Comments
Description
Transcript
1 ネット配信論文① 地域の特性の書き方
ネット配信論文① 地域の特性の書き方 (実例集) ●はじめに 近年、私たち不動産鑑定士を取り巻く環境や制度は大きく変わり、不動 産鑑定評価基準各論第 3 章に代表されるよう、鑑定評価には精緻化が命題 とされています。 また、平成 22 年 1 月 1 日からの鑑定評価基準の改正、ガイドラインの 運用等により、鑑定評価に係る背景等に関する記載事項や取り交わし書類 についても整備されてきました。 ただ、このような時流にあって、最近見られる鑑定評価書の内容は、一 般的要因の分析における資料例示や価格等を求める手順等に偏りがちであ って、その本質たる価格形成要因の分析は箇条書き等で内容の薄いものが 多いと感じられます。 かつて、不動産鑑定士は、キャリアを積み、補助者に多くを任せるよう になっていくにしたがい、「もう俺は鑑定評価書を書けなくなった。 」とよ く言ったものです。 それは、すなわち自らが受験時代に学んだ鑑定評価の意義、修行時代に 鍛錬した鑑定評価書の作成等に対する自負でもあり、不動産鑑定士は、本 来実務家であって、まともな鑑定評価書 1 本を書けることこそが必要な技 量であると信じられていたからだろうと思います。 なお、今般におきましては、時代背景を反映して、もっぱら担保不動産 の調査業務等に特化してしまったため、一般鑑定を行ったことが無いとい う不動産鑑定士も多く、それら若手からも鑑定評価書を書く自信が無く、 独立をためらう話も耳にするようになりました。 また、実務修習生の指導を行っておりますと、そのカリキュラムはどう しても各論が中心であり、テキストに記載された鑑定評価例等のみを参考 にするだけでは、充分な価格形成要因の分析を書く技量を得ることは困難 1 だろうと感じられるところです。 本書執筆の目的は、それら現状を踏まえた上で、日常業務における補助 者指導等を通じ、より良い鑑定評価書を仕上げるために、地域の特性の書 き方についてのマニュアルを作成し活用しようと考えた次第です。 もしかすると、本書内には個人的解釈や我流が含まれているかもしれま せんが、自分也の理解では、自らが教えられたとおりの鑑定実務であり、 ある意味、 古典的な鑑定評価書のあり方を示すものかとも認識しています。 ただ、鑑定評価基準の総論に示された鑑定評価の意義は、過去より改正 されているものではなく、特に「不動産の鑑定評価とは、不動産の価格に 関する専門家の判断であり、意見であるといってよいであろう。」という フレーズは、この道を目指す者の心の支えであったに違いないものです。 このような鑑定評価に対する基本理念に立ちかえり、専門職業家として 誠実に努力した成果である鑑定評価書とはどのようなものであるべきか、 どのように書けばよいのかを、補助者に対する指導目線でありますが本書 に示しましたので、皆様の一助にしていただければ幸いです。 平成 22 年 7 月 不動産鑑定ネットワークサービス株式会社 代表取締役・不動産鑑定士 新見憲一郎 【おことわり】 本書は、業務の合間を見て作成したものであり、現状では未完成とも 認識しておりますが、いずれはデジタル書籍等として広く公開したく、 今後も内容充実を継続する予定にしております。 ただ、大筋の本旨までは到達しておりますので、その反応を伺いたく、 試験的に公開することといたしました。 鑑定評価書のあり方については、色々なお考えがあろうと思いますが、 全国の鑑定関係者のうち、どれほどが私と同じような考えにあるのか、 あるいは違うのかも大変興味のあるところでございますので、もし御意 見等賜れるのであれば [email protected] までお願いいたします。 2 ●目次 1.本書の目的及び方針 ①鑑定入門者によくある傾向 ②地価公示等の地域分析 ③地価公示等の比準作業 ④実務修習における地域分析 ⑤実務修習生に対する指導 ⑥一般鑑定における指導 2.地域の特性の書き方 ①基本姿勢 ②基本方針 ③土地価格比準表の検討 ④要因項目の選択 ⑤書き方のパターン 3.実例集 ①優良住宅地域 ②標準住宅地域 ③混在住宅地域 ④造成住宅地域 ⑤農家集落地域 ⑥別荘地域 ⑦高度商業地域 ⑧準高度商業地域 ⑨普通商業地域 ⑩近隣商業地域 ⑪郊外路線商業地域 ⑫大工場地域 ⑬中小工場地域 ⑭宅地見込地地域 ⑮都市近郊林地地域 3 ⑯田地地域 ⑰畑地地域 4.あとがき [以下余白] 4 1.本書の目的及び方針 ①鑑定入門者によくある傾向 およそ、この業界に勤めて初めての仕事は「地価公示等の補助」という ケースが多いと思います。 その中で、膨大な取引事例を作成し、点検作業や比準作業等を行い、鑑 定評価における基礎技能を習得するのです。 それらが、相応に練達になれば、次に「一般鑑定の補助」、まずは「住 宅地の更地」から始めようといった感じでしょう。 なお、今般の鑑定入門者は、非常に優秀な方が多く、かつ業務に対して 真面目に取り組んでくれるため、第一弾の事案である住宅地の鑑定評価な どはサラリと見事に仕上げることが多いのに驚きます。 但し、問題はそれからです。 不思議とその後に課した商業地、工業地、宅地見込地等の鑑定評価につ いては、ダメな場合が多いのです。 何故か? それは、いずれの鑑定評価もすべて住宅地の鑑定内容になっている場合 が多いからです。 「工業地の土地値を求めるのに、駅徒歩圏だから交通接近条件は良好な のか?何かズレてないか?」といった感じです。 これを、何ヶ月も何年も繰り返していると、最悪の場合、自分にはセン スが無いとか思ってしまうこともあるようですが、そんな問題ではなく、 ライセンスを取得すれば等しくできるべき作業であるので、もっと単純に 鑑定評価基準の総論に関する理解を深めていただきたいと思う次第です。 ただ、その背景には、その前段における「地価公示等の補助」で培った ルーティンワークが邪魔していること等も感じられる次第であり、その切 り替えを如何に克服するかが難しい問題であるのかもしれません。 よって、まずは自分が今まで取り組んでいた「地価公示等の補助」がど のようなものであるのかを正しく認識した上で、次の課題である「一般鑑 定の補助」に進んでいただきたい次第です。 5 ②地価公示等の地域分析 地価公示の鑑定評価書(宅地)における地域分析に関する記載欄は、次 のとおり、非常に限られたものとなっています。 この点に付き、補助者の多くも、地価公示の鑑定評価書は非常に集約さ れた書式であるという認識は持って頂いていると思われます。 よって、一般鑑定の鑑定評価書にあっては、地価公示における記載量よ り充実した内容を作成すべきと想像し、そこにプレッシャーを感じ、実際 にその作業をしてみて、ぶち当たるジレンマがあるように思えます。 しかし、冷静に考えてみれば、地価公示の補助における地域分析につい ては、 「その対象不動産がどのような地域に存するか、その地域はどのよう な特性を有するか、また、対象不動産に係る市場はどのような特性を有す るか、及びそれらの特性はその地域内の不動産の利用形態と価格形成につ いて全般的にどのような影響力を持っているかを分析し、判定することを いう。」 というような分析判断まで補助者に課したものではないでしょう。 換言すれば、指導鑑定士からの提示要因に従って作業しただけであり、 これまで補助者自らは地域分析を行ったことが無いに近いという認識を指 導鑑定士側が持つことが重要なのかもしれないとも思われます。 6 ③地価公示等の比準作業 話は地域分析から比準作業へ移りますが、本書の指導目的の 1 つは、補 助者が『地域分析を正しく行い、その価格形成要因の分析を基に、これと 整合する的確な鑑定評価方式の適用を行って、試算価格を正しく求める。 』 ということにあります。 前記において、地価公示等は、指導鑑定士からの提示要因を所与として 比準作業を行うという位置付けにて理解しましたが、これは旧三次試験や 現実務修習制度においても求められている作業であり、補助者として出来 るべき必要な実務作業です。 この実務作業に付き、補助者は、自らが勉強した鑑定評価基準において 地域要因として列挙されていた項目が、実務作業において街路条件・交通 接近条件・環境条件・行政的条件という具体的な条件項目に変わることを 比較的容易に理解してくれているようです。 例えば、鑑定評価基準に列挙された住宅地域の地域要因と、地価公示ソ フトに内在されている比準項目を比較すれば次のとおりです。 ●鑑定評価基準(地域要因・住宅地域) (1)日照、温度、湿度、風向等の気象の状態 (2)街路の幅員、構造等の状態 (3)都心との距離及び交通施設の状態 (4)商業施設の配置の状態 (5)上下水道、ガス等の供給・処理施設の状態 (6)情報通信基盤の整備の状態 (7)公共施設、公益的施設等の配置の状態 (8)汚水処理場等の嫌悪施設等の有無 (9)洪水、地すべり等の災害の発生の危険性 (10)騒音、大気の汚染、土壌汚染等の公害の発生の程度 (11)各画地の面積、配置及び利用の状態 (12)住宅、生垣、街路修景等の街並みの状態 7 (13)眺望、景観等の自然的環境の良否 (14)土地利用に関する計画及び規制の状態 ●地価公示ソフトに見られる条件項目 街路条件 道路の系統・連続性 道路の幅員 道路の舗装状態 道路の歩道状態 道路の整然性 道路の方位 その他 交通接近条件 最寄り駅への接近性 最寄りバス停への接近性 最寄り駅の性格 商業施設への接近性 公共施設への接近性 都心との距離 その他 環境条件 日照・通風等 地質・地盤・地勢等 居住環境 用途の多様性 繁華性の程度 背後地の状態 顧客の状態 商業施設の配置 画地の規模 画地の配置の状態 土地の利用度 供給処理施設の状態 8 危険・嫌悪施設への接近性 その他 行政的条件 用途地域等 その他の地域・地区等 建ぺい率 容積率 その他 将来性 市場性 同一需給圏内の地位 その他 但し、現実の地価公示等の作業では、基本的に事例適格 4 要件を備えた 類似性の高い事例を選択採用している限りにおいて、上記の全ての条件項 目に格差付けを要する場合は少なく、極論すれば、街路条件なら道路の幅 員のみ、交通接近条件なら最寄り駅への接近性のみ、といった場合も多い ものと思われます。 また、地価公示ソフトに内在されている比準システムを活用すれば、当 該比準表に適用した条件項目が自動的に格差付けされるため、結果として 当該比準表により比較できない条件項目のみが直接作業を要する範囲とな ります。 このような地価公示等の実務作業を通じ、結果として補助者は次のよう な認識を持ってしまうと見られます。 ・価格形成に影響を及ぼす条件項目、あるいは実務上格差付けすべき条 件項目は少ない。 ・環境条件は、数量的比較が困難であって、他条件にて判定される格差 付けの調整的意味合いがある。 また一方では、事例の使いまわし、すなわちこの事例を採用した場合、 試算値がどのような水準になるべきか、という観点については非常に長け てしまうという傾向があるようです。 これらの弊害について、あえてここで 1 つ 1 つ指摘解決はしませんが、 私也には、「事例相互間の環境格差バランスが歪じゃないか?自分也に正 9 直に地域を比較してどう思うのか?思ったことは正しく格差付けに反映さ れているか?そもそも、その事例は採用すべきじゃなかったのではない か?」と考えさせるようにしてはいますが、こちらが言っている正論は理 解しても、実務として自発的な作業や判断に結びつけることはなかなか難 しいようです。 ④実務修習における地域分析 話を地域分析に戻しましょう。補助者のうち実務修習を受けている者に ついては、当然そのカリキュラムの中で鑑定評価書を書いています。 現状の実務修習カリキュラムにおいて、いわゆるフルの鑑定評価書の提 出を要するものとしては次のものがあります。 ・実地演習 3 件 ・指定類型 3 件 このうち実地演習を例に挙げますと、まず下記書式にて「地域分析資料」 を作成するという流れになっています。 10 この地域分析資料の記載項目を見る限り、その内容は取引事例カードの 記載項目と類似しており、およそ地価公示等の作業を行っている補助者で あれば、容易い作業と思われます。 次に、この地域分析資料を基に、鑑定評価書を作成するわけですが、そ の際、次のような提出用書式が提示されています。 なお、ここには某年度某類型に係る地域分析の解答用紙の頁を略記する こととしました。用紙は、約 32 行の筆記式で、およそ 1 行に 35 字程度が 相応と見られる量です。 2.地域分析(第 1 頁目) (1)対象不動産が所在する○○市○○区の概況 【沿革】 (3 行…提示条件) 【人口の状態】 (2 行…提示条件) 【交通施設の状態】 (4 行…提示条件) 【道路整備の状態】 (3 行…提示条件) 【上下水道ガス等の整備の状態】 (1 行…提示条件) 【商業施設の状態】 (3 行…提示条件) 【商圏及び顧客の状態】 (2 行…提示条件) 【将来の動向その他】 (4 行…提示条件) (2)対象不動産に係る市場の特性(第 2 頁目) ①同一需給圏の判定 (9 行…空欄) ②同一需給圏における市場参加者の属性及び行動 11 (9 行…空欄) ③市場の需給動向 (4 行…空欄) ④同一需給圏における地価の推移・動向 (4 行…空欄) (3)近隣地域の状況(第 3 頁目) ①近隣地域の範囲 (8 行…空欄) ②地域の特性等 (12 行…空欄) a.街路条件 (8 行…空欄) b.交通・接近条件(第 4 頁目) (7 行…空欄) c.環境条件 (7 行…空欄) d.行政的条件 (7 行…空欄) e.その他の条件 (7 行…空欄) ③将来動向等(第 5 頁目) (8 行…空欄) ④標準的使用及び標準的画地 (15 行…空欄) これを見る限り、鑑定評価書に記載されるべき地域分析としては十分な 量とバランスであると思われ、特に市場分析が重視されることとなった現 状にあっては、いわゆる古典的な鑑定評価書に慣れた不動産鑑定士にとっ ても見本とすべきものと思われます。 ただ、実地演習を全うしようとする修習生にとっては、テキストこそが 絶対的な見本となるものであり、このテキストを見ますと、「a.街路条件 12 ~e.その他の条件」の記述は、以下のとおり各種各様の状況となっていま す。 さて、修習生はどれをどのように参考とすればいいのでしょうか? 【更地の鑑定評価(評価書編) 】 a.街路条件 幅員約 10mの舗装区道第○号線(通称: 「○○通り」)が地域の標準的な街路であ り、道路の種類は、建築基準法第 42 条第 1 項第 1 号の規定に該当する。 b.交通・接近条件 ○○線X駅に徒歩○分、地下鉄○○○線Y駅に徒歩○分と駅に近く、また、○○ 駅にもY駅から 2 駅目であること、平成 0 年 00 月地下鉄○○○線が開通するなど接 近性に恵まれている。 付近にa学園、b学園、c附属中学、d附属高校など私立中学、高等学校が多い ことから、通勤、通学、買い物等いずれも利便性は良好である。 c.環境条件 (a)供給処理施設 上水道、下水道、都市ガスともに整備済みである。 (b)危険・嫌悪施設 特に無い。 d.行政的条件 ・市街化区域 ・第 1 種中高層住居専用地域(指定建ぺい率 60%、指定容積率 200%) ・準防火地域 ・日影規制(一) ・第 2 種高度地区 e.その他の条件 ない 13 【借地権と底地の鑑定評価(評価書編) 】 a.街路条件 幅員約 8m及び約 6mの舗装市道で整然と区画されている。 b.交通・接近条件 JR○○線「○○」駅の南東方に徒歩 5 分程度で、至近の県道○○線沿いに○○ バスが通じており「○○」停留所が存在する。 c.環境条件 (a)供給処理施設 上水道、下水道、都市ガスともに整備済みである。 (b)危険・嫌悪施設 特にない。 d.行政的条件 ・市街化区域 ・近隣商業地域 ・指定建ぺい率 80%、指定容積率 300% ・準防火地域 e.その他の条件 特にない。 【貸家及びその敷地の鑑定評価(評価書編) 】 a.街路条件 接面道路は、南東側の幅員約 17mの舗装市道(市道第○号線)が標準である。系 統・連続性は普通である。 b.交通・接近条件 ○○線「○○」駅から、近隣地域の中心まで南東方へ約 560mに位置する。 c.環境条件 地勢は平坦であり、供給処理施設としては、上下水道、都市ガスがある。危険・ 嫌悪施設等はない。 d.行政的条件 市街化区域、商業地域、指定建ぺい率 80%、指定容積率 300%、防火地域に指定 14 されている。 e.その他の条件 【区分所有建物及びその敷地の鑑定評価(評価書編) 】 a.街路条件 近隣地域の街路は、南側幅員約 6.0mの舗装区道(○道第○○号線)を標準とし、 当該街路に 4m前後の舗装区道が接続している。 当該街路は東方約 170mで「○○」通りに接続しており、系統・連続性は普通で ある。 b.交通・接近条件 最寄り駅は○○地下鉄「○○」駅まで約 650m、徒歩約 9 分、当駅から「○○」 駅で○○線に乗り換えて、 「○○」駅まで約 15 分の所要時間である。 最寄り商店街である「○○」駅至近の○○通りには小売店舗、飲食店舗、銀行等 が集積するほか、○○通りには大規模店舗「○○屋」が所在する。また、駅西側に 「○○大学」 、 「○○病院」が、駅東側に「○○公園」や「○○図書館」があるほか、 対象不動産から南東方約 400mに「○○小学校」、南西方 250mに「○○中学校」が 所在する。 c.環境条件 対象不動産が属する近隣地域は、○○線「○○」駅から徒歩圏内に所在し、○○ 市屈指の優良住宅地域である「○○エリア」に位置しており、低層の一般住宅や低 中層の共同住宅等が建ち並ぶ喧騒から一歩入った高台にある静寂な南傾斜の住宅地 域である。旧来は大規模な個人邸宅、企業福利厚生施設等が多い土地柄であったが、 長年を経て徐々に中高層の共同住宅が増え、土地の高度利用が進んでいる。