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衛星-地上局間光空間通信のための実環境データ 情報収集

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衛星-地上局間光空間通信のための実環境データ 情報収集
2013.9/14
衛星-地上局間光空間通信のための実環境データ
情報収集システムの概要
The Outline of the Environmental-data gathering system for
Satellite-to-Ground Stations Optical Communications
鈴木健治† 久保岡俊宏† 布施哲治‡ 山本伸一† 辻宏之†
森川栄久† 高山佳久† 國森裕生† 豊嶋守生†
独立行政法人情報通信研究機構ワイヤレスネットワーク研究所
†宇宙通信システム研究室
‡経営企画部
あらまし 衛星-地上局間光空間通信において,地上のネットワーク網で繋がれた複数の地上局間でサイトダイバー
シティを組めば,いずれかの地上局で確実に回線が確立できると考えられる.定性的にはある程度離れた地上局間
であれば,どちらかの局で晴天域が確保でき,通信可能と考えられるが,定量的・統計的に気象観測データに基づ
いたデータの蓄積を行い解析処理することにより,その有効性を示す必要がある.そのため,日本列島の緯度経度
の離れた複数地点の実環境データを長期的に収集し,蓄積・解析するシステムを配備することとなったので,その
概要について紹介する.
1.はじめに
観測衛星のセンサが高分解能するのに伴い観測データの大
的に実環境データの蓄積・解析を行うことを計画している.
2.実環境データ情報収集システム
容量化が進んでいる.例えば,観測衛星に光衛星間通信シス
図1に実環境データ情報収集システムの構成図を示す.実
テムが搭載され静止データ中継衛星まで 1.5Gbps~2.5Gbps
環境データ情報収集装置には表1に示す観測センサを用意す
の通信容量で伝送されても,静止データ中継衛星から地上局
る.晴天域を識別するための全天モニタカメラ,雲量・雲高
にダウンリンクするフィーダリンクが細くては折角得られた
計と各種気象測器のデータを収集する.各種気象測器につい
データをリアルタイムにダウンロードすることができない.
ては観測データの信頼性を確保するため気象庁検定相当品と
静止データ中継衛星から地上局へのフィーダリンク,或いは
した.各観測局で収集された実環境データは地上のネットワ
観測衛星から直接地上局へのダウンリンクについて光または
ークを介して設定した時間間隔で伝送される.基本的には実
ミリ波等を用いた広帯域な衛星通信システムの検討が必要と
環境データ情報収集装置の制御はすべてセンター局から行い
なる.しかし,光またはミリ波等は雲または降雨による減衰
完全無人運用を可能とする.
によって通信が途絶えてしまう.光衛星通信に関して晴天域
がどのような広がりがあるのかこれまで気象衛星「ひまわり」,
アメダス等,気象庁のデジタル気象統計情報を利用した解析
の研究は行われてきているが[1][2],実際の周回衛星軌道を考
慮したサイトダイバーシティ効果が,解析可能な統計的晴天
域分布、雲量・雲高等の長期的な収集・蓄積,解析からの検
証はまだ行われていない.そこで情報通信研究機構関連施設
等の地理的広がりを生かし,光空間通信の実運用に必要な実
環境データ情報を収集する装置を全国 10 ヵ所に配備し長期
図1
実環境データ情報収集システム構成図
2013.9/14
表1
観測センサ一覧
観測センサ
1)全天カメラ
2)雲量・雲高計
3)外気温度
仕様
カラーCCD 魚眼レンズによる全天モニタ VGA
度内の雲量・雲高の推定が可能となる.温度が低ければ晴天
域であり雲が出てくれば温度が上昇し曇り空と判定される.
実環境データ情報収集装置の設置場所としては全天カメラ
画像
の視野を広くとるため,なるべく仰角 15 度以上の見通しがあ
天頂視野角約 60 度,及び全天4分割方向の 5 方
ること,雲量・雲高計のため屋上設置の場合に空調機の室外
向に赤外放射温度計:雲量精度±6% ,雲高範囲
機からの温風の影響を受けにくい場所を選択している.実環
0m~8000m ,雲高精度±200m
境データ情報収集装置は図5に示す全国の情報通信研究機構
-60℃~60℃ ,精度 20℃において 0.2℃以
関連施設の 10 ヵ所に設置する.
