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問6~12
博士前期課程 基礎科学コース「専門科目」問題用紙(2013 年度 9 月入学試験) 6 一様な電場 E と磁場(磁束密度)B の下で質量 m, 電荷 q の荷電粒子が運動し ている。この荷電粒子にはローレンツ力が働くので,この粒子の速度を V とすると m dV = qE + q(V × B) dt という運動方程式が成り立つ。 荷電粒子の位置を r = (x, y, z) とし,次の各々の場合について,上記運動方程式を解き, 粒子の運動をグラフで表せ。なお,初期条件は t = 0 で x = 0, y = 0, z = 0, V = (0, V0 , 0) であるとする(V0 は正の定数である)。 (1) E = 0, B = (0, 0, B) (B > 0 は一定) 図1 (2) E = (E, 0, 0), B = (0, 0, B) (E > 0 と B > 0 は一定) 図2 3 博士前期課程 基礎科学コース「専門科目」問題用紙(2013 年度 9 月入学試験) 7 真空中に電荷密度 ρ0 [C/m3 ] で一様に帯電した原点中心で半径 a の球がある。 この球の誘電率は真空の誘電率 ε0 と同じであるとする。 この球電荷の作るポテンシャルを、以下の手続きにしたがってポアソンの方程式を解くこ とにより求め、この系の持つエネルギーについての問いに答えなさい。 (1) 対称性からポテンシャルは φ(r) と書けることが分かる。ここで r = ある。この時 ∂ 2φ ∂ 2φ ∂ 2φ 1 d2 ∇2 φ = + + = {rφ(r)} ∂x2 ∂y 2 ∂z 2 r dr2 √ x2 + y 2 + z 2 で が成立することを示しなさい。 (2) 無限遠を基準点とするポテンシャルをポアソンの方程式 ∇2 φ(~r) = − ρ(~r) ε0 ρ(~r) は点~rにおける電荷密度、ε0 は真空の誘電率 を解くことによって求めなさい。ここで (1) の結果を使ってよい。特に r = a における φ およびその導関数の連続性および、原点における φ が x, y, z で偏微分可能であることに注 意すること。 (3) この系の持つ全静電エネルギー 1 2 ∫ ρ(~r)φ(~r)dV 全空間 を求めなさい。 (4) 球の持つ全電荷を一定の値 Q に保ちながら a → 0 としたとき、この系の持つ静電エ ネルギーはどうなるか、式を使って議論しなさい。 4 博士前期課程 基礎科学コース「専門科目」問題用紙(2013 年度 9 月入学試験) 8 質量 m の粒子が,区間 0 ≦ x ≦ L に閉じ込められている。このとき,位置エネ ルギーは井戸型ポテンシャル { 0 0≦x≦L V (x) = ∞ それ以外 で与えられるものとする。以下の問に答えよ。 問 1. シュレディンガー方程式と境界条件を示せ。 問 2. エネルギー準位と波動関数をすべて求めよ。 これ以降,基底状態 (もっともエネルギーの低い状態)についてのみ考えることにする。 ここでの基底状態のエネルギーを EG とする。 問 3. 運動量の期待値 hp̂i および運動量の自乗の期待値 hp̂2 i を計算し,運動量の不確定性 √ ∆p = hp̂2 i − hp̂i2 の値を求めよ。 √ 問 4. 位置の不確定性 ∆x = hx2 i − hxi2 について,∆x が L に 比例する ことを示せ。 問 5. この状態を例にとって,不確定性原理について述べよ。 次に,位置エネルギーを,下記のものに変更した。 { 0 0≦x≦L V (x) = ただし,V0 |EG | V0 それ以外 問 6. この場合における基底状態のエネルギーを EG 0 とする。EG 0 は EG に比べてどのよ うな値をとるか,上記の問3∼5と関連づけて定性的に説明せよ。 5 博士前期課程 基礎科学コース「専門科目」問題用紙(2013 年度 9 月入学試験) 9 3 次元の体積 V の領域に閉じ込められて自由に運動する質量 m のフェルミ粒子 の1粒子状態密度が 1 粒子エネルギー ε の関数として D(ε) = AV ε1/2 と表される事を以 下の手順で導こう。 1. 粒子の閉じ込められている領域は1辺 L (L3 = V ) の立方体である。周期的境界条 件のもとで粒子のとり得る波数ベクトルの内、大きさが k と k + dk の間にある波数 ベクトルはどれだけあるか? 2. 上問の波数ベクトルの数が、エネルギーが ε と ε + dε の間にある状態の数にスピン の自由度を考慮したもの(この粒子のスピンは 1/2 とする)が D(ε)dε に等しいと 考えれば D(ε) が求められる。これにより A を具体的に求めよ。 以下の答えには D(ε) = AV ε1/2 をそのまま用いて良い。 3. この領域に N 個の電子が閉じ込められている。T = 0 におけるフェルミエネルギー µ0 を求めよ。 4. この系の基底状態のエネルギーを求めよ。 5. この系の粒子数は、温度 T によらず N に固定されており、この条件を満たすように 化学ポテンシャルが決まる。化学ポテンシャルは低温で T = 0 の値 µ0 からどれだ け変化するか、T 2 に比例する項まで求めよ。