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「今知りたいこと、当時知りたかったこと」

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「今知りたいこと、当時知りたかったこと」
「今知りたいこと、当時知りたかったこと」
土 田 理 恵 子 (「 放 射 線 必 須 デ ー タ 32」 フ ァ シ リ テ ー タ ー )
『放射線必須データ 32』でファシリテーターを務めたものとして、この本へ込めた思いを
お話しさせていただきます。この本に参加させていただくきっかけは、NPO 法人あいんし
ゅたいんの講演会を聴いたことでした。「原発推進か脱原発かどちらの意見を持っているか
とは無関係に、放射線影響をデータに基づいて科学的に議論しようとする姿勢」にとても
魅かれ、何度も勉強会に参加させていただきました。そんな中で、編集者の艸場さんがこ
の本を企画され、読者の視点を提供する役割を私が担うことになりました。
いざ始めてみると、一つのグラフを理解するにもたくさんの基礎知識が必要なことが分
かり、著者の先生方には、本文に手を入れていただくだけでなく、コラムで補足していた
だいたり、図を描いて解説していただいたりと、大変ご苦労いただきました。
たくさんのデータを見ましたが、つくづく、ヒトというものを調べることの難しさを思
い知らされました。そもそも多くの場合、肝心の被曝線量が分からず、推定値になってい
ます。喫煙のような結果を歪めるような項目についても情報が得られないことも多いです
し、統計的に意味のある結論を得るために必要な人数を確保できないことも多いので、結
論は多くの誤差を含むことになります。
ですから、この本は、各データの結論を正しいものとして暗記するためのものではなく、
どのようにデータが集められているか、どのように解析されているかという科学的なもの
の見方を知るための本となっていると考えております。(高校生の方、文系の大学生の方の
ために、そのような視点で、ご活用いただけると役に立つのではないかと思います。) 一方、個々のデータの誤差は大きくても全体を通してお読みいただくと、人体影響のイ
メージがある程度はつかめるものと思います。巻末の線量表も全体像を描く上で大きな助
けになると思いますので、是非、折に触れてご覧いただければと思います。
「はじめに」にも書かれていますが、著者の先生方も、この本で取り上げたデータに全面
的に納得されているわけではありません。HP でも紹介されていますが、あるデータについ
て最近開始した勉強会の場で、新たな解析の方法を検討することを、新しく参加された方
からご提案いただいています。さらに多くの方に目を通していただき、より広くご議論い
ただくことで、さらに優れた解析がなされること、新たなデータが提供されることを期待
しております。
関西におりますと、放射線への関心は薄れてきているように感じます。しかし、報道に
よりますと、未だに山と積まれたフレコンバッグを毎日目にする生活もあるようです。放
射線のリスクについて知りそのリスクの受容限度について社会的な合意を作っていくため
の積み重ねに、その 1 つであるこの企画に、関西の方にもたくさんご参加いただきますよ
うお願い致します。
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