に至る起因事象の検討を行った。
−252−
JNC TN1400 2005-018
② 高放射性廃液貯蔵建家応答解析
地震 PSA では、地震時の事故シナリオの一つとして建家の損傷を評価する必要がある。本検討で
は高放射性廃液貯蔵場建家を対象として、東海サイトの地震ハザード曲線と建家フラジリティ曲線を
用いて、地震時における損傷確率を評価した。
【研究の達成状況(平成16年度)】
MLD 手法を用い、高放射性廃液貯蔵工程を対象とした地震時事故シナリオを解析した。また、高放射性廃
液貯蔵場建家を対象として地震時損傷確率評価を行った。
以上から所期の目標は達成された。
(今後の予定)
平成17年度は、内的PSA結果に基づき地震時事故シナリオを明確化するとともに、主要機器のフラジリ
ティ評価を実施し、地震PSAを行うための準備を整える。平成18年度は、これらの情報を用いて高放射性
廃液貯蔵場を対象とした地震PSAを実施する。
【研究成果の発表状況】
特になし。
【成果の利用実績及び活用見通し】
東海再処理施設の耐震安全性の定量的な検討に活用できる。
【国内外の研究動向】
[民間の研究の現状と動向]
(参考文献)
[海外の研究の現状と動向]
(参考文献)
【研究評価(自己評価)】
○ 成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他(
[説明欄]
○ 今後の成果の達成見込み
[チェック欄]
■ 目標どおりの成果が得られる見込み。
□ 目標どおりの成果が得られない見込み。
(その理由:
□ その他(
[説明欄]
−253−
)
)
JNC TN1400 2005-018
○ 研究の進捗
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
【自由評価欄】
−254−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
○2-1(環境 1-[2]-(1)-2)
【研究分野】
環境・線量研究及び被ばく低減化研究
【研究課題名(Title)】
環境中のラドン・トロン及びその壊変生成物の測定,挙動評価などに関する研究
(Study on measurement methods and behavior evaluation of radon, thoron and their progeny in
environment.)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]田子格(たご いたる)
[所属]人形峠環境技術センター 安全管理課
[連絡先]〒708-0698 岡山県苫田郡鏡野町上斎原 1550 電話: 0868-44-2211 Fax: 0868-44-2851
(Name) Itaru Tago
(Title of Function) Environment and Safety Section, Ningyo-toge Environmental Engineering
Center
(Address, Phone and Fax) 1550 Kamisaibara, Kagamino, Tomata-gun, Okayama 708-0698 Japan
Phone: +81-868-44-2211 Fax: +81-868-44-2851
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]石森 有(いしもり ゆう)
[所属]人形峠環境技術センター 安全管理課
(Name) Yuu Ishimori
(Title of function) Environment and Safety Section, Ningyo-toge Environmental Engineering
Center
【研究期間】
平成13年度 ∼ 平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
ラドン標準校正チェンバ,ラドン測定局舎
【研究概要】
[研究の経緯]
施設運転に関わる環境影響評価の観点から,環境放射能の水準把握は重要である。屋内環境における
ラドン測定・評価は,国内でも系統的に行われ,また報告例も多い。一方,屋外環境でのラドン測定・
評価の報告例は少なく,特にラドン壊変生成物については,国内の報告例がほとんどない。これは,ラ
ドン及びその壊変生成物濃度測定手法が標準化されていないこと,さらに,ラドン壊変生成物について
は,長期間の測定が可能な簡便な測定器がないことに起因している。
一方,サイクル機構はウラン鉱山開発に伴って発生した捨石のたい積場などを所有し,その管理が必
要である。ラドンはこれらの施設に起因する周辺環境影響評価において重要な核種である。ラドンの環
境影響評価で最も特徴的なことは,天然のラドンによる被ばくが既に1mSv/y程度あり,またその
濃度の空間的,時間的な変動幅が大きいことである。従って,施設影響を評価するためには,一般環境
−255−
JNC TN1400 2005-018
中濃度の水準把握及び施設周辺環境での継続的な測定が必要であるとともに,拡散計算による施設影響
評価が重要である。
以上の理由から,環境データの蓄積及び校正手法まで含めた測定・評価手法に関する研究開発が必要
である。
[研究目的]
自然放射線源からの被ばくとして最も寄与が大きいとされているラドン・トロン及びその壊変生成物
による被ばく線量を高い精度で評価するため,様々な環境におけるこれら放射性核種の存在形態,挙動,
分布などを明らかにする。
[研究内容]
ラドンの壊変生成物の挙動については,大気中のエアロゾルの性状に強く関与しているという観点か
ら,これらの放射性核種について屋外環境で測定,調査する。
屋外環境については,壊変生成物を長期間測定するための積分測定器を用いた調査を行う。得られた
データについて解析を行い,それぞれの環境におけるラドン及びその壊変生成物の分布,挙動を明らか
にする。
このほか,数値計算によるラドン拡散評価コードを高度化して,種々の環境における拡散計算を行い,
測定結果と比較検証を行う。
これらの結果より,ラドン及びその壊変生成物による被ばくの実態を解明する。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
(1)環境測定の継続。
(2)ラドン壊変生成物濃度の積分測定器の実証器による環境測定。校正手法の検討。
(3)拡散コードの高度化に必要な改造。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
(1)環境測定の継続。
従来から実施しているたい積場内及びその周辺におけるラドン濃度,ラドン壊変生成物濃度,ラドン散
逸量の測定を継続し,データを蓄積した。また,ラドン標準チェンバで測定器の校正を行った。さらに,
研究成果のまとめを行い,学会での発表等を行った。
(2)ラドン壊変生成物濃度の積分測定器の実証器による環境測定。校正手法の検討。
ラドン壊変生成物濃度の積分測定器による環境測定を継続実施した。
そのほか,ラドン測定局舎の性能評価に関わる測定を実施した。また,既に実用化している連続測定器
など機構の所有するラドン壊変生成物濃度測定器を含めて,測定器の特性評価試験を実施した。
(3)拡散コードの高度化に必要な改造。
人形峠環境技術センターで開発した拡散コードは,気流推定モデルと拡散評価モデルにより構成されて
いる。気流推定モデルは,人形峠周辺のような,山谷の入り組んだ複雑な地形における風系場を,測定に
より推定することには限界があるため,地上気温の日変化を入力条件として,流体の運動方程式を数値的
に解き,複雑地形上の気流場及び温度場を推定する目的で導入している。
前年度までの検討結果,すなわち計算領域の広域化,座標系の変更(直交座標系から一般曲面座標系へ
の変更),拡散モデルの特徴把握(オイラー型モデルとラグランジュ型モデルとの比較)などを総合し,コ
ードの改善を実施した。図1の通り、拡散実験結果と比較して、現象がよく再現されていることが示され
た。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
ラドン壊変生成物濃度の積分測定器の実証器製作と環境測定については,規模を縮小したが,ほぼ,所
期の成果を達成できている。
(今後の予定)
研究予算確保が引き続き困難なため,計画規模を縮小したまま継続する。
【成果の利用実績及び活用見通し】
−256−
JNC TN1400 2005-018
国際免除レベルの国内法令取り入れに伴う、NORMやラドンに関する規制の検討、ウラン系廃棄物の
処分に関わる基準整備に関する検討等に寄与できる。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
(1)石森有,石川徹夫,床次眞司,PTBにおけるラドン相互比較実験,日本保健物理学会第 38 回研究発
表会要旨集(2004)
(2)Ishimori, Y., Ishikawa, T., Tokonami, S., Radon Intercomparison Experiment at PTB in Germany.
保健物理, 39(3), 263-267 (2004)
(3)Ishimori, Y., Maruo, Y., Radon exhalation rate monitoring in/around the closed uranium mine
sites in Japan. Ed Sugahara, T., Sasaki, Y., Morishima, H., Hayata, I., Sohrabi, M., Akiba, S.,
High Levels of Natural Radiation and Radon Areas: Radiation Dose and Health Effects; Proceeding
of the 6th International Conference on High Levels of Natural Radiation and Radon Areas, held in
Osaka, Japan, 6-10 September 2004, 291-292(2005)
(4)石森有,阪元重康,飯田孝夫,山崎敬三,石川徹夫,ラドン標準線源による測定器校正手法の検討,
日本保健物理学会第 39 回研究発表会要旨集(2005)
【国内外の研究動向(平成16年度)】
国内では,大学,放射線医学総合研究所,(財)環境科学技術研究所,(財)日本分析センター,地方自
治体の衛生研究所など,多くの機関で被ばく線量評価,気象研究,地震予知など様々な観点から研究が行
われている。しかし,屋外環境での局地的な挙動評価を主目的とした測定は多くない。さらに,屋外環境
でのラドン壊変生成物濃度測定についてはほとんどない。国内の現状については参考文献(1)にまとめ
られている。ラドンチェンバに関しては,放射線医学総合研究所でも整備がすすめられている。なお、近
年国際免除レベルの国内法令取り入れに伴い、NORMやラドンに関する規制について各所で検討がなさ
れている。
(参考文献)
(1) 古田定昭,伊藤公雄,石森有;屋外ラドン濃度∼人形峠を中心として∼,下道國,山田裕司編,ラド
ン,その人間への影響まで,放医研環境セミナーシリーズ No.27,54-63(2000)
[海外の研究の現状と動向]
国内外ともに,屋外環境でのラドン濃度測定・評価の報告例は屋内環境に比べて少なく,ラドン壊変生
成物についてはさらに少ない。
ラドン壊変生成物濃度測定法に関しては多くの手法が研究されており,市販されている測定器もある。
また,積分型の簡便な測定器も多くの開発例がある(1,2,3,4,5,6)。基本的にフィルタ上に吸引捕集したラ
ドン壊変生成物からの放射線を何らかの検出器(半導体検出器,TLD,固体飛跡検出器など)によって測定
する方法が用いられている。しかし,これらは AC 電源を必要とする高価で大型のものであるか,作業時間
内の鉱山労働者の被ばく評価など比較的短期間の測定を目的としたものであり,AC 電源のない屋外環境で
長期間の平均的な濃度を測定できる測定器は開発されていない。
ラドン壊変生成物粒径分布に関しては,多くの手法が研究(7,8,9,10,11,12,13)されているにもかかわら
ず,エアロゾルの測定法自身が標準化されていないこと,ラドン壊変生成物の屋外での濃度が低く放射能
測定自身が困難であることから,屋外環境でのデータはほとんどない。ICRP Publ.66 において,新しい呼
吸モデルが提案(14)され,13 年 4 月 1 日から施行されている国内の改正法令でも,これに基づいて濃度限
度が決められている。しかし,ラドンについてはより直接的で不確実性も小さいという判断で,主にウラ
ン鉱山労働者の疫学調査に基づいたリスク係数が採用された(15)。これは,2つの手法による評価結果が
大きく異なることによる。しかし,Publ.66 検討の初期においては,ラドンの被ばくについても検討が行
われた経緯を考慮すれば,将来的にはラドンも他の核種と同様,計算的手法が採用されると考えられる。
ラドン拡散影響評価に関しては,気象研究目的での研究は多いものの,ウラン鉱山のような局地的でか
つ複雑な地形での評価(17)はほとんどない。
なお、最近、欧州において各国で実施された屋内ラドンの疫学調査を統合して解析することにより、肺
がん死亡リスクが低濃度まで閾値なしの直線性を示すことや、100 Bq/m3 という欧米における平均値よりも
少し高い濃度においても、有意にリスクの増加が観察されるという報告が出された。また、今年1月には、
世界保健機関(WHO)が、屋内ラドンリスクとその対策のための国際プロジェクトを開始した。我が国におい
ても、文科省が検討会を設置して、ラドンの対策レベルの必要性について検討するための調査を行ってい
るなど、関心が高まっている。(18)
−257−
JNC TN1400 2005-018
(参考文献)
(1) A.L.Frank and E.V. Benton; Radon Dosimetry Using Plastic Nuclear Track Detectors, Nuclear Track
Detection, 1, 149-179(1977)
(2) J.Durkin; Electronic Radon Daughter Dosimetry, Health Phys., 37, 757-764(1979)
(3) S.B.Solomon, J.R.Peggies, G.Grealy and V.A.Leach; An Integrating Thermoluminescent Rn Daughter
Personal Dosimeter, Health Phys., 52, 143-148(1987)
(4) C.S.Dudney and A.R.Hawthorne; Radon-222, 222Rn Progeny, and 220Rn Progeny Levels in 70 Houses,
Health Phys., 58, 297-311(1990)
(5) K.N.Yu and Z.J.Guan; A portable Bronchial Dosimeter for Radon Progenies, Health Phys., 75,
147-152(1998)
(6) W. Zhuo and T.Iida; An Instrument for Measuring Equilibrium- Equivalent 222Rn and 220Rn
Concentrations with Etched Track Detectors, Health Phys., 77, 584-587(1999)
(7) Cheng, Y. S.; Yeh H. C. Theory of a screen-type diffusion battery. Journal of Aerosol Science
11:313-320(1980).
(8) Twomey S. Comparison of constrained linear inversion and an iterative nonlinear algorithm
applied to the indirect estimation of particle size distributions. Journal of Computational Physics
18:188-200 (1975).
(9) Maher E. F.; Laird N. M. EM algorithm reconstruction of particle size distributions from
diffusion battery data. Journal of Aerosol Science 16:557-570 (1985).
(10) Solomon, S.B., Ren, T Aerosol Science Technology 17:69 (1992).
(11)Hillamo, R.E., Kauppinen, E., Aerosol Science Technology 14:33. (1991).
(12)Kesten, J., Butterweck, G., Porstendoefer, J., Reinerking, A., Heymel, H.J., Aerosol Science
Technology 18:156 (1993).
(13)Reineking, A.; Kunutson E.A.; George A.C.; Solomon S.B.; Kesten J.; Butterweck G.; Porstendoefer
J.,Size distribution of unattached and aerosol-attached short-lived radon decay products: Some
results of intercomparison measurements. Radiation Protection Dosimetry 56:113-118, (1994).
(14)ICRP Publication 66, Human Respiratory Tract Model for Radiological Protection, (1994)
(15)ICRP Publication 65, Protection Against Radon-222 at Home and at Work, (1993)
(16)Przylibski, T. A.(1999), Radon Concentration Changes in the Air of two Caves in Poland. Journal
of Environmental Radioactivity, 45, 81-94
(17)W.E.Clements, S.Barr, and M.L.Marple, Uranium Mill Tailings Piles as Sources of Atmospheric
Radon-222, Natural Radiation Environment III, 1559-1583 (1980)
(18)山田裕司、米原英典(放医研)
、住居内ラドンリスクに関する WHO プロジェクト第 1 回専門家会合(First
Meeting of the Expert Group for the WHO Project on Residential Radon Risk)
、保健物理 印刷中
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
■ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
−258−
)
JNC TN1400 2005-018
[説明欄]
国内では天然放射性物質の規制について、ラドンは他の核種とは別に検討することとなっており、
また、WHOが屋内ラドンのリスクとその対策について国際プロジェクトを 2005 年に開始した。今
後、本研究で得られた知見や技術は充分活用できる。
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
)
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
一部,予算確保が出来ず,研究規模としては縮小となったものの,成果としては,ほぼ所期の目標を達
成できた。
【自由評価欄】
−259−
JNC TN1400 2005-018
SF6濃度 ppt
⑮
⑩⑨
⑪A
⑧
⑬A
⑪
⑫ B
⑦
⑬
B
⑥
⑤ A
④③②
③C
1000
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
拡散実験結果
拡散計算(改良前)
拡散計算(改良後)
15 13B 13A
12 11B 11A
10
9
8
7
6
評価地点
5
4
3C
3A
2
1
放
出
点
図1:拡散実験(平成6年8月)結果と拡散計算結果の比較。上の図は気流推定モデルによる風系場計算
結果。赤丸より放出した SF6 は、赤い矢印で示された流線に沿って拡散する。丸数字は評価地点(拡散実
験時の試料採取地点)である。
−260−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
○3-1(環境 1-[3]-(15)-2)
【研究分野】
環境・線量研究及び被ばく低減化研究
【研究課題名(Title)】
海洋における放射性物質の挙動と拡散予測モデルに関する研究
(Study on The Diffusion Model for Prediction of The Behavior of Radioactive Materials)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]武石稔(たけいしみのる)
[所属]東海事業所放射線安全部環境監視課
[連絡先]319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33 電話:029-282-9377
(Name) Minoru TAKEISHI
(Title of Function) Environmental Protection Section, Radiation Protection Division,
Tokai Works
(Address, Tel. and Fax) 4-33 Muramatsu Tokai-mura Naka-gun Ibaraki-ken
319-1194 phone:+81-29-282-9377, Fax: :+81-29-282-3838
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属(Name, Title of Function)】
[氏名]中野政尚(なかのまさなお)
[所属]東海事業所放射線安全部環境監視課
(Name) Masanao NAKANO
(Title of Function) Environmental Protection Section, Radiation Protection Division, Tokai Works
【研究期間】
平成 13 年度 ∼ 平成 17 年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)]なし
[実証試験名(実施機関)]なし
[委託研究名(実施機関)]なし
【使用主要施設】
なし
【研究概要】
[研究の経緯]
海洋放出に関する環境影響評価は、ごく狭域を対象に行われており、地球規模の長期的な核種移行挙
動に関しての研究はほとんど行われていない。地球規模での拡散評価には、核燃料サイクル施設からの
放射性物質の放出と沿岸での拡散に関する放出源情報が必要である。しかし、沿岸での拡散は地形など
地域の特性に応じて異なることから、地球規模での環境影響を評価するためには、沿岸拡散評価モデル
を構築し、地球規模モデルと連携させることが必要である。
[研究目的]
海洋中の拡散、移行、沈降、堆積などの諸過程をモデル化するとともに、モデルのパラメータに必要
となる海流などについて観測的な研究を行う。
−261−
JNC TN1400 2005-018
[研究内容]
海水中の放射性物質の鉛直及び水平濃度分布を調査する。また、沿岸の海水及び海底土中の放射性核
種の濃度を測定し、蓄積量の評価を行う。
これらの観測的研究を基に、地域ごとの沿岸域、外洋における放射性物質の移行シミュレーションモ
デルを構築し、そのモデルの検証を行う。なお、沿岸からの放射性物質の移行については、別途沿岸モ
デルを開発する。沿岸から放出された放射性物質が地球規模でどのように拡散できるかを把握できるよ
う、これら3つのモデルのリンク法を開発する。さらに、各種のシナリオを想定し、長期的な観点から
の環境影響を定量化する。
【当初の達成目標(平成 16 年度)】
・地球規模モデルとの連携手法を検討する。
【研究実施内容及び成果(平成 16 年度)
】
1.沿岸吹送流の調査
再処理施設からの排水は淡水であり、かつ水温が高いため、海洋の極めて表層(皮層)を拡散していく
と考えられる。この状況に着目し、海洋放出口近傍に設置した吊下げ式流速計(水深 0.5m, 1m, 3m)によ
って、皮層の流動を 2 年間にわたって測定した。ベクトル平均流速は 0.5m 深で 8.4cm/s だったが、1.5m
深になると 5.9cm/s、3.0m 深になると 1.5cm/s にまで減衰した(図-1)。スカラー平均では、3m 深の流速
は 0.5m 深の 0.6 倍程度に減少しており、薄い皮層内の平均流速は、深度と共に急速に減衰することが確認
された。一般的に海流や潮流ではこのように薄い皮層内での流速が大きく変化することは考えられず、流
れの駆動力が海面付近にあることが示唆された。
一方、東海事業所内海抜約 20m で観測した風向及び風速について日変動状況を作図すると、平均風向は
北東方向であるが、昼間は東風成分が強く、逆に夜間は西風成分が強くなっている(図-2)。また、詳細に
見ていくと、夏季は冬季よりも、また晴天が続いている時ほど一日周期で変動する風の東西成分が大きい
ことがわかった。この風は海陸風と呼ばれ、東海村沿岸の風の大きな特徴である。また、風の調和解析結
果では、皮層流動データの調和解析結果と同様に K1 分潮及び S2 分潮が卓越していた。
以上の調査結果より、東海沖の皮層流動には、海陸風によって引き起こされる吹送流が大きく関与して
いる可能性がある。
2.沿岸の海水及び海底土中放射性核種濃度の測定結果
平成 6 年度から平成 16 年度における沿岸の海水及び海底土中放射性核種濃度の変動範囲を整理した。結
果を表-1 に示す。海水で有意に検出されたのは 3H, 90Sr, 137Cs、海底土では 90Sr, 137Cs, 239,240Pu であった。
海底土への蓄積量は、海底土密度 1g/cm3、蓄積厚 10cm を仮定すると、90Sr で<8∼13(Bq/m2)、137Cs で<80∼
北太平洋北緯 40 度における文献値(137Cs で<50∼80(Bq/m2)、
170(Bq/m2)、239,240Pu で 17∼94(Bq/m2)と算出され、
239,240
2
Pu で 8∼10(Bq/m ))よりもやや大きな値となった。沿岸では外洋よりも懸濁物質が多く、バウンダリ
ースキャベンジングがよく効いているため蓄積量が多くなっていると考えられるが、海底土密度や蓄積厚
に関する知見が乏しいため詳細な比較は困難である。
【研究の達成状況(平成 16 年度)】
研究予算、研究者が不足しているため、進捗が遅れているものの、これまでの気象・海象観測データや定
常モニタリングデータを最大限利活用し、知見を蓄積している。
【成果の利用実績及び活用見通し】
沿岸における放射性物質の拡散評価に適用できる。
【研究成果の発表状況(平成 16 年度)】
1) 中野政尚: 日本海における Cs-137 及び Pu-239,240 の移流拡散シミュレーション, 日本保健物理学会
第 38 回研究発表会, (2004)
2) M. Nakano: Simulation of the advection-diffusion-scavenging processes for Cs-137 and
Pu-239,240 in Japan Sea, International Conference on Isotopes in Environmental Studies - Aquatic
Forum 2004, IAEA-CN-118, (2004)
3) 中野政尚: フォールアウトを用いた放射性物質海洋拡散シミュレーション−日本周辺海域の 137Cs 及び
239,240
Pu 濃度について−, 第 46 回 環境放射能調査研究成果発表会, 文部科学省, (2004)
−262−
JNC TN1400 2005-018
4) 中野政尚: 放射性物質海洋拡散モデルと大気圏核実験フォールアウトを用いた検証、第 6 回「環境放
射能」研究会、高エネルギー加速器研究機構, (2005)
(発表予定)
5) M. Nakano: Simulation of the advection-diffusion-scavenging processes for
Japan Sea, J. of Environ. Radioact., (submitted)
137
Cs and
239,240
Pu in
【国内外の研究動向(平成 16 年度)
】
[民間の研究の現状と動向]
日本海における海洋放射能研究は、日本原子力研究所、気象研究所、海上保安庁などで行われており、
海水海底土中放射性物質濃度データが蓄積されている。日本分析センターでは国内における環境放射能
データベースを構築し、http://search.kankyo-hoshano.go.jp/servlet/search.top で公開している。
[海外の研究の現状と動向]
IAEA 海洋環境研究所ではカラ海やバレンツ海など種々の縁辺海での海洋放射能研究が行われている。
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他(
[説明欄]
研究予算がないため、予定どおりの成果が得られなかった。
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
■ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○研究の進捗
[チェック欄]
□ 計画どおり進捗した。
■ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:研究予算がないため、進捗が遅れている。
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
【自由評価欄】
−263−
)
)
)
JNC TN1400 2005-018
図-1
2 年間(2000 年 5 月 1 日∼2002 年 3 月 20 日)の深度別ベクトル平均流
図-2
風の日変動状況(平均期間:2000 年 4 月∼2002 年 3 月)
表-1 沿岸の海水及び海底土中放射性核種濃度の変動範囲
測定対象
海
水
海 底 土
核種
全β放射能
3
H
90
Sr
106
Ru
134
Cs
137
Cs
144
Ce
239,240
Pu
90
Sr
106
Ru
134
Cs
137
Cs
144
Ce
239,240
Pu
範囲
<0.04 (Bq/L)
<4-6.0 (Bq/L)
<0.002-0.0028 (Bq/L)
<0.02 (Bq/L)
<0.008 (Bq/L)
<0.004 (Bq/L)
<0.02 (Bq/L)
<0.00002 (Bq/L)
<0.08-0.13 (Bq/kg 乾)
<6 (Bq/kg 乾)
<1 (Bq/kg 乾)
<0.8-1.7 (Bq/kg 乾)
<6 (Bq/kg 乾)
0.17-0.94 (Bq/kg 乾)
データ数
99
99
22
22
22
22
22
22
88
88
88
88
88
88
調査期間:平成 6 年度∼平成 16 年度
−264−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
○3-2(環境 1-[3]-(16)-1)
【研究分野】
環境・線量研究及び被ばく低減化研究
【研究課題名(Title)】
地球規模の海洋環境における放射性物質移行モデルに関する研究
(Study on The Transfer Model for Radioactive Materials in Global Ocean)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]武石稔(たけいしみのる)
[所属]東海事業所放射線安全部環境監視課
[連絡先]319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33 電話:029-282-9377
(Name) Minoru TAKEISHI
(Title of Function) Environmental Protection Section, Radiation Protection Division,
Tokai Works
(Address, Tel. and Fax) 4-33 Muramatsu Tokai-mura Naka-gun Ibaraki-ken
319-1194 phone:+81-29-282-9377, Fax: :+81-29-282-3838
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属(Name, Title of Function)】
[氏名]中野政尚(なかのまさなお)
[所属]東海事業所放射線安全部環境監視課
(Name) Masanao NAKANO
(Title of Function) Environmental Protection Section, Radiation Protection Division, Tokai Works
【研究期間】
平成 13 年度 ∼ 平成 17 年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)]なし
[実証試験名(実施機関)]なし
[委託研究名(実施機関)]なし
【使用主要施設】
なし
【研究概要】
[研究の経緯]
海洋放出に関する環境影響評価は、ごく狭域を対象に行われており、地球規模の長期的な核種移行挙
動に関しての研究は行われていない。今後、核燃料サイクルを戦略的に進めるにあたっては、放出に対
する長期的及び広域的リスクを定量的に評価し、そのリスクが充分に小さいことを示す必要があること
から、そのためのモデル及び計算コードを作成する。
[研究目的]
海洋環境における放射性物質の移行プロセスについて、長期的な観点で移行プロセスについて捉え、
地球規模の環境影響を評価できる環境を整備する。
[研究内容]
−265−
JNC TN1400 2005-018
スキャベンジングを考慮した全球海洋拡散モデルを核実験場に適用し、海水中放射性物質の実測値と
シミュレーションによる計算値を比較検討し、その妥当性を確認する。
さらに、各種のシナリオを想定し、長期的な観点からの環境影響を定量化する。
【当初の達成目標(平成 16 年度)】
・ 近海(0.25×0.17 度格子;気象研)と全球との結合
・ テストラン
【研究実施内容及び成果(平成 16 年度)
】
1.日本海 Pu モデルの開発
前期安全研究で構築した全球 Pu モデルの概念を日本海に適用し、日本海 Pu モデルを作成した。2 度格
子では日本海地形を表現しきれないため、0.5×0.5 度の格子で日本海地形を表現し、鉛直層厚については
3,750m までの 17 層とした。日本海における年平均流速場(水深 10m)を図 1 に示す。対馬海峡からの海水
流入に伴う 239,240Pu の流入量は全球 Pu モデルによる東シナ海の濃度計算値に文献による海水流入量を乗じ
て求めた。また、検証のための海水中 239,240Pu 鉛直分布実測データを IAEA 海洋研究所のデータベースから
75 地点収集し用いた。なお、海水中 239,240Pu の拡散係数は平成 15 年度に 137Cs に対して設定した値を用い
た。
2.海水中 239,240Pu 観測値との比較
図 2(左)に 1997 年に海上保安庁が日本海上の 137.43E、41.45N で採取し、測定した海水中 239,240Pu 鉛
直分布と本研究による計算値との比較図を、図 2(右)に観測値が 10mBq/m3 以上の全 352 データと本研究
による計算値との比較図を示す。海水中 239,240Pu 鉛直分布が良好に再現できているとともに、全データでは
ファクター2 で 74%、ファクター5 で 95%のデータが一致した。
3.日本海における 239,240Pu の収支
1945 年から 2005 年までの移流拡散計算結果から、日本海における 239,240Pu の収支を算出した(図2)。
その結果、日本海への全累積投入量 198TBq のうち、大気からの累積降下は 45TBq(23%)、太平洋(対馬海
峡)からの累積流入は 153TBq(77%)となり、平成 15 年度調査票に報告した 137Cs の収支計算結果に比べて、
対馬海峡からの流入が比較的少ないことがわかった。また、全累積投入量のうち、69TBq(35%)が津軽・宗
谷海峡から流出し、2TBq(1%)が物理的崩壊で消滅、残りの 39TBq(20%)が海水中、88TBq(44%)が海底土中に
存在するという計算結果が得られた。この結果は日本海が 239,240Pu のシンクになっているという他研究者の
報告と定性的に一致する。
【研究の達成状況(平成 16 年度)】
研究予算がないため当初の予定よ り 進捗が遅れている が、平成 16 年度は日本海 Pu モデルの開発検証を
着実に行い、国内外で積極的に成果を 発表し て いる。
【成果の利用実績及び活用見通し】
核燃料サイクル施設等から海洋へ放出される液体廃棄物の広域拡散及びリスク(集団線量)評価、海上輸
送事故時の評価、他国間にまたがる複数施設からの海洋放出に伴う複合影響の評価に活用できる。
【研究成果の発表状況(平成 16 年度)】
1) 中野政尚: 日本海における Cs-137 及び Pu-239,240 の移流拡散シミュレーション, 日本保健物理学会
第 38 回研究発表会, (2004)
2) M. Nakano: Simulation of the advection-diffusion-scavenging processes for Cs-137 and
Pu-239,240 in Japan Sea, International Conference on Isotopes in Environmental Studies - Aquatic
Forum 2004, IAEA-CN-118, (2004)
3) 中野政尚: フォールアウトを用いた放射性物質海洋拡散シミュレーション−日本周辺海域の 137Cs 及び
239,240
Pu 濃度について−, 第 46 回 環境放射能調査研究成果発表会, 文部科学省, (2004)
4) 中野政尚: 放射性物質海洋拡散モデルと大気圏核実験フォールアウトを用いた検証、第 6 回「環境放
射能」研究会、高エネルギー加速器研究機構, (2005)
(発表予定)
−266−
JNC TN1400 2005-018
5) M. Nakano: Simulation of the advection-diffusion-scavenging processes for
Japan Sea, J. of Environ. Radioact., (submitted)
137
Cs and
239,240
Pu in
【国内外の研究動向(平成 16 年度)
】
[民間の研究の現状と動向]
日本海における海洋放射能研究は、日本原子力研究所、気象研究所、海上保安庁などで行われており、
海水海底土中放射性物質濃度データが蓄積されている。日本分析センターでは国内における環境放射能
データベースを構築し、http://search.kankyo-hoshano.go.jp/servlet/search.top で公開している。
[海外の研究の現状と動向]
IAEA 海洋環境研究所ではカラ海やバレンツ海など種々の縁辺海(日本海も縁辺海である。)での海洋
放射能研究が行われている。
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他(
[説明欄]
研究予算がないため、予定どおりの成果が得られなかったが、着実に進捗している。
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
■ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○研究の進捗
[チェック欄]
□ 計画どおり進捗した。
■ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:研究予算がないため、進捗が遅れている。
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
【自由評価欄】
−267−
)
)
)
JNC TN1400 2005-018
50
Current
(10m depth)
30cm/s
North Latitude
45
40
35
30
125
130
135
140
145
East Longitude
図1 日本海における年平均流速場(水深10m)
Pu-239,240 in seawater (K H=3E7, KV=0.3)
3
Pu-239,240(mBq/m )
0
20
40
1000
60
Cal/Obs=2
0
Calculation(mBq/m3)
500
1000
D epth( m )
1500
2000
2500
100
Cal/Obs=0.5
3000
3500
◆ 観測値
計算値
10
10
図2
100
1000
Observation(mBq/m3 )
4000
海水中239,240Pu濃度計算値と観測値との比較
(左:1997年137.43E,41.45Nで採取(海上保安庁のデータ)、右:全観測値)
大気から降下 45 TBq
239,240Pu
対馬海峡
から流入
153 TBq
2005年の海水中
39 TBq
海底土へ88 TBq
放射性壊変 2 TBq
図3
日本海における239,240Puの収支
−268−
津軽海峡
宗谷海峡
からの流出
69 TBq
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【研究分野】
環境・線量研究及び被ばく低減化研究
【分類番号】
◎6−1(環境1-[6]-(3)-2)
【研究課題名 (Title)】
環境試料の迅速分析及び測定技術の高度化に関する研究
(Study on Rapid Analytical Method and Measuring Technique for Environmental Samples)
【実施機関 (Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先 (Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]小林博英(こばやしひろひで)
[所属]東海事業所 放射線安全部 放射線管理第二課
[連絡先]319-1194 茨城県那珂郡東海村村松4-33 電話:029-282-1133
(Name) Hirohide KOBAYASHI
(Title of Function) Reprocessing Radiation Control Section, Radiation Protection Division,
Tokai Works
(Address, Tel. and Fax) 4-33 Muramatsu Tokai-mura Naka-gun Ibaraki-ken
319-1194 phone:+81-29-282-1133, Fax: :+81-29-282-9966
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]眞田幸尚(さなだゆきひさ)
[所属]東海事業所 放射線安全部 放射線管理第二課
[連絡先]319-1194 茨城県那珂郡東海村村松4-33 電話:029-282-1133
(Name) Yukihisa SANADA
(Title of Function) Reprocessing Radiation Control Section, Radiation Protection Division,
Tokai Works
【研究期間】
平成13年度∼平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)]なし
[実証試験名(実施機関)] なし
[委託研究名(実施機関)]なし
【使用主要施設】
安全管理棟, 再処理施設分析所
【研究概要】
[研究の経緯]
プルトニウムやウランを取扱う再処理施設や燃料製造加工施設における排気および大気中プルトニウ
ム等長半減期核種の定量には、これまでおよそ一週間が必要であり、迅速性が要求される原子力緊急時等
におけるプルトニウム定量法としては問題があった。そのため、検出器へのパルスの入射時間間隔を解析
する方法を利用した迅速測定法を開発する。
[研究目的]
原子力施設から放出された放射性物質を迅速に定量する方法を開発し、緊急時モニタリング指針にマニュア
ルとして反映させる。
−269−
JNC TN1400 2005-018
[研究内容]
本研究では、最新のパルス測定に関する知見を利用し、パルス時間間隔解析法を用いた人工放射
性核種の定量システムの設計および実用機の製作を行う。
【当初の達成目標(平成16年度)】
時間間隔解析法を用いたバックグラウンド補償型放射能測定装置を開発する。
・ 平成 16 年度:時間間隔解析法を用いたバックグラウンド補償型放射能測定装置実用機の開発と性能試験
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
・パルス時間間隔解析法は、放射性核種の壊変時間に着目した測定法である。近年、本測定法を用いて、
一定の間隔で壊変する放射性核種(天然放射性壊変系列に属する核種)およびランダムに壊変する放射性
核種(人工放射性核種)の分別測定の研究が進んでいる。本法のこれまで開発されてきた方法と比較して
有意な点は、すべてのパルスとその時間間隔を測定することにより、Bi-214とPo-214の相関関係の効率を
測定することができ、全計数からの減算が正確になるという点である。図1に天然放射性壊変系列につい
て示す。
今年度は、平成15年度の試作器の製作および試験結果から得られた知見から実用器の設計・試験を行っ
た。
1. 機器の設計・製作
システムの設計には、パルスの時間間隔を正確に測定するために、不感時間や時間の遅れの発生が最
小になるシステムの構築が必要である。システム上で不感時間や時間の遅れの原因となる要因は以下の
とおりである。
・ パルス幅による不感時間
・ パルスの増幅、変換時の時間の遅れ(AMP, ADC)
・ 測定パルスをパソコン等へ記録する時間の遅れ
これらの要因に対し、システムの構築は以下の対策を施した。システムの構成について図2に示す。
・ Si半導体検出器の採用(パルス幅2 s程度)
・ AMPからの増幅信号を直接高速タイマーにて測定
・ FIFOメモリによる記録方式の採用
検出部についてはSi半導体検出器をろ紙の両側から測定できる構成とすることによって、ろ紙上の放
射性核種を高効率で測定できるようにした。また、データ処理部はシステムから切り離すことができ、
検出部を一般的なダストモニタからのデータも処理可能なように設計した。
2. 機器の性能試験
作成した機器の性能を評価するために以下の試験を行った。
① パルス発生器を用いた不感時間の評価
不感時間の測定は、パルス発生器によって2つのパルスをシステムに入力し、2つと判断できる最小の
パルス間時間間隔を測定した。システムの不感時間は6 sであった。
② Th-230線源を用いた相関事象率の評価
Th-230電着線源は時間経過とともに壊変し、ラドン以降の子孫核種が生成することから、Bi-214とPo
-214の相関事象の測定が可能である。図3にTh-230線源の 線スペクトルを示す。また、Th-230からの放
射線パルスの直前のパルスとの時間間隔を測定し、スペクトルとして表示した例(時間間隔スペクトル)
を図4に示す。図4のように100sの測定の結果、検出器が計数したPo-214が放出する 線のうち20%程度
が、直前の 線のパルスから0-1msの時間間隔であることがわかった。検出器が計数するPo-214の 線の
うち、0-1msの時間間隔を持つパルスの割合を相関事象率と表記する。また、0-1msの計数の減少傾向に
フィッティングした指数関数の回帰曲線の傾きは、Po-214の半減期である164 s程度となった。
3. 実証試験
−270−
JNC TN1400 2005-018
空気中の粉塵を採取して測定試験を行った。空気中の粉塵は70L/minでガラス繊維ろ紙(HE40T 孔径8
mm)上に2時間採取し、採取後すぐに試作器により測定を行った。測定時間は100s毎に2時間とした。そ
の結果、全 線計数率のうち測定できるBi-214とPo-214の相関関係は10%程度であると評価された。相関
事象と全 線計数率の測定後における経時変化について図5に示す。
4. まとめと課題
この結果から、本測定システムを使用してRn-222の壊変生成物によるバックグラウンドの影響を減算
しプルトニウム等の人工放射性核種を測定するシステムの構築が可能であることが示唆された。一般的
な施設内でのRn-222濃度の作業場所であれば100s程度の測定でRn-222のバックグラウンドを補償でき
る。ろ紙上の 線放出核種のうち90%程度がPo-214と考えられるが、ろ紙上にはBi-214とPo-214の相関
関係のほかにPo-218とPb-214及びTh系列核種が10%程度存在すると考えられる。今後、他の核種による
影響について考察が必要である。
【研究の達成状況(平成16年度)】
平成15年度に製作した試作器の性能試験によって得られた知見を反映し、実用器の設計・製作をおこな
った。製作した実用器についてRn-222の壊変生成物の測定に必要な性能をパルス発生器や線源を用いて確認
した。また、実際に試料を採取しRn-222の壊変生成物を測定できることを確認した。
【研究成果の発表状況】
(1) 眞田幸尚、野原尚史、植頭康裕、橋本哲夫;時間間隔解析法を用いたラドンフリー空気モニタの開
発(1)−測定システムの設計−;放射化学討論会 (2004.10)
(発表予定)
(1) 眞田幸尚、根本和彦、川井啓一、橋本哲夫;時間間隔解析法を用いたバックグラウンド補償型ダス
トモニタの開発;保健物理学会(2005.6 予定)
【国内外の研究動向】
[民間の研究の現状と動向]
隣接時間間隔解析を用いた時間間隔解析法は、古くから核物理分野において利用されてきたが、環境試
料分析への多重時間間隔解析法の適用に関しては、新潟大学において研究されている。ここでは、玉川温
泉湯の華中の 216Po、217At 等の定量法を開発してきた。
[海外の研究の現状と動向]
海外では、パルス間隔により放射能を測定する方法について、ほとんど見られない。
【研究評価(自己評価)】
○ 成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他(
[説明欄]
○ 成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる
■ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる
−271−
)
JNC TN1400 2005-018
■
□
原子力防災対策に反映できる。
その他(
)
○ 研究進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(
)
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
研究開始当初の計画どおりではないが、今年度に製作した機器によって、これまで不確定であ
った時間間隔解析法の空気中放射性物質濃度測定への適用方法について一定の見通しがついた。
【自由評価欄】
特になし
−272−
JNC TN1400 2005-018
222
220
Rn
(3.82d)
Rn
(54.5s)
5.49MeV
6.29MeV
218Po
216Po
(3.05m)
(145ms)
6.0MeV
6.78MeV
214
212
Pb
(26.8m)
Pb
(10.6h)
0.67MeV
0.58MeV
214
212
Bi
(19.7m)
Bi
(60.5m)
6.05MeV
36%
3.26MeV
214
208
Po
(164 s)
212
Tl
(3.1m)
7.68MeV
Po
(299ps)
8.78MeV
1.8MeV
210Pb
2.25MeV
64%
208
Pb
(stable)
(22y)
Uranium series
Thorium series
図 1 ランダム事象を含む天然放射性核種系列
PreAMP
ADC
MCA
Timer
検出器
Sum AMP
検出器
Timer
PreAMP
PC
検出部*
データ処理部
* 検出部は既存のプルトニウムダストモニタも取り付け可能
図 2 実用器の構成
−273−
JNC TN1400 2005-018
4
10
Th-230 4.688MeV
Ra-226 4.784MeV
3
Count
10
Rn-222 5.490MeV
Po-218 6.003MeV
2
10
-ray
Po-214 7.687MeV
1
10
0
10
0
2
4
6
8
Energy (MeV)
10
10
50000
100000
100
evaluation of half-lived 148 s
10
1
0
200
Time interval ( s)
400
600
800
Time interval ( s)
図 4 時間間隔スペクトルの例
500
1
400
0.8
300
0.6
200
0.4
100
0.2
0
0
0
500
1000
1500
2000
2500
Ratio of correlated events counts
to total counts
1
0
Count / Time interval unit (10 s)
100
All count
Count / Time interval unit (100 s)
図 3 Th-230 線源の 線スペクトル
Elapsed time (sec)
図 5 空気粉塵試料と相関事象率の経時変化
−274−
1000
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
◎6−2 (環境 1-[6]-(5)-1)
【研究分野】
環境・線量研究及び被ばく低減化研究
【研究課題名(Title)】
緊急時における個人被ばくモニタリング手法に関する研究
(Study on monitoring for the worker/the public in a radiological emergency)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]百瀬 琢麿(ももせ たくまろ)
[所属]東海事業所 放射線安全部 線量計測課
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33,電話 029-282-1111,FAX 029-282-2033
(Name) Takumaro MOMOSE
(Title of Function)
Radiation Dosimetry and Instrumentation Section, Radiation Protection Division, TOKAI WORKS
(Address, Phone and Fax)
4-33 Muramatsu Tokai-mura Nakagun Ibaraki-ken 319-1194,
Phone: +81-29-282-1111, FAX +81-29-282-2033
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]栗原 治(くりはら おさむ)
[所属]東海事業所 放射線安全部 線量計測課
(Name) Osamu KURIHARA
(Title of Function)
Radiation Dosimetry and Instrumentation Section, Radiation Protection Division, TOKAI WORKS
【研究期間】
平成 13 年度 ∼
平成 17 年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
放射線保健室(全身カウンタ,肺モニタ等)
【研究概要】
[研究の経緯]
原子力施設における労災,防災の観点から,作業者のみならず一般公衆を含めた個人被ばくモニタ
リングが求められている。本研究では,特に内部被ばくモニタリングに着目し,前年度に引き続き、
体外計測に関わる技術開発及び内部被ばく線量計算コードの開発を中心に研究を進めている。
[研究目的]
緊急時における個人被ばくモニタリング手法及び整備に係る研究を行い,迅速かつ的確な対
応に資する。
−275−
JNC TN1400 2005-018
[研究内容]
一般公衆などの個人内部被ばくモニタリング計画及び手法に関する研究を行うとともに,施設別の
核燃料物質核種の組成情報などの内部被ばく線量評価支援データベースの開発を行うとともに,半導
体検出器を用いた全身スキャニング型ホールボディカウンタ及びその校正法の開発を行う。またキレ
ート剤投与などの医療処置を考慮した内部被ばく線量評価法を開発する。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
(1) 体外計測技術の高度化として,開発したスキャニング型全身カウンタについてモンテカルロシミュレ
ーションを用いた計数効率の評価手法を開発する。
(2) 開発した内部被ばく線量評価コードの検証を行い,機能を拡充する。
(3) 内部被ばく線量評価に関する国際相互比較試験に参加し,機構が開発した評価手法の妥当性を確認す
るとともに,実務に反映すべき知見を得る。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
(1) 内部被ばく線量評価コードの開発研究
内部被ばく線量評価は,体外計測やバイオアッセイによるモニタリングの結果を得て,残留率(排泄
率)を用いて摂取量を算出し,それに実効線量係数を乗じて行うことが基本である。国際放射線防護委
員会(ICRP)の刊行物には,残留率(排泄率)や実効線量係数等の内部被ばく線量評価に必要となるデ
ータが示されているが,標準的な条件下において計算されたデータであるため,個人の代謝特性等を考
慮した詳細な線量評価が必要となる場合には十分ではない。このため,サイクル機構東海では,ICRP の
最新の線量評価モデルに準じ,機構独自の使用目的にも対応可能な内部被ばく線量評価コードの開発を
進めてきた。平成 14 年度には,キレート剤によるプルトニウムの線量低減効果の評価を目的とした
RAPUTA,平成 15 年度には評価核種の拡充,GUI によるパラメータ設定及び計算制御等の機能を備えた
REIDAC(図 1)を開発整備した。平成 16 年度は,REIDAC の検証と英語化,核種別にモニタリング手法や
放出放射線等の線量評価支援情報の追加を行い,モニタリングデータと計算値とのフィッティング機能
について検討を行った。
(2) 体外計測に係る相互比較試験
平成 15 年度より,日本原子力研究所(以下,原研)と共同して,体外計測に係る相互比較試験を実施
した。この試験は,各研究機関で所有する校正用ファントムを互いの研究機関の体外計測装置で測定を
実施し,ファントムの違いによる計数効率の差異や機器の検出特性等を評価するものである(図 2)
。
本試験は終了し,肺モニタに関する試験結果では,サイクル機構が所有するローレンスリバモアファ
ントムを原研が配備する肺モニタ(ホスウィッチ検出器)で,原研が所有する JAERI ファントムをサイ
クル機構東海が配備する肺モニタ(Ge 検出器)で測定を行い,各研究機関において既に自身のファント
ムを用いて評価した計数効率との比較を行った。なお,線源には,241Am を含有する肺形状線源を用いた。
試験の結果,各研究機関の肺モニタとも,二種類のファントム間において,計数効率とファントム胸部
厚との関係は良く一致し(図 3)
,ファントムの形状の違いによる影響は少ないことが確認された。全身
カウンタの試験結果については,現在解析を進めている。
(3) イメージングプレートを用いた胸部モニタリング手法の開発
イメージングプレート(IP)システムは,1980 年代初頭に医療用 X 線画像診断装置として開発された
放射線二次元分布検出システムであり,放射線検出部である IP,IP の読み取り部である画像解析器,デ
ータの解析,保存,出力を行う計算機及び IP を初期化して繰り返し使用するための消去機から構成され
る。IP システムの特徴としては,種々の放射線に対して検出することが可能であり,X 線フィルムと比
較して感度が高く,広いダイナミックレンジを有している点であり,放射線管理分野や医療分野への適
用例も近年多く見られる。本研究では,IP システムを用いた胸部モニタリングの可能性を検証した。
241
Am を含む肺形状線源を挿入した肺モニタ校正用ファントムの前面,側面及び背面に IP(富士フィル
ム製 BAS-MS)を固定し,30 分から 5 時間照射を行った後,IP 読取器(富士フィルム製 FLA-5000)によ
って潜像を読み取った。試験の結果,ファントムに固定した全ての IP について,線源の画像を得ること
ができた(図 4)。ファントムの前面,背面及び右側面及び左側面での IP の計数率比は,それぞれ
1.00:0.62:0.27:0.22 であった。また,IP システムの検出下限値は,ファントムの前面から照射を行っ
た場合,照射時間 30 分,1 時間及び 5 時間において 28Bq,16Bq 及び 7Bq であり,既存のモニタリング
方法である肺モニタと比べても同等な結果が得られた。
−276−
JNC TN1400 2005-018
(4) 内部被ばく線量評価に係る国際相互比較試験
EU 諸国では,EURADOS(欧州線量評価グループ)が主体となり,モニタリングデータ(以下,データ)
に基づく内部被ばく線量評価のためのガイドラインの構築に向けた活動を展開している(IDEAS プロジェ
クト)。
この活動の一環として,IDEAS と IAEA の共催で内部被ばく線量評価に係る国際相互比較試験
(2004 年
11 月から翌年 1 月)が開催された。サイクル機構は本試験に参加し,試験結果を報告した。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
(1) 体外計測技術の高度化に関する研究
モンテカルロシミュレーションの体外計測器の校正手法への適用の見込みが得られ,初期の成果が得ら
れた。今後,他の機器への拡張を図るとともに,放射性核種が体内で不均一に分布する場合の,シミュレ
ーションを行う。
(2) 内部被ばく線量評価コードの開発研究
内部被ばく線量評価コードの整備を行い,初期の成果が得られた。今後,国際的な相互比較試験等にお
いて活用するとともに,創傷汚染やキレート剤投与に伴う内部被ばく線量評価への拡張を図るための検討
を行う。
【成果の利用実績及び活用見通し】
体外計測技術の高度化に係る開発によって,より精度の高い体内放射能量の定量及び内部被ばく線量評
価が可能となる。これは,実務である個人モニタリングサービスに反映できる他,体外計測技術の国内標
準化に関わる基準整備等に資する。また,内部被ばく線量評価コードの整備によって,実務の技術向上が
図られる。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
(1) O. Kurihara et al; Evaluation of detection characteristics for scanning type whole body counter,
Proceeding of IRPA-11 (2004)
(2) O. Kurihara et al; Computational Evaluation of Peak Efficiencies for a Whole-Body Counter with
Scanning Germanium Detectors,J. Nucl. Sci and Technol Suppl 4, p.243-246, Mar (2004)
(3) 栗原ら;モンテカルロシミュレーションによる全身カウンタの計数効率評価,サイクル機構技報,No.25,
Dec(2004)
(4) 栗原ら;モンテカルロシミュレーションを用いた全身カウンタ計数効率評価,第 38 回日本保健物理学
会口頭発表(2004)
(5) 栗原ら;全身カウンタ計数効率評価ツールの作成,第 38 回日本保健物理学会ポスター発表(2004)
(6) 栗原ら;内部被ばく線量評価コード(REIDAC)の開発,第 38 回日本保健物理学会ポスター発表(2004)
(7) 栗原;緊急時における個人被ばくモニタリング手法に関する研究,第 2 回原研・サイクル合同安全研
究成果発表会, JNC TN1200-002(2004)
(8) 高崎,栗原ら;肺中 Am-241 に対する肺モニタ計数効率:JAERI ファントムとリバモアファントムとの
比較,日本原子力学会 2004 年秋の年会(2004)
(9) 栗原ら;計数効率空間分布データベースを用いた全身カウンタ計数効率校正システムの開発,日本原
子力学会 2004 年秋の年会(2004)
(10)栗原;ウランの体内挙動と事故時における線量評価方法,日本保健物理学会専門研究会シンポジウム
(2005)
(発表予定)
(1) 栗原ら;内部被ばく線量評価に係る国際相互比較試験,日本原子力学会 2005 年秋の年会(2005)
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
民間では,研究は行われていない。
全身カウンタの校正手法として,モンテカルロシミュレーションを適用した研究は,日本原子力
研究所において実施されている。
[海外の研究の現状と動向]
モンテカルロシミュレーションの放射線防護分野への適用に関する研究が,欧米の研究機関では
−277−
JNC TN1400 2005-018
数多く行われている。体外計測機器への適用に関する研究は,IRSN(フランス),ENEA(イタリア)
,
HML(カナダ)等の研究機関で行われている。
内部被ばく線量評価の標準化に係る研究については,EURADOS(欧州線量評価グループ)が中心と
なって,幾つかのプロジェクトが立ち上げられている。
(参考文献)
(1) S. Kinase et al.; Application of a Ge semi-conductor detector to whole-body counter,
Radi.Prot.Dosim, Vol.105, No.1-4, p.467 (2003)
(2) L. de. Carlan et al.; Application of new imaging and calculation technique to activity and
dose assessment in the case of a 106Ru contaminated wound, Radi.Prot.Dosim, Vol.105, No.1-4,
p.219 (2003)
