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税関リスクの最新動向と対応策 税関リスクの最新動向と対応策

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税関リスクの最新動向と対応策 税関リスクの最新動向と対応策
2014 年 8 月 8 日
税関リスクの最新動向と対応策
《税関価格査定》
【監修】
キャストグループ代表 日本国弁護士・税理士
上海勤瑞律師事務所 パートナー/中国律師
キャストコンサルティング(上海)有限公司 董事/中国登録会計士
村尾 龍雄
徐
暁青
永田 麻耶
【作成】
弁護士法人キャスト
弁護士法人キャスト
藤田
工藤
日本国弁護士
日本国弁護士
直佑
拓人
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本書に記載されている中国(又は日本)の法律法規の解釈、契約等の文書において中国(又は日本)の法律を
適用する具体的問題に関する意見及び中国(又は日本)の法律を適用する行為又は事件に関する意見につい
ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
【目次】
■はじめに ..................................................................................................... 4
[Q1]日中間の取引について、中国税関から狙われやすいポイントはどのようなものでしょうか。 4
■査定価格とは .............................................................................................. 6
[Q2]実際に査定価格が問題になる事例として、どのようなものがあるでしょう。..................... 6
[Q3]「査定価格」とは何ですか。....................................................................................... 7
[Q4]なぜ査定価格が問題になるのでしょうか? ................................................................ 7
[Q5]査定価格に関する主な法令等を教えて下さい。 ......................................................... 8
[Q6]2013 年 12 月 25 ⽇付で税関の価格査定に関する法令が改正発布され、2014 年 2
月 1 ⽇から施⾏されていると聞きました。具体的に何が変更されたのでしょうか。 ..................... 10
[Q7]原則的には課税価格はどのように決定するのですか。 ............................................... 13
[Q8]「実際支払価格」は具体的にどのように判断されますか。 ........................................... 13
[Q9]「調整項目」とはどのようなものですか。.................................................................... 14
[Q10]加算項目の詳細を教えて下さい。 ........................................................................ 15
[Q11]減算項目の詳細を教えて下さい。 ........................................................................ 16
[Q12]加算項目である保険料について、税関から指摘された場合、どのようにすればいいです
か? ................................................................................................................................. 16
[Q13]関連サービス費⽤等に関する留意点を教えてください。........................................... 17
■査定価格における特殊関係 ............................................................................ 18
[Q14]親子関係がある場合、税関から注目されるリスクが高いのでしょうか? .................... 18
[Q15]親子関係がある場合、税関の調査に反駁できるようにするポイントを教えて下さい。.. 18
[Q16]「特殊関係」がある場合は、どのように価格査定されるのでしょうか。 ........................ 19
[Q17]「特殊関係」とはどのような関係でしょう。............................................................... 20
[Q18]特殊関係があっても、成約価格に影響しない場合とはどのような場合ですか。 .......... 20
[Q19]特殊関係の設例 1 ............................................................................................. 21
[Q20]特殊関係の設例 2 ............................................................................................. 22
■成約価格によらない価格査定手法.................................................................... 24
[Q21]成約価格によらない課税価格の決定方法が選択されるのは、どのような場合ですか?
........................................................................................................................................ 24
[Q22]取引価格による課税評価方法以外の場合、どのような評価方法がとられますか?.... 24
[Q23]税関が⑤合理的方法を採用する場合、どのように対処したらよいでしょうか。............ 25
[コラム]税関が、指摘する会社をピックアップするとき、どういうところを⾒るのでしょう? ......... 26
[Q24]価格協議のプロセスを教えてください。 .................................................................. 27
[Q25]価格協議にあたってのポイントを教えてください。 .................................................... 28
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本書に記載されている中国(又は日本)の法律法規の解釈、契約等の文書において中国(又は日本)の法律を
適用する具体的問題に関する意見及び中国(又は日本)の法律を適用する行為又は事件に関する意見につい
ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
[Q26]価格査定があった場合に追加徴収される輸入増値税仕入税額が控除できますか。 .. 28
■査定価格とロイヤルティ ................................................................................. 29
[Q27]特許やノウハウのライセンス契約を結ぶ場合、注意すべき点はどのような点でしょうか?
........................................................................................................................................ 29
[Q28]ロイヤルティについて、どのような場合に課税価格に加算されますか?....................... 29
[Q29]①「輸入貨物と関係する」か否かの判断基準はどのようなものですか。 ..................... 30
[Q30]「特許又はノウハウを実施するため専門的に設計され、又は製造されるもの」(第 13 条
第 1 項第 3 号)とは、どのような場合でしょう。................................................................... 31
[Q31]②「輸入取引の条件」として支払われているものであるか否かの判断基準はどのようなも
のですか。 ......................................................................................................................... 32
[Q32]下記の設例のロイヤルティは、課税価格に含まれますか。........................................ 32
■査定価格と罰則(密輸).............................................................................. 35
[Q33]密輸として⾏政処罰や刑事罰を受ける場合があると聞きましたが、どのような場合でしょ
う。 ................................................................................................................................... 35
【付録】
・
「税関法」(2013 年 12 月 28 ⽇全国⼈⺠代表⼤会常務委員会 主席令第 8 号により最終改
正公布、2014 年 3 月 1 ⽇施⾏)
・
「輸出⼊関税条例」(2013 年 12 月 7 ⽇国務院令第 645 号により改正発布、同⽇施⾏)
・
新「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」(2013.12.25 発布、税関総署第 213 号令) 及び旧
「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」(2006.03.28 発布、税関総署第 148 号令)比較表
・
「税関国内販売保税貨物課税価格査定弁法」(2013.12.25 発布、税関総署第 211 号令)
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本書に記載されている中国(又は日本)の法律法規の解釈、契約等の文書において中国(又は日本)の法律を
適用する具体的問題に関する意見及び中国(又は日本)の法律を適用する行為又は事件に関する意見につい
ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
■はじめに
[Q1]日中間の取引について、中国税関から狙われやすいポイントはどのようなものでしょうか。
近時、中国税関における中国への輸入手続時の HS コードの誤りや、一部経費(ライセンス契約に
基づくロイヤリティ等)が申告時に課税価格に算入されていないこと等を指摘され、調査過程で案件が
税関の密輸取締(中国語で「缉私」)を担当する部門に移管された後、日本人駐在員を含む日系企
業の職員が税関に身柄拘束を受けるケースが発生しています。この問題については、税関の取締が強化
されている傾向が⾒受けられ、先日、在中国日本国大使館からも注意喚起のアラートが発されていると
ころです【1】。
税関は国家税務局(国税)、地方税務局(地方税)とともに徴税の担い手である国家機関であ
り、輸入貨物に対する輸入関税及び輸入段階増値税の徴収と、輸出貨物に対する輸出関税の徴収
を任務としています。国家税関総署から年度毎に割り当てられる徴税目標額達成を目指し、税関による
課税対象の探索が⾏われています。
従来から、中国税関がターゲットにし、課税の論拠としてくる 3 つの典型的な場面があります。それは、
①加⼯貿易、②HS コード及び③関税評価(査定価格)です。
税
関
① 加⼯貿易論
② HS コード論
三⼤論点
③ 関税評価論
①加⼯貿易論
①加⼯貿易は輸⼊貨物が保税(すなわち後に再輸出されることを解除条件とする輸⼊関税及び輸
入段階増値税の徴税義務の暫定的停止)で輸入されるから、輸入されたものが本当に再輸出された
かを加⼯貿易⼿帳及び単耗(標準使⽤量管理)を通じて定期的に検査する必要があるところ、当該
検査時に輸⼊及び再輸出の均衡を失していることが判明すると、その限度で輸⼊関税及び輸⼊段階
増値税の徴収を命じられることとなります。
1
中国日本商会経由「日本大使館からのお知らせ」(2014 年 6 月 15 日付)参照
http://www.jpcic-sh.org/news/article/newsid/2240
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本書に記載されている中国(又は日本)の法律法規の解釈、契約等の文書において中国(又は日本)の法律を
適用する具体的問題に関する意見及び中国(又は日本)の法律を適用する行為又は事件に関する意見につい
ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
②HS コード論
②HS コードは「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity
Description Coding System)に関する国際条約(HS 条約)」に基づいて定められたコード番号
のことで、WCO(World Customs Organization。世界貿易機構)加盟国が締結するものです。
中国も日本も WCO 加盟国なので、HS コード分類に従って輸⼊関税率を定めることになります。ところが、
貨物によっては、複数の HS コードのうちどれに分類すればよいかが不明確なものがあります。輸入者が、
輸⼊関税率の低いものを選択したところ、税関から高い HS コード分類を主張され、高い HS コード分類
を前提とする差額徴税の憂き目に遭うことがしばしばあります。
③関税評価論
③関税評価(査定価格)とは、輸入貨物に対する価値評価を意味し、簡単に言えば、海外から中
国に製品を輸入する際に基準となる公正価格のことです。この関税評価(査定価格)は、輸入関税
及び輸入段階増値税の基礎となりますので、それが⾼ければ⾼いほど徴収できる税⾦額は⾼くなります。
問題視される典型的な類型は、中国への商品が親⼦関係等の特殊関係を理由に日本の市場価
格と比較して低廉輸入されていると指摘を受けるパターンです。本来、商品の売買価格は、当事者間
で自由に決めることができますが、関税評価(査定価格)を下回る場合、税関による徴税との関係で
は不合理に低廉な価格と評価されることがあります。
また、中国現地子会社が日本本社に支払うロイヤルティ等に対して、貨物の代⾦と合わせて、輸入
関税及び輸入段階増値税を課税されることもあります。
この三⼤論点のうち、③関税評価(査定価格)の問題に関して、2006 年 3 月 28 日に税関総署
令第 148 号により発布した「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」が 2013 年 12 月 25 日に改正
(2014 年 2 月 1 ⽇施⾏開始)されました。注意すべきは、これまでの中国における課税の傾向に鑑み
れば、この種の重要法令が施⾏された初年度から 2、3 年の間は、おそらく各地の税関で勉強会が開
催される影響で、これに基づき税関が徴税を試みる事例が急増するであろうことです。冒頭の事例のう
ち関税評価(価格査定)に関する事例の増加も、このような流れの⼀貫であろうと推測されます。
したがって、今回は、三⼤論点の中で最も注目される関税評価(査定価格)について、特に重要な
特殊関係論やロイヤルティに対する課税を中心に解説します。
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本書に記載されている中国(又は日本)の法律法規の解釈、契約等の文書において中国(又は日本)の法律を
適用する具体的問題に関する意見及び中国(又は日本)の法律を適用する行為又は事件に関する意見につい
ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
■査定価格とは
[Q2]実際に査定価格が問題になる事例として、どのようなものがあるでしょう。
とある日系企業は、中国現地子会社に対して、a)部品 A を売却する売買契約を締結すると共に、b)
ある製品の組⽴て(設計・部品の選定等を含む)に関する技術ライセンスをしています。中国現地子
会社は、部品 A を⽤い、親会社からライセンスされた技術を利⽤して、製品の組⽴てを⾏っています。
子会社
親会社
(中国)
(日本)
親子間取引は
問題視される?
