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最近の社会動態(県外移動)の動向
最近の社会動態(県外移動)の動向 本県の人口は、平成9年をピークに 10 年から人口減少が続いている。ここでは、社会動 態の「県外」移動に注目し、本県の人口減少理由を探ることとする。 <ポイント> ・ 本県の社会動態(県外移動)は、「学業」、「職業」を主とした理由で 15 年連続の転出 超過だが、平成 20 年以降、転出超過数は縮小傾向にある。 ・ 「学業」理由の転出超過は、15∼19 歳の移動が最も寄与しているが、県内進学割合が 上昇傾向であることなどから転出者が減少し、近年は横ばい傾向である。 ・ 「職業」理由の転出超過は、20∼24 歳の主に東京都を始めとする関東方面への転出者 の動きが大きい。20 年から、景気悪化等を背景に転出者は減少し、転出超過数は縮小 しているものの、依然として転出超過は続いている。 ・ 23 年は東日本大震災に伴う避難が影響し、転入者が増加したとみられ、本県の転入者 の減少を抑えた。 なお、本レポートでは、資料について掲載のないものは県統計課「新潟県の人口移動」を 引用した。この資料は、前年 10 月∼当年9月までの移動で、理由は以下の6つからなる。 「職 業」 :就業、転勤、求職、転職、開業など職業関係及び出稼ぎ、出稼ぎ先からの帰郷 による移動。 「住 宅」:家屋の新築、公営住宅・借家への移転など住宅の都合による移動。 「学 業」:就学、退学、転校など学業関係による移動(単身移動に限定)。 「家 族」:移動の直接の原因となった者に伴って移動する家族の移動。 「戸 籍」:結婚、離婚、養子縁組、復縁など戸籍関係による移動。 「その他」:上記以外による移動及び不詳。(※移動の理由は転出入者の申告による。) 1 人口流出の推移と特徴 (「学業」、「職業」理由での転出超過が影響) 本県の社会動態(県外移動)は、平成5年から8年まで転入超過となったものの、9年か ら 15 年連続の転出超過となった。転出超過数は 20 年から4年連続で縮小し、23 年は 2,986 人とピーク時の 19 年 6,846 人の半数以下となった。(図1−1) 図1−1 社会動態(県外移動)の推移 20年以降の転出超過数縮小は、転出者数減少の寄与が大きい 万人 5 3 転出入超過数 転入者数 転出者数 4 2 3 1 0 -1 H2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 年 理由別にみてみると、転出超過期の2年から4年及び9年から 12 年は「学業」理由、13 年以降は「職業」理由が主な理由として挙げられる。なお、 「住宅」理由は一貫して転入寄与 が続いている。(図1−2) 図1−2 理由別転出入超過数の推移 「学業」、「職業」理由が全体の移動に寄与 千人 6 職 業 戸 籍 3 住 宅 その他 学 業 合 計 家 族 0 -3 -6 -9 H2 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 年 「学業」理由における県外移動 (15∼19 歳の転出超過が影響) 「学業」理由による移動は、一貫して転出超過となっている。最も寄与の大きい 15∼19 歳は、転出者数減少を背景に転出超過数が縮小傾向にあるが、近年では、転入者数、転出者 数の増減にほとんど動きがなく、横ばい傾向が続いている。(図2−1) 図2−1 「学業」理由年齢階層別転入転出超過数 千人 全体では7年連続、15∼19歳は4年連続で転出超過数は縮小 8 0∼14歳 20∼24歳 30歳以上 15∼19歳の転出者数 6 4 15∼19歳の転入者数 15∼19歳 25∼29歳 系列1 2 0 -2 -4 -6 H2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 (若者の減少と県内進学率が上昇傾向) 転出者数減少の背景は、まず、若者の減少が 考えられる。高等学校の卒業者数は、一貫して 減少しているため、移動する割合が高い年齢層 自体が縮小している。(図2−2) また、大学等への進学において、大学等進学 者1、専修学校等入学者2ともに県内進学割合が 上昇傾向にあることも転出者減少に影響してい る。大学等では県内大学の開校が進んだ平成2 1 2 万人 4 16 17 18 19 21 22 23 年 図2−2 県内高等学校卒業者数 出生数減少を背景に減少 18歳前の出生数 (当年18歳) 3 2 20 3.4 3.3 2.8 2.5 1 2.2 2.1 卒業者数(当年3月) 0 H2 7 12 17 22 23 年 資料:文部科学省「学校基本調査」 県統計課「新潟県の人口移動」 大学、短期大学、放送大学進学者などで、通信教育を含む。