...

ダムコンクリートの水和熱低減に関する研究

by user

on
Category: Documents
16

views

Report

Comments

Transcript

ダムコンクリートの水和熱低減に関する研究
 土木学会第55回年次学術講演会(平成12年9月)
Ⅴ-203
ダムコンクリートの水和熱低減に関する研究
水資源開発公団試験研究所 正会員 鈴木 敦
水資源開発公団試験研究所 正会員 木戸研太郎
岡山大学環境理工学部 フェロー 阪田憲次
1.はじめに ダムのようなマスコンクリートを連続的に打設する際の課題として、水和熱の対策がまず挙げら
れる。RCD 工法などの合理化施工においてはパイプクーリングが行われないため、夏期の練上り温度を低下さ
せるためには効果的なプレクーリングが不可欠である。近年尿素の加水分解時に吸熱反応を起こす性質に着目し、
尿素混入によるコンクリートの水和熱低減についての新たな研究が阪田ら 1)により行われ、一般的なコンクリー
トやセメント量の比較的多い高流動コンクリートにおいては、水和熱低減に非常に有効であることが明らかとな
っている。本研究は貧配合であるダムコンクリートにおける尿素の適用可能性について検討を行ったものである。
2.試験概要 実験は、1)モルタル試験および 表−1 モルタル試験検討ケース (g/バッチ)
2)コンクリート試験(内部有スランプコンクリート、
RCD 用コンクリート)により行った。
ケース
(1)使用材料
Base
中庸熱ポルトランドセメント(密度 3.20kg/l)
U-0
普通ポルトランドセメント(密度 3.18kg/l)
U-30
2
フライアッシュ(密度 2.26kg/l,比表面積 3,770cm /g)
尿素:試薬用尿素(一級)
、肥料用尿素
U-30
(2)試験内容 1)モルタル試験 モルタルは、結合
U-50
材量(セメント+FA)が 140kg/m 程度のダムの内部有
結合材
種類
試 薬
用
U1
MF0
MF30
NF30
(3 種類)
U-50
骨材:角閃石(粗骨材:密度 2.98kg/l,吸水率 0.68%、 Base
細骨材:密度 2.94kg/l,吸水率 0.87%) U-0
3
尿素
種類
肥 料
用
U2
MF30
結合
材量
単位
水量
細骨
材量
尿素
量
尿素混
入率%
300
210
1350
0
0
300
200
1350
13.4
4.47
300
180
1350
40.1
8.90
300
160
1350
66.8
13.37
300
210
1350
0
0
300
200
1350
13.4
4.47
300
180
1350
40.1
8.90
300
160
1350
66.8
13.37
結合材種類:MF0(中庸熱ポルトランドセメント、FA 置換率 0%)
スランプコンクリート(ELCM 配合)相当とした。表−1 MF30(中庸熱ポルトランドセメント、FA 置換率 30%)
NF30(普通ポルトランドセメント、FA 置換率 30%)
は、検討ケースを示す。試験は次の3種類について実施 尿素混入率=尿素量 U(g)/結合材量 C+F(g)×100%
した。①モルタルフロー試験:JIS R 5201 表−2 コンクリート試験配合条件
によりフロー値を求めた。②圧縮強度
試験:JIS R 5201 により供試体を作製
し、圧縮試験(材齢 7,28,91 日) を実施。
種類
Gmax
スランプ
VC 値
空気
量%
結合材量
kg/m3
s/a
%
粗骨材
混合比
AE 減
水剤 g
ELCM
RCD 用
80mm
80mm
3.0cm
20 秒
3.5
1.5
140
120
28
30
40:30:30
40:30:30
350
300
AE 剤
適量
③発熱特性試験:練混ぜ前のモルタル
材料の温度はすべて 20℃に調整し、練り上がり温度を測定。
MF0(U1)
2)コンクリート試験 結合材種類は MF30 とし、表−2に
示す2種類のコンクリートについて、まず所要条件を満足す
る配合を確認した上で、練上り温度、経時変化(施工性)
、強
度発現(材齢 2,3,7,28,91 日)について確認した。また RCD
用コンクリートについては、断熱温度上昇試験を実施した。
尿素の混入量は、尿素量 0(W-0 とする)、および尿素混入率
フロー値(mm)
試験モルタルは断熱材で囲んだ樹脂製容器に入れ、モルタル
中央部の温度を熱電対により連続的に 1 週間測定。
MF30(U1)
NF30(U1)
MF30(U2)
215
210
205
200
195
190
0
10
20
30
40
50
尿素混入量(g)
60
70
80
図−1尿素量とフロー値との関係(モルタル試験)
キーワード:尿素、ダムコンクリート、水和熱低減、断熱温度上昇、プレクーリング