内)
,
4)湿度
0%~100%RH ,精度±1%RH(0~90%)以
内,±1.7%RH(90~100%)以内,強制通風筒,
または自然通風シェルターを使用
5)気圧
500~1100hPa ,分解能 0.01hPa ,精度±
0.15hPa 以内
6)照度・日射量
0~2000W/m^2
7)風向・風速
計測範囲 50m/secMax,耐風速 100m/sec
8)雨量計
転倒ます式ヒータ付雨量計:精度:雨量 20mm
図3
モノクロ CCD による全天カメラ撮像例
以下±0.5mm 以内 20mm を超える時±3%
図2に地上平置きの実環境データ情報収集設置例を示す.
設置場所において耐風速 50m/sec(最大瞬間風速:ただし沖
縄については耐風速 90m/sec とする)で設置し観測装置の一
部が飛散しない設計とする.
図4
図2
赤外放射温度トレンド
実環境データ情報収集装置及び衛星通信装置設置例
全天カメラでとらえたモノクロCCDによる全天の様子を
図3に示す.今回導入するのはカラーCCD魚眼レンズを用
いるため晴天域と雲の領域がモノクロCCDに比べて夜間で
も判別がし易くなると期待している.図4に赤外放射温度の
トレンドグラフを示す.温度の変化からセンサ方向視野角 60
図5
実環境データ情報収集装置設置場所
2013.9/14
3.実環境データ情報収集解析表示サーバ
各実環境データ情報収集装置で収集した実環境データは
NICT 小金井に設置する実環境データ情報収集解析表示サー
バに蓄積し,衛星-地上局間光空間通信を行うためのウインド
ウがどの程度確保できるかについて解析する.環境データ情
報収集解析表示サーバは以下の機能を有する.
実環境データ情報収集解析表示サーバは,各実環境データ
情報収集装置の状況を監視しデータ取得間隔等を設定する.
定期的に伝送される実環境データ情報から推定データとして
全雲量・晴天率(晴天域判定),可視判定等及び,日平均等の
統計データ情報処理を行いあわせてデータベースに登録する.
全実環境データ情報収集装置の全天モニタカメラ画像及び,
実環境データ情報の最新値を含むトレンドグラフをブラウザ
上に表示する. また,過去データ検索・表示機能として,観
測局,観測日時,雲量・雲高,気象測器データ等の範囲を検
索条件として指定し,検索結果の一覧,グラフ化し,検索結
果に対する全天モニタカメラ画像を表示することができる.
さらに,仮想的な人工衛星の TLE 軌道要素を入力とし,実
環境データ情報から各観測局の可視(晴天域)推定を行い,
人工衛星の可視範囲にある観測局及び観測時間から実環境デ
ータ情報を検索し表示するとともに,光衛星通信可能時間率
の統計処理を行う.
4.おわりに
光空間通信に使用するレーザ波長と実環境データ情報との
相関を検証し,少なくとも 2 年間の実環境データ情報を収
集・蓄積し解析して,衛星-地上局間の光空間通信回線確立
のためのサイトダイバーシティによる衛星パス時における見
通し予測を行い,最適地上局の選択アルゴリズムを検討する
予定である.
参考文献.
[1] 高山佳久,豊嶋守生,“低軌道衛星と地上局間における光通信の
実施頻度に関する検討”,信学論文誌 B, J94-B, 3, pp. 402-408 (2011).
[2] H. Ninomiya, Y. Takayama, H. Fukuchi, "Diversity Effects in
Satellite-Ground Laser Communications using Satellite Images",
AIAA International Communications Satellite Systems Conference
(ICSSC-2011), 2011-8033, pp. 1-5 (2011/11/28-12/1, Nara, Japan)
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