⇒Q14〜20
部品Aの売却
売主
買主
売買代⾦
かつ
かつ
課税価格はどのよ
ロイヤルティ
うに決定される?
ライセンサー
ライセンシー
⇒Q21〜26、
Q7〜Q13
技術ライセンス
(製品の組⽴て(設計・
部品の選定等を含む))
ロイヤリティにも課税される
場合がある?
⇒Q26〜31
このケースでは、税関から
①課税価格は、部品 A に売買契約上の売買代⾦以上の⾦額であるべき
②更にロイヤルティも課税価格に含まれるべき
・・・との指摘を受けるリスクが考えられます。
⇒このような取引にかかるリスクを正確に認識し、税関トラブルを回避するために、関税評価(査定
価格)の理解が必要となります。
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適用する具体的問題に関する意見及び中国(又は日本)の法律を適用する行為又は事件に関する意見につい
ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
[Q3]「査定価格」とは何ですか。
輸入貨物の価格が正常な価格に比べて低廉である場合、本来徴収されるべき輸入関税の徴収がで
きないことを理由として税関が輸⼊貨物の課税価格を⾃ら査定し、査定した価格をもとに輸⼊関税を徴
収することがあります。このような、税関により査定された輸入貨物の課税価格のことを「査定価格」とい
います(逆に、税関による課税決定を「価格査定(関税評価)」と呼ぶこともあります。)。簡単に言え
ば、海外から中国に製品を輸入する際に基準となる公正価格のことです。
輸入関税の課税要件は下記のとおりですが、このうち課税標準について問題になるのが価格査定の
問題ということになります。
納税義務者:貨物を輸入する者【2】
課税物件 :輸入貨物【3】
課税標準 :輸入貨物の「価額」。→「査定価格」の問題【4】
税率
:⽇本にいう関税定率表(tariff/进出口税则)による。→HS コード分類の問題【5】
なお、価格査定(関税評価)が関係するのは、関税だけではありません。関税のほかに、輸入段階
増値税が課税されることになります。
[Q4]なぜ査定価格が問題になるのでしょうか?
[Q3]のとおり、査定価格の問題は輸⼊貨物の価格の問題です。本来であれば、売買の⾦額がいく
らであったとしても、私的自治の原則から当事者は自由に価格が決められるはずです。
しかしながら、これが国際取引となると話が変わってきます。なぜなら、各国により国内産業保護の配慮
が働くからです。各国が輸入貨物に関税を課す場面において、その課税価格は取引の価額に基づくのが
基本です。しかし、当事者間で自由に価格を決めることができる結果、著しく安い⾦額で輸⼊がなされて
いる場合には、関税をかけたとしても、国内産業保護という目的を達成できないことになります。
そのため、当事者が決めた「価格」(「Price」と表現されます。)ではなく、客観的な「価額」
(「Value」と表現されます。)に基づき関税をかける必要が出てくるのであり、当事者間の「Price」が
公正な「Value」とかけ離れている可能性がある場合には、税関が関税評価し、適正な「査定価格」を
2
「輸出⼊関税条例」第 5 条
3
「輸出⼊関税条例」第 2 条
4
「輸出⼊関税条例」第 18 条〜第 25 条、「税関輸出入貨物関税価格査定弁法」
5
「輸出⼊関税条例」第 3 条
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適用する具体的問題に関する意見及び中国(又は日本)の法律を適用する行為又は事件に関する意見につい
ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
課税標準として関税をかけることになるのです。これが「査定価格」が問題になる理由です。
Price(価格)
Value(価額)
当事者が交渉等で取り決
客観的にみて公正な価格
めた取引価格
(参考)
なお、国際取引において取引価格が安すぎる⼜は⾼すぎる場合、⼀⽅が不当に利益をあげることがあ
ります。このような場合には、各国の法人税や個人所得税等の国家徴税権を侵害するものであるため、
「査定価格」同様に「Value」による評価をしなければなりません。このような問題を「移転価格」問題と言
います。
[Q5]査定価格に関する主な法令等を教えて下さい。
条約:
WTO関税評価協定
法律:
税関法
⾏政法規:
輸出⼊関税条例
部門規則:
税関輸出入貨物徴税管理弁法
税関輸出入貨物課税価格査定弁法
税関国内販売保税貨物課税価格査定弁法
主な法令は上記の図をご覧ください。
【WTO の関税評価に対する役割】
関税評価についての国際的な規定として、もともとは GATT(関税と貿易に関する⼀般協定)第 7
条において、下記原則が定められたことから関税評価の統⼀制度が始まりました。
第 7 条の概要:
(1) 関税上の価格は、実際の価格に基づくことを要する。
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適用する具体的問題に関する意見及び中国(又は日本)の法律を適用する行為又は事件に関する意見につい
ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
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(2) 通貨換算の基準
(3) 評価規則の公表
これに基づき、GATT 第 7 条の実施に関する協定(関税評価協定) において、関税評価に関する
規則等が定められ、その後 WTO(World Trade Organization)の発足で関税評価協定が、WTO 協
定の付属書に組み込まれたことにより、WTO 加盟国は、統⼀的関税評価制度を採⽤することとなってい
ます(「1994 年の関税及び貿易に関する⼀般協定第 7 条の実施に関する協定」(WTO 関税評価
協定)参照)。
中国は、2001 年 12 月 11 日に WTO に加盟しました。WTO の現在の加盟国数は 160 カ国・地
域です(2014 年 6 月 26 日現在)。
【WCO の関税評価に対する役割】
他方、WCO(World Customs Organization)は、各国の関税制度の調和・簡易化と関税⾏政の
国際協⼒を推進する国際機関で、本部はベルギーのブリュッセルに置かれており、WCO の現在の加盟
国数は 179 カ国・地域です(2014 年 8 月 1 日現在)
①分類や税関⼿続に関する諸条約の作成・⾒直し・統⼀的解釈
②国際貿易の安全確保及び貿易円滑化に関するガイドライン等の作成・推進
③WTO が主管する関税評価及び原産地規則に係る協定の統一的解釈及び適用のための技術的
検討
④国際的な薬物及び知的財産権侵害物品等の監視・取締りの協⼒、関税技術協⼒の推進
(http://www.kanzei.or.jp/refer/wco.htm より。)
これに基づき、HS 条約の維持や管理、WTO 関税評価協定及び WTO 原産地規則協定の技術的
問題の検討等を⾏っており、WTO 関税評価協定の解釈・運用の国際指針を出しています。
中国は、1983 年 7 月 18 日(なお、日本は 1964 年 6 月 15 日)から WCO に加盟しています。
なお、日本では、「関税定率法」外法令に定めるほか、WCO関税評価技術委員会の採択⽂書を
参考として、「関税評価に関する取扱事例について」(平成 19 年6⽉ 26 日財関第 876 号 )等
が発出されています。
【参考:中国国内法令年表】
1987 年7⽉
《税関法》施⾏
1992 年 4 月
《輸出入関税条例》施⾏
1992 年 9 月
《税関輸出⼊貨物関税課税価格査定弁法》施⾏
2000 年 7 月
《税関法》改正
(2001 年 12 月 11 日中国 WTO 加盟)
2002 年 1 月
改正《税関輸出⼊貨物関税課税価格査定弁法》施⾏
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ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
2003 年 7 月
《税関輸⼊貨物のライセンス料に関する評価弁法》施⾏
2004 年 1 月
《輸出入関税条例》改正施⾏
2006 年 5 月
改正《税関輸出入貨物関税課税価格査定弁法》施⾏
《税関輸⼊貨物のライセンス料に関する評価弁法》廃⽌【6】
2010 年 12 月 《輸出入関税条例》改正施⾏
2013 年 6 月
《税関法》改正
2013 年 12 月 《輸出⼊関税条例》改正施⾏ ・・・現⾏法
2013 年2⽉
改正《税関輸出入貨物課税価格査定弁法 》、《税関国内販売保税貨物課
税価格査定弁法》施⾏ ・・・現⾏法
旧《税関輸出入貨物課税価格査定弁法》廃止
2014 年 4 月
《税関法》改正施⾏ ・・・現⾏法
[Q6]2013 年 12 月 25 日付で税関の価格査定に関する法令が改正発布され、2014 年 2 月