なお、 供給処理施設として上水道、公共下水道及び都市ガスを完備している。 d.行政的条件 近隣地域は、第 1 種中高層住居専用地域、建ぺい率 60%、容積率 300%(基準容 積率 240%)、第三種高度地区、準防火地域、日影規制(二)の規制下にある。 e.その他の条件 特にない。 15 【新規・継続地代の鑑定評価(評価書編)】 a.街路条件 幅員○○mの両側歩道付舗装○道で、系統・連続性は良好。 b.交通・接近条件 (a)最寄り駅 東京メトロ○○線「○○」駅から近隣地域の中心まで○○方へ徒歩で約○分。東 京メトロ○○○線「○○」駅から○○方へ同約○分。東京メトロ○○○線「○○」 駅から○方へ同約○分。朝夕の運行はいずれも頻繁である。 (b)都心への接近性 東京メトロ○○線「○○」駅から同線「○○」駅まで約○分を要する。最寄り駅 からJR「○○」駅まで、 「○○○」駅でJR山手・京浜東北線に乗り換えて約○○ 分を要する。 c.環境条件 (a)自然的状態 地勢は平坦 (b)供給処理施設 上水道・公共下水道・都市ガスがある。 (c)危険・嫌悪施設、自然的災害、公害 ない (d)土地利用の状況 高層の店舗事務所ビルが連担する商業地域。 近隣地域を含む○○地区はわが国を代表する高度商業地域であり、世界的にも知 名度が高く、百貨店等の大規模店舗・外資系高級ブランドの店舗等が高密度に集積 している。近隣地域は、この○○地区の中で繁華性の高い「○○通り」沿いの一角 を占めている。 d.行政的条件 商業地域、防火地域、指定建ぺい率 80%(耐火建築物は制限がない)、指定容積 率 800%、機能更新型高度利用地区(※1)、街並み誘導型地区計画区域(※2)、駐 車場整備地区 (※1)機能更新型高度利用地区 16 ~省略~ (※2)街並み誘導型地区計画区域 ~省略~ e.その他の条件 ない 【新規・継続家賃の鑑定評価(評価書編)】 a.街路条件 幅員約 20mの舗装都道(都道△△線・□□通り)が南北に通り、当該都道に幅員 5m程度の区道が接続している。 b.交通・接近条件 JR○○線及び私鉄○○線の「△△」駅から近隣地域の中心まで北方約 150mに 位置し、徒歩約 2 分の距離である。 c.環境条件 (a)供給処理施設 近隣地域内は、上水道・公共下水道・都市ガスが概ね整備されている。 (b)危険・嫌悪施設 特になし。 d.行政的条件 市街化区域、商業地域、建ぺい率 80%、容積率 600%、防火地域、駐車場整備地 区に指定されている。 e.その他の条件 特にない ⑤実務修習生に対する指導 実務修習生に対する指導において、こちらとしてはNoGoodと言っ ているのに、「テキストにはこのように書かれています。 」と根拠付けされ た時には、何と言ってよいものか実際困ったものです。 確かに、テキストというものは、少なくとも間違いのないものであって、 見本とすべき性格のものではあるけれど、設問として例示されたものであ 17 るし、それを君はどう読み取ったのか?記載項目を鵜呑みにして書き替え れば良いだけなのか?自分が勉強していることや得つつある感覚の中で違 和感はないか?と思う次第です。 では、そのへんを整理し、認識してもらうために、前記テキストが示す ところについて検討してみましょう。 まず、テキストにおける大枠の書式形態は、「地域の特性等」としてダ イジェストを提示した上で、その内訳項目として「a.街路条件~e.その他 の条件」が記載される形態とされています。 当然、そのダイジェストそのものが、充実した本論であって、必要なエ ッセンスを充足してしまえば、確かに「a.街路条件~e.その他の条件」に 記載すべき事項は薄くなってしまうのかもしれません。 現に、実地演習の用紙では 36 行与えられていたスペースに対し、テキ ストにおいては以下のとおり非常に少ない記載量となっています。 更地 借地権 貸家敷 区分所有 地代 家賃 街路 2行 1行 2行 3行 1行 2行 交通接近 5行 2行 1行 7行 8 行(細) 2行 環境 4 行(細) 4 行(細) 2行 6行 12 行(細) 4 行(細) 行政 5 行(箇) 4 行(箇) 2行 2行 7 行(例) 2行 その他 1行 1行 0行 1行 1行 1行 計 17 行 12 行 7行 19 行 29 行 11 行 (細)…細項目のタイトル行を含む行数 (箇)…箇条書きでの行数 (例)…例示説明文を含む行数 なお、私也には、記載量が少ないと感じる以外に、次のように思った次 第です。 ・書式形態は各者各様であって、統一されたものは無いことが確認され る以上、修習生は適時適当な書式形態を選択して対応すべきであろう。 ・1~2 行のものについては、修習生に示す見本として不足を感じるが、 これが全て現在の傾向では無く、長文で味わいのある文章表現も残さ れていることにやや安心を覚える。 18 ・細項目や例示を示すことにより、何を示したいのかが伺えるものがあ り、修習生にはこの書式形態がやりやすいのかもしれない。しかし、 どれだけの細項目を書くべきか迷うなら難しい作業になるだろう。 よって、実務修習生は、テキストのパターンがどのようなものなのかを 全体的な視野で認識し、指導鑑定士の意見も踏まえた上で、地域の特性の 記述に取り組んでいただくことが望ましいと思います。 但し、実務修習生にとっては、まず修習過程をクリアするということが、 課せられたテーマであります。 実は、本書執筆の過程で、実務修習生から実務修習審査基準というもの を渡されました。これは(社)日本不動産鑑定協会のサイトに公開されて いるそうで、指導鑑定士である私はこれを認識しないで指導していたとい うお恥ずかしい話ですが、実務修習審査基準によりますと、「地域の特性」 の記述等は重点事項に挙げられていません。それは当然に、それ以上の重 要な項目があるからでしょうが、修習生が審査基準まで考えて取り組んで いたとなれば、私としてもその審査基準を踏まえたウェイト付けでの取り 組みが正しいと思う次第です。 何事にも全力完璧にこしたことはないですが、それは設題の趣旨、すな わち何が重要で、何を求められているかを理解し、その内容を充足させた 上で完璧を求めるべきものであり、完璧志向であることが、限られた時間 内での作業において重要な箇所をとりこぼすといった話であるなら、それ はミスとなるでしょう。 よって、実務修習のカリキュラムの中おいては、本書で言う地域の特性 の書き方については、さほど時間をかけるべきでないのかもしれません。 ⑥一般鑑定における指導 以上のとおり、補助者は各分野において若干異なるニュアンスの作業を 強いられ、究極には日常実務における不動産鑑定士の指示に左右され、大 きく困惑しているものと思われます。 ただ、地価公示はこうだから、実務修習はこうだから、と言った話は不 動産鑑定士には通じても、依頼者等に通じるべきものではありません。 19 自ら不動産鑑定士になった暁には、 その地域に育ち、生活あるいは商売をしている方に対し、 その不動産を購入し、運営し、売却しようという方に対し、 不動産に精通し、目利きのある方等に対し、 理論と実態とを踏まえた的確な価格形成判断を端的に説明できなけれ ばならず、それに対して専門職業家として評価を受け、その評価に自負を 持てるようになれなければならないのです。 となれば、私としては自らが指導する補助者に対して、街路条件の記述 は1~2行で良い等とはとても言えず、鑑定評価基準の総論に「鑑定評価報 告書の作成に当たっては、まずその鑑定評価の過程において採用したす べての資料を整理し、価格形成要因に関する判断、鑑定評価方式の適 用に係る判断等に関する事項を明確にして、これに基づいて作成すべき である。」と示されているのだから、それを踏まえ必要かつ十分な記述 をするべき。と指導する次第です。 [以下余白] 20 2.地域の特性の書き方 ①基本姿勢 先のテキストにて例示されたとおり、地域の特性の書き方については、 各者各様のものが存在していますが、本書においては、補助者指導を目線 として、以下の姿勢にて考えるものとします。 【実態論よりも、まずは理論】 今般においては、不況の折、鑑定事務所の求人は厳しく、試験合格後で しか鑑定業者へ就職できないという状況にもあるかと思いますが、元来、 この業界には、鑑定事務所にて仕事しつつ受験勉強するというスタイルが 多くありました。 ただ、そこには長年に渡り補助者業務を行っていて、各分野の業務に応 じて、あるいは指導鑑定士の個性に応じて、要領の良い補助業務は行える が、鑑定士試験には合格しないという方が多くいました。 下手すると、不動産鑑定士より実務にうるさい御大的な補助者というも のも存在していましたし、それは他の資格士業の事務所でも時折見られた 状況でした。 このような方に付きましては、実務に慣れ過ぎたことで、試験で実態論 を解答してしまい不合格となってしまう。と言ったように、さも不合格が 許容されるかのような風潮もあったかと思います。 なお、重要なことは、試験は試験であり、試験問題にて求められている ことを的確に見抜き、所定の時間内で過不足無く解答するということ。実 務は実務であり、補助業務に対して実態経験に基づく意見を求めているの ではなく、まずは理論どおりやったらどうなるかを求めたい。ということ です。 当然、スキルの高い補助者になることが目的で無いことは誰しも理解し ているところでありますが、ライセンスを有するプロとはどのようなもの か、少なからず経験不足の新米プロの存在は否めませんが、理論が身に付 21 いていないプロはどうしようもありません。 先生と呼ばれる前提として、まずは理論に照らし実務を行っていくこと を求めたいと思います。 【各論三章よりも、まずは公共評価】 近時における鑑定業界を取り巻く環境は劇的に変化しており、公共発注 の評価等は激減し、新たに各論三章等の業務が生まれ、それに応じて基準 や制度も変わってきました。 確かに、金融財としての不動産評価が脚光を浴び、精緻化された各論三 章対応の鑑定評価書を見れば、一見恰好良く、今般における花形業務であ ろうとも思います。 但し、地方鑑定士の僻み半分で言えば、投資適格物件の価値を地元マー ケットでは不相応と思えるキャップレートで判断するために、あえて地域 要因を薄く書いているのか?と思う鑑定評価書が多く、あえて補助者に仕 込むべき分野では無かろうと思う次第です。 それならば、地味かもしれませんが、公共評価において地元の用地担当 者を相手として、理論と実態の整合を測ることに努力するほうが、まずは 的確かつ誠実な三章対応への道でもあろうと思う次第です。 なお、近時においては、公共事業の減少に伴って、用地担当者の方につ きましても、補償や土地評価に対する理解や経験が浅くなってきている傾 向があり、そのような状況において正しく用地業務を進めていただくこと に寄与することも鑑定評価の意義であり、この鑑定制度の創設時の主旨の 1 つでもあるところです。 よって、本書においては、投資市場等を前提とした地域分析よりも、ま ずは過去からの歴史や地域性等の観点を無視できない地元市場を前提とし た地域分析を念頭に考えて行きたいと思います。 【量より質、質より時間】 再び昔話になってしまいますが、かつては補助者が自筆で作成した原稿 22 を、指導鑑定士が赤ペンや口頭で修正指示し、最終原稿をワープロ化して いましたが、今般ではパソコン上での直接修正が可能となり、補助者が修 正の根拠や背景等を理解し身に付ける時間や工程が無くなってしまったよ うに思えます。 よって、今般の補助者は、自ら修正の主旨を反復して身に付けることが 必要であろうと思われます。 但し、それは、既に終わった案件に対して「もう一度考えろ」という指 示ではなく、「気付けばよい」程度のつもりです。 ニュアンスは難しいかもしれませんが、補助者が原稿を作成するに際し、 パソコンに向かって考え込んでいる姿があるとします。 私は、それを“フリーズしている“すなわち頭がストップしていると理 解しています。 きっと、もうそれ以上は考え込んでも質の高い結果は得られないし、試 験であればアウトでしょう。 補助者に対して言うのは、「高度な知識と豊富な経験と的確な判断力と が有機的に統一されて、初めて的確な鑑定評価が可能となるのであるから、 不断の勉強と研鑚とによってこれを体得し、鑑定評価の進歩改善に努力す ること。」です。 あくまでも、補助者に求める地域分析は、既に調査判断したことのアウ トプットです。 それは、物件調査等の過程において考えられ、整理されているべきもの であって、机に向ってから考えても答えは出ないのです。 現にフリーズしてしまっている状況に対し、それを尋ねると、どこかに 見落としがあったという場合が多い傾向にあります。 “事件は現場で起きている”みたいなものです。現場を見て考えれなか ったことは報告できない。という単純なことなのです。 よって、これから示す地域の特性の書き方については、「物件調査等の 心得」でもあり、自らが需要者あるいは依頼者とした場合、その物の価格 を導くためにどのような資料や情報が欲しいのか、資料を見て想像された ものと現地を見た結果とはどのように違うのか、周辺類似の事例とその物 はどのように違うのか、それらを念頭に調査した結果を「地域の特性」と 23 して表記することによって、求められる質も時間も達成し得るものと考え ます。 【他の不動産鑑定士により評価を受ける意識を持つ】 本書は、第一義的に補助者指導を目的に執筆しておりますが、大きな伏 線としては、一部残念と思われる鑑定業界の現状に対する意見表明でもあ ります。 本来、プロフェッショナルである以上、他のプロの仕事に対してどうの こうの言うつもりはありませんが(それらは自己責任でしょう。)、専門職 業家としての意識も時代に飲まれつつあるのか、どうも良くないと見られ る鑑定評価書を多く目にするようになりました。 なお、ここにいう良い、良くないとは、本書の意義に重なる部分でもあ って、不動産鑑定士にしかわからないだろう部分であり、顧客の満足等で はありません。 少なからず、自分が出した鑑定評価書が、何某かの形で一人歩きした時、 誰に見られても恥ずかしく無い、当然の報酬を得べきものと見られるべき ものであって、意図的なのか無意識なのか、いったいどこ出身の鑑定士な のか等とは思われたく無い程度のプライドは持つことだろうと思います。 鑑定評価書は、本来そのような風評を受ける成果物として、この業界の 自浄作用等を喚起すべきなのですが、どうも表に出にくい性格の書類であ ることが、残念の根源になっているようです。 但し、一方では依頼者の認識や行動も大きく変化しており、現実にはそ の評価書のコピーが他者へ渡されることは多くなってきており、もはや他 人からの風評から逃れることは困難でしょう、もしかすると成果物次第で 不動産鑑定士が淘汰される時代がくるかもしれません。 新制度では、依頼者以外への提出、公表、開示を明示するようになりま したが、一部の業務に関する責任回避なのでしょうか。少なからず、どこ の誰に出されようが、依頼目的の下に適正に評価が行うということについ ては変わりないものであり、そのような専門職業家の仕事であるべきと思 う次第です。 24 ②基本方針 以上の基本姿勢により、本書においては、補助者指導を前提に以下の具 体的方針にて「地域の特性」を仕上げるものとします。 ●公共評価等において活用されている土地価格比準表(六次改訂)に挙 げられた要因項目を念頭に、当該地域の実態に照らして必要と考えら れる要因項目に関する調査事項等を、実地演習の解答用紙程度の記載 量(各条件 7 行内)に纏める。 ③土地価格比準表の検討 それでは、土地価格比準表(六次改訂)の冒頭にある「優良住宅地域(別 表第 1) 」を例に、これから行うべき検討の内容及び手順を考えましょう。 (別表第 1) 条件 項目 細項目 格差の内訳 街路 街路の幅員・構造等の 幅員 ▲4.0%~+4.0% 条件 状態 舗装 ▲2.0%~+2.0% 配置 ▲5.0%~+5.0% 系統及び連続性 ▲4.0%~+4.0% ▲6.0%~+6.0% 交通接 都心との距離及び交通 最寄駅への接近性 近条件 施設の状態 最寄駅から都心への接近性 商店街の配置の状態 最寄商店街への接近性 ▲4.0%~+4.0% 最寄商店街の性格 ▲3.0%~+3.0% 学校・公園・病院等の 幼稚園、小学校、公園、病院、官公 ▲8.0%~+8.0% 配置の状態 署等 環境 日照・温度・湿度・風 日照、温度、湿度、風向、通風等 ▲3.0%~+3.0% 条件 向等の気象の状態 眺望、景観、地勢、地盤等 ▲3.0%~+3.0% 眺望・景観等の自然的 環境の良否 25 ▲14.0%~+16.0% 居住者の近隣関係等の 居住者の近隣関係等の社会的環境 社会的環境の良否 の良否 各画地の面積・配置及 画地の標準的面積 ▲5.0%~+5.0% び利用の状態 各画地の配置の状態 ▲3.0%~+3.0% 周辺の利用状態 ▲3.0%~+3.0% 上下水道・ガス等の供 上水道 ▲3.0%~+3.0% 給処理施設の状態 下水道 ▲4.0%~+4.0% 都市ガス等 ▲2.0%~+2.0% 変電所・汚水処理場等 変電所、ガスタンク、汚水処理場、 の危険施設・処理施設 焼却場等 ▲18.0%~+22.0% ▲20.0%~+24.5% 等の有無 洪水・地ずべり等の災 洪水、地すべり、高潮、崖くずれ等 ▲5.0%~+5.0% 騒音・大気汚染等の公 騒音、振動、大気汚染、じんあい、 ▲5.0%~+5.0% 害発生の程度 悪臭等 土地の利用に関する公 用途地域及びその他の地域地区等 法上の規制の程度 その他の規制 その他 将来の動向 害発生の危険性 行政的 条件 その他 その他 ▲6.0%~+6.0% ▲α%~+α% ▲10.0%~+10.0% - 【項目・細項目】 まず、土地価格比準表に対する認識ですが、“基本書”という感覚でよ かろうと思います。 