(3) N. Ishigure et al.; Database of calculated values of retention and excretion for members
of the public following acute of radionuclides, Radi.Prot.Dosim, Vol.105, No.1-4,
p.311 (2003)
(4) E. Ansoborlo et al.; Review of members and computer codes for interpretation of bioassay
data, Radi.Prot.Dosim, Vol.105, No.1-4, p.341 (2003)
(5) D. Franck et al.; Application of Monte-Carlo calculation to calibration of anthropomorphic
phantoms used for activity assessment of actinide in lungs, Radi.Prot.Dosim, Vol.105,
No.1-4, p.341 (2003)
(6) A. Birchall et al.; IMBA Expert TM: Internal dosimetry made smiple, Radi.Prot.Dosim, Vol.105,
No.1-4, p.421 (2003)
(7) T. Rahola et al.; OMINEX: Survey of internal dose monitoring programmes for radiation
workers, Radi.Prot.Dosim, Vol.105, No.1-4, p.347 (2003)
(8) M. Thieme et al.; European whole body counter measurements intercomparison, Health Physics,
Vol.74(4), p.465 (1998)
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
■ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
)
【自由評価欄】
特になし
−278−
JNC TN1400 2005-018
1. Selection of targeted nuclide
2. Setting of condition for intake
3. Edit of parameters of dosimetric model
4. Calculation result of IRF, e( 50 )
5. Fitting monitoring data
図 1 内部被ばく線量評価コード(REIDAC)の GUI 画面
−279−
JNC TN1400 2005-018
図 2 体外計測に係る相互比較試験
Counting Efficiency ( cps/photon emitted )
-1
10
Red plot : LLNL phantom
Blue plot : JAERI phantom
Phoswich
+5%
-5%
Germanium
+10%
-2
10
59.5keV
1.0
1.5
-10%
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
MEQ-CWT (cm)
図 3 両肺モニタの計数効率と胸部厚の関係の比較
図中で Germanium はサイクル機構東海の肺モニタ,Phoswich は原研東海の肺モニタによって得られた計数効率を意味する。
なお,図で示した計数効率は,241Am の 59.5keVγ線のものである。
−280−
JNC TN1400 2005-018
図 4 肺モニタ校正用ファントムの IP 画像
−281−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
6−3(社内研究)
【研究分野】
環境・線量研究及び被ばく低減化研究
【研究課題名(Title)】
緊急時遠隔空中モニタリング手法に関する研究
(Research on Environmental Monitoring Technique using Unmanned Aerial Vehicle in Emergency)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]鳥居建男(とりい たつお)
[所属]敦賀本部 技術企画部 環境監視課
[連絡先]〒919-1279 福井県敦賀市白木 2 丁目 1 番地,電話:0770-39-1031
(Name) Tateo TORII
(Title of Function) Environmental Monitoring Section, Planning Division, Tsuruga Head Office
(Address, Phone and Fax) 2-1,Shiraki,Turuga, Fukui, 919-1279 Japan, Phone: +81-770-39-1031
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]奥山 慎一(おくやま しんいち)
[所属]敦賀本部 技術企画部 環境監視課
(Name) Shinichi OKUYAMA
(Title of Function) Environmental Monitoring Section, Planning Division, Tsuruga Head Office
【研究期間】
平成13年度 ∼ 平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
ヤマハ発動機(株) 向笠テスト場
【研究概要】
[研究の経緯]
原子力災害発生時には,周辺住民の放射線防護のために,様々な手法による放射線や放射性物質の放出
源に関する情報の迅速な把握が必要となる。
なお,原子力災害発生時においては,放射線レベルが高い,或いは放出源情報の把握が困難などの理由
により人が容易に近づけない場所が発生することも考えられ,このような状況においても安全,かつ迅速
に放射線モニタリングを実施し放射線源情報を把握することは防災上重要であることから,これらを可能
とする遠隔空中モニタリング手法を開発研究することが必要である。
[研究目的]
原子力災害発生時における遠隔での放射線モニタリング機能の強化を目的として,無人ヘリコプター等
を利用できる野外モニタリング手法を開発し,緊急時モニタリング設備,体制の整備に資する。
−283−
JNC TN1400 2005-018
[研究内容]
無人ヘリコプター,無人飛行船(以下,無人ヘリ等という)に搭載可能な緊急時モニタリング設備を開
発し,緊急時における遠隔空中モニタリング手法の整備を行う。
イ.無人空中モニタリング手法に関する調査研究
民生用無人ヘリ 等を 利用し た種々の観測手法について 調査し ,空中モニタ リ ン グへの
適用性の課題を 調査し ,問題点及びモニタ リ ン グ設備の開発課題を 検討する 。
ロ. 無人ヘリ等搭載用放射線測定システムの開発
小型軽量のガンマ線・中性子線測定器,GPS,高度計,CCDカメラ等を組み込み,無線にて測
定結果,位置情報を伝送できるシステムの開発を行う。また,これらの機器の放射線場における特性
試験を実施する。
ハ. 放射線分布マッピングシステムの製作
前記の無人ヘリ等搭載用放射線測定システムからの伝送結果を解析し,放射線状況が迅速に把握で
きる放射線分布マッピングシステムを製作する。
ニ. 無人ヘリ等操縦支援システムの開発
ロ.のGPS,高度計を用い,無人ヘリ等の飛行,測定地点,経路をプログラム化し,飛行位置の
目視確認が困難な場所での操縦者の支援を行うシステムの検討,開発を行う。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
イ.無人ヘリ等搭載用放射線測定システムの試作機の実働試験を行い,課題問題点の改善を図る。
ロ.放射線分布マッピングシステムの試作機の実働試験を行い,課題問題点の改善を図る。
ハ.無人ヘリ等操縦支援・安全着陸支援システムの実働試験を行い,課題問題点の改善を図る。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ.無人ヘリ搭載用放射線測定システムの実働試験
平成15年度に製作した実測定を目的としたγ線測定用試作器(検出器:NaI シンチレータ)を用
いて,野外環境下で実働試験を行った(図−1,図−2参照)。
河川の上空を櫛状に設定した飛行プログラムにて飛行し,河川と陸上での上空における自然放射線
レベルの測定を行った(図−3参照)。
測定の結果河川上空においては計数率が下がり,NaI 検出器の試作器においても自然放射線レベル
の線量率の変動を確認することができた。ただし,プラスチックシンチレータほどの感度が無いこと
から,マッピングシステムでの表現においては分かりにくいところがあった(図−4参照)。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ.無人ヘリ等搭載用放射線測定システムの試作機の実働試験を行い,課題問題点の改善を図る。
γ線測定用試作器による実働試験ができたことにより,初期の成果が得られた。
ロ.放射線分布マッピングシステムの試作機の実働試験を行い,課題問題点の改善を図る。
実働試験の実施から,課題等が判明してきた。ただし,問題点の改善までに至らず,検討を進めて
いる。
ハ.無人ヘリ等操縦支援・安全着陸支援システムの実働試験を行い,課題問題点の改善を図る。
達成目標の安全着陸支援システムの設計・製作については、ヘリの構造上またペイロード等の制限
から容易なものではなく成果達成には至っていない。
しかし、農業分野において実際に起こった故障原因を調査するなど情報を収集し、それらを参考と
した安全着陸支援システム等の検討を進めている。
(今後の予定)
研究予算確保が困難となり計画規模が縮小となるが,今後もこれまでの成果を基に課題・問題点を
抽出し改善案を検討し、適用性を調査研究する。
【成果の利用実績及び活用見通し】
−284−
JNC TN1400 2005-018
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
1. Okuyama,S.et al, Development of a Remote Radiation Monitaring System using Unmanned
Helicopter. 6th International Conference on High Levels of Natural Radiation and Radon
Areas,6-10 September 2004, Osaka
(発表予定)
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
自律機能を有した無人ヘリは、国内の複数のメーカで開発され、それらは火山活動被害調査(有珠山、
三宅島)に使用されている。
(参考文献)なし
[海外の研究の現状と動向]
(参考文献)なし
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
■ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
)
○計画の進捗状況
[チェック欄]
□ 計画どおり進捗した。
■ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:一部予算が確保できず研究規模としては縮小となった。また,制御通信システムの
規格変更から,既設のマッピングシステムが作動しなくなり対応できるシステムへの調整に時間
を要した。
)
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
【自由評価欄】
−285−
JNC TN1400 2005-018
γ線測定用試作器取付状態
NaI シン チレ ータ
3.63m
自律システム
放射線測定器
無人ヘリ 側面図
< 無人ヘリ と 検出器の主な仕様>
検出器
種類
2"Ф×2"NaI(Tl)
測定範囲
50keV∼3MeV
全体重量
約 8kg
無人ヘリ
全長
重量
ペイロード
最大運行距離
制御通信
3.63m(ローター含む)
94kg(ヘリ本体 58kg)
10kg(実搭載可能重量)
2km(目視:150m)
自律制御用データ通信電波
スペクトラム拡散方式
DS/FH ハイブリッド方式
図−1
γ線測定用試作器
−286−
JNC TN1400 2005-018
無停電電源
画像モニタ
ディスプレイ
コンピュータ
ベースコントローラー
図−2
制御ユニット
基地局(コン ト ローラ ー部)
河川上空を 櫛状に飛行
プログラ ム
図−3
河川と 陸上の計数率測定試験
陸側
飛行高度
陸地
陸地
陸地
川
陸地
陸地
川
川
川
計数率
河口砂浜
海側
図−4
河川と 陸上のγ線測定用試作器によ る 測定結果
−287−
川
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【研究分野】
環境・線量研究及び被ばく低減化研究
【分類番号】
◎6−4(環境1-[6]-(12)-1)
【研究課題名 (Title)】
極低濃度長半減期放射性核種の定量法に関する研究
(Study on The Determination Method for Ultra-low Level and Long Half-life Nuclides)
【実施機関 (Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先 (Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]武石稔(たけいしみのる)
[所属]東海事業所放射線安全部環境監視課
[連絡先]319-1194 茨城県那珂郡東海村村松4-33 電話:029-282-9377
(Name) Minoru TAKEISHI
(Title of Function) Environmental Protection Section, Radiation Protection Division,
Tokai Works
(Address, Tel. and Fax) 4-33 Muramatsu Tokai-mura Naka-gun Ibaraki-ken
319-1194 phone:+81-29-282-9377, Fax: :+81-29-282-3838
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]藤田 博喜(ふじた ひろき)
[所属]東海事業所放射線安全部環境監視課
(Name) Hiroki Fujita
(Title of Function) Environmental Protection Section, Radiation Protection Division, Tokai Works
【研究期間】
平成8年度∼平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)]なし
[実証試験名(実施機関)] なし
[委託研究名(実施機関)]なし
【使用主要施設】
安全管理棟
【研究概要】
[研究の経緯]
核燃料施設からの廃棄物管理及びその環境放射能モニタリングへの影響を評価するため、従来の放射
線測定法では検出困難な極低濃度長半減期放射性核種の定量法を開発する。今年度は、土壌試料中のヨウ
素-129(以下 129Iと略す。)及びテクネチウム-99(以下 99Tcと略す。)定量法の高度化研究及び実試料へ
の適用を実施した。これまでは、129Iについてはマイクロ波導入プラズマ質量分析装置(以下MIP-MSと略
す。)による定量法の開発を、99Tcについては誘導結合プラズマ質量分析装置(以下ICP-MSと略す。)に
よる定量法の開発を行ってきた。
[研究目的]
核燃料施設からの廃棄物管理及びその環境放射能モニタリングへの影響を評価するため、従来の放射線測定
法では検出困難な極低濃度長半減期放射性核種の定量を開発する。
−289−
JNC TN1400 2005-018
[研究内容]
前処理の迅速化を図るとともに、質量分析法などを適用することにより、極低濃度長半減期放射性核種
の定量法を開発する。
【当初の達成目標(平成16年度)】
前処理方法や精製方法の改善による長半減期放射性核種の高度化を図る。
・ ヨウ素-129の定量法に関する総合試験を実施する。
・ 水素化物発生装置を用いたセレン-79の分析法の開発を実施する。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
・ヨウ素-129の定量法に関する総合試験の実施
MIP-MSを測定系に用いた129Iの定量法の高度化に向けての機器調整及び実試料分析を行った。MIP-MS
の検出感度は、測定条件等により大きく変化するため、その最適条件を調整した。その結果、0.02mBq/
mlという検出下限値を得ることができた。この検出下限値は、測定溶液25ml、供試料100g、回収率80%
で6.3×10-3Bq/kg・乾である。本検出下限値は、図1に示すように平成15年度よりも向上し、年一回モニ
タリングを行っている畑土中のヨウ素−129濃度測定に適用可能となった。このことから、本測定系を畑
土中ヨウ素-129濃度測定に適用した。1地点から(1.6±0.022)×10-2 Bq/kg・乾の測定結果が得られ、中
性子放射化分析法による(1.8±0.010)×10-2 Bq/kg・乾とよく一致した。よって、ヨウ素−127との原子
数比の制限はあるものの4.0×10-3Bq/kg・乾以上のヨウ素−129を含む比較的濃度の高い土壌中のヨウ素
−129を定量することが可能となった。上記結果を求めるにあたり、測定溶液系について検討を行い、こ
れまでよりもテトラメチルアンモニウム溶液の濃度を下げることに成功し、長時間の測定を可能にした。
今後は、さらに真空度を上げるため、真空ポンプ及び真空系の更なる密閉度を高めるための改造及び数
件の実試料への適用を行う予定である。
・テクネチウム-99(99Tc)の分析法に関する研究の実施
ICP-MSを測定系に用いた99Tcの定量に向けての分析法の検討を行った。平成15年度の基礎実験の結果
から、1)分解効率が高い過塩素酸の使用については、試料溶液中の99%以上のTcを揮発させること、2)
濃縮操作においては、金属安定度の高い塩酸系の時にもっともTcの揮発が大きいこと、3)電気炉での
灰化作業(灰化温度450℃、灰化時間8時間)でTcの揮発がないことから、図2に示すような分析操作を考
案し、実試料として環境モニタリングを行っている3地点の海藻を用いて分析を行った。実試料にTc-99
を添加し本分析法の回収率を求めた結果、1)65%以上の回収率を得られ、2)ICP-MSによる測定の際に
妨害となるRuの除去を行うことができた。ICP-MSによる検出下限値を算出したところ、6.5×10-5Bq/ml
となり、最終溶液20ml、供試料2kg、回収率60%とした場合の本分析法による検出下限値は、1.1×10-3Bq/
kg・乾となった。分析した海藻については、いずれも本検出下限値を上回り検出されたが、過去の定量
値と比較すると100分の1程度であった。今後、さらに分析件数を増やして本分析結果の妥当性等を検討
していく。
これらの結果を踏まえて、今後は99Tcの定量に向けての分析及び測定方法を確立していきたい。
【研究の達成状況(平成16年度)】
長半減期放射性核種の高度化を図る観点から129I及び99Tcの分析法について特に検討を実施した。本年度
の研究結果によりICP-MS精製方法の改善による長半減期放射性核種の高度化を図る上での、基礎研究を実施
することができた。
【研究成果の発表状況】
なし
【国内外の研究動向】
[民間の研究の現状と動向]
質量分析法を用いた 129I の定量法の開発は、筑波大学、放医研、日本分析センター、環境技術研究所に
おいて行われている。しかし、MIP-MS を用いた定量は日本国内では行われていない。
−290−
JNC TN1400 2005-018
[海外の研究の現状と動向]
海外では、環境試料中の 129I の分析は、中性子放射化分析法又は加速器質量分析法を用いる手法がほと
んどであり、ICP-MS や MIP-MS を用いた質量分析法は、ほとんど見られない。
【研究評価(自己評価)】
○ 成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他(
)
[説明欄]
長半減期放射性核種の高度化を図る観点から129I及び99Tcの分析法について基礎データを採取し
た。
○ 成果活用方策
[チェック欄]
■ 指針・基準類への整備に反映できる
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
)
○ 研究進捗状況
[チェック欄]
□ 計画どおり進捗した。
■ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:ニーズの高い99Tcの分析法について基礎データを採取したため
)
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
研究の進捗としては、計画的にできなかった面は否めないが、ニーズの高い核種の分析方法の
検討を実施した。
【自由評価欄】
特になし
−291−
JNC TN1400 2005-018
東海村周辺で採取した
表土の 129I 濃度範囲
腐植層
東海村周辺で採取した
畑土の 129I 濃度範囲
10-4
10-3
NAA
(JNC)
(Bq/kg・dry)
10-2
10-1
100
NAA
(MEXT)
MIP-MS
目標
101
放射化学
(MEXT)
MIP-MS
(平成 15 年度)
MIP-MS
(平成 16 年度)
図1 MIP-MS の感度向上による目標検出下限値
東海村周辺で採取した表土及び畑土中の 129I 濃度範囲を帯状に示す。
灰試料(450℃、8 時間)
硝酸浸出
←塩化第二鉄 過酸化水素
←過酸化水素
←硫酸第一鉄 塩化第二鉄
アンモニア水
←硫酸
加温溶解
←過硫酸カリウム
←TBP フッ化水素酸
有機相
←硫酸 フッ化水素酸
有機相
←キシレン 水酸化ナトリウム
イオン交換(TEVA レンジ)
←0.1M 硝酸 2.0M 硝酸 8.0M 硝酸
メスアップ(20ml)
ICP-MS測定
図2
海藻中Tc-99の分析フロー
−292−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
◎1−1(廃棄2−1−1(2))
【研究分野】
地層処分
【研究課題名(Title)】
安全評価の基本的考え方等に関する調査研究
(Study on a basic strategy for post-generic safety assessment)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]1)宮原 要(みやはら かなめ)、2)内田 雅大(うちだ まさひろ)
[所属]1)経営企画本部
バックエンド推進部
地層処分研究計画グループ、
2)東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 システム解析グループ
[連絡先]1)〒319-1184 茨城県那珂郡東海村村松 4-49 TEL 029-282-4237, FAX 029-282-8174
2)〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33 TEL 029-282-1111, FAX 029-282-9295
(Name) 1) Kaname MIYAHARA, 2) Masahiro UCHIDA
(Title of Function) 1) Geological Isolation Research Project Group, Nuclear Cycle Backend Division, Executive
Office for the Policy Planning and Administration,
2) Repository System Analysis Group, Waste Isolation Research Division, Waste
Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 1) 4-49, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1184, Japan
Phone : +81-29-282-1122, Fax: +81-29-282-8174
2) 4-33, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194, Japan
Phone : +81-29-282-1111, Fax: +81-29-282-9295
(E-mail) 1) [email protected]
2) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]1)宮原 要(みやはら かなめ)、2) 牧野 仁史(まきの ひとし)
[所属]1)経営企画本部 バックエンド推進部 地層処分研究計画グループ、
2)東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 システム解析グループ
(Name) 1) Kaname MIYAHARA, 2) Hitoshi MAKINO
(Title of Function) 1) Geological Isolation Research Project Group Nuclear Cycle Backend Division, Executive
Office for the Policy Planning and Administration
2) Repository System Analysis Group, Waste Isolation Research Division, Waste
Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
【研究期間】
平成 13 年度∼平成 17 年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)]「放射性廃棄物処分の安全評価における安全指標(濃度、フラックス)の使
用」に関する共同研究プロジェクト(IAEA)
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)]
【使用主要施設】
【研究概要】
[研究の経緯]
−293−
JNC TN1400 2005-018
わが国の幅広い地質環境を対象として地層処分の技術的信頼性を示した地層処分研究開発第2次取
りまとめを踏まえ、実際の地質環境を対象とした安全評価手法の高度化や信頼性向上が課題とされてお
り、安全性の論拠(セーフティケース)を示す上での安全評価の役割と実際の地質環境を対象とするこ
とによる留意点を念頭に、安全評価の基本的考え方等に関する調査研究を行うものである。
[研究目的]
高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全確保に関する考え方や安全基準等について、諸外国の事例等
を調査・整理するとともに、安全目標,評価時間枠及び評価時間枠に応じた安全指標の考え方、補完的
安全指標等に関する検討を行い、具体的な安全基準・指針類の策定に資する。
[研究内容]
ロ)安全評価の基本的事項に関する検討
制度的管理の有効期間や地質環境が安定と見なせる期間を考慮し、時間スケールに応じた評価の考
え方をシナリオに応じて整理し、適切な安全指標について検討するとともに、安全基準・指針類を策
定するために必要な情報を整理する。また、天然に存在する放射性物質や化学物質の濃度、フラック
スの補完的安全指標としての適用性について検討する。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
・地層処分による影響を評価する際の視点の整理
・信頼性をもって地層処分の安全性を示すための手法の整理
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
前年度までに整理した段階的意思決定の進め方とセーフティケースの役割、並びにより高い信頼性を
もって地層処分の安全性を示すための手法の整理を踏まえ、本年度は、「時間スケールに応じた安全評
価の鍵となる安全機能の諸外国の安全評価の事例に基づく比較検討」「安全性に関する信頼性を高める
ための鍵となる論点に関する実際の地質環境を対象とした一連の評価による例示を踏まえた検討」「地
層処分の安全確保に関わる品質マネジメントの適用の観点の検討」を実施した。また、補完的安全指標
に関する IAEA のプロジェクトに協力した。
時間スケールに応じた安全評価の鍵となる安全機能の諸外国の安全評価の事例に基づく比較検討
鍵となる安全機能としては、オーバーパックによる核種の完全な閉じ込め、緩衝材による核種の保
持、緩衝材による核種フラックスの抑制、緩衝材、岩盤による移行・遅延などが挙げられ、処分対象
廃棄物としてガラス固化体か使用済燃料かでオーバーパックに期待する核種の完全な閉じ込め期間
に違い(理由1;スウェーデンやフィンランドの使用済燃料処分の性能評価(SKB, 1999; Posiva, 1999)
では,I-129 はそのインベントリの一部が地下水への瞬時溶解と仮定され線量評価において支配的と
なるため長期の閉じ込めが重要となるため(なお,ガラス固化体には I-129 は含まれない)。理由2;
使用済燃料の地下水への溶解は,α線による放射線分解の影響を受け,閉じ込め期間が長いほど溶解
速度が小さくなるが,ガラス固化体の溶解速度は閉じ込め期間に依存しないため。)がみられること
などについて整理した。
安全性に関する信頼性を高めるための鍵となる論点に関する実際の地質環境を対象とした一連の評
価による例示を踏まえた検討
安全性に関する信頼性を高めるための鍵となる論点のひとつに、
「評価アプローチに関する信頼性」
が挙げられている。この中には、「体系的なアプローチの構築」、「追跡し確認できる枠組みに基づ
く評価の実施」、「くり返しアプローチによる理解の進展」が含まれており、これは、安全評価の個々
の評価要素の信頼性を向上させることはもとより、安全評価を実施する上での適切なフレームを構築
し実用に供することの重要性を示していると考えられる。そのため、地質環境調査から得られた情報
を起点に物質移行解析までを行う一連の作業について、個々の作業要素を設定するとともに、それら
要素を体系的に連結した作業フレームを試作した(図1)。その上で、超深地層研究計画および幌延
深地層研究計画で得られた地質環境情報を利用しつつ、このフレームに沿った個々の要素の作業内容
−294−
JNC TN1400 2005-018
の具体化と一連の作業の試行を開始した(物質移行解析は主に天然バリアに着目した)。この試行を
進める中で、一連の作業を効率的に進めるためには、
・ 各要素の作業内容とプロダクトを,その段階で利用可能な地質環境情報あるいは上流側要素の作
業結果の種類や質を踏まえて適切に設定するとともに、関係者間で共有・追跡できるようにする
こと
・ さらに、共通性の高い要素では、作業内容とプロダクトの共有のみならず、その作業の実施にも
関係者が適切に参画できる仕組みとすること
が重要であることが認識され、適宜個々の要素の作業内容の具体化に反映した(図1)。なお、この
ような点に留意することは、作業の効率化のみならず、作業全体に対する関係者の理解を深め、作業
フレームに沿った作業の実施、および一連の作業をくり返し実施する際のフィードバックを円滑に進
めるための環境整備としても重要になると考えられる。
地層処分の安全確保に関わる品質マネジメントの適用の観点の検討
地層処分の安全確保に関わる品質マネジメントの適用の観点を以下のように整理した。併せて,品
質マネジメントを踏まえた研究開発の方向性について検討した。
・ 地層処分の安全についてステークホルダ(例えば、国・地方自治体、規制者、公衆)による満足
を得るため、以下のようなマネジメントシステムが国際的な安全要件として求められている。
(IAEA, 2004)
品質保証のためのマネジメントシステムは、処分場の建設や操業などのすべての段階を通して、
安全性に関わるすべての活動、システム、構成要素に適用すること
それぞれに対する保証のレベルは、安全性の重要度に見合ったものであること
・ 地層処分の安全確保に関わるプロセスにおいて、品質マネジメントが以下の観点から重要。
閉鎖後の安全性に関するセーフティケースの信頼性に関する多岐に渡る様々な分野の情報の取
扱い(定量的・定性的、不確実性を含む:研究開発、サイト調査、設計要件、専門家の判断)
- 頑健なシステムの構築:対策の品質(サイト選定・調査と設計)
- 安全評価の信頼性
段階的意思決定プロセス
安全審査への反映
・ 地層処分の品質マネジメントにおいては以下の点を考慮すべき。
地層処分システムの重要な構成要素である地質環境は、特性・プロセスを調査・把握するのみ(人
工物のように設計・製造するものではない)
サイト調査、設計、安全評価の繰り返しにより、段階的に構築する処分システムに対する理解の
信頼性が向上するものの、不確実性を完全に取り除くことはできない
不確実性の重要度は、セーフティケース構築における安全評価を踏まえ判断すべきもの
柔軟性の確保
- 予期しないサイトの特徴、技術的な難題や不確実性への対処
- 科学的理解の進展や工学技術向上の取込み
ステークホルダを満足させるための遵守事項等(法律、自治体との取決め、公衆の懸念への配慮
など)
・ 品質マネジメントを踏まえた研究開発による取組みの方向性(ナレッジマネジメントとの融合)
セーフ ティ ケ ースは,地層処分の安全確保に関わる品質マネジメントの適用を踏まえ,地層処
分計画の段階的な進展に応じ て繰り 返し 構築さ れる も のである 。し たがっ て 、前のセーフ ティ ケ
ース構築の経験を 活かし て 、次の段階でのセーフ ティ ケ ースを 構築する こ と が重要と なる 。こ の
ため,セーフ ティ ケ ースの構築において、ナ レッ ジマネ ジメ ン ト の観点から 適切に知識化を 図り ,
次の段階のセーフ ティ ケ ース構築に適切に知識を移転し て いく 必要がある 。こ のよ う な知識移転
のあり 方と し て以下の点に留意すべき 。
- セーフ ティ ケ ース構築の頻度(多く と も 、数年に 1 回程度)
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JNC TN1400 2005-018
- 移転さ れる 知識のタ イ プ(形式知+ 暗黙知)
- 業務の質(組織全体に影響を与え る も の)
セーフ ティ ケ ースに関わる 「知識」の移転は、形式知だけでなく 、暗黙知も 重要である こ と か
ら 、知識化と と も に、人的協力を 伴っ て知識移転を 図る こ と が適切と 考え ら れる 。
以上のこ と から ,処分事業や規制への研究開発側から の貢献と し て は、地層処分の安全確保に
関わる 品質マネ ジメ ン ト を 踏ま え て 研究開発を実施する こ と によ り ,セーフ ティ ケ ースの枠組み
を 踏ま え つつ、特に事業者や規制者が共有し う る 知識基盤を 整備し 、専門的なノ ウ ハウ と と も に
知識移転を図っ て いく こ と が重要。
補完的指標に関する 検討
天然に存在する放射性物質や化学物質の濃度とフラックスについては、昨年度までに IAEA の国際
共同研究プロジェクト「放射性廃棄物処分の安全評価における安全指標(濃度、フラックス)の使用」
における国際的データベース作成に供するわが国の研究状況として情報提供を行っているが、その成
果を取りまとめた、IAEA TECDOC の作成に協力した。
(参考文献)
1) SKB(1999):SR97 - Post-closure Safety, SKB Technical Report TR-99-06, SKB, Stockholm,
Sweden.
2) Posiva(1999)
:Safety Assessment of Spent Fuel Disposal in Hastholmen, Kivetty, Olkiluoto
and Romuvaara TILA-99, Posiva 99-07, Posiva, Helsinki, Finland.
3) IAEA(2004)
:Geological Disposal of Radioactive Waste,Draft Safety Requirements DS154.
【研究の達成状況(平成16年度)
】
地層処分による影響を評価する際の視点に関して、時間スケールに応じた安全評価の鍵となる安全機能
を整理するとともに、補完的安全指標に関するIAEAのプロジェクトに協力することにより、所期の成果
が得られた。
また、信頼性をもって地層処分の安全性を示すための手法に関して、安全性に関する信頼性を高めるた
めの鍵となる論点を実際の地質環境を対象とした一連の評価に展開し具体的に検討するとともに、品質
マネジメントの適用の観点から地層処分の安全確保に関わる留意点を整理することにより、所期の成果
が得られた。
(今後の予定)
国際的な動向を踏まえながら、段階を踏んだ処分の進め方におけるセーフティケース構築や時間スケー
ルに関する性能評価上の取扱いにおいて重要となる視点の整理、および安全評価指標に関する考え方の
整理等を継続して行う。
【成果の利用実績及び活用見通し】
安全評価の基盤技術として、安全基準や安全審査指針の策定等に資する予定である。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
IAEA, The use of selected safety indicators in the assessment of radioactive waste disposal, IAEA TECDOC Series,
2005. (to be published)
(発表予定)
なし
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
なし
−296−
JNC TN1400 2005-018
(参考文献)
[海外の研究の現状と動向]
安全評価の結果が環境安全の観点から所定の線量やリスクの値(拘束値)を超えないこと、あるい
は、超えるような事象の発生可能性が事前の対策により合理的に達成可能な範囲で十分に低減でき
ることを明示するだけでなく、サイト選定,処分場設計などの対策そのものの信頼性についても明
らかにすることが求められている(ICRP, 2000;IAEA, 2003;NEA, 2004a)
。
米国でユッカマウンテンの安全基準である EPA 40CFR Part 197(2001 年 6 月公布)において処分後
1万年までの線量基準を示している。一方、この安全基準において拠り所とすべきとされていた米
国科学アカデミーの報告書(NAS,1995)では、地質環境が安定な百万年程度までのピークリスクに
対する基準の適合を勧告していた。EPA は、このような長期にわたり信頼性のある処分場性能の推
定を行うことはできないことから、WIPP の基準と同様に1万年までの基準遵守期間を設定するとと
もに、米国科学アカデミーの勧告を踏まえ、システム性能の指標としてピーク線量の算定について、
DOE に対し環境影響評価書に含めるよう求めた。2004 年 7 月に裁判所が1万年の時間枠に対する再
検討を EPA に求めたことから、現在 EPA では基準の見直しを行っており、1万年を超えた意味のあ
る基準遵守期間として、どの程度のものを用いることができるのかについて、様々な選択肢を考慮
しつつ検討している。なお,処分場閉鎖後の長期安全性に関わる評価における時間スケールの取扱
いについては国際的にも議論されている (NEA, 2004b)。
(参考文献)
1) ICRP(2000): Radiation Protection Recommendations as Applied to the Disposal of long lived Solid
Radioactive Waste, ICRP Publication 81, Pergamon Press, Oxford and New York.
2) IAEA(2003): Geological Disposal of Radioactive Waste, Draft Safety Requirements, DS154, IAEA Safety
Standards Series, International Atomic Energy Agency Vienna.
3) NEA (2004a): Post-closure Safety Case for Geological Repositories Nature and Purpose, OECD/NEA,
Paris, France.
4) EPA (2001) : 40 CFR (Code of Federal Regulations) Part 197, Protection of Environment: Public
Health and Environmental Radiation Protection Standards for Yucca Mountain, Nevada.
5) NRC (1995) : Technical Bases for Yocca Mountain Standards, National Research Council, National
Academy Press, Washington, D.C., USA.
6) NEA (2004b) : The Handling of Timescales in Assessing Post-closure Safety Lessons Learnt from
the April 2002 Workshop in Paris, OECD/NEA, Paris, France.
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
■ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
−297−
)
JNC TN1400 2005-018
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
【自由評価欄】
特になし
−298−
JNC TN1400 2005-018
地質環境の調査,
データの解釈/
データセット
地質環境モデル
の構築
*1:地下水化学、岩石の
物理化学特性 など
物質移行解析に関する
物質移行解析に関する
*1
地質環境の特性の整備
地質環境の特性の整備*1
*2:流速、移行距離、分配係数、
溶解度、拡散係数 など
物質移行解析で用いる
パラメータの設定*2
物質移行概念の検討
物質移行概念の検討
物質移行モデルの作成
地下水流動解析
物質移行解析
地下水流動結果の評価
地下水流動結果の評価
物質移行解析結果の評価
*3
(流動傾向,中間指標
(流動傾向,中間指標*3、不確実性など)
、不確実性など)
(傾向(含む中間指標との関係)、
不確実性の影響、影響要因など)
*3:流速、移行距離 など
地質環境調査から物質移行解析に至る一連の技術の適用性の評価
地質環境調査から物質移行解析に至る一連の技術の適用性の評価
:地質環境の調査・評価
側が中心となる作業
図1
:物質移行解析側が
中心となる作業
:両者が協働して
行う作業
:情報や知見の
流れ
地質環境調査から得られた情報を起点に物質移行解析までを行う一連の作業フレーム
−299−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
◎2−1(廃棄2−2−1(1))
【研究分野】
地層処分
【研究課題名(Title)】
環境変動に伴う地質環境の長期安定性に関する研究
(Study on Long-term Stability for Geological Environment)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]中司 昇(なかつか のぼる)
[所属]東濃地科学センター 地質環境研究グループ
[連絡先]〒509-5102 岐阜県土岐市泉町定林寺 959-31 電話:0572-53-0211 FAX:0572-55-0180
(Name) Noboru Nakatsuka
(Title of Function) Geoscience Research Group, Tono Geoscience Center
(Address, Phone and Fax) 959-31, Jorinji, Izumi-cho, Toki-shi, Gifu-ken, 509-5102 Japan
TEL:+81-572-53-0211 FAX:+81-572-55-0180
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]野原 壯(のはら つよし)
、梅田浩司(うめだ こうじ)
、守屋俊文(もりや としふみ)
、
浅森浩一(あさもり こういち)
[所属]東濃地科学センター 地質環境研究グループ
(Name) Tsuyoshi Nohara, Koji Umeda, Toshifumi Moriya, Koichi Asamori
(Title of Function) Geoscience Research Group, Tono Geoscience Center
【研究期間】
平成 13 年度 ∼
平成 17 年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]地質環境の長期予測に関する研究(産業技術総合研究所)
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
東濃地科学センター
【研究概要】
[研究の経緯]
我が国は太平洋を取り巻く変動帯に位置することから、10 万年オーダーの時間スケールでの安全性
を考慮する高レベル放射性廃棄物の地層処分においては、変動帯の特徴である火山活動や地震・断層活
動、隆起運動などに十分な注意が必要である。地層処分の実施に際しては、長期的な地質環境の変化に
よって地層処分システムの性能が著しく損なわれることの無いよう、地球化学的・物理的に十分に安定
な地域を選び、想定される天然現象の変動を見込んで適切な工学的対策を施し、構築された地層処分シ
ステムの安全性を評価することが重要である。このような観点から、我が国で地層処分システムに影響
を及ぼすことが想定される地震・断層活動、火山活動、隆起・侵食、気候・海水準変動について、現象
の特徴(過去から現在までの活動履歴にみられる規則性や変動の規模等)を明らかにするとともに、将
来における天然現象の発生についてその範囲や規模などを長期的に予測し、それらが地質環境へ及ぼす
影響を明らかにする必要がある。
−301−
JNC TN1400 2005-018
[研究目的]
火山活動、地震・断層活動、隆起・侵食、気候・海水準変動などの天然現象に関するデータを総合的
に整備・解析するとともに、環境変動シミュレーション手法の開発を行い、地層処分システムの長期的
な安全評価手法の信頼性向上と安全基準・指針類の策定に資する。
[研究内容]
イ)環境変動評価システムの開発
火山活動、地震・断層活動、隆起・侵食、気候・海水準変動などの天然現象の変化(プロセス・
メカニズム)
、およびそれらによる地質環境への影響に関するデータを収集・整備する。また、こ
れらのデータを用いて環境変動シミュレーション手法の開発を行う。
ロ)環境変動モニタリング
地質環境の長期安定性に関するデータおよび環境変動シミュレーション手法の信頼性を高める
ため、地殻変動観測および地下水観測を行い、長期安定性に関するデータの精度の向上、および環
境変動シミュレーション手法の改良に必要なデータを取得する。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
イ)環境変動評価システムの開発
概要調査地区選定段階に必要なデータベース整備と,それ以降の調査で必要な地質環境への影
響評価技術の開発を継続。
ロ)環境変動モニタリング
環境変動モニタリング手法の開発(モデル地域の選定)
。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ)環境変動評価システムの開発
・ 将来の隆起・侵食と広域地下水流動の変化に伴う影響の評価技術に関して、将来約 10 万年間の隆起・
侵食、海水準変動などによる地形変化を三次元でシミュレートする技術の開発を継続し、入力や解析結
果の検証に必要な侵食速度や堆積速度、隆起速度のデータを全国的に収集するとともに、断層運動や褶
曲運動などの地殻変動を組み込んだプログラムの改良を進め、試行的なシミュレーションを行った。シ
ミュレーションに当たっては、全国の地形や河川の縦断形と隆起速度や気候条件などとの関係を統計的
に解析することにより、これらを数値化して、断層活動や気候・海水準変動による地形変化を扱えるよ
うに改良した。データの蓄積およびプログラムの改良の結果、今後 10 万年程度については地形変化の
概略を再現することができた(図1)。
・ 将来の火成活動に伴う熱的影響の評価技術に関して、非火山地域の高温地域を事例に、地磁気地電流法
等の物理探査技術と希ガス同位体を用いたマグマ・高温流体等の評価技術の開発を継続し、地熱地帯の
熱履歴の復元技術の開発、地下深部のマグマ・高温流体等の調査技術開発を行った。このうち、地下深
部のマグマ・高温流体等の調査技術開発については、飯豊山地周辺地域にて地磁気地電流法による物理
探査を行った結果(図2)、飯豊山地下の地殻において高温流体等の存在を示唆する低比抵抗体が認め
られたことなどから、当該手法が地下深部のマグマや高温流体等の調査手法の一つとして有用であると
の見通しを得た。
・ 確率統計学的手法による火山活動の予測モデルとして、東北日本を事例として、沈み込み帯の火山活動
を規制する要因と考えられる地質学、地球物理学的データ等を考慮したベイズ法による火成活動の確率
モデルの開発(図3)を行い、今後 1 万年程度の火山発生確率分布についての解析事例が示された。
・ 地熱地帯の熱ポテンシャルの評価手法の開発として、一次元熱輸送モデルにより坑井温度プロファイル
から熱流束を推定する手法および三次元非定常熱−水連成解析手法の検討を行った。坑井温度プロファ
イルから熱流束を推定する手法については、雲仙火山を対象に事例研究を行い(図4)、対流を考慮し
た熱流束および温度分布の解析に適用できることが示された。
・ 横ずれ活断層とその活動に伴う力学的影響の評価技術に関しては,鳥取県西部地震の震源域などを事例
として、地下活断層(活断層のうち,その活動により直上付近にある地表の断層にずれ変位を生じさせ
るが,地表に明瞭な変位地形を伴わないもの)の検出手法と影響評価手法の開発を継続した(図5およ
び6)。さらに、断層周辺の岩盤の変形および剪断応力の変化と断層分布の関係を解析した(図7)。
その結果、断層活動に伴う河川屈曲等の地形変化に着目した地形地質調査と,断層分布調査等を組み合
わせた調査手法が,地下活断層の検出および影響評価に適用できる可能性が示された(図5および6)。
−302−
JNC TN1400 2005-018
また,過去の主な被害地震の特徴から,地下活断層が偏在する可能性が示された。
・ 逆断層帯の将来の活動に伴う変形や破断の力学的影響の評価技術に関して、横手盆地東縁断層帯におい
て周辺の地層や段丘面の空間的分布調査と、それに基づくバランス断面図の作成(図8)を行った。そ
の結果、過去数十万年間の分岐断層の出現や変形帯の発達過程が復元され(図9)、将来の変形帯や分
岐断層等の影響を評価できる可能性が示された。
ロ)環境変動モニタリング
・地震に伴う地下水流動の長期的変化のモニタリングに関して、東濃鉱山周辺の地下水観測データの解析
(図 10)および水理地質構造の解析を行い、モニタリング手法の開発を継続した。その結果、地震に伴
う水位変化と、広域地下水流動場の変化および水理地質構造の空間的な不均質性との関係が示唆された。
結晶質岩地域での地下水モニタリングポイントの配置の際、広域的な水理地質構造の把握が重要である
ことが示された。
・活断層帯の地殻変動のモニタリングに関して、活断層帯の周辺幅数十 km 程度の岩盤が変形している様子
を GPS データの解析(図 11)により捉えた。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ)環境変動評価システムの開発
概要調査地区選定段階に必要な,地層処分システムに影響を及ぼすことが想定される天然現象に関する
データベース整備および、それ以降の調査で必要な地質環境への影響評価技術の開発については、将来の
隆起・侵食と広域地下水流動の変化に伴う地質環境への影響評価に活用するための地形変化シミュレーシ
ョン技術の開発、地磁気地電流法等の物理探査技術やモデル解析による将来の火成活動に伴う熱的影響の
評価技術の開発、および地下活断層の検出手法の開発や逆断層帯の構造発達過程解明のためのモデル解析
による断層活動の影響評価の技術開発が進んだことにより、初期の成果が得られた。
ロ)環境変動モニタリング
環境変動モニタリング手法の開発については、地震活動に伴う長期的な地下水流動変化の影響評価手法
の開発、および GPS モニタリングによる活断層帯の情報の取得および将来の力学的影響の評価手法の開発
が進んだことにより、初期の成果が得られた。
【成果の利用実績及び活用見通し】
イ)環境変動評価システムの開発
・ 概要調査地区等の選定に必要な地殻変動や地質環境条件などの評価に用いるデータの整備を進めた。
・ 今後とも継続した事例研究を行うことにより、概要調査(精密調査地区選定)等に必要な地殻変動や地
質環境条件などのデータならびに評価技術を提供できる見通しを得た。
・ 地域評価の安全審査指針(調査項目、調査法、評価法など)の策定に反映可能なデータと技術を提供で
きる見通しを得た。
ロ)環境変動モニタリング
・ 既存の研究(広域地下水流動研究,陸域地下構造フロンティア研究)等の観測データの収集および解析
により、環境変動シミュレーション手法の開発に必要なデータ取得がほぼできる予定。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
1) 浅森浩一・梅田浩司・小川康雄・武田祐啓・上原大二郎・鍵山恒臣(2004):鳴子火山下における深部比
抵抗構造.地球惑星科学関連学会 2004 年合同大会予稿集,V055-012.
2) 浅森浩一・梅田浩司(2005):地下深部のマグマ・高温流体等の地球物理学的調査技術−鬼首・鳴子火山
地域および紀伊半島南部地域への適用−.原子力バックエンド研究(印刷中).
3) 藤原 治(2004):津波堆積物の堆積学的・古生物学的特徴.地質学論集「地震イベント堆積物−深海底
から陸上までのコネクション−」,第 58 号,pp.35-44.
4) 藤原 治・池原 研・七山 太(2004):地震イベント堆積物研究の重要性と防災研究への展望.地質学
論集 第 58 号「地震イベント堆積物−深海底から陸上までのコネクション−」,pp1-10.
5) 藤原 治・鎌滝孝信(2004):内湾での津波堆積物の堆積モデルと南関東における大規模の再来間隔.地
球惑星科学関連学会 2004 年合同大会予稿集,J063-004.
−303−
JNC TN1400 2005-018
6) Fujiwara, O.・Kamataki, T. and Masuda, F.(2004): Sedimentological Time-averaging and 14C Dating
of Marine Shells. Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, pp223-224. pp.540-544.
7) 藤原 治・柳田 誠・三箇智二(2004):日本列島の最近 10 万年間の隆起速度の分布.月刊地球,Vol.26,
No.7,pp.442-447.
8) 藤原 治・柳田 誠・清水長正・三箇智二・佐々木俊法(2004):日本列島における地すべり地形の分
布・特徴.日本地すべり学会誌,41,pp.335-344.
9) 金沢 淳・浅森浩一・梅田浩司・角田地文(2004):四国地方における温泉ガスのヘリウム同位体比.日
本地球化学会第 51 回年会講演要旨集,p.270.
10) 金沢 淳・富山眞吾・梅田浩司・及川輝樹(2004):地質温度計による熱履歴調査の現状と今後の課題に
ついて.サイクル機構技報,No.26.pp.1-18.
11) Kudo,T.・Yamamoto,A.・Nohara, T.,・Kinoshita, H.(2004):Variations of standard deviation of
gravity anomalies in Chugoku district, Japan.Earth Planets Space,56,ppe5-e8.
12) Martin, A.・Umeda, K.・Connor, C. B.・Weller, J. N.・Zhao, D.・Takahashi, M. (2004): Modeling
long-term volcanic hazards through Bayesian inference: An example from the Tohoku volcanic arc,
Japan. J. Geophys. Res., 109, B10208, doi:10.1029/2004 JB003201.
13) 眞島英壽・田島俊彦(2004):北西九州長崎周辺地域が語る高 Mg 安山岩の起源. 日本質学会 111 年
大会講演要旨集,p.165.
14) Mashima, H.(2005): Partial melting controls on the northwest Kyushu basalts from aga-Futagoyama.
The Island Arc, 14, pp.165-177.
15) Mori, Y.・Mashima, H.(2005): X-ray fluorescence analysis of major and trace elements in silicate
rocks using 1:5 dilution glass beads. Bull. Kitakyushu Mus. Nat. Hist. Ser. A, 3, pp.1-12.
16) 鳴橋竜太郎・須貝俊彦・藤原 治・粟田泰夫(2004):完新世浅海堆積物の堆積速度の変化から見た桑名
断層の活動間隔.第四紀研究,No.43,pp.317-330.
17) 野原 壯・木下博久(2004):鳥取県西部地震と地質環境の長期安定性.月刊地球,Vol.26,No.6,
pp.372-377.
18) 及川輝樹・古澤 明・高橋 康(2004):中部日本,小諸層群における鮮新世広域テフラ‐大田-Znp 火山
灰の発見‐.日本地質学会 111 年大会講演要旨集,p.193.
19) 及川輝樹・古澤 明・高橋 康(2005):中部日本,小諸層群における鮮新世広域テフラ;大杭層中の火
砕流堆積物と大田‐Znp 火山灰との対比.地質学雑誌,vol. 111,No.5,pp.308-311.
20) Oikawa, T.・Nishiki, K.(2005):K-Ar ages for lavas from the Kirigamine Volcano, central Japan.
Bull. Volcan. Soc. Japan, 50, pp.143-148.
21) 及川輝樹・西来邦章・名取克裕(2004):霧ヶ峰火山の活動年代.−塩嶺層における火成活動(その1)
−.2004 年地球惑星科学関連合同学会,G017-P004.
22) 及川輝樹・西来邦章・名取克裕(2004):諏訪湖周辺の塩嶺火山岩類の年代.‐塩嶺層における火成活動
(その2)−.火山学会 2004 年秋季大会.
23) 及川輝樹・和田 肇(2004):飛騨山脈北部の 1Ma 頃の急激な隆起 ‐北部フォッサマグナ西縁,居谷里層
の礫組成を指標として−.地質学雑誌,vol. 110,No.9,pp.528-535.
24) 鷺谷威(2004):GPS データを用いた地殻変動解析手法に関する研究,核燃料サイクル開発機構委託研究
成果報告書;名古屋大学,JNC TJ7400 2004-010.
25) 坂川幸洋・梅田浩司(2004):一次元熱輸送モデルによる熱流束推定手法の再検討.2004 年地球惑星科
学関連合同学会,T032-P002.
26) 坂川幸洋・梅田浩司(2004): 坑井温度プロファイルを基にした熱・流体輸送解析.平成 16 年度応用地
質学会中部支部研究発表会 講演会予稿集, pp.27-32.
:日本の坑井温度プロファイルデータベ
27) 坂川幸洋・梅田浩司・鈴木元孝・梶原竜哉・内田洋平(2004)
ース.地震 2, 57, pp.63-67.
28) 坂川幸洋・梅田浩司・浅森浩一(2005):熱移流を考慮した日本列島の熱流束分布と雲仙火山を対象とし
た熱・水連成シミュレーション.原子力バックエンド研究(印刷中)
.
29) 佐藤比呂志:逆断層帯の地質構造の三次元的モデル化のための弾性波探査手法に関する研究,サ
イクル機構委託研究報告書;東京大学,JNC TJ7400 2004-011.
30) 武田精悦・中司 昇・梅田浩司(2004):地質環境の長期安定性と地層処分.−今後の研究開発に向けた
視点−.月刊地球,Vol.26,No.6,pp.332-338.
31) 梅田浩司・古澤 明(2004):RIPL 法によるテフラ降灰層準の認定と最新の噴火活動の推定.月刊地球,
Vol.26,No.6,pp395-400.
−304−
JNC TN1400 2005-018
32) 梅田浩司・浅森浩一・及川輝樹・角田地文・趙 大鵬・鎌谷紀子(2004):前弧域の非火山地帯における
高温異常域について.−紀伊半島中∼南部の地殻・マントル構造と温泉ガスのヘリウム同位体比−.月
刊地球,Vol.26,No.6,pp.407-413.
33) 梅田浩司・浅森浩一・及川輝樹・角田地文・趙 大鵬・鎌谷紀子(2004):紀伊半島の地殻・マントル構
造と温泉の成因について.2004 年地球惑星科学関連合同学会,G018-003
34) 梅田浩司・大澤英昭・野原 壯・笹尾英嗣・藤原 治・浅森浩一・中司 昇(2005):「地質環境の長期
安定性に関する研究」の概要−日本列島のネオテクトニクスと地質環境の長期安定性.原子力バックエ
ンド研究(印刷中)
.
35) 柳田 誠・藤原 治・後藤憲央・佐々木俊法(2004):谷密度と起伏量による丘陵の定義.地学雑誌,
Vol.113,No.6,pp.835-847.
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
原子力安全委員会により、安全規制や安全評価の基本的な考え方とともに、概要調査地区選定段階に
おける火成活動、地震活動、隆起・侵食等に関わる環境要件およびそれ以降の調査で検討すべき内容が
示された((1),(2))
。また、具体的な検討課題や安全規制の支援体制等も示されている(3)
。これら
に基づいて、原子力発電環境整備機構は、処分場の概要についての背景や技術的根拠となる情報(4)、
概要調査地区選定上の考慮事項について、その背景となる考え方や判断の科学的・技術的根拠とした情
報、データ、関連資料(5)を示している。
(参考文献)
(1)原子力安全委員会(2000):高レベル放射性廃棄物の処分に係わる安全規制の基本的考え方につ
いて(第1次報告)
.
(2)原子力安全委員会(2002):高レベル放射性廃棄物処分の概要調査地区の選定段階において考慮
すべき環境要件について.
(3)総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会 廃棄物安全小委員会(2003):高レベル放射
性廃棄物処分の安全規制に係わる基盤確保に向けて.
(4)原子力発電環境整備機構(2004):高レベル放射性廃棄物地層処分の技術と安全性−「処分場の
概要」の説明資料−.
(5)原子力発電環境整備機構(2004):概要調査地区選定上の考慮事項の背景と技術的根拠−「概要
調査地区選定上の考慮事項」の説明資料−.
[海外の研究の現状と動向]
長期的な安全性について将来十万∼百万年程度を想定した議論がなされている((1)など)。このよう
な長期の時間スケールにおいては、不確実性が増加するため多面的な議論の重要性が指摘されており
(2)、それらにより線量やリスク等の予測と適正な基準との比較ができるだろうと考えられている(3)
。
各国とも、国民のコンセンサスを得る上で長期安定性に係わる評価は極めて重要という共通認識がある
一方で、現時点で具体的な規制要件はなく、より定性的な議論が重みを増すという考えもある(4)。国
ごとに主な検討対象とされる天然事象は異なり、氷河等による侵食の影響((5),(6)など)
、地震や火
山の影響((6),(7))などの評価が重視されている。
(参考文献)
(1)OECD/NEA (2004):Stability and Buffering Capacity of the Geosphere for Long-term Isolation
of Radioactive Waste. Clay Club Workshop Proceedings, No.5303.
(2) OECD/NEA (2002):Establishing and Communicating Confidence in the Safety of Deep Geologic
Disposal Approaches and Arguments.
(3) IAEA (2003):Geological Disposal of Radioactive Waste, DRAFT SAFETY REQUIREMENTS. IAEA
Safety Standards Series, DS-154.
(4) OECD/NEA (2004):The Handling of Timescales in Assessing Post-closure Safety, Lessons Learnt
from the April 2002 Workshop in Paris.
(5)
Nagra
(2002) : Project
Opalinuston:
Synthese
der
geowissenshaftlichen
Untersuchungsergebnisse. Entsorgungsnachweis fur abgebrannte Brennelemente, verglaste
hochaktive sowie langlebige mittelaktive Abfalle. Nagra Technischer Bericht NTB 02-03.
(6) AkEnd (2001):Site Selection Procedure for Repository Sites Recommendations of the AkEnd
−305−
JNC TN1400 2005-018
- Committee on a Site Selection Procedure for Repository Sites.
(7) DOE (2002):Yucca Mountain Science and Engineering Report Rev.1, Technical Information
Supporting Site Recommendation Consideration, DOE/RW-0539-1.
