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雑豆類の需要確保に向けた調査から 見えてきたもの(2)

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雑豆類の需要確保に向けた調査から 見えてきたもの(2)
話 題
雑豆類の需要確保に向けた調査から
見えてきたもの(2)
飛 川 剛
消費者を対象とした調査について報告し
実施)など、これまで当財団が集めた雑豆
た前号に続き、本号では、小売、菓子、外
レシピを情報源に、情報を店舗用にカード
食といった業態を対象に調査した結果につ
化(A6判、両面印刷)し、乾燥雑豆類を
いて報告する。
販売するコーナーの付近に設置するととも
に、1週間から2週間の周期で内容の違う
Ⅰ.各種業態を対象とした調査
レシピに入れ替える形で情報提供する方法
雑豆類の需要確保に向けた消費者を対象
をとった。調査の実施については、平成1
とした調査結果においては、適切な情報提
年度及び平成年度ともそれぞれ1社(以
供や調理方法の提案の必要性が示されたこ
下、それぞれA社、B社という。)に協力
とから、小売量販店において雑豆を使用し
を頂き、各社とも調査店舗を2店舗とした。
たレシピをツールとした販売促進の実証調
レシピの設置期間はいずれの年度も9月か
査を行った。また、雑豆を使用した加工品
ら1月とし、この設置期間中の販売実績を
やメニューを提供する外食業等の需要確保
調査するとともに、前年同月比で販促効果
の可能性等を探ることを目的に、雑豆類を
を評価した。
使用した菓子の開発並びに試験販売及びレ
ストランやスーパーの惣菜メニューの開発
2)結果と考察
並びに試験販売調査を行った。
A社は2店舗とも3ヶ月の累計で前年の
2倍以上となる販売実績を得る結果となっ
1.小売量販店での販売促進の実証調査
た。特に、11月は2店舗とも3倍以上の実
1)調査の方法
績となった。B社の d 店においても、累
この調査では、消費者を対象とした調理
計で前年を40%上回る結果となった。ただ、
コンテスト(平成0年度及び平成1年度に
c 店においては、いずれの月も前年を下回
とびかわ つよし 財団法人十勝圏振興機構
(とかち財団)、
プロジェクト推進課 副課長
り、累計で前年の80%に満たなかった。こ
の結果を表1に示す。
今回の調査期間中、A社では9月及び11
--
表1 調査店舗別乾燥雑豆類販売金額実績での対比
9月前年比
10月前年比
11月前年比
累計前年比
A社
(H21年度)
a店
115.40%
110.60%
349.50%
258.90%
b店
100.00%
53.30%
340.10%
227.90%
B社
(H22年度)
c店
68.25%
95.64%
76.45%
79.88%
d店
133.35%
247.16%
66.42%
140.48%
※資料提供:A社及びB社
※販売金額による対比
月に広告チラシに雑豆類を掲載していた。
●レシピカードを配置したことによる販
一方、B社では調査期間中広告チラシに一
促効果はある。
切雑豆類の掲載はしなかった。また、A
●一度に掲示できるレシピの数は売場の
社の a 店、b 店及びB社の d 店においては、
スペースが許す限り多い方がよい。
乾燥雑豆類の売り場のすぐ近くにレシピを
●レシピは、売り場により近くわかりや
置くスペースを確保することができた。特
すい場所に配置する。
に d 店では、1種類のレシピを一度に掲
●レシピは短い周期で定期的に交換する
示できるスペースを売り場の間近に確保で
ことで雑豆利用への関心、訴求力を高
きた。一方でB社の c 店では、場所の確保
めることができる
が難しく、売場から少し離れた場所での掲
示となった。こうした状況から調査結果を
2.菓子への応用による商品開発、定番化
考察すると、A社では広告のチラシによる
の調査について
効果及び新豆シーズンが重なったこともあ
雑豆類の需要確保を図ることを目的に、
り11月については、急激な販売の伸びをみ
菓子への応用による商品開発、試験販売等