土地価格比準表は、鑑定評価基準第 3 章第 2 節に示された地域要因(住 宅地域についてはP7~8 のとおり)について、更に地域区分を行い、項目・ 細項目が示された便利なテキストであって、土地評価における格差付けの 範疇にあっては、ある意味、唯一オーソライズされた基準書という位置付 けにあります。 ですので、補助者は、地域分析に当たって上記項目・細項目について調 26 査を行い、その結果を淡々と記述すれば良いだけなのです。 となれば、各要因が 1~2 行の記載で充足される訳がないことは当然で あり、逆に非常に膨大な事項を如何に端的に仕上げるか(記載量を減らす か)に力が注がれるべきものであって、そこには鍛錬が必要であろうと思 います。 なお、そのようにして作成した文章は、読み手に対し当該地域の地域性 を明確にイメージできるようなものであるべきですから、少なからず机の 前で文章表現也を考え込むといったことは必要になってくると思います。 およそ、前に言った“フリーズ”状態というのは、例えば、自ら新たな 理論展開して要因を見出そうなどと勘違いした場合等であって、わからな ければもう一度基準に立ち戻って考えろ、そこには何が示されているの か?と指示する次第です。 【格差の内訳】 土地価格比準表は、土地価格を算定する目的の基準ですので、格差率が 示されています。 この格差率の大小は、各項目・細項目の比重と理解することもでき、地 域の特性を記述する上での一つの指標になるものと思われます。 但し、土地価格比準表については、その冒頭に示された「土地価格比準 表の取扱いについて」を念頭に置く必要があり、その内容を考慮すれば、 必ずしも格差率の大小のみをもって重要性を判別すべきものではなく、基 本的には近隣地域の特性に従い、各項目・細項目を取捨選択すべきことが 理解できます。 例えば「土地価格比準表の取扱いについて」のうち、優良住宅地域に関 わるものを挙げて考察すれば、次のとおりとなります。 土地価格比準表の取扱いについて 考察 (地域の判定) 地域は、自然的及び社会的条件からみて土地の用途 およそ、鑑定評価基準に言う近隣地域 が同質と認められるまとまりのある地域ごとに判定す の範囲は、左記により把握される範囲よ 27 ることを原則とする。この場合、地域の範囲は、当該 り、もう少し絞り込まれた狭い地域的範 地域の価格水準からみて、当該地域内のそれぞれの土 囲になる傾向があるでしょう。 地の価格が 30%以内に分布する地理的範囲を一応の目 安として判定することができるものとする。 (積雪地域における街路条件について) 積雪地域においては、除雪施設及びU字溝の有無並 すなわち、別表に示された項目・細項 びに道路の幅員の大小が道路の機能を左右する重要な 目が全てでは無く、ケースバイケースで 要因であるので、別表に定める街路条件による格差率 価格に影響を及ぼす要因を判定すべき に 5%を限度とする格差率を適用できるものとする。 ということです。 「用途地域及びその他の地域、地区等」について 住宅地域においては、これらの公法上の規制の内容 減価要因として取り扱う必要がない によっては良好な環境を保護し、又は促進する場合が と判断するに至った事実が重要である あるので、このような場合には減価要因として取り扱 ならば、格差は無くとも、相応の内容を う必要がないことに留意すべきである。 記載すべきでしょう。 「眺望、景観」について 住宅地域、特に優良住宅地域については、眺望、景 観が大きなウエイトを持つ場合があるので、これにつ これも上記と同じく、ケースバイケー スということ意味しています。 いては、別表に定める格差率に関わらず 10%を限度と して適用することができるものとする。 このように、「土地価格比準表の取扱いについて」を考察すれば、基本 的にはケースバイケースで良いという結論になりますが、これはあくまで も土地価格比準表の限界(非万能性)に対するものであり、補助者の姿勢 としては、そのようなイレギュラーな要因を見出すことよりも、まずは必 要な要因項目を取りこぼさぬよう留意することが重要と思われます。 ④要因項目の選択 それでは、必要な要因項目をどのように取捨選択していくかを考えてい きましょう。 但し、これについては、その前提である近隣地域の把握の如何によって 28 左右されるものであり、もっと言えばそれに関連する類似地域の把握や採 用可能な事例の特性も踏まえて考えなければならないことに留意する必要 があります。 例えば、「日照・温度・湿度・風向等の気象の状態」は、広域的な圏域 に共通するであろう要因項目であって、例えば霧が多発する等の特徴があ れば記載しやすいでしょうが、近隣地域といった単位についての特徴は掴 みづらく、格差付けを要する程度の特徴的な影響が伺われたとしても個別 的要因として把握すべきという観点もあるでしょう。 また、「変電所・汚水処理場等の危険施設・処理施設等の有無」は、格 差の内訳が▲20.0%~+24.5%となっており、その尺度からすれば一番大 きな要因項目になりますが、優良住宅地域であればこのような施設が無い のが通常であるから、無い場合には記載する程度のことではないのか、そ れとも無い事実が重要であるから記載すべきなのか、といった観点もあり ます。 また、 「将来の動向」については、上記 2 つの観点とともに、市場分析 として別途記載されるべきもの、といった観点もあります。 こうした検討は、上記要因項目に限るものでは無く、全ての要因項目に ついて全体を考えつつ作業しなければならないことであり、ここで 1 つ 1 つ解説していくことは困難ですので割愛しますが、このような検討を繰り 返し行うことが鍛錬であり、より良い鑑定評価書の作成に繋がるものであ ると言えます。 とはいえ、必要な要因項目の抽出には、重視されるべき観点が考えられ ますので、本書においては、次のとおり例示するものとしました。 ●地価公示・地価調査において官報・公報記載事項とされている項目。 ●役所及び現地等において調査した事項のうち、宅地建物取引業におけ る重要事項説明書の記載項目とされている項目。 ●比準作業において類似事例との間に格差を生じる要因項目。 ●標準的使用、市場特性を把握する上において必要な要因項目。 29 ⑤書き方のパターン 以下に挙げた地域分析の書き方のパターンは、私自身が修行時代に教え られたものを基本に、勉強会や業務において培ったもの、書籍や拝見した 多くの評価書にて見られたもの等から考えて、基本形と言えるものです。 【街路条件】 ・標準街路の提示 ・標準条件の概要、機能性 ・周辺地域あるいは類似地域との比較における位置付け(優劣) 【交通接近条件】 ・近隣地域の位置 ・交通接近条件の概要、立地適性 ・周辺地域あるいは類似地域との比較における位置付け(優劣) 【環境条件】 ・近隣地域の概要 ・環境条件の概要、利用適性 ・周辺地域あるいは類似地域との比較における位置付け(優劣) 【行政的条件】 ・行政的条件の概要 以上のとおり、地域分析の構成は極めてシンプルに考えることができま す。 およそ、地域分析が 1~2 行の鑑定評価書は、上記の下線部(概要)さ え略記されたものであり、そこまで評価書をダイエットさせてしまったら、 いったいその地域はどのような地域なのか読みとることは不可能でしょう。 また、ある意味で言うと、地域分析が 1~2 行の鑑定評価書とは、間違 い様の無いものであり、すなわち、それは補助者が作成し鑑定士の修正を 30 要しないものであって、土地勘の無い遠隔地の評価であっても簡単にでき てしまう程度のものなのです。 話は再び昔話になりますが、地域分析を書くに当たって、例えば差別、 風評、事件等をどのように書けばいいのかという論点は定番でした。 近時においては、市場分析が重視されるに至り、特にそれらの記載につ いては工夫努力が必要と思われますが、それらを 1~2 行で済ませるなら 非常に簡単な話で終わります。 もうこれ以上説明は不要と思いますが、以上のような観点を念頭に今一 度「その対象不動産がどのような地域に存するか、その地域はどのような 特性を有するか、また、対象不動産に係る市場はどのような特性を有する か、及びそれらの特性はその地域内の不動産の利用形態と価格形成につい て全般的にどのような影響力を持っているかを分析し、判定すること」が どうあるべきか、どのように調査してどのように記載すべきかについて考 えて頂きたい次第です。 [以下余白] 31 3.実例集 それでは、以下に弊社で行った過去の先例より、典型的な地域分析を各 地域種別毎に掲載し、土地価格比準表との関連を踏まえ、若干のコメント を付したいと思います。 なお、各実例は、具体の依頼目的と不動産を前提として構成した実例で あり、現鑑定評価基準への改正前のものも含んでいるので、必ずしも完全 万能のものではない旨御了承頂きたい。 また、コメントについては、手前味噌ながら、御容赦頂きたい。 ①優良住宅地域 【土地価格比準表】 (P25~26 のとおり。 ) 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 本件対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有 する地域は、一般住宅、共同住宅、店舗、空地等の混在する住宅地域であって、 その範囲は対象不動産を中心に北方約 50m、南方約 70m、西方約 100m、東方約 40mの範囲(後添地図に図示した通り)と把握した。 ②近隣地域の地域的特性 街路条件 当該地域は、市道「****号線」等を標準としている。 同街路は、土地区画整理事業により整備された区画街路であり、その構造は幅 員約 6mの舗装道であって、歩道は存しないが、住宅地域内街路として良好な構 造品等を有している。 系統性については、地域内街路に止まっており、車両交通量等は低位である。 連続性については、当該地域の東端に幅員約 12mの「****通」が存しており、 南方約 280mの幹線街路「****通」へと至っており、利便性は良好である。 32 総じて当該地域は、住宅地域として区画整然とした良好な住環境を形成する街 路条件を有している。 交通接近条件 当該地域は、**盆地の中北域に存しており、**の中心市街地である****からは 約 5.5km(直線距離)に位置している。 鉄道の利用性については、当該地域の南東方約 780m(以下、道路距離)、徒歩 約 10 分に地下鉄**線「**」駅が存しており、市内中心部の「**」駅へ 11 分の乗 車距離にある。 バス便の利用性については、当該地域の東端に市バス「****」停留所が存して おり、地下鉄**線「***」駅へ 3 停留所の乗車距離にある。 商業施設等との接近性については、当該地域の北端に存する市道「****線」を 始め地区内に配された各地域内準幹線沿道に各種店舗等が見られるほか、南方約 280mの「**通」 、東方約 700mの「**通」沿道はブティック等も存する商業地と なっている。 義務教育施設については、北方約 460mに市立***小学校、西方約 640mに市立 ***中学校が存している。 総じて当該地域は、各種施設等との接近性に優れた良好な生活利便性を有する 地域である。 環境条件 当該「***」地区は、**盆地の中北域、**川と**川に挟まれた範囲にあって、 「**」 地区等とともに、**を代表する良好な住宅地域として認識されている。 この中にあって当該地域は、比較的駅近に位置して、一般住宅、共同住宅、店 舗、空地等の混在する住宅地域となっている。 当該混在性については、地域内に未だ多く存する生産緑地が地域熟成を阻害し ていること、宅地化の過程においては一般に住宅地分譲による画地の細分化傾向 が見られること等が挙げられる。また、店舗については自営業種を主としており、 「***」地区全域に店舗等の点在が見受けられる。 なお、当該地域の住環境については、昭和 47 年に組合施行による土地区画整理 事業を完了しており、区画整然とした閑静な環境を有するとともに、水道・ガス・ 下水等の供給処理施設は整備済みの状況である。 33 また、当該地域の西方約 180mには**川の河岸公園、南方約 300m(入口は南西 方約 780m)には「****」等が存しており、生活環境も良好である。 総じて当該地域は、住宅地域としての成熟にやや遅れた状況にあるが、その住 環境は良好であり、住宅地需要も多い地域となっている。 行政的条件 当該地域は、都市計画区域・市街化区域・第 1 種低層住居専用地域(建蔽率 50%、 容積率 80%)、10m第一種高度地区、第 1 種建造物修景地区に指定されている。 なお、当該地域は周知の埋蔵文化財包蔵地「******」に包含されている。 ③標準的画地及び標準的使用の把握 当該地域内には中小の画地が混在する状況にあるが、一般的には画地の細分化 傾向を有しており、当該地域の地域性及びその価格水準は中規模一般住宅をもっ て代表されると判断される。 なお、後記「Ⅳ.鑑定評価方式の適用」において採用する標準画地は、当該地域 が低容積住宅地域であって方位格差の適用が必要と判断されるため、基準方位を 北として「間口約 6.6m、奥行約 21m、地積約 140 ㎡の長方形地」 (後添地図に図 示した通り)であり、その標準的使用は「一般住宅の敷地」としての使用と把握 した次第である。 上記標準画地の規模形状については、当該地域内に存する地価調査基準地「** (*)-3」の規模形状、各取引事例の規模形状、本件対象地を有効に区画割りした 場合の規模形状等に留意して判定した次第である。 【コメント】 優良住宅地域を換言すれば、高級~中高級となろう。全国的知名度を有 する地域、圏域的にステータスが認識されている地域等について、諸条件 や地価水準だけでは測れない何かを表現する必要があろう。 上記実例については、各所に距離表示が多いことが気になるが、およそ 必要十分な事項は記載されていると思う。 なお、優良住宅地域としては、ステータス等のキーワードも欲しいとこ ろであるが、中高級で未成熟な地域であることを踏まえ、ブティック等の 表現をもって工夫したと考えられる。 34 ②標準住宅地域 【土地価格比準表】 条件 項目 細項目 格差の内訳 街路 街路の幅員・構造等の 幅員 ▲6.0%~+6.0% 条件 状態 舗装 ▲3.0%~+3.0% 配置 ▲4.0%~+4.0% 系統及び連続性 ▲4.0%~+4.0% 交通接 都心との距離及び交通 最寄駅への接近性 ▲11.5%~+13.0% 近条件 施設の状態 最寄駅から都心への接近性 ▲18.0%~+22.0% 商店街の配置の状態 最寄商店街への接近性 ▲8.0%~+8.0% 最寄商店街の性格 ▲3.0%~+3.0% 学校・公園・病院等の 幼稚園、小学校、公園、病院、官公 ▲6.0%~+6.0% 配置の状態 署等 環境 日照・温度・湿度・風 日照、温度、湿度、風向、通風等 ▲3.0%~+3.0% 条件 向等の気象の状態 眺望、景観、地勢、地盤等 ▲3.0%~+3.0% 居住者の近隣関係等の 居住者の近隣関係等の社会的環境 ▲5.0%~+5.0% 社会的環境の良否 の良否 各画地の面積・配置及 画地の標準的面積 ▲3.0%~+3.0% び利用の状態 各画地の配置の状態 ▲3.0%~+3.0% 土地の利用度 ▲3.0%~+3.0% 周辺の利用状態 ▲3.0%~+3.0% 上下水道・ガス等の供 上水道 ▲3.0%~+3.0% 給処理施設の状態 下水道 ▲4.0%~+4.0% 都市ガス等 ▲2.0%~+2.0% 変電所・汚水処理場等 変電所、ガスタンク、汚水処理場、 ▲5.0%~+5.0% の危険施設・処理施設 焼却場等 眺望・景観等の自然的 環境の良否 等の有無 35 洪水・地ずべり等の災 洪水、地すべり、高潮、崖くずれ等 ▲5.0%~+5.0% 騒音・大気汚染等の公 騒音、振動、大気汚染、じんあい、 ▲5.0%~+5.0% 害発生の程度 悪臭等 土地の利用に関する公 用途地域及びその他の地域地区等 法上の規制の程度 その他の規制 その他 将来の動向 害発生の危険性 行政的 条件 その他 その他 ▲6.0%~+6.0% ▲α%~+α% ▲10.0%~+10.0% - 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有する 地域は、 「一般住宅等が建ち並ぶ住宅地域」であり、その範囲は「対象不動産を基 点に西方約 20m、東方約 80mの市道****号線沿道の範囲」と把握した。 ②近隣地域の地域的特性 街路条件 当該地域は、市道「****号線」を標準としている。 同街路は、幅員狭小路が入り組んだ住宅密集地区の中にあって、東西に延びる 比較的良好な系統性を有する街路となっているが、当該地域より東域にあっては 各所に屈曲や狭小箇所を有しており、車両通行性は低い状況となっている。 当該地域内における街路状況は、幅員約 4.5mのアスファルト舗装道であり、 歩道の無い直線路となっている。 幹線街路への連続性については、南方約 220m(直線距離、以下同様)に商店 街を形成する「***道」が存するほか、北東方約 420mには**市内中心部へ至る「** 通」が存するが、いずれに対しても幅員狭小路を経て通じる状況にある。 総じて当該地域の街路条件は、背後一帯に広がる狭小路に比し優位ではあるも のの、住宅地域内街路としてはやや低位と位置づけられる。 交通接近条件 当該地域の存する**区は、**市中心部から**山を介して存する住宅区であり、 区の中心はJR****線「**」駅であって、これを基点に配された地下鉄**線・**** 36 線を中心に住宅地域が形成されている。 