...

バス用ターボエンジンの メンテナンス講座 ボエンジンの ス講座

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

バス用ターボエンジンの メンテナンス講座 ボエンジンの ス講座
短期連載
バス用ターボエンジンの
メンテナンス講座
③ターボのトラブルを防ぐオイル管理
一般にエンジンの状態を良好に保つ上で比較的簡単,かつ
重要度が高いメンテナンスといえば,まずエンジンオイル
(以下オイル)の交換が挙げられるが,オイルはターボチャージャ
ー(以下ターボ)の性能維持や寿命にも少なからず影響を与える。
オイル希釈による粘度不足で摩耗したシャフト(上)とスラストベアリング
(下左)
,
スラストカラー(下右).全体が薄く均等に摩耗している(均等摩耗)ので,一見
不具合はないように見えるが,よく見るとシャフトには縦スジが入っていて,ベ
アリングにもキズがある
今回はターボとオイルの関係を踏まえつつ,オイルに関する各種情
報を紹介したい。
●エンジンの正常運転を支えるエンジンオイル
オイルの役割は大まかにいえばエンジン内部の潤滑である。細か
く見ると,①カムシャフトやクランクシャフトなど金属摩耗を軽減
する﹁潤滑﹂
,②カムシャフトやクランクシャフトなどの摩耗熱を
取り去る﹁冷却﹂
,③燃焼エネルギー損失やブローバイガス(前号
参照)流出のクリアランスを塞ぐ﹁気密(シール)﹂,④燃焼や金属
同士の摩擦により生じたカーボンや金属片を除去する﹁洗浄﹂
,⑤
エンジン内部と外部の温度差による結露で発生するサビを防ぐ﹁防
錆﹂の 5 つに分けられる。
どれもエンジンの正常な運転には欠かせない役割だが,各々を進
このうちジャーナルベアリングは,毎分数万回を超える超高速回
めるうちにオイルは劣化していくので,交換が必要になる。
転をするシャフトを前後 2 点で支えている。シャフト外径とハウジ
オイルは,オイルパン→オイルポンプ→オイルクーラー→オイル
ング内径の隙間に油膜を作り﹁浮かんでいる﹂形になっているため,
フィルター→エンジンというように,常にエンジンの中を循環して
フローティングベアリングとも呼ばれている。このベアリングには
いる。カムシャフトやクランクシャフトを潤滑し,オイルパンに戻
数㎜の貫通穴(オイルホール)が数カ所あり,そこからオイルが内
ってくるオイルは燃焼熱などで高温になっており,オイルクーラー
外に行きわたることで油膜上に浮かぶ形になるとともに,シャフト
で冷却され,オイルフィルターで微細な金属片などを取り除いた上
の超高速回転による油膜切れを防ぐため,自身も回転する。その周
で再循環される。その一部はターボにも送られる。
速はシャフトの30~50%程度で,油膜により振動を軽減して,金属
ターボに送られるオイルの役割は基本的にエンジン本体のそれと
同士が接触することなく回転する。
同じだが,ターボはより高温,かつ周速(回転速度)が速く摩擦が
一方のスラストベアリングは固定されたベアリングである。ター
大きいため,潤滑と冷却の役割がより大きくなる。ターボに送られ
ボが吸気の反作用で,吸気側に動くのを防ぐ留め具のような役割を
たオイルはジャーナルベアリングとスラストべアリングという 2 種
担っている。軸方向の動き(スラスト)に対して,これを受け止め
類のベアリングを潤滑し,オイルパンに戻る。
るパッド面に油膜を作る構造となっている。
ターボの断面図
(左)
と断面写真.オイルパンから吸い上げられたオイルは専用の流路を通ってターボに供給される.オイルはターボハウジング内部のメイン流路から
分岐して,ジャーナルベアリングとスラストベアリングに流れる
スラストベアリング
スラストカラー
スラスト方向の油膜
回転方向の油膜
ジャーナルベアリング
オイルホール
76
BUSRAMA No.150
オイル交換
オイル上限値を
示す穴
補給時の
油量の範囲
点検時の
油量の値
オイル補給
バスのオイルゲー
ジにはアッパー,
点 検 用MAXな ど
の上限値の目盛が
ある.ポスト噴射
の軽油の一部がオ
イルに混ざり量が
増えるので,上限
値を超えるとエン
ジンの故障につな
がる.特に市街地
路線バスではこま
めにチェックした
い
オイルレベルゲージの模式図
●オイルはエンジンとターボのコンディションを左右する
上はオイルに起因する摩耗・損傷の例(右:ジャーナルベアリング)
.油量不足は
油膜切れの危険性が大きく,またごみの混入は﹁かじり﹂を起こす
状ではないだろうか。
●オイルの選択,その他の注意点など
オイルの量や交換のタイミングはレベルゲージでチェックできる。
ターボはこの 2 種類の特殊なベアリングとシャフトの絶妙なバラ
バスのオイルレベルゲージには,﹁ロー・ハイ﹂
﹁MIN・MAX﹂など
ンスの上に成り立っているといえる。そのバランスを調和している
(メーカーによって異なる)に加えて,﹁アッパー﹂﹁点検用MAX﹂
のがオイルである。オイルのメンテナンスが不適切だとバランスが
などの目盛がある。元々のオイル量がハイあるいはMAX以下であ
崩れ,ターボの故障につながる。主要因は粘度不足,オイル量不足,