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
■ 指針・基準類への整備に反映できる。
■ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
)
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
■ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:環境変動モニタリングについては,体制の見直しに伴い,既存データを活用するこ
とで概念的な手法開発の方針はほぼ見通しがついているが,手法の改良および適用は困難。)
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
【自由評価欄】
特になし
−306−
JNC TN1400 2005-018
現在
2万年後
4万年後
6万年後
8万年後
10万年後
・3∼6万年後が寒冷期
・流路は現在の位置を比較のため表示
12万年後
図1 地形変化陰影図
−307−
JNC TN1400 2005-018
A
B
140°E
38°N
A
飯
豊
山
地
B
■ 観測点
▼ 観測点
図2 飯豊山地周辺における電磁気観測点位置(左図)および 2 次元比抵抗構造解析結果(右図)
図中の丸印および星印はそれぞれ微小地震および低周波微小地震の震源を示す。右図より,観測点110周辺下の10km以深にお
いて顕著な低比抵抗体が認められる。
図3 東北日本における今後 1 万年間
についての火山発生確率分布
図4 雲仙火山付近の地表における総熱流束分布(上図)
および温度分布断面図(下図)
−308−
JNC TN1400 2005-018
図5 活断層および河川屈曲
を伴うリニアメントの分布
高田ほか(2003)のリ ニア メ ン ト
のう ち,河川屈曲を 伴う リ ニア メ
ン ト を 示し たも の。点線の範囲は
2000 年震源域の範囲を示す。
図6 河川屈曲を伴うリニアメントと貫入岩
との対応
2000 年震源域で抽出した河川屈曲を伴うリニアメン
ト 6 本のうち 4 本には,対応する可能性のある断層
が貫入岩沿いやその近傍で確認される。図の範囲は,
図5の点線の範囲に相当する。
図7 震源断層の活動に伴う周辺岩盤中の弱面の誘発性のすべり
鷺谷ほか(2002)の震源断層モデル(黒線)と Toda et al.(1998)の解析手法を用いて,剪断
能力の変化(左図)と,近傍の断層に生じる誘発性すべりの水平方向の変位量(右表)を示し
た。リニアメント(緑線;高田ほか(2003)
)に対応する断層を想定し,摩擦係数はゼロとした。
−309−
JNC TN1400 2005-018
図8 横手盆地東縁断層帯のバランス断面図
――:断層,---:断層の活動前の形,- - -:現在の地形,←:水平短縮量
□K:北浦層相当(千屋層・田沢層など)
,■Fa:船川層相当(弥勒層安山岩など)
,■Ft:船川層相
当(弥勒層凝灰岩など)
,■Fm:船川層相当(弥勒層泥岩など)
,■Om:女川層相当(吉沢川・小
繁沢層硬質泥岩など)
,■MH:西黒沢・台島層相当(真昼川・湯田層など)
,■Gr:先第三紀花崗岩
類
図9
2.4Ma 以降の横手盆地東縁断層帯の変形量および短縮量の分布図(左図)と断層構造の発達史(右図)
−310−
JNC TN1400 2005-018
253.5
1990/2/20 の地震
(M6.5、震源距離 196km)
DH-9
253
2000/10/6
鳥取県西部地震
50cm
252.5
237
SN-3 の地下水位
160
236.5
潮汐・気圧補正後の水位
1999/11/29 の地震
(M4.7、震源距離 64km)
159.5
SN-3
DH-2
236
235.5
235
1994/11/20 の地震
(M4.4、震源距離 34km)
159
158.5
-15
-10
-5
0
5
10
地震発生時
8月
9月
10月
11月
12月
15
days
158
2000年
図 10
涵養域(DH-9)と流出域(SN-3,DH-2)における鳥取県西部地震に伴う地下水位変化(左図)と
SN-3 における地震に伴う地下水位変化(右図)
左図では,涵養域(DH-9)で地震後地下水位が顕著に低下し,湧水域(SN-3,DH-2)ではゆるやかに上昇している。右図では,地震直後の
急激な地下水位の低下の後,ゆるやかに上昇している。
図 11 GPS データの解析により求めた跡津川断層周辺の地殻変動速度
国土地理院の GPS データ(1996 年 4 月∼2000 年 5 月)をもとに,地理院の観測点(950279)を定点とした。
上図の矩形領域内のデータを用いて下図の断層走向方向の地殻変動速度を求めた。
(鷺谷,2004)
−311−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
◎2−2(廃棄2-2-2(1))
【研究分野】
地層処分
【研究課題名(Title)】
結晶質岩に関する地質環境評価手法に関する研究
(Methodology development for the characterization of crystalline rock)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名,所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]小出 馨(こいで かおる)
[所属]東濃地科学センター 瑞浪超深地層研究所 超深地層研究グループ
[連絡先]〒509-6132 岐阜県瑞浪市明世町山野内 1-64 電話:0572-66-2244 FAX:0572-66-2245
(Name) Kaoru Koide
(Title of Function)
Underground Research Group, Mizunami Underground Research Laboratory, Tono Geoscience Center
(Address, Phone and Fax) 1-64, Yamanouchi, Akeyo-cho, Mizunami-shi, Gifu-ken, 509-6132 Japan
TEL:+81-572-66-2244 FAX:+81-572-66-2245
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]太田久仁雄(おおた くにお),池田幸喜(いけだ こうき),竹内真司(たけうち しんじ)
,
佐藤稔紀(さとう としのり)
,岩月輝希(いわつき てるき),天野健治(あまの けんじ),
三枝博光(さえぐさ ひろみつ)
[所属]東濃地科学センター 瑞浪超深地層研究所 超深地層研究グループ
(Name) Kunio Ota, Koki Ikeda, Shinji Takeuchi, Toshinori Sato, Teruki Iwatsuki, Kenji Amano,
Hiromitsu Saegusa
(Title of Function)
Underground Research Group, Mizunami Underground Research Laboratory, Tono Geoscience Center
【研究期間】
平成 13 年度 ∼ 平成 17 年度
【関連する共同研究,実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
瑞浪超深地層研究所、正馬様用地、東濃鉱山、東濃地科学センター周辺地域、ペレトロン年代測定棟
【研究概要】
[研究の経緯]
サイクル機構では、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発として、「深地層の科学
的研究」(以下、地層科学研究)を実施してきている。地層科学研究の課題項目の1つに、「地質環境
特性に関する研究」がある。この研究のうち、花崗岩を対象とした研究については、東濃地科学セン
ター(岐阜県土岐市)周辺を研究対象として実施している。
当該研究を実施するにあたり、限られた調査量で効率的に地質環境特性を把握していくこと、及び
特に結晶質岩においては、いろいろな規模の断層や割れ目などが地質環境の不均質性を大きく支配し
ていること、さらに処分システムの設計や安全評価との連携を考慮して、表1及び図 1 に示すような
空間スケールを設定した。設定した空間スケールのうち、広域スケールの研究については「広域地下
−313−
JNC TN1400 2005-018
水流動研究」
(図2)において、また、施設スケールの研究については、
「超深地層研究所計画」
(図3)
において進めてきた。
本研究課題では、これら2つの研究プロジェクトの成果を有機的に組み合わせることにより、結晶
質岩を対象とした地質環境評価手法を構築するものである。
[研究目的]
結晶質岩を対象とした地質環境に関するデータを整備し、これらを基に地質環境評価手法を開発す
ることにより、安全基準・指針類の策定及び安全評価手法の確立と関連する地質環境評価手法の信頼
性向上に資する。
[研究内容]
イ)地質環境評価手法に関する研究(広域スケール)
地下水の主要流動経路の特定や水質形成機構を解明するため、広域(地下水流動系の涵養域から流
出域までを含む数㎞四方以上の領域)における地表から地下深部までの地質・地質構造を把握するた
め、文献調査、空中写真判読、空中物理探査、地上物理探査、地表踏査、ボーリング調査を実施し、
地下深部の地質構造、岩盤水理特性、地下水の地球化学特性に関するデータを取得する。これらのデ
ータを基に、地質構造概念モデル、水理地質構造モデル、地下水の地球化学モデルを構築し、広域ス
ケールの結晶質岩(土岐花崗岩:図4)を対象とした地表からの調査技術、モデル化技術を開発する。
併せて、ボーリング孔を用いて測定されたデータに関し、品質管理技術、精度(不確実性)評価につ
いて調査を行うとともに、構築されたモデルの妥当性の評価手法について、海外での事例の調査を含
めて検討を行う。
ロ)地質環境評価手法に関する研究(施設スケール)
超深地層研究所計画の地表からの調査(第1段階)により取得される地質環境に関するデータを基
に、地下の地質環境を推定し、地下研究施設建設に伴う影響を予測するとともに、海外での事例の調
査を含めて予測結果の評価方法を検討する。また、坑道からの調査により地質環境データを取得し、
地表からの調査による予測の妥当性を評価するとともに、地下施設の設計・建設技術や掘削影響修復
技術の有効性を確認する。さらに、ボーリング孔等を用いて測定されたデータに関し、品質管理技術
と精度(不確実性)評価手法について調査を行う。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
地質環境評価手法に関する研究(広域スケール,施設スケール)について、平成 17 年度に計画している
本研究成果の取りまとめに向けて、引続き以下の目標を設定した。
イ)地質環境評価手法に関する研究(広域スケール)
深部地質環境を総合的に精度良く理解するための地質環境データセットの基本的考え方の提示
ロ)地質環境評価手法に関する研究(施設スケール)
地表からの調査における地質環境データセットの基本的考え方の提示
地下深部までの地質環境を総合的に理解するための研究プロセスの具体化、研究実施領域を事例とした
地質環境を理解するための調査体系の例示
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ)地質環境評価手法に関する研究(広域スケール)
平成 16 年度においては,深部地質環境を総合的に精度良く理解するための地質環境データセットの基本
的考え方の提示に向け、地層処分での地下施設の設計・施工、環境影響評価及び安全評価において重要な
地質環境特性の項目を整理し、広域スケール(ローカルスケール)における調査・解析から得られるデー
タやモデルの反映先(地下施設の設計・施工、環境影響評価、安全評価)に至る道すじを示した統合化デ
ータフローを検討した。また、統合化データフローを構築する上での基盤情報となる広域スケールを対象
とした各調査・評価技術の有効性や適用性の評価を平成 15 年度に引続き実施した。
1)地層処分において重要な地質環境特性の項目の整理
地層処分おいては、地質環境に対して、廃棄物を長期にわたって物理的に隔離すること、人工バリアに
とって適切な設置環境を提供すること、及び天然バリアとして機能することの三つの役割が期待されてい
る(サイクル機構,1999)
。地質環境がこのような役割を果たし、地層処分の技術的実現性をより確かなも
のとしていくためには、地質環境に対して長期的に安定であること、さらには以下のような条件や特性が
−314−
JNC TN1400 2005-018
期待される。
対象とする岩盤が十分な深度に分布し、地下施設を建設するうえで十分な空間的広がりを有すること。
対象とする岩盤が地下施設を建設できる力学的安定性を有し、温度環境を確保することができること。
緩衝材の流出、オーバーパックの腐食及びガラスの溶解を抑制する観点から、処分場を通過する地下水
流束が小さく地下水が還元性であること。
対象とする岩盤中の地下水流動が緩慢で移行距離が長く、核種移行に十分な遅延効果が期待できること。
生物圏に至る放射性核種の濃度を低減させる観点から、対象とする岩盤に核種の希釈効果が期待できる
こと。
上記の観点とともに海外での先行事例(例えば,SKB, 2000)を参考に、結晶質岩において把握すべき地
質環境特性の項目(個別目標)と特性を評価する上での課題を抽出し、各課題に対する情報がどの空間ス
ケールにおける調査評価で得られるかを検討した。その結果を 8 つの個別目標とそれに関連する 25 の課題
を設定し、成果が期待できる度合いを各空間スケールに示した。
(表 2:サイクル機構,2004)。
2)広域スケールにおける統合化データフローの検討
平成 13 年度から蓄積した地質環境特性に関する知見ならびに実際の調査を通して得られた経験を基に、
上記 1)の検討から設定された地質環境特性の個別目標と関連する課題に対応する情報を取得するために有
効と考えられる調査・解析項目の検討を広域スケール(ローカルスケール)の各段階(既存情報を用いた
調査・解析段階、空中・地表からの調査解析段階、ボーリング孔を利用した調査・解析段階)に対して実
施した。
3)調査・評価技術の有効性・適用性の評価
①調査技術
a)ボーリング調査による断層・割れ目調査
広域スケールに分布する地下水流動や地下水の水質を規制すると考えられる大規模な断層や割れ目帯の
同定、及びその分布特性や地質学的特性を把握する調査技術開発の開発・整備のために、2 本の 1,000m 級
の深層ボーリング孔(DH-14,15 号孔)を利用した地質学的・地球物理学的調査および水理学的調査を実
施した。得られた地質環境特性に関する知見ならびに調査手法の有効性・適用性評価の結果を以下に示す。
DH-14 号孔(鉛直孔,掘削深度 1,012m;図 5)及び DH-15 号孔(鉛直孔:掘削深度 1,012m;図 7)共に,
各ボーリング孔の近傍に分布するリニアメント(山井,1994)の走向と調和的な断層と遭遇した(図 6,8)。
DH-15 号孔で実施されたマルチオフセット VSP(Vertical Seismic Profile)探査の結果により,ボーリン
グ孔周辺における断層などの不連続構造の連続性を把握することができた。
DH-15 号孔において水理試験及び流体検層として温度検層、フローメータ検層、電気伝導度検層を実施し
た。その結果、確認された深度 576.0∼596.6m 及び深度 605.4∼629.9m の断層帯の透水量係数は、各々
7.55×10-6 ㎡/sec、2.37×10-6 ㎡/sec であった。また、電気伝導度検層はフローメータ検層などの他の流
体検層手法に比較して、感度および分解能の点で優れており、本ボーリング孔においても 52 箇所の地下
水の流入点が抽出された。
これらの流入点を含む水理試験区間の透水量係数は 2.37×10-6 ㎡/sec∼9.87×
-4
10 ㎡/sec であり、電気伝導度検層により高透水性の割れ目帯を捉えることに成功している。
以上の結果から、空中写真判読によって抽出されたリニアメントは、断層などの不連続構造を反映して
いる可能性が高く、より詳細な不連続構造の調査計画立案にとって有効な情報となること、ボーリング孔
に遭遇した不連続構造の連続性などの評価にマルチオフセット VSP 探査は有効な調査技術であること、水
みちの抽出には電気伝導度検層が有効であること等を例示することができた。
②評価(モデル化)技術
a)地下水流動に関するモデル化手法の検討
平成 16 年度は、これまでのローカルスケールにおける水理地質構造モデルの構築及び地下水流動解析の
補足的検討として、断層が深部岩盤中の地下水流動特性に与える影響を評価するため、水理地質構造モデ
ルに取り込む断層数及び水理特性に着目した感度解析を実施した(森田ほか,2005)。解析においては、既
存情報やリニアメント判読から確認・推定された断層をトレース長に基づきグループ化し、次に既知の断
層のみが存在する地質構造モデルを基本に、グループ化した断層を順次追加し、断層数が異なる 5 つのモ
デルを構築した(表 3,図 9,10)
。また、断層の水理特性については、既往の断層調査の結果を参考に、
断層ガウジや断層角礫から成る「断層主要部」とその周辺に副次的に発生した割れ目のネットワーク化し
た部分「断層に伴う割れ目帯」からなる断層の概念モデルに基づき、高透水性のケース、低透水性のケー
ス、及び透水異方性を有しているケースを設定し、断層数及び水理特性の違いが地下水流動解析結果に与
える影響を検討した。本解析の結果を以下に示す。
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断層に透水異方性を設定した場合、断層を境に全水頭分布に明瞭なコントラストが見られ、特に、地下
水の主流動方向にほぼ直交する方向の断層でその影響が顕著である。
地下水の主流動方向にほぼ直行する方向の断層が複数存在する場合、これらに挟まれた領域では、全水
頭コンターの間隔が広くなり動水勾配が小さくなる。これは透水異方性を与えた場合に見られる特徴的
な傾向である(図 11,12)
。
地下水の移行経路は、全水頭分布と同様に、地下水の主流動方向にほぼ直交する方向の断層により大き
く影響を受け、かつ、その断層数の増加に伴い移行経路長が短くなっていく様子がパーティクルトラッ
キング法で得られた移行経路図(図 13)から窺える。
平均移行速度(=移行経路長/移行時間)は、断層数が増加するに伴って、流速が低い部分が増加して
いる(図 14)
。これは透水異方性を有する断層によって閉じた空間が増加し、その内部では動水勾配が小
さくなることや、低透水性を有する断層主要部の通過時間が増大するためと考えられる。
透水異方性を設定したケースにおいては、断層の上流部での地下深部から地表への上向き方向の地下水
の移行経路が認められたが、断層に高透水性を設定したケースでは、このような傾向は認められず、地
下水は断層よりも下流側に移行するといった結果が得られた(図 15,16)
。また、断層に低透水性を設定
したケースでは、透水異方性を設定したケースと同様に地下深部から浅部への上向き方向の流れが認め
られるものの、その移行経路は地表まで到達せずに、地下浅部で断層を通過し下流方向に流れる。
断層による地下水流動への影響の範囲は,断層のトレース長が長いほど広がる傾向が認められた。
以上のことから、断層の規模・方向及び水理特性は、地下水の水頭分布や移行経路などに大きな影響を
与えることから、広域スケールにおいてはトレース長が長く、地下水の主流動方向にほぼ直交する方向の
断層を優先して、その地質学的・水理学的特性を把握することが重要である。
b)地下水地球化学に関するモデル化手法の検討
これまでの広域地下水流動研究における地下水調査の結果から、研究実施領域の南部においては、塩分
濃度の異なる複数の地下水の混合により Na-Cl 型地下水が存在することが明らかになっている。このよう
な異なる地下水の混合により水質が形成される場合、特定の成分間の相関(例えば、Na-Cl の関係など)
などに着目した解析が有効である。
平成 16 年度においては、多変量解析による水質分類手法の有効性を確認するため、溶存する複数の成分
を同一の場で解析する方法として、主成分分析に混合とマスバランス計算を組み合せた M3 解析手法
(Multivariate Mixing and Mass balance modelling analysis:Laaksoharju et al.,1999)を用いて研
究実施領域内の地下水の水質分布及びその形成プロセスについて考察を行った。その結果を以下に示す。
研究実施領域内の地下水の水質は,混合を前提とした解析の端成分として、
「低 Na-Ca-Cl 型地下水」、
「高
Na-Ca-Cl 型地下水」
、「地表水」、
「Na-(Ca)-HCO3 型地下水」といった 4 種類の地下水組成を想定できる。
研究実施領域南西部の研究所周辺の地下水は、主に「低 Na-Ca-Cl 型地下水」と「高 Na-Ca-Cl 型地下水」
の混合で形成されたと考えられ、深部ほど「高 Na-Ca-Cl 型地下水」の割合が高い。また、この地下水は、
イオン交換反応等の水−岩石反応、微生物活動や硫黄の化学種の無機的酸化還元反応、溶存ガスの付加
等により、Na+,Ca2+,HCO3-,SO42-等のイオンが増加・減少し、水質が形成されていると考えられる。
研究実施領域南西部の堆積岩∼花崗岩浅部には、低 Cl 濃度の地下水が広く分布し、「地表水」と「低
Na-Ca-Cl 型地下水」の混合が卓越している他に、
「Na-(Ca)-HCO3 型地下水」が分布している。このような
地下水の水質も、水−岩石反応,微生物活動や硫黄の化学種の無機的酸化還元反応、溶存ガスの付加等
により、Na+,Ca2+,HCO3-,SO42-等のイオンが増加・減少し形成されていると考えられる。
研究実施領域北東部の地下水は、
「地表水」と同様の水質の地下水が深部まで分布しており、水 岩石反
応やイオン交換反応等により、Na+,Ca2+,HCO3-等のイオンが増加・減少を受け形成されていると考えら
れる(図 17)
。また、堆積岩∼花崗岩浅部には「Na-(Ca)-HCO3 型地下水」がわずかに分布している。この
ような地下水は、月吉断層及び標高-150m 付近に存在する水理的境界により隔てられ、研究所周辺の深部
の地下水と異なる帯水層内にあると考えられる。
これらのことから、研究所周辺に分布する Cl 濃度の高い地下水は、水理的に上下・南北方向に隔てられ
た環境中に「地表水」、
「Na-(Ca)-HCO3 型地下水」があまり浸透せず、主に「低 Na-Ca-Cl 型地下水」と「高
Na-Ca-Cl 型地下水」の混合により形成された可能性が考えられる。
非反応成分である Cl 濃度を指標とした統計学的解析により解析精度を評価した結果、本解析における不
確実性は約±10%と見積もられた。
以上の結果から、水理地質構造と地下水の地球化学特性の関連性について明らかにできた。また、混合
により地下水水質が形成されている環境においては、地下水の水質分布及びその形成プロセスを明らかに
するうえで、端成分地下水の混合割合を指標として定量的に水質を表現するための手法として、M3 解析手
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法が有効な手法の一つであることが確認された。
c)地下深部における地球化学環境の長期的変遷に関する調査手法の検討
上記 b)の検討結果や海外事例などから、地下水の水質分布など、現在の地球化学的状態のモデル化に対
しては、ほぼ見通しがついているといえる。しかし、地層処分システムの設置環境の長期安定性を議論す
るには、現状の情報のみでは不十分であり、過去に遡った古水理学的な検討も要求される。地下水の滞留
時間を越える時間スケールで地球化学環境の変遷を推定するためには、水-鉱物反応時に地下水の化学的性
質を反映して沈殿する鉱物を用いることが有効と考えられる。そのため、三次元的な地下水流動の状態を
考慮しながら流動経路にあたる割れ目などから鉱物試料を採取・分析を行い、更にその鉱物の年代を特定
することで、地質学的な時間スケールで地球化学環境の変遷を推測する手法を構築できる可能性がある。
本研究は、低温な環境下においても沈殿することや岩石中に一般的に産出する鉱物である炭酸塩鉱物(主
に方解石)に着目し、地下水の水質の変化や断層活動などによる破砕によって形成される結晶中の組成累
帯構造や化学組成の不均質性を分析することにより、方解石の沈殿時における地下水水質(pH、酸化還元
電位)の長期的変遷に関する情報を取得できる可能性を検討するものである。
平成 16 年度は、花崗岩の割れ目表面に産する方解石を対象として、カソード・ルミネッセンス(以下,
CL)像の観察により結晶中の累帯構造を確認するとともに、金属元素濃度に基づいた方解石沈殿時の地下
水の酸化還元電位の推察を試み、以下の結果が得られた。
CL 像の観察の結果、全ての試料において組成累帯構造もしくは不均質性が確認できた。この結果は、観
察した方解石の沈殿過程で水質が変化した可能性を示唆している。
LAMP-ICP-MS による分析の結果、方解石中の U 及び Fe の濃度は、各々0.03ppm∼50ppm、350ppm∼28,793ppm
の範囲を示した。この濃度に基づき計算される酸化還元電位は、pH を現在の地下水と同様の 8∼10 と仮
定した場合、各々-181mV∼-419mV、-155mV∼-383mV と見積もられ、方解石の沈殿した環境が還元的環境
であったことを示している。
各結晶内における酸化還元電位の変化に注目すると、pH を固定して計算した場合、結晶内の不均質性と
対応して最大で約 100mV 程度変化しており、これは水質の変化に対応して酸化還元電位が変化したと考
えられる。方解石の試料を採取した深度(深度約 300m∼700m)における現在の地下水の酸化還元電位
は約-270∼-400mV であり、酸化的条件下での沈殿を示す方解石の沈殿は観察されなかった事から、酸化
還元状態については還元条件が長期的に保持されていた可能性が高いと考えられる。
以上の結果から、鉱物中の微量元素濃度に基づいて、鉱物沈殿時の地球化学環境を推測できる可能性が
示された。このような手法により、安全評価に用いる地球化学条件の将来にわたる不確実性の範囲(変動
幅)を明示することができ、より現実的な条件設定が可能になると考えられる。
ロ)地質環境評価手法に関する研究(施設スケール)
平成 16 年度においては,地表からの調査における地質環境データセットの基本的考え方の提示及び地下
深部までの地質環境を総合的に理解するための研究プロセスの具体化に向けて、イ)地質環境評価手法に関
する研究(広域スケール)において実施した地層処分において把握すべき地質環境特性の項目の検討結果
を基に、施設スケール(サイトスケール)における調査から安全評価、地下施設の設計・施工、環境影響
評価に至る道すじを示した統合化データフローを検討した。また、統合化データフローを構築する上での
基盤情報となる施設スケールを対象とした各調査・評価技術の有効性や適用性の評価を平成 15 年度に引続
き実施した。研究実施領域を事例とした地質環境を理解するための調査体系の例示に関しては、超深地層
研究所計画の第 1 段階の調査研究で適用している「繰り返しアプローチ」の事例を基に、不確実性低減に
向けた調査研究の現状を取りまとめた。
1)サイトスケールを対象とした統合化データフローの検討
平成 13 年度に構築した超深地層研究所計画を対象とした統合化データフロー(図 18)を、イ)1)の地層
処分において把握すべき地質環境特性の項目の整理作業において設定された地質環境特性の個別目標と関
連する課題に対応する様式に改め、より一般化した内容にするための検討を実施した。対象とする調査段
階は、広域スケール(ローカルスケール)と同様に、既存情報を用いた調査・解析段階、地表からの調査
解析段階、ボーリング孔を利用した調査・解析段階の3段階を設定した。
2)調査・評価技術の有効性・適用性の評価
①調査技術
施設スケールにおける調査では、サイトにおいて安全評価及び施設設計・施工のための地質環境の特性
や現象に関するデータが総合的に取得される。また、広域スケールに比較してより小さな規模の地質構造
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などが調査対象となる。したがって、施設スケールの調査においては、多種・高精度・高分解能の情報を
効率よく取得することが求められる。このような観点から平成 16 年度においては、ボーリング調査,マル
チオフセット VSP、反射法弾性波探査に対する評価を実施した。
a)ボーリング調査による地質構造の確認及び各種特性評価
本ボーリング調査(MIZ-1 号孔:掘削長 1,300.20m;図 19)は、瑞浪超深地層研究所用地において、地
表から深度 1,000m 以深にいたる被覆堆積岩(新第三紀中新世の瑞浪層群)ならびに基盤花崗岩(白亜紀後
期の土岐花崗岩)の地質・地質構造,岩盤の水理学的・地球化学的・力学特性・熱特性、地下水流動を規
制すると考えられる不連続構造の分布や地質学的・水理学的・地球化学特性、地下水の地球化学特性の取
得を目的として平成 14 年 12 月より開始し、平成 16 年 10 月に終了した。本ボーリング調査は、研究所用
地内を通る北北西方向の断層を捉えるため、深度 250m付近から南西方向へ俯角 76 度でコントロール掘削
を実施した。また、掘削水によるボーリング孔周辺の地下水への汚染を最小限に留めるため、掘削中に掘
削水が逸水した場合は直ちに掘削を止め、水理試験及び地下水採水を実施するような調査プログラムを策
定した。本ボーリング調査の結果を以下に示す。なお、地下水の地球化学特性については、一部、研究所
用地近傍で実施された広域地下水流動研究でのボーリング調査(DH-15 号孔)の成果を含む。
ボーリング孔周辺に分布すると予測されていた不連続構造(松岡ほか,2005)に相当する比較的規模の
大きい3条の北北西走向を有する断層を捉え、岩芯観察、物理検層、ボアホールテレビ観察などの地質
学的・地球物理学的調査により、各々の断層の幾何情報及び地質学的特徴を把握することができた。
電気伝導度検層によってボーリング孔内で約 60 箇所の地下水流入点を検出でき、他のフローメータ検層
や温度検層と比較すると高い分解能で水みちを抽出できる手法であることが確認できた。
電気伝導度検層の結果や掘削中の逸水などに基づいて抽出した割れ目は、水理試験によって透水量係数
で概ね 10-8[m2/s]よりも大きい透水性を有することが示された。また母岩の透水性は透水係数で概ね
。
10-9[m/s]よりも小さい透水性を示す(図 20)
水理試験から得られた間隙水圧の測定値から Horner Plot を用いて本来の間隙水圧を推定した結果、
MIZ-1 号孔の深度 969m 付近に存在する断層を境に、断層以深ではそれ以浅と比較して 45m 程度高い水頭
値を示す可能性があることが推定された(図 20)
。
花崗岩中の地下水の pH は 8∼9 の範囲でほぼ一定であり、堆積岩深部から基盤花崗岩の深度約 1,000m ま
での地下水について、上部では総溶存成分濃度が海水の約 100 分の1程度のナトリウム・塩素イオンに
富む水質であり、深度とともに溶存成分濃度が増加し、深度 1,000m 付近では総溶存成分濃度が海水の約
10 分の1程度のナトリウム・カルシウム・塩素イオンに富む水質を示すことが明らかになった。また、
深度 600m 付近を境として深度に伴う濃度変化が顕著になることを確認できた(岩月ほか,2005)。
深層ボーリング孔において実施した水圧破砕法による初期応力測定により、主応力値が深度 600m 付近を
境に逆断層型(σH>σh σv)から正断層 横ずれ断層型(σv σH>σh)に漸移する傾向が認められた。
また、花崗岩の上部割れ目帯においては逆断層型を示し、深度 700m 及び 950m 付近の破砕帯を伴う断層
の下盤では応力状態が変化している状態が把握された。
水平面内の最大主応力の方向については、N-S から E-W 方向までばらつきは見られるものの、概ね NW-SE
方向を示し、測地学的方法などから推定される広域応力場と調和的であった(図 21,山田ほか,2005)。
土岐花崗岩の各力学特性及び物性値の平均値は、一軸圧縮強度が 166 MPa、引張強度が 6.24 MPa、静弾
性係数が 51.8 GPa、粘着力が 38.2 MPa、内部摩擦角が 50.8 deg、静ポアソン比が 0.26、有効間隙率が
1.84 %、飽和密度が 2.61 gcm-3 という結果が得られた。また、側圧係数については、深度が増すととも
に値が小さくなる傾向を示し、深度 450m以深では 1 よりも小さい値に漸近する。
地温勾配は、約 1.8℃/100mであり、土岐花崗岩の熱伝導率は深度 500m以浅の平均値で 2.89 Wm-1K-1 で
あった。
以上の結果から、在来工法でも調査対象の断層と遭遇するようにボーリング孔の方向を制御できること、
及び本調査で適用した調査プログラムにより、1本のボーリング孔において、施設の設計・施工や安全評
価に必要とされる各種地質環境特性のデータを取得することが可能であることを例示することができた。
b)マルチオフセット VSP 探査
MIZ-1 号孔沿いの不連続構造の分布を推定するため、MIZ-1 号孔を受振孔としたマルチオフセット VSP
探査を実施した。調査結果を以下に示す。
VSP マイグレーションを適用した各オフセット VSP 記録を重合した断面において、ボーリング孔と遭遇し
た小断層などの不連続構造に対応すると考えられる反射イベントを抽出し、それらの深度方向における
連続性を推定することができた。
VSP 探査に使用した3成分ジオフォンのうち、水平2成分記録を用いて、同様に解析・重合した断面から
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ボーリング孔周辺の高角度の不連続構造から直接反射したと考えられる反射イベントを抽出することが
できた(図 22)
。
以上の結果から、マルチオフセット VSP 探査は、反射法弾性波探査に比較してより小規模の構造をとら
えることができこと、反射イベントと実際の地質構造の対比が容易であり、反射法弾性波探査における反
射断面の地質学的解釈の精度を向上する上で有効であること、また、水平成分を解析することにより、反
射法弾性波探査では抽出が困難であった高角度の地質構造を捉えられることを示すことができた。このこ
とから、主にサイトスケールでの課題である母岩の不均質性の把握に有効な手法といえる。
c)反射法弾性波探査
これまでに研究所用地とその周辺において実施した一連の調査研究によって、その分布が推定された北
北西系、東西系、北東系の不連続構造の研究所用地の北∼北東領域における分布状況や連続性などの把握
を目的に反射法弾性波探査を実施した。本探査結果をより精度良く解釈するために、研究所用地の西方∼
南方において実施した反射法弾性波探査及び MIZ-1 号孔におけるマルチオフセット VSP 探査の断面、さら
に広域地下水流動研究において実施した DH-15 号孔におけるマルチオフセット VSP 探査結果とも対比でき
るように測線の位置を設定した。本調査の結果を以下に示す。
新第三紀層と花崗岩との不整合面、及び新第三紀層の堆積構造を明らかにすることができた(図 23)。
リニアメントや地表の地質調査によって推定や確認された北北西−南南東方向、東西方向、北東−南西
方向の断層などに対応する構造の存在を地表から地下深部へ推定することができた(図 23)。
表面波抑制処理、サーフェスコンシステントデコンボリューション、相対振幅保存処理、重合前時間マ
イグレーションを適用した結果、花崗岩中の不連続構造の規模に対応した反射イベントの振幅の強弱を
得ることができた。
以上の結果から、堆積岩の厚さや堆積構造、及び基盤岩の深度などの把握といった従来から有効とされ
る結果の他に、上記処理を施すことにより、花崗岩中の不連続構造の把握の可能性を示すことができた。
②評価(モデル化技術)
a)地下水流動に関するモデル化手法の検討
平成 16 年度は、ロ)3)に示す繰り返しアプローチの 2 順目として、地下水流動に対する重要な地質構造要
素を特定し、ステップ 3(深層ボーリング調査段階)以降の調査対象を抽出することを目的として、ステ
ップ 2(浅層ボーリング調査段階)までの地質構造モデル(図 24)に基づき、研究所用地周辺の地下水流
動場に影響を及ぼすことが考えられる規模の大きい断層(長さ 1 km 以上)を抽出し、水理地質構造モデル
を構築した。地下水流動解析では、サイクル機構が開発した地下水流動解析コードである Frac-Affinity
(稲葉ほか,2002)を用いた。解析ケースとしては、表 4 を基本ケースとして、月吉断層以外の断層が系
統毎に透水異方性を有する場合と断層面直交方向及び断層面方向とも高透水性を有する場合の 2 ケースを
組み合わせて、全 12 ケースを設定した。解析結果を以下に示す。
解析より得られた全水頭分布から、地下水の主流動方向は大局的な地形の起伏と同様に北東から南西方
向へ流動していると考えられる。
感度解析の結果による全水頭分布の比較より、NNW 系、NW 系、EW 系断層の透水性は、研究所用地周辺の
全水頭分布に及ぼす影響が大きいことが示された(図 25)
。また、地下水の主流動方向と断層の方向が平
行する NE 系断層の透水性は、全水頭分布に及ぼす影響が小さいことが示された。
地下水の移行経路についても、全水頭分布と同様に、NNW 系、EW 系断層の透水性は地下水の移行経路に
及ぼす影響が大きく、地下水の主流動方向と断層の方向が平行している NE 系断層の透水性は、地下水の
移行経路に及ぼす影響が小さいことが示された(図 26)
。
以上の結果から、地下水流動と直交する方向の断層の透水性は、地下水の水頭分布や移行経路を規制し
ていると考えられることから、研究所用地周辺の地下水流動に関しては、NNW 系、NW 系、EW 系断層の透水
性を明らかにし、モデル化することが解析結果の不確実性を低減するうえで重要と考えられる。
b)地下水地球化学に関するモデル化手法の検討
研究所用地周辺における地下水の水質形成機構を明らかにするため、地下水中の溶存8成分(Na,K,Ca,
Mg,HCO3,SO4,F,Cl)の濃度を基に多変量解析(前述の M3 解析手法)を行った。また、ボーリング調査で
得られた地下水の水質分布と水理地質構造や地下水流動解析結果と対応させ、研究所用地周辺における地
下水の地球化学概念もモデルを構築した。本解析における結果を以下に示す。
塩分濃度の異なる複数の地下水の混合を仮定することで各深度の地下水水質を説明できる。
花崗岩深部に分布する高塩分の地下水の起源については、水素、酸素、炭素、塩素同位体比などから、
この地域が海面下にあった中新世以前に浸透した海水である可能性が挙げられる。しかし、溶存化学成
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分比、溶存希ガスの同位体組成等はマグマ水的特徴を示しており、化石海水、マグマ水、両方の特徴を
持つように海水が高温環境で変質した化石海水など、その起源については今後も検討が必要である。
高塩分地下水中の放射性炭素濃度は、地下水の滞留時間が少なくとも5万年以上であることを示唆し、
この地域の地下深部に地下水が長期にわたって滞留してきた可能性を支持するものである。
地下水の水質分布は、研究所用地周辺は地下水流動解析やボーリング調査による地下水の水頭分布から
推定される地下水流動系の流出域付近に位置することや基盤花崗岩上部には厚さ数百mの高密度割れ目
帯の存在やそれ以深に分布する割れ目の少ない部分の存在といった水理地質構造とも整合的である(岩
月ほか,2005)
。
上記の地球化学情報と水理地質学的情報を統合して、研究所用地周辺の地下水の地球化学概念モデルを
構築した(図 27)。
以上の結果及び広域スケールでの研究成果から、地下水の地球化学モデルを構築する上で、地球化学情
報と水理地質学的情報との統合は不可欠であり、また、地球化学情報もサイト地点のみならず、地下水流
動上、サイトの上流域及び下流域のデータも水質形成機構の解明や地球化学環境の安定性などの評価にと
って重要であることが示された。
c)岩盤力学に関するモデル化手法の検討
坑道掘削による周辺岩盤の変位やひずみ、き裂開口幅の分布、せん断ひずみや局所安全係数の分布を予
測するための手法の開発の一環として、深層ボーリング孔における調査結果を入力データとして、MBC
(Micro-mechanics Based Continuum model)モデル、及びクラックテンソルモデルを用いた坑道掘削解析
を実施した(中間ほか,2005)。解析の結果を以下に示す。
掘削坑道の変形、坑道周辺の応力さらに掘削の影響で発生する坑道周辺の亀裂特性は、初期応力の影響
(最大主応力の方向:北西∼南東)と亀裂のトレース方向の影響を強く受けることが示された。
クラックテンソルモデルと仮想割れ目モデル解析から得られた平均透水係数は、立坑でほぼ北西∼南東
方向で増加を示し、横坑では側壁部と底盤部で増加を示した。
以上の結果から、掘削影響領域の分布や特性は、初期応力状態、既存割れ目及び掘削により新たに発生
する割れ目の大きさや方向に強く影響を受けることが示された。
3)地下深部までの地質環境を総合的に理解するための調査プロセスの具体化
地質環境特性を段階的に理解するための調査を進める場合、実際には空間的、時間的さらには経済的な
多くの制約が課せられることとなる。このような条件の下で効率的に調査を進めていくためには、調査の
進展に伴う情報の種類・量と地質環境の理解度や調査の達成度との関係を順次評価し、その結果を次の調
査の具体的な計画立案、及び次の段階に移行する際の判断につなげていくことが重要である。このための
基本的な考えとして、
「計画立案−調査−解析−評価」といった一連の調査・評価プロセスを繰り返す「繰
り返しアプローチ」
(図 28)を提案し、超深地層研究所計画・第1段階の調査研究に適用している。
図 29 に示すように、平成 14 年度から平成 16 年度までの地上からの調査予測研究段階(第1段階)の調
査研究は、ステップ1から4に区分して進めている。なお、広域スケールでの調査研究の成果は、図 29 の
ステップ1の文献調査に含まれており、広域スケールでの調査研究の成果を踏まえて施設スケールでの地
質環境の概念モデルや調査計画が検討されている。
調査は、ステップ1において、地質構造に関わるデータ取得を目的とした地質踏査、反射法弾性波探査
などを実施した。ステップ2では、花崗岩を被覆する堆積岩を対象に、断層などの不連続構造の分布、堆
積構造、各層ごとの物理特性や水頭分布さらには地下水の地球化学特性に関わるデータ取得のために、4
本の浅層ボーリングを研究所用地内に配置して調査を実施した(Kumazaki et al., 2003)
。平成 16 年度末
までにステップ3の深層ボーリング調査(MIZ-1 号孔:太田ほか,2004)及びステップ4の孔間水理試験・
孔間トモグラフィ調査を実施している。一方、地質環境のモデル化については、ステップ3までの水理地
質構造モデルの更新が完了しており(図 30)
、それに基づく水理地質地下水流動解析を実施中である。
来年度は、ステップ4までの調査結果に基づき各モデルを更新し、第1段階における地質環境モデルの
変遷やそれによる不確実性の低減の様子から、調査に用いた手法の有効性・適用性ならびに調査の考え方
について評価を実施する。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
当初計画では、研究坑道における調査研究(第2段階)の成果を取り入れる予定であったが、平成 13 年
度末における研究所建設用地の変更に伴う研究所計画自体の変更を受け、平成 16 年度から研究坑道内での
−320−
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調査研究を開始したため、成果の取りまとめまでには至らなかった。したがって、平成 16 年度においては、
地上からの調査研究(第1段階)の成果に基づいた取りまとめとなったが、地上からの調査段階である概
要調査段階及び精密調査段階における地質環境要件の検討や安全評価技術の高度化に資する地質環境特性
に関する情報や調査・評価技術に関する技術的知見が得られた。
(今後の予定)
平成 17 年度に計画している調査研究を実施し、これまでの研究成果を取りまとめる予定である。
【成果の利用実績及び活用見通し】
本研究は、深部地質環境に関する知見を一層充実させることにより、国が進める安全基準の策定に必要
な地質環境やその調査・評価技術に関する最新の知見を提供するものである。
具体的には、①地表から地下深部までの地質環境データの取得と整理、②地質環境のモデル化、及び③
地下施設の建設に伴う地質環境の変化などに関する研究成果が得られ、これらの成果は、精密調査地区選
定に関わる地質環境要件の検討や安全評価技術の高度化に向けた研究開発への活用が見込まれる。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
別紙リストのとおり。
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
国内では土木学会などが中心となり、概要調査段階における地質環境に関わる要件の検討とそれに関
わる調査・評価技術の現状と課題の整理が進められている。また、概要調査段階を見据えて、物理探査
技術やボーリング掘削技術、地下水の年代測定技術などの要素技術の高度化や信頼性向上に向けた研究
開発が行なわれている。さらに、海外の調査研究データを用いた概要調査段階での計画立案や調査結果
の評価などのシミュレーションとそれを基にした調査プロセスや統合化データフロー等の検討がなさ
れている。
(参考文献)
例えば、
電力中央研究所(2004)
:研究概要 2003 年度研究成果,電力中央研究所地球工学研究所・環境科学研
究所.
土木学会(2004):高レベル放射性廃棄物地層処分の現状とさらなる信頼性向上にむけて−土木工学
に係わる技術を中心として−,土木学会原子力土木委員会地下環境部会.
[海外の研究の現状と動向]
米国や西欧諸国においては地下研究施設などでの研究成果を踏まえ、サイト選定から研究開発の最終
段階を迎えている。地質環境の調査・評価技術については、地上からの調査技術やサイトスケールまで
の比較的広範囲を対象としたモデル化技術の研究開発はほぼ終息しており、構築した処分コンセプトに
対応した地質環境要件を設定し、調査プロセスを構築している。また、サイト選定やサイト評価に必要
な調査技術のリスト化の段階から、調査の達成度評価といった調査の終息方法の検討が始まっている。
研究開発としては、物質移行現象の評価や人工バリア・施工材料の影響評価などが継続されているが、
評価技術の動向としては、より規模が大きく、長時間で、複雑な系を対象とした試験の実施やモデル化
技術の構築に力点が置かれている。さらに、地層処分技術に対する社会面での評価の重要度が高まって
おり、専門家のみならず、広い範囲にわたる関係者の信頼を得ることが最重要課題として認識されつつ
ある。
(参考文献)
例えば,
JNC (2004): International Conference on JNC Underground Research Laboratory Projects in Mizunami
and Horonobe, Japan, Part 1: International Conference on Geoscientific Study in
Mizunami 04 (ICGM 04), JNC TN7400 2004-010.
SKB (2000): What requirements does the KBS-3 repository make on the host rock? Geoscientific
suitability indicators and criteria for siting and site evaluation, TR-00-12.
IAEA (2003): Scientific and Technical Basis for the Geological Disposal of radioactive Wastes,
TECHNICAL REPORTS SERIES No.413.
SKB (2004): When is there sufficient information from the Site Investigations?, R-04-23.
−321−
JNC TN1400 2005-018
IAEA (2003): ISSUES AND TRENDS IN RADIOACTIVE WASTE MANAGEMENT, Proceedings of an International
Conference, Vienna, 9-13 December 2002.
[研究協力機関]
北海道大学,東北大学,埼玉大学,千葉大学,東京大学,名古屋大学,岐阜大学
富山大学,金沢大学,京都大学,岡山大学,広島大学,愛媛大学,熊本大学
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]研究の達成状況(平成16年度)を参照されたい。
○成果活用方策
[チェック欄]
■ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
□ 計画どおり進捗した。
■ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:平成 14 年の研究所建設用地の変更に伴う調査研究計画の変更の為
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
)
【自由評価欄】
処分事業の概要調査段階及び精密調査段階に対応すると考えられる広域スケール及び施設スケール
での地質環境の特性を把握するための調査・評価(モデル化)技術に関して、実際の地質環境への適用
を通して、各手法の有効性や調査やモデル化の考え方をほぼ構築しつつある。今後は、地下水の地球化
学に関するモデル化手法の検討で手がけたような時間軸を入れた評価が重要な研究課題である。
−322−
JNC TN1400 2005-018
引用文献
1) 稲葉 薫・三枝博光・White,M.J.・Robinson,P.(2002)
:地下水流動の予測解析統合システム(GEOMASS
システム)の概要と東濃地域への適用事例,地下水学会誌,44,pp.105-123.
2) 糸魚川淳二(1980):瑞浪地域の地質,瑞浪市化石博物館専報,1,pp.1-50.
3) 岩月輝希・彌榮英樹・古江良治・井岡聖一郎・水野崇(2005):瑞浪超深地層研究所を中心とした東濃
における深地層の科学的研究−地球化学的初期条件の評価−,地球惑星科学関連学会 2005 年合同大会
予稿集
4) Kumazaki,N.・Ikeda,K.・Goto,J.・Mukai,K.・Iwatsuki,T. and Furue,R.(2003)
:Synthesis of the Shallow
Borehole Investigations at the MIU Construction Site, JNC Tech. Rep., JNC TN7400 2003-005.
5) Laaksoharju M・Skarman C and Skarman E(1999): Multivariate Mixing and Mass-balance (M3)
calculations, a new tool for decoding hydrogeochemical information, Applied Geochemistry, Vol4,
No.7, Elsevier Science Ltd., pp.861-871.
6) 松岡稔幸・熊崎直樹・三枝博光・佐々木圭一・遠藤令誕・天野健治(2005):繰り返しアプローチに基
づく地質構造のモデル化(Step1 及び Step2)
,サイクル機構技術資料.(印刷中)
7) 森田豊・三枝博光・竹内真司・天野健治・渡辺邦夫・宋元康(2005):断層に着目した岐阜県東濃地域
の広域地下水流動解析,日本地下水学会,2005 年春季講演会講演要旨,pp.78-83.
8) 中間茂雄・青木俊朗・佐藤稔紀・郷家光男・森孝之(2005):掘削損傷領域を考慮した MBC 及びクラッ
クテンソルモデルによる坑道周辺予測解析,第 34 回岩盤力学に関するシンポジウム講演論文集.
9) 大澤英昭・中野勝志・太田久仁雄(2001):超深地層研究所計画における地表からの調査研究成果の統
合化,日本原子力学会「2001 年秋の大会」予稿集,p.918.
地層科学研究の現状 ,
10) 太田久仁雄・佐藤稔紀・小出 馨・坂巻昌工(2004)
:超深地層研究所計画
第 7 回 NUCEF セミナー講演報文集,日本原子力研究所研究報告書.核燃料サイクル開発機構(2004)
:
超深地層研究所計画における調査研究の考え方と進め方(平成 15∼17 年度),JNC TN7400 2004-008.
11) SKB (2000): What requirements does the KBS-3 repository make on the host rock? Geoscientific
suitability indicators and criteria for siting and site evaluation, TR-00-12.
12) 山田淳夫・佐藤稔紀・中間茂雄・加藤 春實(2005):瑞浪超深地層研究所を中心とした東濃における
深地層の科学的研究−水圧破砕法による初期応力測定結果と地質構造−,地球惑星科学関連学会
2005 年合同大会予稿集.
13) 山井忠世・角南基亮・小林公一(1994):東濃地域を対象としたリニアメント調査(その1),核燃料
サイクル開発機構技術資料,PNC TJ7361 94-002.
−323−
JNC TN1400 2005-018
表 1 地質環境のモデル化の目標と
空間スケール
図 3 超深地層研究所計画の研究実施場所
図 1 空間スケールの概念
(糸魚川,1980 を簡略化)
図 4 岐阜県東濃地域の地質概要
表 2 重要な地質環境特性の項目・課題と成果が
期待できる調査研究段階・空間スケール
図 2 広域地下水流動研究の研究実施領域
−324−
JNC TN1400 2005-018
図 5 DH-14 号孔掘削位置
図 7 DH-14 号孔において確認された不連続構造
の地表推定分布
図 6 DH-15 号孔掘削位置
図 8 DH-15 号孔において確認された不連続構造
の地表推定分布
−325−
JNC TN1400 2005-018
表 3 トレース長を基準とした断層グループ
地下水の主流動方向断面(図 11 中断面①)
図 12 透水異方性を有する断層数の違いによる
全水頭分布の変化
図 9 断層モデル
標高-300m の水平断
面における格子の
中心点を出発点と
するパーティクル
の移行経路を標高
−300m の水平断面
へのプロットした.
図 13 透水異方性を有する断層数の違いによる
地下水の移行経路の変化
図 10 地質構造モデル(Model05 の例)
標高-300m の水平断面における格子の中心点を出発点とする
パーティクルの平均移行流速を出発点の位置する格子にプ
ロットした。
図 11 透水異方性を有する断層数の違いによる
全水頭分布の変化(標高−300m の水平断面)
図 14 透水異方性を有する断層数の違いによる平均
移行流速分布の変化
−326−
JNC TN1400 2005-018
図 15 断層の水理特性の違いによる全水頭分布
の変化(Model02:標高−300m の水平断面)
図 17 M3 解析手法に基づく地下水混合割合
の定量的解析
地下水の主流動方向断面(図 11 中断面①)
図 16 断層の水理特性の違いによる全水頭分布
の変化(Model02)
図 18 超深地層研究所計画の第1段階における統合化データフロー
(水理地質:大澤ほか(2001)を一部変更)
−327−
JNC TN1400 2005-018
図 19 深層ボーリング孔(MIZ-1 号孔)のレイアウト
図 22 MIZ-1 号孔のマルチオフセット VSP 探査に
より推定された不連続構造の分布
図 20 MIZ-1 号孔における水理調査結果
図 23 反射法弾性波探査の測線位置と解析結果
図 21 岩盤の初期応力状態
−328−
JNC TN1400 2005-018
表 4 断層の透水性
図 24 地質構造モデル(STEP2)
深度 500mでの地下水の全水頭分布
図 25 地下水流動解析結果
地下水の移行経路
図 26 地下水流動解析結果
−329−
JNC TN1400 2005-018
図 28 繰り返しアプローチの概念
図 27 地下水の地球化学概念モデル
図 29 超深地層研究所計画・第 1 段階の調査研究の進め方
図 30 繰り返しアプローチに基づく水理地質環境モデルの構築
−330−
JNC TN1400 2005-018
別紙(研究成果の分野別発表状況)
【技術資料】
(1)地質・地質構造
1) 松岡稔幸・持田裕之・長谷川健(2004):広域地下水流動研究で掘削されたボーリング孔コアの帯磁率
測定,核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TN7400 2004-012.
2) 持田裕之(2004):瑞浪超深地層研究所用地のボーリングを利用した瑞浪層群地質層序の検討結果速報
IR04-14,核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TN7420 2004-003.
3) 佐々木圭一・太田久仁雄(2004):大縮尺の空中写真により判読したリニアメントに関する検討 −東
濃地域における事例研究−,核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TN7400 2004-007.
4) 笹尾英嗣・佐々木圭一・鶴田忠彦・太田久仁雄(2004):瑞浪層群の層序区分について,核燃料サイク
ル開発機構技術資料,JNC TN7420 2004-001.
(2)岩盤力学
1) 郷家光男・堀田政國・多田浩幸(2004):掘削損傷領域を考慮したクラックテンソル・仮想割れ目モデ
ルによる坑道掘削影響解析,核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TJ7400 2004-007.
2) 市川康明(2004):長期岩盤挙動評価のための微視的観点による基礎的研究,核燃料サイクル開発機構
技術資料,JNC TJ7400 2004-014.
3) 石島洋二・藤井義明・川北稔・中間茂雄・松井裕哉(2004):軟弱な堆積地層における力学的な初期状
態と施工性の評価システムの開発,核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TY7400 2004-002.
4) 加藤春實(2004):MIZ-1 号孔の岩芯を用いた初期応力評価試験,核燃料サイクル開発機構技術資料,
JNC TJ7400 2004-018.
5) 水田義明・金子勝比古・松木浩二・菅原勝彦・須藤茂韶(2004):3 次元応力場の同定手法に関する研
究(その 3),核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TJ7400 2004-011.
6) 森孝之・森川誠司・田部井和人・岩野圭太(2004):掘削損傷領域を考慮した MBC モデルによる坑道掘
削影響解析,核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TJ7400 2004-006.
7) 大久保誠介(2004):長期岩盤挙動評価のための巨視的観点による基礎的研究,核燃料サイクル開発機
構技術資料,JNC TJ7400 2004-002.
8) 杉田信隆・中島雅之・中村敏明(2004):MIZ-1 号孔の岩芯を用いた室内物理・力学物性試験,核燃料
サイクル開発機構技術資料,JNC TJ7450 2004-002.
(3)岩盤水理
1) 荒井靖(2004)
:広域地下水流動研究及び超深地層研究所計画における表層水理観測(2004 年 4 月∼6 月)
調査速報 IR04-13,核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TN7420 2004-004.
2) 藤田有二(2004):超深地層研究所計画における間隙水圧観測(2004 年 4 月∼6 月)調査速報 IR04-12,
核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TN7420 2004-002.
3) 藤田有二(2004):広域地下水流動研究における間隙水圧観測(2004 年 4 月∼6 月)調査速報 IR04-16,
核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TN7450 2004-003.
4) 藤田有二(2004)
:超深地層研究所計画における間隙水圧観測 −(2004 年 7 月∼9 月)
調査速報 IR05-02,
核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TN7450 2004-004.
5) 井尻祐二・小野誠・杉原豊・下茂道人・山本肇・文村賢一(2004):超深地層研究所建設用地周辺を対
象とした複数のモデル化概念による地下水流動のモデル化・解析(その1),核燃料サイクル開発機構
技術資料,JNC TJ7400 2004-003.
6) 井尻祐二・小野誠・杉原豊・下茂道人・山本肇・文村賢一(2004):水理地質構造の不確実性を考慮し
た水理地質構造のモデル化及び地下水流動解析 −モデルキャリブレーション−,核燃料サイクル開発
機構技術資料,JNC TJ7400 2004-005.
−331−
JNC TN1400 2005-018
7) 井尻裕二・小野誠・杉原豊・下茂道人・山本肇・文村賢一(2004):超深地層研究所建設用地周辺を対
象とした複数のモデル化概念による地下水流動のモデル化・解析(その2),核燃料サイクル開発機構
技術資料,JNC TJ7400 2004-015.
(4)地下水の地球化学
1) 古江良治・岩月輝希・水野崇(2004):MSB-2 号孔・MSB-4 号孔における地下水水質観測(2003 年 1 月
∼2004 年 3 月),核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TN7450 2004-002.
2) R.Metcalfe,D.Savage,A.H.Bath,C.Walker(2004):核種の溶解度評価に関する地下水の地球化学パ
ラメータの感度解析,核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TJ7400 2004-013.
3) 彌榮秀樹・岩月輝希・古江良治・水野崇・井岡聖一郎(2004):広域地下水流動研究における地下水の
地球化学特性の調査結果(DH-15 号孔),核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TN7400 2004-006.
4) 彌榮秀樹・岩月輝希・古江良治・水野崇・井岡聖一郎(2004):超深地層研究所周辺における地下水の
地球化学モデルに関わる調査結果(平成 15 年度),核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC
TN7400 2004-009.
5) 長尾敬介(2004):ストロンチウム同位体比及び希ガスを用いた地球化学的研究手法の確立,核燃料サ
イクル開発機構技術資料,JNC TY7400 2004-001.
6) 戸高法文・阿島秀司・赤坂千寿・中西繁隆(2004):超深地層研究所周辺の地下水の水質形成に関する
多変量解析,核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TJ7400 2004-012.
(5)調査研究の統合,他
1) 天野健治・岩月輝希・太田久仁雄・大澤英昭・竹内真司・薮内聡(2004):広域地下水流動研究 年度
報告書(平成 15 年度),核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TN7400 2004-002.
2) 小出馨・池田幸喜・太田久仁雄・竹内真司・佐藤稔紀・岩月輝希・天野健治・三枝博光(2004):超深
地層研究所計画 年度計画書(2004 年度),核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TN7410 2004-003.
3) 中司昇・大澤英昭(2004):広域地下水流動研究 年度計画書(平成 16 年度),核燃料サイクル開発
機構技術資料,JNC TN7410 2004-001.
4) 太田久仁雄・竹内真司・池田幸喜・天野健治・松岡稔幸・薮内聡・岩月輝希・堀本誠記・藤田有二・古
江良治・熊崎直樹(2004):An Overview of the MIZ-1 Borehole Investigations during Phase I/II,
核燃料サイクル開発機構技術資料,JNC TN7400 2004-001.
5) 島田邦明・安倍健一・藤井満・棚田益彰(2004):試錐孔閉塞技術の開発,核燃料サイクル開発機構技
術資料,JNC TJ7400 2004-019.
【外部発表】
(1)地質・地質構造
1) Colin Biggin・太田久仁雄・Marja Siitari-Kauppi・Andreas Moeri(2004):Determination of In-Situ
Porosity and Investigation of Diffusion Processes at the Grimsel Test Site, Switzerland,2004 AGU
(American Geophysical Union) Fall Meeting.
2) 松岡稔幸・太田久仁雄・川中卓・楢原省吾・土家輝光・成田憲文(2004):東濃地域における花崗岩を
対象とした地質構造調査への反射法弾性波探査の適用例,物理探査学会 第 110 回学術講演会,
pp.129-132.
3) 西嶋圭・高木秀雄・円城寺守・水野崇(2004):野島断層周辺に分布する花崗岩中のヒールドマイクロ
クラックによる古応力場と生成環境の復元,日本地質学会第 111 年年会, P.226.
4) 佐々木圭一・天野健治(2004):物理検層結果による割れ目帯の評価,日本応用地質学会 平成 16 年
度研究発表会講演論文集,PP.247-250.
5) 山崎聡・高木秀雄・三浦宏一・水野崇(2004):野島断層周辺に分布する花崗岩中のヒールド・シール
ドマイクロクラックの三次元方位解析と古応力場の復元,日本地質学会第 111 年年会講演論文集,
P.226.
(2)岩盤力学
1) 郷家光男・堀田政國・若林成樹・多田浩幸・佐藤稔紀・中間茂雄・青木俊朗(2004):坑道展開方向に
よる水理学的な掘削影響の変化に関する解析的検討,土木学会第 59 回年次学術講演概要集,3-335,
−332−
JNC TN1400 2005-018
pp.669-670.
2) 今井忠男・鴨志田直人・中間茂雄・佐藤稔紀・加藤春實・杉本文男(2004):深部花崗岩コアのP波速
度異方性と初期応力について,資源・素材 2004(盛岡), pp.57-58.
3) 加藤春實・杉本文男・佐藤稔紀・中間茂雄(2004):オーバーコアリング過程におけるパイロット孔内
壁の応力変化について,資源・素材 2004(盛岡), A2-7.
4) 松木浩二・加藤俊樹・木村直樹・中間茂雄・佐藤稔紀(2004):Estimation of Resional Stress for
Heterogeneous Rock Mass by FEM,ISRM International Symposium 3rd ARMS 2004, pp.1135-1140.
5) 森孝之・森川誠司・田部井和人・岩野圭太・中間茂雄・青木俊朗・佐藤稔紀(2004):Analysis of Deep
Tunnel Excavation in Consideration of Joint Opening Phenomena,ISRM International Symposium 3rd
ARMS 2004.
6) 中間茂雄・森孝之・郷家光男・青木俊朗・佐藤稔紀(2004):掘削損傷領域を考慮した MBC 及びクラッ
クテンソルモデルによる岩盤挙動の予測解析,第 34 回 岩盤力学に関するシンポジウム, pp.33-40.
7) 中間茂雄・佐藤稔紀・加藤春實(2004):応力解放法による深部岩盤における初期応力測定装置の適用
例,資源・素材 2004(盛岡), A2-6.
8) 中間茂雄・佐藤稔紀(2004)
:超深地層研究所計画における施設建設計画・岩盤力学調査,岩の力学ニ
ュース,No.73, pp.1-4.
9) 及川寧己・相馬宣和・山口勉・山田淳夫・中間茂雄(2004):AE/DRA 法による初期応力計測と採取か
らの経過時間の及ぼす影響 −DRA 法−,資源・素材学会 平成 16 年度春季大会, pp.153-154.
10) 及川寧己・相馬宣和・山口勉・中間茂雄・中島貴弘(2004)
:東濃地域の岩芯試料を用いた AE/DRA 法
による地殻応力計測,資源・素材 2004(盛岡), A2-2.
11) 相馬宣和・及川寧己・山口勉・山田淳夫・中間茂雄(2004):AE/DRA 法による初期応力計測と採取か
らの経過時間の及ぼす影響 −AE 法−,資源・素材学会 平成 16 年度春季大会, pp.151-152.
12) 相馬宣和・山口勉・中島貴弘・中間茂雄・浅沼宏(2004):坑内ボーリング作業時の掘削振動の観測と
地層構造推定の試み,資源・素材 2004(盛岡), B7-4.
13) 冨永英治・中間茂雄・高橋昌弘・里優(2004):東濃鉱山における原位置長期岩盤挙動計測,第 34 回
岩盤力学に関するシンポジウム, pp.123-128.
(3)岩盤水理
1) Christine Doughy・竹内真司・天野健治・下茂道人・Chin-Fu Tsang(2004):Application of Multi-Rate
Flowing Fluid Electric Conductivity Logging Method to Well DH-2, Tono Site, Japan,Water Resources
Research (in printing).
2) 升元一彦・竹内真司・薮内聡・渥美博行・名児耶薫(2004):堆積岩中の不飽和領域調査への連続波レ
ーダーの適用,平成 16 年度日本応用地質学会研究発表会論文集,PP.117-120.
3) 升元一彦・竹内真司・薮内聡・渥美博行・名児耶薫(2004):堆積岩中の坑道周辺の不飽和領域を対象
とした連続波レーダー調査結果の評価,土木学会第 59 回年次学術講演会,CS1-016, pp.31-32.
4) 大山卓也・三枝博光・竹内真司(2004):水頭分布の不連続性に着目した断層の透水性の評価,応用地
質学会中部支部研究発表会, pp.11-14.
5) 三枝博光・松岡稔幸・熊崎直樹・稲葉薫(2004)
:超深地層研究所計画における研究の現状-繰り返しア
プローチに基づく地質構造及び地下水流動解析について-,土木学会第 59 回年次学術講演会,CS1-018,
pp.35-36.
(4)地下水の地球化学
1) Christopher T. Mills・岩月輝希・村上由記・Greg F. Slater・Robert F. Dias・Chris M. Reddy・Kevin
W. Mandernack(2004):13C and 14C Investigations of Bacterial Carbon Cyling in the Deep Subsurface
near the Tono Uranium Mine, Toki, Japan,Geological Society of America (GSA) National Meeting.
2) 井岡聖一郎・岩月輝希・古江良治・彌榮英樹・水野崇(2004):瑞浪超深地層研究所周辺における地下
水の物理化学特性について,2004 年 日本地球化学会年会,p38.
3) 岩月輝希・Arthur R・水野崇(2004)
:方解石中の微量元素濃度に基づく地下深部の酸化還元状態の推
察,地球惑星科学関連学会 2004 年合同大会.
−333−
JNC TN1400 2005-018
4) Iwatsuki T・Arthur R・Ota K and Metcalfe R(2004)
:Solubility constraints on uranium concentrations
in groundwater of the Tono uranium deposit, Japan, Radiopchemica Acfu, 92, pp.789-796.
5) 岩月輝希・古江良治・彌榮英樹・井岡聖一郎・水野崇(2005):Hydrochemical Baseline Condition of
Groundwater at the Mizunami Underground Research Laboratory,Applied Geochemistry (投稿中).
6) 岩月輝希・彌榮英樹・古江良治・水野崇(2004)
:瑞浪超深地層研究所建設時に予想される地球化学特
性の変化,地球惑星科学関連学会 2004 年合同大会.
7) 彌榮英樹・岩月輝希・古江良治・水野崇(2004)
:瑞浪超深地層研究所における地球化学調査,地球惑
星科学関連学会 2004 年合同大会.
8) Murakami Y ・ Iwatsuki T ・ Mandernack K W and Naganuma T ( 2004 ): Vertical distributions of
sulfate-reducing bacteria and their activity in groundwater of Tono uranium deposit, 10th
International Symposium on microbial Ecology, ISME-10, p.349.
9) 村上由記・岩月輝希・長沼毅(2004)
:東濃ウラン鉱床周辺の微生物群集解析,地球惑星科学関連学会
2004 年合同大会.
10) 村上由記・笹尾英嗣・岩月輝希・長沼毅(2004):Microbial Reducing Activity Around the Tono Uranium
Ore Deposit,The 4th International Symposium on Advanced Science Research, p.17.
11) 長尾誠也・岩月輝希(2004)
:3次元蛍光光度分光法による東濃地域地下水中の溶存腐植物質の特性研
究,2004 年腐植物質研究会.
