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公共建築物設計の考え方
ユニバーサルデザインに基づく 公共建築物設計の考え方 (平成13年度) 帯 広 市 UD推進検討委員会 (暮らしやすいまちづくり検討部会) は じ め に 帯広市では、障害者はもとより年齢、性別、国籍など人々が持つ 様々な特性や違いを越えて、はじめからできるだけすべての人に配 慮するという「ユニバーサルデザイン」の考えをまちづくりの様々 な分野に取りいれてきています。 我が国は、今後、本格的な高齢社会の到来が予想されております が、私たちが人生のどの段階においても自立した生活をおくってい くためには、誰もが安心して活動できる環境を整備することが必要 と考えています。 帯広市では、これまで住宅関係をはじめ、道路、公園などの居住 環境、公共サインなどについて、ユニバーサルデザインの考え方を 指針として策定するとともに、整備をすすめてきております。 この一環として、多くの市民が利用する公共建築物を誰もが使いや すい施設として整備するため、「ユニバーサルデザインに基づく公 共建築物設計の考え方」をまとめました。 ここに示した考え方は、公共建築物に幅広く適用できるように考 えられておりますが、それぞれの施設が持つ様々な用途や機能に合 わせて応用していくことが大切と考えています。 ユニバーサルデザインによるまちづくりをすすめるには、市民一 人ひとりが相互に認めあい、尊重しあう思いやりの「こころ」が最 も大切なことです。 どのような人とも同じ気持ちで付き合い、相手のことを思いやる 気持ちでまちづくりをすすめていけば、自ずとこのユニバーサルデ ザインという言葉がなくなり、それが当たり前の社会になっていく ものと確信しています。 平成14年 3月 帯広市長 砂 川 敏 文 目 次 1 配慮すべき基本的な考え方と対象となる公共建築物 1 2 擬似体験とワークショップ(庁舎編) 3 3 擬似体験とワークショップ(公園編) 4 4 わかりやすいサイン計画 5 5 道路から玄関に至るアプローチ(段差解消、危険回避など) 6 6 玄関出入り口 8 7 玄関 9 8 館内 10 9 受付などの窓口(カウンター、高さなど) 11 10 廊下(幅、手摺など) 12 11 階段 13 12 トイレ(一般トイレ、広めのトイレ) 16 13 ファミリートイレ 19 14 エレベーター(位置、大きさ、操作盤など) 22 15 給湯室 24 16 スイッチ・コンセント 25 17 公衆電話台 26 18 自動販売機、券売機 27 19 机・椅子 29 20 託児室 30 21 水飲み 31 22 事務室 32 23 駐車場 33 24 シャワー室・更衣室 34 25 観覧所(車椅子スペース、アプローチなど) 35 26 安全な避難 36 1 配慮すべき基本的な考え方と対象となる公共建築 公共建築物を利用する方は、子どもからお年寄りまで、健常者はもとより車椅子利 用者や手足の不自由な方、視覚・聴覚障害者、乳幼児連れの方、妊産婦、荷物を両手 に持っている方など、様々な身体的特性や状態が想定されることから、ユニバーサル デザインの基本である、はじめからできるだけすべての人にとって利用しやすい施設 づくりに配慮する必要があります。 特に、積雪寒冷地である本市の特性や雨の日、風の強い日など天候も考慮する必要 があります。 こうしたことを踏まえながら、本書では公共建築物を設計するにあたり配慮しなけ ればならない基本的な考え方を整理しました。 対象となる公共建築物は、学校、公営住宅、病院、庁舎、スポーツ施設、社会教育 施設など、すべての公共建築物とします。 企画・設計 ① 公共建築物の設計にあたっては、その施設がどのような人を対象にどんなサー ビスを提供するのか、目的に沿って進めることが大切です。 基本は、「誰もが同じ場所で同じことを同じようにできる」ようにすることで す。 ② すべてをハードウエアで行うことは、不可能であり不経済です。はじめにソフ トウエアがあり、それに相応し、ハードウエアを整備するという考え方が大切で す。 ③ 管理体制や職員配置などは、それぞれの施設で異なります。例えば、受付専門 の職員を配置できる場合とできない場合では当然、来客者の案内方法が異なって きます。 ④ 公共建築物は、規模や収容人員、利用目的など、その内容は様々です。従って、 施設設計にあたっては、すべて一律に考えるのではなく、施設の目的や内容に合 わせ、適宜工夫することが大切です。 ⑤ ユニバーサルデザインは、新しい概念であり、常に利用者や施設管理者の意見 を聞き、進化させていくことが大切です。 1 施設整備 ① 車椅子使用者が回転できる広さを確保します。 (車椅子の回転スペース) ② 出入り口戸は、車椅子使用者の利用に配慮して有効幅90cm以上とし、取手 の長さや高さ、開く方向など、利用しやすいように考えます。また、腕力が弱い 方にとっては小さな力でも開く出入り口戸が有効です。 (出入り口戸の仕様) ③ 階段やスロープ、廊下などには、支えとなる手摺等の設置が安全性を高めます。 (手摺の設置) ④ 段差や溝が支障となるのは、特に車椅子使用者や足の不自由な方などです。 また、車椅子での通行やパンプスを履いた方に支障となる幅の広い溝は避けな ければなりません。 (段差解消及び溝の対応) ⑤ 視覚障害者にとっては、点字とともに音声による誘導が有効と考えられます。 また、聴覚障害者には文字や絵文字、電光掲示などが有効です。 点字ブロックについては、車椅子使用者にとって時に支障となる場合もあり、 敷設位置について総合的に判断する必要があります。 (視覚・聴覚障害者への対応) ⑥ スロープは冬の凍結によって危険な場合があるので工夫が必要になります。 (スロープの検討) ⑦ 建物内の設備や備品についても、すべての方が利用することを想定し、極力操 作が容易なものに配慮します。 (操作が容易な設備) ⑧ 荷物や乳幼児連れの時などは、より困難な場合が想定されます。また、乳幼児 は「オムツ替え」や「授乳」などのための設備が必要になります。 (状態を想定した設備) ⑨ すべての歩行者にとって空中突出物があるというのは非常に危険であり、思わ ぬ事故の原因にもなります。また、通路に物などが置いてあったりすると利用す るすべての人にとって、邪魔になるだけでなく、避難時の支障にもなります。 (危険回避・安全避難) 2 2 擬似体験とワークショップ(庁舎編) ① 普段利用している庁舎を対象に、アイマスクや車椅子を使い障害の擬似 体験を通して、ユニバーサルデザインの視点から再検討を行う。 階段の昇り降り ラックの高さ エレベーターの乗り場ボタンの高さ ② トイレ ワークショップを行い、障害者の立場、市民の立場にたって、庁舎の 改 善点を話し合う。 ワークショップでの意見集約 3 3 擬似体験とワークショップ(公園編) ① 中央公園、緑が丘公園の2カ所について、擬似体験を実施する。 水飲み 園路の段差 グレーチング 園路の勾配 ② ワークショップを行い、障害者の立場にたって、良いところ、悪いとこ ろについて意見を出し合い、誰もが使いやすい施設を目指す。 ワークショップを開催 4 4 わかりやすいサイン計画 ① サインは、子どもや高齢者などが認識できる大きめの文字やマークを使 用するとともに、色の対比などに配慮し、分かりやすい位置に設置する。 色の対比に考慮した大きめのサイン (市 庁 舎) ② 公共建築物を快適に利用していただくためには、施設や設備を理解して いただくことが大切である。このため、サインは重要な伝達手段となる。 ③ 文字の分かりやすさは、青地白文字、黒地白文字が読みやすい。 ④ 文字の大きさの目安は、以下の基準を参考にする。 視認距離 20 m 10 m 4∼5m 1∼2m 文字寸法 5 8 4 2 0.9 cm以上 cm以上 cm以上 cm以上 5 道路から玄関に至るアプローチ (段差解消、危険回避など) ① 歩道と敷地内の段差は原則なくす。 ② 歩道から玄関までをすりつける場合、凍結等を考慮し、原則として2% 以下の勾配ですりつけるとともに滑りにくい材質、加工を施す。 