但し、kB T µ のとき、緩やかに変 化する関数 F (x) にたいして ∫ ∞ ∫ µ π 2 dF (ε) F (ε)fF (ε)dε ' )ε=µ (kB T )2 F (ε)dε + ( 6 dε 0 0 と近似してよい事を用いよ。ただし fF (ε) はフェルミ分布関数を表す。 6. 全エネルギーの低温における変化を求め、それを用いて系の比熱を求めよ。 6 博士前期課程 基礎科学コース「専門科目」問題用紙(2013 年度 9 月入学試験) 10 解答は解答用紙に途中の論理、計算も含めて明確に記すこと。以下で、−e, m は1つの 電子の電荷と質量、n を伝導電子(自由電子)密度とする。必要とあれば以下のマクスウェル方程 式および公式を用いて良い。 マクスウェル方程式 ~ = 4πρ, divE ~ =− rotE ~ =0 divH ~ 1 ∂H , c ∂t ~ =+ rotH ~ 1 ∂E 4π + ~j c ∂t c ~ は電場、H ~ は磁場、ρ は電荷密度、j は電流密度、c は光速である。 ここで E 公式 rot rot = grad div − ∇2 (1) (2) 1. 以下のうち一つを選び、解答せよ。 (a) 金属中の電子の平均の運動量 p~ は次の運動方程式に従うと考えることができる。 1 d~ p ~ = − p~ − eE(t) dt τ (3) ここで、τ は緩和時間である。式 (3) より、交流電気伝導度 σ(ω) が σ(ω) = σ0 , 1 − iωτ σ0 = ne2 τ m (4) となることを導き、σ(ω) の実部 σ 0 (ω) と虚部 σ 00 (ω) のグラフを記せ。 (b) 金属中の電子の交流電気伝導度の表式 (4) とマクスウェル方程式を用いて周波数 ω がプラ √ 2 ズマ周波数 ωp = 4πne m 以上の電磁波は金属中を伝わること、それ以下の周波数の電磁波 は伝わらないことを示せ。ただし、ωτ >> 1 とする。 (c) N 個の水素イオンがある場合を考える。V` (~r) を ` 番目の水素イオンが電子に及ぼすポテ ンシャル、φ` (~r) を ` 番目の水素イオンだけがあるときのその周りの電子の 1s 軌道の固有 関数、0 をその固有エネルギーとする。N 個の水素イオンが間隔 a で1次元的に並んでい るときの、1 電子のシュレディンガー方程式の固有関数 ψ(~r) を、 ∑ ∑ ψ(~r) = c` φ` (~r), c` = ck eikR` ` k とおく。ここで k は波数、R` = `a は ` 番目の水素イオンの位置である。今、周期境界条件 φ`±N (~r) = φ` (~r) ~ N ) = ψ(~r) ψ(~r ± R (5) を課すものとする。このとき、k の取り得る値を示せ。また、適当な近似を用いると、1 電子の状態のエネルギーが k = 0 + d − 2t cos(ka) の形となることがわかる。この結果に 基づき、金属と半導体、絶縁体の違いを図も用いて説明せよ。 2. 以下の事柄のうち、1つを選び、その理由・機構も含め図も用いて説明せよ。式を使って導け る、または説明できることはそうすること。 (i) 半導体へのドーピングと p 型、n 型半導体、(ii) キュリー常磁性、パウリ常磁性、(iii) 強磁 性と反強磁性、(iv) 超伝導とマイスナー効果 7 博士前期課程 基礎科学コース「専門科目」問題用紙(2013 年度 9 月入学試験) 11 湯川は核子が π 中間子を交換することで,核子間の力(核力)を説明しようと した。このことに関し,以下の問に答えよ。 ただし,c = 3.00 × 10 8 m s−1 ,~c = 197 MeV fm であるとしてよい。また π 中間子の質 量を m とする。 ∆r c 程度であり,この間に,核力を及ぼしあう核子系のエネルギーの不確定性 ∆E は,π 中間子の静止質量程度である。まず,∆t と ∆E の間の不確定性関係を式で表せ。 (1) 核力を及ぼしあう核子間の距離を ∆r とすると,π 中間子が存在する時間は ∆t = (2) ∆r ∼ 1.2 fm 程度である。上の関係から,π 中間子の静止質量を推定せよ。答は MeV/c2 の単位で,有効数字2桁で表せ。 (3) 湯川ポテンシャル U (r) を求めてみよう。U (r) の時間変化はないと近似して,KleinGordon 方程式から時間での偏微分の項を除くと, ( ) ∇2 − κ 2 U (r) = 0 [A] となる。ただし,κ = mc/~ である。また,U (r) は球対称だと仮定できるので,こ の場合,ラプラス演算子は極座標で ( ) 1 d 2 2 d ∇ = 2 r r dr dr a (a は定数) という解をもつ。 r f (r) そこで,f (r) を r の関数として,U (r) = とおき,U (r) の満たすべき解を求 r めよ。 としてよい。m = 0 のとき,式 [A] は U (r) = ただし,r → ∞ で,U (r) → 0 になることに注意せよ。 12 東日本大震災は,日本のみならず世界に大きな衝撃を与えた。わが国において は,未だに癒されない傷跡が残り,未解決の多くの課題が山積している。 (1) このうち,科学・技術と関連の深い課題を選び,何が問題であるかを論ぜよ。 (2) 上記の問題を解決するために,基礎科学が果たすべき役割を経済活動や社会科学・ 工学等他分野との関係性を考慮して考察せよ。 (3) またそのためには,広い意味での基礎科学の研究や教育に何が必要だと考えるか。 8