連絡先:〒338-0812 浦和市大字神田 936 水資源開発公団試験研究所 TEL048(853)1785
FAX048(855)8099
土木学会第55回年次学術講演会(平成12年9月)
Ⅴ-203
10%(W -10 とする)から 10%刻みで 40%(W-
30
40 とする)まで混入した 4 ケース×2 種類
25
(ELCM、RCD 用)について検討を行った。
20
温度 (℃)
室温
3.試験結果 (1)モルタル試験 図−1は
水+尿素のみ
水のみ
(U - 1 0 )
15
(U - 3 0 )
10
尿素混入量とフロー値との関係を示している。
(U - 5 0 )
5
尿素混入量の増加とともにフロー値も増加し、
0
0
0 .5
1
1 .5
流動性が良化する。図−2は発熱特性試験結
2
2 .5
3
経 過 時 間 (日 )
30
B ase
果を示している。セメントを混ぜない水と尿
U-10
モ ル タ ル 試 験 (M F30、 U1)
25
素のみ場合(上図)では、試料温度は U-10 で約
温度 (℃)
20
半日、U-50 で約 1 日後に試験室温(20±2℃)
15
室 温
U-30
U-50
10
に追従した。それに対してモルタル(下図)に
5
おいては、U-50 で最高温度が約 3℃低下し、
0
0
約 1.5 日後に最高温度が確認された。セメン
0 .5
1
1 .5
2
2 .5
3
経 過 時 間 (日 )
図−2 発熱特性試験結果(モルタル試験)
ト種類、フライアッシュ置換率の違いは、最
高温度の差には現れたが、その到達時間は全て同じ傾向を示した。
(2)コンクリート試験 図−3は、表−2の条件を満足する配合のペースト構成を示す。ELCM 配合では、所
要コンシステンシーを満足する単位水量は尿素混入量に反比例し減少するが、混入した尿素が全て溶解したと仮定
すると、尿素水量(単位水量+尿素量)は逆に増加する結果となった。RCD 用コンクリートでは、所要コンシステン
シーを満足する尿素水量は全ケース一定となった。図−4は、強度発現特性を示す。初期材齢においては 2 種類の
コンクリートとも尿素量の増加に伴い圧縮強度が減少する傾向が見られた。特に RCD 用コンクリートでは、材齢
が進行してもこの傾向はあまり変わらない。図−5は、RCD 用コンクリートにおける断熱温度上昇の比較を示す。
尿素混入により①試験開始時のコンクリート温度の低下(プレクーリング効果)および②初期の水和反応の遅延効
果が確認された。W-0 と W-40 では、試験開始時の温度差が約 2℃、断熱温度上昇量の最高温度差が約 5℃である。
4.まとめ 本研究では、ダムコンクリートにおける水和熱低減方法として、尿素の適用可能性を検討した。そ
の結果、RCD 用コンクリートで実施した断熱温度上昇試験では、プレクーリング効果および水和反応の遅延効果が
確認された。現在供試体による長期暴露試験も実施しており、今後も引き続き本検討を実施していく予定である。
参考文献 1)例えば阪田ほか:高流動コンクリートの
結 合 材 (セ メ ン ト + フ ラ イ ア ッ シ ュ )
水
尿素
水和熱低減に関する研究,コンクリート工学年次論文報
内 部 有 ス ラ ン フ ゚コ ン ク リ ー ト
(C + F = 1 4 0 k g / m 3 )
告集, Vol.17, No.1,pp.87-91,1995.
圧縮強度(N/mm2)
2日 強 度
3日 強 度
7日 強 度
28日 強 度
W
W
W
W
W
91日 強 度
R C D 用 コ ン クリー ト
(C + F = 1 2 0 k g / m 3 )
25
W- 0
20
W- 1 0
W- 2 0
W- 3 0
W- 4 0
0 .0
5 0 .0
15
10
-0
-10
-20
-30
-40
1 0 0 .0
1 5 0 .0
ペ ー ス ト 構 成 (容 積 )
2 0 0 .0
(L/m 3)
図−3 コンシステンシー一定となる配合
5
0
45
0
5
10
15
20
25
30
ヘ ゚ー ストに 占 め る 尿 素 量 [容 積 比 ](%) 内 部 有 スランフ ゚
25
20
W- 0
W- 1 0
W- 2 0
W- 3 0
W- 4 0
15
10
W - 0
40
コンクリート温度(℃)
圧縮強度(N/mm2)
W -0
W -10
W -20
W -30
W -40
W - 2 0
35
30
W - 3 0
25
5
20
0
W - 4 0
結 合 材 種 類 :M F30を 使 用
0
5
10
15
20
25
30
ペーストに 占 める 尿 素 量 [容 積 比 ](%) RC D用 コンクリート
図−4 強度発現特性(コンクリート試験)
15
0
5
10
15
20
25
30
35
40
材 齢 (日 )
図−5 断熱温度上昇試験結果(コンクリート試験)
Fly UP