この中にあって当該地域は、**区の北西域に存し、相対的には**市内中心部、 区の中心に近い既成市街地と位置づけられる。 但し、交通便については、上記「街路条件」のとおり車両通行性に劣るととも に、鉄道利用ついては地下鉄**線「**」駅の南東方約 900mにあって、徒歩圏内 ではあるものの、道中は狭小で坂道やJR軌道敷アンダーパスを経由する等の状 況となっており、バス便利用も可能であるが、地下鉄利用に優るバス停及びバス 系統は無い。 商業施設等との関連については、南方の「***道」沿道が商店街となっているほ か、北東方の「**」駅周辺及び東方の「***線」沿道の商業施設へも自転車にて通 える距離にあり、生活利便性は良好である。 総じて当該地域の交通接近条件は、駅等の利用性にやや劣るものの、**区内に あっては相対的に生活利便性の高い住宅地域としての立地条件にあると位置づけ られる。 環境条件 当該地域は、一般住宅等が建ち並ぶ住宅地域となっている。 住環境については、中小規模の画地が混在する既存の低層住宅地域であって、 古くからの家屋を中心としており、新規分譲や建替え等の動向は低位である。 その他の利用用途については、併用住宅が見られるが、個人経営の喫茶店程度 であり、特段の商業適性が認められる状況には無い。 また、駐車場や空地も存しているが、当該地域の密集感を緩和している程度で あり、特に衰退感は伺われない。 なお、背後一帯には、小規模住宅、アパート等が密集する住宅地域が広がって おり、それら周辺環境の中にあって、当該地域も同様の地域と認識される状況に ある。 総じて当該地域の環境条件は、既存住民を中心とした住宅地区であり、住宅地 域としてはやや転入需要の低い住宅地域と位置づけられる。 行政的条件 当該地域は、市街化区域、第一種中高層住居専用地域(建蔽率 60%、容積率 200%)、準防火地域、20m第一種高度地区、町並み型建造物修景地区に指定され 37 ている。 但し、当該地域の基準容積率は、幅員 4.5m市道を前提に 180%となる。 なお、当該地域は、周知の埋蔵文化財包蔵地に包含されていない。 ③標準画地及び標準的使用の把握 当該地域内には各種規模の画地が混在する状況にあるが、その地域性及びその 価格水準については、小規模住宅地をもって代表されるものと判断される。 よって、本件においては標準画地を「幅員 4.5mの市道に北向き接面する間口 約 8m、奥行約 10m、地積約 80 ㎡のほぼ整形地」と判定し、その標準的使用を「低 層の戸建住宅」としての使用と把握した次第である。 【コメント】 標準住宅地域の種類あるいは地域様相は非常に多岐にわたるものであ るが、それを表現するに当たっては、地価公示の記載事項でも、例えば、 中規模の、区画整然とした、閑静な等の表現が使われており、補助者でも 比較的慣れた分野に該当すると思われる。 ただ、更に地域の特性を掘り進めていけば、当該地域の生活利便性や社 会的環境を表現すべく、より一層の地域認識や工夫が必要になる。 上記実例にあっては、端的に表現すれば「一般住宅等が建ち並ぶ住宅地 域」とされるところ、それを密集、狭小路、既存、アパート等のキーワー ドで地域の特性を浮き彫りにしていったものと考えられる。 なお、できれば学校区やその距離等を記載すべきであろうが、多少也の 配慮も踏まえて、その記載を回避したものと思われる。 ③混在住宅地域 【土地価格比準表】 条件 項目 細項目 街路 街路の幅員・構造等の 幅員 ▲6.0%~+6.0% 条件 状態 舗装 ▲3.0%~+3.0% 配置 ▲4.0%~+4.0% 38 格差の内訳 系統及び連続性 ▲4.0%~+4.0% 交通接 都心との距離及び交通 最寄駅への接近性 ▲10.0%~+10.0% 近条件 施設の状態 最寄駅から都心への接近性 ▲18.0%~+22.0% 商店街の配置の状態 最寄商店街への接近性 ▲10.0%~+10.0% 最寄商店街の性格 ▲7.0%~+7.0% 学校・公園・病院等の 幼稚園、小学校、公園、病院、官公 ▲6.0%~+6.0% 配置の状態 署等 環境 日照・温度・湿度・風 日照、温度、湿度、風向、通風等 ▲3.0%~+3.0% 条件 向等の気象の状態 眺望、景観、地勢、地盤等 ▲3.0%~+3.0% 居住者の近隣関係等の 居住者の近隣関係等の社会的環境 ▲3.0%~+3.0% 社会的環境の良否 の良否 各画地の面積・配置及 画地の標準的面積 ▲3.0%~+3.0% び利用の状態 各画地の配置の状態 ▲3.0%~+3.0% 土地の利用度 ▲3.0%~+3.0% 周辺の利用状態 ▲3.0%~+3.0% 上下水道・ガス等の供 上水道 ▲2.0%~+2.0% 給処理施設の状態 下水道 ▲2.0%~+2.0% 都市ガス等 ▲2.0%~+2.0% 変電所・汚水処理場等 変電所、ガスタンク、汚水処理場、 ▲4.0%~+4.0% の危険施設・処理施設 焼却場等 眺望・景観等の自然的 環境の良否 等の有無 洪水・地ずべり等の災 洪水、地すべり、高潮、崖くずれ等 ▲5.0%~+5.0% 騒音・大気汚染等の公 騒音、振動、大気汚染、じんあい、 ▲5.0%~+5.0% 害発生の程度 悪臭等 土地の利用に関する公 用途地域及びその他の地域地区等 法上の規制の程度 その他の規制 その他 将来の動向 害発生の危険性 行政的 条件 その他 39 ▲6.0%~+6.0% ▲α%~+α% ▲10.0%~+10.0% その他 - 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有する 地域は、 「中低層の店舗、事業所、共同住宅等が見られる幹線街路沿いの混在地域」 であり、その範囲は「市道****線沿いにあって、対象不動産を西端に東方約 330 mの範囲」と把握した。 なお、当該地域より西方は用途地域が異なるため、近隣地域から除外した次第 である。 ②近隣地域の地域的特性 街路条件 当該地域は、市道「****線」を標準としている。 同街路は、都市計画道路として整備された幹線街路であり、国道*号から**市の 平地部市街地を通り、丘陵部住宅域である**地区、**地区(**市)へと至る系統 性を有している。 また同街路は、当該地域の東端では、**市役所、***線「***」駅方面へ至る* 道「****線」と交差しており、幹線街路相互の連続性も良好である。 当該地域内における街路状況は、標準幅員約 18mのアスファルト舗装道で、両 側歩道を有する 3 車線路(右折レーンを含む)となっており、東下りの緩い傾斜 道となっている。 なお、**市にあっては、平地部市街地と丘陵部住宅域とを結ぶ東西系統の幹線 街路が少ないため、同街路は主要交通路として重要な機能性が認められる。 交通接近条件 当該地域は、**市中心部の既成市街地内にあって、ほぼその南端域に位置づけ られ、***線「***」駅からは南方約 2.6km(道路距離、以下同様)に存してい る。 一方、当該地域は、***線「**」駅の東方約 2.6kmにもあって、当該地域内に 存する**バス「****」停留所からは同駅方面への利用性が優位であるため、住宅 地としては、 「**」駅圏の西端域と位置づけられる状況にある。 40 なお、「**」駅からは**の「**」駅へ特急利用で約 28 分である。 また、当該地域は、幹線街路沿いにあって、各種用途の立地性が認められる。 但し、当該地域の商工性は特に高いものではなく、総じて住宅立地適性を中心と した用途混在に止まる状況である。 環境条件 当該地域は、中低層の店舗、事業所、共同住宅等が見られる幹線街路沿いの混 在地域となっている。 住環境については、やや地縁性等も認められる**の既成市街地内にありながら、 **地区からの影響を受ける立地環境にあって、マンション等の立地も見られる状 況にあり、特に難の無い状況となっている。 商環境については、コンビニエンスストア・医院等、路線商業あるいは近隣商 業の利用形態が見られるが、それら店舗等の集積度は高くない。 工環境については、リサイクル物流センターが存しており、南東方に存する産 廃業者等の集積エリアからの影響と伺われるが、当該地域内には史跡「***」が存 しており、同施設の緑木が当該地域に開放感を与えている等、特段の環境難は伺 われない。 行政的条件 当該地域は、市街化区域、第二種住居地域(建蔽率 60%、容積率 200%)、第三 種高度地区に指定されている。 また、当該地域内には、各部分によって周知の埋蔵文化財包蔵地が存している。 ③標準画地及び標準的使用の把握 当該地域には各種規模及び用途の画地が混在する中、その地域性及びその価格 水準については、市場的に中小規模の画地をもって代表されるものと判断される。 よって、本件標準画地は「間口約 10m、奥行約 25m、地積約 250 ㎡のほぼ整形 地」と判定し、その標準的使用を「店舗、事業所等の敷地」としての使用と把握 した次第である。 【コメント】 現鑑定評価基準あるいは実務修習においては、混在地域であっても標準 的使用をいずれかに絞れとの指導と聞いており、とりあえず商業系に絞っ たものの、店舗、事業所の選別まではしかねた案件である。 41 また、本件に関しては、混在地域における市場判断の曖昧さや地縁性・ 地域的特殊性と依頼目的との関連において、あえて周辺地域あるいは類似 地域との比較における位置付け(優劣)まで明記しないものとした背景が ある。 ④造成住宅地域 【土地価格比準表】 条件 項目 細項目 格差の内訳 街路 街路の幅員・構造等の 幅員 ▲6.0%~+6.0% 条件 状態 舗装 ▲5.0%~+5.0% 配置 ▲3.0%~+3.0% 系統及び連続性 ▲6.0%~+6.0% 交通接 都心との距離及び交通 最寄駅への接近性 ▲11.5%~+13.0% 近条件 施設の状態 最寄駅から都心への接近性 ▲18.0%~+22.0% 商店街の配置の状態 最寄商店街への接近性 ▲9.0%~+9.0% 最寄商店街の性格 ▲3.0%~+3.0% 学校・公園・病院等の 幼稚園、小学校、公園、病院、官公 ▲6.0%~+6.0% 配置の状態 署等 環境 日照・温度・湿度・風 日照、温度、湿度、風向、通風等 ▲3.0%~+3.0% 条件 向等の気象の状態 眺望、景観、地勢、地盤等 ▲3.0%~+3.0% 居住者の近隣関係等の 居住者の近隣関係等の社会的環境 ▲5.0%~+5.0% 社会的環境の良否 の良否 各画地の面積・配置及 画地の標準的面積 ▲3.0%~+3.0% び利用の状態 各画地の配置の状態 ▲3.0%~+3.0% 土地の利用度 ▲3.0%~+3.0% 周辺の利用状態 ▲3.0%~+3.0% 上水道 ▲4.0%~+4.0% 眺望・景観等の自然的 環境の良否 上下水道・ガス等の供 42 給処理施設の状態 下水道 ▲7.0%~+7.0% 都市ガス等 ▲2.0%~+2.0% 変電所・汚水処理場等 変電所、ガスタンク、汚水処理場、 ▲5.0%~+5.0% の危険施設・処理施設 焼却場等 等の有無 洪水・地ずべり等の災 洪水、地すべり、高潮、崖くずれ等 ▲5.0%~+5.0% 騒音・大気汚染等の公 騒音、振動、大気汚染、じんあい、 ▲5.0%~+5.0% 害発生の程度 悪臭等 土地の利用に関する公 用途地域及びその他の地域地区等 法上の規制の程度 その他の規制 その他 将来の動向 害発生の危険性 行政的 条件 その他 その他 ▲6.0%~+6.0% ▲α%~+α% ▲10.0%~+10.0% - 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有する 地域は、 「低層戸建住宅、市営共同住宅等が建ち並ぶ住宅地域」であり、その範囲 は「市道****号線沿いにあって、対象不動産を基点に南西方約 20m、北東方約 90 mの範囲」と把握した。 ②近隣地域の地域的特性 街路条件 当該地域は、市道「****団地*号線」を標準としている。 同街路は、区画整然とした住宅団地(****団地・****地区)の北西辺端域にあ って、同住宅団地と準幹線街路である市道「***線」 (旧国道***号)を結ぶ系統性 を有しており、幅員約 6.5mのアスファルト舗装道で、屈曲部及び広幅員部を有 する北下りの緩い坂道となっている。 なお、同住宅団地と市道「***線」 (旧国道***号)を結ぶ経路については、当該 地域の南方に中幅員の基幹街路が存しているため、当該地域の市道は主に沿道住 民の生活道として機能している状況にある。 43 周辺幹線街路の状況については、上記市道「***線」 (旧国道***号)を経て、国 道***号、***自動車道「***IC」、*道****線等の利用が容易であるほか、近時に おいては***線が供用開始となっている。 総じて、当該地域の街路条件は、区画整然とした街並みが広がる中にあって、 屈曲・坂道等の街路構造について相対的にやや低位と位置付けられる。 交通接近条件 当該地域は、***市の中心市街地から**方面へと山越えする旧国道***号の背後 一帯に開発された山手の住宅団地の一角を占めている。 公共交通機関との関連は、****線「***」駅の西方約 1.1km(道路距離、以下 同様。)、****線「***」駅の西方約 1.5kmに存しており、両駅方面へは当該地域 の西方約 220mに存する****バス・**バス「***」停留所からのバス便が利用可能 である。 商業施設等との関連は、当該地域周辺に若干の店舗立地が見られるが、上記両 駅周辺に各種店舗等が集積しており、主にそれらに依存する状況にある。 総じて、当該地域は山手に位置する住宅地域であって、上記両駅圏の住宅地形 成の中では西端に位置づけられ、相対的に交通接近性は低位と位置付けられる。 環境条件 当該地域を含む住宅団地(****団地・****地区)は、開発許可を要する年代以 前に開発された住宅団地であり、既に相当年を経過しているが、相対的に団地規 模も大きい区画整然とした街並みを有しており、現状にて成熟した住宅地域とし て良好な住環境を維持している。 なお、この中にあって当該地域は、その北西辺端域に位置しており、屈曲等を 有する緩い坂道沿いに低層戸建住宅、市営共同住宅等が建ち並ぶ住宅地域となっ ている。 よって、区画整然とした地域に比し、住宅地としての均一性等には劣るものの、 北西方には公園や空地が存し、開放感のある立地環境となっている。 行政的条件 当該地域は、市街化区域、第一種低層住居専用地域(建蔽率 60%、容積率 100%)、 第一種高度地区に指定されている。 ③標準画地及び標準的使用の把握 44 当該地域内には各種規模形状の画地が混在する状況にあるが、その地域性及び その価格水準については、戸建住宅地をもって代表されるものと判断される。 よって、本件においては標準画地を「幅員 6.5mの市道に北向きで接面する間 口約 12m、奥行約 15m、地積約 180 ㎡の平坦な整形地」と判定し、その標準的使 用を「戸建住宅の敷地」としての使用と把握した次第である。 【コメント】 既に開発後相当年を経過し、既成住宅地域とも言える状況に近い物件で あるが、市場的には市内中心部の既成市街地とは区別され、山手の開発住 宅地に包含される。 もし開発許可等が得られているものであれば、その概要、開発業者等を 示すことが妥当であろう。 ⑤農家集落地域 【土地価格比準表】 条件 項目 細項目 格差の内訳 街路 街路の幅員・構造等の 幅員 ▲4.0%~+4.0% 条件 状態 舗装 ▲4.0%~+4.0% 配置 ▲2.0%~+2.0% 系統及び連続性 ▲2.0%~+2.0% 交通接 都心との距離及び交通 最寄駅への接近性 近条件 施設の状態 最寄駅から中心都市への接近性 ▲6.0%~+6.0% 商店街の配置の状態 最寄商店街への接近性 ▲6.0%~+6.0% 最寄商店街の性格 ▲2.0%~+2.0% 学校・公園・病院等の 幼稚園、小学校、公園、病院、官公 ▲8.0%~+8.0% 配置の状態 署等 環境 日照・温度・湿度・風 日照、温度、湿度、風向、通風等 ▲4.0%~+4.0% 条件 向等の気象の状態 眺望、景観、地勢、地盤等 ▲4.0%~+4.0% 眺望・景観等の自然的 45 ▲10.0%~+10.0% 環境の良否 居住者の移動及び家族 居住者の移動、増減、家族構成等 ▲5.0%~+5.0% 居住者の近隣関係等の 居住者の近隣関係等の社会的環境 ▲5.0%~+5.0% 社会的環境の良否 の良否 各画地の面積・配置及 画地の標準的面積 ▲3.0%~+3.0% び利用の状態 各画地の配置の状態 ▲2.0%~+2.0% 土地の利用度 ▲2.0%~+2.0% 周辺の利用状態 ▲4.0%~+4.0% 上下水道・ガス等の供 上水道 ▲4.0%~+4.0% 給処理施設の状態 都市ガス等 ▲4.0%~+4.0% 変電所・汚水処理場等 変電所、ガスタンク、汚水処理場、 ▲4.0%~+4.0% の危険施設・処理施設 焼却場等 構成等の状態 等の有無 洪水・地ずべり等の災 洪水、地すべり、高潮、崖くずれ等 ▲4.0%~+4.0% 騒音・大気汚染等の公 騒音、振動、大気汚染、じんあい、 ▲4.0%~+4.0% 害発生の程度 悪臭等 土地の利用に関する公 用途地域及びその他の地域地区等 法上の規制の程度 その他の規制 その他 将来の動向 害発生の危険性 行政的 条件 その他 その他 ▲4.0%~+4.0% ▲α%~+α% ▲10.0%~+10.0% - 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 本件対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有 する地域は、一般住宅、農家住宅等が建ち並ぶ山裾傾斜地の集落地域であり、そ の範囲は対象不動産を中心に南方約 50m、北方約 30mの範囲と把握した。 ②近隣地域の地域的特性 街路条件 46 当該地域は、*道「****線」を標準としている。 