1 ⽇から施⾏されていると聞きました。具体的に何が変更されたのでしょうか。
2006 年 3 月 28 ⽇に税関総署令第 148 号により発布された「税関輸出入貨物課税価格査定弁
法」が 2013 年 12 月 25 日に改正(2014 年 2 月 1 ⽇施⾏)されました。
形式的な特徴として、改正前の「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」が規定していた内容のうち、
保税貨物の国内販売については別途規定されることとなり、同名の「税関輸出入貨物課税価格査定
弁法」(税関総署第 213 号令)と、「国内販売保税貨物課税価格査定弁法」(税関総署第 211 号
令)の 2 つに分離されました。
内容的には、保税貨物の国内販売については税関総署第 211 号令で詳細に規定されました。他方、
税関総署令第 213 号の内容は、保税貨物の国内販売について分離されたことの他、従来の税関総署
令 148 号と比較すると、主に 7 つの変更ポイントがあります。
⇒税関総署第 213 号令と第 148 号令の相違点は、付録“新「税関輸出入貨物課税価格査定弁
法」(2013.12.25 発布、税関総署第 213 号令) 及び旧「税関輸出入貨物課税価格査定
弁法」(2006.03.28 発布、税関総署第 148 号令)比較表”もご参照ください。
改正時に発表された、改正趣旨及び主な改正ポイントは以下のとおりです。
6
データ処理設備⽤のソフトウェアを搭載した可搬性記録媒体アの輸入に関する関税評価について定めた《ソフトウェア・
データ処理設備の課税価格に対する価格評価に関する税関総署公告》(2003 年 12 月 11 ⽇施⾏)も同時期廃⽌
され、その内容は、税関輸出入貨物課税価格査定弁法に統合された。
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ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
改
①価格評価理論及び実践の成果の吸収
正
WTO 加盟依頼、国際貿易における各種の新たな状況⼜は新たな問題が不断に出現し、
の
問題を解決する過程において、税関は、豊富な理論及び実践の成果を蓄積しているため、
趣
価額評価理論の研究に係る豊富な成果を吸収することで、各税関による価額評価・法律
旨
執⾏の実践展開のため積極的な指導の役割を発揮することをねらっている。
②中国に対する WTO の貿易政策性審議要求への対応
中国の世界貿易機関加盟作業部会報告書の税関価額評価部分に基づき、中国は、世
界貿易機関に加盟した⽇から、全⾯的に「WTO 価額評価協定」を実施している。そこで、
「WTO 価額評価協定」との相違点について、世界貿易機関の加盟につき承諾した客観的
要求を履⾏するものでもある。
③条項の一部に対する完全化の実施
貿易の発展に伴い、価額査定の規定におけるいくつかの規定の⽴法背景には変化が発⽣
しており、既存の規定は既に情勢発展の需要に適合しておらず、今回の改正では、これらの
条項について完全化をした。
改
①国内販売保税貨物の価額評価問題
正
我が国の経済の発展に伴い、各種特殊区域及び場所は発展の途上にあって勢いが衰
ポ
えておらず、その機能及び位置付けには新たな発展があり、既存の規定は既に需要を満た
イ
すことができていない。したがって、特殊区域及び場所の国内販売価額査定が改正業務の
ン
主たる内容である。
ト
したがって、今回の改正において、従来の「価格査定弁法」における国内販売保税貨物の
価格評価にかかわる条項(第 27 条ないし第 30 条及び第 53 条)を削除。また、これに合
わせて、税関総署第 211 号令を制定した。
②売買双方に特殊な関係が存在する場合に販売状況について審査をする旨の条項の追
加
「WTO 価額評価協定」第 1 条第 2 項(a)には、「販売環境の測定試験」に関する条
項があり、貨物の販売と関係のある状況についての審査を通じて特殊な関係が輸入貨物の
成約価格に対し影響を生じているか否かを確定することができる旨が定められている。したがっ
て、当該規定を完全に導入するため、今回の改正において、新たに第 18 条「税関は、貨物
の販売と関係のある状況についての審査の実施を経て一般的な商習慣に適合すると認め
る場合には、特殊な関係が輸入貨物の成約価格に対し影響を生じていないものと確定す
ることができる。」を追加している。
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ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
③運賃計算の条項の改正
従来の「価格査定弁法」第 38 条の規定では、運賃計算において、「実際の運送原価」と
「同一の期間に運送業種が公表した運賃率(額)」を参照していたが、実際の参考標準を
欠いている。
したがって、今回の改正において、「輸入貨物の運送及びその関連費用を確定するすべが
ない場合には、税関は、当該貨物の輸入と同一の期間の正常な運送原価に従い審査して
確定しなければならない。」に改め、操作可能性を追加している。
④国外の国境出入国地点の価格条件により成約される鉄道又は道路運送輸入貨物の
運送保険料計算の条項の削除
従来の「価格査定弁法」第 41 条の規定に従い、国外の国境出入国地点の価格条件に
より成約される鉄道又は道路運送輸入貨物については、国外の国境出入国地点の価格の
1%の割合に従い運送並びにその関連費用及び保険料を計算するとしていた。当該規定
は、改革開放初期において、出入国地点のハードウェア条件が制限されたことにより作成され
たものであるが、当該⽴法基礎は既に存在していないため、⽴法の統⼀性のために削除。
⑤輸出価額査定時に売主が負担するコミッションを控除する旨の条項の削除
従来の「価格査定弁法」第 44 条第 3 項の規定に従い、代⾦において単独で列記され
る、売主が負担するコミッションは、これを控除し、主として輸入時の買主のコミッションの控除と
対応している。ただし、実践においては、貨物代⾦においてで列記される、売主が負担するコミ
ッションに係る状況は極めて珍しく、かつ、特殊な関係のある会社によって容易に当該条項の
利⽤による価格欺罔が実施されていた状況があるため、これを削除した。
⑥運賃及びその関連費用の申告義務の明確化
価格査定の実践並びに近年の事例の査察及び照合調査の結果は、運送及びその関連
費用に対する納税義務者の申告義務が明確でなく、書類・証書の提供及び申告の意識が
低いことが近年の運送及びその関連費用の漏税リスクを大きくしていることを表している。した
がって、第 42 条中に、納税義務者の運送及びその関連費用についての申告に係る条項を
追加し、運送及びその関連費用に係る書類・証書の提出及び申告義務を明確にしている。
⑦一部の用語の解釈の追加
今回の改正では、第 51 条において、従来の「価格査定弁法」中の若⼲の定義について
明確な解釈をしている。例えば、「輸出販売」、「ほぼ同時に」、「媒体」、「輸入地点」、「輸
出地点」、「荷卸しされるまで」及び「積み込むまで」等で、価額評価における曖昧な概念を明
確化している。
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本書に記載されている中国(又は日本)の法律法規の解釈、契約等の文書において中国(又は日本)の法律を
適用する具体的問題に関する意見及び中国(又は日本)の法律を適用する行為又は事件に関する意見につい
ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
[Q7]原則的には課税価格はどのように決定するのですか。
輸入貨物の課税価格は、税関が貨物の「成約価格」を基礎として審査確定します【7】。日本と同様
に CIF 価格で決定されます(なお、CIF とするか FOB とするかは、各国法により異なります【8】)。
すなわち、輸入貨物の「成約価格」とは、売主が中国国内に対して当該貨物を販売するときの、「実
際支払価格」に、その含まれていない限度において輸⼊港までの運賃、保険料、容器費⽤等「調整項
目」の額を加えた価格をいいます【9】。
「実際支払価格」とは、輸入貨物を中国国内に対し販売する際に、当該輸入貨物について買主から
売主に対して実際に支払われた、⼜は⽀払われるべき価格をいい、直接⽀払う代⾦及び間接に支払う
代⾦を含みます【10】。「間接に⽀払う」とは、買主が売主の要求に基づき、代⾦の⼀部を第三者に支
払、⼜は売買当事者双⽅間のその他の資⾦取引に充当する⽀払⽅式をいいます【11】
原則: 課税価格 = 成約価格(中国語:“成交价格”)
(当事者間の実際支払価格 + 調整項目)
[Q8]「実際支払価格」は具体的にどのように判断されますか。
【設例】
中国A
社
日本B
貨物輸出@100円
(メーカ
製造委託/購入