以上
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安全研究成果調査票(平成16年度)
【研究分野】
【分類番号】
地層処分
◎2−3(廃棄2−2−3)
【研究課題名(Title)】
堆積岩に関する地質環境評価手法に関する研究
(Understanding the Undisturbed Deep Geological Environment of Sedimentary Rocks)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address, and so on)】
[所属]核燃料サイクル開発機構
[氏名]松井裕哉(まつい
幌延深地層研究センター
深地層研究グループ
ひろや)
[連絡先]〒098-3207 北海道天塩郡幌延町宮園町1-8 電話:01632-5-2022 FAX:01632-5-2344
(Name)Hiroya MATSUI
(Title of Function) Geotechnical Science and Engineering Group,
Horonobe Underground Research Center
(Address, Phone and Fax)1-8 Miyazono-machi, Horonobe-cho, Teshio-gun, Hokkaido
〒098-3207 JAPAN
Tel:+81-1632-5-2022 Fax:+81-1632-5-2344
(E-mail) [email protected]
【研究期間】
平成13年度∼平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)] 地質・地下水環境特性評価に関する研究(電中研)
高精度物理探査技術の適用性等に関する研究(原環センター)
[実証試験名(実施機関)]なし
[委託研究名(実施機関)]なし
【使用主要施設】
幌延深地層研究センター
【研究概要】
[研究の経緯]
幌延深地層研究計画は,「原子力長期計画」で示された深地層の研究施設計画の一つとして,堆積岩を
対象に地層処分技術に関する総合的な研究を行うものである。この深地層の研究施設は,地層処分技術
の信頼性の確認や安全評価手法の確立に向けた研究開発を進めていく上での主要な施設であるとともに,
国民の研究開発に対する理解を得ていく場としての意義を有している。本計画は、調査研究の開始から
終了まで 20 年程度の計画とし,地上からの調査研究段階(第 1 段階),坑道掘削(地下施設建設)時の
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調査研究段階(第 2 段階),地下施設での調査研究段階(第 3 段階)と段階的に進めていく予定としてい
る。平成 13 年度∼平成 17 年度までは地上からの調査研究段階(第 1 段階)に相当する。
平成 13 年 3 月より第 1 段階の調査研究を開始し,平成 14 年 7 月には,幌延町内において地表からの
調査を実施していく主な領域として,研究所設置地区を選定した。また,平成 15 年 3 月には研究所を設
置する用地を取得した。平成 15 年度に用地の造成に着手し,平成 17 年度から立坑の掘削を開始し,平
成 22 年度の地下研究施設の完成を目指している。
[研究目的]
堆積岩を対象とした地質環境に関するデータを整備し、これらを基に地質環境評価手法を開発するこ
とにより、安全基準・指針類の策定及び安全評価手法の確立と関連する地質環境評価手法の信頼性向上
に資する。
[研究内容]
イ) 地表からの調査によるデータ取得、モデル化
堆積岩を対象に物理探査手法やボーリング調査等の地表からの調査技術を適用し、地表から地
下深部までの体系的な地質環境データを取得し、これらのデータを基に地質構造、岩盤力学、
地下水流動、地下水地球化学、地下施設掘削影響領域などの地質環境をモデル化することを通
じて、地表からの調査技術及びモデル化技術の開発を行う。
ロ) モデルの妥当性評価手法の検討
坑道掘削を伴う次の段階で使用するこれらモデルの妥当性の評価手法を検討する。
ハ) モニタリングシステムの検討
断層活動や地下施設の建設が地質環境に与える影響を観測するためのモニタリングシステムを
検討する。
【当初の達成目標】
イ)地表からの調査によるデータ取得、モデル化
地質調査、地上物理探査、ボーリング調査を行い、地表から地下深部までの地層の分布や断層
などの地質構造、地下水の水質、岩盤の透水性や強度などのデータを取得し、研究所設置地区
およびその周辺の地質環境モデルの構築・更新を行う。また、水理モデル構築の一環として、
表層水理観測システムの整備を行う。
ロ)モデルの妥当性評価手法の検討
平成14年度に設定した研究所設置地区およびその周辺を対象として、イ)で取得したデータに
基づき、平成13年度までに構築した地質構造・水理・地球化学・岩盤力学に関するモデルの更
新・構築を図る。
ハ)モニタリングシステムの検討
ボーリング調査によって平成14年度までに掘削したボーリング孔に長期モニタリングシステム
を設置し、観測体制を整える。遠隔監視システムの開発では、受発信システムの総合的な検討
を行う。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
平成16年度は、幌延町における平成13年度までの調査結果に基づき平成14年度に設定した研究所
設置地区の地質環境を把握することを主目的とした地質調査、地上物理探査、ボーリング調査を
実施するとともに、表層水理観測体制の整備を行った。また、平成16年度までに取得したデータ
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JNC TN1400 2005-018
に基づき、研究所設置地区およびその周辺を対象とした地質構造、水理、地球化学および岩盤力
学モデルの構築・更新作業を行った。以下個別の成果について述べる。
イ)地表からの調査によるデータ取得、モデル化
1) 地質調査
平成 16 年度は、地表部と地下深部の地層の層準対比を明確にするため、同時間面の指標となる火山灰
層の分布を調査した。また、大曲断層推定位置付近の岩相変化やガス徴を詳細に調べるため、断層推定
位置付近における地表踏査および既存の浅層ボーリング孔におけるガス調査を実施した。図 1 に火山灰
層とガスの調査ルート及び大曲断層が確認された断層露頭位置を示す。
調査の結果、稚内層・声問層・勇知層・更別層中の47箇所において火山灰層が確認され、それらの挟
在層準・鉱物組成・火山ガラス形状・火山ガラス屈折率・火山ガラス化学組成・噴出年代(FT年代)な
どの地質情報から、47箇所の火山灰層の幾つかは同一の層準である可能性が示された(図2)。また、大
曲断層を確認した露頭において、断層面が東側の硬質頁岩(稚内層)と西側の珪藻質泥岩(声問層)と
の境界部に確認され、断層面近傍に幅120 mにわたって小規模な断層が併走していることから、大曲断層
は幅を持った断層帯であることが明らかになった(図3)。既存の浅層ボーリング孔においてメタンガス・
二酸化炭素濃度を測定した結果、大曲断層推定位置付近で高濃度の二酸化炭素の存在を確認した。これ
は、地下深部で生成されたメタンガスが断層などの割れ目に沿って地表まで移動し、地表付近の酸化性
環境下でメタンガスが酸化され、二酸化炭素が発生したためと推定される。
2) 地上物理探査
平成15年度の研究所設置場所近傍における電磁探査に続き、同程度の範囲の大曲断層を含む地
質構造を把握するため、反射法地震探査、マルチオフセットVSP(Vertical Seismic Profile)探査お
よび重力探査を実施した。平成16年度の反射法地震探査は、調査領域を大曲断層推定位置とその周
辺に限定し、深度200∼300 m程度までの地質構造を詳細に把握するため、平成14年度の反射法地
震探査と比べ、2∼5倍の密度で高周波数まで波形データを取得することで水平方向・垂直方向の
分解能をあげている。
図4に平成15年度までに実施した地上物理探査結果と当該年度の探査結果の解釈を示す。平成15
年度までの反射法地震探査および電磁探査により、不連続構造があると推定される箇所がHDB-4孔
の方向に向かって連続している可能性が高いことが明らかになっていた。平成16年度の反射法地
震探査結果で不連続構造が見られると解釈された箇所(黄緑の○)は、HDB-4孔に向かう連続的な
不連続構造の推定位置とほぼ一致するとともに、既往の地質調査で推定されている大曲断層の推
定位置に沿った形でも分布している。この結果は、前年度までの地質調査などの結果から推定さ
れていた大曲断層の分岐構造の存在と一致する。
一例として調査測線Line-Dの結果を図5に示す。図面の左(南西)側は、ほとんど水平で連続的な
構造が推定されるのに対し、青矢印で示す位置から北東側では、地表付近から地下200 m付近まで
連続的な構造が見られない。このことから、青矢印で示す位置に断層が存在する可能性が考えら
れる。図4中に示した黄緑円の箇所はこのような構造が見られた場所を示している。
反射法地震探査は広範囲の調査が可能だが地下の地質状況との連続性を直接把握できない。こ
のため、既存ボーリング孔(HDB-6孔)を利用したVSP探査も行った。今回は、地表の発振源を複数
設け、距離の異なる波形データを取得するマルチオフセットVSPと呼ばれる方法を用いている。図
6にデータ解析例を示す。図中の青矢印部に左側に傾斜(実際には南西傾斜)した波形(この図面で
は黒の連続)が確認される。これは、HDB-6孔周辺で地層が南西に傾斜していることと調和的であ
る。今後、この結果とHDB-6孔の地質情報との詳細な比較を行い、ボーリング孔で得られた地質情
報と反射法地震探査の解析結果を繋ぐ情報として利用する予定である。
一方、声問層と稚内層は密度差があるため、その境界深度が大曲断層を境に変化しているとす
れば、重力値がその地点で変化する可能性がある。この仮説に従い、平成16年度は重力データの
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再解析を実施し断層位置の推定を試みた。得られた重力異常値の一例を図7に示す。赤色が重力異
常値(mgal)を示しており、南に行くにしたがい重力が小さくなる傾向が認められる。さらに、1 m
あたりの重力異常値の変化率(mgal/m)を計算した結果、測線中央部(水平距離1200 m)付近に、重
力異常値が大きく変動したピーク(図中の破線○部分)が見られ、この位置を境にして重力異常
値の変化率もほとんど変化していない(図中青線。緑線は解析結果に影響を与える地形を示す)。
この位置は大曲断層の推定位置とほぼ一致していることから、重力異常値のピーク地点は大曲断
層位置を示している可能性がある。
3) ボーリング調査
研究所設置地区およびその周辺地区の境界部付近および、これまで取得できていない地下深部
(深度500-1000mの範囲)の地質環境の把握を主な目的として、平成16年度に3孔のボーリング調
査(HDB-9、10、11孔)を実施した(図8)。
各孔の深度は、各孔の調査目的を考慮し、HDB-9孔は520 m、HDB-10孔は550 mとした。なお、HDB-10
孔は、ボーリング孔における長期モニタリング技術の開発用に、深度500mから550mにはケーシン
グパイプを設置しない裸孔区間を設けている。HDB-11孔は、平成17年3月末現在で深度803mまで掘
削を行っており、平成17年度にかけて1020 mまでの掘削を行う予定である。以下に調査結果の概
要を示す。
①地質・地質構造
コア観察結果から、HDB-9孔は表層部より稚内層最上部に当たる漸移帯より始まり、深さ138m付
近まで次第に硬質化し、典型的な稚内層と考えられる硬質頁岩へと変化していること、HDB-10孔
では深さ290m付近、HDB-11孔では深さ440m付近まで声問層と考えられる珪藻質泥岩で、それ以深
は次第に硬質化し、典型的な稚内層と考えられる硬質頁岩へ変化していることがわかった(図8)。
②岩盤の力学特性
各孔のコアを用いた一軸圧縮試験の結果では、深さ約500 mまでは強度が5∼20 MPa程度であり、
既存のボーリング調査で得られている結果と大きな差はない。物理物性(単位体積重量、有効空
隙率など)も同様の結果であった。HDB-9孔で実施した水圧破砕法による初期応力測定結果では、
水平面内最小主応力は深度185∼359 mの範囲で3.5∼7.7MPa、HDB-11孔の深度270∼418mの範囲で
4.1∼9.0 MPa(以上、速報値)程度であり、ほぼ深度に比例して増加すること、水平面内最大主
応力は最小主応力の1.5倍の範囲内にあるという結果が得られた。また、最大主応力の方向はほぼ
東西であった。
③岩盤の水理特性
各孔で実施した透水試験の結果を図9に示す。透水係数は、HDB-9孔で10 -10 ∼10 -7 m/sオーダー、
HDB-10孔で10 -10 ∼10 -7 m/sオーダー、HDB-11孔で10 -12∼10 -8 m/sオーダーであった。透水試験時に観
測した初期間隙水圧は、HDB-10孔、HDB-11孔では概ね深度相当分の圧力を示しているが、HDB-9孔
では深度相当分の圧力よりやや小さい結果が得られた(図10)。さらに、流体検層や温度検層およ
び透水試験の結果から、HDB-9孔の深度50m付近と230m付近、HDB-10孔の深度50m付近、340m付近、
460m付近において相対的に高透水性を有する区間が存在していることを確認した。また、HDB-11
孔の稚内層を対象とした試験から、割れ目が少ない低透水性部と高透水性部では3∼4オーダー程
度の透水性の差があるという結果が得られた。
④地下水の地球化学特性
各孔において実施した原位置採水およびコア抽出水の分析を行った結果、地下水中の塩分濃度
は深度が深くなるにつれて高くなる傾向が認められた(図11)。また、酸素・水素同位体比の分
析結果では、塩分濃度と同様に深度が大きくなるにつれ間隙水の酸素・水素同位体比も徐々に大
きくなっている(図12)。また、深度が深くなるにつれ酸素・水素同位体比のデータが天水線か
ら外れていくことから、現在の地下水は、地下に浸透した降水と地層が堆積した当時の海水が混
合しながら、岩石とも反応して現在の水質になっていると推定される。さらに、HDB-11孔では、
原位置での地下水の物理化学パラメータ測定装置の適用試験として、深度約550m地点の地下水の
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pH、電気伝導度、酸化還元電位、温度などのデータを原位置で計測した(図13)。その結果、温
度は約35度でほとんど変動はないものの、pHは地上で計測した値と原位置で計測した値に差が生
じている。この差は、地下水に溶存している二酸化炭素が地表部で気体となって大気中に放出さ
れる(脱ガス)ことにより生じていると考えられる。
地下水水質形成における微生物の役割を検討するため、地下水中の微生物を分析した結果、地
下水中の全菌数は10 4 個/ml (定量下限に近い値)から10 6 個/ml (試錐孔近傍の河川水を超える値)
までの値が得られ、深度500m程度までの地下水中には微生物が存在するという結果が得られた。
また、微生物の中には硫酸還元菌やメタン生成菌が存在する可能性があり、地下水水質を形成す
る反応に寄与する可能性があると考えられる。
4) 表層水理調査
平成16年度は平成15年度までに整備した幌延町内4箇所の気象観測所や研究所設置地区および
その周辺地区の3つの流域(P-1、2、3流域)での河川流量観測システムなどを継続して観測した
(図14)。観測結果の一例を図15に示す。これらの結果を用い、北進気象観測所を設置した平成
15年8月から平成16年7月末までの1年間のデータを用いて地下水涵養量を試算した結果、年間降
水量は約1620mm、年間河川流出高は約1100mm、年間蒸発散量は約420mmであった。また、降水量か
ら河川流出高と蒸発散量を減じた値として求められる年間地下水涵養量は、概ね100mmであると試
算された(図16)。なお、気象観測は、草地とともに流域の大半を占める広葉樹林からの蒸発散
量(樹冠上蒸発散量)を推定するため、北進発散量観測タワー(高さ約30m)を設置して11月から
観測を開始した。さらに、岩盤への涵養量を直接把握するために、研究所用地内で深度約1∼20m
のボーリング孔を掘削し地下水位計・土壌水分計を設置して、地下水位や土壌中の水分変動の観
測を12月から開始した。
ロ)モデルの妥当性評価手法の検討
1) 地質構造モデル
平成16年度は、平成15年度までに実施された地質調査やボーリング調査結果から作成した地質
層序学的な調査結果を平成16年度の調査結果も考慮して再整理し、研究所設置地区における層序
を再構築した(図17)。さらに、断層露頭で得られた大曲断層の情報を基に、既存の物理探査結
果などを再解釈し大曲断層の三次元分布を再検討した結果、大曲断層は研究所設置地区近傍にお
いて2条に分岐していることが推定された(図18)。また、推定した断層位置と、平成16年度の
物理探査やガス調査の結果から想定される断層位置はほぼ一致しており、これまでの調査結果が
整合的に説明できることが示された。
2) 水理地質構造モデル
平成16年度は、稚内層の透水性の特徴、すなわち岩盤の透水性は深くなるにつれ小さくなる傾
向があることと、高透水性の箇所は稚内層中の割れ目帯に位置していることなどを考慮した水理
地質構造モデルを作成し、現在の地下水流動場を三次元飽和不飽和浸透解析により評価した(図
19)。解析から得られた全水頭(圧力水頭と位置水頭の和)と、水理試験時の間隙水圧測定や長期モ
ニタリングにより得られた地下水水圧から算定した全水頭は比較的整合しており、また地下水流
動方向は、研究所設置地区周辺では浅い箇所が上昇して北西に向かう流れ、深い箇所が下降して
南または南西に向かう流れであることが明らかになってきた。
さらに、地下水流動解析と併せ塩化物イオン濃度の変動も解析的に検討した。解析結果は実測
値とは若干の相違があるものの、HDB-4、5孔で相対的に塩化物イオン濃度が深部まで低い状況等
をよく表現できていることがわかり、地下水中の塩化物イオン濃度は地下水流動解析結果を検証
するための有効な情報になりうることが示唆された。
3) 地球化学モデル
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JNC TN1400 2005-018
これまでの調査結果から得られた地下水の水質分布をもとに、多変量解析(Multivariate Mixing and
Mass balance modelling analysis:Laaksoharju et al.,1999)を実施した(図20)。その結果、本地
域の地下水水質の分布を考察する際には、表層部から涵養する降水起源の地下水と、溶存成分濃度の高
い地下水との混合が重要であることが示唆され、現在の海水の影響はほとんど無視できることが明らか
になった。また、大気雰囲気下で間隙水抽出を行った際の酸化の影響と考えられる硫酸イオン(SO42-)
の選択的な溶出が確認され、現在、分析方法などの再検討を実施している。さらに、各ボーリング孔に
おける地下水の水質分布などに基づき、ボーリング孔間の水質をクリギングにより補間して、研究所設
置地区およびその周辺の地下水の水質分布の推定を試みた(図21)。
4) 岩盤力学モデル
図22は、HDB-1、3、6、9、11孔の物理検層結果と室内試験結果を比較したものである。この結
果は、HDB-9, 11孔で見られる岩盤の力学物性分布がこれまでと同様の解釈、すなわちほぼ同じ物
性の岩盤が場所により深度が変化して現れるという仮説で説明できることを示しており、平成15
年度までに作成した概念モデルの妥当性が示されたと考える。また、これらの情報を用い研究所
設置地区境界部付近までを包含した鉛直断面内の力学物性分布の概念モデルの構築とそれに基づ
く物性分布の推定を行った。図23は、各孔で実施した初期応力測定結果を比較したものであるが、
HDB-9および11孔の初期応力測定結果は、過去の調査結果とほぼ同様の傾向、すなわち水平面内の
最小主応力は推定土被り圧にほぼ一致すること、最大主応力は最大その1.5倍程度の大きさである
こと、最大主応力の方向は地表から地下700m程度までほぼ東西方向であることがわかった。以上
の結果に基づき、既存の岩盤力学概念モデルをさらに更新した結果を図24に示す。
ハ)モニタリングシステムの検討
平成16年度は、HDB-1、2、3孔での地下水水圧の連続観測および、HDB-4孔における地下水の採
水および分析を実施した。また、新たにHDB-6、7、8孔に長期モニタリング装置を設置し、観測を
開始した(図25)。研究所設置地区内に掘削したHDB-1, 3孔の水圧観測結果を見ると、HDB-1孔の
深度466m程度(標高-581m)において間隙水圧が時間とともに上昇している以外概ね安定している
(図26、27)。地下水水質については、HDB-4孔で地下水の採水および化学分析を行った結果、掘
削時の採水分析結果と比べpH、Na、Clイオン濃度が高くなる傾向が認められた(図28)。pHが高
くなる原因としては、ボーリング孔内のケーシングパイプやそれを固定するためのセメントの溶
解による影響などが考えられる。また、Na、Clイオン濃度の増加は、掘削に採取した地下水に掘
削水の影響が残っていたためと推定される。
遠隔監視システムに関しては、平成16年度に観測機器の配置の検討及び電磁アクロスの送受信
機器の設置を行った(図29)。送信地点は、電磁・弾性波アクロス共に地下施設の研究所用地付
近に配置し、電磁アクロス受信地点は、これまでの調査から地下の比抵抗値に変化のある領域が
いくつか確認されているため、これらを挟む直線的な配置とした。弾性波アクロスの受信地点も、
電磁アクロスと同様に送信地点から北東の方角に受信地点を配置した。電磁アクロスについては、
現在試験観測を実施中であり、その試験観測記録の一例を図30に示す。磁場の一日の変化を見る
と国内での同種の観測で見られる傾向、すなわち1日の中で一度磁場が急激に変化する傾向が見ら
れており、システムの機能に大きな問題がないことがわかった。
【研究の達成状況(平成16年度)】
イ) 地表からの調査によるデータ取得、モデル化
平成16年度は、平成14年度に設定した研究所設置地区境界部や大曲断層の位置・性状などの地
質環境の把握を主目的として地質調査、地上物理探査、ボーリング調査を実施し、これまでの調
査結果とあわせ研究所設置地区およびその周辺の深度500m程度までの地質環境特性が概ね把握さ
れるとともに、大曲断層の地表位置特定には至っていないが、その位置や形状などをより絞り込
むために必要な知見が得られ、地質構造モデル構築に不可欠な大曲断層に関する情報を整備する
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ことができた。また、水理モデル構築の一環として表層水理観測システムの整備を実施している。
以上、所期の目標に対して十分な成果が得られた。
ロ) モデルの妥当性評価手法の検討
平成14年度に設定した研究所設置地区およびその周辺を対象として、イ)で取得したデータに
基づき、平成15年度までに構築した地質構造・水理・地球化学・岩盤力学に関するモデルの更新・
構築を図った。以上、所期の目標に対して十分な成果が得られた。
ハ) モニタリングシステムの検討
平成15年度までのボーリング調査で掘削したボーリング孔に長期モニタリングシステムを設置
し、観測体制を整えた。また、遠隔監視システムの開発では、電磁アクロスなどの受発信システ
ムを設置するとともに試験観測を開始した。以上、所期の目標に対して十分な成果が得られた。
平成16年10月に幌延において国際ワークショップを開催し、これまでの研究成果に関して、国
内外の専門家より一定の評価を得るとともに、いくつかの個別研究課題に関するコメント・提案
(力学・水理的な特性に対する割れ目の影響の有無、被圧層の生成メカニズム、メタンガス起源
など)があった。これらについては、今後の研究に反映していく予定である。
(参考文献)
サ イ ク ル 機 構 (2004):International Workshop on Horonobe Underground Research Laboratory
Record- , JNC TN5400 2004-005.
Project
(今後の予定)
イ) 地表からの調査によるデータ取得、モデル化
平成17年度は、主として深度1000mまでの地質環境データの取得を目的としたボーリング調査
(HDB-11孔:掘削深度約1020m(平成16∼17年度の2ヵ年度で実施))、大曲断層位置やその性状
の把握のための地上物理探査・地質調査などを実施する予定である。また、昨年度までに設置し
た表層水理観測システムによるデータの継続観測を行い、地下水涵養量などの定量的評価を進め
る予定である。
ロ) モデルの妥当性評価手法の検討
イ)で取得したデータに基づき、平成16年度までに構築した地質構造・水理・地球化学・岩盤
力学に関するモデルの更新・構築を図るとともに、平成17年度に開始する地下施設建設に伴う周
辺の地質環境への影響予測を実施する。
ハ) モニタリングシステムの検討
ボーリング調査によって平成16年度までに掘削したボーリング孔へ長期モニタリングシステム
の設置し観測を開始する。また、平成16年度までに設計・製作した遠隔監視システムを設置し、
長期観測体制を整える。
【成果の利用実績及び活用見通し】
本研究の成果に基づき、幌延深地層研究計画の中で実施中の処分技術の信頼性向上および安全
評価手法の高度化に関する研究などで、東海事業所と連携をとりつつ、幌延の地質環境を事例と
した人工バリアの試設計(サイクル機構の平成17年取りまとめの中で一部実施)や安全評価を試
行し、それらの妥当性を検証することで、堆積岩を対象とした地層処分の安全審査基本指針、安
全審査指針などの策定の際の技術的根拠の整備に資すると考えられる。具体的には、第2次取りま
とめを基盤としつつ第1段階で把握された幌延の地質環境の特徴(堆積岩、塩水系地下水、ガスの
存在など)を考慮した処分場の設計手法(要件やその流れ、設計に用いた解析評価手法など)や
安全評価手法(シナリオ構築技術や必要な各種のパラメータの設定方法など)を構築し、これら
の方法論を幌延深地層研究計画における第2段階以降の調査研究における原位置試験計画策定や
安全評価解析の試行に適用することで、第1段階で適用した地質環境の調査予測技術も含めた地層
処分技術の信頼性の向上を図る。
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【研究成果の発表状況(平成16年度)】
青木和弘,福島龍朗,帆秋利洋(2004):北海道北部新第三紀声問層および稚内層中の深部地下水中の微生物培
養分析,日本地質学会第 111 年学術大会講演要旨,p.255,2004 年 9 月.
浴 信博,高橋一晴,石井英一,安江健一,福島龍朗(2004):幌延深地層研究計画における大曲断層調査,物理
探査学会平成 16 年度第 110 回学術講演論文集,pp.125-128,2004 年 5 月.
Hama,K. and Kunimaru,T.(2005):The hydrogeochemistry of argillaceous rock formations at the Horonobe URL site,
Japan.,TOURS 2nd international meeting ABSTRACTS,pp.399-400,2005 年 3 月.
濱 克宏,國丸貴紀,中山 雅(2005):幌延深地層研究計画 新第三紀堆積岩の水理・地球化学特性について,
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本多 眞,桜井英行,岩佐健吾,鈴木 誠,松井裕哉(2005):各種比抵抗探査データを用いた地球統計学的手法
に基づく地下水水質分布の推定,資源・素材学会春季大会講演集 2005 年(II)素材編,pp.35-36,2005 年 3
月.
石井英一,濱 克宏,國丸貴紀,加藤孝幸(2004):幌延地域の新第三紀珪質岩に認められる水−岩石反応,日本
地質学会第 111 年学術大会講演要旨,p.294,2004 年 9 月.
石井英一,高橋一晴,津久井朗太,安江健一(2004):幌延深地層研究計画 −地質・地質構造調査の現状−,日
本原子力学会第 20 回バックエンド夏季セミナー資料集,ポスター.30-1,2004 年 7 月.
石井英一,竹内竜史,安江健一,高橋一晴,操上広志,松井裕哉,福島龍朗(2004):幌延深地層研究計画−新
第三紀堆積岩における岩盤の水理地質学的特性調査−,地球惑星科学関連学会 2004 年合同大会予稿集,
G018-P006,2004 年 5 月.
石井英一,安江健一,高橋一晴,松井裕哉,福島龍朗(2004):幌延深地層研究計画−新第三紀堆積岩における
割れ目の地質学的特性調査−,地球惑星科学関連学会 2004 年合同大会予稿集,G018-P005,2004 年 5 月.
近藤孝裕,大井出裕佳,石島洋二,松井裕哉(2004):堆積深度が幌延珪藻質泥岩の力学特性に及ぼす影響に関
する研究,資源・素材学会北海道支部平成 16 年度春季講演会講演要旨集,pp.21-22,2004 年 6 月.
國丸貴紀,濱 克宏(2004):幌延深地層研究計画における地下水の地球化学特性,日本地球化学会年会講演要旨
集,p.42,2004 年 9 月.
國丸貴紀,竹内竜史,瀬尾昭治(2004):幌延深地層研究計画における原位置計測装置の概念と現状の計画,日
本地下水学会 2004 秋季講演会,pp.244-247,2004 年 11 月.
松井裕哉,山本卓也(2004):幌延地域の新第三紀堆積岩の力学特性,土木学会第 59 回年次学術講演会,CS1-012,
2004 年 9 月.
永翁一代,濱 克宏,國丸貴紀,中山 雅,青木和弘,加藤憲二(2004):新第三紀堆積岩における地下水中の細
菌群集 −北海道幌延地域を対象とした研究(第一報)−,日本微生物生態学会第 20 回大会論文集,p.78,
2004 年 11 月.
中山雅(2005):幌延深地層研究計画における地上からの調査段階の現状,放射性廃棄物処分に関する情報交
換会,要旨集印刷中,2005 年 3 月.
中山 雅,藤島 敦,入矢桂史郎,栗原雄二(2004):ポゾラン反応を利用した低アルカリ性セメントの開発,原
子力学会北海道支部第 22 回研究発表会,pp.18-19,2004 年 12 月.
中山 雅,國丸貴紀,濱 克宏(2005):幌延深地層研究計画の概要,日本原子力学会 2005 年春の年会,p.630,
2005 年 3 月.
新里忠史,安江健一(2004):幌延地域における地質環境の長期安定性に関する研究 −研究の現状と研究計画−,
第 14 回環境地質学シンポジウム講演発表要旨(日本地質学会環境地質研究委員会ウェブ・ページに掲載;
http://www.bekkoame.ne.jp/~jcenvgeo/),2004 年 12 月.
新里忠史,安江健一(2004):幌延地域における地質環境の長期安定性に関する研究 −地域特性を考慮した地質
−342−
JNC TN1400 2005-018
環境の長期安定性−,第 14 回環境地質学シンポジウム論文集,pp.101-106,2004 年 12 月.
新里忠史,安江健一(2005):幌延地域における地質環境の長期安定性に関する研究 −長期安定性の評価・予測
における地域特性の考慮−,原子力バックエンド研究,11,2005 年.(印刷中)
新里忠史,安江健一,石井英一(2004):幌延町における地質環境の長期安定性に関する研究,日本地質学会第
111 年学術大会講演要旨,p.189,2004 年 9 月.
高橋一晴,石井英一,安江健一,福島龍朗(2004):幌延深地層研究計画 − 新第三紀堆積岩の岩石・鉱物学的
特性(その 2),地球惑星科学関連学会 2004 年合同大会予稿集,G018-P004,2004 年 5 月.
高橋一晴,石井英一,安江健一,舟木康智,福島龍朗,天羽美紀,鈴木徳行(2004):幌延深地層研究計画 −新
第三系層序および有機地球化学的特徴−,第 22 回有機地球化学シンポジウム講演要旨集,p.30,2004 年 8 月.
竹内竜史,瀬尾昭治,操上広志(2004):幌延深地層研究計画 −水理調査の現状−,日本原子力学会第 20 回バ
ックエンド夏季セミナー資料集,ポスター.31-1,2004 年 7 月.
寺本雅子,嶋田 純,國丸貴紀(2004):低透水性堆積岩盤における地下水流動の同位体水文学的研究,日本地下
水学会 2004 春季講演会,pp.90-93,2004 年 5 月.
寺本雅子,嶋田 純,國丸貴紀(2004):低透水性堆積岩盤における地下水挙動の同位体水文学的研究,応用地質
学会誌,2005 年.(査読中)
Wersin,P., Canniere,P.De, Pearson,F.J., Gaucher,E., Hohener,P., Eichinger,L., Mettler,S., Mader,U., Vinsot,A.,
Gabler,H.-E., Hama,K., Hernan,P.(2005):Results from an in-situ porewater chemistry experiment in opalinus clay:
evidence of microbially-mediated anaerobic redox processes,TOURS 2nd international meeting ABSTRACTS,
pp.113-114,2005 年 3 月.
山本卓也,松井裕哉(2004):断層近傍での堆積軟岩の初期応力測定,土木学会第 59 回年次学術講演会,CS1-001,
2004 年 9 月.
山本卓也,名合牧人,杉山和稔,松井裕哉,國丸貴紀(2004):幌延深地層研究計画における試錐調査結果につ
いて −主に物理・力学、地下水特性−,日本原子力学会第 20 回バックエンド夏季セミナー資料集,ポスタ
ー.27-1∼ポスター.27-4,2004 年 7 月.
安江健一,石井英一,浴 信博,福島龍朗(2004):北海道北部,幌延町北進地域の段丘堆積物の特徴,地球惑星
科学関連学会 2004 年合同大会予稿集,Q042-P004,2004 年 5 月.
Yasue,K., Ishii,E. and Niizato,T.(2005):Neotectonics of the Tenpoku Sedimentary Basin in northern Hokkaido,Japan: a
case of the Horonobe area,Hokudan 2005 International Symposium Active Faulting,pp.176-177,2005 年 1 月.
安江健一,石井英一,高橋一晴,浴 信博,福島龍朗(2004):北海道,幌延地域西部における鮮新世広域火山灰
層の年代とネオテクトニクス,地球惑星科学関連学会 2004 年合同大会予稿集,G015-004,2004 年 5 月.
安江健一,石井英一,高橋一晴,舟木泰智(2004):北海道北部,幌延地域の声問層・勇知層・更別層の地質年
代,日本地質学会第 111 年学術大会講演要旨,p.189,2004 年 9 月.
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
なし
(参考文献)
なし
[海外の研究の現状と動向]
堆積岩を対象とした地下研究施設は、ベルギー(モル)、スイス(モンテリー)、フランス(ビュー
ル)がある。ベルギーおよびスイスは「地下施設での調査研究段階(第3段階)」((1),(2),(3))、フ
ランスは「坑道掘削時の調査研究段階(第2段階)」に入っている。また、堆積岩中での調査研究に関
−343−
JNC TN1400 2005-018
する国際的な情報交換の場として、OECD/NEA RWMCの活動であるClay Clubが毎年1回開催されている。
(参考文献)
(1) P. Heitzmann, J.-P. Tripet ,2003: Mont Terri Project-Geology, Paleohydrology and Stress Field of the
Mont Terri Region. Reports of the Federal Office for Water and Geology, Geology Series No. 4.
(2) Pearson, F.J., Arcos, D., Bath, A., Boisson, J-Y., Fernandez, A.M., Gäbler, H. –E., Gaucher, E.,
Gautschi, A., Griffault, L., Hernán, P. and Waber, H.N. 2003:Mont Terri Project – geochemistry of water
in the Opalinus Clay Formation at the Mont Terri Rock Laboratory. Reports of the Federal Office for
Water and Geology, Geology Series No. 5.
( 3)M. DE Craen, L. Wang, M. Van Geet and H. Moors, 2004: Geochemistry of Boom Clay pore water at
the Mol site. SCK・CEN scientific Report, SCK・CEN-BLG-990.
【研究評価(自己評価)】
○ 成果の達成レベル
[チェック欄]
□
予定以上の成果が得られた。
■
予定どおりの成果が得られた。
□
予定どおりの成果が得られなかった。
□
その他(
)
○ 成果の活用方策
[チェック欄]
■
指針・基準類への整備に反映できる。
□
安全性評価の判断材料として活用できる。
□
安全性の向上に反映できる。
□
原子力防災対策に活用できる。
□
その他(
)
○ 計画の進捗
[チェック欄]
■
計画どおり進捗した。
□
計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□
)
計画以上に進捗した。
【自由評価欄】
特になし
−344−
JNC TN1400 2005-018
図1
地質調査ルート
図2
火山灰層の対比
−345−
JNC TN1400 2005-018
図3
断層露頭における大曲断層の断層面とその近傍に併走する小断層
141゚ 50
45゚ 04
141゚ 52
141゚ 53
HDB-9
45゚ 04
HDB-4 L
e
in
-A
HDB-10
Li
ne
-C
141゚ 51
HDB-8
n
Li
45゚ 03
45゚ 02
D
e-
HDB-5
45゚ 03
45゚ 02
HDB-3
幌延町
市街地
HDB-6
Line-E
HDB-1
HDB-11
45゚ 00
45゚ 02'
1 km
2 km
141゚ 50
141゚ 51'
Li n
eG
Line-B
45゚ 00
141゚52'
45゚ 02
141゚ 53'
平成14年度の物理探査で大曲断層と考えられる
不連続構造が認められた箇所
平成15年度の物理探査で大曲断層と考えられる
不連続構造が認められた箇所
平成16年度の物理探査で地層の不連続などの
大きな構造が認められた箇所
平成14年度に実施した物理探査
(反射法地震探査)調査測線
平成16年度に実施した物理探査
(反射法地震探査)調査測線
平成16年度に実施した物理探査
(反射法地震探査及び重力探査)調査測線
図4
調査測線位置
−346−
JNC TN1400 2005-018
HDB-6
断層の存在の可能性
南西
深度
0m
北東
解析地表面
標高
0m
0m
-500m
-500m
-1000m
500m
図5
500m
-1000m
Line-D 解析結果
1000m
図 6
マルチオフセット VSP 解析結果例
水平距離(m)
重力異常(mgal)
重力異常変化率(m/mgal)
-10
0.045
0
南
500
1000
1500
2000
北
-12
0.04
標高差 10m
地形
-14
0.035
-16
0.03
-18
0.025
重力異常
-20
0.02
-22
0.015
-24
0.01
重力異常の変化率
-26
0.005
-28
0
-30
-0.005
図 7 観測された重力異常値
−347−
JNC TN1400 2005-018
図8
10-11
透水試験結果
間隙水圧測定結果
透水係数(m/s)
間隙水圧(MPa)
10-9
10-7
1.0
3.0
地
層
名
地
層
名
深度(m)
0
ボーリング調査実施地点とケーシングプログラム
深度(m)
0
5.0
間隙水圧測定結果
透水係数(m/s)
間隙水圧(MPa)
10-9
10-7
1.0
3.0
5.0
声
問
層
100
100
10-11
透水試験結果
200
300
稚
内
層
200
(290)
300
稚
内
層
400
400
500
500
600
600
破線は口元を基準とした
静水圧分布を示す
図9
水理試験結果(左図:HDB-9,右図:HDB-10 孔)
−348−
破線は口元を基準とした
静水圧分布を示す
JNC TN1400 2005-018
地
層
名
深度(m)
0
10-11
透水試験結果
間隙水圧測定結果
透水係数(m/s)
間隙水圧(MPa)
10-9
10-7
1.0
3.0
5.0
7.0
100
声
問
層
200
300
400
(440)
500
600
稚
内
層
700
800
900
1000
破線は口元を基準とした
静水圧分布を示す
図 10
図 11
水理試験結果(HDB-11 孔)
各ボーリング孔における地下水の水質の特徴
−349−
JNC TN1400 2005-018
50
40
30
20
D=7
10
18
O+6.9
0
D(‰)
-10
-20
B
C
A
-30
D
-40
Pore water(HDB-1)
Pore water(HDB-3)
Pore water(HDB-5)
Pore water(HDB-7)
Pore water(HDB-9)
Drilling Fluid
SMOW
Horonobe surface water
D-1
R-4
B
R-1A C
HDB-1: 548.0-563.2
2:
HDB-3: 160.5-200.5
4:
HDB-4: 407.9-520.0
6:
HDB-5: 182.1-250.5
8:
HDB-6: 280.95-312.0 10:
HDB-8: 168.01-184.06 12:
HDB-9: 216.9-257.5
14:
HDB-10: 445.84-469.89
-50
-60
-70
A
1:
3:
5:
7:
9:
11:
13:
15:
-80
-90
-100
-12
-10
-8
-6
-4
-2
0
2
Pore water(HDB-2)
Pore water(HDB-4)
Pore water(HDB-6)
Pore water(HDB-8)
Pore water(HDB-10)
天水線
R-10 D
R-11
HDB-2: 344.9-404.9
HDB-4: 281.5-299.5
HDB-5: 154.1-180.5
HDB-5: 331.2-402.2
HDB-8: 57.5-89.0
HDB-9: 26.50-82.60
HDB-10: 41.33-59.88
4
18
O(‰)
図 12
地下水と間隙水の酸素・水素同位体比
40
35
温度(℃)
30
25
原位置
地上部
20
15
10
5
0
0
5000
10000
15000
20000
累積揚水量(L)
9
8
7
pH
6
5
原位置
地上部
4
3
2
1
0
0
5000
10000
15000
20000
累積揚水量(L)
図 13
地表および深度約 550m における地下水の水温と pH の計測結果
−350−
JNC TN1400 2005-018
通常期 結氷期
P-1
P-2
P-3
P-4
P-5
10
河川流量観測システム
2地点移設(11月)
河川結氷期(実測)
降水量(mm/day)
1
0
0
240
200
20
160
40
降水量
豊富アメダス(気象庁)
幌延市街地観測所(JNC)
北進観測所(JNC)
60
80
120
積雪深
豊富アメダス(気象庁)
幌延市街地観測所(JNC)
北進観測所(JNC)
100
80
40
0
日平均気温・水温(℃)
120
図 14
表層水理調査位置図
20
/
04
積雪深(cm)
流出高(mm/day)
100
20
10
水 温
P-1
P-2
P-3
P-4
P-5
0
-10
-20
1
/0
04
20
04
/0
5/
01
20
04
/0
6/
01
20
04
/0
7/
01
20
04
気 温
豊富アメダス(気象庁)
幌延市街地観測所(JNC)
北進観測所(JNC)
/0
8/
01
20
04
/0
9/
01
20
04
/1
0/
01
20
04
/1
1/
01
20
04
/1
2/
01
20
05
/0
1/
01
20
05
/0
2/
01
20
05
/0
3/
01
20
05
/0
4/
01
(平成 16 年度追加・変更)
河川流出高+蒸発散量(mm/month)
500
降水量(mm/month)
図 15
100
400
河川流量観測および気象観測結果(例)
地下水涵養量=降水量-蒸発散量-河川流出高
=約1620 - 約420 - 約1100
= 約100mm/year
300
200
100
蒸発散量(約420mm/y)
河川流出高
(約1100mm/y)
0
200
降水量(約1620mm/y)
300
400
500
*1)蒸発散量の算出には,ペンマン法(非積雪時)およびバルク法(積雪時)を用いた
*2)ペンマン法の実蒸発散量は,蒸発散係数を0.65として求めた(実蒸発散量=可能蒸発散量*0.65)
8
7
6
5
4
3
2
2
0
7
1
1
8
9
/0
/0
/0
/0
/0
/0
/1 /1
/0
/0 /0
/0 /1
/0
03 003 003 003 003 003 004 004 004 004 004 004 004 2004
0
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
図 16
地下水涵養量算定結果(算定期間:2003.8∼2004.7)
−351−
JNC TN1400 2005-018
図 17
研究所設置地区周辺の総合地質柱状図
図 18
大曲断層の三次元分布
−352−
JNC TN1400 2005-018
(m)
研究所設置地区の
おおよその範囲
図 19
広域地下水解析結果の一例(全水頭分布)
(mg/l)
HDB-3
HDB-6
0.4間隙水抽出時の酸化の影響によると考え
2-
られるSO4イオンの選択的な溶出
0.3
0.2
PC2
0.1
海水
0
HDB-6
-0.1
HDB-3
HDB-1
-0.2
HDB-7
降水
-0.3
-0.1
0
0.1
0.2
0.3
地下水
0.4
0.5
HDB-1(core)
HDB-1(pump)
HDB-2(core)
HDB-2(pump)
HDB-3(core)
HDB-3(pump)
HDB-4(core)
HDB-4(pump)
HDB-5(core)
HDB-5(pump)
HDB-6(core)
HDB-6(pump)
HDB-7(core)
HDB-8(core)
HDB-8(pump)
0.6
0.7
Seawater
HDB-1
PC1
図 20
多変量解析結果の例
図 21 推定した研究所設置地区およびその周辺
の塩化物イオン濃度
−353−
JNC TN1400 2005-018
室内試験結果
●HDB-1
●HDB-9
●HDB-3 ●HDB-6
●HDB-11
密度検層結果
地表からの深度︵
m︶
0
100
200
300
400
500
600
700
800
0
0 100
100 200
200 300
300 400
400 500
500 600
600 700
700 800
800
0
100
200
300
400
500
600
700
800
HDB-3
HDB-11
物理試験結果
HDB-1
HDB-9
HDB-6
0
100
200
300
400
500
600
700
800
12 14 16 18 20 22 24
単位体積重量
(kN/m3)
1.5
2
2.5
密度(g/cm3)
力学 試験 結果
1
0
図 22
大曲断層西側
100
HDB-1(Max)
HDB-1(Min)
HDB-3(Max)
HDB-3(Min)
HDB-6(Max)
HDB-6(Min)
HDB-9(Max)
HDB-9(Min)
HDB-11(Max)
HDB-11(Min)
土被り圧(HDB-6)
10
0 10 20 30 40 50
一軸圧縮強度
(MPa)
0
100
200
深度(m)
深度(m)
200
300
400
400
500
600
600
※土被り圧:HDB-6孔室内試験より算定
5
10
15
水平面内最大・最小主応力値(MPa)
図 23
20
HDB-1
HDB-3
HDB-6
HDB-9
HDB-11
300
500
0
2 4 6 8
静弾性係数
E50(GPa)
各ボーリング孔における物理検層・室内試験結果の相互比較
0
700
20 30 40 50 60 70 80
有効空隙率(%)
700
-90
W
-60
-30
0
30
60
N
水平面内最大主応力の方向(°)
各ボーリング孔における初期応力測定結果の比較
−354−
90
E
JNC TN1400 2005-018
研究所設置地区およびその周辺の岩盤力学的物性
地表
深度方向
の物性変
化の傾向
ZONE1
(ほぼ珪藻質泥岩に対応)
単位体積重量 :小
有効空隙率:大
各種強度:小⇒大
変形性:小⇒大
200
0
100
200
300
単位体積重量:大
有効空隙率:小
ZONE3
(ほぼ硬質頁岩に対応)
勇知層
100
各種強度 :小
変形性:小
単位体積重量:小⇒大
有効空隙率:大⇒小
(遷移層:珪藻質泥岩/硬
質頁岩)
0
力学物性値
深度︵
m︶
ZONE2
物理物性値
400
各種強度:大
変形性:大
500
300
400 声問層
500
600
遷移層
700
稚内層
800
600
HDB-7
HDB-10
700
800
A
HDB-11 HDB-1,3 HDB-6 HDB-9
200m
程度
400m
程度
700m
100m
程度
HDB-8
※地層区分(色分け)は地質調査によるもの
2
1.5
密度(g/cm3)
1
HDB-4,5
A’
50m∼100m
200m
程度
N
200m
程度
研究所設置地区
100m
程度
HDB-9
HDB-7
HDB-4
HDB-10
HDB-6
HDB-5
A
HDB-1
HDB-11
大曲断層
図 24
図 25
大曲断層
更新した岩盤力学概念モデル
HDB-6、7、8 孔における間隙水圧観測区間
−355−
A’
HDB-8
HDB-3
※HDB-9,10,11孔は速報段階
2.5
JNC TN1400 2005-018
HDB-1
(標高:69.102m)
圧力観測深度
圧力観測深度
圧力観測深度
圧力観測深度
100
(-379.748m)
(-491.698m)
(-528.048m)
(-581.73m)
水頭 (標高m)
90
80
70
60
50
2003/08/01
2003/11/01
図 26
2004/02/01
2004/05/01
2004/08/01
2004/11/01
2005/02/01
HDB-1 孔における水圧モニタリング結果
HDB-3
(標高:58.192m)
圧力観測深度
圧力観測深度
圧力観測深度
圧力観測深度
圧力観測深度
圧力観測深度
85
水頭 (標高m)
80
75
70
65
2003/08/01
2003/11/01
図 27
2004/02/01
2004/05/01
2004/08/01
2004/11/01
2005/02/01
HDB-3 孔における水圧モニタリング結果
陽イオン
100
meq/ l
Na+K
陰イオン
Cl
HCO3-+CO32-
Ca
Mg
100
試錐調査中に採水
GL-218.5 235.5m
pH: 7.5
SO42-
長期観測装置を用いて採水(H15年度)
GL-224 233m
pH: 8.6
長期観測装置を用いて採水(H16年度)
GL-224 233m
pH: 10
図 28
地下水の水質(HDB-4 孔)
−356−
(-93.69m)
(-188.85m)
(-226.71m)
(-329.85m)
(-401.00m)
(-491.64m)
HDB-4
HDB-8
E(Y方向)
Z地点
電磁アクロス受信機器設置点
電磁アクロス送信設備設置点
弾性波アクロス受信機器設置点
弾性波アクロス送信設備設置点
磁場3成分
幌延町 北進地区
N(X方向)
JNC TN1400 2005-018
HDB-5
Z(Z方向)
研究施設用地
HDB-3
アクロスの観測機器配置図
図 30
N(X方向)
E(Y方向)
図 29
電場2成分
トナカイ観光牧場
電磁アクロスの観測記録の例(HDB4:2005/3/22)
−357−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
◎2-4(廃棄2-2-5)
【研究分野】
地層処分
【研究課題名(Title)】
地質環境におけるナチュラルアナログ研究
(Natural Analogue Study of Geological Environment)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]中司 昇(なかつか のぼる)
[所属]東濃地科学センター 地質環境研究グループ
[連絡先]〒509-5102 岐阜県土岐市泉町定林寺 959-31 電話;0572-53-0211 FAX;0572-55-0180
(Name) Noboru Nakatsuka
(Title of Function) Geoscience Research Group, Tono Geoscience Center
(Address, Phone and Fax) 959-31, Jorinji, Izumi-cho, Toki-shi, Gifu-ken, 509-5102 Japan
TEL:+81-572-53-0211 FAX:+81-572-55-0180
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]笹尾 英嗣(ささお えいじ)
[所属]東濃地科学センター 地質環境研究グループ
(Name) Eiji Sasao
(Title of Function) Geoscience Research Group, Tono Geoscience Center
【研究期間】
平成 13 年度 ∼
平成 17 年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]わが国のウラン鉱床に関するナチュラルアナログ研究−特に東濃ウラン鉱
床について−(筑波大学)
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
東濃鉱山および周辺ボーリング孔
【研究概要】
[研究の経緯]
地下深部における、放射性核種の長期間にわたる移行を検討するうえで、ウラン鉱床のナチュラルア
ナログ研究は大変有効な手法である。具体的には、実際に地質環境中に長期間保存されてきたウラン鉱
床において、過去から現在までに生じた地質学的事象とそれがウランの移行・保持の状態に及ぼした影
響を明らかにする。そのため、東濃ウラン鉱床を対象として、鉱床上流部、下流部においてウラン系列
核種の分析を行うとともに、周辺の水理・地球化学環境の長期的変遷を明らかにするための調査解析を
実施し、地質環境が有する放射性核種の保持能力を解明する。さらに、そのような能力を有する地質環
境の形成・保持に影響を及ぼすプロセスを明らかにすることにより、地層処分システムの安全評価にお
ける変動シナリオに対する核種移行解析モデルの開発に資する。
−359−
JNC TN1400 2005-018
[研究目的]
ウラン鉱床や断層を利用し、想定される地質環境下における物質の固定・移行特性を明らかにすると
ともに、これらの特性を評価するための調査・解析手法を開発することにより、地層処分の安全評価手
法の信頼性向上に資する。
[研究内容]
イ.岩盤中の物質移行に関する研究
ウラン鉱床を利用して、還元環境下での地質環境中のウラン系列核種をはじめとする微量元素の長
期にわたる移行挙動を把握するための地球化学データを取得する。
ロ.断層に関する研究
断層及びその周辺部の力学特性、水理特性、地球化学特性、物質移行特性に関する調査結果を総合
し、断層及びその周辺の地質環境特性を定量的に評価し得る調査手法を構築する。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
地質環境における微量元素の移行挙動を解析する手法、断層およびその周辺の地質環境特性を評価す
る手法の例示に向けたデータの収集。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ.岩盤中の物質移行に関する研究
これまでの研究により、ウラン鉱床が存在する深度では地層中の有機物を介した硫酸還元菌によ
る硫酸還元とそれに続く硫化鉱物の沈殿が還元状態の形成に関与する主要な酸化還元反応であるこ
とが示されている。そこで、このような地下水−岩石−微生物システムの還元緩衝能力を定量的に
把握するため、水と岩石および微生物を気密バイアル瓶中で反応させ、硫酸イオン濃度や酸化還元
電位(ORP)を測定する実験を行った。この結果、これまでの実験結果と同様に微生物添加後に酸化
還元電位が減少し強還元環境が形成され、その還元速度は-26∼-44 mV/日と求められた(図1;文
献 1)
。また、酸化還元電位の減少に伴い、微生物数は増加するとともに、地下水中の硫酸イオン濃
度が減少し、硫化物イオンが増加することが確認された(図2)。この結果から、酸化還元電位の減
少に直接関与している主な反応は、地下水中の硫酸イオンを用いた硫酸還元菌による硫酸還元とそ
れに続く硫化鉱物の沈殿が還元状態の形成に関与する主要な酸化還元反応であると推測された(図
3)。
さらに、微生物の遺伝子解析から、経過日数によって卓越する微生物種が変化することが明らか
になった(文献 1)
。すなわち、微生物添加直後においては、硝酸還元を行うと考えられる微生物が
優先していたが、微生物添加の5日後には脱窒菌の増加が見られた後、微生物添加の 12 日後には硫
酸還元菌が卓越するようになることが確認された。東濃ウラン鉱床周辺では、これまでの研究によ
り、地下微生物はリグナイトなどの有機物を利用して増殖すると考えられており、微生物の増殖過
程で高分子有機物が低分子有機物である酢酸まで分解されることが示されている。実験中に認めら
れた卓越する微生物種の変化は、有機物の分解に関わる微生物が有機物の分解反応毎に異なる可能
性を示唆しており、地下水 岩石( 有機物) 微生物間の相互反応を考慮することによって、地下
深部の還元環境の形成・維持のメカニズムを解明できる可能性が示された。
また、東濃鉱山で掘削されたボーリング孔で観察される累層および層群オーダーの地層の厚さに
基づいて、大まかではあるものの、月吉鉱床における隆起・沈降量と約 150 年前から現在までの隆
起速度を見積もった(文献 10)。この結果,現時点では約 150 万年前もしくは約 100 万年前と推定さ
れる瀬戸層群堆積後から現在まで期間の隆起量が約 340m で最も大きく、この間の平均隆起速度は
0.2∼0.3mm/年と見積もられた。ウラン鉱床周辺での隆起・侵食は約 1,000 万年前と考えられるウ
ラン鉱床の形成の前から現在に至るまで繰り返し起こっていたと考えられる。ウラン鉱床はこのよ
うな変動を長期的に被りながらも長期間にわたって保存されてきており、隆起・侵食の影響はウラ
ン鉱床の存在深度にまでは達しなかったものと考えられ、長期の時間スケールで生じる地質学的変
動の影響下においても、地質環境が放射性核種を保持する能力を有することが事例として示された
(文献 10)
。
ロ.断層に関する研究
ウラン鉱床を切断して発達する月吉断層の調査結果およびウラン鉱床の形成時期に関する考察に
基づいて、ウラン鉱床の形成と断層活動の関係を考察した(文献 3, 4)。その結果、月吉断層の直近
では、土岐夾炭累層は地層の厚さに変化がないが、明世累層は断層南側で厚く、生俵累層は断層北
側で厚いことから、月吉断層は、明世累層堆積中もしくは堆積後から生俵累層堆積前にかけて正断
−360−
JNC TN1400 2005-018
層運動、生俵累層堆積中もしくは堆積後から瀬戸層群堆積前にかけて逆断層運動を行ったことが示
唆された(文献 3, 4)
。このことから、月吉断層の活動が従来考えられていたよりも古く、約 1,000 万
年前(生俵累層堆積後)と考えられるウラン鉱床の形成前から活動していた可能性が示され、今後、
月吉断層がウラン鉱床の形成に及ぼした影響、すなわちウランの濃集の場としての断層の役割も検
討する必要のあることを示すと考えられる。
また、月吉断層近傍において新たに岩石試料採取を行った。現在、断層沿いの物質移行の特徴を
明らかにするため、地球化学的調査を実施している。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ.岩盤中の物質移行に関する研究
水−岩石−微生物システムがウランの保存に重要な影響を及ぼす還元環境の形成・維持に重要な
役割を担っていることを把握できたことにより、地質環境の形成・保持に関わる調査・解析手法を
例示できた。今後、この手法の適用性を確認することによって、地質環境特性を把握するための調
査手法として提供することができる。
また、長期の時間スケールで生じる地質学的変動の影響下においても地質環境はウラン鉱床を保
持する能力を有することを事例として示した。今後、隆起・侵食などの地質学的変動に伴う地下水
流動系の変化や、地球化学環境の形成・保持のメカニズムを明らかにし、隆起・侵食などに伴う地
質環境の変化やその影響範囲を具体的に示すことによって、地層処分システムの長期的安全性の信
頼性の向上に資することできる。
これらの点から、本研究は当初計画どおりに進められており、所期の成果が得られたと考えられ
る。
ロ.断層に関する研究
地質環境に影響を及ぼすと考えられる断層活動と、ウラン鉱床の時空分布に関する関係を把握で
きた。これらの知見は、断層に沿った物質移行挙動を解明に反映されることから、所期の成果が得
られた。
(今後の予定)
イ.岩盤中の物質移行に関する研究
平成 17 年度には、これまでの研究によって得られた研究成果を取りまとめ、還元環境における地
質環境中でのウランの移行挙動を明らかにする。これによって、地質学的事象がウランの移行挙動
に及ぼす影響などに関する知見を安全評価に提供していく。
ロ.断層に関する研究
平成 17 年度には、断層に沿うウランの移行・遅延の特徴を明らかにするため、月吉断層を対象と
した地球化学的調査を行うとともに、これまでの研究成果を取りまとめ、断層活動に伴う物質移行
特性を明らかにしていく。これらによって、断層に沿ったウランの移行挙動に関する知見を安全評
価に提供していく。
なお、本研究はこれまで東濃鉱山を中心とした地域で実施してきたが、東濃鉱山における調査試験研
究の終了に伴い、今後は地質環境の長期安定性に関する研究の一環として、東濃鉱山周辺地域を含めた
より広い範囲を対象として研究を実施していく。
【成果の利用実績及び活用見通し】
本研究課題によって得られる成果は、概要調査地区における地質環境条件に関する調査項目を明確に
するとともに、地層処分の長期的な安全性を補強していくという意義をもつ。また、本研究課題によっ
て例示される地質環境特性や地質環境における物質の移行挙動を評価する手法は、実施主体の行う概要
調査に反映されるものである。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
1) Murakami,Y.・Sasao, E.・Iwatsuki, T.・Naganuma, T.(2004)
:Microbial reducing activity around
the Tono uranium ore deposit. The Fourth International Symposium on Advanced Science Research
(ASR2004).p.17.
2) Iwatsuki,T. ・ Arthur,R. ・ Ota,K. ・ Metcalfe,R. ( 2004 ): Solubility constraints on uranium
concentrations in groundwaters of the Tono uranium deposit, Japan. Radiochimica Acta,92,
789∼796.
−361−
JNC TN1400 2005-018
3) 小室光世・笹尾英嗣(2004):わが国のウラン鉱床に関するナチュラル・アナログ研究−特に東濃ウ
ラン鉱床について−.サイクル機構技術資料,JNC TY7400 2004-003,697p.
4) 笹尾英嗣・小室光世(2005):我が国の地質環境における放射性核種の移行に関するナチュラルアナ
ログ研究.2005 年度資源地質学会年会,pp.O-28.
5) 笹尾英嗣・中田正隆・小室光世(2005)
:東濃ウラン鉱床周囲の瑞浪層群の重鉱物組成とウランの供
給源.2005 年度資源地質学会年会,p.20.
6) 笹尾英嗣・小室光世・中田正隆(2005):東濃ウラン鉱床におけるウラン鉱石の酸化.2005 年度資源
地質学会年会,p.21.
7) Sasao,E.・Ota,K.・Iwatsuki,T.・Niizato,T.・Arthur,R.・Stenhouse,M.・Zhou,W.・Metcalfe,R.・
Takase,H・Mackenzie,A.(2005)
:An overview of a natural analogue study of the Tono Uranium Deposit,
central Japan.Geochemistry: Exploration, Environment, Analysis(印刷中).
8) Arthur,R.・Iwatsuki,T.・Sasao,E.・Metcalfe,R.・Amano.K.・Ota,K.(2005)
:Geochemical constraints
on the origin and stability of the Tono uranium deposit, Japan.Geochemistry: Exploration,
Environment, Analysis(印刷中)
.
9) Metcalfe,R.・Takase,H・Sasao,E.・Ota,K.・Iwatsuki,T.・Arthur,R.・Stenhouse,M.・Zhou,W.・
Mackenzie,A.(2005)
:A system model for the origin and evolution of the Tono uranium deposit,
Japan.Geochemistry: Exploration, Environment, Analysis(印刷中)
.
10) 笹尾英嗣・天野健治・太田久仁雄(2005)
:東濃ウラン鉱床におけるナチュラルアナログ研究−ウラ
ン鉱床での隆起・沈降の変遷と隆起速度の見積もり−.原子力バックエンド研究(印刷中).
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
なし。
(参考文献)
なし。
[海外の研究の現状と動向]
地質環境の変化と物質移行の関係に係わる研究は、主にヨーロッパ諸国の機関が参加する共同研究
(PADAMOT プロジェクト)として行われている。この研究では、気候や地形の変化が地質環境の変化に及
ぼす影響を評価し、性能評価モデルをより現実に即したものに改良することにより、安全評価の信頼性
の向上が目的とされている。
(参考文献)
英国地質調査所ホームページ;http://www.bgs.ac.uk/padamot/home.html。
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
−362−
)
JNC TN1400 2005-018
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
【自由評価欄】
特になし
−363−
JNC TN1400 2005-018
図1
「水−岩石−微生物」反応試
験における酸化還元電位の変化
酸 化 還 元 電 位は 微 生 物添 加
後,急速に減少している.
図2
「水−岩石−微生物」反応試
験における地下水中の硫酸イオ
ンの変化
硫酸イオンは微生物添加後に
減少しており,硫酸還元菌によ
る硫酸イオンの消費が推測され
る.
図3
ウラン鉱化帯周辺で見られる
酸化還元プロセス
ウラン鉱床が存在する深度で
は地層中の有機物を介した硫酸
還元菌による硫酸還元とそれに
続く硫化鉱物の沈殿が還元状態
の形成に関与する主要な酸化還
元反応であると考えられる.
−364−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
◎3−1(廃棄2−3−1)
【研究分野】
地層処分
【研究課題名(Title)】
安全評価シナリオに関する研究(Research on Scenario for Safety Assessment)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]内田 雅大(うちだ まさひろ)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 システム解析グループ
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村 4-33 電話:029-282-1111,FAX:029-282-9295
(Name) Masahiro UCHIDA
(Title of Function) Repository System Analysis Group, Waste Isolation Research Division, Waste
Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33 Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki 319-1194, Japan
Phone:+81-29-282-1111, Fax:+81-29-282-9295
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]牧野 仁史(まきの ひとし),若杉 圭一郎(わかすぎ けいいちろう)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 システム解析グループ
(Name) Hitoshi MAKINO, Keiichiro WAKASUGI
(Title of Function) Repository System Analysis Group, Waste Isolation Research Division, Waste
Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
【研究期間】
平成 13 年度∼平成 17 年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]
[実証試験名(実施機関)
]
[委託研究名(実施機関)
]
地層処分安全評価におけるシナリオ解析フレームの整備(三菱総合研究所)
【使用主要施設】
地層処分基盤研究施設(ENTRY)
【研究概要】
[研究の経緯]
評価シナリオは、地層処分システムの長期的な安全性を評価するための枠組みを定めるものであり、
安全規制等においても重要課題の一つとなる。シナリオの開発においては、処分場が立地される場所
の特徴を勘案しつつ、基本シナリオにおいて考慮する地下深部での様々な特性やプロセス、及び変動
シナリオや接近シナリオで考慮する天然現象や人間侵入などに起因する影響について、それらの安全
評価における考え方や取り扱いを検討することが必要になる。このため、地層処分システムの長期安
全性に関係する可能性のある特性、事象、プロセスについての情報の継続的な拡充及びシナリオ開発
のケーススタディを通じたシナリオ開発手法の改良を行い、体系的なシナリオ開発のための技術基盤
を整える。
−365−
JNC TN1400 2005-018
[研究目的]
安全評価の対象とすべき評価シナリオについて,個別現象などに関する最新の知見に基づき,シナ
リオ設定に係る知識ベースの拡充を進めるとともに,サイト固有な状況を的確に記述できるようシナ
リオ開発手法を高度化し,安全評価手法の信頼性向上と安全基準・指針類の策定に資する。
[研究内容]
イ.シナリオ構成要素の拡充
地層処分システムの性能に影響する可能性のある事象,プロセス,特性等に関する最新の知
見・データを段階的に取り込むことにより,シナリオの構成要素を拡充し,シナリオの記述内容
の信頼性向上を図る。
ロ.シナリオ開発手法の改良
地層処分システムの長期的な不確実性を考慮した評価シナリオを効率的に設定するため,シナ
リオ開発手法の改良を行う。
ハ.特定の状況に対応するシナリオのケーススタディ
改良されたシナリオ開発手法を用いて,サイトスペシフィックなシナリオ設定についての事例
研究を行い,得られた知見をシナリオ開発手法の改良に反映させる。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
イ.シナリオ構成要素の拡充
シナリオ作成にかかわる基盤情報の拡充・整理
ロ.シナリオ開発手法の改良
FEP の相関関係のマトリクス形式と階層化による表現方法の改良
ハ.特定の状況に対応するシナリオのケーススタディ
特定の状況に対応したケーススタディに向けての課題の整理
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ.シナリオ構成要素の拡充
シナリオ作成にかかわる基盤情報の拡充・整理として,個別現象の研究の進捗から得られた事象,
プロセス,特性(以下 FEP)にかかわる情報の収集・整理を継続した。
また,ロで改良されるシナリオ開発手法での利用のために,FEP 項目の拡充(核種移行率などの
状態量を示す FEP の追加など)および FEP の表現の見直し(修飾語の付記による FEP 項目の状態の
明確化など)を行った。これにより,FEP 間の相関関係の意味が表現しやすくなるとともに,特
性や状態量が環境条件などに応じて変わることにより影響の程度を一義的に定めることがで
きない場合にも,複数の可能性のある相関関係をこのような表現で区別することによりひとつ
のフレーム上で表現することができる。
ロ.シナリオ開発手法の改良
昨年度までに,
「地層処分研究開発第2次取りまとめ」(1999)や総合資源エネ ルギー調査会原子
力安全・保安部会 廃棄物安全小委員会報告「高レ ベル放射性廃棄物の安全規制に係る 基盤確
保に向けて 」(2003)で示さ れて いる PID(Process Influence Diagram)での FEP の整理に対して,
FEP の相関関係をマトリクス形式で整理すること,および安全機能を介した階層的な整理の考え方
(図1)を導入することを特徴とするシナリオ開発手法を検討してきた。本年度は,階層的な整理
の考え方を具体化するために,
「FEP に関する マト リ ク ス」を ,
「安全機能に関する マト リ ク ス」
の個々の安全機能の発現や低下のメ カニズムを FEP によ っ て表現する も のと定義し,図2のよ
うな形で,上位の安全機能層と下位の FEP 層の各層内および層間の相関関係を整理する手法を構築
した。また,これら安全機能や FEP のマトリクス形式と階層構造での整理を効率的に行うための計
算機ツールを構築した(図2)
。
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JNC TN1400 2005-018
ハ.特定の状況に対応するシナリオのケーススタディ
特定の状況に対応したケーススタディの準備として,第2次取りまとめでの地質環境条件等の想
定を対象に,ロで改良したシナリオ開発手法を人工バリア領域および天然バリア領域での FEP の相
関関係の整理に適用した。
これを通じて,
第2次取りまとめにおいて考慮した FEP の一部に対して,
本手法に適用しやすいように追加や分割あるいは表現の見直しを行うことにより,手法の適用性と
効率性が向上するとの見通しが得られた。この知見の一部は「イ.シナリオ構成要素の拡充」での
検討に反映している。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ.シナリオ構成要素の拡充
FEP についての情報の整理・拡充を継続するとともに,FEP の表現の見直しにより相関関係の複
数の可能性を表現できる見通しが得られ,所期の成果が得られた。
ロ.シナリオ開発手法の改良
FEP の相関関係のマトリクス形式と階層化による表現方法の改良を具体化するとともに,改良し
たシナリオ開発手法に基づく作業を計算機上で行うためのツールを構築することにより,所期の成
果が得られた。
ハ.特定の状況に対応するシナリオのケーススタディ
特定の状況に対応したケーススタディに向けて FEP の表現の見直し等により手法の適用性と効率
性が向上するとの見通しが得られ,所期の成果が得られた。
(今後の予定)
イ.シナリオ構成要素の拡充
個別現象に係わる研究成果の集約および FEP の表現の見直しにより,FEP リストおよび FEP 情報
を更新する。
ロ.シナリオ開発手法の改良
シナリオ開発手法の適用性および計算機ツールの機能の向上に係る改善を進める。
ハ.特定の状況に対応するシナリオのケーススタディ
特定の具体的な地質環境の条件(例えば,地下研のサイトの地質環境条件など)を対象として上
記手法のケーススタディ的な適用の範囲を順次拡大し,手法の適用性の向上あるいは効率性の向上
のための課題などを抽出するとともに,ロでの手法の改良に反映する。
【成果の利用実績及び活用見通し】
安全評価シナリオの開発のための基盤技術として,安全基準や安全審査指針の策定等に資する予定であ
る。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
:地層処分安全評価におけるシナリオ解析フレームの整備(契約業務報告書;三
(1) 大久保博生(2005)
菱総合研究所)
(サイクル機構技術資料登録中).