歩道から玄関までをすりつける (とかちプラザ) ③ 道路及び敷地等の関係から、すりつけることが無理な場合、主要な入り 口については、車椅子使用者が安全にすれ違え、行き来できるように横勾 配のない180cm以上の有効幅を確保したスロープとし、原則として勾 配は4%以下とする。(両端に高さ5cm以上の立上がりを設ける) ④ スロープの起点(歩道側)・終点(玄関前)には飛び出し防止や停止の ため、150cm以上の緩衝部分を設ける。 ⑤ 点字ブロックなどによる誘導方法を取る。 ⑥ スロープには、身長差に配慮して60cm程度と80cm程度の2段の 手摺を設けるとともに、必要に応じて点字による誘導方法を設ける。 6 ⑦ 手摺は、木製または樹脂製など、冬期間でも触感の柔らかい材料を使用 する。 ⑧ 手摺端部は、袖口が引っかかったり、衝突時のケガ防止のため下方また は壁面側に曲げる。 ⑨ 玄関入口前には、2m程度の庇などを設ける。 緩衝部分に設けた庇 (釧路地方法務局帯広支局) ⑩ 必要に応じて出入り口前に雨水などの浸入を防ぐ排水蓋などを設置する 場合には、排水蓋の幅に考慮するとともに、滑りにくい材質とし、網目は 9mm以下とする。 玄関前に設けた排水蓋 (UDモデルハウス) 7 6 玄関出入り口 ① 主要な出入り口は原則として、自動引き分け戸とし、有効幅120cm 以上とする。その他の出入り口の有効幅は90cm以上とする。 自動引き分け戸とした主要玄関 (とかちプラザ) ② 自動引き分け戸以外を設置する場合は、棒状取手引き戸(小さな子ども でも容易に開け閉めできるよう地上50cm程度までのもの)とする。 ③ また、戸は軽くし、敷居等の段差を設けない。 ④ 大ガラスの場合は、衝突防止シールや枠などを設置する。(弱視者など の視覚障害者の衝突防止などの危険回避) 衝突防止のための中間枠を設ける (JR帯広駅) 8 7 玄 関 ① 靴を履き替える場合は、玄関と廊下の段差をなくすようにする。さらに 靴を履き替える所には腰掛け等を設置する。 段差解消、腰掛けを設ける (UDモデルハウス) ② 玄関部に受付カウンターを設ける場合は、高さの低いものと高いもの2 種類を設置し、車椅子使用者や子どもたちが利用しやすいものとする。 (天板高さ70cm程度と90cm程度、奥行きは45cm程度) ③ 受付カウンターは、来客者の利用しやすい場所に配慮し、原則として玄 関と廊下の両方から利用できるものを設置する。 靴を履き替える施設の受付カウンター 9 8 館 内 ① 館内は、段差をなくす。 ② 各室出入り口戸は、軽量化を図り、特定利用者以外の出入り口の有効幅 は90cm以上とする。また、各室出入り口戸でドアの場合はレバーハン ドルとし、引き戸の場合は棒状取手とする。 レバーハンドル (とかちプラザ) 棒状の取手 (帯広の森スポーツセンター) ③ 廊下有効幅が、180cm以上確保できない場所に自動販売機などの障 害物を設置しない。 廊下を狭める下駄箱 10 9 受付などの窓口 (カウンター、高さなど) ① 受付カウンターは、高低2種類を設置する。(低カウンターは天板で70 cm程度とし、高カウンターは天板で90cmとする。また、車椅子使用 者が利用しやすいように45cm程度の奥行きを確保する。) 高さの違う受付カウンター (総合福祉センター) 11 10 廊 下 ( 幅、手摺など) ① 廊下は原則として、有効幅180cm以上を確保する。(ただし、手摺は 除く。) ② 滑りにくい材質を使う。 ③ 手摺は、木製または樹脂製などとし、両側に連続して設置する。 廊下の両側に設けた手摺 (十勝支庁) 12 11 階 段 ① 踏み面、蹴込み板、ノンスリップの色は、高齢者や弱視者が見やすい色 や明度の差の大きいものを使用する。 踏み面、蹴込み板の色を変えた階段 (UDモデルハウス) ② 主要な階段については、蹴上げ寸法は16cm以下とし、踏み面寸法は 30cm以上とする。また、階段の有効幅については150cm以上とす る。(ただし、手摺は除く。) ③ 階段に接する廊下の上がり口・下がり口部分及び踊り場部分の起点・終 点から30cm程度離して、点字ブロックを設置する。 