せたと考えられる。また、B社においては、
を実施した。具体的には「札幌市での試験
広告チラシによる雑豆類の販促は行ってい
販売」、「十勝管内でのアンケート実施と試
なかったが、多種のレシピが売り場の間近
験販売」、「十勝管内での試験販売」の3つ
に設置されたことが d 店の販売実績の結
の取組みを設定し、消費者の反応を確認す
果につながったと考えられる。一方で、B
るとともに、定番化の可能性を探った。
社の c 店では売場からレシピが離れてし
まったことが販売訴求力を高める効果に繋
1)札幌市での試験販売の結果と考察
がらなかったと考えられる。以上のことか
この調査は、札幌エリアに17店舗を持つ
ら、小売量販店における雑豆類販売促進に
企業が菓子2品を開発し、平成1年11月の
ついては、次のようにまとめることができ
1ヵ月間試験販売したものである。開発さ
る。
れた2品の一つは雑豆類を中に入れた要冷
蔵のチーズケーキ風菓子、もう一品は雑豆
--
類を丸ごとふんだんに使用した常温保存の
和風菓子である。結果として、常温保存の
雑豆類をふんだんに使用した和風菓子(写
真1参照)が定番商品となった。
写真2 サンドケーク
品について十勝管内の子供たちにアンケー
ト調査を行った結果、サンドケークについ
て「味がおいしい」が約6%、「また食べ
写真1 雑豆をふんだんに使用した和風菓子
たい(再食意向がある)」が約65%といず
この商品が定番となった理由として、自
れも高い回答となり、結果として定番商品
社他商品と比較して単価が約2倍であるに
になった(図1)参照)。
もかかわらず販売数が伸びたこと、常温販
売で賞味期限も長いという商品の取扱いの
良さが挙げられる。なお、この商品の開発
コンセプトは、雑豆類を「見て」、「味わっ
て」、「楽しんでもらう」というものであり、
地域食材を利活用することへのこだわりが
ある開発企業が、使い慣れている餡以外の
雑豆類を使った商品を企画・開発したこと
にも意義があると考えられる。
味について(単位:%)
2)十勝管内でのアンケート実施と試験販
売
この調査は、十勝管内で菓子店を営む企
業が開発した菓子2品に関するものであ
る。開発された商品の一つは、餡とクリー
ムを入れたロールケーキ、もう一品は餡を
焼き菓子で挟んだサンドケーク(写真2)
で、いずれも洋菓子である。この2つの商
再食意向について(単位:%)
図1 サンドケークの味および再食意向について
--
今回開発されたサンドケークが定番と
栗入りおはぎ、豆
なったのは、アンケート結果が良好だった
入りタルトである。
ことに加え、店頭での試験販売の結果も良
これらの試験販売
好だったことによるものである。さらには
の結果、餡入り宇
常温での販売が可能で商品の取扱いが平易
治抹茶ロールが定
であることも要因の一つとしてあげられる。
番商品となり、あ
ずきのシューク
3)十勝管内での試験販売の結果と考察
リーム、豆入りパ
この調査では、十勝管内の企業6社が合
フ、餡入りロール
計8品を開発し、十勝管内にある店舗で平
ケーキが期間限定での販売となった。餡入
成年10月の1ヵ月の間、試験販売を行っ
り宇治抹茶ロールが定番になった理由とし
た。開発した8品は、豆入りチーズケーキ
て、雑豆類と抹茶の相性が非常によく、消
(常温)、小豆のシュークリーム、豆入りパ
費者の味への評価が高く、販売につながっ
フ、餡入りロールケーキ、餡入りマドレー
たことが挙げられる。また、味の良さ以外
ヌ、餡入り宇治抹茶ロール(写真3参照)、
にロール1本あたり900円を切るという値
写真3 餡入り宇治抹茶
ロール 表2 今後の雑豆類の取扱い意向
雑豆の利用意向、販売拡大へのご意見等
豆そのものを調理レシピ付きで土産として販売できるか考えたい
洋菓子店のため生豆からの加工は難しい。当社のポリシーは子供からお年寄りまで食べ
られるお菓子づくり。開発素材として豆には興味がある。お年寄りは和菓子っぽいもの
を購入していく。
洋菓子店では豆の加工は難しい。豆は季節の素材。夏には売れない。地元百貨店のフェ
ア等でブースを作って、各店持寄りで試験販売してみては?