(発表予定)
:地層処分安全評価におけるシナリオ解析フ
(1) 牧野仁史,若杉圭一郎,大久保博生,高瀬博康(2005)
レームの構築,日本原子力学会「2005 年秋の大会」(投稿中).
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JNC TN1400 2005-018
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
(参考文献)
[海外の研究の現状と動向]
OECD/NEA および諸外国の安全評価における最新の FEP の検討状況およびシナリオ開発手法を調査
した。
(参考文献)
(1 )OECD/NEA: “Features, Events and Processes Evaluation Catalogue for Argillaceous Media”, Radioactive
Waste Management, ISBN 92-64-02148-5 (2003).
(2 )Nagra : “Project Opalinus Clay FEP Management for Safety Assessment”, Nagra Technical Report
02-23 (2002).
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
■ その他(
)
[説明欄]
安全評価シナリオの開発のための基盤技術として,安全基準や安全審査指針の策定等に資する予定
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
【自由評価欄】
−368−
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システム性能(第0層)
安全機能の
マトリクス
安全機能(第1層)
FEPのマトリクス
FEP(第2層)
図1 相関関係マトリクスの階層的な構造のイメージ
①
②
③
(a) 安全機能層の例
①
②
③
(b) FEP層の例(安全機能のFEPによる詳細表現の例)
(c) FEP層の例(安全機能間の相関関係のFEPによる詳細表現の例)
図2 マトリクス形式と階層化による相関関係の整理の例
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安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
◎3−2(廃棄2−3−2)
【研究分野】
地層処分
【研究課題名(Title)】
安全評価モデルの体系化・高度化に関する研究
(Study on Integration and Advancement of Methodology for Safety Assessment)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]内田 雅大(うちだ まさひろ)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 システム解析グループ
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村 4-33 電話:029-282-1111,FAX:029-282-9295
(Name) Masahiro UCHIDA
(Title of Function) Repository System Analysis Group, Waste Isolation Research Division, Waste
Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33 Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki 319-1194, Japan,
Phone:+81-29-282-1111, Fax:+81-29-282-9295
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]前川 恵輔(まえかわ けいすけ),澤田 淳(さわだ あつし)
,原 彰男(はら あきお)
,
武部篤治(たけべ あつじ),牧野 仁史(まきの ひとし)
,若杉 圭一郎(わかすぎ けいい
ちろう),江橋 健(えばし たけし),柴田 勝志(しばた かつし)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 システム解析グループ
(Name) Keisuke MAEKAWA, Atsushi SAWADA, Akio HARA, Atsuji TAKEBE, Hitoshi MAKINO, Keiichiro
WAKASUGI, Tomoko KATO, Takeshi EBASHI, Katsushi SHIBATA, Makoto KAWAMURA
(Title of Function) Repository System Analysis Group, Waste Isolation Research Division, Waste
Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度 ∼ 平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]
亀裂性岩盤内の水理・物質移動に関する研究(米国ローレンスバークレー研究所)
地層処分システムの性能評価及び実験的研究(米国サンディア国立研究所)
処分場の広域安全評価モデルの統合化に関する研究(米国カリフォルニア大学バークレー校)
[実証試験名(実施機関)
]
[委託研究名(実施機関)
]
亀裂を有する軟岩の水理・物質移行特性データの取得・解析(大成建設株式会社)
堆積岩地域の水理特性を把握するためのモデル解析(前田建設工業株式会社)
前進的モデルを用いた不均質性堆積岩評価手法の研究Ⅱ(株式会社地球科学総合研究所)
地層処分安全評価における生物圏評価手法の高度化とモデル整備(日揮株式会社)
地質環境分野についての技術情報統合システムの機能高度化(三菱マテリアル株式会社)
処分技術・安全評価分野についての技術情報統合システムの機能の高度化(三菱重工業株式会社)
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【使用主要施設】
地層処分基盤研究施設(ENTRY)
【研究概要】
[研究の経緯]
地層処分の安全評価の信頼性を向上させるためには,地下深部あるいは人工バリア等の様々な特性や
プロセスに関する最新の知見を取り込むとともに評価の妥当性と合理性の向上を勘案し,人工バリア,
天然バリア及び生物圏における個別現象の解析手法を高度化することが必要である。あわせて,瑞浪や
幌延の深地層の研究施設計画等から得られる地質環境条件や設計条件に関する情報を有効に利用して,
将来選定される地層処分サイトの総合的な安全評価を行えるように,人工バリア,天然バリア及び生物
圏における個別現象評価手法を整備・体系化し,安全裕度の把握や安全評価手法の信頼性を向上させる
ことが重要である。
[研究目的]
サイトが特定された場合に得られると考えられる個々の地質環境の特性やそれに基づく設計情報及
び地表環境条件を的確に安全評価に反映することにより,より現実的で詳細な評価ができる安全評価モ
デルを構築し,安全裕度の把握や安全評価手法の信頼性向上に資する。
[研究内容]
イ) 人工バリア中核種移行モデルの高度化
人工バリア中核種移行モデルに関して,沈殿/溶解反応などの速度論的な反応や腐食生成物中への
収着挙動,廃棄体間の濃度干渉効果等を考慮し,より詳細かつ複合的な評価ができるようにモデルの
改良を行い,人工バリアシステムの安全裕度の向上を図る。
ロ) 天然バリア中核種移行モデルの高度化
亀裂や断層の内部構造/充填物質,地球化学特性,コロイド等の天然バリア特有の諸要因が核種移
行に与える影響について,室内試験や国内外の研究機関との共同研究及び文献調査等を通して,これ
らの特性や重要性を把握する。また,これらのモデル化について検討を行い,性能評価モデルの高度
化に反映させる。
ハ) 生物圏評価モデルの高度化
生物圏での核種移行/線量評価の観点から,サイトが特定された場合に得られると考えられる詳細
な情報を想定し,コンパートメントモデルの適用性を確認し,モデルの高度化を図るとともに,安全
評価上重要なサイト固有のデータ項目の抽出を行う。
なお,上記イ)∼ハ)で検討したモデルを統合し,総合的な安全評価手法としてのモデルの体系化を図る。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
・ イ)∼ハ)に関しては,人工バリア,天然バリア及び生物圏における重要な個別現象を考慮することに
よる安全評価手法の高度化
・ 安全評価手法体系化のうち技術情報の管理・運用に関する方法論の改良
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ)人工バリア中核種移行モデルの高度化
核種移行に対する遅延効果が期待される人工バリア周辺の掘削影響領域をモデル化するための2
次元モデル構築の一環として,モデルで設定する必要のあるセルの大きさと計算精度の関係について
検討を行った。その結果,掘削影響領域の亀裂部分とそこに接する基質部についてのセルの大きさが
計算精度に影響することを把握するとともに,この部分のセルの大きさをセルペクレ数の考え方に基
づいて設定することにより計算精度が確保できる見通しを得た。
−372−
JNC TN1400 2005-018
ロ)天然バリア中核種移行モデルの高度化
i) 結晶質岩
・サイトスケールモデル化手法
結晶質岩を対象とした亀裂ネットワークモデルについては,処分場近傍などの詳細調査の対象とな
る領域においては亀裂ネットワークモデルを用いてモデル化するとともに,調査データが相対的に疎
な周辺領域においては等価多孔質媒体へ近似した連続体モデルを適用する入れ子式モデルによる検
討として,広域地下水流動研究および超深地層研究所計画で取得されたデータを用いたモデルの構築
と地下水流動解析を実施した(図1)
。また,水理地質構造モデルから求められる移行経路情報の不
確実性を定量的に評価する手法として,確率有限要素法に基づいた地下水流動解析と任意点からの地
下水移行経路とその到達点およびそのバラツキ(図2)を定量化する手法として基本的なツールを開
発した。
・単一亀裂内水理・物質移行現象モデルの信頼性向上
単一亀裂内の水理・物質移行現象の理解を目的として,亀裂内部構造の調査手法の開発及び不均質
な亀裂開口幅の分布が粘性流体流れに与える影響を評価可能な数値解析モデルの開発を進めている。
前者については,これまでに開発してきた研削による亀裂開口幅測定装置を用いて,天然の亀裂を含
む 50cm スケールの岩石試料の亀裂開口幅の測定を開始した(図3)
。また後者については,格子ガス
オートマトン法(LGA 法)を用いた水理・物質移行解析コードを用いた解析の適用性について検討を
行うとともに,亀裂開口幅の不均質構造が亀裂の平均特性(透水量係数など)に与える影響について
検討を継続した(図4)
。
・亀裂ネットワーク・原位置トレーサー試験に対する概念モデルの不確実性解析
スウェーデン SKB が主催する水理・物質移行モデリングタスクフォースの課題として,既存の核種
移行概念モデルでは考慮されていなかった亀裂充填物への拡散現象について,性能評価時間スケール
(今回は 106 年までを対象)での物質移行に与える影響を sp 硬岩研究所で実施されたトレーサー試
験データを対象に検討した結果,亀裂充填物を考慮した場合には,考慮しない場合に比べ移行時間が
大きく遅延する可能性があることを示した(図5,図6)
。
ii) 堆積岩
・堆積岩地域を対象とした水理地質構造モデル化技術
堆積岩地域の水理地質構造モデル構築に関する検討の一環として,幌延深地層研究計画での調査で
確認されている地質環境条件に着目した地下水流動に関するモデル解析を実施した。その結果,地下
深部の高い間隙水圧には力学的な影響が起因している可能性が示唆された。また,堆積岩地域の地層
の不均質性に起因する透水係数分布等の推定を目的として開発した地質構造の推定手法に関して,堆
積岩の形成過程の時間変化を考慮できる機能の拡張を行った。
・亀裂を有する堆積岩の水理特性
亀裂を有する堆積岩の水理および物質移行特性の把握を目的として,幌延深地層研究計画での試錐
調査で得られた亀裂を含まない試料および亀裂を有する試料による室内試験(透水試験,拡散試験,
トレーサー試験)および解析的検討を行っている。試験の結果,亀裂の物質移行開口幅と透水量係数
の関係が,亀裂性岩盤である釜石鉱山での原位置試験結果から得られた関係と同様の関係式で表現で
きる可能性があることが明らかとなった(図7)
。
ハ)生物圏評価モデルの高度化
地下環境と生物圏とのインターフェイス(GBI)の取り扱いについて,わが国の地理条件,地形条
件,地質条件,水文条件の特徴の整理結果に基づき,それら特徴を取り込んだ仮想的な地質環境を
設定することにより,可能性のある GBI 候補のバリエーションの具体的な抽出を試行するとともに,
それら候補の中から評価で考慮する GBI を絞り込むために有効な情報あるいは調査を検討した。
安全評価手法の体系化の一環として取得されるデータと核種移行評価モデルの入力との間に介在す
る種々の技術情報やその流れなどを体系化して技術情報を管理・運用することを目的に開発してきた計
算機システムに対して,ユーザーの操作が容易となるようなグラフィカル・ユーザー・インターフェイ
スなどの改良を実施した。
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JNC TN1400 2005-018
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ)人工バリア中核種移行モデルの高度化
人工バリアとその周辺の掘削影響領域における核種移行の二次元的な解析に関するモデル化研究
の一環として計算精度を確保できる見通しを得ることにより,所期の成果が得られた。
ロ)天然バリア中核種移行モデルの高度化
結晶質岩については,亀裂ネットワークモデルと連続体モデルによる入れ子式モデル化手法を瑞浪
地域における地下水流動解析に適用した。また,水理地質構造モデルから求められる移行経路情報の
不確実性を定量化する手法として基本的なツールを開発するとともに,50cm スケールの天然亀裂を
含む岩石試料を対象とした研削による開口幅測定に着手し,格子ガスオートマトン法(LGA 法)水理・
物質移行解析コードを用いて,亀裂開口幅の不均質構造が水理・物質移行特性に与える影響検討を実
施した。さらに,性能評価時間スケールでの物質移行において亀裂内充填物を考慮した際の移行遅延
の可能性を提示した。堆積岩については,幌延深地層研究計画で取得された亀裂を有する堆積岩を対
象とした室内試験等により,水理・物質移行特性データの拡充を行った。また,水理地質構造モデル
の構築については,幌延地域の地質環境条件を考慮したモデル解析により,地下水流動に対する影響
要因を確認するとともに,堆積岩の不均質性を再現する手法について機能を拡張することにより,よ
り現実的な堆積過程を考慮できるようになった。サイトスケールを対象としたモデル化手法の開発と
実際の地質環境データへの適用の実施など,天然バリア中核種移行モデルの高度化について所期の成
果が得られた。
ハ)生物圏評価モデルの高度化
GBI の設定に係わる具体的な方法論と課題を明らかにすることができ,所期の成果が得られた。
安全評価手法の体系化については,技術情報やその流れを管理・運用するための計算機システムの操
作性を向上することにより,所期の成果が得られた。
(今後の予定)
イ)人工バリア中核種移行モデルの高度化
今年度得られた成果に基づき計算精度確保の技術を具体化していくとともに,人工バリアおよび周
辺母岩中での核種移行に係わる個別プロセスについての最新の知見の取り込みについて検討する。
ロ)天然バリア中核種移行モデルの高度化
亀裂ネットワークモデルの改良・高度化としては,超深地層研究所計画等で段階的に取得されるデ
ータを用いた検討を繰り返し実施して問題点を解決していくことで,解析ツールの整備を進める。移
行経路情報の不確実性を定量的に評価する手法に関しては,三次元的な空間の広がりを考慮した手法
の適用性について検討する。単一亀裂内の水理・物質移行現象の理解に関しては,天然の単一亀裂及
び交差亀裂を有する 50cm スケールの岩体試料を研削することにより三次元的な開口幅分布及び亀裂
開口部の形状データの取得を継続するとともに,LGA 解析においては,取得した 10cm スケールの亀
裂開口部の形状データを用いた実験結果と解析結果の比較検討を継続して行う。亀裂ネットワーク・
原位置試験に対する移行経路の概念モデルの不確実性解析(亀裂内部構造としてガウジの有無,亀裂
内部の小亀裂の有無等の影響解析)については,決定論的構造からなるネットワークにおいて行われ
た原位置トレーサー試験における人工的に作られた大きな動水勾配での破過曲線に対してキャリブ
レーションされた複数のモデルについて性能評価の対象となる自然状態の小さな動水勾配(0.1%)で
の挙動を比較することにより,原位置トレーサー試験が自然状態の動水勾配下でのモデルの挙動にど
の程度影響するのかについて引き続き検討を行い,原位置トレーサー試験で取得すべきパラメータの
明確化を図る。
亀裂を有する堆積岩の水理・物質移行特性については,幌延深地層研究計画で得られる異なる地層
や深度の試料を用いた透水試験および物質移行試験結果に基づき,亀裂を有する堆積軟岩中の地下水
流動および物質移行現象を評価するための解析手法の確立をめざした検討を進める。また,堆積岩地
域の水理地質構造モデルの構築については,幌延地域で確認されている地質環境条件を例とした種々
−374−
JNC TN1400 2005-018
のモデル解析により,地下水流動に対する影響要因を把握するとともに,堆積岩の不均質性を再現で
きる手法による幌延地域の堆積構造の推定および調査結果との比較・検証を通じて,より現実的なモ
デル化手法の構築に資する。
ハ)生物圏評価モデルの高度化
GBI の設定における課題に対して,調査による情報取得と GBI のバリエーションの絞り込み等との
関係の検討を継続するとともに,具体的なモデル化についても検討を進める。また,パラメータの重
要度に関する感度解析についてその範囲を拡張して実施するとともに,その結果に基づくパラメータ
の設定状況の把握を継続し,今後のデータ取得・整備の優先度などを考えるうえでの基盤的な情報を
継続的に蓄積していく。
安全評価手法の体系化については,技術情報やその流れを管理・運用するための計算機システムの使
用実績の蓄積を進めるとともに,それら経験を踏まえた研究開発で生じる技術情報の管理・運用で重要
となる方法論や技術の総括を行う。
【成果の利用実績及び活用見通し】
総合的な安全評価手法のための基盤技術として,安全基準や安全審査指針の策定等に資する予定である。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
ロ)天然バリア中核種移行モデルの高度化
(1) 深堀大介,文村賢一,下茂道人,佐藤晃,武部篤治,澤田淳(2004):X 線 CT による花崗岩内単一亀
裂の開口幅評価,平成 16 年度全国大会第 59 回年次学術講演会論文集,3-407,pp.813-814.
(2) 吉野尚人,松井幹雄,伊藤節男,野本康介,澤田淳(2004):不均質場における地下水流動の不確実
性評価手法の開発−特定移行経路における移行距離の不確実性評価−,平成 16 年度全国大会第
59 回年次学術講演会論文集,CS1-020,pp.39-40.
(3) 武部篤治,澤田淳,内田雅大,村岡保,佐藤成二,山本朝男(2004):亀裂の不均質性パラメータを
用いた流体・移動解析評価,平成 16 年度全国大会第 59 回年次学術講演会論文集,CS1-021,
pp.41-42.
(4) 鐵桂一,澤田淳,内田雅大 (2004):研削による岩体亀裂開口部の測定,平成 16 年度全国大会第 59 回
年次学術講演会論文集,CS1-013,pp.25-26.
(5) 佐藤久,武部篤治(2004):10cm スケールの単一亀裂を対象としたトレーサー試験方法の改良,平成
16 年度全国大会第 59 回年次学術講演会論文集,CS1-014,pp.27-28.
(6) 佐藤晃,深堀大介,澤田淳,菅原勝彦(2004):X 線 CT による不均質材料中の亀裂開口幅評価,資源・
素材学会論文集「資源と素材」,第 120 巻,6,7 号,pp.365-371.
(7) R. Saito, Y. Ohnishi, S. Nishiyama, T. Yano, A. Takebe, A. Sawada(2004):Study on hydraulic
and transport characteristics of rock fracture using Lattice Gas Automaton,3rd ARMS 2004,
Contribution of Rock Mechanics to the New Century Vol.2,pp.1305-1310.
(8) 井尻裕二,畑明仁,細野賢一,澤田淳(2004):原位置トレーサー試験により得られる核種移行パラ
メータ値の不確実性について,土木学会論文集 No.778,Ⅲ-69,pp.85-97.
(9) 畑明仁,井尻裕二,細野賢一,澤田淳(2004):原位置トレーサー試験の逆解析による同定パラメー
タ値の不確実性評価,原子力バックエンド部会誌 Vol.10,No.1-2,pp.47-56.
:亀裂を有する岩石中のマトリクス拡散を考慮
(10) 下茂道人,熊本創,畑中耕一郎,内田雅大(2004)
したトレーサー試験方法の開発,平成 16 年度全国大会第 59 回年次学術講演会論文集,3-331,pp.
661-662.
:間隙水圧観測結果を用いた逆解析による堆
(11) 伊藤一誠,唐崎健二,畑中耕一郎,内田雅弘(2004)
積岩地域の水理地質構造把握─幌延深地層研究計画サイトへの適用─,応用地質,
第 45 巻,
第 3 号,
pp.125-134.
(12) A. Hara, M. Uchida (2004): Evaluating heterogeneity in mudstones based on geologic processes
at Horonobe, Japan, 66th European Association of Geoscientists & Engineers Conference and
Exhibition, Extended Abstracts & Exhibitors Catalogue H007.
(13) 原彰男,内田雅大,川田耕司,増井泰裕(2004):新第三紀堆積岩を対象とした堆積構造シミュレ
ーションモデルの開発(その1)─幌延地域における堆積プロセスの検討─,日本原子力学会
「2004 年秋の大会」予稿集,第Ⅲ分冊-I12,pp.662.
(14) 吉野尚人,野本康介,松井幹雄,梨本裕:移行パラメータ信頼性評価手法の確立(Ⅱ),核燃料サ
−375−
JNC TN1400 2005-018
イクル開発機構(契約業務報告書;前田建設工業株式会社)
,JNC TJ8400 2004-035,2004.
(15) 佐藤晃,内田雅大,澤田淳,武部篤治,佐藤久:X 線 CT による亀裂性岩盤内の移流・分散現象の
分析(先行基礎工学研究に関する平成 16 年度共同研究報告書),核燃料サイクル機構,JNC
TY8400 2005-001,2005.
(16) A. Hara, T. Tsuji, M. Nishimura, K. Hoshi, M. Yagi, K. Kawada, J. Y. Hou, A. Kato, H. Suzuki,
M. Uchida (2005) Application of log interpretation methods to evaluate heterogeneity in
diatomaceous mudstone at Horonobe area, Proceedings of International Symposium NUCEF2005,
JAERI/JNC, (in press).
ハ)生物圏評価モデルの高度化
:線量換算係数の改訂に伴う地層処分生物圏評価の再検討,
(1) 鈴木祐二,牧野仁史,加藤智子(2005)
サイクル機構技術資料,JNC TN8400 2005-004.
:地層処分安全評価における生物圏評価手法の高度化とモデル整備(契
(2) 小山田潔,吉田英爾(2005)
約業務報告書;日揮株式会社)
(サイクル機構技術資料登録中).
・安全評価手法体系化
:地質環境分野についての技術情報統合システムの機能高度
(1) 土屋真,上田真三,大橋東洋(2005)
化(契約業務報告書;三菱マテリアル株式会社)
(サイクル機構技術資料登録中).
(2) 石原義尚,根山敦史(2005):処分技術・安全評価分野についての技術情報統合システムの機能の
高度化(契約業務報告書;三菱重工業株式会社)
(サイクル機構技術資料登録中).
(発表予定)
ロ)天然バリア中核種移行モデルの高度化
(1) 武部篤治,澤田淳,内田雅大,山本朝男,細田淳司(2005):LGA 法を用いた流体解析による亀裂開
口幅分布の影響検討,平成 17 年度全国大会第 60 回年次学術講演会論文集,
(投稿中).
(2) 吉野尚人,野本康介,松井幹雄,武部篤治,澤田淳(2005):不均質場における地下水流動の不確実
性評価手法の開発(その2)−モンテカルロ法との比較検討−,平成 17 年度土木学会全国大会第
60 回年次学術講演会論文集,(投稿中).
(3) 吉野尚人,野本康介,松井幹雄,武部篤治,澤田淳(2005):不均質場における地下水流動の不確実
性評価手法の開発(その3)−3次元展開−,平成 17 年度土木学会全国大会第 60 回年次学術講演
会論文集,
(投稿中).
(4) S. Uehara, Y. Ohnishi, S. Nishiyama, T. Yano, R. Saito, A. Takebe, A. Sawada(2005) :
Investigation of Hydraulic and Transport Characteristics of a Rock Fracture Using Lattice
Gas Automata,the 11th International Conference of IACMAG 2005,(in preparation).
(5) 矢野隆夫,大西有三,西山哲,齋藤竜平,澤田淳,武部篤治(2005):岩盤中の単一亀裂に関するせ
ん断透水特性に関する研究,土木学会論文集(執筆中).
(6) A. Sato, D. Fukahori, A. Sawada, K. Sugawara(2006):Evaluation of Crack Opening in the Rock
Sample by X-ray CT,GEO Congress,Atlanta U.S.A,2006.3,(in preparation).
(7) A. Sawada,H. Saegusa, Y. Ijiri (2005): Uncertainty Evaluation of Groundwater Flow by Multiple
Modeling Approach at Mizunami Underground Research Laboratory Project, Japan., AGU monograph
(in press).
(8) Y.Ijiri, A. Hata, K. Hosono, A. Sawada (2005): Uncertainties of nuclide migration parameter
values obtained from in-situ tracer experiments, International Conference on the Safety of
Radionuclide Waste Disposal, IAEA, (in press).
(9) 熊本創,下茂道人,内田雅大,畑中耕一郎(2005):人工亀裂を有する堆積軟岩ブロックを用いた
室内トレーサー試験,第 40 回地盤工学研究発表会(投稿中)
.
(10) 熊本創,下茂道人,内田雅大,前川恵輔(2005):堆積軟岩の空隙径分布と透水性の関係,平成
17 年度土木学会全国大会第 60 回年次学術講演会論文集(投稿中).
(11) 原彰男,内田雅大,川田耕司,星一良,加藤新,侯建勇,鈴木仁,辻隆司,西村瑞恵,八木正彦
(2005):新第三紀堆積岩を対象とした堆積構造シミュレーションモデルの開発(その2)─不均質
性の要因とシミュレーションモデルの概要─,日本原子力学会「2005 年秋の大会」(投稿中).
・安全評価手法体系化
:地層処分技術に関
(1) 柴田勝志,牧野仁史,若杉圭一郎,内田雅大,土屋真,石原義尚(2005)
する研究開発支援のための技術情報統合システムの開発,日本原子力学会「2005 年秋の大会」(投
稿中)
−376−
JNC TN1400 2005-018
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
(参考文献)
[海外の研究の現状と動向]
ロ)天然バリア中核種移行モデルの高度化
結晶質岩を対象としたモデル化技術として,特に地上からの調査段階の場合や処分場を含む比較的
大きなスケールを対象とした場合に必要な技術として,亀裂ネットワークモデルと等価多孔質連続体
モデルを組み合わせたモデル化手法の開発とその具体的地質環境への適用が諸外国でも進められて
いる。
亀裂充填物質については,SKB および Nagra において亀裂内にレジン注入し亀裂内部構造を測定す
る試みが行われている。
ハ)生物圏評価モデルの高度化
生物圏評価に関する国際的な共同研究や会議において,将来の気候変動が生物圏評価に与える影響の
検討(BIOCLIM),レファレンスバイオスフィアの考え方を具体的なサイトに適用するための検討
(BIOMOSA)
,生物圏評価の保守的な設定や不確実性に係わる検討(BIOPROTA)などが行われている。
(参考文献)
ロ)天然バリア中核種移行モデルの高度化
(1) Gylling, B, Marsic, N. (2004):Applications of hydrogeological modeling methodology using
NAMMU and CONNECTFLOW, SKB Report R-04-45, Swedish Nuclear Fuel and Waste Management Co.,
Sweden.
(2) Hartley, L. et al., (2004):Preliminary site description: Groundwater flow simulations,
Simpevarp area (version 1.1) modeled with CONNECTFLOW, SKB Report R-04-63, Swedish Nuclear
Fuel and Waste Management Co., Sweden.
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
■ その他(
)
[説明欄]
総合的な安全評価手法のための基盤技術として,安全基準や安全審査指針の策定等に資する予定。
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
−377−
JNC TN1400 2005-018
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
【自由評価欄】
−378−
JNC TN1400 2005-018
亀裂ネットワークモデル
等価不均質連続体モデル
入れ子式モデル
粒子追跡法
出発点
DH-10孔
DH-13孔
DH-9孔
DH-10孔
DH-13孔
DH-11孔
MIU-2孔
DH-11孔
DH-9孔
MIU-2孔
月吉断層
図1
水平断面投影図
南西側からの三次元透視図
広域地下水流動研究および超深地層研究所計画で取得されたデータを用いた
地下水流動解析例(粒子追跡法によって求められた移行経路例)
Y軸[m]MIU-1
MIU-2
MIU-3
100
移行開始点
透水係数
[m/sec]
[m
sec-1]
0
1000年後
3000年後
2000年後
-100
0
100
200 X軸[m]
図2 確率有限要素法による特定移行経路における移行距離および移行到達点の不確実性評価例
楕円はそれぞれ 1000 年後,2000 年後,3000 年後における移行到達点のバラツキ(3σの範囲)を示す
図3 50cm スケールの岩石試料を対象とした研削による亀裂開口幅測定装置の様子
−379−
JNC TN1400 2005-018
A
B
C
D
A
E
1
B
C
D
E
1
98∼
2
2
3
3
4
4
5
5
亀裂開口部ノード数+2
・研削による開口幅データ
A
B
C
D
・解析モデル
E
A
B
C
D
E
1
2
水頭(m)
1
2
流速(m s-1)
3
3
4
4
5
5
・解析結果(水頭分布図)
・解析結果(流速ベクトル図)
図4 LGA 法を用いた亀裂開口幅の不均質構造が亀裂内地下水流動に与える影響の検討例
図5 亀裂充填物を有する単一亀裂の概念モデル
−380−
JNC TN1400 2005-018
W it h o u t
G ouge
D if f u s io n
W it h
G ouge
D if f u s io n
∼
∼
図6 亀裂充填物を考慮する場合(赤)としない場合(青)での
Co-58*の性能評価時間スケールでの破過曲線
*:本解析では半減期の効果を除いている
物質移行開口幅 eT [m]
10-1
10-2
ブロック試験結果(声問層)
声問層(ブロック試料)
コア試験結果(声問層)
声問層(コア試料)
昨年度試験結果(稚内層)
稚内層(コア試料)
釜石原位置トレーサー試験結果(SF-1)
Kamaishi
In-situ Tracer Test (SF-1 Test)
釜石原位置トレーサー試験結果(SF-2)
Kamaishi
In-situ Tracer Test (SF-2 Test)
釜石原位置トレーサー試験結果(Dゾーン)
Kamaishi
In-situ Tracer Test (D-zone)
e=10 √ T
e=2 √ T
10-3
e=1 √ T
10-4
10-5
10-6
10-11
10-9
10-7
10-5
透水量係数 [m2 s-1]
図7 亀裂を有する堆積岩における亀裂の物質移行開口幅と透水量係数
−381−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【研究分野】
地層処分
【分類番号】
◎3−3(廃棄2−3−3(1))
【研究課題名 (Title)】
安全評価におけるシナリオ、モデルの不確実性に関する研究
(Study on the Effect of Uncertainties for Scenario and Model on Safety Assessment of Geolog
ical Disposal System)
【実施機関 (Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先 (Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]内田 雅大(うちだ まさひろ)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 システム解析グループ
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村4-33 電話:029-282-1111 FAX:029-282-9295
(Name) Masahiro UCHIDA
(Title of Function) Repository System Analysis Group, Waste Isolation Research Division, Waste
Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33 Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki 319-1194, Japan
Phone:+81-29-282-1111,FAX:+81-29-282-9295
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]若杉圭一郎(わかすぎ けいいちろう),牧野 仁史(まきの ひとし),澤田 淳(さわだ
あつし),川村 淳(かわむら まこと),江橋 健(えばし たけし)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 システム解析グループ
(Name) Keiichiro WAKASUGI,Hitoshi MAKINO,Atsushi Sawada,Makoto Kawamura,Takeshi Ebashi
(Title of Function) Repository System Analysis Group, Waste Isolation Research Division, Waste
Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
【研究期間】
平成8年度
∼
平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)]安全評価におけるシナリオ、モデルの不確実性に関する研究(日本原子力研究
所)
[実証試験名(実施機関)]なし
[委託研究名(実施機関)]なし
【使用主要施設】
地層処分基盤研究施設
【研究概要】
[研究の経緯]
地層処分の安全評価では,評価対象領域の大きさと長期にわたる評価時間を考慮するために,不確
実性の影響について格別の配慮が必要である。このため,不確実性の要因を整理・分析し,それらが評
価結果に与える影響を定量的に示すための手法を整備することが課題となる。平成12年度までは、第2
次取りまとめに向けた不確実性評価技術の開発やパラメータの不確実性に着目した検討を進めてきたが、
−383−
JNC TN1400 2005-018
それを基盤にし,現行計画ではシナリオやモデルの不確実性についてその影響をより詳細に評価するため
の手法の整備を進めている。
[研究目的]
地層処分の安全評価に内在するシナリオ,モデルの不確実性について,定量的な解析を実施するための手
法を検討することにより,地層処分システムの長期的な安全性の評価手法の高度化及び安全基準・指針類の
策定に資する。
[研究内容]
イ.安全評価シナリオ,モデルの不確実性の整理:安全評価に用いるパラメータの不確実性の評価に加え,
地層処分システムの将来挙動を表現するシナリオ,モデルの不確実性として考慮すべき要因(水理地質
構造モデル,核種移行プロセスモデル等)を網羅的に整理する。
ハ.不確実性の定量的評価の検討:イ)で開発・整備した手法を用いて、シナリオ、モデル及びパラメー
タの不確実性を考慮した確率論的な安全評価を行い、処分システム全体の長期安全評価に伴う不確かさ
を定量化するための検討を行う。
【当初の達成目標(平成16年度)】
イ. 安全評価シナリオ,モデルの不確実性の整理
シナリオの不確実性については、天然現象に起因するシナリオに着目し、天然現象の発生から処分
システムへの影響の抽出・整理までの考え方や手順について検討する。また、モデルの不確実性につ
いては、実際の地質環境についての物質移行解析に適用可能な手法として,地下水流動解析から流速
や移行距離の情報を抽出し物質移行解析に取り込むためのモデル化技術について検討する。
ハ.不確実性の定量的評価の検討
パラメータの不確実性に着目し、データが十分にない場合にパラメータの不確実性を分布として定
量化するための技術について検討するとともに,実際の地質環境を対象とした分布設定を試行する。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ.安全評価シナリオ,モデルの不確実性の整理
シナリオの不確実性については、基本シナリオに対する不確実性として,天然現象に起因する変動シ
ナリオなどの構築手法の検討を行った。これらの天然現象の発生の仕方や影響の程度は,地域によって
異なるが,ここでは一般的な特徴に注目して検討を行った。具体的には,天然現象の影響評価を,現実
的な知見を可能な限り取り入れ、過度な保守性を排したものとするために,天然現象の研究者が有する
事例研究に基づく情報を整理し,起こりえる影響のパターンを検討した。その影響を T-H-M-C(熱-水
理-力学-地球化学)を軸として整理し,物質移行解析に反映するための作業手順(図1)を構築するととも
に,火山・火成活動を例としたシナリオ構築の試行を通じて作業内容の具体化を図った(図2,3)。
これにより,作業の効率化のみならず,作業の追跡性の向上を図ることができた。
モデルの不確実性については、実際の地質環境についての物質移行解析に適用可能な手法として,地
下水流動解析から得られる不均質性を有する流速や移行距離等の移行経路情報を物質移行解析に取り
込むための複数のモデル化オプションについて検討し、以下の成果を得た。
・ 地下水流動解析(たとえば,パーティクルトラッキング解析)から得られる不均質性を有する移
行経路情報を直接取り込む方法として,
「全パーティクルを対象とした物質移行解析を行う場合」
「通過する地質構造要素の種類とその順番が同じパーティクルを移行経路が類似しているも
のとしてグループ化し,グループごとに物質移行解析を行う場合」(図4)にわけて,それぞれ
の場合の解析手法を構築した。
・ また,モデルを簡略化するとの観点から,不均質性を有する移行経路情報を統計的に処理して求
められる統計量に基づく分布を物質移行解析に用いる場合あるいは平均値のみを用いる場合な
どの手法を検討し,不均質性を有する移行経路情報を直接取り込む方法との比較を行った(図5)
。
−384−
JNC TN1400 2005-018
・ 以上の検討から,このような物質移行解析では,移行経路のグループが複数あることが解析結果
を特徴づける場合があり(図5のように,2つのグループが主要な移行経路となり2つのピーク
が存在する場合など),このような場合に簡略化したモデルを適用するには,全パーティクルを
対象とするよりも,グループ化を考慮する手法の方が複雑なモデルの結果の再現性が高いことが
示唆された。また,複数の手法を準備し,複雑なモデルと簡略化したモデルを対比させつつ検討
を進めることにより,詳しい解析を行う必要のある場合あるいは感度解析など多数の解析を行う
必要がある場合など,解析の目的に応じて適切な手法を選択することができるようになった。
ハ.不確実性の定量的評価の検討
不確実性の定量的評価に関して、データが十分になく専門家の知見や判断が重要となる状況でパラ
メータの不確実性を分布として表現する場合に適用可能な手法を検討した。具体的には,既存の情報
を体系的に引き出し最大限活用することにより分布設定を行うための方法として提案されている
手法で, 米国の TSPA(Total System Performance Assessment)でも使用実績のある誘出法
(Elicitation protocol)に着目し、この手法の作業内容を具体化するとともにその適用にあたって
の留意点を把握することを目的として,幌延の深地層の研究施設周辺に存在する声問層および稚
内層での Cs と U の分配係数の不確実性を確率分布として表現することを試行した。本試行を通
じて得られた留意点として,関係者間での情報の共有のあり方に注意が必要であり,利用可能な全て
の情報を共有することは分布設定の作業に不要な混乱を生じる可能性があり,共有すべき情報は透明
性を保ちつつ重要性等の観点から事前にある程度絞り込むことが肝要であること,また,分布の保守
側の値の設定に比べて非保守側の値の設定においては,どのような考え方で設定するかの方針(複
数のデータの中から,保守側のデータを選ぶか,非保守側のデータを選ぶか,代表的なデータを
選ぶかなど)を明確にしておくことが関係者間で過度なばらつきを生じさせないために特に重要
になること,などを抽出することができた。これら試行から得られた知見なども反映して,誘出
法に関する具体的な作業内容を設定した(図6)
。
【研究の達成状況(平成16年度)】
イ.安全評価シナリオ,モデルの不確実性の整理
シナリオの不確実性については、現実に即し過度な保守性を排した想定に基づく天然現象の影響評価
を実施するための作業手順を構築することができ、所期の成果を得た。
モデルの不確実性については、地下水流動解析から得られる流速や移行距離の情報の核種移行解析へ
の取り込みに関して複数の手法を構築することができ、所期の成果が得られた。
ハ.不確実性の定量的評価の検討
パラメータの不確実性の定量化技術について、誘出法に関する具体的な作業内容と留意点を設定す
ることができ,所期の成果が得られた。
(今後の予定)
イ.安全評価シナリオ,モデルの不確実性の整理
シナリオ,モデルの不確実性の取扱いに関する整理・検討を継続する。
ハ.不確実性の定量的評価の検討
シナリオ,モデルおよびパラメータの不確実性を定量的に評価するための手法の検討を継続する。
【研究成果の発表状況(平成16年度)】
イ.安全評価シナリオ,モデルの不確実性の整理
1)川村淳,牧野仁史,梅田浩司,大澤英昭,瀬尾俊弘,石丸恒存(2005):天然現象影響評価シナリオ
構築手法の高度化,地球惑星科学関連学会 2005 年合同大会予稿集,G018-007.
2)川村淳,牧野仁史,梅田浩司,大澤英昭,瀬尾俊弘,石丸恒存(2005):天然現象影響評価に関する
検討−①シナリオ構築手順の概要−,地球惑星科学関連学会 2005 年 合同大会予稿集,G018P-020.
−385−
JNC TN1400 2005-018
3)川村淳,梅田浩司,大澤英昭,牧野仁史,瀬尾俊弘,石丸恒存(2005):天然現象影響評価に関する
検討−②火山・火成活動への適用例−,地球惑星科学関連学会 2005 年合同大会予稿集,G018P-019.
4)牧野仁史,川村淳,梅田浩司,瀬尾俊弘,石丸恒存(2005)
:天然現象が処分環境・処分システム性
能に及ぼす影響を検討するための基本フレームの構築,日本原子力学会 2005 年春の年会,M11.
5)若杉圭一郎,牧野仁史,小尾繁(2005)
:具体的な地質環境を対象とした核種移行解析における移行
経路情報の取り扱いに関する検討,日本原子力学会 2005 年春の年会,M12.
6)蛯名貴憲,牧野仁史(2005):地層処分性能評価のガラス溶解評価におけるガラス固化体中の亀裂発
生に伴う表面積増加の影響,サイクル機構技術資料,JNC TN8400 2005-006.
ハ.不確実性の定量的評価の検討
1)江橋健,若杉圭一郎,牧野仁史(2004):不確実性を考慮したパラメータの分布設定フレームに関す
る検討,日本原子力学会バックエンド部会第 20 回バックエンド夏期セミナー資料集.
:決定木分析を用いた核種移行解析結果の感度分析の検討,サイクル機
2)仲島邦彦,牧野仁史(2005)
構技術資料,JNC TN8400 2005-001.
(発表予定)
イ.安全評価シナリオ,モデルの不確実性の整理
:高レベル放射性廃棄物処分
1)川村淳,牧野仁史,梅田浩司,瀬尾俊弘,石丸恒存,大澤英昭(2005)
における天然現象影響評価技術の高度化,サイクル機構技報,No.28(投稿中)
.
【成果の利用実績及び活用見通し】
本研究を通じて得られた成果のうち,考慮すべきデータ,モデル及びシナリオの不確実性に関する整
理やそれらを安全評価において効率的に評価するための技術については,安全基準や安全審査指針の策
定等に資することができるよう取りまとめていく。また,種々の不確実性要因が安全評価結果に与える
影響の重要度を定量的に評価するための技術については,安全評価上重要な研究課題の絞り込みや地質
環境調査における優先事項の特定等に反映していく予定である。
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
なし
(参考文献)
なし
[海外の研究の現状と動向]
イ.安全評価シナリオ,モデルの不確実性の整理
諸外国の安全評価における天然現象の影響評価について,その国の地質環境条件などの特徴をどの
ように取り扱おうとしているかを調査・整理した。
ハ.不確実性の定量的評価の検討
パラメータの不確実性を分布として表現する場合に適用可能な手法,および諸外国の安全評価にお
ける実施例などを調査・整理した。
(参考文献)
イ.安全評価シナリオ,モデルの不確実性の整理
AECL: “Environmental Impact Statement on the Concept for Disposal of Canada’s Nuclear Fuel Waste”,
Atomic Energy of Canada Limited Document AECL-10711, COG-93-1 (1994).
CRWMS: “Total System Performance Assessment for the Site Recommendation” Civilian Radioactive Waste
Management System Management and Operating Contractor Report, TDR-WIS-PA-000001 Rev. 00 ICN
01, CRWMS M&O (2000).
−386−
JNC TN1400 2005-018
ONDRAF/NIRAS: “The SAFIR2 report. Safety Assessment and Feasibility Interim Report 2”,
ONDRAF/NIRAS Report NIROND-2001-1 (2001a).
ONDRAF/NIRAS: “Technical overview of the SAFIR2 report. Safety Assessment and Feasibility Interim
Report 2”, ONDRAF/NIRAS Report NIROND-2001-5 E, (2001b).
SKB: “SR97 – Post-closure safety: Deep repository for spent nuclear fuel” SKB Technical Report TR-99-06, 2
volumes. Swedish Nuclear Fuel Waste Management Company (1999).
USDOE: “Yucca Mountain Science and Engineering Report: Technical information supporting site
recommendation consideration”, USDOE Office of Civilian Radioactive Waste Management Report
DOE/RW-0539, CRWMS (2001).
Vieno, T. and Nordman, H.: “Safety assessment of spent fuel disposal in Hästholmen, Kivetty, Olkiluoto
and Romuvaara TILA-99”, Posiva Technical Report 99-07, Posiva (1999).
ハ.不確実性の定量的評価の検討
Mishra,S.:“Assigning Probability Distributions to Input Parameters of Performance Assessment Models”, SKB
Technical Report, TR-02-11 (2002).
US DOE:“Viability Assessment of a Repository at Yucca Mountain”, U.S.Department of Energy Office of
Civilian Radioactive Waste Management, DOE/RW-0508 (1998).
【研究評価(自己評価)】
○ 成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他(
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
■ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
)
)
【自由評価欄】
−387−
JNC TN1400 2005-018
天然現象に関する知見
地質環境に関する知見
地球化学に関する知見
ア.天然現象のプロセスの記述
イ.それらに対応する地質環境条件(THMC:温度−水理
−力学−地球化学)の変化の検討
ウ.地質環境条件の変化に基づくシナリオの類型化
影 響 解 析 の守 備 範 囲
天然現象研究の守備範囲
・・・・・その他の知見
エ.それぞれのシナリオについてのモデル・解析条件の
設定
オ.影響解析
図1 事例研究から評価への体系的な作業手順
T:温度
50℃∼(3℃/100m程度の地
温勾配による温度)
300∼100℃(10℃/100m以上の地温勾配)
100∼50℃(5∼10℃/100mの地温勾配)
300℃超,600℃程度まで上昇?
H:水理
10-9m/sオーダー
?
M:力学
岩盤が著しく劣化?
C:水質
C:pH
SO42-卓越
Cl-卓越
HCO3-卓越
酸性:pH4.8以下
中性∼弱アルカリ
近
遠
火道からの「距離」
留意点:変化については,その「距離」における「最大
値」を表示。但し,例外的なデータも多いことに留意。
図2 事例研究成果に基づく地質環境条件の変化に関する知見・データの収集・整理の作業例
(火山・火成活動の例)
−388−
JNC TN1400 2005-018
左図の影響の伝搬結果(対角要素の状態)
を受けた核種移行解析条件の設定・変更
地質環境への影響の整理結果を起点とする
処分環境,システム性能への影響の伝搬の整理
岩盤
施設
人工バリア
人工バリア
施設
岩盤
温度
水理
EDZ
水理
影響伝搬
の起点
処分環境・システム
性能を表す特性の
T-H-M-Cの観点から
の整理
(影響の伝播結果)
EDZ
流量
核種移行解析の
パラメータ
流速
(影響の伝播結果)
図3
モデル・解析条件の設定作業の概要(火山・火成活動の例)
移行経路2
0
0
移行経路1
Z
移行経路3
Z
PTのスタートポイント
PTのスタートポイント
断層
-2000
7750
断層
-2000
7750
X
5750
70250
Y
68250
X
5750
Y
68250
(a) 全パーティクルを対象
(b) グループ化を考慮
図4 パーティクルトラッキングの結果を用いた物質移行解析の手法の分類
1.E-02
10-2
移行率 [g y-1]
-3
1.E-03
10
1.E-04
10-4
全パーティクルを対象:
不均質な移行経路情報を直接利用
パーティクルをグループ化:
不均質な移行経路情報を直接利用
-5
10
1.E-05
全パーティクルを対象:
不均質な移行経路情報の平均値を利用
パーティクルをグループ化:
不均質な移行経路情報の平均値を利用
-6
10
1.E-06
3
1.E+03
10
4
1.E+04
10
5
1.E+05
10
6
1.E+06
10
7
1.E+07
10
時間 [y]
図5 複雑なモデルと簡略化したモデルの結果の比較の例(Cs-135)
−389−
70250
JNC TN1400 2005-018
誘出法の手順
誘出法に基づき具体化した作業内容
手順1
目的の設定
手順2
専門家の選択
専門家の選択
手順3
目的の詳細化
分布形や設定方針2)の検討
手順4
基礎情報の構築
対象領域における環境条件の情報3)
の収集
手順5
事前説明
誘出法の手順や過去の適用事例につ
いての共有
手順6
情報および知見
の引き出し
・分布の仮設定
・上記作業内容の文書化
手順6に基づく
結果の再検討
・仮設定された分布における専門家
間の違いの分析および専門家間での
分析結果の共有
・分布の再設定
・上記作業内容の文書化
手順8
結果の整理
・再設定された複数の分布の違いの
分析および専門家間での分析結果の
共有
・複数の分布の集約
・上記作業内容の文書化
手順9
文書化
手順7
前提条件1)の設定
1)対象領域(場や岩種等)や対象とする
パラメータ(パラメータの種類や元素)
2)定量化における分布全体の設定の考え方
(分布全体としての保守性や現実性)
3)主に対象領域で取得された情報
追加した手順
A-1
変動要因の網羅的な整理
A-2
重要な変動要因の抽出
抽出された重要な変動要因
と環境条件の情報との対応
A-3 を踏まえた変動要因の振れ
幅などの整理及び専門家間
での情報共有
手順1∼手順8の作業内容の文書化
図6 誘出法の手順および誘出法に基づき具体化した作業内容
「追加した手順」は試行で得られた留意点を反映して追加したもの
−390−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【研究分野】
地層処分
【分類番号】
◎3−4(廃棄2−3−4)
【研究課題名 (Title)】
地下水水質形成モデルの検証及び高度化に関する研究
(Model development and validation for groundwater evolution)
【実施機関 (Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名,所属及び連絡先 (Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]油井 三和(ゆい みかず)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 処分バリア性能研究グループ
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松4-33, 電話:029-282-1111 FAX:029-282-9295
(Name)
Mikazu YUI
(Title of Function)
Barrier Performance Group, Waste Isolation Research Division, Waste
Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
(Address, Tel. and Fax) 4-33 Muramatsu Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194 Japan
Tel.:+81-29-282-1111, Fax:+81-29-282-9295
(E-mail)
[email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]笹本 広(ささもと,ひろし), 神徳 敬(じんとく たかし),黒澤 進(くろさわ すす
む),吉川 英樹(よしかわ ひでき)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 処分バリア性能研究グループ
(Name)
Hiroshi SASAMOTO, Takashi JINTOKU, Susumu KUROSAWA, Hideki Yoshikawa
(Title of Function)
Barrier Performance Group, Waste Isolation Research Division, Waste
Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度∼平成17年度
【関連する共同研究,実証試験等】
[共同研究名(実施機関)]無し
[実証試験名(実施機関)]無し
[委託研究名(実施機関)]
・ セメント−ベントナイト反応に関する地球化学計算に必要な熱力学データベースの作成
(Monitor Scientific LLC)
【使用主要施設】
地層処分基盤研究施設
【研究概要】
[研究の経緯]
高レベル放射性廃棄物の地層処分については,今後の安全規制に係わる基準・指針の策定や処分事業
化に向けて,安全評価モデルの高度化等の安全評価の信頼性向上に関わる基盤的な技術や情報を整備し
ておくことが必要である。このためには,第2次取りまとめの課題を踏まえて,処分システムの化学的
な場を理解し,評価においてどのように取り扱うかという点について,着実かつタイムリーに研究を進
めていくことが必要である。
−391−
JNC TN1400 2005-018
[研究目的]
深部地下水の水質形成モデルの改良・高度化を行うとともに,地下水と人工バリア材料との長期の相
互作用およびそれに伴う緩衝材空隙水水質形成のメカニズムを解明することにより,処分場の長期的な
地球化学環境を明らかにし,安全評価手法の信頼性向上に資する。
[研究内容]
原位置で取得されるデータ等を利用し,以下の研究を行う。
イ)地下水地球化学モデルの開発
実測された深部地下水データの熱力学的・速度論的解析をもとに,深部地下水の水質形成モデルの改良,
高度化を行う。また,微生物,有機物が地下水水質に及ぼす影響,深部地下水でのコロイドの安定性や存
在状態に関する検討を行う。
ロ)ニアフィールド地球化学モデルの開発
地下水と人工バリア材料の長期の相互作用に関する室内試験や類似する天然現象の観察を行うことを
通じて,ニアフィールドにおける間隙水の水質推定モデルの高度化および検証を行う。また,モデルの開
発に必要な鉱物の熱力学データ,溶解・沈殿速度データの調査・評価を行い,データベースとして整備す
る。
【当初の達成目標(平成16年度)】
[平成16年度]
・深部地下水実測データの調査およびモデル化継続
・地球化学基礎データの取りまとめ
・天然地下水のコロイドデータの取りまとめ
・緩衝材間隙水水質データ,解析結果の取りまとめ
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ)地下水地球化学モデルの開発
・ 深部地下水の水質形成モデルの改良,高度化を図るため,実測された深部地下水データを基に熱力
学的解析を行ない,第2次取りまとめにおける水質形成モデリングで考慮されたような一般的に考
えられている深部地下水に対する地球化学的知見の妥当性について検討した。検討にあたっては,
幌延地域と同様な堆積岩・海水系地下水が存在し,地下数百メートル∼千メートル以深のボーリン
グ孔が掘削されている南関東ガス田および茂原地域(南関東ガス田中の一地域)の地下水を対象と
し,地表で測定/分析された地下水データを用い,熱力学的解析を行なった[1]。熱力学的解析結
果の例として,図 1 に方解石の飽和指数(SI: Saturation Index)計算結果を示す。地下水と鉱物
との飽和(平衡)状態の検討にあたっては,熱力学データの誤差,地下水の測定・分析値の誤差な
ども考慮し,方解石に対する平衡状態として,SI=0±0.1 を考慮した。この図から判る様に地下水
は方解石に対して過飽和な状態(SI>0.1)である。方解石は,低温の地下水環境下においても一
般に比較的溶解しやすい鉱物であり,滞留時間の長い(年代の古い)地下水であれば,一般的に考
えられている深部地下水に関する地球化学的知見に基づくと地下水は方解石に対して平衡に達し
ている状態であると考えられる。しかしながら,上記の計算結果は一般的な地球化学的知見とは矛
盾する。この原因として,地表で測定・分析された地下水データの信頼性の問題が考えられる。南
関東ガス田および茂原地域の地下水は多量の溶存ガスを含み,地下から地表に地下水が上昇してく
る際に圧力が低下し,それに伴い地下水中に溶存していた炭酸ガスが遊離(脱ガス)し,地下水の
pH や炭酸濃度が変化したことが推定される。このように地下(原位置)とは異なる値を用いて熱
力学的解析を行なったことにより,一般的に考えられている深部地下水に対する地球化学的知見と
は異なる結果になったと推察される。この推察の妥当性を検証するには地下深部の条件を維持した
地下水測定を行い,地表での測定結果と比較検討することが必要である。また地表での採水に伴う
水質変化の原因を把握することで,逆に,地表で得られたデータをもとに地下における地下水デー
タを推定することも可能であると考えられる。この様な比較検討は,今後,原位置における地下水
測定が行われる幌延地域において行っていく必要がある。
−392−
JNC TN1400 2005-018
ロ)ニアフィールド地球化学モデルの開発
・ ニアフィールドにおける地球化学モデルの高度化を図る上では,圧縮ベントナイト中間隙水の時空
間変化に関わるデータの取得が必要であり,これまでに室内試験により,これらを行ってきた[2]。
平成16年度は,間隙水水質の時空間変化に関わる天然事例のデータ取得として,月布ベントナイ
ト鉱床における河床のボーリング調査を実施した。採取したボーリングコア試料は,深度毎に,
化学組成分析,X線回折,メチレンブルー吸着量,陽イオン交換容量および層間陽イオンの測定
を行い,河床から深部に向けてのベントナイト固相の変化の有無を調査した[3]。その結果,例
えばSO42-濃度については,河床に近い部分では,より深部の部分に比べて減少していることが判
った。この理由について考察するため,ベントナイト側から河川側への間隙水中でのSO42-の拡散を
仮定したモデルの推定結果と,深度方向でのSO42-濃度分布とを比較した(図2)[4]。図3に示され
るように,河床付近では擾乱の程度が大きいため拡散プロファイルとSO42-濃度分布の整合性は悪
く,拡散のみで間隙水中の元素濃度分布を解釈することは困難であると考えられるが,河床から
の深さが増すと,より整合性が良くなる傾向が認められる。今後もデータを蓄積し,現象理解を
進めていく必要がある。
・ 処分場にセメントが使用された場合,高pH地下水への水質変遷および高pH地下水とベントナイト
との反応による間隙水水質の変遷を評価することが重要になる。平成16年度は,平成15年度の文
献調査により抽出・整理された高アルカリ条件下での緩衝材変質鉱物等を対象にデータ整備を進
め,熱力学データベースを開発した[5]。熱力学データベース(以下,「JNC-TDB.TRU」と称す)
の開発フローを図3に示す。「第2次取りまとめ」においては,放射性元素の熱力学データベース
(JNC-TDB:011213q2.tdb)と地球化学元素の熱力学データベース(SPRONS.JNC)が各々独自に開
発された。今回,高アルカリ条件での緩衝材変質に関連する鉱物等の熱力学データベースを整備
するにあたっては,両データベースの統合を図る試みの一環として,緩衝材変質鉱物の溶解反応
式を記述する上で必要となる化学種(H2O(l), Ca2+, Mg2+, Na+, K+, Al3+, SiO2(aq), Cl-, CO32-, SO4
2, NO3-, F-, HPO42-)について,各々のデータベースにおけるギブス自由エネルギー(ΔG0f),
エンタルピー(ΔH0f),エントロピー(S0)を比較し,両データベース間における差異を把握し
たうえで,統合の可能性について検討した。その結果,HPO42-を除く化学種の熱力学データは,各々
の化学種のそれに対する誤差範囲内でほぼ整合していた。従って,緩衝材変質鉱物の熱力学デー
タを追加するにあたり,Pを含む鉱物であるhydroxyapatiteを除けば,いずれのデータベースを
用いても大きな違いは生じず,両データベースを統合できる可能性が示された。そこで,処分の
性能評価に不可欠な放射性元素の熱力学データを含むJNC-TDBをベースに,文献調査や経験的計
算手法に基づき導出された沸石類やセメント系鉱物の熱力学データとSPRONS.JNCに含まれる化
学種の熱力学データにより,反応の平衡定数(logK)を算出した。算出にあたっては,SUPCRTプ
ログラムを用いた。但し,hydroxyapatiteのlogKについては,データベース内の整合性をとるた
めJNC-TDBのデータを用い,手計算で導出した。この様な手順に従いJNC-TDBに沸石類やセメント
系鉱物の熱力学データを追加した。また,これら以外の鉱物の熱力学データのうち,「第2次取
りまとめ」の地下水設定で用いられた鉱物についてはJNC-TDBを用いた実測地下水水質の解釈等
によりデータの適用性が確認されているためJNC-TDBのデータを採用し,一方,高アルカリ溶液
と緩衝材の反応で重要となる粘土鉱物等については,地球化学の分野で幅広く用いられ,データ
の信頼性評価も行なわれているデータを含むSPRONS.JNCのデータを採用した。以上のような方
針・手順にもとづき作成されたJNC-TDB.TRUは,JNC-TDBと同様に地球化学コードPHREEQEのデー
タベースフォーマットで整備すると共に,データベース変換プログラムを用い,GWB(Geochemist’
s Workbench)用のデータベースフォーマット(THERMO_JNCTRU)でも整備した。
【研究の達成状況(平成16年度)】
イ)地下水地球化学モデルの開発
幌延地域と類似した地質・地下水環境にある南関東ガス田(茂原を含む)を対象に地下水の熱力学
的解析を行い,深部地下水に対する一般的な地球化学的知見と照らし合わせ,地表で測定・分析され
た地下水データの信頼性について検討した。このような検討は,モデル化で考慮する地球化学反応の
妥当性を確認するため,また地表で得られたデータをもとに地下(原位置)における地下水データを
推定する手法を構築する上でも重要であり,所期の成果は得られている。天然地下水中のコロイド,
有機物,微生物に関するデータの取りまとめは,本年度は研究資源が確保できず,一時中断している。
−393−
JNC TN1400 2005-018
ロ)ニアフィールド地球化学モデルの開発
モデルの高度化を進める上で重要となる圧縮ベントナイト中間隙水の時空間変化に関わるデータと
して,天然のベントナイト鉱床におけるデータ取得が行われている。得られたデータの解釈については
現段階では不十分であり,今後も検討が必要である。また高アルカリ条件での解析に必要となる鉱物等
の熱力学データベースが整備され,地球化学基礎データの取りまとめに反映されている。
(今後の予定)
地下水地球化学モデルの開発では,平成17年度は幌延地域で取得される原位置測定データをもとに,
深部地下水に対する一般的な地球化学的知見の妥当性を検討すると共に,地表で得られたデータを
もとに地下(原位置)における地下水データを推定する手法についても検討する。 平成16年度中断
していた 天然地下水中のコロイド,有機物,微生物に関するデータについては,幌延地域を一例に取
りまとめを進める。
ニアフィールド地球化学モデルの開発では,平成16年度にデータを取得した天然ベントナイト鉱床に
おけるベントナイト中間隙水の時空間変化に関わる解釈を進める。また鉱物等の熱力学データベース
開発では,選定された熱力学データの信頼性について,関連する実験や天然事例をもとに検証を
進める。
【研究成果の発表状況(平成16年度)】
イ)地下水地球化学モデルの開発
[1] Sasamoto, H., Yui, M. and Arthur, R. C.: Estimation of in-situ groundwater chemistry
using geochemical modeling: A test case for saline type groundwater in argillaceous rock,
Abstracts for international meeting on clays in natural and engineered barriers for
radioactive waste confinement, pp.259-230 (2005).
