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「衣」「食」「住」から見るウェルネス感覚の高まり

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「衣」「食」「住」から見るウェルネス感覚の高まり
Resonance Lab. レポート
オリンピックイヤーを迎えて
「衣」
「食」
「住」から見るウェルネス感覚の高まり [1/3]
2016 年 1 月 19 日 辻本 麻悠
東京オリンピックまであと 4 年。昨年は新国立競技場の再コンペにエンブレム再採択と前途多難な部分にニュースに注目が
集まったのが残念だったが、生活者のより身近なマインドや暮らしの中にはもっと前向きでヘルシーな感覚が確実に定着しつつ
あるように思う。
オリンピックイヤーを迎えて今回着目したのは、
生活者の潜在的なウェルネス感覚の高まりと、
それを盛り上げる「衣」
「食」
「住」
各分野での商業のアプローチについてだ。ただ単に「スポーツをする」
や
「競技に注目する」
といった直接的なものとは少し異なり、
より個々の感覚に結びついた広がりとして捉えていく。
「衣」 アスレジャーの広がりと商業界の挑戦
アパレル業界ではスポーツミックススタイルが隆盛。昨秋は毎日のようにこの話題が新聞を賑わせていた。米国女
性を中心に広がっているスタイル「アスレジャー(Athletic- 運動 - と Leisure- 余暇 - を組み合わせた造語)」という言
葉も注目され、2016 年にはより広がりを見せると思われる。これらの流れに呼応するようにメーカー、小売ともに様々
な取り組みが出現しており、ここでは大きく3つに分けて紹介する。
1つ目は、世界的な広がりを見せている事象として、スポーツブランドが一流のデザイナーを起用することでファッ
ション性を強化し、より一般的にタウンウエアとして着用できるラインを増やしていることだ。
ナイキは『NikeLab × sacai』の 4 作目を発表。素材使いに定評のあるデザイナーを起用することで、ブランドの
持つ輪郭をさらに際立たせている。sacai のような憧れのブランドにコラボなら手が届くかも? という価格設定なの
も絶妙なポイントだ。アディダスジャパンは『アディダスオリジナルス』のブランドで、デザイナーとのコラボレーショ
ンを随時展開している。スーパースターやスタンスミスといった定番商品も再ブレイクし、近年ファッションビルに
店舗を増やしている。また、アパレルの強化が課題だったリーボックでは『リーボッククラシック × メゾン・キツネ』
のコラボレーションを展開。日本国内のみだった第一弾のシューズは即完売、第二弾はアイテムの幅を広げ、日本の
企画が初めて世界展開となった。
DESCENTE BLANC 代官山
日本のスポーツブランドであるデサントも、スポーツ市
デサントの直営店。
店舗設計はスキーマ建築計
場以外の顧客獲得をめざし『デサントブラン』(代官山)を
画代表の長坂常氏が手がけ
る
(後述 EN ROUTE も同氏)。
9 月に OPEN。日本メーカーならではのクラフトマンシップ
主 力 商 品 の DESCENTE
ALLTERRAIN の商品を用い
を感じさせる『デサントオルテライン』シリーズでは、若
た浮遊感ある VMD が特徴。
価格帯は高いものの、男性
手デザイナーの MAME とのコラボレーションを展開。機能
客を中心に平日にもかかわ
らず客足は途絶えなかっ
性の高いものをこだわって着たい層を取り込んでいる。
た。日本ならではを求める
インバウンド客の姿も。
デザイナーコラボ先駆時代
1998 PUMA × JIL SANDER
2000 PUMA by MIHARAYASUHIRO
定番アイテムをベースに共同開発した
ライフスタイルバージョンは、
ファッションスニーカーとしての地位を確立。
アイテム・スポーツ特化コラボ時代
2005 Adidas by Stella McCartney
2006 PUMA × Alexander McQueen
Athleisure ファッション時代
2015 NikeLab × sacai