和菓子のほうが合うと思う。なかなか洋菓子の方では難しい
基本的に季節商品。十勝が一大産地であるだけに今後も豆を素材に使用した商品開発を
行っていきたい。
もっと豆のイメージ(ヘルシーさ等)を広めてアピールしたら良いと思う。一方で、十
勝で雑豆はなじみがありすぎ雑豆を使用する場合は相当の工夫が必要と考え、そのため
の豊富なアイディアや手間も必要。
--
ごろ感もその理由と考えられる。
験販売を通じ、売れ筋商品を確認するとと
今回の開発及び試験販売した企業6社
もに、定番化の可能性を探った。
の多くは洋菓子専門店である。こうした
中、雑豆類の利用に関する意向や雑豆類の
1)レストランにおけるメニュー開発及び
販路拡大に関する意見聴取を行ったところ、
「洋菓子店では生豆から加工することは難
試験販売の結果と考察
この調査では、平成1年11月の1ヵ月間、
しい」、「雑豆類は基本的に和菓子で利用し
雑豆を使用し考案したメニュー8品(サラ
たほうがあっている」という見解が多くみ
ダ、カルパッチョ、パン、ニョッキ、カツ
られた。雑豆類の洋菓子への利用及び普及
レツ、ピザ、リゾット、ティラミス)を夜
を図っていく場合は、業務用の素材・半加
間メニューとして提供し、そのオーダー
工品等を提供する業者等との連携を強化し、
数等の利用動向を確認した。期間中の来
洋菓子にマッチした商品の開発・供給が求
店者は1,58名で、考案されたメニューの
められると考えられる。なお、この6社に
オーダー総数は11であった。考案された
対し行った、今後の豆類の取扱い意向に関
メニューのうち最も多くオーダーがあった
する意見聴取の結果を表2に示す。
のはサラダであった。そのオーダー数は9
で総オーダー数の0%を占めていた。次に
3.外食、中食(惣菜)での利用、試験販
多くオーダーがあったのはカルパッチョで、
オーダー数は66で全体の1%を占めた。考
売について
ここでは、首都圏で素材にこだわったメ
案されたメニューやオーダー数等をまとめ
ニュー構成で営業するレストラン及び十勝
た表を表3に示す。この試験販売の結果か
管内で地域素材にこだわったスーパーの総
らは、前菜や女性に好まれるメニューへの
菜部門の協力を頂き、メニュー開発及び試
利用が販売につながっている傾向にあるこ
表3 考案メニューとオーダー数と単価
メニュー
オーダー数
総オーダーに占める割合
単価
十勝お豆と豆腐のサラダ
93
30%
780 円
北海タコのカルパッチョ
66
21%
800 円
5
2%
880 円
小豆入りインカのめざめのニョッキ
31
10%
950 円
豆と十勝野ポークのミルフィーユカツレツ
20
6%
1,200 円
十勝豆とラクレットピザ
37
12%
1,100 円
虎豆のピリ辛ジャムと豆入りパン
十勝ベーコンと三種の十勝豆のリゾット
13
4%
960 円
抹茶のお豆入りティラミス
46
15%
550 円
311
100%
合計
--
とが考察された。
Ⅱ.まとめ
平成15年度から平成年度にかけて当財
2)中食(惣菜)におけるメニュー開発及
団が実施した「雑豆類の需要確保に向けた
び試験販売の結果と考察
調査」から見えてきたものについて、前号
この調査では、十勝管内にあるスーパー
そして本号と2回に亘り報告させて頂いた。
C社の協力を得て、雑豆類を使用した惣菜
雑豆類の需要に関しては、若年層ほど摂取
17品が考案され、2か月間における試験販
量が少ない状況にあり、身近な食材ではな
売の結果をもとに定番化について検討を
いという決して明るくない調査結果となっ