@100円
売買@120円
日本C
社
貨物代⾦@120円
7
「税関法」第 55 条、「輸出⼊関税条例」第 18 条第 1 項、「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 5 条
8
「WTO 関税評価協定」第 8 条第 2 項
9
「輸出⼊関税条例」第 19 条、「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 7 条及び第 11 条
10
「輸出⼊関税条例」第 18 条、「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 7 条、同弁法第 51 条第6号
11
「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 51 条第 7 号
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ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
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実際に貨物を中国へ輸出するのは、日本のB社。
日本C社が日本B社に製造委託し、代⾦が中国A社から代⾦@120円を受け取る場合。
(すなわち、商社である日本C社のマージンが@20円)
【回答】
この場合、売主は実際に中国に販売している主体であるB社となります。それに対して、実際支払価
格としては、中国A社から日本C社に対して(B社から⾒て)間接に120円が支払われていますので、
120円が実際支払価格となります。
[Q9]「調整項目」とはどのようなものですか。
「実際支払価格」に含まれていない限度において、課税価格に加算される項目が調整項目です。
具体的には下記の項目です。
(1) CIF 価格への調整
輸入港までの輸送(及びその関連費用)、保険料等
(2) それ以外の調整項目
(加算) コミッション、容器、包装、⾦型等、知的財産権等の使⽤料(ロイヤルティ)等
(減算) 輸入後の国内輸送費、輸入関税及び内国税等
【原則的な課税価格の決定方法イメージ】
調整項目
実際支払価格
課税価格
(又はその他の方法による価格)
運送費⽤・保険料
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[Q10]加算項目の詳細を教えて下さい。
成約価格への加算項目については下記のように定められています【12】。個別の重要ポイントは後述し
ます。
■CIF 価格への加算
物が中国国内の輸入地点に到達して荷卸する前までの運送料及びその関連する費⽤並びに
保険料(これらは「取引価格」に含むものでなければならないとされています【13】)
■それ以外の加算項目
(1)買主が負担する次の各費用
① 貨物購入コミッション以外のコミッション及びブローカリッジ料
② 当該貨物と一体とみなされる容器費用
③ 包装材料費⽤及び包装役務費⽤
(2)輸入貨物の生産及び中国国内に対する販売に関係する場合において、買主が無償で提
供し、⼜は原価を下回る⽅式で販売し、かつ、適当な⽐率に従い配賦することのできる次の各貨
物又はサービスの価値
① 輸⼊貨物に含まれる材料、部品、パーツ及び類似する貨物
② 輸入貨物の生産過程において使用される工具、⾦型、及び類似する貨物
③ 輸⼊貨物の⽣産過程において消耗される材料
④ 国外において⾏われる、輸⼊貨物を⽣産するために必要な⼯学的設計、技術研究・
開発、プロセス及び製図等の関連サービス
(3)買主が売主又は関係者に対し直接又は間接に支払うべきライセンスに係る権利の使⽤
料。但し、次の各事由の一に該当する場合を除く。
① ライセンスに係る権利の使⽤料と当該貨物とに関係がないとき。
② ライセンスに係る権利の使⽤料の⽀払が、当該貨物の中国国内に対する販売に係
る条件を構成しないとき。
(4)買主の当該貨物の輸入後の販売、処分又は使用に対する所得から売主が直接又は間
接に取得する収益。
12
「輸出⼊関税条例」第 19 条、「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 5 条、第 11 条
13
「輸出⼊関税条例」第 18 条第 1 項、「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 5 条、35 条〜37 条。協定では、
輸入港到着価格(CIF 価格)又は輸入港までの運賃、保険を含まない価格(FOB 価格)のいずれを関税評価のベ
ースとするかは、締約国の国内法令の規定にゆだねられています。中国は、輸⼊港到着価格に基づくとしており、実際⽀
払価格に運賃、保険が含まれていない場合は、この費用を加算しなければなりません。
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[Q11]減算項目の詳細を教えて下さい。
課税価格不算⼊項目輸⼊貨物の代⾦中に単独で列挙して明らかにされる次に掲げる租税及び費用
は、当該貨物の関税課税価格に算入されません【14】。
(1) 工場建屋及び機械又は設備等の貨物の輸入後に発生する建設、据付け、組付け、メン
テナンス⼜は技術援助費⽤。ただし、修理保証費⽤を除く。
(2) 輸入貨物が中国国内の輸入地点に到着して荷卸しされた後に発生する運送並びにその
関連費⽤及び保険料
(3) 輸⼊関税、輸⼊環節税関代理徴収税その他の国内税
(4) 国内において輸入貨物を複製するため支払う費用
(5) 国内外の技術研修及び国外視察費用
(6) ⼀定の要件を満たす利息費⽤【15】
[Q12]加算項目である保険料について、税関から指摘された場合、どのようにすればいいですか?
税関が有する情報から、「申告された保険料が低廉にすぎる」として、申告価格の調整(増額=関
税負担増)を求めてくることがあります。このような指摘を受けた場合には、どのように反論することが考え
られるでしょうか?そもそも関税評価(査定価格)とは、課税するのに公正な価格を決定するものであ
るところ、加算項目である保険料について、それがいかに公正なものであるかを合理的に説明できるかが
ポイントになると考えます。
例えば、大企業の場合には、ブローカーを介在させ、世界各国との貿易についても⼀括して契約する
等の⽅法により、通常の中⼩企業とくらべて保険料が低額になることがあり得ます。かかる企業努⼒の結
果、低額な保険料を獲得しているにもかかわらず、多数混在する様々な企業のデータに基づいて、実際
以上の保険料を加算されることは不公正・不合理であると主張することが、1 つの突破策になると考えま
す。保険料が低廉な理由を説明した上で、比較に適する⼤企業の保険料に限定して、再度の⽐較検
証等を求める等、税関に合理的な説明する努⼒をすべきでしょう。
14
「輸出⼊関税条例」第 20 条、「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 15 条
15
次の要件に全て適合する利息費⽤は、課税価格に算⼊しないとされています(「税関輸出入貨物課税価格査定弁
法」第 15 条第 2 項)。
①利息費⽤は買い⼿が輸⼊貨物を購⼊するために融資を受けたために発⽣したものである場合、②融資協議に係る書
⾯が存在する場合、③利息費⽤が単独で列記されている場合、④納税義務者は、関係利率が融資当時の当地のこの
種の取引において通常有すべき利率⽔準を上回るものでないことを証明することができ、且つ、融資⼿配されなかった同種
又は類似の輸入貨物に係る価格と、輸入貨物について実際に支払又は支払うべき価額が非常に近接している場合。
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[Q13]関連サービス費用等に関する留意点を教えてください。
加算項目である設備の設計、製図等に関する費用は、「輸入貨物を生産するために必要な」もので
あるか否かがポイントになります。「輸入貨物を生産するために必要な」ものであれば、関連サービス費用
として加算項目になります(「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 11 条第 1 項第 2 号④)。
他方、減算項目である設備の据付費⽤は、代⾦の項目として「単独で列挙」されているか否かが減
算項目として認められるかどうかのポイントになります(同弁法第 15 条第 1 項第 1 号)。
設備代⾦ 100円
中国A社
日本B社
設備輸出 100円
①設計委託料 10円【加算】
A社工場で
②据付費用
15円【減算】
設備を据付
B社工場で
設備の製図等
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■査定価格における特殊関係
[Q14]親子関係がある場合、税関から注目されるリスクが高いのでしょうか?