2015 Reebok CLASSIC × MAISON KITSUNE
2015 adidas StellaSport
▲スポーツブランドとデザイナーコラボレーションの変遷
スポーツブランドと一流デザイナーとの本格的なコラボレーションは 1998 年のプーマとジル・サンダーのコラボが先駆けと言われている。その後 2000 年代半ばにシューズのみやヨガフィット
ネスのみといった特化型のコラボレーションが出現。都心型のファッション感度の高い層に向けた施設を中心に展開された。そして近年は、商品カテゴリを跨いだファッションとして広がりを見
せており、直営店の立地もファッションを意識した場に展開されるのが一般的に。今までにない規模でこの傾向が加速している。
9F Seavans S, 1-2-3, Shibaura, Minato-ku,
Tokyo, Japan
TEL :(03)6865 - 1261
URL: http://www.semba1008.co.jp/
Resonance Lab. レポート
オリンピックイヤーを迎えて
「衣」
「食」
「住」から見るウェルネス感覚の高まり [2/3]
2016 年 1 月 19 日 辻本 麻悠
2つ目は、アパレル企業によるスポーツを切り口とした MD やブランドの展開が相次いで登場したのも昨年の特徴
だった。ユナイテッドアローズの『EN ROUTE』やマッシュスポーツラボの『エミ』、『W&E』などが挙げられる。
実際に見てみるまでは「スポーツブランド以外が出すものは形だけの流行ものだろう」とあまり肯定的でない感覚
を持っていたが、店舗に立ち寄り接客を受けてその印象が変わった(枠内参照)。複数ブランドからのセレクトとオ
リジナルアイテムを組み合わせて展開されている中で、オリジナルアイテムがスポーツ色の強いアイテムとタウンウ
エアとの間であったり、スポーツブランドとブランドの間のつなぎ目のとしてちょうど良い役割を果たしているのだ。
ややもすると「やりすぎ感」や「ストイック感」が出てしまいそうなスポーツミックススタイルだが、これらのセ
レクトはライト層にとって取り入れやすいものとなっていた。
■実例調査 マッシュスポーツラボの新業態 W&E
昨秋、二子玉川に OPEN したマッシュスポーツラボの新業
態『W&E』は約 50 坪の店内にオリジナル商品とセレクトが
およそ半分ずつ。店頭には同社グループで展開するコールド
プレスのジューススタンドを設けていて、ジュースクレンズ
のプログラムにも対応していた。
本格的なスポーツ専門店の専門性や商品量にはかなわない
が、スポーティーなセレクトアイテムとタウンウエアとのつ
なぎとなるようなオリジナル商品があり、初心者やあまりス
トイックさを求めない者には入りやすく感じる。
デザインだけでなく機能性にも特徴を持つ商材を取り扱う
ため、販売員の接客が重要となる。「山」、「RUN」、「街」と初
心者が聞きたいシーンでの着用について、ファッション性、
機能性両面で「ほどほど」な商品知識を、丁寧に説明しても
オリジナルアイテムは同社が展開する『エミ』のもの(マッシュスポーツ
ラボ HP のスクリーンショット)
店頭のジュースの他に
も sunfood の ス ム ー
ジーミックスやチア
シードなどのパワー
フードを取扱っている。
高品質でヘルシーな商
品はパッケージのデザ
インも○。
らえたのが好印象だった。この「ほどほど」具合は人によっ
ても異なるが、スペック重視のスポーツファッションど真ん
中では恥ずかしい、けれども機能性は押さえておきたいといっ
たニーズを
み取っているところに安心感を覚える。
店舗で意外に感じたのは、(若めのファッションを扱うフロ
アという立地にもかかわらず)お客様の年齢の幅が広いこと
だ。スポーツという関心事に響く切り口と、今までのスポー
ツ専門店とは違った接客が、テイストや世代切りになりがち
なアパレルと違った広い世代のお客様の獲得につながってい
るのだろう。
およそ50坪の店内はゆとりのある配置。店頭のジューススタンドと、施
設地下入口に面したガラススクリーンに整然と並ぶスニーカーが目を引く。
9F Seavans S, 1-2-3, Shibaura, Minato-ku,
Tokyo, Japan