同街路は、 「**」地区の集落地域内に配された街路であり、主に沿道住民等が利 用する生活道として機能している。 同街路の構造は、幅員約 2.6mのアスファルト舗装道であって、片側は山肌(擁 壁等)、片側は崖地(ガードレール)となっており、各所で屈曲及び傾斜を有して いる。 車両通行性については、普通車の通行は可能であるが離合は困難な状況であり、 当該地域への進入性については、南方の交差点部分がつづら折りとなっており、 徐行及び切り返し等を要する状況となっている。 総じて同街路は、傾斜地に配された集落地域内街路であり、****部の山間部集 落地においては比較的多く見受けられる街路形態である。 交通接近条件 当該地域は、****線「**」駅の北東方約 2.3km(道路距離、以下同様)、国道 ***号の北側背後に位置している。 「**」地区内における当該地域の位置付けについては、集落の北西辺端部にあ って、農地林地地域等との境界域付近に存する状況にある。 商業施設等の配置状況については、当該集落内に若干の店舗等が存するのみで あり、上記「**」駅周辺の商店街のほか、**町・**町・**町・**市等の各種施設 にも依存しなければならない状況である。 義務教育施設については、当該地域の西方約 1.2km に**小学校が存している。 総じて当該地域は、山間部集落地としての生活利便性を有する状況である。 環境条件 当該地域を含む「**」地区は、**川右岸に迫る山裾傾斜地に形成された集落で ある。 集落規模は相対的に大きく、画地状況は中規模画地を標準としており、住戸の 集積密度はやや高い。 地勢状況は、南東向き斜面地勢であり、国道面(***付近)の標高約 57mに対 し、当該地域の標高は約 90mとなっている。 この中にあって当該地域は、一般住宅、農家住宅等が建ち並ぶ地域となってお り、傾斜地に存するため街路又は隣地等に対し高低差(擁壁等)を有する画地状 47 況を標準としている。 総じて当該地域は、山間部集落地としての住環境を有する状況にある。 行政的条件 当該地域は、都市計画区域外である。 ③標準的画地及び標準的使用の把握 当該地域においては、各種規模・各種用途の画地が混在する状況にあるが、そ の地域性及びその価格水準については、農家住宅地によって代表されるものと把 握され、その標準的画地を「*道「****線」に高低差等をもって接面する、地積約 300 ㎡のほぼ整形地」、その標準的使用を「農家住宅等の敷地」としての使用と判 定した次第である。 【コメント】 集落地の鑑定は一概に比準表どおりに考えられるものではなく、なかな か難しい地縁性等もあって、その調査と表現が難しい。 とはいえ、書くべきことは比較的多くあるので、見たままを書けば相応 に仕上がるものと思われる。 ⑥別荘地域 【土地価格比準表】 条件 項目 細項目 街路 街路の幅員・構造等の 幅員、構造等 条件 状態 系統及び連続性 ▲10.0%~+10.0% 交通接 都心との距離及び交通 交通施設との関係位置 ▲18.0%~+22.0% 近条件 施設の状態 都心への接近性 ▲10.0%~+10.0% 観光資源の配置の状態 観光資源の配置の状態 ▲10.0%~+10.0% 利便施設・レクレーシ 利便施設・レクレーション施設の配 ▲10.0%~+10.0% ョン施設の配置の状態 置の状態 環境 景観の良否 景観の良否 ▲33.5%~+50.0% 条件 日照・温度等の気象の 日照、温度等の気象の状態 ▲10.0%~+10.0% 48 格差の内訳 ▲6.0%~+6.0% 状態 傾斜等の地勢の状態 傾斜等の地勢の状態 ▲26.0%~+35.5% 樹木等自然環境の良否 樹木等自然環境の良否 ▲26.0%~+35.5% 地域の名声・知名度等 地域の名声・知名度等 ▲33.5%~+50.0% 各画地の面積・配置・ 各画地の面積、配置の状態 周辺の利用の状態 周辺の利用状態 供給処理施設の状態 上水道 ▲6.0%~+6.0% 上水道 ▲6.0%~+6.0% 温泉 危険・処理施設への接 ▲6.0%~+6.0% ▲10.0%~+10.0% ▲25.0%~+33.5% 危険・処理施設への接近の程度 ▲5.0%~+5.0% 災害発生の危険性 洪水、地すべり等災害発生の危険性 ▲5.0%~+5.0% 公害発生の程度 騒音、振動等の公害発生の程度 ▲5.0%~+5.0% 公法上の規制の程度 公法上の規制の程度 その他 管理体制の整備の状態 近の程度 行政的 ▲α%~+α% 条件 その他 将来の動向 ▲7.0%~+7.0% ▲18.0%~+22.0% その他 - 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 本件対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有 する地域は、別荘のほか休閑地も見られる別荘地域であり、その範囲は****別荘 地のうち****通り沿いの範囲と把握した。 ②近隣地域の地域的特性 街路条件 当該地域は、*道「****線」 (****通り)を標準としている。 同街路は、****別荘地内に区画整然と配された街路のうち、やや広幅員に整備 された基幹街路となっている。 同街路の構造は、幅員約 7.2mのアスファルト舗装道であって、維持管理の状 49 況は良好である。 周辺街路との連続性は良好であって、当該別荘地域への進入出について自家用 車両の利用に難は無い。 交通接近条件 当該地域は、**のほぼ中心部、****スキー場(**温泉)の南方近隣に位置する 「****別荘地」に存している。 ****別荘地は、****スキー場(**温泉)を中心とした各種リゾート施設の利用 が可能であり、**自動車道の利用により、関西から関東にかけて広域的な利用者 層を有し、また****線「**」駅の南西方約 4.0km(道路距離、以下同様)にあ って鉄道利用も可能であることから、**を代表する別荘地域となっている。 この中にあって当該地域は、街路条件が良好な****通り沿道に位置しており、 ****別荘地内における立地条件は良好と位置付けられる。 なお、当該別荘地域内には管理棟(管理会社)があるとともに、最寄りにスー パーマーケット等も存しており、生活利便性は良好である。 環境条件 当該地域は、別荘のほか休閑地も見られる別荘地域となっている。 別荘地域としては、夏場は避暑、冬場はスキー等を主体とした高原型別荘地域 であり、別荘地域としての規模は大型である。 地域状況は、南東向の緩やかな傾斜地であり、杉木立の中に整然と区画割りさ れた別荘地域であって、未だ休閑地も見られるが、豪華ログハウス等が建ち並ぶ 等、**を代表する別荘地域としてそのステータスは高位に位置する。 なお、管理等については、****株式会社****管理事務所が行っており、入会金 は無いが、土地管理費 9 千円/年程度、建物に応じて 8~10 万円/年程度の管理 費等を要する維持管理良好な別荘地域となっている。 行政的条件 当該地域は、都市計画区域(非線引)にある。 なお、****別荘地尊守事項(自主規制)により、建蔽率 20%、容積率 40%、壁 面後退(道路から 5m又は 10m、隣地から 3m)、高さ 8m(又は 13m)ほかの制 限がある。 ③標準的画地及び標準的使用の把握 50 当該地域においては、各種の画地が混在する状況にあるが、その地域性及びそ の価格水準については、既に造成済みの画地によって代表されるものと把握され、 その標準的画地を「****通りに等高接面する、地積約 350 ㎡のほぼ平坦な整形地」、 その標準的使用を「別荘の敷地」としての使用と判定した次第である。 【コメント】 上記別荘地は、不況の煽りを受けているものの、未だ相応のステータス を維持した地域である。 全国的には、管理が悪く、原野化しつつある別荘地域も多く、地元役場・ 管理会社への調査等が重要な情報となろう。 ⑦高度商業地域 【土地価格比準表】 条件 街路 項目 街路の状態 条件 街区の状態 細項目 格差の内訳 幅員 ▲2.0%~+2.0% 歩道 ▲2.0%~+2.0% 勾配 ▲1.0%~+1.0% 系統及び連続性 ▲8.0%~+8.0% 街区の整然性 ▲2.0%~+2.0% 街区の施設の状態 ▲1.0%~+1.0% 交通接 顧客の交通手段の状態 最寄駅の乗降客の数 ▲4.0%~+4.0% 近条件 等 最寄駅への接近性 ▲4.0%~+4.0% 官公署との接近性 ▲2.0%~+2.0% 駐車場の整備の状態 ▲4.0%~+4.0% 交通規制の状態 ▲2.0%~+2.0% 環境 条件 経済施設の配置 デパート、大型店の数、延面積 ▲11.5%~+13.0% 全国的規模の店舗、事務所の数、延 ▲11.5%~+13.0% 面積 娯楽施設の状態 51 ▲2.0%~+2.0% 行政的 不適合な施設の状態 ▲2.0%~+2.0% 背後地及び顧客の購買 背後地の人口の状態 ▲13.0%~+15.0% 力等 背後地の範囲 ▲13.0%~+15.0% 顧客の購買力等 ▲6.0%~+6.0% 競争の状態と経営者の 店舗の協業化の状態 ▲2.0%~+2.0% 創意と資力 高度利用の状態 ▲4.0%~+4.0% 繁華性の程度 顧客の通行量 ▲21.5%~+27.5% 店舗の連担性 ▲6.0%~+6.0% 営業時間の長短 ▲4.0%~+4.0% 自然的環境 地盤、地質等 ▲4.0%~+4.0% 公法上の規制 容積制限による規制 ▲24.5%~+32.5% 高さ制限による規制 ▲6.0%~+6.0% 防火地域等の指定に伴う制限 ▲6.0%~+6.0% その他の地域、地区による規制 ▲6.0%~+6.0% 条件 その他の規制 その他 その他 将来の動向 その他 ▲α%~+α% ▲18.0%~+22.0% - 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 本件対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有 する地域は、 「中高層の事務所ビル等が建ち並ぶ高度商業地域」であり、その範囲 は「**通沿いにあって対象不動産を南端に北方約 80mの範囲」と把握した。 ②近隣地域の地域的特性 街路条件 当該地域は、**通(国道***号)を標準としている。 同街路は、**市内中心部を南北に貫く中心幹線街路として位置付けられ、JR **駅前から中心業務街である当該地域周辺、さらに市内北域の住宅地域等を結ぶ 系統連続性を有している。 当該地域内における同街路の構造は、幅員約 28mのアスファルト舗装道であっ 52 て、両側歩道には植樹帯及び街灯が設置されている。 同街路の機能性については、幹線交通路としてのみならず、中心商業地域を形 成するメイン通りとしての特性をも有しており、通行者及び通行車両とも終日多 い状況にある。 総じて当該地域は、**の商業地域内にあって最高位の街路条件を有している。 交通接近条件 当該地域は、**の中心業務商業地域と位置付けられる**通(**通~**通の区間) 沿いに位置しており、広域的な通勤圏を有する高度商業地としての立地適性が認 められる。 この中にあって当該地域は、商業中心点と位置付けられる「****」交差点から 北方約 130m、第二街区目に位置しており、その商業中心接近性は高位に位置付 けられる。 交通機関の利用性については、南方約 100mに地下鉄**線「**」駅及び****線 「**」駅が存しているとともに、上記交差点周辺に存する*バス「****」停留所か らは四方へ多系統のバス便が配されている。 総じて当該地域は、**の商業地域内にあってほぼ最高位の交通接近条件を有し ている。 環境条件 当該地域を含む**通(**通~**通の区間)沿いは、**の中心業務街であり、金 融機関、保険会社等のほか大手企業、老舗等が軒を連ねており、商業地域として のステータスは高位である。 同地区内における土地利用形態は、一部に高度利用困難な狭小地や古くから存 する低層建物等も見受けられるが、基本的には中高層の事務所ビル等を中心とし た状況となっており、特に近時にあっては外観改修や建替え等の動向が顕著であ って、高度商業地域として再成熟が進む状況にある。 同地区内における商業形態は、1 階及び地下について各種店舗及び事務所利用、 上層階については事務所利用を基本としており、業務系用途を中心に自用物件及 び賃貸物件が混在している。 なお、近時にあっては、外観改修や建替え等及びそれらに伴う 1 階正面テナン トの交代等により、地域景観の良化と活性化が顕著であり、新しい中心業務街へ 53 と変調しつつある状況にあって、今後的にもこの傾向は継続するものと予測され る。 その他周辺地域との関連については、**通沿い、**通沿い等に形成された高度 商業地域との連担するほか、周辺背後には広域的に普通商業地域を配しており、 地域相互間の関連は良好である。 総じて当該地域は、中高層の事務所ビル等が建ち並ぶ高度商業地域として良好 な環境条件を有している。 行政的条件 当該地域は、都市計画区域・市街化区域・商業地域(建蔽率 80%、容積率 700%)、 45m高度地区、防火地域(道路境界~11m内)及び準防火地域(道路境界~11m 外)、美観地区第 5 種地域(道路境界~20m内)及び第二種建造物修景地区(道路 境界~20m外)、都心部駐車場整備地区、屋外広告物規制地域に指定されている。 また、当該地域は周知の埋蔵文化財包蔵地「****」 「****遺跡」に包含されてい る。 ③標準画地及び標準的使用の把握 当該地域内にあっては、各種規模及び用途の画地が混在する状況にあるが、そ の地域性及びその価格水準については、中高層の事務所ビル用地等により代表さ れるものと判断される。 よって、本件においては、標準的画地を「**通に接面する間口約 30m、奥行約 30m、地積約 900 ㎡の整形地」と判定し、その標準的使用を「中高層の事務所ビ ル等の敷地」としての使用と把握した次第である。 【コメント】 高度商業地でも、業務系・繁華系で書き方も異なろうが、上記は一応業 務系の地域である。 現鑑定評価基準においては、地域の特性ではなく、市場分析として書く べき事項もあろうと思われるが、比準において格差付けするならば、やは り地域の特性にて既述することが好ましいであろう。 54 ⑧準高度商業地域 【土地価格比準表】 条件 街路 項目 街路の状態 条件 街区の状態 細項目 格差の内訳 幅員 ▲2.0%~+2.0% 歩道 ▲2.0%~+2.0% 勾配 ▲1.0%~+1.0% 系統及び連続性 ▲8.0%~+8.0% 街区の整然性 ▲4.0%~+4.0% 街区の施設の状態 ▲2.0%~+2.0% 交通接 顧客の交通手段の状態 最寄駅の乗降客の数 ▲4.0%~+4.0% 近条件 等 最寄駅への接近性 ▲4.0%~+4.0% 官公署との接近性 ▲4.0%~+4.0% 駐車場の整備の状態 ▲4.0%~+4.0% 交通規制の状態 ▲2.0%~+2.0% 環境 経済施設の配置 条件 デパート、大型店の数、延面積 ▲11.5%~+13.0% 全国的規模の店舗、事務所の数、延 ▲11.5%~+13.0% 面積 行政的 娯楽施設の状態 ▲2.0%~+2.0% 不適合な施設の状態 ▲2.0%~+2.0% 背後地及び顧客の購買 背後地の人口の状態 ▲13.0%~+15.0% 力等 背後地の範囲 ▲13.0%~+15.0% 顧客の購買力等 ▲8.0%~+8.0% 競争の状態と経営者の 店舗の協業化の状態 ▲6.0%~+6.0% 創意と資力 高度利用の状態 ▲6.0%~+6.0% 繁華性の程度 顧客の通行量 ▲21.5%~+27.5% 店舗の連担性 ▲6.0%~+6.0% 営業時間の長短 ▲4.0%~+4.0% 自然的環境 地盤、地質等 ▲4.0%~+4.0% 公法上の規制 容積制限による規制 55 ▲21.5%~+27.5% 条件 高さ制限による規制 ▲6.0%~+6.0% 防火地域等の指定に伴う制限 ▲6.0%~+6.0% その他の地域、地区による規制 ▲6.0%~+6.0% その他の規制 その他 その他 将来の動向 その他 ▲α%~+α% ▲18.0%~+22.0% - 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 本件対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有 する地域は、 「中高層の事務所、店舗、共同住宅等が混在する商業地域」であり、 その範囲は「本件北側の*道****号線沿道にあって、対象不動産を基点に、東方約 40m、西方約 120mの範囲」と把握した。 ②近隣地域の地域的特性 街路条件 当該地域は、*道「****号線」を標準としている。 同街路は、土地区画整理事業を経た区画街路であり、その構造は幅員約 16mの アスファルト舗装道で両側歩道を有しており、周辺街路の中にあっては相対的に 高位条件の街路と位置づけられる。 系統連続性については、当該地域の西端にて***筋(国道***号・自動車専用高 架道路)に接続しており、**市内中心部への交通性に優れるほかは、周辺地域に 対しては**軌道敷等の分断要因があるため、地域連担性はやや低位となっている。 交通接近条件 当該地域は、****線・****線、地下鉄***線「***」駅の南方約 450mに位置し ており、ターミナル駅に近接する業務商業地域としての立地条件を有している。 但し、同駅を中心として大手企業等が立地するエリアは当該地域より北方域及 び駅の北側であって、当該地域は南方約 500mに位置する地下鉄***線「***」駅 及び****線「**」駅等を中心として雑居ビル等が多い歓楽街地区の影響も受けて おり、商業地としての立地ステータスはさほど高くない。 