ロ)ニアフィールド地球化学モデルの開発
[2] 磯貝武司,神徳 敬,笹本 広: 圧縮ベントナイト中の間隙水測定手法の検討 ,原子力バッ
クエンド研究,Vol.11, No.1, pp.29-36 (2005).
(発表予定)
[3] 佐治慎一, 伊藤雅和, 柴田雅博,神徳 敬,磯貝武司: 河川水と接触したベントナイト鉱床
の化学特性変化 ,サイクル機構技術資料(印刷中).
[4] 神徳 敬,柴田雅博,油井三和: 時空間変化を考慮したベントナイト間隙水のモデル化−室
内実験結果およびベントナイト鉱床測定結果への適用 ,サイクル機構技術資料(印刷中).
[5] Arthur, R.C., Sasamoto, H., Oda, C., Honda, A., Shibata, M., Yoshida, Y. and Yui, M.:
Development of Thermodynamic Databases for Hyperalkaline, Argillaceous Systems , JNC
Technical Report (in preparation).
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
イ)地下水地球化学モデルの開発
水−岩石反応による地層中での二酸化炭素の固定に関して反応速度モデルによる検討が行われている。
南関東ガス田が位置する房総半島の地質・水質を基にした解析であり,水−岩石反応により炭酸塩鉱物
が生成し,炭素が固定されることが推定されている。
(参考文献)
柏木洋彦,鹿園直建: 日本の堆積盆を想定した二酸化炭素地中貯留における水−岩石反応の検討:千
葉県房総半島の例 ,地下水学会誌,第47巻第1号,pp.65-80(2005).
ロ)ニアフィールド地球化学モデルの開発
圧縮ベントナイト中の間隙水を推定する手法として,電解質濃度の違いにより発生する膨潤圧を測定す
ることにより,間接的に圧縮ベントナイト中の間隙水濃度を推定する手法が検討されている[1]。また,
高アルカリ溶液によるベントナイトの変質挙動について,生成する二次鉱物の種類による影響予測が熱力
学的に解析されている[2]。
−394−
JNC TN1400 2005-018
(参考文献)
[1] Ohe, T. : How affects the compaction of bentonite to the migration characteristics,
International workshop on chemistry and stability of bentonites in radioactive waste
disposal , September 18-19, Kanazawa, Japan, Abstract(2004).
[2] Savage, D., Walker, C., Arthur, R., Rochelle, C. and Oda, C.: “Alteration of bentonite
by hyperalkaline fluids: The role of secondary minerals”, 2nd international meeting
of clays in natural & engineered barriers for radioactive waste confinement, Abstracts,
March 14-18, pp.327-328 (2005).
[海外の研究の現状と動向]
イ)地下水地球化学モデルの開発
地下研究施設等を利用した地下水水質の地球化学的解釈がベルギー[1],フランス[2],スイス[3]
等で行われている。
(参考文献)
[1] Craen, M.De., Wang, L., Geet, M.Van. and Moors, M.: “Boom clay pore water chemistry”,
2nd international meeting of clays in natural & engineered barriers for radioactive
waste confinement, Abstracts, March 14-18, pp.255-256 (2005).
[2] Gaucher, E.C., Altman, S., Blanc, P., Braibant, G., Crouzet, C., Girard, J.P., Jacquot,
E., Lassin, A., Moussay, A., Tournassat, C. and Seron, A: “Modelling the porewater
chemistry of the Callovian-Oxfordian formation at a regional scale”, 2nd international
meeting of clays in natural & engineered barriers for radioactive waste confinement,
Abstracts, March 14-18, pp.257-258 (2005).
[3] Fernandez, A.M., Turrero, M.J., Yllera, A., Melon, A.M., Sanchez, M.D., Pena, J.,
Garralon, A., Rivas, P. and Hernan2, P.: “Hydrochemical characterization of the
Opalinus Clay in the test interval of the BDI-B1 borehole and on site pH, Eh, Fe(II)
and alkalinity measurements, 2nd international meeting of clays in natural & engineered
barriers for radioactive waste confinement, Abstracts, March 14-18, pp.393-394
(2005).
ロ)ニアフィールド地球化学モデルの開発
圧縮ベントナイト中間隙水pHの緩衝作用について,間隙水pHをコントロールする反応をもとに検討
している[4]。また圧縮ベントナイト中間隙水のpHやEhをオンラインで連続測定する手法も開発されて
いる[5]。スペインでは,FEBEXベントナイトを対象にベントナイトの鉱物学的特性を調べ,乾燥密度
をパラメータとしベントナイト−水反応による間隙水水質のモデル化を行っている[6]。
(参考文献)
[4] Bradbury, M.H. and Baeyens, B.: “pH buffering in compacted bentonite”, 2nd
international meeting of clays in natural & engineered barriers for radioactive waste
confinement, Abstracts, March 14-18, pp.375-376 (2005).
[5] Murrinen, A. and Carlsson, T.: “Development of methods for on-line measurements of
chemical conditions in compacted bentonite”, 2nd international meeting of clays in
natural & engineered barriers for radioactive waste confinement, Abstracts, March
14-18, pp.417-418(2005).
[6]Fernandez, A.M. and Rivas, P.: “Pore water chemistry of saturated FEBEX bentonite
compacted at different dry densities: Implications to the properties of the
bentonite-water system”, 2nd international meeting of clays in natural & engineered
barriers for radioactive waste confinement, Abstracts, March 14-18, pp.395-396(2005).
−395−
JNC TN1400 2005-018
【研究評価(自己評価)】
○ 成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他(
)
[説明欄]
天然地下水中のコロイド,有機物,微生物に関するデータ取りまとめは,本年度は研究資源が
確保できず,一時中断した。
○ 今後の成果の達成見込み
[チェック欄]
■ 目標どおりの成果が得られる見込み。
□ 目標どおりの成果が得られない見込み。
(その理由:
□ その他(
[説明欄]
)
○ 研究の進捗
[チェック欄]
□ 計画どおり進捗した。
■ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:天然地下水中のコロイド,有機物,微生物に関するデータ取りまとめは,
本年度は研究資源が確保できず,一時中断した。
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
【自由評価欄】
特に無し
−396−
JNC TN1400 2005-018
方解石の飽和指数(SI)
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.8
-1
7.2
図1
茂原地下水
南関東ガス田地下水
茂原地表水
7.4
7.6
7.8
8
pH
方解石の飽和指数計算結果(図中の南関
東ガス田の地下水データは,南関東ガス
田に位置する茂原地域以外のデータであ
る)。SI=±0.1 の範囲を平衡状態と仮定。
0.2
0.1
SO
4
2-
[wt %]
0.15
2
-1
2
-1
拡散係数:3.0e-9 [m s ]
拡散係数:1.2e-9 [m s ]
0.05
2
-1
拡散係数:1.2e-10 [m s ]
-2
SO 濃度(実測値)
4
0
0
500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000
河床からの深さ [mm]
図2
深度方向での SO42-濃度の分布と SO42-の実効
拡散係数
−397−
JNC TN1400 2005-018
JNC-TDB (011213q2.tdb)
JNC-TDB.TRU
1) Radioactive elements: JNC-TDB
2) Auxiliary data:JNC-TDB
3) Minerals
- Minerals considered in H12 GW
evolution modeling: JNC-TDB
- Important minerals for bentonite/cement
interactions (clay minerals etc.): SPRONS.JNC
4) Cement minerals
Comparison of core
thermodynamic data
both JNC-TDB and
SPRONS.JNC
Database format
conversion
thermo_jnctru.dat
database for GWB
SUPCRT Derivation of log K
SPRONS.TRU
for cement minerals
Literature review
SPRONS.JNC
Both databases are identical within
experimental uncertainties, except PO43-.
図3
JNC-TDB.TRU の開発フロー
−398−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
◎3−5(廃棄2−3−5(1))
【研究分野】
地層処分
【研究課題名(Title)】
深部地下環境下における核種移行データの取得及びデータベースの整備
(Data Acquisition and Database Development for the Radio-Nuclide Transport in Geological
Environment)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名] 山田 一夫(やまだ かずお)
[所属] 東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 放射化学研究グループ
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松4-33 電話:029-287-3642, FAX:029-282-9328
(Name) Kazuo YAMADA
(Title of Function) Radiochemistry Group, Waste Isolation Research Division, Waste Management
and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
(Address, Tel. and Fax) 4-33 Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki-ken, Japan
Tel: +81-29-287-3642, Fax: +81-29-282-9328
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]藤原 健壮(ふじわら けんそう),石寺 孝充(いしでら たかみつ)
,夏 暁彬(しゃ しゃおびん),
飯島 和毅(いいじま かずき),柴田 雅博(しばた まさひろ),亀井 玄人(かめい げんと),
佐藤 治夫(さとう はるお),神徳 敬(じんとく たかし),笹本 広(ささもと ひろし),黒澤 進
(くろさわ すすむ)
,吉川 英樹(よしかわ ひでき),油井 三和(ゆい みかず)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 放射化学研究グループ/処分バリア研
究グループ
(Name) Kensou FUJIWARA, Takamitsu ISHIDERA, Xiaobin XIA, Kazuki IIJIMA, Masahiro SHIBATA, Gento
KAMEI, Haruo SATO, Takashi JINTOKU, Hiroshi SASAMOTO, Susumu KUROSAWA, Hedeki YOSHIKAWA,
Mikazu YUI
(Title of Function) Radiochemistry Group / Barrier Performance Group, Waste Isolation Research
Division, Waste Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
【研究期間】
昭和61年度 ∼ 平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]
熱化学および吸着に関する基礎データの整備(米国DOE,パシフィックノースウエスト国立研究所)
性能評価技術に関する共同研究(米国DOE,サンディア国立研究所)
グリムゼル試験場での原位置試験に関する共同研究(スイス放射性廃棄物管理協同組合)
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]
・緩衝材中の核種の移行挙動に及ぼす処分環境因子に関する基礎的研究(Ⅱ)(北海道大学)
・ベントナイト中の物質移行モデルの高度化研究(Ⅲ)(東京工業大学)
・核種移行に関する基礎データ構築手法の検討および個別モデルの高度化に関する研究(Ⅱ)(三菱マ
テリアル株式会社)
−399−
JNC TN1400 2005-018
【使用主要施設】
・ 東海事業所 地層処分基盤研究施設
・ 東海事業所 地層処分放射化学研究施設
【研究概要】
[研究の経緯]
高レベル放射性廃棄物の地層処分については,処分事業の推進,処分場の技術基準及び安全基準の策定等
に資するため,基盤となるデータのより一層の信頼性の向上,データベースの充実,及び鍵となる核種移行
プロセスのより詳細な現象理解とモデル化が重要である。また,安全評価に用いるデータの信頼性を確保
するうえで,データ取得方法の標準化に向けた検討が不可欠である。
[研究目的]
地層処分の安全評価に必要となる,深部地下環境下での熱力学的基礎データ,核種挙動評価データ等
の取得を行うとともに,国際的な最新情報の調査・評価を実施し,情報をデータベース化することによ
り,地層処分の安全評価に用いるデータの信頼性向上に資する。
[研究内容]
イ) 熱力学的基礎データの取得
安全評価に必要な核種の移行挙動評価データ(溶解度,分配係数,拡散係数)の信頼性を向上させる
ため,熱力学的基礎データ(溶解生成物の安定度定数,錯生成定数,表面錯体平衡定数,イオン交換定
数等)を深部地下環境を模擬した系において取得する。さらに,データ取得方法の標準化を検討する。
ロ) 核種移行挙動評価データの取得
実ガラス固化体,原位置の地下水及び岩石等を用いて,処分環境を模擬した条件での核種移行試験等
を実施し,ガラスからの核種の浸出挙動やガラス近傍での溶解度制限固相の生成に関する評価,岩石基
質中のマトリクス拡散深さの評価,核種移行に及ぼすコロイドの影響評価等を行う。また,熱力学的な
基礎データを用いて,溶解・拡散等の現象理解と安全評価のためのモデルの確立を行う。
ハ) 核種移行評価に係るデータベースの整備
OECD/NEA等の国際機関における熱力学データ整備の情報や,上記イ)及びロ)で得られるデータを
含む国内外の研究機関における核種移行関連研究を広範に調査・評価し,熱力学データ,放射性核種
の溶解度,岩石・人工バリア材料への収着データ等の核種移行関連データをデータベースとして整備
する。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
イ)溶解度、分配係数、拡散係数などの核種移行関連データ及び熱力学的基礎データ等を,核種の化学的
性質を考慮しつつ取得を継続する。また,核種移行に関するデータ取得の手順,解析方法及び理論,限
界などについて整理する。
ロ)実ガラス固化体等を用いた核種移行試験等を進めるとともに,コロイドの影響評価のための概念モデルの
検討に着手する。
ハ)国内外の研究機関における核種移行関連研究を調査し,熱力学,収着,拡散係数の各データベース整備を
継続する。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ)熱力学的基礎データの取得
Np(IV)水和酸化物の溶解度積を求めるため,還元条件・弱酸性水溶液における溶解度試験を継続した[1-4]。
試験はバッチ法で一定期間室温・窒素雰囲気下で行い,他のイオンの影響を排除するために,水素ガスを還元
剤として用いて溶液を還元条件にした。イオン強度を変えて行った溶解度試験の結果を図 1 に示す。この結果
から,Np は加水分解していることが確認され,加水分解種の効果を考慮に入れ解析することにより,Np(IV)
水和酸化物の溶解度積を求めた。この他,Np(IV)の加水分解定数を求めるため,溶媒抽出法を用いた Np(IV)
の溶解度試験を開始した。
Ra の溶解度を制限する現象として,CaCO3(方解石)との共沈現象に着目し,Ba を Ra の模擬元素とした共沈
実験を行った。図 2 に試験結果[5-7]を文献値とともに示す。図より,元素分配比(元素分配比=固相中 Ba/Ca
mol 比 / 溶液中 Ba/Ca mol 比)が方解石沈殿速度(v [nmol mg-1 min-1])により変化し,沈殿速度が遅くなる
につれて元素分配比が一定の値となることが示された。処分環境では,化学的に定常に近い状態であると予想
され,方解石沈殿速度は遅いと考えられる。この条件における元素分配比は,図より,2.6×10-3∼1.2×10-2 と
−400−
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なる。
「第 2 次取りまとめ」で採用した,Ra 溶解度評価のための簡易的共沈モデルでは,元素分配比を 1 と仮
定して Ra 溶解度を設定している。このモデルに,今回取得した元素分配比 2.6×10-3∼1.2×10-2 を用いると,
Ra 溶解度は 50∼100 倍程度高い値となることが分かった。
アクチニド元素の固溶体の評価として,UO2(am)-NpO2(am)系の固溶体現象に関する実験的検討を行った。
U(IV)の割合を 0.05 から 0.95 に変えた(UxNp1-x)O2(am)沈殿物を調製し,低濃度から高濃度の K2CO3 および
KHCO3 溶液中で溶解度を測定した[8]。K2CO3 溶液中で,NpO2(am) ,(U0.95Np0.05)O2(am),(U0.05Np0.95)O2 (am)の実
験結果と理想固溶体モデルによる計算結果(直線)との比較結果を図 3 に示す。Np(IV)や U(VI)の溶解度の計
算結果が実験値とほぼ一致することから,U(IV)と Np(IV)は,理想固溶体を形成していると推定され,溶解度
は熱力学的に評価することが可能であることが分かった。
核種移行に関するデータ取得方法の標準化に向けた作業として,従来までの核種移行研究で培ってきた経験
等に基づき,還元条件下でのバッチ収着試験や拡散試験手法について,試験手法の整理,留意点などの情報を
整理し,原子力学会標準委員会深地層分配係数分科会に提供した。
ロ)核種移行挙動評価データの取得
ガラスからの核種の浸出挙動やベントナイト中の拡散挙動を同時に評価する,実ガラス固化体及び Pu 含有
ガラス固化体を圧縮ベントナイト中に埋め込んだ核種移行試験を継続した。また,実ガラス固化体からの核種
浸出挙動及び変質相生成挙動を,模擬ガラス固化体の挙動と比較することを目的として,アルカリ溶液中での
実ガラス固化体の浸出試験を開始した。
処分システムにおける緩衝材中での核種の拡散挙動の理解を目的として,酸化還元に鋭敏な Np の拡散挙動
に及ぼすオーバーパック起源の鉄腐食生成物の影響を調べるため,鉄腐食生成物共存下と非共存下において,
圧縮ベントナイト中での Np の拡散試験を行い,その成果を取りまとめた[9]。ベントナイト中の Np 濃度プロ
ファイルには,見かけの拡散係数 Da が 10-11 ∼10-13 [m2 s-1]程度の速い移行挙動を示す部分と,10-14 ∼
10-15[m2 s-1]程度の遅い移行挙動を示す部分が存在することが確認された。スライス片の溶媒抽出による価数
の同定結果などから,速い移行挙動を示す部分は5価の Np の拡散によるもの,遅い部分は4価の Np の拡散に
よるものと推測された。また,腐食生成物共存下における Np の拡散挙動は,非共存系に比べて,遅い移行挙
動を示す Np の割合が増加していた。このことから,腐食生成物が存在すると Np は4価に還元され,Da が2
桁ほど低下するものと考えられた。
岩石への収着データ拡充のために,海水系条件や炭酸共存条件での砂岩に対する U(還元条件)および Th
のバッチ収着試験を実施した。その結果,U については,人工海水条件(pH=6 程度)では,0.65∼0.92[m3 kg-1]
の値が得られ,炭酸が共存(約 0.2 mol dm-3)した条件では,Kd がおよそ一桁低下し,これは化学種分配か
ら推定される値と調和的であった[10]。
実験で得られた岩石への分配係数(Kd)を具体的な地質環境条件へ適用する手法を検討するために,幌延深地
層研究センターで得られた堆積岩に対する Cs,Se,Np のバッチ収着試験を実施して Kd を取得するとともに,
収着モデルを構築しその適用性を調べた[11-14]。幌延深地層研究センターサイトの試錐孔において,異なる
4 種類の深度から岩石コアを採取し,試験に用いた。試験溶液としては,純水,同試錐孔から採取した天然地
下水,天然地下水の組成に基づき合成した人工地下水の 3 種類用い,他にトレーサ初期濃度,pH などをパラ
メータとした。Cs の収着は,EPMA 及び SEM-EDS 観察などにより,堆積岩中に含まれるイライトに支配されて
いると考えられた。そこで,イライトへのイオン交換的な収着を仮定した収着モデルを構築し,収着挙動の説
明を試みた。固相への Cs 収着量の Cs 初期濃度依存性について,モデルによる計算値と実験値との比較を図 4 に
示す。モデルによる計算結果は実験値と比較的よく一致しており,おおよその傾向をこの収着モデルにより説
明できることが示された。一方,Se については,天然地下水を用いた場合,人工地下水に比べて数倍高い Kd
が得られた。収着試験後試料の XANES 分析から,天然地下水においては収着されたセレンはほとんど Se(0)で
あるのに対し,人工地下水では Se(0)と Se(IV)が共存していることが確認された。このことから,天然地下水
中に含まれる有機物が Se の酸化還元に影響を及ぼし,Kd にも影響を及ぼしたものと考えられた。
また,インタクトな堆積岩試料を耐圧カラムに充填し,マイクロポンプを用いて定流量で核種を含む地下水
を流して収着試験を行い,得られた Kd をバッチ収着試験で得られた値と比較することにより,岩石形状の影
響を調べている[15]。
亀裂性母岩中の核種移行評価において,亀裂表面から母岩マトリクスへの核種の拡散深さの設定は,核種の
遅延効果に大きな影響を与えるため重要である。このマトリクス拡散の深さについて室内試験から情報を得る
ことを目的として,試料長さ 200mm までの円柱状の岩石試料を用いて,ヨウ素の非定常拡散試験を実施した。
コアボーリング(直径 60mm)により採取した花崗閃緑岩を長さ 50∼200mm に切断し,含水飽和させた後,片
端面を除き樹脂で被覆し,NaI 水溶液中に所定の期間(50∼122 日間)浸漬した。浸漬期間終了後,厚さ約 1cm
に切断した各岩石試験片中のヨウ素量を定量して得られた岩石試料中のヨウ素濃度プロファイルから,見かけ
の拡散係数(Da)を導出した。試験の結果,ヨウ素は,試験期間 122 日で 200mm まで拡散浸入しており,Da の
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試料長さ依存性は顕著ではなかった。このことから,花崗岩等の母岩未変質部分への核種が 200mm 以上に渡り
拡散が起こることが確認され,母岩中に深さの制限なく拡散する可能性が改めて示唆された[16]。
緩衝材中の水や核種の拡散挙動を,より基本的な物理モデルに基づいて説明する試みとして,MD-HA 結合解
析法の適用に関する研究を進めた。MD-HA 結合解析法は,粘土分子近傍の水分子の物性などミクロな領域での
物性値を把握する分子動力学計算(MD)と,モデル化したベントナイトの間隙構造を基にミクロな物性値の分
布から材料全体の物性値を導出する均質化解析(HA)という手法を組み合わせ,圧縮ベントナイトの拡散係数
を導出するものである。MD 計算においては,シミュレーションの基本となる原子・分子間相互作用モデルを
改良し,最適と考えられる原子間相互作用パラメータを決定した。また,Na, K, Ca, Mg, Cs 型スメクタイト
について,与える水分子数を変化させ,膨潤挙動のシミュレーションを行うとともに,層間に存在する水分子
と交換性陽イオンの自己拡散係数を導出した。さらに,結晶端を含むスメクタイト結晶モデルを作成し,MD
計算における結晶端の取り扱いや,層間陽イオン混合の影響を検討した。一方,HA 解析においては,スメク
タイトの顕微鏡観察やX線回折結果を基に,構造モデルを作成するとともに,大きさの異なる粒子を取り扱う
ための多段 HA 解析プログラムを開発し,H2O 分子の拡散解析を実施した。その結果,MD-HA 結合解析により,
HTO(トリチウム水)の拡散試験結果の傾向性を再現することが可能となった。また,収着を伴うイオンについ
ては,HA 解析プログラムの中に微視的吸着項として取り扱うことで,吸着による遅延の効果を表すことが可
能となった。しかしながら,具体的な吸着の取り扱い方法については今後さらなる検討が必要である[17]。
緩衝材中の核種拡散移行過程を,塩濃度が及ぼす微細構造変化と結びつけて熱力学的側面から解明すること
を目的として,I-と Cs+イオンに対する見掛けの拡散係数(Da)と活性化エネルギー(ΔEa)の異方性と塩濃度
の影響を調べた。In-diffusion 法による非定常拡散試験を,層間イオンを Na+イオンに置換精製したスメクタ
イトを用い,乾燥密度,スメクタイト粒子の配向方向に対する拡散方向,塩濃度,温度をパラメータに行った。
Da と ΔEa に及ぼす塩濃度,スメクタイト乾燥密度,拡散方向の影響の傾向が異なること,乾燥密度や塩濃度
の変化に伴ってスメクタイトの層間距離や積層体間の外部間隙などが変化することを考慮すると,I-イオンは,
主として外部間隙を移行すると考えられた。一方,Cs+イオンは,スメクタイト層間中の Na+イオンとのイオン
交換によって収着することを考えると,層間と外部間隙の両方を移行することができ,イオン電荷に依存して
移行経路が異なると考えられた[18-31]。図 5 に ΔEa の乾燥密度,塩濃度,配向方向に対する拡散方向の影響
を示す。I-イオンは,乾燥密度の低い 1.0 Mg/m3 付近では水中の拡散係数(Do)のΔEa と同等であり,外部間
隙を主として移行することと整合し,乾燥密度が 1.4 Mg/m3 と高い条件ではスメクタイト表面からの静電的影
響や間隙水の活量低下の影響を受けると考えられた。Cs+イオンは,乾燥密度の低い条件ではスメクタイト層
間中の Na+イオンとのイオン交換エンタルピー(ΔHo=-11.1 kJ/mol)を考慮することで説明でき,乾燥密度の
高い条件ではΔHo に加えて間隙水の活量低下による複合的影響を受けると考えられた[19-22, 24-31]。
固液界面近傍での間隙水の特性を把握することを目的として,堆積岩の 1 つである砂岩中の間隙水の熱力学
特性を蒸気圧法により測定し,25℃での活量,相対部分モル Gibbs の自由エネルギー(ΔG),相対モルエンタ
ルピー(ΔH),部分相対モルエントロピー(ΔS)を決定した。測定は,含水比及び温度をパラメータに行っ
た。図 6 に含水比に対する活量と ΔG との関係を示す。活量は,含水比が 1.5%以下の領域では含水比の減少
に伴い低下する傾向を示し,0.5%以下では急激に低下した。ΔG も同様な傾向であった。一方,ΔH と ΔS に
は明確な含水比依存性は見られず,これらのことと,氷の融解のエンタルピーとエントロピーを総合すると,
固相表面での間隙水は氷ほど構造化されていないものの,自由水よりも化学ポテンシャルが低いと考えられた。
活量及びΔG と含水比との関係及び比表面積から,固相表面から約 3nm までの間隙水は弱い影響を受けるもの
の,約 1.1nm まで近づくと,急激に影響が強くなると考えられた。これは,表面での水素結合と CEC(陽イオ
ン交換能)に相当する陽イオンへの水和の影響を考慮することで説明できた[32, 33]。
核種移行に及ぼすコロイドの影響評価に関し,まず,コロイドに対する核種の収着特性を調べるため,クニ
ピアF から調製したベントナイトコロイドを対象とし,Csのバッチ収着試験を実施した[34-36]。平衡時のCs
濃度10-11∼10-5mol dm-3,収着期間1∼115日,pH7∼8.5の間では,分配係数に対するこれらの依存性は認めら
れず,約20m3 kg-1の値が得られた。このことから,ベントナイトコロイド上のCs収着サイトは1種類で,収着
は1日以内で平衡に達し,イオン交換的な収着反応であることがわかった。また,Cs収着試験後のベントナイ
トコロイド試料を用いて,ベントナイトコロイド溶液と同じ組成でコロイドを含まない溶液を脱離液とし,バ
ッチ式脱離試験を実施した。1日間の脱離試験で得られた分配係数は,いずれのCs濃度領域においても収着試
験で得られたそれとほぼ等しくなったことから,本試験の濃度領域にわたりCsの収着は可逆的と考えられた。
実験室における核種およびコロイド移行実験では,粘土系コロイド共存下での核種の亀裂中移行実験を行い,
核種移行評価に及ぼす核種−コロイドの収着反応速度の影響について検討した[37-39]。実験では,収着性核
種として Cs を,コロイドとしてベントナイトコロイドを用いた。また,人工的に単一亀裂を加工した花崗岩
をカラムに充填して用いた。移行実験の結果は,核種−コロイドの収着反応速度を扱うことができる核種移行
計算コード COLFRAC-MRL を用いて解析した。その結果,核種−コロイドの収着反応速度により解析結果は異な
り,収着の反応速度を解析上考慮することが重要であることが示唆された。さらに,本実験では,可逆的な
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JNC TN1400 2005-018
Cs の収着であっても、亀裂中でコロイドがろ過されることにより,収着反応速度の影響を受け,コロイドに
収着した核種も亀裂内に留まることが認められることから,核種の移行遅延が期待される。したがって,コロ
イドの影響を考慮した核種移行解析モデルの高度化にあたっては,コロイドのろ過効果を考慮することも必要
であると考えられる。
また,サイクル機構は,NAGRA(スイス)との共同研究の一環として,グリムゼル岩盤試験場におけるコロ
イドと核種の原位置移行試験(CRR)プロジェクトに参画したが,この中で,COLFRAC-MRLを使用して核種移行
解析を実施した[40]。Amについての解析結果を図7に示すが,核種のコロイドへの収着反応速度を考慮するか
否かにより解析結果は有意に異なることが示された。特に,核種のコロイドへの収着が収着速度>脱着速度で
ある,すなわち,コロイドに収着した核種は,脱着して亀裂表面に収着されず,コロイドに収着した状態で移
行すると仮定すると,CRR実験におけるAmの移行挙動が解析で再現できた。この実験では,ベントナイトコロ
イド20 ppmを加えた核種移行実験も行われたが,この結果においては,ベントナイトコロイドを加えたことに
より実験系内のコロイド濃度が増えたことによって,核種移行率が増加したことが認められた。
ハ)核種移行評価に係るデータベースの整備
放射性元素の熱力学データベース整備に関しては,OECD/NEA で整備され 2003 年に公開された U,Am,Tc,Np
および Pu の熱力学データベースの見直し(up-date)データを PHRREQE データベースフォーマットにまとめ,平
成 14 年度に整備したデータベースフォーマット変換プログラムを用い,PHREEQC, EQ3/6 および Geochemist s
Workbench の各コードのフォーマットに変換し,利用環境を整備した[41]。
JNC-SDB に含まれる放射性核種のベントナイトおよび岩石に対する収着データは,平成 15 年度の更新によ
り 20,000 件を超えている。この様な膨大なデータを有する JNC-SDB には,様々な実験条件・手法で得られた
データが含まれているため,全てのデータを同一の条件や信頼度で評価することはできない。そのため,個々
のデータに対し,データの信頼度を付与し,信頼度に応じたデータの評価をする必要がある。そこで,収着デ
ータの信頼度を評価する際に,どの様な実験条件等を考慮すれば良いか(例えば,初期濃度,固液分離方法な
ど)を検討し,個々の収着データに対し信頼度を付与するための便宜的な指標を設定した[42]。今回,設定し
た指標は,①報告書等に書かれている記述(実験方法,実験条件等)の網羅性,②実験方法・実験条件等に基
づく個々の収着データの信頼性,③データ相互間の整合性により構成される。②の基準については,信頼度の
レベルをどう考慮すれば良いかについても検討した。今後は,この基準をもとに,JNC-SDB に含まれる収着デ
ータに対し信頼度評価を進めていく予定である。
平成 13 年 8 月より Web サイト(http://migrationdb.jnc.go.jp/)で公開しているサイクル機構熱力学・収着
データベースについては,Web サイトの維持管理を継続するとともに,平成 14 年度に準備した OECD/NEA によ
る Np/Pu の熱力学データベースの掲載を実施した。また,OECD/NEA による見直しデータおよび更新 SDB の Web
掲載の準備を進めた。さらに SDB については,Web を介してデータ検索等が実施できる新システムを開発し,
掲載準備を行なっている。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ)熱力学的基礎データの取得
安全評価上重要であるNpについて,重要な熱力学データの一つであるNp(IV)水和酸化物の溶解度積を求
めた。また,処分環境で期待される方解石沈殿速度の遅い領域でのBa共沈データの取得を行うことができ
た。さらに,アクチニド元素の固溶体の評価として,UO2(am)-NpO2(am)系の固溶体現象に関して実験的に検
討し,溶解度は理想固溶体として熱力学的に評価することが可能であるとの知見を得る等,所期の成果が
得られた。
ロ)核種移行挙動評価データの取得
ベントナイト埋め込みガラス浸出試験を継続するとともに,模擬ガラス固化体との対比で浸出挙動及び
変質相生成挙動を把握するための実ガラス固化体の浸出試験を開始した。
拡散・収着現象については,緩衝材中のNpの拡散係数の測定,海水条件下での堆積岩に対するU及びTh
の収着分配係数の測定,及び,幌延堆積岩に対するCs,Se及びNpの収着分配係数の測定を実施した。また,
マトリクス拡散深さに関する室内試験を実施し,花崗岩質の岩石においてイオンが200mmを越える深さまで
拡散することを確認した。さらに,拡散挙動に対するMD-HA結合解析法の適用,緩衝材中の拡散現象の微細
構造変化を考慮した熱力学的検討等を実施することで,現象理解と安全評価モデルの信頼性向上に寄与す
ることができ,所期の成果が得られた。
コロイドの影響評価については,Cs とベントナイトコロイドの相互作用に関する知見を得るとともに,核
種−コロイドの収着反応を速度論により扱うモデルを整備し,カラム試験や原位置試験場の結果のモデル解析
を通してその適用性を確認する等,所期の成果が得られた。
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ハ)核種移行評価に係るデータベースの整備
既に外部に公開している熱力学データベース及び収着データベースについて,データベースの利用環境の整
備,情報収集に基づくデータベースの更新を進めるとともに,収着データベースについては新システムを開発,
その掲載準備を進めることができ,所期の成果が得られた。
(今後の予定)
イ)熱力学的基礎データの取得
Np(IV)の溶解度試験を継続し,加水分解定数を求めていく。
ロ)核種移行挙動評価データの取得
ベントナイト埋め込みガラス浸出試験及び実ガラス固化体の浸出試験を継続する。また,幌延堆積岩に
対するCs,Se及びNpの収着分配係数の測定を継続するとともに,収着モデルの確立を目指す。
共沈に関する現象解明としては,Raを用いた共沈実験を実施して固溶体モデルによる解析を行ない,溶
解度評価手法の確立を目指す。
コロイドの影響評価については,Np 及び Am とベントナイトコロイドの相互作用に関する知見を得るととも
に,核種−コロイドの収着反応を速度論により扱うモデルを用いて,より処分場に近い条件で行われる原位置
試験の予測解析等を行っていく。
ハ)核種移行評価に係るデータベースの整備
熱力学データベースについては,第 2 次取りまとめに向けて整備したサイクル機構のデータベース(JNC-TDB,
平成 11 年度作成)以降の情報に基づき,データの更新を行なう。収着データベースについては,整備した信
頼度評価方法に基づき個別データに対する信頼度評価を実施する。また,拡散データベースの整備,公開に着
手する。
【成果の利用実績及び活用見通し】
Web サイトにおいて公開した熱力学・収着データベースについては,平成 16 年度末において 274 名(国内
151 名,国外 123 名)が利用者登録をしており,国内外で広く利用されている。今後も,継続して内容の充実
を行い,常に最新でかつ信頼性の高いデータを提供することで,将来の規制における基本データとして活用さ
れることが期待される。
核種移行に関するデータ取得から得られる様々な知見は,データ取得方法の標準化作業において有効に利用
されており,原子力学会標準委員会深地層分配係数分科会における収着分配係数の測定方法の標準化に貢献で
きた。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
[1] 藤原健壮,小原幸利(2004)
:Np(IV)水和酸化物の溶解度積(II),日本原子力学会 2004 年秋の大会 F63 ,
p.523
[2] 藤原健壮,小原幸利,森孝司(2004):Np(IV)水和酸化物の溶解度積, JNC TN8400 2004-021.
[3] Fujiwara, K. and Kohara, Y. (2004): Solubility Product of Tetravalent Neptunium in the Reducing
Condition , Advanced Science Research - Advances in Heavy Element.
[5] 中澤俊之,岡田賢一,室井正行,吉川英樹,鐵 剛志,吉田泰: 炭酸塩生成時の放射性核種の共沈現象に
関するデータ取得およびモデル開発 ,日本原子力学会 2004 年春の年会要旨集,p855 (2004).
[6] 吉田泰,吉川英樹,中澤俊之: 炭酸塩固相に対する微量元素の共沈メカニズム解明に関する研究 ,日本
原子力学会「2004 年秋の大会」要旨集,p674 (2004).
[7] 吉田泰,吉川英樹,佐藤智文: 炭酸塩固相に対する微量元素の共沈反応についての固溶体モデルによる
評価 ,日本原子力学会「2004 年春の年会」要旨集,p681 (2005).
[8] Rai,D., Hess,N.J., Yui,M., Felmy,A.R. and Moore,D.A. : Thermodynamic and solubility of
(UxNp1-x)O2(am) solid solution in the carbonate system , Presented at Migration 03 (2004).
[9] 有馬立身,出光一哉,夏暁杉,石寺孝充,飯島和毅(2004):緩衝材中の鉄イオン及びネプツニウムイオ
ンの拡散挙動,JNC TY8400 2004-005.
[10] 中澤俊之,岡田賢一,斉藤好彦,陶山忠宏,柴田雅博,笹本広(2005):人工海水系および蒸留水系にお
ける砂岩に対する U・Th の分配係数, サイクル機構技術資料, JNC TN8400 2004-023.
[11] Xia, X., Shibata, M., Kitamura, A. and Kamei, G. (2004): A systematic study on cesium sorption
on a sedimentary rock towards reliable safety assessment methodology for HLW disposal. Advances
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JNC TN1400 2005-018
in Nuclear and Radiochemistry: Extended Abstracts of Papers presented at the Sixth International
Conference on Nuclear and Radiochemistry (NRC-6), 29 August to 3 September 2004, Aachen, Germany,
in cooperation with University of Cologne, GDCh, FECS, OECD-NEA and IAEA, edited by Syed M. Qaim
and Heinz H. Coenen, pp.779-781.
[17] 河村雄行:ベントナイト中の物質移行モデルの高度化研究(Ⅲ),サイクル機構技術資料(業務委託報告書,
東京工業大学)
,JNC TN8400 2004-028(2005).
[18] Sato, H. (2004): Effects of the Orientation of Clay Particles and Ionic Strength on Diffusion
and Activation Enthalpies of I- and Cs+ Ions in Compacted Bentonite , Mat. Res. Soc. Symp. Proc.,
Vol.824, pp.485-490.
[19] Sato, H. (2004): Overview of R & D Activities on the Geological Disposal for HLW, and the Diffusion
Properties of Radionuclides in the Bentonite Buffer , Proceedings for Korea-Japan Joint Workshop
on Radioactive Waste Disposal 2004: The Role of Geology, Dec. 7, 2004, Daejeon, Korea, pp.49-70.
[20] Sato, H. (in press): Effects of the Orientation of Clay Particles and Ionic Strength on Diffusion
and Activation Enthalpies of I- and Cs+ Ions in Compacted Smectite , Appl. Clay Sci.
[21] Sato, H. (2005): Anisotropy in Diffusion and Activation Energies of I- and Cs+ Ions in Compacted
Smectite , Proceedings for the 13th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE13),
May 12-16, 2005, Beijing, China, pp.1-8.
[22] Sato, H. (in press): Anisotropy and Effect in Diffusion and Activation Energies of Cations and
Anions in Compacted Bentonite , Proceedings for International Symposium NUCEF2005, JAERI-Conf.
[23] Sato, H. (2004): Effects of the Orientation of Clay Particles and Ionic Strength on Diffusion
and Activation Enthalpies of I- and Cs+ Ions in Compacted Bentonite , Scientific Basis for Nuclear
Waste Management XXVIII, Mat. Res. Soc., April 13-16, 2004, San Francisco, CA, USA, Abstracts,
pp.511-512.
[24] Sato, H. (2005): Anisotropy and Effect in Diffusion and Activation Energies of Cations and Anions
in Compacted Bentonite , International Symposium NUCEF2005, Feb. 9-10, 2005, Techno Community
Square RICOTTI, Tokai, Japan, Program and Abstracts, p.62.
[25] Sato, H. (2005): Diffusion and Activation Energies of I- and Cs+ Ions in Compacted Smectite ,
2nd International Meeting on Clays in Natural and Engineered Barriers for Radioactive Waste
Confinement, March 14-18, 2005, Tours, France, Abstracts, pp.509-510.
[26] Sato, H. (2005): Anisotropy in Diffusion and Activation Energies of I- and Cs+ Ions in Compacted
Smectite , 13th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE13), May 12-16, 2005,
Beijing, China, Abstracts, p.338.
[27] 佐藤治夫 (2005): 圧縮ベントナイト中のI-及びCs+イオンの拡散及び活性化エネルギーの異方性及び塩
濃度の影響 , 第7回高レベル放射性廃棄物に関する情報交換会(Sapporo Conference), 2005年3月7-8日,
北海道大学.
[28] 佐藤治夫 (2005): 圧縮ベントナイト中のI-及びCs+イオンの拡散及び活性化エネルギーの異方性 , 原
子力学会 2005年春の年会 要旨集, M45, p.674.
[32] Sato, H. (2005): Measurements on the Thermodynamic Properties of Porewater in Sandstone by Vapor
Pressure Method , J. Nucl. Sci. Technol. 42 (4), pp.368-377.
[33] 佐藤治夫 (2004): 砂岩中の間隙水の熱力学特性 , 原子力学会 2004 年秋の大会 予稿集, I44, p.694.
[34] 飯島和毅,増田嗣也,戸村努 (2004): ベントナイトコロイドに対するCsの収着挙動 ,サイクル機構
技報,Vol.23,pp.51-61.
[35] 飯島和毅,増田嗣也,戸村努 (2004): ベントナイトコロイドに対するCsの収着挙動 ,日本原子力学
会 2004年秋の大会 予稿集,I21,p..
[36] Iijima, K., Masuda, T. and Tomura, T. (2005): Sorption Behavior of Cs onto Bentonite Colloid ,
Clays in Natural and Engineered barriers for Radioactive Waste
2nd International Meeting on
Confinement .
[37] 黒澤進, 茨木希, 油井三和, 上田真三, 吉川英樹 (2004): 核種移行に及ぼすコロイドへの核種収着速
, 原子力和文論文誌, Vol.3, pp.249-256.
度の影響, 実験と数値解析
[38] S. Kurosawa, M. Ibaraki, M. Yui, S. Ueta and H. Yoshikawa (2004): Experimental and Numerical
Studies on Colloid-Enhanced Radionuclide Transport, -The Effect of Kinetic Radionuclide Sorption
onto Colloidal Particles- , Mat. Res. Soc, Symp, Proc., Vol.824, pp.473-478.
[39] 黒澤進,油井三和,三浦房恵,辻本恵一(2005): 岩盤亀裂中の核種移行に及ぼす核種−コロイドの
収着反応速度の影響 ,日本原子力学会 2005年春の年会 予稿集,M49,p..
−405−
JNC TN1400 2005-018
[40] 黒澤進, 茨木希, Scott James, 油井三和, R. Alexander (2004): グリムゼル岩盤試験場におけるコ
ロイドと核種の移行遅延実験に関する解析 , サイクル機構技術資料, JNC TN8400 2004-016.
[41] 吉 田 泰 , 柴 田 雅 博 (2004) : OECD/NEA で 整 備 さ れ た 熱 力 学 デ ー タ ベ ー ス 利 用 環 境 の 整 備 そ の
2 Tc,U,Np,Am および auxiliary の熱力学データの更新-, サイクル機構技術資料, JNC TN8400 2004-025.
(発表予定)
[4] Fujiwara, K., Kohara, Y. and Mori, T. (2005): Solubility Product of Tetravalent Neptunium Hydrous
Oxide and its Ionic Strength Dependence , MIGRATION'05.
[12] Xia, X., Kamei, G., Shibata, M. and Iijima, K. (2005): Quantitative Analysis of Illite in
Sedimentary Rock and its Application to Cesium Sorption Modeling , 13th International Clay
Conference (ICC 2005)
[13] Xia, X., Kamei, G., Iijima, K. and Shibata, M. (2005): Selenium Sorption in a Sedimentary
Rock/Saline Groundwater System and Spectroscopic Evidence , 29th Int. Symp. on Scientific Basis
for Nuclear Waste Management(MRS2005).
[14] Xia, X., Iijima, K., Kamei, G. and Shibata, M. (2005): Neptunium(IV) Sorption Behavior in a
Sedimentary Rock/Saline Groundwater System , Asia-Pacific Symposium on Radiochemistry
(APSORC-05).
[15] Xia, X., Iijima, K., Kamei, G. and Shibata, M. (2005): Comparative Study on Sorption by Using
Crushed and Intact Sedimentary Rocks , MIGRATION'05.
[16] 甲川憲隆,向井悟,神徳敬,佐藤治夫,柴田雅博,笹本広 (2005): 花崗岩質岩石におけるマトリクス
拡散 ,日本原子力学会「2004 秋の大会」
[29] Sato, H. (2005): Anisotropy in Diffusion and Activation Energy of Cs+ Ions in Compacted Smectite ,
13th International Clay Conference (ICC 2005), Aug. 21-27, 2005, Waseda Univ., Japan.
[30] Sato, H. (2005): Effects of the Orientation of Clay Particles and Ionic Strength on Diffusion
and Activation Enthalpies of I- and Cs+ Ions in Compacted Bentonite (II) , Scientific Basis for
Nuclear Waste Management XXVIX, Mat. Res. Soc., Sep. 12-16, 2005, Ghent, Belgium.
[31] Sato, H. (2005): Activation Energies for Diffusion of Iodine and Cesium in Compacted Sodium
Smectite , 10th International Conference on Chemistry and Migration Behaviour of Actinides and
Fission Products in the Geosphere (MIGRATION 05), Sep. 18-23, 2005, Avignon, France.
[42] 斉藤好彦,Michael Ochs,神徳 敬,陶山忠宏,柴田雅博,笹本 広,油井三和(2005): JNC 収着デー
タベースを用いた分配係数の信頼度評価手法の開発(仮題),サイクル機構技術資料.
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
溶解度,分配係数,拡散係数については,大学をはじめ,原研,電中研などにおいて取得され,報告さ
れている。データベースの整備については,原研において,個別元素の熱力学データの整備や収着データ
のデータベース化が行われている。
(参考文献)
・ 山口徹治,武田聖司(1999):地下水中における元素の溶解度及び化学形を推定するための熱力学デー
タの検討 第1編:Tc, U, Am, JAERI-Data/Code 99-011.
・ 武部慎一,阿部昌義(2001):分配係数に関するデータベースの開発(1) 分配係数データの収集,
JAERI-Data/Code 2001-005.
・ 武部慎一,阿部昌義(2001):分配係数に関するデータベースの開発(2) データベースの作成,
JAERI-Data/Code 2001-006.
[海外の研究の現状と動向]
溶解度,分配係数,拡散係数については,大学をはじめ,様々な研究機関において取得され,報告され
ている。
核種移行におよぼすコロイドの影響については,スイスグリムゼル地下研究所における国際共同研究と
しても研究が進められており,サイクル機構以外にも各国の研究機関,大学で作業を分担しながら実験,
解析作業を進めている。
熱力学データベースの整備に関しては,OECD/NEA において国際共同プロジェクトとして 1980 年代後半
から継続的に個別元素毎のデータ選定作業が実施されている。現在 PhaseⅢが進められており,同プロジ
−406−
JNC TN1400 2005-018
ェクトへの参加機関は 11 カ国 16 機関で,日本からはサイクル機構が参加している。同プロジェクトで
PhaseⅡまでに 8 元素(U, Am, Tc, Np, Pu, Se, Ni, Zr)に関するデータのレビューを行い,推奨するデ
ータの決定を終了しており,さらに,PhaseⅠにおいてレビューが行なわれた5元素については,最新デ
ータを取り込んだ更新作業も実施されている。現在,これら 8 元素に対する有機物錯体のデータの選定が
終了し,データベース公開の準備が進められているとともに,新たに Th, Fe, Mo および Sn のデータの
レビューが開始されることが決定されている。これ以外に,研究機関独自で整備を進めているものとして,
イギリス AEA テクノロジーの HATCHES データベース等がある。平成 14 年には,スイス ポールシェラー研
究所が自国の性能評価報告書(Entsorgungsnachweis)で利用することを目的として,熱力学データベー
スを整備し,公開を行っている。収着データベースとしては,以前に OECD/NEA で整備を実施していたが,
中断されている。収着データベースも各国の処分安全評価プロジェクト毎に評価に用いるため整備された
ものが存在する。
(参考文献)
・ たとえば,Geckeis, H. et al.,(2003)
:Results of colloid and radionuclide retention experiment
impact of reaction kinetics and speciation
(CRR) at the Grimsel Test Site(GTS), Switzerland
on radionuclide migration, Radiochim. Acta 92, 765-774 (2004).
・ たとえば,Guillaumont, R. et al., (2003):Chemical Thermodynamics Series Volume 5, Update on the
Chemical Thermodynamics of Uranium, Neptunium, Plutonium, Americium and Technetium. Elsevier.
・ Hummel, W et al.,(2002): Nagra/PSI Chemical Thermodynamic Data Base 01/01, Universal Publishers,
Parkland, Florida.
・ R egger,B. and Ticknor, K.(1992):The NEA Sorption Data Base (SDB), in Radionuclide sorption from
the safety evaluation Perspective, OECD/NEA.