ったにもかかわらず,使っているうちにそれを超してアッパーや点
ごみ混入の大きく 3 点で,中でも注意が必要なのが粘度不足であり,
検用MAXに至るのは希釈が進んでいる証拠で,エンジンやターボ
これはDPFを強制再生させる際のポスト噴射の繰り返しによるオ
の油膜切れを起こす可能性が高く,オイル交換が必要となる。
イル希釈によって引き起こされる。
オイルについて自動車メーカーでは純正銘柄の10W-30のグレー
現在多くのバスがDPFを装着しているが,セラミックフィルタ
ドを指定しており,これは一説によるとフリクションロスを低減し,
ーの目詰まりを防ぎ,使用可能な状態を維持するために,捕集した
燃費向上を図るためといわれているが,ターボメーカーでは油膜維
PMを焼却する再生作業が行われる。DPFの再生には高温の排出ガ
持を重視して固めの15W-40を推奨している。エンジンとターボで
スを利用する方法(自然再生)と,シリンダー内に燃焼行程後に燃
別々のオイルラインが設けられれば各々に最適のオイルを使えるが,
料を噴射し(ポスト噴射),生の燃料を排気管に送り込んでDPF内
それができないので選択は難しい。
でPMを燃やす方法(強制再生)がある。高速走行主体の高速バス
また何らかの理由で送られてくるオイルの量が不足すると,冷却
などでは,エンジン負荷が高まり排出ガスの温度が高温で維持され
性能の低下を招く。冷却性能が低下すると摩擦熱が蓄積するため,
るので,走行中に再生ができるが,市街地路線バスなどでは発進・
油膜切れによりシャフトとの金属接触が発生し,最終的にはベアリ
停止を繰り返し,アイドリング時間も長いなど排気温度が上昇しな
ングが焼き付く。
いので,フィルターが目詰まりする前に手動で強制的に再生を行わ
ごみの混入に関しては,オイルはフィルターを介しても微細なス
なくてはならない。強制再生は30分ほどの時間とポスト噴射分の燃
ラッジや金属片が混入していることがあるが,この程度では影響は
料が余計にかかるなどの指摘があるが,シリンダー壁面に付着した
ほとんどない。問題なのはフィルターが目詰まりしたときである。
燃料の一部がピストンの隙間を通過してオイルパンに侵入し,オイ
こうなるとバイパスバルブが開き,オイルがフィルターを通さず送
ル希釈を引き起こす問題も抱えている。強制再生を行うたびに,知
られてくることになる。本来フィルターで除去されるはずの大きな
らず知らずのうちにオイルの希釈が進んでいることになる。
金属片などが混入すると,最悪の場合ベアリングの損傷に至り,タ
一般にバスやトラックには10W-40などのマルチグレードオイル
ーボの交換・修理が必要になるので,併せて注意を払っていただき
が使用されており,10は冷間時,40は高温時の粘度を表す。粘度は
たい。
いわば油膜維持能力のことだが,オイル希釈が進むと油膜維持能力
が低下する。そうなるとエンジン各部の摩耗が進み,ターボではエ
ンジン排気側の温度が特に高いため,先に排気側のベアリングが油
膜切れを起こす。
ちなみに,こうしたオイル希釈を引き起こしやすいポスト噴射は,
新長期排出ガス規制までのバスが対象である。現在新車販売されて
いるバスには,DPFの直前で燃料を噴射する方式が採用されてい
るため,オイル希釈は発生しにくい。対象車のオイル管理には各メ
ーカーも注意喚起を行っているが,周知が徹底されていないのが現
In this issue, we will introduce to you the relationship between the turbo charger and
engine oil. Oil sent to the turbo charger lubricates two special bearings, journal bearing
and thrust bearing. If oil is not maintained properly, it will lead to malfunction. There are
three leading causes, lack of viscosity, lack of oil, and mixture of particles. Of these
three, we must especially be careful about lack of viscosity. It is caused by the repeated post injection which occurs because of forced regeneration of DPF, resulting in dilution of oil.
この短期連載は,ター
ボテクノサービスの協
力を得ている.同社は
ターボチャージャーを
リビルド(再生),販売
するメーカーで,VGタ
ーボをはじめ各世代,
各種類のバス用ターボ
を取り扱っている.特
に電子制御式 VGター
ボのリビルドでは国内
トップに位置する存在
である
株式会社ターボテクノサービス
☎(03)3758-3381 http://www.e-tts.com/
77
Fly UP