56 環境条件 当該地域は、中高層の事務所、店舗、共同住宅等が混在する商業地域となって いる。 商環境は、業務系を中心に、低層階では飲食店舗系が多い状況となっており、 総じてやや雑多な環境にあるが、後発的に都市化したエリアであるため、相応に 高度利用は進んだ地域状況となっている。 また、上記のとおり、当該地域以南には大手企業等は存せず、SOHO等も含 め零細事業所等が多い環境となっている。 行政的条件 当該地域は、都市計画区域、市街化区域、商業地域(建蔽率 80%、容積率 800%)、 防火地域、駐車場整備地区(***地区)に指定されている。 ③標準画地及び標準的使用の把握 当該地域内にあっては、各種規模及び用途の画地が混在する状況にあるが、そ の地域性及びその価格水準については、中高層の商業用地等により代表されるも のと判断される。 よって、本件においては、標準的画地を「幅員**mの*道に接面する間口約 12 m、奥行約 20m、地積約 240 ㎡の整形地」と判定し、その標準的使用を「中高層 の店舗付事務所ビル等の敷地」としての使用と把握した次第である。 【コメント】 準高度商業地の比準表は、高度商業地とさほど変わらないが、地域状況 や価格水準等の差異は明確であろうから、それを示すようすべきであろう。 なお、上記実例については準高度という表現を用いていない。何を以て 準高度と言うかについては明確な基準やマーケットにおける認識も無く、 さほどのステータスや大手企業の立地は無いが交通利便性等の高い高容積 地域という実情が準高度に該当するものとした。 なお、このような地域は混在色や移行性、あるいは階層別の利用適性等 もあろうから、その地域の実情に応じた特性を記載すべきと思われる。 57 ⑨普通商業地域 【土地価格比準表】 条件 街路 項目 街路の状態 条件 街区の状態 細項目 格差の内訳 幅員 ▲2.0%~+2.0% 舗装 ▲1.0%~+1.0% 歩道 ▲3.0%~+3.0% 勾配 ▲2.0%~+2.0% 系統及び連続性 ▲6.0%~+6.0% 街区の整然性 ▲2.0%~+2.0% 街区の施設の状態 ▲1.0%~+1.0% 交通接 顧客の交通手段の状態 最寄駅の乗降客の数 ▲8.0%~+8.0% 近条件 等 最寄駅への接近性 ▲6.0%~+6.0% 官公署との接近性 ▲4.0%~+4.0% 駐車場の整備の状態 ▲4.0%~+4.0% 交通規制の状態 ▲1.0%~+1.0% 環境 経済施設の配置 条件 デパート、大型店の数、延面積 全国的規模の店舗、事務所の数、延 ▲10.0%~+10.0% ▲6.0%~+6.0% 面積 娯楽施設の状態 ▲2.0%~+2.0% 不適合な施設の状態 ▲2.0%~+2.0% その他の客等を誘引する施設の状 ▲2.0%~+2.0% 態 背後地及び顧客の購買 背後地の人口の状態 ▲13.0%~+15.0% 力等 背後地の範囲 ▲13.0%~+15.0% 顧客の購買力等 ▲10.0%~+10.0% 競争の状態と経営者の 店舗の協業化の状態 ▲6.0%~+6.0% 創意と資力 高度利用の状態 ▲6.0%~+6.0% 繁華性の程度 顧客の通行量 ▲21.5%~+27.5% 店舗の連担性 ▲6.0%~+6.0% 58 行政的 営業時間の長短 ▲4.0%~+4.0% 犯罪の発生等の状態 ▲4.0%~+4.0% 自然的環境 地盤、地質等 ▲4.0%~+4.0% 公法上の規制 容積制限による規制 ▲18.0%~+22.0% 高さ制限による規制 ▲6.0%~+6.0% 防火地域等の指定に伴う制限 ▲6.0%~+6.0% その他の地域、地区による規制 ▲6.0%~+6.0% 条件 その他の規制 その他 その他 将来の動向 その他 ▲α%~+α% ▲18.0%~+22.0% - 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 本件対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有 する地域は、 「中高層の事務所ビル等が建ち並ぶ商業地域」であり、その範囲は「本 件東側の市道****線沿道にあって、対象不動産を基点に、北方約 100m、南方約 140mの範囲」と把握した。 ②近隣地域の地域的特性 街路条件 当該地域は、市道「****線」を標準としている。 本来当該地域周辺は、東西の通りを標準として町名があり、個々の町名に古く からの商売人街としての地域性が認められるが、同街路は幹線街路である「****」 の一本背後に位置する中幅員の街路であり、南北の筋にて地域性を発揮している。 同街路の構造は、幅員約 11mのアスファルト舗装道であり、両側に歩道を有し ており、幹線街路背後の商業地域内街路としては相対的に良好な街路条件にある。 交通接近条件 当該地域は、地下鉄***線及び**線「**」駅の南西方約 250mに位置している。 同駅圏は、旧**地区を中心とした古くからの中心商業地区であり、老舗事業者 も多い業務街として良好な商業立地性が認められる。 商業地としての立地ステータスは、**筋を筆頭に、*筋、***筋の序列にあって、 59 当該地域は***筋の背後に位置づけられる。 環境条件 当該地域は、中高層の事務所、店舗ビル等が建ち並ぶ商業地域となっている。 当該地域の商業形態については、業務系利用を中心として、問屋卸業者や老舗 等の既存業者も多い状況となっており、本件 1 階に見られる**店舗もその種であ って、特に回遊顧客商売を行っているものではない。 また、当該地域周辺の低層階にあっては、周辺サラリーマンを顧客対象とした 飲食店舗も多く見られる状況にある。 行政的条件 当該地域は、都市計画区域、市街化区域、商業地域(建蔽率 80%、容積率 600%)、 防火地域、駐車場整備地区(都心部地区)に指定されている。 ③標準画地及び標準的使用の把握 当該地域内にあっては、各種規模及び用途の画地が混在する状況にあるが、そ の地域性及びその価格水準については、店舗兼事務所ビル等の敷地により代表さ れるものと判断される。 よって、本件においては、標準的画地を「幅員 11mの市道に接面する間口約 12 m、奥行約 25m、地積約 300 ㎡の整形地」と判定し、その標準的使用を「店舗兼 事務所ビル等の敷地」としての使用と把握した次第である。 【コメント】 普通商業地といっても、広義には近隣商業地域も含むと思われるととも に、混在色の強い地域や移行性の強い地域等、何をもって普通商業地とす るのかは不明確である。 しかし、その町が城下町なり門前町なり、その成り立ちと商売人の属性 等によって、いわゆる既存の商業地として認識されている地域は多く、そ のような特性を表記すべきであろう。 本件においてはそのような観点から題材を選択した次第である。 60 ⑩近隣商業地域 【土地価格比準表】 条件 街路 項目 街路の状態 条件 街区の状態 細項目 格差の内訳 幅員 ▲2.0%~+2.0% 舗装 ▲2.0%~+2.0% 歩道 ▲5.0%~+5.0% 勾配 ▲2.0%~+2.0% 系統及び連続性 ▲4.0%~+4.0% 街区の整然性 ▲2.0%~+2.0% 街区の施設の状態 ▲1.0%~+1.0% 交通接 顧客の交通手段の状態 最寄駅の乗降客の数 ▲4.0%~+4.0% 近条件 等 最寄駅への接近性 ▲6.0%~+6.0% 官公署との接近性 ▲4.0%~+4.0% 駐車場の整備の状態 ▲2.0%~+2.0% 交通規制の状態 ▲1.0%~+1.0% デパート、大型店の数、延面積 ▲6.0%~+6.0% 全国的規模の店舗、事務所の数、延 ▲2.0%~+2.0% 環境 経済施設の配置 条件 面積 娯楽施設の状態 ▲4.0%~+4.0% 不適合な施設の状態 ▲2.0%~+2.0% その他の客等を誘引する施設の状 ▲4.0%~+4.0% 態 背後地及び顧客の購買 背後地の人口の状態 ▲10.0%~+10.0% 力等 背後地の範囲 ▲10.0%~+10.0% 顧客の購買力等 ▲6.0%~+6.0% 競争の状態と経営者の 店舗の協業化の状態 ▲8.0%~+8.0% 創意と資力 高度利用の状態 ▲6.0%~+6.0% 繁華性の程度 顧客の通行量 ▲23.0%~+30.0% 店舗の連担性 ▲10.0%~+10.0% 61 行政的 営業時間の長短 ▲4.0%~+4.0% 犯罪の発生等の状態 ▲4.0%~+4.0% 自然的環境 地盤、地質等 ▲4.0%~+4.0% 公法上の規制 容積制限による規制 ▲6.0%~+6.0% 高さ制限による規制 ▲2.0%~+2.0% 防火地域等の指定に伴う制限 ▲4.0%~+4.0% 条件 その他の地域、地区による規制 その他の規制 その他 その他 将来の動向 ▲10.0%~+10.0% ▲α%~+α% ▲18.0%~+22.0% その他 - 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 本件対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有 する地域は、 「小売店舗等が建ち並ぶ商店街」であり、その範囲は「対象不動産を 中心に、北方約 70m、南方約 20mの範囲」と把握した。 ②近隣地域の地域的特性 街路条件 当該地域は、 「****商店街」を構成するアーケード付きの歩行者専用道を標準と している。 同街路の構造は、幅員約 4.0mのタイル敷舗装路となっている。 同街路の属性は*道「****線」であり、建築基準法第 42 条第 1 項第 1 号の道路 に認定されている。 同街路の系統連続性は、南北系統に伸びる商店街に対し、各所で細街路が直交 するほか、その商店街北端にて幹線街路である**筋に接続する状況にある。 交通接近条件 「****商店街」は、**筋と**通が交差し、地下鉄****線「**」駅が存する**交 差点南東角を始点に、南方へ約 500mの延長を有している。 この中にあって当該地域は、同商店街のほぼ中央部に位置しているが、顧客回 遊性は駅等に近い商店街北域が優位であり、当該地域周辺は相対的に商業立地性 62 が低位である。 なお、当該地域の背後一帯は、駅及び商店街に近い都心居住地となっており、 顧客域との関連等は良好である。 環境条件 「****商店街」は、明治年代に発生し、大正年代には***・****・****に次ぐ商 店街に発展し、昭和年代にあっては映画館等も存する商店街として活況を呈して いた。 昨今にあっては、長期不況及び商業形態の変化等により既存商店街の低迷が顕 著な中、相応に商店街としての機能を維持しているものの、相対的に商況は低下 している状況にある。 この中にあって当該地域は、顧客回遊性の低い商店街の中程に位置し、閉鎖店 舗等も散見される状況となっている。 行政的条件 当該地域は、都市計画区域、市街化区域、商業地域(建蔽率 80%、容積率 600%)、 防火地域に指定されている。 なお、当該地域は、防火地域に付き耐火建築物前提では基準建蔽率 100%、街 路幅員等との関連により基準容積率は 240%となる。 ③標準画地及び標準的使用の把握 当該地域の地域性及びその価格水準については、小売店舗等の敷地をもって代 表されるものと判断される。 よって、本件標準画地は「幅員 4mのアーケード商店街に接面する間口約 7m、 奥行約 20m、地積約 140 ㎡のほぼ整形地」と判定し、その標準的使用を「小売店 舗等の敷地」としての使用と把握した次第である。 【コメント】 近隣商業地の典型は商店街であろう。但し、今やどこの商店街も低迷傾 向が顕著であり、下向きの状況を記載すればきりが無い。本件は依頼目的 に鑑み、その辺は薄く、時代変遷を表現することにより工夫した。 なお、事によっては、居住地への移行程度及びその可能性等を問われる べき地域であることを認識し、そのような特性も表記すべきであろう。 63 ⑪郊外路線商業地域 【土地価格比準表】 条件 街路 項目 街路の状態 条件 細項目 格差の内訳 幅員 ▲8.0%~+8.0% 歩道 ▲2.0%~+2.0% 勾配 ▲2.0%~+2.0% 構造 ▲3.0%~+3.0% 系統及び連続性 ▲18.0%~+22.0% 交通接 顧客の交通手段の状態 最寄駅への接近性 ▲4.0%~+4.0% 近条件 等 都市中心部への接近性 ▲8.0%~+8.0% 公共公益施設への接近性 ▲4.0%~+4.0% 主要幹線道路等との接近性 ▲10.0%~+10.0% ▲15.0%~+17.5% 環境 交通の量 交通量 条件 沿道の状況 店舗の種類 ▲8.0%~+8.0% 店舗等の連担性 ▲8.0%~+8.0% 経済施設の配置 大型店等の有無、進出の程度 ▲10.0%~+10.0% 営業時間の長短 ▲2.0%~+2.0% その他の顧客を誘引する施設の有 ▲5.0%~+5.0% 無状態 行政的 背後地及び顧客の購買 背後地の状態 ▲5.0%~+5.0% 力 顧客の購買力 ▲3.0%~+3.0% 公法上の規制 地域・地区の規制 条件 その他 その他 その他 ▲12.0%~+13.5% - 将来の動向 その他 ▲18.0%~+22.0% - 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 本件対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有 64 する地域は、 「国道*号沿いに、店舗等が建ち並ぶ路線商業地域」であって、その 範囲は「対象不動産が東側にて接面する国道沿いに、対象不動産を北端として南 方約 30mの範囲」と把握した。 ②近隣地域の地域的特性 街路条件 当該地域は、国道*号(**バイパス)を標準としている。 同街路は、**と**を結んでおり、当該圏域にあっては、****を走る主要幹線街 路としての機能性を有している。 当該地域周辺にあっては、西方を併走する*道「****線」 (旧国道*号)に代わり、 都市計画道路「****線」として昭和 61 年 10 月に開通されたバイパス路線となっ ており、幅員約 30mの両側歩道付きアスファルト舗装路であって、中央分離帯が 存する。 総じて当該地域は、街路整備状況に優れた市内中心域の国道バイパス沿いにあ って、店舗を中心に各種用途立地の見られる良好な街路条件を有している。 交通接近条件 当該地域は、**市の中心域に位置する国道*号(**バイパス)沿いに存しており、 路線商業地として良好な立地条件を有している。 また、当該地域南端の「***」交差点には、JR***線「**」駅・**市役所へと 至る*道「****線」及び*道「****線」が接続しているとともに、北東方約 2.0k mに存する**自動車道「**IC」から中心市街地へと至る交通経路に位置しており、 その路線商業地としての立地条件は相対的に高位である。 総じて当該地域は、中心市街地・インターチェンジ等との位置関係に優れた国 道バイパス沿いにあって、各種用途立地の見られる良好な交通接近条件を有して いる。 環境条件 **市の都市形成は、JR「**」駅等の存する**寄りを中心としており、国道バ イパス沿いである当該地域周辺は相対的に新興の地域であるが、既に当該国道バ イパス沿いは路線商業地域として成熟しており、商業地域としては**市の中心域 と位置付けられるべき状況となっている。 このような中にあって当該地域は、中心市街地へと至る「***」交差点に近接し、 65 ****店等の商業核施設も存する路線商業地域となっており、当該国道バイパス沿 い路線商業地域のはほぼ中心地と位置付けられる環境条件にある。 なお、店舗利用の状況については、比較的画地規模の大きい敷地に、中低層の 路線型店舗が多い状況となっており、相応に活況を呈している。 総じて当該地域は、ほぼ商業中心と位置付けられる国道バイパス沿いにあって、 商況良好な路線商業地域としての環境条件を有している。 行政的条件 当該地域は、都市計画区域・近隣商業地域(建蔽率 80%、容積率 300%)、準防 火地域に指定されている。 ③標準画地及び標準的使用の把握 当該地域には、各種規模用途の画地が混在する状況にあるが、その地域性及び その地価水準については、中規模店舗地により代表されると判断される。 よって、本件においては標準画地を、 「国道*号に等高接面する間口約 25m、奥 行約 40m、地積約 1,000 ㎡の中間画地」と判定し、その標準的使用を「路線型店 舗等の敷地」としての使用と把握した次第である。 【コメント】 郊外路線商業地については、郊外という言葉にやや違和感を感じる場合 も多い。今般においては、都市部の幹線街路沿いでも大型小売店舗や量販 店が進出しており、いわゆる路線商業と普通商業あるいは近隣商業の混在 地域もあって、そのような店舗が進出する地域は、総じて路線商業地とい う認識でも良い気がする。 但し、全国的に見れば、都市は一部、ほとんどは地方であって、郊外路 線商業地のニュアンスがピッタリな地域も多く存する。このような状況に あって、如何に重視されるべき項目を見極めるかはポイントになろう。 例えば公共評価等に当たって、事業者(起業者)がどのような地域区分 を採用するかによって、各画地評価への影響は大きいため、不動産鑑定士 は適切にアドバイスする必要があろう。 66 ⑫大工場地域 【土地価格比準表】 条件 項目 街路 街路の幅員・構造等の 幅員 ▲13.0%~+15.0% 条件 状態 舗装 ▲8.0%~+8.0% 配置 ▲4.0%~+4.0% 系統及び連続性 ▲8.0%~+8.0% 都心への接近性 ▲33.5%~+50.0% 公共岸壁 ▲18.0%~+22.0% 空港との接近性 ▲10.0%~+10.0% 高速道路 I.C.