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
■ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
)
【自由評価欄】
−407−
-3
[Np] (mol dm )
JNC TN1400 2005-018
10
-3
10
-4
10
-5
10
-6
10
-7
D. Rai (1987)
V. Neck (2001)
I=0.5
I=1.0
I=2.0
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
pH
c
図1
Np(IV)溶解度のpHc依存性
○,◇は文献値,◆,●,×および曲線は藤原ほか,(2004)
による実験値と最小二乗フィッティング
0.1
Tesoriero and Pankow (1996)
0.08
JNC exp. fast
JNC exp, 34ppm
JNC exp, 1ppm
0.06
0.04
0.02
0
-0.5
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
沈殿速度[nmol/mg/min]
図 2 方解石沈殿速度と元素分配比
元素分配比 =
固相中の Ba/Ca モル比
液相中の Ba/Ca モル比
−408−
図 3 (UxNp1-x)O2(am)の溶解度実験結果と理想的な
固溶体を仮定した計算結果(直線)との比較
JNC TN1400 2005-018
Cs収着量(mol/kg)
Kd (mol/kg)
10-4
10-6
10-8
A: illite 16%
B: illite 13%
C: illite 12%
D: illite 20%
10-10
10-4
10-6
10-8
10-10
10-10
10-8
10-6
10-10
10-4
10-8
10-6
10-4
Cs初期濃度(mol/dm3)
図4
イオン交換モデルに基づく幌延堆積岩に対する
Cs収着量の計算結果と実験値との比較
100
100
Perpendicualr/[NaCl]0.01M
Perpendicular/[NaCl]0.51M
Parallel/[NaCl]0.01M
Parallel/[NaCl]0.51M
90
80
60
E a by the
lowering in aH2O
50
40
70
∆Ea /kJ/mol
∆Ea /kJ/mol
80
Cl:Perpendicular/DW/Kozaki et al. 1998
70
o
Ea of D for I :
17.36 kJ/mol
30
Perpendicular/[NaCl]0.01M
Perpendicular/[NaCl]0.51M
Parallel/[NaCl]0.01M
Parallel/[NaCl]0.51M
Perpendicular/DW/Kozaki 1999
90
Ea by the lowering
in aH2O
60
o
50
Ea considered H :
ca. 27.6 kJ/mol
40
30
20
20
10
10
0
Ho
o
+
Ea of D for Cs : 16.47 kJ/mol
0
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
3
0.0
0.5
1.0
1.5
3
Dry density /Mg/m
Dry density /Mg/m
図 5 I-(左)及び Cs+(右)イオンの活性化エネルギーの乾燥密度,塩濃度,配向方向に対する
拡散方向の影響
−409−
2.0
2.0
5.0
1.8
4.0
1.6
3.0
1.4
2.0
∆G H2O /kJ/mol
Activity P H2O/P oH2O
JNC TN1400 2005-018
1.2
1.0
0.8
0.6
1.0
0.0
-1.0
-2.0
0.4
-3.0
0.2
-4.0
0.0
-5.0
0
1
2
3
4
5
0
Water content /%
1
2
3
Water content /%
図 6 砂岩における含水比に対する間隙水の活量と相対部分モル Gibbs の自由エネルギー
-3
-1]
C/M
C/M0[cm
0, ml
10-4
10-5
10-6
10-7
101
102
103
試験時間,
min
試験時間[min]
131I(実験結果)
104
243Am(実験結果)
コロイド非共存と仮定した場合の243Amの移行
243Am-GWCの収着反応:
243Am-GWCの収着反応:
瞬時平衡を考慮
速度論を考慮
GWCのHDC現象を考慮
GWC: 地下水コロイド(groundwater colloid)の略
図 7 原位置試験で得られた Am 移行挙動の解析結果
−410−
4
5
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【研究分野】
地層処分
【分類番号】
◎4−1(廃棄2−4−1(1))
【研究課題名 (Title)】
人工バリア及び岩盤の長期挙動に関する研究
(Study of Long-term Behavior of Engineered and Geological barrier systems)
【実施機関 (Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先 (Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]油井 三和(ゆい みかず)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 処分バリア性能研究Gr
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松4-33,電話番号:029-282-1111
(Name) Mikazu Yui
(Title of Function) Barrier Performance Group, Waste Isolation Research Division, Waste
Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
(Address, Tel. and Fax) 4-33 Muramatsu Tokai-mura, Nakagun, Ibaraki, 319-1194 Japan
Tel: +81-29-282-1111
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]西村 繭果(にしむら まゆか),棚井 憲治(たない けんじ),谷口 直樹(たにぐち な
おき),小田 好博(おだ よしひろ),柴田 雅博(しばた まさひろ),神徳 敬(じんと
く たかし),藤崎 淳(ふじさき きよし),笹本 広(ささもと ひろし)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 処分バリア性能研究Gr
(Name) Mayuka Nishimura,Kenji Tanai,Naoki Taniguchi,Yoshihiro Oda
Masahiro Shibata,Takashi Jintoku,Kiyoshi Fujisaki,Hiroshi Sasamoto
(Title of Function) Barrier Performance Group, Waste Isolation Research Division, Waste
management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
[氏名]青柳 茂男(あおやぎ しげお)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 システム解析 Gr
(Name) Shigeo Aoyagi
(Title of Function) Repository System Analysis Group, Waste Isolation Research Division, Waste
management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度∼平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)]
・ 国際共同研究「DECOVALEX-THMC」
(SKI, SKB, CNSC, CAS, Ontario Power, DOE, ENRESA,
IRSN, BGR, STUK, JNC)
・ 国際共同研究「Prototype Repository Project」
(SKB, POSIVA, ENRESA, AITEMIN, CIMNE,
GRS, BGR, UWC, ANDRA, CRIEPI, JNC)
・ 国際共同研究「Maqarin Project」(NAGRA, JNC)
[実証試験名(実施機関)]なし
−411−
JNC TN1400 2005-018
[委託研究名(実施機関)]
・緩衝材長期力学挙動の信頼性向上(竹中工務店・竹中土木)
・人工バリアの長期安定性,長期耐食性評価に関する調査研究及び技術レビュー(Ⅱ)(原子力安全研究
協会)
・軟岩の長期力学的変形挙動研究(Ⅱ)
(前田建設)
・軟岩の長期安定性に関する検討(前田建設)
・軟岩の長期安定性に関する解析的検討(前田建設)
・ニアフィールド岩盤の長期安定性評価手法の検討(東京大学)
・ニアフィールド岩盤の長期安定性評価手法に関する検証(東京大学)
・熱-水-応力-化学連成挙動に関する研究(IV)
(三菱重工業,間組)
【使用主要施設】
地層処分基盤研究施設
【研究概要】
[研究の経緯]
高レベル放射性廃棄物の地層処分の研究開発の一環として,安全規制に係る基準・指針類の策定や処分
事業の推進に資するため,人工バリア性能等の信頼性向上に関わる基盤的な技術や情報を整備しておくこ
とが必要である。本研究では,第2次取りまとめで示された技術基盤に基づき,人工バリア及び岩盤の長
期挙動に関する現象の理解を深め,より信頼性の高い予測手法の開発を進めている。
[研究目的]
具体的な地質環境条件を対象に人工バリアや地下施設に対して,長期予測モデルの検証等を行い,安全
評価基準・指針類の策定及び安全評価モデル・データの信頼性向上に資する。
[研究内容]
人工バリアや地下施設を対象として,以下の研究を行う。
イ)緩衝材の長期物理的・化学的安定性に関する研究
緩衝材の変質挙動や塩水に対する影響等の長期物理的・化学的安定性に係る現象モデル及びデ
ータの検証を室内において実施するとともに,原位置における検証試験計画を立案する。
ロ)オーバーパックの腐食挙動に関する研究
オーバーパックの処分環境下における長期腐食挙動について,腐食機構を解明するための研究
を行う。また,腐食挙動に係る現象モデル及びデータの検証を室内において実施するとともに,
原位置における検証計画を立案する。
ハ)ガス移行挙動に関する研究
人工バリア中及び周辺岩盤中のガス移行挙動に係る現象モデル及びデータの検証を室内にお
いて実施するとともに,原位置における検証計画を立案する。
ニ)岩盤長期変形挙動に関する研究
ニアフィールド環境条件を模擬した温度・圧力・間隙水圧条件において,三軸圧縮応力下での
岩石のクリープ特性,疲労特性に関する実験的研究を実施し,それらの特性を明らかにするとと
もに,基礎データを蓄積する。また,これらのデータに基づき長期岩盤強度及び変形予測手法の
開発を行う。
ホ)再冠水挙動に関する研究
人工バリア埋設後の再冠水挙動に係る現象モデル及びデータの検証を室内において実施する
とともに,原位置における検証計画を立案する。
なお,これらの研究により得られたデータは,体系的にデータベースとして取りまとめ,モデルと合
わせて人工バリア及びニアフィールドの長期挙動に関する体系的解析ツールの構築に資する。
−412−
JNC TN1400 2005-018
【当初の達成目標(平成16年度)】
イ)pH をパラメータとした試験により緩衝材の化学的安定性の長期予測に必要となるデータを取得し,モデ
ルの信頼性向上等を図る。
ロ)オーバーパックの処分環境下における環境因子による長期腐食挙動への影響に関するデータ取得を実施
し,評価手法の信頼性向上に資するデータの拡充を図る。
ハ)塩濃度や pH をパラメータとしたガス移行試験を継続するとともに,GAMBIT-GWS モデルや改良型
TOUGH2 モデルの改良並びに二相流モデルとの統合化に関する検討を行う。
ニ)クリープ試験及び評価手法の検討を継続し,ニアフィールドの長期力学的安定性に影響を及ぼすと思わ
れる岩盤の力学特性について,幌延の硬質頁岩を対象として基礎データを取得するとともに,ニアフィー
ルド岩盤の長期力学挙動に関する評価手法の整備を行う。
ホ)熱−水−応力−化学連成モデル開発及び基礎データ取得を実施し,モデルの高度化を図る。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ)緩衝材の長期物理的・化学的安定性に関する研究
・緩衝材の基本特性については,幌延地下水を含む種々のイオン強度を有する海水系地下水に対するデー
タを拡充し,透過する溶液の塩濃度の影響によって固有透過度は大きくなる傾向を示すものの,イオン強
度 2.0mol/ 以上では,塩濃度が変化しても固有透過度は変化せず一定の値となる傾向があることが分か
。また,これらの結果から,海水系地下水条件下における透水,膨潤および力学特性に関する実
った(図 1)
験式を提案した。
膨潤特性及び熱特性について,測定手法の標準化のための基盤情報の整備を進めた。膨潤特性では,ス
ケール効果による影響を把握するために,圧縮成型時に発生する残留応力を除荷した供試体を用いて,膨
潤応力への影響確認試験データを拡充した。この結果と昨年度までの成果を踏まえ,供試体の縦横比にお
いて平衡膨潤応力を成型圧にて正規化した結果,スケール効果による膨潤応力へ与える影響因子の一つと
して考えられた供試体圧縮成型時の残留応力の影響はないことが示された(図 2)。熱特性に関しては,
異なる測定手法によって熱伝導率を測定した結果を基に,各測定手法におけるデータの違いはないことが
分かった。また,熱拡散率の測定に関しては,面熱源法と点熱源法を比べた結果,点熱源法の方が面熱源
法に比べ,若干低い値を示した。この理由として,面熱源法で測定した場合,面による測定のため試料表
面の場を平均的に測定するのに対して,点熱源法の場合,測定点周辺の温度変化のみを測定してしまうこ
とによって生じた違いによるものと考えられる。緩衝材の基本特性データベースに関しては,昨年度取り
まとめられたデータ集をデータベースとして Web 公開するため,検索機能などを取り入れたデータシステ
ムを一部構築した。
・緩衝材の長期力学的変形挙動については,降水系地下水に対する構成モデルのパラメータの見直しを行
い,昨年度までに設定したパラメータのうち,オーバーパックの沈下量が 10,000 年で 100mm となるよ
うな推定を与えるパラメータについては,過度に保守的な設定であることを,ベントナイト鉱床の堆積
過程から対応する粘性パラメータを推定するナチュラルアナログ的手法によって明らかにした。これに
より,10,000 年後のオーバーパックの沈下量は 40mm 程度と推定された(図 3)。また,海水系地下水
に対するパラメータ設定に必要な試験データの取得を継続して行った。これまでに得られたデータに基
づいてパラメータを設定し解析を行った結果,降水系地下水とほぼ等しい結果になることが明らかとな
った。岩盤/緩衝材力学連成モデルの開発では,岩盤部分を大久保モデル,緩衝材部分を関口-太田モデル
により評価する解析コードを作成し,原位置試験計画についての試計算を行った。
・緩衝材の流出・侵入挙動を把握するため,幌延深地層研究計画の試錐調査によって採取した実際の地下
水(幌延地下水)を用いたデータの取得を行った。蒸留水・幌延地下水・人工海水のそれぞれ水質条件
下で得られた侵入速さの指標である比例係数をイオン強度との関係で整理した結果,比例係数は,イオ
。また、X 線 CT による亀裂侵入ベントナイ
ン強度が大きい水質ほど小さくなることが分かった(図 4)
トの密度分布測定データの拡充を行い,ケイ砂混合体における侵入域の平均的な乾燥密度は、おおよそ
0.3Mg/m3 程度であることを把握した。侵入現象モデル化においては,モデルの入力物性データの一つで
あるベントナイトの粘度データの測定を実施した。これにより,モデルによる評価の精度向上を図り,
−413−
JNC TN1400 2005-018
実験結果と解析結果を比較し,モデルの妥当性,適用性を評価した(図 5)
。
浸食現象については,幌延地下水ならびに人工海水相当のイオン強度に調整した海水系地下水条件
(NaCl 溶液)におけるデータの取得を行った。その結果,8×10-6m/s(平均流速)では,浸食コロイド
の生成が認められないことから,本条件下では,ベントナイトコロイドが生成・移行しないことが把握
。
できた。また,浸食コロイドの生成量に関して,これまでの結果を整理した(図 6)
・緩衝材の変質・劣化挙動のうち,鉄腐食生成物と緩衝材との相互作用に関しては,鉄とベントナイトの反
応を加速する目的で鉄粉と粉末ベントナイトを蒸留水と混合し,約6年間にわたり,常温下で低酸素条件に
静置した試料の分析を行った(平成 15 年度)。その結果,試験後の試料にはスメクタイトの鉄型化が認め
られたのみであり,スメクタイトの構造の変化は観察されず,ベントナイト鉱床の事例を支持する結果が得
られた。このような室内試験や天然事例の結果から,処分環境下におけるスメクタイトの鉄型化の発生可能
性が高いことが示された。
平成 16 年度は,鉄型化したスメクタイトが長期的にどの様な変質挙動を示すかを明らかにするため,高
温(250℃および 150℃)での加速試験を実施した。250℃における1ヶ月および6ヶ月後の試料を対象に
SEM・TEM 観察,XRD 分析を行なった結果,SEM・TEM 観察では試験後試料の層構造の変化は認めら
れず,湿度制御 XRD 分析の結果でも相対湿度に対する底面間隔の変化は認められないことから,鉄型化し
たスメクタイトの変質は確認されなかった。しかしながら試験後試料の層間イオン抽出結果から,試験期間
が長いほど交換性陽イオンとして Fe が減少し,Mg が増加していく傾向が認められ,また XRD による定
方位測定では,6ヶ月後の試料で 7Å付近に小さなピーク(非膨潤性鉱物であるバーチェリンと推定)が同
。これらのことから,250℃で6ヶ月後の試料では,鉄型化したスメクタイトの一部が溶解
定された(図 7)
し Mg が溶出すると共に,微量ではあるがバーチェリンのような新たな鉱物が生成したと考えられる。さら
に,緩衝材の長期安定性評価の一環として,緩衝材の変質に伴う緩衝材機能の低下(分配係数の低下,拡散
係数の増大,コロイドフィルトレーション機能の低下)を想定し,変質に伴う核種移行評価上への影響度の
比較も予察的に試みた。
ロ)オーバーパックの腐食挙動に関する研究
マグネタイトによる炭素鋼の腐食加速現象については,長期健全性への影響を評価するため,水素発生
速度のモニタリングにより腐食速度の経時変化を測定した。その結果,浸漬初期には腐食加速現象が認め
られ,マグネタイトを与えない場合の数倍以上の水素が発生した。しかし,約130日で水素発生量はマグネ
タイトを与えない場合と同等以下となり,腐食加速現象の停止が示唆された(図8)。この結果より,仮に
マグネタイトによる腐食加速現象が生じたとしても長期間は持続しないと考えられる。還元性環境におけ
るチタンの耐食性については,水溶液単独系およびベントナイト共存系における3 年間までのチタンの浸
漬試験から,チタンの平均腐食速度は溶液系で10-2∼10-1μm/y ,ベントナイト共存系で10-3∼10-2μm/y
のオーダーと推定された(図9)。また,環境因子(塩化物イオン濃度,炭酸水素イオン濃度,硫酸イオン
濃度,pH,温度)をパラメータとして溶封アンプルを用いた閉鎖系での浸漬試験を行い,系に閉じ込めら
れた水素ガス量とチタン中に吸収された水素量から腐食速度と水素吸収率を評価した。その結果,塩化物
イオン濃度,硫酸イオン濃度,温度による明確な影響は認められなかったが,炭酸水素イオン濃度が高い
条件(1M)とpHが高い条件(pH13)で他の条件よりも数倍大きな腐食速度が得られ,耐食性の低下が示
唆された。銅については,還元性雰囲気における純銅の腐食に及ぼす硫化物の影響を検討した。その結果,
硫化物濃度が高くなると腐食速度は大きくなった(図10)。硫化物濃度0.001M以下であれば腐食速度は0.5
μm/y以下であり,長期的な腐食量は無視できるほど小さいことがわかった。低硫化物濃度環境での純銅の
耐食性は極めて高く,オーバーパックに対して長期の寿命を期待できる可能性がある。スウェーデン,フ
ィンランドなど銅を候補材料としている国でも地下水中10-5M以下の現実的な硫化物濃度に対する厚さ
50mmの処分容器の寿命は数十万年以上としている。
ハ)ガス移行挙動に関する研究
これまでに行ってきた降水系地下水条件下での試験結果を踏まえ,わが国の幅広い地質環境条件下での緩
衝材の透気特性データを充足するという観点から,海水系地下水条件におけるデータの拡充を実施した。海
水系地下水としては,人工海水(ASTM D-1141-98 基準)および幌延地下水(HDB-6 号孔)を用いた。海
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JNC TN1400 2005-018
水系地下水条件での試験結果を降水系の結果と合わせて図 11 に示す。なお,同図には緩衝材の膨潤応力試
験によって得られた降水系および海水系条件での結果も併記した。図よりガス移行試験データそのもののば
らつきはあるものの,降水系と海水系地下水条件下の結果に大きな相違は見られなかった。これらの現状で
のデータから緩衝材中のガス移行挙動に対する塩濃度の影響はそれほど顕著ではないものと推測される。ま
た,国際共同研究(GAMBIT Club)において,実験結果との比較検討を進めつつ,連続媒体 2 相流と応力
場の連成モデル(GAMBIT-GWS モデル)の開発を行った。なお,本連成モデルに関しては,いくつかの
課題も残されていることから,今後改良を進めていくことが必要である。さらに,幌延におけるガス移行原
位置での検証試験計画の概略的な立案を行った。
ニ)岩盤長期変形挙動に関する研究
地層処分の性能評価で取り扱うべき数千年から数万年を越える期間を対象とした場合,数年程度の室内
試験による検証だけで,岩盤の長期挙動を明確に推定するのには限界がある。よって,ナチュラルアナロ
グとして地圧現象に着目し,応力緩和現象に分類される地圧データをもとに,コンプライアンス可変型構
成方程式の検証例を提示するとともに,既存の地下構造物の計測データを収集し,長期力学挙動について
・
検証した。また,人工バリアや支保等からの反力による内圧効果に着目し,室内試験(データ蓄積) (図 12)
解析的検討(図 13)を実施した。その結果,対象とした幌延の硬質頁岩は,一般の堆積岩と比較し,拘束
圧が大きくなった際の強度特性の増加が顕著で,坑道周辺岩盤に作用する内圧効果(支保工等の工学的対
策)次第で,掘削により坑道周辺に発生する緩み領域幅の経時変化や内空変位を抑制できる可能性が高い
ことが分かった。さらに,一般的な堆積岩で見られる緩み領域の強度(透水性)回復現象について,その
考え方や検討方法を整理するとともに,幌延の硬質頁岩の岩石片を対象に,強度回復特性の有無に焦点を
当てた室内試験を実施した。その結果,幌延の硬質頁岩は,内圧効果により,来待砂岩や田下凝灰岩とい
った一般的な堆積岩と同程度の緩み領域の強度回復特性を持つことがわかった(図 14)。また,幌延硬質頁
岩を対象として,岩盤の長期力学挙動予測に必要な物性値やモデル定数を室内試験より蓄積し,竪置き式
処分孔周辺岩盤の長期力学挙動予測の試計算を実施するとともに,熱環境における室内クリープ試験・文
献調査を実施し,熱の影響に関する基礎データの蓄積,評価方法に関する既存の知見の整理を実施した。
ホ)再冠水挙動に関する研究
熱-水-応力-化学連成モデルの高度化に関する取り組みとして,緩衝材再冠水段階における地球化学反応
に寄与する、(a)酸素等のガス拡散挙動に関するモデル,(b)セメントの劣化モデルの導入を検討した。
また,コードの高度化として熱-水-応力連成解析モデルにおいて解の安定化を図り,地球化学解析で速
度論モデルによる解析結果をより安定に得るために設定方法の改善を行った。熱-水-応力-化学連成挙動
解析の比較・検証については,国際共同研究DECOVALEX-THMCに参加し,各タスクにおいて定義に
基づく予備解析を行い,他の参加機関と相互比較を実施して,それらの結果が概ね一致していることを
確認した。なお各タスクの概要は次のとおりである(①,②および④に参加)。①放射性廃棄物処分場
におけるニアフィールドの熱-水-応力連成現象の影響評価,②結晶質岩における掘削影響領域の水-応力
-化学連成プロセス,③泥質Tounemireサイトにおける掘削影響領域に関する研究,④火山岩および深成
岩−ベントナイト系における掘削影響領域およびその周辺での熱-水-応力及び熱-水-化学連成現象によ
る長期的水理特性・間隙率変化,⑤長期気候変動に伴う熱-水-応力連成プロセス(氷河作用)。また,
人工バリア定置後に想定される温度勾配条件下等におけるニアフィールドの連成挙動の定量的把握を
目的として,室内連成試験設備COUPLEにて,熱-水-応力-化学連成挙動に関する第2期試験(図15, 16)
と,その試験条件の決定や熱-水-応力-化学連成解析の解析体系確認ための予備解析(熱-水連成)(図1
7)を開始した。さらに,ニアフィールド連成挙動に関する数値実験として,幌延地質環境を想定した1
次元および3次元の事例解析(熱-水-化学連成)を実施し,原位置における検証計画立案のための準備を
進めている。
【研究の達成状況(平成16年度)】
イ)緩衝材の長期物理的・化学的安定性に関する研究
海水系条件下での試験等を通じて,緩衝材の基本特性や緩衝材の流出/侵入挙動などの緩衝材の長期物理
的安定性に関する知見の充足により所期の成果が得られた。緩衝材の長期力学的挙動については,粘性パ
ラメータについての検討や,海水系の試験データ拡充,及び岩盤/緩衝材力学連成モデルのプロトタイプ
を作成して評価手法を向上させることにより,所期の成果が得られた。緩衝材の化学的安定性については,
鉄型化スメクタイトの長期変質挙動に関するデータを取得するとともに,緩衝材の変質に伴う機能低下に
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よる核種移行評価への影響について概略評価でき,初期の成果は得られた。
ロ)オーバーパックの腐食挙動に関する研究
炭素鋼についてはマグネタイトによる腐食加速現象が生じたとしても長期間は持続しないことが確認
され,当初予定していた成果が得られた。チタンについても還元性環境における腐食速度、水素吸収挙動
についてより長期のデータが取得され所期の成果を得た。銅については,還元性雰囲気での腐食挙動に及
ぼす硫化物の影響について知見が得られ,所期の成果を得た。
ハ)ガス移行挙動に関する研究
海水系地下水条件下でのデータ取得により,緩衝材中のガス移行挙動に対する塩濃度の影響はそれほど
顕著ではないことが推測された。また,国際共同研究により開発を進めてきた応力連成モデルについては,
一部課題は残っているものの,その構築に向けて見通しが得られた。これらの結果により当初予定してい
た成果が得られた。
ニ)岩盤長期変形挙動に関する研究
幌延の地上からの調査段階によって得られる地質環境情報を対象とした,ニアフィールド環境を模擬し
た条件下での室内試験によるデータ取得や解析的検討を通じ,岩盤の長期力学的変形挙動に関する知識が
充足されたことにより,所期の成果が得られた。
ホ)再冠水挙動に関する研究
熱-水-応力-化学連成モデル及び解析コードの高度化,室内連成試験 COUPLE の実施,国際共同研究を
通じて,連成モデルの開発及び基礎データ取得について当初予定していた成果が得られた。
(今後の予定)
イ)緩衝材の長期物理的・化学的安定性に関する研究
緩衝材の基本特性に関しては,測定手法の標準化のための基盤情報を整備するため,膨潤特性および熱
物性に関するデータの蓄積を継続し,緩衝材に適した測定手法の検討を実施する。また,緩衝材の基本特
性データベースに関しては,引き続き最新のデータおよび知見などの更新を進め,データベースをWeb
公開する。緩衝材の長期力学的変形挙動に関しては,海水系パラメータ設定に必要な試験データの取得を
継続するとともに,岩盤/緩衝材力学連成モデルを用いたオーバーパックの自重の組込みや透水条件など
について改良する。緩衝材の流出/侵入挙動に関しては,降水系,海水系地下水条件下,それぞれに対する
浸食現象に関するコロイド生成量のデータの拡充を継続する。緩衝材の変質・劣化については,150℃での
試験後試料の分析を行い,250℃で認められたような変化が認められるかどうか確認する。また250℃での試
験後試料のXRD分析で同定されたバーチェリンの生成に関して熱力学的な安定性をもとに検討する。
ロ)オーバーパックの腐食挙動に関する研究
炭素鋼については溶接部の耐食性評価に資するため不動態化特性,局部腐食挙動を検討する。銅について
は引き続き還元性雰囲気での腐食挙動に影響を及ぼすと考えられる硫化物の共存した環境でのより長期の
腐食データを取得する。チタンについては還元性雰囲気でのより長期の試験データ取得を継続するとともに,
水素脆化条件を検討する。
ハ)ガス移行挙動に関する研究
海水系地下水条件におけるデータの拡充や可視化研究による現象の理解を継続するとともに,これまで国
際共同研究により開発を進めてきたガス移行モデル(GAMBIT-GWSモデル)について,実験結果との比較
検討を通じて,モデルの改良等を進める。また,それと並行して,改良型TOUGH2コードの妥当性に関す
る検討を継続する。
ニ)岩盤長期変形挙動に関する研究
平成17年度には,堆積岩を対象とし,ニアフィールドで起こりうる実現象のうち強度回復特性,クリー
プと応力緩和の中間的な挙動を再現した室内試験に関するデータを蓄積する。また,地下構造物の計測デ
ータを収集し,ニアフィールド岩盤の長期的な挙動をより詳細に理解すると同時に,岩盤の長期力学挙動
評価モデルを検証し予測評価の信頼性を向上する。
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ホ)再冠水挙動に関する研究
平成 17 年度には,熱-水-応力-化学連成モデル・解析コードの更なる高度化として,海水系地下水条件下
における軟岩系へのモデルの拡張および適用を実施する。また,室内連成試験については,第 2 期試験を継
続 し , 試 験 を 評 価 す る た め の 熱 -水 - 応 力 -化 学 連 成 挙動 の 解 析 を 実 施 す る 。 さ ら に , 国 際 共 同 研 究
DECOVALEX-THMC による各国のモデルとの比較・検証および情報交換を継続する。
【研究成果の発表状況(平成16年度)】
(緩衝材の基本特性)
・菊池広人,棚井憲治(2005)
:幌延地下水を用いた緩衝材・埋め戻し材の基本特性試験,サイクル機構技
術資料,JNC TN8430 2004-005.
・菊池広人,棚井憲治(2003):緩衝材の基本特性データベースの整備に向けた取り組み,土木学会第 59
回年次学術講演会講演概要集,CS1-041,pp.81-82.
(緩衝材の長期力学的変形挙動に関する研究)
・高治一彦,重野喜政,下河内隆文,平井卓,白武寿和(2005):緩衝材長期力学挙動の信頼性向上,サイク
ル機構業務委託報告書,JNC TJ8440 2004-011.
・高治一彦,重野喜政,下河内隆文,棚井憲治,平井卓:緩衝材長期力学挙動の検討(その 1)
,土木学会
第 59 回年次学術講演会.
・重野喜政,高治一彦,下河内隆文,棚井憲治,平井卓:緩衝材力学挙動の検討(その 2),土木学会第 59
回年次講演会.
・白井寿和,田村博邦,下河内隆文,平井卓:粘土粒子内に存在する層間水量と物理量―炉乾燥温度による
物理量(土粒子の密度・含水比・間隙比)の変化―,土木学会第 59 回年次学術講演会.
(緩衝材の流出/侵入挙動に関する研究)
・松本一浩,棚井憲治(2004):緩衝材の流出/侵入挙動 -緩衝材を起源とするコロイド生成に関する研究-,
日本原子力学会第 20 回バックエンド夏期セミナー資料集 ポスターセッション pp ポスター.10-1 JNC
TW8403 2004-005.
・松本一浩,棚井憲治(2005):緩衝材の流出/侵入特性(Ⅱ)-幌延地下水(HDB-6 号孔)を用いた緩衝材の
侵入特性評価-,サイクル機構技術資料,JNC TN8400 2004-026.
(緩衝材の変質・劣化挙動に関する研究)
・立川博一(2004)
:人工バリアの長期安定性,長期耐食性評価に関する調査研究及び技術レビュー,サイ
クル機構業務委託報告書,JNC TJ8400 2003-082.
・柴田雅博,笹本 広,神徳 敬,油井三和(2004)
:緩衝材の長期安定性評価技術の現状,サイクル機構
技術資料, JNC TN8400 2004-010.
・笹本 広,柴田雅博,神徳 敬,油井三和(2004):緩衝材の長期安定性に関する概略的評価,第 20 回
バックエンド夏期セミナー資料集,20004 年 7 月 29 日∼30 日.
・青山絵里,立川博一,清水亮彦(2005):人工バリアの長期安定性,長期耐食性評価に関する調査研究,
サイクル機構契約業務報告書,JNC TJ8400 2004-034.
(オーバーパックの腐食挙動に関する研究)
・川崎学、谷口直樹、川上進(2005):硫化物を含む人工海水中における純銅の腐食挙動評価,サイクル
機構技術資料, JNC TN8400 2004-027.
・川崎学、谷口直樹、川上進(2005):セメント共存環境下における純銅の腐食挙動の実験的検討,サイ
クル機構技術資料, JNC TN8400 2004-028.
・鈴木宏幸、谷口直樹、川上進(2005):還元性環境下におけるチタンの腐食速度と水素吸収挙動-III、サ
イクル機構技術資料、JNC TN8400 2005-003.
・青山絵里,立川博一,清水亮彦(2005):人工バリアの長期安定性,長期耐食性評価に関する調査研究,
サイクル機構契約業務報告書,JNC TJ8400 2004-034.
・Taniguchi, N., Kawasaki, M., Kawakami, S. and Kubota, M. (2004):” Corrosion Behaviour of Carbon
Steel in Contact with Bentonite under Anaerobic Condition”, Proc. of EUROCORR 2004, 04-083.
・建石剛,舛形剛,藤原和雄,阪下真司,中山武典,中西智明,和田隆太郎,谷口直樹(2004):還元性
雰囲気下の人工海水中における純チタンの水素吸収挙動,第51回材料と環境討論会講演集,A-201.
(ガス移行挙動に関する研究)
・棚井憲治(2003):医療用 X 線 CT スキャナを用いたガス移行可視化研究の試み,土木学会第 59 回年次
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JNC TN1400 2005-018
学術講演会.
(岩盤長期変形挙動に関する研究)
・吉野尚人,宮野前俊一,井上博之,梨本裕(2005)
:軟岩の長期安定性に関する検討,サイクル機構技術
資料(契約業務報告書;前田建設工業株式会社),
(準備中).
・宮野前俊一,森田篤,青柳茂男,油井三和,大久保誠介(2004)
:堆積軟岩の時間依存性挙動に関する解
析的検討,土木学会第 59 回年次学術講演改講演概要集,CS10-003,pp.5-6.
・大久保誠介(2005)
:ニアフィールド岩盤の長期安定性評価手法に関する検討,サイクル機構技術資料(研
究委託報告書;東京大学)
,JNC TJ8400 2004-018.
(再冠水挙動に関する研究)
・石原義尚,千々松正和,雨宮清,佐川寛,松岡不識:“熱-水-応力-化学連成挙動に関する研究(IV)”,サイ
クル機構技術資料,JNC TJ8400 2004-015.
・小田好博,鈴木英明,川上進,油井三和:熱-水-応力-化学連成試験設備(COUPLE)における熱-水-応力化学連成試験(II),サイクル機構技術資料,JNC TN8400 2004-024.
・伊藤彰,藤田朝雄,小田好博,川上進,油井三和,石原義尚,千々松正和,根山敦史,菱谷智幸:高レベ
ル放射性廃棄物地層処分におけるニアフィールドの熱-水-応力-化学連成挙動に関する数値解析の取り組
み(第 2 報),土木学会第 59 回年次学術講演会,CS1-025,pp.49-50, 2004.
・小田好博,藤崎淳,藤田朝雄,川上進,油井三和,石原義尚:高レベル放射性廃棄物地層処分におけるニ
アフィールドの熱-水-応力-化学連成挙動に関する研究(Ⅱ),第 20 回バックエンド夏期セミナー,2004
年 7 月 29 日∼7 月 30 日.
・鈴木英明,伊藤彰,藤田朝雄,吉田泰,川上進,油井三和:高レベル放射性廃棄物地層処分におけるニア
フィールドの熱-水-応力-化学連成挙動に関する室内試験(COUPLE),土木学会第 59 回年次学術講演会,
CS1-024,pp.47-48, 2004.
(発表予定)
(緩衝材の基本特性)
・ 松本一浩,西村繭果,菊池広人,棚井憲治(2005):処分場設計手法の適用性に関する検討(1)−処分場全体
設計フローの構築−,原子力学会2005年秋の大会,2005年9月13日∼15日.
・ 菊池広人,棚井憲治,松本一浩(2005):処分場設計手法の適用性に関する検討(2)−幌延を一例とした
緩衝材の試設計−,原子力学会2005年秋の大会,2005年9月13日∼15日.
・ Hirohito Kikuchi,Kenji Tanai,Mikazu Yui(2005):Database development of properties for
the buffer material in Japan,GLOBAL 2005.
(緩衝材の長期力学的変形挙動に関する研究)
・ 白武寿和,平井卓,高治一彦,棚井憲治,西村繭果:ナチュラルアナログから推定した緩衝材の長期力
,2005 年 9 月 13 日∼9 月 15 日
学評価パラメータ,日本原子力学会「2005 年秋の年会」
(緩衝材の変質・劣化挙動に関する研究)
・ Shibata, M. and Suyama, T. (2005):Experimental study on stability of iron(Ⅱ)exchange
d montmorillonite, 13th International Clay Conference (ICC), August 21-27 2005, Waseda
University, Tokyo, Japan.
(ガス移行挙動に関する研究)
・ Tanai, K and Yui, M (2005):A study on gas migration behavior in buffer material usi
ng X-ray CT method, 29th International Symposium on The Scientific Basis for Nuclear W
aste Management, September 12-16 2005, Ghent, Belgium.
(岩盤長期変形挙動に関する研究)
・ 青柳茂男,大久保誠介(2005):ニアフィールド岩盤の長期力学挙動と内圧効果に関する検討,日本原
子力学会「2005年秋の大会」,2005年9月13日∼9月15日
・ Shigeo Aoyagi, Kenji Tanai, Hiroya Matsui, Susumu Kawakami, Mikazu Yui (2005):Studi
es on design of the engineered barrier system and mechanical stability of rock based on
surfaced-based investigation of the Horonobe URL project,Global2005.
(再冠水挙動に関する研究)
・ 小田好博,川上進,油井三和,石原義尚,千々松正和,根山敦史,菱谷智幸:ニアフィールドにおけ
る熱-水-応力-化学連成挙動解析,原子力学会「2005年秋の大会」,2005年9月13日∼15日.
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【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
イ)緩衝材の長期物理的・化学的安定性に関する研究
緩衝材の基本特性に関しては,塩濃度をパラメータとして海水系環境下における緩衝材の膨潤特性に関
するデータの取得および経験式などの検討が進められている(1)(2)。また,緩衝材の長期力学的変形挙動に
関しては,岩盤/緩衝材力学連成挙動解析に関して,岩盤クリープをレオロジーモデル,緩衝材を弾性体モ
デル及び関口-太田モデルを用いて連成させた解析により,長期挙動予測が進められている(3)。緩衝材の化
学的安定性に関する研究として,高 pH 環境におけるスメクタイトの溶解速度に関する研究や,アルカリ
変質について大学等によりデータ取得が進められている(4)。
ロ)オーバーパックの腐食挙動に関する研究
ニッケル基合金のオーバーパックへの適用性に関する研究が行われている。
ハ)ガス移行挙動に関する研究:なし
ニ)岩盤長期変形挙動に関する研究
コンプライアンス可変型モデルを用いた解析手法の構築(5),軟岩の強度回復特性に関する研究(6),岩
盤の長期力学挙動に対する熱環境の影響に関する研究(7),岩盤と緩衝材の連成挙動評価モデルに関する研
究(8),コンクリート中のアルカリが岩石に与える影響に関する研究(9)が行われている。
ホ)再冠水挙動に関する研究
国内では,電力中央研究所により熱-水連成解析コードの開発が行われ,釜石粘土充填熱負荷試験に適用
し,含水比等について評価が行われた(10)。
(参考文献)
(1) 田中幸久,中村邦彦 (2004):海水の濃度と温度履歴がベントナイトの膨潤特性に及ぼす影響,
電力中央研究所報告,N04007.
:各種ベントナイト系材料
(2) 直井優,小峯秀雄,安原一哉,村上哲,百瀬和夫,坂上武晴(2005)
緩衝材の膨潤特性に及ぼす人工海水の影響,土木学会論文集 NO.785/Ⅲ-70,pp.39-49.
:空洞周辺岩盤のクリープと内部充填材との
(3) 澤田昌孝,岡田哲実,大波正行,宮本泰志(2004)
力学的相互作用,第 33 回岩盤力学に関するシンポジウム講演論文集,pp205-210,土木学会
(4) Sato, T., Kuroda, M., Yokoyama, S., Fukushi, K., Tanaka, T.and Nakayama, S.(2003)
Mechanism and kinetics of smectite dissolution under alkaline conditions, Geochimica et
Cosmochimica Acta, Supplement, Vol. 67, Issue 18, p.415
(5) 野本康介,宮野前俊一,松井幹雄,梨本裕,大久保誠介(2003):コンプライアンス可変型構成方
程式を用いた増分法 FEM 解析手法の開発,土木学会第 58 回年次学術講演概要集,Ⅲ部門.
(6) 南浩輔,野田兼司,井上博之(2002):軟岩の強度回復に及ぼす載荷時間と細粒分含有率の影響,
土木学会第 57 回年次学術講演概要集,Ⅲ部門.
(7) 城まゆみ,青木智幸,山辺正(2004):昇温下における珪藻泥岩のクリープ特性変化,土木学会第
59 回年次学術講演改講演概要集,CS10-006,pp.11-12.
:処分坑道・処分孔の長期安定性解析のための軟岩クリープモデル
(8) 澤田昌孝,岡田哲実(2004)
の検討とその適用性,土木学会第 59 回年次学術講演改講演概要集,CS10-004,pp.7-8.
:アルカリの岩石への影響に関す
(9) 関根一郎,中村隆浩,田中徹,小峰秀雄,島田久美子(2004)
る基礎的実験,土木学会第 59 回年次学術講演改講演概要集,CS10-005,pp.9-10.
(10) Äspö Hard Rock Laboratory: Technical Report TR-04-10.
[海外の研究の現状と動向]
イ)緩衝材の長期物理的・化学的安定性に関する研究
スウェーデンでは NaCl 溶液や CaCl2 溶液を用いて,ベントナイトの主な物理特性(透水性や膨潤特性
など)に与える影響に関するデータの取得を実施している(1)。鉄との相互作用による緩衝材の安定性に関
しては,フランス ANDRA がフランス国内の研究機関と協力し,室内試験を実施している(2)(3)。また,処
分システムでのセメント材料の利用を考慮した高 pH によるベントナイトの変質挙動については,フラン
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ス,スペイン,ベルギー等の諸国においても研究が進められている(4)(5)(6)。さらに,緩衝材の流出/侵入挙
動に関して,Ahn らは、緩衝材の侵入現象を圧密の逆過程と考え、圧密方程式を適用してモデル化を行っ
ている(7)。
ロ)オーバーパックの腐食挙動に関する研究
スウェーデンではベントナイト中における銅の腐食速度,腐食局在化のモニタリングに関する研究が行
われている(8)。フランスでは粘土中における炭素鋼の腐食試験(9),長期予測モデルの研究が行われている(10)。
ハ)ガス移行挙動に関する研究
SKB においては原位置でのガス移行試験(LASGIT プロジェクト)が進められつつある段階である。
また,NAGRA のグリムゼルテストサイトでは,ベントナイト 20%+ケイ砂 80%混合体を対象とした原位
置でのガス移行試験行ってきたが,試験自体はほぼ終了しており取りまとめの段階にある。
ニ)岩盤長期変形挙動に関する研究
フランス(11)では,ANDRA 等が,現在建設中の Meuse/Haute-Marne URL および,ビュール地下研究所
の岩盤を対象に,スイス(12)では,NAGARA が「Mont Terri Project」において,オパリナス粘土を対象に
長期力学的変形挙動に関する研究を進めている。また,アメリカ WIPP(13)等で原位置試験を通じた,モデル
の適用性に関する検討が実施された。
ホ)再冠水挙動に関する研究
人 工バリ アおよ び周辺岩 盤の熱 -水 -応力 連成モ デルの 開発・ 検証を目 的とし て,国 際共同研 究
DECOVALEX-THMC において各国の熱-水-応力連成モデル及び解析コードの比較検討が行われており,
昨年度はフェーズ THMC の開始として,5 つのタスクの定義と各タスクにおける予備解析,およびその結
果の比較を実施している。化学現象を考慮した連成解析コードについては,アメリカ LLNL が熱-水-化学
連成解析コード NUFT-C,LBNL が TOUGHREACT,イギリス Cardiff University が熱-水-応力-化学連
成解析コード COMPASS,スペイン Technical University of Catalunya が熱-水-応力-化学連成解析コード
CODE-BRIGHT の開発を行っている(14)。
(参考文献)
(1) Pusch. R. and Geodevelopment. AB. (2001):Experimental study of the effect of high
porewater salinity on the physical properties of a natural smectitic clay, SKB TR-01-07.
(2) Cathelineau.M., Guillaume.D., Mosser-Ruck.R., Dubessy,J., Charpentier.D., Villiéras.F.,
Michau.N. (2005) : Dissolution – crystallization processes affecting di-octahedral smectite
in presence of iron metal: implication on mineral distribution in clay barriers, The 2nd
international meeting on clays in natural & engineered barriers for radioactive waste
confinement, Abstracts pp.35-36.
(3) Lantenois,S., Van Aken.P.A., Plançon1.A., Jullien.M., Muller1.F., Lanson.B. (2005):
Experimental study of metal iron - smectites interactions at low temperature:
characterization of the newly-formed phases, The 2nd international meeting on clays in
natural & engineered barriers for radioactive waste confinement, Abstracts pp.37-38.
(4) Karnland.O., Olsson.S., Nilsson.U., Sellin.P. (2005) : Experimental study on changes of
bentonite mineralogy and physical properties as a result of exposure to high pH solutions,
The 2nd international meeting on clays in natural & engineered barriers for radioactive
waste confinement, Abstracts pp.341-342.
(5) Ramirez.S., Bouchet.A., Cassagnabère.A., Bauer.A., Meunier.A., Vieillard.P., Michau .N.
(2005): The early mineral reactions of the MX80 bentonite with high pH NaOH,KOH and
CA(OH)2, alkaline solutions at 60, 90 and 120°C, The 2nd international meeting on clays in
natural & engineered barriers for radioactive waste confinement, Abstracts pp.363-364.
(6) Sánchez.L., Cuevas.R.J., Fernández.D., Ruiz de León., García.R., Vigil de la Villa.R.,
Leguey.S. (2005) : Dissolution of montmorillonite and precipitation kinetics of secondary
minerals in hyperalkaline conditions at 75-200°C, The 2nd international meeting on clays in
natural & engineered barriers for radioactive waste confinement, Abstracts pp.323-324.
(7) Ahn, J., P. Chambré, E. Crandall, and J. Verbeke: Long-Term Behavior of Bentonite Buffer
in a Geologic Repository for High-Level Wastes, UCB-NE-4222, (1998).
−420−
JNC TN1400 2005-018
(8) Rosborg, B, Eden, D., Karnland, O. Pan, la Jinshan and Werme, Lars (2004): Real-time
monitoring of copper corrosion at the Äspö HRL, Proc. of EUROCORR 2004.
(9) Foct, F. (2004): Corrosion behavior of carbon steel in the Tournemire clay, Proc. of
EUROCORR 2004.
(10) Vega, E., Dillmann, Ph. and Fluzin, Ph.(2004): A study on species transport in the corrosion
products of ferrous archaeological analogues - a contribution to the modelling of iron long
term corrosion behavior. Proc. of EUROCORR 2004.
(11) ANDRA (2002) : CLAYS IN NATURAL AND EBGINEERED BARRIERS FOR
RADIOACTIVE
WASTE
CONFINEMENT,
Abstracts,
International
Meeting
REIMS,December 9-12,2002, pp.89-96.
(12) Federal Office for Water and Geology Geotechnical Institute Ltd Switzerland (2004):Mont
Terri Project - Programme Overview and Work Programme of Phase 10 (July 2004 – June
2005).
(13) D.E.MUNSON(1997)
:Constitutive Model of Creep in Rock Salt Applied to Underground
Room Closure, Int. J. Rock Mech. Min. Sci., Vol.34, No.2, pp.233-247.
(14) GeoProc2003(2003): International Conference on Coupled T-H-M-C Processes in
Geo-systems: Fundamentals, Modeling, Experiments & Applications, Part1, 2.
【研究評価(自己評価)】
○ 成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他(
[説明欄]
○ 成果活用方策
[チェック欄]
■ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用する。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○ 計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
【自由評価欄】
−421−
)
)
JNC TN1400 2005-018
10-15
0.30
有効粘土密度1.40[Mg m -3]
乾燥密度1.8[Mg m-3] (拘束型)
10-17
10-18
蒸留水
人工海水
幌延地下水
NaCl水溶液
10-19
10-20
0.0
1.0
2.0
3.0
イオン強度[mol
図1
-1
乾燥密度1.6[Mg m-3]:ケイ砂30[wt%]混合(開放型)
0.25
膨潤応力/成型圧(指数)
固有透過度[m2]
10-16
0.20
0.15
0.10
0.05
0.00
0.0
4.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
供試体縦横比 [H/D]
]
イオン強度と固有透過度との関係
図2 スケール効果による膨潤応力と
供試体成形圧の正規化
0
-20
適切なパラメータ
による解析
関口-太田モデル
沈下量 [mm]
-40
SO-A-1
SO-A-2
SO-Aa-1
So-Aa-2
SO-B-1
SO-B-2
-60
-80
-100
-120
0.1
1
過度に保守的な
パラメータによる解析
10
100
1000
10000
経過時間[y]
図 3 沈下解析結果におけるパラメータの影響
0.7
1.6
コア部
乾燥密度1.6Mg/m ケイ砂30wt%混合体
乾燥密度1.8Mg/m 3 ベントナイト単体
0.6
1.2
0.5
1
固相率 [-]
比例定数 [mm/hr1/2]
1.4
0.8
0.6
0.4
0.3
0.4
0.2
0.2
0.1
0
実験結果(48時間)
実験結果(168時間)
実験結果(360時間)
実験結果(1056時間)
解析結果(47時間)
解析結果(170時間)
解析結果(353時間)
解析結果(1057時間)
亀裂部
3
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0
0.7
イオン強度 [mol/l]
図 4 イオン強度と比例係数の関係
0
10
20
30
40
侵入距離 [mm]
50
図 5 固相拡散モデルによる実験結果の
シミュレーション解析
−422−
60
70
JNC TN1400 2005-018
浸食コロイド量 [mg/cm2・s]
10
-3
H12レポートの臨界流速値(降水系条件)
降水系条件
降水系条件
海水系条件
10-4
10-5
10-6
10-7
10-8 -7
10
10-6
10-5
10-4
10-3
平均流速 [m/s]
図 6 平均流速と浸食コロイド量の関係
図7
Fe型化スメクタイトを出発物質とした250℃での試験後試料のXRD定方位分析結果
(右下図:6ヶ月後の試料で7.31Åの位置に新たなピークが認められる)
−423−
JNC TN1400 2005-018
HMag+Cs:マグネタイト+炭素鋼試験体からの水素発生
HMag:マグネタイトのみからの水素発生
HCs:炭素鋼のみからの水素発生
HMag+Cs-HMag-HCs
(H
-H
Mag+Cs
)/H
Mag
Cs
15
10
10
5
加速あり
5
0
0
-5
加速なし
-5
-10
Fe 3O4:0.6g/cm 2
35℃, 0.5M-NaCl
-15
(HMag+Cs -HMag )/H Cs
HMag+Cs -HMag -HCs(μm/y)
20
-10
-20
0
50
100
150
200
250
Time(day)
図 8 マグネタイト共存下における炭素鋼の腐食における水素発生反応の加速挙動
Mattsso n and Olefjord (1990)
(緩衝材共存系、大気平衡下、95℃)
人工海水
人工海水+緩衝材
0.1M-NaH CO 3
0.1M-NaH CO 3 +緩衝材
0.1M-NaH CO 3 +0.5M-Na Cl
0.1M-NaH CO 3 +0.5M-NaCl+緩衝材
10 1
10 0
10 -1
10 -2
溶液
単独系
緩衝材
共存系
10 -3
10 -4
0.1
1
10
試験期間 (year)
図 9 還元性雰囲気における純チタンの腐食速度の経時変化
−424−
JNC TN1400 2005-018
Na 2 S添加量
0M
0.001M
0.005M
0.1M
10 2
14μm/y
10 1
1.8μm/y
10
0
0.50μ m/y
0.048μm/y
10 -1
80℃人工海水
窒素雰囲気
3
10 -2
緩衝材ρ=1.6Mg/m
0
100
200
300
400
試験期間(day)
図 10 人工海水中における純銅の腐食に及ぼす硫化ナトリウム濃度の影響
1000
ケイ砂30%混合(降水系)
ケイ砂30%混合(海水系)
ベントナイト単一(降水系)
ベントナイト単一(海水系)
膨潤応力(降水系)
膨潤応力(海水系)
100
10
1
0.1
0.01
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
-3
有効粘土密度 [Mg m ]
図 11 有効粘土密度と破過圧力の関係
−425−
2.0
JNC TN1400 2005-018
0.005
載荷応力(強度との比)
①13.7[MPa](70[%])
②17.6[MPa](56[%])
③24.5[MPa](64[%])
クリープひずみ [-]
0.004
0.003
①拘束圧0[MPa]
②拘束圧4[MPa]
③拘束圧10[MPa]
0.002
②
①
0.001
0
③
1
10
102
103
時間 [s]
104
105
図 12 幌延硬質頁岩における三軸クリープ試験結果の一例
凡例
主応力方向
処分孔
処分孔
支保工あり
支保工無し
図 13 幌延深度 450m 条件における掘削から 10 年後の竪置き式処分孔周辺岩盤の緩み領域分布
一軸圧縮強度 [MPa]
12
土丹
田下凝灰岩
来待砂岩
三城目安山岩
幌延硬質頁岩
10
8
6
4
2
0
0
20
40
60
最大荷重 [kN]
80
100
図 14 供試体破砕後に加えた最大荷重と最大荷重付加後の一軸圧縮強度の関係
−426−
JNC TN1400 2005-018
1[m]
1m
1[m]
1m
Specimen
Specimen
1[m]
1m
Jack
Jack
Frame
Frame
図 15 室内連成試験設備 COUPLE 外観
図 16 室内連成試験設備 COUPLE 装置概要
循環水 70[℃]
1[m]
模擬岩体
1[m3]
緩衝材試験体
Φ0.3[m]
載荷板 70[℃]
模擬廃棄体
1[m]
Φ0.1[m] 100[℃]
図 17 室内連成試験設備 COUPLE 試験条件
−427−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
◎4−2(廃棄2−4−2(1))
【研究分野】
地層処分
【研究課題名(Title)】
人工バリア等の性能保証に係る工学技術研究(Engineering technology research on the performance guarantee
for the Engineered Barrier System (EBS))
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]油井 三和(ゆい みかず)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 処分バリア性能研究グループ
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡郡東海村村松 4-33 電話:029-282-1111 FAX:029-282-9295
(Name) Mikazu Yui
(Title of Function) Barrier Performance Group, Waste Isolation Research Division,
Waste Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33, Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki, 319-1194
Japan, Tel:+81-29-282-1111
Fax:+81-29-282-9295
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]川上 進(かわかみ すすむ),藤田 朝雄(ふじた ともお)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 処分バリア性能研究グループ
(Name) Susumu Kawakami,Tomoo Fujita
(Title of Function) Barrier Performance Group, Waste Isolation Research Division,
Waste management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度 ∼ 平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]
・国際共同研究 「トンネル・シーリング性能試験」
(AECL,ANDRA)
・国際共同研究 「実規模スケールでの処分場プロジェクト」
(SKB)
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]
・人工バリア性能確認に関する基盤情報取得方法の調査研究(Ⅱ) (間組)
・シーリング性能挙動に関する評価研究 (鹿島建設)
【使用主要施設】
地層処分基盤研究施設
【研究概要】
[研究の経緯]
第2次取りまとめでは,幅広い地質環境を対象とした検討によって,処分施設が現状技術や近い将
来において利用可能と考えられる技術によって成立することが示された。しかしながら,これらの技
術的検討を実際の処分場の建設に適用できるようにするためには,実用面から人工バリアの長期挙動
を中心として,設計および製作・施工技術と安全評価との関連性を考慮した人工バリアに期待する性
能の明確化ならびに性能保証項目や評価方法等の基盤情報の整備を進め,安全規制に係る基準・指針
−429−
JNC TN1400 2005-018
類の策定に資することが重要である。
[研究目的]
具体的な地質環境条件下において,人工バリアや処分施設の設計・施工のうち枢要技術について検証
を行い,処分場の設計に適用すべき安全基準・指針類の策定に資する。
[研究内容]
イ)施工に係る性能保証研究
オーバーパックの製作,緩衝材の製作・施工,埋め戻し,処分場建設等に関するデータを地上施
設での要素試験及び原位置での試験を通じて取得するとともに,得られたデータを基盤情報として
体系的に整理する。
ロ)処分場管理/モニタリングに関する研究
操業前から処分場閉鎖までの各段階における安全確認のための体系的なシナリオ構築を図り,安
全確認すべきモニタリング項目の抽出,モニタリングすべき項目に対する技術要件,モニタリング
に使用される計測機器等のモニタリングに関する基本的な考え方を整理する。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
イ)施工に係る性能保証研究
・緩衝材の定置に対する定置機器設備の要求性能に関する要件を要素試験から導出することにより,
定置機器設備への安全規制の策定に資する要件項目を整理する。
・地下研究施設における原位置試験で計画されている人工バリア試験で使用する定置機器設備への設
計要件を抽出することにより,地下施設での稼動を考慮した要件を整理する。
ロ)処分場管理/モニタリングに関する研究
・モニタリング技術(計測技術)に関する最新情報を収集し,処分場管理手法に関する情報と同様に,
日本の地質環境条件および人工バリア仕様に適合した計測システムをどのように構築していくことが
安全規制の観点から求められるのか整理する。
・以上のような処分場管理手法および計測システムの現状を考慮し,安全規制の観点から求められる
モニタリングの基本的なシナリオ,基本的な考え方について取りまとめる。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ)施工に係る性能保証研究
・これまでに,処分場の長期的安全性の確保の観点から人工バリアに期待する性能/性能保証項目の検
討を行い,安全基準・指針等の策定や処分事業の推進へ資する基盤情報として体系的な整理を試みて
いる。処分場を構成する各要素に対する性能保証項目案を明らかにするとともに,これらに対する評
価のためのモデル,データベース,実験方法などに関する現状の調査・整理を行った。平成 16 年度
は,オーバーパックに関する検討を行い(表1)
,これを技術資料として取りまとめた。
・閉鎖技術に求められる要件を明確にするため,一例として,坑道に設置されたコンクリート製支保工
の変質による体積減少 隙間の発生 埋め戻し材の膨潤による隙間の充填というプロセスを考え,埋
め戻し材に要求される性能(隙間充填性,低透水性,膨潤圧・剛性等)の把握に資するべく,埋め戻
。供試体作
し材の隙間充填性能に着目した基礎試験を平成 15 年度から継続して実施している(図 1)
成時の有効粘土密度と初期体積に対する膨潤後の体積比(以下,「体積膨潤比」という。)の関係を図
2 に示す。図から人工海水における体積膨潤比は蒸留水,幌延地下水のときの値よりも小さいことが
示されている。これは,人工海水のイオン強度が 0.64[mol l-1]に対し,幌延地下水が 0.21[mol l-1],蒸
留水が 0.00[mol l-1]であることが影響しているものと考えられる。また,国際共同研究であるトンネ
ル・シーリング性能試験において,プラグや埋め戻し材等の止水性能に関するデータ取得を継続し,
止水性能への温度の影響等を把握した。この試験は,平成 15 年度にデータ取得を終了し,平成 16 年
度には解体および分析用のサンプリングを実施した。
ロ)処分場管理/モニタリングに関する研究
・人工バリア性能モニタリングに関する技術情報として,幌延の地下研究施設における原位置試験への
適用を念頭に,人工バリアおよびその周辺岩盤における熱的,力学的,水理学的,化学的現象の時間
/空間的変遷を把握するための計測項目,空間的範囲,期間の検討を実施した。また,モニタリング
技術の適用性検討を目的として,平成 15 年度に原位置試験への適用性の高い計測技術として選定し
た緩衝材測定手法水分量(Frequency Domain Reflectometry;FDR 法)を用いた乾燥密度および含
水比の異なるケイ砂混合ベントナイトに対する室内試験データの取得,緩衝材中の pH 測定手法の適
−430−
JNC TN1400 2005-018
用性検討のための室内試験データの取得,ジオトモグラフィ手法を緩衝材の含水率計測へ適用するた
めの課題の抽出を行った。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ)施工に係る性能保証研究
人工バリア等の性能保証に関する評価のためのツールの整理,閉鎖技術の要件に関わる具体的検討等,
基盤情報としての知見を得ることができ,所期の成果が得られた。
ロ)処分場管理/モニタリングに関する研究
処分場管理/モニタリングに用いる可能性のある技術について,原位置試験による適用可能性検討に
向けた計測技術・機器の基本特性について,室内試験に基づく情報を取得し,所期の成果が得られた。
(今後の予定)
イ)施工に係る性能保証研究
人工バリア等の性能保証に関する検討として,緩衝材,埋め戻し材,プラグ,坑道などに関し,平成
16 年度に引き続き,性能保証項目案に対して設定した評価内容を具体的に評価するツール(モデル,デ
ータベース,実験方法)の整備状況を整理する。人工バリアの搬送・定置に係る検討として,初期の隙
間充填挙動に着目したデータ取得を行い,評価のためのモデル構築に資する。また,閉鎖技術の要件に
係る検討として,環境条件を考慮した埋め戻し材性能に関するデータの拡充,感度解析等を用いた要件
の絞り込み整理を行う。
ロ)処分場管理/モニタリングに関する研究
人工バリア性能のモニタリングに関しては,幌延での原位置試験を想定した計測項目,範囲,期間の
検討を継続し,平成 16 年度までに行った計測項目等に関する絞り込みを行う。このため,処分環境を
考慮した緩衝材の水分量測定手法に関する試験データの拡充,緩衝材中の pH 測定手法に関する検討を
継続するとともに,ジオトモグラフィ手法等の適用性を引き続き検討する。
【成果の利用実績及び活用見通し】
本研究の成果を,国による高レベル放射性廃棄物の処分に係わる「安全審査基本指針」,「安全審査指
針」,「処分場の技術基準」などの策定のための技術情報として資する。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
イ)施工に係る性能保証研究
1)谷口直樹,川上 進,神徳 敬,油井三和(2005):炭素鋼オーバーパックの性能保証に関わる腐
食挙動評価ツールの現状,サイクル機構技術資料,JNC TN8400 2005-002.
2)菊池広人,棚井憲治(2005):幌延地下水を用いた緩衝材・埋め戻し材の基本特性試験,サイクル
機構技術資料,JNC TN8430 2004-005.
3)戸井田 克,笹倉 剛,渥美博行,升本一彦,田中俊行,須山泰弘,小林一三,森川誠司,立川伸一
郎(2005):シーリング性能挙動に関する評価研究,サイクル機構技術資料,JNC TJ8400 2004-023.
ロ)処分場管理/モニタリングに関する研究
1)千々松正和,福留和人,浦野和彦,今井 久,佐々木肇,雨宮 清(2005):人工バリア性能確認
に関する基盤情報取得方法の調査研究(Ⅱ),サイクル機構技術資料,JNC TJ8400 2004-027.
(発表予定)
・Kawakami S., Fujita T., Masumoto K. and Yui M. (2005): Studies on Sealing Performance of Clay
Plug by the Tunnel Sealing Experiment, MRS 2005, Belgium, September 12-16, 2005.
・升本一彦,笹倉 剛,藤田朝雄(2005):カナダ URL におけるベントナイトプラグの閉鎖性能評価
試験,土木学会第 60 回年次学術講演会,平成 17 年 9 月 7 日∼9 日.
・J.B. Martino, D.A. Dixon, E.T. Kozak, B. Vignal, Y. Sugita, T. Fujita and K. Masumoto ; The
Tunnel Sealing Experiment: A REVIEW, Canadian Nuclear Society, Waste Management,
Decommissioning and Environmental Restoration for Canada’s Nuclear Activities: Current
Practices and Future Needs, Ottawa, Ontario, Canada, May 8-11,2005.
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
−431−
JNC TN1400 2005-018
イ)施工に係る性能保証研究
原子力環境整備促進・資金管理センターにおいて,H12 年度より遠隔による搬送定置装置の開発に関
する検討が実施されている 1,2)。また,塩水環境下における隙間膨潤挙動について検討している。
ロ)処分場管理/モニタリングに関する研究
原子力環境整備促進・資金管理センターにおいて,H12 年度よりモニタリングに関する検討が実施さ
れている 3,4)。
(参考文献)
1)(財)原子力環境整備促進・資金管理センター:平成 15 年度高レベル放射性廃棄物処分事業推進
調査報告書−遠隔操作技術高度化調査−(1/2),平成 16 年 3 月.
2)(財)原子力環境整備促進・資金管理センター:平成 15 年度高レベル放射性廃棄物処分事業推進
調査報告書−遠隔操作技術高度化調査−(2/2),平成 16 年 3 月.
3)(財)原子力環境整備促進・資金管理センター:平成 14 年度 地層処分技術調査等報告書「−モニ
タリング機器技術高度化調査−(その 1)地層処分モニタリングシステムの検討」,平成 15 年 3 月.
4) (財)原子力環境整備促進・資金管理センター:地層処分にかかわるモニタリングの研究―位置
付け及び技術的可能性−,原環センター技術報告書,RWMC-TRJ-04003,平成 16 年 9 月.
[海外の研究の現状と動向]
イ )施工に係る 性能保証研究
地下研究施設において 実規模の原位置試験を実施し ,人工バリ ア の施工・埋め戻し 技術等に関する
∼
体系的なデータ 取得,評価を 実施し て いる 1) 2)。
ロ)処分場管理/モニタ リ ン グに関する 研究
国際的な課題と し てモニタ リ ン グの考え 方 3),再取り 出し の考え 方 4),等に関する 検討が実施さ れ
て いる 。
(参考文献)
1) SKB (2004): Aspo Hard Rock Laboratory Annual Report 2003, SKB TR-04-10.
2) SKB (2004): Aspo Hard Rock Laboratory Planning Report For 2004, SKB IPR-04-12.
3) IAEA (2001): Monitoring of geological repositories for high level radioactive waste,
IAEA-TECDOC-1208.
4) OECD/NEA Ad-hoc Group on Retrievability and Reversibility (2001): Considering
Reversibility and Retrievability in Geologic Disposal of Radioactive Waste, Draft Report.
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
■ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
−432−
)
JNC TN1400 2005-018
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
【自由評価欄】
特になし。
−433−
JNC TN1400 2005-018
表 1 オーバーパッ ク の性能保証に関わる 腐食挙動評価ツールの現状
性能保証
する項目
どのように保証(評価)
するのか(評価内容)
腐食に対し
て所定の期
間水密性を
維持するた
め,地下環
境条件にお
いて必要な
腐食寿命を
有すること
炭素鋼:
・浸漬試験,電気化学試験,
応力腐食割れ試験などの腐
食試験を実施し,1000 年間
の腐食量,応力腐食割れ感
受性を評価する。
・ナチュラルアナログ研究
による確証を行う
評価項目とツール
1)腐食形態
アノード分極測定における分極曲線が活性溶解型か,不動態型か
により,酸化性雰囲気における腐食形態を推定する。
2)腐食量
浸漬試験(酸化性および還元性)により平均腐食速度(深さ),
最大腐食速度(深さ),孔食係数を求める。最大腐食深さについ
ては極値統計解析を行い,実機での値を推定する。還元性雰囲気
における最大腐食深さは加速試験により評価する。
3)応力腐食割れ感受性
SSRT 試験,鋼中水素濃度測定により応力腐食割れ感受性,水素
脆化可能性を評価する。
4)ナチュラルアナログによる確証
埋設鋼管,考古学的鉄製品の腐食事例調査などより,長期腐食量
評価の妥当性を確認する。
銅:
炭素鋼と同様に,1)腐食形態,2)腐食量 ,3)応力腐食割れ感受性,
・浸漬試験,電気化学試験, 4) ナチュラルアナログによる確証,の項目について評価する。
応力腐食割れ試験などの腐 基本的には炭素鋼の場合と同様の手法が考えられる。ただし,腐
食試験を実施し,1000 年間 食形態(孔食など局部腐食の可能性)や還元性雰囲気での腐食(硫
の腐食量,応力腐食割れ感 化物影響)など,実験データや知見が十分ではないため,評価手
法については更に検討が必要である。
受性を評価する。
・ナチュラルアナログ研究
による確証を行う
チタン:
1)局部腐食生起臨界条件
・すきま腐食再不動態化電 すきま腐食再不動態化電位と不動態が健全な状態での自然電位
位などの局部腐食生起臨界 を比較し,前者のほうが貴であればすきま腐食は生起しないと判
条件に関するデータを整備 断する。
し,処分環境での局部腐食 2)水素発生速度,吸収率
生起可能性を評価する。
低酸素濃度条件での浸漬試験を行い,皮膜の成長挙動,水素発生
・水素発生速度,吸収率, 量測定などから腐食速度,水素発生速度を評価する。
水素濃度分布,水素脆化生 水素吸収率は全水素発生量と水素吸収量から算出する。長期的な
起条件を把握し,水素脆化 水素吸収率は加速試験などにより推定する。
生起可能性を評価する。
3)水素濃度分布
浸漬試験,加速試験を行い,水素濃度分布を評価する。その結果
に基づいて長期的な分布の形態を検討する.