過年度卒業者を含む。 予備校等を含む。各年度卒業生のみ。 年から7年、12 年から 17 年で特に県内進学割合の上昇幅が大きくなっている。直近の 23 年 は、大学等、専修学校等ともに県内進学割合は横ばいであった。(図2−3) 図2−3 県内高等学校卒業者の進学状況 千人 15 % 37.8 37.8 40 大学等進学状況 36.3 35 10 千人 15 % 90 専修学校等入学状況 83.9 10 86.5 86.4 74.7 80 70.3 5 25.9 32.2 32.1 0 H2 7 12 17 30 5 25 0 22 23年 70 60 年 23 H2 7 12 17 22 注:当年3月卒業者の状況 資料:県教育委員会「大学等進学状況調査」 県外進学者 県内進学者 県内進学割合 県内進学割合(右目盛) 3 75.4 「職業」理由における県外移動 (1)年齢階層別転出入の状況 (15∼19 歳、20∼24 歳の移動が影響) 次に、 「職業」理由における移動を年齢階層別にみてみると、転出超過期では平成2年から 4年及び 10 年は 15∼19 歳、11 年以降は 20∼24 歳の転出超過が大きい。また、5年から9 年の転入超過期は主に 20∼24 歳の転入超過が全体を下支えしていた。近年では、20∼24 歳 の転出超過縮小により、19 年をピークに4年連続で転出超過数は減少している。 (図3−1) 図3−1 「職業」理由年齢階層別転出入超過数 20年からの転出超過数数縮小は、20∼24歳の縮小が寄与 千人 4 0∼14歳 25∼29歳 全年齢 2 15∼19歳 30∼39歳 20∼24歳 40歳以上 0 -2 -4 -6 H2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 年 (2)15∼19 歳の移動状況 (転出超過数は減少傾向で、県外就職率は 10%を下回る) 15∼19 歳は一貫して転出超過だが、転出者数の減少により転出超過数は平成9年に千人を、 16 年に 500 人を下回り、23 年は 208 人と最も少なくなった。(図3−2) 転出者減少の要因は、高等学校卒業者数の減少に加え、大学等への進学率の上昇から就職 率が低下傾向にあることが挙げられる。2年に 46.6%であった就職率は、9年に大学等進学 率を下回ると 23 年には 16.7%まで低下した。また、就職者の中でも県外就職率は 16 年から 8年連続で 10%を下回っており、転出が抑えられていることがうかがわれる。(図3−3) 図3−2 15∼19歳「職業」理由による転入転出超過数 転出超過数は減少傾向であり、近年は横ばい 千人 6 転出入超過数 4 転出者数 転入者数 2 0 -2 -4 H2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 図3−3 進路別県内高校卒業者数 就職者が減り、大学等への進学へ進路がシフト 万人 4 23 年 % 50 40 3 30 2 20 1 10 0 H2 3 4 大学等 就職率 5 6 7 8 9 10 11 専修学校等 大学等進学率 12 13 14 15 16 17 就職 専修学校等進学率 18 0 19 20 21 22 23 年 その他 県外就職率 就職者のうち県外就職率 注:「率」は右目盛。 資料:文部科学省「学校基本調査」 (3)20∼24 歳の移動状況 ア 地域別転出入の移動状況 (近年の転出超過数は減少傾向) 20∼24 歳は平成9年までの転入超過期を経て転出超過となり、その後は転出超過数が拡大 した。20 年からは本県の移動に最も影響を与えている東京都への転出超過数縮小が寄与し、 4年連続で転出超過数は減少しているものの、毎年2千人以上の転出超過が続いている。 (図 3−4) 千人 図3−4 20∼24歳「職業」理由による地域別転出入超過数 東京都への転出超過数縮小が20年からの全体の縮小に寄与 2 1 0 -1 -2 -3 総数 北海道・東北 東京都 東京都を除く関東 その他の国内地域・国外 -4 H2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 注:東北…青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県 東京都を除く関東…茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、神奈川県 20 21 22 23 年 イ 東京都と本県の雇用情勢 (東京都と本県との雇用情勢の差が転出者の動きに影響) 有効求人倍率をみると、転入超過期であった9年まで本県は1倍を超える高い水準で推移 していたが、10 年に大幅に低下すると同時に転出超過に転じた。