階段の上がり口起点に設けた点字ブロック (総合福祉センター) 13 ④ 両側に高さ60cm程度、80cm程度の手摺を設置することとし、端 部は袖が引っかからないように、下方または壁面側に曲げる。 両側に2段手摺を設け端部を 下方に曲げる (総合福祉センター) ⑤ 階段始・終点の手が触れる場所の手摺に階数及び始・終点を示す案内点 字板を設置する。 階段手摺に設けた案内点字板 (総合福祉センター) ⑥ 手摺端部は原則として、水平方向に45cm以上、あるいは水平部分を 30cm以上、設ける。 14 ⑦ 素材は、木製または樹脂製などとし、握りやすい形状のものとする。 ⑧ 幅が3m以上ある階段は、中間にも手摺を設置する。 階段の中間に手摺を設ける (JR帯広駅) 15 12 トイレ (一般のトイレ、広めのトイレ) ① 男女トイレに車椅子使用者が利用できる広めのトイレブースを1カ所設 けるようにする。また、サインで広めのトイレがあることを表示する。 (幅130cm以上×奥行160cm以上、または幅120cm以上× 奥行180cm以上とする。出入り口の有効幅は90cm以上とする。) 広めのトイレブース(幅160cm以上×奥行130cm以上) 広めのトイレブース(幅120cm以上×奥行180cm以上) 注) 広めのトイレブースとは、男女トイレ内に設ける一般トイレより広い トイレブースのことです。 16 ② 大便器は洋式便器とし、1カ所は 前面手摺付きの和式便器とする。 ③ 広めのトイレブースの出入り口は、 片引き戸とし棒状取手とする。 棒状取手の片引き戸 (光南小学校) ④ 広めのトイレブースの大便器には、 両側に手摺を設置する。 ⑤ 大便器内には、荷物が置ける棚を 設置する。 両側に手摺及び棚を設ける (光南小学校) ⑥ 小便器には、最低1カ所に門構え 型の手摺を設置する。 ⑦ 小便器の前は、物が置けるように する。 ⑧ 広めのトイレブースには、 ベビーチェアを設置する。 手摺と物が置けるライニング (帯広の森スポーツセンター) ベビーチェア (市 17 庁 舎) ⑨ 廊下などからの段差を設けない。 ⑩ 滑りにくい材質を使用する。 ⑪ スイッチは大型とし、高さは110cm程度に設置する。また、スイッ チは目立つように配慮する。 ⑫ 洗面器は、自動水栓またはレバー式水栓とし、物が置けるようにする。 ⑬ 洗面器は、車椅子使用者が利用しやすいようにする。 車椅子使用者が利用しやすい洗面器 ⑭ 男女のトイレ設置比率は、施設の使われ方に応じた比率とする。また、 イベント内容に応じて、柔軟に対応できるように工夫する。 18 13 ファミリートイレ ① 設置位置は、主要な動線の近くにするなどの配慮をする。 ② ファミリートイレは、主要な階については1カ所設ける。また、主要な 階を含むその他の階の男女トイレについては、車椅子でも利用できる広め のトイレをそれぞれ設置する。 ③ 幅200cm以上、奥行200cm以上を確保する。 ④ 大便器は洋式の洗浄機能付のものとし、両側に手摺を設置する。 ⑤ 洗面器は、自動水栓またはレバー式水栓とし、手摺を設置する。また、 車椅子使用者が利用しやすいようにする。 ⑥ 大便器の横には、便座に座った状態で 手を洗えるように、小手洗いを設置する。 (例えば、車椅子使用者の手の洗浄など) 小手洗いを設ける 19 ⑦ 鏡は、横60cm程度、高さ100cm 程度のものを洗面器まで下げて設置する。 洗面器に取り付ける鏡 (帯広の森スポーツセンター) ⑧ ベビーシートを設置するとともに、大便器と対面の位置にベビーチェア を設置する。 ベビーシート (市 庁 舎) ⑨ 出入り口は原則として、ボタンスイッチ式の自動引き戸とする。 ⑩ 出入り口の有効幅は90cm以上とし、スイッチは110cm程度の高 さに設置する。 トイレのボタンスイッチ (帯広駅北地下駐車場) 20 ⑪ 手動の場合は、棒状取手引き戸とし、弱い力でも開くようにする。 ⑫ 表示錠は、レバーハンドル式とし、緊急時に管理者が容易に開錠できる ものとする。 レバーハンドル式表示錠 (帯広の森スポーツセンター) ⑬ 照明スイッチは、人感センサー式か大型スイッチとする。 ⑭ 非常呼び出しボタンは、転倒を考慮して2カ所設置する。(壁との配色に 考慮する。) ⑮ 荷物やカバンなどが置ける棚や洋服を掛けるフックを設ける。 ⑯ サインは、親子の絵、車椅子の絵、オムツ替えの絵などとする。 ファミリートイレのサインの事例 (総合福祉センター) 注) ファミリートイレとは、障害者や高齢者、オムツ替えの親子など、誰も が使いやすい広いトイレのことです。障害者専用トイレなどと呼ばれてい たトイレにベビーシートを設置してオムツ替えの親子などにも利用できる ように改修したトイレもファミリートイレと呼んでいます。 21 14 エレベーター (位置、大きさ、操作盤など) ① エレベーターは、主要な出入り口近く、及びトイレの近くに設置する。 ② エレベーターを設ける場合は、車椅子使用者が利用できるエレベーター を1基以上設置する。(以下「車椅子対応エレベーター」とする。) ③ 車椅子対応エレベーターには、音声案内・停止階表示のものを設置する。 ④ 車椅子対応エレベーターには、鏡を設置する。(バックミラーとして使用) ⑤ 車椅子対応エレベーターの乗り場ボタン及び操作盤の位置は、車椅子使 用者の利用に配慮したものとする。 ⑥ 車椅子対応エレベーターには、乗り場ボタン前の適切な位置に点字ブロ ックを設ける。 車椅子対応の乗り場ボタンと点字ブロック (JR帯広駅) 22 ⑦ 車椅子対応エレベーターの乗り場ボタン及び操作盤は、点字と浮き文 字の両方を使用する。 ⑧ 車椅子対応エレベーターの出入り口の幅は、90cm以上とする。 ⑨ 防犯窓のあるものを設置する。 エレベーターの防犯窓 (柏林台北町市営住宅) ⑩ かご内には、手摺を設置する。 かご内の鏡と手摺 (市 庁 舎) 注) ストレッチャー対応型のエレベーターも施設によっては、設置すること が望ましい。 23 15 給湯室 ① ドアは、設けない。 ② 加熱調理器は、電磁調理器とすることが望ましい。 ③ 給湯器は、誰もが操作しやすいものとする。 24 16 スイッチ・コンセント ① スイッチの高さは、110cm程度の位置に設け、大型でホタル式など 分かりやすいものとする。 大型のホタル式スイッチ (UDモデルハウス) ② コンセントは、床から40cm程度の位置に設ける。 ③ 施設によっては、障害があっても使いやすいようにマグネットタイプの ものを使用する。 25 17 公衆電話台 ① 車椅子使用者が利用しやすいようにする。 ② 電話帳などを開くスペースを確保する。 車椅子のフットレストが入るスペースを確保 (帯広協会病院) 26 18 自動販売機・発売機 (自動販売機) ① 硬貨挿入口、商品選択ボタン、取り出し口などが誰でも利用可能な高さ にある販売機を設置する。 高さ・形状に配慮した自動販売機 (市 庁 舎) ② 空き缶等の分別回収箱を付近に設置する。 スペースを確保した分別回収箱 (帯広の森スポーツセンター) 27 (券売機) ① 窓口近くに設置する。 ② 車椅子使用者や子どもたちが利用しやすいような高さにする。 ③ 物などが置けるカウンターを設置する。 ④ 操作盤は、点字付のものとする。 ⑤ 硬貨挿入が容易なものとする。 ⑥ 操作面は、傾斜がついたものとする。 物が置けるカウンター、 硬貨挿入が容易 (JR帯広駅) 傾斜がついた操作面 (JR帯広駅) 28 19 机・椅子 ① 机は、車椅子使用者が利用しやすいものとする。 ② 机は、配置、片づけの操作性に優れたものとする。 車椅子使用者が利用できる机 (市 庁 29 舎) 20 託児室 ① 施設の内容によって、託児室を設ける。 託 児 室 (とかちプラザ) ② 親や事務所・廊下などから託児室が見え、連絡などがスムーズな場所に 設ける。 ③ また、屋外が見える場所が望ましい。 ④ 授乳を必要とする親子もいることから、水回りが完備した授乳室を設け る。 水回りを設けた授乳室 (十勝支庁) 30 21 水飲み ① 施設の内容によっては、子どもや車椅子使用者が利用しやすいものと普 通の高さのものを設置する。 2種類の高さを設けた水飲み ② 車椅子使用者の利用のため、水飲み前は150cm×150cm以上の スペースを確保する。 ③ 蛇口は、レバー式やボタン式など、弱い力でも利用できるものとする。 ボタン式の蛇口 (つつじが丘小学校) 31 22 事務室 ① 事務室は、主要な玄関から分かりやすい位置に設ける。 ② 出入り口戸は、事務室内部が分かるような仕様とする。 ③ 取手は、レバー式など軽い力で開くものとする。 玄関に接した事務室、ガラスを入れた出入り口戸 (南コミュニティセンター) 32 23 駐車場 ① 車椅子使用ドライバー優先駐車スペースを全駐車台数の2%以上設ける こととし、最低1カ所は設ける。 ② スペース幅は、350cm以上とし、国際シンボルマークや車椅子使用 ドライバー優先駐車スペースであることを床面や表示板に明示する。 車椅子使用ドライバー優先駐車 スペースを表示板で明示 (つつじが丘小学校) 車椅子使用ドライバー優 先駐車スペースを床と壁 に明示 (帯広駅北地下駐車場) ③ 駐車スペースは、主要な玄関など入り口に最も近い場所に設ける。 ④ グレーチングを設置する場合は、排水蓋の幅に考慮するとともに、滑り にくい材質とし、網目は9mm以下とする。 33 24 シャワー室・更衣室 (シャワー室) ① 入り口は、90cm以上の幅とする。 ② シャワー室は、段差を設けない。 ③ シャワーブースは、カーテン式など簡易なものとし、開閉しやすいもの とする。 ④ 車椅子使用者が利用できる広めのブースを設ける。(100cm×120 cm以上でシャワー用車椅子か開閉式の椅子を設置する。) ⑤ 濡れても滑りにくい床にする。 ⑥ シャワーヘッド・水栓は、容易に操作できるものとする。 ⑦ シャワーブース内は、手摺を設置する。 シャワーブース内の手摺 (帯広の森市民プール) (更衣室) ① 入り口は、90cm以上の幅を確保する。 ② 段差のないようにする。 ③ 高齢者や障害者が着替えやすいように更衣室内に長いすを設置する。 (幅60cm×長さ180cm程度) ④ 手摺を設置することが望ましい。 34 25 観覧所 (車椅子スペース、アプローチなど) ① 必要に応じて、親子鑑賞室を設ける。 ② 両端の階段部などには、手摺を設置する。 ③ 車椅子で鑑賞できる観客席を設ける。この場合、車椅子が通行可能な平 坦な場所に設けるとともに極力、トイレに近い位置とする。 また、緊急時の避難を考慮して、出入り口に近い場所に設置するように する。 ④ 車椅子使用者と同伴者が一緒に観覧できるように同伴者の可動席を置け るようにする。 ⑤ 視覚障害者や聴力が衰えた高齢者の利用に配慮した設備とする。 車椅子で観戦できる観客席 (帯広の森スポーツセンター) 35 26 安全な避難 ① 安全な避難のため、分かりやすい誘導サインを設置する。 ② 火災などが発生した場合は、避難口に音声で誘導する装置を設けるよう にする。 音声による誘導 (とかちプラザ) 36 お わ り に 「UD推進検討委員会」では、これまでの障害者擬似体験や各種の文献などを参考 に、「すべての人」にとって快適で安心して利用できる公共建築物の在り方について 検討してきました。 「すべての人のためのデザイン」という目的は一つであっても、その達成の方法や 技法には、様々な考え方があります。 このため、施設の内容や機能などにそって、より利用しやすいデザインにしていく ことが大切ですが、同時に、エコロジー(環境)、エコノミー(経済性)ということ もユニバーサルデザインの重要なコンセプトであることを認識する必要があります。 ユニバーサルデザインは、新しい概念であり、確立した基準というものは少なく、 本書の運用にあたっては、常に利用者や管理者などからご意見をいただき、さらによ り良い建築物で在りつづけるよう研究していくことが重要です。 皆様からのご意見ご感想をお待ちしています。 ユニバーサルデザインに基づく 公共建築物設計の考え方 平成14年3月 発 行 (問い合わせ) 編 集 帯広市企画部企画課 帯広市西5条南7丁目1番地 TEL 0155−24−4111 UD検討推進委員会 暮らしやすいまちづくり検討部会 ※無断での転載・複製を禁じます。