TEL :(03)6865 - 1261
URL: http://www.semba1008.co.jp/
Resonance Lab. レポート
オリンピックイヤーを迎えて
「衣」
「食」
「住」から見るウェルネス感覚の高まり [3/3]
2016 年 1 月 19 日 辻本 麻悠
3つ目は、アパレル企業が導入する本格スポーツブランドの別注モデルやコラボレーション商品だ。前述のアパレ
ル企業のスポーツセレクトが増えたことにも関連するが、ジュンがナイキとコラボレーションした『NERGY』は新宿
ルミネ2の一等立地に出店。昨秋の RN の顔となった。規模の大小はあるが、旬のテイストを気軽に取り入れられる
ので一般的には最も多く出現しているタイプの事象と言える。
アスレジャーへの関心の高まりは、「今っぽい」から魅かれるというのも事実だが、それだけでなく機能性のある
衣類のタッチポイントが増えたことで、スポーツを本格的にしていない人やスペックを重視する人にも選ばれ、結果
として広い顧客の獲得にもつながっている。実際、キッズアパレルでもスポーツやアウトドアブランドの衣料は多く
のセレクトで導入されており、丈夫で動きやすいことから多少割高でも結果的にはお得と考えて購入されている。
このような動きを見ると気になるのは一過性の流行りに終わるのではないのか? というところだ。今後の継続性を
考える場合、以下の2点がキーになると推測する。まず 1 点目は、スポーツアパレルの機能面や素材でのノウハウは
一朝一夕では会得できないのは想像にたやすい。形だけのスポーツテイストの商品は一時的には売れても、長期的に
残るのは素材の特性と着用シーン(これは今までのスポーツシーンだけでなく、現在のアスレジャーの高まりにより
発生する新しい着用シーンという意味も含む)でのニーズに合わせた機能やデザインのあり方の双方を深く理解した
作りのものだろう。もう1点は接客のバランス感覚だ。デザインだけでなく機能性にも特徴を持つ商材を取り扱うた
め、店頭での商品についての説明やリコメンドが重要となる。ファッション性と機能性両面でのアプローチが柔軟に
できるスタッフがいるかどうかで最終的な購買決定は大きく左右されるだろう。
昨年は 2020 年に向けて生活者の潜在的な部分でじっくりその熱を上げてきたイメージだが、オリンピックイヤー
となる今年はよりポジティブな変化が目に見えて出現するのを期待したい。レゾナンスラボでは引き続きこのテーマ
で、世の中に出てくる兆しと生活者の気分の変化について読み取っていく。次回は「食」を切り口としてレポートする。
海外での買い物に熱中する
中国人のアスレジャーに対する見方は?(buy? or not!)
アスレジャーへの関心は、中国でも男女問わず、若者を中心に 30 代後半の世代まで広がっている。
日本と同じように『スポーツ × ファッション』という新マーケットが注目されている要因は 2 つほど考えら
れる。1 つは、中国では通勤・通学の服装が比較的自由でよいため、スポーツ系やカジュアル系を着る人が多い。
また、生活が急激に豊かになるとともに、人々がより強く生活の質を追求し始めており、健康的なライフス
タイルやダイエットに関する話題に注目が集まりやすいのだ。ただし、国土が広いことや、まだまだ生活格
差が大きいこともあり、中国の全体的なトレンドとして広がり定着するには時間がかかるだろう。
中国でのビジネスの考え方の特徴は、<失敗しても良いから、まずは挑戦することが重要>というチャレンジ
マインドの強さ。だから、まだマーケットとしては発展途上ではあるものの「ファッション・カフェ・雑貨」
複合型新業態の店舗がすでに都心では増えてきているのだ。そしてさらに次のステップである「スポーツ ×
ファッション+α」といった新たなアスレジャー型ライフスタイルショップが中国に現れる日も近いだろう。
9F Seavans S, 1-2-3, Shibaura, Minato-ku,
Tokyo, Japan
TEL :(03)6865 - 1261
URL: http://www.semba1008.co.jp/
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