4)水素脆化生起条件
水素濃度の異なるチタン試験片について機械特性,破壊靭性値な
どを測定し,脆化の起こる条件を評価する。水素分布状態を変え
た実験も行う。チタンの長期水素濃度,分布の推定結果と水素脆
化生起条件の比較により脆化の可能性を評価する。
−434−
JNC TN1400 2005-018
デシケータ
試験セル
(アクリル製)
隙間
試験水
(蒸留水および人工海水)
プラスチック
フィルタ
50mm
100mm
目皿
供試体
浸潤口
図 1 埋め戻し材の隙間充填試験装置概観図
蒸留水(菊池・棚井,2005)
蒸留水(菊池ほか,2003)
人工海水(菊池ほか,2003)
人工海水(菊池・棚井,2005)
幌延地下水(菊池・棚井,2005)
人工海水(田中ほか,2002)
体積膨潤比[-]
8.0
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
0.50
1.0
1.5
有効粘土密度[Mg m-3]
2.0
図 2 有効粘土密度と体積膨潤比の関係
−435−
2.5
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【研究分野】
【分類番号】
地層処分
◎4−3(2−4−3)
【研究課題名(Title)】
人工バリアのナチュラルアナログ研究
(Natural Analogue Study on Engineered Barrier Materials)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名,所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名] 油井 三和(ゆい みかず)
[所属] 東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 処分バリア性能研究 Gr
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33,電話:029-282-1111 FAX:029-282-9295
(Name)
Mikazu Yui
(Title of Function)
Barrier Performance Group, Waste Isolation Research Division,
Waste Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33 Muramatsu Tokai-mura, Nakagun, Ibaraki, 319-1194 Japan
Tel:+81-29-282-1111 Fax:+81-29-282-9295
(E-mail)
[email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]吉川 英樹(よしかわ ひでき)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 処分バリア性能研究 Gr
(Name)
Hideki Yoshikawa
(Title of Function) Barrier Performance Group, Waste Isolation Research Division,
Waste Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
【研究期間】
平成 13 年度 ∼
平成 17 年度
【関連する共同研究,実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
] なし
[実証試験名(実施機関)
] なし
[委託研究名(実施機関)
] ガラス固化体の長期鉱物化に関する研究(九州大学)
【使用主要施設】
地層処分基盤研究施設
【研究概要】
[研究の経緯]
高レベル放射性廃棄物の地層処分の研究開発の一環として,安全規制に係る基準・指針類の策定
や処分事業の推進に資するため,材料の長期的な挙動についての基盤的技術や情報を整備しておく
ことが必要である。本研究では,この目的のため,天然の類似現象の調査研究を進めている。具体
的には,第2次取りまとめで示された技術基盤の信頼性を高めるため,古代ガラス,歴史的金属遺
物等の調査ならびに室内比較試験を計画している。
[研究目的]
人工バリアの各要素について,履歴の明らかな天然類似現象を調査・研究することにより,人工バ
−437−
JNC TN1400 2005-018
リアの長期的な核種閉じこめ機能及び人工バリア相互作用等に関わる安全評価手法の信頼性の向上
に資する。
[研究内容]
イ. ガラスの溶解・変質に関する研究
廃棄物ガラスの長期挙動に関するナチュラルアナログとして,発掘調査で出土する古代ガラスを
対象として調査・研究を行う。また,古代ガラスと廃棄物ガラスの類似性に関する比較試験を実施
する。
ロ.金属の腐食に関する研究
オーバーパックの長期挙動に関するナチュラルアナログとして,粘土質土壌環境に長期間埋まっ
ていた鉄製品の腐食調査を行うとともに,海水環境で長期間使用されたチタン製品,発掘調査で出
土する鉄製及び青銅製遺物を対象とした調査・研究を行う。また,土中の溶存酸素濃度などの埋設
環境因子のうち,現在測定が困難な項目の原位置測定手法を開発する。
ハ.ベントナイトの変質に関する研究
緩衝材の長期挙動に関するナチュラルアナログとして,鉄,コンクリートと長期間接触していた
ベントナイトを対象とした調査・研究を行う。また,変質事例の情報をさらに蓄積する。
ニ.比較試験
ナチュラルアナログ研究によるデータを処分環境での人工バリア材料の長期挙動モデルの検
証に役立てるため,材料と環境条件を変数とした比較検討のための試験を行う。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
イ.ガラスの溶解・変質に関する研究
ボーリングコア中の凝灰岩層中に含まれる火山ガラス(凝灰岩類)のデータ取得を継続して実施
するとともに,発掘調査で出土する古代ガラス等の研究対象の選定調査を継続する。
ロ.金属の腐食に関する研究
長期間埋まっていた金属製品の腐食調査のための研究対象の選定を継続して行うとともに,環境
条件測定技術の確立及びデータ取得を行う。
ハ.ベントナイトの変質に関する研究
研究対象の選定及びデータ取得を行う。
ニ.比較試験
材料と環境条件を変数とした長期比較試験を行い評価する。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ.ガラスの溶解・変質に関する研究
発掘調査で出土する古代ガラス等の研究対象の選定調査に関しては,国内での出土事例が限られ
ているほか博物館所蔵品が多く適当な試料が選定できなかった。一方,深部地質中でのガラス変質
について情報が得られるボーリングコア中の火山ガラス試料の調査は昨年度に引き続いて継続し
た。神奈川県横浜市旭区川井宿の防災科学技術研究所地殻活動観測井(横浜孔:孔口標高 61.6m,
深度 2045.0m)のボーリ ン グ孔よ り 採取さ れたコアを 昨年同様試料と し た。ボーリ ン グ地点は,標
高 80m 程度の丘陵地を 帷子川の支流が浸食し た谷部に位置し て いる 。こ の丘陵地の地表付近はいわ
ゆる 関東ローム層が堆積し て いる が,谷部には中期更新世の相模層群が露出し ている 。深度 10m∼
1370m が更新世∼鮮新世の上総層群、深度 1370m 以深が鮮新世∼中新世の三浦層群と なっ て いる 。
両群はいずれも 海成層であり ,温度検層結果によ れば,孔底で約 70℃ である 。平成 15 年度は深度
1003.47∼1003.53m(推定温度約 43℃)では偏光顕微鏡観察の結果,試料中の火山ガラスは変質し
−438−
JNC TN1400 2005-018
ていなかったことを報告した。
平成 16 年度は,
さらに深部で温度環境の高い深度 2000.12∼2000.18m
の試料(推定温度約 70℃ )の偏光顕微鏡観察,粉末 X 線分析によ る 鉱物分析を 実施し た結果,火
山ガラ スの変質鉱物と し て 斜プチロル沸石やモン モリ ロナ イ ト が生成し ている こ と が分かっ た。深
度 1003.47∼1003.53m の試料と 深度 2000.12∼2000.18m の試料の偏光顕微鏡によ る 薄片写真を 図
1 に,鉱物組成の結果を表 1 に示す。ボーリ ン グコア 中の火山ガラ スの変質には,埋設環境と し て
どう いう 温度条件に何年間さ ら さ れて いたかが重要である こ と が,本研究から も 示唆さ れた。
ロ.金属の腐食に関する研究
遺跡より出土した鉄製遺物の調査については,宮内庁書陵部が所蔵する 鉄て いを調査対象と し た
(図2 )。こ の鉄ていは 1945 年に大和六号墳(奈良市宇和奈辺参考地陪塚,5 世紀中葉)よ り 出土
し たも のの一部である 。埋蔵場所は造成さ れ地下環境が還元雰囲気であっ たこ と は確認でき なかっ
たが,鉄腐食物の性状から 弱酸化雰囲気であっ たと 推定さ れる 。調査に用いた鉄て いは大形鉄て い
3 枚と 小形鉄てい 17 枚の計 20 枚である 。大形鉄ていは長さ 375∼417 ㎜,中央幅 56∼78 ㎜,端部
幅 105∼130 ㎜,厚さ 2∼3 ㎜の平板で,重量は 310∼381g である 。小形鉄ていは長さ 120∼152 ㎜,
中央幅 9∼21 ㎜,端部幅 19∼38 ㎜,厚さ 1∼3 ㎜で,重量は 14∼28g である 。そのう ち No.001 の
大形鉄て いは、過去における 調査のために二分さ れて いる も のの保存処理はさ れて いない。他は保
存処理(脱塩,樹脂含浸)が施さ れ、部分的に赤褐色の錆が残っ ている が全体に黒色を帯びて いた。
なお,埋蔵期間は推定 1500∼1600 年間である 。孔食が観測さ れノ ギスにて 深さ を 測定し たと こ ろ、
大形鉄て いで最大深さ は 0.7∼1.5 ㎜,小形鉄て いで最大深さ は 0.1∼1.6 ㎜であっ た。保存処理がさ
れて いない大形鉄ていの試料 No.001 について、図3 に外観写真(上図)と X 線 CT 像(下図)を
示し た。上図の①、②の2 位置で、下図の X 線 CT 画像を 見る と 、厚さ 2∼4 ㎜の鉄地金(白色部
分)の残存部分の廻り を厚さ 0.5 ㎜程度の錆層(やや白色の灰色部分)が覆っ ている のが分かる 。
地金と 錆の密度の違いが明確に映し 出さ れ、錆の部分には少し 土が混ざっ ている と 思われる 。ま た,
外観では直径 5-6mmの錆の山が所々見え る が、こ の部分は深さ 1 ㎜程度の孔食であり 、錆が孔を
3
3
埋めやや厚く 成長し て いる こ と が分かる 。A-A’断面では,孔食部では最大密度が約 3.3×10 ㎏/m
の錆が厚さ 約 1.5 ㎜成長し て いる 。保存処理のさ れて いる 他の2 つの試料でも 孔食の深さ は 1 ㎜程
度であっ た。大小の鉄ていは母材の鉄が原型に近い形を 保っ て おり 、埋設期間約 1500 年間に渡
る 鉄の地中での長期腐食挙動に関し て 貴重なデータ を 得る こ と ができ た。調査の結果、腐食深
さ は最大で 1.6mm であっ た。
本鉄ていの事例を約 1500 年間の腐食事例と し てみる と 、高レ ベル放射性廃棄物の地層処分研究
で想定し ている 処分環境での 1000 年間の腐食量よ り 1 桁から 2 桁腐食量が小さ いこ と が分かる 。
こ れま でに調査し た試料の埋蔵環境は大半が酸化雰囲気で,弱酸化∼還元雰囲気に埋蔵さ れていた
と 推定さ れたも のは数点にすぎなかっ た。し かし ,本研究によ り 多く の試料を 調査でき 、こ の雰囲
気における 貴重なデータ 取得ができ 評価の信頼性を 向上でき た。
ハ.ベントナイト
予算削減のため研究実施を見送った。緩衝材の長期挙動に関する変質事例の文献調査は継続して
実施したが重要な情報は得られなかった。
ニ.比較試験
これまでに,ガラス固化体(P0798 ガラス)の溶解/変質実験を実施し,pH11 以下のスメクタイ
トが生成する条件におけるガラス固化体(P0798 ガラス)の溶解/変質および可溶性元素の浸出挙
動は,拡散方程式を用いた水和変質モデルを用いて良く説明でき,水和変質過程に律速されて進行
することが分かった。溶解/変質実験を継続し,昨年実施した同モデルを用いて可溶性元素または
水(H3O+:hydronium ion)の拡散係数 Di と活性化エネルギーについて,各元素の浸出量から 解析
し た結果,各温度における Dii の値は 10-22∼10-21[m2 s-1](温度 60[°C]∼120[°C])と なり ,その
温度依存性から 活性化エネ ルギーは約 50 [kJ/mol]と なっ た。
また,上記のガラス固化体溶解/変質実験において,安全評価上重要となる核種の Se の浸出量
も測定した。その結果,Se の規格化浸出量は Si とほぼ同じ値を示し Se はガラスマトリックスであ
る Si と調和的に溶解すると判断された。Se はガラス中で SeO2 の状態で存在すると考えられ,SiO2 の
結晶格子中の Si と一部置換して存在することが予想される。
したがって,Se はガラス骨格の SiO2 の
溶解とともに溶解すると考えられる。
上記拡散係数を再評価したことに伴い,水和変質モデルを用いたガラス固化体の長期浸出挙動解
析を再度実施した。結果は大きくは変化なく,結論としてはガラス固化体の核種保持期間は 7 万年
以上となり昨年同様変わらなかった。ガラス固化体は第2次取りまとめにおける評価よりも高い核
種保持性能を持つ可能性があることが示された(図4)。
−439−
JNC TN1400 2005-018
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ.ガラスの溶解・変質に関する研究
横浜の地下深部のボーリングコアを用いて,火山ガラスの変質調査を実施した結果,深度 2000m
付近で推定温度が約 70℃の環境に約 50 万年前から現在まで置かれた火山ガラスは,変質鉱物とし
てクリノプチロル沸石とモンモリロナイトに変化している事例が得られ初期の成果が得られた。
ロ.金属の腐食に関する研究
宮内庁書陵部が所蔵する 鉄て いに関し て 腐食調査を 実施し た。こ の鉄ていは 1945 年に大和
六号墳(奈良市宇和奈辺参考地陪塚,5 世紀中葉)よ り 出土し たも のの一部で,埋蔵環境が弱
酸化雰囲気である と 推定さ れる 。本鉄ていは母材の鉄が原型に近い形を保っ て おり 、こ れら 鉄
遺物を 材料と いう 観点から 見た場合、埋設期間約 1500 年間に渡る 鉄の地中での長期腐食挙動
に関し て貴重な情報を提示し て いる 。調査の結果、腐食深さ は最大で 1.6mm であっ た。こ のよ
う に 1000 年以上におよ ぶ試料で弱酸化性から 還元性環境に埋没し て いた事例のデータ 取得を
行い,所期の成果が得ら れた。
ハ.ベントナイトの変質に関する研究
緩衝材の長期挙動に関する変質事例の文献調査を継続した。
ニ.比較試験
pH11 以下のスメクタイトが生成する条件におけるガラス固化体(P0798 ガラス)の溶解/変質お
よび可溶性元素の浸出挙動は,拡散方程式を用いた水和変質モデルを用いて良く説明でき,水和変
質過程に律速されて進行することが分かった。水和変質モデルを用いることによりガラス固化体は,
第2次取りまとめにおける評価よりも高い核種保持性能を持つ可能性があることが示された。以上
のような評価が実施でき所期の成果が得られた。
(今後の予定)
イ.ガラスの溶解・変質に関する研究
深部ボーリ ン グコアを 用いた火山ガラ スの調査では,ガラ スの変質割合が0%ま たは100%の試料が
得ら れた。Ogihara(2000)によ る と 「相馬沖」の深度1000mのボーリ ン グコア 中の火山ガラ スが斜プ
チロル沸石に変質し ,環境温度45℃ の状態で試料中の火山ガラ スの90%が斜プチロル沸石に変質し
て いる と いう 報告がある 。今後,環境条件を評価し ,変質割合の異なる データ を取得し て活性化エ
ネ ルギーを求め,廃棄物ガラ スの活性化エネ ルギーと 比較検討する 。
また,発掘品としての古代ガラスの研究対象の選定調査に関しては,本年度は適当な試料が選定
できなかったが,今後も調査を継続する。
ロ.金属の腐食に関する研究
弱酸化性雰囲気に存在していたと推定される鉄製遺物の事例を引き続き蓄積し,環境条件データ
の取得を並行して実施する。
ハ.ベントナイトの変質に関する研究
国内にベントナイトと pH=12 を越える高アルカリ地下水の接触事例について,そのような事例が
見込めないこと,国際的に確認された中近東地区の高アルカリ地下水湧出地点の調査も国際情勢の
観点から困難であり終了していること,および本テーマの予算が削減傾向にあることからベントナ
イト事例調査は,内外の情報収集は継続するものの調査実施はしばらく見合わせることとする。
ニ.比較試験
本テーマの予算が削減傾向にあることから室内試験におけるガラスの長期安定研究は,内外の情
報収集は継続するものの研究実施はしばらく見合わせることとする。
−440−
JNC TN1400 2005-018
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
・本田卓,山口新吾,「鉄遺物の X 線 CT 測定」
,JNC TJ8400 2004-030,(2004).
・稲垣八穂広,
「ガラス固化体の長期鉱物化に関する研究(Ⅳ)」,JNC TJ8400 2004-019,(2004).
・新開篤,稲垣八穂広,出光一哉,有馬立身,吉川英樹,油井三和,亀井玄人,「ガラス固化体の長期
鉱物化とそれに伴う核種固定化に関する基礎的研究」
,原子力学会第 20 回バックエンド夏期セミナー,
(2004).
・Ohmoto, H., Spangler, K.R., Watanabe, Y., and Kamei, G. ,
「Smectite dissolution kinetics in
high-alkaline conditions」
,in Oversby, V.M & Werme, L.O. eds. Scientific Basis for Nuclear
Waste Management XXVII, Materials Research Society Symposium Proceedings Vol. 807, 723-728,
(2004).
・稲垣八穂広,猿渡崇宏,出光一哉,有馬立身,吉川英樹,油井三和,
「P0798 ガラス固化体の長期変
質速度の温度依存性と反応機構」,日本原子力学会 2004 年秋の大会,(2004).
・本田卓,山口新吾,吉川英樹,上野健一,油井三和,
「埋蔵鉄器の腐食状況と環境影響」
,第 51 回材
料と環境討論会,腐食防食協会,(2004).
・Yoshikawa, H., Futakuchi, K., Hiroki, M., and Yui. M.,「Natural analogue of nuclear waste glass
in a geologic formation - Study on long-term behavior of volcanic glass shards collected from
NUCEF Symposium」,JAERI-conf 2005-007, (2005).
drill cores
・山口耕生,稲垣八穂広,猿渡崇宏,出光一哉,吉川英樹,油井三和, 「ベントナイト共存下における
P0798 ガラス固化体の溶解/変質および Cs 浸出の機構」,日本原子力学会 2005 年春の大会年会,
(2005).
(発表予定)
・Yamaguchi, K., Inagaki, Y., Saruwatari, T., Idemitsu, K., Arita, T., Yoshikawa, H., and Yui,
M.,「Kinetics of Aqueous Alteration of P0798 Simulated Waste Glass in the Presence of Bentonite」,
MRS 2005 29th Symposium on the Scientific Basis for Nuclear Waste Management.
・Inagaki, Y., Saruwatari, T., Idemitsu, K., Arita, Shinkai, A., Yoshikawa, H., and Yui, M. ,
「Temperature Dependence of Long-term Alteration of of P0798 Simulated Waste Glass under
Smectite Forming Condition」, MRS 2005 29th Symposium on the Scientific Basis for Nuclear Waste
Management.
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
イ.ガラスの溶解・変質に関する研究
特になし。
ロ.金属の腐食に関する研究
原子力環境整備センターがナチュラルアナログ研究として,愛媛大学村上恭通教授らにより九州、
四国、中国地方の遺跡4地点から出土した鉄器の腐食調査を実施している。そのうちの東岡山遺跡(岡
山市)から3点の鉄器が還元性環境と推定される地層から出土し、400∼500 年の埋没期間で腐食深
さ 1∼4mm の孔食腐食を報告している。(「原始・古代の鉄製品の腐食と土中環境の対応性に関する研
究 Ⅲ」愛媛大学村上恭通(2005)、RWMC 委託)
ハ.ベントナイトの変質に関する研究
特になし。
ニ.比較試験
特になし。
[海外の研究の現状と動向]
イ.ガラスの溶解・変質に関する研究
M.I.Ojovan らは、14 年にわたるガラスと土壌中のガラスの暴露試験結果を報告している。Cs の拡
散係数がガラス系では 10-20m2/s、土壌中では 10-21m2/s と報告しており、イオン交換のプロセスと水
−441−
JNC TN1400 2005-018
和現象が支配的であると述べている。(Mat.Res.Soc.Symp.Proc.,824, 333-344, 2004)
ロ.金属の腐食に関する研究
特になし。
ハ.ベントナイトの変質に関する研究
特になし。
ニ.比較試験
特になし
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
■ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
□ 計画どおり進捗した。
■ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:予算削減により研究実施を一部見送ったため
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
【自由評価欄】
−442−
)
)
JNC TN1400 2005-018
void
Scoria
plagioclase
mudstone
plagioclase
図 1 偏光顕微鏡像(左:深度 1003.47∼1003.53m,右:2000.12∼2000.18m)
横浜孔
表 1 ボーリングコア試料の鉱物組成
モンモリロナイト
緑泥石
イライト
石英
斜長石
斜プチロル沸石
普通角閃石
概略推定温度[℃]
ガラス残存率
[%]
1003.47-1003.53[m]
▲
43
100
2000.12-2000.18[m] ▲
○ Tr
70
0
2006.34-2006.37[m] Tr Tr Tr ◎ ○ ▲
70
0
◎:多量
○:中程度の量
▲:少量 Tr:微量
図2 宇和奈辺陵墓参考地陪塚大和六号墳出土鉄て い
(左側が大形鉄てい、右側が小形鉄てい)
−443−
JNC TN1400 2005-018
①
②
①
A
②
A'
B
B'
20mm
図3 大形鉄てい(No.001)の外観図(上)と X 線 CT 図(下)
外観図の①、②の断面が X 線 CT 図に該当する 。
1.0
a = 2.44[mm]
ガ 0.8
ラ
ス
0.6
残
存
Di
= 1x10 -20 [m2 /s]
Di
= 1x10 -21 [m2 /s]
Di
= 1x10 -22 [m2 /s]
「第2 次取り ま と め」
0.4
率
0.2
0.0
10 0
10 1
10 2
10 3
10 4
10 5
10 6
年
図4 水和変質モデルによるガラス固化体長期挙動の評価結果
−444−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16 年度)
【分類番号】
◎5−1(廃棄2−5−1(1))
【研究分野】
地層処分
【研究課題名(Title)】
TRU核種を含む放射性廃棄物処分の安全評価の信頼性向上に向けたデータ及び評価手法の整備
(Date acquisition and development of assessment method for the safety assessment of TRU
waste)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name、 Title of function、 Address and PHone)】
[氏名]塩月 正雄(しおつき まさお)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 処分材料研究グループ
[連絡先]319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33 TEL:029-282-1111(内3139)
(Name) Masao Shiotsuki
(Title of function) Materials Research Group、 Waste Isolation Research Division、 Waste
Management and Fuel Cycle Research Center、 Tokai Works
(Address and Phone) 4-33 Muramatsu、 Tokai-mura、 Nka-gun、 Ibaraki 319-1194 +81-29-287-0928
【担当研究者名及び所属(Name、 Title of function)】
[氏名]氏 名(よみがな:Shi MEI)
本田 明(ほんだ あきら)、大井 貴夫(おおい たかお)、三原 守弘(みはら もりひろ)、小田
治恵(おだ ちえ)
、*飯島 和毅(いいじま かずき)
、*飛塚 早智子(とびつか さちこ)
、*石寺 孝
充(いしでら たかみつ)
、伊藤 弘之(いとう ひろゆき)、大澤 勉(おおさわ つとむ)
、加藤 卓
(かとう たかし)
、稲垣 学(いながき まなぶ)
、佐々木良一(ささき りょういち)
[所属]事業所 (センター) 部 課・室・グループ(Section、 Division、 Center、 Works)
東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 処分材料研究グループ
(Name) Akira HONDA、 Takao OHI、 Morihiro MIHARA、 Chie ODA、*Kazuki IIJIMA、 *Sachiko
TOBITSUKA、*Takamitsu ISHIDERA、 Hiroyuki ITO、 Tsutomu OOSAWA、 Takashi KATO、 Ryouichi
SASAKI
(Title of Function) Materials Research Group、 Waste Isolation Research Division、 Was
te Management and Fuel Cycle Research Center、 Tokai Works
* Radiochemistry Group、 Waste Isolation Research Division、 Waste Management and Fuel
Cycle Research Center、 Tokai Works
【研究期間】
平成 13 年度 ∼
平成 17 年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]TRU 廃棄物処分システムにおけるスメクタイト溶解挙動の評価研究(金沢
大学)
【使用主要施設】
地層処分基盤研究施設(エントリー)
−445−
JNC TN1400 2005-018
【研究概要】
[研究の経緯]
数年後に予想されるTRU廃棄物の処分事業に関連した法整備に、処分方策の確立に関する詳細かつ具体的
な研究成果を反映させるために、早急かつ着実に研究を進める必要がある。
[研究目的]
・TRU核種を含む放射性廃棄物の性状に起因して起こる特有な現象に着目し、信頼性の高い核種移行デ
ータ等を取得・整備するとともに性能評価モデル/コードの開発及び解析評価を実施し、TRU核種を含
む放射性廃棄物の地層処分に係る安全評価手法の確立及び関連する安全基準・指針類の策定に資する。
[研究内容]
・TRU核種を含む放射性廃棄物の性状に起因して起こる特有の現象を考慮したデータ取得・整備及び性能
評価解析のため、以下の研究を実施する。
イ)セメントの長期的溶解変質に関する研究
セメントの変質を定量的に把握するため、既存のセメント変質モデルの妥当性を評価検討す
る。
ロ)高pH、硝酸塩環境下における人工バリア及び岩盤の長期的変質に関する研究
セメント成分の溶出によって生成される高pH地下水による人工バリア及び岩盤の長期変質
挙動を把握するとともに核種移行パラメータへの影響を把握する。廃棄体を起源とする硝酸
塩の分解挙動を把握するとともに硝酸塩による人工バリア及び岩盤特性への影響や核種移
行パラメータへの影響を把握する。
ハ)有機物の影響に関する研究
地下水中の天然有機物及び廃棄体や人工バリア材を起源とする有機物の地下水中での挙動
を把握するとともに、核種移行プロセスや核種移行パラメータへの影響を把握する。
ニ)微生物活動の影響に関する研究
地下深部での微生物の活動状況に関する情報をもとに核種移行プロセスや核種移行パラメ
ータへの影響を把握する。
ホ)ガス発生及び移行の影響に関する研究
廃棄体や人工バリア材の劣化に伴い発生するガス発生とその移行挙動に関するデータの拡
充を行い、既存のガス移行モデルの妥当性を評価する。
ヘ)評価モデル及びコードの開発並びに性能評価
イ)∼ホ)で得られた知見やデータを評価シナリオの設定や性能評価モデルの開発に反映さ
せるとともに、モデルの妥当性について検証する。また、感度解析等の実施により、処分シ
ステムの性能を評価する。
【研究の達成目標(平成16年度)
】
イ)合理的なセメント変質モデルの整備
ロ)高pH地下水による人工バリア及び岩盤の長期変質挙動に係わるデータ追加/評価、硝酸イオンの変
遷/影響に係わるデータ追加
ハ)天然有機物及び人工有機物に係わるデータ追加/評価
ニ)地下深部/アルカリ環境での微生物の影響評価
ホ)金属からのガス発生速度に関するデータ取得継続及び人工バリア中のガスの移行評価
へ)TRU廃棄物処分システムの性能/安全解析
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ)
合理的なセメント変質モデルの整備
セメント系材料の変質のモデル化を行うために、セメント系材料中のトリチウムの実効拡散係数を間
隙率の関数として定式化した(図-1)。さらに、昨年度の成果で示した透水係数と間隙率の関係(Kozen
y-Carman式)について、既往の文献の低間隙率(0.2∼0.4)でのデータと比較した結果、低間隙率側の
透水係数についても安全側に評価できることを確認し、安全評価の観点から幅広い間隙率においてKozen
y-Carman式が適用できる可能性が示された。また、主なセメント水和物のC-S-Hゲルの溶解/沈澱モデル
に関し、汎用の地球化学計算コード(PHREEQC)での取り扱いに相応しいものとして、AtkinsonおよびRe
ardonが各々提案するモデルを選定した。前者のモデルが幅広いCa/Siモル比のC-S-Hゲルに適用できるこ
とが示され[1]、汎用的かつ簡便なセメント変質モデルの整備を行った。
−446−
JNC TN1400 2005-018
ロ) 高pH地下水による人工バリア及び岩盤の長期変質挙動に係わるデータ追加/評価、硝酸イオンの変
遷/影響に係わるデータ追加
セメントとベントナイトの相互作用を評価するために、ベントナイトの変質にともなう二次鉱物生成
について、既存の実験結果や天然事例に基づき、その生成のシナリオ及びモデルの作成を行った[2、3]。
さらにそれらの組み合わせを考慮した予察解析を実施し、二次鉱物の組み合わせによって間隙水組成が
大きく影響を受ける可能性があり、その重要性が示された[2]。また、セメントとベントナイトの相互作
用については、それらの化学的な変遷を考慮して処分システムの水理場の評価を行うために、ベントナ
イトの膨潤特性を表現可能な構造力学解析コード(MACBECE)の開発を行ない、解析に必要なセメント系
材料の影響を考慮したベントナイトの水理及び力学特性データの取得を継続した[4]。得られたベントナ
イトの水理データ(透水係数)について、有効モンモリトナイト間隙比及びベントナイトの陽イオン交
換容量のナトリウムイオンが占める割合(ESP, Exchangeable Sodium Percentage:交換性ナトリウム率)
の関数として表現した(図-2)。岩盤へのセメント系材料の影響については、セメント浸出液を用い花
崗岩及び砂岩におけるヨウ素の実効拡散係数を取得した。花崗岩の実効拡散係数は、セメント浸出液を
用いないものと比較して2桁以上低い値を示した。砂岩についても同様に1∼2桁の低下がみられた。砂
岩のみに対して、走査型電子顕微鏡にて表面の観察を行った結果、セメント浸出液の試験において繊維
状の二次鉱物の生成が確認されたことから、これが実効拡散係数の低下に影響を及ぼしているものと推
測された[5]。
昨年度開発した硝酸イオンの変遷モデルに、脱窒菌による窒素ガス発生反応を付加し、硝酸イオンの
処分施設内における時空間的変遷を評価した。その結果、アンモニアの最大値は0.8mol/lと評価された。
また硝酸イオンの存在は処分初期のおける金属からの水素ガス発生を低減させるが、脱窒菌が活性をも
つ期間には、窒素ガスの発生により、ガス移行解析にて別途仮定している金属からのガス発生速度と同
等程度の全ガス発生速度を示すことがわかった。
ハ)天然有機物及び人工有機物に係わるデータ追加/評価
天然有機物の試験として、フミン酸濃度及びpHをパラメータとしたNp(IV)の溶解度試験を継続した。
その結果、pH4.6∼8.3の範囲でフミン酸濃度(5∼50mg/L)の増加とともにNp(IV)濃度が増加した。Np(I
V)-フミン酸錯体について、フミン酸の官能基の種類とその解離挙動を反映するNICA-Donnanモデルを用
い、錯生成のしやすさを示す見かけの安定度定数を求めた。その値は、Np(V)に対する報告値に比べ有意
に大きいことから、Np(IV)の錯生成の能力はNp(V)のそれよりも大きいと考えられた。[6、 7]
TRU核種を含む放射性廃棄物の中には、ハル・エンドピースが含まれる。サイクル機構のハル・エンド
ピースにはウエス等の有機物が混入しており、 この有機物が分解して放射性核種と錯体を形成し、 核
種移行挙動に影響を与える可能性がある。とくにウエス等のセルロースから構成される有機物は、 処分
施設のアルカリ性環境において分解し、放射性核種と錯体を形成して溶解度を上昇させる作用の強いイ
ソサッカリン酸(以下、ISAという)を生成することが知られている。そこで処分施設の空隙水中のISA濃
度を算定し、影響を評価した[8、9]。その結果、ISAの影響により、アクチニド核種の溶解度が2桁程度
上昇する可能性が示唆された。
ニ)地下深部/アルカリ環境での微生物の影響評価
地下深部における微生物活動を整理し活動の可能性がある微生物を抽出した。さらに、抽出された微生
物の代謝システムに着目し、微生物活動が処分システム与える影響について検討を行った。その結果、地
下水の pH の低下、ベントナイト変質、コンクリート変質、金属腐食及びガス発生については、微生物活動
による影響は小さいと考えることができた。一方、キレート形成、コロイド形成及び放射性ガス状化学種
の生成については、その影響を評価するためには、今後さらに知見を蓄積していくことが不可欠であると
の結論を得た。
ホ)金属からのガス発生速度の取得継続及び人工バリア中のガスの移行評価
TRU廃棄物処分システムについて、連続媒体気液二相流によるガス移行解析を実施するために、これま
で調査・収集を行ったデータから解析パラメータの設定を行った。設定したパラメータを用いてTRU廃棄
物処分施設内のガスの移行解析を行った結果、ガスの発生および人工バリア中の移行によって、最大で
単位坑道あたり2.5m3の人工バリア内の間隙水が人工バリアより排出される結果となった。
−447−
JNC TN1400 2005-018
へ)TRU廃棄物処分システムの性能/安全解析
TRU廃棄物を①地下深部の地質媒体に収着しにくい放射性核種(例えば、I-129)を多量に含む廃棄物
(グループ1)、②発熱性を有する廃棄物、③可溶性の塩を多量に含み化学的な擾乱が生じる可能性のあ
る廃棄物(グループ3)、④その他の雑廃棄物(グループ4)に分類して、人工バリアおよび処分施設
レイアウトの設計を行った(図-3)。設定された処分システムについて、これまで整備してきた核種移
行解析コード(TIGER)[10]を用い、処分システムの長期的な化学環境場および水理場の変遷を考慮して
核種移行パラメータを設定し、処分システムの安全評価を実施した。その結果、線量を支配するのはグ
ループ1の廃棄物であり、I-129が支配核種であった。以下可溶性の塩を多量に含むグループ3、発熱性
を有するグループ2の順に線量への寄与が大きい結果となった(図-4)。線量の最大値は、処分後約1万
年後に2μSv/y程度であり、諸外国で提案されている安全基準を下回ることが示された。
さらに、上述した安全評価を補完するために、これまで実施してきた統計的手法に基づく感度解析手
法(包括的感度解析ツール)[11]を用いて、TRU廃棄物処分システムの線量評価解析を行い、入力パラメ
ータの相対的重要度の把握並びに安全性の成立条件の抽出を行った。核種のインベントリ、線量換算係
数、母岩の透水係数の相対的重要度が最も高く、それに次いで、母岩の水理特性、核種浸出期間、バリ
ア材料の長期変遷により影響を受ける収着係数やコロイドの影響等の重要度が高いことが示された[11]。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
イ)∼ヘ)の各研究を実施することにより、所期の成果が得られた。
(今後の予定)
イ)∼ヘ)の研究を平成 17 年度に継続して実施する。
【成果の利用実績及び活用見通し】
数年後に予想される TRU 廃棄物の処分事業に関連した法整備に活用されることが期待される。
【研究成果の発表状況】
1 ) 加 藤 大 生 、 本 田 明 「 PHREEQC で 取 り 扱 う た め の C-S-H ゲ ル の 熱 力 学 デ ー タ の 検 討 」、 JNC
TN8400 2004-015(2004).
2)Oda、C、 Honda、A and Savage、D. An Analysis Cement-Bentonite Interaction and Evolution of
Pore Water Chemistry 、 NUMO-TR-04-05、pp.A3-74-79(2004).
3)Savage、D、 Walker、C、 Takase、H、 Oda、C、 Arthur、R and Rochellem、C clays in natural and
engineered barriers for containment of radioactive waste confinement" 、 international
symposium(2005).
4)Ito、H、 Mihara、M and Ohi、T. Development of MACBECE: Mechanical Analysis system considering
Chemical transition of BEntonite-based and Cement-based materials 、 、 NUMO-TR-04-05、
pp.A3-80-83(2004).
5)加藤大生、三原守弘 他「セメント浸出液及び地下水中における花崗閃緑岩及び砂岩を対象としたヨウ
素の実効拡散係数及び分配係数の評価」
、JNC TN8400 2004-020(2004).
8)本田明、 三原守弘「ハル・エンドピース廃棄物に含まれる有機物の放射性物質の溶解度及び収着に及
ぼす影響について」
、 JNC TN8400 2004-011(2004).
9) 本田明「ハル・エンドピース廃棄物に含まれる有機物の放射性物質の溶解度及び収着に及ぼす影響に
ついて(Ⅱ)、 温度の影響」、 JNC TN8400 2004-019(2004).
10)三原守弘、大井貴夫「パラメータの時間的変化を考慮した核種移行解析コード(TIGER)の開発」、サ
イクル機構技報、No.22、pp.27-38(2004).
11)大井貴夫、曽根智之 他、
「包括的感度解析手法を用いた TRU 廃棄物処分の成立条件の抽出について」、
サイクル機構技報、No.25、pp.69-84(2004).
(発表予定)
6)飛塚早智子、飯島和毅、小原幸利「Np(IV)とフミン酸との錯形成に対する pH の影響」、日本原子力学
会北関東支部平成 17 年度若手研究者発表会(2005).
7)Tobituska S、 Iijima K and Kohara K: The effect of the Binding Sites of Humic Acid for the
Complexation with Np(IV) 、MRS2005 29th International Symposium on the Scientific Basis for
Nuclear Waste Management(2005).
−448−
JNC TN1400 2005-018
【国内外の研究動向】
[民間の研究の現状と動向]
原子力環境整備促進・資金管理センター及び電力中央研究所において、本研究課題における研究内容ロ)
に関係した研究 1)-7)が実施されている。さらに電力中央研究所等においては、本研究課題における研究
内容ヘ)に関係した研究 8)-12)も実施している。
(参考文献)
1) 村瀬拓也、塚本政樹 他、
「TRU 廃棄物処分における硝酸塩の影響(1)−試験計画と処分場の化
学環境評価−」
、日本原子力学会「2004 年秋の大会」、I25、p.675(2004).
2) 金子昌章、加藤博康 他、
「TRU 廃棄物処分における硝酸塩の影響(2)−セメント系材料への変
質の影響−」、日本原子力学会「2004 年秋の大会」
、I26、p.676(2004).
3) 中澤俊之、加藤博康 他、
「TRU 廃棄物処分における硝酸塩の影響(3)−ベントナイト系材料及
び岩盤の変質への影響−」
、日本原子力学会「2004 年秋の大会」、I27、p.677(2004)
4) 三倉通孝、立山信治 他、
「TRU 廃棄物処分における硝酸塩の影響(4)−セメント系材料及び岩
の分配係数への影響−」
、日本原子力学会「2004 年秋の大会」
、I28、p.678(2004).
5) 朝野英一、大和田仁 他、
「TRU 廃棄物廃棄体の開発(6)−高強度高緻密コンクリートを用いた
一体成型法による製作技術の検討」
、日本原子力学会「2004 年秋の大会」、I33、p.683(2004).
6) 朝野英一、大和田仁 他、
「TRU 廃棄物廃棄体の開発(7)−高強度高緻密コンクリートの水浸透
挙動評価手法の検討」、日本原子力学会「2004 年秋の大会」、I34、p.684(2004).
7) 朝野英一、大和田仁 他、「TRU 廃棄物廃棄体の開発(6)−チタン合金の長期健全性評価」、日
本原子力学会「2004 年秋の大会」、I35、p.685(2004).
8) 高瀬敏郎、塚本政樹 他、「TRU 廃棄物処分施設のベントナイト緩衝材設計の考え方と役割」、日
本原子力学会「2005 年春の年会」、M14、p.643(2005).
9) 宮本真哉、三倉通孝 他、「廃棄物処分施設におけるセメントバリア機能評価−(1)セメント試
料を用いた通水試験−」
、日本原子力学会「2005 年春の年会」
、M23、p.652(2005).
10) 中田耕太郎、菊池茂人 他、「廃棄物処分施設におけるセメントバリア機能評価−(2)長期通水
時セメントの透水挙動解析−」
、日本原子力学会「2005 年春の年会」、M24、p.653(2005).
11) 樋口真一、菊池茂人 他、「廃棄物処分施設におけるセメントバリア機能評価−(3)被ばく評価
−」、日本原子力学会「2005 年春の年会」
、M25、p.654(2005).
[海外の研究の現状と動向]
仏国、ベルギー及び英国の研究者によっても本研究課題における研究内容ロ)に関係した研究が実施され、
仏国で実施された放射性廃棄物処分における粘土材料に関する第2回の国際会議において報告されている
1-3)
。さらに、本研究課題の研究内容ニ)に関連し、スイスの地下研究施設を利用した研究も報告されてい
る 4-5)。
(参考文献)
1)Motelier,S., Devol-Brown I. et al., Evaluation of the diffusion processes of an alkaline plume
through the Toarcian clayey formation of the Tournemire experimental site(France), 2nd
International meeting Clays in Natural & Engineered Barriers for Radioactive Waste
Confinement(2005).
2)Hunter, F. M. I., Rodwell, W. R. et al., Advection of an alkaline fluid through Boom clay
cores: geochemical modelling of experimental data , 2nd International meeting Clays in Natural
& Engineered Barriers for Radioactive Waste Confinement(2005).
3)Devol-Brown, I., Tinseau, E et al., Interaction of Tourminre argillite with hyperalkaline
fluids: batch experiments performed with powdered and/or compact materials , 2nd International
meeting Clays in Natural & Engineered Barriers for Radioactive Waste Confinement(2005).
4)Wersin, P., De Cannierep et al., Results from an in-situ porewater chemistry experiment in
Opalinus clay: evidence of microbially-mediated anaerobic redox process, 2nd International
meeting Clays in Natural & Engineered Barriers for Radioactive Waste Confinement(2005).
5)Schwn, B., Stroes-Gascoyne, S. et al., Microbial investigations on unperturbed Opalinus clay
sample , 2nd International meeting Clays in Natural & Engineered Barriers for Radioactive Waste
Confinement(2005).
−449−
JNC TN1400 2005-018
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
■ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
【自由評価欄】
−450−
JNC TN1400 2005-018
1.0E-09
2
実効拡散係数,De(m /s)
1.0E-08
1.0E-10
De=2.27×10-9ε3.05
1.0E-11
セメントモルタル(安田ら,2002)
1.0E-12
浸出変質セメントモルタル(安田ら,2002)
1.0E-13
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
間隙率,ε(-)
図−1 トリチウムの実効拡散係数と間隙率との関係
1.E-07
カルシウム型
(ESP=0.12)
透水係数, K(m/sec)
1.E-08
ナトリウム型
(ESP=0.87)
1.E-09
1.E-10
1.E-11
1.E-12
▲ ナトリウム型ベントナイト
△ ケイ砂混合ナトリウム型ベントナイト
■ カルシウム型ベントナイト
□ ケイ砂混合カルシウム型ベントナイト
1.E-13
1.E-14
1.E-15
0
図−2
2
4
6
8
有効モンモリロナイト間隙比, es(-)
10
ベントナイトの有効モンモリロナイト間隙比と透水係数との関係
−451−
JNC TN1400 2005-018
吸着材
地下水の流れ
グループ1
ヨウ素吸着材
(固化体)
グループ1
ハル・エンドピース
(金属廃棄物)
グループ2
グループ2
グループ3
グループ4
焼却
可燃物,
スラッジ等
切断
圧縮
低レベル放射性廃液
雑廃棄物
(アスファルト固化体等の
可溶性の塩を含む廃棄物)(セメント固化体)
グループ4
グループ3
グループ3(硝酸塩を多量に含む廃棄体)からの
影響を他のグループに及ぼすことを避けた
処分場レイアウト
図−3 TRU 廃棄物の分類と処分場のレイアウト
1.E+00
1.E-01
わが国の自然放射能レベル(900∼1200μSv/y)
1.E-02
1.E-03
線量(Sv/y)
1.E-04
1.E-05
1.E-06
諸外国で提案されている安全基準(100∼300μSv/y)
グループ1
グループ3
グループ4
1.E-07
1.E-08
グループ2
1.E-09
1.E-10
1.E-11
1.E-12
1.E+00
1.E+01
1.E+02
1.E+03 1.E+04
時間(y)
1.E+05
1.E+06
1.E+07
図−4 TRU 廃棄物処分の安全評価解析結果
(グループ1:ヨウ素吸着材、グループ2:ハル・エンドピース、
グループ3:低レベル放射性廃液固化体、グループ3:その他雑廃棄物)
−452−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
◎5−2(廃棄2−5−2)
【研究分野】
地層処分
【研究課題名(Title)】
ヨウ素の高度保持廃棄体・人工バリア材に関する研究
(Research on Advanced Waste Form and Engineered barrier for Iodine)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名、所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏名]塩月 正雄(しおつき まさお)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 処分材料研究グループ
[連絡先]〒319-1194 茨城県那珂郡東海村大字村松 4-33、電話:029-282-1111 FAX:029-282-9328
(Name) Masao shiotsuki
(Title of Function)
Materials Research Group, Waste Isolation Research Division,
Waste Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
(Address, Phone and Fax) 4-33 Muramatsu,Tokai-mura,Naka-gun,Ibaraki,319-1194 Japan,
Tel:+81-29-282-1111,Fax:+81-29-282-9328
[email protected]
(E-mail)
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏名]福本 雅弘(ふくもと まさひろ)、本田 明(ほんだ あきら)、須黒 寿康(すぐろ とし
やす)
[所属]東海事業所 環境保全・研究開発センター 処分研究部 処分材料研究グループ
(Name)
Masahiro FUKUMOTO, Akira HONDA, Toshiyasu SUGURO
(Title of Function) Materials Research Group, Waste Isolation Research Division, Waste
Management and Fuel Cycle Research Center, Tokai Works
【研究期間】
平成13年度 ∼ 平成17年度
【関連する共同研究、実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]なし
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
地層処分基盤研究施設(エントリー)
【研究概要】
[研究の経緯] ヨウ素-129 は、低レベル放射性廃棄物処分時の性能評価上重要な放射性核種である
ことが明らかとなり、その減容・安定化に有効な廃棄体化技術が求められている。
[研究目的]
ヨウ素の移行抑制機能に優れた廃棄体、人工バリア候補材について、ヨウ素の浸出率
や収着挙動等の移行抑制に係るデータを取得し、処分システムの信頼性向上に資する。
[研究内容]
銅マトリックス固化体やヨウ素を含有させた鉱物等について、処分環境を模擬した条
件下における材料の化学的安定性やヨウ素の浸出率、収着係数、溶解度等のデータを取
得し、得られたデータをもとに処分システム構成要素としての適用性を検討する。
−453−
JNC TN1400 2005-018
【当初の達成目標(平成16年度)
】
銅マトリックス固化体及びヨウ素の拡散係数が小さい粘土鉱物のヨウ素の移行抑制に係るデータを
取得する。
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
コールドの模擬廃ヨウ素吸着剤と銅紛を混合し、HP(ホットプレス)法により作製した銅マ
トリックス固化体について、深部地下環境を想定した還元性の条件下(極低酸素の雰囲気下)にお
ける海水系模擬地下水(ASTM D 1141 準拠)中での分極抵抗法を用いた腐食試験を実施した。
その結果を図1に示す。銅マトリックス固化体の電気化学的な手法(分極抵抗法)で計算された腐食速
度は、1440 時間後で 0.002∼0.007mm/y を示した。また、浸漬試験の結果から求めた腐食速度は 1440 時
間後で 0.0001mm/y であった。
分極曲線(図2に示す)から銅マトリックス固化体は、降水系地下水と同様に自然電位近傍では不働態
化していると考えられる。また、1440 時間浸漬試験後の XPS 分析結果から銅マトリックス固化体の最
表面は低酸素雰囲気中で生成する Cu2O が主体と推定された。深さ方向分析から、この酸化皮膜厚は
SiO2 換算で 6.4nm(64Å)であった。
ヨウ素の見かけの拡散係数、実効拡散係数の小さい粘土鉱物(カオリナイト,パイロフィライト,Na-モンモリロナイト,Ca-モン
モリロナイト等)について検討したが、還元性条件で安定かつ有効であり、ベントナイト以上の遅延効果を持
つものは確認できなかった。また、量子化学計算により演繹的に効果的な吸着遅延効果を有する物質を
探索する方法についても検討したが、実際の物質をそのまま計算することは計算機の能力上不可能であ
り、現状の技術レベルでは本目的に利用することは困難であることがわかった。ただし、クラスター法
を用いた小さな計算体系での計算方法を開発して行けば、手法自体の将来性はあるものと考えられた。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
本研究を実施することにより、所期の成果が得られた。
(今後の予定)
ホットプレス法を用いた固化処理プロセスを検討し、処理技術としての成立性を評価する。また、銅
マトリックス固化体からのヨウ素放出速度を銅マトリックス部の腐食速度と調和的であると仮定して
評価し、処分システム構成要素としての適用性を検討する。
【成果の利用実績及び活用見通し】
商業再処理施設における適用を目指す。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
(発表予定)
なし
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[国の研究の現状と動向]
・原環センター 我が国にて開発中の技術を調査し、客観的な相互評価を行うための研究、開発を
実施している。
[民間の研究の現状と動向]
・日立製作所 AgI ガラスによるヨウ素の固定化が研究されている。
・神戸製鋼 HIP 岩石固化体によるヨウ素の固定化が研究されている。
・東芝 セメント固化によるヨウ素の固定化が研究されている。
・三菱重工業 アパタイト固化によるヨウ素の固定化が研究されている。
・日揮 BPI ガラス固化によるヨウ素の固定化が研究されている。
・三菱マテリアル ソーダライト固化によるヨウ素の固定化が研究されている。
・大阪大学 鉛アパタイト固化によるヨウ素の固定化が研究されている。
−454−
JNC TN1400 2005-018
(参考文献)
・原子力環境整備促進・資金管理センター;平成 15 年度 地層処分技術調査等 TRU 廃棄物関連処分
技術調査ヨウ素固体化技術調査報告書(2004).
[海外の研究の現状と動向]
なし
(参考文献)
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
□ 安全性評価の判断材料として活用できる。
■ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
□ その他(
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
)
【自由評価欄】
−455−
JNC TN1400 2005-018
銅マトリックス固化体,ベントナイト;有、ヨウ素;無、鉄粉;無
1.E+00
銅マトリックス固化体,ベントナイト;無、ヨウ素;無、鉄粉;無
銅マトリックス固化体,ベントナイト;無、ヨウ素;無、鉄粉;無(交流インピーダンス)
銅マトリックス固化体,ベントナイト;無、ヨウ素;無、鉄粉;有
銅マトリックス固化体,ベントナイト;有、ヨウ素;無、鉄粉;無 Cu溶出量
1.E-01
銅マトリックス固化体,ベントナイト;無、ヨウ素;無、鉄粉;無 Cu溶出量
銅マトリックス固化体,ベントナイト;無、ヨウ素;無、鉄粉;無 Cu溶出量+XPS
銅マトリックス固化体,ベントナイト;無、ヨウ素;有、鉄粉;無 Cu溶出量
腐食速度(mm/y)
銅マトリックス固化体,ベントナイト;無、ヨウ素;無、鉄粉;有 Cu溶出量
銅マトリックス固化体,ベントナイト;無、ヨウ素;無、鉄粉;有 Cu溶出量+XPS
1.E-02
銅マトリックス固化体,ベントナイト;無、ヨウ素;無、鉄粉;無,海水系
銅マトリックス固化体,ベントナイト;無、ヨウ素;無、鉄粉;無,海水系(交流インピーダンス)
銅マトリックス固化体,ベントナイト;無、ヨウ素;無、鉄粉;無,海水系,Cu溶出量
銅マトリックス固化体,ベントナイト;無、ヨウ素;無、鉄粉;無,海水系,Cu溶出量+XPS
1.E-03
1.E-04
1.E-05
0
500
1000
1500
2000
2500
時間(h)
3000
3500
4000
4500
図1 各試験における銅マトリックス固化体の腐食速度の経時変化
*銅マトリックス固化体の銅の腐食速度に (1)ベントナイト、
(2)溶液中のヨウ素、(3)溶液中の鉄粉の存在の影響を評価
−456−
5000
JNC TN1400 2005-018
1.E+03
1.E+02
海水系模擬地下水
50℃
N2ガス吹き込み
20mV/min
720hr
1440hr
電流密度(mA/cm2)
1.E+01
1.E+00
1.E-01
1.E-02
1.E-03
1.E-04
-500
-250
0
250
500
電位(mV) vs Ag/AgCl
750
1000
図2 銅マトリックス固化体のアノード分極曲線
−457−
JNC TN1400 2005-018
安全研究成果調査票(平成16年度)
【分類番号】
6−1(社内研究)
【研究分野】
クリアランスレベル
【研究課題名(Title)】
ウ ラ ン 濃縮施設における 金属廃棄物除染後の放射性物質濃度検認技術の研究
(Study on the research of the radioactive substance concentration validation technology after
the metal waste decontamination at the uranium enrichment facilities.)
【実施機関(Organization)】
核燃料サイクル開発機構(Japan Nuclear Cycle Development Institute)
【研究者名,所属及び連絡先(Name, Title of Function, Address and so on)】
[氏 名]松原達郎(ま つばら たつお)
[所 属]人形峠環境技術セン タ ー 環境保全技術開発部 遠心機処理技術課
[連絡先]〒708-0698 岡山県苫田郡鏡野町上斎原 1550 電話: 0868-44-2211 Fax: 0868-44-2566
(Name) t atsuo MATSUBARA
(Title of Function) Centrifuge Decommissioning Section, Environmental Research and Development
Division, Ningyo-toge Environmental Engineering Center
(Address, Phone and Fax) 1550 Kamisaibara, Kagamino-cho,Tomata-gun, Okayama 708-0698 Japan
(E-mail) [email protected]
【担当研究者名及び所属 (Name, Title of Function)】
[氏 名]美田豊(みた ゆたか)
[所 属]人形峠環境技術セン タ ー 環境保全技術開発部 遠心機処理技術課
(Name) yutaka MITA
(Title of Function) Centrifuge Decommissioning Section, Environmental Research and Development
Division, Ningyo-toge Environmental Engineering Center
【研究期間】
平成 15 年度 ∼
平成 17 年度
【関連する共同研究,実証試験等】
[共同研究名(実施機関)
]使用済み遠心分離機処理技術に係る試験研究(電力 11 社,日本原燃,サイ
クル機構)
[実証試験名(実施機関)
]なし
[委託研究名(実施機関)
]なし
【使用主要施設】
人形峠環境技術センター 濃縮工学施設 遠心機処理設備
【研究概要】
[研究の経緯]
人形峠環境技術センターにおいては,ウラン濃縮パイロットプラント及び原型プラント等の解体
準備を進めているが,その特徴的な処理対象である遠心分離機は,汚染がウランガスとの接触部の
部材表面に限られており,その汚染表面を化学的方法等により除染するための試験研究(遠心機処
理技術開発)を行っている。
この処理の結果,非汚染材に近い除染済金属が大量に発生するが,この除染後の汚染レベルをク
リアランスレベル以下に押さえることで,放射性廃棄物量を大幅に削減するとともに,除染済金属
−459−
JNC TN1400 2005-018
類の有効利用を図ることが,施設廃止措置を合理的に実行する上で重要となっている。このために
は,除染後の遠心分離機部品が,想定されるクリアランスレベルを満足していることを確認する必
要があり,迅速かつ正確で客観性の有る放射性物質濃度検認法の確立が課題となっている。
なお,ウラン施設での検認の対象は,原子炉・再処理や加速器(人工放射性核種)と異なり,天
然放射性核種である。従って,その検認技術は,単なる放射性物質の有無の検認ではなく,ある程
度のバックグラウンドを考慮したものとなる。
[研究目的]
除染後の遠心分離機の金属部材を 対象に,想定さ れる ク リ ア ラ ン ス レ ベルで の放射性物質
濃度の検認技術を 開発し ,放射性廃棄物の低減化を 図る と と も に ,核燃料施設の廃止・解体
に係る 安全評価に資す る 。
[研究内容]
イ.放射性物質測定方法の調査,確認
除染後の遠心分離機部品の表面密度及び重量濃度測定を対象に,適用可能な測定技術の調査及び
実施可能な測定技術について測定試験を実施し,検出レベル及び測定時間等の確認を行う。
ロ.検認システムの開発
上述イ.項の検討結果を基に検認システムの開発を行う。
【当初の達成目標(平成16年度)
】
イ .放射性物質測定方法の調査,確認
ロ .検認シ ス テ ム の開発
【研究実施内容及び成果(平成16年度)】
イ.放射性物質測定方法の調査,確認
放射線の種類は,対象とする核種がウランであることからα放射線とした。
諸外国でクリアランスレベルが制度化されているドイツ,イギリス,ベルギー,スウェーデン及びフィ
ンランドのうち,重量濃度の規制値があるスウェーデン及びフィンランドのクリアランスレベルが最も小
さく,0.1Bq/g であった。このため,この値 0.1Bq/g を想定クリアランスレベルとし,当面の測定限界目
標値は,この値から 1 桁安全裕度を考慮した 0.01Bq/g に設定することとした。
使用済み遠心分離機は,超音波を印加した希硫酸に浸漬させて汚染層及び母材層を化学的に溶解するこ
とにより除染している。従って,重量濃度の測定方法は,除染済金属表層のウラン残留領域を化学的に溶
解させてウラン量又はα放射能を測定することが考えられ,この二方式について測定試験を行い,検出レ
ベルを確認した。
ウラン量の測定による方式については,対象物の表層を溶かした溶液を対象として,誘導結合プラズマ
質量分析装置(以下,ICP-MS)により,標準試料を用いた感度確認試験を実施した。図−1にバックグラ
ンド,及び図−2に標準試料(1×10-9gU/ml)の測定スペクトルを示す。この結果から求めた,ウラン量の
検出限界値等は表−1に示すとおり,定量下限値としては,検出限界値からの裕度として1桁とフラスコ
容量(100ml)による希釈率から2桁をそれぞれ合わせて3桁高いところを考慮しても 10-6Bq まで検出でき
る能力があることから高い感度を有していることが確認され,小さな試料でも 0.01Bq/g を検認できるもの
と考えられる。また,測定スペクトルから,U234,U235,U238 が分離できており,ウラン同位対比が測定で
きるため,ウラン濃度(gU/g)から重量濃度(Bq/g)に換算する比放射能も求めることが可能である。
除染後の重量濃度の想定クリアランスレベルに対する安全裕度については,当初単に 1 桁(1/10)に設定
したが,供試体からランダムサンプリングした複数の試料をこの方法により分析しバラツキを求め,想定
クリアランスレベル 0.1Bq/g に対して安全裕度 0.05Bq/g を導出した。
α放射能の測定による方式は,対象物の表層を溶かした溶液からイオン交換樹脂を用いて分離抽出した
ウランを電着させて,α放射能分析装置(以下,αSM)により測定する方法で,イオン交換樹脂の吸着効率
試験及びαSM の計数効率試験を実施した。対象物の溶解は,ウラン電着時に硫酸イオンを必要とすること
から硫酸を用いた。ウランの分離抽出は,鉄等のマトリックス元素が電着時に妨害となることから,硫酸
濃度をパラメータにした陰イオン交換樹脂による吸着試験により確認した結果,図―3に示すとおり,
0.7mol/l が鉄とウランを分離できる最適値であることが確認された。対象物の溶解から電着までの一連の
作業におけるウランの回収率を ICP-MS により求めた結果,表―2に示すとおり約 10%で,数%のバラツキ
−460−
JNC TN1400 2005-018
が見られ,ICP-MS と比べ大きな試料を必要とする。α放射能を測定するαSM のα放射能の検出限界と測定
時間の関係を図−4に示す。
ロ.検認システムの開発
・検認手法の検討,絞込み
表面密度測定は,シンチレーション式及びグリッドイオンチャンバー式(以下,GIC)について調査等を
実施した。遠心機の部品のうち,同一な円筒状の単純形状のものは,測定時間が短くて済む GIC が表面密
度測定法として期待される。シンチレーション式による測定法は,測定面積が約 100cm2 と GIC に比べ小さ
いことから,GIC の測定で設定した目標レベルに対して局部的な残留が予測される場合の詳細測定に活用
できるものと考えられる。また,ネジ穴等の複雑形状部品の表面密度の直接測定は,現状の測定技術では
切断等の前処理に膨大な時間を費やすことが予測されるため,重量濃度測定による代替測定によらざるを
得ないものと考える。イ.で述べたように重量濃度測定は,ICP-MS とα放射能による方法について調査等
を実施した。ICP-MS による方法は,高い感度を有しているとともに,α放射能による方法より操作が単純
であることから測定時間も短いため,重量濃度測定法として期待される。
【研究の達成状況(平成16年度)
】
放射性物質測定方法の調査,確認を行い,目標レベルに対して高い検出性能を有することが確認でき,
表面密度測定と併せて概念システムの開発のための手法を絞込めたことにより,所期の成果が得られた。
(今後の予定)
基本計画書に沿って実施する。
【成果の利用実績及び活用見通し】
ウラン濃縮パイロットプラント遠心分離機の基礎試験等における除染効果の確認方法として ICP-MS に
よる重量濃度を測定している。
【研究成果の発表状況(平成16年度)
】
なし。
(発表予定)
なし。
【国内外の研究動向(平成16年度)】
[民間の研究の現状と動向]
なし。
(参考文献)
なし
[海外の研究の現状と動向]
イギリスのカーペンハースト(ガス拡散法)のウラン濃縮施設では,直接又は溶融後の表面密度によ
るクリアランス検認の実績があるが,ウラン濃縮施設(遠心法)に対する研究等の報告はなかった。
(参考文献)
なし。
【研究評価(自己評価)
】
○成果の達成レベル
[チェック欄]
□ 予定以上の成果が得られた。
■ 予定どおりの成果が得られた。
□ 予定どおりの成果が得られなかった。
□ その他
[説明欄]
−461−
JNC TN1400 2005-018
○成果活用方策
[チェック欄]
□ 指針・基準類への整備に反映できる。
■ 安全性評価の判断材料として活用できる。
□ 安全性の向上に反映できる。
□ 原子力防災対策に反映できる。
■ その他(使用済み遠心分離機の処理システムへの適用又は活用
[説明欄]
○計画の進捗状況
[チェック欄]
■ 計画どおり進捗した。
□ 計画どおり進捗しなかった。
(その理由:
□ 計画以上に進捗した。
[説明欄]
)
)
【自由評価欄】
−462−
JNC TN1400 2005-018
表−1 ICP-MS の検出限界値
B.G
核種
234
U
U
238
U
平均値
(cps)
100
1,100
203,774
235
検出限界値
標準偏差
(cps)
10
443
11,805
(gU/ml)
(Bq/ml)
4.1E-16
1.8E-14
4.9E-13
9.4E-08
1.5E-09
6.1E-09
標準試料強度
(1×10-9gU/ml)
1,000
210,323
72,451,841
算出式
検出限界 = 3 × B.G標準偏差/U(1×10-9gU/ml)の強度 (cps)
注) 234UのB.Gは、未検出なのでダミーデータにより算定した。
234U及び235UのU(1×10-9gU/ml)の強度は、標準試料が劣化ウランで1×10-9gU/ml
の強度がないので238Uの強度で算定した。
2.28×108Bq/234Ug,8.00×104Bq/235Ug,1.24×104Bq/238Ugで算定した。
サンプル表面積
サンプル名
2
(cm )
No1
47.5
No2
186.7
表−2 α放射能による測定の回収率
溶液量 希釈倍率 分析結果
溶液名
(ml)
(倍)
(gU/ml)
TP溶解液
100
50 1.70E-10
溶離液
33.5
50 1.02E-10
電着後
33.5
50 4.08E-11
TP溶解液
100
100 2.34E-10
溶離液
74.7
100 7.08E-11
電着後
74.7
100 4.12E-11
−463−
ウラン濃度
(gU/ml)
8.52E-09
5.10E-09
2.04E-09
2.34E-08
7.08E-09
4.12E-09
ウラン量
回収率
(gU)
(%)
8.52E-07
12.0
1.71E-07
6.84E-08
2.34E-06
9.5
5.29E-07
3.08E-07
JNC TN1400 2005-018
図−1 ICP-MS のバックグランド測定スペクトル
図−2 ICP-MS の標準試料(1×10-9gU/ml)の測定スペクトル
−464−
JNC TN1400 2005-018
100
U
80
吸着率 (%)
Fe
60
40
20
0
1E-01
1E+00
硫酸濃度 (mol/l)
1E+01
図−3 ウランの分離抽出試験結果
全α放射能 (Bq)
1E+00
1E-01
1E-02
0
10
20
30
40
測定時間 (min)
図−4 αSM の測定時間と検出限界放射能
−465−
50
60
70
Fly UP