独⽴する当事者間の場合、価格はそれぞれが⾃らの利益を考えて交渉して決まるため、公正な価額
から乖離することは多くありません。それに対して、親子関係の場合、親会社は子会社に対して便宜を図
り、低価格での取引をする可能性が十分にあります。
したがって、税関からみると、親子関係など、特殊な関係にある場合には、不公正な取引価格になって
いる可能性を疑うべき状況といえます。
[Q15]親子関係がある場合、税関の調査に反駁できるようにするポイントを教えて下さい。
親子関係等の特殊関係にある場合、前述のように税関からみて不公正な価格である可能性が⾼い
関係にあるといえます。
このとき、税関から調査を受けた際に、⼦会社だけ売るのではなく、第三者にも同様の合理的な価
格で販売していることが非常に有⼒な反論となるものと考えられます。
第三者にも同じ価格で販売する事実を⽰すことで、当該価格が相互に⾃らの利益を追及する独⽴す
る当事者間によって決せられた公正な価格であるとの主張を裏付けることができるからです。
たとえば、最近、某日系大手⾃動⾞メーカーが中国で作っている EV の電池を他のメーカーにも販売し
ているというニュースを耳にすることがあります。子会社にしか売らないというのは、独禁法の面でも問題で
すし、査定価格の面からも問題になり得ることになるため、第三者にも売ることも重要な選択肢になるで
しょう。
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[Q16]「特殊関係」がある場合は、どのように価格査定されるのでしょうか。
課税価格は原則として成約価格(実際支払価格+調整項目)で決まりますが、売買当事者双方
の間に「特殊な関係(特殊関係)」が存在する場合、その特殊関係が成約価格に影響し、成約価格
が公正でないものになっている可能性が高いため、原則と例外が逆転します。
原則
例外
【成約価格】
通常の場合
(実際支払価格
その他の計算方法
+調整項目)
その成約価格が同時に、又はほぼ同時
特殊関係がある場合
その他の計算方法
に発生した一定の輸入貨物の価格と近
似する旨を証明することができる場合
→【成約価格】
すなわち、「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 17 条では、特殊関係がある場合には、成約
価格に影響があることを原則的な考え方として上で、売買当事者双方の間に特殊な関係が存在するけ
れども、その成約価格が同時に、又はほぼ同時に発生した一定の輸入貨物の価格(→[Q18]参
照)と近似する旨を証明することができる場合には、特殊な関係が輸入貨物の成約価格に対し影響
を生じていないものとみなさなければならないとしています。つまり、特殊関係が認められる場合には、成約
価格ではない別途の計算方法により計算されることが原則となり、「成約価格が同時に、又はほぼ同
時に発生した次に掲げるいずれかの価格と近似する」ことを⽴証できる場合のみ、例外的に成約価格
を基礎として課税価格を計算することになります。
* 例外的な査定価格の計算⽅法については、[Q22]以下参照。
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[Q17]「特殊関係」とはどのような関係でしょう。
「特殊関係」の、代表的なものとしては、親子会社間である場合や兄弟会社間である場合があげられ
ます【16】。親子会社間や兄弟会社間のように「特殊関係」がある場合には、独⽴当事者間と異なり、⾃
⾝の利益追及以外の考慮が働き得る構造があり、したがって成約価格が公正でないものになっている可
能性が高いため、原則(成約価格による決定)と例外(その他の計算⽅法による決定)が逆転しま
す。
また、売買当事者双⽅が経営において相互に連携を有し、⼀⽅が他の⼀⽅の総販売代理店、独占
的販売者⼜は権利専有者である場合においても、前掲の場合に該当する場合、特殊関係があるとみ
なさなければならないとされています。
但し、売主と買主とが特殊な関係にあるとの事実のみによって、当該取引価格を許容できないものと
みなしてはならないこととされており、その特殊関係が、輸入貨物の価格に影響を及ぼしていない場合に
は、当該取引価格は許容されます。
[Q18]特殊関係があっても、成約価格に影響しない場合とはどのような場合ですか。
取引価格が同時に又はほぼ同時に生じた下記いずれか一の価格に近いことを「証明することができ
る」場合、取引価格が特殊関係によって影響されていないと⾒做されなければならないとされています。
なぜなら、このような場合には、特殊関係があったとしても、成約価格に影響はなく、公正な価格であ
ると考えられるからです。
そして下記価格を使⽤して⽐較をする場合には、商業的⽔準及び輸⼊数量の違い並びに売買当事
者双方の特殊な関係の有無によりもたらされる費⽤の差異を考慮しなければならないとされています
(「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 17 条)。
16
「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 16 条
①売買当事者双方が、同一の家族の構成員であるとき
②売買当事者双方が、相互に商業上の高級職員又は董事であるとき
③一方が直接又は間接に他の一方の支配を受けるとき
④売買当事者双方がいずれも直接又は間接に第三者の支配を受けるとき
⑤売買当事者双方が共同で直接又は間接に第三者を支配するとき
⑥一方が直接又は間接に相手方の 5%以上の公開発⾏された議決権付株式⼜は持分権を所有し、⽀配し、⼜は保
有するとき
⑦一方が他の一方の被雇用者、高級職員又は董事であるとき
⑧売買当事者双方が、同一のパートナーシップの構成員であるとき
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①
国内の特殊な関係のない買主に対し売却した同一の、又は類似する輸入貨物の成約価格
②
国内再販売価格から逆算すること(逆控除価格評価方法)により確定される同一の、又は
類似する輸入貨物の課税価格
売主のコストから計算することにより(計算価格評価方法)確定される輸入貨物の課税価
③
格
また、2014 年 2 ⽉1⽇に施⾏された改正法において、税関は、貨物の販売と関係のある状況につい
ての審査の実施を経て一般的な商慣習に適合すると認める場合には、特殊な関係が輸入貨物の成約
価格に対し影響を生じていないものと確定することができることとされました(「税関輸出入貨物課税価
格査定弁法」第 18 条)。
[Q19]特殊関係の設例 1
【事例】
日本企業
商品を
A商品:130元
A商品:120元
中国へ
輸入
B商品:100元
中国企業Y
特殊関係なし
中国企業X
特殊関係なし
中国子会社
特殊関係あり
【検討事項】
A 商品の中国子会社への販売価格は、中国企業 Y への販売価格よりも安い。しかし、中国企業 X へ
の販売価格とは同じである。このとき、
① 中国企業 X、中国企業 Y、いずれに対する価格が基準となるのか?
→国内の特殊な関係のない買主に対し売却した成約価格を基準とするため、中国企業 X を基準
とします。
② 取引数量が異なる場合はどうか?
例)中国子会社: 100 セット
中国企業 X: 100 セット
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中国企業 Y:
20 セット
→取引数量の違いによりもたらされる費⽤の差異を考慮することになります。たとえば、年間 1 万セッ
トほどの取引量があるのであれば、100 セットと 20 セットの違いは大きな費用の違いはないでしょ
う。
③ 取引条件が異なる場合はどうか?その他、取引年数や、個別交渉の経緯は考慮されるか?
→商業的水準の違いによりもたらされる費⽤の差異を考慮し、判断することになります。たとえば、
⽀払期間が短くなっている場合には、若⼲代⾦が低いことも合理的である場合もあるでしょう。
④ B 商品と A 商品が類似している場合、B 商品の価格を参考にできるか?
→ 類似する輸入貨物の成約価格も参考にされます。
※
「類似貨物」の定義(「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 51 条第 11 号)
=(1)輸入貨物と同一国において生産され、
(2)相似する特徴、相似する構成材料、同一の機能を有し、
(3)商業上、互換することができる貨物
[Q20]特殊関係の設例 2
【事例】
取引関係
日本企業Z
日本企業
子会社
C商品:150元
A商品:130元
A商品:120元
B商品:100元
B商品:100元
中国企業Y
中国子会社
中国企業X
特殊関係なし
特殊関係?
特殊関係あり
【検討事項】
① 日本企業 Z との取引関係に基づいて、中国企業 X への販売価格を優遇することは認められるか?
例)中国⼦会社との取引数量: 100 セット
日本企業 Z との間の、日本での取引数量: 80 セット
中国企業 X との取引数量: 20 セット
中国企業 Y との取引数量: 20 セット
→一概には言えないが、商業的水準や商慣習に鑑みて、判断することになります。
② 日本企業が、日本企業 Z の株式の 5%を有している場合はどうか?
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→一方の当事者が直接に、又は間接に相手方の 5%以上(5%を含む。)の株式を有する場合
には、特殊関係が認められるため(「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 16 条第 1 項第
6 号)、間接に中国企業 X とは特殊関係が存在することになります。
→よって、中国企業 X との成約価格を比較対象にすることができません。
③ A 商品には価格差があるが、B 商品には価格差がない。A 商品の中国子会社向け価格(120
元)は、特殊関係に基づく価格と⾒なされるか?
→B 商品が「類似貨物」に該当する場合には、B 商品も比較対象となりえます。A 商品及び B 商品
について、その商業的⽔準及び輸⼊数量の違い並びに売買当事者双⽅の特殊な関係の有無によ
りもたらされる費⽤の差異や商慣習を考慮し、判断されることになります。
⑥ A 商品及び B 商品は中国で広告を⾏っていないが、C 商品は中国で広告を⾏っている場合はどう
か?
→この場合、C 商品については、A 商品 B 商品に⾏っていない広告費が加算されているため、この広
告費の費用も調整した上で、価格を比較することになります(「税関輸出入貨物課税価格査定弁
法」20 条)。
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■成約価格によらない価格査定手法
[Q21]成約価格によらない課税価格の決定方法が選択されるのは、どのような場合ですか?