への接近性 ▲26.0%~+35.5% 労働力の確保の難易 主要交通機関との接近性等 ▲33.5%~+50.0% 関連産業との関係位置 関連産業との関係位置 ▲10.0%~+10.0% 環境 動力資源及び用排水に 動力資源 ▲10.0%~+10.0% 条件 関する費用等 工業用水 ▲10.0%~+10.0% 工場排水 ▲10.0%~+10.0% 公害発生の危険性 水質の汚濁、大気の汚染等 ▲10.0%~+10.0% 自然的環境 地盤、地質等 ▲6.0%~+6.0% 行政上の助成及び規制 助成 ▲4.0%~+4.0% の程度 規制 ▲18.0%~+22.0% 交通接 製品販売市場及び原材 近条件 料仕入市場との関係位 細項目 格差の内訳 置 輸送施設の整備の状況 行政的 条件 その他の規制 その他 その他 工場進出の動向 その他 ▲α%~+α% ▲10.0%~+10.0% - 67 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 本件対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有 する地域は、 「大中規模工場等が建ち並ぶ工業団地地域」であり、その範囲は「**** 工業団地の内、国道***号寄りに位置する地域であり、対象不動産を中心に西方約 90m、南方約 90mの範囲」と把握した。 ②近隣地域の地域的特性 街路条件 当該地域は、*道「****線」を標準としている。 同街路は、****工業団地内に配された区画街路であり、国道***号へ直接接続し ているが、基幹街路等としての特段の機能性は無い。 同街路の構造は、幅員約 12m(両側歩道各約 2mを含む)のアスファルト舗装 道であって、北西下りの坂道となっている。 周辺幹線街路との関連については、北西方約 240mに国道***号が存しているほ かは、特段の幹線街路等は無い。 総じて同街路は、大型車両の通行性に難の無い工業用街路であり、****工業団 地内においては、その系統連続性について相対的にやや高位に位置付けられる。 交通接近条件 ****工業団地は、****部の山間部、国道***号背後に位置している。 同工業団地が依存する交通基盤は、国道***号のみであり、付近に鉄道駅・高速 道路・港湾等の施設は無い。 国道***号は、西方にて**市(国道**号)、東方にて**市(国道*号)方面へと至 り、重要な系統性を有するため車両通行量は多いが、主に 2 車線の山越え屈曲路 等で構成されており、産業用道路としての機能性は低位である。 都市への交通性については、国道***号及び山間部*道等を経て、****(**IC・ **IC)まで約 14kmとなっており、**へは約 1 時間半程度を要する。また、** 市へは適当な高速道路は無く約 1 時間程度を要する。なお、****内においては、 ****高速道路の計画があるが、事業化の目処は立っていない。 労働者確保の観点については、****バスが****工業団地内を周回し、****線 「***」駅、****線「**」駅方面等を結んでいるが利便性はやや低位であり、**** 68 の住民数も*****人(平成**年*月 1 日現在)であることから、諸条件は低位であ る。 総じて****工業団地は、相対的に利便性の低い工業団地と位置付けられる。 なお、当該地域は、****工業団地内にあっては国道***号に近く、相対的に立地 条件はやや高位に位置付けられる。 環境条件 ****工業団地は、株式会社***が造成分譲した民間の工業団地であり、工業団地 管理組合設立後約**年になる。 工業団地の概要は、標高約 200mの山間部丘陵地に位置する約***ha(地区計画 面積)の範囲に区画街路が配され良好に整備されている。 昨年までは処女地も残っていたが、現在では全画地について計**社が立地し、 そのうち 8 画地が更地又は非操業、4 画地が駐車場又は倉庫となっているほかは、 工場施設等として稼動していると町役場より聴聞されている。 総じて****工業団地は、ほぼ成熟した工業団地となっており、当該地域もまた その一角を占めている状況にある。 行政的条件 当該地域は、都市計画区域(非線引) ・工業地域(建蔽率 60%、容積率 200%) 、 第三種高度地区(最高 20m、但し敷地 2,000 ㎡以上は最高 25m)に指定されてい る。 また、****工業団地地区計画(用途は工場等、壁面後退基本 5m等。)が定めら れている。 また、企業立地等に際しては、工場立地法の適用のほか、****立地企業審査要 綱(買受人の審査)、****製造工場等建設計画審査要綱(敷地内緑地 20%以上)、 ****工業団地企業立地促進条例(奨励金)等の適用があるほか、*との環境保全協 定(大気汚染・水質汚濁・騒音防止・振動対策・悪臭防止・廃棄物対策等)の締 結を要する。 ③標準画地及び標準的使用の把握 ****工業団地内にあっては、各種規模形状の工業用地が見られる状況にあるが、 その地域性及びその価格水準については、同工業団地に存する地価調査基準地 ****(*)9-1 の代表性にも留意して、約 8,000 ㎡程度の中規模画地により代表さ 69 れるものと判断される。 よって、本件においては、標準画地を「幅員約 12mの坂道である町道に面する 間口約 80m、奥行約 100m、地積約 8,000 ㎡のほぼ整形地で、敷地内に 20%以上 程度の緑地(法地)を有する画地」と判定し、その標準的使用を「工場の敷地」 としての使用と把握した次第である。 【コメント】 大工場地については、工業地として諸条件の優劣を表示すべきほか、当 該地域に適用される特有の法令、助成、利用規約(可能業種、操業可能時 間、排水規制)等があることに留意すべきであり、役所調査のほか地元工 業組合等への調査も要する。 また、それは本件のような造成工業団地ほか、既存の市街工業地、臨海 部埋立地等、様々な工業地形態に応じて調査分析の視点を異にすることに 留意すべきである。 なお、近時にあっては土壌汚染に関する要因も無視できないところであ り、本来は個別的要因として扱うことになろうが、土壌汚染対策法、水質 汚濁防止法等に関連して要措置区域、形質変更時要届出区域、水質調査結 果等を開示しているので、近隣地域内にそのような汚染事実があるかどう か等は地域要因に含まれるものと考えられる。 ⑬中小工場地域 【土地価格比準表】 条件 項目 細項目 街路 街路の幅員・構造等の 幅員 ▲13.0%~+15.0% 条件 状態 舗装 ▲8.0%~+8.0% 配置 ▲4.0%~+4.0% 系統及び連続性 ▲8.0%~+8.0% 70 格差の内訳 交通接 製品販売市場及び原材 近条件 料仕入市場との関係位 都心への接近性 ▲33.5%~+50.0% 空港との接近性 ▲10.0%~+10.0% 高速道路 I.C.及び幹線道路への接 ▲14.0%~+16.0% 置 輸送施設の整備の状況 近性 労働力の確保の難易 主要交通機関との接近性等 ▲33.5%~+50.0% 関連産業との関係位置 関連産業との関係位置 ▲10.0%~+10.0% 環境 動力資源及び用排水に 動力資源 ▲6.0%~+6.0% 条件 関する費用等 工業用水 ▲10.0%~+10.0% 工場排水 ▲10.0%~+10.0% 公害発生の危険性 水質の汚濁、大気の汚染等 ▲18.0%~+22.0% 自然的環境 地盤、地質等 行政上の助成及び規制 助成 ▲11.5%~+13.0% 条件 の程度 規制 ▲18.0%~+22.0% その他 その他 その他の規制 行政的 工場進出の動向 その他 ▲6.0%~+6.0% ▲α%~+α% ▲10.0%~+10.0% - 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 本件対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有 する地域は、 「中小工場等が見られる工業地域」であり、その範囲は「対象不動産 が西側にて面する*道沿道にあって、対象不動産を北端に、南方約 20mの範囲」 と把握した。 ②近隣地域の地域的特性 街路条件 当該地域は、*道「***号線」を標準としている。 同街路は、準幹線街路である幅員約 13.4mの*道「***」線から北方へ派生する 71 整備状況低位な行き止まり道である。 *道認定は、幅員約 3.0~3.5mであって、現況アスファルト舗装敷となってい る部分がこれに該当する。なお、当該地域以北は現況幅員約 1.5m未舗装道とな っている。 建築基準法における扱いは、非道路(未判定)であって、同法第 43 条但書の適 用により建築可能性は高いと所管窓口より聴聞されているが、既に本件対象不動 産(建物)は建築確認を得て建築されたものであることから、今後的な建築にお いても特段の難は無いと思料される。 権利形態については、*有地(地番***)が幅員 2.42mを占めており、その範囲 は上記アスファルト舗装敷の西側部分及びこれに連続する未整備の路肩部分であ る。よって、上記*道(アスファルト舗装敷)は*有地及び沿道民地からの道路負 担部分等によって構成されている状況にある。 なお、同街路は、****の方針により幅員 5.3m(舗装路 4.0m+両側側溝各 0.65 m)として整備を進めるため、*有地幅員約 2.42mに対し両側セットバック各 1.44 m(町有地中心線から 2.65m)を要請される状況にあり、法的拘束力の無い整備 計画であるものの、本件対象不動産(建物)の建築確認においても同様の指導に よりセットバックして建築を行っている状況にある。一方、同街路の西側は未だ 農地が広がっており、最終的に幅員 5.3mとなる蓋然性については将来的不可測 要因である。 (以上、後添附属資料「境界確定図写し」 「関係写真」等参照。) 総じて当該地域は、工業地域にあって車両進入性等に劣る狭小街路に面する状 況にあって、その街路条件は相対的に低位と位置付けられる。 交通接近条件 ****は、**・**間にあって、国道*号、国道**号(***BP) 、****道路、**バイ パス等の交通基盤を有し、都市近郊型の良好な工業立地性が広域的に認められる。 この中にあって当該地域は、国道*号の東方約 1.3km(道路距離、以下同様。 )、 国道**号(***BP)の西方約 1.0km、****道路「****I.C」の北東方約 900mに あって、****内の工業地域としては工業集積性の高いエリアの中西端域に存する が、東方に広がる住宅地域とも近接した良好な立地環境にあると位置付けられる。 但し、当該地域は、前記「街路条件」の通り、車両進入性等に劣る状況にあり、 工業地としての立地条件は低位である。 72 なお、鉄道利用性については、****線「***」駅まで約 2.8kmにあって、利便 性はやや低位であるが、****内においてはほぼ標準的条件内である。 総じて当該地域は、良好な工業立地性を有する****にあって、その街路条件に より工業地としては相対的に低位な立地条件にあると位置付けられる。 環境条件 当該地域を含む****の工業地域は、良好な交通基盤を背景に、広域的に都市近 郊型工業地域が成熟しており、その利用形態については大規模工場から中小の事 業所まで、各種企業等が集積する状況にある。 この中にあって当該地域は、準幹線街路から派生する幅員狭小の行き止まり道 沿いに中小工場等が見られる工業地域となっており、農地、駐車場等も見られる 未成熟な地域となっている。 なお、当該地域に係る工業性については、大型車両の進入困難性により、その 適合業種が相対的に限定的になるが、周辺施設が集積していないため、南方の準 幹線街路(*道「****」線)からの視認性は確保されている状況にある。 総じて当該地域は、狭小街路沿いにあって、工業地域として用途の多様性及び 利便性が低位な環境にあると位置付けられる。 行政的条件 当該地域は、都市計画区域、市街化区域、工業専用地域(建蔽率 60%、容積率 200%)、第 5 種高度地区、第 1 種特別工業地区に指定されている。 ③標準画地及び標準的使用の把握 当該地域にあっては各種用途の画地が混在する状況にあるが、その地域性及び その価格水準については、中規模の事業地等により代表されると判断される。 よって、本件においては、標準画地を「幅員約 3.0m※の*道沿いにあって、間 口約 20m、奥行約 50m、地積約 1,000 ㎡の整形地」と判定し、その標準的使用を 「工場・事務所等の敷地」としての使用と把握した次第である。 【※標準的街路条件についての補足】 本件において標準とすべき街路状況については、対象不動産の現状接面状況を も踏まえ、片側セットバック後の街路幅員 3.86m(町有地 2.42m+セットバック 1.44m)をもって把握すべきものである、そのうち現実にアスファルト舗装され 町道認定を受けている部分は幅員 3.0mの範囲である。 73 【コメント】 やや街路条件がイレギュラーな工業地物件の例示となったが、ケースバ イケースでこの程度の容量を表記していると認識していただければ良いと 思う。 なお、中小工場地の場合、住宅系混在あるいは住宅移行地で最有効使用 は住宅系開発の場合もあろう。そのような場合には、現状分析とともに移 行後等の地域要因が重視されることは当然である。 ⑭宅地見込地地域 【土地価格比準表】 条件 項目 交通接 都心との距離及び交通 最寄駅への接近性 近条件 施設の状態 最寄駅の性格 ▲5.0%~+5.0% 最寄駅から都心への接近性 ▲3.0%~+3.0% 最寄商店街への接近性 ▲2.0%~+2.0% 最寄商店街の性格 ▲1.0%~+1.0% 学校・公園・病院等の 幼稚園、小学校、公園、病院、官公 ▲2.0%~+2.0% 配置の状態 署等 周辺街路等の状態 周辺幹線街路への接近性及び周辺 商店街の配置の状態 細項目 格差の内訳 ▲14.0%~+16.0% ▲3.0%~+3.0% 街路の状態 環境 日照・温度・湿度・風 日照、温度、湿度、風向、通風等 ▲2.5%~+2.5% 条件 向等の気象の状態 眺望、景観、地勢、地盤等 ▲2.5%~+2.5% 上下水道・ガス等の供 上下水道、ガス、電気等の引込の難 ▲5.0%~+5.0% 給処理施設の状態 易 周辺地域の状態 周辺既存住宅地域等の性格、規模等 ▲15.5%~+18.5% 市街化進行の程度 市街化進行の程度 ▲14.0%~+16.0% 都市の規模及び性格等 都市の人口、財政、社会福祉、文化 眺望・景観等の自然的 環境の良否 74 ▲5.0%~+5.0% 教育施設等 変電所、汚水処理場等 変電所、ガスタンク、汚水処理場、 の危険施設・処理施設 焼却場等 ▲2.0%~+2.0% 等の有無 洪水・地すべり等の災 洪水、地すべり、高潮、崖くずれ等 ▲3.0%~+3.0% 騒音・大気汚染等の公 騒音、振動、大気汚染、じんあい、 ▲2.0%~+2.0% 害発生の程度 悪臭等 宅地造 造成の難易及び必要の 宅地見込地としての価格水準が低 成条件 程度 い地域 害発生の危険性 宅地見込地としての価格水準がや 0.49~2.03 0.62~1.62 や低い地域 宅地見込地としての価格水準が中 0.76~1.32 位の地域 宅地見込地としての価格水準がや 0.83~1.21 や高い地域 宅地見込地としての価格水準が高 0.87~1.15 い地域 宅地としての有効利用 宅地としての有効利用度 0.69~1.45 度 行政的 条件 その他 土地の利用に関する公 用途地域及びその他の地域、地区等 法上の規制の程度 その他の規制 その他 その他 ▲5.0%~+5.0% ▲α%~+α% - 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有する 地域は、 「竹林等を標準と熟成度中位の宅地見込地地域」であり、その範囲は後添 「付近地図」に図示したとおりと把握した。 75 ②近隣地域の地域的特性 交通接近条件 当該地域は、その西端に存する*道「**線」 (建築基準法第 42 条 2 項の道路・明 示幅員 4m)から当該地域内へ至る幅員約 1.8mの里道(建築基準法上の非道路) を標準としている。 同街路は、部分的にコンクリート舗装も見られるが、ほぼ未舗装の現況林道的 状況にあり、農用軽車両の通行が可能である。 このような状況にあって、最寄り市街地として北方約 400m(道路距離、以下 同様。)に存する旧集落的様相の住宅地域、及び南側に隣接する「****タウン」等 から市街化の影響を受ける位置的条件にある。 なお、当該地域の西端は、*道「**線」に面し、この延長上が「****タウン」へ 続く土地区画整理事業第*工区に係る幅員 6mの区画道路として整備されつつあ る状況にあり、市街地との関連は良化しつつある。 最寄駅については、****線「****」駅の北西方約 2.0kmにあって、同駅へは 南西方約 800mに存する**バス「****」停留所からのバス便利用も可能である。 商業施設の配置の状態については、 「****タウン」内の店舗等のほか、**幹線沿 いに各種店舗が存している状況にあり、総じて生活利便性はほぼ良好である。 なお、当該地域は、将来的に****道路と****道路が接続する**JCTとして整 備される事業予定地となっており、潜在的にインターチェンジ近接の事業立地性 も認められる。 環境条件 当該地域は、筍畑、竹林、雑種地、原野等が存する地域となっている。 当該地域の筍畑については、**の特産品であって、**近郊に残された数少ない 整備状況良好な筍畑としての特性を有しており、農地としての品等は高位に位置 づけられることが、農業関係者への取材及び諸資料により確認されている。 また、当該地域内には、 「****タウン」の開発事業者である****㈱により買収さ れた土地約**,000 ㎡が包含されており、それらについては雑種地、原野等の状況 にて管理されている。 