12 年には東京都の倍率を下 回り、16、17 年と東京都との差は拡大したが、その後、世界的な景気後退を受け 21 年に東 京都の倍率が大きく低下すると、その差は縮小している。近年の転出者減少は、最大の転出 先である東京都の有効求人倍率等でみられる雇用情勢の悪化が要因の一つとして考えられる。 しかし、1倍を下回る低水準ではあるが、本県より高い倍率で推移していることなどもあり、 東京都への転出超過は続いている。(図3−5) 図3−5 有効求人倍率の推移 東京都の雇用情勢は、景気低迷を背景に悪化 1.8 倍 東京都 東京都を除く関東 新潟県 全国 1.4 1.0 0.6 0.2 H2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 注:新規学卒者及びパートタイムを除く。 資料:厚生労働省「労働市場年報」 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 年 (大卒の就職者が多い職業は、東京都の方が割合が大きい) ここで、東京都と本県の求人状況を職業別に比較する。 20∼24 歳の移動で寄与の大きい大学卒業者は、 「専門的・技術的職業3」、 「事務的職業」及 び「販売の職業」への就職者が多い。これら3つの有効求人倍率は、18 年度以降、東京都の 倍率が大きく低下したことで本県とのポイント差はいずれも縮小している。(図3−6、7) 図3−6 大学卒業者の 職業別就職者数(全国) 保安の職業 2.5% サービス の職業 6.2% 販売 の職業 21.3% その他 4.3% 事務的 職業 32.2% 専門的・ 技術的職業 33.5% 倍 3.0 販売の職業 (左目盛) 2.5 倍 0.6 0.5 2.0 0.4 1.5 0.3 1.0 0.2 0.5 0 0.0 注:平成23年3月卒業者 資料:文部科学省「学校基本調査」 3 図3−7 東京都と新潟県の有効求人倍率の推移 「専門的・技術的職業」は、21年度に東京都を上回る 専門的 ・技術的職業 事務的職業 (右目盛) 0.1 0 18 20 22 H16 18 20 22 H16 18 20 22年度 東京都 新潟県 資料:新潟労働局「雇用のうごき」、厚生労働省「職業安定業務統計」 H16 主に、情報処理・通信技術者、保健師・助産師・看護師などを指す。 次に、22 年度の新規求人数の産業別構成比をみてみると、本県は、建設業、製造業の第2 次産業が東京都を大きく上回っている。一方それ以外の、主に第3次産業に属している業種 では、医療・福祉などの3業種で東京都を上回っているものの、情報通信業、宿泊業・飲食 サービス業、卸売業・小売業などの5業種で東京都を下回っている。これら本県で比率の低 い情報通信業や卸売業・小売業などは、大学卒業者の就職者割合の高い「専門的・技術的職 業」や「販売の職業」などが多く含まれていることから、希望の職種に就くことが難しい場 合があると考えられる。(図3−8) 図3−8 新規求人数の産業別構成比(平成22年度) 第3次産業では東京都より割合が低い業種が多い 1.7 新潟県 13.1 7.7 東京都 0% 14.4 6.0 10% 6.1 13.0 7.5 20% 30% 13.5 5.4 4.0 17.1 15.4 7.6 13.5 40% 建設業 運輸業・郵便業 生活関連サービス業・娯楽業 その他 50% 3.2 60% 13.2 13.0 70% 製造業 卸売業・小売業 医療・福祉 系列1 11.7 13.1 80% 90% 100% 情報通信業 宿泊業・飲食サービス業 サービス業 注:新規学卒及びパートタイムを除く一般新規求人数の割合 資料:新潟労働局「雇用のうごき」、厚生労働省「職業安定業務統計」 ウ 現状と課題 (望まれる県内での雇用の場の確保) 県内大学卒業者の就職状況をみてみると、県外就職割合は、19 年以降減少傾向にある。し かしながら、一方で大学卒業後に「進学も就職もしていない者」やパート・アルバイトなど の「一時的な仕事に就いた者」が増加傾向にある。増加の要因としては、不況により採用が 少なかったこと、職種や条件が希望と合わなかったことなどが推測される。 県外就職率の減少傾向を続け、未就職者の増加を防ぐためには、いずれも県内での雇用の 場の確保が重要であり、結果として若年層の県内定住を促すことにつながると考えられる。 (図3−9、10) 千人 4 図3−9 県内大学新規卒業者 の就職状況(学校扱分) 50.7 3 46.1 49.7 2 % 55 50 47.1 42.9 43.6 45 1 40 0 35 19 20 21 22 23 年 県外就職者数 県内就職者数 県外就職割合(右目盛) 注:当年3月卒業者の状況 資料:新潟労働局「雇用のうごき」 H18 % 65 図3−10 県内大学卒業者の状況 64.1 60 59.9 55 百人 8 64.6 就職率 63.1 60.7 58.3 一時的な仕事に 就いた者 6 4 2 就職も進学もしていない 0 H18 19 20 21 22 23 年 注:当年3月卒業者の状況で「不詳・死亡」を除く。 資料:文部科学省「学校基本調査」 4 近年の転出超過数縮小について (1)理由別の移動状況 (4年連続の転出超過数縮小要因は主に「職業」理由が寄与) 平成 20 年から4年連続で本県の転出超過数は縮小した。主な縮小要因としてまず挙げら れる「職業」理由は、主な転出先である東京都を含めた全国的な景気の悪化から転出者が減 少していることが影響しているが、他の理由についても 20 年以降は縮小に寄与するものが 多くなっている。 23 年の縮小要因は、「その他」理由と「住宅」理由が大きくなっている。この2つの理由 は、特に東北地方からの転入超過数が増えたことが寄与した。23 年は、3月に発生した東日 本大震災の影響で本県に移動してくる人が増えているが、避難等は、原発事故に伴う一時的 な避難による「その他」理由か、住居の損壊等による「住宅」理由として扱われた場合が多 く、理由別、地域別にみても、東日本大震災が影響していると考えられる。(図4−1、2) 図4−1 理由別転出入超過数前年差(当年-前年) 「職業」理由が最も縮小に寄与、23年は異なる傾向 前年差 千人 2 転出 超過 縮小 要因 1 0 -1 職 業 家 族 合 計 -2 住 宅 戸 籍 学 業 その他 転出 超過 拡大 要因 -3 H17 百人 15 18 19 20 21 22 23 年 図4−2 地域別転出入超過数 23年は、東北地方からの転入超過数が大きく増加 【「その他」理由】 12 【「住宅」理由】 9 6 3 0 -3 -6 H19 20 21 22 23 H19 20 21 22 総数 東北 関東 その他国内地域 国外 東北:青森、岩手、 宮城、秋田、 山形、福島 関東:茨城、栃木、 群馬、埼玉、 千葉、東京、 23 年 神奈川 (2)東日本大震災の影響 (特に福島県からの転入者数が増加) 東北地方と本県の移動を詳しくみてみると、平成 23 年は福島県からの転入者数増加が最も 多く、例年にない増加幅となった。そこで、福島県と本県との理由別移動状況を東日本大震 災の起きた3月から9月までの期間でみてみると、23 年は、「住宅」、「その他」、「家族」理 由の順で転入者数が増加した。23 年の東日本大震災による転入者数の増加は、県全体の転入 者数減少を抑え、転出超過縮小に寄与している。(図4−3、4) 図4−3 東北地方と本県との移動の推移 23年は特に福島県からの転入者数が増加 千人 6 転 入 者 数 4 2 青森県、秋田県、 山形県 岩手県 宮城県 0 転 出 者 数 -2 -4 H18 19 20 21 22 福島県 転出入超過数 23年 図4−4 福島県と本県との理由別転出入者数(3月∼9月) 「住宅」、「その他」理由などの震災に関わる事由で増加 人 600 22年 差引(転入超過) 285 300 54 115 ▲ 256 ▲ 45 ▲ 27 ▲ 114 職業 29 住宅 9 学業 88 家族 25 139 33 28 ▲ 25 ▲ 18 転出者数 計▲485 戸籍 8 その他 10 差引計 169 0 -300 人 600 23年 571 394 差引(転入超過) 259 300 121 29 343 ▲25 ▲25 戸籍 4 その他 318 0 ▲ 213 ▲ 115 -300 職業 181 5 転入者数 計 654 住宅 456 ▲ 37 ▲ 59 学業 84 家族 200 転入者数 計1,717 転出者数 計▲474 差引計 1,243 おわりに これまでみてきたように、本県の社会動態は 15 年連続で転出超過となっているものの、 「職 業」理由で厳しい就職状況を背景として県外への就職が抑えられていること、 「学業」理由で 県内進学割合が上昇傾向であることなどから、転出超過数は縮小傾向にある。平成 23 年は、 東日本大震災による影響が大きかったが、震災要因を除いても全体の転出超過数縮小傾向は 継続したとみられる。 これらの縮小要因には、主に 10 代後半から 20 代の転出者数減少が寄与しているが、若者 の流出縮小が長期的に続けば、労働力の維持、消費の拡大、出生数の増加など県内の経済社 会構造を強化することにつながると考えられる。