原則として成約価格で課税価格は判断されますが、何らかの取引条件や当事者の関係により成約
価格がフェアバリューであると認められない場合には、他の方法によって価格査定がなされます。
そして以下の各事由の一に該当する場合、原則的方法により課税価格を決定してはならないとされて
います。【17】。前述したとおり、特殊関係があり、取引価格が影響を受ける場合は、この代表例です。
(1)買主による輸入貨物の処分又は使用について、次の制限以外の制限がある場合
① 法律⼜は⾏政法規に基づく制限
② 貨物の販売地域に関する制限
③ 貨物の価格に対し実質的影響がない制限
(2)輸入貨物の課税価格の決定を困難とする条件が輸入取引に付されている場合【18】
例)例えば、輸⼊貨物の買主が特定の数量の他の貨物を併せて購⼊することを条件と
して売買価格が決定された場合、売買価格が輸入貨物の買主が当該輸入貨物の
売主に販売する他の貨物の価格と関係する場合等。
(3)買主による輸入貨物の販売処分又は使用に起因して得られる収益が売主に帰属する
場合。
但し、その額を明らかにすることができる場合は、原則的な課税価格の決定方法を適用
し、当該価格を調整項目として調整することにより決定することができます。
(4)売主と買主との間に特殊関係が存在することにより取引価格が影響を受ける場合。
これらの場合には、「実際支払価格」ではなく、他の方法により輸入貨物の価格が評価されます。
[Q22]取引価格による課税評価方法以外の場合、どのような評価方法がとられますか?
取引価格による原則的な課税評価の決定方法により課税価格を決定することができない輸入貨物につ
いては、以下の方法により、以下の優先順に評価するとされています(税関輸出入貨物課税価格査定
弁法第 8 条【19】)。
17
「輸出⼊関税条例」第 18 条第 1 項、「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 8 条
18
例えば、輸⼊貨物の買主が特定の数量の他の貨物を併せて購⼊することを条件として売買価格が決定された場合、
売買価格が輸入貨物の買主が当該輸入貨物の売主に販売する他の貨物の価格と関係する場合等。
19
「関税条例」第 21 条、「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 18 条乃至第 26 条
24
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本書に記載されている中国(又は日本)の法律法規の解釈、契約等の文書において中国(又は日本)の法律を
適用する具体的問題に関する意見及び中国(又は日本)の法律を適用する行為又は事件に関する意見につい
ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
① 同一貨物成約価格評価方法:第 19 条
税関が貨物輸入と同時に、又はほぼ同時に中国国内に対して販売される同種貨物の取引価
格を基礎とし、輸入貨物の関税課税価格を審査確定する価格評価方法
② 類似貨物成約価格評価方法:第 20 条
税関が貨物輸入と同時に、又はほぼ同時に中国国内に対して販売される類似する貨物の取引
価格を基礎とし、輸入貨物の関税課税価格を審査確定する価格評価方法
③ 逆控除価格評価方法(再販価格から逆算):第 23 条
税関が輸入貨物及び同種の、又は類似する輸入貨物が国内において販売される価格(一定
要件を満たす必要がある)を基準として、国内において発生する関係費用を控除した後に、輸
入貨物の関税課税価格を審査確定する価格評価方法。
申請により、適用順序を逆
④ 計算価格評価方法(生産費等を積算):第 25 条
にすることが可能
税関が、原価、加⼯費⽤、通常の利益、⼀般費⽤等の総和を基礎として、輸入貨物の関税課
税価格を審査確定する価格評価方法。
⑤ 合理的⽅法
①〜④の⽅法に基づき関税課税価格を確定できない場合、税関が客観的に数量化されたデー
タ資料を基礎として原則的⽅法により、輸⼊貨物の関税課税価格を審査確定する評価⽅法。
例:輸⼊取引がない(取引価格が存在しない)場合の関税課税価格
リース方式で輸入する貨物の課税価格【20】は、リース期間において税関が審査確定するリース料を関
税課税価格とします。利息を算⼊しなければなりません。リース貨物を買取る場合、税関の審査確定す
る買取り価格を関税課税価格します。
贈与等無償貨物については、税関が納税義務者と価格交渉を⾏った後に、上記①から⑥までの⽅
法に従い関税課税価格を審査確定するとされます【21】。
[Q23]税関が⑤合理的⽅法を採⽤する場合、どのように対処したらよいでしょうか。
合理的⽅法は、最終的な⼿段とされているものの、税関による裁量の余地が広いことから税関が好む
20
「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 34 条
21
「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 36 条
25
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適用する具体的問題に関する意見及び中国(又は日本)の法律を適用する行為又は事件に関する意見につい
ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
手段となっています。逆に、納税義務者側からすれば、不利に扱われるリスクが存在する⽅法ともいえま
すので、出来る限り避けるべき評価方法ともいえます。
この方法を取られる場合に、反論する⽅法は、以下のとおりです。
a)「成約価格」が採⽤されるべき理由の説明。
b) 仮にこれができないとして、⑤合理的⽅法以外の①〜④のいずれかの評価方法を適用すべき旨
を主張。
※ なお、地域によりますが、税関は③逆控除価格評価方法及び④計算価格評価を採用しな
い、という実務が存在します。(「税関自らが有している輸入データによる検証ができず、企業自らが提出
するデータによらざるを得ないため、評価⽅法として適切ではない」との理由によります。)
[コラム]税関が、指摘する会社をピックアップするとき、どういうところを⾒るのでしょう?
ワイン
中国A社
日本B社
売値
仕入値
2013 年:1200
2013 年:1000
2014 年:3000
2014 年:1000
消費者
2013 年 中国 A 社の利益 200/本
2014 年 中国 A 者の利益 2000/本
→利益 10 倍
→このような状況でも、仕入値が変わっていないことは通常といえるか?
実務上、税関が、課税価格の合理性を判断する場合、下記のようなポイントを⾒ると思われます。
① 業界における正常な価格決定の慣例・ルールに符合しているか?
② 特殊関係のない第三者に対する販売価格と符合しているか?
③ 現地企業の得ている利益は、同類貨物の利益⽔準と⼀致しているか?
すなわち、税関から指摘を受けて問題が発生するトリガーとしては、同業種における業界の状況にかな
りのウエイトが置かれているようです(規定の文言よりも、業界の実態に着目した判断となっている傾向が
⾒受けられます。)。
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ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
[Q24]価格協議のプロセスを教えてください。
税関は、①申告価格の真実性若しくは正確性について疑問を有する場合、⼜は②売買当事者双
方間の特殊な関係が成約価格に影響を及ぼしていると認める場合、「価格質疑通知書」の発⾏、
「価格通知協議書」の発⾏及び「価格協議」を経て、課税価格を審査確定することになっています【22】
そのプロセスは下記のとおりです。
①申告価格の真実性若しくは正確性について疑問を有する場合
or
②売買当事者双方間の特殊関係が成約価格に影響を及ぼしていると認める場合条
価格質疑通知書(价格质疑通知书)の発⾏:第44条
⇒ 納税義務者による証明: 通知受領より5営業日(+延⻑は10営業日まで)
価格協議通知書(价格磋商通知书)の発⾏:第47条
⇒ 価格協議: 通知受領より5営業日
価格協議記録表(价格磋商记录表)の作成
下記いずれかの事由があるとき(第 44 条)
① 納税義務者⼜はその代理⼈が関係資料及び証拠を提供した後、
② 税関がその提供に係る資料及び証拠の審査を経て、
③ なお特殊関係が成約価格に影響を及ぼしたと認める理由があるとき
※ 価格協議に応じない場合、価格協議の権利を放棄したものして、第6条に掲げる⽅法を直
接に使用して確定される(同弁法第47条第2項)
課税価格の審査・確定(审查确定完税价格)
補充申告(补充申报) 又は ⾏政再議(行政复议)
22
「輸出⼊関税条例」第 21 条、「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 44 条〜第 47 条
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[Q25]価格協議にあたってのポイントを教えてください。
① 資料の提供
商業秘密であることを理由として資料の提出を拒否することはできません。
(拒否しても良いですが、その場合は不利な認定がなされる可能性が大きく、積極的に反論の材料
を集めて提出していく必要があります。)
② 価格協議の内容
「双⽅が受諾可能な価格を⾒出す交渉」ではなく、あくまでも、税関が課税価格を決定するための
情報交換を目的とするところに注意が必要です。
③ 税関による現地検査
現地の全ての内部文書・データが対象となります。
④ 「価格協議に応じる」ことの意味
「価格協議に応じる」ということは、すなわち、「成約価格が課税価格たりえないことを⾃認」したと理
解されてしまうおそれがある。
⇒ 成約価格で争う場合、安易に価格協議に応じるべきではない。
⼀⽅、価格協議の権利を放棄したと⾒なされないためには、価格協議通知書が発⾏される前の
対応が重要。
※ 実務では、価格質疑と価格協議が混同されている場合があるので注意。
[Q26]価格査定があった場合に追加徴収される輸入増値税仕入税額が控除できますか。
保税貨物の国内販売、または⼿冊消しこみ時の保税部品の過不⾜で追加納付する輸⼊増値税は、
通常の場合、税関発⾏の輸⼊仕⼊増値税の納付書があれば、仕⼊税額の控除が認められます。
しかし、価格査定などで追加徴収される輸入増値税でそれに対応する輸入通関単がないものについ
ては、明確な規定はないものの、実務上増値税仕入税額控除ができない可能性があります。控除が認
められない場合には、追加徴収の 17%の増値税がコストになります。
税関監督管理コード番号のうち、9700 号は、査定価格、査察より追加した輸⼊段階税⾦で、原始
通貨単がないものです。査定価格の交渉時には、追加輸入増値税の分類、控除可能かどうかも事前に
確認することが望ましいと思われます。
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■査定価格とロイヤルティ
[Q27]特許やノウハウのライセンス契約を結ぶ場合、注意すべき点はどのような点でしょうか?