このように当該地域は、 「****タウン」の外延的発展の影響下にあって、およそ 現在事業中の土地区画整理事業第*工区の後には、当該地域の西方に存する第一種 76 中高層住居専用地域あるいは当該地域の開発が見込まれるであろうと考えられる 宅地見込地地域であり、総じて熟成度中位の宅地見込地と位置づけられると把握 される。 宅地造成条件 当該地域は、北西側に隣接する平坦農地地域の標高約 52m及び南側に隣接する 「****タウン」の標高約 52mに対し、当該地域内の前記里道面の標高 50m、地域 内標高約 37m~約 53mの緩傾斜地勢となっている状況にて、およそ周辺地勢とほ ぼ等高水準にて造成することが相応と考えられ、造成費用面については山林造成 としては割安な切盛造成と把握される。 また、有効宅地化率については、いわゆる大規模開発の住宅地開発を前提に、 ほぼ標準的水準での開発が可能と把握される。 なお、周地の埋蔵文化財包蔵地に係る発掘リスク等については、大規模開発を 前提に相応の調査等が必要と把握される。 行政的条件 当該地域は、都市計画区域、市街化区域、第一種低層住居専用地域(建蔽率 40%、 容積率 60%)、第一種高度地区(最高 10m)、宅地造成工事規制区域に指定されて いる。 また、周知の埋蔵文化財包蔵地については、当該地域の北西域が「***遺跡」に 包含され、東域は「****遺跡」 「****廃寺」に包含されている。 ③標準画地及び標準的使用の把握 当該地域においては、各種規模及び用途の画地が混在する状況にあるが、その 地域性及びその地価水準については、竹林(非筍畑)により代表されるものと判 断される。 また、本件において対象不動産として選定された 1,400 ㎡の画地は、標準的使 用を竹林(非筍畑)とする標準画地として相応であると把握した次第である。 【コメント】 土地価格比準表における宅地見込地は、個別的要因が大中規模開発地域 と小規模開発地域に分けられているが、本件の例示は前者に係るものであ り、その地域状況あるいは最有効使用によっては、調査分析の視点が異な ってくるであろう。 77 なお、宅地見込地の概念は一種古典的かつ公共発想でもあり、本件例示 は公共評価に係るものである。 仮にこれが民間評価であって、現実的に開発素地の取り纏め需要が期待 されない市場環境にあるならば、安易に宅地見込地と判定することは相応 でないかもしれない。 但し、本件に関しては、市街化区域であること、過去に開発目的で取得 された業者所有地があること、都市計画マスタープランにて整備方針が確 定されていること等を根底に宅地見込地とした次第である。 ⑮林地地域(都市近郊林地地域) 林地地域は、都市近郊林地地域、農村林地地域、林業本場林地地域、山 村奥地林地地域に分けられるが、実の所これほど細分化した上での各評価 事例を有しないため、代表的なものとして都市近郊林地地域を例示する。 【土地価格比準表】 条件 交通接 項目 労働力の確保の難易 近条件 細項目 最寄駅への接近性 格差の内訳 ▲8.0%~+8.0% 最寄集落への接近性 ▲10.0%~+10.0% 交通及び林道等の整備 林道等の配置、構造等の状態 ▲18.0%~+22.0% の状態と林産物び搬出 最寄市場への接近性 ▲18.0%~+22.0% の状態 自然的 条件 日照・気温等の気象の 日照、気温 ▲6.0%~+6.0% 状態 降雨量、霧 ▲6.0%~+6.0% 積雪 ▲6.0%~+6.0% 風 ▲6.0%~+6.0% 標高・傾斜等の地勢の 標高 ▲15.0%~+17.5% 状態 傾斜 ▲11.5%~+13.0% 斜面の型 ▲11.5%~+13.0% 土壌の良否 ▲27.5%~+38.0% 土壌の状態 78 宅地化 宅地化の影響の程度 宅地化等の影響 行政上の助成及び規制 行政上の助成 の程度 国立、国定、県立公園、保安林、砂 ▲46.0%~+85.5% 条件 行政的 条件 ▲α%~+α% ▲38.5%~+62.5% 防指定地等の規制 その他の規制 その他 その他 ▲α%~+α% その他 - 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 本件対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有 する地域は、 「**自動車道の脇に位置し、大規模開発された住宅地域に隣接する都 市近郊林地地域」となっており、その範囲は「対象不動産を基点に北西方約 70m、 北東方約 20m、南東方約 110m、南西方約 50mの範囲」と把握した。 ②近隣地域の地域的特性 交通接近条件 当該地域は、大規模開発された住宅地域「****台」と**自動車道との狭間に位 置している。 道路状況は、上記住宅地域から続く市道が当該地域の西端に位置しているが、 車止めがあって一般車両通行は不可であり、これから当該地域内へは民地上の未 舗装通路が配された状況となっている。 総じて当該地域は、市街地に近接した都市近郊林地として位置づけられる。 自然的条件 当該地域は、標高約 230m前後の北東向き緩斜面地勢であり、地域内には溜池 が 2 箇所存している他は雑木竹等が茂る自然林であり、日照や土壌の良否に特段 の難は無い。 なお、当該地域内においては特段の林業生産等は伺われない。 宅地化条件 当該地域は、大規模開発された住宅地域「****台」に近接しており、宅地化影 響を受ける環境にある。 79 なお、当該地域は、市街化区域であるものの、既に開発された住宅地域と高速 道路に挟まれた立地条件にあって、緩衝帯的な位置付けにあり、現状にて宅地化 の動向は伺われない。 行政的条件 当該地域は、市街化区域、第 1 種低層住居専用地域(建蔽率 50%、容積率 100%)、 第 1 種高度地区、宅地造成工事規制区域に指定されている。 なお、地域森林計画対象民有林、砂防指定地、保安林等には該当しない。 ③標準画地及び標準的使用の把握 当該地域においては、多様な規模及び地勢の画地が混在する状況にあるが、そ の地域性及びその地価水準については、緩傾斜の自然林地により代表されるもの と判断される。 よって、本件においては、標準画地を「民地通路に接面する約 1,000 ㎡の緩傾 斜の自然林地」と判定し、その標準的使用を「林地」としての使用と把握した次 第である。 【コメント】 本件例示は、市街化区域内の林地であり、これを宅地見込地と言うか否 かは、実需、周辺動向、あるいは依頼目的によるかもしれない。 なお、このように市街化影響の強い都市近郊林地にあっては、既に本来 的な林地としての状況(樹種、生育年、胸高直径、伐採見込み等)は重視 されないであろうから、不動産鑑定士は比較的得意かもしれないが、林業 本場林地地域、山村奥地林地地域になれば、地元精通者の協力無しに業務 は困難と思われ、それらからの情報等が地域要因の核になると思われる。 ⑯田地地域 【土地価格比準表】 条件 交通接 近条件 項目 交通の便否 細項目 集落との接近性 出荷的集荷地との接近性 80 格差の内訳 ▲15.0%~+17.5% ▲3.0%~+3.0% 自然的 農道の状態 ▲11.5%~+13.0% 傾斜の方向 ▲4.0%~+4.0% 傾斜の角度 ▲2.0%~+2.0% 土壌の状態 土壌の良否 ▲18.0%~+22.0% かんがい排水の状態 かんがいの良否 ▲11.5%~+13.0% 地勢 条件 災害の危険性 行政的 行政上の規制の程度 条件 その他 その他 水害の危険性 ▲8.0%~+8.0% 排水の良否 ▲5.0%~+5.0% その他の災害の危険性 ▲5.0%~+5.0% 行政上の規制の程度 ▲α%~+α% 補助金、融資金等による助成の程度 ▲α%~+α% その他 - 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 本件対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有 する地域は、 「市街化区域に隣接する国道背後の市街化調整区域にあって、車両通 行可能な町道沿いに現況田が広がる農地地域」であり、その範囲は「*道***号線 沿いに対象不動産を基点に東方約 100mの範囲(後添附属資料「付近地図」参照) 」 と把握した。 ②近隣地域の地域的特性 交通接近条件 当該地域は、**町の北西端部、****線「****」駅の北西方約 1.0km(対象不 動産を基点とした道路距離、以下同様。 )にあって、一級河川「***」右岸堤防上 を走る国道**号の北東側法下に位置している。 周辺市街地との関連については、上記「****」駅の東域を中心市街地として、 その広がりは北方の国道***号及び一級河川「***」沿いに当該地域の北側に隣接 する****まで及んでいるとともに、当該地域の東方 220m及び南東方約 150mには 工業地が存する状況となっており、総じて当該地域は周囲を市街化区域に囲まれ た状況となっている。 こうした中にあって当該地域は、*道***号線(建築基準法上未判定)に接道す 81 る状況にある。 同街路は、部分的に若干の屈曲を有する現況幅員約 3.8m(道路台帳幅員 3.8 m)のアスファルト舗装道であって、東方約 320mにて他の町道と交差する一方、 当該地域西端にて一級河川「***」右岸堤防に行き止まる状況にあるが、一般車両 も通行可能な状況にある。 なお、現在上記「****」駅の西域においては、 「****地区計画」事業及び*道「**** 線」の改良事業が進捗中であり、周辺市街地との関連性が向上するものと予測さ れる。 総じて当該地域は、交通接近条件に優れた農地地域であると位置付けられる。 自然的条件 当該地域は、現況田が広がる農地地域である。 当該地域は、一級河川「****」の右岸背後及び一級河川「***」の左岸背後に存 する平地であり、土壌の質等は良好である。 当該地域の西側、 「****」右岸堤防下には準用河川「***」が存しており、**** より「****」へ合流する状況にある。 なお、当該地域の標高は約 22.2mであり、周辺地状況は「****」右岸堤防上の 国道**号が標高約 28.86m、同堤外地が標高約 18.6~21.5m、「***」左岸堤防上 が標高約 28.5mであり、水害の危険性は否めないものの、相応の整備及び対策は 行われている状況にある。 行政的条件 当該地域は、都市計画区域、市街化調整区域(建蔽率 60%、容積率 200%)に 指定されている。 また、当該地域は農業振興地域に指定されており、農用地を標準としている。 また、 「***」の河川区域(堤防下)から 18m内は河川保全区域に指定されてい る。 ③標準画地及び標準的使用の把握 当該地域内にあっては、各種規模の画地が混在する状況にあるが、その地域性 及びその価格水準については、標準的な田をもって代表されるものと判断される。 よって、本件においては、標準的画地を「幅員 3.8mの*道にほぼ等高接面する 間口約 20m、奥行約 50m、地積約 1,000 ㎡のほぼ整形な農用地」と判定し、その 82 標準的使用を「田」としての使用と把握した次第である。 【コメント】 本件例示は、市街化調整区域の農用地であって、田地の実例としては典 型的とも思えるが、周辺河川や市街化区域等の関連が指摘されることが特 有の地域性であり、それらを表現するとともに、後の試算に反映させるこ とを念頭に既述したものと思われる。 ⑰畑地地域 【土地価格比準表】 条件 項目 交通接 交通の便否 ▲18.0%~+22.0% 出荷的集荷地との接近性 ▲10.0%~+10.0% 農道の状態 ▲11.5%~+13.0% 傾斜の方向 ▲6.0%~+6.0% 傾斜の角度 ▲6.0%~+6.0% 土壌の良否 ▲20.0%~+24.5% 排水の良否 ▲6.0%~+6.0% 災害の危険性 災害の危険性 ▲4.0%~+4.0% 行政上の規制の程度 行政上の規制の程度 ▲α%~+α% 補助金、融資金等による助成の程度 ▲α%~+α% 地勢 条件 土壌の状態 行政的 条件 その他 格差の内訳 集落との接近性 近条件 自然的 細項目 その他 その他 - 【地域分析実例】 ①近隣地域の範囲 対象不動産が属する近隣地域、すなわち同一の地域性及び価格水準を共有する 地域は、 「筍畑等を標準とした農地地域」であり、その範囲は後添「付近地図」に 図示したとおりと把握した。 ②近隣地域の地域的特性 83 交通接近条件 当該地域は、*道「****線」 、****タウン、既存集落地(**地区)の間に広がる、 筍畑等を標準とした農地地域である。 当該地域内において判定された標準画地(対象不動産)は、*道「****線」に面 している。 同街路は、現況幅員約 2.0mの建築基準法上の非道路(未判定)であって、コ ンクリート舗装された部分と未舗装域が混在する農道的状況にあり、農用軽車両 の通行は可能であるが、南方の「****タウン」方面へは階段区間があり車両の通 り抜けは出来ない。 このような状況の中、当該地域は、****線「****」駅から北方へ道路距離約 1.1 km(但し、徒歩経路としての道路距離。車両利用では迂回を要し約 1.7kmで ある。)にあって、最寄り市街地として南側にて隣接する「****タウン」 、北東側 にて隣接する既存集落地(**地区) 、及び北西方に近接する*道「****線」等から 市街化の影響を受ける位置的条件にある。 自然的条件 当該地域は、筍畑等を標準とした農地地域となっており、地域内には筍畑のほ か竹林、雑種地等が混在する地域となっている。 当該地域の筍畑については、**の特産品であって、**近郊に残された数少ない 整備状況良好な筍畑としての特性を有しており、農地としての品等は高位に位置 づけられることが、農業関係者への取材及び諸資料により確認されている。 また、その畑地状況は、緩傾斜の丘陵地勢であって、各農家によって施肥客土 され良好に造成管理されている土壌条件となっている。 なお、当該地域は、西側より約 10ha(最頂 78m)、約 10 ha(最頂 64m) 、約 20 ha(最頂 68m)の 3 箇所の丘陵地により構成される状況にあって、それらの 間は標高約 30m~40mの田畑が広がり、車両通行可能な市道が配されている状況 にあり、総じて、周辺各所から進入可能な里山的環境にある。 行政的条件 当該地域は、都市計画区域、市街化調整区域(建蔽率 60%、容積率 200%)、宅 地造成工事規制区域に指定されている。 また、当該地域は農業振興地域(農用地)が大半を占めている。 84 周知の埋蔵文化財包蔵地については、当該地域の西域の一部が「***古墳群」に 包含され、北域の一部が「**遺跡・***古墳群・***群」に包含されている。 ③標準画地及び標準的使用の把握 当該地域においては、各種規模用途の画地が混在する状況にあるが、その地域 性及びその地価水準については、現況筍畑(農用地)により代表されるものと判 断される。 また、本件において対象不動産として選定された 1,200 ㎡の画地は、標準的使 用を筍畑とする標準画地として相応であると把握した次第である。 【コメント】 本件例示は、畑地としてはイレギュラーであるが、筍畑を選定した。 なお、筍が収獲されている山が農地なのか林地なのかという論点もある かもしれないが、畑地については、そこに作付された農作物の種類、農家 毎のノウハウや管理整備状況等により、農業収益には差異が生じるが、公 的評価の観点からは、それらは農業補償に含まれるものでもあり、そのよ うな観点に立てば、林地とは異なる畑地地域として認識される次第である。 また、上記例示は、市街化影響を強く受ける畑地であり、実は先に例示 した宅地見込地の近隣地であるが、両者の差は主に行政的要因(市街化区 域か市街化調整区域か)に拠るところが大きい。 このように農地地域や林地地域については、本来、不動産の鑑定評価に 関する法律第 52 条により鑑定評価から除外されつつも、公共事業の用に 供する土地の取得等、農地、採草放牧地及び森林以外のものとするための 取引に係るものについては、同法及び鑑定評価基準の対象とされている次 第であり、補償の観点を無視できない特殊な鑑定評価であることを念頭に 置くべきである。 85 4.あとがき 以上、不況の影響により生じた暇を活かして、自分の思うところを示し、 自ら過去の実例を見直せたことは、今までやってきた業務に対して何かし ら再確認できた所でもあります。 良くも悪くも私は、二次試験の勉強から現在に至る過程で、鑑定評価と いう業務、それを行う不動産鑑定士という者に対して、少なからず自負を 持っております。 プロならば、一定レベルの仕事をできて当然。良い仕事をする者は評価 され、 悪い仕事をする者は評価されない。 そうあるべきと考えていますが、 今般、この業界の実態はそうでない部分が増えています。 それはどうも不動産鑑定士の世界だけではなく、士業界全般における悪 しき傾向といいますか、商業主義の横行により、良い仕事がしにくい環境 になっているのは確かです。 ここにおいて良い仕事、悪い仕事について再議論はしませんが、それは 不動産鑑定士同志がその仕事の成果を見ればおよそ解ることであり、但し、 それをユーザーに理解してもらう、あるいは良い仕事をユーザーに選択し てもらうことは大変に困難だということです。 ならば、あえて良い仕事を目指し、相互の信念や技量を認めた者同志が 連携を組み、自ら信頼の印を掲げるしかないと思う次第ですが、それも困 難な課題であります。 この論文は、補助者指導という目線において、少なからず自分が教えた 者は悪い仕事になびかない信念や技量を持ち、1 本のまともな鑑定評価書 を完成させ、その仕事に満足し、報酬を得て自立してほしいというもので あります。 この論文を読まれた方が、どう思い、どう考えるのかに、非常に興味が ありますので、もしよろしければ御意見御感想等頂ければ幸いです。 86