頂いた。今回考案された17品のメニュー
たが、一方でちょっとしたきっかけから喫
は、グラタン、コロッケ、フリッター、か
食や調理する(メニューを考え、調理を楽
き揚げ、酢のもの、カレー等多種に及んだ
しむ)意識に向かっていくこともわかった。
(表4参照)。この試験販売を経て、消化率
更に、菓子や惣菜、レストランメニュー等
が70%以上となった7品が定番品となった。
にも更なる利用拡大の可能性を秘めている
このうち4品は80%以上の消化率であった。
ことがわかった。この調査で得られた結果
および考察を踏まえ、次のようにまとめる。
消費者への雑豆類購入や利用促
表4 考案メニューと単価と定番化の結果
売り単位 単価(円) 定番化
進について
豆入りグラタン
1パック
250
まずは、雑豆類そのものに関
豆入りコロッケ(3つ入り)
1パック
238
豆入りクリームコロッケ(3つ入り)1パック
248
◎
豆とエビのフリッター(4つ入り)
1パック
238
◎
豆入りエビかき揚げ(2つ入り)
1パック
280
◎
豆入り御飯弁当
1パック
280
◎
する調理情報に対する潜在ニー
豆入り御飯おにぎり
2個
200
◎
ズがあることがわかった。こう
豆と鶏肉の唐揚
1パック
280
豆と海藻の酢の物
1パック
198
豆入り玉子焼き
1パック
100
4種類の豆サラダ
1パック
158
豆と10品目サラダ
1パック
198
豆とエビのチリソース
1パック
280
豆入りカレー
1パック
580
理方法を提供していくことであ
豆とひじき煮
1パック
150
る。今回の調査では、様々な調
豆入りクリームシチュー
1パック
198
理例が示されたが、ほとんどが
豆入りおこわ
1パック
198
特別な調理方法では無く、今あ
考案メニュー
--
する情報及び調理方法等の情報
を継続的に発信していくことで
ある。今回の調査で雑豆類に関
したことから、今後もネットや
小冊子等の媒体を通じて、可能
◎
◎
な限り継続的な情報発信を行っ
ていく必要がある。
次いで、工夫した具体的な調
る料理への応用である。豆をそのまま使用
なく、今あるメニューへの利用、応用が中
するのではなく、刻んで食べやすくする等
心になると考えられる。
の工夫もその一つで、ちょっとした工夫や
提案が利用促進につながっていくものと考
最後に、この調査で得られた雑豆類を使
える。
用したレシピを下記サイトでご覧頂くこと
ができる。雑豆の需要確保につながるよう
菓子や外食及び中食(惣菜)への利用促進
是非ご利用頂きたい。
について
財団法人十勝圏振興機構 ホームページ 洋菓子での雑豆類の利用の難しさが確認
http://www.tokachi-zaidan.jp/omame
されたが、一方で和の素材との組合せによ
財団法人十勝圏振興機構 携帯サイト る商品化や季節商品としての利用等による
http://www.tokachi-zaidan.jp/omame/m
需要確保の可能性も示唆された。雑豆類を
利用した洋菓子開発等を促進させていくに
謝辞
は、関係する業者間の協力、連携関係の構
「菓子への応用による商品開発、定番化の
築がこれまで以上に必要となってくるもの
調査」の実施については、北海道菓子工業
と思われる。
組合十勝支部様並びに帯広洋菓子協会様の
外食及び中食(惣菜)においては、基本
ご協力により実施することができた。本紙
的に全く新たなメニュー開発を行うのでは
面をお借りしお礼申し上げたい。
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