中国の会社に製品を輸出するだけでなく、その製品に使われている特許技術やノウハウについてロイヤ
ルティの⽀払を受ける技術ライセンス契約を締結する場合が多く⾒られます。
【設例 1】
部品代⾦
@100円
中国A社
日本
部品輸出
@100円
B社
特許・ノウハウ料 @20円
この場合、[Q10]のとおり、ライセンス契約において、ロイヤルティを支払う場合についても課税価格
の加算要素になる場合があります。
なぜなら、管轄税関の目線に⽴ってこれを考えると、部品等を販売する日本企業が同時にライセンサ
ーの法的地位を有するときには、本来、部品等の成約価格に反映されるべき価値がロイヤルティ形式を
纏い、その結果、関税等の部分的ほ脱が⽣じているのではないかという懸念を抱くことになります。
こうした懸念が輸⼊貨物である部品等の成約価格が公正価値を代表していないとの確信に変わる場
合は、査定価格として部品等の成約価格に加えて、ロイヤルティについても関税等の負担を要求すること
となるのです。
なお、知的財産等の権利の使⽤料(ロイヤルティ)は、中国から日本に支払う場合、関税とは別個
に企業所得税 10%と増値税 6%が必要となります。外国にいるライセンサーには中国が国家徴税権に
基づいて強制執⾏することが難しいので、中国側でロイヤルティを支払う企業に源泉徴収義務が課され
ることになっています。
[Q28]ロイヤルティについて、どのような場合に課税価格に加算されますか?
買主が売主又は関係者に対し、直接・間接に支払う必要があるライセンスのロイヤルティは、加算項
目になります。
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適用する具体的問題に関する意見及び中国(又は日本)の法律を適用する行為又は事件に関する意見につい
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日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
ただし、①ライセンスに係る権利の使⽤料(ロイヤルティ)と当該貨物とに関係がないとき、②ライ
センスに係る権利の使⽤料(ロイヤルティ)の支払が、当該貨物の中国国内に対する販売に係る条
件を構成しないとき、のいずれかに適合する場合には、加算されないとされています。
なぜならこのような場合はロイヤルティの額は成約価格と無関係であり、成約価格の公正価値に影響
を与えていないと考えられるからです。
そのため、①「輸入貨物と関係する」か否か、②「輸入取引の条件」として支払われているものである
か否か、という点が問題となることになります
①については、「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 13 条、②については「税関輸出入貨物課
税価格査定弁法」第 14 条に詳細に規定されています。税関に対する説明のため、又は誤解に基づく課
税を受けないための工夫が必要となります。
[Q29]①「輸入貨物と関係する」か否かの判断基準はどのようなものですか。
「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 13 条において、以下の条件の一に適合するライセンスに
係る権利の使⽤料(ロイヤルティ)は、輸⼊貨物に関係すると⾒做さなければならないとされています
【23】。
(1) ライセンスに係る権利の使⽤料が特許権⼜はノウハウ使⽤権の支払に用いられ、かつ、輸入
貨物が次に掲げる事由の 1 つに属するとき。
① 特許又はノウハウを含むもの
② 特許方法又はノウハウを用いて生産されたもの
③ 特許又はノウハウを実施するため専門的に設計され、又は製造されたもの
(2) ライセンスに係る権利の使⽤料が商標権の支払に用いられ、かつ、輸入貨物が次に掲げる事
由の 1 つに属するとき。
① 商標の附されたもの
② 輸入後に商標を附して直接に販売することができるもの
③ 輸⼊の際に既に商標権を含み、軽度な加⼯を経た後に商標を附せば販売することができる
もの
(3) ライセンスに係る権利の使⽤料が著作権の支払に用いられ、かつ、輸入貨物が次に掲げる事
由の 1 つに属するとき。
① ソフトウェア、文字、楽曲、図・写真、画像その他の類似する内容を含む輸入貨物。これに
は、磁気テープ、磁気ディスク、光ディスクその他の類似する媒体の形式が含まれる。
23
「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 13 条
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② 著作権を享有するその他の内容を含む輸入貨物
(4) ライセンスに係る権利の使⽤料がディストリビューション権、販売権その他の類似する権利の支
払に用いられ、かつ、輸入貨物が次に掲げる事由の 1 つに属するとき。
① 輸入後に直接に販売することができるもの
② 軽度な加⼯を経れば販売することができるもの
[Q30]「特許又はノウハウを実施するため専門的に設計され、又は製造されるもの」(第 13 条第
1 項第 3 号)とは、どのような場合でしょう。
「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 13 条第 1 項第 3 号は、「輸⼊貨物に関係すると⾒做さ
なければならない」場合として、下記の場合が挙げられています。
(1) ライセンスに係る権利の使⽤料が特許権⼜はノウハウ使⽤権の支払に用いられ、かつ、輸
入貨物が次の各目に掲げる事由の 1 つに属するとき。
③ 特許又はノウハウを実施するため専門的に設計され、又は製造されるもの
「特許又はノウハウを実施するため専門的に設計され、又は製造されるもの(为实施专利或者专有
技术而专门设计或者制造的)」を如何に理解すべきか(税関に対して如何に理解してもらうか)が
問題となりますが、中国における関連規定からは、この点についての解釈規定は⾒当たりません【24】。
もっとも、税関総署関税徴収管理司編著の「価格査定⽅法と釈義:『中国税関輸出入貨物課税
価格査定弁法』及びその釈義」【25】92 頁においては、次のような解釈がなされる旨が記載されていま
す。
「特許又はノウハウを実施するため専門に設計し、又は製造したもの(为实施专利或者专有技术
而专门设计或者制造的)」とは、輸入する機器及び設備等の生産性貨物が専門に設計し、又
は製造されたものであり、これを特許又はノウハウを実施した生産に用いることをいう。本項において
は、輸入する機器及び設備等の生産性貨物が専門に設計し、又は製造されたものであることを強
調しており、輸入する機器及び設備等の生産性貨物が汎用設備である場合には、輸入貨物とライ
センス使⽤料とは無関係であると認定することができる。しかしながら、輸入する機器及び設備一式
の各部品が汎用設備であるとはいえ、各部品の組合形式が特許若しくはノウハウにかかわり、⼜
24
税関総署関税徴収管理司価格処及び上海税関価格情報処総合科へヒアリングしても規定がないとのことでした。
25
「审价办法及释义:《中华⼈⺠共和国海关审定进出口货物完税价格办法》及其释义」海关总署关税征管司编
著、中国海关出版社、2006 年 12 月。
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ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
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は機器及び設備全体が特許若しくはノウハウの標準に適合することを表明する証拠がある場合
には、輸⼊貨物とライセンス使⽤料とが関係を有するものと認定することができる。
中国への輸入部品が汎用品である場合、(通常であれば関連性要件を欠くことになりロイヤルティの
⾦額を部品の課税価格に算⼊されることはないものの)上記要件を満たすときには関連性要件が肯定
される恐れを否定できません。
[Q31]②「輸入取引の条件」として支払われているものであるか否かの判断基準はどのようなもの
ですか。
「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 14 条において、下記①②の場合には、輸入取引の条件
を構成するものとみなさなければならないという定めがなされています。
① 使⽤料を⽀払わなければ輸⼊貨物を購⼊することができない場合、
② 買主がライセンスに係る権利の使⽤料を⽀払わなければ当該貨物につき契約において定めら
れた条件により成約することができない場合
[Q32]下記の設例のロイヤルティは、課税価格に含まれますか。
【設例2】
代⾦@100円
中国A社
日本B社
清涼飲料の原液
日本C社=関係者
特許・ノウハウ料@15円
【解説 2】
設例2で、原液は特許製法により製造されたものです。A から C に対するロイヤルティの支払は、「輸
入貨物に関わる」ものであり、また、B は C から⽇本における製造・販売を許諾されているものです。ロイヤ
ルティは、輸入取引に関する B との取決めにより A が支払うことを要するものですから、買主により「輸入
取引の条件」として支払われるものに該当します。
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従って、A が日本 C 社に対して支払うロイヤルティは、輸入貨物の課税価格に算入します。
ロイヤルティの⽀払先が売主である場合(設例 1)の他、このように、売主以外の「関係者」に対して
支払われているときも、ロイヤルティが課税価格に算入される可能性があります。
この類型について、前掲・税関総署関税徴収管理司編著の「価格査定⽅法と釈義:『中国税関輸
出入貨物課税価格査定弁法』及びその釈義」83 頁は次のように解説しています。
“売主又は関係者に対して”
買主は、売主に対しライセンス使⽤料を⽀払うこともできれば、第三者である権利所有者に対しラ
イセンス使⽤料を⽀払うこともできる。誰に対してライセンス使⽤料を⽀払うかは、課税するべきか否
かの判断結論に影響しない。例えば、買主が国外の⼯場から製品を購入するにあたり、同時に第三
者である権利所有者に対し特許料を⽀払わなければならない場合、もし当該特許料を⽀払わなけ
れば、国外⼯場が貨物を当該買主に販売することはないだろう。当該特許料については、第三者で
ある権利所有者に⽀払うとはいえ、やはり本項所定の調整項目として輸⼊貨物の課税価格に算⼊
しなければならない。
【設例 3】
製品代⾦
部品代⾦
@500円
@100円
中国国内の
第三者
中国A社
日本B社
加工後、
部品輸出
製品販売
@100円
@500円
①特許・ノウハウは
製品又はその製造技術
①特許・ノウハウ料 @15円
②商標使⽤料
日本C社
@10円
②製品に
C社商標を付加
【解説 3】
設例 3 の場合、①ライセンスに係る権利のロイヤルティは、輸入貨物である部品に対するものではなく、
製品又はその製造技術に関するものです。この場合、「輸入貨物と関係する」か否かが問題になります
(「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 13 条第 1 項第 3 号の問題→[Q29])。輸入貨物
が、特許製品以外にも用いることのできる汎用性のある部品である場合には、「輸入貨物と関係しない」
と反駁しやすいですが、ライセンス契約で当該部品の設計・使用について言及がある、又は、当該特許
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製品に専ら用いられる部品という場合には、「輸入貨物との関係」が認められやすくなりますので注意が必
要です。「輸⼊貨物との関係」が認められれば、①ノウハウ料は加算されます。
②商標のライセンス料については、貨物⾃体に商標が付すものでなくとも、軽度な加工を経た後に商
標を付す場合には、加算されます。上記事例では、部品というだけで軽度な加⼯とはいえない可能性が
⾼いので、商標に関するライセンス料は含まれない可能性が⾼いといえます(同弁法第 13 条第 2 号
③)。
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■査定価格と罰則(密輸)
[Q33]密輸として⾏政処罰や刑事罰を受ける場合があると聞きましたが、どのような場合でしょ
う。
「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」に違反し、密輸⾏為、税関監督管理規定違反⾏為その
他の「税関法」に違反する⾏為をなした場合には、税関が「税関法」及び「税関⾏政処罰実施条例」の
関係規定により処理がなされ、また、犯罪を構成する場合には、法により刑事責任を追及されます
(「税関輸出入貨物課税価格査定弁法」第 53 条、「国内販売保税貨物課税価格査定弁法」第
16 条)。
したがって、輸出入当事者が決定した価格が、税関の査定価格を遥かに下回る場合には、差額相当
の関税及び輸⼊増値税のほ脱が⽣じるものとして、⾏政処罰及び刑事処罰を受ける可能性があります
【26】。
① 刑事罰
刑事罰としては、a)法人に対し、逃れた納付するべき税額相当額以上 5 倍以下の罰⾦、かつ、b)
直接責任者に対して有期懲役が課される可能性があります【27】。
→非常に重い刑事罰となりうるので、注意が必要。また、それぞれ時効期間も異なる。
26
中国の税関法上、「納税義務者の規定違反によりもたらされた過少徴収⼜は徴収脱漏については、税関は、3 年以
内に追加徴収することができる。」と規定されており、したがって、過去 3 年間は追加徴収のリスクがあるものと解されます
(「税関法」第 62 条後段)。納税義務者の規定違反以外の場合には、⾦納付⼜は貨物若しくは物品通関の⽇から 1 年
内に、補足徴収が可能です(同条前段)。
これに対して、中国の税法上は、納税者サイドの納税漏れについて、消滅時効や⽇本の除斥期間に類似する制度がな
く、したがって、税関トラブルと比しても莫大な追徴課税を受けるリスクがあるといえます。(なお、日本の税法では、過少申
告加算制度や無申告加算制度について 5 年の除斥期間があり、重加算制度については 7 年の除斥期間があります。
(※「除斥期間」とは消滅時効と類似する制度ですが、a)起算点が固定される、b)援⽤が不要である、c)中断が
ない、という点で消滅時効とは異なります。))
27
「刑法」( 1997 年 3 月 14 ⽇全国⼈⺠代表⼤会公布〔主席令[第 83 号]〕、同年 10 月 1 ⽇施⾏。2011 年 2
月 25 日全国⼈⺠代表⼤会常務委員会第⼋回改正公布、同年 5 月 1 ⽇施⾏)第 153 条第 2 項、第 154 条。
最⾼⼈⺠法院の「密輸刑事事件の審理の際の具体的な法律適⽤に係る若⼲の問題に関する解釈」(2000 年 9 月
26 ⽇最⾼⼈⺠法院発布〔法释〔2000〕30 号〕、同年 10 月 8 ⽇施⾏)第 10 条第 2 項
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刑法上の規定
逃れた納付すべき関税額
刑事罰
時効期間
【28】
① 貨物又は物品を密輸し逃 25 万元以上 75 万元未満 3 年以下の有
期懲役
れた納付するべき税額が比 である場合
較的大きい場合
5年
(税額が比較的大きい場
② 1 年内に密輸により⾏政処 合に属する)
罰を 2 回受けた後になお密
輸した場合
貨物又は物品を密輸し逃れた 75 万元以上 250 万元未 3 年以上 10
納付するべき税額が巨額である 満である場合
年以下の有
15 年
【29】
場合又はその他の重大な情状 (重大な情状のある場合に 期懲役
のある場合
属する)
貨物又は物品を密輸し逃れた 250 万元以上である場合
10 年以上の
15 年
納付するべき税額が特別に巨 (特別に重大な情状のある 有期懲役
額である場合又はその他の特 場合に属する)
別に重大な情状のある場合
② ⾏政罰
⾏政処罰としては、 密輸貨物及び違法所得の没収並びに納付すべき税⾦の 3 倍以下の罰⾦が科
せられます【30】。
【刑事罰の実例】⽇系メーカー現法の⽇本⼈総経理密輸罪で懲役4年
⽇系メーカーの上海現地法⼈の⽇本⼈総経理が、⾃社の健康器具などを輸⼊する際、輸⼊
額を過少申告したなどとして、上海市の第⼀中級⼈⺠法院(地裁)は同総経理に対し、密輸
罪で懲役4年の実刑判決を⾔い渡した。
28
「刑法」第 87 条において、法定最高刑を基準として時効期間が分かれています。
第87条 罪を犯し次の各号に掲げる期間を経過した場合には、追訴しない。
(1) 法定最高刑が5年未満の有期懲役である場合には、5年を経過したとき。
(2) 法定最高刑が5年以上10年未満の有期懲役である場合には、10年を経過したとき。
(3) 法定最高刑が10年以上の有期懲役である場合には、15年を経過したとき。
(4) 法定最高刑が無期懲役又は死刑である場合には、20 年を経過したとき。20 年後に必ず追訴するべきであると
29
法定最高刑が 10 年「以上」の場合には、15 年が時効期間となります(「刑法」第 87 条(2))。10 年「以下」の有
期懲役であっても、10 年(=10 年以上)が最⾼刑になるため、この場合も 15 年が時効期間となります。
30
「税関法」第 82 条、「税関⾏政処罰実施条例」第 9 条第 1 項第 3 号、第 7 条
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本書に記載されている中国(又は日本)の法律法規の解釈、契約等の文書において中国(又は日本)の法律を
適用する具体的問題に関する意見及び中国(又は日本)の法律を適用する行為又は事件に関する意見につい
ては、全て中国律師(又は日本国弁護士)が担当し行ったものであり、本書はそれらを担当した中国律師(又は
日本国弁護士)の法律法規の解釈及び意見が記載されて
現法に対しては罰⾦ 120 万元(約 1,584 万円)の支払を命じている。同紙によると、総経
理は 2006 年 11 月から 07 年9⽉にかけて、運輸業者3社と共謀して輸⼊額を過少申告。
総額 363 万元余りの関税支払いを逃れた疑い。
このほか運輸業者3社についても、罰⾦ 140 万元の支払が命じられた。
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